(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明で用いられるリン含有エポキシ樹脂は下記一般式(1)で示される化学構造をその分子内に持ったリン含有エポキシ樹脂であって、例えば、下記一般式(2)及び/または下記一般式(3)で示すリン化合物とエポキシ樹脂を反応させて合成することができる。
【0014】
【化4】
(式中、R
1及びR
2は炭素数1〜6の炭化水素基を表し、同一であっても異なっていて
もよく、リン原子と共に環状になっていてもよい。iは0または1を表す。)
【0015】
【化5】
(式中、R
3及びR
4は炭素数1〜6の炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよく、リン原子と共に環状になっていてもよい。nは0または1を表す。Aは炭素数6〜20のアレーントリイル基を表す。)
【0016】
【化6】
(式中、R
5及びR
6は炭素数1〜6の炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよく、リン原子と共に環状になっていてもよい。jは0または1を表す。)
【0017】
前記一般式(2)または前記一般式(3)で示されるリン化合物としては、例えば10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光株式会社製、商品名HCA−HQ)、10−(1,4−ジオキシナフタレン)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(以下HCA−NQと記す)、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン(北興化学工業株式会社製、商品名PPQ)、ジフェニルホスフェニル−1,4−ジオキシナフタリン、1,4−シクロオクチレンホスフィニル−1,4−フェニルジオール(日本化学工業株式会社製、商品名CPHO−HQ)、1,5−シクロオクチレンホスフィニル−1、4−フェニルジオール(日本化学工業株式会社製、商品名CPHO−HQ)等のリン含有フェノール類、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光株式会社製、商品名HCA)、1,4−シクロオクチレンホスフィンオキシドと、5−シクロオクチレンフォスフィンオキシドの混合物(日本化学工業株式会社製、商品名CPHO)、ジフェニルホスフィンオキシド等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0018】
また、リン含有エポキシ樹脂を合成する際に前述のリン化合物と反応するエポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を少なくとも1.5個有しており、より好ましくは2個以上有しているものが良い。特に一般式(3)のリン化合物を併用する場合はエポキシ基として3個以上有しているものを使用することが好ましい。エポキシ樹脂の例としては、エポトートYD−128、エポトートYD−8125(新日鉄住金化学株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、エポトートYDF−170、エポトートYDF−8170(新日鉄住金化学株式会社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、YSLV−80XY(新日鉄住金化学株式会社製、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂)、エポトートYDC−1312(新日鉄住金化学株式会社製、ヒドロキノン型エポキシ樹脂)、jER YX−4000H(三菱化学株式会社製、ビフェニル型エポキシ樹脂)、エポトートYDPN−638、エポトートYDPN−63X(新日鉄住金化学株式会社製、フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、エポトートYDCN−701(新日鉄住金化学株式会社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、エポトートZX−1201(新日鉄住金化学株式会社製、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂)、TX−0710(新日鉄住金化学株式会社製、ビスフェノールS型エポキシ樹脂)、エピクロンEXA−1515(大日本化学工業株式会社製、ビスフェノールS型エポキシ樹脂)、NC−3000(日本化薬株式会社製、ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂)、エポトートZX−1355、エポトートZX−1711(新日鉄住金化学株式会社製、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂)、エポトートESN−155(新日鉄住金化学株式会社製、β−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、エポトートESN−355、エポトートESN−375(新日鉄住金化学株式会社製、ジナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、エポトートESN475V,エポトートESN−485(新日鉄住金化学株式会社製、α−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、EPPN−501H(日本化薬株式会社製、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂)、スミエポキシTMH−574(住友化学株式会社製、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂)、YSLV−120TE(新日鉄住金化学株式会社製、ビスチオエーテル型エポキシ樹脂)、エポトートZX−1684(新日鉄住金化学株式会社製、レゾルシノール型エポキシ樹脂)、デナコールEX−201(ナガセケムテックス株式会社製、レゾルシノール型エポキシ樹脂)、エピクロンHP−7200H(DIC株式会社製、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)等の多価フェノール樹脂のフェノール化合物とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、TX−0929、TX−0934、TX−1032(新日鉄住金化学株式会社製 アルキレングリコール型エポキシ樹脂)等のアルコール化合物とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、セロキサイド2021(ダイセル化学工業株式会社製、脂肪族環状エポキシ樹脂)、エポトートYH−434、(新日鉄住金化学株式会社製、ジアミノジフェニルメタンテトラグリシジルアミン)等のアミン化合物とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、jER 630(三菱化学株式会社製、アミノフェノール型エポキシ樹脂)、エポトートFX−289B、エポトートFX−305、TX−0932A(新日鉄住金化学株式会社製、リン含有エポキシ樹脂)等のエポキシ樹脂をリン化合物等の変性剤と反応して得られるリン含有エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのエポキシ樹脂は単独で使用しても2種類以上を併用して使用してもよい。
【0019】
前記一般式(2)及び/または前記一般式(3)のリン化合物とエポキシ樹脂との反応は特許文献1、2、3に記載されている方法を含めフェノール化合物とエポキシ樹脂の反応方法であるアドバンス法等の公知公用の方法を用いることができる。この時、リン化合物とエポキシ樹脂の比率は、反応後に得られるリン含有エポキシ樹脂のリン含有率が2〜7質量%の範囲にする必要があり、より好ましくは2.5〜5質量%の範囲である。リン含有率が少ないと本発明で用いるリン含有フェノール化合物とリン含有エポキシ樹脂の溶解性が悪化する恐れがあり、リン含有率が多いとリン含有エポキシ樹脂の粘度が高くなり、リン含有フェノール化合物を溶解させることも困難となる恐れがある。
また、リン化合物とエポキシ樹脂の反応においては、必要に応じて反応を促進するために反応触媒を使用する事ができる。使用できる触媒としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド等の四級ホスホニウム塩類、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド等の四級アンモニウム塩類、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン類等、公知慣用の触媒が挙げられ、これらに限定されるものではない。これら触媒を使用する場合の使用量は、エポキシ樹脂とリン化合物の合計質量100部に対して0.002〜2質量部の範囲が好ましい。量が多くなると本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物における安定性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0020】
リン含有エポキシ樹脂に溶解させるリン含有フェノール化合物としては前記一般式(2)に示される構造を持つリン含有フェノール化合物である。具体的には例えば、HCA−HQ、HCA−NQ、PPQ、ジフェニルホスフェニル−1,4−ジオキシナフタリン、CPHO−HQ、CPHO−HQ等のリン含有フェノール類を挙げる事ができるが、これらに限定されるものではない。また、これらのリン含有フェノール化合物は2種類以上を併用して使用する事もできる。
また、これらのリン含有フェノール化合物は前記一般式(3)の化合物、具体的には例えばHCAやジフェニルホスフィン等のリン原子に直結した活性水素基を有するリン化合物と、1,4−ベンゾキノンや1,4−ナフトキノン等のキノン類との反応で得る事ができる。これらの合成法については特許文献7、特許文献8、非特許文献1に合成方法が示されているが、これに限定されるものではない。また、リン含有エポキシ樹脂中でリン含有フェノール化合物を合成してもよい。
【0021】
本発明では特定のリン含有エポキシ樹脂に特定のリン含有フェノール化合物を溶解させることを特徴とするが、リン含有エポキシ樹脂中にリン含有フェノール化合物を溶解した状態とは室温にてリン含有フェノール樹脂の固体がリン含有エポキシ樹脂中で観察されないことをいう。具体的にはリン含有エポキシ樹脂組成物が固体の場合は加熱溶融等により脱泡し、液体の場合はそのまま脱泡して、23℃の雰囲気化において20倍の顕微鏡を用いてリン含有フェノール化合物に由来する固体が析出していないことを確認できた状態のことをいう。また、リン含有エポキシ樹脂組成物が溶媒に溶解している場合はそのまま室温にて20倍の顕微鏡で観察することでリン含有フェノール化合物に由来する固体が析出していない状態をいう。
リン含有エポキシ樹脂にリン含有フェノール化合物を溶解する方法については特に規定するものではなく、事前に合成または市販されているリン含有フェノール化合物をリン含有エポキシ樹脂内に混ぜてもよく、またリン含有エポキシ樹脂内でリン含有フェノール化合物を合成することでも目的とするリン含有エポキシ樹脂組成物を得ることができる。更にはリン含有フェノール化合物をエピハロヒドリンと反応することによってリン含有エポキシ樹脂を合成しながら残存するリン化合物を溶解することもできる。リン含有エポキシ樹脂へのリン含有フェノール化合物の溶解は無溶媒または溶媒を併用して行うことができ、リン含有エポキシ樹脂とリン含有フェノール化合物の反応が起きない程度の加熱撹拌を行うことで溶解できる。
リン含有エポキシ樹脂中でリン含有フェノール化合物を合成する場合には、リン含有エポキシ樹脂中に前記一般式(3)のリン化合物とキノン化合物を仕込み反応することができる。この反応では好ましくは溶媒を併用する。使用可能な溶媒としては非プロトン性溶媒が好ましく、例えば、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、2−ブトキシエタノール、ジアルキルエーテル、グリコールエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの反応溶媒は単独で、あるいは2種類以上を同時に使用してもよい。
【0022】
リン含有フェノール化合物とエピハロヒドリンを反応する際の反応比率、反応条件を調整することにおいてもリン含有エポキシ樹脂にリン含有フェノール化合物が溶解しエポキシ樹脂組成物を調整可能である。
リン含有フェノール化合物は有機溶剤への溶解性が乏しいため、いずれの方法によっても溶媒の使用量が多すぎるとリン含有フェノール化合物がリン含有エポキシ樹脂中に溶解せず、析出する恐れがあるため、有機溶剤量としてはリン含有エポキシ樹脂組成物全質量中の50質量%以下が好ましい。
また、いずれの方法においても溶解を行う時の温度は100〜200℃が好ましく、120〜160℃がより好ましい。溶解温度が低いと溶解速度が遅くなる恐れがあり、溶解温度が高いと溶解と並行してフェノール基とエポキシ基の反応が起こり、粘度が高くなるため、扱いが困難となる恐れがある。
また、ここで用いるリン含有フェノール化合物はリン含有エポキシ樹脂100質量部に対して5〜45質量部になるようにすることが必要であり、10〜45質量部になるようにすることが難燃性の観点からさらに望ましい。リン含有フェノール化合物が5質量部より少ない場合は難燃性を得るためにリン含有エポキシ樹脂のリン含有率を高めなければならず、樹脂粘度高くなることからリン含有フェノール樹脂の溶解が難しくなり、リン含有エポキシ樹脂のリン含有率が低い場合、溶解は容易であるが難燃性は得られない。リン含有フェノール化合物が多い場合は完全に溶解しなくなる恐れがある。
【0023】
なお、本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物というときは、特に断りがない限り、一般式(1)の構造を有するリン含有エポキシ樹脂と一般式(2)で示されるリン含有フェノール化合物からなるリン含有エポキシ樹脂組成物(a)と、一般式(1)の構造を有するリン含有エポキシ樹脂と一般式(2)で示されるリン含有フェノール化合物とエポキシ樹脂(B)からなるリン含有エポキシ樹脂組成物(b)と、一般式(1)の構造を有するリン含有エポキシ樹脂と一般式(2)で示されるリン含有フェノール化合物と硬化剤(C)からなるリン含有エポキシ樹脂組成物(c1)と、一般式(1)の構造を有するリン含有エポキシ樹脂と一般式(2)で示されるリン含有フェノール化合物とエポキシ樹脂(B)と硬化剤(C)からなるリン含有エポキシ樹脂組成物(c2)との全てを含む意味で使用されるが、文脈上明らかな場合は、それぞれのいずれかのリン含有エポキシ樹脂組成物を示す。また、各リン含有エポキシ樹脂組成物に更に何かを配合する場合は、各リン含有エポキシ樹脂組成物を構成する各成分の総合計を基準とする。即ち、リン含有エポキシ樹脂組成物(a)に更に何かを配合する場合は、一般式(1)の構造を有するリン含有エポキシ樹脂と一般式(2)で示されるリン含有フェノール化合物の2成分の合計量が基準となり、リン含有エポキシ樹脂組成物(c2)に更に何かを配合する場合は、一般式(1)の構造を有するリン含有エポキシ樹脂と一般式(2)で示されるリン含有フェノール化合物とエポキシ樹脂(B)と硬化剤(C)の4成分の合計量が基準となる。
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物(a)にはエポキシ樹脂(B)を更に添加することができる。この場合、エポキシ樹脂(B)を混合する方法は特に規定するものではなく、一般に用いられる方法を用いて行うことができる。また、加熱して混合する場合は200℃以下で行うことが望ましく、160℃以下で行うことがさらに望ましい。混合温度が200℃以上ではリン含有エポキシ樹脂組成物(b)中のエポキシ基の反応が起こってしまい、粘度が高くなり、取り扱いが困難となる可能性がある。
【0024】
ここで用いられるエポキシ樹脂(B)としてはリン含有エポキシ樹脂を合成する際に用いられるエポキシ樹脂と同様に分子内にエポキシ基を少なくとも1.5個有しており、より好ましくは2個以上有しているものが良い。これらのエポキシ樹脂は単独、または2種類以上を合わせて用いることができる。
このとき、エポキシ樹脂(B)の量はエポキシ樹脂(B)を加えたリン含有エポキシ樹脂組成物(b)全体のリン含有率が2質量%以上にすることが難燃性の観点から好ましい。リン含有エポキシ樹脂組成物(b)中のリン含有率が少ないと、難燃性が発現しない恐れがある。
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物[(a)または(b)]に使用できる硬化剤(C)としては、エポキシ樹脂に用いられる公知公用のものが使用でき、具体的には例えば、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等のヒドロキシベンゼン類、ビナフトール類、ビフェノール類、トリスフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、トリスヒドロキシフェニルメタン、トリスヒドロキシフェニルエタン、ショウノール BRG−555(昭和電工株式会社製 フェノールノボラック樹脂)、クレゾールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、アラルキルフェノールノボラック樹脂、トリアジン環含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニルアラルキルフェノール樹脂、レヂトップ TPM−100(群栄化学工業株式会社製、トリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂)、アラルキルナフタレンジオール樹脂等の一分子中に2個以上のフェノール性水酸基と有する化合物類、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジド類、イミダゾール化合物類及びその塩類、ジシアンジアミド、アミノ安息香酸エステル類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン等の脂肪族アミン類、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノエチルベンゼン等の芳香族アミン類、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸等の酸無水物類等、2メチルイミダゾール、2エチル4メチルイミダゾール、2フェニルイミダゾール等のイミダゾール類が挙げられ、これら硬化剤を2種類以上併用しても構わない。硬化剤(C)の使用量は、リン含有エポキシ樹脂組成物[(a)または(b)]中のエポキシ基当量からリン含有エポキシ樹脂組成物中に含まれるリン含有フェノール化合物の活性水素当量を引いた値を1当量とした場合、硬化剤(C)の官能基が0.1〜1.3当量の範囲が望ましく、0.2〜1.0当量がさらに望ましい。硬化剤の官能基の当量が少ないとエポキシ基の硬化反応が十分に進行しないため硬化物として得ることができず、多いと未反応の硬化剤が残ってしまうため、硬化物が十分な機械物性を得ることができなくなる恐れがある。
【0025】
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物には、流動性や粘度等を調整する場合は、物性を損ねない範囲で希釈剤を使用することが可能である。希釈剤は反応性希釈剤が好ましいが、非反応性希釈剤でも構わない。反応性希釈剤としては、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等の単官能、レゾルシノールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の二官能、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジルエーテル類が挙げられる。非反応性希釈剤としては、ベンジルアルコール、ブチルジグリコール、パインオイル等が挙げられる。これら希釈剤はリン含有エポキシ樹脂組成物100質量部に対して30質量部以下となるようにすることが好ましい。希釈剤の添加量が多いと非反応性希釈剤の場合は硬化物からのブリードアウトが起こる恐れがあり、反応性希釈剤の場合も硬化反応が十分に進行せずにブリードアウトする恐れがある。
また、本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物には必要に応じて硬化促進剤を使用することが可能である。例えば、ホスフィン類、四級ホスホニウム塩類、三級アミン類、四級アンモニウム塩類、イミダゾール化合物類、三フッ化ホウ素錯体類、3−(3,4−ジクロロジフェニル)−1,1−ジメチルウレア、3−(4−クロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、3−フェニル−1,1−ジメチルウレア等が挙げられる。これら硬化促進剤は使用するエポキシ樹脂、併用するエポキシ樹脂硬化剤の種類、成形方法、硬化温度、その他要求特性によるが、リン含有エポキシ樹脂組成物100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲が好ましい。
【0026】
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物は、特性を損ねない範囲で他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を配合してもよい。例えばフェノール樹脂、アクリル樹脂、石油樹脂、インデン樹脂、クマロンインデン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニルホルマール、スチレンマレイン酸樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これら熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂はリン含有エポキシ樹脂組成物100質量部に対して50質量部を超えないように配合することが望ましい。配合量が50質量部を超える場合、硬化物中のリン含有率が低下してしまい、十分な難燃性が得られない恐れがある。
【0027】
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて無機充填剤、有機充填剤を配合することができる。充填剤の例としては、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、水酸化アルミニウム、ベーマイト、タルク、焼成タルク、クレー、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、窒化ホウ素、酸化チタン、ガラス粉末、シリカバルーン、炭素、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、アラミド繊維、合成繊維、セラミック繊維等が挙げられる。これら充填剤はリン含有エポキシ樹脂組成物100質量部に対して1〜80質量部が好ましい。少ないと無機充填剤、有機充填剤の特性が発現せず、多いと硬化後においても脆くなり、硬化物が十分な機械物性を得ることができなくなる恐れがある。
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物は、さらに必要に応じてシランカップリング剤、酸化防止剤、離型剤、消泡剤、乳化剤、揺変性付与剤、平滑剤、難燃剤、顔料等の各種添加剤を配合することができる。これらの添加剤は樹脂組成物全質量中の0.01〜20質量%の範囲が好ましい。
【0028】
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物は、公知のエポキシ樹脂組成物と同様な方法により硬化して硬化物とすることができる。リン含有エポキシ樹脂に溶解したフェノール化合物はリン含有エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂(B)のエポキシ基と硬化反応を起こし、硬化に寄与する。しかし、硬化方法は公知のエポキシ樹脂組成物と同様の方法をとることができ、本発明の樹脂組成物固有の方法は不要である。
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物は繊維状基材に含浸させることによりプリント配線板等で用いられるプリプレグを作成することができる。繊維状基材としてはガラス等の無機繊維や、ポリエステル等、ポリアミン、ポリアクリル、ポリイミド、ケブラー等の有機質繊維の織布または不織布を用いることができるがこれに限定されるものではない。本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物からプリプレグを製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えば上記リン含有エポキシ樹脂組成物を溶剤で粘度調整して作成した樹脂ワニスに浸漬して含浸した後、加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)して得られるものであり、例えば100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥することができる。ここで、プリプレグ中の樹脂量は、樹脂分30〜80質量%とすることが好ましい。
また、前記にて作成したプリプレグを硬化するには一般にプリント配線板を製造するときに用いられる積層板の硬化方法を用いることができるがこれに限定されるものではない。例えば、プリプレグを用いて積層板を形成する場合、プリプレグを一枚または複数枚積層し、片側または両側に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加熱・加圧して積層一体化する。ここで金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を用いることができる。ここで作成した積層物を加圧加熱することでプリプレグを硬化させ、積層板を得ることができるが、温度としては160〜220℃、圧力を50〜500N/cm
2、加熱加圧時間を40〜240分間とすることで目的とする硬化物を得ることができる。加熱温度が低いと硬化反応が十分に進行せず、高いとリン含有エポキシ樹脂組成物の分解が始まる恐れがある。また、加圧圧力が低いと樹脂が流れてしまい、希望する厚みの硬化物が得られない可能性ある。さらに、加熱加圧時間が短いと十分に硬化反応が進行しない可能性があり、長いとプリプレグ中のリン含有エポキシ樹脂組成物の熱分解が起こる可能性がある。そのため上記条件で管理することが好ましい。
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物は高いリン含有率であることから優れた難燃性を有しており、低粘度であることからガラスクロス等の繊維状基材への含浸性が良好であり作業性に優れている。リン含有エポキシ樹脂硬化物は難燃性や耐熱性、接着性が良好であり、電気・電子部品に用いられる封止材、銅張り積層板、絶縁塗料、難燃塗料、複合材、絶縁難燃接着剤等の材料として有用であることが判った。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、特に断りがない限り、部は「質量部」を表し、%は「質量%」を表す。なお、実施例及び比較例における分析方法、測定方法は以下の方法にて実施した。
エポキシ当量:JIS K7236に準じた。
フェノール性水酸基当量:試料に4%のメタノールを含むTHFを加え、10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドを加えて、紫外可視分光光度計を用いて波長400nmから260nm間の吸光度を測定した。同様の測定方法より求めた検量線より、フェノール性水酸基を水酸基1当量当たりの試料の重量として求めた。
粘度:東機産業株式会社製、B型粘度計TVB−10Hを用い、25℃にて測定を行った。
リン含有率:試料に硫酸、塩酸、過塩素酸を加え、加熱して湿式灰化し、全てのリン原子をオルトリン酸とした。硫酸酸性溶液中でメタバナジン酸塩及びモリブデン酸塩を反応させ、生じたリンバナードモリブデン酸錯体の420nmにおける吸光度を測定し、予め作成した検量線により求めたリン原子含有量を%で表した。積層板のリン含有率は、積層板の樹脂分に対する含有率として表した。
ガラス転移温度:IPC−TM650 2.4.25cに準じて測定を行った。
難燃性:UL(Underwriter Laboratorics)規格に準じて測定を実施した。評価はV−0、V−1、V−2で記した。また、5本の残炎時間の合計を残炎時間合計として記した。
溶解性:固体の場合は加熱溶融等により脱泡し、液体の場合はそのまま脱泡して、23℃の雰囲気化において20倍の顕微鏡を用いてリン含有フェノール化合物に由来する固体が析出していないことを確認した。析出していないものを○、析出したものを×で示した。
【0030】
実施例1
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブラスコ中に、エポキシ樹脂としてフェノールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、商品名エポトートYDPN−638)を57.7部およびリン化合物として9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光株式会社製、商品名HCA)を42.3部入れ、160℃で5時間反応させることで、エポキシ当量766g/eq、リン含有率6.0%のリン含有エポキシ樹脂を得た。この中にリン含有フェノール化合物として10−(1,4−ジオキシナフタレン)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン(三光株式会社製、商品名HCA−NQ)を10部加え、120℃で2時間撹拌することで目的とするリン含有エポキシ樹脂組成物を得た。得られたリン含有エポキシ樹脂組成物は均一に溶解しており、リン含有率は6.2%であった。このリン含有エポキシ樹脂組成物をメチルエチルケトン(以下、MEK)にて固形分70%に希釈したリン含有エポキシ樹脂組成物ワニスの粘度は9800mPa・sであった。
【0031】
実施例2
エポキシ樹脂としてYDPN−638を66.2部、リン化合物としてHCAを33.8部、リン含有フェノール化合物として10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光株式会社製、商品名HCA−HQ)を20部に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、エポキシ当量460g/eq、リン含有率4.2%のリン含有エポキシ樹脂を得た後にHCA−NQを溶解し目的とするリン含有エポキシ樹脂組成物を得た。得られたリン含有エポキシ樹脂組成物は均一に溶解しており、リン含有率は5.6%であった。このリン含有エポキシ樹脂組成物をMEKにて固形分70%に希釈したリン含有エポキシ樹脂組成物ワニスの粘度は1040mPa・sであった。
【0032】
実施例3
エポキシ樹脂としてYDPN−638を71.8部、リン化合物としてHCAを28.2部、リン含有フェノール化合物としてHCA−NQを45部に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、エポキシ当量363g/eq、リン含有率4.0%のリン含有エポキシ樹脂を得た後にHCA−NQを溶解し目的とするリン含有エポキシ樹脂組成物を得た。得られたリン含有エポキシ樹脂組成物は均一に溶解しており、リン含有率は5.3%であった。このリン含有エポキシ樹脂組成物をMEKにて固形分70%に希釈したリン含有エポキシ樹脂組成物ワニスの粘度は1010mPa・sであった。
【0033】
実施例4
エポキシ樹脂としてYDPN−638を84.5部、リン化合物としてHCAを15.5部、リン含有フェノール化合物としてHCA−NQを40部に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、エポキシ当量247g/eq、リン含有率2.2%のリン含有エポキシ樹脂を得た後にHCA−NQを溶解し目的とするリン含有エポキシ樹脂組成物を得た。得られたリン含有エポキシ樹脂組成物は均一に溶解しており、リン含有率は3.9%であった。このリン含有エポキシ樹脂組成物をMEKにて固形分70%に希釈したリン含有エポキシ樹脂組成物ワニスの粘度は530mPa・sであった。
【0034】
実施例5
エポキシ樹脂としてYDPN−638を63.8部とビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、商品名エポトートYDF−170)を10部、リン化合物としてHCAを15.6部とHCA−HQを10.6部、リン含有フェノール化合物としてHCA−NQを5部に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、エポキシ当量355g/eq、リン含有率3.2%のリン含有エポキシ樹脂を得た後にHCA−NQを溶解し目的とするリン含有エポキシ樹脂組成物を得た。得られたリン含有エポキシ樹脂組成物は均一に溶解しており、リン含有率は3.5%であった。このリン含有エポキシ樹脂組成物をMEKにて固形分70%に希釈したリン含有エポキシ樹脂組成物ワニスの粘度は650mPa・sであった。
【0035】
実施例6
エポキシ樹脂としてオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、商品名エポトートYDCN−700−7)を55.6部とYDF−170を20部、リン化合物としてHCAを16.4部とHCA−NQを
8.0部、リン含有フェノール化合物としてHCA−HQを8部に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、エポキシ当量365g/eq、リン含有率3.0%のリン含有エポキシ樹脂を得た後にHCA−NQを溶解し目的とするリン含有エポキシ樹脂組成物を得た。得られたリン含有エポキシ樹脂組成物は均一に溶解しており、リン含有率は3.5%であった。このリン含有エポキシ樹脂組成物をMEKにて固形分70%に希釈したリン含有エポキシ樹脂組成物ワニスの粘度は600mPa・sであった。
【0036】
比較例1
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブラスコ中にYDPN−638を100部とHCA−NQを28部加え、120℃で撹拌を実施したが、6時間の撹拌でも完全に溶解することができなかった。
【0037】
比較例2
エポキシ樹脂としてYDPN−638を88部、リン化合物としてHCAを12部、リン含有フェノール化合物としてHCA−HQを4部に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、エポキシ当量226g/eq、リン含有率1.7%のリン含有エポキシ樹脂を得た後にHCA−NQを溶解し目的とするリン含有エポキシ樹脂組成物を得た。得られたリン含有エポキシ樹脂組成物は均一に溶解しており、リン含有率は2.0%であった。このリン含有エポキシ樹脂組成物をMEKにて固形分70%に希釈したリン含有エポキシ樹脂組成物ワニスの粘度は500mPa・sであった。
【0038】
比較例3
エポキシ樹脂としてYDPN−638を88部、リン化合物としてHCAを12部、リン含有フェノール化合物としてHCA−HQを13部に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、エポキシ当量226g/eq、リン含有率1.7%のリン含有エポキシ樹脂を得た後にHCA−NQの結晶が溶解せず、目的とするリン含有エポキシ樹脂組成物を得ることができなかった。
【0039】
比較例4
エポキシ樹脂としてYDPN−638を49.3部、リン化合物としてHCAを50.7部、リン含有フェノール化合物としてHCA−HQを8部に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、エポキシ当量2285g/eq、リン含有率7.2%のリン含有エポキシ樹脂を得た後にHCA−NQの結晶が溶解せず、目的とするリン含有エポキシ樹脂組成物を得ることができなかった。
実施例1〜6、および比較例1〜4のリン含有エポキシ樹脂組成物の溶解性を表1に示した。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例7
実施例3で得られたリン含有エポキシ樹脂組成物を75部に、エポキシ樹脂(B)としてトリスフェニルメタン型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名EPPN−501H)を25部、硬化剤(C)としてフェノールノボラック樹脂(昭和電工株式会社製、商品名ショウノールBRG−557)を25.6部、硬化触媒として2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成株式会社製、商品名キュアゾール2E4MZ)を0.1部加え、MEKを用いて不揮発分50%となるようにして樹脂ワニスを得た。得られた樹脂ワニスをガラスクロス(型番調査)に含浸後、150℃、10分の乾燥を行うことでプリプレグを得た。得られたプリプレグ4枚と銅箔(三井金属鉱業株式会社製、商品名3EC−III、厚み35μm)を重ねて130℃×15分+190℃×80分の温度条件で2MPaの圧力にて真空プレスを行い0.5mm厚の積層板の硬化物を得た。
【0042】
実施例8
実施例3で得られたリン含有エポキシ樹脂組成物を70部に、エポキシ樹脂(B)としてスチレン変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、商品名TX−1210−90)を30部、硬化剤(C)としてジシアンジアミド(DICY)を2.0部、硬化触媒として2E4MZを0.9部とした以外は実施例7と同様の方法でプリプレグ及び積層板の硬化物を得た。
【0043】
実施例9
実施例3で得られたリン含有エポキシ樹脂組成物を70部に、エポキシ樹脂(B)としてTX−1210−90を30部、硬化剤(C)としてBRG−557を19.9部、硬化触媒として2E4MZを0.9部とした以外は実施例7と同様の方法でプリプレグ及び積層板の硬化物を得た。
【0044】
実施例10
実施例3で得られたリン含有エポキシ樹脂組成物を85部に、エポキシ樹脂(B)としてビスフェノールA型固形エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、商品名エポトートYD−903N)を15部、硬化剤(C)としてDICYを1.3部、硬化触媒として2E4MZを0.9部とした以外は実施例7と同様の方法でプリプレグ及び積層板の硬化物を得た。
【0045】
比較例5
比較例2で得られたリン含有エポキシ樹脂組成物を70部に、エポキシ樹脂(B)としてTX−1210−90を30部、硬化剤(C)としてDICYを4.4部、硬化触媒として2E4MZを0.9部とした以外は実施例7と同様の方法でプリプレグ及び積層板の硬化物を得た。
【0046】
比較例6
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコにHCAを23.5部、1,4−ナフトキノンを4.3部、及びトルエンを100部入れて、75℃で30分間撹拌した後、110℃で90分間脱水反応させた後にYDPN−638を72.2部を加えた後、昇温してトルエンの除去を行った。その後、触媒としてトリフェニルホスフィン(TPP)を0.01部加えて、160℃で4時間反応させることで、エポキシ当量348g/eq、リン含有率1.5%のリン含有エポキシ樹脂を得た。このリン含有エポキシ樹脂をMEKにて固形分70%に希釈したリン含有エポキシ樹脂ワニスの粘度は1730mPa・sであった。得られたリン含有エポキシ樹脂を70部に、エポキシ樹脂(B)としてTX−1210−90を30部、硬化剤(C)としてBRG−557を24.3部、硬化触媒として2E4MZを0.9部とした以外は実施例7と同様の方法でプリプレグ及び積層板の硬化物を得た。
【0047】
比較例7
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブラスコ中に、エポキシ樹脂としてYDPN−638を64.1部およびリン化合物としてHCAを20.9部とHCA−HQを15部入れ、160℃で5時間反応させることで、エポキシ当量444g/eq、フェノール性水酸基当量1750g/eq、リン含有率3.0%のリン含有エポキシ樹脂を得た。このリン含有エポキシ樹脂をMEKにて固形分70%に希釈したリン含有エポキシ樹脂ワニスの粘度は440mPa・sであった。得られたリン含有エポキシ樹脂を70部に、エポキシ樹脂(B)としてTX−1210−90を30部、硬化剤(C)としてBRG−557を29.4部、硬化触媒として2E4MZを0.9部とした以外は実施例7と同様の方法でプリプレグ及び積層板の硬化物を得た。
実施例7〜10、および比較例5〜7の積層板の物性結果を表2に示した。
【0048】
【表2】
【0049】
実施例で示したようにリン含有エポキシ樹脂中にリン含有フェノール樹脂を加えたものについては所定の条件にて樹脂中に溶解し、均一な組成物を得ることができることを確認した。これらの化合物は十分に粘度が低く、ハンドリング性も良好であることが確認できた。また、得られた硬化物についても十分な難燃性が発現することを確認した。これに対して、比較例1ではリン不含有エポキシ樹脂中にリン含有フェノール樹脂を溶解させようと試みたが、リン含有フェノール化合物が完全に溶解せず、不均一な状態であることを確認した。
比較例2ではリン含有エポキシ樹脂を用いてリン含有フェノール樹脂を溶解させたが、リン含有エポキシ樹脂組成物中のリン含有率が2%を下回っていたため、溶解できるリン含有フェノール樹脂の量が少なく、そのリン含有エポキシ樹脂組成物を用いた積層板の難燃性は低かった(比較例5)。また、リン含有フェノール樹脂をさらに溶解させようと試みたが完全には溶解せず、比較例3の量では目視でもリン含有フェノール樹脂の析出が確認できた。
比較例4ではリン含有エポキシ樹脂を用いてリン含有フェノール樹脂を溶解させたが、リン含有エポキシ樹脂組成物中のリン含有率が7%を越えていたため、リン含有エポキシ樹脂の粘度が高くなりリン含有フェノール樹脂を溶解させることができなかった。比較例6は特許文献2のリン含有エポキシ樹脂を用いた積層板での評価だが、難燃性が若干悪く、耐熱性も若干悪かった。
比較例7は特許文献4のリン含有エポキシ樹脂を用いた積層板での評価だが、難燃性が若干悪く、耐熱性も若干悪かった。
実施例、比較例からわかる様に特定のリン含有エポキシ樹脂には特定のリン含有フェノール化合物が溶解し、低粘度で作業性に優れ高い難燃性を示した。また、本発明の組成物は耐熱性、誘電率、接着力を向上するエポキシ樹脂(B)を配合しても難燃性が得られ、特に誘電特性は低くなることが分かった。