(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
放射線の飛来方向を検出可能な放射線検出器の測定視野について当該放射線検出器が区別して検出できる飛来方向ごとにそれぞれ対応させて区画が区成されたメッシュを記憶するメッシュ記憶部と、
前記メッシュの各区画に対して対応する飛来方向ごとの放射線の計数値がそれぞれ紐づけられた初期分布データを作成する初期分布データ作成部と、
前記初期分布データに基づいて、検出限界を下回る計数値が紐づけられた区画を含む複数の区画からなり、各区画に紐づけられている計数値の和が予め定められた検出限界以上となる領域を設定する領域設定部と、
前記初期分布データにおいて前記領域に含まれる各区画に紐づけられている計数値に基づいて、前記領域に含まれる各区画に紐づけられている計数値を補正し、補正後分布データを作成する補正後分布データ作成部と、を備えたことを特徴とする放射線分析装置。
前記判定部が計数値の和が検出限界を下回ると判定した場合に、前記仮領域設定部が、前記仮領域に対して隣接する区画を追加して当該仮領域を拡張するように構成された請求項2記載の放射線分析装置。
前記抽出部が、前記除外区画に設定された区画を抽出しないように構成されているとともに、検出限界を下回る計数値が紐づけられている区画のうち紐づけられている計数値が大きいものから順番に抽出するように構成された請求項4又は5記載の放射線分析装置。
放射線の飛来方向を検出可能な放射線検出器の測定視野について当該放射線検出器が区別して検出できる飛来方向ごとにそれぞれ対応させて区画が区成されたメッシュを記憶するメッシュ記憶部と、
前記メッシュの各区画に対して対応する飛来方向ごとの放射線の計数値がそれぞれ紐づけられた初期分布データを作成する初期分布データ作成部と、
前記初期分布データに基づいて、検出限界を下回る計数値が紐づけられた区画を含む複数の区画からなり、各区画に紐づけられている計数値の和が予め定められた検出限界以上となる領域を設定する領域設定部と、
前記初期分布データにおいて前記領域に含まれる各区画に紐づけられている計数値に基づいて、前記領域に含まれる各区画に紐づけられている計数値を補正し、補正後分布データを作成する補正後分布データ作成部と、としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とする放射線分析装置用プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば一般的な除染現場において放射線検出器を用いた短時間での放射線の検出によって、除染作業の前後における効果を評価したり、放射線量の変化を所定の信頼性を担保しながら表示したりすることは難しい。
【0005】
これは、除染現場のような低線量場では放射線検出器において検出できる単位時間当たりの放射線数が非常に少ないため、通常の検出時間では各飛来方向に対する放射線の計数値の多くは検出限界を下回ってしまうことに起因する。
【0006】
このような放射線の測定状態において例えば放射線検出器で検出された各飛来方向の放射線の計数値をそのまま表示しても、その大部分は検出限界以下のためバックグラウンドノイズや検出誤差等に対する統計的な有意性がなく、本当に除染効果があったかどうかは保証できない。
【0007】
一方、検出可能なほぼすべての飛来方向に対するガンマ線の計数値が検出限界を超えるようにするために測定時間を長くして計数値を積算し続けることも考えられる。しかしながら、この方法では統計的な有意性は担保できるものの除染作業後すぐにその効果を確認したいという現場の要望を満たすことはできない。さらに、この方法では測定が長引くことによる被ばくのリスクもある。このため、現場では統計的な有意差を担保しつつ、測定時間を短くできることが望まれている。
【0008】
本発明は上述したような問題を鑑みてなされたものであり、必要最小限の測定時間及び放射線の計測数によって、測定視野の広い範囲において統計的な有意性を有した測定結果を短時間で得ることができる放射線分析装置及び放射線分析装置用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る放射線分析装置は、放射線の飛来方向を検出可能な放射線検出器の測定視野について当該放射線検出器が区別して検出できる飛来方向ごとにそれぞれ対応させて区画が区成されたメッシュを記憶するメッシュ記憶部と、前記メッシュの各区画に対して対応する飛来方向ごとの放射線の計数値がそれぞれ紐づけられた初期分布データを作成する初期分布データ作成部と、前記初期分布データに基づいて、検出限界を下回る計数値が紐づけられた区画を含む複数の区画からなり、各区画に紐づけられている計数値の和が予め定められた検出限界以上となる領域を設定する領域設定部と、前記初期分布データにおいて前記領域に含まれる各区画に紐づけられている計数値に基づいて、前記領域に含まれる各区画に紐づけられている計数値を補正し、補正後分布データを作成する補正後分布データ作成部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、放射線の飛来方向によっては検出限界を下回る放射線の計数値しか得られない場合でも、複数の区画からなる前記領域としては検出限界以上の放射線の計数値を得て、統計的な有意性を担保することができる。
【0011】
したがって、前記補正後分布データにおいては前記領域に含まれていた各区画に対して信頼性を担保した計数値を紐づけることが可能となる。
【0012】
また、測定結果の信頼性を高めるために前記メッシュの全ての区画に対して検出限界以上の計数値を確保しなくてもよいので、必要最小限の計数値だけを得られるように前記放射線検出器による測定時間を短くすることができる。例えば放射線の計数率はポアソン分布に従うので、計数値がnの場合±√nの計数誤差を伴うことになる。計数値の信頼度が99.7%となるように検出限界を3σ以上とした場合、計数値nが計数誤差よりも大きくなるのはn>9である。したがって、各区画について計数値が10以上になっていない場合には複数の区画をまとめて1つの領域とし、その領域単位では計数値が10以上となるようにすることで領域単位では検出限界を十分に大きくして信頼性を担保することができる。
【0013】
これらのことから、短時間の測定でありながらも測定視野全体における統計的な有意性を担保しつつ、飛来方向ごとの放射線の強度分布を可視化したり、評価したりする事が可能となる。このため、低線量場における除染効果を短時間で確認したり、評価したりすることができるようになる。
【0014】
飛来方向の近い放射線の計数値がまとめられ、検出限界以上となるようにし、実際の強度分布に近い形になるようにするには、前記領域設定部が、検出限界を下回る計数値が紐づけられた区画を抽出する抽出部と、前記抽出部が抽出した区画に対して、隣接する区画を追加し仮領域を設定する仮領域設定部と、前記初期分布データにおいて前記仮領域に含まれる各区画に紐づけられている計数値の和が検出限界以上かどうかを判定する判定部と、前記判定部が計数値の和が検出限界以上と判定した場合に、前記仮領域を前記領域として決定する領域決定部と、を備えたものであればよい。
【0015】
前記領域に含まれる区画の数を少しずつ増やすことができ、前記メッシュに対して独立した前記領域を複数設定して前記初期分布データの傾向が十分に反映された前記補正後分布データを得られるようにするには、前記判定部が計数値の和が検出限界を下回ると判定した場合に、前記仮領域設定部が、前記仮領域に対して隣接する区画を追加して当該仮領域を拡張するように構成されたものであればよい。
【0016】
前記初期分布データにおいて1つの区画であっても十分な信頼性を有し、放射線源に関する重要な情報を保持している可能性が高い部分がそのまま前記補正後分布データに反映されるようにするには、前記領域設定部が、前記初期分布データにおいて紐づけられている計数値が検出限界以上の区画を前記仮領域設定部が前記仮領域に含むことができない除外区画に設定する除外区画設定部をさらに備えたものであればよい。
【0017】
検出された放射線の計数値のダブルカウントをできる限り防ぎ、前記補正後分布データの妥当性を担保できるようにするには、前記除外区画設定部が、前記領域決定部が決定した前記領域に含まれる各区画について前記除外区画に設定するように構成されたものであればよい。
【0018】
バックグラウンドノイズ等の影響が前記領域や前記補正後分布データに表れにくくし、放射線源からの影響が強く反映されるようにするには前記抽出部が、前記除外区画に設定された区画を抽出しないように構成されているとともに、検出限界を下回る計数値が紐づけられている区画のうち紐づけられている計数値が大きいものから順番に抽出するように構成されたものであればよい。
【0019】
前記領域に含まれる各区画に対して確からしい計数値に補正できるようにするには、前記補正後分布データ作成部が、前記初期分布データにおいて前記領域に含まれる各区画に紐づけられている計数値の平均値を算出する平均値算出部と、前記初期分布データにおいて前記領域に含まれる各区画に紐づけられている計数値を前記平均値算出部が算出した平均値に置き換えて前記補正後分布データへ変換する変換部と、を備えたものであればよい。
【0020】
除染現場等において、ある場所から視てどの方向に放射線源が存在するのかや、除染終了箇所における放射線量が低下しているかどうかをユーザが視覚的に容易に確認できるようにするには、前記放射線検出器と、前記放射線検出器の測定視野を含む撮像視野で光学画像を撮像する光学撮像器と、前記補正後分布データに基づいて、前記光学画像に対して放射線の飛来方向ごとに放射線量に応じた色を重畳する画像合成部と、をさらに備えたものであればよい。
【0021】
既存の放射線分析装置に対して本発明の放射線分析装置としての機能や効果を発揮させられるようにするには、放射線の飛来方向を検出可能な放射線検出器の測定視野について当該放射線検出器が区別して検出できる飛来方向ごとにそれぞれ対応させて区画が区成されたメッシュを記憶するメッシュ記憶部と、前記メッシュの各区画に対して対応する飛来方向ごとの放射線の計数値がそれぞれ紐づけられた初期分布データを作成する初期分布データ作成部と、前記初期分布データに基づいて、検出限界を下回る計数値が紐づけられた区画を含む複数の区画からなり、各区画に紐づけられている計数値の和が予め定められた検出限界以上となる領域を設定する領域設定部と、前記初期分布データにおいて前記領域に含まれる各区画に紐づけられている計数値に基づいて、前記領域に含まれる各区画に紐づけられている計数値を補正し、補正後分布データを作成する補正後分布データ作成部と、としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とする放射線分析装置用プログラムを用いればよい。このような放射線分析装置用プログラムは電気的に配信されるものであってもよいし、CD、DVD、フラッシュメモリ等のプログラム記憶媒体に記憶されたものを用いて既存の装置にインストールしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、検出限界を下回る放射線の計数値が紐づけられている区画については他の区画とまとめて前記領域を設定し、前記領域として見た場合に検出限界以上の計数値が存在するようにしているので、検出時間が短く放射線の計数値が少なくても統計的な有意性を担保した測定結果の出力が可能となる。したがって、低線量場における除染効果等を評価や確認を短時間の測定でありながら信頼性も高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態に係る放射線分析装置100について各図を参照しながら説明する。
【0025】
本実施形態の放射線分析装置100は、例えば低線量場においてある測定点Pから見た放射線の強度分布を分析したり、除染作業前後における放射線の強度分布の変化を確認したりするために用いられるものである。
【0026】
図1に示されるように前記放射線分析装置100は、概略直方体状の筐体の前面に放射線検出器1及び光学撮像器2が収容され、車輪により移動可能に構成してある。また、筐体の内部には前記放射線検出器1及び前記光学撮像器2からの出力に基づいて測定視野V内の放射線の強度分布を示す画像を作成する演算機構3が収容してある。
【0027】
前記放射線検出器1は、電子飛跡追跡型コンプトンカメラであり、飛来した放射線の測定点Pに対する飛来方向と、放射線の飛来数をその飛来方向ごとに計算できるものである。
【0028】
より具体的には
図1及び
図2に示すように前記放射線検出器1は、ガスドーム10と、前記ガスドーム内に設けられたドリフトケージ11と、前記ドリフトケージ11に隣接して設けられ、反跳電子で生成された電子雲を検出するμPIC検出器12と、散乱ガンマ線を検出するアレイ状シンチレータ13と、前記μPIC検出器12及び前記アレイ状シンチレータ13からの出力に基づき飛来した放射線の飛来方向を算出する算出機構(図示しない)と、を備えたものである。
【0029】
前記ガスドーム10は、反跳電子を発生させやすくするためのガスを内部に封入するためのものである。例えば内部にアルゴンとエタンの混合気体が封入してある。前記アルゴンの電子に対して入射ガンマ線が衝突することで、反跳電子と散乱ガンマ線が発生する。
【0030】
前記ドリフトケージ11は、概略直方体形状に形成されたものであり、電場を形成することで、反跳電子で生成された電子雲を一定の速度でマイクロPIC検出器12誘導するものである。すなわち、前記ドリフトケージ11の放射線の入射面側から対面側に対して電場と増幅場が形成してある。
【0031】
前記μPIC検出器12は、例えば128×128chの二次元検出器であり、前記ドリフトケージ11内で形成されたドリフトしてきた反跳電子で生成された電子雲についてエネルギーと積算電荷量を検出するものである。
図2に示すように前記μPIC検出器12に対して散乱点の位置は投影されることになるので、当該μPIC検出器12で検出された情報から反跳電子の飛跡を再構成することができる。
【0032】
前記アレイ状シンチレータ13は、24×24アレイとして並べられた複数のGSOシンチレータから構成されるものである。散乱ガンマ線がGSOシンチレータに入射するとGSOに吸収されて蛍光が発生し、その発生した蛍光をフォトディテクタで検出される。このアレイ状シンチレータ13により、どのGSOシンチレータから出力があったかを特定することで散乱ガンマ線の吸収点に関する情報を得られる。また、GSOシンチレータの発光量に基づいて散乱ガンマ線のエネルギーを得ることができる。
【0033】
前記算出機構は、前記アレイ状シンチレータ13からの出力があったことをトリガとして、入射ガンマ線の飛来方向にについてコンプトン散乱式に基づいて再構成する。まず前記算出機構は、前記μPIC検出器12の出力に基づいて反跳電子の飛跡とそのエネルギーを再構成する。次に前記算出機構は、前記アレイ状シンチレータ13の吸収点に関する情報と前記反跳電子の飛跡に関する情報に基づいて散乱ガンマ線の飛跡を再構成する。最後にこれらの情報に基づいて飛来した放射線である入射ガンマ線の飛来方向を再構成する。
【0034】
前記光学撮像器2は、例えば等立体角射影方式のものであり、前記放射線検出器1の測定視野Vを少なくとも含むように可視光画像を撮像するものである。なお、前記光学撮像器2の画像投影方式としては中心射影方式、頭角射影方式、等立体角射影方式、正距方位射影方式等を用いても構わない。また、前記可視光画像を構成する各ピクセルには可視光の飛来方向に関する情報が紐づけられている。
【0035】
前記演算機構3は、CPU、メモリ、AC/DCコンバータ、各種入出力手段、表示手段等を備えたいわゆるコンピュータである。前記演算機構3は、前記メモリに格納されている放射線分析装置100用プログラムが実行され、各種機器と協業することにより少なくとも、
図3の機能ブロック図に示すメッシュ記憶部4、初期分布データ作成部5、領域設定部6、補正後分布データ作成部7、画像合成部8としての機能を発揮する。この演算機構3により、前記放射線検出で測定された放射線の計数値に基づき、放射線検出器1の測定視野V内の放射線の強度分布を作成がされ、画像データとして可視化される。
【0037】
前記メッシュ記憶部4は、前記放射線検出器1の測定視野Vについて当該放射線検出器1が区別して検出できる飛来方向ごとにそれぞれ対応させて区画Cが区成されたメッシュを記憶するものである。
図4に示すように前記放射線検出器1の測定視野Vは部分球面として表されるものであり、各区画Cは測定視野Vの部分球面の一部をなすものである。本実施形態では、前記放射線検出器1の測定視野Vの大きさを示す視野角は100°であり、各区画Cの大きさであり、空間分解能である最小視野角は6°である。なお、
図4では分かりやすさのため、1区画当たりの大きさを大きくして表示しており、実際の個数とは対応していない。
【0038】
前記初期分布データ作成部5は、前記放射線検出器1の出力と前記メッシュに基づき、
図5に示すような前記メッシュの各区画Cに対して対応する飛来方向ごとの放射線の計数値がそれぞれ紐づけられた初期分布データを作成するものである。なお、
図5では測定視野Vの一部を抜き出して、代表させて記載してある。この初期分布データ作成部5では、測定時間中に前記放射線検出器1により各飛来方向から飛来した放射線の数を積算した計数値を対応する各区画Cに対して紐づけている。また、メッシュの各区画Cは識別子(i,j)を付与してあり、例えばi行j列目の区画Cがどの飛来方向を示すかについても関連付けてある。また、前記初期分布データ作成部5は所定更新周期毎に初期分布データを更新するように構成してある。より具体的には、前記初期分布データ作成部5は、更新周期ごとに各区画Cに対して測定開始時から更新時までの放射線の計数値の積算値が新たに紐づけるようにしてある。
【0039】
なお、初期分布データをそのまま測定結果として用いた場合、各区間に紐づけられている放射線の計数値は検出限界を下回っているものがある。ここで検出限界は設定される信頼区間の広さに応じて適宜設定される。例えば放射線の計数値はポアソン分布に従うので、計数値nは標準偏差σ=√nの不確かさを有している。本実施形態は信頼区間を3σに設定し、計数値nの信頼度を99.7%となるようにしてあるので、計数値nは3√nよりも大きい場合が計出限界を上回ることになる。すなわち、n>9であれば計数値は計数誤差である3√nを上回り、放射線の検出があったことを保証できるので、本実施形態では検出限界を10に設定してある。以下の説明では例えば検出限界以上となる計数値を10とした場合に基づいて説明する。この検出限界については、測定環境や測定時間等の様々な条件に基づき適宜ユーザが設定することができる。例えば、測定の目的に応じて信頼区間を2σやσで定義してもよく、この信頼区間の広さに応じて検出限界は5や2としてもよい。
【0040】
前記領域設定部6及び前記補正後分布データ作成部7は、測定視野V全体において検出限界を下回っている部分が存在しないようにした補正後分布データを作成するものである。より具体的には、前記領域設定部6は均一なメッシュである前記メッシュの区割りを実質的に変更して不均一なメッシュを形成するものである。前記補正後分布データ作成部7は前記領域設定部6により新たに設定された不均一なメッシュと前記初期分布データに基づいて測定視野Vのどの部分においてもほぼ検出限界以上を満たすようした補正後分布データを作成する。
【0041】
前記領域設定部6は、抽出部61と、仮領域設定部62と、判定部63と、除外区画指定部65と、から構成してある。
【0042】
前記抽出部61は、前記初期分布データに基づいて紐づけられている計数値が大きい区画Cから順番に抽出するものである。そして、検出限界以上の計数値が紐づけられている区画Cを全て抽出した後、検出限界を下回る計数値が紐づけられた区画Cについて大きいものから順番に抽出するように構成してある。
【0043】
前記仮領域設定部62は、前記抽出部61が区画Cを抽出するごとに前記抽出部61が抽出した区画Cに対して、隣接する区画Cを追加し仮領域を設定する。本実施形態では前記抽出部61が抽出した区画Cに紐づけられている計数値が検出限界よりも大きい場合には
図5(a)に示すように前記仮領域設定部62は抽出された区画Cに対して仮領域は設定しない。したがって、初期分布データにおいて計数値が検出限界である10以上の計数値が紐づけられている区画Cは1つの区画Cとしてそのまま補正後分布データに用いられる。一方、抽出されている区画Cに紐づけられている計数値が検出限界である10を下回る場合には
図5(b)に示すように前記仮領域設定部62は、抽出された区画Cと、抽出された区画Cに隣接し周囲を囲む8つの区画Cをまとめて仮領域として設定する。なお、本実施形態では隣接するとは区画C同士の辺が接している場合だけでなく、角で接触している場合も含むこととする。
【0044】
前記判定部63は、前記初期分布データにおいて前記仮領域に含まれる各区画Cに紐づけられている計数値の和が検出限界以上かどうかを判定する。この判定結果に応じて前記仮領域設定部62と前記領域決定部64の動作順序及び動作内容が変更される。より具体的には前記仮領域設定部62が現在設定している仮領域に含まれる各区画Cに紐づけられている計数値の和が検出限界を下回ると判定された場合には、前記仮領域設定部62はさらに現在設定している仮領域に対して隣接する区画Cを追加して当該仮領域を拡張するように構成してある。本実施形態では、
図5(c)に示されるように最初に追加され8区画の外側にある16区画までが仮領域として設定されるようにしてある。
【0045】
前記領域決定部64は、前記判定部63が計数値の和が検出限界以上と判定した場合に、前記仮領域を領域として決定し、確定するものである。例えば、
図5(a)のように1つの区画Cで検出限界以上の計数値が有る場合には、この1つの区画C自体を1つの領域として設定する。一方、前記仮領域設定部62が仮領域を設定している場合には、仮領域全体を1つの領域として設定する。
【0046】
前記除外区画指定部65は、前記仮領域設定部62が前記仮領域に含むことができない除外区画を設定するものである。より具体的には、前記初期分データにおいて紐づけられている計数値が検出限界以上の区画Cと、前記領域決定部64がすでに決定した前記領域に含まれる各区画Cについて除外区画に指定するよう構成してある。したがって、複数回の領域の設定が行われると
図5(d)に示されるように既に領域に設定されている区画Cは除いた状態で仮領域が設定されるので、正方形以外の領域も場合によっては形成されることになる。また、前記抽出部61は前記除外指定区画Cについては抽出を行わないようにも構成してある。
【0047】
このように前記領域設定部6は前記初期分布データに基づいて、検出限界を下回る計数値が紐づけられた区画Cを含む複数の区画Cからなり、各区画Cに紐づけられている計数値の和が予め定められた検出限界以上となる領域を設定する。最終的には様々な形状からなる複数の領域で形成された測定視野Vに対して不均一なメッシュが仕切り直されることになる。
【0048】
前記補正後分布データ作成部7は、前記初期分布データにおいて前記領域に含まれる各区画Cに紐づけられている計数値に基づいて、前記領域に含まれる各区画Cに紐づけられている計数値を補正し、補正後分布データを作成するものである。なお、前記補正後分布データ作成部7は、前記初期分布データ作成部5において初期分布データの更新が行われる度に新たな初期分布データに対応する補正後分布データを作成するようにしてある。
【0049】
すなわち、前記補正後分布データ作成部7は、前記初期分布データにおいて前記領域に含まれる各区画Cに紐づけられている計数値の平均値を算出する平均値算出部71と、前記初期分布データにおいて前記領域に含まれる各区画Cに紐づけられている計数値を前記平均値算出部71が算出した平均値に置き換えて前記補正後分布データへ変換する変換部72とから構成してある。
【0050】
前記画像合成部8は、前記補正後分布データに基づいて、前記光学画像に対して放射線の飛来方向ごとに放射線量に応じた色を重畳するものであり、最終的に
図6に示されるような画面を表示するものである。本実施形態では
図6に示されるような等立体角射影方式の表示形式であるが、飛来方向等の情報を保ちながらメルカトル図法等の様々な方式で表示されるようにしてもよい。
【0051】
このように構成された放射線分析装置100の動作について、
図7に記載のフローチャートと
図7のフローチャートにしたがって全ての区画Cに対して領域が設定され、最終的に補正後分布データが形成されるまでの経過を示す
図8の具体例に基づきながら説明する。
【0052】
まず前記初期分布データ作成部5が、前記放射線検出器1が所定の測定時間の間に検出した各飛来方向からの放射線の検出数を積算し、飛来方向に対応する各区画Cに計数値を紐づける。このようにして作成された
図8(a)に示すような初期分布データは初期分布データ作成部5において保持される。
【0053】
次に前記抽出部61は、初期分布データにおいて検出限界以上の計数値が紐づけられている区画Cを抽出する(ステップS1)。そして前記領域設定部6は抽出された検出限界以上の計数値が紐づけられた区画Cについては1区画Cを1つの領域として設定する(ステップS2)。さらに前記除外区画指定部65は、領域に設定された区画Cを除外区画に指定して前記抽出部61により再度指定されないようにする(ステップS3)。このステップS1〜S3までの動作は初期分布データにおいて検出限界以上の計数値が紐づけられている区画Cが無くなるまで繰り返される(ステップS4)。この結果、
図8(a)の状態から、
図8(b)に示すように3つの区画Cがそれぞれ別々の領域として設定される。また、
図8(c)に示すように領域に設定された3つの区画Cは除外区画に設定される。
【0054】
ステップS4までの動作が完了すると、
図8(c)のように残っている検出限界を下回る計数値が紐づけられた区画Cに対して複数の区画Cからなる領域を設定する作業が開始される。
【0055】
より具体的には前記抽出部61が残っている区画Cにおいて紐づけられている計数値の最も大きいものを1つ抽出する(ステップS5)。次に前記仮領域設定部62は、抽出された区画Cに隣接する8つの区画Cのうち、除外区画に指定されていない区画Cを全て抽出された区画Cとまとめて仮領域に設定する(ステップS6)。次に前記判定部63により現在の仮領域に含まれている各区画Cに紐づけられている計数値の和が検出限界以上かどうかを判定する(ステップS7)。計数値の和が検出限界以上の場合には前記領域決定部64が現在の仮領域を領域として確定させる(ステップS8)。また、前記除外区画指定部65は、確定された領域に含まれる各区画Cについては除外区画に指定する(ステップS9)。そして、ステップS7において計数値の和が検出限界を下回ると判定された場合には、前記仮領域設定部62は現在の仮領域の周囲にある区画Cをさらに追加して仮領域を拡張する(ステップS10)。その後、ステップ7により計数値の和が検出限界以上となるまでこの仮領域の拡張は繰り返されることになる。また、ステップS9が終了した時点で検出限界を下回る計数値が紐づけられた区画Cはまだ残っているかどうかの判定が行われ(ステップS11)、すでに存在しない場合には前記領域設定部6の動作は終了する。したがって、全ての区画Cに領域が設定されるまでステップS5〜S10は繰り返される。ところで、領域の設定の最終段階においては、ほぼ全ての区画Cが除外区画に指定されているためステップS10において仮領域を拡張できず、仮領域に含まれる区画Cの計数値の合計が検出限界を超えるようにできない場合が発生し得る。このような場合には、前記仮領域設定部62は直前に除外区画に指定された領域に現在設定されている仮領域を併合させて計数値が検出限界を超えるように処理する。
【0056】
なお、仮領域の拡張が行われず、すぐに領域が設定される場合の具体例としては、
図8(c)〜
図8(e)が挙げられる。
図5(b)を用いて示したように前記仮領域設定部62は除外区画が存在しない場合は正方形状に仮領域を設定するが、
図8(c)〜
図8(e)に示すように除外区画や測定視野Vの外縁に区画Cがある場合には対応する部分の区画Cは仮領域に設定されない。したがって、9個以下の連接した区画Cが1つの領域として設定される。また、仮領域の拡張がされた場合の具体例としては、
図8(f)、
図8(g)が挙げられる。また、最後に設定される仮領域については仮領域内の全ての区画Cに紐づけられている計数値を合計しても検出限界を超えない場合が存在するが、この場合は例えば領域に設定されず残っている区画Cをその直前に設定された領域に含めるようにしてある。最終的に
図8(h)に示すように領域単位で見た場合には、全ての領域において計数値が検出限界以上となるように仕切り直しが行われた不均一なメッシュが完成することになる。
【0057】
その後、前記平均値算出部71は、各領域についてその領域に含まれる計数値について1区画C当たりの平均値を算出し、前記変換部72は各領域に含まれる区画Cに対して算出された平均値へと置き換えて補正し、
図8(i)に示すような最終的な補正後分布データを作成する。
【0058】
最後に前記画像合成部8は補正後分布データに基づいて計数値から線量率へと変換し、
図8(j)に示すようにその高低に応じた色を各区画Cに設定する。そして、このデータを光学画像上に重畳して表示することで、
図6に示すように視野内のどの部分において線量率が高いのかを視覚的に分かりやすく表示する。なお、
図7のフローチャートにおけるステップS1〜S11については、初期分布データの更新が行われる度に繰り返され、随時画像合成部において新たな合成画像が作成されて測定結果としてディスプレイに表示されることになる。
【0059】
このように本実施形態の放射線分析装置100であれば、初期分布データにおいて各区画Cに紐づけられている放射線の計数値が検出限界を下回っている場合でも、前記領域設定部6によって測定視野V内に設定されたほとんどの領域において検出限界以上の計数値を紐づけることができる。したがって、放射線の検出時間が短く、検出された放射線のサンプル数が従来と比較して少なくても計測値設定された領域単位で見た場合に放射線の計数値に統計的な有意性を持たせることができる。このため、低線量場における測定であっても短い検出時間で信頼性をある程度担保がされた放射線の強度分布を得ることができる。言い換えると、本実施形態の放射線分析装置100はある区画Cの計数値nが検出限界である10を下回る場合には、周囲の区画Cをまとめて1つのものとして扱い、空間分解能をその部分については低下させる代わりに統計的な信頼性を確保することができる。このようなものであるので、放射線の飛来方向を厳密に測定するのではなく、大まかな分布を短時間で信頼性を保ちながら可視化したいという要望を十分に満たすことができる。
【0060】
また、初期分布データにおいて検出限界以上の計数値が紐づけられている区画Cについては1つの区画Cのまま領域に設定し、他の区画Cとまとめて平均値として丸められないようにできる。言い換えると、初期分布データにおいて計数値の多かった放射線の飛来方向の情報は補正後分布データにおいても精度よく保存されるようにしてあるので、低線量場であっても放射線源の位置等に関する情報が最終的な合成画像中に表れやすい。
【0061】
さらに領域に設定された区画Cについては除外区画に指定されるので、計数値のダブルカウントを防ぐことができ、放射線の強度分布も実際に近い状態を反映している可能性を高められる。
【0063】
放射線分析装置は、放射線としてガンマ線の飛来方向を検出するものに限られず、例えばα線、β線、X線、中性子線、ミューオン等の放射線を検出し、その分布等を分析するものであっても構わない。
【0064】
放射線検出器は、電子飛跡検出型コンプトンカメラに限られず、放射線の飛来方向を検出可能なものであればよい。
【0065】
領域設定部における領域の設定アルゴリズムについては、前記実施形態に示したものに限られない。例えば前記実施形態のように抽出された区画の周囲全ての区画をまとめて仮領域や領域に設定するのではなく、抽出された区画と辺を共通するものだけを領域に含めるようにしてもよい。また、除外区画を指定せずに放射線の計数値のダブルカウントを許容するようにしてもよい。加えて、区画を抽出する順番についても前記実施形態に示したものに限られない。例えばランダムに区画を抽出して適宜領域を設定するようにしてもよいし、端の区画から順番に抽出して領域を設定するようにしてもよい。
【0066】
領域に含まれる各区画に紐づける計数値の補正方法としては、領域内の計数値の単純平均に限られるものではない。例えば領域内において最も計数値の大きい区画からの距離に応じて重み付けを行ってもよい。また、各区画の立体角の大きさは中央部と外縁部において異なっている場合には、領域内に含まれる各区画の立体角の大きさに応じて重み付けを行って領域としての計数値を算出するようにしても構わない。
【0067】
検出限界の定義については、ポアソン分布に基づくものに限られるものではなく、例えばガウス分布等に基づいて設定されるものであってもよい。また、その他の基準に基づいて設定されるものであってもよい。
【0068】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。