(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分繊処理列は、前記繊維束の幅方向に所定の間隔で並ぶ複数の刃物を、前記繊維束に間欠的に突き刺すことにより形成される、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
前記複数の刃物は、前記幅方向に所定の間隔で並ぶ複数の回転刃に、周方向に並べて配置されており、前記複数の回転刃が回転されながら前記複数の刃物が前記繊維束に突き刺される、請求項3に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
前記複数の刃物は、前記幅方向に所定の間隔で並ぶ鋸刃に、前記繊維束の搬送方向に並べて配置されており、前記複数の鋸刃が前記繊維束に接近する方向と離間する方向に往復運動されながら前記複数の刃物が前記繊維束に突き刺される、請求項3に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
前記分繊ステップの前に行われ、前記繊維束を前記幅方向に開繊する開繊ステップをさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
前記分繊部は、前記幅方向に所定の間隔で並ぶ複数の回転刃を有し、前記複数の刃物は、前記複数の回転刃に、周方向に並べて配置されており、前記複数の回転刃が回転されながら前記複数の刃物が前記繊維束に突き刺されるように構成されている、
請求項10または11に記載の繊維強化樹脂材料製造装置。
前記分繊部は、前記幅方向に所定の間隔で並ぶ複数の鋸刃を有し、前記複数の刃物は、前記複数の鋸刃に、前記繊維束の搬送方向と同一方向に並べて配置されており、前記複数の鋸刃が前記繊維束に接近する方向と離間する方向に往復運動されながら前記複数の刃物が前記繊維束に突き刺されるように構成されている、
請求項10または11に記載の繊維強化樹脂成形材料製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、裁断した繊維束のフィラメント間に樹脂を含浸させたシート状の繊維強化樹脂成形材料を製造する際に、繊維強化樹脂成形材料の品質を維持しつつ、繊維束の蛇行や繊維束内に発生するフィラメントの斜行や蛇行による影響を回避しながら、分繊した繊維束を安定した状態で裁断機まで供給することを可能とし、裁断後の繊維束が分散しやすい繊維強化樹脂成形材料の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の態様は、裁断された繊維束に樹脂が含浸された繊維強化樹脂材料の製造方法であって、前記繊維束を長手方向に沿って断続的に分繊し、前記長手方向に延びる分繊処理列を、前記繊維束の幅方向に並べて少なくとも2列形成する分繊ステップと、前記分繊ステップ後の前記繊維束を長手方向に間隔を空けて裁断する裁断ステップと、を備え、前記分繊ステップおよび前記裁断ステップが、下記(1)〜(3)のすべてを満たすように行われる。
(1)1≦c/L≦50
(2)c<a
(3)b/L<1
上記(1)〜(3)において、cは、前記分繊処理列の一つを前記幅方向に隣接する他の分繊処理列に投影したときに重複する分繊部分の長さである。Lは前記裁断ステップにおける前記間隔である。aは前記分繊処理列における分繊部分の長さである。bは前記分繊処理列における未分繊部分の長さである。
【0013】
本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法においては、前記分繊ステップおよび前記裁断ステップが、下記(4)をさらに満たすように行われてもよい。
(4)0.9≦a/(a+b)<1
【0014】
前記分繊処理列は、前記繊維束の幅方向に所定の間隔で並ぶ複数の刃物を、前記繊維束に間欠的に突き刺すことにより形成されてもよい。
このとき、前記複数の刃物は、前記幅方向に所定の間隔で並ぶ複数の回転刃に、周方向に並べて配置されており、前記複数の回転刃が回転されながら前記複数の刃物が前記繊維束に突き刺されてもよい。
あるいは、前記複数の刃物は、前記幅方向に所定の間隔で並ぶ鋸刃に、前記繊維束の搬送方向に並べて配置されており、前記複数の鋸刃が前記繊維束に接近する方向と離間する方向に往復運動されながら前記複数の刃物が前記繊維束に突き刺されてもよい。
【0015】
前記分繊ステップは、前記繊維束を複数積み重ねた状態で行われてもよい。
前記樹脂が熱硬化性樹脂であってもよい。
【0016】
本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法は、所定の方向に搬送される第1シートの上に前記樹脂を含むペーストを塗工するステップと、前記ペーストが塗工され前記第1シート上に裁断された前記繊維束を散布するステップと、前記繊維束が散布された前記第1シートに、前記ペーストが塗工された第2シートを重ね合わせた後、前記第1シートと前記第2シートとの間に挟み込まれた前記ペースト及び前記繊維束を加圧して、前記繊維束のフィラメント間に前記樹脂を含浸させるステップとをさらに備えてもよい。
【0017】
本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法は、前記分繊ステップの前に行われ、前記繊維束を前記幅方向に開繊する開繊ステップをさらに備えてもよい。
【0018】
本発明の第二の態様は、複数の刃物を有し、前記刃物を連続する繊維束に突き刺すことにより前記繊維束を複数の繊維束に分繊する分繊部と、前記分繊部で処理された前記繊維束を、前記繊維束の長手方向に間隔を空けて裁断する裁断部とを備え、前記分繊部は、前記刃物を間欠的に前記繊維束に突き刺すことによって、前記長手方向に延びる分繊処理列を、前記繊維束の幅方向に並べて少なくとも2列形成可能に構成され、前記分繊部および前記裁断部が、下記(1)〜(3)のすべてを満たすように処理を行うよう構成されている繊維強化樹脂成形材料製造装置である。
(1)1≦c/L≦50
(2)c<a
(3)b/L<1
上記(1)〜(3)において、cは、前記分繊処理列の一つを前記幅方向に隣接する他の分繊処理列に投影したときに重複する分繊部分の長さである。Lは前記裁断部における前記間隔である。aは前記分繊処理列における分繊部分の長さである。bは前記分繊処理列における未分繊部分の長さである。
【0019】
前記分繊部および前記裁断部は、下記(4)をさらに満たすように処理を行うよう構成されてもよい。
(4)0.9≦a/(a+b)<1
【0020】
前記分繊部は、前記幅方向に所定の間隔で並ぶ複数の回転刃を有し、前記複数の刃物は、前記複数の回転刃に、周方向に並べて配置されており、前記複数の回転刃が回転されながら前記複数の刃物が前記繊維束に突き刺されるように構成されてもよい。
前記分繊部は、前記幅方向に所定の間隔で並ぶ複数の鋸刃を有し、前記複数の刃物は、前記複数の鋸刃に、前記繊維束の搬送方向と同一方向に並べて配置されており、前記複数の鋸刃が前記繊維束に接近する方向と離間する方向に往復運動されながら前記複数の刃物が前記繊維束に突き刺されるように構成されてもよい。
【0021】
本発明の繊維強化樹脂材料の製造装置は、前記複数の回転刃間または前記複数の鋸刃間に配置されたスペーサ部材をさらに備え、前記分繊部は、前記スペーサ部材が前記繊維束に接するまで前記複数の刃物が前記繊維束に突き刺されるように構成されてもよい。
【0022】
本発明の繊維強化樹脂材料の製造装置は、前記繊維束の搬送方向の両側かつ前記繊維束を挟んで前記刃物と反対側に配置された一対のガイド部材をさらに備え、前記複数の刃物が突き刺された前記繊維束を前記ガイド部材が支持するように構成されてもよい。
【0023】
本発明の繊維強化樹脂材料の製造装置は、所定の方向に搬送される第1シートの上に樹脂を含むペーストを塗工する第1塗工部と、所定の方向に搬送される第2シートの上に前記ペーストを塗工する第2塗工部と、重ね合わされた前記第1シートと前記第2シートとの間の前記ペーストを加圧可能に構成された含浸部と、前記ペーストが塗工された前記第1シートを前記含浸部まで搬送する第1搬送部と、前記ペーストが塗工された前記第2シートを前記含浸部まで搬送する第2搬送部とをさらに備え、前記裁断部は、裁断された前記繊維束が前記第1シート上の前記ペーストに散布されるように配置され、前記第1搬送部および前記第2搬送部は、前記第1シートに前記繊維束が散布された後に前記第1シートと前記第2シートとが重ね合わされるように配置されてもよい。
【0024】
即ち、本発明は以下の態様を有する。
[1] 裁断された繊維束に樹脂が含浸された繊維強化樹脂材料の製造方法であって、
前記繊維束を長手方向に沿って断続的に分繊し、前記長手方向に延びる分繊処理列を、前記繊維束の幅方向に並べて少なくとも2列形成する分繊ステップと、
前記分繊ステップ後の前記繊維束を長手方向に間隔を空けて裁断する裁断ステップと、
を備え、
前記分繊ステップおよび前記裁断ステップが、下記(1)〜(3)のすべてを満たすように行われる、
繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
(1)1≦c/L≦50
(2)c<a
(3)b/L<1
(上記(1)〜(3)において、cは、前記分繊処理列の一つを前記幅方向に隣接する他の分繊処理列に投影したときに重複する分繊部分の長さである。Lは前記裁断ステップにおける前記間隔である。aは前記分繊処理列における分繊部分の長さである。bは前記分繊処理列における未分繊部分の長さである。)
[2] 前記分繊ステップおよび前記裁断ステップが、下記(4)をさらに満たすように行われる、[1]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
(4)0.9≦a/(a+b)<1
[3] 前記分繊処理列は、前記繊維束の幅方向に所定の間隔で並ぶ複数の刃物を、前記繊維束に間欠的に突き刺すことにより形成される、[1]または[2]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
[4] 前記複数の刃物は、前記幅方向に所定の間隔で並ぶ複数の回転刃に、周方向に並べて配置されており、前記複数の回転刃が回転されながら前記複数の刃物が前記繊維束に突き刺される、[3]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
[5] 前記複数の刃物は、前記幅方向に所定の間隔で並ぶ鋸刃に、前記繊維束の搬送方向に並べて配置されており、前記複数の鋸刃が前記繊維束に接近する方向と離間する方向に往復運動されながら前記複数の刃物が前記繊維束に突き刺される、[3]に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
[6] 前記分繊ステップは、前記繊維束を複数積み重ねた状態で行われる、[1]から[5]のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
[7] 前記樹脂が熱硬化性樹脂である、[1]から[6]のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
[8] 所定の方向に搬送される第1シートの上に前記樹脂を含むペーストを塗工するステップと、
前記ペーストが塗工され前記第1シート上に裁断された前記繊維束を散布するステップと、
前記繊維束が散布された前記第1シートに、前記ペーストが塗工された第2シートを重ね合わせた後、前記第1シートと前記第2シートとの間に挟み込まれた前記ペースト及び前記繊維束を加圧して、前記繊維束のフィラメント間に前記樹脂を含浸させるステップと、をさらに備える、
[1]から[7]のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
[9] 前記分繊ステップの前に行われ、前記繊維束を前記幅方向に開繊する開繊ステップをさらに備える、[1]から[8]のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
[10] 複数の刃物を有し、前記刃物を連続する繊維束に突き刺すことにより前記繊維束を複数の繊維束に分繊する分繊部と、
前記分繊部で処理された前記繊維束を、前記繊維束の長手方向に間隔を空けて裁断する裁断部と、
を備え、
前記分繊部は、前記刃物を間欠的に前記繊維束に突き刺すことによって、前記長手方向に延びる分繊処理列を、前記繊維束の幅方向に並べて少なくとも2列形成可能に構成され、
前記分繊部および前記裁断部が、下記(1)〜(3)のすべてを満たすように処理を行うよう構成されている、
繊維強化樹脂成形材料製造装置。
(1)1≦c/L≦50
(2)c<a
(3)b/L<1
(上記(1)〜(3)において、cは、前記分繊処理列の一つを前記幅方向に隣接する他の分繊処理列に投影したときに重複する分繊部分の長さである。Lは前記裁断部における前記間隔である。aは前記分繊処理列における分繊部分の長さである。bは前記分繊処理列における未分繊部分の長さである。)
[11] 前記分繊部および前記裁断部が、下記(4)をさらに満たすように処理を行うよう構成されている、[10]に記載の繊維強化樹脂材料製造装置。
(4)0.9≦a/(a+b)<1
[12] 前記分繊部は、前記幅方向に所定の間隔で並ぶ複数の回転刃を有し、前記複数の刃物は、前記複数の回転刃に、周方向に並べて配置されており、前記複数の回転刃が回転されながら前記複数の刃物が前記繊維束に突き刺されるように構成されている、
[10]または[11]に記載の繊維強化樹脂材料製造装置。
[13] 前記分繊部は、前記幅方向に所定の間隔で並ぶ複数の鋸刃を有し、前記複数の刃物は、前記複数の鋸刃に、前記繊維束の搬送方向と同一方向に並べて配置されており、前記複数の鋸刃が前記繊維束に接近する方向と離間する方向に往復運動されながら前記複数の刃物が前記繊維束に突き刺されるように構成されている、
[10]または[11]に記載の繊維強化樹脂成形材料製造装置。
[14] 前記複数の回転刃間または前記複数の鋸刃間に配置されたスペーサ部材をさらに備え、
前記分繊部は、前記スペーサ部材が前記繊維束に接するまで前記複数の刃物が前記繊維束に突き刺されるように構成されている、
[12]または[13]に記載の繊維強化樹脂成形材料製造装置。
[15] 前記繊維束の搬送方向の両側かつ前記繊維束を挟んで前記刃物と反対側に配置された一対のガイド部材をさらに備え、
前記複数の刃物が突き刺された前記繊維束を前記ガイド部材が支持するように構成されている、
[10]から[14]のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂成形材料製造装置。
[16] 所定の方向に搬送される第1シートの上に樹脂を含むペーストを塗工する第1塗工部と、
所定の方向に搬送される第2シートの上に前記ペーストを塗工する第2塗工部と、
重ね合わされた前記第1シートと前記第2シートとの間の前記ペーストを加圧可能に構成された含浸部と、
前記ペーストが塗工された前記第1シートを前記含浸部まで搬送する第1搬送部と、
前記ペーストが塗工された前記第2シートを前記含浸部まで搬送する第2搬送部と、
をさらに備え、
前記裁断部は、裁断された前記繊維束が前記第1シート上の前記ペーストに散布されるように配置され、
前記第1搬送部および前記第2搬送部は、前記第1シートに前記繊維束が散布された後に前記第1シートと前記第2シートとが重ね合わされるように配置されている、
[10]から[15]のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂成形材料製造装置。
[17] 前記c/Lの値が、1.05〜50が好ましく、1.05〜30がより好ましく、1.05〜20がさらに好ましく、1.05〜5が特に好ましく、1.05〜4が最も好ましい、[1]から[9]のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂形成材料の製造方法。
[18] 前記cの値、及び前記aの値が、好ましくは1.1c≦aを満たし、より好ましくは、1.5c≦aを満たし、さらに好ましくは、2c≦aを満たす、[1]から[9]および[17]のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂形成材料の製造方法。
[19] 前記b/Lの値が、0超1以下が好ましく、0超0.1以下がより好ましい、[1]から[9]、[17]および[18]のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂形成材料の製造方法。
[20] a/(a+b)の値が、0.92〜0.99である、[1]から[9]および[17]から[19]のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂形成材料の製造方法。
[21] 前記c/Lの値が、1.05〜50が好ましく、1.05〜30がより好ましく、1.05〜20がさらに好ましく、1.05〜5が特に好ましく、1.05〜4が最も好ましい、[10]から[16]のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂形成材料製造装置。
[22] 前記cの値、及び前記aの値が、好ましくは1.1c≦aを満たし、より好ましくは、1.5c≦aを満たし、さらに好ましくは、2c≦aを満たす、[10]から[16]および[21]のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂形成材料製造装置。
[23] 前記b/Lの値が、0超1以下が好ましく、0超0.1以下がより好ましい、[10]から[16]、[21]および[22]のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂形成材料製造装置。
[24] a/(a+b)の値が、0.92〜0.99である、[10]から[16]および[21]から[23]のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂形成材料製造装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法及び製造装置によれば、製造される繊維強化樹脂成形材料の品質を維持しつつ、繊維束の蛇行や繊維束内に発生するフィラメントの斜行や蛇行による影響を回避しながら、分繊した繊維束を安定した状態で裁断機まで供給することができ、裁断後の繊維束も分散しやすい。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について、
図1から
図6Bを参照して詳細に説明する。
以下の説明における材料、寸法等はあくまで一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0028】
[繊維強化樹脂成形材料の製造方法]
本実施形態の繊維強化樹脂成形材料(以下、単に「成形材料」と称することがある。)の製造方法(以下、単に「製造方法」と称することがある。)は、裁断した繊維束のフィラメント間に樹脂を含浸させたシート状の繊維強化樹脂成形材料の製造方法であり、SMCやスタンパブルシート等の製造に適用できるものである。
【0029】
繊維束とは、複数の強化繊維を束ねたものである。本実施形態の製造方法に用いる強化繊維としては、例えばカーボン繊維が好ましいが、ガラス繊維などのカーボン繊維以外の強化繊維が用いられてもよい。
【0030】
本実施形態の製造方法に用いる樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも用いることができる。本実施形態の製造方法には、熱硬化性樹脂のみが用いられてもよいし、熱可塑性樹脂のみが用いられてもよい。さらに、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の両方が用いられてもよい。
本実施形態の製造方法で製造される成形材料がSMCとして用いられる場合、用いる樹脂としては熱硬化性樹脂が好ましい。一方、成形材料がスタンパブルシートとして用いられる場合、用いる樹脂としては熱可塑性樹脂が好ましい。
【0031】
熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
本実施形態の製造方法は、繊維束を長手方向に沿って断続的に分繊し、長手方向に延びる分繊処理列を、繊維束の幅方向に並べて少なくとも2列形成する分繊ステップと、分繊ステップ後の繊維束を長手方向に間隔を空けて裁断する裁断ステップとを備える。 本実施形態の製造方法の特徴は、分繊ステップおよび裁断ステップが、下記(1)〜(3)のすべてを満たすように行われる点である。
(1)1≦c/L≦50
(2)c<a
(3)b/L<1
【0034】
上記(1)〜(3)において、cは、分繊処理列の一つを繊維束の幅方向に隣接する他の分繊処理列に投影したときに重複する分繊部分の長さである。Lは、裁断部における繊維束の裁断間隔であり、裁断された繊維束の長さと概ね等しい。aは、分繊処理列における分繊部分の長さである。bは、分繊処理列における未分繊部分の長さである。
a、b、c、およびLについては、後述する
図3にも示している。
a、b、c、およびLは、ノギスを用いて0.1mm単位で任意の5箇所を測定してその平均値を算出した。
【0035】
発明者らは、分繊ステップ及び裁断ステップにおいて、上述した(1)から(3)を満たすように繊維束の分繊及び裁断を行うことで、繊維束内に発生するフィラメントの斜行や蛇行による影響を回避しながら、分繊した繊維束を安定した状態で裁断機まで供給して裁断することができることを見出した。
【0036】
c/Lの値が1未満、すなわち、隣り合う分繊処理列の分繊部分の長手方向における重複部分の長さcが裁断間隔L未満であると、裁断されたそれぞれの繊維束に、分割されていない未分繊部分が少なくとも2ヶ所生じ、裁断されたそれぞれの繊維束が繊維束の幅方向に必ず繋がったものになる。そのため、例えばSMCの製造時において強化繊維を均一に分散させることが難しくなるとともに、樹脂の含浸性が低下し、製造されるSMCの品質が著しく低下しやすい。
c/Lの値は、1.05以上が好ましい。さらに、c/Lの値が50以下であれば、分繊する繊維束内のフィラメントに斜行や蛇行が存在する場合であっても、切断された繊維束への毛羽発生や、この毛羽による工程のトラブルが低減される。c/Lの値は、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、5以下がさらに好ましく、4以下が特に好ましい。
具体的には、c/Lの値は1.05〜50が好ましく、1.05〜30がより好ましく、1.05〜20がさらに好ましく、1.05〜5が特に好ましく、1.05〜4が最も好ましい。
また、aの値はcの値よりも大きい、すなわち、c<aである必要がある。aとcの値が同じ場合は、裁断されたそれぞれの繊維束の未分繊部分が幅方向に連続してしまい、例えばSMCの製造時において強化繊維を均一に分散させることが難しくなる可能性があるためである。好ましくは、1.1c≦aであり、より好ましくは、1.5c≦aであり、さらに好ましくは、2c≦aである。
【0037】
b/Lの値が1以上の場合、裁断された繊維束が繊維束の幅方向に必ず繋がったものになる。そのため、例えばSMCの製造時において強化繊維を均一に分散させることが難しくなるとともに、樹脂の含浸性が低下し、製造されるSMCの品質が著しく低下しやすい。したがって、本実施形態の製造方法では、b/Lが1未満であることを必須としている。さらに、b/Lの値が0.1以下であれば、繊維束内のフィラメントに斜行、蛇行や交絡が発生していても、分散しやすくなる。
具体的には、b/Lの値は、0超1以下が好ましく、0超0.1以下がより好ましい。
【0038】
本実施形態の製造方法においては、下記式(4)の条件を満たすように、連続する繊維束を長手方向において断続的に分繊し、長手方向に間隔を空けて裁断して裁断した繊維束を得ることが好ましい。
(4)0.9≦a/(a+b)<1
a/(a+b)の値が0.9未満の場合には、例えばSMC製造時における繊維束のペースト上への散布時に、裁断された繊維束の未分繊部分が分割されにくくなるため、強化繊維をペースト上に均一に分散させることが難しくなるとともに、強化繊維への樹脂の含浸性が低下し、製造されるSMCの品質が低下しやすい。a/(a+b)の値は、0.92以上がより好ましい。
【0039】
繊維束の処理において未分繊部分が存在しない(すなわち、b=0)場合は、繊維束が長手方向に連続的に分繊される状態に相当し、a/(a+b)の値は1となる。しかし、この場合は、未分繊部分がないため、繊維束の蛇行や繊維束内のフィラメントに斜行や蛇行が発生すると、分繊した繊維束の一部が切断されてしまい、切断された繊維束がロール等に巻き付いてしまう可能性がある。本実施形態の製造方法では、連続する繊維束の長手方向において断続的に分繊が行われるため、未分繊部分が存在しない場合はない(すなわち、b>0となる。)したがって、必ずa/(a+b)<1となる。
分繊した繊維束を安定した状態で裁断機まで供給する観点からは、a/(a+b)の値は、0.99以下であることが好ましい。
具体的には、a/(a+b)の値は、0.92〜0.99が好ましい。
【0040】
連続する繊維束を断続的に分繊する態様としては、繊維束の分繊をより安定して実施できる点から、連続する繊維束の幅方向に所定の間隔で並ぶ連なった複数の刃物を、連続する繊維束に間欠的に突き刺して、分繊された複数の繊維束の各間を部分的に未分繊の状態とすることが好ましい。
なお、連続する繊維束の幅方向に所定の間隔で並ぶ連なった複数の刃物は、2以上あればよく、数は特に限定されない。一定の繊維束の幅に、より多くの分繊に用いる刃物の数が多くなるほど、裁断された繊維束の幅が狭くなり、製造されるSMCの品質が向上する。
【0041】
分繊ステップにおいては、連続する繊維束の幅方向に所定の間隔で並ぶ、連なった複数の刃物が周方向に並んで配置された複数の回転刃の刃先を繊維束の幅方向にずらして配置し、前記回転刃を回転させながら、連続する繊維束に複数の刃物を間欠的に突き刺す態様で行われるのが好ましい。また、複数の刃物が前記繊維束の搬送方向と同一方向に並んで配置された鋸刃を用いて、前記鋸刃を上下方向に揺動させながら、前記の連続する繊維束に前記の複数の刃物を間欠的に突き刺す態様も好ましい。
【0042】
本発明において「刃物」とは、板状で、繊維束に最初に接する先端部が細くかつ薄く作られ、かつ先端部の断面が略くさび状とされた部材である。刃物の素材としては、金属やセラミック等の硬質な素材が挙げられる。
【0043】
刃物の形状は、繊維束に突き刺すことが可能であれば特に限定されない。刃物の耐久性や分繊性の観点から、刃物の繊維束に接触する部分の最大厚みは、0.3〜2mmが好ましい。刃物の繊維束に接触する部分の最大幅は、0.5〜1.5mmが好ましい。刃物の幅方向の先端部の角度(切っ先角)は、30°〜90°が好ましい。刃物の厚さ方向の刃角度(刃先角)は、10°〜45°が好ましく、20°〜30°がより好ましい。
なお、「切っ先角」とは、刃物の平面部分を正面から見たときの刃物の先端角度を意味する。また、「刃先角」とは、刃物の側面部分(厚み方向の面)を正面から見たときの刃物の先端角度を意味する。
【0044】
連続する繊維束を断続的に分繊する他の態様としては、刃物を用いない手段、例えば、繊維束に空気等の気体を所定の条件で吹き付ける態様を挙げることができる。このような態様であっても、例えば、気体を間欠的に繊維束に吹き付けることにより、上記(1)から(3)を満足することが可能である。
【0045】
連続する繊維束を断続的に分繊した後に長手方向に間隔を空けて裁断された繊維束の分割性としては、裁断された繊維束において、未分繊部分によって幅方向に分割された数と等しい数繋がった、つまり裁断前後で幅が変化していない繊維束の重量割合が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。裁断された繊維束のうち、未分繊部分によって幅方向に繋がっているものが多いと、製造される成形材料の品質が低下する傾向にある。上記(1)から(3)を満足した上で、繊維束の幅方向における繋がりをより少なく、かつ繋がった繊維束の重量割合を下げることで、製造される成形材料の品質を向上させることができる。
【0046】
本発明の製造方法は、上述した分繊ステップおよび裁断ステップを必ず備えるが、本実施形態では、その他に下記の塗工ステップ、散布ステップ、および含浸ステップを備えてもよい。後述する繊維強化樹脂成形材料製造装置で実行される本実施形態の製造方法は、以下のステップを備えている。
塗工ステップ:所定の方向に搬送される第1シートの上に樹脂を含むペーストを塗工する。
分繊ステップ:連続する繊維束に分繊処理列を形成して、複数の繊維束に分繊する。
裁断ステップ:分繊ステップにおいて分繊された繊維束を裁断機で裁断する。
散布ステップ:裁断ステップで裁断された繊維束を裁断機で裁断して、塗工ステップで塗工されたペーストの上に散布する。
含浸ステップ:裁断ステップにおいて繊維束が散布された第1シートの上に、ペーストが塗工された別の第2シートを重ね合わせた後、第1シートと第2シートとの間に挟み込まれたペースト及び繊維束を加圧して、繊維束のフィラメント間に樹脂を含浸させる。
【0047】
分繊ステップにおいては、連続する繊維束を厚み方向に重ね合わせた状態で搬送し、複数の繊維束に分繊してもよい。
また、連続する繊維束を幅方向に開繊してから、分繊ステップにおいて開繊された繊維束を複数の繊維束に分繊してもよい。すなわち、分繊ステップの前に連続する繊維束を幅方向に開繊する開繊ステップをさらに備えてもよい。
これらのようにすることで、比較的安価なラージトウを用いて、高品質な成形材料を製造することができる。
【0048】
[繊維強化樹脂成形材料の製造装置]
以下、本実施形態に係る繊維強化樹脂成形材料製造装置(以下、単に「製造装置」と称することがある。)として、
図1及び
図2に示すSMC製造装置について具体的に説明する。本実施形態のSMC製造装置は、本発明の製造装置の一例であり、本発明の製造方法を実行する製造装置である。
本実施形態のSMC製造装置は、カーボン(炭素)繊維からなる繊維束と、不飽和ポリエステル樹脂からなる熱硬化性樹脂とを含み、裁断した繊維束のフィラメント間に熱硬化性樹脂を含浸させたシート状のSMC(Sheet Molding Compound)を製造する装置である。なお、繊維束としては、カーボン繊維の他にも、ガラス繊維等の強化繊維を用いることができる。樹脂としては、熱硬化性樹脂の他にも、熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0049】
図1は、SMC製造装置1の構成を模式的に示す側面図である。
図2Aは、SMC製造
装置1が備える繊維束供給部10の一構成例を示した側面図であり、
図2Bは繊維束供給部10の一部である分繊部を搬送方向から見た正面図である。
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、各図に示すXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。
【0050】
SMC製造装置1は、
図1に示すように、繊維束供給部10と、第1シート供給部11と、第1塗工部12と、裁断部13と、第2シート供給部14と、第2塗工部15と、含浸部16とを備えている。
【0051】
繊維束供給部10は、
図2Aに拡大して示すように、連続する繊維束CFを所定の方向(以下、搬送方向という。)に搬送させながら、幅方向(Y軸方向)に開繊する開繊部と、開繊された繊維束CFを複数の繊維束CFに分繊する分繊部とを有する。
本実施形態の繊維束供給部10は、開繊部として複数の開繊バー17を、分繊部として複数の回転刃18と、複数のゴデットローラ19とをそれぞれ備えている。
【0052】
繊維束供給部10では、まず、
図1におけるX軸正方向(水平方向右側)に向けてボビンBから引き出されたラージトウの繊維束CFが幅方向に開繊される。具体的には、繊維束CFが開繊部である複数の開繊バー17を通過する間に、加熱、擦過、揺動等が各開繊バー17を介して繊維束CFに加えられることにより、繊維束CFが幅方向に拡幅されて開繊される。
【0053】
次に、分繊部である複数の回転刃18により、開繊された繊維束CFに分繊処理列が形成され、幅方向に並ぶ複数の繊維束CFに分繊される。複数の回転刃18は、回転中心が一致または略一致するように、かつ開繊された繊維束CFの幅方向(Y軸方向)に所定の間隔で並んで配置されている。また、各回転刃18には、複数の刃物18aが周方向に連なって並んで配置されている。各回転刃18の間では、複数の刃物18aは幅方向における位置をずらして配置することが好ましい。これにより、裁断後の繊維束CFを分散しやすくすることができる。
【0054】
図2Bに示すように、各回転刃18の間には、リング状のスペーサ部材18bが配置されている。スペーサ部材18bの外周面は、各刃物18aの境界(刃元)よりも僅かに上方に位置している。各刃物18aは、スペーサ部材18bが繊維束CFに接すると、それ以上深くは突き刺されないため、スペーサ部材を異なる寸法のものと交換する等により外周面と刃元との位置関係を変化させることで、繊維束CFに対する刃物18aの突き差し深さを調整できる。調整が必要ない場合は、スペーサ部材18bが取り外されてもよい。
【0055】
複数の回転刃18は、回転中心を通って延びる軸部材18cに回転自在に支持されている。これにより、繊維束CFの搬送に伴って、繊維束CFに刃物18aを突き刺しながら、複数の回転刃18を繊維束CFの搬送方向と同一方向に回転させることができる。他の例として、複数の回転刃18を軸部材18cに固定し、繊維束CFの搬送に同期させながら、駆動モータ等により軸部材18cおよび複数の回転刃18を回転駆動させる構成であってもよい。
【0056】
複数の回転刃18の搬送方向両側には、一対のガイド部材40が複数の回転刃18を挟むように配置されている。一対のガイド部材40は、繊維束CFを挟んで複数の回転刃18と反対側に配置されている。
したがって、SMC製造装置1により実行される分繊ステップにおいては、複数の回転刃18が、一対のガイド部材40が配置された側とは反対側から一対のガイド部材40間を移動する繊維束CFに接近し、複数の刃物18aが繊維束CFに突き刺さる。このとき、一対のガイド部材40は、複数の刃物18aが突き刺される繊維束CFが厚さ方向に移
動しないように支持するため、複数の刃物18aが好適に分繊される。
【0057】
各回転刃18を回転させながら、連続する繊維束CFに複数の刃物18aを間欠的に突き刺すことによって、繊維束CFが幅方向において分繊される。このとき、連続する繊維束CFにスペーサ部材18bが接する位置まで複数の刃物18aを突き刺すことで、各刃物18aの間で繊維束CFが連続的に分繊されることを防止している。これにより、分繊された複数の繊維束CFの各間は、完全に分繊された状態とはならず、部分的に未分繊の状態となる。その後、分繊された繊維束CFは、複数のゴデットローラ19で案内されながら、裁断部13に向けて供給される。
【0058】
第1シート供給部11は、第1原反ロールR1から巻き出された連続する第1シートS1を第1塗工部12に向けて供給する。SMC製造装置1は、第1シートS1を含浸部16に向けて搬送する第1搬送部20を備えている。
【0059】
第1搬送部20は、一対のプーリ21a、21bの間に無端ベルト22を掛け合わせたコンベア23を有する。コンベア23は、一対のプーリ21a、21bを同一方向に回転させることによって無端ベルト22を周回させながら、この無端ベルト22の面上において、第1シートS1を
図1におけるX軸正方向に向けて搬送する。
【0060】
第1塗工部12は、
図1におけるX軸正方向に向けて搬送される第1シートS1の上方に配置され、樹脂を含むペーストPを供給するコータ24を有する。第1塗工部12では、第1シートS1がコータ24を通過することで、第1シートS1の面上にペーストPが所定の厚みで塗工される。
【0061】
ペーストPには、上述した不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂の他に、炭酸カルシウム等の充填剤や、低収縮化剤、離型剤、硬化開始剤、増粘剤等を適宜混合したものを用いることができる。
【0062】
裁断部13は、第1塗工部12よりも搬送方向の下流側に設けられており、繊維束供給部10から供給される繊維束CFを裁断機13Aで裁断してペーストP上に散布させる。裁断機13Aは、コンベア23により搬送される第1シートS1の上方に配置されており、ガイドローラ25と、ピンチローラ26と、カッターローラ27とを有する。
【0063】
ガイドローラ25は、回転しながら繊維束供給部10から供給された繊維束CFを下方に向けて案内する。ピンチローラ26は、ガイドローラ25との間で繊維束CFを挟み込みながら、ガイドローラ25とは逆向きに回転することによって、ガイドローラ25と協働しながら、分繊された繊維束CFを引き込む。カッターローラ27は、回転しながら繊維束CFを所定の長さとなるように裁断する。裁断された繊維束CFは、ガイドローラ25とカッターローラ27との間から落下し、ペーストPが塗工された第1シートS1上に散布される。
このように、裁断部13は、裁断ステップと散布ステップとを実行する。
第1搬送部20は、裁断された繊維束CFが散布された第1シートS1を含浸部16に搬送する。
【0064】
第2シート供給部14は、第2原反ロールR2から巻き出された連続する第2シートS2を第2塗工部15に向けて供給する。SMC製造装置1は、第2シートS2を含浸部16に向けて搬送する第2搬送部28を備えている。
【0065】
第2搬送部28は、コンベア23により搬送される第1シートS1の上方に配置されており、複数のガイドローラ29を有する。第2搬送部28は、第2シート供給部14から
供給された第2シートS2を
図1におけるX軸負方向(水平方向左側)に向けて搬送した後、回転する複数のガイドローラ29によって第2のシートS2が搬送される方向を
図1におけるZ軸負方向(垂直方向下側)、さらにX軸正方向に変更する。
【0066】
第2塗工部15は、X軸負方向に向けて搬送される第2シートS2の上方に配置されており、ペーストPを供給するコータ30を有する。第2塗工部15では、第2のシートS2がコータ30を通過することで、第2シートS2の面上にペーストPが所定の厚みで塗工される。
第2搬送部28は、第2塗工部15によりペーストPが塗工された第2シートS2を含浸部16に搬送する。
【0067】
含浸部16は、裁断部13よりも搬送方向の下流側に位置しており、貼合機構31と、加圧機構32とを有する。貼合機構31は、コンベア23における下流側のプーリ21bの上方に位置し、複数の貼合ローラ33を有する。
【0068】
各貼合ローラ33は、ペーストPが塗工された第2シートS2の背面(ペーストPの無い面)に接触した状態で配置されている。また、各貼合ローラ33は、第1シートS1に対して第2シートS2が徐々に接近するように配置されている。
これにより、第1シートS1の上に第2シートS2が重ね合わされる。第1シートS1と第2シートS2とは、その間に繊維束CF及びペーストPを挟み込みながら、互いに貼合された状態で加圧機構32側へと搬送される。以下、互いに貼合された第1シートS1及び第2シートS2を貼合シートS3と総称する。
【0069】
加圧機構32は、第1搬送部20(コンベア23)の下流側に設けられている。加圧機構32は、一対のプーリ34a、34bの間に無端ベルト35aを掛け合わせた下側コンベア36Aと、一対のプーリ34c、34dの間に無端ベルト35bを掛け合わせた上側コンベア36Bとを有する。
【0070】
下側コンベア36Aと上側コンベア36Bとは、互いの無端ベルト35a、35bを突き合わせた状態で、互いに対向して配置されている。加圧機構32は、下側コンベア36Aの一対のプーリ34a、34bを同一方向に回転させることによって無端ベルト35aを周回させる。その結果、上側コンベア36Bの一対のプーリ34c、34dが同一方向かつ一対のプーリ34a、34bと逆方向に回転し、無端ベルト35bが無端ベルト35aと同じ速さで逆回りに周回される。これにより、無端ベルト35a、35bの間に挟み込まれた貼合シートS3が、
図1におけるX軸正方向に向けて搬送される。
【0071】
加圧機構32は、複数の下側ローラ37aと、複数の上側ローラ37bとを有する。各下側ローラ37aは、無端ベルト35aのうち突合せ部分(無端ベルト35bとの間に貼合シートS3を挟む領域)の背面に接触した状態で配置されている。同様に、複数の上側ローラ37bは、無端ベルト35bのうち突合せ部分(無端ベルト35aとの間に貼合シートS3を挟む領域)の背面に接触した状態で配置されている。複数の下側ローラ37aと複数の上側ローラ37bとは、貼合シートS3の搬送方向において交互に並ぶように配置されている。
【0072】
加圧機構32は、無端ベルト35a、35bの間を貼合シートS3が通過する間に、第1シートS1と第2シートS2との間に挟み込まれたペーストP及び繊維束CFを複数の下側ローラ37a及び複数の上側ローラ37bにより加圧する。このとき、ペーストPは、繊維束CFを挟んだ両側から繊維束CFのフィラメント内に含浸される。これにより、繊維束CFのフィラメント内に熱硬化性樹脂が含浸されたSMCの原反Rが得られる。
【0073】
(SMCの製造方法)
以下、本実施形態に係る繊維強化樹脂成形材料の製造方法の一例として、上述したSMC製造装置1を用いたSMCの製造手順について説明する。
【0074】
SMC製造装置1を用いてSMCを製造する際は、塗工ステップにおいて、第1原反ロールR1から長尺の第1シートS1を巻き出し、第1搬送部20により搬送しつつ、第1塗工部12により第1シートS1上に所望の樹脂を含んだペーストPを所定の厚みで塗工する。
次に、開繊ステップにおいて、複数の開繊バー17の間に所望の材質の繊維束CFを通過させ、繊維束CFを幅方向に拡幅する。
【0075】
次に、分繊ステップにおいて、複数の回転刃18を繊維束CFの幅方向に所定の間隔で配置し、かつ刃物18aを周方向にずらし、回転刃18を回転させながら、開繊された繊維束CFに複数の刃物18aを間欠的に突き刺す。これにより、繊維束CFを長手方向において断続的に分繊する複数の分繊処理列を形成する。各分繊処理列において、刃物18aが突き刺されなかった部分は、未分繊の状態で残存する。
分繊ステップにおいては、分繊された繊維束CF同士の引っ付きを防止するため、分繊時の繊維束CFの温度を60℃以下とすることが好ましく、5℃以上50℃以下とすることがより好ましい。
【0076】
ここで、分繊された繊維束CFにおける分繊位置について、
図3を参照して説明する。
図3では、開繊された繊維束CFのトウtを細線で示し、開繊された繊維束CFの分繊処理列dを太線で示し、開繊された繊維束CFの裁断機13Aで切断される切断線を破線で示している。
【0077】
分繊後の繊維束CFには、
図3に示すように、刃物18aにより分割された分繊部分aと、刃物18aにより分割されなかった未分繊部分bとが搬送方向において交互に並んでおり、いわゆるミシン目状の分繊処理列dが形成されている。
【0078】
この場合、繊維束CF内のフィラメントに斜行、蛇行や交絡が発生していても、分繊された複数の繊維束CFの間で一部が繋がっているため、幅方向に開繊した状態のまま、分繊された複数の繊維束CFを安定した状態で裁断機13A側へと搬送することが可能である。また、繊維束CF内のフィラメントが斜行や蛇行等していても、繊維束CFを損傷させない。したがって、分繊した繊維束CFの一部が切断されてしまい、切断された繊維束CFが裁断部13のローラ等に巻き付いてしまうといった事態が好適に防止される。
【0079】
以上のように、本実施形態に係るSMCの製造方法では、分繊された複数の繊維束CFの各間を部分的に未分繊の状態とすることで、繊維束CFの蛇行や繊維束CFに発生するフィラメント内の斜行、蛇行や交絡等による影響を回避しながら、分繊した繊維束CFを安定した状態で裁断部13の裁断機13Aまで供給し、裁断後の繊維束CFを分散しやすくすることができる。
また、繊維束CFとして、比較的安価なラージトウを用いることが容易であり、SMCの製造コストを下げることができる。
【0080】
裁断ステップでは、裁断部13において分繊された繊維束CFが裁断機13Aにより裁断され、散布ステップにおいて、裁断された繊維束CFが第1シートS1に塗工されたペーストPの上に散布される。
分繊ステップ及び裁断ステップは、上述した式(1)〜(3)を満たすように行われる。これにより、繊維束CFの強化繊維が均一に分散され、樹脂の含浸性が向上することで、高品質なSMCを製造することが可能になる。
【0081】
含浸ステップでは、第2シート供給部14により、第2原反ロールR2から長尺の第2シートS2を巻き出し、第2塗工部15により第2シートS2の上にペーストPを所定の厚みで塗工する。次いで、含浸部16において、貼合機構31により第1シートS1に第2シートS2を重ね合わせる。次いで、加圧機構32により、第1シートS1と第2シートS2とで挟み込まれたペーストPと繊維束を加圧し、繊維束のフィラメント間に熱硬化性樹脂を含浸させる。これにより、繊維束CFのフィラメント内に熱硬化性樹脂が好適に含浸されたSMCの原反Rが得られる。
【0082】
SMCの原反Rは、ロール状に巻き取られた後、次工程へと送られる。そして、原反Rは、所定の長さで切断されることによって、最終的にシート状のSMC(繊維強化樹脂成形材料)として出荷される。なお、第1シートS1及び第2シートS2は、SMCに対して成形加工を行う前に剥離される。
【0083】
本実施形態の製造装置は、上述したSMC製造装置1の内容に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、繊維束供給部10の分繊部において、複数の回転刃18の代わりに、
図4A及び
図4Bに示すような複数の鋸刃38を用いてもよい。なお、
図4Aは、SMC製造装置1が備える繊維束供給部の別の構成例を示した側面図であり、
図4Bはその分繊部を搬送方向から見た正面図である。
【0084】
複数の鋸刃38は、開繊された繊維束CFの幅方向(Y軸方向)に所定の間隔で並んで配置されている。また、各鋸刃38には、複数の刃物38aが繊維束CFの搬送方向と同一方向に連なって並んで配置されている。さらに、各鋸刃38の間では、複数の刃物38aの繊維束CFの幅方向における位置をずらして配置することが好ましい。これにより、裁断後の繊維束CFを分散しやすくすることができる。
【0085】
各鋸刃38の間には、スペーサ部材38bが配置されている。スペーサ部材38bの上面は、各刃物38aの境界(刃元)よりも僅かに上方に位置している。
【0086】
複数の鋸刃38を挟んだ搬送方向の両側には、一対のガイド部材40が配置されている。複数の鋸刃38は、一対のガイド部材40の間で搬送される繊維束CFに対して、一対のガイド部材40が配置された側とは反対側から複数の刃物38aを突き刺す位置と、繊維束CFから離間する位置との間で上下に往復移動(揺動)可能に配置されている。
【0087】
すなわち、鋸刃38を用いた分繊ステップでは、鋸刃38を上下方向(Z軸方向)に往復運動させながら、開繊された繊維束CFに複数の刃物38aを間欠的に突き刺すことによって、繊維束CFを幅方向において分繊する。このとき、連続する繊維束CFにスペーサ部材38bが接する位置まで複数の刃物38aが突き刺さることで、各刃物38aの間で繊維束CFが連続的に分繊されることを防止している。これにより、回転刃18を用いた場合と同様に、分繊された複数の繊維束CFの各間を部分的に未分繊の状態とすることができる。
【0088】
したがって、SMC製造装置1がこのような構成であっても、繊維束CFの蛇行や繊維束CFに発生するフィラメント内の斜行、蛇行や交絡による影響を回避しながら、分繊した繊維束CFを安定した状態で裁断機13Aまで供給することができる。また、比較的安価なラージトウの繊維束CFを用いることによって、SMCの製造コストを下げることができる。
【0089】
SMC製造装置1を用いた本実施形態の製造方法においては、回転刃18や鋸刃38を用いた分繊ステップにおいて、連続する繊維束CFを厚み方向に重ね合わせた状態で、複数の繊維束CFに分繊してもよい。
【0090】
また、刃物18a、38aは、搬送方向に連続する繊維束CFに対して間欠的に突き刺すことが可能な形状であればよく、例えば
図5Aから
図5Eに示すような刃物18a,38aの形状が採用されてもよい。さらに、刃物18a、38aは、片刃であっても、両刃であってもよい。
【0091】
また、幅方向(Y軸方向)で隣り合う複数の回転刃18又は鋸刃38の間では、それぞれの刃物18a、38aを繊維束CFに対して間欠的に突き刺すタイミングを一致させてもよいし、ずらしてもよい。
突き刺すタイミングを一致させる場合は、複数の回転刃等を、繊維束CFの幅方向において千鳥状に配列したり、隣り合う回転刃等において、刃物の形状や配置を異ならせたりすることにより、上記(2)を満足させることができる。
また、回転刃18と鋸刃38とを組み合わせて分繊部が構成されてもよい。
【0092】
また、刃物18a、38aについては、
図6Aに示す切っ先角αと、
図6Bに示す刃先角βとが、30°≦α≦90°、10°≦β≦45°(より好ましくは20°≦β≦30°)をいずれか一方、あるいは両方を満足するように設定されることが好ましい。また、刃物18a、38aの厚みについては、0.3〜2mmとすることが好ましい。
【0093】
本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造装置は、開繊部を備えなくてもよい。すなわち、開繊が別の装置で行われ、製造装置に供給される構成であってもよい。
【0094】
(実施例)
以下、本発明の製造方法および製造装置について、実施例を用いてより詳しく説明する。本発明は、以下の実施例の内容には限定されず、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0095】
(実施例1)
上述したSMC製造装置1を用いてSMCを製造した。
分繊部として、4枚の回転刃18を備えるものを用いた。それぞれの回転刃18には、6個の刃物18aが周方向に連なって並んで配置されたものを用いた。それぞれの刃物18aは、繊維束CFに接触する部分の最大厚みが1mm、繊維束CFと接触する部分の最大幅が1mm、幅方向における先端部の角度(切っ先角)が64°、厚さ方向における先端部の角度(刃先角)が30°の略三角形の形状とした。各回転刃18は、複数の刃物18aの周方向における位置(位相)が、繊維束CFの幅方向に隣り合う回転刃18と30°ずれるように取り付けた。各回転刃18の間には、スペーサ部材18bを配置し、スペーサ部材18bの幅は2.2mmとした。
【0096】
繊維束CFとして、炭素繊維束(三菱ケミカル社製、製品名:TR50S15L、繊維数:15000本)を用いた。ペーストPに用いる樹脂として、ビニルエステル樹脂を用いた。
開繊バー17では繊維束CFを幅15mmに拡幅した。分繊時の繊維束CFの搬送速度は40m/minとした。4枚の回転刃18による分繊により、開繊後の繊維束CFに、長さ56.6mmの分繊部分aと長さ0.5mmの未分繊部分bとを、繊維束CFの長手方向に交互に連続するように、かつ繊維束CFの幅方向に隣接する分繊処理列の未分繊部分を含まない分繊部分の端部間の距離cが28.1mmとなるように、繊維束CFの幅方向において3mm間隔で4列の分繊処理列を形成した。裁断機13Aによる裁断は、分繊された繊維束CFの長手方向において25.4mm間隔(L)で行った。裁断した繊維束CFは、第1シートS1上に塗工したペーストP上に散布した。繊維強化樹脂成形材料の炭素繊維含有率は58%であった。
実施例1において、c/Lは1.11、c<a、b/Lは0.02、a/(a+b)は0.99であり、上述した式(1)から(4)のすべてを満たしている。
【0097】
(実施例2)
SMC製造装置1、繊維束CF、およびペーストPは、実施例1と同様のものを用いた。
分繊部分aの長さを、実施例1の2倍の113.2mmとし、未分繊部分bの長さを0.8mmとした。また、繊維束CFの幅方向に隣接する分繊処理列の未分繊部分を含まない分繊部分の端部間の距離cを、実施例1の2倍の56.2mmとした。その他の点は、実施例1と同一の手順で行い、SMCを製造した。
実施例2において、c/Lは2.21、c<a、b/Lは0.03、a/(a+b)は0.99であり、上述した式(1)から(4)のすべてを満たしている。
【0098】
(実施例3)
SMC製造装置1、繊維束CF、およびペーストPは、実施例1と同様のものを用いた。
分繊部分aの長さを259.0mmとし、未分繊部分bの長さを1.0mmとした。また、繊維束CFの幅方向に隣接する分繊処理列の未分繊部分を含まない分繊部分の端部間の距離cを129.0mmとした。その他の点は、実施例1と同一の手順で行い、SMCの製造を行った。
実施例3において、c/Lは5.08、c<a、b/Lは0.04、a/(a+b)は0.99であり、上述した式(1)から(4)のすべてを満たしている。
【0099】
(実施例4)
SMC製造装置1、繊維束CF、およびペーストPは、実施例1と同様のものを用いた。
分繊部分aの長さを849mmとし、未分繊部分bの長さを5mmとした。また、繊維束CFの幅方向に隣接する分繊処理列の未分繊部分を含まない分繊部分の端部間の距離cを823mmとした。その他の点は、実施例1と同一の手順で行い、SMCを製造した。
実施例4において、c/Lは32.4、c<a、b/Lは0.20、a/(a+b)は0.99であり、上述した式(1)から(4)のすべてを満たしている。
【0100】
(比較例1)
実施例1と同様のSMC製造装置1を用いたが、4枚の回転刃18は、複数の刃物18aの周方向における位置がすべて一致するように取り付けた。繊維束CF、およびペーストPは、実施例1と同様のものを用いた。
分繊部分aの長さを、実施例1の半分の28.3mmとした。また、繊維束CFの幅方向に隣接する分繊処理列の未分繊部分を含まない分繊部分の端部間の距離cは、上述した回転刃18の取り付け態様の変更により28.3mmとなった。その他の点は、実施例1と同一の手順で行い、SMCを製造した。
比較例1において、c/Lは1.11、c=a、b/Lは0.02、a/(a+b)は0.98であり、上述した式(1)から(4)のうち、(2)が満たされていない。
【0101】
(比較例2)
SMC製造装置1、繊維束CF、およびペーストPは、実施例1と同様のものを用いた。
分繊部分aの長さを1584.8mmとし、未分繊部分bの長さを10mmとした。また、繊維束CFの幅方向に隣接する分繊処理列の未分繊部分を含まない分繊部分の端部間の距離cを1558.8mmとした。
比較例2において、c/Lは61.3、c<a、b/Lは0.39、a/(a+b)は0.99であり、上述した式(1)から(4)のうち、(1)が満たされていない。
【0102】
各実施例および比較例について、以下の要領で評価を行った。
(裁断後の繊維束の分割性)
裁断後の繊維束の分割性の指標として、裁断後の繊維束CFの繋がり数を用いた。
第1シートS1上に樹脂を塗工せずに裁断した繊維束CFを散布し、ピンセットを用いて取り出し、ノギスを用いて0.1mm単位で繊維束の幅と長さを計測し、電子天秤を用いて0.1mg単位で重量を測定した。サンプリング数は500個とした。裁断後の繊維束のフィラメント数を以下の式により算出し、4000以上7000未満を2つ繋がり、7000以上10000本以下を3つ繋がり、10000以上13000本未満を4つ繋がり、13000以上15000本以下を5つ繋がりとしてカウントし、繊維束全体に占める比率を算出した。
裁断後の繊維束のフィラメント数=繊維束の重量/繊維束の長さ×使用した炭素繊維のフィラメント数
(SMCを用いた成形物の機械特性)
SMCを用いた成形物の機械特性として、引張強度を評価した。
平板を加工可能な金型を用いて各例のSMCを金型に配置し、加圧型のプレス機により、10MPaで約130℃×5分間加圧して硬化させ、300×300mmの平板を得た。平板の0°方向(SMC製造装置1のX軸)と90°方向からそれぞれ250×25×2mmの試験片を6片(計12片)切出し、JIS K7073に準拠して引張強度を測定し、かつ引張強度のばらつきを算出した。
各実施例および比較例の結果を表1に示す。
【0104】
実施例1において、分繊後の繊維束CFは、その一部がロール等に巻き付いてしまうことなく、安定して裁断部13に供給された。裁断された繊維束CFには、未分繊部分により2つ繋がったものが38%存在したが、3つ以上繋がるものは存在せず、製造されたペーストP上への繊維束CFの分散性に影響を与えるレベルではなかった。製造されたSMCの品質は、繊維数の少ない炭素繊維束CF(繊維数:3000本)を用い、分繊ステップなしで得られる同サイズのチョップド炭素繊維束を使用したSMCとほぼ同等の機械特性を示した。引張強度のばらつきも8%であり、部分的な著しい強度低下はなかった。
【0105】
実施例2においても、分繊後の繊維束CFは安定して裁断部13に供給された。裁断された繊維束CFには、未分繊部分により2つ繋がったものが10%存在したが、3つ以上繋がるものは存在せず、製造されたペーストP上への繊維束CFの分散性に影響を与えるレベルではなかった。製造されたSMCの品質は、繊維数の少ない炭素繊維束CF(繊維数:3000本)を用い、分繊ステップなしで得られる同サイズのチョップド炭素繊維束を使用したSMCとほぼ同等の機械特性を示した。引張強度のばらつきも5%であり、部分的な著しい強度低下はなかった。
実施例3においては、分繊後の繊維束CFの一部のロール等への巻き付きが発生することがあり、SMCの製造を中断することがあったが、その頻度は低く、製造上の影響は少ななかった。
また、裁断された繊維束CFには、未分繊部分により2つ繋がったものが3%存在したが、3つ以上繋がるものは存在せず、製造されたペーストP上への繊維束CFの分散性に影響を与えるレベルではなかった。製造されたSMCの品質は、繊維数の少ない炭素繊維束CF(繊維数:3000本)を用い、分繊ステップなしで得られる同サイズのチョップド炭素繊維束を使用したSMCとほぼ同等の機械特性を示した。引張強度のばらつきも4%であり、部分的な著しい強度低下はなかった。
【0106】
実施例4においては、分繊後の繊維束CFの一部のロール等への巻き付きが発生することがあり、SMCの製造を中断することがあったが、その頻度は低く、製造上の影響は少ななかった。
また、裁断された繊維束CFには、未分繊部分により2つ繋がったものが1%存在したが、3つ以上繋がるものは存在せず、製造されたペーストP上への繊維束CFの分散性に影響を与えるレベルではなかった。製造されたSMCの品質は、繊維数の少ない炭素繊維束CF(繊維数:3000本)を用い、分繊ステップなしで得られる同サイズのチョップド炭素繊維束を使用したSMCとほぼ同等の機械特性を示した。引張強度のばらつきも5%であり、部分的な著しい強度低下はなかった。
【0107】
比較例1において、分繊後の繊維束CFは、その一部がロール等に巻き付いてしまうことなく、安定して裁断部13に供給されたものの、裁断された繊維束CFには、未分繊部分により5つ繋がったものが14%存在した。製造されたSMCの品質は、繊維数の少ない炭素繊維束CF(繊維数:3000本)を用い、分繊ステップなしで得られる同サイズのチョップド炭素繊維束を使用したSMCとほぼ同等の機械特性を示す部分と、機械特性が劣る部分とが存在した。引張強度のばらつきは16%と大きく、機械特性が均一な原反Rが作製できなかった。
【0108】
比較例2において、分繊後の繊維束CFは、その一部がロール等に巻き付いてしまいSMCを製造することができなかった。
【0109】
以上より、本実施形態の製造方法および製造装置により、ラージトウを分繊する工程を経ても、機械特性の良好な繊維強化樹脂成形材料を効率よく製造できることが示された。