(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一般式(I)の化合物が、非プロトン性有機溶媒(単数又は複数)及び一般式(I)の化合物(単数又は複数)を含有する組成物の総体積に基づいて、0.01〜5mol/Lの範囲の濃度で使用される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一般式(I)の化合物は、炭酸塩などの有機非プロトン性溶媒の添加により配位ポリマーを生成する。これは、一般式(I)の低分子量化合物が、配位ポリマーと呼ばれる大分子をもたらす配位結合により加えられる溶媒中のLi金属錯体を生成すると理解される。低分子化合物によりの配位ポリマーの生成は、非プロトン性有機溶媒にゲル化剤の効果を有する。非プロトン性有機溶媒中にただ少量の一般式(I)の化合物を存在することは、溶媒(単数又は複数)により充填される配位ポリマーのネットワークにより生成されたゲルを得ることに十分である。非プロトン性有機溶媒、及び一般的に電気化学電池の電解質組成物に使用される溶媒混合物、例えば炭酸塩及びエーテル、の使用が可能である。通例の導電性塩は容易にゲルに加えられる。その結果として、これらのゲルは、溶媒の漏出のより低いリスクを有する電解質組成物の良好な基礎を提供する。電池にNa+又は遷移金属イオンなどの有害なイオンを導入していないので、一般式(I)の化合物をゲル化剤として使用することは、リチウムイオン電池又はリチウム硫黄電池などの、リチウムイオンがアノードとカソードとの間のイオン移動に使用される電気化学電池の電解質組成物に特に有利である。一般式(I)の化合物は、5V以下で電気化学的に安定する。
【0010】
無機部分の原因で、一般式(I)の化合物及び一般式(I)の化合物により生成する配位ポリマーは、特に置換基R
1及び/又はR
2がFに置換される場合には、従来の有機ポリマーより低い可燃性を有する。また、電解質組成物の向上された難燃性をもたらす。
【0011】
本発明の電解質組成物(A)は、少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒(i)、好ましくは少なくとも2種の非プロトン性有機溶媒(i)を含有する。一実施態様によれば、電解質組成物(A)は、10種以下の非プロトン性有機溶媒(i)を含有してもよい。
【0012】
好ましくは、少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒(i)は、
(a)部分的にハロゲン化されてもよい、環状及び非環状有機炭酸塩、
(b)部分的にハロゲン化されてもよい、ジ−C
1〜C
10−アルキルエーテル、
(c)部分的にハロゲン化されてもよい、ジ−C
1〜C
4−アルキル−C
2〜C
6−アルキレンエーテル及びポリエーテル、
(d)部分的にハロゲン化されてもよい、環状エーテル、
(e)部分的にハロゲン化されてもよい、環状及び非環状アセタール及びケタール、
(f)部分的にハロゲン化されてもよい、オルトエステル、
(g)部分的にハロゲン化されてもよい、環状及び非環状のカルボン酸エステル、
(h)部分的にハロゲン化されてもよい、環状及び非環状スルホン、
(i)部分的にハロゲン化されてもよい、環状及び非環状ニトリル及びジニトリル、並びに、
(j)部分的にハロゲン化されてもよい、イオン液体、
から選択される。
【0013】
より好ましくは、少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒(i)は、環状及び非環状有機炭酸塩(a)、ジ−C
1〜C
10−アルキルエーテル(b)ジ−C
1〜C
4−アルキル−C
2〜C
6−アルキレンエーテル及びポリエーテル(c)、並びに、環状エーテル(d)から選択され、さらにより好ましくは、少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒(i)は環状及び非環状有機炭酸塩(a)から選択され、最も好ましくは、少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒(i)は環状及び非環状有機炭酸塩(a)から選択される少なくとも2種の非プロトン性有機溶媒(i)の混合物であり、特に好ましくは、少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒(i)は少なくとも1種の環状有機炭酸塩と少なくとも1種の非環状有機炭酸塩との混合物である。
【0014】
非プロトン性有機溶媒(a)〜(j)は部分的にハロゲン化されてもよく、例えば、部分的にフッ素化され、部分的に塩素化され又は部分的に臭素化されてもよく、好ましくは部分的にフッ素化されてもよい。「部分的にハロゲン化され」という用語は、個々の分子の1つ以上のHがハロゲン原子(例えば、F、Cl又はBr)に置換されることを意味する。少なくとも1種の溶媒(i)は部分的にハロゲン化及び非ハロゲン化の非プロトン性有機溶媒(a)〜(j)から選択されてもよく、換言すれば、電解質組成物は部分的にハロゲン化及び非ハロゲン化の非プロトン性有機溶媒の混合物を含んでもよい。
【0015】
好適な有機炭酸塩(a)の例は、一般式(a1)、(a2)又は(a3)、
【化3】
(式中、R
a、R
b及びR
cは、異なり又は同一であり、互いに独立し、水素、C
1〜C
4−アルキル、好ましくはメチル、F、及び1つ以上のFに置換されるC
1〜C
4−アルキル、例えばCF
3から選択される)
の環状有機炭酸塩である。
【0016】
「C
1〜C
4−アルキル」という用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec.−ブチル、及びtert.−ブチルを含むことを意味する。
【0017】
好ましい環状有機炭酸塩(a)は、R
a、R
b及びR
cがHである一般式(a1)、(a2)又は(a3)のものである。例としては、炭酸エチレン、炭酸ビニレン及び炭酸プロピレンが挙げられる。好ましい環状有機炭酸塩(a)は炭酸エチレンである。さらに好ましい環状有機炭酸塩(a)は、ジフルオロ炭酸エチレン(a4)及びモノフルオロ炭酸エチレン(a5)である。
【0019】
好適な非環状有機炭酸塩(a)の例は、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸メチルエチル及びそれらの混合物である。
【0020】
本発明の一実施態様において、電解質組成物(A)は、1:10〜10:1、好ましくは3:1〜1:1の質量比の、非環状有機炭酸塩(a)と環状有機炭酸塩(a)との混合物を含有する。
【0021】
好適な非環状ジ−C
1〜C
10−アルキルエーテル(b)の例は、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル及びジ−n−ブチルエーテルである。
【0022】
ジ−C
1〜C
4−アルキル−C
2〜C
6−アルキレンエーテル(c)の例は、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジグリム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、トリグリム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、テトラグリム(テトラエチレングリコールジメチルエーテル)及びジエチレングリコールジエチルエーテルである。
【0023】
好適なポリエーテル(c)の例は、ポリアルキレングリコールであり、好ましくはポリ−C
1〜C
4−アルキレングリコール、特にポリエチレングリコールである。ポリエチレングリコールは、20モル%以下の、1種以上の共重合形態のエチレングリコールを含んでもよい。好ましくは、ポリアルキレングリコールは、ジメチル−又はジエチル−端部キャップされるポリアルキレングリコールである。好適なポリアルキレングリコール及び特に好適なポリエチレングリコールの分子量M
Wは、少なくとも400g/molであってもよい。好適なポリアルキレングリコール及び特に好適なポリエチレングリコールの分子量M
Wは、5000000g/mol以下、好ましくは2000000g/mol以下であってもよい。
【0024】
好適な環状エーテル(d)の例は、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサンである。
【0025】
好適な非環状アセタール(e)の例は、1,1−ジメトキシメタン及び1,1−ジエトキシメタンである。好適な環状アセタール(e)の例は、1,3−ジオキサン及び1,3−ジオキソランである。
【0026】
好適なオルトエステル(f)の例は、トリ−C
1〜C
4−アルコキシメタン、特にトリメトキシメタン及びトリエキシメタンである。好適な環状オルトエステル(f)の例は、1,4−ジメチル−3,5,8−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン及び4−エチル−1−メチル−3,5,8−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタンである。
【0027】
好適な非環状のカルボン酸エステル(g)の例は、酢酸エチル、ブタン酸メチル、及び1,3−プロパン酸二酸ジメチルなどのカルボン酸エステルである。好適な環状のカルボン酸エステルの例はγ−ブチロラクトンである。
【0028】
好適な環状及び非環状スルホンの例は、エチルメチルスルホン、ジメチルスルホン及びテトラヒドロチオフェン−S,S−二酸である。
【0029】
好適な環状及び非環状ニトリル及びジニトリル(i)の例は、アデポジニトリル、アセトニトリル、プロピオニトリル及びブチロニトリルである。
【0030】
本発明の電解質組成物の水含有量は、電解質組成物の質量に基づいて、好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、最も好ましくは30ppm未満である。水含有量は、例えばDIN 51777又はISO760:1978に詳しく記載されているカールフィッシャー滴定により測定することが可能である。
【0031】
本発明の電解質組成物のHF含有量は、電解質組成物の質量に基づいて、好ましくは60ppm未満、より好ましくは40ppm未満、最も好ましくは20ppm未満である。HF含有量は、電位差滴定法又は電位グラフ滴定法により測定することが可能である。
【0032】
本発明の電解質組成物(A)は、成分(ii)としての少なくとも1種の一般式(I)
【化5】
(式中、R
1及びR
2は、互いに独立し、1つ以上のFにより置換されることが可能であるC
1〜C
10−アルキルから選択され、
又は、R
1及びR
2は、一緒に結合しており、F及び任意にフッ素化されたC
1〜C
10−アルキルから選択された1つ以上の置換基により置換されることが可能である、五員又は六員ヘテロ環基を、基−OPO−と共に形成するC
2〜C
3−アルカンジイルから選択される)
の化合物を含む。
【0033】
R
1及びR
2は、一緒に結合しており、五員又は六員ヘテロ環基を、基−OPO−と共に形成するC
2〜C
3−アルカンジイルから選択される一般式(I)の化合物の例は、下記、
【化6】
(式中、R、R
i、R
ii、R
iii、R
iv及びR
vは、互いに独立し、H、F及び任意にフッ素化されたC
1〜C
10−アルキルから選択される)
である。
【0034】
好ましくは、R
1及びR
2は、互いに独立し、1つ以上のFにより置換されることが可能であるC
1〜C
4−アルキルから選択され、又は
、R1及びR2は結合しており、
及び一緒にF及び任意にフッ素化されたC
1〜C
10−アルキルから選択された1つ以上の置換基により置換されることが可能であるC
2−アルカンジイルから選択される。
【0035】
ここで使用された「C
1〜C
10−アルキル」という用語は、1個〜10個の炭素原子を備え、1の自由原子価を有する直鎖又は分岐の飽和炭化水素を意味し、且つ、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソ−ペンチル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、イソ−ヘキシル、2−エチルヘキシル、n−ヘプチル、イソ−ヘプチル、n−オクチル、イソ−オクチル、n−ノニル、n−デシル及び類似物を含む。好ましくは、C
1〜C
4−アルキルである。
【0036】
ここで使用された「C
2〜C
3−アルカンジイル」という用語は、2個〜3個の炭素原子を備え2の自由原子価を有する飽和炭化水素を意味する。C
2〜C
3−アルカンジイルは、例えば、−CH
2CH
2−及び−CH
2CH
2CH
2−を含む。
【0037】
少なくとも1種の一般式(I)の化合物は、好ましくはR
1及びR
2の少なくとも1つが少なくとも1つのFにより置換され、より好ましくはR
1及びR
2の少なくとも1つが少なくとも2つのFにより置換され、最も好ましくはR
1及びR
2の少なくとも1つが少なくとも3つのFにより置換される一般式(I)の化合物から選択される。特に好ましくは、R
1及びR
2の少なくとも1つは、少なくとも1つのCF
3−基を含む。
【0038】
本発明の一実施態様により、少なくとも1種の一般式(I)の化合物は、R
1及びR
2が互いに独立し任意にフッ素化されたC
1〜C
4−アルキルから選択される一般式(I)の化合物から選択される。好ましくはR
1及びR
2の少なくとも1つが少なくとも1つのFにより置換され、より好ましくはR
1及びR
2の少なくとも1つが少なくとも2つのFにより置換され、最も好ましくはR
1及びR
2の少なくとも1つが少なくとも3つのFにより置換される。特に好ましくは、R
1及びR
2の少なくとも1つは、少なくとも1つのCF
3−基を含む。
【0039】
他の実施態様により、少なくとも1種の一般式(I)の化合物は、R
1及びR
2が、一緒に結合しており、F及び任意にフッ素化されたC
1〜C
10−アルキルから選択された1つ以上の置換基により置換されることが可能である、五員又は六員ヘテロ環基を、基−OPO−と共に形成するC
2−アルカンジイルから選択される。該C
2−アルカンジイルは、好ましくは少なくとも1つのF、より好ましくは少なくとも2つのF、さらにより好ましくは少なくとも3つのFを含む。特に好ましくは、五員ヘテロ環は少なくとも1つのCF
3−基を含む。
【0040】
好ましい一般式(I)の化合物は、LiOOP(OCH
2CF
3)
2、LiOOP(OCH(CF
3)
2)
2、LiOOP(On−C
4F
9)
2及びLiOOP(OC(CF
3)
3)
2である。
【0041】
任意に一般式(I)のフッ素化されたアルキルリン酸リチウム化合物の異なる製造方法が知られている。一案としては、対応する(フルオロ)アルキルリン酸をリチウム水酸化物又はブチルリチウムなどの脱プロトン化剤と反応させることにより製造することである。対応する(フルオロ)アルキルリン酸の製造は、例えば、Mahmood,T.及びShreeve,J.M.、Inorg.Chem.25、3830〜3837頁(1986)に記載されている。もう1つの可能性としては、個々のリチウム(フルオロ)アルコキシドを五酸化リンと反応させることである。本発明のもう1つの課題は、LiOR
1、LiOR
2及び/又はLiOR
1R
2OLiを五酸化リンと反応させることであり、R
1及びR
2が上記のように定義され、R
1R
2が、一緒に結合しており、1つ以上のF及び/又は任意にフッ素化されたC
1〜C
10−アルキルにより置換されることが可能であるC
2〜C
3−アルカンジイルから選択される部分である。LiOR
1、LiOR
2及び/又はLiOR
1R
2OLiは、対応するアルコールをリチウム水酸化物又はブチルリチウムなどの脱プロトン化剤と反応させることにより容易に製造される。一般的には、LiOR
1、LiOR
2及び/又はLiOR
1R
2OLi及び五酸化リンは、炭酸ジメチルなどの炭酸塩のような非プロトン性溶媒の存在下で反応される。一般的には、反応温度は室温を超え、例えば、好適な温度範囲は50〜120℃である。また、ビス−(2,2,2−トリフルオロエチル)リン酸リチウムは、対応するアルコールを、リチウム水酸化物又はブチルリチウムなどの脱プロトン化剤で脱プロトン化した五酸化リンと直接に反応させることにより製造される。
【0042】
一般的には、電解質組成物(A)は、少なくとも0.01mol/Lの少なくとも1種の一般式(I)の化合物を含む。一般的には、少なくとも1種の一般式(I)の化合物の最大濃度は5mol/Lである。一般式(I)の化合物がゲル化剤として電解質組成物に使用される場合、少なくとも1種の一般式(I)の化合物の濃度は、電解質組成物(A)の総体積に基づいて、好ましくは0.1〜5mol/L、より好ましくは0.15〜3mol/L、最も好ましくは0.2〜2mol/Lの範囲である。
【0043】
一般式(I)の小分子フルオロアルキルリン酸リチウムは、配位ポリマーのネットワーク、及びポリマーの全体のネットワークのうちに分布する溶媒分子からなるゲルをもたらす溶媒中の配位ポリマーを生成する。該ゲルは、有限降伏応力を有し、弾性と粘性との両方を示す。これは、レオロジー振動実験(rheological oscillation experiments)により測定された貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’の発展により反映される。変形掃引(deformation sweep)において、微小変形(small deformation)での損失弾性率より、貯蔵弾性率G’はより大きく、これはむしろ固相物質に近い。これは、高い変形値で変化するので、ゲルがむしろ液体に近いことを示す。微小変形での周波数掃引実験(frequency sweep experiment)において、ゲルの貯蔵弾性率G’は損失弾性率G’’より大きく、少なくとも、理想的なゲルにおいて両方とも並行して進む。本発明の好ましい実施態様により、電解質組成物(A)はゲル電解質である。
【0044】
さらに、本発明の電解質組成物(A)は、少なくとも1種の一般式(I)の化合物と異なる導電性塩(iii)を含む。電解質組成物(A)は、電気化学電池に行う電気化学反応に関与するイオンを伝導するための媒質となる。一般的には、電解質に存在する導電性塩(単数又は複数)(iii)は、非プロトン性有機溶媒(単数又は複数)(i)に溶媒和される。好ましくは、導電性塩(iii)は、導電性塩を含有するリチウムイオンである。好ましくは、導電性塩は、
Li[F
6−xP(C
yF
2y+1)
x](式中、xは0〜6の範囲の整数であり、yは1〜20の範囲の整数である);
Li[B(R
I)
4]、Li[B(R
I)
2(OR
IIO)]及びLi[B(OR
IIO)
2](式中、個々のR
Iは、互いに独立し、F、Cl、Br、I、C
1〜C
4−アルカリ、C
2〜C
4−アルケニル、C
2〜C
4−アルキニル、OC
1〜C
4−アルカリ、OC
2〜C
4−アルケニル及びOC
2〜C
4−アルキニルから選択され、アルカリ、アルケニル及びアルキニルは1つ以上のOR
IIIにより置換されてもよく、R
IIIはC
1〜C
6−アルカリ、C
2〜C
6−アルケニル及びC
2〜C
6−アルキニルから選択され、且つ、
(OR
IIO)は、1,2−若しくは1,3−ジオール、1,2−若しくは1,3−ジカルボン酸、又は、1,2−若しくは1,3−ヒドロキシカルボン酸に由来する二価基であり、該二価基は両方の酸素原子により中心のB−原子と5−又は6員環を形成する);
LiClO
4;LiAsF
6;LiCF
3SO
3;Li
2SiF
6;LiSbF
6;LiAlCl
4、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム;シュウ酸リチウム;LiN(SO
2F)
2;並びに、
一般式Li[Z(CnF
2n+1SO
2)
m](式中、m及びnは、下記、
Zが酸素及び硫黄から選択される場合、mが1であり、
Zが窒素及びリンから選択される場合、mが2であり、
Zが炭素及びシリコンから選択される場合、mが3であり、
nが1〜20の範囲の整数である、
ように定義される)、
からなる群から選択される。
【0045】
二価基(OR
IIO)を生成する好適な1,2−又は1,3−ジオールは、脂肪族又は芳香族のものであり、例えば、1つ以上のFに、及び/又は少なくとも1つの直鎖又は分岐のフッ素化されない、部分的にフッ素化される又は完全にフッ素化されるC
1〜C
4−アルカリ基により任意に置換される1,2−ジヒドロキシベンゼン、プロパン−1,2−ジオール、ブタン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、シクロヘキシル−トランス−1,2−ジオール及びナフタレン−2,3−ジオールから選択されてもよい。このような1,2−又は1,3−ジオールの例としては、1,1,2,2−テトラ(トリフルオロメチル)−1,2−エタンジオールが挙げられる。
【0046】
「完全にフッ素化されるC
1〜C
4−アルカリ基」という用語は、全てのアルキル基のH−原子がFにより置換されることを意味する。
【0047】
二価基(OR
IIO)を生成する好適な1,2−又は1,3−ジカルボン酸は、肪族又は芳香族の、例えば、シュウ酸、マロン酸(プロパン−1,3−ジカルボン酸)、フタル酸又はイソフタル酸であり、好ましくはシュウ酸である。該1,2−又は1,3−ジカルボン酸は、任意に、1つ以上のFに、及び/又は少なくとも1つの直鎖又は分岐のフッ素化されない、部分的にフッ素化される又は完全にフッ素化されたC
1〜C
4−アルカリ基に置換される。
【0048】
二価基(OR
IIO)を生成する好適な1,2−又は1,3−ヒドロキシカルボン酸は、肪族又は芳香族の、例えば、1つ以上のFに、及び/又は少なくとも1つの直鎖又は分岐のフッ素化されない、部分的にフッ素化される又は完全にフッ素化されたC
1〜C
4−アルカリ基により任意に置換されるサリチル酸、テトラヒドロサリチル酸、リンゴ酸及び2−ヒドロキシ酢酸であってもよい。このような1,2−又は1,3−ヒドロキシカルボン酸の例としては、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−2−ヒドロキシ−酢酸が挙げられる。
【0049】
Li[B(R
I)
4]、Li[B(R
I)
2(OR
IIO)]及びLi[B(OR
IIO)
2]の例としては、LiBF
4、ジフルオロオキサラトホウ酸リチウム及びジオキサラトホウ酸リチウムが挙げられる。
【0050】
好ましくは、少なくとも1種の導電性塩(iii)は、LiBF
4、ジフルオロオキサラトホウ酸リチウム、ジオキサラトホウ酸リチウム、Li[N(FSO
2)
2]、Li[N(CF
3SO
2)
2]、LiClO
4、LiPF
6及びLiPF
3(CF
2CF
3)
3から、より好ましくはLiPF
6、LiBF
4及びLiPF
3(CF
2CF
3)
3から選択され、さらにより好ましくは導電性塩(iii)はLiPF
6及びLiBF
4から選択され、最も好ましくは導電性塩(iii)はLiPF
6である。
【0051】
一般的には、少なくとも1種の導電性塩(iii)は、少なくとも0.1mol/Lの最小濃度で存在する。一般的には、最大濃度は、電解質組成物の総体積に基づいて2mol/Lである。
【0052】
電解質組成物(A)は、ビニレンカーボネート及びその誘導体、ビニルエチレンカーボネート及びその誘導体、メチルエチレンカーボネート及びその誘導体、(ビスオキサラト)ホウ酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、シュウ酸リチウム、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、環状エキソ−メチレンカーボネート、スルトン、環状及び非環状スルホン酸塩、環状及び非環状亜硫酸塩、無機酸の有機エステル、1バールで少なくとも36℃の沸点を有する非環状及び環状アルカン、並びに、任意にハロゲン化の環状及び非環状スルホニルイミド、任意にハロゲン化の環状及び非環状リン酸エステル、任意にハロゲン化の環状及び非環状ホスフィン、任意にハロゲン化の環状及び非環状亜リン酸塩、任意にハロゲン化の環状及び非環状ホスファゼン、任意にハロゲン化の環状及び非環状シリルアミン、任意にハロゲン化の環状及び非環状ハロゲン化エステル、任意にハロゲン化の環状及び非環状アミド、任意にハロゲン化の環状及び非環状無水物、イオン液体、及び任意にハロゲン化の複素環を含む芳香族化合物からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤(iv)を含んでもよい。好ましくは、添加剤(iv)は、個々の電解質組成物(A)に存在している導電性塩(iii)から選択された化合物と異なるように選択される。好ましくは、添加剤(iv)は、個々の電解質組成物(A)に存在している前記少なくとも1種の有機非プロトン性溶媒(i)とも異なる。
【0053】
本発明の好ましいイオン液体は式[K]
+[L]
−のイオン液体から選択され、[K]
+が、好ましくは還元安定性の、一般式(II)〜(IX)、
【化7】
(式中、
Rは、H、C
1−〜C
6−アルキル、C
2−〜C
6−アルケニル及びフェニル、好ましくはメチル、エチル及びプロピルを示す;
R
Aは、−(CH
2)
s−O−C(O)−R、−(CH
2)
s−C(O)−OR, −(CH
2)
s−S(O)
2−OR、−(CH
2)
s−O−S(O)
2−OR、−(CH
2)
s−O−C(O)−OR、−(CH
2)
s−HC=CH−R、−(CH
2)
s −CN、
【化8】
(式中、各CH
2基が、O、S又はNRに代替されてもよく、sが、1〜8、好ましくは1〜3である)
を示す;
X
Aは、CH
2、O、S又はNR
Bを示す;
R
Bは、H、C
1−〜C
6−アルキル、C
2−〜C
6−アルケニル、フェニル、及び、sが1〜8、好ましくは1〜3である−(CH
2)
s−CNを示す;好ましくは、R
Bは、メチル、エチル、プロピル又はHである)
のカチオン群から選択されたカチオンを示し、
[L]
−が、BF
4−、PF
6−、[B(C
2O
4)
2]
−、[F
2B(C
2O
4)]
−、[N(S(O)
2F)
2]
−、[F
pP(C
qF
2q+1)
6−p]
−、[N(S(O)
2C
qF
2q+1)
2]
−、[(C
qF
2q+1)
2P(O)O]
−、[C
qF
2q+1P(O)O
2]
2−、[OC(O)C
qF
2q+1]
−、[OS(O)
2CqF
2q+1]
−;[N(C(O)C
qF
2q+1)
2]
−;[N(C(O)C
qF
2q+1)(S(O)
2C
qF
2q+1)]
−;[N(C(O)C
qF
2q+1)(C(O))F]
−;[N(S(O)
2C
qF
2q+1)(S(O)
2F)]
−;[C(C(O)C
qF
2q+1)
3]
−及び[C(S(O)
2C
qF
2q+1)
3N(SO
2CF
3)
2]
−、
(式中、pが0〜6の範囲の整数であり、qが1〜20の範囲の整数であり、好ましくはqが1〜4の範囲の整数である)
の群から選択されたアニオンを示す。
【0054】
添加剤(iv)として使用される好ましいイオン液体は、式[K][L](式中、[K]は、XがCH
2であり、sが1〜3の範囲の整数である一般式(II)のピロリジニウムカチオンから選択され、[L]は、BF
4−、PF
6−、[B(C
2O
4)
2]
−、[F
2B(C
2O
4)]
−、[N(S(O)
2F)
2]
−、[N(SO
2C
2F
5)
22]
−、[F
3P(C
2F
5)
3]
−及び[F
3P(C
4F
9)
3]
−からなる群から選択される)のイオン液体である。
【0055】
1種以上のさらなる添加剤(iv)が電解質組成物(A)に存在する場合、さらなる添加剤(iv)の総濃度は、電解質組成物(A)の総質量に基づいて、少なくとも0.001質量%、好ましくは0.005〜5質量%、より好ましくは0.01〜2質量%である。
【0056】
電解質組成物(A)は、少なくとも1種の溶媒(i)と少なくとも1種の導電性塩(iii)と任意に1種以上の添加剤(iv)との混合物を提供する工程、一般式(I)の化合物を添加する工程、及び、全ての成分を混合する工程により製造されてもよい。ある場合には、ゲルの均一性を確保するために超音波浴で溶液を処理することが有用である。
【0057】
本発明のさらなる目的は、好ましい実施態様を含んで上記で詳しく定義したような一般式(I)の化合物をゲル化剤として非プロトン性有機溶媒又は溶媒混合物に使用する方法である。典型的な非プロトン性有機溶媒は、非プロトン性有機溶媒(i)としての、好ましい実施態様を含めて上記で詳しく記載された溶媒である。好ましい非プロトン性有機溶媒(単数又は複数)は環状及び非環状有機炭酸塩から選択される。一般的には、一般式(I)の化合物は、非プロトン性有機溶媒(単数又は複数)及び一般式(I)の化合物(単数又は複数)を含有する組成物の総体積に基づいて、0.1〜5mol/L、より好ましくは0.15〜3mol/L、最も好ましくは0.2〜2mol/Lの範囲の濃度の少なくとも1種の一般式(I)の化合物をゲル化剤として使用される。好ましくは、一般式(I)の化合物は、ゲル化剤として、非プロトン性有機溶媒(単数又は複数)を含有する非水性電解質組成物に使用される。本発明のさらなる目的は、少なくとも1種の一般式(I)の化合物を非プロトン性有機溶媒又は上記のような非プロトン性有機溶媒の混合物に添加することにより、非プロトン性有機溶媒又は非プロトン性有機溶媒の混合物をゲル化する方法である。「ゲル化する」という用語は、プロトン性有機溶媒又は非プロトン性有機溶媒の混合物のゲル化を誘導して、プロトン性有機溶媒又は非プロトン性有機溶媒の混合物と、少なくとも1種の一般式(I)の化合物と、任意に上記の導電性塩(iii)及び添加剤(iv)のような導電性塩及び添加剤などのさらなる化合物とを含むゲルを得る。
【0058】
本発明のもう1つの目的は、少なくとも1種の一般式(I)の化合物を電気化学電池用の電解質の添加剤として使用する方法である。一般的には、一般式(I)の化合物は、本発明の電解質組成物(A)に対して上記の範囲の濃度で使用される。
【0059】
本発明のもう1つの目的は、上記で詳しく記載されたような電解質組成物(A)を含む電気化学電池である。特に、該電気化学電池は、
(A)上記の電解質組成物、
(B)少なくとも1種のカソード活物質を含む少なくとも1つのカソード、及び、
(C)少なくとも1種のアノード活物質を含む少なくとも1つのアノード、
を含む。
【0060】
好ましくは、本発明の電気化学電池は、リチウム電池であり、換言すれば、アノードが電池の値充電/放電の間のどこかにリチウム金属又はリチウムイオンを含む電気化学電池である。アノードは、リチウム金属又はリチウム金属合金(リチウムを含有する化合物又はリチウムイオンを組み込む物質)を含むことが可能であり、例えばリチウムイオン電池、リチウム/硫黄電池又はリチウム/セレン硫黄電池である。好ましくは、電気化学電池は、リチウムイオン二次電池又はリチウム硫黄電池である。
【0061】
リチウム/硫黄電池は、カソード活物質としての硫黄含有物質を含む。一般的には、硫黄は、導電性物質と、特に好ましくはカーボンブラック、黒鉛、膨張黒鉛、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、活性炭、コルク又はピッチの熱処理により製造された炭素などの炭素質導電性物質との混合物又は複合物として存在している。また、金属粉末、金属フレーク、金属化合物又はそれらの混合物なとの他の導電性物質を使用することが可能である。硫黄を含有する混合物又は複合物は、しばしば、元素硫黄又は硫黄を含有するポリマーから製造される。
【0062】
一般的には、リチウムアノードはリチウム金属及び/又はリチウム金属合金を含む。リチウム/硫黄電池において、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−スズ合金、Li−Mg−合金及びLi−Ag−合金を使用してもよい。
【0063】
好ましくは、電気化学電池は、二次リチウムイオン電気化学電池又はリチウム硫黄電池であり、換言すれば、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出し得るカソード活物質を含むカソード、並びに、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出し得るアノード活物質を含むアノードを含む二次リチウムイオン電気化学電池である。本発明の範囲内で、「二次リチウムイオン電気化学電池」及び「(二次)リチウムイオン電池」は交互に用いられる。
【0064】
好ましくは、少なくとも1種のカソード活物質は、リチウム化リン酸遷移金属及びリチウムイオンを挿入する遷移金属酸化物から選択される、且つ、リチウムイオンを吸蔵及び放出できる物質を含む。
【0065】
リチウム化リン酸遷移金属の例はLiCoPO
4であり、リチウムイオンを挿入する遷移金属酸化物の例は、一般式(X)Li
(1+z)[Ni
aCo
bMn
c]
(1−z)O
2+e(式中、zは0〜0.3である;a、b及びcは、同一又は異なり、それぞれに0〜0.8であり、a+b+c=1;−0.1≦e≦0.1)の層構造を有する遷移金属酸化物、並びに、一般式(XI)Li
1+tM
2−tO
4−d(式中、dは0〜0.4であり、tは0〜0.4であり、MはMn、並びに、Co及びNiからなる群から選択された少なくとも1種のさらなる金属である)及びLi
(1+g)[Ni
hCo
iAl
j]
(1−g)O
2+k(g、h、I、j及びkの標準値は下記である:g=0、h=0.8〜0.85、i=0.15〜0.20、j=0.02〜0.03及びk=0)のマンガン含有スピネルである。
【0066】
1つの好ましい実施態様において、カソード活物質はLiCoPO
4から選択される。また、カソード活物質としてのLiCoPO
4を含むカソードはLiCoPO
4カソードとも称される。LiCoPO
4は、Fe、Mn、Ni、V、Mg、Al、Zr、Nb、Tl、Ti、K、Na、Ca、Si、Sn、Ge、Ga、B、As、Cr、Sr、又は希土類元素、換言すれば、ランタニド、スカンジウム及びイットリウムでドープされてもよい。特に、オリビン構造を備えるLiCoPO
4は、高い動作電圧(4.8Vの酸化還元電位vs.Li/Li
+)、平らな電圧プロフィール、及び約170mAh/gの高い理論容量を有するので、本発明に好適である。カソードはLiCoPO
4/C複合物質を含んでもよい。LiCoPO
4/C複合物質を含む好適なカソードの製造は、Markevich et al.,Electrochem.Comm.,2012,15,22−25に記載されている。
【0067】
本発明のもう1つの好ましい実施態様において、カソード活物質は、一般式(X)Li
(1+z)[Ni
aCo
bMn
c]
(1−z)O
2+e(式中、zは0〜0.3である;a、b及びcは、同一又は異なり、それぞれに0〜0.8であり、a+b+c=1;−0.1≦e≦0.1)の層構造を有する遷移金属酸化物から選択される。好ましくは、一般式(X)Li
(1+z)[Ni
aCo
bMn
c]
(1−z)O
2+e(式中、zは0.05〜0.3であり、aは0.2〜0.5であり、bは0〜0.3であり、cは0.4〜0.8であり、a+b+c=1;−0.1≦e≦0.1)の層構造を有する遷移金属酸化物である。本発明の一実施態様において、一般式(X)の層構造を有する遷移金属酸化物は、[Ni
aCo
bMn
c]がNi
0.33Co
0Mn
0.66、Ni
0.25Co
0Mn
0.75、Ni
0.35Co
0.15Mn
0.5、Ni
0,21Co
0,08Mn
0,71及びNi
0,22Co
0,12Mn
0,66から選択されるものから選択され、特に好ましくはNi
0,21Co
0,08Mn
0,71及びNi
0,22Co
0,12Mn
0,66である。また、一般式(X)の遷移金属酸化物は、通常のNCMsより高いエネルギー密度を備えるので、高エネルギーNCM(HE−NCM)とも呼ばれる。HE−NCMとNCMとの両方ともLi/Li
+対して約2.3〜3.8Vの動作電圧を有するが、確実にフル充電を達成しそのより高いエネルギー密度から利益を受けるために、HE−NCMS充電に高いカットオフ電圧(>4.6V)を使用しなければならない。
【0068】
本発明のさらなる好ましい実施態様により、カソード活物質は、一般式(XI)Li
1+tM
2−tO
4−d(式中、dは0〜0.4であり、tは0〜0.4であり、MはMn、並びに、Co及びNiからなる群から選択された少なくとも1種のさらなる金属である)のマンガン含有スピネルから選択される。好適な一般式(XI)のマンガン含有スピネルの例はLiNi
0,5Mn
1,5O
4−dである。これらのスピネルは、HE(高エネルギー)−スピネルとも呼ばれる。
【0069】
多くの成分は遍在する。例えば、ナトリウム、カリウム及び塩化物は、わずかの非常に少ない割合で、実質的に全ての無機物質中で検出できる。この明細書において、0.5質量%未満の割合のカチオン又はアニオンを無視し、換言すれば、0.5質量%未満の割合のカチオン又はアニオンは有意でないことと見なされる。従って、この明細書において、0.5質量%未満のナトリウムを含む任意のリチウムイオン含有の遷移金属酸化物は無ナトリウムと見なされる。相応には、この明細書において、0.5質量%未満の硫酸イオンを含む任意のリチウムイオン含有の混合遷移金属酸化物は無硫酸と見なされる。
【0070】
カソードは、導電性炭素などの導電性物質及び結合剤などの通常成分をさらに含んでもよい。導電性物質及び結合剤として好適な化合物は当業者に公知である。例えば、カソードは、例えばグラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン又は前記物質の少なくとも2種の混合物から選択される導電性多形体中の炭素を含んでもよい。さらに、カソードは、1種以上の結合剤、例えば、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリイソプレン、並びに、エチレン、プロピレン、スチレン、(メタ)アクリロニトリル及び1,3−ブタジエンから選択された少なくとも2種のコモノマーのコポリマー、特にエチレン−ブタジエンコポリマー、並びに、塩化ポリビニリデン、塩化ポリビニル、フッ化ポリビニル、フッ化ポリビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデン及びポリアクリルニトリル等のハロゲン化(コ)ポリマー等の1種以上の有機ポリマーを含んでもよい。
【0071】
さらに、カソードは集電体を含んでもよく、該集電体が金属線、金属グリッド、金属ウェブ、金属シート、金属ホイル又は金属プレートであってもよい。好適な金属ホイルはアルミホイルである。
【0072】
本発明の一実施態様により、カソードは、集電体の厚さを含まずにカソードの全体厚さに基づいて、25〜200μm、好ましくは30〜100μmの厚さを有する。
【0073】
本発明のリチウムイオン二次電池中に含まれるアノード(C)は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出するアノード活物質を含む。特に、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出し得る炭素質物質がアノード活物質として使用される。好適な炭素質物質は、結晶性炭素、例えばグラファイト物質、より特に天然グラファイト、黒鉛化コークス、黒鉛化MCMB及び黒鉛化MPCF、非晶質炭素、例えばコークス、1500℃未満で燃やしたメソカーボンマイクロビーズ及びピッチの中間相をベースとする炭素繊維(MPCF)、並びに、硬質炭素及び炭素のアノード活物質(熱分解される炭素、コークス、グラファイト)、例えば炭素複合物、燃やした有機ポリマー及び炭素繊維である。
【0074】
さらなるアノード活物質は、リチウム金属、又はリチウムと合金を生成できる成分を含む物質である。リチウムと合金を生成できる成分を含む物質の限定されない例は、金属、半金属又はそれらの合金である。ここで使用された「合金」という用語は、2種以上の金属の合金にも、1種以上の金属と1種以上の半金属との合金にも関すると理解されるべきである。合金が全体として金属特性を備える場合、該合金は非金属成分を含んでもよい。合金の質感において、固体溶液、共融物(共融混合物)、金属間化合物又はそれらの2種以上は共存する。このような金属又は半金属成分の例は、制限されず、チタン(Ti)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、及びシリコン(Si)を含む。好ましくは、長周期型周期表の元素中の4〜14族の金属及び半金属元素であり、特に好ましくはチタン、シリコン及びスズ、特にシリコンである。スズ合金の例は、スズ以外の第2成分元素としての、シリコン、マグネシウム(Mg)、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン(Ti)、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン及びクロム(Cr)からなる群から選択された1種以上の元素を有するものを含む。シリコン合金の例は、シリコン以外の第2成分元素としての、スズ、マグネシウム、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン及びクロムからなる群から選択された1種以上の元素を有するものを含む。
【0075】
アノード活物質のさらなる可能なものはリチウムイオンを貯蔵できるシリコンである。該シリコンは、例えばナノワイヤー、ナノチューブ、ナノ粒子、フィルム、ナノ多孔性シリコン又はシリコンナノチューブの様々な形態で使用される。該シリコンは集電体に堆積されてもよい。集電体は、金属線、金属グリッド、金属ウェブ、金属シート、金属ホイル又は金属プレートであってもよい。好ましい集電体は、金属ホイル、例えば銅ホイルである。シリコンの薄膜は、当業者に公知の任意の技術(例えば、スパッタリング技術)により金属ホイルに堆積されてもよい。Si薄膜電極の一案は、R.Elazari et al.;Electrochem.Comm.(2012),
14,21−24に記載されている。また、本発明により、シリコン/炭素複合物をアノード活物質として使用することが可能である。
【0076】
アノード活物質の他の可能なものはTiのリチウムイオン挿入の酸化物である。
【0077】
好ましくは、本発明のリチウムイオン二次電池に存在するアノード活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出し得る炭素質物質から選択され、特に好ましくは、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出し得る炭素質物質は、結晶性炭素、硬質炭素及び非晶質炭素から選択され、特に好ましくはグラファイトである。他の好ましい実施態様において、本発明のリチウムイオン二次電池に存在するアノード活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出し得るシリコンから選択され、好ましくは、アノードは、シリコン又はシリコン/炭素複合物の薄膜を含む。さらなる好ましい実施態様において、本発明のリチウムイオン二次電池に存在するアノード活物質は、Tiのリチウムイオン挿入の酸化物から選択される。
【0078】
アノード及びカソードは、電極活物質、結合剤、任意に導電性物質及び増粘剤を分散させることにより、必要な場合に、溶媒中で、電極スラリー組成物を製造する工程、及び、該スラリー組成物を集電体の表面に塗布する工程により製造される。集電体は、金属線、金属グリッド、金属ウェブ、金属シート、金属ホイル又は金属プレートであってもよい。好ましくは、集電体は金属ホイル、例えば銅ホイル又はアルミホイルである。
【0079】
本発明の電気化学電池は、通例のさらなる構成要素、例えばセパレータ、筺体、ケーブル接続などを含んでもよい。筺体は、任意の形状、例えば立方体状又は円筒状、プリズム状であってもよく、或いは、使用された筺体は、ポーチとして加工された金属−プラスチックの複合フィルムである。好適なセパレータは、例えば、ガラス繊維セパレータ及びポリオレフィンセパレータなどのポリマー系セパレータである。
【0080】
複数の本発明の電気化学電池は、例えば直列接続又は並列接続で互いに接続されてもよい。好ましくは直列接続である。さらに、本発明は、本発明の電気化学電池を上記の装置に、例えばモバイル機器に使用する方法を提供する。モバイル機器の例としては、車両、例えば自動車、自転車及び航空機、又は、水上乗り物、例えばボート若しくは船舶が挙げられる。モバイル機器の他の例は、携帯用の、例えば、パソコン、特にノートパソコン、電話、電動工具、例えば建設業からのもの、特にドリル、電池式スクリュードライバー又は電池式鋲打ち機である。ただし、本発明のリチウムイオン電池は固定エネルギー貯蔵(stationary energy stores)にも使用し得る。
【0081】
以下、実施例を参照して本発明を説明するが、ただ本発明に制限されない。
【実施例】
【0082】
1.一般式(I)の化合物の製造
1a) ビス−(2,2,2−トリフルオロエチル)リン酸リチウム LiOOP(OCH
2CF
3)
2(化合物1)
8モルの2,2,2−トリフルオロエタノールを1モルのP
4O
10(両物質ともAlfa Aesar社製)と反応させることによりビス−(2,2,2−トリフルオロエチル)リン酸リチウムを製造した。精留(rectification)により該反応生成物を精製し、無色結晶の形態でビス−(2,2,2−トリフルオロエチル)リン酸を得た。その酸をジエチルエーテルに溶解して冷却した、ジエチルエーテル中LiHのスラリーを添加した。溶媒を蒸発した後に、白色粉末のビス−(2,2,2−トリフルオロエチル)リン酸リチウムを得た。
【0083】
1b) ビス−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル)リン酸リチウム LiOOP(OCH(CF
3)
2)
2(化合物2)
ジメチル炭酸塩中の1モルのP
4O
10の氷で冷やした混合物に8モルのLi[OCH(CF
3)
2]懸濁液を投入する。その後、冷却を取り外し、該混合物を還流下で3時間加熱する。その後、真空中で反応混合物の体積を80%減少する。CH
2Cl
2を添加し、該混合物を4時間撹拌する。LiOOP(OCH(CF
3)
2)
2の白色沈殿物を濾過し、冷たいCH
2Cl
2で洗浄し、真空中で乾燥する。
【0084】
2.電解質組成物
1:1の容積比の炭酸エチレン(EC)と炭酸ジメチル(DMC)、及び1MのLiPF
6又は1MのLiBF
4との混合物、比較例として製造した。LiPF
6を含有する混合物は、また、本発明のゲル電解質組成物の製造に使用した。異なる量のビス−(2,2,2−トリフルオロエチル)リン酸リチウムを、LiPF
6含有の混合物に添加した。その混合物を任意に超音波浴で数時間処理した。デカンテーションにより又は任意に遠心分離により、余分な溶媒を分離した。この場合には、ごく僅かな量の余分な溶媒を除去した。上記の濃度は、余分な溶媒を分離する前の試料に言及する。全ての本発明の組成物は均質ゲルの外観を有していた。
【0085】
2a) 導電性
InLab710プローブを備えるMetrohm SevenMulti電気伝動度測定器により、25℃で導電性を測定した。結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
本発明の実施例5は、導電性塩含有の組成物より低い導電性を示すが、ゲルであった。
【0088】
2b) レオロジー
室温で本発明の実施例1についてレオロジー測定を行った。25mmの直径及び200ミクロンのギャップを備えるプレート−ペイト配置(plate-pate geometry)を有する回転レオメータを使用した。試料の蒸発を避けるために、シリコン油で試料を囲んだ。変形スイープ(deformation sweep)の結果を
図1に示し、振動スイープ(oscillation sweep)の結果を
図2に示す。G’は弾性率を表し、G’’は損失弾性率を表し、γは変形率であり、ωは角周波数である。
図1(周波数スイープ、貯蔵及び損失弾性率(パスカル)対半径周波数(rad/s))及び
図2(変形率スイープ、貯蔵及び損失弾性率(パスカル)対変形率(%))から分かるように、本発明の電解質組成物1はゲルのレオロジー挙動を示す。
【0089】
2c) サイクリックボルタンメトリー
プラチナ作用電極(直径が1mm)とリチウムホイルからなる作用及び参照電極とを備えるMetrohm Autolab PGStat101により、サイクリックボルタンメトリー測定を行った。走査速度(scan rate)を1秒当たり10mVに設定した。電解質は、1mol/LのLiOOP(OCH
2CF
3)
2と混合したEC/DMC(1:1)中の1mol/LのLi[PF
6]からなるものであった。結果を
図3及び4(EC/DMC(1:1)中の1mol/LのLi[PF
6]中のLiOOP(OCH
2CF
3)
2のサイクリックボルタモグラム)に示す。
【0090】
2d) 性能試験
2mAh/cm
2の電気容量を有するリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(NCM111)電極及び2.15mAh/cm
2の電気容量を有するグラファイト電極を用いて、ボタン電池を組み立てた。ガラス繊維フィルターセパレータ(Whatmann GF/D)をセパレータとして使用した。該セパレータを100μlの電解質に浸漬した。電極は、0.235mol/LのLiOOP
2(OCH
2CF
3)
2と混合したEC/DMC(1:1)中の1mol/LのLi[PF
6]からなるものであった。全ての電気化学測定は、25℃で人工気候室中で行った。表2に示した手順により、サイクル数に関しての該電池の性能を測定した。
【0091】
【表2】
【0092】
サイクル数による、0.235mol/LのLiOOP
2(OCH
2CF
3)
2と混合したEC/DMC(1:1)中の1mol/LのLi[PF
6]からなる電解質の比電気容量を
図5に示し、中空三角形(open triangles)が充電の間の比電気容量を表し、中空でない三角形(full triangles)が放電の間の比電気容量を表す。