特許第6594350号(P6594350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594350
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】コポリマーを含む無機結合材組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/14 20060101AFI20191010BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20191010BHJP
   C04B 24/16 20060101ALI20191010BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20191010BHJP
   C04B 103/30 20060101ALN20191010BHJP
【FI】
   C04B28/14
   C04B24/26 B
   C04B24/26 E
   C04B24/26 F
   C04B24/26 D
   C04B24/16
   C08F290/06
   C04B103:30
【請求項の数】12
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-572613(P2016-572613)
(86)(22)【出願日】2015年6月12日
(65)【公表番号】特表2017-518952(P2017-518952A)
(43)【公表日】2017年7月13日
(86)【国際出願番号】EP2015063188
(87)【国際公開番号】WO2015189396
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2018年6月12日
(31)【優先権主張番号】14172088.8
(32)【優先日】2014年6月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ビェアン ラングロッツ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ガストナー
(72)【発明者】
【氏名】トアベン ゲット
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー マザネック
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シナベック
(72)【発明者】
【氏名】ディアーナ アイスマン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン フリードリッヒ
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−527505(JP,A)
【文献】 特表2006−525219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 28/14
C04B 24/16
C04B 24/26
C08F 290/06
C04B 103/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の
(α)少なくとも1種の無機結合材、
(β)少なくとも1種の水溶性コポリマー
を含む組成物であって、前記水溶性コポリマーは、
(a)0.1質量%〜20質量%の、式(I)
【化1】
[式中、ブロック構造中の単位−(−CH2−CH2−O−)k、−(−CH2−CH(R3)−O−)lおよび−(−CH2−CH2−O−)mは、式(I)で示される順序で配置されており、かつ前記係数および基は、以下の意味を有する:
kは、10から150までの数であり、
lは、5から25までの数であり、
mは、1から15までの数であり、
1は、Hまたはメチルであり、
2は、互いに独立して、一重結合または−(Cn2n)−および−O−(Cn’2n’)−および−C(O)−O−(Cn’’2n’’)−からなる群から選択される二価の結合基であり、ここで、n、n’およびn’’は、1から6までの自然数を表し、
3は、少なくとも2個の炭素原子を有する炭化水素基または一般式−CH2−O−R3’のエーテル基であり、ここで、R3’は、少なくとも2個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、かつ基−(−CH2−CH(R3)−O−)l内のR3は、同じまたは異なってよく、
4は、互いに独立して、Hまたは1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基である]の少なくとも1種のモノマーと、
(b)25質量%〜99.9質量%の、モノマー(a)とは異なる少なくとも1種のモノエチレン性不飽和の親水性モノマー(b)と、
を基礎とし、前記の質量%の表示は、それぞれ該コポリマー中の全てのモノマーの全量に対するものであり、かつ前記少なくとも1種のコポリマーは、1500000g/モルから30000000g/モルまでの、マーク・ホウィンクの式(1)
【数1】
[式中、K=0.0049、α=0.8、および[η]は、固有粘度を表す]に従って測定される平均モル質量Mを有し、
前記親水性モノマー(b)が、中性の親水性モノマー(b1)としてのアクリルアミド、およびアニオン性の親水性モノマー(b2)としての2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)である、前記組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、前記無機結合材は、硫酸カルシウムn水和物、ポルトランドセメント、白セメント、アルミン酸カルシウムセメント、スルホアルミン酸カルシウムセメント、ジオポリマーおよび潜在水硬性結合材またはポゾラン性結合材の群からの少なくとも1つであることを特徴とする、前記組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物であって、係数kは、23から26までの数を意味することを特徴とする、前記組成物。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物であって、係数lは、8.5から17.25までの数を意味することを特徴とする、前記組成物。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物であって、前記係数および基は、以下の意味を有する:
kは、23から26までの数であり、
lは、12.75から17.25までの数であり、
mは、2から5までの数であり、
1は、Hであり、
2は、二価の結合基−O−(Cn’2n’)−であり、ここで、n’は4を表し、
3は、2個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
4は、Hである、
ことを特徴とする、前記組成物。
【請求項6】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の組成物であって、前記成分(β)は、(c)少なくとも1種の非イオン性の非重合性の表面活性成分を更に含むことを特徴とする、前記組成物。
【請求項7】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の組成物であって、該組成物は、その乾燥質量に対して、少なくとも20質量%の少なくとも1種の無機結合材と、0.0005質量%〜5質量%の少なくとも1種のコポリマーとを含むことを特徴とする、前記組成物。
【請求項8】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の組成物の製造方法であって、一般式(I)のモノマー(a)を、以下のステップ:
a)一般式(II)
2C=C(R1)−R2−OH (II)
[式中、基R1およびR2は、請求項1で定義した通りの意味を有する]のモノエチレン性不飽和アルコールA1と、エチレンオキシドとを、KOMeおよび/またはNaOMeを含有するアルカリ性触媒K1を添加しつつ反応させることで、アルコキシル化アルコールA2を得るステップ、
b)アルコキシル化アルコールA2と、式(Z)
【化2】
[式中、R3は、請求項1で定義した通りの意味を有する]の少なくとも1種のアルキレンオキシドZとを、アルカリ性触媒K2を添加しつつ反応させるステップであって、
ステップb)における反応でのカリウムイオンの濃度が、使用されるアルコールA2に対して0.9モル%以下であり、かつ
ステップb)における反応が、135℃以下の温度で実施され、
こうして、式(III)
【化3】
[式中、基R1、R2、R3、kおよびlは、請求項1で定義した通りの意味を有する]のアルコキシル化アルコールA3を得るステップ、
c)アルコールA3とエチレンオキシドとを反応させることで、式(I)で示され、R4がHであり、かつmが1〜15であるモノマー(a)に相当する、アルコキシル化アルコールA4を得るステップ、
d)任意に、アルコキシル化アルコールA4を化合物
4−X
[式中、R4は、1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基であり、かつXは、離脱基、有利にはCl、Br、I、−O−SO2−CH3(メシレート)、−O−SO2−CF3(トリフレート)および−O−SO2−OR4の群から選択される離脱基である]でエーテル化することで、式(I)で示され、R4が1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基であるモノマー(a)を得るステップ、
を含む方法によって製造することを特徴とする、前記製造方法。
【請求項9】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の組成物の製造方法であって、コポリマーの製造のために、少なくとも1種のモノマー(a)および前記親水性モノマー(b)を、水性溶液重合に供することを特徴とする、前記製造方法。
【請求項10】
請求項に記載の方法であって、前記溶液重合は、5.0から9までの範囲のpH値で実施されることを特徴とする、前記方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法であって、前記溶液重合は、少なくとも1種の表面活性成分(c)の存在下で実施されることを特徴とする、前記方法。
【請求項12】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の組成物における成分(β)のコポリマーの、レオロジー添加剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の無機結合材および少なくとも1種の特定の水溶性コポリマーを含む組成物に関する。更に、前記組成物の製造方法が開示される。本発明の更なる態様は、前記特定のコポリマーの、本発明による組成物中でのレオロジー添加剤としての使用である。
【0002】
水溶性の増粘作用を有するポリマーは、多くの技術分野で、例えば化粧品の分野において、食品において、洗浄剤、印刷インキ、分散インキの製造のために、石油採掘で、または建築化学において使用される。
【0003】
多糖類の水溶性の非イオン性誘導体、特にセルロース誘導体およびデンプン誘導体は、通常は、水性建築材料混合物において、水和および作業性のために必要とされる水の不所望な蒸発を防ぐだけでなく、系の凝離、沈降およびブリーディング(表面への水の分離)を抑えるために使用される。
【0004】
ウルマン工業化学百科事典(Ullmann’s Enzyklopaedie der Technischen Chemie)(第4版、第9巻、第208頁〜第210頁、Chemie出版 ヴァインハイム)によれば、最も一般的に使われているレオロジー添加剤は、合成により生成された非イオン性セルロース誘導体およびデンプン誘導体、例えばメチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)である。しかしまた、微生物産生型多糖類、例えばウェランガム、ジウタンガムおよび天然産生の抽出単離された多糖類(親水コロイド)、例えばアルギン酸塩、キサンタン、カラギーナン、ガラクトマンナン等は、先行技術に相応して、水性建築材料および塗工系のレオロジーの調節のために使用される。
【0005】
水性無機建築材料混合物中でレオロジー添加剤として使用することができる、多くの化学的に異なるクラスのポリマーが知られている。安定化作用を有するポリマーの一つの重要なクラスは、いわゆる疎水会合性ポリマーである。当業者であれば、該ポリマーを、疎水性側基または末端基、例えば高級アルキル鎖を有する水溶性ポリマーと理解する。水溶液において、そのような疎水性基は、それ自体とまたは他の疎水性基を有する物質と会合することができる。これによって、会合型網目構造が形成され、それにより媒体が安定化される。
【0006】
欧州特許出願公開第705854号公報(EP 705 854 A1)、独国特許出願公開第10037629号(DE 100 37 629 A1)および独国特許出願公開第102004032304号公報(DE 10 2004 032 304 A1)は、水溶性の疎水会合性コポリマーおよび該コポリマーの、例えば建築化学の分野における使用を開示している。記載されるコポリマーは、酸性モノマー、例えばアクリル酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、塩基性モノマー、例えばアクリルアミド、ジメチルアクリルアミドまたはカチオン性基含有モノマー、例えばアンモニウム基を有するモノマーを含む。そのようなモノマーは、該ポリマーに水溶性を授ける。疎水会合性モノマーとして、開示されたコポリマーは、それぞれ、以下のタイプのモノマー:H2C=C(Rx)−COO−(−CH2−CH2−O−)q−Ry、さもなくばまたH2C=C(Rx)−O−(−CH2−CH2−O−)q−Ry[式中、Rxは、典型的には、HまたはCH3を表し、かつRyは、より大きな炭化水素基、典型的には8〜40個の炭素原子を有する炭化水素基を表す]を含む。それらの文献に挙げられているのは、例えば高級アルキル基、さもなくばまたトリスチリルフェニル基である。
【0007】
更に、米国特許第8,362,180号(US 8,362,180)は、疎水会合性モノマーを含む水溶性コポリマーに関する。該モノマーは、エチレン性不飽和基だけでなく、本質的にエチレンオキシド基からなる親水性ポリアルキレンオキシドブロックと、少なくとも4個の炭素原子、有利には少なくとも5個の炭素原子を有するアルキレンオキシドからなる末端の疎水性ポリアルキレンオキシドブロックとからなるブロック構造を有するポリエーテル基とを含む。更に、前記疎水会合性コポリマーの、水性建築材料組成物における使用が開示されている。
【0008】
国際公開第2004/099100号(WO 2004/099100)から、EO/PO/EO−トリブロック構造を有するポリエーテル側鎖を有するポリカルボン酸ポリマーを含むセメント添加剤が知られている。EOブロックは、1〜200の繰返単位を有しうるが、その一方で、POブロックは、3〜18個の炭素原子と1〜50の繰返単位とを有するアルキレンオキシド単位である。実施例では、8500g/モルから40500g/モルまでの質量平均分子量を有するポリマーが記載される。詳細な説明では、1000000g/モル以下のポリカルボン酸ポリマーの質量平均分子量が開示される。該セメント添加剤は、高い水の削減だけでなく、粘度の向上をもたらすべきである。
【0009】
先行技術により公知の多くの疎水会合性コポリマーは、水性無機建築材料組成物のために確かに非常に良好な安定化剤である。しかしながら、前記コポリマーは、水性無機建築材料組成物の流動性を下げるという欠点を有する。
【0010】
従って、本発明の課題は、凝離、沈降およびブリーディングについてのできる限り低い傾向しか示さず、同時に非常に良好な流動特性を有する、無機結合材組成物を提供することであった。
【0011】
前記課題は、
(α)少なくとも1種の無機結合材、
(β)少なくとも1種の水溶性コポリマー
を含む組成物であって、前記水溶性コポリマーは、
(a)0.1質量%〜20質量%の、式(I)
【化1】
[式中、ブロック構造中の単位−(−CH2−CH2−O−)k、−(−CH2−CH(R3)−O−)lおよび−(−CH2−CH2−O−)mは、式(I)で示される順序で配置されており、かつ前記係数および基は、以下の意味を有する:
kは、10から150までの数であり、
lは、5から25までの数であり、
mは、1から15までの数であり、
1は、Hまたはメチルであり、
2は、互いに独立して、一重結合または−(Cn2n)−および−O−(Cn’2n’)−および−C(O)−O−(Cn’’2n’’)−からなる群から選択される二価の結合基であり、ここで、n、n’およびn’’は、1から6までの自然数を表し、
3は、少なくとも2個の炭素原子を有する炭化水素基または一般式−CH2−O−R3’のエーテル基であり、ここで、R3’は、少なくとも2個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、かつ基−(−CH2−CH(R3)−O−)l内のR3は、同じまたは異なってよいが、但し有利には、基−(−CH2−CH(R3)−O−)l内の全ての炭化水素基R3の炭素原子の合計は、14から50までの範囲にあり、
4は、互いに独立して、Hまたは1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基である]の少なくとも1種のモノマーと、
(b)25質量%〜99.9質量%の、モノマー(a)とは異なる少なくとも1種のモノエチレン性不飽和の親水性モノマー(b)と、
を基礎とし、前記の質量%の表示は、それぞれ該コポリマー中の全てのモノマーの全量に対するものであり、かつ前記少なくとも1種のコポリマーは、1500000g/モルから30000000g/モルまでの、マーク・ホウィンクの式(1)
【数1】
[式中、K=0.0049、α=0.8、および[η]は、固有粘度を表す]に従って測定される平均モル質量Mを有する、前記組成物によって解決された。
【0012】
驚くべきことに、この場合に、本発明によるコポリマーは、前記の課された課題を全ての範囲で解決するだけでなく、更に先行技術と比較して、しばしばより低い分量で使用することができると判明した。
【0013】
特に、本発明による組成物は、その乾燥質量に対して、少なくとも20質量%の、有利には少なくとも40質量%の、特に30質量%から99.9995質量%の、特に有利には35質量%から55質量%までの少なくとも1種の無機結合材と、0.0005質量%から5質量%までの、有利には0.0005質量%から2質量%までの、特に有利には0.001質量%から1質量%までの少なくとも1種のコポリマーとを含む。
【0014】
有利な一実施形態においては、本発明は、本発明によるコポリマーであって、式(I)によるモノマー(a)中の係数kが、23から26までの数を意味する、前記コポリマーに関する。
【0015】
更なる有利な一実施形態においては、本発明は、本発明によるコポリマーであって、式(I)によるモノマー(a)中の係数lが、8.5から17.25までの数を意味する、前記コポリマーに関する。
【0016】
有利な一実施形態においては、本発明によるコポリマー中のモノマー(a)および(b)の総合計は、100質量%である。
【0017】
有利には、前記モノマー(a)は、もっぱら前記の一般式(I)のモノマーである。
【0018】
本発明につき、以下の事項を詳細に説明する。
【0019】
成分(β)の本発明によるコポリマーは、疎水性基を有する水溶性コポリマーである。水性組成物において、疎水性基は、それ自体とまたは別の物質の疎水性基と会合し、この相互作用によって該水性組成物は増粘することができる。
【0020】
疎水会合性コポリマーの水中での溶解性が、使用されるモノマーの種類に応じて多かれ少なかれpH値に強く依存しうることは、当業者に公知である。従って、水溶性の評価のための基準点は、それぞれ、コポリマーのその都度の使用目的に望まれるpH値であることが望ましい。
【0021】
本出願の意味における「水溶性コポリマー」とは、水中に、20℃および常圧ならびにその都度の対象となる本発明による組成物のpHで、1リットルの水当たりに少なくとも1グラムの、特に1リットルの水当たりに少なくとも10グラムの、特に有利には1リットルの水当たりに少なくとも100グラムの溶解性を有するコポリマーであると理解される。
【0022】
本発明によるコポリマーは、本発明によるコポリマーに疎水会合特性を授ける少なくとも1種のモノエチレン性不飽和のモノマー(a)を含む。
【0023】
本発明によれば、前記少なくとも1種のモノマー(a)は、一般式(I)
【化2】
のモノマーである。
【0024】
一般式(I)のモノマー(a)では、エチレン性基H2C=C(R1)−は二価の結合基−R2−O−を介して、ブロック構造−(−CH2−CH2−O−)k−(−CH2−CH(R3)−O−)l−(−CH2−CH2−O−)m−R4を有するポリアルキレンオキシ基と結合されており、ここで、ブロック−(−CH2−CH2−O−)k、(−CH2−CH(R3)−O−)lおよび−(−CH2−CH2−O−)mは、式(I)中に示される順序で配置されている。モノマー(a)は、末端OH基または末端エーテル基OR4のいずれかを有する。
【0025】
上述の式において、R1は、Hまたはメチル基を表す。有利には、R1はHである。
【0026】
2は、一重結合または−(Cn2n)−、−O−(Cn’2n’)−および−C(O)−O−(Cn’’2n’’)−の群から選択される二価の結合基を表す。上述の式において、n、n’およびn’’は、1から6までの自然数を表す。換言すると、前記結合基は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の脂肪族炭化水素基であって、直接的にか、またはエーテル基−O−を介するか、またはカルボキシルエステル基−C(O)−O−を介するかのいずれかでエチレン性不飽和基H2C=C(R1)−と結合されている、前記炭化水素基である。有利には、前記基−(Cn2n)−、−(Cn’2n’)−および−(Cn’’2n’’)−は、直鎖状の脂肪族炭化水素基である。
【0027】
有利には、基R2=−(Cn2n)−は、−CH2−、−CH2−CH2−および−CH2−CH2−CH2−から選択される基であり、特に有利にはメチレン基−CH2−である。
【0028】
有利には、基R2=−O−(Cn’2n’)−は、−O−CH2−CH2−、−O−CH2−CH2−CH2−および−O−CH2−CH2−CH2−CH2−から選択される基であり、特に有利には−O−CH2−CH2−CH2−CH2−である。
【0029】
有利には、基R2=−C(O)−O−(Cn’’2n’’)−は、−C(O)−O−CH2−、−C(O)−O−CH2−CH2−および−C(O)−O−CH2−CH2−CH2−から選択される基であり、特に有利には−C(O)−O−CH2−CH2−である。
【0030】
特に有利には、前記基R2は、基−O−(Cn’2n’)−である。
【0031】
更に特に有利には、前記基R2は、−CH2−または−O−CH2−CH2−CH2−CH2−または−C(O)−O−CH2−CH2−であり、更に特に有利には−O−CH2−CH2−CH2−CH2−である。
【0032】
モノマー(a)は、更に、単位−(−CH2−CH2−O−)k、−(−CH2−CH(R3)−O−)lおよび−(−CH2−CH2−O−)mからなるポリアルキレンオキシ基を有し、ここで、ブロック構造中の単位は、式(I)に示される順序で配置されている。ブロック間の移行は、急激に起こっても、さもなくばまた連続的に起こってもよい。
【0033】
エチレンオキシ単位の数kは、10から150までの、有利には12から50までの、特に有利には15から35までの、特に有利には20から30までの数である。
【0034】
エチレンオキシ単位の数kは、更に特に有利には、23から26までの数である。上述の数は、常に分布の平均値である。
【0035】
2番目のブロック−(−CH2−CH(R3)−O−)l−では、基R3は、互いに独立して、少なくとも2個の炭素原子を有する、有利には2〜14個の炭素原子を有する、特に有利には2〜4個の炭素原子を有する、特に有利には2または3個の炭素原子を有する炭化水素基を表す。この炭化水素基は、脂肪族および/または芳香族の直鎖状または分枝鎖状の炭化水素基であってよい。有利には、該炭化水素基は、脂肪族基である。特に有利には、該炭化水素基は、2または3個の炭素原子を有する脂肪族の非分枝鎖状の炭化水素基である。上述のブロックは、有利には、ポリブチレンオキシブロックまたはポリペンチレンオキシブロックである。
【0036】
適した基R3の例には、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニルまたはn−デシル、n−ドデシル、n−テトラデシルおよびフェニルが含まれる。
【0037】
適した基R3の例には、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニルまたはn−デシルおよびフェニルが含まれる。有利な基の例には、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチルが含まれ、エチル基またはn−プロピル基が特に有利である。
【0038】
基R3は、更に、一般式−CH2−O−R3’のエーテル基であってよく、ここで、R3’は、少なくとも2個の炭素原子、有利には2〜10個の炭素原子、特に有利には少なくとも3個の炭素原子を有する脂肪族および/または芳香族の直鎖状または分枝鎖状の炭化水素基である。基R3’のための例には、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルまたはフェニルが含まれる。
【0039】
基R3’のための例には、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−テトラデシルまたはフェニルが含まれる。
【0040】
ブロック−(−CH2−CH(R3)−O−)l−は、つまり、少なくとも4個の炭素原子を有する、有利には4もしくは5個の炭素原子を有するアルキレンオキシ単位および/または少なくとも2個の炭素原子、有利には少なくとも3個の炭素原子を有するエーテル基を有するグリシジルエーテルからなるブロックである。基R3として有利なのは、上述の炭化水素基であって、その2番目のブロックの構成単位が、特に有利には少なくとも4個の炭素原子を含むアルキレンオキシ単位、例えばブチレンオキシ単位およびペンチレンオキシ単位または高級アルキレンオキシドの単位であり、更に特に有利にはブチレンオキシド単位またはペンチレンオキシ単位である、前記炭化水素基である。
【0041】
ポリアルキレンオキシドの分野の当業者にとって、炭化水素基R3の向き(配向性)は、アルコキシル化に際しての条件、例えばアルコキシル化のために選択される触媒に依存することは明らかである。つまり、該アルキレンオキシ基は、−(−CH2−CH(R3)−O−)−の向きでか、さもなくば、また−(−CH(R3)−CH2−O−)−の逆向きで分子中に組み込まれ得る。従って、式(I)中の表示は、基R3の決められた向きに制限されるものとみなされるべきではない。
【0042】
アルキレンオキシ単位の数lは、5から25までの、特に6から23までの、特に有利には7から20までの、更に特に有利には8.5から17.25までの数である。有利には、基−(−CH2−CH(R3)−O−)l内の全ての炭化水素基R3中の炭素原子の合計は、14から50までであり、有利には18から40までであり、特に有利には25.5から34.5までである。該基R3がエーテル基−CH2−O−R3’である場合に、基−(−CH2−CH(R3’)−O−)l内のR3’の炭化水素基の合計が、−CH2−O−R3’中の−CH2−O−結合基の炭素原子を考慮しないで、14から50までであり、有利には18から40までであり、特に有利には25.5から34.5までであるという条件が当てはまる。
【0043】
有利な一実施形態は、モノマー(a)を含む上述のコポリマーであって、R3がエチルであり、かつlが7.5から25までの、有利には12.75から25までの、特に有利には13から23までの、更に特に有利には12.75から17.25までの数、例えば14、16または22である、前記コポリマーに関する。
【0044】
アルキレンオキシ単位の数は、有利な一実施形態においては、8.5から17.25までの数であるが、但し特に、全ての炭化水素基R3中の炭素原子の合計は、25.5から34.5までの範囲である。該基R3がエーテル基−CH2−O−R3’である場合に、特に、炭化水素基R3’の合計が、−CH2−O−R3’中の−CH2−O−結合基の炭素原子を考慮しないで、25.5から34.5までの範囲であるという条件が当てはまる。有利な一実施形態は、モノマー(a)を含む上述のコポリマーであって、R3がエチルであり、かつlが12.75から17.25までの、特に13から17までの数、例えば14または16である、前記コポリマーに関する。更なる有利な実施形態は、モノマー(a)を含む上述のコポリマーであって、R3がn−プロピルであり、かつlが8.5から11.5までの、有利には9から11までの数、例えば10または11である、前記コポリマーに関する。既に述べたように、上述の数は、分布の平均値である。
【0045】
前記ブロック−(−CH2−CH2−O−)mは、ポリエチレンオキシブロックである。エチレンオキシ単位の数mは、1から15までの、有利には0.1から10までの、特に有利には0.1から5までの、特に有利には0.5から5までの、更に特に有利には2から5までの数である。更に、上述の数は、分布の平均値である。
【0046】
基R4は、Hまたは1〜4個の炭素原子を有する、有利には脂肪族の炭化水素基である。有利には、R4は、H、メチルまたはエチルであり、特に有利にはHまたはメチルであり、更に特に有利にはHである。
【0047】
ポリアルキレンオキシブロックコポリマーの分野の当業者にとっては、ブロック間の移行が、製造の種類に応じて、急激に起こりうることも、さもなくばまた連続的に起こりうることも明らかである。連続的な移行の場合には、ブロック間に、両方のブロックのモノマーを含む移行領域が更に存在する。ブロックの境界が移行領域の中央に定められる場合に、それに相応して、1番目のブロック−(−CH2−CH2−O−)kは、少量の単位−(−CH2−CH(R3)−O−)−を更に有するとともに、2番目のブロック−(−CH2−CH(R3)−O−)lは、少量の単位−(−CH2−CH2−O−)−を有することができるが、これらの単位は、該ブロックにわたって無作為に分布されておらず、上述の移行領域中に配置されている。特に、3番目のブロック(−CH2−CH2−O−)mは、少量の単位−(−CH2−CH(R3)−O−)−を有することができる。
【0048】
本発明の意味におけるブロック構造は、それぞれのブロックの全物質量に対して、該ブロックの少なくとも85モル%、有利には少なくとも90モル%、特に有利には少なくとも95モル%が、相応の単位から構成されていることを意味する。つまりは、該ブロックは、相応の単位の他に、少量の別の単位(特に別のポリアルキレンオキシ単位)を有することができる。特に、ポリエチレンオキシブロック−(−CH2−CH2−O−)mは、該ブロックの全物質量に対して少なくとも85モル%の、有利には少なくとも90モル%の単位(−CH2−CH2−O−)を含む。特に、該ポリエチレンオキシブロック−(−CH2−CH2−O−)mは、85モル%〜95モル%の単位(−CH2−CH2−O−)と、5モル%〜15モル%の単位−(−CH2−CH(R3)−O−)とからなる。
【0049】
本発明は、有利には、式(I)によるモノマー(a)中の基が以下の意味を有する:
kは、15から35までの、有利には20から28までの、特に23から26までの数であり、
lは、5から25までの、有利には5から23までの、特に5から20までの数であり、
mは、1から15までの、有利には0.5から10までの数であり、
1は、Hであり、
2は、二価の結合基−O−(Cn’2n’)−であり、ここで、n’は4を表し、
3は、互いに独立して、2個の炭素原子を有する炭化水素基、特にエチルであり、
4は、Hである、
コポリマーに関する。
【0050】
本発明は、更に有利には、式(I)によるモノマー(a)中の基が以下の意味を有する:
kは、15から35までの、有利には20から28までの、特に有利には23から26までの数であり、
lは、7.5から25までの、有利には10から25までの、特に有利には12.75から25までの、特に有利には13から23までの数、例えば14、16または22であり、
mは、1から15までの、有利には0.5から10までの数であり、
1は、Hであり、
2は、二価の結合基−O−(Cn’2n’)−であり、ここで、n’は4を表し、
3は、互いに独立して、2個の炭素原子を有する炭化水素基、特にエチルであり、
4は、Hである、
コポリマーに関する。
【0051】
本発明は、更に有利には、式(I)によるモノマー(a)中の基が以下の意味を有する:
kは、15から35までの、有利には20から28までの、有利には23から26までの数であり、
lは、7.5から25までの、有利には10から25までの、特に有利には12.75から25までの、特に有利には13から23までの数、例えば14、16または22であり、
mは、0.1から10までの、有利には0.5から10までの、特に有利には2から5までの数であり、
1は、Hであり、
2は、二価の結合基−O−(Cn’2n’)−であり、ここで、n’は4を表し、
3は、互いに独立して、2個の炭素原子を有する炭化水素基、特にエチルであり、
4は、Hである、
コポリマーに関する。
【0052】
本発明は、特に有利には、式(I)によるモノマー(a)中の基が以下の意味を有する:
kは、23から26までの数であり、
lは、12.75から17.25までの数であり、
mは、1から15までの、有利には0.5から10までの数であり、
1は、Hであり、
2は、二価の結合基−O−(Cn’2n’)−であり、ここで、n’は4を表し、
3は、互いに独立して、2個の炭素原子を有する炭化水素基、特にエチルであり、
4は、Hである、
コポリマーに関する。
【0053】
更に、本発明は、特に、式(I)によるモノマー(a)中の基が以下の意味を有する:
kは、23から26までの数であり、
lは、8.5から11.5までの数であり、
mは、1から15までの、有利には0.5から10までの数であり、
1は、Hであり、
2は、二価の結合基−O−(Cn’2n’)−であり、ここで、n’は4を表し、
3は、3個の炭素原子を有する炭化水素基、特にn−プロピルであり、
4は、Hである、
コポリマーに関する。
【0054】
特に有利な一実施形態においては、本発明は、式(I)によるモノマー中の基が以下の意味を有する:
kは、23から26までの数であり、
lは、12.75から17.25までの数であり、
mは、2から5までの数であり、
1は、Hであり、
2は、二価の結合基−O−(Cn’2n’)−であり、ここで、n’は4を表し、
3は、2個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
4は、Hである、
コポリマーに関する。
【0055】
更に有利には、本発明は、式(I)のモノマー(a)の他に、式(III)
【化3】
[式中、基R1、R2、R3、kおよびlは、前記定義の意味を有する]のモノマー(d)が存在する、コポリマーを含む組成物に関する。
【0056】
更に有利には、本発明は、式(I)のモノマー(a)と式(III)のモノマー(d)との質量比が、19:1から1:19までの範囲であり、有利には9:1から1:9までの範囲である、コポリマーに関する。
【0057】
本出願の更なる主題は、本発明による組成物の製造方法であって、一般式(I)のモノマー(a)を、以下のステップ:
a)一般式(II)
2C=C(R1)−R2−OH (II)
[式中、基R1およびR2は、前記定義の意味を有する]のモノエチレン性不飽和アルコールA1と、エチレンオキシドとを、KOMeおよび/またはNaOMeを含有するアルカリ性触媒K1を添加しつつ反応させることで、アルコキシル化アルコールA2を得るステップ、
b)アルコキシル化アルコールA2と、式(Z)
【化4】
[式中、R3は、前記定義の意味を有する]の少なくとも1種のアルキレンオキシドZとを、アルカリ性触媒K2を添加しつつ反応させるステップであって、
ステップb)における反応でのカリウムイオンの濃度が、使用されるアルコールA2に対して0.9モル%以下であり、かつ
ステップb)における反応が、135℃以下の温度で実施され、
こうして、式(III)
【化5】
[式中、基R1、R2、R3、kおよびlは、前記定義の意味を有する]のアルコキシル化アルコールA3を得るステップ、
c)アルコールA3とエチレンオキシドとを反応させることで、式(I)で示され、R4がHであり、かつmが1〜15であるモノマー(a)に相当する、アルコキシル化アルコールA4を得るステップ、
d)任意に、アルコキシル化アルコールA4を化合物
4−X
[式中、R4は、1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基であり、かつXは、離脱基、有利にはCl、Br、I、−O−SO2−CH3(メシレート)、−O−SO2−CF3(トリフレート)および−O−SO2−OR4の群から選択される離脱基である]でエーテル化することで、式(I)で示され、R4が1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基であるモノマー(a)を得るステップ、
を含む方法によって製造する、前記製造方法である。
【0058】
本発明による方法のステップa)は、モノエチレン性不飽和アルコールA1とエチレンオキシドとを、KOMe(カリウムメタノレート)および/またはNaOMe(ナトリウムメタノレート)を含むアルカリ性触媒K1を添加しつつ反応させることで、アルコキシル化アルコールA2を得るステップを含む。
【0059】
以下に挙げられる、ステップa)、b)、c)および任意にd)による反応に際しての有利な条件(例えば圧力範囲および/または温度範囲)は、それぞれのステップが、完全にまたは部分的に示される条件で実施されることを意味する。
【0060】
有利には、ステップa)は、まずモノエチレン性不飽和アルコールA1を、アルカリ性触媒K1を用いて反応させるステップを含む。典型的には、そのために、出発材料として使用されるアルコールA1に、圧力反応器中でアルカリ性触媒K1が加えられる。典型的には100ミリバール未満の、有利には50ミリバールから100ミリバールまでの範囲の減圧および/または典型的には30℃〜150℃への温度の増大によって、混合物中になおも存在する水および/または低沸点物を取り去ることができる。該アルコールは、その後に本質的に相応のアルコレートとして存在する。引き続き、該反応混合物は、典型的には不活性ガス(例えば窒素)で処理される。
【0061】
更に有利には、ステップa)は、まずモノエチレン性不飽和アルコールA1を、アルカリ性触媒K1を用いて反応させるステップを含む。典型的には、そのために、出発材料として使用されるアルコールA1に、圧力反応器中でアルカリ性触媒K1が加えられる。典型的には100ミリバール未満の、有利には30ミリバールから100ミリバールまでの範囲の減圧および/または典型的には30℃〜150℃への温度の増大によって、混合物中になおも存在する水および/または低沸点物を取り去ることができる。該アルコールは、その後に本質的に相応のアルコレートとして存在する。引き続き、該反応混合物は、典型的には不活性ガス(例えば窒素)で処理される。
【0062】
有利には、ステップa)は、エチレンオキシドを、アルコールA1とアルカリ性触媒K1(上記の通り)からなる前記の混合物へと添加するステップを含む。エチレンオキシドの添加が完了した後に、該反応混合物は、典型的に後続反応される。前記添加および/または後続反応は、典型的には、2時間から36時間までの、有利には5時間から24時間までの、特に有利には5時間から15時間までの、特に有利には5時間から10時間までの時間にわたって行われる。
【0063】
更に有利には、ステップa)は、エチレンオキシドを、アルコールA1とアルカリ性触媒K1(上記の通り)からなる前記の混合物へと添加するステップを含む。エチレンオキシドの添加が完了した後に、該反応混合物は、典型的に後続反応される。該後続反応は、典型的には0.1時間から1時間までの時間にわたって行われる。前記添加は、任意の放圧(例えば6バール(絶対圧力)から3バール(絶対圧力)への合間の圧力低下)と、後続反応とを含めて、例えば、2時間から36時間までの、有利には5時間から24時間までの、特に有利には5時間から15時間までの、特に有利には5時間から10時間までの時間にわたって行われる。
【0064】
ステップa)は、典型的には、60℃から180℃までの、有利には130℃から150℃までの、特に有利には140℃から150℃までの温度で行われる。特に、ステップa)は、エチレンオキシドを、アルコールA1とアルカリ性触媒K1とからなる混合物へと、60℃から180℃までの、有利には130℃から150℃までの、特に有利には140℃から150℃までの温度で添加するステップを含む。
【0065】
有利には、エチレンオキシドの、アルコールA1およびアルカリ性触媒K1からなる混合物への添加は、1バールから7バールまでの範囲の、有利には1バールから5バールまでの範囲の圧力で行われる。安全技術的な規準値に沿うために、ステップa)での添加は、典型的には1バールから3.1バールまでの範囲の圧力で実施される。特に、エチレンオキシドの添加および/または後続反応は、上述の条件で実施される。
【0066】
更に有利には、エチレンオキシドの、アルコールA1およびアルカリ性触媒K1からなる混合物への添加は、1バールから7バールまでの範囲の、有利には1バールから6バールまでの範囲の圧力で行われる。安全技術的な規準値に沿うために、ステップa)での添加は、典型的には1バールから4バールまでの、有利には1バールから3.9バールまでの、特に有利には1バールから3.1バールまでの、または本発明の更なる実施形態においては3バールから6バールまでの範囲の圧力で実施される。特に、エチレンオキシドの添加および/または後続反応は、上述の条件で実施される。
【0067】
有利には、ステップa)は、エチレンオキシドを、アルコールA1およびアルカリ性触媒K1からなる混合物へと、36時間以下の、有利には32時間以下の、特に有利には2時間から32時間までの時間にわたって、かつ5バール以下の、有利には1バールから4バールまでの、特に有利には1バールから3.9バールまでの圧力で、特に1バールから3.1バールで添加するステップを含む。特に、上述の時間には、エチレンオキシドの添加および/または後続反応が含まれる。
【0068】
特に、本発明による方法のステップa)による、モノエチレン性不飽和アルコールA1とエチレンオキシドとを、KOMe(カリウムメタノレート)および/またはNaOMe(ナトリウムメタノレート)を含むアルカリ性触媒K1を添加しつつ反応させるステップは、1つ以上のエトキシル化ステップで行うことができる。有利なのは、上記の通りの方法であって、ステップa)が以下のステップ:
モノエチレン性不飽和アルコールA1を、アルカリ性触媒K1を用いて反応させるステップと、アルコールA1および触媒K1からなる混合物とエチレンオキシドの一部、特にエチレンオキシドの全量のうち10質量%〜50質量%、特に10質量%〜30質量%とを反応させるステップ、休止段階および/または圧力開放を含む中間ステップと、エチレンオキシドの残りの部分と反応させるステップと、
を含む、前記方法である。
【0069】
更に有利なのは、上記の通りの方法であって、ステップa)が以下のステップ:
モノエチレン性不飽和アルコールA1を、アルカリ性触媒K1を用いて反応させるステップと、アルコールA1および触媒K1からなる混合物とエチレンオキシドの一部、特にエチレンオキシドの全量のうち50質量%〜98質量%、特に80質量%〜98質量%とを反応させるステップと、
100ミリバール未満の、有利には50ミリバール〜100ミリバールの圧力への圧力開放および/または典型的には30℃〜150℃の範囲における温度の増大をしつつ、低沸点物を除去するステップと、
得られたエトキシル化生成物を、アルカリ性触媒K1を用いて反応させるステップと、エチレンオキシドの残部とエトキシル化生成物およびアルカリ性触媒K1からなる混合物と反応させるステップと、
を含む、前記方法である。
【0070】
更に有利なのは、上記の通りの方法であって、ステップa)が以下のステップ:
モノエチレン性不飽和アルコールA1を、アルカリ性触媒K1を用いて反応させるステップと、アルコールA1および触媒K1からなる混合物とエチレンオキシドの一部、特にエチレンオキシドの全量のうち50質量%〜98質量%、特に80質量%〜98質量%とを反応させるステップと、
100ミリバール未満の、有利には30ミリバール〜100ミリバールの圧力への圧力開放および/または典型的には30℃〜150℃の範囲における温度の増大をしつつ、低沸点物を除去するステップと、
得られたエトキシル化生成物を、アルカリ性触媒K1を用いて反応させるステップと、エチレンオキシドの残部とエトキシル化生成物およびアルカリ性触媒K1からなる混合物と反応させるステップと、
を含む、前記方法である。
【0071】
前記アルカリ性触媒K1は、特に10質量%〜100質量%のKOMeおよび/またはNaOMe、有利には20質量%〜90質量%を含む。該触媒K1は、KOMeおよび/またはNaOMeの他に、更なるアルカリ性化合物および/または溶剤(特にC1〜C6−アルコール)を含んでよい。例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属アルカノレート(C2〜C6−カリウムアルカノレート、C2〜C6−ナトリウムアルカノレート、有利にはエタノレート)、アルカリ土類金属アルカノレート(特にC1〜C6−アルカノレート、有利にはメタノレートおよび/またはエタノレート)から選択される化合物が含まれていてよい。有利には、触媒K1は、KOMeおよび/またはNaOMeの他に、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される少なくとも1種の更なるアルカリ性化合物を含む。もう一つの好ましい実施形態においては、アルカリ性触媒K1は、KOMeまたはKOMeおよびメタノール(MeOH)の混合物からなる。典型的には、メタノール(MeOH)中の20質量%から50質量%のKOMeの溶液を使用することができる。
【0072】
更なる有利な実施形態においては、アルカリ性触媒K1は、NaOMeまたはNaOMeおよびメタノール(MeOH)の混合物からなる。典型的には、メタノール(MeOH)中の20質量%から50質量%のNaOMeの溶液を使用することができる。
【0073】
更なる有利な実施形態においては、アルカリ性触媒K1は、KOMeおよびNaOMeの混合物またはメタノール中のKOMeおよびNaOMeの溶液からなる。
【0074】
ステップa)における反応に際して塩基性触媒K1としてKOMeが使用される場合に、モノエチレン性不飽和アルコールA1の分解を避けるために、使用されるアルコールA1に対して2500ppm(約0.4モル%)の上限のKOMeを維持するような量でK1を使用することが有利である。有利には、ステップa)におけるカリウムイオンの濃度は、使用されるアルコールA1の全量に対して0.4モル%以下、特に有利には0.1モル%〜0.4モル%である。
【0075】
KOMeが、その濃度がエトキシル化アルコールA2(プロセスステップa)の生成物)に対して0.9モル%を上回るような量で使用される場合に、プロセスステップb)において0.9モル%未満のカリウムイオン濃度を維持するために、KOMeは、ステップb)の前に完全にまたは部分的に分離せねばならない。その分離は、例えばエトキシル化アルコールA2をステップa)の後に単離し、任意に精製することによって行うことができる。
【0076】
更なる有利な実施形態においては、KOMeは、ステップa)における反応後のカリウムイオン濃度が、既にA2に対して0.9モル%以下であるような量で使用される。
【0077】
本発明による方法のステップb)は、エトキシル化されたアルコールA2と少なくとも1種のアルキレンオキシドZとを、アルカリ性触媒K2を添加しつつ反応させることで、式(III)
【化6】
[式中、R4はHである]によるモノマー(a)に相当するアルコキシル化アルコールA3を得るステップを含む。
【0078】
有利には、ステップb)は、まずエトキシル化されたアルコールA2を、アルカリ性触媒K2を用いて反応させるステップを含む。典型的には、そのために、アルコールA2に、圧力反応器中でアルカリ性触媒K2が加えられる。典型的には100ミリバール未満の、有利には50ミリバールから100ミリバールまでの範囲の減圧および/または典型的には30℃から150℃までの範囲における温度の増大によって、混合物中になおも存在する水および/または低沸点物を取り去ることができる。該アルコールは、その後に本質的に相応のアルコレートとして存在する。引き続き、該反応混合物は、典型的には不活性ガス(例えば窒素)で処理される。
【0079】
更に有利には、ステップb)は、まずエトキシル化されたアルコールA2とアルカリ性触媒K2とを反応させるステップを含む。典型的には、そのために、アルコールA2に、圧力反応器中でアルカリ性触媒K2が加えられる。典型的には100ミリバール未満の、有利には30ミリバールから100ミリバールまでの範囲の減圧および/または典型的には30℃から150℃までの範囲における温度の増大によって、混合物中になおも存在する水および/または低沸点物を取り去ることができる。該アルコールは、その後に本質的に相応のアルコレートとして存在する。引き続き、該反応混合物は、典型的には不活性ガス(例えば窒素)で処理される。
【0080】
有利には、ステップb)は、少なくとも1種のアルキレンオキシドZを、アルコールA2とアルカリ性触媒K2とからなる前記の混合物へと添加するステップを含む。アルキレンオキシドZの添加が完了した後に、該反応混合物は、典型的に後続反応される。前記添加および/または後続反応は、典型的には、2時間から36時間までの、有利には5時間から24時間までの、特に有利には5時間から20時間までの、特に有利には5時間から15時間までの時間にわたって行われる。
【0081】
有利には、ステップb)は、少なくとも1種のアルキレンオキシドZを、アルコールA2とアルカリ性触媒K2とからなる前記の混合物へと添加するステップを含む。アルキレンオキシドZの添加が完了した後に、該反応混合物は、典型的に後続反応される。前記添加は、任意の放圧と、後続反応とを含めて、典型的には、2時間から36時間までの、有利には5時間から30時間までの、特に有利には10時間から28時間までの、特に有利には11時間から24時間までの時間にわたって行われる。
【0082】
本発明によれば、ステップb)における反応に際してのカリウムイオンの濃度は、使用されるアルコールA2に対して、0.9モル%以下、有利には0.9モル%未満、有利には0.01モル%から0.9モル%まで、特に有利には0.1モル%から0.6モル%までである。有利には、モノマー(a)の製造に際して、ステップb)における反応に際してのカリウムイオンの濃度は、使用されるアルコールA2に対して0.01モル%〜0.5モル%である。
【0083】
特に有利な実施形態においては、ステップb)における反応に際してのカリウムイオンの濃度は、0.1モル%〜0.5モル%であり、かつステップb)における反応は、120℃から130℃までの温度で実施される。
【0084】
前記アルカリ性触媒K2は、有利には、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属アルカノレート(特に、C1〜C6−アルカノレート、有利にはメタノレートおよび/またはエタノレート)、アルカリ土類金属アルカノレート(特にC1〜C6−アルカノレート、有利にはメタノレートおよび/またはエタノレート)から選択される少なくとも1種のアルカリ性化合物を含む。有利には、該触媒は、少なくとも1種の塩基性ナトリウム化合物、特に、NaOH、NaOMeおよびNaOEtから選択される塩基性ナトリウム化合物、特に有利にはNaOMeまたはNaOHを含有する。触媒K2として、上述のアルカリ性化合物の混合物を使用することができ、有利には前記触媒K2は、上述の塩基性化合物の1つまたは上述のアルカリ性化合物の混合物からなる。しばしば、アルカリ性化合物の水溶液が使用される。もう一つの有利な実施形態においては、アルカリ性触媒K2は、NaOMeまたはNaOMeおよびメタノールの混合物からなる。典型的には、メタノール中の20質量%から50質量%のNaOMeの溶液を使用することができる。有利には、触媒K2は、KOMeを含有しない。
【0085】
有利には、ステップb)における製造に際して、少なくとも1種の塩基性ナトリウム化合物、特にNaOH、NaOMeおよびNaOEtから選択される塩基性ナトリウム化合物を含む触媒K2が使用され、その際、ステップb)における反応に際してのナトリウムイオンの濃度は、使用されるアルコールA2に対して、3.5モル%〜12モル%、有利位は3.5モル%〜7モル%、特に有利には4モル%〜5.5モル%である。
【0086】
本発明によれば、ステップb)における反応は、135℃以下の温度で実施される。有利には、ステップb)における反応は、60℃から135℃までの温度で、有利には100℃〜135℃で、特に有利には120℃〜130℃で実施される。特に、ステップb)は、少なくとも1種のアルキレンオキシドZを、アルコールA2とアルカリ性触媒K2とからなる混合物へと、135℃以下の温度で、有利には60℃から135℃までの温度で、特に有利には100℃〜135℃で、特に有利には120℃〜135℃で添加するステップを含む。
【0087】
有利には、ステップb)は、1バールから3.1バールまでの、有利には1バールから2.1バールまでの範囲の圧力で実施される。安全技術的条件に沿うために、ステップb)における反応は、R3が2個の炭素原子を有する炭化水素基を表す場合には、有利には3.1バール以下の範囲の圧力(有利には1バール〜3.1バール)で実施され、またはR3が2個より多くの炭素原子を有する炭化水素基を表す場合には、2.1バール以下の、有利には1バール〜2.1バールの圧力で実施される。
【0088】
更に有利には、ステップb)は、1バールから6バールまでの、有利には1バールから3.1バールまでの、特に有利には1バールから2.1バールまでの範囲の圧力で実施される。有利には、ステップb)における反応は、R3が2個の炭素原子を有する炭化水素基を表す場合に、1バールから6バールまでの、有利には1バールから3.1バールまでの、有利には4バールから6バールまでの範囲の圧力で実施される。特に、アルキレンオキシドZの添加および/または後続反応は、上述の圧力で実施される。
【0089】
特に、本発明は、R3が2個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、かつモノマー(a)の製造に際して、ステップb)が1バールから3.1バールまでの範囲の圧力で実施されるか、またはR3が少なくとも3個の炭素原子を有する、有利には3個の炭素原子を有する炭化水素を表し、かつモノマー(a)の製造に際してステップb)が1バールから2.1バールまでの圧力で実施される、コポリマーに関する。
【0090】
特に、アルキレンオキシドZの添加および/または後続反応は、上述の圧力で実施される。有利には、ステップb)は、少なくとも1種のアルキレンオキシドZを、アルコールA2およびアルカリ性触媒K2からなる混合物へと、R3が2個の炭素原子を有する炭化水素基を表す場合には、3.1バール以下の範囲の圧力(有利には1バール〜3.1バール)で、またはR3が少なくとも3個の炭素原子を有する炭化水素基を表す場合には、2.1バール以下の、有利には1バール〜2.1バールの圧力で添加するステップを含む。
【0091】
有利には、ステップb)は、少なくとも1種のアルキレンオキシドZを、アルコールA2とアルカリ性触媒K2とからなる混合物へと、36時間以下の、有利には32時間以下の時間にわたって、特に有利には2時間から32時間までの時間にわたって、更に特に有利には5時間から24時間までの時間にわたって、かつ3.1バール以下の圧力で、有利には1バール〜2.1バールで、更に有利には上述の圧力で添加するステップを含む。
【0092】
更に有利には、ステップb)は、少なくとも1種のアルキレンオキシドZを、アルコールA2とアルカリ性触媒K2とからなる混合物へと、36時間以下の、有利には32時間以下の時間にわたって、特に有利には2時間から32時間までの時間にわたって、更に特に有利には11時間から24時間までの時間にわたって、かつ3.1バール以下の圧力で、更に有利には上述の圧力で添加するステップを含む。
【0093】
特に有利には、ステップb)は、1バールから3.1バールまでの範囲の圧力で、有利には上述の圧力で、かつ120℃から130℃までの温度で実施される。
【0094】
本発明による方法は、アルコキシル化アルコールA3とエチレンオキシドとを反応させることで、式(I)で示され、R4がHであり、かつmが1〜15、有利には1〜10、特に有利には0.1〜10、特に0.1〜5、特に有利には0.5〜5、更に特に有利には0.5〜2.5であるモノマー(a)に相当するアルコキシル化アルコールA4を得るステップc)を更に含む。
【0095】
ステップc)は、特にアルカリ性触媒を更に添加することなく行われる。ステップc)は、特に1バールから7バールまでの、有利には1バールから5バールまでの範囲の圧力で、かつ60℃から140℃までの、有利には120℃から140℃までの、特に有利には125℃から135℃までの範囲の温度で実施される。ステップc)におけるエトキシル化は、特に0.5時間から7時間までの、特に0.5時間から5時間までの、有利には0.5時間から4時間までの時間にわたって行われる。
【0096】
ステップc)は、更に有利にはアルカリ性触媒を更に添加することなく行われる。ステップc)は、特に1バールから7バールまでの、有利には1バールから6バールまでの範囲の圧力で、かつ60℃から140℃までの、有利には120℃から140℃までの、特に有利には120℃から135℃までの範囲の温度で実施される。ステップc)におけるエトキシル化は、特に0.5時間から7時間までの、特に1時間から5時間までの、有利には1時間から4時間までの時間にわたって行われる。
【0097】
有利には、ステップc)は、エチレンオキシドを、式(III)によるアルコキシル化アルコールA3を含有するステップb)の後の反応混合物へと、更なる後処理および/または圧力開放をせずに添加するステップを含む。エチレンオキシドの添加が完了した後に、該反応混合物は、典型的に後続反応される。前記添加および/または後続反応は、典型的には、0.5時間から10時間までの、特に0.5時間から7時間までの、特に0.5時間から5時間までの、有利には0.5時間から4時間までの時間にわたって行われる。
【0098】
更に有利には、ステップc)は、エチレンオキシドを、式(III)によるアルコキシル化アルコールA3を含有するステップb)の後の反応混合物へと、更なる後処理および/または圧力開放をせずに添加するステップを含む。エチレンオキシドの添加が完了した後に、該反応混合物は、典型的に後続反応される。前記添加は、任意の放圧と、後続反応とを含めて、典型的には、0.5時間から10時間までの、特に2時間から10時間までの、特に4時間から8時間までの時間にわたって行われる。
【0099】
本発明による方法は、任意に、アルコキシル化アルコールA4を、Xが離脱基、有利にはCl、Br、I、−O−SO2−CH3(メシレート)、−O−SO2−CF3(トリフレート)または−O−SO2−CR4から選択される離脱基である化合物R4−Xでエーテル化するステップd)を含んでよい。
【0100】
式(I)のアルコキシル化アルコールA4が末端OH基(すなわち、R4=H)とエーテル化されるべき場合に、それはまた、当業者に原則的に公知の通常のアルキル化剤、例えばアルキル硫酸塩および/またはアルキルハロゲン化物を用いて行うことができる。典型的には、化合物R4−Xは、アルキルハロゲン化物であってよい。エーテル化のためには、また特にジメチル硫酸塩またはジエチル硫酸塩が使用されてもよい。該エーテル化は、当業者によって所望のコポリマーの特性に応じて選択することができるたった一つの選択肢である。
【0101】
モノマー(a)以外にも、本発明によるコポリマーは、それとは異なる少なくとも1種のモノエチレン性不飽和の親水性モノマー(b)を含む。もちろん、複数の種々の親水性モノマー(b)の混合物を使用することもできる。
【0102】
該親水性モノマー(b)は、エチレン性基の他に、1つ以上の親水性基を含む。これらの親水性基は、本発明によるコポリマーに、それらの親水性に基づき十分な水溶性を授ける。該親水性基は、特にO原子および/またはN原子を含む官能基である。該官能基は、更にヘテロ原子として、特にS原子および/またはP原子を含み得る。
【0103】
特に有利には、モノマー(b)は、任意の比率で水と混和可能であるが、本発明の実施のためには、本発明による疎水会合性コポリマーが冒頭に挙げた水溶性を有すれば十分である。有利には、モノマー(b)の水中における室温での溶解性は、少なくとも100g/l、特に少なくとも200g/l、特に有利には少なくとも500g/lであることが望ましい。
【0104】
適切な官能基の例には、カルボニル基>C=O、エーテル基−O−、特にポリエチレンオキシ基−(CH2−CH2−O−)n−[式中、nは、有利には1から200までの数を表す]、ヒドロキシ基−OH、エステル基−C(O)O−、第一級、第二級もしくは第三級アミノ基、アンモニウム基、アミド基−C(O)−NH−、カルボキサミド基−C(O)−NH2または酸性基、例えばカルボキシル基−COOH、スルホン酸基−SO3H、ホスホン酸基−PO32もしくはリン酸基−OP(OH)3が含まれる。
【0105】
有利な官能基の例には、ヒドロキシ基−OH、カルボキシル基−COOH、スルホン酸基−SO3H、カルボキサミド基−C(O)−NH2、アミド基−C(O)−NH−およびポリエチレンオキシ基−(CH2−CH2−O−)n−H[式中、nは、有利には1から200までの数を表す]が含まれる。
【0106】
該官能基は、エチレン性基に直接結合されていてもよいが、さもなくば1つ以上の炭化水素結合基を介してエチレン性基に結合されていてよい。
【0107】
該親水性モノマー(b)は、有利には一般式
2C=C(R5)R6 (IV)
[式中、R5は、Hまたはメチルであり、かつR6は親水性基または1つ以上の親水性基を含む基を表す]のモノマーである。
【0108】
基R6は、ヘテロ原子を、冒頭に定義された水溶性に達するような量で含む基である。
【0109】
適切なモノマー(b)の例には、酸性基を含むモノマー、例えば−COOH基を含むモノマー、例えばアクリル酸もしくはメタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸もしくはフマル酸、スルホン酸基を含むモノマー、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スルホエチルメタクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミドブタンスルホン酸、3−アクリルアミド−3−メチル−ブタンスルホン酸もしくは2−アクリルアミド−2,4,4−トリメチルペンタンスルホン酸またはホスホン酸基を含むモノマー、例えばビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、N−(メタ)アクリルアミドアルキルホスホン酸もしくは(メタ)アクリロイルオキシアルキルホスホン酸が含まれる。
【0110】
挙げられるのは、更に、アクリルアミドおよびメタクリルアミドならびにそれらの誘導体、例えばN−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミドならびにN−メチロールアクリルアミド、N−ビニル誘導体、例えばN−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンもしくはN−ビニルカプロラクタムならびにビニルエステル、例えばビニルホルミエートまたはビニルアセテートである。N−ビニル誘導体は、重合後にビニルアミン単位へと加水分解でき、ビニルエステルは、ビニルアルコール単位へと加水分解できる。
【0111】
更なる例には、ヒドロキシ基および/またはエーテル基を含むモノマー、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、ヒドロキシビニルエチルエーテル、ヒドロキシビニルプロピルエーテル、ヒドロキシビニルブチルエーテルまたは式
2C=C(R1)−O−(−CH2−CH(R7)−O−)b−R8 (V)
[式中、R1は前記定義の通りであり、かつbは、2から200までの、有利には2から100までの数を表す]の化合物が含まれる。基R7は、互いに独立して、H、メチルまたはエチル、有利にはHまたはメチルであるが、但し、基R7の少なくとも50モル%はHであるものとする。有利には、基R7の少なくとも75モル%は、Hであり、特に有利には少なくとも90モル%は、Hであり、更に好ましくはもっぱらHである。基R8は、H、メチルまたはエチルであり、有利にはHまたはメチルである。個々のアルキレンオキシ単位は、ランダムに、またはブロック状に配置されていてよい。ブロックコポリマーの場合には、ブロック間の移行は、急激であっても、さもなくば段階的であってもよい。
【0112】
更なる適切な親水性モノマー(b)は、国際公開第2011/133527号(WO 2011/133527)(第15頁第1〜23行)に記載されている。
【0113】
上述の親水性モノマーは、もちろん、示された酸形または塩基形で使用されてもよいだけでなく、相応の塩の形で使用されてもよい。酸性基または塩基性基は、ポリマーの形成後に相応の塩に変換することも可能である。有利には、相応の塩は、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩、特に有利には有機アンモニウム塩、特に有利には水溶性有機アンモニウム塩である。
【0114】
有利には、モノマー(b)の少なくとも1つが酸性基を含むモノマーであるコポリマーであって、該酸性基が、−COOH、−SO3Hおよび−PO3Hならびにそれらの塩の群から選択される少なくとも1つの基である、前記コポリマーである。
【0115】
有利には、モノマー(b)の少なくとも1つは、(メタ)アクリル酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スルホエチルメタクリレートおよび2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)の群から選択されるモノマー、特に有利にはアクリル酸および/もしくはAMPSまたはそれらの塩である。
【0116】
有利には、本発明は、少なくとも2種の異なるモノエチレン性不飽和の親水性モノマー(b)を含むコポリマーであって、該親水性モノマーが、
− 少なくとも1種の中性の親水性モノマー(b1)、ならびに
− −COOH、−SO3Hおよび−PO32ならびにそれらの塩の群から選択される少なくとも1つの酸性基を含む、少なくとも1種の親水性のアニオン性モノマー(b2)、
である、前記コポリマーに関する。
【0117】
適切なモノマー(b1)の例には、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、有利にはアクリルアミドならびにそれらの誘導体、例えばN−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミドおよびN−メチロールアクリルアミドが含まれる。更に挙げられるのは、N−ビニル誘導体、例えばN−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンまたはN−ビニルカプロラクタムである。更に挙げられるのは、OH基を有するモノマー、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、ヒドロキシビニルエチルエーテル、ヒドロキシビニルプロピルエーテルまたはヒドロキシビニルブチルエーテルである。有利には、本発明によるコポリマーにおけるモノマー(b1)は、アクリルアミドまたはその誘導体、特に有利にはアクリルアミドである。
【0118】
アニオン性モノマー(b2)のための例には、アクリル酸もしくはメタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸もしくはフマル酸、スルホン酸基を含むモノマー、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミドブタンスルホン酸、3−アクリルアミド−3−メチル−ブタンスルホン酸もしくは2−アクリルアミド−2,4,4−トリメチルペンタンスルホン酸またはホスホン酸基を含むモノマー、例えばビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、N−(メタ)アクリルアミドアルキルホスホン酸もしくは(メタ)アクリロイルオキシアルキルホスホン酸が含まれる。
【0119】
有利なアニオン性モノマー(b2)の例には、アクリル酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2−アクリルアミドブタンスルホン酸、3−アクリルアミド−3−メチルブタンスルホン酸および2−アクリルアミド−2,4,4−トリメチルペンタンスルホン酸が含まれ、更に特に有利には2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)である。
【0120】
モノマー(b1)としてアクリルアミドを含み、かつモノマー(b2)として酸性基を含むモノマーを含む、コポリマーが有利である。
【0121】
モノマー(b1)としてアクリルアミドを含み、かつモノマー(b2)として酸性基を含むモノマーを含み、ここで該酸性基が−SO3Hである、コポリマーが有利である。モノマー(b1)としてアクリルアミドを含み、かつモノマー(b2)として2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)を含む、コポリマーが特に有利である。
【0122】
モノマー(b1)としてアクリルアミドを含み、かつモノマー(b2)としてアクリル酸を含む、コポリマーが有利である。
【0123】
モノマー(b1)としてアクリルアミドを含み、かつ少なくとも2種の更なる異なる酸性基を含むモノマー(b2)を含む、コポリマーが更に有利である。モノマー(b1)としてアクリルアミドを含み、かつ酸性基を含むモノマー(b2)として、基−SO3Hを含むモノマーおよび基−COOHを含むモノマーを含む、コポリマーが特に有利である。
【0124】
モノマー(b1)としてアクリルアミドを含み、モノマー(b2)として2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)を含み、かつ基−COOHを含むモノマーを含む、コポリマーが更に有利である。モノマー(b1)としてアクリルアミドを含み、モノマー(b2)として2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)を含み、かつアクリル酸を含む、コポリマーが更に有利である。
【0125】
本発明によるコポリマーにおけるモノマー(b)の量は、該コポリマー中の全てのモノマーの全量に対して、25質量%〜99.9質量%であり、有利には25質量%〜99.5質量%である。正確な量は、疎水会合性コポリマーの種類および所望の使用目的に依存し、当業者によって相応して定められる。
【0126】
有利には、前記少なくとも1種のコポリマーは、式(I)の少なくとも1種のモノマー(a)だけでなく、中性の親水性モノマー(b1)としてのアクリルアミドと、アニオン性の親水性モノマー(b2)としての2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)とを基礎とするコポリマーである。
【0127】
特に有利には、前記少なくとも1種のコポリマーは、
0.5質量%〜15質量%の少なくとも1種の疎水会合性モノマー(a)と、
19.5質量%〜80質量%の、中性の親水性モノマー(b1)としてのアクリルアミドと、
19.5質量%〜80質量%の、アニオン性の親水性モノマー(b2)としての2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)と、
を含む。
【0128】
更に特に有利には、前記少なくとも1種のコポリマーは、
1質量%〜7.5質量%の少なくとも1種の疎水会合性モノマー(a)と、
45質量%〜55質量%の、中性の親水性モノマー(b1)としてのアクリルアミドと、
44質量%〜54質量%の、アニオン性の親水性モノマー(b2)としての2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)と、
を含む。
【0129】
有利な一実施形態においては、前記成分(β)は、(c)少なくとも1種の非イオン性の非重合性の表面活性成分を更に含む。特に、該成分は、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤であってよい。しかしながら、アニオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤も、それらが重合反応に関与しない限り適している。
【0130】
有利には、成分(c)は、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤である。
【0131】
該界面活性剤は、特に界面活性剤、有利には一般式R10−Y’の非イオン性界面活性剤であってよく、ここで、R10は、8〜32個の、有利には10〜20個の、特に有利には12〜18個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、かつY’は、親水性基、有利には非イオン性の親水性基、特にポリアルコキシ基である。
【0132】
非イオン性界面活性剤は、有利には、10〜20個の炭素原子を有するエトキシル化された長鎖の脂肪族アルコールであって、任意に芳香族部を含んでいてよい、前記脂肪族アルコールである。
【0133】
例示するのであれば、C12〜C14−脂肪アルコールエトキシレート、C16〜C18−脂肪アルコールエトキシレート、C13−オキソアルコールエトキシレート、C10−オキソアルコールエトキシレート、C13〜C15−オキソアルコールエトキシレート、C10−ゲルベアルコールエトキシレートおよびアルキルフェノールエトキシレートである。適性が示されたものは、特に5〜20のエチレンオキシ単位、8〜18のエチレンオキシ単位を有する化合物である。任意に、更にまた少量の高級アルキレンオキシ単位、特にプロピレンオキシ単位および/またはブチレンオキシオキシ単位が存在していてもよいが、その量は、エチレンオキシ単位の場合に、一般的には、全てのアルキレンオキシ単位に対して少なくとも80モル%であることが望ましい。
【0134】
適しているのは、特にエトキシル化されたアルキルフェノール、エトキシル化された飽和のイソ−C13−アルコールおよび/またはエトキシル化されたC10−ゲルベアルコールの群から選択される界面活性剤であり、ここで、アルコキシ基中にそれぞれ5〜20のエチレンオキシ単位が、有利には8〜18のエチレンオキシ単位が存在している。
【0135】
本発明によるコポリマーは、当業者により原則的に知られている方法に従って、モノマー(a)および(b)のラジカル重合によって、例えば塊状重合、溶液重合、ゲル重合、乳化重合、分散重合または懸濁重合によって、有利には水相中で製造することができる。有利には、重合は、少なくとも1種の表面活性成分(c)の存在下で実施される。
【0136】
本発明は、前記の本発明によるコポリマーの製造方法であって、少なくとも1種のモノマー(a)および少なくとも1種の親水性モノマー(b)を、水性溶液重合に供する、前記製造方法に関する。有利には、該溶液重合は、少なくとも1種の表面活性成分(c)の存在下で実施される。
【0137】
本発明によるコポリマーの製造方法に関して、本発明によるコポリマーに関して上記した有利な実施形態が当てはまる。
【0138】
本発明の一態様は、本発明によるコポリマーの製造方法であって、溶液重合が5.0から9までのpH値で実施される、前記製造方法である。
【0139】
本発明により使用される式(I)のモノマー(a)は、上述の製造方法に従って、アルコール(II)の多段アルコキシル化によって、任意にそれに引き続きエーテル化をすることによって供給される。該モノマー(a)の製造方法に関して、本発明によるコポリマーに関して上記した有利な実施形態が当てはまる。
【0140】
有利な一実施形態においては、該コポリマーの製造は、使用される全てのモノマーが十分な水溶性を有するならば、水相中でのゲル重合によって行われる。本発明の意味においては、ゲル重合は、溶液重合の特別な事例であり、そのためこの概念に共に含まれる。ゲル重合のためには、まず、モノマー、開始剤およびその他の助剤と、水または水性溶剤混合物とからなる混合物が準備される。適切な水性溶剤混合物は、水および水と混和性の有機溶剤を含み、ここで、水の割合は、標準状態で、少なくとも50質量%、有利には少なくとも80質量%、特に有利には少なくとも90質量%である。有機溶剤として挙げられるのは、この場合に特に、水と混和性のアルコール、例えばメタノール、エタノールまたはプロパノールである。酸性モノマーは、重合前に完全にまたは部分的に中和されてよい。
【0141】
溶剤を除く全ての成分の濃度は、通常は25質量%〜60質量%、有利には30質量%〜50質量%である。
【0142】
該混合物は、引き続き、光化学的におよび/または熱的に、好ましくは−5℃〜50℃で重合される。熱的に重合する場合に、有利には比較的低い温度で既に開始する重合開始剤、例えばレドックス開始剤が使用される。熱的な重合は、室温でさえも、または該混合物を、有利には50℃以下の温度に加熱することによっても行うことができる。光化学的な重合は、通常は−5℃〜10℃の温度で行われる。特に好ましくは、光化学的な重合と熱的な重合は、該混合物に熱的重合用開始剤も光化学的重合用開始剤も添加することによって組み合わせることができる。この場合に重合は、まず低い温度で、好ましくは−5℃〜+10℃で光化学的に開始される。放出される反応熱によって、該混合物は加熱され、それによって更に熱的重合が開始する。この組み合わせによって、99%より高い転化率に達することができる。
【0143】
ゲル重合は、通常は撹拌せずに行われる。ゲル重合は、該混合物を適切な容器中で2cmから20cmまでの層厚で照射および/または加熱することによって回分式に行うことができる。該重合によって、固形ゲルが生ずる。該重合は、連続的にも行うことができる。このために、重合されるべき混合物を受けるための輸送ベルトを備えた重合装置が用いられる。該輸送ベルトは、加熱するための装置または紫外線で照射するための装置を備えている。それにより該混合物は、適切な装置によってベルトの一方の端部で注ぎ出され、該混合物は輸送の過程でベルト方向において重合され、ベルトのもう一方の端部で固形ゲルを取り出すことができる。
【0144】
該ゲルは重合後に粉砕および乾燥される。乾燥は、有利には100℃未満の温度で行うことが望ましい。貼り付き合うのを避けるために、このステップのために適切な離型剤を使用することができる。本発明によるコポリマーは粉末として得られる。
【0145】
ゲル重合の実施のための更なる詳細は、例えば独国特許出願公開第102004032304号公報(DE 10 2004 032 304 A1)の段落[0037]〜[0041]に開示されている。
【0146】
本発明によるアルカリ可溶性の水性分散液の形のコポリマーは、有利には乳化重合によって製造することができる。疎水会合性モノマーを使用した乳化重合の実施は、例えば国際公開第2009/019225号(WO 2009/019225)の第5頁第16行〜第8頁第13行に開示されている。
【0147】
本発明によるコポリマーは、好ましくは、2000000g/モルから30000000g/モルまでの、更に3000000g/モルから25000000g/モルまでの、特に有利には5000000g/モルから20000000g/モルまでの、特に6000000g/モルから16000000g/モルまでの平均モル質量Mを有する。
【0148】
有利な一実施形態においては、本発明による無機結合材は、硫酸カルシウムn水和物、ポルトランドセメント、白セメント、アルミン酸カルシウムセメント、スルホアルミン酸カルシウムセメント、ジオポリマーおよび潜在水硬性結合材またはポゾラン性結合材、例えばフライアッシュ、メタカオリン、シリカ粉および水砕スラグの群からの少なくとも1つである。特に有利なのは、ポルトランドセメント、硫酸カルシウム半水和物、硫酸カルシウム硬石膏およびアルミン酸カルシウムセメントを基礎とするセメントである。
【0149】
本発明による組成物は、特に、後に水と調合される粉末状混合物であってよい。
【0150】
更なる有利な実施形態においては、本発明による組成物は、無機充填剤を含む。該無機充填剤は、有利には、珪砂、石英粉、石灰岩、重晶石、方解石、ドロマイト、タルク、カオリン、雲母および白亜の群からの少なくとも1つである。
【0151】
特定の一実施形態においては、本発明による組成物は、該組成物の乾燥質量に対して、少なくとも80質量%が、特に少なくとも90質量%が、特に有利には95質量%より多くが、無機結合材および無機充填剤からなる。
【0152】
特に有利な実施形態においては、本発明による組成物は、既調合ドライモルタル、特に石積みモルタル、化粧モルタル、断熱複合材系用モルタル、補修モルタル、目地モルタル、タイル用接着剤、薄層モルタル、均しモルタル、注入モルタル、圧入モルタル、パテ、目封止用スラリーまたは裏打ちモルタルである。
【0153】
大幅な合理化と製品品質への絶え間ない努力の結果として、建築分野では、非常に多岐にわたる使用分野のためのモルタルは、今日では事実上もはや工事現場において出発物質から共に混合されることはない。この依頼は、今日では広範囲で建築材料産業によって工場側で引き受けられ、使用準備済みの混合物は、いわゆる既調合ドライモルタルとして提供される。その場合に、工事現場では水の添加と混合によってのみ加工可能となっている既製混合物は、DIN 18557によれば、既調合モルタル、特に既調合ドライモルタルと呼ばれる。そのようなモルタル系は、非常に多岐にわたる建築物理的な目標を達成し得る。課された目標に応じて、該既調合ドライモルタルを特定の使用目的に適合させるために、結合材に更なる添加物または添加剤が混加される。この更なる添加物または添加剤は、例えば収縮低減剤、膨張剤、促進剤、遅延剤、分散剤、消泡剤、気泡形成剤および防錆剤であってよい。
【0154】
具体的な一実施形態においては、本発明による組成物は、自己水平性のレベリング材であってもよい。
【0155】
従って、特に本発明による組成物は、ドライモルタルの形で存在し得る。この場合に、本出願は、本発明による組成物の製造方法であって、前記少なくとも1種の本発明によるコポリマーと、前記少なくとも1種の無機結合材および場合により更なる成分とを混合によって接触させる、前記製造方法を含む。特に、本発明によるコポリマーは、この場合に粉末の形で存在する。
【0156】
ドライモルタル用途のために、本発明によるコポリマーは、有利には粉末形で使用される。その場合に有利には、粒子の粒度分布は、平均粒径が100μm未満であり、かつ200μmより大きい粒径を有する粒子の割合が2質量%未満であるように選択される。有利なのは、平均粒径が60μm未満であり、かつ120μmより大きい粒径を有する粒子の割合が2質量%未満であるそのような粉末である。特に有利なのは、平均粒径が50μm未満であり、かつ100μmより大きい粒径を有する粒子の割合が2質量%未満であるそのような粉末である。粉末形の本発明によるコポリマーの粒径は、例えば粉砕によって有利な粒度分布にすることができる。
【0157】
無機結合材は、有利な一実施形態においては、硫酸カルシウムn水和物(n=0〜2)[以下に、石膏とも呼ばれる]であってよい。表現「石膏」は、本文脈においては硫酸カルシウムと同義で使用され、ここで、硫酸カルシウムは、その様々な無水形および水和物系において結晶水を有するか有さずに存在してよい。天然の石膏は、本質的に硫酸カルシウム二水和物(「二水」)を含む。硫酸カルシウムの天然の結晶水不含形は、表現「硬石膏」に含まれる。天然の表現形以外に、硫酸カルシウムは、工業プロセスの典型的な副生成物であり、そのとき該副生成物は、「合成石膏」として理解される。工業プロセスからの合成石膏のために典型的な一例は、排煙脱硫である。しかしまた同様に、合成石膏は、リン酸またはフッ酸の製造法の副生成物を生ずることもある。典型的な石膏(CaSO4×2H2O)は、結晶水が分離されつつ焼成され得る。非常に多岐にわたる焼成法の生成物は、αまたはβ半水石膏である。β半水石膏は、開放容器中での迅速な加熱から、同時に空隙を形成しながら迅速に水が蒸発することによって得られる。α半水石膏は、閉じたオートクレーブ中での石膏の脱水によって製造される。この場合に結晶形は比較的緻密であり、そのためこの結合材は液状化のためにβ半水石膏よりも少ない水しか必要としない。その一方で、半水石膏は水で再水和されることで、二水結晶となる。通常は、石膏の水和は、数分から数時間までの所要時間しか必要とせず、その結果、完全な水和のために何時間から何日も必要とするセメントと比較して作業時間が短縮される。これらの特性により、石膏は、非常に多岐にわたる使用分野で結合材としてのセメントの有用な代替となる。更に、硬化された石膏製品は、傑出した硬度および圧縮強度を示す。
【0158】
非常に多岐にわたる使用分野のために、β半水石膏が選択されるのは、これがより入手しやすく、経済的な観点で数多くの利点を示すからである。しかしながら、これらの利点は、β半水石膏が加工時に主に流動性の懸濁液を得るためにより多くの水を必要とすることによって部分的に再び相殺される。更に、そこから製造された乾燥石膏製品は、硬化時に結晶母体中に残る残留水量に起因したある種の欠陥を示す傾向がある。この理由から、相応の製品は、より少量の練り混ぜ水と調合されている石膏製品よりも低い硬度を示す。
【0159】
特に有利には、従って本発明の意味においては、硫酸カルシウムn水和物は、β硫酸カルシウム半水和物である。本発明によるβ硫酸カルシウム半水和物は、この場合に特に、石膏を基礎とする定規モルタルで使用するために適している。
【0160】
更に有利には、無機結合材はジオポリマーであってよい。ジオポリマーは、SiO2を基礎とする反応性の水不溶性の化合物と、水性アルカリ媒体中で硬化するAl23との組み合わせを基礎とする無機結合材系である。具体的なジオポリマー組成物は、例えば米国特許第4,349,386号(US 4,349,386)、国際公開第85/03699号(WO 85/03699)および米国特許第4,472,199号(US 4,472,199)に記載されている。反応性の酸化物または酸化物混合物としては、その場合に、とりわけマイクロシリカ、メタカオリン、アルミノケイ酸塩、フライアッシュ、活性白土、ポゾランまたはそれらからなる混合物を使用することができる。結合材の活性化のためのアルカリ性媒体は、通常は、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属フッ化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルミン酸塩および/またはアルカリ金属ケイ酸塩、例えば水ガラスからなる。ポルトランドセメントと比較して、ジオポリマーは、より経済的であるとともに、特に酸に対して安定性があり、かつより良いCO2排出収支を示しうる。
【0161】
本発明による組成物には、特に結合材混合物が含まれてもよい。該結合材混合物は、本文脈においては、セメント、ポゾラン性結合材および/または潜在水硬性結合材、白セメント、特殊セメント、アルミン酸カルシウムセメント、スルホアルミン酸カルシウムセメント、ジオポリマーおよび種々の含水および無水の硫酸カルシウムの群からの少なくとも2種の結合材からなる混合物であると理解される。
【0162】
本発明による組成物は、本発明の範囲においては乾燥形で存在しうる。その際、乾燥形とは、該組成物が、5質量%未満、好ましくは1質量%未満、特に有利には0.1質量%未満のカール・フィッシャーによる含水量を有することと理解されるべきである。
【0163】
有利なのは、本発明による組成物が、0.1μmから1000μmの間の、特に有利には1μmから200μmの間の平均粒度を有する場合である。その場合に、粒度は、レーザ回折法によって測定される。
【0164】
本出願の更なる主題は、本発明による組成物における成分(β)のコポリマーの、レオロジー添加剤としての使用である。特に、該組成物の凝離、沈降およびブリーディングの減少のために用いられる。
【0165】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0166】
実施例
モノマーM1の製造:
1Lのステンレス製撹拌オートクレーブ中に44.1gのヒドロキシブチルビニルエーテルを装入した。引き続き、3.12gのKOMe(MeOH中32%)を計量供給し、そしてメタノールを80℃および約30ミリバールで取り去った。引き続き、140℃に加熱し、その反応器を窒素でフラッシングし、1.0バールの窒素初期圧力に調整した。引き続き、368gのエチレンオキシド(EO)を約3時間にわたって計量供給した。140℃での半時間の後続反応の後に、その反応器を125℃に冷却し、3.5時間にわたって全体で392gのペンテンオキシド(PeO)を量り入れた。該後続反応は、一晩にわたり継続した。
【0167】
22のEO単位と12のPeO単位とを有するヒドロキシブチルビニルエーテルアルコキシレート(モノマーM1)が得られた。該生成物は、31.9mg KOH/g(理論値:26.5mg KOH/g)のOH価を有していた。OH価は、無水酢酸(ESA)法によって測定した。
【0168】
モノマーM2の製造:
アンカー型撹拌機を備えた2Lの圧力オートクレーブ中に、135.3g(1.16モル)のヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)(100ppmの水酸化カリウム(KOH)で安定化されている)を装入し、そして撹拌機を始動させた。1.06gのカリウムメタノレート(KOMe)溶液(メタノール(MeOH)中32%のKOMe、0.0048モルのカリウムに相当する)を送り込み、そして撹拌容器を10ミリバール未満の圧力に排気し、80℃に加熱し、そして80℃および10ミリバール未満の圧力で70分間稼働させた。MeOHを留去した。
【0169】
選択的な実施においては、カリウムメタノレート(KOMe)溶液(メタノール(MeOH)中32%のKOMe)を送り込み、そして撹拌容器を10ミリバール〜20ミリバールの圧力に排気し、65℃に加熱し、そして65℃および10ミリバール〜20ミリバールの圧力で70分間稼働させた。MeOHを留去した。
【0170】
その容器を、N2(窒素)で3回フラッシングした。次いで、その容器を耐圧性について試験し、0.5バールの正圧(1.5バール(絶対圧力))に調整し、そして120℃に加熱した。1バール(絶対圧力)にまで放圧し、そして1126g(25.6モル)のエチレンオキシド(EO)を3.9バール(絶対圧力)のpmaxにまで計量供給し、Tmaxは、150℃であった。300gのEOの添加後に、その計量供給を中断し(開始後約3時間)、30分間待機し、そして1.3バール(絶対圧力)にまで放圧した。次いで、残りのEOを計量供給した。EOの計量供給は、放圧を含めて全体で10時間続けた。
【0171】
それを、圧力が一定になるまで約145℃〜150℃(1時間)で後撹拌し、100℃に冷却し、そして10ミリバール未満の圧力で1時間にわたって低沸点物を除去した。この場合に、22のEO単位を有するヒドロキシブチルビニルエーテルアルコキシレートが得られた。
【0172】
アンカー型撹拌機を備えた2Lの圧力オートクレーブ中に、588.6g(0.543モル)の、22のEO単位を有するヒドロキシブチルビニルエーテルアルコキシレートを装入し、そして撹拌機のスイッチを入れた。次いで、2.39gの50%のNaOH溶液(0.030モルのNaOH、1.19gのNaOH)を添加し、10ミリバール未満に減圧して、100℃に加熱し、そして80分間保持することで、水を留去した。
【0173】
2で3回フラッシングした。次いで、その容器を耐圧性について試験し、0.5バールの正圧(1.5バール(絶対圧力))に調整し、127℃に加熱し、次いで圧力を1.6バール(絶対圧力)に調整した。59.7g(1.358モル)のEOを127℃で計量供給し、pmaxは、3.9バール(絶対圧力)であった。圧力が一定になるまで30分間待機し、その後に1.0バール(絶対圧力)に放圧した。
【0174】
625.5g(8.688モル)のBuO(ブチレンオキシド)を127℃で計量供給し、pmaxは、3.1バール(絶対圧力)であった。充填度が上昇したことにより合間の放圧が必要であった。BuO計量供給を止め、圧力が一定になるまで1時間にわたり十分に反応させ、1.0バール(絶対圧力)にまで放圧した。その後に、BuOの計量供給を継続した。Pmaxは、更に3.1バールであった(610gのBuOの後に最初の放圧、BuOの総計量供給時間は放圧間隔を含めて8時間)。BuOの計量供給が終わった後に、8時間にわたり後続反応させ、次に135℃に加熱した。次いで、83.6g(1.901モル)のEOを135℃で計量供給し、pmaxは、3.1バール(絶対圧力)であった。EOの計量供給が終わった後に、4時間にわたり後続反応させた。それを100℃に冷却し、圧力が少なくとも10分間にわたり10ミリバール未満になるまで、残留酸化物を取り去った。次いで、0.5%の水の添加を120℃で行い、引き続き、圧力が少なくとも10分間にわたり10ミリバール未満になるまで取り去った。減圧を、N2を用いて解除し、100ppmのブチルヒドロキシトルエン(BHT)の添加を行った。生成物の排出は、N2の下で、80℃で行った。
【0175】
24.5のEO単位と、16のBuO単位と、3.5のEO単位とを有するヒドロキシブチルビニルエーテルアルコキシレート(モノマーM2)が得られた。分析(質量スペクトル、GPC、1H−NMR(CDCl3中)、1H−NMR(MeOD中))により、構造を確認した。
【0176】
コポリマーAおよびBの一般的な製造例
撹拌機および温度計を備えた2Lの三ツ口フラスコ中で、以下の成分:
290gの蒸留水、
242.5gの2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のナトリウム塩(水中50質量%の溶液、24.7モル%)、
1.2gのシリコーン消泡剤、
2.4gのジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム(錯形成剤)、
228.8gのアクリルアミド(水中50質量%の溶液、75.2モル%)、
4.6gのモノマーM1(比較例、コポリマーB)またはモノマーM2(本発明、コポリマーA)
を互いに混合した。
【0177】
その溶液を、20%の苛性ソーダ液でpH6に調整し、窒素で10分間のフラッシングによって不活性化し、そして約5℃に冷却した。該溶液を、プラスチック容器に移し替え、引き続き、200ppmの2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(1質量%の溶液として)、10ppmのt−ブチルヒドロペルオキシド(0.1質量%の溶液として)、5ppmのFeSO4・7H2O(1質量%の溶液として)および6ppmの重亜硫酸ナトリウム(1質量%の溶液として)を順次添加した。重合は、紫外光の照射(2本のフィリップス管、Cleo Performance 40W)によって開始させた。約2時間後に、硬質のゲルを該プラスチック容器から取り出し、はさみで約5cm×5cm×5cmの大きさの立方体のゲルに切断した。該立方体のゲルを慣用の刻み機械によって粉砕する前に、該ゲルに通常の離型剤を塗り込んだ。該離型剤は、ポリジメチルシロキサンエマルジョンを水で1:20に希釈したエマルジョンである。得られた粒状ゲルを、一様に乾燥用の網上にばらまき、循環空気乾燥棚中で約90℃〜120℃で減圧下において質量が一定になるまで乾燥させた。
【0178】
モノマーM2を基礎とするコポリマーCの製造(比較例)
撹拌機、還流冷却器、温度計および不活性ガス通路を備えた2Lの重合反応器中に、663.77gの脱塩水を装入した。撹拌しながら、151.60g(0.331モル)の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のナトリウム塩(水中50%の溶液)、1.0gのXiameter AFE−0400(シリコーン消泡剤)、142.68g(1.00モル)のアクリルアミド(水中50%の溶液)および3.0gのTrilon C(ジエチレントリアミン五酢酸の五ナトリウム塩の5%水溶液)を添加した。引き続き、pH値を、5%のNaOH溶液および/または5%のH2SO4溶液で6.0に調整した。次いで、2.85g(0.0011モル)のモノマーM2と、調節剤(連鎖移動剤)としての1.0gの次亜リン酸ナトリウム(水中10%の溶液)を添加した。22.01gの脱塩水を添加した後に、pH値を、5%のNaOH溶液および/または5%のH2SO4溶液で6.0に再び調整した。その溶液を、窒素で10分間のフラッシングによって不活性化し、そして60℃に温めた。引き続き、1.6gのテトラエチレンペンタミン(水中20質量%の溶液)および10.0gのペルオキソ二硫酸ナトリウム(水中20質量%の溶液)を順次添加することで、重合を開始させた。温度が最大になった後に、5.0gの2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(水中10%の溶液)を添加し、引き続き更に1時間にわたり65℃で後撹拌することで、重合を完全なものにした。
【0179】
応用技術的試験
硫酸カルシウム−定規モルタル(硫酸カルシウムのセルフレベリングスクリード)は、39.55質量部の硬石膏と、60.0質量部の標準砂(DIN EN 196−1)から構成されていた。刺激剤(開始剤)として、0.45質量部の硫酸カリウムを添加した。使用される水量は14.0質量部であった。それは、0.35の水結合材値に相当する。硫酸カルシウム−定規モルタルの液状化のために、ポリカルボキシレートエーテルを添加した。ポリカルボキシレートエーテルの含量は、水の添加の5分後にコポリマーを添加せずに、該硫酸カルシウム−定規モルタルが、Haegermann−コーンのスランプフローが280±5mmに至るように0.04質量部で選択した。
【0180】
硫酸カルシウム−定規モルタルの製造は、DIN EN 196−1:2005に準じて、約5リットルの収容能力を有するモルタルミキサー中で行った。混ぜ合わせるために、水、可塑剤、コポリマー(第1表を参照)および硬石膏を混合容器中に入れた。その直後に、混合過程を、低速のかき混ぜ機(1分間当たり140回転(回転/分))で開始した。30秒後に、標準砂を一定の割合で30秒間にわたり混合物に添加した。その後に、ミキサーをより高速に切り替え(285回転/分)、そして混合を更に30秒間続けた。引き続き、ミキサーを90分間にわたり停止させた。最初の30秒の間に、ボウルの壁部と下部に付着した硫酸カルシウム−定規モルタルをゴム製スクレーパーで除去し、ボウルの真ん中に入れた。中断後に、硫酸カルシウム−定規モルタルを、より高い混合速度で更に60秒間にわたって混合した。全混合時間は、4分間であった。
【0181】
硫酸カルシウム−定規モルタルの流動特性に対するコポリマーの影響を評価するために、混合過程の終了直後に、全ての試験体に関して、スランプフローを、Haegermann−コーンを用いてドイツ鉄筋コンクリート委員会のSVBガイドラインに準じて圧縮エネルギーを供給せずに測定した(これについては、ドイツ鉄筋コンクリート協会(編集):DAfStb − 自己圧縮性コンクリートのガイドライン(SVBガイドライン)、ベルリン、2003年を参照のこと)。Haegermann−コーン(d上底=70mm、d下底=100mm、h=60mm)を、400mmの直径を有する乾いたガラス板の中央に配置し、そして予定された高さまで硫酸カルシウム−定規モルタルを充填した。水平化の直後か、または硬石膏と水との最初の接触の5分後に、Haegermann−コーンを抜き取り、水切りをするために、流れ広がる硫酸カルシウム−定規モルタルの上で30秒間保ち、その後にどかした。スランプフローが停滞状態になったら、ノギスを用いて、互いに直交する二つの軸線上で直径を測定し、平均値を計算した。スランプフローは、硫酸カルシウム−定規モルタルの流動限界についての特性値である(これについては、Roussel,N.ら:セメントおよびコンクリートの調査(Cement and Concrete Research)、第35巻、第5号(2005年)、第817頁〜第822頁を参照のこと)。スランプフローが低下するほど、硫酸カルシウム−定規モルタルの加工がより困難になる。
【0182】
硫酸カルシウム−定規モルタルの沈降およびブリーディング(表面への水の分離)に対する耐性に対するコポリマーの影響を特性決定するために、200mlの硫酸カルシウム−定規モルタルを、混ぜ合わせた後に35mmの直径を有するガラス筒中に充填した(このためには、A.Perrotら/セメントおよびコンクリートの調査(Cement and Concrete Research) 42(2012)、第937頁〜第944頁を参照のこと)。30分、60分および120分の休止時間後に、硫酸カルシウム−定規モルタルの表面上の水膜(浸み出し水)の高さを測定した。モルタルの表面上の水膜が高ければ高いほど、使用されたコポリマーの安定化作用は低くなる。結果は第1表にまとめられている。
【0183】
第1表:応用技術的試験の結果
【表1】
【0184】
比較例のコポリマーBは、米国特許第8,362,180号(US 8,362,180)の開示(第27欄第40行目〜第28欄第14行目に記載のモノマーM2を使用した例)を基礎とするものである。
【0185】
120分後の沈降を完全に阻止すると同時に良好なスランプフローを達成しうるためには、0.05質量%の本発明によるコポリマーAの計量供給で既に十分である。
【0186】
本発明によるコポリマーの平均モル質量Mは、既に示したように、マーク・ホウィンクの式(1)を介して測定した。パラメータKおよびαは、本発明のポリマーと溶剤の組み合わせについては知られていない。従って、水中での純粋なポリアクリルアミドについてのパラメータを使用した(J.Klein,K−D Conrad,Makromol.Chem.1980,18,227)。すなわち、K=0.0049およびα=0.8を使用した。
【0187】
固有粘度[η]の測定のために、水中0.5%のコポリマー溶液を製造した。この溶液を、バッファー(2リットルの脱塩水中の、116.66gのNaCl+32.26gのNa2HPO4・12H2O+1.795gのNa2HPO4・H2O)で希釈することで、c=0.01%のポリマー溶液を得た。この溶液を、ウベローデ粘度計(20℃、ウベローデ毛細管タイプ1)を用いて分析した。固有粘度は、0.01%のポリマー溶液の通過時間を介して、参照としてポリマーを含まない溶剤を使用して測定した。
【0188】
参照としての純粋な溶剤(tLM)と比べた、ポリマー溶液の通過時間(t(ポリマー))を測定した(Δt=t(ポリマー)−tLM)。固有粘度[η]は、そこからソロモン−シウタ(Solomon−Ciuta)に従って計算した。
【0189】
【数2】