特許第6593396号(P6593396)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593396
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】検出装置および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/34 20060101AFI20191010BHJP
   G02B 7/28 20060101ALI20191010BHJP
   G03B 13/36 20060101ALI20191010BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20191010BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   G02B7/34
   G02B7/28 N
   G03B13/36
   G03B15/00 Q
   H04N5/232 120
   H04N5/232 290
【請求項の数】17
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-138052(P2017-138052)
(22)【出願日】2017年7月14日
(62)【分割の表示】特願2014-512685(P2014-512685)の分割
【原出願日】2013年4月25日
(65)【公開番号】特開2017-207771(P2017-207771A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2017年8月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-100150(P2012-100150)
(32)【優先日】2012年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-158796(P2012-158796)
(32)【優先日】2012年7月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(74)【代理人】
【識別番号】100146709
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 直正
(74)【代理人】
【識別番号】100078189
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆男
(72)【発明者】
【氏名】大西 直之
【審査官】 金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−007867(JP,A)
【文献】 特開2008−304808(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/121637(WO,A1)
【文献】 特開2009−271523(JP,A)
【文献】 特開平01−277211(JP,A)
【文献】 特開2010−008873(JP,A)
【文献】 特開平08−075997(JP,A)
【文献】 特開2005−128292(JP,A)
【文献】 特開2012−078754(JP,A)
【文献】 特開平06−130288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/34
G02B 7/28
G03B 13/36
G03B 15/00
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロレンズと、光学系と前記マイクロレンズとを透過した光を受光して信号を出力する複数の受光素子とをそれぞれ有する複数の受光部と、
複数の前記受光部から出力された信号に基づいて、前記光学系による像が結像する位置と前記受光部とのずれ量を検出する検出部と、
前記ずれ量を検出するために用いる受光素子の位置および数の少なくとも1方を、複数の前記受光部から出力された信号に基づいて複数の前記受光部においてそれぞれ変更する変更部と、を備え
前記変更部は、前記ずれ量が第1閾値未満である、または複数の前記受光素子から出力された信号が反転している、または複数の前記受光素子から出力された信号の変化が第2閾値以上である、または複数の前記受光素子から出力された信号の変化が第3閾値未満であると、前記ずれ量を検出するために用いる受光素子の位置および数の少なくとも1方を変更する検出装置。
【請求項2】
請求項に記載の検出装置において、
前記変更部は、前記ずれ量が第1閾値未満であると、前記ずれ量を検出するために用いる受光素子の位置を変更する検出装置。
【請求項3】
請求項に記載の検出装置において、
前記変更部は、前記ずれ量が前記第1閾値未満であると、前記ずれ量を検出するために用いる受光素子を、前記マイクロレンズの光軸に近い位置に配置された受光素子に変更する検出装置。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載の検出装置において、
前記変更部は、複数の前記受光素子から出力された信号が反転している、または複数の前記受光素子から出力された信号の変化が第2閾値以上であると、前記ずれ量を検出するために用いる受光素子の数を変更する検出装置。
【請求項5】
請求項に記載の検出装置において、
前記変更部は、複数の前記受光素子から出力された信号が反転している、または複数の前記受光素子から出力された信号の変化が第2閾値以上であると、前記ずれ量を検出するために用いる受光素子の数を少なくする検出装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載の検出装置において、
前記変更部は、複数の前記受光素子から出力された信号の変化が第3閾値未満であると、前記ずれ量を検出するために用いる受光素子の数を変更する検出装置。
【請求項7】
請求項に記載の検出装置において、
前記変更部は、複数の前記受光素子から出力された信号の変化が第3閾値未満であると、前記ずれ量を検出するために用いる受光素子の数を多くする検出装置。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項に記載の検出装置において、
前記変更部は、前記光学系による像に周期パターンがある、またはエッジパターンがある、またはグラデーションパターンであると、前記ずれ量を検出するために用いる受光素子の位置および数の少なくとも1方を変更する検出装置。
【請求項9】
請求項に記載の検出装置において、
前記変更部は、前記光学系による像に周期パターンがあると、前記ずれ量を検出するために用いる受光素子の位置を変更する検出装置。
【請求項10】
請求項またはに記載の検出装置において、
前記変更部は、前記光学系による像に周期パターンがあると、前記ずれ量を検出するために用いる受光素子を、前記マイクロレンズの光軸に近い位置に配置された受光素子に変更する検出装置。
【請求項11】
請求項から10のいずれか1項に記載の検出装置において、
前記変更部は、前記光学系による像にエッジパターンがあると、前記ずれ量を検出するために用いる受光素子の数を変更する検出装置。
【請求項12】
請求項11に記載の検出装置において、
前記変更部は、前記光学系による像にエッジパターンがあると、前記ずれ量を検出するために用いる受光素子の数を少なくする検出装置。
【請求項13】
請求項から12のいずれか1項に記載の検出装置において、
前記変更部は、前記光学系による像にグラデーションパターンがあると、前記ずれ量を検出するために用いる受光素子の数を変更する検出装置。
【請求項14】
請求項13に記載の検出装置において、
前記変更部は、前記光学系による像にグラデーションパターンがあると、前記ずれ量を検出するために用いる受光素子の数を多くする検出装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の検出装置において、
前記検出部が前記ずれ量を検出するための、前記光学系が有する絞りの絞り値を、前記マイクロレンズの絞り値にする絞り制御部を備える検出装置
【請求項16】
マイクロレンズと、光学系と前記マイクロレンズとを透過した光を受光して信号を出力する複数の受光素子とをそれぞれ有する複数の受光部と、
複数の前記受光部から出力された信号に基づいて、前記光学系による像のパターンを認識する認識部と、
前記光学系が有するフォーカスレンズの位置を、前記認識部により認識されるパターンの周期が長くなる方向に制御する制御部と、を備える検出装置。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の検出装置と、
複数の前記受光素子から出力された信号に基づいて、画像データを生成する生成部と、を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次元状に配列されたマイクロレンズの各々に対して複数の受光素子を配列し、それら複数の受光素子の受光出力に基づいて被写体像の像ずれ量を検出する、いわゆる位相差検出方式の焦点検出を行う焦点検出装置が知られている。例えば特許文献1には、複数方向のコントラストを検出し、そのコントラストに基づいて複数方向の中から焦点検出する方向を選択する焦点検出装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2009−198771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術には、被写体によっては不正確かつ非効率な焦点調節が行われてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によると、検出装置は、マイクロレンズと、光学系と前記マイクロレンズとを透過した光を受光して信号を出力する複数の受光素子とをそれぞれ有する複数の受光部と、複数の前記受光部から出力された信号に基づいて、前記光学系による像が結像する位置と前記受光部とのずれ量を検出する検出部と、前記ずれ量を検出するために用いる受光素子の位置および数の少なくとも1方を、複数の前記受光部から出力された信号に基づいて複数の前記受光部においてそれぞれ変更する変更部と、を備え、前記変更部は、前記ずれ量が第1閾値未満である、または複数の前記受光素子から出力された信号が反転している、または複数の前記受光素子から出力された信号の変化が第2閾値以上である、または複数の前記受光素子から出力された信号の変化が第3閾値未満であると、前記ずれ量を検出するために用いる受光素子の位置および数の少なくとも1方を変更する
本発明の第2の態様によると、検出装置は、マイクロレンズと、光学系と前記マイクロレンズとを透過した光を受光して信号を出力する複数の受光素子とをそれぞれ有する複数の受光部と、複数の前記受光部から出力された信号に基づいて、前記光学系による像のパターンを認識する認識部と、前記光学系が有するフォーカスレンズの位置を、前記認識部により認識されるパターンの周期が長くなる方向に制御する制御部と、を備える。
本発明の第3の態様によると、撮像装置は、第1または第2の態様の検出装置と、複数の前記受光素子から出力された信号に基づいて、画像データを生成する生成部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、被写体のパターンに合わせた正確かつ効率的な焦点調節を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示す断面図である。
図2】焦点検出ユニット104の斜視図である。
図3】受光素子アレイ12の受光面にマイクロレンズ13からの光束の入射範囲を重畳した模式図である。
図4】ボディ制御装置101による焦点検出方法を説明する図である。
図5】焦点調節対象の被写体にピントが合っている状態を模式的に示した図である。
図6】焦点調節対象の被写体にピントが合っていない状態を模式的に示した図である。
図7】ボディ制御装置101が認識するパターンの例を示す図である。
図8】ボディ制御装置101により実行される焦点調節制御のフローチャートである。
図9図8のステップS130で呼び出される受光パターン認識処理のフローチャートである。
図10】ボディ制御装置101が認識する周期パターンの例を示す図である。
図11】ボディ制御装置101により実行される焦点調節制御のフローチャートである。
図12図11のステップS350で呼び出される偽合焦検出処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示す断面図である。カメラ1は、カメラボディ100と、カメラボディ100に着脱可能な交換レンズ200から構成される。
【0009】
交換レンズ200には、複数のレンズ202、203、204から構成される撮影光学系と、開口部を有する絞り205が設けられている。被写体からの光束は、撮影光学系と絞り205の開口部とを通過して、カメラボディ100に入射する。なお、図1では撮影光学系を3つのレンズにより構成されるかのように図示しているが、いくつのレンズで構成されるようにしてもよい。また、図1では絞り205がレンズ203とレンズ204の間に設けられているが、周知のように、絞り205は撮影光学系の前方や後方にあってもよいし、他のレンズの間にあってもよい。
【0010】
撮影光学系に含まれるレンズ203は、撮影光学系のピント位置を調節するフォーカスレンズである。フォーカスレンズ203は、ギア等により構成される不図示の駆動機構を介してレンズ駆動装置206に接続されている。レンズ駆動装置206は、ステッピングモータ等の不図示のアクチュエータを有し、フォーカスレンズ203を撮影光学系の光軸Lに沿った方向Dに駆動させる。
【0011】
絞り205には、絞り駆動装置207が接続されている。絞り駆動装置207はステッピングモータ等の不図示のアクチュエータを有し、不図示の駆動機構を駆動して絞り205の開口径Rを変化させる。
【0012】
カメラボディ100は、撮影光学系により結像された被写体像を撮像する、CCDやCMOS等の撮像素子102を有している。撮像素子102は、撮像面が撮影光学系の予定焦点面と一致するように配置されている。カメラボディ100内の、撮影光学系と撮像素子102の撮像面との間には、ハーフミラー103が設置されている。ハーフミラー103は、例えばペリクルミラー等により構成され、撮影光学系からの被写体光の一部を撮像素子102に対して透過させ、残りをカメラボディ100の上部に反射させる。この反射光は、カメラボディ100の上部に設けられた焦点検出ユニット104に入射する。焦点検出ユニット104の構成については後に詳述する。
【0013】
カメラボディ100は、マイクロプロセッサやその周辺回路から成るボディ制御装置101を備える。ボディ制御装置101は、不図示の記憶媒体に予め記憶されている所定の制御プログラムを読み込んで実行することにより、カメラボディ100の各部を制御する。交換レンズ200は同様に、マイクロプロセッサやその周辺回路から成るレンズ制御装置201を有している。レンズ制御装置201は、不図示の記憶媒体に予め記憶されている所定の制御プログラムを読み込んで実行することにより、交換レンズ200の各部を制御する。なお、ボディ制御装置101やレンズ制御装置201を、上記の制御プログラム相当の動作を行う電子回路により構成してもよい。
【0014】
ボディ制御装置101とレンズ制御装置201は、レンズマウント周辺に設けられた不図示の電気接点を介して、相互に通信可能に構成されている。ボディ制御装置101はこの電気接点を介したデータ通信により、例えばフォーカスレンズ203の駆動指令や絞り205の駆動指令をレンズ制御装置201に送信する。なお、このデータ通信を、電気接点を介した電気信号の授受以外の方法(例えば無線通信や光通信等)により行ってもよい。
【0015】
所定の焦点調節操作(例えば、不図示のレリーズスイッチの半押し操作)がなされると、ボディ制御装置101は焦点検出ユニット104の出力に基づいてデフォーカス量を検出し、そのデフォーカス量に応じた量だけフォーカスレンズ203を駆動させるための駆動指令をレンズ制御装置201に送信する。レンズ制御装置201はこの駆動指令に応じて、レンズ駆動装置206にフォーカスレンズ203を駆動させる。これにより、所定の被写体にピントが合わせられる。
【0016】
カメラ1の背面には、例えば液晶等の表示素子により構成されるモニター110が設けられている。ボディ制御装置101はこのモニター110を用いて、例えば撮影した静止画像データや動画像データの再生、カメラ1の撮影パラメータ(絞り値やシャッタースピード等)の設定メニューやスルー画の表示などを行う。
【0017】
カメラボディ100の上部には、液晶等の表示素子を有する電子ビューファインダーユニット108が設置されている。撮影者はファインダー部107から接眼レンズ106を介して電子ビューファインダーユニット108の表示素子に表示される被写体像等を視認することができる。カメラ1が撮影モードに設定されている間、ボディ制御装置101は所定間隔(例えば60分の1秒)ごとに撮像素子102に被写体像を撮像させ、その撮像信号に基づいてスルー画を作成してモニター110や電子ビューファインダーユニット108に表示させる。
【0018】
撮影モード時に所定の静止画撮影操作(例えば、不図示のレリーズスイッチの全押し操作)がなされると、ボディ制御装置101は撮影制御を行う。このときボディ制御装置101は、不図示のシャッター等を制御して撮像素子102に被写体像を撮像させる。そして、撮像素子102から出力される撮像信号に種々の画像処理を加え、静止画像データを生成して不図示の記憶媒体(例えばメモリカード等)に記憶する。
【0019】
(焦点検出ユニット104の説明)
図2は、焦点検出ユニット104の斜視図である。焦点検出ユニット104は、マイクロレンズアレイ11と、マイクロレンズアレイ11の後側に設けられた受光素子アレイ12とから構成される。
【0020】
マイクロレンズアレイ11には、多数のマイクロレンズ13が二次元状に配列されている。ハーフミラー103により反射された被写体光は、これらのマイクロレンズ13のいずれかを通過して受光素子アレイ12の受光面に入射する。受光素子アレイ12の受光面(マイクロレンズアレイ11側の面)には、マイクロレンズ13の各々を通過した光束が入射する受光素子群14が、二次元状に多数配列されている。1つの受光素子群14は、5列5行に配列された計25個の受光素子により構成される。つまり、ある1つのマイクロレンズ13を通過した光束は、いずれか1つの受光素子群14に入射し、その受光素子群14を構成する複数の受光素子がその光束を受光する。
【0021】
マイクロレンズアレイ11の表面(被写体光が入射する面)の、マイクロレンズ13が存在しない場所は、遮光マスクにより被覆されている。従って、受光素子アレイ12には、マイクロレンズ13を通過していない光束が入射することはない。
【0022】
受光素子アレイ12は、マイクロレンズアレイ11からマイクロレンズ13の焦点距離だけ離れた位置に配置される。図2では便宜上、マイクロレンズアレイ11と受光素子アレイ12との間隔dを実際よりも大きく図示している。
【0023】
なお図2では、マイクロレンズアレイ11および受光素子アレイ12の一部のみを図示している。実際には、より多数のマイクロレンズ13および受光素子群14が存在している。また、1つの受光素子群14に含まれる受光素子の個数は、25個より多くても少なくてもよいし、その配列が図2に示したものと異なっていてもよい。
【0024】
図3は、受光素子アレイ12の受光面にマイクロレンズ13からの光束の入射範囲を重畳した模式図である。撮影光学系のF値がマイクロレンズ13のF値と一致するとき、1つのマイクロレンズ13からの光束は、1つの受光素子群14を囲む円15の範囲に入射する。絞り205を絞り込み、撮影光学系のF値がマイクロレンズ13のF値よりも大きい(撮影光学系がマイクロレンズ13よりも暗い)状態とした場合、この円15は図3に示したサイズよりも小さくなる。
【0025】
なお、撮影光学系のF値がマイクロレンズ13のF値よりも小さい(撮影光学系がマイクロレンズ13よりも明るい)状態となった場合、円15は図3に示したサイズよりも大きくなり、各々の円15同士が重なり合う状態になる。すなわち、マイクロレンズ13を通過した光束同士でクロストークが発生する。これによって、1つの受光素子に複数のマイクロレンズ13を通過した光束が入射してしまうと、正確な焦点検出が行えなくなってしまう。本実施形態のボディ制御装置101は、焦点検出の際に絞り205を絞り込み、撮影光学系のF値をマイクロレンズ13のF値と一致させる。つまり、焦点検出の際には、図3に円15で示す範囲に被写体光が入射することになり、上述したクロストークは発生しない。
【0026】
(焦点検出方法の説明)
ボディ制御装置101は、焦点検出ユニット104の出力に基づいて被写体像の像ずれ量を検出する、いわゆる位相差検出方式の焦点検出を行う。以下、ボディ制御装置101による焦点検出方法について説明する。
【0027】
図4(a)は、図3に示した多数の受光素子群14から、焦点検出に用いる1列の受光素子群14を抜き出した図である。図4(a)では5つの受光素子群14を図示しているが、実際にはより多くの受光素子群14を選択することが望ましい。以下、ここで説明に用いる受光素子群14を、受光素子群14a〜14eとそれぞれ異なる符号を付して扱う。
【0028】
図4(b)は、図4(a)に示した受光素子群14a〜14eの、測距瞳との関係を模式的に示した図である。マイクロレンズ13a〜13eは、その頂点が撮影光学系の予定焦点面17と略一致するように配置されている。マイクロレンズ13cは、その背後に配置された一対の受光素子16lc、16rcの形状を、マイクロレンズ13cから投影距離d2だけ離れた射出瞳20上に投影し、その投影形状は測距瞳21、22を形成する。投影距離d2はマイクロレンズ13cの曲率、屈折率、マイクロレンズ13cと受光素子アレイ12の間の距離などに応じて決まる距離である。一対の測距瞳91、22と、一対の受光素子16lc、16rcは、マイクロレンズ13cを介して共役な関係となっている。
【0029】
なお、以上の説明では便宜的に、光軸L上の受光素子群14cに属する一対の受光素子16lc、16rcと一対の測距瞳21、22を例示したが、光軸Lから離れた位置にある受光素子群においても、一対の受光素子はそれぞれ一対の測距瞳から各マイクロレンズに到来する光束を受光する。
【0030】
受光素子16lcは、測距瞳22を通過しマイクロレンズ13cに向かう焦点検出光束24によりマイクロレンズ13c上に形成される像の強度に対応した受光信号を出力する。同様に、受光素子16rcは測距瞳21を通過しマイクロレンズ13cに向う焦点検出光束23によりマイクロレンズ13c上に形成される像の強度に対応した受光信号を出力する。
【0031】
従って、図4(a)のように直線状に配置された複数個の受光素子群14a〜14eの各々から、測距瞳21および測距瞳22に対応する一対の受光素子の受光出力を得ることにより、測距瞳21と測距瞳22を各々通過する焦点検出光束が受光素子アレイ12上に形成する一対の像の強度分布に関する情報が得られる。これらの情報に対して周知の像ずれ検出演算を行えば、いわゆる瞳分割型位相差検出方式での一対の像の像ずれ量が検出される。さらに、像ずれ量に対して、一対の測距瞳21、22の重心間隔に応じた変換演算を行うことにより、予定焦点面に対する現在の結像面の偏差であるデフォーカス量が算出される。
【0032】
像ずれ検出演算および変換演算を具体的に説明すると、ボディ制御装置101はまず、受光素子群14aについて、中央左端の3つの受光素子16laの受光出力を加算した値をa(1)とおく。同様に、受光素子群14b〜14eのそれぞれについて、中央左端の3つの受光素子16lb〜16leの受光出力をそれぞれ加算し、a(2)〜a(5)とおく。次に、受光素子群14a〜14eのそれぞれについて、中央右端の3つの受光素子16ra〜16reの受光出力をそれぞれ同様に加算し、b(1)〜b(5)とおく。このようにして作成された一対の信号列a(i)とb(i)が、上述した一対の像の強度分布に関する情報である。ボディ制御装置101はこれら一対の信号列の間で、各信号列を少しずつずらしながら相関演算を行い、ずれ量毎の相関量を算出する。そして、その結果から相関量が極小となるずれ量(相関が極大となるずれ量)を求める。ボディ制御装置101は、そのずれ量に所定の変換係数を掛けることにより、被写体像の予定焦点面に対するデフォーカス量を算出する。
【0033】
なお、多数の受光素子群14の中から焦点検出のために選択する一列の受光素子群14は、任意の方法により決定してよい。例えば、ユーザにピントを合わせたい被写体の位置を指定させ、その位置にある受光素子群14を選択してもよいし、あるいは撮影画面の中央など、予め決めておいた位置の受光素子群14を選択してもよい。
【0034】
(受光面上に形成される周期パターンの説明)
ボディ制御装置101は、焦点検出および焦点調節の都度、マイクロレンズ13により受光素子アレイ12の受光面上に形成される像のパターンを、周知のパターンマッチングにより認識する。そして、認識したパターンに応じて、焦点検出や焦点調節の内容を変化させる。以下では、受光素子アレイ12の受光面上に形成される像のパターンについて説明する。
【0035】
図5は、焦点調節対象の被写体にピントが合っている場合の、被写体31、撮影光学系30、被写体像33、予定焦点面17、マイクロレンズアレイ11、および受光素子アレイ12を模式的に示した図である。なお、図5では撮影光学系を模式的に1枚のレンズで表現している。
【0036】
焦点調節対象の被写体31にピントが合っている場合とはすなわち、図5(a)に示すように、撮影光学系30により結像される被写体31の像(被写体像)33が予定焦点面17と略一致し、被写体31上のある一点32から出射し撮影光学系30を通過した光束35が、予定焦点面17上において許容錯乱円未満の大きさに収束している場合である。
図5(b)に、焦点検出ユニット104近傍の拡大図を示す。このときマイクロレンズ13cの後側には、図5(c)に示すように、被写体像33上の一点34からの光束が略均一に入射する。この一点34からの光束は他のマイクロレンズ13には入射せず、またマイクロレンズ13cの後側には被写体像33上の他の点からの光束は入射しない。
【0037】
図6は、焦点調節対象の被写体にピントが合っていない場合の、被写体31、撮影光学系30、被写体像33、予定焦点面17、マイクロレンズアレイ11、および受光素子アレイ12を模式的に示した図である。
【0038】
撮影光学系30により結像される被写体31の像33が予定焦点面17からマイクロレンズ13の焦点距離の2倍以上離れている場合、図6(a)に示すように、被写体31上のある一点32から出射し撮影光学系30を通過した光束35は、予定焦点面17に一定の広がりを持って入射する。つまり、この一点32からの光束35は複数のマイクロレンズ13に入射する。また、図6(b)の拡大図に示すように、1つのマイクロレンズ13cには、被写体像33上の複数の点からの光束が入射する。これにより、図6(c)に示すように、マイクロレンズ13cの後側に、被写体像33の形状および被写体像33とマイクロレンズ13との位置関係に応じた像36が投影される。
【0039】
次に、本実施形態のボディ制御装置101が認識し焦点検出や焦点調節に利用するパターンについて、図7の例を挙げて説明する。
【0040】
図7(a1)に、上下方向の縦縞を有する被写体像33aを示す。この被写体像33aが予定焦点面17からある程度離れた位置に結像された場合、受光素子アレイ12の受光面上には、図7(a2)に示すパターンが形成される。このとき、1つの受光素子群14から横方向に一列に並んだ受光素子の受光出力を得ると、その一列の受光出力には、縦縞に対応する複数のピークが含まれている。
【0041】
このように、1つの受光素子群14の中で、特定方向に一列に並んだ受光素子の受光出力が複数のピークを含んでいる場合、ボディ制御装置101は被写体31が周期パターンを有する周期被写体であると判定する。そして、その後の焦点検出演算において、デフォーカス量の絶対値が所定のしきい値未満である場合(すなわち合焦状態であると判定された場合)、このデフォーカス量は正しくない(すなわち偽合焦状態である)と判断する。これは、仮に被写体31にピントが合っているとすれば、そのとき1つの受光素子群14には、図5(c)に示すように均一な光束が入射するはずであり、図7(a2)のようなパターンが形成されることはありえないためである。
【0042】
デフォーカス量が正しくない(偽合焦状態である)と判断したボディ制御装置101は、検出開角を小さくして焦点検出演算をやり直す。つまり、図4(a)に示した左右両端の受光素子の代わりに、より内側に位置する受光素子を用いて一対の信号列を作成し、像ずれ検出演算および変換演算を行う。
【0043】
次に、図7(b1)の被写体像について説明する。図7(b1)には、左右方向に明確な境界(エッジ)を有する被写体像33bが示されている。この被写体像33bが予定焦点面17からある程度離れた位置に結像された場合、受光素子アレイ12の受光面上には、図7(b2)に示すパターンが形成される。
【0044】
ボディ制御装置101は、近接する一対の受光素子群14から全く異なる出力を検出し(例えば円15a、15c)、かつその間の受光素子群14(例えば円15b)において、それら2種類の出力が反転していた場合、被写体31がエッジパターンを有するエッジ被写体であると判断する。そして、その後の焦点検出演算において、検出したエッジの垂直方向に一列に並んだ受光素子群14から、像ずれ検出演算のための一対の信号列を作成する。また、一対の信号列を作成するための受光素子群14を、通常より狭い範囲で選択し、信号列長を通常より短くする。これは、明確なエッジが存在することが明らかになっているため、そのエッジ近辺のみを焦点検出の対象とすればよいためである。
【0045】
次に、図7(c1)の被写体像について説明する。図7(c1)には、上下方向に輝度や色彩がなだらかに変化している、いわゆるグラデーション状のパターンを有する被写体像33cが示されている。この被写体像33cが予定焦点面17からある程度離れた位置に結像された場合、受光素子アレイ12の受光面上には、図7(c2)に示すパターンが形成される。
【0046】
ボディ制御装置101は、近接する複数の受光素子群14が一様に、なだらかな変化を伴う(あるいは変化がほとんどない)受光出力を有していた場合、被写体31がグラデーションパターンを有するグラデーション被写体であると判断する。そして、一対の信号列を作成した後、通常であればその信号列に対してハイパスフィルタを適用し余計な低周波成分を除去するが、これを適用せずに像ずれ検出演算を行う。更に、作成した一対の信号列において、信号の高低差が所定量未満である場合には、被写体31が低コントラストであり像ずれ検出演算の精度を高める必要があると判断し、一対の信号列をより多数の受光素子から作成する。例えば、図4(a)に示すように3つの受光素子の出力を加算する代わりに、6つの受光素子の出力を加算して一対の信号列を作成する。
【0047】
以上のように、本実施形態のボディ制御装置101は、受光素子アレイ12上にマイクロレンズ13によって形成された像のパターンに応じて、焦点検出演算を通常のものからそのパターンに適した内容に変更する。前述のように、ボディ制御装置101は周知のパターンマッチングにより、図7(a1)〜図7(c1)に例示した3つのパターン(周期パターン、エッジパターン、グラデーションパターン)を認識する。パターンマッチングは、少なくともこれら3つのパターンを認識できるものであれば、どのように行ってもよい。
【0048】
(焦点調節制御の説明)
図8は、ボディ制御装置101により実行される焦点調節制御のフローチャートである。図8に示す処理は、ボディ制御装置101が不図示のメモリから読み込んで実行する制御プログラムに含まれている。
【0049】
まずステップS100においてボディ制御装置101が、ユーザにより所定の焦点調節操作(例えばレリーズスイッチの半押し操作)が為されたか否かを判定する。ボディ制御装置101は焦点調節操作が為されるまでステップS100を繰り返し実行し、焦点調節操作が為された場合にはステップS110に進む。ボディ制御装置101はステップS110で受光素子アレイ12の蓄積制御を行い、ステップS120で各受光素子群14の受光出力を読み出す。ボディ制御装置101はステップS130で、読み出した受光出力に基づく受光パターン認識処理(後述)を実行し、図7(a1)〜図7(c1)に例示したパターンを認識する。
【0050】
ステップS140でボディ制御装置101は、ステップS120で読み出した受光出力の一部を用いて、受光パターンの認識結果を反映させた像ずれ検出演算および変換演算を行い、デフォーカス量を算出する。そして、ステップS150でこのデフォーカス量から合焦に必要なフォーカスレンズ203の駆動量を演算する。ステップS160では、フォーカスレンズ203を駆動する必要があるか否か、すなわち既に合焦状態であるか否かを判定し、合焦状態であれば図8の処理を終了する。合焦状態でなかった場合にはステップS170に進み、ボディ制御装置101はレンズ駆動制御を実行してステップS110に戻る。レンズ駆動制御においてボディ制御装置101は、ステップS150において演算したレンズ駆動量だけフォーカスレンズ203を駆動するよう、レンズ制御装置201に駆動命令を送信する。レンズ制御装置201はこの駆動命令に応じて、レンズ駆動装置206にフォーカスレンズ203を駆動させる。
【0051】
図9は、図8のステップS130で呼び出される受光パターン認識処理のフローチャートである。図8に示した処理と同様に、この処理はボディ制御装置101により実行される制御プログラムに含まれている。まずステップS200でボディ制御装置101は、各受光素子群14の受光出力から、マイクロレンズ13により投影された像の特徴量を抽出する。特徴量は、色、形、高さ、位置、幅、面積などから決められるものであり、ここでは少なくとも図7(a1)〜図7(c1)に例示した3種類のパターンを認識できるように決定すればよい。続くステップS210で、ボディ制御装置101は抽出した特徴量からパターン認識を行う。
【0052】
ステップS220でボディ制御装置101は、認識したパターンが周期パターンか否かを判定する。周期パターンを認識した場合にはステップS270に進み、周期被写体用の焦点検出/焦点調節設定を適用する。すなわち、デフォーカス量の絶対値が所定のしきい値未満である場合(すなわち合焦状態であると判定された場合)、このデフォーカス量は正しくない(すなわち偽合焦状態である)と判断するように設定する。デフォーカス量が正しくない(偽合焦状態である)と判断したボディ制御装置101は、検出開角を小さくして焦点検出演算をやり直す。
【0053】
周期パターンを認識していなかった場合、ステップS230に進み、認識したパターンがエッジパターンか否かを判定する。エッジパターンを認識した場合にはステップS260に進み、エッジ被写体用の焦点検出/焦点調節設定を適用する。すなわち、検出したエッジの垂直方向に一列に並んだ受光素子群14から、像ずれ検出演算のための一対の信号列を作成する。また、一対の信号列を作成するための受光素子群14を、通常より狭い範囲で選択し、信号列長を通常より短くする。
【0054】
エッジパターンを認識していなかった場合、ステップS240に進み、認識したパターンがグラデーションパターンか否かを判定する。グラデーションパターンを認識した場合にはステップS250に進み、グラデーション被写体用の焦点検出/焦点調節設定を適用する。すなわち、一対の信号列を作成した後、信号列に対してハイパスフィルタを適用せずに像ずれ検出演算を行う。更に、作成した一対の信号列において、信号の高低差が所定量未満である場合には、被写体31が低コントラストであり像ずれ検出演算の精度を高める必要があると判断し、一対の信号列をより多数の受光素子から作成する。
【0055】
上述した第1の実施の形態によるカメラシステムによれば、次の作用効果が得られる。
(1)ボディ制御装置101は、二次元状に配置された複数のマイクロレンズ13の各々に対応して当該マイクロレンズ13の後側に配置された複数の受光素子から成る受光素子群14の受光出力に基づいて、複数のマイクロレンズ13により受光素子アレイ12の受光面上に形成される被写体像のパターンを認識し、そのパターンに適した焦点調節を、受光素子アレイ12の受光出力から撮影光学系の異なる領域をそれぞれ通過した一対の光束の位相差を検出することにより行う。このようにしたので、被写体のパターンに合わせた正確かつ効率的な焦点調節を行うことができる。
【0056】
(2)ボディ制御装置101は、周期パターンを認識した場合、合焦状態が検出されてもそれは偽合焦状態であると判断し、検出開角を小さくして焦点検出演算をやり直す。このようにしたので、縞模様等の偽合焦を発生させやすい被写体に対しても正確かつ効率的な焦点調節を行うことができる。
【0057】
(3)ボディ制御装置101は、エッジパターンを認識した場合、検出したエッジの垂直方向に一列に並んだ受光素子群14から通常より少ない受光素子群14を選択し、選択した受光素子群14から像ずれ検出演算のための一対の信号列を作成する。このようにしたので、明確なエッジを有する被写体に対して、エッジ部分以外の箇所に存在するノイズ等の影響を除外した正確かつ効率的な焦点調節を行うことができる。また、信号列が通常よりも短くなるので、焦点検出演算を高速に行うことができる。
【0058】
(4)ボディ制御装置101は、グラデーションパターンを認識した場合、一対の信号列を作成した後、信号列に対してハイパスフィルタを適用せずに像ずれ検出演算を行う。更に、作成した一対の信号列において、信号の高低差が所定量未満である場合には、被写体31が低コントラストであり像ずれ検出演算の精度を高める必要があると判断し、一対の信号列をより多数の受光素子から作成する。このようにしたので、グラデーションのような焦点検出を行いづらい被写体に対しても正確かつ効率的な焦点調節を行うことができる。
【0059】
(第2の実施の形態)
本実施形態のカメラシステムは、図1に示した第1の実施の形態のカメラシステムと同一の構成を有する。第1の実施の形態との違いは、ボディ制御装置101が実行する焦点検出処理のみである。以下、本実施形態について、第1の実施の形態との違いを中心に説明し、それ以外の箇所については説明を省略する。
【0060】
図10(a)に、上下方向の縦縞を有する被写体像43aを示す。被写体像43aが有する縦縞は、横方向に周期T1ごとに配置され、周期パターンを構成している。被写体像43aが予定焦点面17からある程度離れた位置に結像された場合、受光素子アレイ12の受光面上には、図10(b)に示す周期パターンが形成される。ボディ制御装置101は、受光素子アレイ12の受光出力に前述したパターンマッチングを適用することで、被写体31が有する図10(a)のような周期パターンを認識する。ボディ制御装置101はこのような周期パターンを認識すると、その後の焦点検出演算において、デフォーカス量の絶対値が所定のしきい値未満である場合(すなわち合焦状態であると判定した場合)、このデフォーカス量は正しくない(すなわち偽合焦状態である)と判断する。
【0061】
デフォーカス量が正しくない(偽合焦状態である)と判断したボディ制御装置101は、レンズ駆動装置206に、認識した周期パターンの周期が長くなる方向にフォーカスレンズ203を所定量だけ駆動させた後、焦点検出演算をやり直す。例えば、今まで無限遠方向にフォーカスレンズ203を駆動させて焦点調節を行っており、その結果として現在の偽合焦状態となった場合には、逆方向(至近方向)にフォーカスレンズ203を駆動させる。その結果、図10(b)に示した周期T2の周期パターンは、図10(c)に示すように、周期T2より長い周期T3の周期パターンとなる。
【0062】
(焦点調節制御の説明)
図11は、ボディ制御装置101により実行される焦点調節制御のフローチャートである。図11に示す処理は、ボディ制御装置101が不図示のメモリから読み込んで実行する制御プログラムに含まれている。
【0063】
まずステップS300においてボディ制御装置101が、ユーザにより所定の焦点調節操作(例えばレリーズスイッチの半押し操作)が為されたか否かを判定する。ボディ制御装置101は焦点調節操作が為されるまでステップS300を繰り返し実行し、焦点調節操作が為された場合にはステップS310に進む。ボディ制御装置101はステップS310で受光素子アレイ12の蓄積制御を行い、ステップS320で各受光素子群14の受光出力を読み出す。
【0064】
ステップS330でボディ制御装置101は、ステップS320で読み出した受光出力の一部を用いて、前述した像ずれ(位相差)検出演算および変換演算を行い、デフォーカス量を算出する。そして、ステップS360でフォーカスレンズ203を駆動する必要があるか否か、すなわち既に合焦状態であるか否かを判定し、合焦状態であればステップS350に進む。他方、合焦状態でなかった場合にはステップS370に進み、算出したデフォーカス量から合焦に必要なフォーカスレンズ203の駆動量を演算する。そして、ボディ制御装置101はレンズ駆動制御を実行してステップS310に戻る。レンズ駆動制御においてボディ制御装置101は、ステップS370において演算したレンズ駆動量だけフォーカスレンズ203を駆動するよう、レンズ制御装置201に駆動命令を送信する。レンズ制御装置201はこの駆動命令に応じて、レンズ駆動装置206にフォーカスレンズ203を駆動させる。
【0065】
ステップS350では、ボディ制御装置101が後述する偽合焦判定処理を実行する。そして、ステップS360において、偽合焦が検出されたか否かを判定する。偽合焦が検出されなかった場合には、正しく合焦状態であるということなので、図11に示す処理を終了する。他方、偽合焦が検出された場合にはステップS390に進み、ボディ制御装置101は受光素子アレイ12上に形成された周期パターンの周期が長くなるフォーカスレンズ203の駆動方向を決定する。
【0066】
例えば、図11の処理を開始してからステップS340において一度合焦状態ではないと判定したことがあり、その際に合焦状態になるようフォーカスレンズ203を駆動してからステップS390に到達した場合であれば、そのときの駆動方向とは逆の方向が「周期パターンの周期が長くなる駆動方向」である。
【0067】
なお、図11の処理を開始してから一度もフォーカスレンズ203を駆動せずにステップS390に到達した場合には、いったん所定方向にフォーカスレンズ203を駆動し、その後周期パターンの周期が長くなったか否かを確認すればよい。その際、周期が短くなっていれば、改めてその方向とは逆の方向にフォーカスレンズ203を駆動することで、「周期パターンの周期が長くなる駆動方向」にフォーカスレンズ203を駆動することが可能である。
【0068】
ステップS395では、ボディ制御装置101が、フォーカスレンズ203の駆動制御を行い、フォーカスレンズ203をステップS390で決定した方向に所定量だけ駆動する。具体的には、当該方向に所定量だけフォーカスレンズ203を駆動するよう、レンズ制御装置201に駆動命令を送信する。その後ステップS310に戻り、受光素子アレイ12の蓄積制御からの処理を繰り返す。
【0069】
図12は、図11のステップS350で呼び出される偽合焦検出処理のフローチャートである。図11に示した処理と同様に、この処理はボディ制御装置101により実行される制御プログラムに含まれている。まずステップS400でボディ制御装置101は、図11のステップS330において位相差検出に用いた各受光素子のうち、受光出力が最も大きい受光素子(すなわち受光出力のピーク位置)を検出する。次のステップS405では、ボディ制御装置101が、ステップS400で検出された受光素子に対応する受光素子群14(当該受光素子を被覆するマイクロレンズ13により被覆される受光素子群14)の受光出力から、マイクロレンズ13により投影された像の特徴量を抽出する。特徴量は、色、形、高さ、位置、幅、面積などから決められるものであり、ここでは少なくとも図10(b)に例示した周期パターンを認識できるように決定されている。続くステップS410で、ボディ制御装置101は抽出した特徴量から周期パターンを認識する。
【0070】
ステップS420でボディ制御装置101は、周期パターンを認識したか否かを判定する。周期パターンを認識した場合にはステップS410に進み、現在偽合焦状態であると判断する。すなわち、図11のステップS330で算出したデフォーカス量は正しくないと判断する。
【0071】
上述した第2の実施の形態によるカメラシステムによれば、次の作用効果が得られる。
(1)ボディ制御装置101は、二次元状に配置された複数のマイクロレンズ13の各々に対応して当該マイクロレンズ13の後側に配置された複数の受光素子から成る受光素子群14の受光出力に基づいて、複数のマイクロレンズ13により受光素子アレイ12の受光面上に形成される被写体像のパターンを認識し、そのパターンに適した焦点調節を、受光素子アレイ12の受光出力から撮影光学系の異なる領域をそれぞれ通過した一対の光束の位相差を検出することにより行う。このようにしたので、被写体のパターンに合わせた正確かつ効率的な焦点調節を行うことができる。
【0072】
(2)ボディ制御装置101は、周期パターンを認識した場合、合焦状態が検出されてもそれは偽合焦状態であると判断し、検出開角を小さくして焦点検出演算をやり直す。このようにしたので、縞模様等の偽合焦を発生させやすい被写体に対しても正確かつ効率的な焦点調節を行うことができる。
【0073】
(3)ボディ制御装置101は、エッジパターンを認識した場合、検出したエッジの垂直方向に一列に並んだ受光素子群14から通常より少ない受光素子群14を選択し、選択した受光素子群14から像ずれ検出演算のための一対の信号列を作成する。このようにしたので、明確なエッジを有する被写体に対して、エッジ部分以外の箇所に存在するノイズ等の影響を除外した正確かつ効率的な焦点調節を行うことができる。また、信号列が通常よりも短くなるので、焦点検出演算を高速に行うことができる。
【0074】
(4)ボディ制御装置101は、グラデーションパターンを認識した場合、一対の信号列を作成した後、信号列に対してハイパスフィルタを適用せずに像ずれ検出演算を行う。更に、作成した一対の信号列において、信号の高低差が所定量未満である場合には、被写体31が低コントラストであり像ずれ検出演算の精度を高める必要があると判断し、一対の信号列をより多数の受光素子から作成する。このようにしたので、グラデーションのような焦点検出を行いづらい被写体に対しても正確かつ効率的な焦点調節を行うことができる。
【0075】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0076】
(変形例1)
図3では、横方向に並んだ5つの受光素子群14a〜14eを焦点検出のために選択する様子を例示したが、これ以外の方向に一列に並んだ受光素子群14を選択してもよい。また、5つより多いまたは少ない受光素子群14を選択してもよいし、必ずしも連続する受光素子群14を選択しなくてもよい。例えば1つおきに配列されている受光素子群14を選択してよい。
【0077】
(変形例2)
周期パターン認識時、偽合焦判定が為された場合に小さい開角で焦点検出演算をやり直すのではなく、フォーカスレンズ203の駆動方向を反転するようにしてもよい。例えば至近方向にフォーカスレンズ203を駆動した後、または駆動している最中に偽合焦判定が為された場合、無限方向にフォーカスレンズ203を駆動させて焦点検出をやり直すようにしてもよい。
【0078】
(変形例3)
上述した実施形態においてボディ制御装置101が認識する、周期、エッジ、グラデーションというパターンは一例に過ぎず、他のパターンを認識してそのパターンに適した焦点検出演算や焦点調節制御を行うようにしてもよい。また逆に、ボディ制御装置101が周期パターンのみやエッジパターンのみを認識するようにしてもよい。
【0079】
(変形例4)
マイクロレンズアレイ11および受光素子アレイ12を、図2に図示されているものと異ならせてもよい。例えば、マイクロレンズ13および受光素子群14の配列を、正方配列など図2に示した配列とは異なる配列方法により配列することができる。マイクロレンズ13の形状を円形以外(例えば六角形など)の形状とすることもできる。また、受光素子群14を構成する受光素子の配列は、正方配列以外であってもよい。例えば、受光素子群14がマイクロレンズ13の形状に合わせた円形に近い形状となるように受光素子を配列してもよいし、受光素子を横一列や縦一列などに配列してもよい。その他、マイクロレンズ13間の遮光マスクを省略することもできる。
【0080】
(変形例5)
焦点検出の際、一対の信号列を作成するために選択される受光素子を、図4(a)に示すような、左右両端の3つの受光素子以外から選択してもよい。また、画素加算は必ずしも行わなくてよい。つまり、図4(a)ではa(1)、a(2)などの値を3つの受光素子の受光出力を合算することにより作成しているが、1つの受光素子の受光出力をa(1)、a(2)などとすることができる。
【0081】
(変形例6)
周期パターン以外のパターンが認識されたときであっても、その後の焦点検出において合焦状態と判定された場合には、偽合焦状態であると判断することが可能である。これは、合焦時には必ず図5(c)のように、1つのマイクロレンズ13の後側には一様な像が形成されるためである。
【0082】
(変形例7)
周期パターンの認識方法は、上述したパターンマッチングを用いない方法であってもよい。例えば、ある1つのマイクロレンズ13により被覆された1つの受光素子群14において、その受光出力から所定方向(例えば横方向や縦方向、斜め方向など)に沿ったエッジを検出することで、周期パターンを認識することもできる。ここでエッジとは、隣接する2つの受光素子において、その受光出力が大きく(所定のしきい値を超えて)変化する地点のことである。この場合、検出された複数のエッジの間隔がパターンの周期である。
【0083】
また、所定方向に並んだ複数のマイクロレンズ13にそれぞれ被覆された複数の受光素子群14の各々について、当該受光素子群14の出力の合算値を算出し、それら複数の合算値を比較することで周期パターンを認識することもできる。撮影光学系が合焦状態である場合、図5(c)に示すように、1つのマイクロレンズ13の裏面には均一な光が照射するので、被写体像が周期パターンを持っている場合には、図10(c)のように、隣り合う2つの受光素子群14の出力合算値の差は大きくなる。換言すれば、隣り合う2つの受光素子群14の出力合算値から、エッジが検出される。他方、偽合焦状態のときには、図10(b)に示すように、1つのマイクロレンズ13の裏面には周期パターンが形成され、結果として、隣り合う2つの受光素子群14の出力合算値の差は相対的に小さくなる。つまり、各受光素子群14についてその受光出力を合算し、出力合算値を並べてエッジを検出することで、周期パターンを認識することができる。
【0084】
(変形例8)
本発明を、クイックリターンミラーを有するいわゆる一眼レフレックスカメラに適用してもよい。この場合、クイックリターンミラーの裏面にサブミラーを設け、クイックリターンミラーに入射した被写体光の一部がクイックリターンミラーを透過してサブミラーに入射するようにクイックリターンミラーを構成し、サブミラーにより反射された被写体光が焦点検出ユニット104に入射するようにすればよい。また、撮像素子102を焦点検出ユニット104のようにマイクロレンズアレイ11と受光素子アレイ12とで構成し、この受光素子アレイ12によって焦点検出と静止画の撮像の両方を行うようにしてもよい。
【0085】
(変形例9)
交換レンズ200ではなく、カメラボディ100がレンズ駆動装置206や絞り駆動装置207を備えるようにしてもよい。この場合、レンズ駆動装置206や絞り駆動装置207が有する不図示のアクチュエータは、その駆動力が不図示の駆動機構を介して交換レンズ200内のフォーカスレンズ203や絞り205に伝達されるように構成される。
【0086】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【0087】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2012年第100150号(2012年4月25日出願)
日本国特許出願2012年第158796号(2012年7月17日出願)
【符号の説明】
【0088】
1…カメラ、100…カメラボディ、101…ボディ制御装置、102…撮像素子、103…ハーフミラー、104…焦点検出ユニット、106…接眼レンズ、108…電子ビューファインダーユニット、110…モニター、200…交換レンズ、201…レンズ制御装置、202、204…レンズ、203…フォーカスレンズ、205…絞り、206…レンズ駆動装置、207…絞り駆動装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12