【実施例】
【0121】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではないことはもちろんである。
【0122】
実施例及び比較例で使用する化合物の略号は以下の通りである。
【0123】
<テトラカルボン酸二無水物>
A−1:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
A−2:1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物
A−3:3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−
ナフタレンコハク酸二無水物
A−4:ピロメリット酸二無水物
A−5:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
【0124】
【化32】
【0125】
<ジアミン>
B−1:1,4−フェニレンジアミン
B−2:B−3:4,4−ジアミノジフェニルメタン
B−3:4,4‘−ジアミノジフェニルアミン
B−4:3,5−ジアミノ安息香酸
B−5:1,2−ビス(4−アミノフェノキシ)エタン
B−6:1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン
B−7:N1,N4−ビス(2−tert―ブトキシカルボニルアミノ−4−アミノフェニル)アジパミド
B−8:4−アミノ−N−(2−tert―ブトキシカルボニルアミノ−4−アミノフェニル)ベンズアミド
【0126】
【化33】
【0127】
<有機溶媒>
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
GBL:γ−ブチロラクトン
BCS:ブチルセロソルブ
【0128】
以下に、本実施例で行った評価方法について示す。
【0129】
<粘度測定>
合成例又は比較合成例において、ポリアミック酸溶液の粘度は、E型粘度計TVE−22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL、コーンロータTE−1(1°34’、R24)、温度25℃で測定した。
【0130】
<イミド化率の測定>
ポリイミドのイミド化率は次のようにして測定した。ポリイミド粉末20mgをNMRサンプル管に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d
6、0.05%TMS混合品)0.53mlを添加し、完全に溶解させた。この溶液を日本電子データム社製NMR測定器(JNM−ECA500)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。
【0131】
イミド化率は、以下の式によって算出した。なお、式(1)で表されるジアミンを用いないポリイミドのイミド化率は、下記の式中の「ポリアミック酸重合時の式(1)ジアミンの導入量」の値をゼロとして算出した。
【0132】
イミド化率(%)=
(100−ポリアミック酸重合時の式(1)ジアミンの導入量(mol%)/2)×α
式中αは、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5〜10.0ppm付近に現れるアミック酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い次式によって求めた。
【0133】
α=(1−α・x/y)
上記式において、xはアミック酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミック酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミック酸のNH基プロトン一個に対する基準プロトンの個数割合である。
【0134】
<液晶配向剤の調製>
合成例−1
A−3/B−1(70)、B−8(30)可溶性ポリイミドの合成とワニス調整
窒素導入管とメカニカルスターラーが取り付けられた200mlの四口フラスコに、ジアミン成分としてB−1を 2.27g(20.98mmol)、B−8を5.00g(8.99mmol)計り取り、NMPを64.3g加え、ジアミン成分が完全に溶解したのを確認し、氷浴中で冷却しながらA−3を8.81g(29.37mmol)加え、10分間攪拌した後、50℃に昇温し粘度が安定するまで反応させ、20質量%のポリアミック酸溶液[PAA−1]を得た。安定後の粘度は約1500mPa・sであった。尚、反応は窒素雰囲気にて行った。
【0135】
得られたポリアミック酸溶液を300mlのナス型フラスコに60.0g移し取り、NMPを140.0g加え、6.0重量%の溶液を調整した。この溶液に無水酢酸を11.41g(111.76mmol)、ピリジンを8.84g(111.76mmol)加え、室温で30分間攪拌した後、45℃に昇温し、3時間反応させた。
【0136】
反応後、この溶液を10℃以下に冷却したメタノール770g中にゆっくり注ぎ、固体を析出させた。吸引濾過により固体を回収し、500gのメタノールで2回リパルプを行った後、60℃で真空乾燥させることにより、本発明のポリイミド[SPI−1]を得た。イミド化率は84%であった。
【0137】
攪拌子を備えた50mlの三角フラスコにSPI−1を2.00g測りとり、GBLを18.0g加え50℃で24時間攪拌し溶解させ、完全に溶解しているのを確認し、GBLを13.33g加え、室温で30分攪拌することで、SPI−1が6.0質量%、GBLが94質量%nポリイミド溶液[SPI−1S]を得た。
【0138】
合成例2
A−3/B−1(70)、B−9(30) 可溶性ポリイミドの合成とワニス調整
窒素導入管とメカニカルスターラーが取り付けられた100mlの四口フラスコに、ジアミン成分としてB−1を2.95g(27.29mmol)、B−9を4.00g(11.70mmol)計り取り、NMPを73.64g加え、ジアミン成分が完全に溶解したのを確認し、氷浴中で冷却しながらA−3を11.46g(38.21mmol)加え、10分間攪拌した後、50℃に昇温し粘度が安定するまで反応させ、20質量%のポリアミック酸溶液[PAA−2]を得た。安定後の粘度は約1300mPa・sであった。尚、反応は窒素雰囲気にて行った。
【0139】
得られたポリアミック酸溶液を300mlのナス型フラスコに70.0g移し取り、NMPを163.0g加え、6.0重量%の溶液を調整した。この溶液に無水酢酸を15.12g(148.10mmol)、ピリジンを11.72g(148.10mmol)加え、室温で30分間攪拌した後、45℃に昇温し、3時間反応させた。
【0140】
反応後、この溶液を10℃以下に冷却したメタノール800g中にゆっくり注ぎ、固体を析出させた。吸引濾過により固体を回収し、500gのメタノールで2回リパルプを行った後、60℃で真空乾燥させることにより、本発明のポリイミド[SPI−2]を得た。イミド化率は81%であった。
【0141】
攪拌子を備えた50mlの三角フラスコにSPI−2を2.00g測りとり、GBLを18.0g加え、50℃で24時間攪拌し溶解させ、完全に溶解しているのを確認し、GBLを13.33g加え、室温で30分攪拌することで、SPI−2が6.0質量%、GBLが94質量%nポリイミド溶液[SPI−2S]を得た。
【0142】
合成例3
A−1、A−4(50)/B−2 ポリアミック酸の重合とワニス調整
窒素導入管とメカニカルスターラーを備えた200ml四口フラスコに、B−2を9.91g(50.00mmol)測り取り、NMPを56.04g、GBLを56.04g加え溶解させ、約10℃に冷却し、A−1を4.41g(22.50mmol)測り取り、少しずつ加え、A−4を5.45g(25.00mmol)を少しずつ加え、室温に戻し粘度が安定するまで反応させ、15質量%のポリアミック酸溶液[PAA−3]を得た。安定後の粘度は約350mPa・sであった。尚、反応は窒素雰囲気にて行った。
【0143】
攪拌子を備えた500mlの三角フラスコに上記で得られたポリアミック酸溶液を100.0g計り取り、γBLを23.33g、NMPを26.67g、BCSを50.00gを加え、室温で30分攪拌し、PAA−3が6.0質量%、γBLが59質量%、NMPが20質量%、BCSが15質量%のポリアミック酸溶液[PAA−1S]を得た。
【0144】
合成例4
A−1、A−3(20)/B−2、B−3(20)ポリアミック酸の重合とワニス調整
窒素導入管とメカニカルスターラーを備えた200ml四口フラスコに、B−2を1.98g(10.00mmol)、B−3を8.40g(40.00mmol)測り取り、NMPを152.10g加え溶解させ、約10℃に冷却し、A−1:7.35g(38.00mmol)を少しずつ加え、つづいてA−3:3.00g(10.00mmol)を少しずつ加え、室温に戻し粘度が安定するまで反応させ、15質量%のポリアミック酸溶液[PAA−4]を得た。安定後の粘度は約180mPa・sであった。尚、反応は窒素雰囲気にて行った。
【0145】
攪拌子を備えた500mlの三角フラスコに上記で得られたポリアミック酸溶液を100.0g計り取り、NMPを40g、BCSを60.00gを加え、室温で30分攪拌し、PAA−3が6.0質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%のポリアミック酸溶液[PAA−2S]を得た。
【0146】
合成例5
A−1、A−2(65)/B−6、B−8(30)可溶性ポリイミドの合成とワニス調整
窒素導入管とメカニカルスターラーが取り付けられた100mlの四口フラスコに、ジアミン成分としてB−6を6.84g(28.00mmol)、B−8を6.68g(12.00mmol)計り取り、NMPを57.60g加え、ジアミン成分が完全に溶解したのを確認し、氷浴中で冷却しながらA−2を5.15g(26.00mmol)加え、続いてA−1を2.26g(11.50mmol)加え、NMPを25.8g加え10分間攪拌した後、40℃に昇温し粘度が安定するまで反応させ、20質量%のポリアミック酸溶液[PAA−5]を得た。安定後の粘度は約1200mPa・sであった。尚、反応は窒素雰囲気にて行った。
【0147】
得られたポリアミック酸溶液を200mlのナス型フラスコに40.0g移し取り、NMPを83.0g加え、6.5重量%の溶液を調整した。この溶液に無水酢酸を3.90g(3.79mmol)、ピリジンを1.81g(2.28mmol)加え、50℃に昇温し、2時間反応させた。
【0148】
反応後、この溶液を10℃以下に冷却したメタノール450g中にゆっくり注ぎ、固体を析出させた。吸引濾過により固体を回収し、200gのメタノールで2回リパルプを行った後、60℃で真空乾燥させることにより、本発明のポリイミド[SPI−3]を得た。イミド化率は65%であった。
【0149】
攪拌子を備えた100mlの三角フラスコにSPI−3を5.3g測りとり、NMPを19.4g、GBLを10.6g加え50℃で20時間攪拌し溶解させ、完全に溶解しているのを確認し、NMP.12.4g、γBLを14.1g、BCSを20.6g加え、室温で30分攪拌することで、SPI−3が6.0質量%、NMPが39.0質量%、GBLが30.0質量%、BCSが25.0質量%のポリイミド溶液[SPI−3S]を得た。
【0150】
合成例6
A−1、A−5(45)/B−3、B−6(50)ポリアミック酸の重合とワニス調整
窒素導入管とメカニカルスターラーを備えた100ml四口フラスコに、B−3を3.98g(20.00mmol)、B−6を4.88g(20.00mmol)測り取り、NMPを32.50g、GBLを32.50g加え溶解させ、約10℃に冷却し、A−1を3.68g(18.80mmol)測り取り、少しずつ加え、NMPを13.50g、γBLを13.50g加え、2時間撹拌し、その後A−5を5.30g(18.00mmol)を少しずつ加え、NMPを19.40g、γBLを19.40g加えた後、40℃にて粘度が安定するまで反応させ、12質量%のポリアミック酸溶液[PAA−6]を得た。安定後の粘度は約270mPa・sであった。尚、反応は窒素雰囲気にて行った。
【0151】
攪拌子を備えた100mlの三角フラスコに上記で得られたポリアミック酸溶液を40.0g計り取り、γBLを23.33g、NMPを26.67g、BCSを20.00gを加え、室温で30分攪拌し、PAA−3が6.0質量%、γBLが30.0質量%、NMPが39.0質量%、BCSが25.0質量%のポリアミック酸溶液[PAA−3S]を得た。
【0152】
合成例7
A−5/B−3、B−5(20)ポリアミック酸の重合とワニス調整
窒素導入管とメカニカルスターラーを備えた200ml四口フラスコに、B−3を8.21g(41.20mmol)、B−5を15.60g(10.30mmol)測り取り、NMPを69.5g、GBLを69.5g加え溶解させ、約10℃に冷却し、A−5を13.90g(47.20mmol)測り取り、少しずつ加え、NMPを17.4g、γBLを17.4g加え、しばらく撹拌した後、40℃にて粘度が安定するまで反応させ、12質量%のポリアミック酸溶液[PAA−7]を得た。安定後の粘度は約300mPa・sであった。尚、反応は窒素雰囲気にて行った。
【0153】
攪拌子を備えた100mlの三角フラスコに上記で得られたポリアミック酸溶液を40.0g計り取り、γBLを23.33g、NMPを26.67g、BCSを20.00gを加え、室温で30分攪拌し、PAA−3が6.0質量%、NMPが39.0質量%、γBLが30.0質量%、BCSが25.0質量%のポリアミック酸溶液[PAA−4S]を得た。
【0154】
合成例8
A−3/B−6 可溶性ポリイミドの合成とワニス調整
窒素導入管とメカニカルスターラーが取り付けられた100mlの四口フラスコに、ジアミン成分としてB−6を 5.00g(20.47mmol)計り取り、NMPを44.6g加え、ジアミン成分が完全に溶解したのを確認し、氷浴中で冷却しながらA−3を6.14g(20.47mmol)加え、10分間攪拌した後、50℃に昇温し粘度が安定するまで反応させ、20質量%のポリアミック酸溶液[PAA−4]を得た。安定後の粘度は約1100mPa・sであった。尚、反応は窒素雰囲気にて行った。
【0155】
得られたポリアミック酸溶液を200mlのナス型フラスコに30.0g移し取り、NMPを60.0g加え、6.0重量%の溶液を調整した。この溶液に無水酢酸を5.60g(55.13mmol)、ピリジンを4.36g(55.13mmol)加え、室温で30分間攪拌した後、40℃に昇温し、3時間反応させた。
【0156】
反応後、この溶液を10℃以下に冷却したメタノール350g中にゆっくり注ぎ、固体を析出させた。吸引濾過により固体を回収し、200gのメタノールで2回リパルプを行った後、60℃で真空乾燥させることにより、比較対象のポリイミド[SPI−4]を得た。イミド化率は63%であった。
【0157】
攪拌子を備えた50mlの三角フラスコにSPI−4を2.00g測りとり、GBLを18.0g加え50℃で24時間攪拌し溶解させ、完全に溶解しているのを確認し、GBLを13.33g加え、室温で30分攪拌することで、SPI−4が6.0質量%、GBLが94質量%ポリイミド溶液[SPI−4S]を得た。
【0158】
合成例9
A−4/B−7 ポリアミック酸の重合とワニス調整
窒素導入管とメカニカルスターラーを備えた200ml四口フラスコに、B−7を5.00g(17.46mmol)測り取り、NMPを56.67g加え溶解させ、約10℃に冷却し、A−4を3.50g(16.06mmol)測り取り、少しずつ加え、室温に戻し粘度が安定するまで反応させ、15質量%のポリアミック酸溶液[PAA−5]を得た。安定後の粘度は約420mPa・sであった。尚、反応は窒素雰囲気にて行った。得られたPAA−の数平均分子量12,500、重量平均分子量は33800であった。
【0159】
攪拌子を備えた500mlの三角フラスコに上記で得られたポリアミック酸溶液を50.0g計り取り、γBLを11.67g、NMPを13.34g、BCSを25.00gを加え、室温で30分攪拌し、PAA−4が6.0質量%、NMPが20質量%、BCSが15質量%のポリアミック酸溶液[PAA−5S]を得た。
【0160】
実施例1
液晶配向剤−1[SPI−1S/PAA−1S 30:70(重量比)]の調整と液晶配向膜評価
撹拌子を備え付けた100ml三角フラスコに、合成例1の方法にて得たSPI−1Sを30.0g、合成例3の方法にて得たPAA−1Sを70.0g測り取り、窒素雰囲気下で20時間撹拌した。その後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過することで、本発明の液晶配向剤−1を得た。
【0161】
実施例2
液晶配向剤−2[SPI−2S/PAA−2S 30:70(重量比)]の調整と液晶配向膜評価
撹拌子を備え付けた100ml三角フラスコに、合成例2の方法にて得たSPI−2Sを30.0g、合成例4の方法にて得たPAA−2Sを70.0g測り取り、窒素雰囲気下で20時間撹拌した。その後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過することで、本発明の液晶配向剤−2を得た。
【0162】
実施例3
液晶配向剤−3[SPI−3s/PAA−3s 30:70(重量比)]の調整と液晶配向膜評価
撹拌子を備え付けた100ml三角フラスコに、合成例5の方法にて得たSPI−3Sを30.0g、合成例6の方法にて得たPAA−3Sを70.0g測り取り、窒素雰囲気下で20時間撹拌した。その後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過することで、本発明の液晶配向剤−3を得た。
【0163】
実施例4
液晶配向剤−4[SPI−3s/PAA−4s 30:70(重量比)]の調整と液晶配向膜評価
撹拌子を備え付けた100ml三角フラスコに、合成例5の方法にて得たSPI−3Sを30.0g、合成例7の方法にて得たPAA−4Sを70.0g測り取り、窒素雰囲気下で20時間撹拌した。その後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過することで、本発明の液晶配向剤−4を得た。
【0164】
比較例1
液晶配向剤−5[SPI−4s/PAA−3s 30:70(重量比)]の調整と液晶配向膜評価
撹拌子を備え付けた100ml三角フラスコに、合成例8の方法にて得たSPI−4Sを30.0g、合成例6の方法にて得たPAA−3Sを70.0g測り取り、窒素雰囲気下で20時間撹拌した。その後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過することで、比較対象となる液晶配向剤−5を得た。
【0165】
比較例2
液晶配向剤−6[PAA−5s/PAA−2s 20:80(重量比)]の調整と液晶配向膜評価
撹拌子を備え付けた100ml三角フラスコに、合成例9の方法にて得たPAA−5Sを20.0g、合成例4の方法にて得たPAA−2Sを80.0g測り取り、窒素雰囲気下で20時間撹拌した。その後、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過することで、比較対象となる液晶配向剤−6を得た。
【0166】
実施例1〜4、および、比較例1〜2で得られた液晶配向剤を用いて、下記手法に基づき、液晶配向膜の評価を実施した。
【0167】
<配向剤の膜均一性の評価>
液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、電極付き基板(横30mm×縦40mmの大きさで、厚さが1.1mmのガラス基板。電極は幅10mm×長さ40mmの矩形で、厚さ35nmのITO電極)に、スピンコート塗布にて塗布した。スピンコート後、室温23℃、湿度50%下で5分間放置し、220℃のIRオーブンで20分間焼成させ、得られた膜の均一性をDFM(ダイレクトフォース原子間力顕微鏡:日立ハイテク製)を用いて表面分析し、10μmあたりのラフネスを算出し比較を行った。ラフネスが小さいほど膜の均一性や成膜性が良好であることを意味する。
【0168】
<電圧保持率のバックライト耐性の評価>
電圧保持率のバックライト耐性は以下のようにして評価した。
【0169】
[電圧保持率測定用液晶セルの作成]
液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、電極付き基板(横30mm×縦40mmの大きさで、厚さが1.1mmのガラス基板。電極は幅10mm×長さ40mmの矩形で、厚さ35nmのITO電極)に、スピンコート塗布にて塗布した。50℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、230℃のIR式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させて液晶配向膜付き基板を得た。この液晶配向膜をレーヨン布(吉川化工製YA−20R)でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:1000rpm、移動速度:20mm/sec、押し込み長:0.4mm)した後、純水中にて1分間超音波照射をして洗浄を行い、エアブローにて水滴を除去した後、80℃で15分間乾燥して液晶配向膜付き基板を得た。
【0170】
上記の液晶配向膜付き基板を2枚用意し、その1枚の液晶配向膜面上に4μmのスペーサーを散布した後、その上からシール剤を印刷し、もう1枚の基板をラビング方向が逆方向、かつ膜面が向き合うようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、ネガ型液晶MLC−7206(メルク株式会社製)と、MLC−2041(メルク株式会社製)を注入し、注入口を封止して液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを110℃で1時間加熱し、23℃で一晩放置し、電圧保持率測定用液晶セルを得た。
【0171】
[バックライト耐性の評価]
上記の電圧保持率測定用液晶セルに60℃の温度下で1Vの電圧を60μsec印加し、100msec後の電圧を測定して、電圧がどのくらい保持できているかを電圧保持率として算出した。これを初期の電圧保持率とする。
【0172】
次いでバックライト耐性試験として、この液晶セルを、温度70℃、LED光源(1000cd)の下で72時間放置した。この液晶セルの電圧保持率を上記と同様に測定した。これを耐性試験後の電圧保持率とする。
【0173】
電圧保持率のバックライト耐性は、以上のようにして測定された電圧保持率の大小で評価した。即ち初期の電圧保持率と比較して耐性試験後の電圧保持率の変化量が少なければ、バックライト耐性は良好であることを意味する。
【0174】
[RDCの緩和特性]
上記の電圧保持率測定用液晶セルを、偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、画素電極と対向電極とを短絡して同電位にした状態で、2枚の偏光板の下からLEDバックライトを照射しておき、2枚の偏光板の上で測定するLEDバックライト透過光の輝度が最小となるように、液晶セルの角度を調節した。
【0175】
次に、この液晶セルに周波数30Hzの矩形波を印加しながら、23℃の温度下でのV−T特性(電圧−透過率特性)を測定し、相対透過率が23%となる交流電圧を算出した。この交流電圧は電圧に対する輝度の変化が大きい領域に相当するため、RDCを輝度を介して評価するのに都合がよい。
【0176】
次に、相対透過率が23%となる交流電圧で、なおかつ周波数30Hzの矩形波を印加しながら、+3.0Vの直流電圧を重畳し1時間駆動させた。その後、直流電圧を切り、再び相対透過率が23%となる交流電圧で、なおかつ周波数30Hzの矩形波のみを30分間印加し、このときに発生するフリッカー(チラつき)の回復時間を測定した。
【0177】
蓄積した電荷の緩和が速いほど、この時間が短いほどRDCの緩和特性が良好である。
【0178】
尚、フリッカー強度の算出はフォトダイオードとAC−DCコンバータを用いて輝度を直流電圧に変換し、これをオシロスコープで読み取ることで行うことができる。フリッカーが発生した場合、30Hzの矩形波に相関した交流電圧としてモニターされるため、この交流電圧が直流になる時間をRDCの緩和時間とみなすことができる。
【0179】
液晶の駆動上、ネガ型液晶であるMLC−7206では評価できないため、本測定にはMLC−2041を用いて行った。
【0180】
<液晶配向性の評価>
液晶配向性の評価は、以下のようにして評価した。
【0181】
[FFS方式用電極付き基板の準備]
FFS方式用電極付きの基板を準備した。基板は、30mm×35mmの大きさで、厚さが0.7mmのガラス基板である。基板上には第1層目として対向電極を構成するIZO電極が全面に形成されている。第1層目のIZO電極の上には第2層目として、CVD法により成膜されたSiN(窒化珪素)膜が形成されている。第2層目のSiN膜の膜厚は500nmであり、層間絶縁膜として機能する。第2層目のSiN膜の上には、第3層目としてIZO膜をパターニングして形成された櫛歯状の画素電極が配置され、第1画素および第2画素の2つの画素を形成している。各画素のサイズは、縦10mmで横約5mmである。このとき、第1層目の対向電極と第3層目の画素電極とは、第2層目のSiN膜の作用により電気的に絶縁されている。
【0182】
第3層目の画素電極は、中央部分が屈曲した「く」の字形状の電極要素を複数配列して構成された櫛歯状の形状を有する。各電極要素の短手方向の幅は3μmであり、電極要素間の間隔は6μmである。各画素を形成する画素電極が、中央部分の屈曲したくの字形状の電極要素を複数配列して構成されているため、各画素の形状は長方形状ではなく、電極要素と同様に中央部分で屈曲する、太字の「く」の字に似た形状を備える。そして、各画素は、その中央の屈曲部分を境にして上下に分割され、屈曲部分の上側の第1領域と下側の第2領域を有する。
【0183】
各画素の第1領域と第2領域とを比較すると、それらを構成する画素電極の電極要素の形成方向が異なるものとなっている。すなわち、後述する液晶配向膜のラビング方向を基準とした場合、画素の第1領域では画素電極の電極要素が+10°の角度(時計回り)をなすように形成され、画素の第2領域では画素電極の電極要素が−10°の角度(時計回り)をなすように形成されている。すなわち、各画素の第1領域と第2領域とでは、画素電極と対向電極との間の電圧印加によって誘起される液晶の、基板面内での回転動作(インプレーン・スイッチング)の方向が互いに逆方向となるように構成されている。
【0184】
<液晶配向性評価用液晶セルの作成>
液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、上記のFFS方式用電極付き基板にスピンコート塗布にて塗布した。100℃のホットプレート上で100秒間乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚60nmのポリイミド膜を得た。このポリイミド膜をレーヨン布(吉川化工製YA−20R)でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:500rpm、移動速度:30mm/sec、押し込み長:0.3mm、ラビング方向:3層目IZO櫛歯電極に対して80°傾いた方向)した後、イソプロピルアルコールと純水の3/7混合溶媒中にて1分間超音波照射をして洗浄を行い、エアブローにて水滴を除去した後、80℃で15分間乾燥して液晶配向膜付き基板を得た。
【0185】
また、対向基板として、高さ4μmの柱状スペーサーを有し、裏面にITOが形成されているガラス基板にも、上記と同様にしてポリイミド膜を形成し、上記と同様の手順で配向処理が施された液晶配向膜付き基板を得た。
【0186】
上記2枚の液晶配向膜付き基板を1組とし、基板上に液晶注入口を残した形でシール剤を印刷し、もう1枚の基板を、液晶配向膜面が向き合いラビング方向が逆平行になるようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させてセルギャップが4μmの空セルを作製した。
【0187】
この空セルに減圧注入法によって、ネガ液晶MLC−7206(メルク株式会社製)、また比較対象としてMLC−2041(メルク株式会社製)を注入したものを調整し、注入口を封止して、FFS方式の液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを110℃で30分加熱し、23℃で一晩放置し液晶配向性評価用の液晶セルを得た。
【0188】
[液晶配向性の評価]
上記の液晶配向性評価用液晶セルを、60℃の恒温環境下、周波数30Hzで相対透過率が100%となる交流電圧を168時間印加した。その後、液晶セルの画素電極と対向電極との間をショートさせた状態にし、そのまま室温に一日放置した。放置の後、液晶セルを偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、電圧無印加の状態でバックライトを点灯させておき、透過光の輝度が最も小さくなるように液晶セルの配置角度を調整した。そして、第1画素の第2領域が最も暗くなる角度から第1領域が最も暗くなる角度まで液晶セルを回転させたときの回転角度を角度△として算出した。第2画素でも同様に、第2領域と第1領域とを比較し、同様の角度△を算出した。そして、第1画素と第2画素の角度△値の平均値を液晶セルの角度△として算出し、その値の大小で液晶配向性を評価した。即ちこの角度△の値が小さければ、液晶配向性は良好である。
【0189】
【表1】
※P=MLC−2041、N=MLC−7206
【0190】
【表2】
※1 P=MLC−2041、N=MLC−7206
※2 MLC−2041を使用して測定。
※3 フリッカーが収まった後、再度フリッカーが発生。