(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594152
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】乗り物酔い止め用香料の評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/15 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
G01N33/15 Z
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-200621(P2015-200621)
(22)【出願日】2015年10月8日
(65)【公開番号】特開2017-72524(P2017-72524A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100156845
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 威一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100112896
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 宏記
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(72)【発明者】
【氏名】木村 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 美恵子
【審査官】
西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−159919(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/049773(WO,A1)
【文献】
特開2014−005403(JP,A)
【文献】
特開2002−191572(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/066918(WO,A1)
【文献】
特開2006−306369(JP,A)
【文献】
特開2005−313673(JP,A)
【文献】
特開2012−203288(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/105506(WO,A1)
【文献】
中川千鶴 他,映像と動きによる「酔い」評価における生理指標の検討,人間工学 ,2000年 6月28日,Vol.36/Supplement,pp.230-231
【文献】
藤田遥 他 ,バーチャルリアリティ酔いに対する香り提示の効果,2010年映像情報メディア学会冬季大会 ,日本,2010年12月14日,Vol.2010,セッションID:6-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00−33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の座席から車外を撮影した映像を表示する表示装置、香料を含む薬剤を収容する薬剤収容部、及び被験者の生理情報を取得する取得装置、を有する試験空間を準備する、第1ステップと、
前記試験空間の被験者に対し、前記取得装置により、当該被験者の生理情報を取得しつつ、前記表示装置に表示した前記映像を見せるとともに、前記薬剤収容部から排出される前記薬剤の匂いをかがせる、第2ステップと、
前記第2ステップ中に前記取得装置により取得した被験者の生理情報の変化から、前記香料の評価を行う第3ステップと、
を備えている、乗り物酔い止め用香料の評価方法。
【請求項2】
前記第2ステップを複数の被験者に対して行う、請求項1に記載の乗り物酔い止め用香料の評価方法。
【請求項3】
香料の異なる複数の前記薬剤を準備するステップをさらに備え、
前記薬剤毎に、前記第1及び第2ステップを行い、
前記第3ステップにおいては、前記複数の薬剤の中から、前記生理情報の変化の小さい薬剤の評価を高くする、請求項1または2に記載の乗り物酔い止め用香料の評価方法。
【請求項4】
前記生理情報は、前記被験者の、心電図に基づく情報、皮膚コンダクタンス反応に基づく情報、呼吸に基づく情報の少なくとも1つである、請求項1から3のいずれかに記載の乗り物酔い止め用香料の評価方法。
【請求項5】
前記映像は、前記車両の後部座席より車外を撮影したものである、請求項1から4のいずれかに記載の乗り物酔い止め用香料の評価方法。
【請求項6】
前記被験者は、子供である、請求項1から5のいずれかに記載の乗り物酔い止め用香料の評価方法。
【請求項7】
前記薬剤収容部には、前記車両の車内の臭いを発する部材が収容されている、請求項1から6のいずれかに記載の乗り物酔い止め用香料の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物酔い止め用香料の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
よい香りは、リラックス効果が高いことが知られており、例えば、天然精油と自律神経系との関係については、アロマテラピーを発端として数多くの研究が行われている。例えば、非特許文献1では、ベルガモット精油により、被験者の疲労などが減少することが見出されている。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「ベルガモット精油による芳香浴の自律神経系および情動に及ぼす効果」、渡邉映理ほか、Aroma Research No.54(Vol.14/No.2 2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような香りの効果は、種々の用途に用いられることが考えられるが、その1つとして、乗り物酔いの抑制を行うことが考えられる。しかしながら、乗り物酔いは、人によるバラツキが大きく、多くの人を満足する香料を特定することは難しい。例えば、官能評価のような被験者の主観を頼りにする評価方法では、乗り物酔い止めに効果のある香料を特定することは困難である。本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、乗り物酔い止めに効果のある香料を精度良く評価することができる、乗り物酔い止め用香料の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る乗り物酔い止め用香料の評価方法は、車両の座席から車外を撮影した映像を表示する表示装置、香料を含む薬剤を収容する薬剤収容部、及び被験者の生理情報を取得する取得装置、を有する試験空間を準備する、第1ステップと、前記試験空間の被験者に対し、前記取得装置により、当該被験者の生理情報を取得しつつ、前記表示装置に表示した前記映像を見せるとともに、前記薬剤収容部から排出される前記薬剤の匂いをかがせる、第2ステップと、前記第2ステップ中に前記取得装置により取得した被験者の生理情報の変化から、前記香料の評価を行う第3ステップと、を備えている。
【0006】
上記乗り物酔い止め用香料の評価方法においては、前記第2ステップを複数の被験者に対して行うことができる。
【0007】
上記各乗り物酔い止め用香料の評価方法においては、香料の異なる複数の前記薬剤を準備するステップをさらに備え、前記薬剤毎に、前記第1及び第2ステップを行い、前記第3ステップにおいては、前記複数の薬剤の中から、前記生理情報の変化の小さい薬剤の評価を高くすることができる。
【0008】
上記各乗り物酔い止め用香料の評価方法において、前記生理情報は、前記被験者の、心電図に基づく情報、皮膚コンダクタンス反応に基づく情報、呼吸に基づく情報の少なくとも1つとすることができる。
【0009】
上記各乗り物酔い止め用香料の評価方法において、前記映像は、前記車両の後部座席より車外を撮影したものとすることができる。
【0010】
上記各乗り物酔い止め用香料の評価方法は、前記被験者を、子供とすることができる。
【0011】
上記各乗り物酔い止め用香料の評価方法において、前記薬剤収容部には、前記車両の車内の臭いを発する部材を収容することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る上記乗り物酔い止め用香料の評価方法によれば、乗り物酔い止めに効果のある香料を精度良く評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る評価方法を実施する評価設備の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る乗り物酔い止め用香料の評価方法の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。この評価方法では、乗り物酔い止めに効果のある香料を評価するためのものである。
【0015】
<1.評価設備>
まず、本発明に係る乗り物酔い止め用香料の評価を行うための評価設備について説明する。
図1はこの評価設備の概略構成を示す平面図、
図2は
図1の縦断面図である。
【0016】
図1に示すように、この評価設備は、評価を行うための試験空間1を備えており、この試験空間1内に、被験者が座る座席2と、この座席2の前方に配置された表示装置3と、評価を行うべき香料を含む薬剤が収容された薬剤収容部4と、被験者の生理情報を取得するための取得装置5と、が配置されている。以下、各部材について説明する。
【0017】
試験空間1は、一対の側壁111と、各側壁111の前端部同士を連結する前壁112と、を備えたコ字状の壁体11、及びこの壁体11の上部に配置された天井部12を備えており、これら壁体11及び天井部12で囲まれた空間(例えば、幅1.5m、長さ3m、高さ1.5mの空間)内で試験が行われる。座席2は、被験者が座るものであるが、乗り物酔いの対象となる乗り物の座席であることが好ましい。したがって、一般的には、自動車の座席、またはそのような座席を模した座席が用いられる。座席2は、後述する表示部31に表示される映像を見ることができるように、例えば、前壁112から1.2m程度離れた位置に配置される。
【0018】
表示装置3は、前壁112に設置される表示部31と、この表示部31を制御するための制御部32とを備えている。表示部31は、スクリーンや液晶モニタなどで構成され、自動車の座席から車外を撮影した映像を表示するものである。表示部31としてスクリーンを用いる場合には、このスクリーンに対してプロジェクタから映像を投影する。
【0019】
また、制御部32は、パーソナルコンピュータなどにより構成され、プロジェクタや液晶モニタに対して、映像情報を送信する。制御部32は、多数の映像を保存しておくことができる。このような映像は、予め、運転中の自動車の座席から外部を撮影したものであり、種々のものを準備しておくことができる。例えば、自動車の前部席や後部座席から前方を撮影した映像とすることができる。このほか、自動車の側方を撮影した映像や、ワンボックスカーのような自動車の場合には、3列目やそれよりも後方から前方や側方を撮影した映像であってもよい。また、撮影場所として、市街地を走行しているもの、山間部を走行しているものなど、撮影場所も適宜変更したものを準備することができる。以下では、これらの映像をまとめて、車外映像と称することとする。
【0020】
薬剤収容部4は、評価対象となる香料が含まれた薬剤を収容するものである。薬剤は、固形状、液状のいずれであってもよい。薬剤収容部4は、一方の側壁111から試験空間1の座席2まで延びる筒状の通気管41と、この側壁111において試験空間1の外部側に配置される薬剤設置部42と、を備えている。薬剤設置部42は、閉じた内部空間を有する箱などで構成され、評価対象とする香料が含まれた薬剤が配置される。薬剤は、例えば、薬剤容器に収容され、薬剤設置部42に配置される。また、この薬剤設置部42には、自動車の臭いを発生させるもの、例えば、自動車の座席の材料、つまり、表面カバーやクッション、またはパネルなどの自動車の内装材を配置しておくこともできる。以下、これらを車臭発生材と称することとする。
【0021】
また、薬剤設置部42には、上述した通気管41が連結されており、薬剤設置部42の内部空間に連通されている。そして、この通気管41は、薬剤設置部42から試験空間1の座席2付近まで延びている。すなわち、通気管41の先端が、座席2に座った被験者の顔付近、例えば、10〜15cm程度離れた位置に配置されるように、通気管41の位置が調整されている。これにより、薬剤設置部42に配置された薬剤の匂いが、通気管41を通じて被験者の顔付近まで流れ出るようになっている。
【0022】
なお、通気管41または薬剤設置部42には、ファンを配置することができ、これによって、薬剤の匂いを強制的に通気管41の先端側へ送り出すことができる。
【0023】
次に、取得装置5について説明する。取得装置5は、被験者の生理情報を取得するためのものであり、被験者の体に取り付けられるセンサ51と、このセンサ51から取得された生理情報が伝達される制御部52と、を備えている。生理情報としては、種々のものを採用することができるが、例えば、被験者の、心電図に基づく情報、皮膚コンダクタンス反応に基づく情報、呼吸に基づく情報などの、少なくとも1つを採用することができる。そして、上述したセンサ51は、これら生理情報を取得するためのものである。以下、生理情報の取得について説明する。
【0024】
(1)心電図
心電図を得るにはディスポーザブル電極(例えば、エールローデSMP−300m 積水化成品工業社製)を胸部に取付け、4チャンネル生体アンプ(Polyam4 ニホンサンテク社製)を用いて所定の時定数で計測することができる。具体的な生理情報の取得方法としては、例えば、以下の方法を取ることができる。
【0025】
すなわち、心電図波形にR波強調フィルタをかけてR波を検出し、RR間隔を求める。そして、1拍ごとのRR間隔データを1分あたりの心拍数に換算して瞬時心拍率(HR)を求め、3次スプライン補間を用いて、50msごとの等時間間隔データに変換し、これに高域遮断周波数0.04Hzのローパスフィルタをかけたものを心拍数のゆっくりした変化として求める(HRmean)。心拍変動指標は瞬時心拍のスプライン補間波形よりFFTを用いて振幅スペクトルを求め、0.04〜0.15Hzの低周波数帯域成分(HRV−LF)、0.08〜0.15Hzの中間周波数帯域成分(HRV−MF)、0.15〜0.5Hzの高周波数帯域成分(HRV−HF)を定量化する。また、心電図波形に低域遮断周波数0.5Hzのハイパスフィルタをかけ、これを元の波形から差し引いたものを心電図基線変動とする。さらに、心拍変動と同等の帯域成分および胃電図のtachygastna(TG)として0.06〜0.16Hz成分を求める。
【0026】
(2)皮膚コンダクタンス
皮膚コンダクタンスは、非利き手の指にディスポーザブル電極(例えば、PPS−EDAm 積水化成品工業社製)を装着して、皮膚コンダクタンス計測装置(例えば、AP−U030m ニホンサンテク社製)とアンプ(例えば、MaP1720CA ニホンサンテク社製)を用いて計測することができる。具体的な生理情報の取得方法としては、例えば、以下の方法を取ることができる。
【0027】
皮膚コンダクタンス(SC)のデータに高域遮断周波数0.04Hzのローパスフィルタをかけたものを皮膚コンダクタンス水準(SCL)とする。そして、SCからSCLを差し引いたものを、皮膚コンダクタンス反応(SCR)とし、絶対値をとってから平均値を求める。
【0028】
(3)呼吸
呼吸は、被験者の腹部に装着される呼吸ピックアップ(例えば、45360m,日本サンテク社製)をセンサとして用いることができる。この呼吸ピックアップは、腹部の周囲の長さの変化に伴って伸縮することにより電気抵抗が変化するものであり、これに携帯用アンプ(例えば、Polyam4−RESP ニホンサンテク社製)を接続して計測を行うことができる。具体的な生理情報の取得方法としては、例えば、以下の方法を取ることができる。
【0029】
呼吸波形にFFTを施して得た振幅スペクトルより、平均呼吸振幅(Resp−all)、心拍変動と同等の帯域で低周波数成分、中間周波数帯域成分(Resp−MF)、重心周波数(Resp−GF),ピーク周波数(Resp−PF)を求め,さらに呼吸の不安定指標として、重心周波数とピーク周波数の差の絶対値(Resp−Diff)を求める。
【0030】
こうしてセンサ51により得られた電気的な情報は、図示を省略するAD変換器によりデジタル信号に変換され、所定のサンプリング周波数(例えば、1kHz)で、制御部52に送信される。制御部52は、パーソナルコンピュータなどで構成され、センサ51から送信されたデジタル信号を受信し、これを生理情報として記憶する。また、制御部52は、記憶された生理情報の分析も行う。
【0031】
<2.評価方法>
次に、上記のような評価設備を用いた乗り物酔い止め用香料の評価方法について説明する。まず、被験者を試験空間1に案内し、座席2に座らせるとともに、被験者の体に上述したいずれかのセンサ51を取り付ける。次に、評価対象となる香料が含まれた薬剤を薬剤収容部4の薬剤設置部42に配置する。そして、必要に応じてファンを駆動し、揮散した薬剤を通気管41を介して試験空間1内に送り出す。また、必要に応じて、薬剤設置部42に車臭発生材(車のシート内部のスポンジ、カバー及びエアコンから発せられるカビ臭等)を配置することもできる。
【0032】
次に、表示部31に、車外映像を表示させる。このとき、表示される車外映像は、被験者によって変えることができる。例えば、子供を被験者とする場合には、車外映像として、自動車の後部座席からの映像を見せることが好ましい。
【0033】
そして、この状態で、被験者に車外映像を見せつつ、生理情報を取得する。すなわち、被験者に対し、車外映像を見せることで擬似的に自動車に乗っている状態を再現する。このとき、車臭発生材を薬剤収容部4に配置している場合には、さらにこの状態を精度良く再現することができる。そして、このような自動車に乗っている状態において、薬剤収容部4からは揮散した香料が流れ出てくるため、被験者は、その匂いをかぎながら、自動車に乗っている状態を擬似的に体験する。なお、試験を行う時間は、特には限定されないが、例えば、10〜15分程度とすることができる。
【0034】
そして、取得装置5の制御部52では、被験者に装着されたセンサ51から送信される生理情報の経時的変化を記録する。
【0035】
以上のような試験を、複数の被験者に対し、また、複数の香料に対して行う。そして、その結果に対しては、以下のような評価を行う。乗り物酔いの兆候としては、上述した交感神経系賦活を反映するHRmeanの上昇、SCLの上昇、SCRの増大、機序は解明されていないが、胃電図や汗腺活動の反映と考えられる心電図基線変動の増大、及び一過性の大きな呼吸の混入や呼吸不安定性の上昇(Resp−MFの増大、Resp−Diffの上昇)などが生じることが、分かっている。
【0036】
そのため、乗り物酔いが発生すると、試験中に、生理情報が変化する。そこで、本実施形態では、試験中に取得された生理情報の経時的変化が小さいときに用いられていた香料は、乗り物酔い止めに効果があるものと判定する。例えば、試験の開始から終了までの間の最も高い生理情報の数値と、最も低い生理情報の数値との差が小さければ、乗り物酔い止めに効果があると判定することができる。具体的な評価方法は、種々のものがあるが、単一の香料について評価を行う場合には、例えば、同一の被験者で、薬剤を薬剤収容部4に配置しない試験を合わせて行い、薬剤を配置した場合にのみ、生理情報の変化が認められない場合には、当該薬剤の香料は乗り物酔い止めに効果があると判定する。あるいは、複数の香料を含む薬剤に対して、同一の被験者で試験を行った場合、その中で生理情報の変化に差がある場合には、差の小さい試験に係る香料が乗り物酔い止めに効果があると判定する。そして、これを、複数の被験者からの結果を参酌することで、評価の精度をより高めることができる。複数の被験者を複数の群に分け、それぞれに、薬剤あり、薬剤なしでの試験を行ったり、薬剤ありの群と薬剤なしの群を作って試験を行ってもよい。さらに、複数の被験者に、香り提示順序を変えた実験を実施し、統計的な検定を行えば、評価の精度をより高めることができる。
【0037】
また、被験者に対しては、事前アンケートで、酔いやすさの程度などを聞いておき、これを考慮した判定を行うこともできる。さらに、複数の被験者で試験を行う場合には、事前アンケートに基づいて均質な被験者群を作っておくこともできる。
【0038】
<3.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、乗り物酔い止めに効果のある香料の評価を行うに当たって、生理情報を用いて評価を行っている。したがって、被験者の主観によらず、香料の評価を行うことができる。特に、乗り物酔いは、被験者間の感じ方(主観)のバラツキが大きく、また、子供を被験者とした場合には、主観による評価の信憑性が低い可能性がある。そこで、本実施形態のように、主観によらない評価を行うと、香料の効果の評価を精度良く行うことができる。すなわち、乗り物酔い以外の要因で生理情報の数値が変化することはしばしばあるが,酔いが生じているのに生理情報の数値が変化しないことはまれであるので,この判定方法は妥当である.
【0039】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は、適宜組合わせ可能である。
【0040】
<4−1>
試験空間1は、上記実施形態のものに限定されず、少なくとも座席2、表示装置3、薬剤収容部4、及び取得装置5が設けられていればよく、必ずしも閉じた空間でなくてもよい。
【0041】
<4−2>
上記実施形態では、表示装置3、及び取得装置5に個別に制御部32,52を設けているが、評価設備全体を統括する制御部により、制御することもできる。例えば、一台のパーソナルコンピュータで、表示装置3、取得装置5、薬剤収容部4のファンなど、すべての制御を行うこともできる。
【0042】
<4−3>
薬剤収容部4の構成は、特には限定されず、薬剤を収容し、被験者に揮散した香料をかがせることができればよい。したがって、薬剤設置部42、通気管41といった分けた構成にしなくてもよく、またすべての部材を壁体11の内側に配置することもできる。
【0043】
<4−4>
生理情報は、種々のものを採用することができる。すなわち、上述した心電図等は、あくまでも例示であり、乗り物酔いの兆候を示し、これを電気信号として取得できるような生理情報は、すべて適用可能である。
【0044】
<4−5>
上記実施形態では、生理情報を評価としているが、被験者の主観的な評価を合わせて行い、これと生理情報による評価を組み合わせて、評価することもできる。
【符号の説明】
【0045】
1 試験空間
2 座席
3 表示装置
4 薬剤収容部
5 取得装置