(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
メチルメタクリレート単位80〜99.99質量%、架橋性単量体単位0.01〜2質量%および共重合可能な他の単量体単位0〜19.99質量%を含んでなる重合体からなる層(a)と、アルキルアクリレート単位70〜99.8質量%、架橋性単量体単位0.2〜10質量%および共重合可能な他の単量体単位0〜29.8質量%を含んでなる重合体からなる層(b)と、メチルメタクリレート単位80〜100質量%および共重合可能な他の単量体単位0〜20質量%を含んでなる重合体からなる層(c)とを少なくとも含み、層(a)、層(b)および層(c)の合計100質量部に対して、層(a)が5〜15質量部、層(b)が45〜55質量部および層(c)が35〜50質量部であり、粒子中心から粒子外表面に向かって層(a)、層(b)、層(c)の順に配されており且つ平均粒子径が95〜130nmである多層粒子(B)、
およびメタクリル樹脂(A)
を含んで成り、厚さが3mm以上15mm以下である樹脂シート。
メタクリル樹脂(A)が、メチルメタクリレート80〜100質量%を含み、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定した重量平均分子量が90,000g/mol以上である請求項1に記載の樹脂シート。
メチルメタクリレート単位80〜100質量%を有し且つゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定した重量平均分子量が90,000g/mol未満である重合体(C)を、多層粒子(B)に対する質量比(C/B)55/45〜20/80で含んでなる請求項1または2に記載の樹脂シート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において「シート」とは、可撓性を有しない板状物を意味する。
【0010】
本発明の樹脂シートは、多層粒子(B)およびメタクリル樹脂(A)を含んで成る。
【0011】
多層粒子(B)は、層(a)、層(b)および層(c)を少なくとも含むコアシェル構造の粒子である。
【0012】
多層粒子(B)の層(a)は、メチルメタクリレートに由来する単位(メチルメタクリレート単位と表記することがある。)および架橋性単量体に由来する単位(架橋性単量体単位と表記することがある。)を必須で含み、メチルメタクリレートおよび架橋性単量体と共重合可能な他の単量体に由来する単位(単量体(a)単位と表記することがある。)を必要に応じて含んでなる重合体からなる。
【0013】
層(a)を構成する重合体に含まれるメチルメタクリレート単位の量は、層(a)を構成する重合体の質量に対して、好ましくは80〜99.99質量%、より好ましくは85〜99質量%、さらに好ましくは90〜98質量%である。
【0014】
層(a)を構成する重合体に含まれる架橋性単量体としては、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリメタクリレート、エトキシ化グリセリントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート;アリルメタクリレート、アリルアクリレート、メタリルメタクリレート、メタリルアクリレート、桂皮酸アリル、桂皮酸メタリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリルなどの架橋性カルボン酸(メタ)アリルエステル;ジビニルベンゼンなどの多官能エチレン性不飽和単量体を挙げることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
層(a)を構成する重合体に含まれる架橋性単量体単位の量は、層(a)を構成する重合体の質量に対して、好ましくは0.01〜2質量%、より好ましくは0.03〜1.5質量%、さらに好ましくは0.05〜1.0質量%である。
【0015】
メチルメタクリレートおよび架橋性単量体と共重合可能な他の単量体(単量体(a)と表記することがある。)は、特に制限されず、例えば、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレートなどのメチルメタクリレートを除くメタクリル酸アルキルエステル;フェニルメタクリレートなどのメタクリル酸アリールエステル;ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸アラルキルエステル;;フェニルアクリレートなどのアクリル酸アリールエステル;ベンジルアクリレートなどのアクリル酸アラルキルエステル;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ミリスチルアクリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレートなどのアルキルアクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド;アクリル酸、メタクリル酸;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン単量体;N−プロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−o−クロロフェニルマレイミドなどのマレイミド単量体などを挙げることができる。単量体(a)は非架橋性単量体であることが好ましい。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。単量体(a)は、単量体(a)とメチルメタクリレートとだけで共重合させたときに得られる非架橋の共重合体のガラス転移温度が、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上となるように種類および使用割合を設定することが耐熱性向上などの観点から好ましい。なお、単量体(a)とメチルメタクリレートとだけで共重合させたときに得られる非架橋の共重合体のガラス転移温度は、実測してもよいし、ポリマーハンドブックに記載のデータから推算してもよい。
層(a)を構成する重合体に含まれる単量体(a)単位の量は、層(a)を構成する重合体の質量に対して、好ましくは0〜19.99質量%、より好ましくは0〜15質量%、さらに好ましくは0〜10質量%である。
【0016】
層(a)の質量は、層(a)、層(b)および層(c)の合計100質量部に対して、5質量部以上15質量部以下、好ましくは7質量部以上13質量部以下である。
【0017】
多層粒子(B)の層(b)は、アルキルアクリレートに由来する単位(アルキルアクリレート単位と表記することがある。)および架橋性単量体に由来する単位(架橋性単量体単位と表記することがある。)を必須で含み、アルキルアクリレートおよび架橋性単量体と共重合可能な他の単量体に由来する単位(単量体(b)単位と表記することがある。)を必要に応じて含んでなる重合体からなる。
【0018】
アルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ミリスチルアクリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレートなどを挙げることができる。層(b)を構成する重合体に用いられるアルキルアクリレートは、アルキル基の炭素数が2〜8であるものが好ましい。
層(b)を構成する重合体に含まれるアルキルアクリレート単位の量は、層(b)を構成する重合体の質量に対して、好ましくは70〜99.8質量%、より好ましくは75〜90質量%、さらに好ましくは78〜86質量%である。
【0019】
層(b)を構成する重合体に含まれる架橋性単量体としては、層(a)を構成する重合体に含まれる架橋性単量体として例示したものと同じものを挙げることができる。
層(b)を構成する重合体に含まれる架橋性単量体単位の量は、層(b)を構成する重合体の質量に対して、好ましくは0.2〜10質量%、より好ましくは0.5〜8質量%、さらに好ましくは1〜6質量%である。
【0020】
アルキルアクリレートおよび架橋性単量体と共重合可能な他の単量体(単量体(b)と表記することがある。)は、特に制限されず、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレートなどのアルキルメタクリレート;フェニルメタクリレートなどのメタクリル酸アリールエステル;ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸アラルキルエステル;フェニルアクリレートなどのアクリル酸アリールエステル;ベンジルアクリレートなどのアクリル酸アラルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド;アクリル酸、メタクリル酸;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン単量体;N−プロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−o−クロロフェニルマレイミドなどのマレイミド単量体などを挙げることができる。単量体(b)は非架橋性単量体であることが好ましい。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。単量体(b)は、単量体(b)とアルキルアクリレートとだけで共重合させたときに、得られる非架橋の共重合体のガラス転移温度が、好ましくは0℃以下、より好ましくは−5℃以下となるように種類および使用割合を設定することが耐熱性向上の観点から好ましい。単量体(b)とアルキルアクリレートとだけで共重合させたときに得られる非架橋の共重合体のガラス転移温度は、実測してもよいし、ポリマーハンドブックに記載のデータから推算してもよい。
層(b)を構成する重合体に含まれる単量体(b)単位の量は、層(b)を構成する重合体の質量に対して、好ましくは0〜29.8質量%、より好ましくは0〜25質量%、さらに好ましくは0〜22質量%である。
【0021】
層(b)の質量は、層(a)、層(b)および層(c)の合計100質量部に対して、40質量部以上60質量部以下、好ましくは45質量部以上55質量部以下である。
【0022】
多層粒子(B)の層(c)は、メチルメタクリレートに由来する単位(メチルメタクリレート単位と表記することがある。)を必須で含み、メチルメタクリレートと共重合可能な単量体に由来する単位(単量体(c)単位と表記することがある。)を必要に応じて含んでなる重合体からなる。
【0023】
層(c)を構成する重合体に含まれるメチルメタクリレート単位の量は、層(c)を構成する重合体の質量に対して、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは85〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%である。
【0024】
メチルメタクリレートと共重合可能な単量体(単量体(c)と表記することがある。)としては、層(a)を構成する重合体に含まれることがある単量体(a)として例示したものと同じものを挙げることができる。
層(c)を構成する重合体に含まれる単量体(c)単位の量は、層(c)を構成する重合体の質量に対して、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜15質量%、さらに好ましくは0〜10質量%である。
【0025】
層(c)の質量は、層(a)、層(b)および層(c)の合計100質量部に対して、35質量部以上50質量部以下、好ましくは37質量部超45質量部以下である。
【0026】
層(a)、層(b)および層(c)は、粒子中心から粒子外表面に向かって層(a)、層(b)、層(c)の順に配されている。なお、層(a)、層(b)および層(c)が、この順に配されていれば、層(a)の内側、層(a)と層(b)との間、および層(b)と層(c)との間の少なくとも一つに、別の層(d)が少なくとも1つ配されていてもよい。層(d)は、本発明の主旨に反しない範囲において、層(a)を構成する重合体と同じ重合体、層(b)を構成する重合体と同じ重合体、層(c)を構成する重合体と同じ重合体、またはそれらとは別の重合体のいずれかであることができる。例えば、層(a)の内側に、層(b)を構成する重合体と同じ重合体からなる層(d)を配して、層(d)−層(a)−層(b)−層(c)の順に4層配してもよいし、層(a)と層(b)との間に、層(c)を構成する重合体と同じ重合体からなる層(d)を配して、層(a)−層(d)−層(b)−層(c)の順に4層配してもよい。本発明に用いられる多層粒子(B)は、層(a)−層(b)−層(c)の順に3層配される構造であることが好ましい。
【0027】
本発明に用いる多層粒子(B)は、体積平均粒子径が、90〜150nm、好ましくは93〜140nm、より好ましくは95〜130nmである。体積平均粒子径D
vは、光散乱光法によって測定される体積基準粒子径分布に基づいて算出される算術平均値(D
v=Σ(vd)/Σ(v))である。多層粒子の粒子径がこの範囲にあると、得られる樹脂シートの温度変化によるヘイズ増加、すなわち白化を抑制できる。なお、多層粒子(B)は、樹脂フィルムの中で粒子の形態を維持していることが好ましい。多層粒子(B)の平均粒子径は、後述する乳化重合法により製造する場合、好ましくは乳化剤の量により調節でき、これに重合開始剤の量、単量体(混合物)の供給速度等による調節を加えてもよい。
【0028】
本発明に用いられる多層粒子(B)の製造方法に特に制限はないが、乳化重合法で得られるものが好ましい。
例えば、層(a)を構成する重合体を得るための単量体を乳化重合して層(a)からなるシード粒子を得、このシード粒子の存在下に層(b)を構成する重合体を得るための単量体を乳化重合してシード粒子の表面に層(b)を被覆させて2層コアシェル粒子を得、この2層コアシェル粒子の存在下に、層(c)を構成する重合体を得るための単量体を乳化重合して2層コアシェル粒子の表面に層(c)を被覆させて、層(a)−層(b)−層(c)の順に3層配された構造の多層粒子を得ることができる。
【0029】
乳化重合法に用いられる乳化剤としては、例えば、アニオン乳化剤であるジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジラウリルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩;ノニオン乳化剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなど;ノニオン・アニオン乳化剤であるポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウムなどのアルキルエーテルカルボン酸塩;を挙げることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、ノニオン乳化剤およびノニオン・アニオン乳化剤の例示化合物におけるエチレンオキシド単位の平均繰返し単位数は、乳化剤の発泡性が極端に大きくならないようにするために、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。多層粒子(B)の平均粒子径を本発明で規定する範囲内とするために、例えば、乳化剤としてノニオン・アニオン乳化剤であるポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウムを用いる場合、水100質量部あたり0.05〜0.09質量部であるのが好ましい。また乳化剤としてアニオン乳化剤であるドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムを用いる場合、水100質量部あたり0.25〜0.45質量部であるのが好ましい。乳化剤は、重合系に水と共に加えてもよく、単量体(混合物)と共に加えてもよい。
【0030】
乳化重合法に用いられる重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩開始剤;パースルホキシレート/有機過酸化物、過硫酸塩/亜硫酸塩などのレドックス開始剤を挙げることができる。
【0031】
乳化重合法に用いられる連鎖移動剤としては、例えば、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等のメルカプタン類;ターピノーレン、ジペンテン、t−テルピネン等のテルペン類;クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素;α−メチルスチレンダイマーなどを挙げることができる。これらは単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、n−オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタンが好ましい。連鎖移動剤の使用量は、各層において重合される単量体100質量部に対して、好ましくは0.05〜1.5質量部である。
【0032】
乳化重合法によって多層粒子のラテックスが得られる。このラテックスから必要に応じて多層粒子(B)を単離することができる。多層粒子(B)の単離は、塩析凝固法、凍結凝固法、噴霧乾燥法などの公知の方法によって行うことができる。これらの中でも、多層粒子(B)に含まれる不純物を水洗により容易に除去できる点から、塩析凝固法および凍結凝固法が好ましい。なお、凝固工程前にラテックスに混入した異物を除去するため、目開き50μm以下の金網などでラテックスを濾過することが好ましい。
【0033】
樹脂シートを製造する際に、多層粒子(B)の凝集を抑え、メタクリル樹脂(A)への均一な分散を促進するなどのために分散用粒子を、多層粒子(B)とともに、樹脂(A)に配合することが好ましい。分散用粒子としては、例えば、特許文献1や特許文献2などに記載のものを挙げることができる。
【0034】
分散用粒子は、その体積平均粒子径が、好ましくは40〜120nm、より好ましくは50〜100nmである。分散用粒子の体積平均粒子径は、多層粒子の体積平均粒子径よりも小さいことが好ましい。
【0035】
本発明に用いられる分散用粒子は、その製造方法に特に制限はないが、乳化重合法で得られるものが好ましい。
分散用粒子を製造するための乳化重合法に用いられる乳化剤、重合開始剤、および連鎖移動剤としては、多層粒子を製造するための乳化重合に用いられるものとして例示したものと同じものを挙げることができる。
【0036】
乳化重合法によって分散用粒子のラテックスが得られる。このラテックスから必要に応じて分散用粒子を単離することができる。分散用粒子の単離の方法としては、多層粒子の単離の方法として例示したものと同じものを挙げることができる。
【0037】
多層粒子(B)と分散用粒子は、メタクリル樹脂(A)に練り込む前に、混合粉末に成しておくことが好ましい。多層粒子(B)と分散用粒子との混合粉末は、例えば、単離された多層粒子と単離された分散用粒子とを乾式混合するによって、または多層粒子のラテックスと分散用粒子のラテックスとを混ぜ合わせ、次いで該混合ラテックスから塩析凝固法、凍結凝固法、噴霧乾燥法などの公知の方法で取り出すことによって得ることができる。混合粉末は、分散用粒子が多層粒子(B)の表面に塗された状態になっていることが好ましい。そのような状態の混合粉末は、多層粒子のラテックスと分散用粒子のラテックスとを混ぜ合わせ、次いで該混合ラテックスから公知の方法で取り出すことによって、効率的に得ることができる。
【0038】
分散用粒子の量は、前記混合粉末の質量に対して、好ましくは20〜55質量%であり、より好ましくは25〜50質量%である。多層粒子(B)の量は、前記混合粉末の質量に対して、好ましくは45〜80質量%であり、より好ましくは50〜75質量%である。多層粒子(B)と分散用粒子との質量比は45:55〜80:20が好ましい。
【0039】
多層粒子(B)と分散用粒子との混合粉末は、メタクリル樹脂(A)との溶融混練において均一に分散させ易いという観点から、多層粒子(B)および分散用粒子が複数集まって軟凝集体になっていることが好ましい。この軟凝集体の体積平均粒子径は、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下である。この軟凝集体は、多層粒子(B)どうしが直接に接する状態になっていてもよいし、分散用粒子が多層粒子(B)の間に介在する状態になっていてもよい。
多層粒子(B)と分散用粒子との混合粉末は、嵩比重が、好ましくは0.4〜0.6g/cm
3である。嵩比重は、メスシリンダーを用いたタッピングなしの値である。混合粉末の嵩比重がこの範囲にあると、メタクリル樹脂(A)への多層粒子の分散性が良くなる。
【0040】
本発明に用いられる分散用粒子は、重合体(C)から成るものであることが好ましい。
重合体(C)は、メチルメタクリレートに由来する単位(メチルメタクリレート単位と表記することがある。)を必須で含み、メチルメタクリレートと共重合可能な単量体に由来する単位(単量体(d)単位と表記することがある。)を必要に応じて含んでなるものであり、好ましくは非架橋の重合体である。
分散用粒子を構成する重合体(C)に含まれるメチルメタクリレート単位の量は、重合体(C)の質量に対して、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは85〜100質量%である。
【0041】
メチルメタクリレートと共重合可能な単量体(単量体(d)と表記することがある。)としては、層(a)を構成する重合体に含まれることがある単量体(a)として例示したものと同じものを挙げることができる。
分散用粒子を構成する重合体(C)における単量体(d)単位の量は、重合体(C)の質量に対して、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜18質量%、さらに好ましくは0〜15質量%である。
【0042】
重合体(C)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定した重量平均分子量が、好ましくは90,000g/mol未満、より好ましくは70,000〜89,000g/molである。重量平均分子量は、標準ポリメチルメタクリレート換算の分子量である。重合体の重量平均分子量は、重合開始剤および連鎖移動剤の種類や量などを変えることで調節できる。
重合体(C)から成る分散用粒子は、多層粒子(B)とともにメタクリル樹脂(A)に配合すると、重合体(C)と樹脂(A)とが融合して、樹脂フィルム中において粒子の形態を成さないものであることが好ましい。分散用粒子として配合される重合体(C)の量は、多層粒子(B)に対して質量比(C/B)で、好ましくは55/45〜20/80である。
【0043】
本発明に用いられるメタクリル樹脂(A)は、メチルメタクリレートに由来する単位(メチルメタクリレート単位と表記することがある。)を必須で含み、メチルメタクリレートと共重合可能な単量体に由来する単位(単量体(e)単位と表記することがある。)を必要に応じて含んでなる。
メタクリル樹脂(A)に含まれるメチルメタクリレート単位の量は、メタクリル樹脂(A)の質量に対して、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは85〜100質量%である。
【0044】
メチルメタクリレートと共重合可能な単量体(単量体(e)と表記することがある。)としては、層(a)を構成する重合体に含まれることがある単量体(a)として例示したものと同じものを挙げることができる。
メタクリル樹脂(A)に含まれる単量体(e)単位の量は、メタクリル樹脂(A)の質量に対して、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜18質量%、さらに好ましくは0〜15質量%である。
【0045】
メタクリル樹脂(A)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定した重量平均分子量が90,000g/mol以上、好ましくは90,000〜500,000g/molである。重量平均分子量は、標準ポリメチルメタクリレート換算の分子量である。
【0046】
本発明に用いられるメタクリル樹脂(A)の製造方法は特に制限されない。例えば、ラジカル重合法、アニオン重合法などの公知の重合法によって製造することができる。所望の特性値(例えば、重量平均分子量など)を有するメタクリル樹脂は、重合条件を調節することによって、具体的には、重合温度、重合時間、連鎖移動剤の種類や量、重合開始剤の種類や量などを調節することによって得ることができる。このような重合条件の調節は当業者において慣用された技術である。
【0047】
メタクリル樹脂(A)の製造において、ラジカル重合法を用いる場合、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法を選択することが可能である。かかる重合方法において、生産性および耐熱分解性の観点から、懸濁重合法、塊状重合法で行うことが好ましい。塊状重合法は連続流通式で行うことが好ましい。重合反応は、重合開始剤と、所定の単量体と、必要に応じて連鎖移動剤などとを用いて行われる。
【0048】
本発明の樹脂シート中のメタクリル樹脂(A)の割合は、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。
本発明の樹脂シート中の多層粒子(B)の割合は、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上である。
【0049】
本発明に係る樹脂シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の重合体や、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、耐衝撃性改質剤、蛍光体などの添加剤を含有していてもよい。
【0050】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアロアミド酸、メチレンビスステアロアミド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、パラフィンワックス、ケトンワックス、オクチルアルコール、硬化油などを挙げることができる。
【0051】
これらの添加剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの添加剤は、メタクリル樹脂(A)を製造する際に添加してもよいし、製造されたメタクリル樹脂(A)に添加してもよいし、溶融押出し用樹脂コンパウンドを調製する際に添加してもよい。本発明の樹脂シートに含有される添加剤の合計量は、樹脂シートの外観不良を抑制する観点から、メタクリル樹脂(A)に対して、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下である。
【0052】
本発明の樹脂シートを製造するために、溶融押出し用樹脂コンパウンドを用いることができる。溶融押出し用樹脂コンパウンドは、例えば、メタクリル樹脂(A)と多層粒子(B)とを混練することによって得ることができる。多層粒子(B)は分散用粒子と混ぜ合わせて混合粉末に成した後に、メタクリル樹脂(A)と混練することが好ましい。混練は、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの既知の混合装置または混練装置を使用して行なうことができる。これらのうち、単軸または二軸の押出機が好ましい。混合・混練時の温度は、使用するメタクリル樹脂(A)の溶融温度などに応じて適宜調節することができるが、好ましくは110℃〜300℃である。
溶融押出し用樹脂コンパウンドにおけるメタクリル重合体粉末の質量に対するメタクリル樹脂(A)の質量は、好ましくは10/90〜50/50、より好ましくは20/80〜40/60である。
【0053】
溶融押出し用樹脂コンパウンドは、メタクリル樹脂(A)と多層粒子(B)、または多層粒子(B)と分散用粒子との混合粉末との溶融混練を2以上の段階に分けて行うことによっても得ることができる。例えば、メタクリル樹脂(A)の一部と多層粒子(B)若しくは多層粒子(B)と分散用粒子との混合粉末とを溶融混練して、目的とする割合よりも多い量で多層粒子(B)を含有するマスターバッチを得、次いでこのマスターバッチとメタクリル樹脂(A)の残部とを溶融混練して目的とする割合でメタクリル重合体粉末を含有する溶融押出し用樹脂コンパウンドを得ることができる。マスターバッチを経る方法によると、多層粒子(B)の取り扱い性が向上し、多層粒子(B)をメタクリル樹脂(A)に均一に分散させやすい。
【0054】
溶融押出し用樹脂コンパウンドは、230℃および3.8kg荷重の条件で測定して決定されるメルトフローレートが、好ましくは0.1〜6g/10分、さらに好ましくは0.5〜5g/10分、最も好ましくは1.0〜3g/10分である。
【0055】
上記のような溶融押出し用樹脂コンパウンドは、ペレット、顆粒、粉末などの任意の形態にすることができる。
本発明の樹脂シートは、その製法によって特に限定されないが、例えば溶融押出法をあげることができる。
公知の溶融押出法で樹脂シートが製造されるが、例えば以下のようにして、樹脂シートが製造される。
はじめに、押出成形手段により原料の溶融押出し用樹脂コンパウンドを加熱溶融し、Tダイからシート状に押出す。このときTダイから押出される樹脂の温度は好ましくは160〜270℃、より好ましくは220〜260℃である。
次に、Tダイにより押出された樹脂は、第1の冷却ロールと第2の冷却ロールの間で挟持され、加圧および冷却されて樹脂シートが得られる。この時点では、樹脂シートは十分に冷却されておらず、完全には固化していない。
次に、得られた樹脂シートは第3の冷却ロール、第4の冷却ロール等を経て、搬送されながら徐冷される。ここで樹脂シートは充分に冷却され、充分に固化している。
次に、保護フィルム貼着手段により、樹脂シートの両面に保護フィルムを貼着する。
次に、公知の切断手段により、両面に保護フィルムが貼着された樹脂シートを板状に切断する。
本発明の樹脂シートの厚さは、通常、1mm以上20mm以下、好ましくは2mm以上15mm以下、より好ましくは3mm以上15mm以下である。
【0056】
本発明の樹脂シートは、様々な分野において用いることができる。例えば、屋外で使用される建材(屋根材、ファサード材、防音壁、看板)、自動販売機、電子看板、ゲーム機等の液晶パネル等の表示パネルの前面板やカバー、輸送機器の風防や樹脂ガラスなど、使用時に温度が上昇しやすい用途に適している。
【0057】
本発明の積層体は、本発明の樹脂シートからなる層を有してなる。本発明の積層体は、例えば、本発明の樹脂シートを他の材料からなる物品に圧し付けることによって、溶融押出し用樹脂コンパウンドを他の材料からなる物品に被覆溶融成形することによって、溶融押出し用樹脂コンパウンドと他の樹脂材料とを共押出成形することによって、得ることができる。
他の材料としては、特に制限はなく、木製材料、紙材料、布材料、金属材料、樹脂材料、セラミックス材料などを挙げることができる。他の樹脂材料としては、ポリカーボネート系重合体、塩化ビニル系重合体、フッ化ビニリデン系重合体、メタクリル樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂などを挙げることができる。他の材料の形態は、フィルム、板、棒、球体、直方体などに限られず、種々の形態であることができる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0059】
(粒子径測定)
堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA―950V2を用いて測定した。
【0060】
(ヘイズ)
JIS K7105に準拠し、25℃と50℃のヘイズ値を測定した。
【0061】
(耐衝撃性)
JIS K7111に準拠し、4Jハンマーでノッチなしのフラットワイズでシャルピー衝撃強度を測定した。
【0062】
(ロックウエル硬度)
JIS K7202−2に準拠し、Mスケールで測定した。
【0063】
(重量平均分子量:Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)にて下記の条件でクロマトグラムを測定し、標準ポリメチルメタクリレートの分子量に換算した値を算出した。
GPC装置:東ソー株式会社製、HLC−8320
検出器:示差屈折率検出器
カラム:東ソー株式会社製のTSKgel SuperMultipore HZM−Mの2本とSuperHZ4000を直列に繋いだものを用いた。
溶離剤: テトラヒドロフラン
溶離剤流量: 0.35ml/分
カラム温度: 40℃
【0064】
[多層粒子(B−1)の製造]
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水150質量部、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム0.10質量部および炭酸ナトリウム0.05質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム0.01質量部を投入し、5分間攪拌した。その後、質量比93.9/6.1/0.2のメチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびアリルメタクリレートからなる混合物10質量部を50分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約30分間反応させた。
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.05質量部を投入して5分間攪拌した。その後、質量比82.2/17.8/4.0のn−ブチルアクリレート、スチレンおよびアリルメタクリレートからなる混合物50質量部を90分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約60分間反応させた。
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.04質量部を投入して5分間攪拌した。その後、質量比94.0/6.0/0.3のメチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびn−オクチルメルカプタンからなる混合物40質量部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約60分間反応させた。体積平均粒子径110nmの多層粒子(B−1)を含むラテックスを得た。
【0065】
[多層粒子(B−2)の製造]]
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水150質量部、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム0.03質量部および炭酸ナトリウム0.05質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム0.01質量部を投入し、5分間攪拌した。その後、質量比93.9/6.1/0.2のメチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびアリルメタクリレートからなる混合物10質量部を50分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約30分間反応させた。
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.05質量部を投入して5分間攪拌した。その後、質量比82.2/17.8/4.0のn−ブチルアクリレート、スチレンおよびアリルメタクリレートからなる混合物50質量部を90分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約60分間反応させた。
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.04質量部を投入して5分間攪拌した。その後、質量比94.0/6.0/0.3のメチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびn−オクチルメルカプタンからなる混合物40質量部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約60分間反応させた。体積平均粒子径220nmの多層粒子(B−2)を含むラテックスを得た。
【0066】
[分散用粒子(C−1)の製造]
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水150質量部、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム0.12質量部および炭酸ナトリウム0.1質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム0.01質量部を投入し、5分間攪拌した。その後、質量比94.0/6.0/0.3のメチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびn−オクチルメルカプタンからなる混合物100質量部を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合率98%以上になるまで約30分間反応させた。重量平均分子量(Mw)が80,000g/molの非架橋重合体からなる体積平均粒子径90nmの単層粒子(C−1)を含むラテックスを得た。
【0067】
[メタクリル樹脂(A−1)の製造]
メチルメタクリレート94質量%およびメチルアクリレート6質量%からなる混合物を懸濁重合法で反応させた。懸濁粒子を凝固させて、脱水し、乾燥することによって、GPCによる重量平均分子量(Mw)が160,000g/molのメタクリル樹脂(A−1)を得た。
【0068】
<実施例1>
多層粒子(B−1)60質量部を含むラテックスと分散用粒子(C−1)40質量部を含むラテックスとを混合した。得られた混合ラテックスを−30℃で4時間かけて凍結させた。凍結物を2倍量の90℃の水に凍結ラテックスを投入、溶解させて、スラリーを得た。該スラリーを20分間90℃に維持し、次いで脱水した。得られた固形分を80℃で乾燥させて混合粉末を得た。
上記で得られた混合粉末90質量部とメタクリル樹脂(A−1)10質量部とをスーパーミキサーにて混合し、東芝機械(株)社製の150mmφ単軸押出機を用い、樹脂厚さ5mmである樹脂シートを押出成形した。
得られた樹脂シートの25℃におけるヘイズ、50℃におけるヘイズ、シャルピー衝撃強度、ロックウエル硬度を測定したところ以下の通りであった。
25℃におけるヘイズ:0.3%
50℃におけるヘイズ:0.3%
シャルピー衝撃強度:65kJ/m
2
ロックウエル硬度:50
【0069】
<実施例2>
実施例1において、混合粉末60質量部と、メタクリル樹脂(A−1)40質量部をスーパーミキサーにて混合した以外は実施例1と同様にして厚さ5mmの樹脂シートを得た。
得られた樹脂シートの25℃におけるヘイズ、50℃におけるヘイズ、シャルピー衝撃強度、ロックウエル硬度を表1に示す。
【0070】
<実施例3>
実施例1において、厚さ10mmの樹脂シートを押出成形した以外は実施例1と同様に行った。
得られた樹脂シートの25℃におけるヘイズ、50℃におけるヘイズ、シャルピー衝撃強度、ロックウエル硬度を表1に示す。
【0071】
<実施例4>
実施例2において、厚さ10mmの樹脂シートを押出成形した以外は実施例2と同様に行った。
得られたシートの25℃におけるヘイズ、50℃におけるヘイズ、シャルピー衝撃強度、ロックウエル硬度を表1に示す。
【0072】
<実施例5>
実施例3において、混合粉末42質量部と、メタクリル樹脂(A−1)58質量部をスーパーミキサーにて混合した以外は実施例3と同様にして、厚さ10mmの樹脂シートを得た。
得られたシートの25℃におけるヘイズ、50℃におけるヘイズ、シャルピー衝撃強度、ロックウエル硬度を表1に示す。
【0073】
<比較例1>
多層粒子(B−2)67質量部を含むラテックスと分散用粒子(C−1)33質量部を含むラテックスとを混合した。得られたラテックスを実施例1と同様の方法で処理し、混合粉末を得た。
得られた混合粉末42質量部とメタクリル樹脂(A−1)58質量部をスーパーミキサーにて混合し、東芝機械(株)社製の150mmφ単軸押出機を用い、厚さ5mmである樹脂シートを押出成形した。
得られた樹脂シートの25℃におけるヘイズ、50℃におけるヘイズ、シャルピー衝撃強度、ロックウエル硬度を表1に示す。
【0074】
<比較例2>
比較例1において、厚さ10mmの樹脂シートを押出成形した以外は比較例1と同様に行った。
得られた樹脂シートの25℃におけるヘイズ、50℃におけるヘイズ、シャルピー衝撃強度、ロックウエル硬度を表1に示す。
【0075】
<比較例3>
メタクリル樹脂(A−1)を単独で、東芝機械(株)社製の150mmφ単軸押出機を用いて、厚さ5mmの樹脂シートを押出成形した。
得られた樹脂シートの25℃におけるヘイズ、50℃におけるヘイズ、シャルピー衝撃強度、ロックウエル硬度を表1に示す。
【0076】
【表1】