【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 錯体化学会 第63回討論会 要旨集 発行所 錯体化学会、発行日 平成25年10月15日 錯体化学会 第63回討論会 琉球大学 千原キャンパス、平成25年11月3日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
<配位子化合物>
本発明に係るエレクトロクロミックシートは一実施形態において、式(i−1)又は式(i−2)で表される三方向テルピリジン誘導体を配位子として含有する金属錯体ポリマーから形成されてなる。
【化7】
【化8】
式(i−1)及び式(i−2)中、各R
1はそれぞれ独立に2価の連結基を表し、各R
2はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣接したR
2同士は結合して環を形成してもよく、各Xはそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表し、Xに結合したR
2はXが窒素原子を表すときは存在せず、Aは窒素原子又はホウ素原子を表す。
【0029】
式(i−1)に係るテルピリジン誘導体は例えば文献(M. Cavazzini et al., Inorg. Chem. 2009, 48, 8578-8592)に記載の反応機構を利用することで合成可能である。
図20に反応機構の例を示す。ハロゲノ基若しくは擬ハロゲノ基(
図20では臭素原子)により置換された6員環芳香族化合物1と、連結基R
1の末端にテルピリジン部位及びボロン酸若しくはボロン酸エステル(
図20ではネオペンチルグリコラトボロン)部位が結合した化合物2を、パラジウム触媒及び塩基(例えば、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)及び炭酸ナトリウム)の存在下で反応させることで、式(i−1)のテルピリジン誘導体が得られる(反応1)。
【0030】
同様に、式(i−2)に係るテルピリジン誘導体は
図21に記載の反応機構により合成可能である。ハロゲノ基若しくは擬ハロゲノ基(
図21では臭素原子)で置換されたアリーレン基(例えばフェニレン基)と結合した3級窒素又はホウ素の化合物3と連結基R
1の末端にテルピリジン部位及びボロン酸若しくはボロン酸エステル(
図21ではネオペンチルグリコラトボロン部位)が結合した化合物2を、パラジウム触媒及び塩基(例えば、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)及び炭酸ナトリウム)の存在下で反応させることで、式(i−1)のテルピリジン誘導体が得られる(反応2)。
【0031】
本発明に係るエレクトロクロミックシートは別の一実施形態において、次式(ii)で表される四方向テルピリジン誘導体を配位子として含有する金属錯体ポリマーから形成されている。
【化9】
式(ii)中、各R
1はそれぞれ独立に2価の連結基を表し、各R
2はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣接したR
2同士は結合して環を形成してもよく、Qは水素原子又は金属原子を表し、Zは対イオンまたは軸配位子を表し、nは0以上の整数を表す。
【0032】
式(ii)で表される四方向テルピリジン誘導体において、ポルフィリン環中の金属原子Qとしては特に制限はなく、典型元素及び遷移元素の金属原子の何れでもよいが、遷移金属が好ましく、2価以上の原子価を持つ遷移金属がより好ましい。金属原子Qの具体例としては、典型元素の金属として、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Rb、Sr、Cd、In、Sn、Cs、Ba、Hg、Tl、Pb、Bi、Fr、Raが挙げられ、遷移金属として、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、So、Ir、Pt、Au、Ac、Th、Pa、U、Np、Pu、Am、Cm、Bk、Cf、Es、Fm、Md、No、Lr、Rf、Db、Sg、Bh、Hs、Mt、Ds、Rgが挙げられる。金属原子Qはこれらの1種以上を任意に選択することができる。金属原子Qは、典型的にはFe、Ni、Co、Cu、Zn、Sn、Ti、Mn、Mo、V、Zr、Cd、Ga、Sb、Cr、Nb、Al等からなる群から選択される1種以上を挙げることができる。
【0033】
対イオンZは金属原子Qの各種の塩に対応するものである。金属の塩は、無機酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等の塩、又は有機酸の塩のうちの任意のものとすることができる。金属原子Qには軸配位子Zも配位し得る。軸配位子Zとしては、特に制限はないが、例えばイミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、アニリン及びその誘導体、ヒスチジン及びその誘導体、トリメチルアミン及びその誘導体等の窒素系軸配位子、チオフェノール及びその誘導体、システイン及びその誘導体、メチオニン及びその誘導体等の硫黄系軸配位子、安息香酸及びその誘導体、酢酸及びその誘導体、フェノール及びその誘導体、脂肪族アルコール及びその誘導体、水等の酸素系軸配位子が挙げられる。nは金属原子Qの価数に応じた0以上の値となる。なお、Qが水素原子のときは、Qは水素原子2個を表すのが典型的である。また、Qが水素原子のとき、Zは存在しない。
【0034】
式(ii)のテルピリジン誘導体は
図22及び
図23に記載の反応機構により合成可能である。連結基R
1の一部を構成するR1’の末端にホルミル基とハロゲノ基若しくは擬ハロゲノ基(
図22では臭素原子)が結合した化合物4とピロール(化合物5)をトリフルオロ酢酸(TFA)等の酸触媒下で反応させ、次いでクロラニル等の酸化剤で酸化し、Qが金属原子を表すときは更に金属塩若しくは金属錯体の存在下で錯形成反応させて、ポルフィリン化合物6を得る(反応3)。これを先述した化合物2と鈴木―宮浦カップリングさせることで、式(ii)のテルピリジン誘導体が得られる(反応4)。
【0035】
また、別法によれば、式(ii)のテルピリジン誘導体は
図24に記載の反応機構により合成可能である。連結基R
1の末端にホルミル基及びテルピリジン部分をもつ化合物7とピロール(化合物5)をトリフルオロ酢酸(TFA)等の酸触媒下で反応させ、次いでクロラニル等の酸化剤で酸化することでポルフィリン化合物8を得る(反応5)。式(ii)において、Qが金属原子を表すときは更に金属塩若しくは金属錯体の存在下で錯形成反応させる。
【0036】
式(i−1)、式(i−2)及び式(ii)において、R
2が表す置換基としては、ハロゲン原子、置換又は非置換の1価の炭化水素基、メルカプト基、カルボニルメルカプト基、チオカルボニルメルカプト基、置換又は非置換の炭化水素チオ基、置換又は非置換の炭化水素チオカルボニル基、置換又は非置換の炭化水素ジチオ基、水酸基、置換又は非置換の炭化水素オキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基、置換又は非置換の炭化水素カルボニル基、置換又は非置換の炭化水素オキシカルボニル基、置換又は非置換の炭化水素カルボニルオキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、置換又は非置換の炭化水素一置換アミノ基、置換又は非置換の炭化水素二置換アミノ基、ホスフィノ基、置換又は非置換の炭化水素一置換ホスフィノ基、置換又は非置換の炭化水素二置換ホスフィノ基、式:−P(=O)(OH)
2で表される基、カルバモイル基、置換又は非置換の炭化水素一置換カルバモイル基、置換又は非置換の炭化水素二置換カルバモイル基、式:−B(OH)
2で表される基、ホウ酸エステル残基、スルホ基、置換又は非置換の炭化水素スルホ基、置換又は非置換の炭化水素スルホニル基、置換又は非置換の1価の複素環基、2個以上のエーテル結合を有する炭化水素基、2個以上のエステル結合を有する炭化水素基、2個以上のアミド結合を有する炭化水素基、式:−CO
2Mで表される基、式:−PO
3Mで表される基、式:−PO
2Mで表される基、式:−PO
3M
2で表される基、式:−OMで表される基、式:−SMで表される基、式:−B(OM)
2で表される基、式:−SO
3Mで表される基、式:−SO
2Mで表される基(式中、Mは、金属カチオン又は置換又は非置換のアンモニウムカチオンを表す。)、式:−NR
3M’で表される基、式:−BR
3M’で表される基、式:−PR
3M’で表される基、式:−SR
2M’で表される基(式中、Rは、1価の炭化水素基を表し、M’は、アニオンを表す。)、及び、第4級化された窒素原子を複素環内に有する置換又は非置換の1価の複素環基等が挙げられる。
【0037】
R
2としては、ハロゲン原子、置換又は非置換の炭化水素基、水酸基、置換又は非置換の炭化水素オキシ基、カルボキシル基、置換又は非置換の炭化水素カルボニル基、シアノ基、アミノ基、置換又は非置換の炭化水素一置換アミノ基、置換又は非置換の炭化水素二置換アミノ基、スルホ基、置換又は非置換の1価の複素環基、及び、水素原子が好ましく、ハロゲン原子、置換又は非置換の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、置換又は非置換の1価の複素環基、及び、水素原子がより好ましく、置換又は非置換の1価の炭化水素基、置換又は非置換の1価の複素環基、及び、水素原子が更により好ましく、1価の炭化水素基、及び水素原子が更により好ましく、水素原子がとりわけ好ましい。
【0038】
R
2がハロゲン原子であるときは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子がより好ましく、塩素原子及び臭素原子が更に好ましい。
【0039】
R
2が1価の炭化水素基であるときは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、エイコシル基等の炭素数1〜20のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の炭素数3〜20のシクロアルキル基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基等の炭素数2〜20のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基等の炭素数6〜20のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニレンエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基、6−フェニル−1−ヘキシル基等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられ、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基が特に好ましい。これらの1価の炭化水素基は水素原子の少なくとも一部(特には1〜3個、とりわけ1個又は2個)が置換されていてもよく、置換基としてはフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素原子1〜4のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボ二ル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;シアノ基等が挙げられる。
【0040】
R
2が炭化水素チオ基、炭化水素チオカルボニル基、炭化水素ジチオ基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素一置換アミノ基、炭化水素二置換アミノ基、炭化水素一置換ホスフィノ基、炭化水素二置換ホスフィノ基、炭化水素一置換カルバモイル基、炭化水素二置換カルバモイル基、置換又は非置換の炭化水素スルホ基、置換又は非置換の炭化水素スルホニル基、式:−NR
3M’で表される基、式:−BR
3M’で表される基、又は、式:−PR
3M’で表される基、式:−SR
2M’で表される基であるときは、これらに含まれる炭化水素基部分は「1価の炭化水素基」として上述した通りである。これらの基に含まれる炭化水素基部分の水素原子の少なくとも一部は上記した1価の炭化水素基の場合と同様に置換されていてもよく、置換基としては同様のものを例示することができる。
【0041】
ホウ酸エステル残基としては、典型的には以下の式で表される基が挙げられる。
【化10】
【0042】
1価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子を1個取り除いた残りの原子団を指す。複素環式化合物としては、ピリジン、1,2−ジアジン、1,3−ジアジン、1,4−ジアジン、1,3,5−トリアジン、フラン、ピロール、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、アザジアゾール等の単環式複素環式化合物;単環式複素環式化合物を構成する複素環の2個以上が縮合した縮合多環式複素環式化合物;単環式複素環式化合物を構成する複素環2個を、又は、芳香環1個と単環式複素環式化合物を構成する複素環1個とを、メチレン基、エチレン基、カルボニル基等の2価の基で橋かけした構造を有する有橋多環式複素環式化合物等が挙げられ、ピリジン、1,2−ジアジン、1,3−ジアジン、1,4−ジアジン、1,3,5−トリアジンが好ましく、ピリジン、1,3,5−トリアジンがより好ましい。該1価の複素環基は置換されていてもよく、置換基としては、上述した1価の炭化水素基について挙げた置換基を例示することができる。
【0043】
2個以上のエーテル結合を有する炭化水素基としては、以下の式で表される基が挙げられる。式中、各R’は、それぞれ独立に置換又は非置換の2価の炭化水素基を表す。pは、2以上の整数である。
【化11】
【0044】
R’で表される2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,9−ノニレン基、1,12−ドデシレン基等の炭素原子数1〜20の2価の飽和炭化水素基;エテニレン基、プロペニレン基、3−ブテニレン基、2−ブテニレン基、2−ペンテニレン基、2−ヘキセニレン基、2−ノネニレン基、2−ドデセニレン基等のアルケニレン基、および、エチニレン基等の炭素原子数2〜20の2価の不飽和炭化水素基;シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロノニレン基、シクロドデシレン基、ノルボニレン基、アダマンチレン基等の炭素原子数3〜20の2価の環状飽和炭化水素基;1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ビフェニル−4,4’−ジイル基等の炭素原子数6〜20のアリーレン基等が挙げられる。これらの2価の炭化水素基が有する水素原子の少なくとも一部は置換基で置換されていてもよい。置換基としては、上述した1価の炭化水素基について挙げた置換基を例示することができる。
【0045】
2個以上のエステル結合を有する炭化水素基としては、例えば、以下の式で表される基が挙げられる。式中、R’およびpは前述した通りである。
【化12】
【0046】
2個以上のアミド結合を有する炭化水素基としては、以下の式で表される基が挙げられる。式中、R’およびpは前述した通りである。
【化13】
【0047】
前記Mで表される金属カチオンとしては、1〜3価のイオンが好ましく、Li、Na、K、Cs、Be、Mg、Ca、Ba、Ag、Al、Bi、Cu、Fe、Ga、Mn、Ni、Pb、Sn、Ti、V、W、Y、Yb、Zn、Zr等の金属のイオンが挙げられる。
【0048】
前記Mで表されるアンモニウムカチオンとしては非置換でも置換されていてもよく、置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0049】
前記M’で表されるアニオンとしては、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、OH
-、ClO
-、ClO
2-、ClO
3-、ClO
4-、SCN
-、CN
-、NO
3-、SO
42-、HSO
4-、PO
43-、HPO
42-、H
2PO
4-、BF
4-、PF
6-、CH
3SO
3-、CF
3SO
3-、テトラキス(イミダゾリル)ボレートアニオン、8−キノリノラトアニオン、2−メチル−8−キノリノラトアニオン、2−フェニル−8−キノリノラトアニオン等が挙げられる。
【0050】
第4級化された窒素原子を複素環内に有する1価の複素環基としては、例えば、以下の式で表される基が挙げられる。式中、RおよびM’は前述した通りある。
【化14】
【0051】
式(i−1)、式(i−2)及び式(ii)において、隣接したR
2同士は結合して環を形成してもよい。形成された環の構成原子の数は5〜10個が好ましく、5〜7個がさらに好ましく、6個が特に好ましい。形成された環には、発色性の観点から共役が分子内に広く広がるべく、π電子が存在していることが好ましく、π電子が2個以上あることがより好ましく、芳香環を形成していることが更により好ましい。
【0052】
式(i−1)、式(i−2)及び式(ii)において、2価の連結基R
1は置換又は非置換の2価の炭化水素基の他、以下の式(A−1)〜(A−7)で表される2価の基が例示され、置換又は非置換の2価の炭化水素基、(A−1)〜(A−3)、(A−6)及び(A−7)で表される2価の基が好ましく、置換又は非置換の2価の炭化水素基、(A−1)、(A−2)、及び(A−3)で表される2価の基がより好ましく、置換又は非置換の2価の炭化水素基が更により好ましい。式中、R
dは水素原子又は置換基を表す。該置換基はR
2について説明した通りであり、例の説明も同じであり、好ましくは水素原子又は炭素数が1〜20個のアルキル基であり、より好ましくは水素原子又は炭素数が1〜10個のアルキル基であり、更により好ましくは水素原子又は炭素数が1〜5個のアルキル基である。
【0054】
置換又は非置換の2価の炭化水素基としては、置換又は非置換の2価の飽和炭化水素基及び置換又は非置換の2価の不飽和炭化水素基が挙げられる。π電子による共役系を有することがエレクトロクロミズムの応答速度を高めると考えられることから、置換又は非置換の2価の不飽和炭化水素基であることが好ましい。また、これらの2価の炭化水素基においては、二カ所の結合部位が最も離れた正反対同士の位置にある(例えば芳香環の場合はパラ位)ことが錯体ポリマーの形状規則性及び安定性の観点から望ましい。
【0055】
置換又は非置換の2価の飽和炭化水素基としては、置換又は非置換のアルキレン基、置換又は非置換のヘテロアルキレン基が挙げられる。置換又は非置換の2価の不飽和炭化水素基としては、置換又は非置換のアルケニレン基、置換又は非置換のヘテロアルケニレン基、置換又は非置換のアルキニレン基、置換又は非置換のヘテロアルキニレン基が挙げられる。これらの飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基における炭素数(ヘテロ原子が介在する場合はその数も含める。)は、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が更により好ましい。
【0056】
置換又は非置換の2価の不飽和炭化水素基としては更に、置換又は非置換のアリーレン基、置換又は非置換のヘテロアリーレン基が挙げられる。これらの不飽和炭化水素基における炭素数(ヘテロ原子が介在する場合はその数も含める。)は6〜18が好ましく、6〜12がより好ましく、6〜8が更により好ましい。
【0057】
置換又は非置換の2価の不飽和炭化水素基としては更に、置換又は非置換のアラルキレン基、置換又は非置換のヘテロアラルキレン基が挙げられる。これらの不飽和炭化水素基における炭素数(ヘテロ原子が介在する場合はその数も含める。)は7〜20が好ましく、7〜12がより好ましく、7〜9が更により好ましい。
【0058】
置換又は非置換の2価の不飽和炭化水素基の中では、構造及び化学的安定性の観点から、置換又は非置換のアリーレン基、置換又は非置換のヘテロアリーレン基が好ましい。
【0059】
ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子などを挙げることができる。ヘテロ原子が2価の炭化水素基中に複数含まれる場合、各ヘテロ原子は同一であっても異なっていてもよい。
【0060】
2価の炭化水素基が置換基を有する場合、該置換基はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素原子1〜4のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボ二ル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;シアノ基等が挙げられる。
【0061】
アルキレン基の具体例としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、2−エチルヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基などを挙げることができ、アルキレン基としてはシクロヘキシレン基などの環状アルキレン基も挙げられる。ヘテロアルキレン基の具体例としては、メチレンオキシメチレン基、メチレンオキシエチレン基、エチレンオキシエチレン基、エチレンオキシメチレンオキシエチレン基、メチレンチオメチレン基、メチレンチオエチレン基、エチレンチオエチレン基などを挙げることができ、アルケニレン基及びアルキニレン基の具体例としては、エテン−1,2−ジイル基(−CH=CH−基)、2−ブテン−1,4−ジイル基(−CH
2−CH=CH−CH
2−基)、及びエチン−1,2−ジイル基(−C≡C−基)などを挙げることができる。アリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ビフェニリレン基、ナフチレン基及びアントリレン基などを挙げることができ、ヘテロアリーレン基の具体例としては、ピリジレン基、ピリミジレン基、ジベンゾフラニレン基、ジベンゾチオフェニレン基などを挙げることができる。アラルキレン基の具体例としては、スチリレン基等のベンジリデン基、シンナミリデン基、トリレン基、キシリレン基などを挙げることができる。
【0062】
<中心金属イオン>
本発明に係るエレクトロクロミックシートを形成する金属錯体ポリマーにおいて、上述した配位子が配位する中心金属イオンとしては特に制限はなく、典型元素及び遷移元素の金属イオンの何れでもよい。典型元素の金属イオンとしては、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Rb、Sr、Cd、In、Sn、Cs、Ba、Hg、Tl、Pb、Bi、Fr、Raが挙げられ、遷移金属イオンとしては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、So、Ir、Pt、Au、Ac、Th、Pa、U、Np、Pu、Am、Cm、Bk、Cf、Es、Fm、Md、No、Lr、Rf、Db、Sg、Bh、Hs、Mt、Ds、Rgが挙げられる。中心金属イオンはこれらの1種以上を任意に選択することができる。中心金属イオンは、典型的にはFe、Ni、Co、Cu、Zn、Sn、Ti、Mn、Mo、V、Zr、Cd、Ga、Sb、Cr、Nb、Alのイオンからなる群から選択される1種以上とすることができる。中心金属の種類は単一でも複数でもよいが、複数種類の中心金属イオンを使用することで、色が段階的に変化するといった光物性の変化にバリエーションを追加することができる。
【0063】
<エレクトロクロミックシート>
本発明に係るエレクトロクロミックシートは、上述した配位子化合物と上述した中心金属イオンとを含む錯体又は塩を原料として液−液界面での自己組織化現象を利用することにより、二次元に広がった錯体ポリマーを形成することで作製可能である。得られたシートは、電気化学的な酸化還元反応により色が変化するエレクトロクロミズムを示す。
【0064】
具体的には、本発明に係るエレクトロクロミックシートの製造方法の一実施形態においては、式(i−1)若しくは式(i−2)で表される三方向テルピリジン誘導体、又は式(ii)で表される四方向テルピリジン誘導体を含有する有機相と、中心金属となる金属の錯体及び塩から選択される1種以上を含有する水相を、相分離させた状態を維持しながら両者の接触を継続することにより、有機相と水相の界面に金属錯体ポリマーを成長させる工程を含む。
【0065】
本発明に係るエレクトロクロミックシートの製造方法のより典型的な実施形態においては、式(i−1)若しくは式(i−2)で表される三方向テルピリジン誘導体、又は式(ii)で表される四方向テルピリジン誘導体を含有する有機相の上に、中心金属となる金属の錯体及び塩から選択される1種以上を含有する水相を供給する工程と、次いで両者を相分離させた状態を維持することにより、有機相と水相の界面に金属錯体ポリマーを成長させる工程とを含む。
【0066】
理論によって本発明が限定されることを意図しないが、式(i−1)若しくは式(i−2)で表されるテルピリジン誘導体、又は式(ii)で表される四方向テルピリジン誘導体を含有する有機相と、中心金属となる金属の塩又は錯体を含有する水相を、相分離させた状態を維持しながら両者の接触を継続することにより、一つの中心金属に対して二つの前記テルピリジン誘導体が配位することで前記テルピリジン誘導体同士が連結され、当該連結がテルピリジン誘導体の種類に応じて三方向又は四方向に繰り返すことで網目分子構造が成長すると考えられる。
【0067】
また、シートは界面での接触時間を長くすることで厚く成長させることが可能である。理論によって本発明が限定されることを意図しないが、二次元方向に成長した単層シートが積層することにより厚くなるほか、一部の配位結合が上下に成長して三次元的に広がっている可能性があると考えられる。
【0068】
配位子として三方向テルピリジン誘導体を使用する場合、単一種類の配位子を利用してもよいし、複数種類の配位子を組み合わせて利用してもよい。また、式(i−1)で表される配位子と式(i−2)で表される配位子を組み合わせて用いることもできる。しかしながら、作製するシートの均一性、品質安定性及び形態安定性の観点からは、使用する配位子は統一することが好ましい。配位子として四方向テルピリジン誘導体を使用する場合も同様であり、単一種類の配位子を利用してもよいし、複数種類の配位子を組み合わせて利用してもよいが、使用する配位子は同一であることが望ましい。
【0069】
当該製造方法を実施する上では複雑な操作が不要であり、また、高価な製造装置も不要である。そのため、本発明に係るエレクトロクロミックシートは低コストでの製造が可能となる。また、当該シートの面積は液−液界面の面積に依存することから、反応容器を大きくすることで、得られるシートの面積も簡単に大きくすることができる。すなわち、本発明に係る製造方法は工業的生産に対しても有利である。
【0070】
前記テルピリジン誘導体の溶媒としては、前記テルピリジン誘導体を溶解するものであれば特に制限はないが、有機相と水相の相分離状態を維持するために、低極性溶媒を好ましく使用でき、例えば石油エーテル、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、ジクロロエタン、テトラクロロメタン、シクロヘキサン、クロロホルム、四塩化炭素、及びヘキサンから選ばれる少なくとも一種を含む溶媒を好適なものとして挙げることができる。溶媒としては他の溶媒も混合して用いることができるが、溶媒全体に対する上記の低極性溶媒の割合は体積比で50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
【0071】
中心金属となる金属の塩又は錯体としては、例えば無機酸(例:塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等)の塩、有機酸(例:カルボン酸、スルホン酸)の塩、アンミン錯体、シアノ錯体、ハロゲノ錯体、ヒドロキシ錯体が挙げられる。
【0072】
また、反応温度としては、反応速度を考慮しながら適宜設定すればよいが、用いる溶媒の凝固点以上沸点以下の温度で行うことができる。また、反応時間(ポリマーの成長時間)も特に限定されないが、1秒〜1ヶ月程度とすることができ、反応時間に応じて膜厚を調節することができる。典型的には、1日程度の反応時間で数百nmの厚みに成長し得る。得られたシートは、一般的な方法、例えば、濾過、溶媒除去等によって分離することができる。但し、作製されたシートは非常に薄いので、液中から取り出す間に破断しないようにするべく、大きい容器で作製して取り出しやすいようにする方法、Langmuir-Schafer法(シートが形成されている液−液界面に対し基板を平行に近づけ、基板へ移し取る方法)、硬質基板で掬い上げる方法を利用することも可能である。
【0073】
本発明に係るエレクトロクロミックシートの厚みは、0.5nm〜100μmの範囲で任意の厚みに設定可能であるが、エレクトロクロミズムの色変化及び強度に優れたシートを得るという観点からは、例えば平均で100nm以上とすることができ、典型的には平均で200nm以上とすることができる。また、本発明に係るエレクトロクロミックシートの厚みは、同様の理由により例えば平均で500nm以下とすることができ、典型的には平均で300nm以下とすることができる。本発明において、エレクトロクロミックシートの厚みの平均値は原子力間顕微鏡によって測定した値を指す。
【0074】
成長後の金属錯体ポリマーシートを回収後、加熱処理を行うことでシートを平坦化することが可能である。金属錯体ポリマーを反応液中から基板上に置くと、シートが柔軟なためにシワが形成される場合がある。当該シワがエレクトロクロミック特性に与える影響は明らかとなっていないが、少なくとも基板に対する密着性を阻害したり、シートが破損したりする要因となり得ることから、シワのない平坦な状態で基板上に配置されることが望ましい。この点、基板上に置いた本発明に係る金属錯体ポリマーを加熱処理すると、シワが伸ばされてシートを平坦化することが可能である。加熱処理は、シワの除去に有効な温度でシートの物理化学的性質に悪影響を与えない条件で行えばよいが、そのような条件の一例としては、例えば30〜500℃で10秒〜1週間の加熱処理が挙げられ、典型的には120℃で3日間の加熱処理が挙げられる。
【0075】
理論によって本発明が限定されることを意図しないが、本発明においては錯形成反応の成長領域を有機相と水相液の界面である二次元平面に制限していることから、配位子化合物であるテルピリジン誘導体と金属イオンによる錯形成反応が自己組織化現象により連鎖的に平面状に広がっていくものと考えられる。特に、本発明において配位子として使用するテルピリジン誘導体が有するテルピリジン部位は、同一平面上で且つ点対称に位置するため、平面状のシートが規則的に成長することができると考えられる。これにより、式(i−1)若しくは式(i−2)で表される三方向テルピリジン誘導体であれば、
図1に例示するような六角形状の網目構造をもつ錯体ポリマーが成長し、式(ii)で表される四方向テルピリジン誘導体であれば、
図2に例示するような四角形状の網目構造をもつ錯体ポリマーが成長すると推察される。
【0076】
本発明に係るエレクトロクロミックシートは水及び有機溶媒に対して不溶性の性質を示すことができる。また、本発明に係るエレクトロクロミックシートはエレクトロクロミズムの応答速度が高く、更には耐久性(サイクル特性)にも優れているという特徴を有することができる。これは、本発明に係るエレクトロクロミックシートが平面状に規則正しく配列された重合度の非常に高い錯体ポリマーから形成されており、共役π電子系の広がりも大きいことに起因すると考えられる。
【0077】
<エレクトロクロミック素子>
エレクトロクロミックシートは種々の大きさや形状に加工することが可能である。パターニングすることも可能である。本発明に係るエレクトロクロミックシートを用いて種々のエレクトロクロミック素子を作製することができる。従って、本発明は一側面において、本発明に係るエレクトロクロミックシートをエレクトロクロミック物質として備えたエレクトロクロミック素子である。本発明に係るエレクトロクロミック素子は一実施形態において、一対の電極と、前記一対の電極の間に配置されている電解質及びエレクトロクロミックシートを備える。
【0078】
電極及び電解質を介してエレクトロクロミックシートに印加する電圧により、エレクトロクロミックシートを構成する錯体ポリマーの酸化還元を制御でき、それにより光物性を可逆的に変化させることができる。
【0079】
エレクトロクロミック素子は、上記の各構成要素を基板上に積層した積層体として提供することができる。電極は種々の基板上に形成することができ、例えば、ガラス、プラスチック、セラミック、樹脂フィルム、シリコン、金属、鏡等の基板が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極が透明または半透明であることが好ましい。
【0080】
電極としては、限定的ではないが、導電性の金属酸化物膜、透光性の金属薄膜等を用いることができる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体である酸化インジウム錫合金(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、金、白金、銀、銅等が例示できる。また、電極の材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。電極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、例えば、10nm〜10μmとすることができ、好ましくは20nm〜1μmとすることができ、より好ましくは50nm〜500nmとすることができる。
【0081】
電解質としては、限定的ではないが、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の化合物が好ましく、例えば、過塩素酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、六フッ化リン酸リチウム、トリフルオロ硫酸リチウム、六フッ化砒酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラプロピルアンモニウム等の過塩素酸アンモニウム類、六フッ化リン酸テトラブチルアンモニウム、六フッ化リン酸テトラエチルアンモニウム、六フッ化リン酸テトラプロピルアンモニウム等の六フッ化リン酸アンモニウム類が挙げられる。
【0082】
本発明に係るエレクトロクロミックシートに対しては、液体電解質、ゲル状電解質及び固体電解質の何れを使用することも可能である。すなわち、本発明によれば、全固体型のエレクトロクロミック素子を製造することも可能である。本発明に係るエレクトロクロミック素子は種々の用途に適用でき、特に制限はないが、例えば、眼鏡(例:レンズ)、ディスプレイ、カメラ(例:ファインダー表示)、電子書籍の表示画面、鏡(例:自動車の防眩用)、窓(例:住宅やオフィス用)及び電光掲示板などに適用可能である。これらの物品に本発明に係るエレクトロクロミック素子を実装する際は、当該素子を保護及び封止するための樹脂、ガラス、鏡等の封止部材を設けることもできる。
【0083】
例えば、本発明に係るエレクトロクロミックシートを眼鏡に適用する場合、眼鏡レンズに本発明に係るエレクトロクロミックシートを備えた眼鏡とすることができる。眼鏡レンズの材質としては特に制限はないが、プラスチック製及びガラス製が挙げられる。エレクトロクロミックシートは例えば眼鏡レンズの凹面及び凸面の一方又は両方にコーティングすることができ、二枚のレンズでエレクトロクロミックシートを挟んで貼り合わせることもできる。
【0084】
コーティング型の場合は、レンズ/電極層/エレクトロクロミックシート/電解質/電極層という積層構造、レンズ/電極層/電解質/エレクトロクロミックシート/電極層という積層構造、更にはレンズ/電極層/対極層/電解質/エレクトロクロミックシート/電極層という積層構造やレンズ/電極層/エレクトロクロミックシート/電解質/対極層/電極層という積層構造が挙げられる。最上層の電極層の上には更に、樹脂製の保護層、プライマー層、ハードコート層、有機又は無機の反射防止層、撥水層、及び撥油層などの機能層を要求性能に応じて適宜設けてもよい。最下層の電極層の下に今述べた機能層を適宜設けることもできる。また、各層は密着性向上のために接着剤で貼り合わせてもよい。
【0085】
レンズ貼り合わせ型の場合は、例えば、レンズ/電極/電解質/エレクトロクロミックシート/電極/レンズという積層構造、レンズ/電極/エレクトロクロミックシート/電解質/電極/レンズという積層構造、レンズ/電極/電解質/エレクトロクロミックシート/電解質/電極/レンズという積層構造、更にはレンズ/電極層/対極層/電解質/エレクトロクロミックシート/電極層/レンズという積層構造やレンズ/電極層/エレクトロクロミックシート/電解質/対極層/電極層/レンズという積層構造が挙げられる。各レンズの外側表面には先述した機能層を要求性能に応じて適宜設けることができる。
【実施例】
【0086】
以下に本発明の実施例(発明例)を比較例と共に示すが、これらは本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。なお、
1H NMR測定は、JEOL AL 400型核磁気共鳴分光器(400 MHz)を用いた。スペクトルはテトラメチルシランのピークを0.00 ppm、クロロホルムのピークを7.26 ppmとして較正した。
【0087】
(実施例1)
1.配位子(A)の合成
下記(A)の分子構造を有する三方向テルピリジン配位子(tpy)を文献(M. Cavazzini et al., Inorg. Chem. 2009, 48, 8578-8592)の手法に従って合成した。1,3,5−トリブロモベンゼン 75.2mg、4’−{4−(ネオペンチルグリコラトボロン)フェニル}−2,2’:6’,2”テルピリジン 400mg、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 27.2mgのテトラヒドロフラン溶液(40mL)に、炭酸ナトリウム174.6mgを含む水溶液(8.3mL)を加え、85℃で18時間攪拌した。反応液を室温に戻したのち濾過し、得られた固体をテトラヒドロフラン、純水、ジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥により目的物200mgを得た(収率84%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): d=7.37-7.40 (m, 6H), 7.89-7.93 (m, 12H), 7.96 (s, 3H), 8.10 (d, J=8.0 Hz, 6H), 8.71 (d, J=8.0 Hz, 6H), 8.77 (d, J=4.6 Hz, 6H), 8.84 (s, 6H)
【0088】
【化16】
【0089】
2.ナノシートの作製及び評価
得られた配位子(A)1mgにジクロロメタン10mLを加えて溶かし、濾過することで配位子溶液を作製した。バイアル中の当該ジクロロメタン溶液の上に、水相と有機相の分離状態が維持されるように純水10mLを静かに重ねて二層界面を形成した後、更に50mMのFe(BF
4)
2水溶液10mLを静かに重ねた。1日静置したところ、水相と有機相の界面に紫色の薄いシートが形成されたことを確認した。水層を純水で洗浄したのち水層およびジクロロメタン層を順に取り除いた。薄膜をジクロロメタンで洗浄したのち濾過を行い、純水、エタノール、ジクロロメタンで洗浄し、真空乾燥することでナノシートを得た。
【0090】
(形状評価)
得られたナノシートをバイアルからすくい取り、HOPG基板上で当該シートをSEM観察(倍率:1000倍)した。SEM観察はJEOL JSM−7400FNT走査型電子顕微鏡を用いて行った。サンプルはナノシートを高配向熱分解黒鉛(HOPG)上にすくい取り作製した。その結果、当該シートが極めて薄く、また、平坦で稠密なシートであることが確認された(
図3)。図中、矢印の部分はシワである。また、同様にHOPG上で当該シートの厚みを原子力間顕微鏡(Agilent Technology 5500 Scanning Probe Microscope)にて測定した。シリコン製カンチレバーPPP−NCL(Nano World)を用い、Tappingモードで測定したところ、平均で200nmであった。なお、膜厚測定は膜の端部やシワ部分を避けた平坦な箇所に対して行った。
【0091】
(不溶性)
当該ナノシートの一片(0.1mg以下)を各種溶媒10mLに一晩浸漬し、濾過することで得られた溶液を紫外可視分光法で測定した。溶媒としては水、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、及びジクロロメタンを使用した。その結果、何れの溶媒に対しても578nmのビス(テルピリジン)鉄に特徴的な吸収を示さず、当該シートは不溶性であることが確認された(
図4〜7)。
【0092】
(化学構造)
当該ナノシートをKBrとともにペレット化してサンプルとした後、当該サンプルの赤外吸収スペクトルをJASCO FT/IR 620v分光器を用いて測定し、3方向テルピリジン配位子と比較した(
図8)。その結果、1600cm
-1付近のピークが高周波側にシフトしており、錯体形成が示唆されていた。1000cm
-1付近の幅広いピークはBF
4イオンに帰属していると推定される。
また、当該ナノシートを導電性カーボン両面テープ上に貼り付けてサンプルとし、X線光電子スペクトルをULVAC−PHI社のPHI 500 Versa Probeを用いて測定した。X線光源としてAlKα線(15kV、25W又は20kV、100W)を用いて測定した。得られたスペクトルは、C1sのピークが284.6eVとなるようにチャージアップの補正を行った。得られたスペクトルを3方向テルピリジン配位子及びモノマー錯体([Fe(tpy)
2](BF
4)
2)と比較した。
図9より、モノマー錯体においては、3方向テルピリジン配位子のFe
2+への配位に起因して、N1sのピークが高エネルギー側にシフトしていることが分かる。そして、当該ピークのシフトは当該ナノシートにおいても維持されており、ピーク強度も変化がないことが分かる。
図10より、モノマー錯体とナノシートのFe2p
1/2及びFe2p
3/2のピーク位置及び強度が一致していることも分かる。
図11より、モノマー錯体とナノシートのB1sのピーク位置及び強度が一致していることも分かる。
図12より、モノマー錯体とナノシートのF1sのピーク位置及び強度が一致していることも分かる。B及びF以外の陰イオンは検出されなかった。以上より、当該ナノシートは三方向テルピリジン配位子の鉄錯体ポリマーであり、六角形状の網目分子構造をもつと判断できる。
【0093】
(エレクトロクロミズム測定)
ITO/ガラス基板上にすくい取って固定した当該ナノシートを、テトラブチルアンモニウム過塩素酸塩の1Mジクロロメタン溶液中に浸漬し、サイクリックボルタンメトリーをALS 650DTを用いて測定(掃引速度100mV/s)した。ITO/ガラス基板を作用電極、白金線を対電極、そして0.1MのnBu
4NClO
4/CH
3CN中0.01MのAgClO
4溶液に浸した銀線を参照電極として測定を行った。結果を
図13に示す。Fe
3+/Fe
2+に由来するサイクリックボルタモグラムが得られ、エレクトロクロミズムを示すことが確認された。酸化波のピークは0.8V(vs Ag
+/Ag)付近に見られ、ナノシートは酸化により黄色になった。還元波のピークは0.7V(vs Ag
+/Ag)付近に見られ、ナノシートは還元により紫色になった。サイクリックボルタモグラム中、酸化波と還元波の積分面積が一致しており、良好なサイクル特性を示すことが示唆された。
【0094】
(応答速度)
ITO/ガラス基板上にすくい取って固定した当該ナノシートを、過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)の1Mジクロロメタン溶液中に浸漬し、これを作用電極としたクロノアンペロメトリー測定を実施した。印加する電位はFe
3+/Fe
2+の式量電位(800mV vs. Ag+/Ag)に対し、酸化時には+500mV、還元時に−500mVとした。得られた電流−時間曲線を
図14に示す。エレクトロクロミズムの応答速度は酸化及び還元共に約0.35秒(反応速度:2.57s
-1)であった。ここで、応答速度は、ステップ電位の印加を開始した時点から酸化及び還元共に90%反応が完了した時点までの時間として計測した。90%反応が完了した時点というのは、横軸を時間(x)、縦軸を電流値(y)とした電流−時間曲線においてx=0、y=0及び電流曲線で囲まれた領域の面積をA
(total)とし、時刻tにおいてx=0、y=0、電流曲線及びx=tで囲まれた領域の面積をA(t)としたときに、A(t)=0.9×A
(total)となる時刻を指す。また、電流−時間曲線は酸化と還元で重なり合っており、良好なサイクル特性を示すことが示唆された。
【0095】
(サイクル特性)
上述したクロノアンペロメトリー法を用いて紫外可視分光法による波長578nmの光に対する吸光度の時間変化を測定した。その結果を
図15に示す。吸光度の変化が先述したエレクトロクロミズムの応答速度に対応していることが確認された。
次に、電位ステップを交互に繰り返して印加したときの吸光度の変化速度の推移をみた。その結果、800サイクル以上を繰り返した後も、吸光度の変化速度、すなわちエレクトロクロミズムの応答速度が維持されたことが確認された(
図16)。このことから、当該ナノシートはエレクトロクロミズムについて優れたサイクル特性を有することが分かる。
【0096】
(全固体型エレクトロクロミック素子)
厚み100μmの塩化ビニル膜を過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)の1M濃度の1,2−ジクロロエタン溶液中に常温で一晩浸漬してポリマーゲル電解質フィルムを作製した。当該フィルムを、当該ナノシートを乗せたITO/ガラス基板及びITO/ガラス基板で挟み、大気下で乾燥したのち、真空乾燥行った。このようにして作製したエレクトロクロミック素子の構造を
図17に示す。ナノシートが付着している基板を作用電極、もう一方の電極を対電極につなぎ、2電極系で測定を行った。当該素子に対して、ITO電極間に−1.8Vと+3.0Vの電圧を交互に印加したところ、先述した試験と同様にエレクトロクロミズムが可逆的に発現した。
【0097】
(厚み変化)
得られた配位子(A)のジクロロメタン飽和溶液を半分に希釈することで0.03mMの配位子溶液を作製した。バイアル中の当該ジクロロメタン溶液の上に、水相と有機相の分離状態が維持されるように純水10mLを静かに重ねて二層界面を形成した後、更に表1に記載の濃度Fe(BF
4)
2水溶液10mLを静かに重ねた。表1に記載の所定日数静置後、水層を純水で洗浄したのち水層およびジクロロメタン層を順に取り除いた。薄膜をジクロロメタンで洗浄したのち濾過を行い、純水、エタノール、ジクロロメタンで洗浄し、真空乾燥することでナノシートを得た。得られたナノシートの平均厚みを原子力間顕微鏡により先と同様に測定した。結果を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
(実施例2)
1.配位子の合成
下記(B)の分子構造を有する三方向テルピリジン配位子(tpy)を下記の手順で合成した。4’−{(トリブチルスズ)エチニル}−2,2’:6’,2”テルピリジン 2.2g、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.19gをN,N−ジメチルホルムアミド 200mLに溶解し、100℃で加熱攪拌しながら1,3,5−テトラブロモベンゼン 0.32gを含むN,N−ジメチルホルムアミド溶液 50mLを加えた。そのまま100℃で40分攪拌したのち反応液を室温に戻し濾過した。得られた固体をヘキサン、ジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥により目的物を0.55g得た(収率65%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): d=7.37 (ddd, J=7.8, 4.8, 1.5 Hz, 6 H), 7.79 (s, 3H), 7.89 (td, J=7.8, 1.5 Hz, 6H), 8.64 (s, 6H), 8.64 (d, J=7.8 Hz, 6H), 8.75 ppm (d, J=4.8 Hz, 6H)
【0100】
【化17】
【0101】
2.ナノシートの作製及び評価
得られた配位子(B)のジクロロメタン飽和溶液を半分に希釈することで0.03mMの配位子溶液を作製した。バイアル中の当該配位子溶液の上に、水相と有機相の分離状態が維持されるように純水10mLを静かに重ねて二層界面を形成した後、更に25mMのFe(BF
4)
2水溶液10mLを静かに重ねた。1日静置したところ、水相と有機相の界面に紫色の薄いシートが形成されたことを確認した。水層を純水で洗浄したのち水層およびジクロロメタン層を順に取り除いた。薄膜をジクロロメタンで洗浄したのち濾過を行い、純水、エタノール、ジクロロメタンで洗浄し、真空乾燥することで不溶性のナノシートを得た。
【0102】
(形状評価)
得られたナノシートを実施例1と同様にHOPG上でSEM観察したところ、平坦で稠密なシートであることが確認された。また、実施例1と同様にHOPG上で当該シートの厚みを原子力間顕微鏡にて測定したところ、平均で約320nmであった。なお、膜厚測定は膜の端部やシワ部分を避けた平坦な箇所に対して行った。
【0103】
(化学構造)
当該ナノシートを導電性カーボン両面テープ上に貼り付けてサンプルとし、X線光電子スペクトルをULVAC−PHI社のPHI 500 Versa Probeを用いて測定した。X線光源としてAlKα線(15kV、25W又は20kV、100W)を用いて測定した。得られたスペクトルは、C1sのピークが284.6eVとなるようにチャージアップの補正を行った。当該スペクトルは399.7eVにN1sのピーク見られ、708.5eVにFe2pのピークが見られた。これらのピーク位置は配位子(A)と鉄イオンからなるナノシートのそれらとほぼ一致したことから、当該ナノシートは三方向テルピリジンの鉄錯体ポリマーであり、六角形状の網目分子構造をもつと判断できる。
【0104】
(エレクトロクロミズム測定)
ITO/ガラス基板上にすくい取って固定した当該ナノシートに対して、これを参照電極とするサイクリックボルタンメトリーを実施例1と同様に測定した。ただしここでは、参照電極電位のスキャン速度を種々変化させて測定した。結果を
図18に示す。Fe
3+/Fe
2+に由来するサイクリックボルタモグラムが得られ(式量電位0.889 V vs. Ag
+/Ag)、酸化還元に伴って青紫と黄色に可逆的に変化するエレクトロクロミズムが確認された。サイクリックボルタモグラム中、酸化波と還元波の積分面積が一致しており、良好なサイクル特性を示すことが示唆された。
【0105】
(応答速度)
ITO/ガラス基板上にすくい取って固定した当該ナノシートに対して、実施例1と同様にクロノアンペロメトリー測定を実施した。印加するステップ電位は式量電位に対して±500mVとした。得られた時間−電流曲線を
図19に示す。このときのエレクトロクロミズムの応答速度を先述した定義により計算したところ約0.54秒(反応速度:1.68s
-1)であった。
【0106】
(実施例3)
実施例1で作製した配位子(A)1mgをクロロホルム溶液10mLに溶かすことで配位子溶液を作製した。バイアル中の当該配位子溶液の上に、水相と有機相の分離状態が維持されるように純水10mLを静かに重ねて二層界面を形成した後、更に100mMのCoCl
2水溶液10mLを静かに重ねた。8日静置したところ、水相と有機相の界面に黄色の薄いシートが形成されたことを確認した。水層を純水で洗浄したのち水層およびクロロホルム層を順に取り除いた。薄膜をクロロホルムで洗浄したのち濾過を行い、純水、エタノール、クロロホルムで洗浄し、真空乾燥することで不溶性のナノシートを得た。
【0107】
(形状評価)
得られたナノシートを実施例1と同様にHOPG上でSEM観察したところ、平坦で稠密なシートであることが確認された。また、実施例1と同様にHOPG上で当該シートの厚みを原子力間顕微鏡にて測定したところ、平均で約120nmであった。なお、膜厚測定は膜の端部やシワ部分を避けた平坦な箇所に対して行った。
【0108】
(化学構造)
当該ナノシートを導電性カーボン両面テープ上に貼り付けてサンプルとし、X線光電子スペクトルをULVAC−PHI社のPHI 500 Versa Probeを用いて測定した。X線光源としてAlKα線(15kV、25W又は20kV、100W)を用いて測定した。得られたスペクトルは、C1sのピークが284.6eVとなるようにチャージアップの補正を行った。当該スペクトルは399.7eVにN1sのピークが見られた。このピーク位置は配位子(A)と鉄イオンからなるナノシートのそれとほぼ一致したことから、当該ナノシートはコバルト錯体ポリマーであり、六角形状の網目分子構造をもつと判断できる。また781.0eVにCo2p 3/2のピークが見られた。
【0109】
(エレクトロクロミズム測定)
ITO/ガラス基板上にすくい取って固定した当該ナノシートを作用電極として、サイクリックボルタンメトリーを測定した。ここでは、電圧のスキャン速度は100mV/sとした。−900mV(vs. Ag
+/Ag)付近にCo
2+/Co
+の酸化還元波が観測され、レドックス反応に伴い黄色から紫色への色変化が観測された。繰り返し掃引を行うと、紫色と黄色に交互に変化するエレクトロクロミズムが確認された。