(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
構成成分(A)は、各分子中に少なくとも2個のアルケニル基を、アルケニル含有量0.005〜1.50質量%の範囲内で有する直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)であり、
構成成分(B)は、少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1’)であって、数平均分子量から計算した、各分子中のシロキサン単位の平均数(DP)が8〜300の範囲内であり、構成成分(B1’)の全末端シロキシ基の50mol%以上が、少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有し、前記構成成分(B1’)の[Si−H]質量%が以下の式を満たし、
0<[Si−H]質量%<3.5/(DP)0.5
かつ、
R3SiO0.5単位(Rは独立に一価の有機基である。)、及びRSiO1.5単位(Rは一価の有機基である。)又はSiO2.0単位の少なくとも一方を含む前記オルガノポリシロキサン樹脂の含有量が、前記組成物に含まれる前記固体成分の総量の20質量%以下である、請求項4に記載の感圧接着剤用硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【背景技術】
【0002】
アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、ケイ素原子結合水素原子(Si−H)を有するオルガノポリシロキサン、及び白金化合物等のヒドロシリル化触媒を含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、広く知られており、多様な用途に使用されている。これら硬化性オルガノポリシロキサン組成物の用途の1つに、感圧接着剤がある。感圧接着剤に適用できる硬化性オルガノポリシロキサン組成物もまた、広く知られている。
シロキサンは、Si−O結合を少なくとも1個含む化合物である。
ポリシロキサンはポリマー鎖を形成するいくつかの−Si−O−Si−結合を含み、該ポリマー鎖での繰り返し単位は、−(Si−O)−である。オルガノポリシロキサンは、シリコーンと呼ばれることもある。オルガノポリシロキサンは、少なくとも1個のケイ素原子が少なくとも1個の有機基を保持する繰り返し単位−(Si−O)−を含む。「有機」は、少なくとも1個の炭素原子を含んでいることを意味する。有機基は、少なくとも1個の炭素原子を含む化学基である。
ポリシロキサンは、末端基及びペンダント基を含む。
ポリシロキサンは典型的には、1個以上の、以下の単位の種類−M単位(単官能性)、D単位(二官能性)、T単位(三官能性)、Q単位(四官能性)−を含むことができる。M単位は典型的には、式R
3SiO
0.5を有する。D単位は典型的には、式R
2SiO
2/2を有する。T単位は典型的には、式RSiO
1.5を有する。Q単位は典型的には、式SiO
2.0を有する。Rは置換基、好ましくは有機置換基である。1個のSi原子上では、各置換基Rは、同一である、又は、異なることができる。Rは例えば、アルキル(例えばメチル)、アリール(例えばフェニル)、アルケニル(例えばビニル又はヘキセニル)、アクリレート、メタクリレート及びその他のものから選択できる。
直鎖状ポリシロキサンは、典型的には、D単位及び末端のM単位を含む。樹脂ともまた称される分枝鎖状ポリシロキサンは、典型的には、少なくとも1個のT単位及び/又は少なくとも1個のQ単位を含む。MQ樹脂は、少なくとも1個のM単位及び少なくとも1個のQ単位を含むオルガノポリシロキサンである。
ヒドロシリル化は、少なくとも1個の不飽和結合を含む化合物、例えば、アルケニルが、少なくとも1個のSi−H結合を含む化合物と反応する付加反応である。
【0003】
特許第4678847号(特許文献1)は、ベースフィルム及び該フィルムの片面上に形成される接着剤層からなる感圧接着剤フィルムについて開示している。該接着剤層は、(A)1分子あたり少なくとも2個のアルケニル基を有する、ジオルガノポリシロキサン、(B)M単位のQ単位に対するモル比(M/Q)が0.6〜1.7の範囲内にあるMQ樹脂、及び(C)Si−H基を有し、Si−Hのアルケニル基に対するモル比が0.5〜20の範囲内にあるオルガノポリシロキサンを含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物から作製される。特許文献1は、構成成分(C)は1分子あたり少なくとも2個の、ケイ素原子結合水素原子を有する直鎖状、分枝鎖状、又は環状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであってよいこと、構成成分(C)は好ましくは25℃で1〜5,000(=5000.00)mPa・sの粘度を有することを開示している。特許文献1は、また、構成成分(C)におけるSi−H基の、構成成分(A)におけるアルケニル基に対するモル比が0.5〜20の範囲内にあることを開示している。特許文献1で開示されている例で具体的に使用したオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、次式で表される直鎖状メチルハイドロジェンポリオルガノシロキサンである。
【0004】
【化1】
該化合物は42個のシロキサン単位を有し、ケイ素原子結合水素原子の量は1.65質量%である。
【0005】
特許第4678817号(特許文献2)は、感圧接着テープに使用できる硬化性オルガノポリシロキサン組成物を開示している。該組成物は、(A)1分子あたり少なくとも2個のアルケニル基を有し、アルケニル基の量が、ポリマー100gあたり0.0015〜0.06モルの範囲内にあるオルガノポリシロキサン、(B)MQ樹脂、及び(C)1分子あたり3個以上のSi−H基を有し、SiHを有するシロキサン単位/Si−H基を有さないシロキサン単位のモル比が5/1〜9/1の範囲内にあるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む。特許文献2は、また、構成成分(C)におけるSi−H基の、構成成分(A)におけるアルケニル基に対するモル比が0.1〜20の範囲内にあることを開示している。特許文献2で開示されている例で具体的に使用したオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、次式で表される直鎖状メチルハイドロジェンポリオルガノシロキサンである。
【0006】
【化2】
【0007】
該化合物は64個のシロキサン単位を有し、ケイ素原子結合水素原子の量は1.65質量%である。
【0008】
特許出願公開第2011−46174号(特許文献3)は、硬化性オルガノポリシロキサン組成物、並びにガラスシート、シリコンウェハ、金属プレート等の基材、及び硬化性オルガノポリシロキサン組成物により形成されるオルガノポリシロキサン層からなる積層体物品を開示している。特許文献3は、また、別のガラス基材を積層体物品のオルガノポリシロキサン層に貼り付けてよく、該ガラス基材を処理した後、該ガラス基材を積層体物品から分離することを開示している。特許文献3に開示されている硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、(a)少なくとも2個のアルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン、及び(b)少なくとも3個の、ケイ素原子結合水素原子を有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含み、少なくとも1個の、ケイ素原子結合水素原子は、ポリマー鎖の末端に位置するケイ素原子に結合しており、ケイ素原子結合水素原子の、アルケニル基に対するモル比(Si−H/アルケニル)は、0.7〜1.05の範囲内にある。特許文献3の例では、次式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが開示されている。
【0009】
【化3】
式中、オルガノハイドロジェンシロキサンAでは、k=40、かつI=40、又はオルガノハイドロジェンシロキサンBでは、k=100若しくはI=8が、例において開示されている。従って、オルガノハイドロジェンシロキサンAは、82個のシロキサン単位、及び0.732質量%のケイ素原子結合水素原子を有する。更に、特許文献3は、上述のモル比(Si−H/アルケニル)が1.05超である場合、ガラス基材からの硬化オルガノポリシロキサン組成物の剥離特性が悪化するであろうことを開示している。換言すれば、特許文献3は、良好な剥離特性を呈する接着剤層を作製するには、硬化性オルガノポリシロキサン組成物のモル比(Si−H/アルケニル)は、1.05より小さくなければならないことを開示している。
【0010】
感圧接着剤の一用途に保護フィルムがある。保護フィルムは、物品−典型的には、保存、又は運送の間に保護すべきガラスシート等の基材−に貼り付けられる。本用途では、保護フィルムは一時的に使用され、物品を更に処理又は使用するとき、物品から除去される。従って、ベースフィルム及び感圧接着剤層からなる保護フィルムを、保護すべき物品から除去するとき、感圧接着剤材料の残留物が物品の表面上に残存しないことが望ましい。更に、物品を使用することによる製品製造のサイクルタイムを減少させるために、硬化性感圧オルガノポリシロキサン組成物を迅速に硬化でき、かつ保護すべき物品表面から容易に除去することができることも望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のように、感圧接着剤、又は基材及び硬化オルガノポリシロキサン組成物の層からなる、接着フィルム若しくは保護フィルム等の積層体の作製に使用する、硬化性オルガノポリシロキサン組成物が知られている。しかしながら、依然として迅速に硬化可能な硬化性オルガノポリシロキサン組成物、及び物品の表面上にある感圧接着剤からの残留物が残存することなしに、又は許容できる少量の残留物が残存するのみで、該接着剤を貼り付けた物品表面から容易に除去することができる硬化性組成物から製造される硬化感圧接着剤を開発することが所望されている。本発明の目的は、上述の課題を解決することができる新規の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の発明者らは、特許請求の範囲及び本明細書にて定義されるように、比較的低い重合度(DP)、及び比較的少ない、ケイ素原子結合水素原子(Si−H)の含有量を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することにより、本発明の目的を解決することができることを見出した。しかしながら、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は新規であり、本発明の例にて具体的に開示している感圧接着剤組成物等以外の用途に使用してもよい。従って、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の用途は、感圧接着剤組成物及び該感圧接着剤組成物を使用した保護フィルムに限定されない。
【0014】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は以下の構成成分:
(A)各分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素結合水素原子と、構成成分(A)中のアルケニル基とのモル比について、1.1:1〜20:1(Si−H:アルケニル基)、好ましくは1.5:1〜10:1、より好ましくは2:1〜8:1、及び最も好ましくは3:1〜6:1の値をもたらすために十分な量のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであって、
構成成分(B)は以下の構成成分(B1)及び(B2)からなり、質量比(B1)/(B2)が100/0〜15/85、好ましくは20/80、及びより好ましくは15/85の範囲内にあり、
(B1)は、各分子中に、少なくとも3個の、ケイ素結合水素原子を有し、ケイ素結合水素含有量[Si−H]質量%が以下の式を満たすオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、
0<[Si−H]質量%<5/(DP)
0.5
(式中、DPは各分子中のシロキサン単位の、構成成分(B1)の数平均分子量により計算した平均数を表し、該DPは5〜1000の範囲内にある。)、
(B2)は、各分子中に少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有し、構成成分(B1)とは異なるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである、
オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)触媒量のヒドロシリル化反応触媒とを含む。
【0015】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物では、構成成分(B1)の全末端シロキシ基の50mol%以上が、少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有することが好ましい。
【0016】
上記硬化性オルガノポリシロキサン組成物について、上記構成成分(B1)の[Si−H]質量%が以下の式を満たすこともまた、好ましい。
0<[Si−H]質量%<3.5/(DP)
0.5
(式中、DPは上で及び請求項1において定義した通りであり、上記DPは5〜500の範囲内にある。)。
【0017】
本出願の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、R
3SiO
0.5(Rは独立に一価の有機基である。)単位、及びRSiO
1.5単位(Rは一価の有機基である。)又はSiO
2.0単位の少なくとも一方を含むオルガノポリシロキサン樹脂を更に含んでよく、オルガノポリシロキサン樹脂の含有量は、組成物の固体成分の総量のうち、40質量%未満であってよい。
【0018】
本発明はまた、上記段落に記載されているオルガノポリシロキサン樹脂を含む、硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
構成成分(A)は、各分子中に少なくとも2個のアルケニル基を、アルケニル含有量0.005〜1.50質量%の範囲内で有するオルガノポリシロキサン(A1)であり、
構成成分(B)は、少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1’)で、数平均分子量から計算した、各分子中のシロキサン単位の平均数(DP)が8〜300の範囲内にあり、構成成分(B1’)の全末端シロキシ基の50mol%以上が、少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有し、上記構成成分(B1’)の[Si−H]質量%は以下の式を満たし、
0<[Si−H]質量%<3.5/(DP)
0.5
かつ、
R
3SiO
0.5(Rは独立に一価の有機基である。)単位、及びRSiO
1.5単位(Rは一価の有機基である。)又はSiO
2.0単位の少なくとも一方を含むオルガノポリシロキサン樹脂の含有量は、組成物に含まれる固体成分の総量の20質量%以下である。
【0019】
硬化性オルガノポリシロキサン組成物が、30μmの厚みを有する硬化層を75μmの厚みを有するポリエチレンテレフタレートフィルム上に、該硬化性オルガノポリシロキサン組成物から形成する場合に、日本工業規格Z 0237に規定されている180度剥離試験法に従って測定した硬化層のフィルムに対する接着強度が、0.5〜20.0gf/25mmの範囲内となる特性を有することが好ましい。本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物に含まれる構成成分の種類及び量を、硬化性組成物から形成された硬化層の、上述した特性が達成されるよう決定することが望まれる。
【0020】
日本工業規格Z 0237に規定されている180度剥離試験法に従って測定した、上記段落に記載の接着強度は、好ましくは0.5〜15.0gf/25mmの範囲内にある。
【0021】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の一実施形態は、R
3SiO
0.5(Rは独立に一価の有機基である。)単位、及びRSiO
1.5単位(Rは一価の有機基である。)又はSiO
2.0単位の少なくとも一方を含むオルガノポリシロキサン樹脂を含まない、又は実質的に含まず、組成物を硬化し基材上に硬化層を作製することが可能であり、組成物は、30μmの厚みを有する硬化層を、75μmの厚みを有するポリエチレンテレフタレートフィルム上に、該組成物から形成する場合に、日本工業規格Z 0237に規定されている180度剥離試験法に従って測定した硬化層のフィルムに対する接着強度が、0.5〜10.0gf/25mmの範囲内となる特性を有する。
【0022】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、好ましくはプライマー組成物、感圧接着剤組成物を含む接着剤組成物、及びコーティング組成物として使用される。
【0023】
本発明の一実施形態は、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から作製された硬化組成物からなる感圧接着剤(PSA)組成物に関する。本発明の硬化性組成物は感圧接着剤を作製するのに特に有用である。
【0024】
本発明の硬化性組成物はまた、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物からなる剥離コーティング組成物としても有用である。従って、本発明はまた、このような剥離コーティング組成物及び該組成物から作製した剥離コーティングにも関する。
【0025】
本発明はまた、上記の本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させることにより作製する、硬化オルガノポリシロキサン組成物の層を含む物品を提供する。
【0026】
本発明はまた、基材、及び本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を薄いフィルムの形態で硬化することにより作製される硬化オルガノポリシロキサン組成物の層を含む積層体に関する。
【0027】
上記積層体に関して、硬化組成物の層は好ましくは接着剤層、剥離コーティング層、及びプライマー層からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0028】
本発明の一実施形態は上記積層体を含む光学物品に関する。
【0029】
本発明は、また、上記積層体を含む保護フィルムを提供する。
【0030】
本発明は、また、積層体を製造するため方法であって、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、シート形状の基材の少なくとも片面に、マルチロールコータを使用して塗布する工程を含む方法を提供する。
【0031】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、以下に記載する1つ以上の効果を実現する。
(i)本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から作製した硬化層は、硬化層を基材表面から除去した後では、硬化層から硬化層を貼り付けた基材表面への、材料の移行性レベルが非常に低い、又は材料の移行が不可、若しくは実質的に外観上検出不可であることを呈する。
(ii)硬化オルガノポリシロキサン組成物から作製した、基材への接着強度が低い接着剤層を設計することが可能である。従って、接着剤層を基材から容易に除去することができる。
(iii)本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、容易に取り扱いができ、硬化層を迅速に作製することができる。
(iv)MT樹脂又はMQ樹脂等のシリコーン樹脂を組成物に組み込むことなく、所望の特性を有する、本発明の硬化性組成物を配合するが可能である。所望に応じてMT樹脂又はMQ樹脂の少なくとも1つを添加することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
上記のように、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、必須成分として以下の構成成分(A)、(B)、及び(C)を含む:
(A)各分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン;
(B)以下の構成成分(B1)及び(B2)からなるオルガノハイドロジェンポリシロキサン:
(B1)は、各分子中に、少なくとも3個の、ケイ素結合水素原子を有し、ケイ素結合水素含有量[Si−H]質量%が、以下の式を満たすオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、
0<[Si−H]質量%<5/(DP)
0.5、
より好ましくは、0<[Si−H]質量%<3.5/(DP)
0.5
(式中、DPは各分子中のシロキサン単位の、構成成分(B1)の数平均分子量により計算した平均数を表し、該DPは5〜1000、好ましくは5〜500、より好ましくは8〜200、及び最も好ましくは12〜120の範囲内にある。)であり、
(B2)は、各分子中に少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有し、構成成分(B1)とは異なるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、
構成成分(B1)及び構成成分(B2)の各々は、構成成分(B1)/構成成分(B2)の質量比が100/0〜15/85の範囲内、好ましくは20/80、及びより好ましくは25/75となる量で使用される。;及び
(C)構成成分(A)と構成成分(B)間のヒドロシリル化反応を進行させ、組成物を硬化させるのに十分である触媒量のヒドロシリル化反応触媒。
【0034】
上記の式0<[Si−H]質量%<5/(DP)
0.5、及び0<[Si−H]質量%<3.5/(DP)
0.5は、例にて示される、多くの異なるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを構成成分(B1)として使用した実験データから導出される。
【0035】
更に、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は構成成分(A)及び(B)の各々を構成成分(B)に含まれる全ケイ素原子結合水素原子の、構成成分(A)に含まれる全アルケニル基に対するモル比が、1.1:1〜20:1(Si−H:アルケニル)、好ましくは1.5:1〜10:1、より好ましくは2:1〜8:1、及び最も好ましくは3:1〜6:1となる量で含む。ケイ素原子結合水素原子のアルケニル基に対する比を、上述の範囲に調整することによって、硬化性組成物の良好な硬化性、及び硬化組成物から該硬化組成物を貼り付けた基材表面への材料の低い移行性等の、本発明の所望の効果が達成される。
【0036】
本発明に使用される構成成分(A)、(B1)、(B2)、及び(C)並びにその他の考えられる添加剤を、以下に詳述する。
【0037】
[構成成分A]
構成成分Aは、各分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、又は各々が少なくとも2個のアルケニル基を各分子中に有する2種以上のオルガノポリシロキサンの組み合わせである。各分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、以下の一般式で表される。
(R
a13SiO
1/2)
m1(R
a22SiO
2/2)
m2(R
a3SiO
3/2)
m3 (1)、
式中、R
a1,R
a2及びR
a3は各々独立に、ヒドロキシル基、1〜3個の炭素原子を有するアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等)、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、及びオクチル基等)、2〜8個の炭素原子を有するアルケニル基、フェニル基、及び1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、又はフッ素原子等のハロゲン原子で置換されたフェニル基からなる群から選択される。式(1)のオルガノポリシロキサン分子のケイ素原子上における、R
a1、R
a2、及びR
a3部分の少なくとも2個は、ヒドロシリル化触媒の存在下でSi−H基と反応可能なアルケニル基である。
アルケニル基は、ビニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−へプテニル基、及び1−オクテニル基等の、1−アルケニル基から選択してよい。下付文字m1、m2及びm3は各々独立に分子中の対応する繰り返し単位の数を表す。m1+m2+m3が、式(1)のオルガノポリシロキサンに、25℃における粘度10,000〜150,000mPa・S、又はJIS K−6249に従って測定した可塑度(mm)0.5〜10.0mmをもたらす数であるという条件で、m1、m2及びm3の1つ又は2つはゼロであってよいが、m2及びm3は同時にはゼロにはならない。好ましくは、可塑度は0.9〜3.0mmの範囲内であった。
【0038】
構成成分(A)として使用するオルガノポリシロキサンは直鎖状、分枝鎖状、又は環状のオルガノポリシロキサンであってよい。環状オルガノポリシロキサン部分が更に結合した直鎖状又は分枝鎖状オルガノポリシロキサン鎖を有するオルガノポリシロキサンもまた、構成成分(A)として使用することができる。2つ以上の、同一又は異なる種類のオルガノポリシロキサンを組み合わせて構成成分(A)として使用してもよい。
【0039】
構成成分(A)として最も好ましく使用されるオルガノポリシロキサンは、以下の化学式で表される直鎖状オルガノポリシロキサンである。
(R
a12R
b1SiO)−[(R
a2R
b1SiO
2/2)
n1(R
a22SiO
2/2)
n2]−(SiR
a12R
b1)(2)、
式中、R
a1及びR
a2は各々独立にヒドロキシル基、1〜3個の炭素原子を有するアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等)、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、及びオクチル基等、好ましくはメチル基)、又はフェニル基若しくは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、及びオクチル基等)で置換されたフェニル基を表す。R
b1は2〜8個の炭素原子を有し、ヒドロシリル化触媒の存在下でSi−H部分と反応可能なアルケニル基を表す。n1及びn2は各々独立に式内の対応する繰り返し単位の数を表す。式中、n1は0以上の整数で、n2は1以上の整数であり、n1+n2は式(2)のオルガノポリシロキサンに、JIS K−6249に従って測定した、25℃における10,000〜150,000mPa・Sの粘度、又は0.5〜10.0mmの可塑度(mm)をもたらす数である。構成成分(A)のアルケニル含有量は特に限定されない。しかしながら、構成成分(A)として使用されるオルガノポリシロキサンは、好ましくは、オルガノポリシロキサンの総重量に対するビニル含有量が、0.050〜1.50質量%、好ましくは0.05〜1.00質量%、及びより好ましくは0.06〜0.80質量%の範囲内にある。構成成分(A)は式(2)の1種類以上のオルガノポリシロキサンからなっていてもよい。式(2)のオルガノポリシロキサンを、式(1)で表される別のオルガノポリシロキサンと使用することもまた可能である。
【0040】
[構成成分(B)]
構成成分(B)は、ヒドロシリル化触媒の存在下で構成成分(A)のビニル基と反応可能なケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。構成成分(B)は構成成分(B1)及び任意の(B2)からなる。換言すれば、構成成分(B)は構成成分(B1)から、又は構成成分(B1)及び構成成分(B2)の組み合わせからなる。本発明の重要な技術的特徴は、以下に本発明の所望の効果を達成する構成成分(B1)として定義する、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することである。従って、構成成分(B1)を、構成成分(B)として使用することは本発明において必須である。しかしながら発明者らは、著しく本発明の効果を低下させることなく、構成成分(B1)の他に、構成成分(B1)とは異なる構成成分(B2)として別のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することもまた、可能であることを見出した。しかしながら、本発明の効果を達成するには、構成成分(B1)を、構成成分(B1)及び構成成分(B2)の総重量中、15質量%超の量で使用することが有利である。構成成分(B1)のみを構成成分(B)として使用することもまた可能である。従って、構成成分(B1)の構成成分(B2)に対する質量比((B1)/(B2))は、好ましくは、100/0〜15/85、好ましくは100/0〜20/80、及びより好ましくは100/0〜25/75の範囲内にある。
【0041】
[構成成分(B1)]
構成成分(B1)は、各分子中に、少なくとも3個の、ケイ素結合水素原子を有し、ケイ素結合水素含有量[Si−H]質量%が、以下の式を満たすオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
0<[Si−H]質量%<5/(DP)
0.5
より好ましくは、0<[Si−H]質量%<3.5/(DP)
0.5
(式中、DPは各分子中のシロキサン単位の、構成成分(B1)の数平均分子量により計算した平均数を表し、該DPは5〜1000、好ましくは5〜500、より好ましくは8〜200、及び最も好ましくは12〜120の範囲内にある。)。本明細書では、更に、構成成分(B1)の数平均分子量の値を、末端Si基及び分子中のその他のシロキサン単位の積分値比を
29Si−NMRで定量することによって計算する。構成成分(B1)は1種のオルガノハイドロジェンポリシロキサン、又は上に定義した2種以上の異なるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの組み合わせであってよい。本発明の構成成分(B1)として使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、特許文献1〜3にて開示されているような感圧接着剤に使用される、硬化性オルガノポリシロキサン組成物において従来使用されているオルガノハイドロジェンポリシロキサンと比較して、比較的低い1分子あたりのSi−H含有量を有する。本発明の発明者らは、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン及びケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンの多くの異なる組み合わせを試験し、構成成分(B1)として上に定義したオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用するとき、ヒドロシリル化触媒存在下において、構成成分(A)及び構成成分(B1)を含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物が迅速に硬化することができること、更に該組成物から形成される硬化オルガノポリシロキサン層を含む感圧接着剤フィルムを、該接着フィルムを貼り付けた基材から容易に除去することができ、硬化オルガノポリシロキサン層からの、残存する残留材料がない、又は極少量の許容量の残留材料が基材表面に残存するのみであることを、予期せず見出した。
【0042】
一般に、構成成分(B1)として使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは以下の一般式で表される。
(R
a13SiO
1/2)
m1(R
a22SiO
2/2)
m2(R
a3SiO
3/2)
m3 (3)、
式中、R
a1、R
a2及びR
a3は、各々独立に水素原子、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、及びオクチル基等、好ましくはメチル基)、フェニル基、及び1〜8個の炭素原子を有するアルキル基又はフッ素原子等のハロゲン原子で置換されたフェニル基からなる群から選択される。式(3)のオルガノハイドロジェンポリシロキサン分子中に存在するケイ素原子上のR
a1、R
a2、及びR
a3部分のうち、少なくとも3個は、水素原子である。下付文字m1、m2及びm3は各々独立に分子中の対応する繰り返し単位の数を表す。m1、m2及びm3の1つ又は2つはゼロであってよいが、m2及びm3は同時にはゼロにはならない。R
a1、R
a2、R
a3、m1、m2及びm3は、得られる式(3)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが以下の条件を満たすように選択される。
(a)オルガノハイドロジェンポリシロキサンが、各分子に少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有する。(b)オルガノハイドロジェンポリシロキサンにおけるケイ素原子結合水素原子の含有量が以下の式を満たす。
0<[Si−H]質量%<5/(DP)
0.5、好ましくは0<[Si−H]質量%<3.5/(DP)
0.5
(式中、DPは各分子中におけるシロキサン単位の、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの数平均分子量により計算した平均数を表し、DPは5〜1000、好ましくは5〜500、より好ましくは8〜300、及び最も好ましくは8〜100の範囲内にある。)。DP値は、
29Si−NMRによって、計算した構成成分(B1)の数平均分子量から測定される。
【0043】
構成成分(B1)として使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、分枝鎖状、又は環状オルガノハイドロジェンポリシロキサンであってよい。環状オルガノハイドロジェンポリシロキサン部分が更に結合した直鎖状又は分枝鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン鎖を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンもまた、構成成分(B1)として使用することができる。2つ以上の、同一又は異なる種類のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを組み合わせて構成成分(B1)として使用してもよい。
【0044】
構成成分(B1)として最も好ましく使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、以下の化学式で表される直鎖状オルガノハイドロジェンシロキサンである。
(R
a12R
b1SiO)−[(R
a2HSiO
2/2)
n1(R
a22SiO
2/2)
n2]−(SiR
a12R
b1) (4)、
式中、R
a1及びR
a2は各々独立に1〜8個の炭素原子を有するアルキル基(メチル基等)、フェニル基、又は1〜8個の炭素原子を有するアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、及びオクチル基等、好ましくはメチル基)で置換されたフェニル基を表す。R
b1は独立に水素原子、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、及びオクチル基等、好ましくはメチル基)、フェニル基、又は1〜8個の炭素原子を有するアルキル基で置換されたフェニル基を表す。n1及びn2は各々独立に式内の対応する繰り返し単位の数を表す。R
a1、R
a2、R
b1、n1、及びn2は、式(4)の得られるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが以下の条件を満たすように選択される。(a)オルガノハイドロジェンポリシロキサンが、各分子に少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有する。(b)オルガノハイドロジェンポリシロキサンにおけるケイ素原子結合水素原子の含有量が以下の式を満たす。0<[Si−H]質量%<5/(DP)
0.5、好ましくは0<[Si−H]質量%<3.5/(DP)
0.5(式中、DPは各分子中におけるシロキサン単位の、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの数平均分子量により計算した平均数を表し、DPは5〜1000、好ましくは5〜500、より好ましくは8〜300、及び最も好ましくは8〜100の範囲内にある。)。
【0045】
最も好ましいオルガノハイドロジェンポリシロキサンは上に示した式(4)で表される。式中、R
a1及びR
a2は各々メチル基を表し、R
b1は、水素原子又はメチル基を表し、ケイ素原子結合水素原子の質量%は、0.15〜1.0質量%の範囲内であり、そしてオルガノハイドロジェンポリシロキサンの重合度(DP)は8〜200、より好ましくは8〜100である。更に、構成成分(B1)の全末端シロキシ基の50mol%以上が、少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有してよい。
【0046】
[構成成分(B2)]
構成成分(B2)は、少なくとも1個のケイ素原子結合水素原子を有し、構成成分(B1)として定義されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとは異なる、オルガノハイドロジェンポリシロキサンである。上述したように、構成成分(B1)の使用は本発明に必須である。しかしながら、本発明の発明者らは、構成成分(B)の少なくとも一部が、構成成分(B1)として定義されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることが、本発明の効果を生み出すのに十分であることを見出した。しかしながら、構成成分(B1)のみを、構成成分(A)と組み合わせて使用することもまた可能である。従って、構成成分(B2)の使用は任意である。
【0047】
一般に、構成成分(B2)として使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、次式で表される。
(R
a13SiO
1/2)
m1(R
a22SiO
2/2)
m2(R
a3SiO
3/2)
m3 (5)、
式中、R
a1、R
a2及びR
a3は、各々独立に水素原子、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、及びオクチル基等、好ましくはメチル基)、フェニル基、及び1〜8個の炭素原子を有するアルキル基又はフッ素原子等のハロゲン原子で置換されたフェニル基からなる群から選択される。式(5)のオルガノハイドロジェンポリシロキサン分子のケイ素原子上のR
a1、R
a2、及びR
a3部分のうち、少なくとも1個は、水素原子である。下付文字m1、m2及びm3は各々独立に分子中の対応する繰り返し単位の数を表す。m1、m2及びm3の1つ又は2つはゼロであってよいが、m2及びm3は同時にはゼロにはならない。最も好ましくは、R
a1、R
a2及びR
a3は各々独立に、水素原子及びメチル基からなる群から選択される。式(5)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、構成成分(B1)として使用され、かつ式(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとは異なる。従って、構成成分(B2)として使用される式(5)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、わずか1個又は2個の水素原子を各分子中に有するか、又は構成成分(B2)として使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは以下の式を満たさない。
0<[Si−H]質量%<5/(DP)
0.5、
上記式は、構成成分(B1)に対して上に定義した通りの式である。従って、構成成分(B2)の値5/(DP)
0.5は、構成成分(B2)として使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの[Si−H]質量%以下であるか、あるいはDPは5〜1000の範囲外である。
【0048】
構成成分(B2)として使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、分枝鎖状、又は環状オルガノハイドロジェンポリシロキサンであってよい。環状オルガノポリハイドロジェンシロキサン部分が更に結合した直鎖状又は分枝鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン鎖を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンもまた、構成成分(B2)として使用することができる。2つ以上の、同一又は異なる種類のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを組み合わせて構成成分(B2)として使用してもよい。
【0049】
構成成分(B2)を使用する場合、本発明の所望の効果が、依然として確実に達成されるよう、硬化性オルガノポリシロキサン組成物で使用される構成成分(B2)の量を調整するべきである。
【0050】
[構成成分(C)]
構成成分(C)は、構成成分(B)のケイ素原子結合水素原子と構成成分(A)のアルケニル基の間のヒドロシリル化反応の触媒であり、Si−H基とビニル基等のアルケニル基の間の付加反応を促進する。当技術分野において既知である任意の種類のヒドロシリル化触媒を、本発明に使用してよい。使用できるヒドロシリル化触媒の例として、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸/オレフィン錯体、塩化白金酸/ケトン錯体、白金/アルケニルシロキサン錯体、四塩化白金、白金微粉末、アルミナ粉末又はシリカ粉末等の担体に担持された固体状白金、白金黒、白金のオレフィン錯体、白金のカルボニル錯体、及び上述の白金化合物の1種以上を組み込んだ粉末状熱可塑性樹脂(例えば、メチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、及びシリコーン樹脂等)等の、白金化合物を挙げることができる。
【0051】
ヒドロシリル化触媒のその他の例は、ロジウム化合物、例えば、[Rh(O
2CCH
3)
2]
2、Rh(O
2CCH
3)
3、Rh
2(C
8H
15O
2)
4、Rh(C
5H
7O
2)
3、Rh(C
5H
7O
2)(CO)
2、Rh(CO)[Ph
3P](C
5H
7O
2)、RhX
3[(R
6)
2S]
3、(R
73P)
2Rh(CO)
X、(R
73P)
2Rh(CO)H、Rh
2X
2Y
4、H
aRh
b(E)
cCl
d、及びRh[O(CO)R
3]
3−n(OH)
n(式中、Xは水素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)であり、Yはアルキル基、CO基、又はC
8H
14基であり、R
6はアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基であり、R
7はアルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、又はアリールオキシ基で、Eはオレフィンであり、aは0又は1であり、bは1又は2であり、cは1〜4の整数であり、dは2、3、又は4であり、nは0又は1である。)、並びにイリジウム化合物、例えば、Ir(OOCCH
3)
3、Ir(C
5H
7O
2)
3、[Ir(Z)(E)
2]
2、及び[Ir(Z)(Dien)]
2(式中、Zは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はアルコキシ基であり、Eはオレフィンであり、Dienはシクロオクタジエンである。)である。
【0052】
触媒活性が高いので、塩化白金酸、白金/ビニルシロキサン錯体、及び白金のオレフィン錯体を、構成成分(C)として使用するのが好ましい。塩化白金酸/ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、塩化白金酸/テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン錯体、及び白金/アルケニルシロキサン錯体、例えば、白金/ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金/テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン錯体等が、本発明の構成成分(C)として使用するのに特に好ましい。
【0053】
構成成分(A)と構成成分(B)の間のヒドロシリル化反応を進行させるのに十分な触媒量で、構成成分(C)を他の構成成分へ添加する。本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物中に組み込まれる構成成分(C)は、該構成成分(C)に含まれる金属の、硬化性組成物の総重量に対する量が、概して、1〜1,000ppm、及び好ましくは5〜500ppmである。
【0054】
反応速度を制御し、組成物の保存安定性を改善するために、任意に、ヒドロシリル化反応を遅延させる(阻害する)遅延剤(阻害剤)を、硬化性オルガノポリシロキサン組成物に添加してよい。このようなヒドロシリル化反応阻害剤として、アセチレン系化合物、エン−イン化合物、有機窒素化合物、有機リン化合物、及びオキシム化合物を挙げることができる。このような遅延剤の具体例としては、アルキニルアルコール類(3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、及びフェニルブチノール等)、並びに3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−エン、ベンゾトリアゾール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、及びメチルビニルシクロシロキサンが挙げられる。硬化性オルガノポリシロキサン組成物に添加されるこのような試剤の量は、概して、構成成分(A)100重量部あたり、0.001〜5重量部、及び好ましくは0.01〜2重量部の範囲内にあるが、これらに限定されない。
【0055】
[任意の添加剤−MT樹脂(MTレジン)及びMQ樹脂(MQレジン)]
所望に応じて、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、R
3SiO
0.5単位、並びにRSiO
1.5単位及びSiO
2.0単位の少なくとも一方を含むオルガノポリシロキサン樹脂を更に含んでいてもよい。式中、Rは独立に、一価の有機基、ヒドロキシル基又はアルコキシ基、特に、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及びフェニル基等の一価の炭化水素基、好ましくはメチル基を表し、組成物中のオルガノポリシロキサン樹脂の含有量は、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の固体成分の総量の、40質量%未満、好ましくは20質量%未満、及び最も好ましくは10質量%未満である。本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から作製した硬化オルガノポリシロキサン組成物の接着強度は、上述のシリコーン樹脂、特にMQ樹脂の添加により増大し得る。これらのシリコーン樹脂の具体例はMT樹脂(MTレジン)又はMQ樹脂(MQレジン)として既知である。これらのシリコーン樹脂の1種、特にMQ樹脂を組み込むと、硬化オルガノポリシロキサン組成物の基材への接着強度が改善されることができ、従って、これらの樹脂は、好ましくは本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物への添加物として使用される。しかしながら、硬化オルガノポリシロキサン組成物の良好な剥離特性を維持するために、これらのシリコーン樹脂の1種以上、特にMQ樹脂を、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の固体成分の総量の、40質量%未満、好ましくは20質量%未満、及びより好ましくは10質量%未満の量で使用することが好ましい。
【0056】
本発明の上記硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、構成成分(A)として、各分子に少なくとも2個のアルケニル基を、アルケニル含有量が0.005〜1.50質量%の範囲内で有し、上記式(2)で表される直鎖状オルガノポリシロキサンを使用することが特に好ましい。この直鎖状オルガノポリシロキサンを構成成分(A1)と称する。構成成分(A1)と組み合わせて、構成成分(B)として、少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することが特に好ましい。数平均分子量から計算した、各分子中のシロキサン単位の平均数(DP)は8〜300、好ましくは8〜100の範囲内であり、かつ全末端シロキシ基の50mol%以上は少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有し、以下の式を満足する。
0<[Si−H]質量%<3.5/(DP)
0.5、
式中、[Si−H]質量%及びDPは上に定義した通りである。上述の構成成分(B1)を構成成分(B1’)と称する。更に、構成成分(A1)、(B1’)、及び(C)を含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、上述の、R
3SiO
0.5単位、及びRSiO
1.5単位又はSiO
2.0単位の少なくとも一方を含むオルガノポリシロキサン樹脂を更に含んでよい。式中、Rは各々独立に、一価の有機基、ヒドロキシル基又はアルコキシ基、特に、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及びフェニル基等の一価の炭化水素基、及び好ましくは、メチル基を表し、硬化性オルガノポリシロキサン組成物に含まれる固体成分の総重量の20質量%以下の量、及び好ましくは10質量%以下の量である。従って、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の好ましい一実施形態は、構成成分(A1)、構成成分(B1’)、及び構成成分(C)を含み、上述のオルガノポリシロキサン樹脂(オルガノポリシロキサンレジン)のいずれも含まない硬化性組成物である。更に、上記硬化オルガノポリシロキサン組成物において、構成成分(B1’)及び構成成分(B2)の組み合わせを、構成成分(B)として使用することもまた可能である。
【0057】
[その他の任意の添加剤]
所望に応じてその他の任意の添加剤を、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物に添加してよい。使用してよい任意の添加剤としては、炭化水素溶剤(例えば、トルエン及びキシレン)等の有機溶剤;エポキシ官能性シラン類等の接着促進剤、滑りやすい表面をもたらす非反応性ポリオルガノシロキサン類(ポリジメチルシロキサン及びポリジメチルジフェニルシロキサン等);フェノール型、キノン型、アミン型、リン型、ホスファイト型、イオウ型、及びチオエーテル型化合物等の酸化防止剤;トリアゾール型化合物及びベンゾフェノン型化合物等の光安定剤;リン酸エステル型、ハロゲン型、リン型、及びアンチモン型化合物等の難燃剤/耐熱添加剤;カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等からなる、1種以上の帯電防止剤;染料、顔料、又はその他の無機充填剤等が挙げられる。特に、帯電防止剤の添加が好ましい。
本発明の硬化性組成物に組み込まれてよい溶剤の量は、好ましくは組成物の総重量の5質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
その他の本発明の実施形態では、硬化性オルガノポリシロキサン組成物は無溶剤である。
硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、エマルション、典型的には、上に定義した硬化性オルガノポリシロキサン組成物、界面活性剤、及び水を含む水中油型エマルションの形態で使用可能である。
【0058】
[硬化オルガノポリシロキサン組成物の粘着特性]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から作製した硬化オルガノポリシロキサンの、該硬化オルガノポリシロキサンを貼り付けた基材への接着強度は、構成成分(A)及び構成成分(B)の分子構造を適切に設計することで制御できる。例えば、i)オルガノポリシロキサン樹脂(レジン)を表面上での粘着性物質として添加すること、ii)硬化体の架橋密度を設計するため、SiH/Si−Vi基の比である反応比を調整すること、若しくは意図的に反応性基を表面上に残し、接着力を増大させること、又はiii)低/高質量%のVi基を有するオルガノポリシロキサンを使用すること、若しくは硬化体に接着性を生じさせるために、シロキサンポリマー内の側鎖/末端位置にSi結合Vi基を有することによって接着強度をある程度制御できるが、これらに限定されない。
本発明の硬化オルガノポリシロキサン組成物の基材上への接着強度を調整するために、30μmの厚みを有する硬化層を、75μmの厚みを有するポリエチレンテレフタレートフィルム上に、組成物から形成する場合に、日本工業規格Z 0237に規定されている180度剥離試験法に従って測定した硬化層のフィルムに対する接着強度が、0.5〜20.0gf/25mm、及び好ましくは0.5〜15.0gf/25mmの範囲内となることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートフィルムは、具体的には限定されないが、標準的なポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、75μm厚の製品名A4300シリーズとして東洋紡株式会社から市販されている。
【0059】
R
3SiO
0.5単位及び、RSiO
1.5単位又はSiO
2.0単位の少なくとも一方からなるオルガノポリシロキサン樹脂が、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物中に組み込まれる場合、本発明の硬化オルガノポリシロキサン組成物の基材上への接着強度を調整するために、30μmの厚みを有する硬化層を、75μmの厚みを有するポリエチレンテレフタレートフィルム上に、組成物から形成する場合に、日本工業規格Z 0237に規定されている180度剥離試験法に従って測定した硬化層のフィルムに対する接着強度が、0.5〜15.0gf/25mm、好ましくは0.5〜10.0gf/25mmの範囲内となることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートフィルムに関しては、上記段落にて示すように、75μm厚の東洋紡株式会社のA4300シリーズが使用可能である。
【0060】
硬化組成物が上に定義した接着強度をもたらすように硬化性オルガノポリシロキサン組成物の配合を設計することで、得られる感圧接着剤を、基材の表面上に、接着剤由来の残留物なしに、又は許容できる少量の残留物があるのみで、容易にかつ迅速に基材から除去することができる。この特性は、感圧接着剤を、一時的にガラスシート等の基材を保護する保護フィルムに使用するときに有用である。
【0061】
[硬化性オルガノポリシロキサン組成物の用途]
上記のように、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を感圧接着剤の作製に使用することが好ましい。そのため、本発明はまた、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から作製した硬化した組成物からなる感圧接着剤(PSA)組成物にも関する。本発明の硬化性組成物はまた、迅速に硬化するコーティング組成物、その他の剥離コーティング若しくは接着剤層用のプライマー組成物、感圧接着剤組成物に使用されるもの以外の接着剤組成物、又は剥離コーティング組成物等のコーティング組成物として有用である。特に、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から作製した硬化した組成物は容易に該硬化した組成物を貼り付けた材料から除去できるので、本発明の硬化性組成物を剥離コーティング組成物として使用することが好ましい。
【0062】
本発明はまた、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から作製した硬化したオルガノポリシロキサン組成物の層を含む物品に関する。物品の一例は、ベースフィルム等の基材、及び本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化することにより作製される、硬化したオルガノポリシロキサン組成物の層を含む積層体である。該積層体では、硬化したオルガノポリシロキサンの層は接着剤層、特に感圧接着剤層、剥離コーティング層、又はプライマー層である。これらの積層体としては、保護フィルム、例えば、偏光子、導光板、位相差フィルム、光学フィルム若しくはLCDに使用されるシート、タッチパネルのベースフィルム、ディスプレイ用の反射防止フィルム、アンチグレアフィルム、光学素子、例えば、自動車産業において使用されるスチールプレート、又はプラスチック製シート若しくは素子に使用される保護フィルムが挙げられる。従って、本発明はまた、上記積層体を含む保護フィルムを提供する。更に本発明は、上記積層体を含む光学物品を提供する。このような光学物品として、光拡散フィルム、偏光子、導光板、位相差フィルム、及びアンチグレアフィルム等を挙げることができる。
【0063】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、一時的にガラスシート等の物品表面を保護するのに使用する保護フィルムに使用する場合、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から形成した硬化したオルガノポリシロキサン層に対する、フィルム表面の接着特性を向上させる処理を施したプラスチックフィルムを使用することが有利である。このようなプラスチックベースフィルムを使用することにより、硬化したオルガノポリシロキサン層はベースフィルム表面からは分離しないが、保護フィルムによって保護すべき物品表面からは分離することを確実にできる。プラスチックフィルムの接着特性を向上させる方法は、広く知られており、コロナ処理、プラズマ処理、プラスチックフィルムの接着特性を向上させることができる材料の該プラスチックフィルム表面への塗布等が挙げられる。このような、プラスチックフィルム表面へ塗布され、該プラスチックフィルムの接着特性を向上させる材料として、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂又はポリビニルアルコールコポリマー、及びエチレン−ビニルアセテートコポリマー樹脂を挙げることができる。プラスチックフィルムの使用に代えて、紙等のセルロース系材料を、本発明の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を塗布し硬化したオルガノポリシロキサン組成物の層を形成する、保護フィルムのベース材料として使用してよい。
【0064】
シート形状の基材、及び本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から作製した硬化したオルガノポリシロキサン組成物の層を含む保護フィルム等の積層体は、流体材料をシートの形態で基材へコーティングする従来の方法を使用することによって作製することができる。積層体を作製するための好ましい方法の1つは、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物をシート形状の基材の少なくとも片面に塗布する工程を含む方法である。硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、グラビアコータ、オフセットコータ、オフセットグラビアコータ、ローラーコータ(2ロールコータ、及び3ロールコータ等のマルチロールコータを含む)、リバースローラコータ、エアーナイフコータ、カーテンコータ、又はコンマコーターによって塗布することができる。次いで、コーティングした硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、例えば加熱することにより(例えば、70〜220℃の温度下で)硬化し、シート形状の基材及び硬化したオルガノポリシロキサン組成物の層を含む積層体を作製する。
本発明はまた、各分子中に少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有し、ケイ素結合水素含有量[Si−H]質量%が、以下の式を満たすオルガノハイドロジェンポリシロキサンの使用まで拡張される:
0<[Si−H]質量%<5/(DP)
0.5
(式中、DPは各分子中のシロキサン単位の、構成成分(B1)の数平均分子量により計算した平均数を表し、該DPは5〜1000の範囲内にある。)。
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの使用は、ヒドロシリル化により硬化する硬化性オルガノポリシロキサン組成物の構成成分として、(例えば上に定義した硬化性オルガノポリシロキサン組成物、例えば上に定義したPSA(感圧接着剤)組成物の構成成分として)の使用である。
【実施例】
【0065】
下記例を参照して、本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの例に限定されるべきではない。
【0066】
[硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製する基本手順]
硬化性オルガノポリシロキサン組成物の溶液を、以下の構成成分(i)〜(iii)を混合することによって作成した。
(i)トルエン中のジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサンコポリマー(可塑度160、及び0.22質量%のビニル基を有する、構成成分Aとしての未加硫ゴム1)の30質量%溶液を100重量部。このコポリマーはジメチルビニルシロキシ基をコポリマー鎖の各末端に、ビニル基をコポリマー鎖の内部にあるSi原子のいくつか上に有していた。
(ii)オルガノハイドロジェンポリシロキサンのSiH基(Si−H)/構成成分Aのアルケニル基(Vi)のモル比が4となる量の、構成成分B1としてのオルガノハイドロジェンポリシロキサン。
(iii)0.3重量部の1−エチニル−1−シクロヘキサノール。
得られた混合物に、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金錯体を白金金属(platinum metal)がジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサンの量に対して50ppmwとなる量で添加し、感圧接着剤として使用してよい硬化性オルガノポリシロキサン組成物溶液を得た。
【0067】
[硬化性オルガノポリシロキサン組成物から作製した硬化生成物を感圧接着剤組成物として評価するための基本手順]
上記手順を使用することにより得た硬化性オルガノポリシロキサン組成物溶液を、75マイクロメートルの厚みを有し、改善された接着特性を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、製品名:A4300(東洋紡株式会社))の表面に、アプリケータを使用して塗布した。そして、硬化性組成物を乾燥させ、140℃で2分間加熱することにより硬化させ、30マイクロメートル厚の感圧接着剤層を有する感圧接着剤フィルムを作製した。3×4cm寸法の2つのシートを感圧接着剤フィルムから作製し、2kgの重量を有するローラーを使用して、2つのシートのうち1つを0.5mm厚のガラスシートの片面に貼り付け、2つのシートのうち他方をガラスシートの反対側に貼り付けた。相対湿度95%、80℃の条件でオーブン内に24時間保管した後、試験用試料をオーブンから取り出し室温まで冷却した。ガラスシートの表面上に貼り付けた2つの感圧接着剤フィルムを剥がし、接着剤組成物又は該組成物中に含まれるいくらかの材料がガラスシート表面上に残存しているかを確認するために、LEDフラッシュライトからの光の、ガラスシート表面に対する入射角が45度で、ガラスシートの裏側から光が入射する条件下で、目視検査を実行した。結果は、下の表2にまとめられている(表中の「移行」を参照されたい)。
【0068】
例1〜21
一般的な上記手順に従って、硬化性感圧接着剤組成物を作製し、表2に示すように、評価した。構成成分Aは、上述したようにビニル基を有するオルガノポリシロキサンであり、例で使用した構成成分B1は下の表1に示す通りである。
【0069】
【表1】
*1: 1分子あたりのケイ素原子結合水素原子(Si−H)の平均数又は数平均分子量(Mn)を示すこれらの値は、B1の
29Si NMRから計算した。
*2: XLのDP及びSiH%を
29Si NMRから測定及び計算し、表中にまとめた。
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
表中、
*1: 種類Aは、構成成分B1が、Si−H基を末端及び非末端Si原子の両方に有することを示す。種類Bは、構成成分B1が、Si−H基を非末端Si原子にのみ有することを示す。
*2: Viはビニル基を表す。Hexは1−ヘキセニル基を示す。
*3: 組成物の総重量中のMQ樹脂の量。
*4: 「Toyo」は、東洋紡株式会社製の、良好な接着特性を有するPETフィルム(A4300)を基材として使用したこと意味する。
「プライマー」は、硬化性オルガノポリシロキサン感圧組成物を塗布する前に、プライマーを基材フィルム表面へと塗布したことを示す。
*5: 後述するように測定したS、A、B、C、又はDは、硬化したオルガノポリシロキサン層からガラスシート表面への材料の移行度を示す。PETフィルム(東洋紡株式会社のA4300)及び硬化したオルガノポリシロキサン層からなる積層体を、ガラスシートから除去した後に、硬化したオルガノポリシロキサン層からガラスシート表面への材料の移行度を観察した。
*6: 「可塑度」はJIS K−6249に準拠して測定した。
*7: 接着性(g/25mm): 接着力を以下の方法に従って測定した:25mm×20cmのPSAフィルムを作製し、2kgの重量を有するローラーを使用して、ガラスプレート(70mm×150mm×2.0mm)に貼り付けた。ガラスプレートに貼り付けたPSAフィルムを25℃にて24時間保存した後、接着性を日本工業規格Z 0237に規定されている180度剥離試験法によって測定した。
*8: XL(B1構成成分)のDP及びSiH%を
29Si NMRから測定及び計算し、表中にまとめた。
【0072】
また、例で得られた結果を、以下の基準に従って、以下の5つのカテゴリに分類した:
S:LEDフラッシュライトを使用して、何もないガラス(blank glass)と同様
A:LEDフラッシュライトを使用すると、非常にわずかに認識できるが、蛍光灯を使用すると認識できない
B:LEDフラッシュライトを使用するとわずかに認識できるが、蛍光灯を使用すると認識できない
−−−−−−−−−残留物の量を許容できる境界−−−−−−−−−−−−−
C:LEDフラッシュライトを使用すると認識でき、蛍光灯を使用するとわずかに認識できる
D:蛍光天井灯の下で認識できる。
【0073】
結果をS、A、B、C、又はDとして表2の「移行」として示している。
図1にもまた示している。
図1では、各試料についての移行度S、A、B、C、又はDを試料番号と共に示した。
また、2本の線を
図1に書き加えた。
図1において各線は、構成成分B1の[Si−H]質量%が5/(DP)
0.5(線1)、又は3.5/(DP)
0.5(線2)それぞれに等しいことを示す。
図1から、構成成分B1の[Si−H]質量%が以下の式:0<[Si−H]質量%<5/(DP)
0.5、好ましくは0<[Si−H]質量%<3.5/(DP)
0.5を満たす場合、感圧接着剤組成物を表面から除去した後、基材表面に、得られた感圧接着剤組成物の残留性材料がない、又は許容できる少量の残留性材料が残存するのみであることが理解できる。本明細書では、許容できる量の標準を、上に「B」又はより高い基準(「A」〜「S」)として定義する。従って、これらの実験データから、本発明の感圧接着剤組成物は迅速に硬化することができ、接着剤組成物を基材表面から除去した後であっても、基材表面上に、残存する残留物がない、又は極小かつ許容できる量の残留物が残存するのみである、と理解される。
【0074】
[例1]組成物A
溶剤を含む組成物Aを、以下の構成成分(A)、(C)、(E)、及び(F)を均一に混合することによって作製した。
(A)a1)ヘキセニル基を分子鎖の両末端に、及び側鎖として有し、1.18の可塑度を有すると共にヘキセニル基の−CH=CH
2部分の量に基いて計算したビニル含有量(Vi)が0.80質量%である、30.0重量部のポリジメチルシロキサン。
(C)表2に示す2.0重量部のB1(XL)No.16。トリメチルシロキシ基を分子鎖の両末端に有する、ジメチルポリシロキサン−メチルハイドロジェンポリシロキサンコポリマーである。全組成物中のSiH/Viのモル比が2.3となる量である。
(E)70.0重量部のトルエン。
(F)1.0重量部の3−メチル−1−ブチン−3−オール。
こうして得られた組成物Aを(E)トルエン及びヘキサンの混合物(50/50重量%)で希釈し、組成物の固形分含有量を3.0質量%に調整した。この混合物に、(D)塩化白金酸/1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(白金金属含有量は0.6質量%)を、得られる組成物全量中の白金金属含有量が120ppmとなる量で添加し、それらを混合し、溶剤を含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物を作製した。得られた組成物を、38μmの厚みを有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社により製造)へ、0.15g/m
2の量でマイヤーバー(No.4)を使用して塗布し、続いて、90℃で15秒間、又は100℃で30秒間加熱して、硬化剥離コーティング層を薄いフィルムの形態で得た。硬化した組成物の特性を下の表3に示す。表3において、「OK」はフィルムが十分に硬化したことを意味し、「NG」はフィルムを強く指で擦ると、剥がれたことを意味する。
【0075】
[例2]組成物B
組成物Bを、4.66重量部の表2に示すB1(XL)No.2を2.0重量部のB1(XL)No.16に代えて使用し、また、64.34重量部のトルエンを70.0重量部のトルエンの代わりに使用したことを除いて、組成物Aの作製と同様に作製した。組成物Bの硬化特性を評価した。結果を表3に示す。
【0076】
[例3]組成物C
組成物Cを、5.89重量部の表2に示すB1(XL)No.5を2.0重量部のB1(XL)No.16に代えて使用し、また、63.11重量部のトルエンを70.0重量部のトルエンの代わりに使用したことを除いて、組成物Aの作製と同様に作製した。組成物Cの硬化特性を評価した。結果を表3に示す。
【0077】
【表4】
【0078】
表3に示す結果から、本発明の剥離コーティング組成物は、比較的低温かつ短時間で、良好かつ十分な硬化性を呈することを理解することができる。
【0079】
[例1−2]組成物A’
組成物Aのオルガノポリシロキサン組成物を、例1に記載されているようにして作製した。組成物Aをトルエンで希釈し、その固形分含有量を5.0質量%に調整した。得られた希釈組成物に、(D)塩化白金酸/1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(白金金属の含有量は0.6質量%である。)を、白金金属の量が全組成物中60ppmとなる量で添加し、硬化性組成物A’を作製した。得られた組成物を、ポリエチレンを積層させた一枚の上質紙(リンテック株式会社により製造)の表面へと、1.0g/m
2の量でマイヤーバー(No.8)を使用して塗布し、続いて、100℃で15秒間、又は110℃で15秒間加熱し、硬化したコーティング層を薄いフィルムの形態で得た。組成物の硬化特性を下の表4に示す。表4において、「OK」はフィルムが十分に硬化したことを意味し、「NG」はフィルムを強く指で擦ると、剥がれたことを意味する。
【0080】
[例2−2]組成物B’
組成物B’を、4.66重量部の表2に示すB1(XL)No.2を2.0重量部のB1(XL)No.16に代えて使用し、また、64.34重量部のトルエンを70.0重量部のトルエンの代わりに使用したことを除いて、組成物A’の作製と同様に作製した。組成物B’の硬化特性を評価した。この結果を、下の表4に示す。
【0081】
[例3−2]組成物C’
組成物C’を、5.89重量部の表2に示すB1(XL)No.5を2.0重量部のB1(XL)No.16に代えて使用し、また、63.11重量部のトルエンを70.0重量部のトルエンの代わりに使用したことを除いて、組成物A’の作製と同様に作製した。組成物C’の硬化特性を評価した。この結果を、下の表4に示す。
【0082】
【表5】
【0083】
本発明の組成物の各々は、トルエンで希釈した後であっても、比較的低温かつ短時間で良好な硬化性を呈した。