(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594166
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】層を転写するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
H01L21/02 B
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-217653(P2015-217653)
(22)【出願日】2015年11月5日
(65)【公開番号】特開2016-96335(P2016-96335A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2018年9月26日
(31)【優先権主張番号】1402610
(32)【優先日】2014年11月14日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】ブルクアールト マルセル
【審査官】
平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−023368(JP,A)
【文献】
特開2007−158231(JP,A)
【文献】
特開2014−170797(JP,A)
【文献】
特開2003−142666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮基板(5)を使用して、固有の表面トポロジーを有する第1の面(1)を備える活性層(2)を最終基板(4)に転写するプロセスであって、
前記活性層(2)の前記第1の面(1)を前記仮基板(5)の1つの面に接合する第1のステップと、
前記活性層(2)の第2の面(6)を前記最終基板(4)に接合する第2のステップと、
前記活性層(2)と前記仮基板(5)とを分離する第3のステップと、
を含むプロセスにおいて、
前記仮基板(5)の前記面が前記活性層(2)の前記第1の面(1)の前記表面トポロジーに相補的な表面トポロジーを有し、それによって、前記仮基板(5)の前記表面トポロジーが、前記接合の第1のステップにおいて前記活性層(2)の前記第1の面(1)の前記表面トポロジーを包み込むことを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
前記仮基板(5)の前記表面トポロジーが、事前設定されている幾何学形状及び事前設定されている寸法でのエッチングによって生成される、請求項1に記載の転写プロセス。
【請求項3】
前記仮基板(5)の前記エッチング幾何学形状及び寸法が、前記活性層(2)の前記第1の面(1)の前記表面トポロジーの前記幾何学形状及び寸法を少なくとも5%だけ増加させたものに相当する、請求項2に記載の転写プロセス。
【請求項4】
前記仮基板(5)の前記エッチングが、深さ及び幅が、それぞれ、前記活性層(2)の前記第1の面(1)の前記表面トポロジーから生じる最大高さ(h)及び最大幅(l)を5%だけ増加させたものに相当する、例えば矩形のキャビティ(7)を形成する、請求項2に記載の転写プロセス。
【請求項5】
前記第1のステップと前記第2のステップとの間で、前記活性層(2)の第2の面(6)に対して前記活性層(2)を薄膜化するステップが行われる、請求項1に記載の転写プロセス。
【請求項6】
前記活性層(2)の前記第1の面(1)の前記固有の表面トポロジーが、少なくとも1つの平坦部分及び少なくとも1つの非平坦部分を備える、請求項1に記載の転写プロセス。
【請求項7】
前記活性層(2)の前記第1の面(1)が前記仮基板(5)の前記面に接合されるとき、前記活性層(2)の前記第1の面(1)の前記平坦部分のみが接合される、請求項6に記載の転写プロセス。
【請求項8】
前記活性層(2)の前記第1の面(1)の前記平坦部分の面積が、前記非平坦部分の面積よりも大きい、請求項6又は7に記載の転写プロセス。
【請求項9】
前記活性層(2)の前記第1の面(1)の前記仮基板(5)の1つの面への前記接合が、500℃未満の温度で熱処理によって強化された直接接合である、請求項1に記載の転写プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特有の表面トポロジーを備える活性層を転写するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような層の作製は、様々な厚さの層を1つのキャリアーから別のキャリアーに転写するための技法をますます含むようになってきている。
【0003】
マイクロエレクトロニクスの分野の多くの用途において、活性層と呼ばれるもの、例えば、集積化する電気部品を基板に、又は第1の基板の表面上に存在する半導体層を第2の基板に転写することが望まれる場合がある。
【0004】
本発明の文脈において理解されるように、活性層は、その寸法、特にその厚さ、及びその脆弱性のために、自立性があると考えることはできない。
【0005】
したがって、活性層を移送する、特に活性層を最終基板に転写するために、活性層を、ハンドル基板又は仮基板と呼ばれる転写基板にしっかりと固定することが必要である。その後、そのような基板によって、移動させる及び/又は転写する必要がある層を取り扱うことが可能となる。
【0006】
活性層の第1の面が、活性層の第1の面特有の不均一な表面トポロジーを形成する、回路、及び通常「ボンドパッド」と呼ばれるコンタクトパッドなどの電子部品を備えるため、仮基板を使用して活性層を最終基板に転写するのが困難であることがわかる場合がある。この表面トポロジーが、仮基板を活性層の第1の面にしっかりと固定するのを困難にしている。
【0007】
表面トポロジーが平坦でない活性層の第1の面を仮基板に接合することを可能にする従来技術の解決策は、接合、例えば直接接合に適した規則的な表面トポロジーを得るように、活性層の面を平準化する及び/又は平坦化することにある。しかしながら、これらの方法は、実施に関して欠点及び困難を免れない。
【0008】
文献仏国特許出願公開第2926671号に記載された公知の1つの解決策は、接着剤の層を介して活性層を最終基板に接合するために、活性層上に、特に不規則な表面トポロジーを有する活性層の面上に接着剤の層を形成し、それによって前記接着剤の層が活性層の表面トポロジーを平坦化することにある。この解決策の欠点は、プロセスを複雑にし、その生産コストを増加させる層を追加する必要があるということである。さらに、接着剤の層は、活性層の表面トポロジーを形成する電気部品と接触する。この接触によって素子を破損することがある。
【0009】
文献特開平11−297972号公報に記載された別の解決策は、順に重ねて配置された複数の層によって電気部品をカバーし、この複数層の最終層が、接合ステップのために所望のレベルの平坦度を得るためにエッチングされることにある。したがって、このエッチングステップによって、汚染及び構造内に応力が生じることがある。さらにまた、電気部品は、第1の層と直接接触し、ことによると電気部品を破損する。最後に、この解決策は、堆積させる層と同じくらい多くの堆積プロセスを必要とし、プロセスを実施するのが複雑で、高価になる。
【0010】
さらに、前述の公知の従来技術の解決策に記載された層の追加は、これらの層のキャリアーへの接合を安定化する及び/又は強化するために必要とされる熱処理の回数を増加させる一因となる。したがって、これらの解決策は、生産プロセスの熱バジェットを増加させ、ことによるといくつかの電気的な素子を脆弱化し、これらの生産プロセスのコストを増加させる。
【0011】
さらに、及び所望の構造の生産プロセス次第では、これらの層の追加は、後の作製ステップにおいて、追加された層が配置される活性層の面へのアクセスを複雑にする。
【0012】
公知の従来技術の解決策は、接合するために活性層の面を十分に平坦にするために、活性層の少なくとも1つの面に対する様々なタイプの処理を必要とする。実施される処理のタイプ次第で、汚染物質又は印加される歪みが、活性層の品質及び動作性能を低下させる一因となる。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、仮基板を使用して活性層を最終基板に転写するプロセスを提供することによって、従来技術のこれらの制限を軽減することを目的とし、活性層が、固有の表面トポロジーを有する第1の面を備え、本プロセスは、
活性層の第1の面を仮基板の1つの面に接合する第1のステップと、
活性層の第2の面を最終基板に接合する第2のステップと、
活性層と仮基板とを分離する第3のステップと、
を含む。
【0014】
本発明によるプロセスは、仮基板の面が活性層の第1の面の表面トポロジーに相補的な表面トポロジーを有し、それによって、仮基板の表面トポロジーが、接合の第1のステップにおいて活性層の表面トポロジーを包み込むという点で注目に値する。
【0015】
このように本プロセスを実施することによって、活性層がいかなる処理又は修正も受けることなく、活性層の第1の面を仮基板の面に接合することができ、こうして汚染又は不必要な歪みを防ぐ。さらに、仮基板の相補的な表面トポロジーにより活性層の表面トポロジーを包み込むことによって、活性層上に配置された電気部品を保護し、こうしていかなる接触も防ぐことができる。
【0016】
本発明は、添付された図を参照して述べられる本発明の特定の非限定的な実施形態に関する以下の説明を考慮することで一層よく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本発明による別の活性層の一面及び仮基板の一面の概略図である。
【
図4】本発明による転写プロセスの別の実施形態の部分概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、本発明による、及び前述の問題を軽減することを可能にする転写プロセスの複数の可能性のある実施形態について、
図1〜
図4を参照して説明する。活性層、及び仮基板の様々な表現に共通の要素は、同一の参照記号によって参照される。
【0019】
図1は、電子回路及びコンタクトパッドなどの電気部品3が配置された活性層2の第1の面1の写真である。非限定的な例として、活性層2は、シリコン、AlN、プラスチック、ガラスなどから作られてもよい。電気部品の数、及び電気部品を互いに分離する距離は、活性層2の所望の機能性及び作製プロセスに応じて設定される。したがって、電気部品3は、活性層2の第1の面1の固有の表面トポロジーを形成する。その場合、活性層2の第1の面1の固有の表面トポロジーは、
図3に示されるように、電気部品によって画成される少なくとも1つの非平坦部分及び平坦部分を備える。
【0020】
また、非平坦部分は、特有の処理、又は必ずしも電気的でない構成部品の堆積に起因することがある。
【0021】
図3は、本発明による転写プロセスをステップごとに概略的に示し、本プロセスは、最終基板4の一面を活性層2の第2の面6に接合することによって、
図1に示される活性層2などの活性層2を最終基板4に転写することにある。活性層2は、仮基板5を使用して転写され、活性層2の第1の面1が、第1の接合ステップにおいて、活性層2の第1の面1の表面トポロジーを考慮に入れながら、仮基板5の一面に接合される。活性層2の第1の面1と仮基板5の面との間の接合は、例えば直接接合である。例として、仮基板5は、ゲルマニウム、シリコン、二酸化シリコン、炭化シリコン、ガリウム砒素又は石英から作られてもよい。
【0022】
直接接合は、それ自体よく知られている技法である。このタイプの接合の原理は、2つの表面を直接、すなわち、特殊な材料(接着剤、ワックス、はんだなど)を使用することなく、接触させることに基づく。そのような操作は、接合される表面が、少なくとも一部が十分に平坦で、粒子又は汚染を免れていること、及び接触を開始することができるようにそれらの表面を互いに十分に近づけることが必要であり、これは、典型的には数ナノメートル未満の距離で生じる。この場合、2つの表面間の引力は、直接接合(接合される2つの表面の原子又は分子間の電子的相互作用である、ファンデルワールス引力の合計によって引き起こされる接合)を生成するのに十分に高い。
【0023】
したがって、接合される活性層2の第1の面1、仮基板5の面が、少なくとも一部が十分に平坦となるように、且つ粒子若しくは汚染を免れるように、活性層2の第1の面1又は/及び仮基板5の面が修正されない限り、そのような接合を得ることはできない。本件では、仮基板5の面のみが修正される。
【0024】
したがって、本発明の転写プロセスは、仮基板5の面上に、活性層2の第1の面1の表面トポロジーに相補的な表面トポロジーを生成することにあり、それによって、活性層2の第1の面1上に配置された電気部品3が仮基板5と接触することなく、仮基板5の表面トポロジーが、第1の接合ステップにおいて活性層2の第1の面1の表面トポロジーを包み込む。
【0025】
これを行うために、
図2に示されるように、活性層2のこの第1の面1上に配置された電気部品3の幾何学形状及び寸法に関連するデータを集めるように、活性層2の第1の面1の表面トポロジーのマップが生成される。次いで、仮基板5をエッチングし、こうしてキャビティ7を形成し、前もって決定された幾何学形状及び寸法を再現することによって、相補的な表面トポロジーを生成することができる。この操作は、ウェットエッチング又は反応性イオンエッチング(RIE)などの任意のタイプの公知の従来技術のエッチングプロセスによってだけでなく、例えば、レーザー、又は仮基板5の材料に適したその他の溶液を使用して実行されてもよい。
【0026】
さらに、電気部品3が仮基板5と接触することなく、仮基板5の表面トポロジーが活性層2の第1の面1の表面トポロジーを包み込むために、仮基板5の相補的な表面トポロジーを生成するために使用される寸法を、活性層2の第1の面1上に配置された電気部品3の寸法に対して少なくとも5%だけ増加させる。
【0027】
したがって、仮基板5の厚さは、活性層2の第1の面1の表面トポロジーの最大高さhよりも少なくとも5%だけ大きい。
【0028】
仮基板5の表面トポロジーは、上で見たように、及び
図3に示されるように、活性層2の第1の面1上に配置された電気部品3の幾何学形状及び寸法を5%だけ増加させて再現することによって、又は代替として、例えば、
図4に示されるように、深さ及び幅が、電気部品3の最大高さh及び最大幅lを少なくとも5%だけ増加させたものに相当する矩形形状のキャビティ7を生成することによって、活性層2の第1の面1の表面トポロジーとぴったり一致するように生成されてもよい。
【0029】
活性層2の第1の面1を仮基板5の面に直接接合する第1のステップにおいて、活性層2の第1の面1の平坦部分のみが接合される。活性層2を取り扱うこと、及び転写することを可能にするのに十分に高い接合力を得るために、活性層2の第1の面1の平坦部分の面積、すなわち接合される面積は、非平坦部分の面積よりも大きい。したがって、活性層2の第1の面1と仮基板5の面との間の接合面積は、活性層2の第1の面1の合計面積の少なくとも50%に相当する。言いかえれば、仮基板5の面が接合される活性層2の第1の面1の平坦なゾーンは、活性層2の第1の面1の非平坦なゾーンよりも大きい。
【0030】
活性層2の第1の面1と仮基板5の面との間の接合面積のサイズに応じて、少なくとも700mJ/m
2の接合エネルギーを得るように、接合を改善するために熱処理の安定化及び/又は強化が必要な場合もある。この場合、電気部品3が破損されるのを防ぐために、熱処理の温度は、500℃未満である。
【0031】
一旦第1の接合ステップが行われると、活性層2の第2の面6が、第2の接合ステップにおいて最終基板4の一面に、例えば直接接合によって接合される。
【0032】
実施形態に応じて、2〜10μmに含まれる厚さの活性層2を得るように、第1のステップと第2のステップとの間で、例えば機械研磨、又は活性層2の材料に適した、従来技術において公知のその他の技法によって活性層2の第2の面6に対して薄膜化するステップが行われる。
【0033】
最後に、第3のステップにおいて、所望の構造2、4を得るように、仮基板5と活性層2が分離される。層を基板から分離することができる多くの公知の従来技術のプロセスがある。限定されることなく、基板5及び層2は、例えば、仮基板5と活性層2との間にブレードを挿入することによって分離されてもよい。活性層2の第1の面1を仮基板5の面に接合する第1のステップが、これらの2つの面全体に対して行われないということを考えれば、仮基板5と活性層2の分離は、第3のステップにおいて、結果としてより容易となる。
【0034】
したがって、本発明による転写プロセスによって、固有の表面トポロジーを有する活性層を、前記層を処理しなくても転写することができ、したがって転写中に電気部品を保護しながら、いかなる汚染又は応力も防ぐことができる。さらに、仮基板は、表面トポロジーが仮基板の面と適合性のある面を有する層を転写するために再使用されてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 面
2 活性層
3 電気部品
4 最終基板
5 仮基板
6 面
7 キャビティ