特許第6595334号(P6595334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6595334
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20191010BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   H01L21/302 101G
   H01L21/68 R
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-257061(P2015-257061)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-120841(P2017-120841A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一野 貴雅
(72)【発明者】
【氏名】吉開 元彦
(72)【発明者】
【氏名】横川 賢悦
【審査官】 宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−011215(JP,A)
【文献】 特開平08−181118(JP,A)
【文献】 特開2004−095909(JP,A)
【文献】 特開2007−217733(JP,A)
【文献】 特開2014−195009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内部に配置され内側でプラズマが形成される処理室と、
前記処理室内に配置されその上面に前記プラズマを用いた処理の対象のウエハが載せられて静電吸着される試料台と、
前記試料台上面に配置され前記ウエハを静電吸着させる電力が供給される膜状の電極と、
前記ウエハの処理を増大させる前に前記処理室内にプラズマを形成して前記ウエハを加熱する期間において前記プラズマにより前記ウエハに生じる電位と前記電極の電位との差を低減するように前記電極に供給する電力を調節する制御器と、
を備えた、プラズマ処理装置。
【請求項2】
真空容器内部に配置され内側でプラズマが形成される処理室と、
前記処理室内に配置されその上面に前記プラズマを用いた処理の対象のウエハが載せられて静電吸着される試料台と、
前記試料台上面に配置され前記ウエハを静電吸着させる電力が供給される膜状の電極と、
前記ウエハの処理を増大させる前に前記処理室内にプラズマを形成して前記ウエハを加熱する期間において前記試料台に接続された高周波電源から供給される高周波電力により前記ウエハに生じる電位と前記電極の電位との差を低減するように前記電極に供給する電力を調節する制御器と、
を備えた、プラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、
前記制御器が、前記ウエハの処理を進行させる前に前記処理室内にプラズマを形成して前記ウエハを加熱する期間において前記プラズマにより前記ウエハに生じる電位と前記電極の電位との差を低減するように前記電極に供給する電力を調節した後であって前記ウエハの処理を増大させる前に、前記処理室内にプラズマを形成して前記ウエハを加熱する期間において前記試料台に接続された高周波電源から供給される高周波電力により前記ウエハに生じる電位と前記電極の電位との差を低減するように前記電極に供給する電力を調節する、プラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のプラズマ処理装置であって、
前記制御器が、前記ウエハと前記試料台の上面との間の隙間に供給するガスの量または前記隙間内の圧力を増大させて前記ウエハの処理を増大させる、プラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のプラズマ処理装置であって、
前記ウエハを加熱する期間にプラズマを形成する条件と前記ウエハの処理を増大させるためにプラズマが形成される条件とが異なる、プラズマ処理装置。
【請求項6】
真空容器内部の処理室内に配置された試料台上面に処理対象のウエハを載せて静電吸着し、前記処理室内にプラズマを形成して前記ウエハを処理するプラズマ処理方法であって、
前記ウエハが前記試料台上面に載せられた状態で前記処理室内にプラズマを形成して前記プラズマにより前記ウエハに生じる電位と前記試料台上面上に前記ウエハを静電吸着させるための電力が供給される電極の電位との差を低減するように前記電力を調節しつつ前記ウエハを所定の期間だけ加熱し、その後に前記ウエハの処理を増大させる、プラズマ処理方法。
【請求項7】
真空容器内部の処理室内に配置された試料台上面に処理対象のウエハを載せて静電吸着し、前記処理室内にプラズマを形成して前記ウエハを処理するプラズマ処理方法であって、
前記ウエハが前記試料台上面に載せられた状態で前記処理室内にプラズマを形成した状態で前記試料台に供給される高周波電力によって前記ウエハに生じる電位と前記試料台上面上に前記ウエハを静電吸着させるための電力が供給される電極の電位との差を低減するように電力を調節しつつ前記ウエハを所定の期間だけ加熱し、その後に前記ウエハの処理を増大させる、プラズマ処理方法。
【請求項8】
請求項6に記載のプラズマ処理方法であって、
前記ウエハが前記試料台上面に載せられた状態で前記処理室内にプラズマを形成して前記プラズマにより前記ウエハに生じる電位と前記試料台上面上に前記ウエハを静電吸着させるための電力が供給される電極の電位との差を低減するように前記電力を調節しつつ前記ウエハを所定の期間だけ加熱した後に、前記試料台に接続された高周波電源から供給される高周波電力により前記ウエハに生じる電位と前記電極の電位との差を低減するように前記電極に供給する電力を調節しつつ前記ウエハを加熱し、その後に前記ウエハの処理を増大させる、プラズマ処理方法。
【請求項9】
請求項6乃至8の何れか一項に記載のプラズマ処理方法であって、
前記ウエハと前記試料台の上面との間の隙間に供給するガスの量または前記隙間内の圧力を増大させて前記ウエハの処理を増大させる、プラズマ処理方法。
【請求項10】
請求項6乃至9の何れか一項に記載のプラズマ処理方法であって、
前記ウエハを加熱する期間にプラズマを形成する条件と前記ウエハの処理を増大させるためにプラズマが形成される条件とが異なる、プラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライエッチング装置等のプラズマ処理装置、及びプラズマ処理方法に関する。特に、搬送されたウエハの温度よりも高い静電吸着用電極にウエハを静電吸着するドライエッチング処理の際に適用して有効なプラズマ処理装置、及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置、特にドライエッチング装置等では、ノード幅の縮小に伴い、被処理基板上に形成される半導体の素子形状に関する要求は年々厳しくなっている。特に近年の半導体素子では素子の材料が多岐にわたり、それら異なる材料の積層された膜を1回のプラズマ処理で処理することが求められる。
【0003】
このようなプラズマ処理では処理を行う膜に応じてガス等のプラズマ処理条件を変えて、膜の適した条件での処理を行うことが、好適な半導体素子を製造する上で欠かせない。これらの条件のうち、処理結果に大きく影響するパラメータの一つがウエハを載置する電極兼試料台の温度である。
【0004】
また、エッチング処理においてはウエハの温度を好適に制御するため電極に静電吸着電圧を印加して静電吸着によりウエハを保持し、ウエハと電極の間にHe(ヘリウム)等の熱伝導を促進するガスを導入している。このとき、搬送したウエハの温度に対して電極の温度が高く、その温度差が大きい場合、ウエハと電極の熱膨張率の違いや、電極とウエハの熱容量の違い、電極、ウエハ間の熱抵抗により、吸着されているウエハと電極表面の間で擦れが生じ、ウエハ裏面が傷ついたり、電極表面が消耗し、電極の寿命が短くなってしまうという問題が生じる。
【0005】
このような、ウエハと電極表面の間の磨耗を抑制する従来の技術としては、特開2014−195009号公報(特許文献1)が知られている。本従来技術には、真空容器内部に配置され減圧された内側でプラズマが形成される処理室と、この処理室内の下部に配置されその上面に前記プラズマを用いた処理の対象の試料が載置される試料台と、この試料台上部の前記試料がその上に載せられる載置面を構成する誘電体製の誘電体膜と、この誘電体膜の内部に配置され前記試料をこの誘電体膜上に吸着して保持するための電力が供給される電極とを備え、真空容器内部の減圧された処理室内に搬送された処理対象の試料は、処理室内に配置された試料台の上面を構成する誘電体膜上に載置された状態で試料の温度が所定の温度になるか所定の時間が経過するまで試料台上に保持された後、誘電体膜内に配置された電極に試料を静電吸着するための電力が供給されて試料台に吸着保持され、処理室内にプラズマを形成して処理が開始される構成が開示されている。
【0006】
また、特開2007−217733号公報(特許文献2)には、処理室内に配置された静電チャック上に処理対象のウエハを載置した後、処理室内に不活性ガスを供給して形成されたプラズマからの輻射熱を用いて処理前にウエハを加熱し、当該ウエハの温度がプラズマ処理時のウエハ熱平衡温度に達したときに静電チャックにウエハを吸着させて保持し、プラズマ処理ガスを導入してプラズマ処理を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−195009号公報
【特許文献2】特開2007−217733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の従来技術では、次の点について考慮が不十分であったため、問題が生じていた。
【0009】
すなわち、上記特許文献1では、試料台上面を構成する誘電体膜上面と試料との間に供給された熱伝達性を有するガスを利用して両者の間で熱の伝達をしており、この構成では、試料の温度の上昇が遅いという課題があった。
【0010】
また、上記特許文献2では、プラズマを発生させた状態でウエハはプラズマのフローティングポテンシャルと同電位になるため、静電チャックとの間には電位差が生じ意図しない静電吸着力が発生してしまう。更に、静電チャックを搭載する試料台の電極に高周波(RF:Radio Frequency)の電力を印加すると、ウエハはセルフバイアス電位となり、静電チャックとウエハとの電位差は更に大きくなって大きな静電吸着力が発生してしまう。静電チャックとウエハとの間に静電吸着力が発生している状態でウエハの温度上昇と熱膨張とが発生するため、ウエハ裏面と静電チャック表面との間の摺動及びこれによる塵埃や異物の生起を解決できない、という問題が生じていた。
【0011】
本発明の目的は、ウエハを試料台表面に吸着する前に、プラズマの形成または高周波電力の供給による加熱を行う際にウエハ電位と試料台電位との差により意図しない静電吸着力が発生することを抑制して、ウエハから異物の原因となる物質の発生を低減し処理の歩留まりを向上させたプラズマ処理装置またはプラズマ処理方法を提供することにある。
【0012】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0014】
一実施の形態におけるプラズマ処理装置は、真空容器内部に配置され内側でプラズマが形成される処理室と、前記処理室内に配置されその上面に前記プラズマを用いた処理の対象のウエハが載せられて静電吸着される試料台と、前記試料台上面に配置され前記ウエハを静電吸着させる電力が供給される膜状の電極と、を備える。さらに、前記ウエハの処理を増大させる前に前記処理室内にプラズマを形成して前記ウエハを加熱する期間において前記プラズマにより前記ウエハに生じる電位と前記電極の電位との差を低減するように前記電極に供給する電力を調節する制御器を備える。または、前記ウエハの処理を増大させる前に前記処理室内にプラズマを形成して前記ウエハを加熱する期間において前記試料台に接続された高周波電源から供給される高周波電力により前記ウエハに生じる電位と前記電極の電位との差を低減するように前記電極に供給する電力を調節する制御器を備える。
【0015】
一実施の形態におけるプラズマ処理方法は、真空容器内部の処理室内に配置された試料台上面に処理対象のウエハを載せて静電吸着し、前記処理室内にプラズマを形成して前記ウエハを処理するプラズマ処理方法である。そして、前記ウエハが前記試料台上面に載せられた状態で前記処理室内にプラズマを形成して前記プラズマにより前記ウエハに生じる電位と前記試料台上面上に前記ウエハを静電吸着させるための電力が供給される電極の電位との差を低減するように前記電力を調節しつつ前記ウエハを所定の期間だけ加熱し、その後に前記ウエハの処理を増大させる。または、前記ウエハが前記試料台上面に載せられた状態で前記処理室内にプラズマを形成した状態で前記試料台に供給される高周波電力によって前記ウエハに生じる電位と前記試料台上面上に前記ウエハを静電吸着させるための電力が供給される電極の電位との差を低減するように電力を調節しつつ前記ウエハを所定の期間だけ加熱し、その後に前記ウエハの処理を増大させる。
【発明の効果】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0017】
一実施の形態によれば、ウエハの裏面と試料台上部の誘電体膜の表面との間の摺動と、これによる塵埃や微粒子の発生を低減することができる。これにより、ウエハ裏面の損傷や異物の発生を抑制でき、さらに、長期間に亘り試料台の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施の形態に係るプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。
図2図1に示すプラズマ処理装置の試料台の構成の概略を模式的に拡大して示す縦断面図である。
図3図1に示すプラズマ処理装置が実施するウエハの処理の動作の流れを示すタイムチャートである。
図4図1に示すプラズマ処理装置の変形例に係る試料台の構成の概略を模式的に拡大して示す縦断面図である。
図5図4に示す変形例に係るプラズマ処理装置が実施するウエハの処理の動作の流れを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0020】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0021】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0022】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値及び範囲についても同様である。
【0023】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面を分かり易くするために、断面図であってもハッチングを省略する場合があり、また、平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0024】
[一実施の形態]
一実施の形態に係るプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法について、図1乃至3を用いて説明する。本実施の形態は、ドライエッチング装置等のプラズマ処理装置、及びプラズマ処理方法に関し、特に、搬送されたウエハの温度よりも高い静電吸着用電極にウエハを静電吸着するドライエッチング処理の際に適用して有効なプラズマ処理装置、及びプラズマ処理方法に関する。
【0025】
<プラズマ処理装置>
図1は、本実施の形態に係るプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。本実施の形態では、真空容器内部の処理室101内に配置された試料台2上面に処理対象のウエハ1が配置された後に、処理室101内にプラズマを形成してウエハ1の予備加熱が行われた後に、試料台2上面にウエハ1が静電吸着されその裏面に熱伝達用のガスが導入される。
【0026】
図1に示す本実施の形態に係るプラズマ処理装置は、図示しない真空ポンプと連通されて連結されて排気され減圧される円筒形を有した処理室101を内部に含む円筒形を有した真空容器を備えている。処理室101の円筒形部分を囲む真空容器の側壁上端上方には、真空容器を構成する誘電体製の円形を有した板部材105が配置され、側壁上端とその上方に載せられる板部材105の外周縁下面とがOリング等のシール部材を挟んで当接して処理室101内外が気密に封止される。
【0027】
当該板部材105の上面上方の真空容器外部には、処理室101内にプラズマ生成用の高周波電界を供給するコイル状のアンテナ102が配置され、当該アンテナ102はその一端側部分が整合器103を介して高周波電界を形成するための高周波電力を供給する高周波電源104と電気的に接続され、他端側部分は接地電極に電気的に接続されている。また、図示していないが、真空容器には処理室101内にプラズマを形成するための処理用のガスを供給するガス供給管路が接続され、処理室101内には処理用ガスの導入孔が配置されている。
【0028】
処理室101のプラズマが形成される空間の下方には、円筒形を有した試料台2がその軸を処理室101の円筒形の中心軸に合致させる又はこれと見做せる程度に近似した位置に合わせて配置される。本実施の形態の試料台2はその円筒形部分の上部がアルミナやイットリア等のセラミクスを含む誘電体製の膜で被覆され円形を有したウエハ1の載置用電極の面を構成している。
【0029】
さらに、誘電体製の膜内にはその上に載せられたウエハ1を発生させた静電気力を用いて静電吸着するための直流電力が供給される膜状の電極が配置され、図示しない(ローパス)フィルタを介して静電吸着用直流電源106と電気的に接続されている。また、試料台2の内部には、金属製の円板または円筒形状の別の電極が配置され、当該別の電極は高周波バイアス電源107と電気的に接続されてプラズマが処理室101内に形成されてウエハ1が処理される最中にウエハ1上面上方にプラズマの電位に応じたバイアス電位を形成するための高周波電力が供給される。
【0030】
処理室101を含む真空容器は、その側壁が図示しない別の真空容器であってその内部の減圧された空間であって処理対象のウエハ1が搬送される搬送室を備え、図示しない搬送用ロボットのアームの先端部にウエハ1が載せられ保持されて搬送され、搬送室と処理室101との間でこれらを連通してウエハ1が内部を通過する通路であるゲートを開放及び気密に閉塞するゲートバルブが開放された状態で、ロボットのアームが伸長されてウエハ1を載せたアーム先端部が処理室101内に進入し、試料台2にウエハ1が受け渡される。アームが収縮して処理室101から退室すると、静電吸着用直流電源106からの直流電力が誘電体膜内の静電吸着用の電極に供給されウエハ1が試料台2の上面を構成する誘電体膜上面上に静電吸着されて保持され、処理室101内に試料台2上面上方に配置されたガス導入孔から処理用のガスが導入されるとともにアンテナ102から高周波電界が板部材105を透過して供給され、処理室101内に当該高周波電界の誘導結合により処理用ガスの原子または分子が励起されてプラズマが生成される。
【0031】
プラズマが形成されると、高周波バイアス電源107からの高周波電力が誘電体膜内のバイアス電位形成用の電極に供給されてウエハ1上面上方にバイアス電位が形成され、プラズマからイオン等の荷電粒子がバイアス電位とプラズマの電位との間の電位差に応じてウエハ1表面に誘引されて衝突し、ウエハ1表面に予め形成された半導体デバイスの回路を形成するためのマスク層を含む複数の膜層から構成された膜構造のエッチング処理が開始される。エッチング処理が進行して図示しない終点判定装置により処理の終点の到達が判定されると、高周波バイアス電源107からの高周波電力の試料台2への供給が停止され、プラズマが消火されてウエハ1の膜構造のエッチング処理が終了する。
【0032】
ウエハ1の静電吸着が解除されると、ウエハ1が試料台2の上面上方に持ち上げられ離間した状態で、ゲートバルブの動作により開放されたゲートを通して搬送室内のロボットのアームが伸長されて先端部が処理室101内に進入し、処理済のウエハ1が先端部のウエハ保持部上面に受け渡され、アームの収縮により処理室101から搬送室内に搬出される。次に処理されるべき未処理のウエハ1が存在する場合には、当該ウエハ1が開放されたゲートを通して処理室101内に搬送されて試料台2上面に載せられて、上記の処理が実施される。処理されるべきウエハ1が無いと判定された場合にはゲートバルブの動作によりゲートが気密に閉塞されて処理室101での処理の運転が終了する。
【0033】
<試料台>
図2に、試料台2の構成を拡大して示す。図2は、図1に示すプラズマ処理装置の試料台2の構成の概略を模式的に拡大して示す縦断面図である。
【0034】
円筒形状を有した試料台2は、チタンやアルミニウム等の金属により構成された円筒形を有する基材201を備えている。基材201内部には、その円筒または円板の中心軸周りに配置された螺旋状または多重の同心状に配置され、図示しないチラーユニット等の温度調節器によりその温度が調節された冷媒が内部を通流する冷媒流路206が配置されている。
【0035】
基材201の円形の上面上方に、アルミナやイットリア等のセラミクスにより構成された誘電体膜202が配置されて、当該円形の上面が被覆されてウエハ1が載置される面が構成されている。本実施の形態の誘電体膜202は、溶射により半溶解状態のセラミクスの多数の粒子が基材201上面に吹き付けられて膜として形成されたものであり、内部には直流電力が供給されて誘電体膜202内に形成され蓄積された電荷による静電気力で上方に載せられたウエハ1を吸着する膜状の静電吸着用電極204が配置されている。
【0036】
誘電体膜202の上面には、ウエハ1が載せられた状態でHe(ヘリウム)等の熱伝達性を有したガスが内側を通って充満するウエハ1裏面との間の隙間を構成する溝203が載置面の中心から放射状に配置されている。このような溝203に代えて、載置面の外周縁にリング状に配置されウエハ1の裏面と当接する凸部の内側に配置され当該凸部上面より高さが低くされた凹み部を具備しても良い。
【0037】
さらに、誘電体膜202内には、直流電力が供給されて発熱する膜状のヒータ電極205が配置され、当該ヒータ電極205は、これに直流電力を供給するヒータ電源109と電気的に接続されている。
【0038】
この静電吸着用電極204には静電吸着用直流電源106が電気的に接続され直流電力が供給される。誘電体膜202及びウエハ1の内部に形成された電荷同士の静電気力によってウエハ1と静電吸着用電極204との間に作用するクーロン力、あるいは表面電流により生じるジョンソン・ラーベック力を用いて、ウエハ1が誘電体膜202の表面に吸着保持される。
【0039】
本実施の形態において、静電吸着用電極204は、一個または複数個でも良く、何れの場合でも直流電力により誘電体膜202内で単一の極性が付与されるモノポールとなっている。また、静電吸着用直流電源106には、静電吸着用電極204に供給する電力を調節する制御器108が接続されて、静電吸着用直流電源106から出力される電圧が検知されるとともにこれが所定の範囲内の値となるようにFB(フィードバック)制御される。
【0040】
また、本実施の形態では、基材201は、400KHz−13.56MHzの周波数の高周波バイアス電源107が接続されており、当該高周波バイアス電源107からの高周波電力が誘電体膜202を介してウエハ1に印加されて、ウエハ1上面上方にプラズマの電位に応じたバイアス電位が形成される。この高周波バイアスの電位とプラズマの電位差に応じて、プラズマ中からイオン等の荷電粒子がウエハ1の表面方向に誘引され、表面に配置された処理対象の膜層を含む膜構造の表面と粒子との衝突によりウエハ1の当該衝突の方向へのエッチング処理をより促進して処理の異方性が実現される。このような高周波電力は、基材201ではなく、誘電体膜202内に配置された別の電極、例えば静電吸着用電極204に供給されても良い。
【0041】
処理中のウエハ1は、プラズマから供給される熱量と、供給される直流電力によりヒータ電極205で発熱される熱量と、誘電体膜202を通して基材201に伝達され冷媒流路206を通流する冷媒との間で交換される熱量とのバランスより、プラズマ処理に好適な所定の範囲内の温度に調節される。ウエハ1裏面と誘電体膜202上面との間の隙間に、図示しない冷却ガス導入機構により誘電体膜202上面に配置された導入孔の開口から導入されたHe等の熱伝達性のガスは、溝203または凹みの内側を通ってウエハ1の裏面全体に渡り充満して、ウエハ1と誘電体膜202との間の熱伝導を促進しウエハ1の温度の調節の範囲、応答性や精度を向上させる。
【0042】
本実施の形態の試料台2では、基材201上面にセラミクス等の材料の粒子が溶射されて形成された誘電体膜202を備えたものであるが、アルミナ、窒化アルミニウム等のセラミクスの材料を、静電吸着用電極等を内部に配置して焼結して円板状に形成し、この焼結板を基材201の上面に接着して接合して構成されても良い。
【0043】
<プラズマ処理方法>
図3を用いて、本実施の形態において実施されるウエハ1のプラズマ処理の動作の流れを説明する。図3は、図1に示すプラズマ処理装置が実施するウエハ1の処理の動作の流れを示すタイムチャートである。ここでは、一例として、エッチング処理の動作の流れを示す。
【0044】
本実施の形態における処理では、搬送室またはプラズマ処理装置本体が設置された建屋の室内の温度と同じまたはこれと同等と見做される程度に近似した範囲内の温度で搬送され、試料台2上面に載せられたウエハ1は、処理の開始前に試料台2からの熱が伝達され当該温度より高い処理に適した温度に加熱された後に処理が行われる。処理中の温度と加熱前のウエハ1の温度(本実施の形態では室内温度と同等のもの)との差が大きな場合において、試料台2側からの熱をウエハ1により効率良く伝達するためウエハ1を誘電体膜202上面に静電吸着した状態でこれを加熱すると、ウエハ1は処理開始の温度まで上昇する過程で熱膨張するため、静電吸着により接触したウエハ1の裏面と誘電体膜202の表面の上端面との間で擦れ、摺動が生じることになる。
【0045】
両者の間の静電気力により形成される圧力が大きい接触箇所では、ウエハ1と誘電体膜202との間の摺動により、少なくとも一方の表面に磨耗が生じ、ウエハ1の裏面が傷ついたり、誘電体膜202上面の一部分が欠損したりして、微小な欠片や粒子が生起されてしまう。これらが、摺動したウエハ1や別のウエハ1の表面に付着して異物となってしまうと、当該処理の工程を経てウエハ1から製造される半導体素子の歩留まりが悪化してしまう。
【0046】
また、誘電体膜202の表面が磨耗したり欠損したりしてしまうので、試料台2の表面の形状が変化して静電吸着力の大きさや熱伝達性のガスの洩れ量や圧力の値が所期の性能を満たすことのできる許容範囲を超えたため交換するまでの期間が短くなってプラズマ処理装置を停止して保守をする頻度が上昇する問題が生じる。このため、プラズマ処理装置の処理の効率が損なわれてしまう。
【0047】
このような問題の生起を避けるため、ウエハ1を誘電体膜202上面に静電吸着させない状態で所定の温度までウエハ1を加熱しようとすると、その期間は相対的に大きなものとなってしまう。そこで、加熱の期間を短縮するために、処理室101内にプラズマを発生させてウエハ1へ伝達する熱量を増大させることが考えられる。
【0048】
しかし、この際のウエハ1の電位はフローティングポテンシャルと呼ばれる正または負の電位となることが知られている。このため、静電吸着用直流電源106から静電吸着用電極204に電力が供給されず静電吸着用電極204に発生する電圧が0Vの場合には、ウエハ1と静電吸着用電極204との間にはフローティングポテンシャルに基づいた電位差が生じて静電吸着力が発生してしまうことになる。このような状態で、ウエハ1がプラズマあるいはヒータ電極205からの熱により加熱されると、静電吸着力により当接したウエハ1裏面と誘電体膜202上面の上端部との間で摺動が生じてしまい上記の問題が生起してしまう。
【0049】
また、ウエハ1を搬送後に処理室101内にプラズマを発生させるとともに高周波バイアス電源107からの高周波電力を基材201に印加してバイアス電位を形成して、プラズマから伝達される入熱とともにプラズマからの荷電粒子の衝突によりウエハ1を加熱して、処理を開始する温度までのウエハ1を加熱の期間を短縮することが考えられる。しかし、高周波電力が基材201に印加された状態で、ウエハ1の電位はセルフバイアス電位となることが知られている。
【0050】
このセルフバイアス電位は印加される高周波電力のVpp(Peak to Peak Voltage)の値と相関があり、概ねセルフバイアス電位=1/2〜1/3Vpp程度であることが発明者らの検討により判明している。即ち、Vppが大きくなると大きなセルフバイアス電位が生じることになり、静電吸着用直流電源106からの出力が無く、静電吸着用電極204の電圧が0Vの場合には上記と同様にウエハ1と誘電体膜202との摺動が生じてしまう。
【0051】
本実施の形態は、上記のようなプラズマからの熱の伝達によりウエハ1が加熱されて熱膨張する際に、プラズマと高周波バイアス電力の印加とによる静電吸着力が発生してウエハ1裏面と誘電体膜202表面とに摺動が生じ異物の原因となる塵埃や粒子が発生してしまうことを抑制することを目的として、図3に示す手順でウエハ1の処理を実施する。特に、本実施の形態では、モノポール式の静電吸着用電極204を用いた場合の例を述べる。
【0052】
まず、処理室101内に、処理用のガスが図示しないガス導入口から導入されるとともに(T1)、アンテナ102に供給される高周波電源104からの高周波電力により形成された高周波電界が供給され、処理用のガスを用いてプラズマが生成される(T2)。この状態で、誘電体膜202上面に配置された溝203を含むウエハ1と誘電体膜202との間の隙間にはHe等の熱伝達性のガスは導入されていないが、ウエハ1の位置がズレない程度の隙間内の圧力となるように熱伝達性のガスが供給されていても良い。
【0053】
上記プラズマの形成により、静電吸着用電極204に静電吸着用直流電源106から電力が供給されない状態では、ウエハ1の電位は浮遊電位と呼ばれる正、または負の値となる。本実施の形態では、プラズマが生成された状態で、制御器108は指令信号を発信して、静電吸着用直流電源106の出力を、静電吸着用電極204の電位が浮遊電位と同電位かこれと見做せる程度の近似した値になるように調節する。すなわち、制御器108は、プラズマによりウエハ1に生じる電位と静電吸着用電極204の電位との差を低減するように、この静電吸着用電極204に供給する電力を調節する。
【0054】
この構成により、ウエハ1と静電吸着用電極204との間には電位差が発生しないか、または無視できるほど小さくなるため、ウエハ1と誘電体膜202との間に静電吸着力が生じないか、上記摺動による悪影響を著しく低減できる程度に小さくされる。本実施の形態では、上記のプラズマが形成され静電吸着力が抑制された状態では、高周波バイアス形成用の電力は供給されていない。
【0055】
次に、高周波バイアス電源107から高周波バイアス形成用の電力が基材201に出力される(T3)。この際、静電吸着用直流電源106からの出力が変更されない状態では、ウエハ1の電位は所定の負の直流電位であるセルフバイアス電位と同等の値になる。
【0056】
本実施の形態では、制御器108は指令信号を発信して、上記高周波バイアス電源107からの高周波電力の出力に合わせて静電吸着用直流電源106の出力を、静電吸着用電極204の電位がセルフバイアス電位と同じかこれと見做せる程度に近似した値となるように調節する。すなわち、制御器108は、高周波バイアス電源107から供給される高周波電力によりウエハ1に生じる電位と静電吸着用電極204の電位との差を低減するように、この静電吸着用電極204に供給する電力を調節する。この構成により、ウエハ1と静電吸着用電極204との間には電位差が発生しないか、または無視できるほど小さくなるため、ウエハ1と誘電体膜202との間に静電吸着力が生じないか、上記摺動による悪影響を著しく低減できる程度に小さくされる。
【0057】
この状態で予め定められた期間が経過して、ウエハ1が加熱され所定の値以上のものにその温度が到達したことが制御器108により判定されると、制御器108から指令信号が発信され、静電吸着用直流電源106の出力が、少なくともウエハ1と誘電体膜202との間の隙間のガスの圧力よりも大きな圧力でウエハ1を吸着する静電吸着力を発生させる静電吸着用電極204の電位となるように調節される。すなわち、ウエハ1と静電吸着用電極204との電位の差が大きくなるように静電吸着用電極204に電力が供給される(T4)。
【0058】
さらに、その後、制御器108からの指令信号に応じて、ウエハ1と誘電体膜202との間の隙間に熱伝達性のガスが導入され、ウエハ1裏面と誘電体膜202との隙間内部の圧力がウエハ1表面の膜構造の処理対象の膜層の処理に好適な温度を実現してこれを維持できる圧力まで増大されて、当該膜層の処理が進行される(T5)。上記のような工程により、静電吸着用電極204に供給する電力の値をプラズマの生成と高周波バイアス電力の供給とに合わせて調節して、ウエハ1を誘電体膜202上面に静電吸着させる力を調節しつつ加熱することで、ウエハ1と誘電体膜202との間に生じる摺動とこれによる異物を生起させる塵埃や微粒子の発生が低減され、ウエハ1の処理の歩留まりと半導体デバイスの生産性の向上が見込まれる。
【0059】
上記の実施の形態において、制御器108はフローティングポテンシャルを処理室101内に配置された測定用のプローブからの出力をウエハ1の処理中に受信して検出する構成を備えても良く、事前に実施された試験や実験等で得られたデータからその条件毎に検出され制御器108内に配置されたFlash−ROMやRAM等の記憶装置或いは通信可能に接続されたHDD等の外部記憶装置に予め記憶された値を用いてフローティングポテンシャルの値を算出または選択して設定しても良い。同様に、制御器108により、セルフバイアス電位は高周波バイアス電源107からの出力のVppを図示しない検知器からの出力を用いて算出される構成でも、事前に得られたデータから検出された値を用いて設定される構成でも良い。
【0060】
また、静電吸着用電極204の電位を調節しつつプラズマを形成してウエハ1を加熱する工程を終了して処理対象の膜層の処理に適した静電吸着力を発生させる時点の判定は、当該加熱を開始後所定の時間の経過を検出する構成を備えても良く、ウエハ1の温度を蛍光温度計やその他の温度測定方法によって検出した結果と所定の閾値とを比較した結果から判定する構成を備えても良い。
【0061】
さらに、静電吸着用電極204による吸着力を増大させて処理に適したものにして、上記膜層のエッチング処理を促進するまでに形成されるプラズマは、当該処理に用いるものと同じ組成のガスを用いて生成されても良く、異なる組成、例えば不活性ガス等の別のガスを用いても良く、また流量や処理室101内の圧力等の条件を異ならせて生成されても良い。また、ウエハ1の加熱を促進する工程と膜層の処理を促進する工程で異なる組成のガスを用いる場合、前後の間で一旦プラズマを消火して、再度プラズマを着火しても良いし、プラズマ着火状態を継続しつつ、ガスを置換しても良い。
【0062】
<変形例>
以下に、図1に示すプラズマ処理装置の変形例を、図4及び5を用いて説明する。本変形例では、図1のプラズマ処理装置に、モノポール式の静電吸着用電極204に代えて、ダイポール式の静電吸着用電極を用いている。本変形例によっても、プラズマから熱が伝達されて加熱されるウエハ1の熱膨張によってウエハ1と誘電体膜202とが摺動して生じる悪影響が低減される。
【0063】
本変形例において、図1に示すプラズマ処理装置に、図2に示した試料台2に代えて図4に示す試料台2を搭載する。図4は、図1に示すプラズマ処理装置の変形例に係る試料台2の構成の概略を模式的に拡大して示す縦断面図である。
【0064】
本変形例の試料台2は、上面を構成する誘電体膜202内に静電吸着用電極204と共に第2の静電吸着用電極207を備えている。本変形例の第2の静電吸着用電極207は、円形または扇形あるいは円弧形を備えた静電吸着用電極204の外周側に円弧形状またはリング状に配置された1つ以上の膜状の電極であって、静電吸着用電極204と同様にタングステン等の金属の材料から構成され溶射あるいは塗布により膜状に形成された電極である。
【0065】
第2の静電吸着用電極207には第2の静電吸着用直流電源110が電気的に接続されており、第2の静電吸着用直流電源110から供給される直流電力によりその内側または中央側に配置された静電吸着用電極204のものとは異なる電位にされ異なる極性を実現可能に構成されている。
【0066】
静電吸着用電極204と第2の静電吸着用電極207との間の電位の差に応じて、その上方に配置される誘電体膜202及びウエハ1の領域に形成され蓄積される電荷によるクーロン力あるいはこれらの電極の間を流れる表面電流によるジョンソン・ラーベック力が形成され、ウエハ1は誘電体膜202に吸着され試料台2上面上方で保持される。更に、第2の静電吸着用直流電源110も制御器108に接続されており、静電吸着用直流電源106と同様にその出力が調節される。
【0067】
次に、図5を用いて本変形例におけるウエハ1のプラズマ処理の動作の流れについて説明する。図5は、図4に示す変形例に係るプラズマ処理装置が実施するウエハ1の処理の動作の流れを示すタイムチャートである。
【0068】
図5において、図3に示す実施の形態の工程と同様に、まず、処理室101内に、処理用のガスが図示しないガス導入口から導入されるとともに(T11)、アンテナ102に供給される高周波電源104からの高周波電力により形成された高周波電界が供給され、処理用のガスを用いてプラズマが生成される(T12)。図3の実施の形態と同様に、この状態で、誘電体膜202上面に配置された溝203を含むウエハ1と誘電体膜202との間の隙間にはHe等の熱伝達性のガスは導入されていないが、ウエハ1の位置がズレない程度の隙間内の圧力となるように熱伝達性のガスが供給されていても良い。
【0069】
上記プラズマの形成により、静電吸着用電極204に静電吸着用直流電源106から電力が供給されない状態では、ウエハ1の電位は浮遊電位と呼ばれる正、または負の値となる。本変形例では、プラズマが生成された状態で、制御器108は指令信号を発信して、静電吸着用直流電源106及び第2の静電吸着用直流電源110の出力を、各々静電吸着用電極204及び第2の静電吸着用電極207の電位が浮遊電位と同電位かこれと見做せる程度の近似した値になるように調節する。
【0070】
この構成により、ウエハ1と静電吸着用電極204及び第2の静電吸着用電極207との間には電位差が発生しないか、または無視できるほど小さくなるため、ウエハ1と誘電体膜202との間に静電吸着力が生じないか、上記摺動による悪影響を著しく低減できる程度に小さくされる。本変形例でも、上記のプラズマが形成され静電吸着力が抑制された状態では、高周波バイアス形成用の電力は供給されていない。
【0071】
次に、高周波バイアス電源107から高周波バイアス形成用の電力が基材201に出力される(T13)。この際、静電吸着用直流電源106からの出力が変更されない状態では、ウエハ1の電位は所定の負の直流電位であるセルフバイアス電位と同等の値になる。
【0072】
本変形例では、制御器108は指令信号を発信して、上記高周波バイアス電源107からの高周波電力の出力に合わせて静電吸着用直流電源106及び第2の静電吸着用直流電源110の出力を、各々静電吸着用電極204及び第2の静電吸着用電極207の電位がセルフバイアス電位と同じかこれと見做せる程度に近似した値となるように調節する。この構成により、ウエハ1と静電吸着用電極204及び第2の静電吸着用電極207との間には電位差が発生しないか、または無視できるほど小さくなるため、ウエハ1と誘電体膜202との間に静電吸着力が生じないか、上記摺動による悪影響を著しく低減できる程度に小さくされる。
【0073】
この状態で予め定められた期間が経過して、ウエハ1が加熱され所定の値以上のものにその温度が到達したことが制御器108により判定されると、制御器108から指令信号が発信され、静電吸着用直流電源106及び第2の静電吸着用直流電源110の出力が、少なくともウエハ1と誘電体膜202との間の隙間のガスの圧力よりも大きな圧力でウエハ1を吸着する静電吸着力を発生させる静電吸着用電極204の電位となるように調節される。すなわち、ウエハ1と静電吸着用電極204との電位の差が大きくなるように静電吸着用電極204に電力が供給され、静電吸着用電極204と異なる極性となるように第2の静電吸着用電極207に第2の静電吸着用直流電源110から電力が供給される(T14)。
【0074】
さらに、その後、制御器108からの指令信号に応じて、ウエハ1と誘電体膜202との間の隙間に熱伝達性のガスが導入され、ウエハ1裏面と誘電体膜202との隙間内部の圧力がウエハ1表面の膜構造の処理対象の膜層の処理に好適な温度を実現してこれを維持できる圧力まで増大されて、当該膜層の処理が進行される(T15)。上記のような工程により、静電吸着用電極204に供給する電力の値をプラズマの生成と高周波バイアス電力の供給とに合わせて調節して、ウエハ1を誘電体膜202上面に静電吸着させる力を調節しつつ加熱することで、ウエハ1と誘電体膜202との間に生じる摺動とこれによる異物を生起させる塵埃や微粒子の発生が低減され、ウエハ1の処理の歩留まりと半導体デバイスの生産性の向上が見込まれる。
【0075】
ここで、フローティングポテンシャルの値やセルフバイアスの値の選択や設定、ウエハ1のプラズマを用いた加熱を促進する工程からエッチング処理を促進する工程へ移行する時点の判定、さらにはプラズマを形成する条件の選択と設定については、実施の形態と同等のものにすることができる。
【0076】
<効果>
以上の実施の形態及び変形例によれば、ウエハ1から異物の原因となる物質の発生が低減され、処理の歩留まりが向上するプラズマ処理装置またはプラズマ処理方法を実現することができる。より具体的には、ウエハ1を試料台2の表面に吸着する前に、プラズマの形成または高周波電力の供給による加熱を行う際にウエハ1の電位と試料台2の電位との差により意図しない静電吸着力が発生することを抑制することができる。この結果、ウエハ1の裏面と試料台2の上部の誘電体膜202の表面との間の摺動と、これによる塵埃や微粒子の発生を低減することができる。これにより、ウエハ1の裏面の損傷や異物の発生を抑制でき、さらに、長期間に亘り試料台2の信頼性を高めることができる。
【0077】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0078】
例えば、上記した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1…ウエハ
2…試料台
101…処理室
102…アンテナ
103…整合器
104…高周波電源
105…板部材
106…静電吸着用直流電源
107…高周波バイアス電源
108…制御器
109…ヒータ電源
110…静電吸着用直流電源(第2)
201…基材
202…誘電体膜
203…溝
204…静電吸着用電極
205…ヒータ電極
206…冷媒流路
207…静電吸着用電極(第2)
図1
図2
図3
図4
図5