(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複素振幅の分布を設定することは、前記基板上のターゲットパターン像に関する情報と前記照度分布に関する情報とを用いて、前記複素振幅の分布を求めることを含むことを特徴とする請求項1に記載の設定方法。
前記複素振幅の分布を設定することは、均一な照度分布に対して前記空間光変調器の複数の光学要素が射出光に付与すべき複素振幅の第1分布を求めることと、前記照度分布の逆数に関する第2分布と前記複素振幅の前記第1分布とを用いて、前記複素振幅の分布を求めることと、を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の設定方法。
前記複素振幅の分布を設定することは、前記空間光変調器の複数の光学要素が射出光に付与すべき複素振幅を光学要素毎に求めることを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の設定方法。
前記複素振幅の分布を設定することは、前記空間光変調器の複数の光学要素が射出光に付与すべき複素振幅を一群の光学要素毎に求めることを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の設定方法。
前記照度分布を求めることは、撮像素子を用いて前記投影光学系の物体面または像面における照度分布を実測することを含むことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の設定方法。
前記照度分布を求めることは、前記投影光学系の物体面または像面における照度分布をシミュレーションにより算出することを含むことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の設定方法。
前記照度分布を求めることは、前記基板に評価パターンを露光することにより前記投影光学系の像面における照度分布を実測することを含むことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の設定方法。
前記複素振幅の分布を求めることは、前記基板上のターゲットパターン像に関する情報と前記照度分布に関する情報とを用いて、前記複素振幅の分布を求めることを含むことを特徴とする請求項15に記載の作成方法。
前記複素振幅の分布を求めることは、均一な照度分布に対して前記空間光変調器の複数の光学要素が射出光に付与すべき複素振幅の第1分布を求めることと、前記照度分布の逆数に関する第2分布と前記複素振幅の前記第1分布とを用いて、前記複素振幅の分布を求めることと、を含むことを特徴とする請求項15乃至17のいずれか1項に記載の作成方法。
前記複素振幅の分布を求めることは、前記空間光変調器の複数の光学要素が射出光に付与すべき複素振幅を光学要素毎に求めることを含むことを特徴とする請求項15乃至18のいずれか1項に記載の作成方法。
前記複素振幅の分布を求めることは、前記空間光変調器の複数の光学要素が射出光に付与すべき複素振幅を一群の光学要素毎に求めることを含むことを特徴とする請求項15乃至18のいずれか1項に記載の作成方法。
前記制御部は、前記基板上のターゲットパターン像に関する情報と前記照度分布に関する情報とを用いて、前記複素振幅の分布を求めることを特徴とする請求項26に記載の露光装置。
前記制御部は、均一な照度分布に対して前記複数の光学要素が射出光に付与すべき複素振幅の第1分布を求め、前記照度分布の逆数に関する第2分布と前記複素振幅の前記第1分布とを用いて前記複素振幅の分布を設定することを特徴とする請求項26または27に記載の露光装置。
前記光学要素は、前記空間光変調器に入射する光の進行方向に沿った位置を変更するように移動する平面状の反射面を有するミラー要素を備えていることを特徴とする請求項26乃至28のいずれか1項に記載の露光装置。
前記光学要素は、少なくとも1つの軸廻りに傾斜可能な平面状の反射面を有するミラー要素を備えていることを特徴とする請求項26乃至28のいずれか1項に記載の露光装置。
前記光学要素は、少なくとも1つの軸廻りに傾斜可能であり且つ段差状の反射面を有するミラー要素を備えていることを特徴とする請求項26乃至28のいずれか1項に記載の露光装置。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1形態では、投影光学系を介した光源からの光で所定のパターンを基板に露光する際に用いられるパターン形成用の空間光変調器の設定方法であって、
前記投影光学系の物体面または像面における照度分布を求めることと、
前記照度分布に関する情報を用いて、前記空間光変調器の複数の光学要素が射出光に付与すべき複素振幅の分布を設定することと、を含むことを特徴とする設定方法を提供する。
【0007】
第2形態では、投影光学系を介した光源からの光で所定のパターンを基板に露光する露光装置で用いられるパターン形成用の空間光変調器の複数の光学要素の駆動データの作成方法であって、
前記露光装置から前記投影光学系の物体面または像面における照度分布の情報を得ることと、
前記照度分布の情報を用いて、前記空間光変調器の複数の光学要素が射出光に付与すべき複素振幅の分布を求めることと、
前記複素振幅の分布の情報を前記駆動データとして前記露光装置へ供給することと、を含むことを特徴とする作成方法を提供する。
【0008】
第3形態では、所定のパターンを基板に露光する露光装置において、
光源から供給されるパルス光により被照射面を照明する照明光学系と、
前記被照射面に沿って二次元的に配列された複数の光学要素を有する空間光変調器と、
前記空間光変調器の前記複数の光学要素を個別に制御する制御部と、
前記空間光変調器からの光で前記所定のパターンを前記基板に投影する投影光学系と、を備え、
前記制御部は、前記投影光学系の物体面または像面における照度分布に関する情報を用いて、前記複数の光学要素が射出光に付与すべき複素振幅の分布を設定することを特徴とする露光装置を提供する。
【0009】
第4形態では、投影光学系を介した光源からの光で所定のパターンを基板に露光する露光方法において、
第1形態の設定方法を用いて、前記空間光変調器の複数の光学要素が射出光に付与すべき複素振幅の分布を設定することと、
設定された前記複素振幅の分布にしたがって前記空間光変調器の複数の光学要素を制御駆動することと、を含むことを特徴とする露光方法を提供する。
【0010】
第5形態では、第3形態の露光装置の露光方法を用いて、前記所定のパターンを前記基板に露光することと、
前記所定のパターンが転写された前記基板を現像し、前記所定のパターンに対応する形状のマスク層を前記基板の表面に形成することと、
前記マスク層を介して前記基板の表面を加工することと、を含むことを特徴とするデバイス製造方法を提供する。
【0011】
第6形態では、第4形態の露光方法を用いて、前記所定のパターンを前記基板に露光することと、
前記所定のパターンが転写された前記基板を現像し、前記所定のパターンに対応する形状のマスク層を前記基板の表面に形成することと、
前記マスク層を介して前記基板の表面を加工することと、を含むことを特徴とするデバイス製造方法を提供する。
【0012】
第7形態では、投影光学系を介した光源からの光で所定のパターンを基板に露光する際に用いられるパターン形成用の空間光変調器の設定方法であって、
前記空間光変調器の複数の光学要素のうち、前記所定のパターンに達する光が通過する複数の光学要素の一部の状態を第1の状態に設定することと、
前記所定のパターンに達する光が通過する複数の光学要素の他部の状態を第1の状態とは異なる第2の状態とに設定することと、
を含み、
投影光学系の物体面または像面における照度分布を用いて前記光学要素の一部および他部の状態を設定する、設定方法を提供する。
【0013】
第8形態では、投影光学系を介した光源からの光で所定のパターンを基板に露光する際に用いられるパターン形成用の空間光変調器の複数の光学要素の駆動データの作成方法であって、
前記空間光変調器の複数の光学要素のうち、前記所定のパターンに達する光が通過する複数の光学要素の一部の状態を第1の状態に設定することと、
前記所定のパターンに達する光が通過する複数の光学要素の他部の状態を第1の状態とは異なる第2の状態とに設定することと、
を含み、
投影光学系の物体面または像面における照度分布を用いて前記光学要素の一部および他部の状態を設定する、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態にかかる露光装置EXの構成を概略的に示す図である。
図1では、その紙面において水平方向にX軸を、
図1の紙面に垂直な方向にY軸を、
図1の紙面において鉛直方向にZ軸をそれぞれ設定している。感光性基板であるウェハWの転写面(露光面)は、XY平面に平行に設定されている。実施形態にかかる露光装置は、可変パターン形成用の空間光変調器(spatial light modulator:SLM)を使用するマスクレス方式の露光装置である。
【0016】
図1を参照すると、実施形態の露光装置EXには、光源部LSから露光光(照明光)が供給される。光源部LSとして、例えば米国特許第5,838,709B1号明細書、米国特許第6,590,698B1号明細書、米国特許第6,901,090B1号明細書、米国特許第6,947,123B1号明細書、米国特許第7,098,992B2号明細書、米国特許第7,397,598B2号明細書、および米国特許第7,136,402B1号明細書、米国特許公開第2006/050748A1号公報および米国特許公開第2009/185583A1号公報等に開示されているように、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザなどの固体レーザ光源、ファイバーアンプなどを有する光増幅部、及び波長変換部などを含み、波長193nmのパルス光を出力する高調波発生装置を用いてもよい。
【0017】
光源部LSから供給された高コヒーレンスのパルス光は、ビーム送光部1および光路折曲げミラーMR1を経て、回折光学素子2に入射する。ここで、光源部LSとビーム送光部1との間の光路中に、光源部LSから供給された1つのパルス光から時間的に多重化された複数のパルス光を生成する遅延光学系を配置しても良い。この場合、光源部LSと遅延光学系との協働作用により、互いに同じ光強度を有する多数のパルス光が、一定の時間間隔にしたがって射出されるように構成しても良い。遅延光学系の具体的な構成については、例えば米国特許第6,238,063号明細書および第6,587,182号明細書の教示を参照することができる。
【0018】
ビーム送光部1は、光源部LSから入射した光束を適切な大きさおよび形状の断面を有する光束に変換しつつ回折光学素子2へ導くとともに、回折光学素子2に入射する光の位置変動および角度変動をアクティブに補正する。回折光学素子2は、基板に露光光(照明光)の波長程度のピッチを有する段差を形成することによって構成され、入射ビームを所望の角度に回折する作用を有する。すなわち、回折光学素子2は、入射光を空間的に変調して射出する空間光変調素子である。
【0019】
具体的に、円形照明用(輪帯照明用、複数極照明用など)の回折光学素子は、例えば矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、ファーフィールド(またはフラウンホーファー回折領域)に円形状(輪帯状、複数極状など)の光強度分布を形成する機能を有する。一例として、回折光学素子2は、円形照明用の回折光学素子であり、輪帯照明用の回折光学素子、複数極照明用の回折光学素子などと交換可能に設置されている。回折光学素子2を経た光は、リレー光学系3により集光された後に、マイクロフライアイレンズ(またはフライアイレンズ)4に入射する。
【0020】
リレー光学系3は、その前側焦点位置が回折光学素子3の近傍に位置し、且つその後側焦点位置がマイクロフライアイレンズ4の入射側の面に位置している。すなわち、リレー光学系3は、回折光学素子2とマイクロフライアイレンズ4の入射側の面とを光学的にフーリエ変換の関係に位置決めしている。円形照明用の回折光学素子2を経た光は、例えば照明光学系の光軸AXを中心とした円形状の光強度分布(照野)を、マイクロフライアイレンズ4の入射側の面に形成する。
【0021】
マイクロフライアイレンズは、二次元的に配列された多数の正屈折力を有する微小レンズからなる光学素子であり、平行平面板にエッチング処理を施して微小レンズ群を形成することによって構成されている。マイクロフライアイレンズでは、互いに隔絶されたレンズエレメントからなるフライアイレンズとは異なり、多数の微小レンズが互いに隔絶されることなく一体的に形成されている。しかしながら、レンズレット(レンズ要素)が縦横に配置されている点でマイクロフライアイレンズはフライアイレンズと同じ波面分割型のオプティカルインテグレータである。
【0022】
具体的に、マイクロフライアイレンズ4は、例えば矩形状の断面を有する多数のレンズレット4aを縦横に且つ稠密に配列することにより構成されている。ただし、
図1では、図示および説明の簡単のために、実際よりもはるかに少ないレンズレット4aによりマイクロフライアイレンズ4を構成した例を示している。マイクロフライアイレンズ4として、例えばシリンドリカルマイクロフライアイレンズを用いることもできる。シリンドリカルマイクロフライアイレンズの構成および作用は、例えば米国特許第6913373号明細書に開示されている。
【0023】
マイクロフライアイレンズ4に入射した光束は多数のレンズレット4aにより二次元的に分割され、光が入射したレンズレット4aの射出面の近傍にはそれぞれ1つのスポット光(小光源)が形成される。すなわち、マイクロフライアイレンズ4の後側焦点面(レンズレット4aの入射側の屈折面と射出側の屈折面との合成光学系の後側焦点位置)またはその近傍の照明瞳には、入射側の面全体に形成された光強度分布とほぼ同じ光強度分布を有する二次光源(多数の小光源からなる実質的な面光源:瞳強度分布)が形成される。
【0024】
マイクロフライアイレンズ4の直後の照明瞳に形成された二次光源からの光は、コンデンサー光学系5を介して、マスクブラインド6を照明する。コンデンサー光学系5は、その前側焦点位置がマイクロフライアイレンズ4の後側焦点面に位置し、且つその後側焦点位置がマスクブラインド6の面に位置している。すなわち、コンデンサー光学系5は、マイクロフライアイレンズ4の後側焦点面とマスクブラインド6の面とを光学的にフーリエ変換の関係に位置決めしている。その結果、マイクロフライアイレンズ4の直後の照明瞳に形成された多数の小光源からの光は、コンデンサー光学系5を介して、マスクブラインド6を重畳的に照明する。
【0025】
照明視野絞りとしてのマスクブラインド6の矩形状の開口部(光透過部)を経た光は、光路折曲げミラーMR2、結像光学系7、および光路折曲げミラーMR3を介して、可変パターン形成用の空間光変調器8の複数のミラー要素の配列面(ミラー配列面)を重畳的に照明する。すなわち、結像光学系7は、マスクブラインド6の矩形状の開口部の像を、空間光変調器8のミラー配列面に形成することになる。こうして、照明光学系(1〜7)は、光源部LSから供給されるパルス光により、空間光変調器8のミラー配列面(被照射面)上に矩形状の照明領域を形成する。
【0026】
空間光変調器8は、
図2に示すように、照明光学系(1〜7)の被照射面(投影光学系PLの物体面)に沿って二次元的に配列された複数のミラー要素8aと、複数のミラー要素8aを保持する基盤8bと、基盤8bに接続されたケーブル(不図示)を介して複数のミラー要素8aの姿勢(位置、傾きなど)を個別に制御駆動する駆動部8cとを備えている。空間光変調器8では、制御系CRからの指令に基づいて作動する駆動部8cの作用により、複数のミラー要素8aの姿勢がそれぞれ変化し、各ミラー要素8aがそれぞれ所定の向き(または位置)に設定される。
【0027】
空間光変調器8は、
図3に示すように、二次元的に配列された複数の微小なミラー要素8aを備え、入射したパルス光に対して、その入射位置に応じた空間的な変調を可変的に付与して射出する。説明および図示を簡単にするために、
図2および
図3では空間光変調器8が4×4=16個のミラー要素8aを備える構成例を示しているが、実際には16個よりもはるかに多数のミラー要素8aを備えている。
【0028】
一例によれば、空間光変調器8は、
図3に示すように、平面状の反射面を上面にした状態で1つの平面に沿って規則的に且つ二次元的に配列された多数の微小な反射素子であるミラー要素8aを含む可動マルチミラーである。各ミラー要素8aは可動であり、その反射面の傾き、すなわち反射面の傾斜角および傾斜方向は、制御系CRからの制御信号に基づいて作動する駆動部8cの作用により独立に制御される。各ミラー要素8aは、その反射面に平行な二方向であって互いに直交する二方向(X方向,Y方向)を回転軸として、所望の回転角度だけ連続的(または離散的)に回転することができる。すなわち、各ミラー要素8aの反射面の傾斜を二次元的に制御することが可能である。
【0029】
図3には外形が正方形状のミラー要素8aを示しているが、ミラー要素8aの外形形状は正方形に限定されない。ただし、光利用効率の観点から、ミラー要素8aの隙間が少なくなるように配列可能な形状(最密充填可能な形状)とすることができる。また、光利用効率の観点から、隣り合う2つのミラー要素8aの間隔を必要最小限に抑えることができる。
【0030】
実施形態では、可変パターン形成用の空間光変調器8として、二次元的に配列されて平面状の反射面を有する複数のミラー要素の向きを連続的(または離散的)にそれぞれ変化させる空間光変調器を用いることができる。この場合、複数のミラー要素は、少なくとも1つの軸廻りに傾斜可能な平面状の反射面をそれぞれ有する。このようなチルトミラー型の空間光変調器として、たとえば米国特許第6,522,454号明細書および第7,405,862号明細書に開示される空間光変調器を用いることができる。
【0031】
また、可変パターン形成用の空間光変調器8として、たとえば二次元的に配列されて平面状の反射面を有する複数のミラー要素の反射面の高さ(位置)を個別に制御可能な空間光変調器を用いることもできる。この場合、複数のミラー要素は、空間光変調器に入射する光の進行方向に沿った位置(投影光学系の光軸方向の位置)を変更するように移動する平面状の反射面をそれぞれ有する。このようなピストン型の空間光変調器として、例えば米国特許第5,312,513号および第7,206,117号明細書並びに米国特許公開第2013/0278912号明細書に開示される空間光変調器を用いることができる。
【0032】
また、可変パターン形成用の空間光変調器8として、二次元的に配列されて段差状の反射面を有する複数のミラー要素の向きを連続的または離散的にそれぞれ変化させる空間光変調器を用いることもできる。この場合、複数のミラー要素は、少なくとも1つの軸廻りに傾斜可能であり且つ段差状の反射面をそれぞれ有する。このような位相段差チルトミラー型の空間光変調器として、たとえば米国特許第7,110,159号明細書に開示される空間光変調器を用いることができる。また、可変パターン形成用の空間光変調器として、二次元的に配列されて個別に制御される複数の透過光学要素を備えた透過型の空間光変調器を用いることもできる。
【0033】
空間光変調器8では、制御系CRからの制御信号(複数のミラー要素8aの駆動データ)にしたがって、複数のミラー要素8aの姿勢がそれぞれ変化し、複数のミラー要素8aがそれぞれ所定の向き(または位置)に設定される。投影光学系PLは、照明光学系(1〜7)により照明された空間光変調器8からの反射光により、フォトレジストが塗布されたウェハ(感光性基板)Wの単位露光領域に、複数のミラー要素8aが形成したミラーパターン(複数のミラー要素8aの傾きパターン、凹凸パターンなど)に対応した所定のパターン像を投影する。
【0034】
ウェハWは、ウェハステージWS上においてXY平面とほぼ平行に保持されている。ウェハステージWSには、X方向、Y方向、Z方向、X軸廻りの回転方向、Y軸廻りの回転方向およびZ軸廻りの回転方向に、ウェハステージWS(ひいてはウェハW)を移動させる機構が組み込まれている。ステップ・アンド・リピート方式では、ウェハW上に縦横に設定された複数の単位露光領域のうちの1つの単位露光領域に、空間光変調器8のミラーパターンに対応した所定のパターン、例えばデバイスパターンを一括的に露光する。その後、制御系CRが、ウェハステージWSをXY平面に沿ってステップ移動させることにより、ウェハWの別の単位露光領域を投影光学系PLに対して位置決めする。こうして、空間光変調器8のミラーパターンに対応したデバイスパターンをウェハWの単位露光領域に一括露光する動作を繰り返す。
【0035】
ステップ・アンド・スキャン方式では、制御系CRは、投影光学系PLの投影倍率に応じて、空間光変調器8のミラーパターンおよびウェハステージWSを例えばX方向に移動させつつ、空間光変調器8のミラーパターンに対応したデバイスパターンをウェハWの1つの単位露光領域に走査露光する。言い換えると、照明光学系(1〜7)で空間光変調器8を照明し、制御系CRの制御によって空間光変調器8の複数のミラー要素8aによるミラーパターン(複数のミラー要素8aの傾きパターン、凹凸パターンなど)を変えながら、ウェハWをX方向に走査することによって、ウェハWの表面に空間光変調器8で生成されるパターンの像が露光される。このとき、制御系CRは、空間光変調器8の複数のミラー要素8aで形成されるミラーパターンを、ウェハWの移動と同期して移動させるように、空間光変調器8を制御している。なお、空間光変調器8の複数のミラー要素8aで形成されるミラーパターンの移動に同期してウェハWを移動させてもよい。
【0036】
その後、制御系CRは、ウェハステージWSをXY平面に沿ってステップ移動させることにより、ウェハWの別の単位露光領域を投影光学系PLに対して位置決めする。こうして、空間光変調器8のミラーパターンに対応したデバイスパターンをウェハWの単位露光領域に走査露光する動作を繰り返す。
【0037】
実施形態の露光装置は、例えばCCDセンサ、CMOSセンサのようなイメージセンサ(撮像素子)を用いて投影光学系PLの物体面(空間光変調器8のミラー配列面:照明光学系(1〜7)の被照射面)における照度分布を測定する分布測定部9と、空間光変調器8を制御し且つ露光装置の動作を統括的に制御する制御系CRとを備えている。分布測定部9による照度分布の測定結果は、制御系CRに供給される。
【0038】
本実施形態では、マイクロフライアイレンズ4により形成される二次光源を光源として、照明光学系(1〜7)の被照射面に配置される空間光変調器8のミラー配列面(ひいてはウェハWの露光面)をケーラー照明する。マイクロフライアイレンズ4による波面分割数が比較的大きい場合、マイクロフライアイレンズ4の入射側の面に形成される大局的な光強度分布と、マイクロフライアイレンズ4の直後の照明瞳に形成される二次光源全体の大局的な光強度分布(瞳強度分布)とが高い相関を示す。
【0039】
本実施形態の露光装置では、制御系CRからの指令にしたがって空間光変調器8が可変的に形成するミラーパターンに対応するデバイスパターンを、投影光学系PLを介して、ウェハWに一括露光または走査露光(スキャン露光)する。二次元的に配列されて個別に制御される複数のミラー要素(光学要素)を有する空間光変調器が可変的に形成するミラーパターンに対応する所定のパターンを、投影光学系を介して基板に露光するマスクレス方式の露光装置の詳細については、米国特許第8,792,081B2号明細書などを参照することができる。
【0040】
以下、数値例にしたがって、可変パターン形成用の空間光変調器8の設定方法、ひいては複数のミラー要素8aの駆動データの作成方法について説明する。各数値例では、液浸露光装置を想定し、投影光学系PLの像側開口数NAを1.35としている。液浸露光装置では、投影光学系PLと感光性基板であるウェハWとの間の光路中が、液体(典型的には水)で満たされている。この場合、例えば米国特許出願公開第2007/242247号明細書に開示されているように、投影光学系PLの先端の光学部材とウェハWとの間に照明光ILを透過する液体(例えば純水)を供給して回収する局所液浸装置が設けられる。
【0041】
以下の数値例では、ミラー要素8aの反射面のサイズをウェハ換算(すなわち、ミラー要素8aの反射面のサイズに投影光学系PLの縮小倍率を乗じた値)で20nm×20nmとし、ウェハW上のターゲットパターン像を120nm×360nmとしている。
【0042】
図4を参照すると、ウェハW上において1つのミラー要素8aに対応する20nm×20nmの領域がX方向に並んだ列が24列でY方向に並んだ列が24列のグリッド状に示され、ターゲットパターン像はX方向に並んだ列が6列でY方向に並んだ列が18列のX方向に細長い矩形状の領域として示されている。ウェハW上の理想的な照度分布(露光量分布)を示す
図4では、光強度の最大値が1に規格化され、ターゲットパターン像の内側の各グリッドに1が表示され、ターゲットパターン像の外側の各グリッドに0が表示されている。ターゲットパターン像を矩形状の領域として参照符号を付すことなく示す点は、ウェハW上の照度分布を示す
図8、
図10、
図12、
図14および
図18においても同様である。
【0043】
各数値例では、空間光変調器8のミラー配列面における不均一な照度分布として、
図5に示すように、X方向に沿って線形的に変化する一次傾斜分布を想定している。
図5では光強度の最大値が1に規格化され、各グリッドに表示された数値が0.15と1との間でX方向に沿って線形的に変化している。光強度の最大値を1に規格化する点は、空間光変調器8のミラー配列面における均一な照度分布を示す
図6においても同様である。
【0044】
第1数値例では、可変パターン形成用の空間光変調器8としてピストン型の空間光変調器を想定しているので、複数のミラー要素8aは空間光変調器8に入射する光の進行方向に沿った位置を変更するように移動する平面状の反射面をそれぞれ有する。この場合、複数のミラー要素8aの反射面は2つの高さ位置の間を移動するため、複数のミラー要素8aが反射光に付与可能な複素振幅は−1または+1の二値化された値である。
【0045】
第1数値例では、
図5に示す不均一な照度分布および
図6に示す均一な照度分布に関する情報と
図4に示すウェハW上のターゲットパターン像に関する情報とを用いて、所望のターゲットパターンを露光するのに必要な所要の照度分布がウェハW上で得られるように、ピストン型の空間光変調器8の複数のミラー要素8aが射出光に付与すべき複素振幅の分布を求めた。
【0046】
第1数値例において複素振幅の分布を求める際に、Rosenbluth他による「Optimum Mask and Source Patterns to Print A Given Shape」,Journal of Microlithography, Microfabrication, Microsystems 1(1),pp.13-30,(2002)の文献に開示された手法を用いた。この点は、第2数値例においても同様である。
【0047】
具体的には、当該論文の式(9)がピストン型の空間光変調器8の複数のミラー要素8aによって作られる回折光の分布に対応している。そして、目標とする回折光の分布を得るために必要なミラー要素8aからの光の複素振幅分布を式(10)を用いて算出する。すなわちウェハW上のターゲットパターン像を得るために必要な回折光の分布を求め、この回折光の分布を得るためのミラー要素8aからの光の複素振幅分布を式(10)を用いて算出する。このとき、空間光変調器8の複数のミラー要素8aの各反射面での照度を各ミラー要素8aの反射率に換算し、式(10)における関数bg’に換算された反射率の平方根を掛けた状態で式(10)を解くことにより、空間光変調器8の複数のミラー要素8aの各々が射出光に付与すべき複素振幅の分布を求めることができる。
【0048】
図7は、第1数値例において
図5の不均一な照度分布に適した複素振幅の分布を示している。
図7では、射出光に+1の複素振幅を付与するミラー要素8aに対応するグリッドを白塗りで示し、射出光に−1の複素振幅を付与するミラー要素8aに対応するグリッドを黒塗りで示している。この点は、複数のミラー要素8aが射出光に付与すべき複素振幅の分布を示す
図9においても同様である。
【0049】
図8は、
図5の不均一な照度分布および
図7の複素振幅の分布に応じてウェハW上で得られる照度分布を示している。同様に、
図9は第1数値例において
図6の均一な照度分布に適した複素振幅の分布を示し、
図10は
図6の均一な照度分布および
図9の複素振幅の分布に応じてウェハW上で得られる照度分布を示している。
図7を参照すると、照度分布のX方向に関する不均一性に起因して、複素振幅の分布のX方向に関する対称性が崩れているのがわかる。特に、入射光の強度が高い+X方向側(
図7中右側)では、逆位相を多く入れて光強度を弱めている。
【0050】
第2数値例では、可変パターン形成用の空間光変調器8としてチルトミラー型の空間光変調器を想定しているので、複数のミラー要素8aは少なくとも1つの軸廻りに傾斜可能な平面状の反射面をそれぞれ有する。この場合、複数のミラー要素8aが反射光に付与可能な複素振幅は−0.2〜+1の間の値である。第2数値例では、
図5に示す不均一な照度分布および
図6に示す均一な照度分布に関する情報と
図4に示すウェハW上のターゲットパターン像に関する情報とを用いて、所望のターゲットパターンを露光するのに必要な所要の照度分布がウェハW上で得られるように、チルトミラー型の空間光変調器8の複数のミラー要素8aが射出光に付与すべき複素振幅の分布を求めた。
【0051】
図11は、第2数値例において
図5の不均一な照度分布に適した複素振幅の分布を示している。
図11では、射出光に+1の複素振幅を付与するミラー要素8aに対応するグリッドを白塗りで示し、射出光に−0.2の複素振幅を付与するミラー要素8aに対応するグリッドを黒塗りで示し、射出光に−0.2および+1以外の複素振幅を付与するミラー要素8aに対応するグリッドに複素振幅の数値を示している。この点は、複数のミラー要素8aが射出光に付与すべき複素振幅の分布を示す
図13および
図17においても同様である。
【0052】
図12は、
図5の不均一な照度分布および
図11の複素振幅の分布に応じてウェハW上で得られる照度分布を示している。同様に、
図13は第2数値例において
図6の均一な照度分布に適した複素振幅の分布を示し、
図14は
図6の均一な照度分布および
図13の複素振幅の分布に応じてウェハW上で得られる照度分布を示している。
図11を参照すると、照度分布のX方向に関する不均一性に起因して、複素振幅の分布のX方向に関する対称性が崩れているのがわかる。
【0053】
図15は、
図11に示す複素振幅の分布を
図13に示す複素振幅の分布で割った分布を示している。すなわち、
図15の各グリッドに示す数値は、
図11の各グリッドに示す数値を
図13の対応するグリッドに示す数値で割った値である。
図16は、
図5の不均一な照度分布の逆数に関する分布を示している。すなわち、
図16の各グリッドに示す数値は、
図5の対応するグリッドに示す数値の逆数の平方根として得られる値である。
図16では、最大値を1に規格化している。
【0054】
原理的には、
図15に示す分布と
図16に示す分布とは一致しても良いはずであるが、実際には一致していない。これは、照度分布に適した複素振幅の分布を求める際に、空間光変調器8からの反射光の全光量を最大化しているからである。つまり、チルトミラー型の空間光変調器を用いる場合、不均一な照度分布に適した複素振幅の分布は、必ずしも不均一な照度分布の逆数に関する分布と均一な照度分布に適した複素振幅の分布とをかけたものでなくても良い場合がある。
【0055】
図17は、
図13の均一な照度分布に適した複素振幅の分布と
図16の不均一な照度分布の逆数に関する分布とをかけて得られる複素振幅の分布を示している。すなわち、
図17の各グリッドに示す数値は、
図13の各グリッドに示す数値と
図16の対応するグリッドに示す数値とをかけて得られる値である。
図18は、
図5の不均一な照度分布および
図17の複素振幅の分布に応じてウェハW上で得られる照度分布を示している。
【0056】
図18の照度分布は、
図6の均一な照度分布および
図13の複素振幅の分布に応じてウェハW上で得られる
図14の照度分布とほぼ一致している。このことは、均一な照度分布に対してチルトミラー型の空間光変調器の複数のミラー要素が射出光に付与すべき複素振幅の第1分布(
図13の分布に対応)を求めておけば、不均一な照度分布の逆数に関する第2分布(
図16の分布に対応)と複素振幅の第1分布とを用いて、不均一な照度分布に適した複素振幅の分布(
図17の分布に対応)を求めることができることを意味している。
【0057】
換言すれば、チルトミラー型の空間光変調器8を用いる場合、均一な照度分布に適した複素振幅の分布を付与するように複数のミラー要素8aの向き(角度)をそれぞれ設定しておき、実際に空間光変調器8のミラー配列面に照射される不均一な照度分布に応じて複数のミラー要素8aの角度をそれぞれ追加調整することができる。
【0058】
数値例を省略したが、可変パターン形成用の空間光変調器8として、位相段差チルトミラー型の空間光変調器を使用することもできる。この場合、複数のミラー要素8aは少なくとも1つの軸廻りに傾斜可能な段差状の反射面をそれぞれ有し、複数のミラー要素8aが反射光に付与可能な複素振幅は−1〜+1の間の値である。位相段差チルトミラー型の空間光変調器を用いる場合は、チルトミラー型の空間光変調器を用いる場合と同様に、不均一な照度分布に応じたミラー要素の追加角度調整が可能である。
【0059】
各数値例では、複素振幅の分布を示す図における1つのグリッドが、空間光変調器8の1つのミラー要素8aに対応している。しかしながら、複素振幅の分布を示す図における1つのグリッドが必ずしも1つのミラー要素8aに対応している必要はなく、1つのグリッドが一群の複数のミラー要素8aに対応していても良い。換言すれば、空間光変調器8の複数のミラー要素8aが射出光に付与すべき複素振幅を、ミラー要素8a毎に求めても良いし、一群のミラー要素8a毎に求めても良い。ここで、空間光変調器8の複数のミラー要素8aが射出光に付与すべき複素振幅を一群のミラー要素8a毎に求める場合、空間光変調器8の複数のミラー要素8aにおける一群のミラー要素8aが位置する領域での平均的な照度を、一群のミラー要素8a全体の反射率に換算すれば良い。
【0060】
上述の数値例から、空間光変調器8の設定方法、或いは空間光変調器8の複数のミラー要素8aの駆動データの生成方法を、以下の通り、記述できる。
空間光変調器8の複数のミラー要素8aのうち、ターゲットパターンに達する光が通過する複数のミラー要素8aの一部の状態を第1の状態に設定することと、ターゲットパターンに達する光が通過する複数のミラー要素8aの他部の状態を第1の状態とは異なる第2の状態とに設定することと、含み、投影光学系PLの物体面または像面における照度分布を用いて複数のミラー要素8aの一部および他部の状態を設定する方法。
【0061】
本実施形態にかかる露光装置では、分布測定部9を用いて、照明光学系(1〜7)が空間光変調器8のミラー配列面に形成する照度分布を測定する。分布測定部9による照度分布の測定結果は、制御系CRに供給される。制御系CRは、分布測定部9から供給された照度分布の情報を用いて、空間光変調器8の複数のミラー要素8aが射出光に付与すべき複素振幅の分布を求める。
【0062】
具体的には、分布測定部9が測定した不均一な照度分布の情報と、ウェハW上のターゲットパターン像に関する情報とを用いて、空間光変調器8の複数のミラー要素8aが付与すべき複素振幅の分布を求める。ここで、ターゲットパターン像は、必ずしもウェハWに形成すべき設計上のパターン像と一致している必要はなく、不均一な照度分布に応じて設計上のパターン像を変形した形状であっても良い。
【0063】
制御系CRは、複素振幅の分布の情報を用いて空間光変調器8の複数のミラー要素8aの駆動データを作成し、駆動データにしたがって複数のミラー要素8aの姿勢を個別に制御する。こうして、照明光学系(1〜7)が空間光変調器8のミラー配列面に形成する照度分布が不均一であっても、すなわち投影光学系PLの物体面における照度分布が不均一であっても、不均一な照度分布に応じて空間光変調器8の複数のミラー要素8aが付与すべき複素振幅の分布を設定することにより、所定のパターンをウェハWに正確に露光することができる。
【0064】
上述の実施形態では、マイクロフライアイレンズ4の入射側の面に所要形状の照野を固定的に形成する回折光学素子2を用いている。しかしながら、回折光学素子2に代えて、チルトミラー型の空間光変調器、ピストン型の空間光変調器、位相段差チルトミラー型の空間光変調器、または透過型の空間光変調器を用いて、マイクロフライアイレンズ4の入射側の面に所要形状の照野を可変的に形成しても良い。
【0065】
上述の実施形態では、分布測定部9を用いて、空間光変調器8のミラー配列面すなわち投影光学系PLの物体面における照度分布を測定している。しかしながら、これに限定されることなく、撮像素子を用いて投影光学系の像面における照度分布を実測しても良いし、投影光学系の物体面または像面における照度分布をシミュレーションにより算出しても良い。
【0066】
また、基板(ウェハW)に評価パターンを露光することにより、投影光学系の像面における照度分布を実測しても良い。照度分布の測定は、マイクロフライアイレンズ4の直後の照明瞳に形成される瞳強度分布が変更される度に、すなわち照明条件毎に行われる。測定される照度分布は、1つのパルス光により形成される照度分布であっても良いし、複数のパルス光により形成される積算照度分布であっても良い。
【0067】
上述の実施形態では、露光装置が内蔵する制御系CRが、同じく露光装置が内蔵する分布測定部9から供給された照度分布の情報を用いて、空間光変調器8の複数のミラー要素8aが射出光に付与すべき複素振幅の分布を求めている。しかしながら、これに限定されることなく、例えば
図19および
図20の変形例に示すように、露光装置の外部にある情報処理部が、露光装置から得た投影光学系の物体面または像面における照度分布の情報を用いて、空間光変調器の複数の光学要素が射出光に付与すべき複素振幅の分布を求め、求めた複素振幅の分布の情報をパターン形成用の空間光変調器の複数の光学要素の駆動データとして露光装置へ供給しても良い。
【0068】
図19は、変形例にかかるリソグラフィシステムLISを示す。
図19において、リソグラフィシステムLISは、複数(
図19では3台)の露光装置EX1,EX2,EX3と、これらの露光装置EX1〜EX3で使用される空間光変調器8の複数のミラー要素8aの駆動データを生成する情報処理部としてのコンピュータ(サーバ)SERとを備えている。ここで、複数の露光装置EX1〜EX3は、それぞれが上述の実施形態に記載した露光装置EXと同じものである。さらに、リソグラフィシステムLISは、形成されたパターンの検査を行う重ね合わせ誤差計測装置(不図示)、形成されたパターンのフォーカス誤差(デフォーカス量)を計測するフォーカス誤差計測装置(不図示)、及び形成されたパターンの線幅等を計測する走査型電子顕微鏡(SEM)(不図示)等の複数の検査装置と、露光装置EX1〜EX3、コンピュータSER及び検査装置間で情報の送受信を行うために使用される例えばLAN(Local Area Network)などの通信回線CLとを備えている。
【0069】
また、露光装置EX1〜EX3は、それぞれコンピュータSERから通信回線CLを介して供給される、複数のミラー要素8aの駆動データや露光装置のパラメータ情報の受信及び各種制御情報の送受信を行う図示無き通信ユニットを備えている。ここで、露光装置EX1〜EX3、コンピュータSER、及び通信回線CLを露光システムとみなしても良い。また、コンピュータSERは通信回線CLを介して情報の送受信を行う図示無き入出力ポート(以下、IOポートという)を備え、重ね合わせ誤差計測装置(不図示)は、通信回線CLを介して情報の送受信を行うIOポートを備えている。
【0070】
さらに、リソグラフィシステムLISは、通信回線CLよりも広い範囲で情報の送受信を行う例えばWAN(Wide Area Network)などの通信回線(不図示)と、この通信回線に接続されたコータ・デベロッパ(不図示)と、この通信回線を介して、露光装置EX1〜EX3、コンピュータSER、重ね合わせ誤差計測装置、及びコータ・デベロッパの間で工程管理情報等の送受信等を行うホストコンピュータ(不図示)とを備えている。一例として、リソグラフィシステムLISは、半導体デバイス等を製造するための製造工場に設置され、複数の露光装置EX1〜EX3はその製造工場内の複数の製造ラインに沿って配置されている。
【0071】
さて、
図19に示すコンピュータ(サーバ)SERの動作の一例につき、
図20も参照して説明する。コンピュータ(サーバ)SERは、通信回線CLを介して不図示のレイアウトデータベースからレイアウト設計、すなわちリソグラフィプロセスにおける各レイヤで形成すべきパターンの目標となるパターンの情報を受信する(ステップS30)。次に、コンピュータ(サーバ)SERは、通信回線CLを介して、各露光装置EX1〜EX3から、それぞれの露光装置における照度分布の情報を受信する(ステップS32)。
【0072】
そして、コンピュータ(サーバ)SERは、上述の実施形態と同様に、空間光変調器8の複数のミラー要素8aの各々が射出光に付与すべき複素振幅の分布を求める(ステップS34)。その後、コンピュータ(サーバ)SERは、通信回線CLを介して、各露光装置EX1〜EX3に、各空間光変調器8の駆動データを出力する(ステップS36)。
【0073】
なお、上述の実施形態では、エキシマレーザ光源が供給するレーザ光の横モード数よりも少ない横モード数の光である高コヒーレンス光を供給する高調波発生装置を光源LSとして用いたが、光源部LSとして、例えばArFエキシマレーザ光源(波長:193nm)やKrFエキシマレーザ光源(波長:248nm)、或いは紫外波長の光を発するLEDやLDレーザ等の固体発光素子、i線等を発光する水銀ランプ等を含む他の適当な光源を用いることもできる。
【0074】
上述の実施形態の露光装置は、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行っても良い。
【0075】
次に、上述の実施形態にかかる露光装置を用いたデバイス製造方法について説明する。
図21は、半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
図21に示すように、半導体デバイスの製造工程では、半導体デバイスの基板となるウェハWに金属膜を蒸着し(ステップS40)、この蒸着した金属膜上に感光性材料であるフォトレジストを塗布する(ステップS42)。つづいて、上述の実施形態の投影露光装置を用い、可変パターン形成用の空間光変調器のミラーパターンに応じた所定のパターンをウェハW上の各ショット領域に転写し(ステップS44:露光工程)、この転写が終了したウェハWの現像、つまりパターンが転写されたフォトレジストの現像を行う(ステップS46:現像工程)。
【0076】
その後、ステップS46によってウェハWの表面に生成されたレジストパターンをマスクとし、ウェハWの表面に対してエッチング等の加工を行う(ステップS48:加工工程)。ここで、レジストパターンとは、上述の実施形態の投影露光装置によって転写されたパターンに対応する形状の凹凸が生成されたフォトレジスト層であって、その凹部がフォトレジスト層を貫通しているものである。ステップS48では、このレジストパターンを介してウェハWの表面の加工を行う。ステップS48で行われる加工には、例えばウェハWの表面のエッチングまたは金属膜等の成膜の少なくとも一方が含まれる。なお、ステップS44では、上述の実施形態の投影露光装置は、フォトレジストが塗布されたウェハWを感光性基板としてパターンの転写を行う。
【0077】
図22は、液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
図22に示すように、液晶デバイスの製造工程では、パターン形成工程(ステップS50)、カラーフィルタ形成工程(ステップS52)、セル組立工程(ステップS54)およびモジュール組立工程(ステップS56)を順次行う。ステップS50のパターン形成工程では、プレートPとしてフォトレジストが塗布されたガラス基板上に、上述の実施形態の投影露光装置を用いて回路パターンおよび電極パターン等の所定のパターンを形成する。このパターン形成工程には、上述の実施形態の投影露光装置を用いてフォトレジスト層にパターンを転写する露光工程と、パターンが転写されたプレートPの現像、つまりガラス基板上のフォトレジスト層の現像を行い、パターンに対応する形状のフォトレジスト層を生成する現像工程と、この現像されたフォトレジスト層を介してガラス基板の表面を加工する加工工程とが含まれている。
【0078】
ステップS52のカラーフィルタ形成工程では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応する3つのドットの組をマトリックス状に多数配列するか、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルタの組を水平走査方向に複数配列したカラーフィルタを形成する。ステップS54のセル組立工程では、ステップS50によって所定パターンが形成されたガラス基板と、ステップS52によって形成されたカラーフィルタとを用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。具体的には、例えばガラス基板とカラーフィルタとの間に液晶を注入することで液晶パネルを形成する。ステップS56のモジュール組立工程では、ステップS54によって組み立てられた液晶パネルに対し、この液晶パネルの表示動作を行わせる電気回路およびバックライト等の各種部品を取り付ける。
【0079】
また、本実施形態は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートやシート状の可撓体に形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本実施形態は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
【0080】
なお、上述の実施形態においては、空間光変調器8が二次元的に配列された複数のミラー要素8aを備えているが、一次元に配列された複数の光学要素を備える空間光変調器を用いてもよい。
【0081】
上述の実施形態において、米国公開公報第2006/0170901号及び第2007/0146676号に開示されるいわゆる偏光照明方法を適用することも可能である。ここでは、米国特許公開第2006/0170901号公報及び米国特許公開第2007/0146676号公報の教示を参照として援用する。
【0082】
なお、上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。