(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の検体処理システムについて詳細に説明する。
本発明の検体処理システムは、複数のアームを有する本体部と、上記アームに脱着可能に装着される複数の手先ツールとを備えたロボットを含み、上記アームに装着された手先ツールの届く範囲内に検体に対して処理を行うための処理用器具が配置される。
そして、検体に対して行う処理に応じて、上記ロボットが適切な手先ツールを選択し上記アームに装着して処理を行うものである。
【0012】
<本体部>
ロボットの本体部1は、
図1に示すように、複数のアーム2を有するものであり、上記ロボットは、検体処理動作を制御する演算装置、記憶装置、入出力装置等を備えた制御装置と相互通信可能に接続される。
【0013】
上記アーム2は、マニピュレータとして機能するものであり、基台3上に第七関節部407によって旋回可能に設けられた胴体部4の左右両側にそれぞれ一本ずつ、合計二本設けられることが好ましい。
アームの数は、多ければ多いほど、複数のアームを協調させることで複雑な操作・作業が可能になるが、本発明においては、処理に応じて手先ツールを交換するものであるため、可能な操作・作業の幅が格段に広いものである。したがって、アームが左右に二本あれば熟練者のテクニックやコツを再現した細かな検体処理が可能であり、さらに、省スペース化を図ることが可能となる。
【0014】
上記左右のアーム2(R、L)は、胴体部4から順に、肩部21(R、L)、上腕部22(R、L)、第一前腕部23(R、L)、第二前腕部24(R、L)、手首部25(R、L)がそれぞれ関節部を介して連結されている。そして、上記の関節部それぞれには、各関節部を回転駆動するサーボモータを備えるアクチュエータ及び力覚センサが設けられる。
【0015】
上記肩部21は、ロボットの長手方向と略平行方向の回転軸を有する第一関節部201(R、L)によって回転可能に胴体部4に連結され、上記第一関節部201によって、アーム2をひねり方向に動作させることが可能となる。
【0016】
上記上腕部22は、前記第一関節部201の回転軸方向と略直交方向の回転軸を有する第二関節部202(R、L)によって上記肩部21に対して回転可能に連結され、上記第二関節部202の回転によって上記上腕部22より下部のアームが上下方向に動く。
【0017】
上記第一前腕部23は、上記第二関節部202の回転軸方向と略平行方向の回転軸を有する第三関節部203(R、L)によって上記上腕部22に対して回転可能に連結され、上記第二関節部202と同様、上記第一前腕部23より下部のアームが上下方向に動く。そして、上記第二関節部202と第三関節部203とが協調して回転することで、装着した手先ツールを前後方向に動かすことが可能となる。
【0018】
また、上記第二前腕部24は、上記第三関節部203の回転軸方向と略直交方向の回転軸を有し、ひねり方向に回転する第四関節部204(R、L)を有し、第四関節部204(R、L)によって処理用器具を傾けたり裏返したりする動作が可能となる。
【0019】
上記手首部25は、上記第四関節部204の回転軸方向と略直交方向の回転軸を有する第五関節部205(R、L)によって上記第二前腕部24に対して回転可能に連結される。
また、上記手首部25の先端には、前記第五関節部205の回転軸方向と略直交方向の回転軸を有する第六関節部206(R、L)を有する。また、上記第六関節部206の回転によって自在に回転する手先ツールを装着する装着部26を備える。該装着部26に装着された手先ツールは、上記第六関節部206の回転に伴って回転する。
【0020】
上記の各関節部が互いに協調して回転することで、上記ロボットの周囲に配置された処理用器具との干渉を避けて作業することが可能となる。
なお、アームの関節部は、回転軸方向が異なる関節部が3以上あればよく、6つに限られるものではない。
【0021】
上記各関節部に設けられたアクチュエータは、それぞれ、減速機を備えるサーボモータ等により構成されており、各アクチュエータの回転位置は、各アクチュエータに設けられたエンコーダからの信号として、上記制御装置に入力される。
【0022】
同様に、各関節部に設けられた力覚センサからの信号も上記制御装置に入力され、上記各アクチュエータによる関節部の回転駆動にフィードバックされる。
図1において、胴体部に備える2本アームは左右対称の構成であり、同一の符号を付して説明を省略する。
【0023】
ここで上記手首部と手先ツールとの装着部について説明する。
手先ツールを装着する手首部の装着部と手先ツールの手首部との接合部を
図2に示す。
手先ツールの接合部51に係合穴511が設けられ、他方、手首部の先端に設けられた手先ツールを装着する装着部26には、上記係合穴511と係合する爪261が設けられる。そして、エアチャックによって手首ツールの脱着が行われる。
具体的には、上記手首部の装着部26の爪261をエアによって動作させ、上記手先ツールの接合部の係合穴511に引っ掛けることで、手首部25に手先ツールが装着される。
【0024】
また、上記装着部及び接合部にはコネクタ512が備えられ、手先ツールの把持部材等を駆動するための電力、電気信号や空圧が本体部から送られ、また、手先ツールから本体部への電気信号の転送が行われる。
【0025】
上記手首部25には、ハンドカメラ27を備えることが好ましい。手首部の先端のカメラで撮影した画像を2値化処理することで、手先ツールで把持した処理用器具内での被処理検体の位置や状態、例えば、傾けたシャーレ内の被処理検体の存在範囲等を確実に認識することが可能となる。したがって、シャーレ内の被処理検体に直接薬液を注液したり、シャーレの縁から薬液を伝わせて注液を穏やかに行ったりすることや、廃液後のシャーレ内の残液の有無の確認等、精緻な操作・作業が可能になる。
上記ハンドカメラ27は、汚れ防止の観点から防汚カバー271を備えることが好ましい。
【0026】
上記ハンドカメラ27に加えて、ステレオカメラ61を備えることが好ましい。ステレオカメラ61を備えることで、実験器具等の処理用器具の位置、大きさ、距離や、作業台の空きスペース等を認識することができ、実験器具等の配置が変化しても検体処理を行うことができる。また、上記実験器具や作業台等の端部にはマーカーを設けることが好ましい。上記マーカーにより処理用器具の大きさ等をより確実に認識することができる。
具体的には、作業台等の端部に設けられたマーカーにより作業台等の外縁を認識し、該作業台上、すなわち、認識エリア内を撮影して得られた画像を2値化処理して、実験器具の有無、大きさ、形状を認識する。そして、手先ツールに設けられたファイバーセンサーからの情報、上記ハンドカメラ及びステレオカメラからの情報とから実験器具の正確な位置を認識する。
【0027】
上記ステレオカメラ61は本体上部に設けることが好ましく、胴体部4の上にステレオカメラを備える頭部6を設けることが好ましい。上記頭部6は、回転軸が互いに略直交する第八関節部608と図示しない第九関節部を介して胴体部4に連結されることが好ましい。上記第八関節部608と第九関節部とによって頭部6を上下左右に動かすことができ、胴体部4を旋回させることなく広範囲の撮像が可能となる。
【0028】
上記本体部はスライドレール7上に設置することができる。本体部がスライドレール7上を移動することで作業可能範囲が広がり、多くの器具等を必要とする複雑な検体処理や、使用する器具が異なる複数種の検体処理等を、ロボットの周囲に必要な処理用器具を配置することで行うことが可能となる。
【0029】
処理用器具を配置する作業台8のレイアウト例を
図3に示す。本発明の検体処理システムにおけるロボットは、胴体部を旋回可能にする第七関節部407を有するため、ロボットの正面だけでなく、
図3(a)に示すように、左右や背面にも処理用器具を配置することができる。また、スライドレールを設けることで、
図3(b)に示すように、アームに装着された手先ツールの届く範囲が大幅に拡大し、処理用器具の配置の自由度が大きくなる。
また、
図3(c)に示すように、スライドレール上にロボットを複数配置し、複数のロボットを協調させて検体処理を行ってもよい。
なお、
図3には直線状のスライドレール7を示したが、曲線部を有してもよく、円形や楕円形であってもよい。
【0030】
<手先ツール>
本発明の検体処理システムは、アームの脱着可能に装着される複数の手先ツールを備え、行う処理に応じた手先ツールを選択し上記アーム2に装着して検体処理を行う。
手先ツールとしては、試験管、ビーカー、シャーレ、スクレーパー、ハケ、ガラス棒等の器具を把持する把持ハンドや、ピペットを操作するピペット操作ハンド等が挙げられる。
【0031】
図4(a)は、把持ハンド5Aの例を示す平面図であり、
図4(b)はシャーレ81を把持した状態を示す側面図である。上記把持ハンド5Aは、上記装着部26との接合部51と、該接合部51の側方に突出して設けられた2つの把持部材52で構成される把持部材対と、シャーレ等の被把持物の有無を検知する図示しないファイバーセンサーとを有する。
上記2つの把持部材52は、対向する側に略円弧上の凹部521が設けられ、2つ把持部材52が互いに遠近する方向に移動して処理用器具を把持する。なお、上記円弧状の凹部521は、シャーレ81や試験管83等と把持部材との接触面積が大きくなればよく、シャーレ81や試験管83の外形と同一形状をしている必要はない。
図4に示す把持ハンド5Aによれば、シャーレ等の上方から把持ハンド5Aを下してシャーレ等を把持するだけでなく、シャーレ等の側方から把持ハンド5Aの把持部材52侵入させて把持することができる。
【0032】
図5(a)は、他の把持ハンド5Bの例を示す平面図であり、
図5(b)はシャーレ81の蓋82を把持した状態を示す側面図である。
図5に示す把持ハンド5Bは、上記装着部26との接合部51と、該接合部51の側方に突出して設けられた2つの把持部材52で構成される把持部材対とを有し、2つの把持部材それぞれの下側にゴム等のすべり止めを有する把持突起522を2つずつ備える。また、いずれか一方の把持部材52の上側、すなわち、上記把持突起522とは反対側にフック523が設けられる。
図5に示す把持ハンド5Bによれば、シャーレ等の上端部を把持することができるため、障害物よけてシャーレ等を置くことができる。具体的には、後述する
図6に示す把持ハンド5Cの把持突起522等と干渉することなく、シャーレ81を持ち替えることができる。
また、恒温槽等のドアの下部に設けられた図示しない突起に上記フック523を引っ掛けることで、シャーレ等を把持したままドアを開けることができる。
【0033】
図6(a)は、さらに他の把持ハンド5Cでシャーレ81を把持した状態の例を示す平面図であり、
図6(b)はその側面図である。
図6に示す把持ハンド5Cは、2つの把持部材52それぞれの上側にゴム等のすべり止めを有する把持突起522を2つずつ有する。また、いずれか一方の把持部材の下側にフック523が設けられる。
図6に示す把持ハンド5Cの把持部材は、
図4に示す把持ハンドの把持部材52とは異なり、円弧状の凹部521を有さず、2つの把持部材の対向する側に直線部524を有する。2つの把持部材52の対向する側が直線状であることで、把持部材52上にシャーレ81等の縁が載った状態でしっかりと把持できるため、シャーレ等を搖動させて検体を撹拌する等の操作ができる。
また、恒温槽等のドアの上部に設けられた突起に上記フック523を引っ掛けることで、シャーレ等を把持したままドアを開けることができる。
【0034】
図7(a)は、さらに他の把持ハンド5Dの例を示す平面図であり、
図7(b)は試験管83を把持した状態を示す側面図である。2つの把持部材52の対向する側の略円弧上の凹部521が、試験管83の把持に適した形状をしている他は、上記
図4に示す把持ハンド5Aと同様である。
【0035】
図8に示す把持ハンド5Eは、
図4に示す把持ハンド5Aの把持部材対を、該把持部材対の2つの把持部材52が遠近する方向と直交する方向、すなわち、上下方向に複数の把持部材対を備えるものである。そして、上記2つ把持部材52が遠近する方向と略直交方向(上下方向)に、上記把持部材対のいずれか一方又は両方が移動して遠近する。
上記把持部材対が遠近することで、
図9示すように、上側の把持部材対でシャーレの蓋82を把持し、下側の把持部材対でシャーレ81を把持することができる。例えば、下側の把持対を支えるロッド525を伸ばし、上記2つの把持部材対の間隔を広げることでシャーレ等の蓋の開閉をワンハンドで行うことが可能となる。
【0036】
上記把持ハンド5A〜5Eの把持部材対は、把持部材52の根元を軸として互いに反対方向に回転させ、把持部材対の先端が最も遠近するように移動させてもよいが、2つの把持部材同士を互いに平行移動させて遠近させることが好ましい。平行移動させることで様々な大きさの処理用器具の把持が可能になる。
【0037】
図10(a)は、さらに他の把持ハンド5Fの例を示す斜視図であり、
図10(b)は、該把持ハンド5Fでスクレーパー84を把持した状態を示す斜視図である。
図10に示す把持ハンド5Fは、上記の把持ハンド5A〜5Eとは把持部材52の配置が異なるものであり、2つの把持部材52の合わせ面が手先ツールを回転させる上記第六関節部206の回転軸の略延長線上に配置される。該把持ハンド5Fによれば、例えば、上記第六関節部206を回転させることで、把持ハンド5Fが把持するスクレーパー84の向きを変えることができる。上記第六関節部206の回転とアーム2の前後動とを協調させることで、シャーレ81の縁に沿ってスクレーパー84を動かすことができ、検体等を残さず掻き取ることが可能となる。
なお、2つの把持部材52はスクレーパーの柄に合わせた凹部521を有することが好ましい。
【0038】
上記各把持ハンド5A〜5Fの把持部材対は、それぞれ、アクチュエータ及び力覚センサを備え、2つの把持部材52の間隔や、力覚センサからの信号が上記制御装置に入力され、アクチュエータによる把持部材52の駆動にフィードバックされる。
【0039】
上記各把持ハンド5A〜Fは、基台3に設けられた(図示しない)載置台に置かれることが好ましい。基台3に設けられた載置台に置くことで本体部1がスライドレール7上を移動しても、常に把持ハンドがアーム2の可動域内にあるため、手先ツールを交換する際、本体部1が移動して手先ツールを取りに行く必要がなく、作業効率が向上する。
【0040】
図11に示すピペット操作ハンド5Gは、上記装着部26との接合部51、ピペットを固定するホルダ53、ピペット85のプッシュボタン851を押す押圧部材54を備え、該押圧部材54はサーボモータ等を有するアクチュエータにより駆動される。また、押圧部材54の押圧力を力覚センサで検知し、該力覚センサらの信号を制御装置に転送し、上記アクチュエータの駆動にフィードバックすることで、薬液の吸入、排出及び、ディスポーザブルチップ852の廃棄がワンハンドで行われる。
【0041】
上記ピペット操作ハンド5Gは、ワンハンドでピペットを操作できるため、ピペット85を傾けた状態での注液等が可能であり、試験管83の内壁を伝わせた注液等、熟練者が行う細かな作業をまねることが可能となる。
【0042】
また、上記
図8、9に示す把持ハンド5Eと
図11に示すピペット操作ハンド5Gとを協調させることで、例えば、
図12に示すように、シャーレ81の蓋82を僅かに開いて処理がすることが可能となる。したがって、シャーレ内の検体が外界に曝されることを最小限にする等、熟練者のテクニックをまねることが可能になるだけでなく、蓋82を外して置く動作を省略でき作業効率が大幅に向上する。
【0043】
上記ピペット操作ハンド5Gは、特定の薬液や処理用器具と共に使用されることが多く、基台3に設けられた載置台に置くだけでなく、上記薬液や処理用器具等の近くにおいてもかまわない。
【0044】
<検体処理システム>
本発明の検体処理システムは、検体(細胞 血液、組織、尿等)に対して、試薬の注入、撹拌、分離、上澄み液の吸引、加熱や冷却等の処理を実行するシステムであり、スライドレール7上を移動する上記ロボットのアーム2の先端に装着された手先ツールが届く範囲内に処理用器具を有する。
処理用器具としては、シャーレ、シャーレ台、スクレーパー、スクレーパー立て、試験管、試験管立て、ピペット、ピペット立て、ディスポーザブルチップ、ディスポーザブルチップ立て、恒温槽、遠心機、撹拌機、加熱・冷却器、及びこれらを載置する作業台、廃液タンク、廃棄ボックス等、検体処理に使用される器具が挙げられる。
【0045】
上記シャーレは、検体を収納する蓋付きの平皿であり、手先ツールが届く範囲内に配置されたシャーレ台上に載置される。上記シャーレを用いるときは、例えば
図4〜6、
図8に示す把持ハンド5A〜5C、5Eが用いられる。
【0046】
上記スクレーパーは、検体を掻き混ぜたり、掻き寄せたりするための器具であり、スクレーパー立てに並置されている。上記スクレーパーを用いるときは、例えば
図10に示す把持ハンド5Fが用いられる。
【0047】
また、上記試験管は、検体に対して様々な処理を行うための器具であり、試験管立てに並置されており、試験管立ては作業台の他、恒温槽等にも配置される。上記試験管としては、通常の試験管の他、遠心機に使用可能なマイクロチューブ等が含まれる。
上記試験管を用いるときは、例えば
図7に示す把持ハンド5Dが用いられる。
【0048】
上記ピペットは、試薬や上澄み液を吸引・注入するための機器であり、本発明においては、容量が異なる容量固定型のピペットを複数備える。
上記各ピペットは、それぞれ、
図7に示すピペット操作ハンド5Gに定着して設けられ、各ピペット操作ハンド5Gがピペット立てに載置される。また、上記ピペット立ての近傍には、ディスポーザブルチップ立てに配置されたディスポーザブルチップを備える。
【0049】
上記恒温槽は、例えば、CO
2インキュベーター等の検体を培養するための機器であり、加熱・冷却器は、検体の加熱・冷却を行うための機器である。これらの機器には検体が収納されたシャーレや試験管が収容される。
【0050】
上記遠心機は、試験管内の検体を構成する成分を、遠心力により分離又は分画するための機器であり、また上記撹拌機は、試験管内の検体を撹拌するための機器である。
【0051】
上記廃液タンクは使用後の薬液等を捨てる容器であり、廃棄ボックスは使用済のスクレーパー、ディスポーザブルチップ等の消耗品を捨てる容器である。
【0052】
処理用機器としては、上記の機器に限られず他の機器を含んでいてもよく、また、上記機器のうち1つ以上の機器を省略してもかまわない。
【0053】
次に、検体処理システムの動作について説明する。
上記ロボットの動作は上記制御装置によって制御され、上記ロボットは上記制御装置からの動作指令が入力されることで動作を開始する。検体処理は両方のアームを協調して動作させて行うが、作業によってはいずれか一方のアームのみで行ってもよい。
【0054】
上記制御装置からの指令を受けるとロボットは、一方のアーム2(R)を動かし、アーム2(R)の装着部26と、基台3の載置台に載置された
図5に示す把持ハンド5Bの接合部51とを合わせてアーム2(R)に上記把持ハンド5Bを装着する。また、他方のアーム2(L)を動かし、アーム2(L)の装着部26と、基台3の載置台に載置された
図6に示す把持ハンド5Cの接合部51とを合わせてアーム2(L)に上記把持ハンド5Cを装着する。
【0055】
一方のアーム2(R)を動かし、
図5に示す把持ハンド5Bを用い、作業台8上の検体(例えば、細胞)が入ったシャーレ81の蓋82を上方から把持して蓋82を持ち上げて開け、該蓋82をシャーレ81の横に置く。そして、同じアーム2(R)を動かし把持ハンド5Bで作業台8上の検体が入ったシャーレ81を把持し、他方のアーム2(L)に装着された
図6に示す把持ハンド5C上に検体が入った上記シャーレ81を置く。
図6に示す把持ハンド5Cは該シャーレを把持することで、
図5に示す把持ハンド5Bから
図6に示す把持ハンド5Cに持ち替えが行われる。
【0056】
一方のアーム2(R)は、
図5に示す把持ハンド5Bを外して所定の載置台上に置き、アーム2(R)を動かして
図11に示すピペット操作ハンド5Gを装着する。そして、ディスポーザブルチップ立て上にアーム2(R)を動かし、ハンドカメラ27でディスポーザブルチップ852有無(位置)を認識し、ピペット85をディスポーザブルチップ852に押し付けて嵌め込む。
【0057】
その後、一方のアーム2(R)は、ピペット操作ハンド5Gの押圧部材54でピペット85のプッシュボタン851を押しながら、ピペットの先端を薬液に浸け、プッシュボタン851を離して定量の薬液をピペット内に吸入する。
【0058】
そして、他方のアーム2(L)に装着された把持ハンド5Cで把持している検体が入ったシャーレ81上にピペット85の先端を移動させ、ハンドカメラ27でシャーレ81内の検体の位置を確認し、ピペット85のプッシュボタン851を押して所望の位置に薬液を滴下する。
その後、他方のアーム2(L)を動かして歳差運動のようにシャーレ81を揺らし、薬液を検体全体に行きわたらせる。このように、
図6に示す把持ハンド5Cによれば、シャーレ81の底部の縁が把持部材52上に載った状態で把持することができ、かつシャーレの側壁が把持突起522で押さえているため、シャーレ81を揺らしてもずれることがない。
このとき、一方のアーム2(R)は、廃棄ボックス上でピペット操作ハンド5Gの押圧部材54でピペット85のプッシュボタン851を最後まで押し込み、ディスポーザブルチップ852を廃棄ボックスに投棄する。そして、ピペット操作ハンド5Gを載置台に置き、再び
図5に示す把持ハンド5Bを装着する。
【0059】
薬液を検体全体に行きわたらせたら、他方のアーム2(L)で把持している検体が入ったシャーレ81を、一方のアーム2(R)に装着した把持ハンド5Bに持ち替える。
【0060】
その後、他方のアーム2(L)に装着された
図6に示す把持ハンド5Cのフック523を恒温槽のドアの下部に設けられた突起に引っ掛けて開ける。そして、上記フック523を恒温槽内のスライド棚に設けられた突起に引っ掛け、スライド棚を引き出す。
なお、
図7に示す把持ハンド5Dや、
図10に示す把持ハンド5Fを用いて恒温槽のドアを開けたり、スライド棚を引き出したりしてもよく、必ずしもドアや棚に上記フックを引っ掛けるための突起を設ける必要はない。
【0061】
そして、一方のアーム2(R)に装着された把持ハンド5Bで把持しているシャーレ81をスライド棚上に置いた後、アーム2(R)を動かして把持ハンド5Bでシャーレの蓋82を把持し、スライド棚上のシャーレ81に蓋をする。その後、スライド棚を押して中に戻し、恒温槽のドアを押して閉める。
【0062】
所定時間が経過したら、一方のアーム2(R)に装着されている
図5に示す把持ハンド5Bを載置台に置き、
図8に示す把持ハンド5Eを装着する。他方のアーム(L)に装着された
図6に示す把持ハンド5Cのフック523を恒温槽のドアに引掛けて開ける。そして、上記フック523を恒温槽内のスライド棚に引掛け、スライド棚を引き出す。
【0063】
そして、
図8に示す把持ハンド5Eの上側の把持部材対でシャーレの蓋82を把持し、下側の把持部材対でシャーレ81を把持し、シャーレを恒温槽からとり出す。
その後、他方のアーム(L)に装着された把持ハンド5Cのフック523を用いてスライド棚を元に戻し、恒温槽のドアを閉める。そして、他方のアーム2(L)は、
図6に示す把持ハンド5Cを所定の載置台に置き、
図11に示すピペット操作ハンド5Gを装着する。そして、ディスポーザブルチップ852をピペット85に嵌め込み、押圧部材54でピペット85のプッシュボタン851を押しながら、ピペット85の先端を薬液に浸け、プッシュボタン851を離して定量の薬液をピペット内に注入する。
【0064】
その後、
図8に示す把持ハンド5Eのロッド525を動かして、
図12に示すようにシャーレ81の蓋82を僅かに開き、ハンドカメラ27でピペット85の先端とシャーレ81との位置を確認してシャーレ内に薬液を滴下する。薬液の添加が終了したら、すぐに上記把持ハンドのロッド525を動かして蓋をする。そして蓋をしたシャーレ81をスライド棚に置き、スライド棚を押して中に戻し、恒温槽のドアを閉める。
そして、他方のアーム(L)は、廃棄ボックス上で、ピペット操作ハンド5Gの押圧部材54でピペット85のプッシュボタン851を最後まで押し込み、ディスポーザブルチップ852を廃棄ボックスに投棄する。その後ピペット操作ハンド5G、及び、
図8に示す把持ハンド5Eを所定の載置台に置く。
【0065】
所定時間が経過したら、一方のアーム2(R)を動かし、アーム2(R)の装着部26と、基台3の載置台に載置された
図5に示す把持ハンド5Bの接合部51とを合わせてアーム2(R)に上記把持ハンド5Bを装着する。また、他方のアーム2(L)を動かし、アーム2(L)の装着部26と、基台3の載置台に載置された
図6に示す把持ハンド5Cの接合部51とを合わせてアーム(L)に上記把持ハンドCを装着する。
そして、他方のアーム2(L)に装着された
図6に示す把持ハンド5Cのフック523を恒温槽のドアの突起に引っ掛けて開ける。そして、上記フック523を恒温槽内のスライド棚に引っ掛け、スライド棚を引き出す。
【0066】
一方のアーム2(R)を動かし、
図5に示す把持ハンド5Bを用い、作業台8上の検体が入ったシャーレ81の蓋82を上方から把持して蓋を開け、該ふたを作業台8に置く。
そして、同じ一方のアーム2(R)を動かしスライド棚上の検体が入ったシャーレ81を把持ハンド5Bで把持し、該検体が入ったシャーレ81を、他方のアーム2(L)に装着された
図6に示す把持ハンド5C上に置く。
図6に示す把持ハンド5Cは該シャーレ81を把持する。
【0067】
その後、一方のアーム2(R)は、
図5に示す把持ハンド5Bを載置台に置き、
図10に示す把持ハンド5Fを装着し、スクレーパー立てのスクレーパー84を
図10(b)に示すように把持する。
【0068】
そして、ハンドカメラ27でシャーレ81の縁とスクレーパー84の端部との位置を認識し、スクレーパー84の端部をシャーレの縁に沿わせながら動かし、シャーレ全体をまんべんなくスクレーパーで掻いて、シャーレ底に張り付いたすべての検体を掻き出す。
そして、ハンドカメラ27で検体が残っていないことを確認し、スクレーパー84を廃棄ボックスに投棄する。
図6に示す把持ハンド5Cによれば、シャーレ81の底部の縁が把持部材52上に載っており、把持突起522でシャーレ81の側壁を押さえて把持できるため、スクレーパー84で強く押しても把持ハンド5C上のシャーレ81がずれることがないため、確実に掻き寄せることが可能である。
【0069】
以上説明したように、本発明の検体処理システムは、自在に可動するアームと複数の手先ツールとを備えるロボットと、複数の処理用器具器とを備え、該複数の処理用器具が、ロボットアームに装着された手先ツールが届く範囲内に配置されている。上記ロボットは、検体に対して行う処理に応じて手先ツールを選択装着し、上記処理用器具器を使用して検体に対する処理を実行する。本発明の検体処理システムは、上記の検体処理に限られず、手先ツールや処理手法を適宜組み合わせて様々な処理を行うことが可能である。
【0070】
そして、処理に応じた上記手先ツールを選択使用するものであるため、どのような上記処理用器具であっても手先ツールを交換するだけで使用することができ、処理用器具を検体処理システムに合わせる必要がない。したがって、作業者が手作業で処理する際に用いる汎用の処理用器具をそのまま使用でき、低コストで検体処理を自動化できる。
【0071】
また、本発明における検体処理システムで検体処理を自動化することで、作業者の手作業によるバラツキを排除することができ、作業者が異なること等による再現性の低下が防止されると共に、熟練した作業者のテクニック・コツをまねた作業が可能となり、期待どおりの処理結果を得ることができる。
【0072】
また、本発明における検体処理システムによれば、薬液の添加時間等を厳密に定めることができ、複数種の薬液(例えば、炎症性メディエーター、架橋剤、ホルマリン、グリシン、リン酸緩衝生理食塩水)の添加間隔を替えた複数の検体を作製し、薬液の添加間隔の違いによる影響等を観察することも可能である。