(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6595405
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】結像光学系、投写型表示装置、および、撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/04 20060101AFI20191010BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20191010BHJP
G02B 13/16 20060101ALI20191010BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20191010BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
G02B13/04 D
G02B13/18
G02B13/16
G03B21/00 D
G03B21/14 Z
【請求項の数】12
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-104119(P2016-104119)
(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公開番号】特開2017-211477(P2017-211477A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2018年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永利 由紀子
【審査官】
殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/154122(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/133053(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/129274(WO,A1)
【文献】
特開2005−128286(JP,A)
【文献】
特表2008−511020(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0052166(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102012018441(DE,A1)
【文献】
西独国特許出願公開第19807093(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 − 17/08
G02B 21/02 − 21/04
G02B 25/00 − 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮小側共役面上に配置された画像表示素子に表示された画像を、拡大側共役面上に拡大像として投写可能な結像光学系であって、
拡大側から順に、複数のレンズにより構成された第1光学系と、複数のレンズにより構成された第2光学系とから実質的になり、
前記第1光学系は、拡大側から順に、第1aレンズ群と、反射面で光路を折り曲げる第1光路折り曲げ手段と、第1bレンズ群とから実質的になり、
前記第2光学系は、拡大側から順に、第2aレンズ群と、反射面で光路を折り曲げる第2光路折り曲げ手段と、第2bレンズ群とから実質的になり、
前記第2光学系は、前記画像表示素子上の画像を中間像として結像させ、
前記第1光学系は、前記中間像を前記拡大側共役面上に結像させ、
下記条件式(1)および(2)を満足する
ことを特徴とする結像光学系。
3<d/I …(1)
4<b/a<10 …(2)
ただし、
d:前記第2aレンズ群と前記第2bレンズ群の光軸上の間隔
I:縮小側の最大像高
b:設計F値の5倍のF値における最大像高の子午方向の光束径
a:設計F値の5倍のF値における軸上光束径
【請求項2】
前記第2aレンズ群は、正の屈折力を有する
請求項1記載の結像光学系。
【請求項3】
下記条件式(3)を満足する
請求項1または2記載の結像光学系。
1<f1/|f|<2.5 …(3)
ただし、
f1:前記第1光学系の焦点距離
f:全系の焦点距離
【請求項4】
下記条件式(4)を満足する
請求項1から3のいずれか1項記載の結像光学系。
5<f2a/|f|<60 …(4)
ただし、
f2a:前記第2aレンズ群の焦点距離
f:全系の焦点距離
【請求項5】
下記条件式(5)および(6)を満足する
請求項1から4のいずれか1項記載の結像光学系。
1<La/Lc<3 …(5)
1.2<Lb/Lc<4 …(6)
ただし、
La:前記第2bレンズ群の最も縮小側の面から前記第2光路折り曲げ手段までの光軸上の距離
Lb:前記第2光路折り曲げ手段から前記第1光路折り曲げ手段までの光軸上の距離
Lc:前記第1光路折り曲げ手段から前記第1aレンズ群の最も拡大側の面までの光軸上の距離
【請求項6】
下記条件式(1−1)を満足する
請求項1記載の結像光学系。
5<d/I<15 …(1−1)
【請求項7】
下記条件式(2−1)を満足する
請求項1記載の結像光学系。
5<b/a<8 …(2−1)
【請求項8】
下記条件式(3−1)を満足する
請求項3記載の結像光学系。
1.3<f1/|f|<2 …(3−1)
【請求項9】
下記条件式(4−1)を満足する
請求項4記載の結像光学系。
10<f2a/|f|<40 …(4−1)
【請求項10】
全画角が120°以上である
請求項1から9のいずれか1項記載の結像光学系。
【請求項11】
光源と、該光源からの光が入射するライトバルブと、該ライトバルブにより光変調された光による光学像をスクリーン上に投写する結像光学系としての請求項1から10のいずれか1項記載の結像光学系とを備えたことを特徴とする投写型表示装置。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項記載の結像光学系を備えた撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、液晶表示素子やDMD( Digital Micromirror Device:登録商標)などのライトバルブを搭載した投写型表示装置に用いられるのに好適な結像光学系、この結像光学系を備えた投写型表示装置、および、この結像光学系を備えた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子やDMD( Digital Micromirror Device:登録商標)等のライトバルブを搭載した投写型表示装置(プロジェクタともいう)が広く普及し、かつ高性能化してきている。特に、ライトバルブの解像度が向上したことに伴い、結像光学系の解像性能に対しても高度な要望がなされるようになってきている。
【0003】
また、スクリーンまでの距離設定の自由度を高めることや室内空間での設置性を考慮して、コンパクトな構成でありながら、より高性能で、より広角化の図られた汎用性の高い結像光学系を投写型表示装置に搭載したいという要望も強くなっている。
【0004】
このような要望に応えるべく、複数枚のレンズからなる第1光学系で中間像を形成し、同じく複数枚のレンズからなる第2光学系で再結像させる結像光学系が提案されている。(特許文献1、2参照)
【0005】
通常の中間像を結ばない光学系のみで構成された結像光学系は、焦点距離を短くして広角化をしようとすると、どうしても拡大側のレンズが大きくなりすぎてしまうが、上記のように中間結像させる方式の結像光学系では、第2光学系のバックフォーカスを短縮できるとともに、第2光学系の拡大側のレンズ径を小さくすることが可能であり、焦点距離を短くして広角化するのにも適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第09/107553号
【特許文献2】特開2006−330410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1は、第2光学系が魚眼レンズであり、最終像面で歪曲収差が大きく残存してしまうため、通常の結像光学系としては適さない。また、特許文献2は、中間像を境に第1光学系、第2光学系で独立して収差補正を行っているため、昨今要求されているレベルの広角化には達しきれていない。さらに、特許文献1,2とも一度中間像を結ぶため、どうしてもレンズ全長が大きくなってしまっている。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、中間像を形成する結像光学系において、小型化を達成しつつ、広角で諸収差が良好に補正された高い投写性能を有する結像光学系、この結像光学系を備えた投写型表示装置、および、この結像光学系を備えた撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の結像光学系は、縮小側共役面上に配置された画像表示素子に表示された画像を、拡大側共役面上に拡大像として投写可能な結像光学系であって、拡大側から順に、複数のレンズにより構成された第1光学系と、複数のレンズにより構成された第2光学系とから実質的になり、第1光学系は、拡大側から順に、第1aレンズ群と、反射面で光路を折り曲げる第1光路折り曲げ手段と、第1bレンズ群とから実質的になり、第2光学系は、拡大側から順に、第2aレンズ群と、反射面で光路を折り曲げる第2光路折り曲げ手段と、第2bレンズ群とから実質的になり、第2光学系は、画像表示素子上の画像を中間像として結像させ、第1光学系は、中間像を拡大側共役面上に結像させ、下記条件式(1)
および(2)を満足することを特徴とする。
3<d/I …(1)
4<b/a<10 …(2)
ただし、
d:第2aレンズ群の最も縮小側の面から第2bレンズ群の最も拡大側の面までの光軸上の距離
I:縮小側の最大像高
b:設計F値の5倍のF値における最大像高の子午方向の光束径
a:設計F値の5倍のF値における軸上光束径
とする。
なお、a、bの光束径は、投写距離を無限遠としたときの、最も拡大側のレンズ面より拡大側の光束径とする。また、a、bを計算する際にF値を決めるための絞りの位置は、第2光学系内で主光線と光軸が交わる位置とする。また、bの光束径は、主光線に垂直な方向での光束径とする。
【0010】
本発明の結像光学系においては、下記条件式(1−1)
および/または(2−1)を満足することが好ましい。
5<d/I<15 …(1−1)
5<b/a<8 …(2−1)
【0011】
また、全画角が120°以上であることが好ましい。
【0012】
また、第2aレンズ群は、正の屈折力を有することが好ましい。
【0013】
また、下記条件式(3)を満足することが好ましく、下記条件式(3−1)を満足することがより好ましい。
1<f1/|f|<2.5 …(3)
1.3<f1/|f|<2 …(3−1)
ただし、
f1:第1光学系の焦点距離
f:全系の焦点距離
とする。
【0014】
また、下記条件式(4)を満足することが好ましく、下記条件式(4−1)を満足することがより好ましい。
5<f2a/|f|<60 …(4)
10<f2a/|f|<40 …(4−1)
ただし、
f2a:第2aレンズ群の焦点距離
f:全系の焦点距離
とする。
【0015】
また、下記条件式(5)および(6)を満足することが好ましい。
1<La/Lc<3 …(5)
1.2<Lb/Lc<4 …(6)
ただし、
La:第2bレンズ群の最も縮小側の面から第2光路折り曲げ手段までの光軸上の距離
Lb:第2光路折り曲げ手段から第1光路折り曲げ手段までの光軸上の距離
とする。
Lc:第1光路折り曲げ手段から第1aレンズ群の最も拡大側の面までの光軸上の距離
とする。
【0016】
本発明の投写型表示装置は、光源と、光源からの光が入射するライトバルブと、ライトバルブにより光変調された光による光学像をスクリーン上に投写する結像光学系としての上記本発明の結像光学系とを備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明の撮像装置は、上記記載の本発明の結像光学系を備えたことを特徴とする。
【0018】
なお、上記「拡大側」とは、被投写側(スクリーン側)を意味し、縮小投写する場合も、便宜的にスクリーン側を拡大側と称するものとする。一方、上記「縮小側」とは、画像表示素子側(ライトバルブ側)を意味し、縮小投写する場合も、便宜的にライトバルブ側を縮小側と称するものとする。
【0019】
また、上記「〜から実質的になる」とは、構成要素として挙げたもの以外に、実質的にパワーを有さないレンズ、パワーを有さないミラーや絞りやマスクやカバーガラスやフィルタなどのレンズ以外の光学要素などを含んでもよいことを意図するものである。
【0020】
また、上記「レンズ群」とは、必ずしも複数のレンズから構成されるものだけでなく、1枚のレンズのみで構成されるものも含むものとする。
【0021】
また、上記のレンズの面形状や屈折力の符号は、非球面が含まれている場合は近軸領域で考えるものとする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の結像光学系は、縮小側共役面上に配置された画像表示素子に表示された画像を、拡大側共役面上に拡大像として投写可能な結像光学系であって、拡大側から順に、複数のレンズにより構成された第1光学系と、複数のレンズにより構成された第2光学系とから実質的になり、第1光学系は、拡大側から順に、第1aレンズ群と、反射面で光路を折り曲げる第1光路折り曲げ手段と、第1bレンズ群とから実質的になり、第2光学系は、拡大側から順に、第2aレンズ群と、反射面で光路を折り曲げる第2光路折り曲げ手段と、第2bレンズ群とから実質的になり、第2光学系は、画像表示素子上の画像を中間像として結像させ、第1光学系は、中間像を拡大側共役面上に結像させ、下記条件式(1)を満足するものとしたので、小型化を達成しつつ、広角で諸収差が良好に補正された高い投写性能を有する結像光学系とすることができる。
3<d/I …(1)
【0023】
本発明の投写型表示装置は、本発明の結像光学系を備えているため、広画角で高画質の画像を投射できるとともに、装置を小型化することができる。
【0024】
本発明の撮像装置は、本発明の結像光学系を備えているため、広画角で高画質の画像を取得できるとともに、装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる結像光学系(実施例1と共通)の構成を示す断面図
【
図2】本発明の実施例2の結像光学系の構成を示す断面図
【
図3】本発明の実施例3の結像光学系の構成を示す断面図
【
図7】本発明の一実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図
【
図8】本発明の別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図
【
図9】本発明のさらに別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図
【
図10】本発明の一実施形態に係る撮像装置の前側の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる結像光学系の構成を示す断面図である。
図1に示す構成例は、後述の実施例1の結像光学系の構成と共通である。
図1においては、画像表示面Sim側が縮小側、第1光学系G1のレンズL1a側が拡大側であり、図示されている開口絞りStは必ずしも大きさや形状を表すものではなく、光軸Z上の位置を示すものである。また、
図1では軸上光束waおよび最大画角の光束wbも合わせて示している。
【0027】
この結像光学系は、例えば投写型表示装置に搭載されて、ライトバルブに表示された画像情報をスクリーンへ投写するものとして使用可能である。
図1では、投写型表示装置に搭載される場合を想定して、色合成部または照明光分離部に用いられるフィルタやプリズムなどを想定した光学部材PPと、光学部材PPの縮小側の面に位置するライトバルブの画像表示面Simも合わせて図示している。投写型表示装置においては、画像表示素子上の画像表示面Simで画像情報を与えられた光束が、光学部材PPを介して、この結像光学系に入射され、この結像光学系により不図示のスクリーン上に投写されるようになる。
【0028】
図1に示す通り、本実施形態の結像光学系は、拡大側から順に、複数のレンズにより構成された第1光学系G1と、複数のレンズにより構成された第2光学系G2とから実質的になり、第1光学系G1は、拡大側から順に、第1aレンズ群G1aと、反射面で光路を折り曲げる第1光路折り曲げ手段R1と、第1bレンズ群G1bとから実質的になり、第2光学系G2は、拡大側から順に、第2aレンズ群G2aと、反射面で光路を折り曲げる第2光路折り曲げ手段R2と、第2bレンズ群G2bとから実質的になり、第2光学系G2は、画像表示面Sim上の画像を中間像として結像させ、第1光学系G1は、中間像を拡大側共役面上に結像させるように構成されている。
【0029】
第1光路折り曲げ手段R1および第2光路折り曲げ手段R2としては、例えばミラーもしくはプリズムを用いることができる。
【0030】
通常の中間像を結ばない光学系のみで構成された投写用光学系は、焦点距離を短くして広角化をしようとすると、どうしても拡大側のレンズが大きくなりすぎてしまうが、本実施形態のように中間結像させる方式の投写用光学系では、第1光学系G1のバックフォーカスを短縮できるとともに、第1光学系G1の拡大側のレンズ径を小さくすることが可能であり、焦点距離を短くして広角化するのに適している。
【0031】
また、中間像の縮小側直近に光路折り曲げ手段ではなく第2aレンズ群G2aを配置することで、最大像高近辺の光線を効率よく曲げることができる。
【0032】
また、下記条件式(1)を満足するように構成されている。条件式(1)の下限以下とならないようにすることで、第2aレンズ群G2aと第2bレンズ群G2bの間隔が小さくなり過ぎないようにできるため、光路折り曲げ手段を配置する十分な間隔を確保できる。なお、下記条件式(1−1)を満足するものとすれば、より良好な特性とすることができる。条件式(1−1)の上限以上とならないようにすることで、第2aレンズ群G2aと第2bレンズ群G2bの間隔が大きくなり過ぎないようにできるため、結像光学系全体の小型化に寄与する。
3<d/I …(1)
5<d/I<15 …(1−1)
ただし、
d:第2aレンズ群の最も縮小側の面から第2bレンズ群の最も拡大側の面までの光軸上の距離
I:縮小側の最大像高
とする。
【0033】
本実施形態の結像光学系においては、下記条件式(2)を満足することが好ましい。条件式(2)の下限以下とならないようにすることで、画角が広く諸収差が良好に補正されたレンズとした場合においても、周辺光量比を確保することができる。条件式(2)の上限以上とならないようにすることで、レンズ径が大きくなるのを防ぐことができる。なお、下記条件式(2−1)を満足するものとすれば、より良好な特性とすることができる。
4<b/a<10 …(2)
5<b/a<8 …(2−1)
ただし、
b:設計F値の5倍のF値における最大像高の子午方向の光束径
a:設計F値の5倍のF値における軸上光束径
とする。
【0034】
また、第2aレンズ群G2aは、正の屈折力を有することが好ましい。このような構成とすることで、第2aレンズ群G2aから第2bレンズ群G2bへ向かう光束を収束させることができるため、第2bレンズ群G2bのレンズ径を小さくできる。
【0035】
また、下記条件式(3)を満足することが好ましい。条件式(3)の下限以下とならないようにすることで、第1光学系G1の屈折力が強くなり過ぎるのを抑えることができるため、広角化しつつ諸収差を補正するのが容易となる。条件式(3)の上限以上とならないようにすることで、第1光学系G1の焦点距離が長くなり過ぎるのを抑えることができるため、結像光学系全体の小型化に寄与する。なお、下記条件式(3−1)を満足するものとすれば、より良好な特性とすることができる。
1<f1/|f|<2.5 …(3)
1.3<f1/|f|<2 …(3−1)
ただし、
f1:第1光学系の焦点距離
f:全系の焦点距離
とする。
【0036】
また、下記条件式(4)を満足することが好ましい。条件式(4)の下限以下とならないようにすることで、第2aレンズ群G2aの屈折力が強くなり過ぎるのを抑えることができるため、レンズ周辺の光線が急激に変化するのを防いで、非点収差が大きくなるのを抑えることができる。条件式(4)の上限以上とならないようにすることで、第2aレンズ群G2aの屈折力が弱くなり過ぎるのを抑えることができるため、第2光学系G2の全長が長くなるのを防ぎ、結像光学系全体の小型化に寄与する。なお、下記条件式(4−1)を満足するものとすれば、より良好な特性とすることができる。
5<f2a/|f|<60 …(4)
10<f2a/|f|<40 …(4−1)
ただし、
f2a:第2aレンズ群の焦点距離
f:全系の焦点距離
とする。
【0037】
また、下記条件式(5)および(6)を満足することが好ましい。条件式(5)および(6)の下限以下とならないようにすることで、2つの光路折り曲げ手段により折り曲げられる結像光学系の内側の空間が小さくなり過ぎるのを抑えることができるため、例えば投写型表示装置に搭載する際に第2bレンズ群G2bのみを装置本体内に収容するような場合でも、結像光学系と装置本体との干渉を防ぐのが容易になる。条件式(5)および(6)の上限以上とならないようにすることで、2つの光路折り曲げ手段により折り曲げられる結像光学系の内側の空間が大きくなり過ぎるのを抑えることができるため、結像光学系全体の小型化に寄与する。
1<La/Lc<3 …(5)
1.2<Lb/Lc<4 …(6)
ただし、
La:第2bレンズ群の最も縮小側の面から第2光路折り曲げ手段までの光軸上の距離
Lb:第2光路折り曲げ手段から第1光路折り曲げ手段までの光軸上の距離
とする。
Lc:第1光路折り曲げ手段から第1aレンズ群の最も拡大側の面までの光軸上の距離
とする。
【0038】
次に、本発明の結像光学系の数値実施例について説明する。
まず、実施例1の結像光学系について説明する。実施例1の結像光学系の構成を示す断面図を
図1に示す。なお、
図1および後述の実施例2〜3に対応した
図2〜3においては、画像表示面Sim側が縮小側、第1光学系G1のレンズL1a側が拡大側であり、図示されている開口絞りStは必ずしも大きさや形状を表すものではなく、光軸Z上の位置を示すものである。また、
図1〜3では軸上光束waおよび最大画角の光束wbも合わせて示している。
【0039】
実施例1の結像光学系は、拡大側から順に、第1光学系G1と、第2光学系G2とから構成されている。第1光学系G1は、拡大側から順に、レンズL1a〜L1gの7枚のレンズからなる第1aレンズ群G1aと、第1光路折り曲げ手段R1と、レンズL1h〜L1mの6枚のレンズからなる第1bレンズ群G1bとから構成されている。第2光学系G2は、拡大側から順に、レンズL2aのみからなる第2aレンズ群G2aと、第2光路折り曲げ手段R2と、レンズL2b〜L2hの7枚のレンズからなる第2bレンズ群G2bとから構成されている。
【0040】
実施例1の結像光学系のレンズデータを表1に、諸元に関するデータを表2に、非球面係数に関するデータを表3に示す。以下では、表中の記号の意味について、実施例1のものを例にとり説明するが、実施例2〜3についても基本的に同様である。
【0041】
表1のレンズデータにおいて、面番号の欄には最も拡大側の構成要素の面を1番目として縮小側に向かうに従い順次増加する面番号を示し、曲率半径の欄には各面の曲率半径を示し、面間隔の欄には各面とその次の面との光軸Z上の間隔を示す。また、nの欄には各光学要素のd線(波長587.6nm)に対する屈折率を示し、νの欄には各光学要素のd線(波長587.6nm)に対するアッベ数を示す。ここで、曲率半径の符号は、面形状が拡大側に凸の場合を正、縮小側に凸の場合を負としている。レンズデータには、開口絞りSt、光学部材PPも含めて示している。開口絞りStに相当する面の面番号の欄には面番号とともに(絞り)という語句を記載している。
【0042】
表2の諸元に関するデータに、焦点距離f´、F値FNo、および、全画角2ωの値を示す。
【0043】
なお、基本レンズデータおよび諸元に関するデータに示す数値は、全系の焦点距離が−1となるように規格化されたものである。また、各表の数値は、所定の桁でまるめたものである。
【0044】
表1のレンズデータでは、非球面の面番号に*印を付しており、非球面の曲率半径として近軸の曲率半径の数値を示している。表3の非球面係数に関するデータには、非球面の面番号と、これら非球面に関する非球面係数を示す。表3の非球面係数の数値の「E−n」(n:整数)は「×10
−n」を意味する。非球面係数は、下記式で表される非球面式における各係数KA、Am(m=3〜最大19)の値である。
Zd=C・h
2/{1+(1−KA・C
2・h
2)
1/2}+ΣAm・h
m
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸に垂直な平面に下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸からの距離)
C:近軸曲率半径の逆数
KA、Am:非球面係数(m=3〜最大19)
とする。
【0048】
実施例1の結像光学系の各収差図を
図4に示す。なお、
図4は投写距離177における収差図を示しており、左側から順に球面収差、非点収差、歪曲収差、および、倍率色収差を示す。球面収差、非点収差、および、歪曲収差を表す各収差図には、d線(波長587.6nm)を基準波長とした収差を示す。球面収差図にはd線(波長587.6nm)、C線(波長656.3nm)、および、F線(波長486.1nm)についての収差をそれぞれ実線、長破線、および、短破線の実線で示す。非点収差図にはサジタル方向およびタンジェンシャル方向の収差をそれぞれ実線および短破線で示す。倍率色収差図にはC線(波長656.3nm)およびF線(波長486.1nm)についての収差をそれぞれ長破線および短破線で示す。球面収差図のFNo.はF値、その他の収差図のωは半画角を意味する。
【0049】
上記の実施例1の説明で述べた各データの記号、意味、記載方法は、特に断りがない限り以下の実施例のものについても同様であるので、以下では重複説明を省略する。
【0050】
次に、実施例2の結像光学系について説明する。実施例2の結像光学系の構成を示す断面図を
図2に示す。実施例2の結像光学系は、第1光学系G1のレンズ枚数構成以外は、実施例1と同様のレンズ枚数構成である。実施例2の結像光学系の第1光学系G1は、拡大側から順に、レンズL1a〜L1hの8枚のレンズからなる第1aレンズ群G1aと、第1光路折り曲げ手段R1と、レンズL1i〜L1nの6枚のレンズからなる第1bレンズ群G1bとから構成されている。また、実施例2の結像光学系のレンズデータを表4に、諸元に関するデータを表5に、非球面係数に関するデータを表6に、各収差図を
図5に示す。
【0054】
次に、実施例3の結像光学系について説明する。実施例3の結像光学系の構成を示す断面図を
図3に示す。実施例3の結像光学系は、第1光学系G1のレンズ枚数構成以外は、実施例1と同様のレンズ枚数構成である。実施例3の結像光学系の第1光学系G1は、拡大側から順に、レンズL1a〜L1eの5枚のレンズからなる第1aレンズ群G1aと、第1光路折り曲げ手段R1と、レンズL1f〜L1mの8枚のレンズからなる第1bレンズ群G1bとから構成されている。また、実施例3の結像光学系のレンズデータを表7に、諸元に関するデータを表8に、非球面係数に関するデータを表9、各収差図を
図6に示す。
【0058】
実施例1〜3の結像光学系の条件式(1)〜(6)に対応する値を表10に示す。なお、全実施例ともd線を基準波長としており、下記の表10に示す値はこの基準波長におけるものである。
【0060】
以上のデータから、実施例1〜3の結像光学系は全て、条件式(1)〜(6)を満たしており、小型化を達成しつつ、全画角が120°以上と広角で諸収差が良好に補正された高い投写性能を有する結像光学系であることが分かる。
【0061】
次に、本発明の実施形態に係る投写型表示装置について説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
図7に示す投写型表示装置100は、本発明の実施形態に係る結像光学系10と、光源15と、各色光に対応したライトバルブとしての透過型表示素子11a〜11cと、色分解のためのダイクロイックミラー12、13と、色合成のためのクロスダイクロイックプリズム14と、コンデンサレンズ16a〜16cと、光路を偏向するための全反射ミラー18a〜18cとを有する。なお、
図7では、結像光学系10は概略的に図示している。また、光源15とダイクロイックミラー12の間にはインテグレーターが配されているが、
図7ではその図示を省略している。
【0062】
光源15からの白色光は、ダイクロイックミラー12、13で3つの色光光束(G光、B光、R光)に分解された後、それぞれコンデンサレンズ16a〜16cを経て各色光光束にそれぞれ対応する透過型表示素子11a〜11cに入射して光変調され、クロスダイクロイックプリズム14により色合成された後、結像光学系10に入射する。結像光学系10は、透過型表示素子11a〜11cにより光変調された光による光学像をスクリーン105上に投写する。
【0063】
図8は、本発明の別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
図8に示す投写型表示装置200は、本発明の実施形態に係る結像光学系210と、光源215と、各色光に対応したライトバルブとしてのDMD素子21a〜21cと、色分解および色合成のためのTIR(Total Internal Reflection)プリズム24a〜24cと、照明光と投写光を分離する偏光分離プリズム25とを有する。なお、
図8では結像光学系210を概略的に図示している。また、光源215と偏光分離プリズム25の間にはインテグレーターが配されているが、
図8ではその図示を省略している。
【0064】
光源215からの白色光は、偏光分離プリズム25内部の反射面で反射された後、TIRプリズム24a〜24cにより3つの色光光束(G光、B光、R光)に分解される。分解後の各色光光束はそれぞれ対応するDMD素子21a〜21cに入射して光変調され、再びTIRプリズム24a〜24cを逆向きに進行して色合成された後、偏光分離プリズム25を透過して、結像光学系210に入射する。結像光学系210は、DMD素子21a〜21cにより光変調された光による光学像をスクリーン205上に投写する。
【0065】
図9は、本発明のさらに別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
図9に示す投写型表示装置300は、本発明の実施形態に係る結像光学系310と、光源315と、各色光に対応したライトバルブとしての反射型表示素子31a〜31cと、色分離のためのダイクロイックミラー32、33と、色合成のためのクロスダイクロイックプリズム34と、光路偏向のための全反射ミラー38と、偏光分離プリズム35a〜35cとを有する。なお、
図9では、結像光学系310は概略的に図示している。また、光源315とダイクロイックミラー32の間にはインテグレーターが配されているが、
図9ではその図示を省略している。
【0066】
光源315からの白色光はダイクロイックミラー32、33により3つの色光光束(G光、B光、R光)に分解される。分解後の各色光光束はそれぞれ偏光分離プリズム35a〜35cを経て、各色光光束それぞれに対応する反射型表示素子31a〜31cに入射して光変調され、クロスダイクロイックプリズム34により色合成された後、結像光学系310に入射する。結像光学系310は、反射型表示素子31a〜31cにより光変調された光による光学像をスクリーン305上に投写する。
【0067】
図10、
図11は、本発明の一実施形態に係る撮像装置であるカメラ400の外観図である。
図10は、カメラ400を前側から見た斜視図を示し、
図11は、カメラ400を背面側から見た斜視図を示す。カメラ400は、交換レンズ48が取り外し自在に装着される、レフレックスファインダーを持たない一眼形式のデジタルカメラである。交換レンズ48は、本発明の実施形態にかかる光学系である結像光学系49を鏡筒内に収納したものである。
【0068】
このカメラ400はカメラボディ41を備え、カメラボディ41の上面にはシャッターボタン42と電源ボタン43とが設けられている。またカメラボディ41の背面には、操作部44、45と表示部46とが設けられている。表示部46は、撮像された画像や、撮像される前の画角内にある画像を表示するためのものである。
【0069】
カメラボディ41の前面中央部には、撮影対象からの光が入射する撮影開口が設けられ、その撮影開口に対応する位置にマウント47が設けられ、マウント47を介して交換レンズ48がカメラボディ41に装着されるようになっている。
【0070】
カメラボディ41内には、交換レンズ48によって形成された被写体像に応じた撮像信号を出力するCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子(図示せず)、その撮像素子から出力された撮像信号を処理して画像を生成する信号処理回路、およびその生成された画像を記録するための記録媒体などが設けられている。このカメラ400では、シャッターボタン42を押すことにより静止画または動画の撮影が可能であり、この撮影で得られた画像データが上記記録媒体に記録される。
【0071】
以上、実施形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明の結像光学系は、上記実施例のものに限られるものではなく種々の態様の変更が可能であり、例えば各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、および、アッベ数を適宜変更することが可能である。
【0072】
また、本発明の投写型表示装置も、上記構成のものに限られるものではなく、例えば、用いられるライトバルブおよび光束分離または光束合成に用いられる光学部材は、上記構成に限定されず、種々の態様の変更が可能である。
【0073】
また、本発明の撮像装置も、上記構成のものに限られるものではなく、例えば、一眼レフ形式のカメラや、フィルムカメラ、および、ビデオカメラなどに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0074】
10、210、310 結像光学系
11a〜11c 透過型表示素子
12、13、32、33 ダイクロイックミラー
14、34 クロスダイクロイックプリズム
15、215、315 光源
16a〜16c コンデンサレンズ
18a〜18c、38 全反射ミラー
21a〜21c DMD素子
24a〜24c TIRプリズム
25、35a〜35c 偏光分離プリズム
31a〜31c 反射型表示素子
41 カメラボディ
42 シャッターボタン
43 電源ボタン
44、45 操作部
46 表示部
47 マウント
48 交換レンズ
49 結像光学系
100、200、300 投写型表示装置
105、205、305 スクリーン
400 カメラ
G1 第1光学系
G1a 第1aレンズ群
G1b 第1bレンズ群
G2 第2光学系
G2a 第2aレンズ群
G2b 第2bレンズ群
L1a〜L2h レンズ
PP 光学部材
R1 第1光路折り曲げ手段
R2 第2光路折り曲げ手段
Sim 画像表示面
St 開口絞り
wa 軸上光束
wb 最大画角の光束
Z 光軸