特許第6593878号(P6593878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DOWAエレクトロニクス株式会社の特許一覧

特許6593878ペロブスカイト型複合酸化物粉末およびその製造方法
<>
  • 特許6593878-ペロブスカイト型複合酸化物粉末およびその製造方法 図000004
  • 特許6593878-ペロブスカイト型複合酸化物粉末およびその製造方法 図000005
  • 特許6593878-ペロブスカイト型複合酸化物粉末およびその製造方法 図000006
  • 特許6593878-ペロブスカイト型複合酸化物粉末およびその製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593878
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】ペロブスカイト型複合酸化物粉末およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 51/00 20060101AFI20191010BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20191010BHJP
   B01J 20/06 20060101ALI20191010BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   C01G51/00 A
   B01J20/30
   B01J20/06 C
   B01D53/14 311
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-38944(P2016-38944)
(22)【出願日】2016年3月1日
(65)【公開番号】特開2017-154922(P2017-154922A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2019年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】碇 和正
(72)【発明者】
【氏名】永富 晶
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/010714(WO,A1)
【文献】 特開2015−093251(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/067898(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 51/00 − 51/12
B01D 53/14
B01J 20/06
B01J 20/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式SrCoFe1−x3−σ(x=0.60〜0.80、σ≧0)で示され、X線回折パターンから得られたペロブスカイト相の(110)面の半価幅からシェラーの式を用いて算出した結晶子径が65nm以上であることを特徴とする、ペロブスカイト型複合酸化物粉末。
【請求項2】
前記ペロブスカイト型複合酸化物粉末の600℃の空気中における単位質量当たりの酸素吸着量が6.0cm/g以上であることを特徴とする、請求項1に記載のペロブスカイト型複合酸化物粉末。
【請求項3】
前記酸素吸収量が6.4cm/g以上であることを特徴とする、請求項2に記載のペロブスカイト型複合酸化物粉末。
【請求項4】
レーザー回折式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積50%粒径D50が1〜100μmであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のペロブスカイト型複合酸化物粉末。
【請求項5】
組成式SrCoFe1−x3−σ(x=0.60〜0.80、σ≧0)で示されるペロブスカイト型複合酸化物粉末の原料粉末を焼成した後に粉砕して、X線回折パターンから得られたペロブスカイト相の(110)面の半価幅からシェラーの式を用いて算出した結晶子径が65nm以上であるペロブスカイト型複合酸化物粉末を製造することを特徴とする、ペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造方法。
【請求項6】
前記粉砕が、内部に回転部材と固定部材が互いに対向して離間して配置された粉砕室内に前記原料粉末の焼成物を入れ、前記回転部材を前記固定部材に対して回転させて前記原料粉末の焼成物を粉砕することによって行われることを特徴とする、請求項5に記載のペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造方法。
【請求項7】
前記回転部材と前記固定部材との間隙の最小値が0.5〜10mmであることを特徴とする、請求項6に記載のペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造方法。
【請求項8】
前記焼成が1030〜1300℃で行われることを特徴とする、請求項5乃至7のいずれかに記載のペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造方法。
【請求項9】
前記焼成が、酸素濃度10体積%以上に維持された焼成室内で行われることを特徴とする、請求項5乃至8のいずれかに記載のペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造方法。
【請求項10】
前記ペロブスカイト型複合酸化物粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積50%粒径D50が1〜100μmであることを特徴とする、請求項5乃至9のいずれかに記載のペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペロブスカイト型複合酸化物粉末およびその製造方法に関し、特に、酸素吸着剤として使用するのに適したペロブスカイト型複合酸化物粉末およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペロブスカイト型複合酸化物が高温において(窒素は殆ど吸着しないが)多量の酸素を選択的且つ可逆的に吸着することが報告されており、このようなペロブスカイト型複合酸化物を酸素吸着剤に使用することが検討されている。
【0003】
このような酸素吸着剤として、組成式La1−xSrCo1−yFe3−z(x=0.05〜1.0、Y=0.0〜0.95、z>0)によって表されるペロブスカイト型酸化物を含む酸素吸着剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、特許文献1のペロブスカイト型酸化物は、供給が不安定で高価な希土類元素であるLaを含んでおり、安定して確保でき且つ安価な原料を使用することができるペロブスカイト型酸化物を使用する酸素吸着剤が望まれている。
【0005】
希土類元素を含まないペロブスカイト型酸化物を含む酸素吸着剤として、組成式SrCoFe1−x3−σ(但し、0.6≦x<0.9、0≦σ≦0.5)で示されるペロブスカイト構造の酸化物を含む酸素吸着剤が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-87941号公報(段落番号0011)
【特許文献2】特開2015-93251号公報(段落番号0009 )
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2のペロブスカイト型酸化物を含む酸素吸着剤は、酸素吸着量が800℃において最大で6.0cm/g程度(600℃では5.5cm/g程度)であり、さらに高い酸素吸着量のペロブスカイト型酸化物を含む酸素吸着剤が望まれている。
【0008】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、単位質量当たりの酸素吸着量が高い安価なペロブスカイト型複合酸化物粉末およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、組成式SrCoFe1−x3−σ(x=0.60〜0.80、σ≧0)で示されるペロブスカイト型複合酸化物粉末において、X線回折パターンから得られたペロブスカイト相の(110)面の半価幅からシェラーの式を用いて算出した結晶子径を65nm以上にすることにより、単位質量当たりの酸素吸着量が高い安価なペロブスカイト型複合酸化物粉末を提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物粉末は、組成式SrCoFe1−x3−σ(x=0.60〜0.80、σ≧0)で示され、X線回折パターンから得られたペロブスカイト相の(110)面の半価幅からシェラーの式を用いて算出した結晶子径が65nm以上であることを特徴とする。
【0011】
このペロブスカイト型複合酸化物粉末は、600℃の空気中における単位質量当たりの酸素吸着量が6.0cm/g以上であるのが好ましく、6.4cm/g以上であるのがさらに好ましい。また、このペロブスカイト型複合酸化物粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積50%粒径D50が1〜100μmであるのが好ましい。
【0012】
また、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造方法は、組成式SrCoFe1−x3−σ(x=0.60〜0.80、σ≧0)で示されるペロブスカイト型複合酸化物粉末の原料粉末を焼成した後に粉砕して、X線回折パターンから得られたペロブスカイト相の(110)面の半価幅からシェラーの式を用いて算出した結晶子径が65nm以上であるペロブスカイト型複合酸化物粉末を製造することを特徴とする。
【0013】
このペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造方法において、原料粉末の焼成物の粉砕が、内部に回転部材と固定部材が互いに対向して離間して配置された粉砕室内に原料粉末の焼成物を入れ、回転部材を固定部材に対して回転させて原料粉末の焼成物を粉砕することによって行われるのが好ましい。この場合、回転部材と固定部材との間隙の最小値が0.5〜10mmであるのが好ましい。また、原料粉末の焼成は、1030〜1300℃で行われるのが好ましく、酸素濃度10体積%以上に維持された焼成室内で行われるのが好ましい。また、ペロブスカイト型複合酸化物粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積50%粒径D50が1〜100μmであるのが好ましい。
【0014】
なお、本明細書中において、ペロブスカイト型複合酸化物粉末の「600℃の空気中における単位質量当たりの酸素吸着量」とは、600℃の空気中におけるペロブスカイト型複合酸化物粉末の重量から、600℃の窒素ガス中におけるペロブスカイト型複合酸化物粉末の重量を差し引いた値に、空気の単位質量当たりの体積を乗じた値をいう。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、単位質量当たりの酸素吸着量が高く、(高価な希土類元素を含まない)安価なペロブスカイト型複合酸化物粉末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明によるペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造方法の実施の形態において焼成物の粉砕に使用するサンプルミルを概略的に示す図である。
図2】本発明によるペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造方法の実施の形態において焼成物の粉砕に使用するヘンシェルミキサーを概略的に示す図である。
図3】本発明によるペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造方法の実施の形態において焼成物の粉砕に使用するインパクトミルを概略的に示す図である。
図4】本発明によるペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造方法の実施の形態において焼成物の粉砕に使用するのに適当でないライカイ機を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明によるペロブスカイト型複合酸化物粉末の実施の形態は、組成式SrCoFe1−x3−σ(x=0.60〜0.80、σ≧0)で示され、X線回折パターンから得られたペロブスカイト相の(110)面の半価幅からシェラーの式を用いて算出した結晶子径が65nm以上である。このように、組成式SrCoFe1−x3−σで示されるペロブスカイト型複合酸化物粉末において、xを0.60〜0.80にすると、異相(単位質量当たりの酸素吸着量が低い層状ペロブスカイト相)である層状ペロブスカイト型複合酸化物の生成を抑制し、単位質量当たりの酸素吸着量を高めることができる。また、結晶子径を65nm以上にすれば、結晶中で酸素吸着に寄与しない結晶面の割合を減らすことができ、単位質量当たりの酸素吸着量を高めることができる。
【0018】
このペロブスカイト型複合酸化物粉末は、600℃の空気中における単位質量当たりの酸素吸着量が6.0cm/g以上であるのが好ましく、6.2cm/g以上であるのがさらに好ましく、6.4cm/g以上であるのが最も好ましい。また、このペロブスカイト型複合酸化物粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積50%粒径D50が1〜100μmであるのが好ましく、5〜50μmであるのがさらに好ましい。
【0019】
また、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造方法では、組成式SrCoFe1−x3−σ(x=0.60〜0.80、σ≧0)で示されるペロブスカイト型複合酸化物粉末の原料粉末を焼成した後に粉砕して、X線回折パターンから得られたペロブスカイト相の(110)面の半価幅からScherrer(シェラー)の式を用いて算出した結晶子径が65nm以上であるペロブスカイト型複合酸化物粉末を製造する。
【0020】
組成式SrCoFe1−x3−σ(x=0.60〜0.80、σ≧0)で示されるペロブスカイト型複合酸化物粉末の原料粉末として、SrとCoとFeのそれぞれの金属元素の酸化物や炭酸塩などの化合物の粉末の混合物を使用することができる。
【0021】
この原料粉末を焼成する前に、原料粉末をビーズミルなどにより粉砕して混合するのが好ましい。原料粉末の粉砕は、原料粉末に水を混合した状態で湿式粉砕することによって行うのが好ましい。この場合、原料粉末を均一に混合するために、ポリアクリル酸アンモニウムなどの分散剤を添加してもよい。原料粉末を湿式粉砕する場合、原料粉末を均一に混合するために、湿式粉砕により得られた原料スラリー中の粉砕物のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積50%粒径D50が好ましくは2.0μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下になるまで粉砕する。また、湿式粉砕により得られた原料スラリーをスプレードライヤーにより熱風中に噴霧して乾燥することにより得られた乾燥造粒物をインパクトミルなどにより粉砕して乾燥粉砕物を得た後、この乾燥粉砕物を焼成してペロブスカイト型複合酸化物粉末を得るのが好ましい。
【0022】
原料粉末の焼成は、1030〜1300℃で行われるのが好ましく、1050〜1250℃であるのがさらに好ましい。焼成温度を1030℃以上(好ましくは1050℃以上)にすると、結晶子径Dを65nm以上に結晶成長させることができ、単位質量当たりの酸素吸着を向上させることができ、一方、焼成温度を1300℃以下(好ましくは1250℃以下)にすれば、焼成物が硬くなり過ぎるのを防止して、焼成物を粉砕し易くすることができる。
【0023】
また、原料粉末の焼成は、酸素濃度10体積%以上に維持された焼成室内で行われるのが好ましい。燃焼室内の酸素濃度を10体積%以上に維持すれば、焼成時の原料粉末中のCoの酸化反応を円滑に行って、ペロブスカイト型複合酸化物の結晶性を向上させることができる。
【0024】
原料粉末の焼成物の粉砕は、内部に回転部材と固定部材が互いに対向して離間して配置された粉砕室内に原料粉末の焼成物を入れ、回転部材を固定部材に対して回転させて原料粉末の焼成物を粉砕することによって行うのが好ましい。この場合、粉砕室内の回転部材と固定部材との間隙(クリアランス)の最小値が0.5〜10mmであるのが好ましく、1〜6mmであるのがさらに好ましい。このクリアランスを0.5mm以上(好ましくは1mm以上)にすれば、原料粉末の焼成物の結晶にダメージを与えずに粉砕することができる。この原料粉末の焼成物の粉砕を行う粉砕装置として、図1に示すようなサンプルミル、図2に示すようなヘンシェルミキサー、図3に示すようなインパクトミルを使用することができる。図1に示すサンプルミル10を使用する場合には、攪拌槽(粉砕室)12内で攪拌羽根(回転部材)14が(矢印Aで示す方向に)回転して粉砕室12内の焼成物16を粉砕するようになっており、粉砕室12内の回転部材14と固定部材(粉砕室12の底面)との間隙(クリアランス)の最小値Dを0.5〜10mm(好ましくは1〜5mm、さらに好ましくは2〜4mm)に設定すればよい。図2に示すヘンシェルミキサー110を使用する場合には、攪拌槽(粉砕室)112内で回転部材(上羽根114aと下羽根114bからなる攪拌羽根の下羽根114b)が(矢印Aで示す方向に)回転して粉砕室112内の焼成物116を粉砕するようになっており、粉砕室112内の回転部材(下羽根114b)と固定部材(粉砕室112の底面)との間隙(クリアランス)の最小値Dを0.5〜10mm(好ましくは1〜6mm、さらに好ましくは4〜6mm)に設定すればよい。図3に示すインパクトミル210を使用する場合には、(粉砕室内の)固定部材(ステータ)212に対向して離間して配置された回転部材(ロータ)214が(矢印Aで示す方向に)回転して、(矢印Bで示すように)焼成物投入口216aから粉砕室内に投入された焼成物を粉砕して粉砕物排出口216bから排出するようになっており、回転部材(ロータ)212と固定部材(ステータ)214との間隙(クリアランス)の最小値Dを0.5〜10mm(好ましくは0.5〜2mm)に設定すればよい。なお、図4に示すようなライカイ機310は、磁器鉢(乳鉢)312の内面に磁器杵(乳棒)314を押し付けて焼成物316を粉砕するようになっており、原料粉末の焼成物の結晶にダメージを与えずに粉砕することができないので、原料粉末の焼成物の粉砕に使用するのは好ましくない。同様に、ボールミルも、原料粉末の焼成物の結晶にダメージを与えずに粉砕することができないので、原料粉末の焼成物の粉砕に使用するのは好ましくない。
【0025】
また、ペロブスカイト型複合酸化物粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積50%粒径D50が1〜100μmであるのが好ましく、5〜50μmであるのがさらに好ましい。
【実施例】
【0026】
以下、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物粉末およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0027】
[実施例1]
まず、ビーズミル(アイメックス株式会社製のSLG−1/2G(容量2.0L))の粉砕室(ベッセル)内に直径1.75mmのZrOビーズ3800gを充填した。また、このビーズミルのバッファータンク内に純水1538gと分散剤としてのポリアクリル酸アンモニウム180gと23.3質量%のアンモニア水128gとを入れた後、このバッファータンク内の液を循環ポンプによりベッセル内に導入してバッファータンクとベッセル間で循環させた。その後、バッファータンク内の攪拌機を回転数300rpmで撹拌させながら、ペロブスカイト型複合酸化物の原料として、SrCO粉末(東罐マテリアル・テクノロジー株式会社製の重慶Grade−A)3308gと、CoCO粉末(正同化学工業株式会社製)2242gと、Fe粉末(ケミライト工業株式会社製のType−D)449gとをバッファータンクに投入してベッセル内に導入し、このベッセル内のアジテータ(攪拌機)を回転数1500rpmで90分間回転させて原料を粉砕し、固形分として原料の粉砕物を含む原料スラリーを得た。この原料スラリー中の粉砕物を溶媒としての水に入れて超音波出力40Wで3分間超音波処理を行った後、得られた粒子の粒度分布を、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製のMT3000II)により(粒子屈折率を2.40、溶媒屈折率を1.333、計算モードをMT3000IIとして)測定したところ、原料スラリー中の粉砕物の体積基準の累積50%粒径D50は1.4μmであった。
【0028】
次に、原料スラリー中の固形分の濃度が60質量%になるように、得られた原料スラリーに純水を添加した後、スプレードライヤー(大川原化工機株式会社製のL−12型)により、ディスク回転数25000rpm、熱風入口温度250℃、排風出口温度100℃、スラリー供給速度11kg/hとして、原料スラリーを熱風中に噴霧して乾燥することにより、乾燥造粒物を得た。この乾燥造粒物の粒度分布を、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製のMT3000II)により(粒子屈折率を2.40、計算モードをMT3000IIとして)測定したところ、乾燥造粒物の体積基準の累積50%粒径D50は35μmであった。
【0029】
次に、得られた乾燥造粒物をインパクトミル(ミルシステム株式会社製のAVIS−150)により粉砕して乾燥粉砕物を得た。
【0030】
次に、得られた乾燥粉砕物2000gを角型焼成サヤ(幅300mm、奥行き300mm、高さ80mmの容器)内に入れ、箱型電気炉(ナーバー社製のN200−S)内へセットし、室温から800℃まで昇温速度6.6℃/分、800℃から1150℃まで昇温速度3.3℃/分で昇温させ、1150℃(焼成温度)で2時間保持して焼成した後、室温まで自然冷却した。
【0031】
次に、得られた焼成物50gをサンプルミル(協立理工株式会社製の小型粉砕器SK−M10)の撹拌槽(試料ケース)内に入れ、この撹拌槽内の攪拌羽根と撹拌槽の底面との間隙(クリアランス)の最小値を3mmとして、攪拌羽根を回転数1600rpmで30秒間回転させる粉砕処理を2回繰り返して粉末(ペロブスカイト型複合酸化物粉末)を得た。
【0032】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、X線回折装置(株式会社リガク製のRINT−2100型)により、X線源としてCo管球を使用して20〜70°/2θの範囲を測定して、X線回折(XRD)測定を行った。このX線回折測定により得られたX線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在を確認したところ、ピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、X線回折パターンから得られたペロブスカイト相の(110)面の半価幅βを用いて、Scherrerの式D=(K・λ)/(β・cosθ)から結晶子径(Dx)を算出したところ、結晶子径(Dx)は73nmであった。なお、Scherrerの式において、Dは結晶子径(nm)、λは測定X線波長(nm)、βは結晶子による回折幅の広がり、θは回折角のブラッグ角、KはScherrer定数を示し、この式中の測定X線波長λを0.17889nm(Co−Kα線波長)、Scherrer定数Kを0.9とした。
【0033】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、BET比表面積測定装置(ユアサイオニクス株式会社製の4ソーブUS)を用いてBET一点法によりBET比表面積を求めたところ、0.90m/gであった。
【0034】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末を溶媒としての水に入れて超音波出力40Wで3分間超音波処理を行った直後に、得られた粒子の粒度分布を、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製のMT3000II)により(粒子屈折率を2.40、溶媒屈折率を1.333、計算モードをMT3000IIとして)測定したところ、体積基準の累積50%粒径D50は43.7μmであった。
【0035】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置(アジレント・テクノロジー株式会社製の720ES)によって組成分析を行ったところ、Sr:Co:Feのモル比が0.99:0.76:0.25であった。
【0036】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末約30mgをアルミナ製の測定セル中に装填した後、この測定セルを示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製のTG/DTA6300)にセットして、装置内の雰囲気ガスとして窒素ガスを500mL/分の流量で流しながら、室温から600℃まで昇温し、温度が600℃で安定した後に、(ペロブスカイト型複合酸化物粉末を充填した)測定セルの重量Wa(g)を記録した。その後、装置内の雰囲気ガスとして窒素ガスに代えて空気を500mL/分の流量で30分間流した。このように装置内の雰囲気ガスとして空気を流すと、測定セル中のペロブスカイト型複合酸化物粉末は、酸素を吸着して結晶中に酸素を取り込んでその重量が増加したが、空気を30分間流した後には重量が安定したので、このときの測定セルの重量Wb(g)を記録した。その後、装置内の雰囲気ガスとして空気に代えて再び窒素ガスを500mL/分の流量で30分間流した後に、測定セルの重量Wc(g)を記録した。その後、装置内の雰囲気ガスとして窒素ガスに代えて再び空気を500mL/分の流量で30分間流した後に、測定セルの重量Wd(g)を記録した。これらの重量(Wa〜Wd)(g)と、測定セルに充填したペロブスカイト型複合酸化物粉末の重量を大気中において室温で秤量した値w(g)に基づいて、単位質量当たりの酸素吸着量(cm/g)={(Wb+Wd−Wa−Wc)/2}×(22400/32)(cm)/w(g)から、ペロブスカイト型複合酸化物粉末の単位質量当たりの酸素吸着量を算出したところ、7.09cm/gであった。
【0037】
[実施例2]
ペロブスカイト型複合酸化物粉末の原料として使用したSrCO粉末、CoCO粉末およびFe粉末の重量をそれぞれ3461g、1867gおよび672gとし、原料の粉砕時間を135分間とした以外は、実施例1と同様の方法により、原料スラリーを得た。この原料スラリー中の粉砕物の粒度分布を実施例1と同様の方法により測定したところ、原料スラリー中の粉砕物の体積基準の50%粒径D50は0.9μmであった。
【0038】
この原料スラリーを使用して実施例1と同様の方法によりペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た後、このペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、結晶子径(Dx)は74nmであった。
【0039】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は0.23m/g、体積基準の累積50%粒径D50は43.0μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.65:0.36であり、単位質量当たりの酸素吸着量は7.76cm/gであった。
【0040】
[実施例3]
原料の粉砕時間を135分間とした以外は実施例1と同様の方法により原料スラリーを得た。この原料スラリー中の粉砕物の粒度分布を実施例1と同様の方法により測定したところ、原料スラリー中の粉砕物の体積基準の50%粒径D50は0.9μmであった。
【0041】
この原料スラリーを使用して実施例1と同様の方法により乾燥造粒物を得た後、この乾燥造粒物を粉砕しなかった以外は実施例1と同様の方法により焼成物を得た。
【0042】
この焼成物1500gをヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製のFM−20C/I)の撹拌槽に入れ、この撹拌槽内の攪拌羽根(の下羽根)と撹拌槽の底面との間隙(クリアランス)の最小値を5mmとして、攪拌羽根(上羽根および下羽根)を回転数1400rpmで3分間回転させる粉砕処理を行って、粉末(ペロブスカイト型複合酸化物粉末)を得た。
【0043】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、結晶子径(Dx)は75nmであった。
【0044】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は0.12m/g、体積基準の累積50%粒径D50は25.7μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.76:0.25であり、単位質量当たりの酸素吸着量は6.97cm/gであった。
【0045】
[実施例4]
焼成温度を1200℃とした以外は実施例3と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た。なお、焼成の際に、箱型電気炉の上部の排ガス口付近の酸素濃度を計測したところ、5.0体積%まで低下していた。
【0046】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、結晶子径(Dx)は75nmであった。
【0047】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は0.13m/g、体積基準の累積50%粒径D50は28.4μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.76:0.25であり、単位質量当たりの酸素吸着量は7.10cm/gであった。
【0048】
[実施例5]
実施例3と同様の方法により得られた原料スラリー中の粉砕物の粒度分布を実施例1と同様の方法により測定したところ、原料スラリー中の粉砕物の体積基準の50%粒径D50は1.0μmであった。
【0049】
この原料スラリーを使用して実施例1と同様の方法により乾燥造粒物を得た後、箱型電気炉内に焼成サヤをセットした後から自然冷却の終了時まで箱型電気炉の上部の排ガス口付近の酸素濃度が10体積%以上を維持するように箱型電気炉内に空気を供給した以外は、実施例4と同様の方法によりペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た。
【0050】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、結晶子径(Dx)は78nmであった。
【0051】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は0.12m/g、体積基準の累積50%粒径D50は30.1μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.76:0.25であり、単位質量当たりの酸素吸着量は7.45cm/gであった。
【0052】
[実施例6]
実施例1と同様の方法により得られた原料スラリー中の粉砕物の粒度分布を実施例1と同様の方法により測定したところ、原料スラリー中の粉砕物の体積基準の50%粒径D50は1.3μmであった。
【0053】
この原料スラリーを使用して実施例1と同様の方法により焼成物を得た後、この焼成物を供給速度200g/分でインパクトミル(ミルシステム株式会社製のピンミルAVIS−150)に投入し、このインパクトミルのロータとステータとの間隙(クリアランス)の最小値を1mmとして、回転数16000rpmで回転するロータとステータとの間を2回通過させる粉砕処理を行って、粉末(ペロブスカイト型複合酸化物粉末)を得た。
【0054】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、結晶子径(Dx)は66nmであった。
【0055】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は0.85m/g、体積基準の累積50%粒径D50は6.4μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.76:0.25であり、単位質量当たりの酸素吸着量は6.49cm/gであった。
【0056】
[実施例7]
焼成温度を1200℃とした以外は実施例6と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た。
【0057】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、結晶子径(Dx)は68nmであった。
【0058】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は0.85m/g、体積基準の累積50%粒径D50は6.7μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.76:0.25であり、単位質量当たりの酸素吸着量は6.64cm/gであった。
【0059】
[実施例8]
実施例3と同様の方法により得られた原料スラリー中の粉砕物の粒度分布を実施例1と同様の方法により測定したところ、原料スラリー中の粉砕物の体積基準の50%粒径D50は1.0μmであった。
【0060】
この原料スラリーを使用して実施例1と同様の方法により乾燥造粒物を得た後、箱型電気炉内に焼成サヤをセットした後から自然冷却の終了時まで箱型電気炉の上部の排ガス口付近の酸素濃度が10体積%以上を維持するように箱型電気炉内に空気を供給し、焼成温度を1050℃とした以外は、実施例6と同様の方法によりペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た。
【0061】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、結晶子径(Dx)は69nmであった。
【0062】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は0.76m/g、体積基準の累積50%粒径D50は7.7μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.76:0.25であり、単位質量当たりの酸素吸着量は6.96cm/gであった。
【0063】
[比較例1]
ペロブスカイト型複合酸化物粉末の原料として使用したSrCO粉末、CoCO粉末およびFe粉末の重量をそれぞれ3354g、2367gおよび279gとした以外は、実施例2と同様の方法により、原料スラリーを得た。この原料スラリー中の粉砕物の粒度分布を実施例1と同様の方法により測定したところ、原料スラリー中の粉砕物の体積基準の50%粒径D50は0.9μmであった。
【0064】
この原料スラリーを使用して実施例1と同様の方法によりペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た後、このペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在が確認され、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていることが確認された。また、結晶子径(Dx)は69nmであった。
【0065】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は0.17m/g、体積基準の累積50%粒径D50は42.1μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.84:0.17であり、単位質量当たりの酸素吸着量は5.95cm/gであった。
【0066】
[比較例2]
焼成温度を1000℃とした以外は実施例1と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た。
【0067】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、結晶子径(Dx)は55nmであった。
【0068】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は1.30m/g、体積基準の累積50%粒径D50は5.2μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.76:0.25であり、単位質量当たりの酸素吸着量は5.11cm/gであった。
【0069】
[比較例3]
焼成温度を1000℃とし、インパクトミルのロータの回転数を18000rpmとしてロータとステータとの間を1回通過させる粉砕処理を行った以外は、実施例6と同様の方法により、粉末(ペロブスカイト型複合酸化物粉末)を得た。
【0070】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、結晶子径(Dx)は58nmであった。
【0071】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は1.07m/g、体積基準の累積50%粒径D50は3.9μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.76:0.25であり、単位質量当たりの酸素吸着量は5.23cm/gであった。
【0072】
[比較例4]
焼成物10gをライカイ機(株式会社石川工場製のAGA)に入れて120分間粉砕した(クリアランスは0)以外は、実施例7と同様の方法により、粉末(ペロブスカイト型複合酸化物粉末)を得た。
【0073】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、結晶子径(Dx)は64nmであった。
【0074】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は2.52m/g、体積基準の累積50%粒径D50は6.6μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.76:0.25であり、単位質量当たりの酸素吸着量は5.99cm/gであった。
【0075】
これらの実施例および比較例のペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造条件および特性を表1および表2に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
表1および表2からわかるように、実施例1〜8のペロブスカイト型複合酸化物粉末は、組成式SrCoFe1−x3−σ(x=0.60〜0.80、σ≧0)で示され、X線回折パターンから得られたペロブスカイト相の(110)面の半価幅からシェラーの式を用いて算出した結晶子径が65nm以上であり、600℃の空気中における単位質量当たりの酸素吸着量が6.4cm/gである。一方、比較例1のペロブスカイト型複合酸化物粉末は、Coのモル比を示すxが0.8より高く、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成され、600℃の空気中における単位質量当たりの酸素吸着量が6.0cm/g以下と低くなる。また、比較例2および比較例3のように焼成温度を1030℃より低い場合や、比較例4のように粉砕室内の回転部材と固定部材との間隙の最小値が0.5mm未満であると、結晶子径が65nm未満になり、600℃の空気中における単位質量当たりの酸素吸着量が6.0cm/g以下と低くなる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によるペロブスカイト型複合酸化物粉末は、単位質量当たりの酸素吸着量が高く、高価な希土類元素を含まないため、安価な酸素吸着剤に使用することができる。
【符号の説明】
【0080】
10 サンプルミル
12、112 撹拌槽(粉砕室)
14 撹拌羽根(回転部材)
16、116、316 焼成物
110 ヘンシェルミキサー
114a 上羽根
114b 下羽根(回転部材)
210 インパクトミル
212 ステータ(固定部材)
214 ロータ(回転部材)
216a 焼成物投入口
216b 粉砕物排出口
310 ライカイ機
312 磁器鉢(乳鉢)
314 磁器杵(乳棒)
図1
図2
図3
図4