特許第6596316号(P6596316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6596316熱処理システム、熱処理方法、及び、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596316
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】熱処理システム、熱処理方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20191010BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   H01L21/31 E
   H01L21/318 B
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-230681(P2015-230681)
(22)【出願日】2015年11月26日
(65)【公開番号】特開2017-98464(P2017-98464A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】竹永 裕一
(72)【発明者】
【氏名】松浦 廣行
【審査官】 正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−258338(JP,A)
【文献】 特開2008−218709(JP,A)
【文献】 特開2013−207256(JP,A)
【文献】 特開2013−207109(JP,A)
【文献】 特開2013−207110(JP,A)
【文献】 特開2009−260261(JP,A)
【文献】 特開2002−130961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/318
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の被処理体を収容する処理室内を加熱する加熱手段と、
前記処理室内の圧力を調整する圧力調整手段と、
前記加熱手段により加熱される処理室内の温度および前記圧力調整手段により調整される処理室内の圧力を含む、熱処理内容に応じた熱処理条件を記憶する熱処理条件記憶手段と、
前記処理室内の温度および圧力の変化と、前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における熱処理結果の変化との関係を示す熱処理変化モデルを記憶する熱処理変化モデル記憶手段と、
前記熱処理条件記憶手段により記憶された熱処理条件を実行する熱処理実行手段と、
前記熱処理実行手段により実行された前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における熱処理結果と、前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における目標とする熱処理結果と、前記熱処理変化モデル記憶手段に記憶された熱処理変化モデルとに基づいて、前記目標とする熱処理結果となる温度および圧力を算出する算出手段と、
を備える、ことを特徴とする熱処理システム。
【請求項2】
前記熱処理変化モデル記憶手段は、前記処理室内の温度の変化と、前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における熱処理結果の変化との関係を示す熱処理変化モデルをさらに記憶し、
前記算出手段は、熱処理内容に応じた熱処理変化モデルと、前記熱処理実行手段により実行された前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における熱処理結果と、前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における目標とする熱処理結果とに基づいて、前記目標とする熱処理結果となる温度および圧力、または、温度を算出する、ことを特徴とする請求項1に記載の熱処理システム。
【請求項3】
前記処理室は複数のゾーンに区分けされ、
前記加熱手段は、前記処理室内のゾーンごとに温度設定可能であり、
前記熱処理条件記憶手段に記憶された熱処理条件は、前記処理室内のゾーンごとに設定され、
前記熱処理変化モデル記憶手段に記憶された熱処理変化モデルは、前記ゾーンごとの処理室内の温度の変化と、前記ゾーンごとの熱処理結果の変化との関係を示し、
前記算出手段は、前記ゾーンごとに温度を算出する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の熱処理システム。
【請求項4】
前記熱処理内容は成膜処理であり、
前記熱処理結果は被処理体に形成された薄膜の膜厚である、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱処理システム。
【請求項5】
複数枚の被処理体を収容する処理室内の圧力を調整した状態で加熱する熱処理方法であって、
前記加熱される処理室内の温度および前記調整される処理室内の圧力を含む、熱処理内容に応じた熱処理条件を記憶する熱処理条件記憶工程と、
前記処理室内の温度および圧力の変化と、前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における熱処理結果の変化との関係を示す熱処理変化モデルを記憶する熱処理変化モデル記憶工程と、
前記熱処理条件記憶工程で記憶された熱処理条件を実行する熱処理実行工程と、
前記熱処理実行工程で実行された前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における熱処理結果と、前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における目標とする熱処理結果と、前記熱処理変化モデル記憶工程で記憶された熱処理変化モデルとに基づいて、前記目標とする熱処理結果となる温度および圧力を算出する算出工程と、
を備える、ことを特徴とする熱処理方法。
【請求項6】
コンピュータを、
複数枚の被処理体を収容する処理室内を加熱する加熱手段、
前記処理室内の圧力を調整する圧力調整手段、
前記加熱手段により加熱される処理室内の温度および前記圧力調整手段により調整される処理室内の圧力を含む、熱処理内容に応じた熱処理条件を記憶する熱処理条件記憶手段、
前記処理室内の温度および圧力の変化と、前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における熱処理結果の変化との関係を示す熱処理変化モデルを記憶する熱処理変化モデル記憶手段、
前記熱処理条件記憶手段により記憶された熱処理条件を実行する熱処理実行手段、
前記熱処理実行手段により実行された前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における熱処理結果と、前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における目標とする熱処理結果と、前記熱処理変化モデル記憶手段に記憶された熱処理変化モデルとに基づいて、前記目標とする熱処理結果となる温度および圧力を算出する算出手段、
として機能させる、ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理体を熱処理する熱処理システム、熱処理方法、及び、プログラムに関し、特に、被処理体を多数枚一括して処理するバッチ式の熱処理システム、熱処理方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、多数枚の被処理体、例えば、半導体ウエハの成膜処理、酸化処理あるいは拡散処理などを一括して行うバッチ式の熱処理システムが用いられている。バッチ式の熱処理システムでは、効率的に半導体ウエハを処理することが可能であるが、多数枚の半導体ウエハの熱処理の均一性を確保することは困難である。
【0003】
このような問題を解決するため、例えば、特許文献1には、拡散炉内へガスを導入するガスインジェクターを上部用、中央部用、下部用の3本以上複数本有し、各々独立して流量を制御することによりガスの供給量を均一にし、半導体装置の歩留まりを向上させる方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、成膜した簿膜の熱処理特性と、反応室内の温度およびガス流量の変化と熱処理特性の変化との関係を示すモデルとに基づいて、反応室内の温度およびガス流量を算出し制御することにより、目標とする熱処理特性を満たす熱処理に調整する方法が提案されている。
【0005】
特許文献3には、入力された第1の膜および第2の膜の目標膜厚から、各層の重み付けを算出し、算出した重み付けと活性化エネルギーとに基づいて積層膜の活性化エネルギーを算出し、算出した活性化エネルギーと第1の膜および第2の膜の膜厚における各ZONEの温度との関係とに基づいて積層膜のモデルを作成し、作成した積層膜のモデルを用いてZONEごとの最適温度を算出し制御することにより、目標膜厚の積層膜を形成する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−121389号公報
【特許文献2】特開2013−207109号公報
【特許文献3】特開2013−207110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年の半導体デバイスの微細化に伴い、成膜に要求される均一性のスペックが厳しくなってきている。このため、例えば、半導体ウエハのエッジ付近に形成される薄膜の膜厚の落ち込みのような局所的な膜厚のばらつきを解消し、半導体ウエハに形成される薄膜の面内形状をより向上させることが求められている。
【0008】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、被処理体に形成される薄膜の面内形状をより向上させることができる熱処理システム、熱処理方法、及び、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる熱処理システムは、
複数枚の被処理体を収容する処理室内を加熱する加熱手段と、
前記処理室内の圧力を調整する圧力調整手段と、
前記加熱手段により加熱される処理室内の温度および前記圧力調整手段により調整される処理室内の圧力を含む、熱処理内容に応じた熱処理条件を記憶する熱処理条件記憶手段と、
前記処理室内の温度および圧力の変化と、前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における熱処理結果の変化との関係を示す熱処理変化モデルを記憶する熱処理変化モデル記憶手段と、
前記熱処理条件記憶手段により記憶された熱処理条件を実行する熱処理実行手段と、
前記熱処理実行手段により実行された前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における熱処理結果と、前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における目標とする熱処理結果と、前記熱処理変化モデル記憶手段に記憶された熱処理変化モデルとに基づいて、前記目標とする熱処理結果となる温度および圧力を算出する算出手段と、
を備える、ことを特徴とする。
【0010】
前記熱処理変化モデル記憶手段は、前記処理室内の温度の変化と、前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における熱処理結果の変化との関係を示す熱処理変化モデルをさらに記憶し、
前記算出手段は、熱処理内容に応じた熱処理変化モデルと、前記熱処理実行手段により実行された前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における熱処理結果と、前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における目標とする熱処理結果とに基づいて、前記目標とする熱処理結果となる温度および圧力、または、温度を算出してもよい。
【0011】
前記処理室は複数のゾーンに区分けされ、
前記加熱手段は、前記処理室内のゾーンごとに温度設定可能であり、
前記熱処理条件記憶手段に記憶された熱処理条件は、前記処理室内のゾーンごとに設定され、
前記熱処理変化モデル記憶手段に記憶された熱処理変化モデルは、前記ゾーンごとの処理室内の温度の変化と、前記ゾーンごとの熱処理結果の変化との関係を示し、
前記算出手段は、前記ゾーンごとに温度を算出してもよい。
【0012】
前記熱処理内容は成膜処理であり、
前記熱処理結果は被処理体に形成された薄膜の膜厚であってもよい。
【0013】
本発明の第2の観点にかかる熱処理方法は、
複数枚の被処理体を収容する処理室内の圧力を調整した状態で加熱する熱処理方法であって、
前記加熱される処理室内の温度および前記調整される処理室内の圧力を含む、熱処理内容に応じた熱処理条件を記憶する熱処理条件記憶工程と、
前記処理室内の温度および圧力の変化と、前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における熱処理結果の変化との関係を示す熱処理変化モデルを記憶する熱処理変化モデル記憶工程と、
前記熱処理条件記憶工程で記憶された熱処理条件を実行する熱処理実行工程と、
前記熱処理実行工程で実行された前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における熱処理結果と、前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における目標とする熱処理結果と、前記熱処理変化モデル記憶工程で記憶された熱処理変化モデルとに基づいて、前記目標とする熱処理結果となる温度および圧力を算出する算出工程と、
を備える、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の観点にかかるプログラムは、
コンピュータを、
複数枚の被処理体を収容する処理室内を加熱する加熱手段、
前記処理室内の圧力を調整する圧力調整手段、
前記加熱手段により加熱される処理室内の温度および前記圧力調整手段により調整される処理室内の圧力を含む、熱処理内容に応じた熱処理条件を記憶する熱処理条件記憶手段、
前記処理室内の温度および圧力の変化と、前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における熱処理結果の変化との関係を示す熱処理変化モデルを記憶する熱処理変化モデル記憶手段、
前記熱処理条件記憶手段により記憶された熱処理条件を実行する熱処理実行手段、
前記熱処理実行手段により実行された前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における熱処理結果と、前記被処理体の面内の少なくとも2つの位置における目標とする熱処理結果と、前記熱処理変化モデル記憶手段に記憶された熱処理変化モデルとに基づいて、前記目標とする熱処理結果となる温度および圧力を算出する算出手段、
として機能させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被処理体に形成される薄膜の面内形状をより向上させることができる熱処理システム、熱処理方法、及び、プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る熱処理装置の構造を示す図である。
図2図1の制御部の構成例を示す図である。
図3】反応管内のゾーンを示す図である。
図4】(a)、(b)は、ある成膜条件においてヒータの各ゾーンの温度設定値を+1℃、または、反応管内の圧力設定値を1mTorr高くした場合に形成される窒化シリコン膜(以下、SiN膜)の膜厚変化量を示す膜厚変化モデルの一例である。
図5】操作者が入力した目標膜厚を示す図である。
図6】熱処理を説明するためのフローチャートである。
図7】レシピに記憶された温度、圧力を示す図である。
図8】算出された温度、圧力を示す図である。
図9】(a)は算出前の製造条件での膜厚を示す図であり、(b)は算出後の製造条件での膜厚を示す図である。
図10】ヒータの温度の変化と形成されるSiN膜の膜厚変化との関係を示す膜厚変化モデルの一例である。
図11】算出された温度を示す図である。
図12図11の温度での膜厚を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の熱処理システム、熱処理方法、及び、プログラムを、図1に示すバッチ式の縦型の熱処理装置に適用した場合を例に本実施の形態を説明する。また、本実施の形態では、成膜用ガスとして、ジクロロシラン(SiHCl)とアンモニア(NH)とを用いて、半導体ウエハにSiN膜を形成する場合を例に本発明を説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態の熱処理装置1は、略円筒状で有天井の反応管2を備えている。反応管2は、その長手方向が垂直方向に向くように配置されている。反応管2は、耐熱及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。
【0019】
反応管2の下側には、略円筒状のマニホールド3が設けられている。マニホールド3は、その上端が反応管2の下端と気密に接合されている。マニホールド3には、反応管2内のガスを排気するための排気管4が気密に接続されている。排気管4には、バルブ、真空ポンプなどからなる圧力調整部5が設けられており、反応管2内を所望の圧力(真空度)に調整する。
【0020】
マニホールド3(反応管2)の下方には、蓋体6が配置されている。蓋体6は、ボートエレベータ7により上下動可能に構成され、ボートエレベータ7により蓋体6が上昇するとマニホールド3(反応管2)の下方側(炉口部分)が閉鎖され、ボートエレベータ7により蓋体6が下降すると反応管2の下方側(炉口部分)が開口されるように配置されている。
【0021】
蓋体6の上部には、保温筒(断熱体)8を介して、ウエハボート9が設けられている。ウエハボート9は、被処理体、例えば、半導体ウエハWを収容(保持)するウエハ保持具であり、本実施の形態では、半導体ウエハWが垂直方向に所定の間隔をおいて複数枚、例えば、150枚収容可能に構成されている。そして、ウエハボート9に半導体ウエハWを収容し、ボートエレベータ7により蓋体6を上昇させることにより、半導体ウエハWが反応管2内にロードされる。
【0022】
反応管2の周囲には、反応管2を取り囲むように、例えば、抵抗発熱体からなるヒータ部10が設けられている。このヒータ部10により反応管2の内部が所定の温度に加熱され、この結果、半導体ウエハWが所定の温度に加熱される。ヒータ部10は、例えば、5段に配置されたヒータ11〜15から構成され、ヒータ11〜15には、それぞれ電力コントローラ16〜20が接続されている。このため、この電力コントローラ16〜20にそれぞれ独立して電力を供給することにより、ヒータ11〜15をそれぞれ独立に所望の温度に加熱することができる。このように、反応管2内は、このヒータ11〜15により、図3に示すような5つのゾーンに区分されている。例えば、反応管2内のTOP(ZONE1)を加熱する場合には、電力コントローラ16を制御してヒータ11を所望の温度に加熱する。反応管2内のCENTER(CTR(ZONE3))を加熱する場合には、電力コントローラ18を制御してヒータ13を所望の温度に加熱する。反応管2内のBOTTOM(BTM(ZONE5))を加熱する場合には、電力コントローラ20を制御してヒータ15を所望の温度に加熱する。
【0023】
また、マニホールド3には、反応管2内に処理ガスを供給する複数の処理ガス供給管が設けられている。なお、図1では、マニホールド3に処理ガスを供給する3つの処理ガス供給管21〜23を図示している。処理ガス供給管21は、マニホールド3の側方からウエハボート9の上部付近(ZONE1)まで延びるように形成されている。処理ガス供給管22は、マニホールド3の側方からウエハボート9の中央付近(ZONE3)まで延びるように形成されている。処理ガス供給管23は、マニホールド3の側方からウエハボート9の下部付近(ZONE5)まで延びるように形成されている。
【0024】
各処理ガス供給管21〜23には、それぞれ、流量調整部24〜26が設けられている。流量調整部24〜26は、処理ガス供給管21〜23内を流れる処理ガスの流量を調整するためのマスフローコントローラ(MFC)などから構成されている。このため、処理ガス供給管21〜23から供給される処理ガスは、流量調整部24〜26により所望の流量に調整されて、それぞれ反応管2内に供給される。
【0025】
また、熱処理装置1は、反応管2内のガス流量、圧力、処理雰囲気の温度といった処理パラメータを制御するための制御部(コントローラ)50を備えている。制御部50は、流量調整部24〜26、圧力調整部5、ヒータ11〜15の電力コントローラ16〜20等に制御信号を出力する。図2に制御部50の構成を示す。
【0026】
図2に示すように、制御部50は、モデル記憶部51と、レシピ記憶部52と、ROM(Read Only Memory)53と、RAM(Random Access Memory)54と、I/O(Input/Output Port)ポート55と、CPU(Central Processing Unit)56と、これらを相互に接続するバス57と、から構成されている。
【0027】
モデル記憶部51には、ヒータ11〜15の温度の変化および反応管2内部の圧力の変化と、形成されるSiN膜の膜厚変化との関係を示す膜厚変化モデルが記憶されている。図4に膜厚変化モデルの一例を示す。図4に示すように、膜厚変化モデルは、所定ZONEの温度を1℃上げたとき、各ZONE内の半導体ウエハW(ウエハ)に形成されるSiN膜の膜厚がどれだけ変化するかを示している。また、膜厚変化モデルは、反応管2内部の圧力を1mTorr(0.133Pa)上げたとき、各ZONE内のウエハに形成されるSiN膜の膜厚がどれだけ変化するかを示している。
【0028】
例えば、図4(a)に示すように、電力コントローラ16を制御してヒータ11を加熱することにより、ZONE1の温度設定値を1℃上げると、ZONE1内のウエハ1に形成されるSiN膜の中央(Center)の膜厚が13.6nm増加し、中央と端部の間の任意の位置(Middle)の膜厚が12.8nm増加し、端部(Edge)の膜厚が12.7nm増加する。また、ZONE2内のウエハ2に形成されるSiN膜のCenterの膜厚が0.5nm減少し、Middleの膜厚が0.7nm減少し、Edgeの膜厚が0.8nm減少する。さらに、ZONE3〜5内のウエハ3〜5に形成されるSiN膜の膜厚についても変化する。
【0029】
また、図4(b)に示すように、圧力調整部5を制御することにより、反応管2内部の圧力を1mTorr(0.133Pa)上げると、ZONE1内のウエハ1に形成されるSiN膜のCenterの膜厚が2.23nm増加し、Middleの膜厚が2.24nm増加し、Edgeの膜厚が2.25nm増加する。ZONE2〜5内のウエハ2〜5に形成されるSiN膜の膜厚についても増加する。
【0030】
なお、膜厚変化モデルは、所定ZONEの温度、反応管2の圧力を変化させたときに、各ZONE内のウエハに形成されるSiN膜のCenter、Middle、および、Edgeの膜厚がどれだけ変化するかを示すことができるものであればよく、これ以外の種々のモデルを用いてもよい。また、これらのモデルは、プロセス条件や装置の状態によってデフォルトの数値が最適でない場合も考えられることから、ソフトウエアに拡張カルマンフィルターなどを付加して学習機能を搭載することにより、モデルの学習を行うものであってもよい。この拡張カルマンフィルターによる学習機能については、例えば、米国特許第5 ,991,525号公報などに開示されている手法を利用することができる。
【0031】
レシピ記憶部52には、この熱処理装置1で実行される成膜処理の種類に応じて、制御手順を定めるプロセス用レシピが記憶されている。プロセス用レシピは、ユーザが実際に行う処理(プロセス)毎に用意されるレシピであり、反応管2への半導体ウエハWのロードから、処理済みの半導体ウエハWをアンロードするまでの、各部の温度の変化、反応管2内の圧力変化、ガスの供給の開始及び停止のタイミング、供給量などを規定する。
【0032】
ROM53は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクなどから構成され、CPU56の動作プログラムなどを記憶する記録媒体である。
RAM54は、CPU56のワークエリアなどとして機能する。
【0033】
I/Oポート55は、温度、圧力、ガスの流量に関する測定信号をCPU56に供給すると共に、CPU56が出力する制御信号を各部(圧力調整部5、ヒータ11〜15の電力コントローラ16〜20、流量調整部24〜26等)へ出力する。また、I/Oポート55には、操作者が熱処理装置1を操作する操作パネル58が接続されている。
【0034】
CPU56は、制御部50の中枢を構成し、ROM53に記憶された動作プログラムを実行し、操作パネル58からの指示に従って、レシピ記憶部52に記憶されているプロセス用レシピに沿って、熱処理装置1の動作を制御する。
【0035】
CPU56は、モデル記憶部51に記憶されている膜厚変化モデルと、形成されたSiN膜の膜厚とに基づいて、目標膜厚が形成される反応管2内の各ZONE(ZONE1〜5)に配置されたヒータ11〜15の設定温度や反応管2内の圧力を算出する。
バス57は、各部の間で情報を伝達する。
【0036】
次に、以上のように構成された熱処理装置1を用いた熱処理方法について説明する。なお、本例の熱処理においては、操作者は、操作パネル58を操作して、プロセス種別、本例では、ジクロロシランとアンモニアとのSiN膜の成膜を選択するとともに、図5に示すように、ターゲットとするSiN膜の膜厚について、半導体ウエハWのCenter、Middle、および、Edgeの目標膜厚をゾーンごとに入力する。図6は、本例の熱処理を説明するためのフローチャートである。
【0037】
まず、制御部50(CPU56)は、プロセス種別等の必要な情報が入力されたか否かを判別する(ステップS1)。CPU56は、必要な情報が入力されていると判別すると(ステップS1;Yes)、入力された情報に対応するプロセス用レシピをレシピ記憶部52から読み出す(ステップS2)。プロセス用レシピには、例えば、図7に示すように、エリア毎に反応管2内の温度、圧力等のプロセス条件が記憶されている。
【0038】
次に、CPU56は、ボートエレベータ7(蓋体6)を降下させ、少なくとも各ZONEに半導体ウエハW(モニターウエハ)を搭載したウエハボート9を蓋体6上に配置する。続いて、CPU56は、ボートエレベータ7(蓋体6)を上昇して、ウエハボート9(半導体ウエハW)を反応管2内にロードする。そして、CPU56は、レシピに従って、圧力調整部5、ヒータ11〜15の電力コントローラ16〜20、流量調整部24〜26等を制御して、半導体ウエハWにSiN膜を成膜する(ステップS3)。
【0039】
CPU56は、成膜処理が終了すると、成膜されたSiN膜の膜厚を測定する(ステップS4)。例えば、CPU56は、ボートエレベータ7(蓋体6)を降下させ、SiN膜が成膜された半導体ウエハWをアンロードし、半導体ウエハWを、例えば、図示しない測定装置に搬送し、半導体ウエハWに成膜されたSiN膜の膜厚を測定させる。測定装置では、半導体ウエハWに成膜されたSiN膜の膜厚を測定すると、図9(a)に示すような測定したSiN膜の膜厚データを熱処理装置1(CPU56)に送信する。CPU56は、測定されたSiN膜の膜厚データを受信することにより、成膜されたSiN膜の膜厚を特定する。なお、操作者が操作パネル58を操作して、測定結果を入力してもよい。
【0040】
CPU56は、成膜されたSiN膜の膜厚を特定すると、特定した膜厚が許容範囲内か否かを判別する(ステップS5)。許容範囲内とは、入力された目標膜厚から許容可能な所定の範囲内に含まれていることをいい、例えば、入力された目標膜厚から±1%以内の場合をいう。なお、操作者がSiN膜の膜厚が許容範囲内か否かを判別し、その結果を操作パネル58を操作して入力してもよい。
【0041】
CPU56は、測定した膜厚が許容範囲内でないと判別すると(ステップS5;No)、目標膜厚に合致するような温度、圧力設定値を算出する(ステップS6)。例えば、CPU56は、測定した膜厚と、モデル記憶部51に記憶されている膜厚変化モデルとに基づいて、図8に示すように、目標膜厚が形成される反応管2内の各ZONE(ZONE1〜5)に配置されたヒータ11〜15の温度、および、反応管2内の圧力を算出する。そして、CPU56は、読み出したレシピの各ZONEの温度、および、反応管2内の圧力を、算出した設定温度、設定圧力に更新する(ステップS7)。そして、CPU56は、ステップS3に戻り、半導体ウエハWにSiN膜を成膜する。
【0042】
すなわち、CPU56は、ヒータ11の温度が713.7℃、ヒータ12の温度が719.5℃、ヒータ13の温度が714.3℃、ヒータ14の温度が730.3℃、ヒータ15の温度が735.4℃となるように、電力コントローラ16〜20を制御するとともに、反応管2内の圧力が376mTorr(50Pa)となるように、圧力調整部5を制御して、半導体ウエハWにSiN膜を成膜する(ステップS3)。
【0043】
CPU56は、成膜処理が終了すると、例えば、図示しない測定装置を用いて、成膜されたSiN膜の膜厚を測定させる(ステップS4)。そして、CPU56は、測定した膜厚が許容範囲内か否かを判別する(ステップS5)。本例の場合、図9(b)に示すように、測定したSiN膜の膜厚が許容範囲内となった。CPU56は、測定した膜厚が許容範囲内であると判別すると(ステップS5;Yes)、この処理を終了する。
【0044】
このように、半導体ウエハWに形成されるSiN膜の膜厚が均一となるような製造条件に容易に調整することができた。なお、CPU56は、両者が一致しないと判別すると(ステップS5;No)、再び、ステップS6、ステップS7、ステップS3〜ステップS5を実行する。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態によれば、操作者が目標膜厚等を入力するだけで、半導体ウエハWに形成するSiN膜の面内形状を容易に制御することができる。
【0046】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な他の実施の形態について説明する。
【0047】
上記実施の形態では、図4に示すように、ヒータ11〜15の温度の変化および反応管2内部の圧力の変化と、形成されるSiN膜の膜厚変化との関係を示す膜厚変化モデルを用いて、ヒータ11〜15の温度、および、反応管2内の圧力を算出した場合を例に本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、モデル記憶部51に、さらに、図10に示すような、ヒータ11〜15の温度の変化と、形成されるSiN膜の膜厚変化との関係を示す膜厚変化モデルを記憶し、ヒータ11〜15の温度および反応管2内部の圧力により調整する場合と、ヒータ11〜15の温度により調整する場合とを、熱処理内容に応じて選択したり、操作者に選択させるようにしてもよい。
【0048】
本実施の形態と同様に、図10に示すような、ヒータ11〜15の温度の変化と、形成されるSiN膜の膜厚変化との関係を示す膜厚変化モデルを用いて、ヒータ11〜15の温度を調整した。具体的には、ステップS3のSiN膜の成膜において、図9(a)に示す測定結果となったときの、図10に示す膜厚変化モデルを用いて、図11に示すように、ヒータ11〜15の温度を算出した。そして、読み出したレシピの各ZONEの温度を、算出した温度に更新した後(ステップS7)、ステップS3に戻り、半導体ウエハWにSiN膜を成膜した。
【0049】
すなわち、ヒータ11の温度が722.4℃、ヒータ12の温度が743.5℃、ヒータ13の温度が724.8℃、ヒータ14の温度が729.5℃、ヒータ15の温度が734.6℃となるように、電力コントローラ16〜20を制御して、半導体ウエハWにSiN膜を成膜した。その結果を図12に示す。図12に示すように、ヒータ11〜15の温度により膜厚を調整する場合にも、半導体ウエハWに形成するSiN膜の面内形状を容易に制御できることを確認した。
【0050】
このように、ヒータ11〜15の温度および反応管2内部の圧力により調整する場合と、ヒータ11〜15の温度により調整する場合とを、操作者に選択できるようにしてもよい。
【0051】
上記実施の形態では、図5に示すように、成膜するSiN膜について、Center、Middle、および、Edgeの目標膜厚をゾーンごとに入力した場合を例に本発明を説明したが、例えば、Center、および、Edgeの目標膜厚をゾーンごとに入力してもよい。
【0052】
上記実施の形態では、ヒータの段数(ゾーンの数)が5段の場合を例に本発明を説明したが、4段以下であっても、6段以上であってもよい。また、各ゾーンから抽出する半導体ウエハWの数などは任意に設定可能である。
【0053】
上記実施の形態では、成膜処理における成膜温度が一定の場合を例に本発明を説明したが、例えば、各ゾーンにおいて、成膜処理における成膜温度を徐々に低下(降温)させてもよい。この場合、例えば、成膜温度を徐々に低下(降温)させる場合のレシピと、形成されるSiN膜の膜厚変化との関係を示すモデルを複数記憶することにより、CPU56は、ステップS6において、降温させる温度の精度を向上(最適な温度を算出)することが可能となる。
【0054】
上記実施の形態では、ジクロロシランとアンモニアとを用いてSiN膜を成膜する場合を例に本発明を説明したが、本発明は種々の薄膜の形成に利用することが可能であり、例えば、ジクロロシランと一酸化二窒素とを用いてSiO膜を形成する場合に本発明を適用することが可能である。
【0055】
上記実施の形態では、SiN膜を形成する場合を例に本発明を説明したが、処理の種類は任意であり、他種類の膜を形成するCVD(Chemical Vapor Deposition)装置、酸化装置などの様々な半導体製造の熱処理装置に適用可能である。
【0056】
上記実施の形態では、単管構造のバッチ式熱処理装置の場合を例に本発明を説明したが、例えば、反応管2が内管と外管とから構成された二重管構造のバッチ式縦型熱処理装置に本発明を適用することも可能である。また、本発明は、半導体ウエハの処理に限定されるものではなく、例えば、FPD(Flat Panel Display)基板、ガラス基板、PDP(Plasma Display Panel)基板などの処理にも適用可能である。
【0057】
本発明の実施の形態にかかる制御部50は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、汎用コンピュータに、上述の処理を実行するためのプログラムを格納した記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)など)から当該プログラムをインストールすることにより、上述の処理を実行する制御部50を構成することができる。
【0058】
そして、これらのプログラムを供給するための手段は任意である。上述のように所定の記録媒体を介して供給できる他、例えば、通信回線、通信ネットワーク、通信システムなどを介して供給してもよい。この場合、例えば、通信ネットワークの掲示板(BBS:Bulletin Board System)に当該プログラムを掲示し、これをネットワークを介して搬送波に重畳して提供してもよい。そして、このように提供されたプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上述の処理を実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は半導体ウエハ等の被処理体を熱処理する熱処理システムに有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 熱処理装置
2 反応管
3 マニホールド
5 圧力調整部
6 蓋体
9 ウエハボート
10 ヒータ部
11〜15 ヒータ
16〜20 電力コントローラ
21〜23 処理ガス供給管
24〜26 流量調整部
50 制御部
51 モデル記憶部
52 レシピ記憶部
53 ROM
54 RAM
56 CPU
W 半導体ウエハ
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