(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
メタクリル酸メチルに由来する構造単位を80質量%以上有し、且つ220℃、せん断速度122/secにおける溶融粘度η(A)が1500〜3500Pa・sであるメタクリル樹脂(A)65〜99質量部、および
アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の両末端に其々メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)が結合したトリブロック共重合体(B)1〜35質量部を含み、
トリブロック共重合体(B)中にアクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を30〜60質量%、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を40〜70質量%有し、且つトリブロック共重合体(B)の220℃、せん断速度122/secにおける溶融粘度η(B)が75〜1500Pa・sであり、
更に、溶融粘度η(A)と溶融粘度η(B)の比η(A)/η(B)が、1〜20である樹脂組成物。
トリブロック共重合体(B)を100質量%としたときに、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の両末端に其々結合するメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の質量%が互いに異なるものであり、
前記質量%の高いブロックを(b2(H))、前記質量%の低いブロックを(b2(L))としたときに、トリブロック共重合体(B)における(b2(H))の質量%とブロック(b2(L))の質量%の比、(b2(H))/(b2(L))が1.3以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
前記樹脂組成物100質量部に対して、メタクリル酸メチル単位60質量%以上およびメタクリル酸メチルと共重合可能なビニル系単量体単位40質量%以下からなり且つ平均重合度が3,000〜40,000である加工助剤0.3〜3質量部をさらに含有する、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
樹脂フィルム(R)の少なくとも一方の面に、(i)金属および/または金属酸化物よりなる層、(ii)熱可塑性樹脂層および(iii)基材層の少なくとも1層が積層されている、請求項5〜10のいずれか1項に記載のフィルム。
メタクリル酸メチルに由来する構造単位を80質量%以上有し、且つ220℃、せん断速度122/secにおける溶融粘度η(A)が1500〜3500Pa・sであるメタクリル樹脂(A)を得る工程と、
アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の両末端に其々メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)が結合し、且つアクリル酸エステル重合体ブロック(b1)が30〜60質量%、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)が40〜70質量%含まれ、220℃、せん断速度122/secにおける溶融粘度η(B)が75〜1500Pa・sであるトリブロック共重合体(B)を得る工程と、
メタクリル樹脂(A)65〜99質量部およびトリブロック共重合体(B)1〜35質量部を含む樹脂組成物を溶融混練する工程とを含み、
溶融粘度η(A)と溶融粘度η(B)の比η(A)/η(B)が1〜20であり、
前記溶融混練する工程は、せん断速度10〜1000/sec、温度180〜300℃で行う樹脂組成物の製造方法。
請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物をTダイから押出し、鏡面ロール又はベルトで挟み込むフィルムの製造方法であって、前記鏡面ロール又はベルトの表面温度を60〜130℃とする、フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本明細書で特定する数値は、後述する実施例に記載した方法により測定したときに得られる値を示す。また、本明細書で特定する数値「A〜B」とは、数値Aおよび数値Aより大きい値であって、且つ数値Bおよび数値Bより小さい値を満たす範囲を示す。また、本発明の「フィルム」とは、厚さ等に限定されるものではなく、JISに定義される「シート」も含むものとする。
【0011】
本発明の樹脂組成物は、樹脂混合物(M)100質量部中に、後述するメタクリル樹脂(A)を65〜99質量部、好ましくは75〜90質量部含み、且つトリブロック共重合体(B)を1〜35質量部、好ましくは10〜25質量部含むものである。メタクリル樹脂(A)が65質量部より少ないと表面硬度が低下する傾向となり、トリブロック共重合体(B)が1質量部より少ないと耐衝撃性が低下する傾向となる。
【0012】
本発明に用いるメタクリル樹脂(A)は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を80質量%以上有し、且つ220℃、せん断速度122/secにおける溶融粘度が1500〜3500Pa・sのメタクリル樹脂である。
【0013】
メタクリル樹脂(A)中のメタクリル酸メチルに由来する構造単位の割合は、80質量%以上である必要があり、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。つまり、メタクリル酸メチル以外の単量体に由来する構造単位の割合が、20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であり、全ての単量体がメタクリル酸メチルである構成も含む。
【0014】
かかるメタクリル酸メチル以外の単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−へキシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル;アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル;アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルニル、アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−へキシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル;メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル;メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−オクテンなどのオレフィン;ブタジエン、イソプレン、ミルセンなどの共役ジエン;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
【0015】
メタクリル樹脂(A)の立体規則性は、特に制限されず、例えば、イソタクチック、ヘテロタクチック、シンジオタクチックなどの立体規則性を有するものを用いてもよい。
【0016】
メタクリル樹脂(A)の220℃、せん断速度122/secにおける溶融粘度は、1500〜3500Pa・sの範囲とする。前記溶融粘度は、2000Pa・s以上であることが好ましく、2300Pa・s以上であることがより好ましく、2600Pa・s以上であることが特に好ましい。また、3300Pa・s以下であることが好ましく、3100Pa・s以下であることがより好ましく、3000Pa・s以下であることが特に好ましい。1500〜3500Pa・sの範囲とすることにより、得られる樹脂組成物の成形体またはフィルムの耐衝撃性や靭性を良好に保つことができる。
【0017】
メタクリル樹脂(A)は、メタクリル酸メチルを80質量%以上含む1種又は複数種の単量体を重合する際の重合度も考慮して、適した条件で重合することによって得られる。
【0018】
本発明のメタクリル樹脂(A)には、市販品を用いてもよい。かかる市販されているメタクリル樹脂としては、例えば「パラペットH1000B」(MFR:22g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットGF」(MFR:15g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットEH」(MFR:1.3g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットHRL」(MFR:2.0g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットHRS」(MFR:2.4g/10分(230℃、37.3N))および「パラペットG」(MFR:8.0g/10分(230℃、37.3N))[いずれも商品名、クラレ社製]などが挙げられる。
【0019】
本発明に用いるトリブロック共重合体(B)は、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の両末端に其々メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)が結合した樹脂である。トリブロック共重合体(B)中に、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)30〜60質量%と、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)40〜70質量%とを有し、且つトリブロック共重合体(B)の220℃、せん断速度122/secにおける溶融粘度が75〜1500Pa・sであるものを用いる。
【0020】
アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)は、アクリル酸エステルに由来する構造単位を主たる構成単位とするものである。アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)におけるアクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、100質量%の構成も含まれる。
【0021】
かかるアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリルなどが挙げられる。これらアクリル酸エステルを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて重合することによって、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を形成できる。なかでも、コスト、低温特性などの観点からアクリル酸n−ブチル単独で重合したものが好ましい。
【0022】
アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)は、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、アクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよい。アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)に含まれるアクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位の割合は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下であり、全ての構造単位がアクリル酸エステルに由来する単量体である場合も含む。
【0023】
かかるアクリル酸エステル以外の単量体としては、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。アクリル酸エステル以外の単量体を用いる場合には、これを1種単独または2種以上併用して、前述のアクリル酸エステルと伴に共重合することによって、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を形成できる。
【0024】
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を主たる構成単位とするものである。メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)におけるメタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上であり、全ての構造単位がメタクリル酸エステルに由来する単量体である場合も含む。ここで、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の両末端に結合する2つのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)は、構成する単量体の種類、メタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合、重量平均分子量および立体規則性の其々が独立に、同一でも異なっていてもよい。
【0025】
かかるメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリルなどを挙げることができる。これらの中でも、透明性、耐熱性を向上させる観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。これらメタクリル酸エステルを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて重合することによって、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を形成できる。
【0026】
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)は、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、メタクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよい。メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)に含まれるメタクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位の割合は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
【0027】
かかるメタクリル酸エステル以外の単量体としては、例えば、アクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。これらメタクリル酸エステル以外の単量体を1種単独でまたは2種以上を組み合わせて、前述のメタクリル酸エステルと伴に共重合することによって、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を形成できる。
【0028】
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の立体規則性は、耐熱性を高める観点から、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が60%以上であることが好ましい。シンジオタクティシティを60%以上とすることにより、ガラス転移温度を高め、本発明の樹脂組成物において優れた耐熱性を示す。より好ましくは65%以上、更に好ましくは70%以上、最も好ましくは75%以上である。
【0029】
トリブロック共重合体(B)におけるメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の割合は、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)とメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の合計100質量%に対して、透明性、表面硬度、成形加工性、表面平滑性の観点から、40質量%以上であることが好ましく、43質量%以上であることがより好ましく、47質量%以上であることが更に好ましい。また、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。トリブロック共重合体(B)には、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)が、トリブロック共重合体(B)の両末端に存在する。上記のメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の割合は、両末端のメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の合計質量に基づいて算出する。
【0030】
トリブロック共重合体(B)の220℃、せん断速度122/secにおける溶融粘度は、75〜1500Pa・sの範囲とする。前記溶融粘度は、150Pa・s以上であることがより好ましく、300Pa・s以上とすることが特に好ましい。また、1000Pa・s以下であることがより好ましく、700Pa・s以下とすることが特に好ましい。75〜1500Pa・sの範囲とすることにより、溶融押出し成形において良好な溶融張力を保持し、良好な板状成形体を容易に得ることができる。また、得られた板状成形体の破断強度などの力学物性を良好に保つことができる。更に、溶融押出し成形で得られる板状成形体の表面に微細なシボ調の凹凸や未溶融物(高分子量体)に起因するブツの発生を効果的に抑制し、良好なフィルムを得ることができる。
【0031】
トリブロック共重合体(B)は、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)とメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)との結合が、(b2)−(b1)−(b2)のトリブロック共重合体になっている必要がある。(b1)−(b2)−(b1)のように、アクリル酸重合体ブロックが末端に位置した場合には、高温での粘着性が高まりフィルム製造などの成形加工時にロールに密着するなどの問題が生じる。また、(b1)−(b2)のジブロック共重合体を用いた場合は、高温での粘着性が高まりフィルム製造などの成形加工時にロールに密着するなどの問題が生じ、且つフィルムの耐衝撃性が低下する傾向となる。
【0032】
アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の両末端に結合する2つのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)は、質量%が実質的に同一であってもよいが、溶融時の流動性を向上させる観点からは、トリブロック共重合体(B)中の質量%が異なることが好ましい。即ち、トリブロック共重合体(B)を100質量%としたときに、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の両末端に其々結合するメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の質量%が互いに異なるものとすることが好ましい。溶融時の流動性を向上させることにより、表面平滑性やヘーズに優れるフィルムや成形体を得ることができる。
【0033】
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の質量%が互いに異なるときに、質量%の高いブロックを(b2(H))、質量%の低いブロックを(b2(L))と定義した場合、トリブロック共重合体(B)における(b2(H))の質量%とブロック(b2(L))の質量%の比、(b2(H))/(b2(L))が1.3以上であることがより好ましい。(b2(H))/(b2(L))は、さらに好ましくは1.8以上であり、その上限は4以下であることが好ましく、3以下が更に好ましい。(b2(H))/(b2(L))がこの範囲にあると、樹脂組成物の溶融時の流動性を向上させることにより、表面平滑性やヘーズに優れるフィルムや成形体を得ることができる。
【0034】
トリブロック共重合体(B)は、必要に応じて、分子鎖中または分子鎖末端に水酸基、カルボキシル基、酸無水物、アミノ基などの官能基を有していてもよい。
【0035】
トリブロック共重合体(B)の製造方法は、特に限定されず、公知の手法に準じた方法を採用することができる。例えば、各重合体ブロックを構成する単量体をリビング重合する方法が一般に使用される。このようなリビング重合の手法としては、例えば、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩などの鉱酸塩の存在下でアニオン重合する方法、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法、有機希土類金属錯体を重合開始剤として用い重合する方法、α−ハロゲン化エステル化合物を開始剤として用い銅化合物の存在下ラジカル重合する方法などが挙げられる。また、多価ラジカル重合開始剤や多価ラジカル連鎖移動剤を用いて、各ブロックを構成するモノマーを重合させ、本発明に用いられるトリブロック共重合体(B)を含有する混合物として製造する方法なども挙げられる。これらの方法のうち、特に、トリブロック共重合体(B)が高純度で得られ、また分子量や組成比の制御が容易であり、且つ経済的であることから、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法が好ましい。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、溶融粘度η(A)と溶融粘度η(B)の比η(A)/η(B)が1〜20の範囲である。η(A)/η(B)の値は好ましくは3以上であり、より好ましくは5以上であり、特に好ましくは7以上である。また、η(A)/η(B)の値は好ましくは15以下であり、より好ましくは12以下であり、特に好ましくは9以下である。η(A)/η(B)の値が1より小さい場合も20より大きい場合もメタクリル樹脂(A)とトリブロック共重合体(B)の分散性が低下し、ヘーズや耐衝撃性が低下する傾向となる。
【0037】
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物との相溶性および樹脂組成物からなる樹脂フィルム(R)を製造する時の膜厚精度の観点から、樹脂組成物100質量部に対して加工助剤を0.3〜3.0質量部含有することが好ましい。加工助剤の量が0.3質量部未満だと、樹脂フィルム(R)が薄い場合に樹脂フィルム(R)端部の膜厚精度が低下することでフィルムの収率が低下する傾向となり、また破断しやすい傾向となる。一方、加工助剤の量が3.0質量部を超えると樹脂フィルム(R)の透明性が低下する傾向となる。
【0038】
加工助剤は、樹脂組成物との相溶性を向上させる観点から、メタクリル酸メチル単位60質量%以上およびこれと共重合可能なビニル系単量体単位40質量%以下からなることが好ましく、メタクリル酸メチル単位70〜90質量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体単位10〜30質量%からなることがより好ましい。メタクリル酸メチルと共重合可能なビニル系単量体としては、例えばメタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのメタクリル酸エステル;アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシルなどのアクリル酸エステル;スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;N−プロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−o−クロロフェニルマレイミドなどのマレイミド系化合物;エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレートなどの多官能性単量体などが挙げられる。なかでも、本発明の樹脂組成物との相溶性の観点からアクリル酸ブチルが好ましい。また、かかる加工助剤は、樹脂組成物との相溶性を向上させる観点から、平均重合度が3,000〜40,000の範囲であることが好ましく、15,000〜30,000の範囲であることがより好ましく、20,000〜25,000の範囲であることが特に好ましい。
【0039】
加工助剤は極限粘度が3〜6dl/gであることが好ましい。極限粘度が3未満だと成形性の改善効果が低く、6よりも大きいと樹脂組成物の溶融流動性が低下する傾向となる。
【0040】
加工助剤を製造するための重合法については、特に制限はないが、乳化重合によるのが好適である。乳化重合に用いることのできる乳化材としては、例えば、アニオン系乳化剤であるジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジラウリルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、ノニオン系乳化剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウムなどのアルキルエーテルカルボン酸塩などを使用することができる。
【0041】
また、使用する乳化剤の種類によって、重合系のpHがアルカリ側になるときは、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステルの加水分解を防止するために適当なpH調整剤を使用することができる。使用するpH調整剤としては、ホウ酸−塩化カリウム−水酸化カリウム、リン酸二水素カリウム−リン酸水素ナトリウム、ホウ酸−塩化カリウム−炭酸カリウム、クエン酸−クエン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム−ホウ酸、リン酸水素二水素ナトリウム−クエン酸などを使用することができる。
【0042】
また、重合開始剤としては、水溶性開始剤あるいは油溶性開始剤の単独系、もしくはレドックス系のものでよく、水溶性開始剤の例としては通常の過硫酸塩等の無機開始剤を単独で用いるか、あるいは、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩等との組み合わせによってレドックス系開始剤を用いることもできる。
【0043】
かかる加工助剤の代表的な商品としては、カネカ社製 カネエースPAシリーズ、三菱レイヨン社製 メタブレンPシリーズ、ダウ社製 パラロイドKシリーズなどが挙げられる。
【0044】
本発明に用いる樹脂組成物に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤、耐衝撃助剤などを添加してもよい。なお、本発明のフィルムの力学物性および表面硬度の観点から発泡剤、充填剤、艶消し剤、光拡散剤、軟化剤や可塑剤は多量に添加しないことが好ましい。なお、本発明の樹脂組成物において着色剤を含有させる場合、本発明の課題である透明性が得られない場合があるが、着色成分を含有させない樹脂組成物において透明性が確保されていれば本願発明の「透明性」の基準を満たしている。
【0045】
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物である。紫外線吸収剤は、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有すると言われる化合物である。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、ホルムアミジン類などが挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、紫外線に照射された場合の樹脂劣化の抑制力が高く、樹脂との相溶性が高いことから、ベンゾトリアゾール類、ヒドロキシフェニルトリアジン類が好ましく、ヒドロキシフェニルトリアジン類が特に好ましい。
【0046】
ベンゾトリアゾール類としては、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)6−(2H−ベンゾトリアゾール−イル)フェノール](アデカ社製;アデカスタブLA−31、アデカ社製;アデカスタブLA−31RG)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(BASF社製;TINUVIN329)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(BASF社製;TINUVIN234)などが挙げられる。
ヒドロキシフェニルトリアジン類としては、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチロキシフェニル)−6−(2,4−ブチロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(BASF社製:TINUVIN460)、2−(4−((2−ヒドロキシ−3−(2−エチル)ヘキシル)オキシ)−2−ヒドロキシフェニル)−4、6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5トリアジン(BASF社製;TINUVIN405)、2−(2−ヒドロキシ−4−(1−オクチルオキシカルボニルエトキシ)フェニル)−4,6−ビス(4−フェニル)−1,3,5−トリアジン(BASF社製;TINUVIN479)、BASF社製;TINUVIN1477などが挙げられる。
【0047】
また、本発明に用いる樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、メタクリル樹脂(A)およびトリブロック共重合体(B)以外の他の重合体と混合して用いることができる。かかる他の重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリノルボルネンなどのポリオレフィン樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂などのスチレン系樹脂;メチルメタクリレート−スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマーなどのポリアミド;ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン変性樹脂;アクリルゴム、シリコーンゴム;SEPS、SEBS、SISなどのスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDMなどのオレフィン系ゴムなどが挙げられる。
【0048】
本発明に用いる樹脂組成物を調製する方法は特に制限されないが、該樹脂組成物を構成する各成分の分散性を高めるため、例えば、溶融混練する方法が推奨される。メタクリル樹脂(A)およびトリブロック共重合体(B)を溶融混練する方法では、必要に応じてこれらと添加剤とを同時に混合してもよいし、メタクリル樹脂(A)を、添加剤とともに混合後、トリブロック共重合体(B)と混合してもよい。混練操作は、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの既知の混合または混練装置を使用して行なうことができる。特に、メタクリル樹脂(A)とトリブロック共重合体(B)の混練性、相溶性を向上させる観点から、二軸押出機を使用することが好ましい。溶融混練する際のせん断速度は10〜1000/secであることが好ましい。混合・混練時の温度は、使用するメタクリル樹脂(A)、トリブロック共重合体(B)等の溶融温度などに応じて適宜調節するのがよく、好ましくは110〜300℃の範囲であり、より好ましくは180〜300℃の範囲である。
二軸押出機を使用し溶融混練する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し、減圧下での溶融混練または窒素気流下での溶融混練を行うことが好ましい。このようにして、本発明の樹脂組成物を、ペレット、粉末などの任意の形態で得ることができる。ペレット、粉末などの形態の樹脂組成物は、成形材料として使用するのに好適である。
また、トリブロック共重合体(B)を、メタクリル樹脂(A)の単量体単位であるアクリル系モノマーとトルエン等の溶媒の混合溶液に溶解し、該アクリル系モノマーを重合することにより、トリブロック共重合体(B)を含む、本発明に用いられる樹脂組成物を調製することもできる。
【0049】
<成形体> 本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物から形成されてなる成形物を具備する成形体である。本発明の成形物の製造は、Tダイ法、カレンダー法、インフレーション法等の溶融押出成形法および射出成形法などを適用することできる。本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物のみからなる成形物であってもよいし、本発明の樹脂組成物からなる成形物と、他の樹脂組成物からなる成形体を、例えば接合等により一体化した成形体であってもよい。
【0050】
<フィルム> 本発明のフィルムは、本発明の樹脂組成物から形成されて成る樹脂フィルム(R)を少なくとも有するものである。即ち、本発明のフィルムは、樹脂フィルム(R)のみからなるフィルムであってもよいし、他の層が積層されたフィルムであってもよい。
【0051】
本発明の樹脂組成物から形成されて成る樹脂フィルム(R)の製造は、Tダイ法、インフレーション法、溶融流延法、カレンダー法等の公知の方法を用いて行うことができる。良好な表面平滑性、低ヘーズの樹脂フィルム(R)が得られるという観点から、上記溶融混練物をTダイから溶融状態で押し出し、その両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形する工程を含む方法が好ましい。この際に用いるロールまたはベルトは、いずれも金属製であることが好ましい。このように押し出された溶融混練物の両面を鏡面に接触させて製造する場合には、樹脂フィルム(R)を鏡面ロール若しくは鏡面ベルトで加圧し挟むことが好ましい。鏡面ロール若しくは鏡面ベルトによる挟み込み圧力は、線圧として下限は3N/mm以上であることが好ましく、5N/mm以上であることがより好ましく、7N/mm以上であることが特に好ましい。また、上限は50N/mm以下であることが好ましく、30N/mm以下であることがより好ましく、15N/mm以下であることが特に好ましい。線圧が3N/mm未満の場合は表面平滑性が低下する傾向となり、50N/mmより大きい場合はフィルムに歪が生じる傾向となり好ましくない。
【0052】
Tダイ法による製造方法の場合、単軸あるいは二軸押出スクリューのついたエクストルーダ型溶融押出装置等が使用できる。樹脂フィルム(R)を製造するための溶融押出温度は好ましくは200℃以上であり、より好ましくは220℃以上である。また、300℃以下とすることが好ましく、270℃以下とすることがより好ましい。また、溶融押出装置を使用し、溶融押出しする場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し、減圧下での溶融押出し、あるいは窒素気流下での溶融押出しを行なうことが好ましい。
【0053】
また、良好な表面平滑性、良好な表面光沢、低ヘーズの樹脂フィルム(R)が得られるという観点から、樹脂フィルム(R)を挟み込む鏡面ロール若しくは鏡面ベルトの表面温度は、60℃以上とすることが好ましく、70℃以上とすることがより好ましい。また、130℃以下とすることが好ましく、100℃以下とすることがより好ましい。樹脂フィルム(R)を挟み込む鏡面ロール若しくは鏡面ベルトの表面温度が60℃未満であると得られる樹脂フィルム(R)の表面平滑性、ヘーズが不足する傾向にあり、表面温度が130℃を超えると樹脂フィルム(R)と鏡面ロール若しくは鏡面ベルトが密着しすぎるため、鏡面ロール若しくは鏡面ベルトからフィルムを引き剥がす際に樹脂フィルム(R)の表面が荒れやすくなり、横皺が入るなどして樹脂フィルム(R)の外観が損なわれる傾向になる。
【0054】
樹脂フィルム(R)の少なくとも一方の面の粗度は好ましくは2.5nm以下、より好ましくは1.5nm以下である。これにより、表面平滑性に優れ、切断時や打抜時等での取扱い性に優れるとともに、意匠性を要求される用途に用いられる場合には、表面光沢に優れ、また本発明のフィルムに印刷された場合には絵柄層等の鮮明さに優れる。また、光学用途においては、光線透過率等の光学特性や表面賦形を行う際の賦形精度に優れる。
【0055】
また、樹脂フィルム(R)のヘーズは好ましくは0.7%以下、より好ましくは0.3%以下、さらに好ましくは0.2%以下である。これにより、意匠性を要求される用途に用いられる場合には、表面光沢や本発明のフィルムに印刷された絵柄層の鮮明さに優れる。また、液晶保護フィルムや導光フィルムなどの光学用途においては、光源の利用効率が高まるため好ましい。さらに、表面賦形を行う際の賦形精度に優れるため好ましい。
【0056】
また、樹脂フィルム(R)のヘーズ温度依存性はより小さいことが好ましい。これにより広い温度範囲において透明性を求められている用途や、高温で使用される場合において、透明性が損なわれず、優位である。
【0057】
また、樹脂フィルム(R)の耐衝撃性は、好ましくは40mJ以上、より好ましくは50mJ以上である。これにより破断しにくいフィルムが得られ、フィルムの生産性が向上するため好ましい。
【0058】
樹脂フィルム(R)の厚さは、500μm以下であることが好ましい。500μmより厚くなると、ラミネート性、切断時や打抜時等での取扱い性が低下し、樹脂フィルム(R)としての使用が困難になるとともに、単位面積あたりの単価も増大し、経済的に不利であるため好ましくない。当該樹脂フィルム(R)の厚さとしては40μm以上がより好ましく、50μm以上が更に好ましい。また、300μm以下がより好ましく、200μm以下が更に好ましい。
【0059】
樹脂フィルム(R)は、延伸処理が施されたものであってもよい。延伸処理によって、機械的強度が高まり、ひび割れし難い樹脂フィルム(R)を得ることができる。延伸方法は特に限定されず、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、チュブラー延伸法、圧延法などが挙げられる。延伸時の温度は、均一に延伸でき、高い強度の樹脂フィルム(R)が得られるという観点から、下限がメタクリル樹脂のガラス転移温度より5℃高い温度であり、上限がメタクリル樹脂のガラス転移温度より40℃高い温度である。延伸温度が低すぎると延伸中に成形体が破断しやすくなる。延伸温度が高すぎると延伸処理の効果が十分に発揮されず成形品の強度が高くなりにくい。延伸は、通常、100〜5000%/分で行われる。延伸速度が小さいと強度が高くなりにくく、また生産性も低下する。また延伸速度が大きいと成形体が破断したりして均一な延伸が困難になることがある。延伸の後、熱固定を行うことが好ましい。熱固定によって、熱収縮の少ないフィルムを得ることができる。延伸して得られるフィルムの厚さは、10〜200μmであることが好ましい。
【0060】
樹脂フィルム(R)は着色されていてもよい。着色法としては、メタクリル樹脂(A)とトリブロック共重合体(B)との組成物自体に、顔料又は染料を含有させ、フィルム化前の樹脂自体を着色する方法;樹脂フィルム(R)を、染料が分散した液中に浸漬して着色させる染色法などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0061】
樹脂フィルム(R)は、少なくとも一方の面に、印刷が施されていてもよい。印刷によって絵柄、文字、図形などの模様、色彩が付与される。模様は有彩色のものであっても、無彩色のものであってもよい。印刷は、印刷層の退色を防ぐために、後述する他の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂と接する側に施すのが好ましい。
【0062】
樹脂フィルム(R)は、少なくとも一方の面の表面が、JIS−K5600−5−4に準拠して測定した鉛筆硬度で好ましくはHB又はそれよりも硬く、より好ましくはF又はそれよりも硬い。表面がHB又はそれよりも硬い樹脂フィルム(R)は、傷つき難いので、意匠性の要求される成形品の表面の加飾兼保護フィルムとして好適に用いられる。
【0063】
本発明のフィルムは、樹脂フィルム(R)の少なくとも一方の面に、(i)金属および/または金属酸化物よりなる層、(ii)熱可塑性樹脂層および(iii)基材層の少なくとも1層が積層されたフィルムであってもよい。他の層を積層する方法は特に限定されず、直接または接着層を介して積層することができる。基材層としては、例えば、木製基材、ケナフなどの非木質繊維等が挙げられる。これらの層は、1層または複数層積層することができる。
【0064】
本発明のフィルムは、樹脂フィルム(R)の少なくとも一方の面に上述した他の層を積層することができる。本発明のフィルムの厚さは、用途により変動し得るもので限定されないが、二次加工性の観点からは500μm以下であることが好ましい。
積層に適した他の熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、他の(メタ)アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合)、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0065】
積層されたフィルムの製法は、特に制限されない。例えば、(1)樹脂フィルム(R)と、他の熱可塑性樹脂フィルムとを別々に用意しておき、加熱ロール間で連続的にラミネートする方法、プレスで熱圧着する方法、圧空又は真空成形すると同時に積層する方法、接着層を介在させてラミネートする方法(ウェットラミネーション);(2)樹脂フィルム(R)にTダイから溶融押出した他の熱可塑性樹脂をラミネートする方法;(3)前述のメタクリル樹脂(A)および前述のトリブロック共重合体(B)を含む樹脂組成物と、別の熱可塑性樹脂とを共押出することにより、樹脂フィルム(R)と、他の熱可塑性樹脂フィルムの層とが積層されたフィルムを得る方法などが挙げられる。
これらの方法のうち、(1)または(2)の方法では、ラミネート前に、樹脂フィルム(R)または他の熱可塑性樹脂フィルムの貼り合せ面側にコロナ処理などの表面処理を施してもよい。
【0066】
また、本発明のフィルムにおいて、金属および/または金属酸化物よりなる層を設ける場合、金属としては、例えば、アルミニウム、珪素、マグネシウム、パラジウム、亜鉛、錫、ニッケル、銀、銅、金、インジウム、ステンレス鋼、クロム、チタンなどを使用することができ、また金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化カドミウム、酸化銀、酸化金、酸化クロム、珪素酸化物、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化白金、酸化パラジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化バリウムなどを使用することができる。これらの金属及び金属酸化物は、其々単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。これらの中で、インジウムは、優れた意匠性を有し、樹脂フィルム(R)に蒸着などで金属層を設け、他の層を積層したフィルムを深絞り成形する際にも光沢が失われにくいことから好ましい。また、アルミニウムは、優れた意匠性を有し、且つ工業的にも安価に入手できるので、特に深い絞りを必要としない場合には特に好ましい。これらの金属及び/又は金属酸化物の層を設ける方法としては真空蒸着法が通常用いられるが、イオンプレーティング、スパッタリング、CVD(ChemicalVapor Deposition :化学気相堆積)などの方法を用いてもよい。金属及び/又は金属酸化物からなる蒸着膜の厚さは、一般的には5〜100nm程度である。層形成後に深絞り成形を行う場合には、5〜250nmが好ましい。
【0067】
本発明のフィルムでは、樹脂フィルム(R)を単独で用いてもよいし、内層またはその一部に用いてもよいし、最外層に用いてもよい。フィルムの積層数に関しては特に制限はない。積層に用いられる他の樹脂は、フィルムの意匠性の観点から、メタクリル系樹脂などの透明な樹脂が好ましい。フィルムに傷がつきにくく、意匠性が長く持続するという観点から、最外層は、表面硬度および耐候性が高いものが好ましく、例えば、メタクリル系樹脂からなるフィルム又は樹脂フィルム(R)が好ましい。
【0068】
(物品)
本発明の物品は、本発明のフィルムが、他の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、木質基材または非木質繊維基材等の物品の表面に設けられてなるものである。
【0069】
該物品に用いられる他の熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、他の(メタ)アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合)樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。他の熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。また、本発明の物品は、本発明のフィルムまたは本発明の積層フィルムが、木製基材やケナフなどの非木質繊維からなる基材の表面に設けられてなるものであってもよい。
【0070】
本発明の物品の製法は、特に制限されない。例えば、本発明のフィルムまたは積層フィルムを、他の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、木製基材又は非木質繊維基材の表面に、加熱下で真空成形・圧空成形・圧縮成形することにより、本発明の物品を得ることができる。本発明の物品は、本発明の樹脂組成物から形成されてなる樹脂フィルム(R)を具備するフィルムが、成形体や基材の最表層に設けられており、それによって、表面平滑性、表面硬度、表面光沢などに優れる。またさらに本発明のフィルムに印刷が施された場合には絵柄等が鮮明に表示される。また、金属層が積層された本発明のフィルムにおいては、金属並みの鏡面光沢性が得られる。
【0071】
本発明の物品の製法のうち、好ましい方法は、射出成形同時貼合法と一般に呼ばれている方法である。
この射出成形同時貼合法は、本発明のフィルムを射出成形用雌雄金型間に挿入し、その金型に該フィルムの一方の面から溶融した熱可塑性樹脂を射出して、射出成形体を形成すると同時に、その成形体に前記フィルムを貼合する方法である。
【0072】
金型に挿入されるフィルムは、平らなものそのままであってもよいし、真空成形、圧空成形等で予備成形して凹凸形状に賦形されたものであってもよい。
フィルムの予備成形は、別個の成形機で行ってもよいし、射出成形同時貼合法に用いる射出成形機の金型内で予備成形を行ってもよい。後者の方法、即ち、フィルムを予備成形した後その片面に溶融樹脂を射出する方法は、インサート成形法と呼ばれる。
本発明のフィルムを用いる場合には、積層された他の熱可塑性樹脂の層が射出成形される樹脂側になるように、即ち、本発明のフィルムが最表面となるように配置することが好ましい。このようにして、最表層に本発明のフィルムが設けられた物品を得ることができる。
【0073】
本発明の樹脂組成物によれば、透明性、表面硬度、表面平滑性などに優れ、加熱したときの白化が小さく、また耐衝撃性に優れる。従って、本発明の樹脂組成物を用いて形成した成形体およびフィルムは、透明性、表面硬度、表面平滑性などに優れ、加熱したときに白化が小さく、更に耐衝撃性に優れる。本発明によれば、この優れた特徴を活かして、意匠性の要求される製品や光学用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0074】
以下に実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。また、本発明は、以上までに述べた、特性値、形態、製法、用途などの技術的特徴を表す事項を、任意に組み合わせて成るすべての態様を包含している。なお、実施例および比較例における物性値の測定等は以下の方法によって実施した。
【0075】
〔各構成単位の割合〕
メタクリル樹脂およびトリブロック共重合体の各構成単位の割合は、各モノマーの仕込み量より算出した。
【0076】
〔溶融粘度〕
メタクリル樹脂(A)およびトリブロック共重合体(B)の、220℃、せん断速度122/secにおける溶融粘度は、キャピログラフ(東洋精機製作所社製 型式1D)を用いて220℃で、直径1mmΦ、長さ10mmのキャピラリーより、ピストンスピード10mm/分の速度で押出し、その際に生じるせん断応力から評価される数値とした。
【0077】
〔フィルムの製造〕
65mmΦベント式一軸押出機を用い、幅900mmのダイより押出温度250℃にて、吐出量40kg/hにて押出し、表面温度80℃の金属弾性ロールと表面温度80℃の金属剛体ロール間で、線圧9N/mmで挟み込み、10m/分で引き取り、厚さ75μmのフィルムを製造した。
【0078】
〔フィルムのヘーズ〕
前述の製造条件より製造されたフィルムを50mm×50mmに切り出して試験片とし、JIS K7136に準拠して23℃にてヘーズを測定した。
【0079】
〔フィルムの鉛筆硬度〕
前述の製造条件より製造されたフィルムを10cm×10cmに切り出して試験片とし、JIS−K5600−5−4に準拠して鉛筆硬度を測定した。
【0080】
〔表面粗度(フィルムの表面平滑性の測定)〕
前述の製造条件より製造されたフィルムを5mm×5mmに切り出して試験片とした。原子間力顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製SPI4000プローブステーションE−sweep環境制御ユニット)を用いて、表面の形状をDFMモードによって測定した。プローブはエスアイアイ・ナノテクノロジー社製SI−DF20(背面Al)を用いた。試料測定に先立ち、ピッチ10μm、段差100nmの参照試料を測定し、装置のX軸、Y軸の測定誤差が10μmに対して5%以下、Z軸の誤差が100nmに対して5%以下であることを確認した。
【0081】
試料の観察領域は5μm×5μmとし、測定周波数を0.5Hzとした。スキャンライン数はX軸を512、Y軸を512とした。測定は25℃±2℃、湿度30±5%の大気環境で行った。得られた測定データを、装置に付属のデータ処理ソフトウェアにより解析し、平均面粗さRaを求めた。即ち、装置の測定ソフトウェアの[ツール]メニューの[3次傾き補正]コマンドを選択し、フィルムの傾きや大きなうねりの全面傾きを補正した後、[解析]メニューの[表面粗さ解析]コマンドを選択し、平均面粗さRaを得た。平均面粗さRaは、基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値であり、以下の式により定義される。
【0082】
【数1】
ここでF(X,Y)は(X,Y)座標での高さの値を表す。Z
0は以下で定義されるZデータの平均値を表す。
【0083】
【数2】
また、S
0は、測定領域の面積を表す。
【0084】
この平均面粗さRaをフィルムの両面(便宜上、A面およびB面とする)において異なる10箇所の領域で測定し、10箇所の平均面粗さRaの平均値をフィルムの表面粗度とした。
3次傾き補正は、測定した試料表面を3次の曲面で最小2乗近似によってフィッティングすることによって行い、フィルム試料の傾きおよびうねりの影響を排除するために行った。
【0085】
〔温度白化(ヘーズ温度依存性)〕
前述の製造条件より製造されたフィルムを用いて、50mm×50mmの試験片を切り出し、JIS K7136に準拠してのヘーズ(加熱前)を測定後、80℃のオーブンの中に10分間放置した。試験片をオーブンから取り出し、直ちに、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所社製 ヘーズメーターHM−150)によりJIS K7136に準拠してヘーズ(加熱後)を測定し、以下の評価基準で判定した。なお、ここでヘーズの変化とは、以下の式で表されるものである。
ヘーズの変化=ヘーズ(加熱後)−ヘーズ(加熱前)
優(Excellent):ヘーズの変化が0.1%以下。
良(Good):ヘーズの変化が0.1%より大きく、0.5%以下。
劣(Poor):ヘーズの変化が0.5%より大きい。
【0086】
[積層フィルムの鏡面光沢性]
前述の製造条件により製造された樹脂フィルム(R)を20cm×30cmに切り出して、その片面にコロナ放電処理を施し、次いでアルミニウムを真空蒸着法により蒸着し、積層フィルムを得た。アルミニウム層の厚さは30nmであった。この積層フィルムの非蒸着面の鏡面光沢性を目視にて外観評価した。
優(Excellent):鏡面光沢あり。
良(Good):やや鏡面光沢あり。
劣(Poor):鏡面光沢なし。
【0087】
[耐衝撃性]
空隙の開いた鋼製取り付け板にフィルムを貼り付け、そこの空隙部分のフィルムに重さ20gの鉄球を自由落下させた。自由落下させる高さを10cm刻みで変更し、その破断しない最高の高さより衝撃強度を評価した。
【0088】
[膜厚精度]
前述の製造条件により製造された樹脂フィルム(R)について、端部から50mmの位置の厚さを、マイクロメーター(Mitutoyo社製;MPC−25MXT)を用いて、流れ方向に沿って10mm毎に20点測定した。測定した厚さの最大値と最小値の差を計算し、以下の基準で評価した。
優(Excellent):厚さの差が2μm未満。
良(Good):厚さの差が2μm以上、4μm未満。
可(Possible):厚さの差が4μm以上、5μm未満。
劣(Poor):厚さの差が5μm以上。
【0089】
[物品の製法]
下記実施例1の条件により得られた積層フィルムに真空圧空成形機を用いて、加熱温度160℃でABS樹脂を貼り合わせることで物品を得た。
【0090】
以下に示す参考例においては、化合物は常法により乾燥精製し、窒素にて脱気したものを使用した。また、化合物の移送および供給は窒素雰囲気下で行なった。
【0091】
参考例1 [メタクリル樹脂(A−1)の合成]
メタクリル酸メチル100質量部からなる単量体に重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.1質量部および連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン)0.21質量部を加え溶解させて原料液を得た。
イオン交換水100質量部、硫酸ナトリウム0.03質量部および懸濁分散剤0.45質量部を混ぜ合わせて混合液を得た。耐圧重合槽に、前記混合液420質量部と前記原料液210質量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度を70℃にして重合反応を開始させた。重合反応開始後、3時間経過時に、温度を90℃に上げ、撹拌を引き続き1時間行って、ビーズ状共重合体が分散した液を得た。なお、重合槽壁面あるいは撹拌翼にポリマーが若干付着したが、泡立ちもなく、円滑に重合反応が進んだ。
得られた共重合体分散液を適量のイオン交換水で洗浄し、バケット式遠心分離機により、ビーズ状共重合体を取り出し、80℃の熱風乾燥機で12時間乾燥し、ビーズ状のメタクリル樹脂(A)(以下「メタクリル樹脂(A−1)」と称する)を得た。
得られたメタクリル樹脂(A−1)は、メタクリル酸メチル含量が100質量%であり、220℃、せん断速度122/secの溶融粘度が3000Pa・sであった。
【0092】
参考例2 [メタクリル樹脂(A−2)の合成]
使用した単量体をメタクリル酸メチル99.3質量部、アクリル酸メチル0.7質量部にし、連鎖移動剤の量を0.24質量部に変更した以外は、参考例1と同様にしてメタクリル樹脂(A−2)を重合、製造した。得られたメタクリル樹脂(A−2)は、メタクリル酸メチル含量が99.3質量%であり、220℃、せん断速度122/secの溶融粘度が2780Pa・sであった。
【0093】
参考例3 [トリブロック共重合体(B−1)の合成]
トルエン溶液中、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムの触媒下で、sec−ブチルリチウムを重合開始剤として重合した。15質量部のメタクリル酸メチルを滴下してメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2−1)を重合した後、50質量部のアクリル酸n−ブチルを滴下してアクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を重合し、さらに35質量部のメタクリル酸メチルを滴下してメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2−2)を重合し、最後にメタノールで停止して、トリブロック共重合体(B−1)を得た。得られたトリブロック共重合体は、(b2−1)−(b1)−(b2−2)のトリブック構造をしており、(b2−1)−(b1)−(b2−2)の組成比は、15質量%−50質量%−35質量%であった。また、トリブロック共重合体(B−1)の220℃、せん断速度122/secの溶融粘度は377Pa・sであった。ブロック(b2−1)とブロック(b2−2)は、トリブロック共重合体(B)を100質量%としたときに、ブロック(b2−2)の方がブロック(b2−1)より質量%が高く、(b2−2)/(b2−1)の質量%の比、即ち、(b2(H))/(b2(L))は2.3であった。
【0094】
参考例4 [トリブロック共重合体(B−2)の合成]
参考例3と同様の溶媒、触媒条件下、重合開始剤を調整することで分子量を調整し、重合性単量体の量を調整し、メタクリル酸メチルからなる(b2−1)−アクリル酸ブチルからなる(b1)−メタクリル酸メチルからなる(b2−2)の構造を有するトリブロック共重合体(B−2)を得た。(b2−1)−(b1)−(b2−2)の組成比は、15質量%−70質量%−15質量%であった。また、得られたトリブロック共重合体(B−2)の220℃、せん断速度122/secの溶融粘度は650Pa・sであった。(b2−1)の質量%に対する(b2−2)の質量%の比、(b2−1)/(b2−2)は1であった。
【0095】
参考例5[ジブロック共重合体(B−3)の合成]
参考例3と同様の溶媒、触媒条件下、重合開始剤を調整することで分子量を調整し、重合性単量体の量を調整し、メタクリル酸メチルからなる(b2)−アクリル酸n−ブチル/アクリル酸ベンジル=50/50(質量比)からなる(b1)の構造を有するジブロック共重合体(B−3)を得た。(b2)−(b1)の組成比は、50質量%−50質量%である。得られたジブロック共重合体(B−3)の220℃、せん断速度122/secの溶融粘度は407Pa・sであった。
【0096】
(実施例1)
メタクリル樹脂(A−1)85質量部、トリブロック共重合体(B−1)15質量部、加工助剤A(ダウ社製;パラロイドK125;メタクリル酸メチル79質量%およびアクリル酸ブチル単位21質量%からなる共重合体であり、且つ平均重合度20,000)1.5質量部、紫外線防止剤B(BASF社製;チヌビン479)1質量部を、二軸押出機により82/sec、250℃で溶融混練し、ストランド状に押出し、ペレタイザーでカットすることで、樹脂組成物のペレットを製造した。
得られた樹脂組成物を65mmΦベント式1軸押出機で溶融し、幅900mmのダイより押出温度250℃にて吐出量40kg/hにて押出し、表面温度80℃の金属弾性ロールと表面温度80℃の金属剛体ロール間で線圧9N/mmで挟み込み、10m/分で引き取り、厚さ75μmの樹脂フィルム(R)を製造した。得られた樹脂フィルム(R)のヘーズ、鉛筆硬度、表面粗度、応力白化、温度白化(80℃)を測定した。また、この樹脂フィルム(R)の片面にコロナ放電処理を施し、次いでアルミニウムを真空蒸着法により蒸着した。アルミニウム層の厚さは30nmであった。こうして得られたフィルムの鏡面光沢性を評価した。表1にこれらの結果を示した。
【0097】
(実施例2〜3)
表1に示す配合処方に従った以外は、実施例1と同じ方法でフィルムを得て、同じ方法で物性評価を行った。なお、表1における加工助剤Bおよび紫外線吸収剤Aは、加工助剤B(三菱レイヨン社製;メタブレンP530A;メタクリル酸メチル80質量%およびアクリル酸ブチル単位20質量%からなる共重合体であり、且つ平均重合度24,000)および紫外線吸収剤A(アデカ社製;LA31RG)である。結果を表1に示す。
【0098】
(比較例1〜3)
表1に示す配合処方に従った以外は、実施例1と同じ方法でフィルムを得て、同じ方法で物性評価を行った。その結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
これらの結果から、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を80質量%以上有し、且つ220℃、せん断速度122/secにおける溶融粘度η(A)が1500〜3500Pa・sであるメタクリル樹脂(A)65〜99質量部、およびメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)40〜70質量%とアクリル酸エステル重合体ブロック(b1)30〜60質量%とを有し、且つ220℃、せん断速度122/secにおける溶融粘度η(B)が75〜1500Pa・sであるトリブロック共重合体(B)1〜35質量部を含み、且つその220℃、溶融粘度η(A)と溶融粘度η(B)の比(η(A)/η(B))が1〜20である樹脂組成物は、透明性、表面硬度、表面平滑性などに優れ、高温に加熱したときの白化が小さく、また耐衝撃性に優れたフィルム、成形体が形成できる組成物であることがわかる。また、実施例1の積層フィルムを用いて作製した物品は良好な鏡面光沢性を有していた。
【0101】
この出願は、2015年3月5日、2015年3月10日に出願された日本出願特願2015−043593、日本出願特願2015−047535を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。