(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記再熱器溶融塩量制御工程は、所定の割合以下の負荷である低負荷運転のとき、前記再熱蒸気温度検出器が検出する前記再熱蒸気の温度が370℃以上430℃以下となるように前記溶融塩の量Mrを制御することを特徴とする請求項1または2に記載の太陽熱発電装置の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る太陽熱発電装置の制御方法および太陽熱発電装置について、図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0013】
図1は、本発明に係る太陽熱発電装置の制御方法の一実施形態に用いられる太陽熱発電装置の構成を示す概略構成図である。
本実施形態における太陽熱発電装置は、いわゆる直接2槽式の太陽熱発電装置であって、蓄熱媒体および加熱媒体として共通の溶融塩を用いる方式を採用した太陽熱発電装置である。
以下、本実施形態の太陽熱発電装置の構成について、太陽熱発電のプロセスに沿って順次説明していく。
【0014】
(加熱部)
太陽光はエネルギー密度が低いため、集光して熱に変換(すなわち、集熱)する、集光型太陽熱発電(CSP:Concentrated Solar Power)が広く採用されており、本実施形態もこの集光型太陽熱発電を採用している。
したがって、溶融塩を加熱する加熱部10では太陽光を集光して溶融塩を加熱することが好ましい。
【0015】
本実施形態の加熱部10はパラボラ・トラフ型であって、樋状に伸び、断面が放物線形状の集光反射鏡10aと、放物線の各焦点近傍位置(各断面における放物線の焦点近傍を結んだ直線位置)に配置された導管10bと、を有する。集光反射鏡10aによって反射された太陽光は、導管10bの位置に集光され、熱に変換されることで導管10bの内部を流動する溶融塩を加熱する。
【0016】
パラボラ・トラフ型はその構造が単純であるためコストを抑えられ、且つ、高度な集光技術を要しないことから容易に優れた集光を達成できる。また、これらの理由からパラボラ・トラフ型は太陽熱発電装置において数多くの実績があり、信頼性の面でも優れる。
【0017】
なお、本発明において加熱部はパラボラ・トラフ型に限定されるものではなく、溶融塩を太陽熱により充分に加熱できるものであれば特に制限はない。したがって、パラボラ・トラフ型以外にも、例えば、リニア・フレネル型、タワー型、ディッシュ型等、他の周知慣用されているものを用いてもよく、あるいはこれらを併用してもよい。
【0018】
図1に示す本実施形態の加熱部10は、8つの集光反射鏡10aおよび各集光反射鏡10aに共通の導管10bからなる構成である。ただし、本発明においてパラボラ・トラフ型の加熱部はこの構成に限られるものではなく、例えば、任意の数の集光反射鏡を備える加熱部であってもよく、また、任意の配管構成の導管を備える加熱部であってもよい。
【0019】
加熱部10では、従来のオイルを加熱媒体として用いる際の上限温度である400℃よりも高温に溶融塩を加熱する。加熱部10における溶融塩の加熱温度については、熱分解等による溶融塩の不可逆変化によって溶融塩の性能の劣化が生じない温度である限り特に制限はないが、高温であるほど高効率な発電となるため好ましい。ただし、導管10bなど装置自体の耐熱性、発電効率およびコスト等のバランスを考えて加熱温度を決定する必要がある。
本実施形態における加熱部10では、溶融塩を500℃以上、好ましくは500℃以上600℃以下、より好ましくは540℃以上560℃以下に加熱する。
【0020】
導管10bは、低温蓄熱槽20と高温蓄熱槽22とを、加熱部10の集光位置を介して連結するものであって、低温蓄熱槽20内に貯留される溶融塩を、導管10b内を流動させて高温蓄熱槽22まで導くことができる。
【0021】
(溶融塩)
太陽熱発電装置では、硝酸塩系溶融塩がその安全性、安定性およびコスト面などにおいて優れており、溶融塩として広く採用されている。硝酸塩系溶融塩を用いると、従来のオイルを加熱媒体とするよりも高温に加熱することが可能となり、高温の蒸気が得られるため、高効率な太陽熱発電が実現できる。加熱媒体としてオイルを用いた太陽熱発電の場合、400℃を超えるような高温に加熱すると、長期にわたる利用において分解が生じて性能が劣化してしまうが、硝酸塩系溶融塩を用いた場合、長期にわたり400℃を超える高温の利用に供しても分解による性能の劣化が生じない。
【0022】
本実施形態では、溶融塩として硝酸ナトリウムと硝酸カリウムとの混合物を用いている。ただし、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、太陽熱発電装置における蓄熱媒体および加熱媒体として利用可能なものであれば特に制限はない。
硝酸塩系溶融塩としては、硝酸ナトリウムと硝酸カリウムとの2成分系混合物の他、これに硝酸リチウム等を加えた3成分系、4成分系なども知られており、本発明においていずれも採用することができる。
【0023】
硝酸ナトリウムと硝酸カリウムとからなる2成分系溶融塩の場合、その融点は230℃程度であり、実際の稼働環境下においては溶融塩の固化防止対策として融点よりもさらに40〜50℃高い温度となるように系内が制御されている。冬場の夜間などにおける固化防止のための熱エネルギーの消費を抑えるために、溶融塩は融点が低いことが好ましい。ただし、その安全性、安定性、稼働温度における粘度およびコスト面などを考慮して溶融塩を選ぶ必要がある。
【0024】
(低温蓄熱槽、高温蓄熱槽)
本実施形態における太陽熱発電装置100は、低温蓄熱槽20と高温蓄熱槽22とを備える。すなわち、本実施形態における太陽熱発電装置100は、低温の溶融塩と高温の溶融塩とを2槽に分けて貯留し、それぞれを独立して供給可能である2槽式の蓄熱部を具備する。ただし、本発明における蓄熱部はこの2槽式に限られるものではなく、低温の溶融塩と高温の溶融塩とを独立して供給可能であれば如何なる構成であってもよい。
2槽式以外の蓄熱部としては、例えば単槽式の蓄熱部が挙げられる。単槽式の蓄熱部では、単一の槽内の上部において高温の溶融塩を貯留し、下部において低温の溶融塩を貯留し、それぞれを独立して供給可能な構成となっている。
【0025】
本実施形態において、溶融塩は低温時には低温蓄熱槽20に貯留されている。そして、この低温蓄熱槽20に貯留されている溶融塩が、導管10bで集光反射鏡10aから太陽熱エネルギーを受けて高温となる。高温となった溶融塩は、本実施形態ではすべて高温蓄熱槽22に貯留される。
【0026】
低温蓄熱槽20および高温蓄熱槽22は、溶融塩を貯留可能なものであれば特に制限はない。本実施形態における低温蓄熱槽20および高温蓄熱槽22は、270℃程度の低温状態から500℃以上の高温状態を遷移する溶融塩を貯留可能で、断熱性、耐熱性および耐久性を備える槽形状のものである。また、低温蓄熱槽20および高温蓄熱槽22は、予期せぬ溶融塩の固化が生じたとしても破損等が生じない機械的強度を備えることが特に好ましい。
【0027】
(過熱器)
過熱器32は、加熱媒体(溶融塩)と蒸気との熱交換によって過熱蒸気を生成し、この過熱蒸気を後述する高圧タービン36に供給するものである。
過熱器32には高温の溶融塩が高温蓄熱槽22から供給される。なお、本実施形態では高温の溶融塩が高温蓄熱槽22から過熱器32に供給される構成である。
また、過熱器32には蒸気発生器30で発生した蒸気(水蒸気)が供給される。
そして、この蒸気が高温の溶融塩との熱交換によって加熱され、過熱蒸気が生成する。一方、熱交換により熱を放出した溶融塩は、蒸気発生器30に送られる。
【0028】
(蒸気発生器)
蒸気発生器30は、詳細を後述する復水器40から供給された水を加熱して蒸気を発生させ、この蒸気を過熱器32に供給するものである。
復水器40から供給された水は、蒸気発生器30内において過熱器32から排出された溶融塩および後述する再熱器34から排出された溶融塩との熱交換によって加熱されて蒸気となり、過熱器32に供給される。
一方、熱交換により熱を放出して低温状態となった溶融塩は、低温蓄熱槽20に送られる。
【0029】
(高圧タービン)
高圧タービン36は、過熱器32から供給された過熱蒸気によって駆動される。すなわち、高圧タービン36が備えるタービン翼が過熱蒸気の仕事によって回転し、ジェネレータGで電力が発生する。仕事をした後の過熱蒸気は、中間排出蒸気として後述する再熱器34に排出される。
また、本実施形態の高圧タービン36では、その内部から一部の蒸気が抽気され、不図示のプレヒータに排出される。この抽気された蒸気の熱がプレヒータにおいて利用されることで、発電効率を高めることができる。
【0030】
(再熱器)
再熱器34は、加熱媒体(溶融塩)と中間排出蒸気との熱交換によって再熱蒸気を生成し、この再熱蒸気を後述する低圧タービン38に供給するものである。
再熱器34には高温の溶融塩が高温蓄熱槽22から供給される。なお、本実施形態では高温の溶融塩が高温蓄熱槽22から再熱器34に供給される構成である。
また、再熱器34には高圧タービン36から排出された中間排出蒸気が供給される。
そして、この中間排出蒸気が高温の溶融塩との熱交換によって加熱され、再熱蒸気が生成する。一方、熱交換により熱を放出した溶融塩は、蒸気発生器30に送られる。
なお、本実施形態では高温蓄熱槽22から供給された溶融塩が分岐し、過熱器32および再熱器34のそれぞれに供給されている。
【0031】
(低圧タービン)
低圧タービン38は、再熱器34から供給された再熱蒸気によって駆動される。すなわち、低圧タービン38が備えるタービン翼が再熱蒸気の仕事によって回転し、ジェネレータGで電力が発生する。仕事をした後の再熱蒸気は、排出蒸気として後述する復水器40に排出される。
また、本実施形態の低圧タービン38では、その内部から一部の蒸気が多段的(4段)に抽気され、例えば不図示の熱交換器等に排出される。この抽気された蒸気の熱が熱交換器等において利用されることで、発電効率を高めることができる。
【0032】
(復水器)
復水器40は、低圧タービン38から排出された排出蒸気を冷却して凝縮し、水に戻すことにより背圧を下げて出力を稼ぐために設けられるものである。この水は蒸気発生器30に供給され、再び発電の用に供される。
【0033】
(循環手段)
上述した水や各種蒸気は、水/蒸気循環路内に適宜配設されたポンプなどの循環手段(不図示)によって太陽熱発電装置系内を循環する。
また、溶融塩は、溶融塩循環路内に適宜配設されたポンプなどの循環手段(不図示)によって太陽熱発電装置系内を循環する。
【0034】
(再熱蒸気温度検出器)
再熱蒸気温度検出器(不図示)は、再熱器34から排出され、低圧タービン38に供給される再熱蒸気の温度を検出する。したがって、再熱蒸気温度検出器は再熱器34出口と低圧タービン38入口との間の経路に設けられている。
再熱蒸気温度検出器の設置位置は、再熱蒸気の温度を精度よく検出できる位置であれば、再熱器34出口と低圧タービン38入口との間の経路のうち、いずれの箇所であってもよい。本実施形態では、低圧タービン38入口付近に複数個の再熱蒸気温度検出器が設けられ、それぞれにおいて再熱蒸気の温度を検出している。
この再熱蒸気温度検出器は、再熱蒸気の温度を検出可能なものであれば特に制限はなく、如何なる温度検出方式を採用するものであってもよい。
【0035】
再熱蒸気温度検出器が再熱蒸気の温度を検出するタイミングについて特に制限はないが、太陽熱発電装置100が何らかの異常を来したことを常に検知することができるように、本実施形態では温度検出を常時(連続的に)行っている。ただし、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、低負荷運転時のみ再熱蒸気の温度を検出してもよい。
再熱蒸気温度検出器が検出した再熱蒸気の温度は、後述する再熱器溶融塩量制御部に送られる。
【0036】
(低負荷運転)
太陽熱発電装置は、通常、定格負荷に対して100%の負荷において通常運転を行い、発電する。
しかしながら、例えば、太陽光照射量が必要量に満たず高温の溶融塩の供給量が不足する場合や、電力の需要量が少なく外部に電力を送れない場合など、必要に応じて太陽熱発電装置の負荷を低くして低負荷運転を行う。
太陽光照射量が必要量に満たない雨天・曇天日や夜間など、高温の溶融塩の供給量が不足する場合には、そのまま通常運転を行うと貯留していた高温の溶融塩が全て低温になり、最終的には太陽熱発電装置内において固化してしまう。そこで固化防止のため、太陽光照射量が増加するまで低負荷運転を行って高温の溶融塩の消費量を抑制することがある。
また、電力をあまり多く消費しない早朝や深夜など、電力の需要量が少なく外部に電力を送れない場合には、そのまま通常運転を行うことができないため、電力の需要量が増加するまで低負荷運転を行うことがある。
一般的に太陽熱発電装置では、通常運転と低負荷運転とを切り替えて発電を行っている。
【0037】
ところで、太陽熱発電装置100は、定格負荷(すなわち、100%負荷)であると最も発電効率がよく、低圧タービン38からの排出蒸気温度が高温化することなく良好に発電を行える。しかしながら、非常に高温となる溶融塩を加熱媒体として循環させる太陽熱発電装置100の場合、低負荷運転の際には低圧タービン38からの排出蒸気温度が上昇し、タービン翼の破損などの不具合を招く。
そこで本実施形態では、所定の割合以下の負荷である低負荷運転の際、低圧タービン38からの排出蒸気温度が過度に上昇しないように、後述する再熱器溶融塩量制御工程(再熱器溶融塩量制御部)によって、再熱器34に供給する溶融塩の量Mrを制御する。
【0038】
ここで、本実施形態における低負荷運転とは、太陽熱発電装置100の定格負荷の25%以下の負荷である運転状態をいう。ただし、負荷が低すぎる場合は太陽熱発電装置100の運転に支障を来すため、許容最低負荷以上で運転する必要がある。許容最低負荷とは、太陽熱発電装置を運転する上で最低限必要とされる負荷である。
【0039】
本実施形態では、好ましくは5%以上25%以下、より好ましくは5%以上20%以下、特に好ましくは7%以上15%以下の負荷で低負荷運転を行う。
ただし、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。太陽熱発電装置の定格負荷および許容最低負荷は装置固有の値であるため、当該装置に応じた所定の割合の負荷での低負荷運転を行うことが最も好ましい。
【0040】
(再熱器溶融塩量制御部、再熱器溶融塩量制御工程)
再熱器溶融塩量制御部は、低負荷運転時において、再熱蒸気温度検出器から出力される再熱蒸気の温度を取得し、再熱器34に供給する溶融塩の量Mrを制御して、再熱蒸気の温度が450℃以下となるようにする。本実施形態における再熱器溶融塩量制御部は、低負荷運転時において、再熱蒸気の温度が450℃を超える場合、再熱蒸気の温度が450℃以下となるように再熱器34に供給する溶融塩の量Mrを減少させる。再熱蒸気の温度は、450℃以下となることが好ましく、370℃以上430℃以下となることがより好ましい。
【0041】
低負荷運転時において低圧タービン38に供給される再熱蒸気の温度が450℃以下となることで、低圧タービン38内が高温になり過ぎることがなく、低圧タービン38のタービン翼の破損を防ぐことができる。また、過熱器32および再熱器34に供給される溶融塩自体の温度は下がっていないため、過熱蒸気の温度が500℃以上に保たれたままとなるため、発電効率の低下が抑えられ、高効率な発電が行われる。
【0042】
なお、必要以上に再熱蒸気の温度を低下させることは、低圧タービン38の発電効率を低下させるため好ましくない。低圧タービン38のタービン翼の破損のリスクを充分に低減し得る程度に低圧タービン38の排気温度が低くなることは必要であるため、再熱蒸気の温度は450℃以下とした上で、高い発電効率を得るべく、再熱蒸気の温度を高く維持することが特に好ましい。より具体的には、太陽熱発電装置100の型式や低圧タービン38の型式、運転の負荷率等を考慮し、低圧タービン38のタービン翼の破損のリスクを回避しつつ、高い発電効率が得られるような再熱蒸気の温度となるように、溶融塩の量Mrを制御することが特に好ましい。
【0043】
また、再熱器溶融塩量制御部は、再熱蒸気温度検出器から出力される再熱蒸気の温度に加えて、他の温度も取得し、再熱器34に供給する溶融塩の量Mrを制御してもよい。例えば、低圧タービン38出口から排出される蒸気の温度を検出可能な温度検出器から出力される温度を取得し、再熱蒸気温度検出器から出力される再熱蒸気の温度と共に制御因子として用いて、再熱器34に供給する溶融塩の量Mrを制御してもよい。
【0044】
(太陽熱発電装置全体における溶融塩の量の制御)
太陽熱発電装置100では、その発電量から太陽熱発電装置100において用いられる蒸気量が決まり、蒸気量が決まると、必要とされる高温の溶融塩の量、即ち、過熱器32および再熱器34に供給する溶融塩の総量Mtが決まる。
また、前述したとおり、低負荷運転時においては再熱器34に供給する溶融塩の量Mrが再熱器溶融塩量制御部によって決まる。
したがって、過熱器32および再熱器34に供給する溶融塩の総量Mtから再熱器34に供給する溶融塩の量Mrを引いた差分(Mt−Mr)が、過熱器32に供給する溶融塩の量Msとなるため、低負荷運転時における太陽熱発電装置100全体の溶融塩の供給(循環)制御が決まる。
【0045】
一方、通常運転時においては、再熱器34に供給する溶融塩の量Mrは理論的に決まるため、再熱器溶融塩量制御部による制御によらず、自ずと決まる。
【0046】
(その他の構成)
本発明に係る太陽熱発電装置では、以上述べた各構成に加え、太陽熱発電装置において周知慣用されている構成を備えていてもよい。
【実施例】
【0047】
以下、シミュレーションによる実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0048】
(実施例1、比較例1〜2、参考例1)
実施例1、並びに比較例1〜2および参考例1では、
図1に示す太陽熱発電装置における太陽熱発電のシミュレーションを行った。
【0049】
比較例1は、太陽熱発電装置100の定格負荷に対して10%負荷の低負荷運転の状態である。比較例1では、溶融塩の温度自体を低下させることで高圧タービン入口の温度(過熱蒸気の温度)および低圧タービン入口の温度(再熱蒸気の温度)を下げる制御を行った。
比較例1では、低圧タービン38出口の蒸気の温度が53.83℃であった。また、この比較例1における発電効率を基準値として、後述する比較例2および実施例1の発電効率を評価した。
【0050】
比較例2では、太陽熱発電装置100の定格負荷に対して10%負荷の低負荷運転の状態である。比較例2では、比較例1のように溶融塩の温度を低下させることなく、従来と同様に、目標とする蒸気流量を指標として再熱器34に供給する溶融塩の量Mrを制御した。
比較例2では、発電効率は比較例1に対して約2.95%増加したが、低圧タービン38出口の蒸気の温度が126.80℃であり、実用に耐え得る温度ではなかった。
【0051】
実施例1では、再熱蒸気の温度を指標として再熱器34に供給する溶融塩の量Mrを制御する、上述した再熱器溶融塩量制御工程に従って制御を行った。すなわち、低圧タービン38入口の再熱蒸気の温度が400℃となるように再熱器34に供給する溶融塩の量Mrを制御した。
実施例1では、低圧タービン38出口の蒸気の温度が53.83℃であった。実施例1では、低圧タービン38出口の蒸気の温度が低かったため、長期にわたる使用においてもタービン翼の破損などのおそれがない。また、実施例1では比較例1に対して発電効率が約0.91%増加し、発電の高効率化が達成できた。
【0052】
参考例1は、太陽熱発電装置100の定格負荷での運転状態(100%負荷)、すなわち通常運転状態である。
参考例1では、低圧タービン38出口の蒸気の温度が41.07℃であった。通常運転状態である参考例1では、低圧タービン38出口の蒸気温度が低かったため、長期にわたる使用においてもタービン翼の破損などのおそれがない。
【0053】
以上のように、本発明に係る太陽熱発電装置の制御方法および太陽熱発電装置によれば、低負荷運転時において、再熱蒸気の温度を指標として再熱器に供給する溶融塩の量を制御することで、低圧タービンからの排気温度の上昇を防ぐことができ、尚且つ、高圧タービンに供給される過熱蒸気の温度の低下を招くことがない。したがって、本発明に係る太陽熱発電装置の制御方法および太陽熱発電装置によれば、コストアップを招くことなく排気温度の上昇を抑制して耐久性を向上させると共に、高効率な発電が達成できることがわかった。