【実施例】
【0026】
以下、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物粉末およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0027】
[実施例1]
まず、ビーズミル(アイメックス株式会社製のSLG−1/2G(容量2.0L))の粉砕室(ベッセル)内に直径1.75mmのZrO
2ビーズ3800gを充填した。また、このビーズミルのバッファータンク内に純水1538gと分散剤としてのポリアクリル酸アンモニウム180gと23.3質量%のアンモニア水128gとを入れた後、このバッファータンク内の液を循環ポンプによりベッセル内に導入してバッファータンクとベッセル間で循環させた。その後、バッファータンク内の攪拌機を回転数300rpmで撹拌させながら、ペロブスカイト型複合酸化物の原料として、SrCO
3粉末(東罐マテリアル・テクノロジー株式会社製の重慶Grade−A)3308gと、CoCO
3粉末(正同化学工業株式会社製)2242gと、Fe
2O
3粉末(ケミライト工業株式会社製のType−D)449gとをバッファータンクに投入してベッセル内に導入し、このベッセル内のアジテータ(攪拌機)を回転数1500rpmで90分間回転させて原料を粉砕し、固形分として原料の粉砕物を含む原料スラリーを得た。この原料スラリー中の粉砕物を溶媒としての水に入れて超音波出力40Wで3分間超音波処理を行った後、得られた粒子の粒度分布を、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製のMT3000II)により(粒子屈折率を2.40、溶媒屈折率を1.333、計算モードをMT3000IIとして)測定したところ、原料スラリー中の粉砕物の体積基準の累積50%粒径D
50は1.4μmであった。
【0028】
次に、原料スラリー中の固形分の濃度が60質量%になるように、得られた原料スラリーに純水を添加した後、スプレードライヤー(大川原化工機株式会社製のL−12型)により、ディスク回転数25000rpm、熱風入口温度250℃、排風出口温度100℃、スラリー供給速度11kg/hとして、原料スラリーを熱風中に噴霧して乾燥することにより、乾燥造粒物を得た。この乾燥造粒物の粒度分布を、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製のMT3000II)により(粒子屈折率を2.40、計算モードをMT3000IIとして)測定したところ、乾燥造粒物の体積基準の累積50%粒径D
50は35μmであった。
【0029】
次に、得られた乾燥造粒物をインパクトミル(ミルシステム株式会社製のAVIS−150)により粉砕して乾燥粉砕物を得た。
【0030】
次に、得られた乾燥粉砕物2000gを角型焼成サヤ(幅300mm、奥行き300mm、高さ80mmの容器)内に入れ、箱型電気炉(ナーバー社製のN200−S)内へセットし、室温から800℃まで昇温速度6.6℃/分、800℃から1150℃まで昇温速度3.3℃/分で昇温させ、1150℃(焼成温度)で2時間保持して焼成した後、室温まで自然冷却した。
【0031】
次に、得られた焼成物50gをサンプルミル(協立理工株式会社製の小型粉砕器SK−M10)の撹拌槽(試料ケース)内に入れ、この撹拌槽内の攪拌羽根と撹拌槽の底面との間隙(クリアランス)の最小値を3mmとして、攪拌羽根を回転数1600rpmで30秒間回転させる粉砕処理を2回繰り返して粉末(ペロブスカイト型複合酸化物粉末)を得た。
【0032】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、X線回折装置(株式会社リガク製のRINT−2100型)により、X線源としてCo管球を使用して20〜70°/2θの範囲を測定して、X線回折(XRD)測定を行った。このX線回折測定により得られたX線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在を確認したところ、ピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、X線回折パターンから得られたペロブスカイト相の(110)面の半価幅βを用いて、Scherrerの式D=(K・λ)/(β・cosθ)から結晶子径(Dx)を算出したところ、結晶子径(Dx)は73nmであった。なお、Scherrerの式において、Dは結晶子径(nm)、λは測定X線波長(nm)、βは結晶子による回折幅の広がり、θは回折角のブラッグ角、KはScherrer定数を示し、この式中の測定X線波長λを0.17889nm(Co−Kα線波長)、Scherrer定数Kを0.9とした。
【0033】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、BET比表面積測定装置(ユアサイオニクス株式会社製の4ソーブUS)を用いてBET一点法によりBET比表面積を求めたところ、0.90m
2/gであった。
【0034】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末を溶媒としての水に入れて超音波出力40Wで3分間超音波処理を行った直後に、得られた粒子の粒度分布を、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製のMT3000II)により(粒子屈折率を2.40、溶媒屈折率を1.333、計算モードをMT3000IIとして)測定したところ、体積基準の累積50%粒径D
50は43.7μmであった。
【0035】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置(アジレント・テクノロジー株式会社製の720ES)によって組成分析を行ったところ、Sr:Co:Feのモル比が0.99:0.76:0.25であった。
【0036】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末約30mgをアルミナ製の測定セル中に装填した後、この測定セルを示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製のTG/DTA6300)にセットして、装置内の雰囲気ガスとして窒素ガスを500mL/分の流量で流しながら、室温から600℃まで昇温し、温度が600℃で安定した後に、(ペロブスカイト型複合酸化物粉末を充填した)測定セルの重量Wa(g)を記録した。その後、装置内の雰囲気ガスとして窒素ガスに代えて空気を500mL/分の流量で30分間流した。このように装置内の雰囲気ガスとして空気を流すと、測定セル中のペロブスカイト型複合酸化物粉末は、酸素を吸着して結晶中に酸素を取り込んでその重量が増加したが、空気を30分間流した後には重量が安定したので、このときの測定セルの重量Wb(g)を記録した。その後、装置内の雰囲気ガスとして空気に代えて再び窒素ガスを500mL/分の流量で30分間流した後に、測定セルの重量Wc(g)を記録した。その後、装置内の雰囲気ガスとして窒素ガスに代えて再び空気を500mL/分の流量で30分間流した後に、測定セルの重量Wd(g)を記録した。これらの重量(Wa〜Wd)(g)と、測定セルに充填したペロブスカイト型複合酸化物粉末の重量を大気中において室温で秤量した値w(g)に基づいて、単位質量当たりの酸素吸着量(cm
3/g)={(Wb+Wd−Wa−Wc)/2}×(22400/32)(cm
3)/w(g)から、ペロブスカイト型複合酸化物粉末の単位質量当たりの酸素吸着量を算出したところ、7.09cm
3/gであった。
【0037】
[実施例2]
ペロブスカイト型複合酸化物粉末の原料として使用したSrCO
3粉末、CoCO
3粉末およびFe
2O
3粉末の重量をそれぞれ3461g、1867gおよび672gとし、原料の粉砕時間を135分間とした以外は、実施例1と同様の方法により、原料スラリーを得た。この原料スラリー中の粉砕物の粒度分布を実施例1と同様の方法により測定したところ、原料スラリー中の粉砕物の体積基準の50%粒径D
50は0.9μmであった。
【0038】
この原料スラリーを使用して実施例1と同様の方法によりペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た後、このペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、結晶子径(Dx)は74nmであった。
【0039】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D
50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は0.23m
2/g、体積基準の累積50%粒径D
50は43.0μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.65:0.36であり、単位質量当たりの酸素吸着量は7.76cm
3/gであった。
【0040】
[実施例3]
原料の粉砕時間を135分間とした以外は実施例1と同様の方法により原料スラリーを得た。この原料スラリー中の粉砕物の粒度分布を実施例1と同様の方法により測定したところ、原料スラリー中の粉砕物の体積基準の50%粒径D
50は0.9μmであった。
【0041】
この原料スラリーを使用して実施例1と同様の方法により乾燥造粒物を得た後、この乾燥造粒物を粉砕しなかった以外は実施例1と同様の方法により焼成物を得た。
【0042】
この焼成物1500gをヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製のFM−20C/I)の撹拌槽に入れ、この撹拌槽内の攪拌羽根(の下羽根)と撹拌槽の底面との間隙(クリアランス)の最小値を5mmとして、攪拌羽根(上羽根および下羽根)を回転数1400rpmで3分間回転させる粉砕処理を行って、粉末(ペロブスカイト型複合酸化物粉末)を得た。
【0043】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、結晶子径(Dx)は75nmであった。
【0044】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D
50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は0.12m
2/g、体積基準の累積50%粒径D
50は25.7μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.76:0.25であり、単位質量当たりの酸素吸着量は6.97cm
3/gであった。
【0045】
[実施例4]
焼成温度を1200℃とした以外は実施例3と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た。なお、焼成の際に、箱型電気炉の上部の排ガス口付近の酸素濃度を計測したところ、5.0体積%まで低下していた。
【0046】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、結晶子径(Dx)は75nmであった。
【0047】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D
50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は0.13m
2/g、体積基準の累積50%粒径D
50は28.4μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.76:0.25であり、単位質量当たりの酸素吸着量は7.10cm
3/gであった。
【0048】
[実施例5]
実施例3と同様の方法により得られた原料スラリー中の粉砕物の粒度分布を実施例1と同様の方法により測定したところ、原料スラリー中の粉砕物の体積基準の50%粒径D
50は1.0μmであった。
【0049】
この原料スラリーを使用して実施例1と同様の方法により乾燥造粒物を得た後、箱型電気炉内に焼成サヤをセットした後から自然冷却の終了時まで箱型電気炉の上部の排ガス口付近の酸素濃度が10体積%以上を維持するように箱型電気炉内に空気を供給した以外は、実施例4と同様の方法によりペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た。
【0050】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、結晶子径(Dx)は78nmであった。
【0051】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D
50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は0.12m
2/g、体積基準の累積50%粒径D
50は30.1μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.76:0.25であり、単位質量当たりの酸素吸着量は7.45cm
3/gであった。
【0052】
[実施例6]
実施例1と同様の方法により得られた原料スラリー中の粉砕物の粒度分布を実施例1と同様の方法により測定したところ、原料スラリー中の粉砕物の体積基準の50%粒径D
50は1.3μmであった。
【0053】
この原料スラリーを使用して実施例1と同様の方法により焼成物を得た後、この焼成物を供給速度200g/分でインパクトミル(ミルシステム株式会社製のピンミルAVIS−150)に投入し、このインパクトミルのロータとステータとの間隙(クリアランス)の最小値を1mmとして、回転数16000rpmで回転するロータとステータとの間を2回通過させる粉砕処理を行って、粉末(ペロブスカイト型複合酸化物粉末)を得た。
【0054】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、結晶子径(Dx)は66nmであった。
【0055】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D
50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は0.85m
2/g、体積基準の累積50%粒径D
50は6.4μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.76:0.25であり、単位質量当たりの酸素吸着量は6.49cm
3/gであった。
【0056】
[実施例7]
焼成温度を1200℃とした以外は実施例6と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た。
【0057】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、結晶子径(Dx)は68nmであった。
【0058】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D
50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は0.85m
2/g、体積基準の累積50%粒径D
50は6.7μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.76:0.25であり、単位質量当たりの酸素吸着量は6.64cm
3/gであった。
【0059】
[実施例8]
実施例3と同様の方法により得られた原料スラリー中の粉砕物の粒度分布を実施例1と同様の方法により測定したところ、原料スラリー中の粉砕物の体積基準の50%粒径D
50は1.0μmであった。
【0060】
この原料スラリーを使用して実施例1と同様の方法により乾燥造粒物を得た後、箱型電気炉内に焼成サヤをセットした後から自然冷却の終了時まで箱型電気炉の上部の排ガス口付近の酸素濃度が10体積%以上を維持するように箱型電気炉内に空気を供給し、焼成温度を1050℃とした以外は、実施例6と同様の方法によりペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た。
【0061】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、結晶子径(Dx)は69nmであった。
【0062】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D
50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は0.76m
2/g、体積基準の累積50%粒径D
50は7.7μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.76:0.25であり、単位質量当たりの酸素吸着量は6.96cm
3/gであった。
【0063】
[比較例1]
ペロブスカイト型複合酸化物粉末の原料として使用したSrCO
3粉末、CoCO
3粉末およびFe
2O
3粉末の重量をそれぞれ3354g、2367gおよび279gとした以外は、実施例2と同様の方法により、原料スラリーを得た。この原料スラリー中の粉砕物の粒度分布を実施例1と同様の方法により測定したところ、原料スラリー中の粉砕物の体積基準の50%粒径D
50は0.9μmであった。
【0064】
この原料スラリーを使用して実施例1と同様の方法によりペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た後、このペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在が確認され、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていることが確認された。また、結晶子径(Dx)は69nmであった。
【0065】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D
50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は0.17m
2/g、体積基準の累積50%粒径D
50は42.1μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.84:0.17であり、単位質量当たりの酸素吸着量は5.95cm
3/gであった。
【0066】
[比較例2]
焼成温度を1000℃とした以外は実施例1と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た。
【0067】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、結晶子径(Dx)は55nmであった。
【0068】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D
50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は1.30m
2/g、体積基準の累積50%粒径D
50は5.2μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.76:0.25であり、単位質量当たりの酸素吸着量は5.11cm
3/gであった。
【0069】
[比較例3]
焼成温度を1000℃とし、インパクトミルのロータの回転数を18000rpmとしてロータとステータとの間を1回通過させる粉砕処理を行った以外は、実施例6と同様の方法により、粉末(ペロブスカイト型複合酸化物粉末)を得た。
【0070】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、結晶子径(Dx)は58nmであった。
【0071】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D
50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は1.07m
2/g、体積基準の累積50%粒径D
50は3.9μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.76:0.25であり、単位質量当たりの酸素吸着量は5.23cm
3/gであった。
【0072】
[比較例4]
焼成物10gをライカイ機(株式会社石川工場製のAGA)に入れて120分間粉砕した(クリアランスは0)以外は、実施例7と同様の方法により、粉末(ペロブスカイト型複合酸化物粉末)を得た。
【0073】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折(XRD)測定を行ったところ、X線回折パターンにおいて、2θ=37〜38°付近に現れる異相である層状ペロブスカイトのピークの存在は確認されず、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成されていないことが確認された。また、結晶子径(Dx)は64nmであった。
【0074】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、BET比表面積、体積基準の累積50%粒径D
50、Sr:Co:Feのモル比、単位質量当たりの酸素吸着量を求めたところ、BET比表面積は2.52m
2/g、体積基準の累積50%粒径D
50は6.6μm、Sr:Co:Feのモル比は0.99:0.76:0.25であり、単位質量当たりの酸素吸着量は5.99cm
3/gであった。
【0075】
これらの実施例および比較例のペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造条件および特性を表1および表2に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
表1および表2からわかるように、実施例1〜8のペロブスカイト型複合酸化物粉末は、組成式SrCo
xFe
1−xO
3−σ(x=0.60〜0.80、σ≧0)で示され、X線回折パターンから得られたペロブスカイト相の(110)面の半価幅からシェラーの式を用いて算出した結晶子径が65nm以上であり、600℃の空気中における単位質量当たりの酸素吸着量が6.4cm
3/gである。一方、比較例1のペロブスカイト型複合酸化物粉末は、Coのモル比を示すxが0.8より高く、異相である層状ペロブスカイト型複合酸化物が生成され、600℃の空気中における単位質量当たりの酸素吸着量が6.0cm
3/g以下と低くなる。また、比較例2および比較例3のように焼成温度を1030℃より低い場合や、比較例4のように粉砕室内の回転部材と固定部材との間隙の最小値が0.5mm未満であると、結晶子径が65nm未満になり、600℃の空気中における単位質量当たりの酸素吸着量が6.0cm
3/g以下と低くなる。