【文献】
Yamaguchi Y、外6名,Studies of a microchip flow-chamber system to characterize whole blood thrombogenicity in healthy in,Thromb Res.,2013年 8月,Vol.132,No.2,Page.263-270
【文献】
Hosokawa K、外6名,A novel automated microchip flow-chamber system to quantitatively evaluate thrombus formation and an,J Thromb Haemost.,2011年10月,Vol.9,No.10,Page.2029-2037
【文献】
Hosokawa K、他6名,Comparative evaluation of direct thrombin and factor Xa inhibitors with antiplatelet agents under flow and static conditions: an in vitro flow chamber model.,PLoS One.,2014年 1月31日,Vol.9,No.1,e86491,DOI:10.1371/journal.pone.0086491
【文献】
Schott U、他1名,Bringing flow into haemostasis diagnostics.,Br J Anaesth.,2013年12月,Vol.111,No.6,Page.864-867,DOI:10.1093/bja/aet289
【文献】
Hosokawa K、他6名,Antithrombotic effects of PAR1 and PAR4 antagonists evaluated under flow and static conditions.,Thromb Res.,2014年 1月,Vol.133,Page.66-72,DOI:10.1016/j.thromres.2013.10.037
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一の血液収容容器および第二の血液収容容器に連結されて、第一の血液収容容器および第二の血液収容容器から第一の流路および第二の流路に血液試料を流入させるためのポンプと、該ポンプにかかる圧力を測定するための圧力センサーを含む、請求項5または6に記載の血液性状検査用装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の血液検査では、一次止血では血小板凝集能、2次止血は血液凝固時間を測定していた。また、上記の通り、マイクロチップを用いた血栓形成能や血小板凝集能の解析方法も開示されている。しかしながら、1アッセイで一次止血、二次止血能を同時に解析し、血栓症又は出血症の要因解析や治療効果などについて評価を行うことのできる有効な検査方法は存在しない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、微量の血液を用いて効率よく一次止血、二次止血能を同時に解析することのできる装置および方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、
内部に血液試料を流すための第一と第二の流路を有する血液性状検査用マイクロチップであって、第一の流路は、コラーゲンと組織トロンボプラスチンが塗布された第一反応部を有し、第二の流路は、コラーゲンが塗布され、第一反応部と同等またはそれ以下の量の組織トロンボプラスチンが塗布されるか、組織トロンボプラスチンが塗布されない第二反応部を有する、血液性状検査用マイクロチップを提供する。なお、組織トロンボプラスチンは組織因子を含む組織からの抽出成分であることから、組織トロンボプラスチンの代わりに、同等の凝固活性を有する精製された組織因子を塗布することも可能である。
ここで、第一反応部では、コラーゲンと、コラーゲンに対して1重量%以上の組織トロンボプラスチンとの混合溶液が塗布されており、第二反応部では、コラーゲンと、コラーゲンに対する重量比が第一の反応部と同等又はそれ以下の組織トロンボプラスチンとの混合溶液が塗布されていることが好ましい。
また、血液性状検査用マイクロチップにおいては、第一反応部および第二反応部には、血液の流れる方向に沿って流路分割壁が設置されていることが好ましい。
また、血液性状検査用マイクロチップは、第一反応部および第二反応部の下流側にそれぞれ廃液貯留部を有することが好ましい。この廃液貯留部は、抗凝固剤を含んだ吸収材を有することが好ましい。
本発明はまた、上記血液性状検査用マイクロチップと、血液性状検査用マイクロチップの第一の流路および第二の流路へ血液を導入するための第一の血液収容容器および第二の血液収容容器とを含む、血液性状検査用装置を提供する。
ここで、該第一の血液収容容器および第二の血液収容容器は一体成型されていることが好ましい。
また、血液性状検査用装置は、第一の血液収容容器に連結されて第一の血液収容容器から第一の流路に血液試料を流入させるための第一のポンプと、該ポンプにかかる圧力を測定するための第一の圧力センサー、ならびに第二の血液収容容器に連結されて第二の血液収容容器から第二の流路に血液試料を流入させるための第二のポンプと、該ポンプにかかる圧力を測定するための第二の圧力センサーを含むことが好ましい。
本発明はまた、前記血液性状検査用装置を用い、第一と第二の流路に血液試料を流して血液の血栓形成能および血小板機能を解析し、一次止血能と二次止血能の比を測定することを特徴とする、血液性状測定方法を提供する。
第一の反応部がコラーゲンと組織トロンボプラスチンがコートされており、フィブリンと血小板からなる血栓形成がなされ、第二の反応部がコラーゲンのみがコートされ血小板特異的な血栓が形成される場合は、第一の流路、第二の流路の流速は同程度でも、血栓の組成の違いが明確であり、第一の反応部、第二の反応部における血栓形成の対比によって、一次止血能と二次止血能の評価解析が可能である。その場合には、第一の反応部、第二の反応部における血液の壁ズリ速度は、ともに1000〜3000 s
-1の範囲である事が望ましい。
一方、第一の反応部、第二の反応部ともにコラーゲンと組織トロンボプラスチンがコートされている場合には、両反応部において血小板とフィブリンよりなる混合血栓が形成される。よって第一の反応部よりも第二の反応部の壁ズリ速度を大きく(流速を速く)することで、第二の反応部ではより血小板を多く含む、一次止血能に依存した血栓が形成され、第一の反応部ではフィブリンを多く含み血液凝固反応系が相対的に優位な血栓が形成され、両者の血栓組成が、大きく異なるため、両者の比をとることで一次止血と二次止血能の評価が可能となる。
その場合には両反応部の壁ズリ速度は300 s
-1〜3000 s
-1の間であり、第一の反応部における壁ズリ速度が1200 s
-1未満であり、第二の反応部における壁ズリ速度が1200 s
-1以上であることが好ましく、第一に比べ第二の反応部の壁ズリ速度は、1.5倍以上、さらに好ましくは2倍以上であることが望ましい。
また、前記血液試料は、XII因子阻害剤と、血漿カリクレイン阻害剤、低分子へパリン、ヘパラン硫酸および合成ペンタサッカライドから選択される抗凝固剤とで処理された血液試料であることが好ましい。
さらに、本発明では第一の流路と第二の流路に同等量のコラーゲンと組織トロンボプラスチンがコートされており、第一の流路には血液試料を、第二の流路には該血液試料に、P2Y
12阻害剤、PCC(プロトロンビンコンプレックス)、VWF(von Willebrand factor)、等の試薬(抗血小板薬または止血用血液製剤)を添加した試料を加え、第一と第二の流路の血栓形成能を対比することで、血液試料の血栓形成能の亢進または欠如の原因を解析する事が可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る血液性状検査用マイクロチップおよびそれを用いた血液性状検査用装置によれば、第一の流路はコラーゲンと組織トロンボプラスチンが塗布された第一反応部を有し、第二の流路はコラーゲンが塗布され、第一反応部と同等又は、それ以下の量の組織トロンボプラスチンが塗布されるか、組織トロンボプラスチンが塗布されない第二反応部を有するため、第一の流路では第二の流路と比較し、血小板凝集塊よりもフィブリンを多く含み、血液凝固反応が相対的に優位な血栓形成が起こる。一方、第二の流路では、第一の流路に比べ血小板を多く含み、血小板凝集能が主体となる血栓形成が起こるため、両流路の血栓形成能の比を解析することで、血小板と凝固系のバランス(即ち、一次止血、二次止血のバランス)が比較解析できる。また、抗血小板剤、抗凝固剤、止血薬等種々の薬剤の一次止血、二次止血能に対する抑制効果の解析も可能である。
組織トロンボプラスチンを含まず、コラーゲンのみをコートした第2反応部を用いた場合には、血液凝固系の影響を殆ど受けない、より血小板凝集特異的な血栓が形成される。
この血小板凝集特異的な血栓はアスピリン、クロピドグレルといった抗血小板薬により効果的に抑制される。一方、アスピリン、クロピドグレルは、コラーゲンと組織トロンボプラスチンを反応部に用いた場合に形成されるフィブリンと血小板を主成分とする血栓に対しての抑制効果が低くなる為、両反応部に起こる血栓形成の比を解析することで、抗血小板薬の効きの程度 または 抗血小板剤の休薬による薬剤効果からの離脱による一次止血の回復の度合いを定量的に解析する事が可能である。
また、血液性状検査用マイクロチップが第一反応部および第二反応部の下流側にそれぞれ廃液貯留部を有するものであり、この廃液貯留部がクエン酸、EDTA、へパリン等の抗凝固剤溶液を含んだ吸収材を有することにより、廃液をマイクロチップ外に排出する手間が省け、かつ、廃液による測定結果への悪影響も防ぐことができる。
本発明のマイクロチップを含む血液性状検査用装置が、第一の血液収容容器に連結されて第一の血液収容容器から第一の流路に血液試料を流入させるための第一のポンプと、該ポンプにかかる圧力を測定するための第一の圧力センサー、ならびに第二の血液収容容器に連結されて第二の血液収容容器から第二の流路に血液試料を流入させるための第二のポンプと、該ポンプにかかる圧力を測定するための第二の圧力センサーを含むものであれば、フィブリンによる血液凝固と血小板凝集をそれぞれ定量的に測定できるので好ましい。
また、第一の血液収容容器および第二の血液収容容器が一体成型されていると、一度のオートピペットの操作で測定開始することが出来るので好ましい。
本発明の血液性状検査用装置を用いた血液性状測定方法においては、第一の流路における流速が1200 s
-1未満であり、第二の流路における流速が1200 s
-1以上であることが好ましく、第一に比べ第二の反応部の壁ズリ速度は、1.5倍以上、さらに好ましくは2倍以上であることがより好ましいが、このように、第2の流路のズリ速度を第一の流路に比べ高くすることで、第一の流路内に比べ、相対的に血小板優位な血栓が形成される為、両流路内の血栓形成能の比をとる事によって、血液試料の一次止血能と二次止血能の違いをより明確に解析する事が可能である。
また、血液試料が接触因子阻害剤と、低分子へパリン、ヘパラン硫酸および合成ペンタサッカライドから選択される抗凝固剤で処理された血液試料であることがのぞましい。低分子へパリン、ヘパラン硫酸、合成ペンタサッカライドは静置状態の血液のクロット形成を良く抑制する一方、血流下の血栓形成に対する抑制効果は低いので、接触因子阻害剤と混合することで、血液収容容器内での血液凝固が抑制されるのに対し、マイクロチップの流路内での血栓形成や血小板凝集は殆ど抑制されないので、より正確な反応部における血栓形成の測定が可能になり、好ましい。接触因子は血液凝固XII因子阻害剤が好ましい。
更に好ましくは、XII阻害剤と血漿カリクレイン阻害剤の両方と低分子へパリン、ヘパラン硫酸、合成ペンタサッカライドから選択される抗凝固剤の混合物を用いると、マイクロチップ内の血栓形成には影響を殆ど与えることなく、血液収容容器内での血液凝固は非常に強く抑制される。
採血管は、例えばクエン酸ナトリウムを含む採血管に、XII因子阻害剤と、血漿カリクレイン阻害剤、低分子へパリン、へパラン硫酸、合成ペンタサッカライドからなる抗凝固薬と塩化カルシウムを添加しクエン酸の抗凝固能を解除後に測定することも可能であるし、へパリンを含む採血管に、XII因子阻害剤とへパリナーゼを添加することも可能である。この場合にはへパリナーゼによってへパリンが低分子量のへパリンに分解され、XII因子阻害剤の効果との組合わせによって、リザーバー内における凝固を強く抑える。
ただし、第二の流路に組織トロンボプラスチンや組織トロンボプラスチンを含まず、血小板特異的な血栓形成を解析する場合には、ヒルジン、アルガトロバン等の抗トロン剤を用いることが可能である。その場合は、へパリン採血管で採血した後に、へパリナーゼと抗トロンビン剤を添加することで、簡便に抗トロンビン処理された、第二の流路の解析用の血液サンプルが調整できる。
さらに、本発明は第一の反応部と第二の反応部に同等量のコラーゲンと組織トロンボプラスチンがコートされた流路を用い、第一の流路には血液試料を、第二の流路には、該血液試料に、凝固因子などの止血用血液製剤、抗血小板薬等を添加し、第一と第二の反応部での血栓形成を対比することで、血液試料の血栓形成能の亢進または欠如の原因を解析する事が可能となる。
例えば、クロピドグレル内服患者の血液試料にAR-C66096等のP2Y
12阻害剤を添加することで、血栓形成能の亢進とクロピドグレルによるP2Y
12の阻害度合いの解析が可能となる。
また、止血機能の低下した血液試料にVWFやPCCを添加した場合には、止血機能の低下の原因にVWFや凝固因子レベルの低下が含まれるのかの解析が出来き、また、VWF、PCC製剤の投与によって止血機能が回復するのか、という治療効果の予測に役立つ。
例えば、VWD(von Willebrand病)患者の血液試料を第一の流路で解析しつつ、第二の流路でVWFを添加して解析することで、VWDに対する治療効果の予測が出来る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、図面を参照して本発明の血液性状検査用マイクロチップおよび血液性状検査装置を説明する。ただし、本発明の血液性状検査用マイクロチップおよび血液性状検査装置は以下の態様に限定されない。なお、本発明において、「血液」とは、全血及び多血小板血漿を含む。また。同等量とは、例えば、量の差が±10%以内であることをいう。
図1は、本発明のマイクロチップの第1の形態例を示す概念図である。以下、
図1に基づいて説明する。
【0011】
図1(A)は、マイクロチップ1の第一の流路101と第一の廃液貯留部103となる第一の溝および第二の流路111と第二の廃液貯留部113となる第二の溝が表面に掘られた第1の基板1aの平面図である。第一の溝および第二の溝は、第一の流路101の流入口側の端とは異なる側の端に第一の廃液貯留部103が、第二の流路111の流入口とは異なる側の端に第二の廃液貯留部113がそれぞれ連結されるような形状を有する。
そして、第一の溝および第二の溝には、第一の反応部102、第二の反応部112と重なる位置にそれぞれ後述する流路分割壁109,119が設けられている。
【0012】
流路に該当する溝の断面形状は、凹字状、U字状、V字状等任意である。また、流路に該当する溝の深さは10〜200μmであることが好ましく、幅は10μm〜3mmであることが好ましい。
一方、廃液貯留部に該当する溝の深さは廃液を多く貯留するため流路に該当する溝の深さより深いことが好ましく、例えば、0.5〜10mmである。
【0013】
図1(B)は、マイクロチップ1の第一の流入口104及び第二の流入口114並びに第一の廃液貯留部上の第一の空気穴105及び第二の廃液貯留部上の第二の空気穴115となる貫通孔が掘られた第2の基板1bの平面図である。流入口104、114となる貫通孔の位置は、第1の基板1aと積層されたときに、それぞれ、第1の基板1a上の、第一の流路101の流入口側の端部に相当する位置、第二の流路111の流入口側の端部に相当する位置となっている。
空気穴105、115となる貫通孔の位置は、第1の基板1aと積層されたときに、それぞれ、第1の基板1aの廃液貯留部103,113に相当する溝の上部の一部に相当する位置となっている。
【0014】
また、第二の基板1bには、第一の基板1aと積層した時に、第一の流路101および
第二の流路
111の下流側の一部と重なる位置のそれぞれに、コラーゲンと組織トロンボプラスチンまたは組織因子がコートされており、これらコート部位が第一の基板と積層されたときに第一の反応部102、第二の反応部112となる。
【0015】
コラーゲンのコート量は血液凝固反応を引き起こす濃度であれば特に制限されないが、例えば、1〜100μg/cm
2、特に好ましくは10μg/cm
2である。第一反応部と第二反応部でコラーゲンのコート量が異なっていてもよいが、ほぼ等しい量であることが好ましい。
【0016】
コラーゲンのコーティングは、例えば、特開平05−260950号公報やBlood.1995 Apr 1;85(7):1826−35.に記載されているように、コラーゲンを酸性溶液に溶解し、これを親水性が付与されたガラスやポリスチレン等の基板の所定の位置に塗布し、洗浄、乾燥するなどの方法にて簡便に高い接着強度でコーティングが可能である。
疎水性の樹脂等にコートする場合には、樹脂表面を親水化処理した後、所望の領域にコラーゲン溶液を塗布し、自然乾燥ないしは減圧下にて乾燥することでコーティングすることが出来る。
基材としてプラスチックを用いた場合は、表面を親水化処理し、所望の領域にコラーゲン溶液をピペットやシリンジ等のディスペンサーで塗布し、自然乾燥または減圧下で乾燥することでコラーゲンまたは組織トロンボプラスチンを含むコラーゲンを容易にコーティングすることが可能である。
【0017】
組織トロンボプラスチンまたは組織因子のコーティングは、例えば、イオン結合、疎水結合等の結合に加え、基板にアミノ基又はカルボキシル基を導入し、水溶性カルボジイミド等によって脱水縮合することで共有結合による安定的な固定化をおこなうことも可能である。また、組織トロンボプラスチンをコラーゲンと混合した後に、塗布乾燥することでコラーゲンのコーティングと同時に行ってもよい。
【0018】
組織トロンボプラスチンのコート量は第一反応部と比べて第二反応部の方が同等またはそれ以下であり、好ましくは、組織トロンボプラスチンのコート量は第一反応部が第二反応部の1.5倍以上(第二反応部が第一反応部の2/3以下)である。例えば、第一反応部には、コラーゲンに対して1重量%以上の組織トロンボプラスチンがコートされ、第二反応部には第一反応部と同等かそれ以下となるように塗布される。第二反応部では組織トロンボプラスチンはコート量が0でもよい。
【0019】
図1(C)は、第1の基板1aと第2の基板1bとを、第一の基板の溝が掘られた面と、第二の基板のコラーゲン及び組織トロンボプラスチンが塗布された面が互いに接するように、積層して得られるマイクロチップ1の平面図である。
破線は、流路101、111、反応部102、112、および廃液貯留部103,113がマイクロチップ1の内部に存在することを示す。
【0020】
なお、第一反応部及び第二反応部においては、特許文献3,4に開示されたような血液の流れる方向に沿って延在し、流路の幅を複数に分割する複数の流路分割壁が設けられてもよい。コラーゲンと組織トロンボプラスチンを塗布した反応部に分割壁を設けることで、分割壁の部分で血栓形成による閉塞が、他の部分よりも早く進む。
図1のように、分割壁を通過後の血液が通過する流路部分が速やかに(10mm以下)2次元・3次元的に拡張し、
廃液入れに連結されることで、分割壁通過後の血液の凝固形成より早く分割壁部分で血栓形成が進み圧力上昇が起こるので、分割壁における血栓形成を特異的に反映した圧力解析が可能となる。
流路分割壁の間隔は200μm以下であることが望ましい。また、流路分割部において、
流路の幅は流路分割壁によって5つ以上に分割されていることが望ましい。流路分割壁の形状は、流路の幅を複数に分割できさえすれば特に制限されない。また、特許文献4に記載されたように、流路分割壁は表面粗さ(Ra)が10〜200nmになるような処理が施されていてもよい。
このような流路分割壁を有するマイクロチップは、第一の基板の第一反応部及び第二反応部に相当する位置に複数の流路分割壁を設置し、第二の基板と積層することにより作成することができる。
【0021】
なお、廃液貯留部内には、廃液貯留部内に収容可能な大きさの吸収材を設置することもできる。血液吸収材としては、例えば、スポンジや布などが例示される。また、血液吸収材に、クエン酸、EDTA、へパリン等の抗凝固剤溶液を含浸させることもできる。これにより、廃液が凝固して測定結果への悪影響を及ぼすことを防ぐことができる。
【0022】
マイクロチップの材質は、金属、ガラスやプラスチック、シリコーン等が好ましい。また、血液観測(特に画像解析)に使用する観点からは透明な材質が好ましい。さらに、回路を形成する観点からはプラスチックが好ましく、透明なプラスチックが特に好ましい。材質をPDMS(ポリジメチルシロキサン)等のシリコーン製とした場合には、基板同士の密着性に優れるため、第1の基板と第2の基板を接着剤などで接着しなくても圧着することで積層することが出来るが、マイクロチップの内部に高い圧力がかかる場合は、接着剤を用いることが好ましい。また、ポリ2−メトキシエチルアクリレート(PMEA)によっても簡便かつ効果的に意図しない部位での血液凝固を抑制する事が可能である。なお、マイクロチップの基板に設けられる溝や穴は、刃物やレーザー光線で掘ることもできるが、マイクロチップの材質がプラスチックである場合は、射出成型で形成することもできる。射出成型で形成すると、一定した品質のマイクロチップが効率よく作成できるので好ましい。
【0023】
本発明の血液性状評価方法において使用される血液試料は抗凝固処理されたものであることが好ましい。ここで、抗凝固処理に用いる抗凝固処理剤としては、クエン酸ナトリウムまたはカリウム、シュウ酸ナトリウムまたはカリウム、ACD(Acid Citrate Dextrose)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)塩などを挙げることができる。このような抗凝固処理剤は、粉末、凍結乾燥品、水溶液などの溶液として使用することができる。これらの抗凝固処理剤のうち、一般的な3.2%クエン酸ナトリウムが容易に入手できることから好ましい。この場合、血液9容に対してこの抗凝固処理剤1容とするのが好ましい。
その他の抗凝固処理剤としては、へパリン、ヒルジン、トロンビンアプタマー、コーン由来トリプシンインヒビター(1977.J.Biol.Chem 252.8105)等の利用が可能である。なお、抗凝固処理剤は、複数用いられてもよい。
【0024】
また、抗凝固剤としてより好ましいのは、血漿カリクレイン阻害剤、低分子へパリン、ヘパラン硫酸および合成ペンタサッカライドから選択される抗凝固剤である。血漿カリクレイン阻害剤、低分子へパリン、ヘパラン硫酸、合成ペンタサッカライドは静置状態の血液のクロット形成を良く抑制する一方、血流下の血栓形成に対する抑制効果は低いので、血液収容容器内での血液凝固が抑制され、マイクロチップの流路内での血栓形成や血小板凝集は抑制されないので、より正確な測定が可能になり好ましい。これら抗凝固剤は低濃度で用いることが好ましく、ヘパラン硫酸であれば1単位/ml以下、ペンタサッカライド(例えば、フォン
ダパリヌクスナトリウム)であれば2μg/ml以下で用いることが望ましい
。
血漿カリクレイン阻害剤、低分子へパリン、ヘパラン硫酸および合成ペンタサッカライドから選択される抗凝固剤に加えて、血液凝固XII因子阻害剤を添加することが特に好ま
しい。血液凝固XII因子阻害剤はより静置下の血液凝固を強く抑えることができる。さら
に血漿、好ましくはカリクレイン阻害剤を加えるとより強力に静置下の血栓形成を抑制する事が可能である。
【0025】
なお、抗凝固処理された血液を得る方法としては、シリンジまたは真空採血管に予め上記の抗凝固処理剤を入れて採血を行うか、または、採血直後の血液に抗凝固処理剤を速やかに加える等の方法で抗凝固処理した血液を得ることができる。
【0026】
次に、マイクロチップ1を用いた本発明の血液性状検査装置について説明する。
図2は、マイクロチップ1を透明な基板で構成して組み込んだ本発明の血液性状検査装置の第1の形態例である血液性状検査装置Aの模式図である。以下、
図2に基づいて第1の形態例を説明する。
【0027】
マイクロチップ1の第一の流入口104および第二の流入口114には、抗凝固処理された血液が収容されたリザーバー(血液収容容器)106,116がそれぞれ倒立して接続されており、リザーバー106、116には送液ポンプ107、117が接続されている。送液ポンプ107、117には圧力センサー108、118が接続されている。なお、リザーバー106,116は一体成型されていると、取り扱いが容易であり、簡便に測定が可能である。
【0028】
送液ポンプ107、117の液体はミネラルオイル又は生理食塩水などの血液より比重の小さい液体とし、送液ポンプ107、117で当該液体を血液があらかじめ充填されたリザーバー106,116のそれぞれに導入し、該液体を血液の上に重層し、該液体をポンプ107、117で押し出すことで、血液が流路101、111へ導入される。該液体の流入圧を測定することで血液の流路への流入圧を間接的に測定することができる。
【0029】
具体的には、送液ポンプ107、117から、ミネラルオイルがリザーバー106、116内に圧入され、血液の上に重層され、血液をマイクロチップ1の流路101、111内に押し出す。血液は流路101、111を通過し、反応部102、112に到達する。流入口104、114から導入され、流路101、111を通過した血液は、それぞれ反応部102、112を通過する。この際に、反応部102では組織トロンボプラスチンの濃度が高いので、主にフィブリンゲルにより血栓形成が生じ、この血栓形成に基づく流入圧の上昇が観測される。一方、反応部112では組織トロンボプラスチンの濃度が低いので、主に、血小板凝集が引き起こされ、この血小板凝集に基づく流入圧の上昇が観測される。これらの圧力上昇パターンを圧力センサーで検知し、比較することで、血液の性状、すなわち、血栓形成能と血小板凝集能の両方を同時に評価することができる。なお、送液ポンプは第一の流路に流す流速と、第二の流路に流す流速を調整できるものであることが好ましい。
【0030】
第一の流路では血液凝固反応が主体となる血栓形成を、第二の流路では血小板凝集能が主体となる血栓形成を見るためには、第一の反応部がコラーゲンと組織トロンボプラスチンがコートされており、第二の反応部がコラーゲンのみがコートされている場合、または第一反応部の組織トロンボプラスチンコート量が第二反応部の1.5倍以上である場合は第一の流路における流速と第二の流路における流速は同程度でもよいが、第一の反応部と第二の反応部いずれにもコラーゲンと組織トロンボプラスチンが同等量コートされている場合は、第一の流路における壁ズリ速度が1200s
-1未満であり、第二の流路における壁ズリ速度が1200s
-1以上であることが好ましく、第二の反応部の壁ズリ速度が第一の反応部の壁ズリ速度の1.5倍以上であることがより好ましい。これにより、第一の流路ではフィブリンゲルにより血栓形成が、第二の流路では血小板凝集がより起こりやすくなる。
【0031】
また、第一反応部と第二反応部に同等量のコラーゲンと組織トロンボプラスチンが塗布されているマイクロチップを用い、第一の流路には血液試料を流し、第二の流路には該血液試料に、抗血小板薬または止血用血液製剤を添加した試料を同一流速で流して、第一と第二の流路における血栓形成を対比することで、薬剤の効果およびそれに基づく血液試料の性状を解析することができる。例えば、血液試料として血栓症の患者由来の試料を使用し、抗血小板薬を添加した試料では血栓の程度が減少した場合、血栓症の原因が血小板機能の亢進によるもので、治療には抗血小板薬が有効と判定できる。また、止血機能の低下した血液試料にVWFやPCCを添加した場合には、止血機能の低下の原因にVWFや凝固因子レベルの低下が含まれるのかの解析が出来き、また、VWF、PCC製剤の投与によって止血機能が回復するのか、という治療効果の予測に役立つ。
この場合、血液試料はヒルジン又はベンジルスルホニル-D-Arg-Pro-4-アミジノベンジルアミド(BAPA)などのトロンビン阻害剤で抗凝固処理された血液試料であることが好ましい。
なお、評価試料が、コントロール(抗血小板薬、止血用血液製剤を加えない試料)も含めて三種類以上ある場合、複数のマイクロチップを使用することができ、その場合は、いずれか一つのマイクロチップの第一の流路にコントロールの血液試料を流せばよく、他のマイクロチップでは、二種類の評価試料(抗血小板薬または止血用血液製剤を加えた試料)を第一および第二の流路に流してもよい。
【0032】
検査に供した血液は、流路101、111の終端から廃液貯留部103、113に到達し、貯留される。廃液貯留部内にEDTAなどを含浸させたスポンジなどの血液吸収材が配置されていると、血液廃液は血液吸収材に吸収されるが、凝固はしないので、圧力の測定に悪影響を与えることはない。
【実施例】
【0033】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
〔マイクロチップおよび血液性状検査装置の作成〕
図1(A)に示す第1の基板1aおよび
図1(B)に示す第2の基板1bの2枚の透明な基板(株式会社リッチェル製射出成型品)を用意した。 第1の基板1aにおいては、流路101,111の長さは20mm、深さは40μm、幅は2mmとし、廃液貯留部の長さは30mm、深さは1.3mm、幅は8.5mmとした。
また、基板1aには第一の流路および第二の流路の第一の反応部、第二の反応部に相当する位置に、高さ40μm、幅40μm、長さ1.5mmの分割壁を25本均等間隔で設置し、それぞれ流路分割壁109、119とした。
【0035】
第2の基板1bにおいては、流入口104、114となる穴は内径2mmの断面円形の貫通孔とした。一方、空気穴105、115となる穴は内径1mmの断面円形の貫通孔とした。そして、第一の基板と積層したときに流路101の下流側の一部に該当する位置に、コラーゲンと組織トロンボプラスチンをコートした。一方、第一の基板と積層したときに流路111の下流側の一部に該当する位置に、コラーゲンのみコートした。コートしたコラーゲンと組織トロンボプラスチンの濃度とコート方法は以下の通り。
基板1bの第一の反応部102に相当する位置には3mg/mlのコラーゲンと0.4mg/mlの組織トロンボプラスチン溶液を1:1で混和した溶液を,第二の反応部112に相当する位置には、0.75 mg/mlのコラーゲン溶液のみを、それぞれ6mm×6 mmの領域に塗布した。
【0036】
実施例1
第1の基板1aと第二の基板1bとを、第1の基板1aの溝が開口する面と第2の基板1bのコラーゲンおよび組織トロンボプラスチン塗布面が内側になるように、シランカップリング剤及び60℃、3時間の熱圧着により貼り合せ、
図1(C)に示すマイクロチップ1とした。
【0037】
作製したマイクロチップ1を、図示しないステージ上に設置し、
図2のように、マイクロチップ1の流入口104、114にリザーバー106、116を接続し、リザーバー106,116にはチューブを介してポンプ107、117を接続し、ポンプにかかる圧力を圧力センサー108、118で測定した。
【0038】
3.2%クエン酸ナトリウム採血管(テルモ社)及びヒルジン採血管(終濃度25μg/ml;Roche diagnostics社))を用い健常人より採血した血液を用いて実験を行った。
第一の流路には、クエン酸血液に終濃度12mM塩化カルシウムと50μg/mlのコーントリプシンインヒビター(CTI)を添加した血液を、第二の流路には、ヒルジン処理血液を添加し、
図2の解析装置を用い第一の流路と第二の流路ともに、18μl/minの流速で10分間血液をかん流し、圧力を解析した。圧力波形を
図3に示す。60 kPa以下の面積の積分値は、それぞれ457と372であった。
【0039】
実施例2−1
クエン酸血液およびヒルジン血液にそれぞれ、アスピリン10mMとP2Y
12阻害剤であるAR-C66096(Tocris Bioscience社)を100μM添加した以外は実施例1同様の測定を行った。圧力波形を
図3に示す。60kPa以下の面積の積分値は、それぞれ450、65であった。
【0040】
実施例2−2
クエン酸血液およびヒルジン血液にそれぞれ、abciximab を3μg/mlまたは OS-1(GPIb阻害ペプチド)200 nMを添加した以外は実施例1同様の測定を行った。60kPa以下の面積の積分値は、第一の流路はそれぞれ27.0、47.9であり、第二の流路はそれぞれ5.4,15.0であった。
【0041】
実施例1と2より、アスピリンとP2Y
12阻害剤の作用によって、第一の流路に比べ、第二の流路の血栓形成が顕著に抑制されていることがわかる。第一の流路と第二の流路の積分値の比は、薬剤添加前は0.81で、添加後は0.14であった。一方、GPIIbIIIa阻害剤のAbciximabやGPIb阻害剤であるOS-1を添加した場合には第一の流路と第二の流路における血栓形成がともに抑制された。このように、抗血小板薬の効果の対比が可能であった。
【0042】
実施例3
べクトンデッキンソン社のへパリン採血管(3ml)を用い健常人より採血した血液を用いて実験を行った。
第一の流路に、0.1単位/mlのへパリナーゼとXII因子阻害剤として終濃度50μg/mlのCTIを添加し、10分室温で反応させた血液を、第二の流路には、0.1単位のへパリナーゼと終濃度25μg/mlのヒルジンを添加し、10分室温で反応させた血液を、
図2の解析装置を用い、24μl/minの流速(初期壁ズリ速度:約2000s
−1)で10分間血液をかん流し、圧力を解析した。
圧力波形を
図4に示す。60 kPa以下の面積の積分値は、それぞれ285と258であった。
へパリン血にへパリナーゼとFXII阻害剤及びヒルジンを添加することで、第二の流路における血栓形成を解析する事が可能であった。
【0043】
実施例4−1
第2の基板1bにおいて、第一の反応部102と第二の反応部112に相当する位置に、3mg/mlのコラーゲンと0.4mg/ml の組織トロンボプラスチン溶液を1:1で混和した溶液を、それぞれ6mm×6mmの領域に塗布した以外は、実施例1〜3で用いたのと同じ形状のマイクロチップを作製して以下の実験に用いた。
テルモ社の3.2%クエン酸ナトリウムを含む採血管を用い採血した後に、終濃度50μg/mlのCTIと終濃度12mMの塩化カルシウムを添加した血液を、第一の流路には8μl/min(初期壁ズリ速度:約660s
−1),第二の流路には24μl/min(初期壁ズリ速度:約2000s
−1)の流速で、それぞれ10分間かん流し、圧力を解析した。
【0044】
実施例4−2
実施例4−1同様の実験を、(1)クエン酸血液を生食で50%希釈した血液、(2)(1)の50%希釈血液に0.5U VWF(von Willebrand factor)製剤(CSL-Behring社)を添加した血液、(3)(1)の50%希釈血液に0.5U PCC製剤(CSL−ベーリング社)を添加した血液、(4)1Uへパリンを添加した血液、(5)3μg/mlのAbciximab (イーライリリー社) を添加した血液を用い実施した。
10分間の圧力の積分値と第一の流路と第二の流路の比を以下の表1に示す。
【0045】
【表1】
この結果より、抗凝固薬は第一の流路の血栓を強く抑制し、抗血小板薬は第二の流路の血栓をより強く抑制する事が分かった。また、血液希釈後の凝固因子(PCC)の補充によって、第一の流路の血栓が、VWFの補充によって第二の流路の血栓がより顕著に回復した。
【0046】
比較例1
テルモ社の3.2%クエン酸ナトリウムを含む採血管を用い採血した後に、12mM塩化カルシウム、12mM塩化カルシウムと50μg/ml CTI, 12mM塩化カルシウムと50μg/ml CTIと1μg/ml アリクストラ(合成ペンタサッカライド、グラクソ・スミスクライン社)を添加した血液をROTEM(Tem international社)で解析した。結果を
図5に示す。
CTIに合成ペンタサッカライドを添加することで、非血流下における血液凝固が強く抑制される事が示された。
【0047】
一方、実施例4−1の場合は、血液にさらに高濃度のアリクストラ(0.5μg/ml)を添加した場合においても圧力波形の顕著な変化は確認されなかった。
【0048】
実施例5
イヌ血液を3.2%クエン酸ナトリウムで抗凝固処理した。その後、終濃度50μg/mlのCTIと終濃度12mMの塩化カルシウムを添加した血液を、第一の流路には24 μl/min, 第二の流路には8 μl/minの流速で、それぞれ10分間かん流し、圧力を解析した。
【0049】
実施例6
実施例5と同様に実験をイヌクエン酸ナトリウム血液に0.5Uのダナパロイドナトリウムを加えて行った。
【0050】
比較例2
イヌ血液を3.2%クエン酸ナトリウムで抗凝固処理した。その後、12mM塩化カルシウム、または、終濃度50μg/mlのCTIと終濃度12mMの塩化カルシウム または終濃度0.5U/mlのダナパロイドナトリウムと50μg/mlのCTIと終濃度12mMの塩化カルシウム塩化カルシウムを添加し、非血流下における血液凝固をROTEM(Tem International社)を用い解析した。
【0051】
実施例5と6の圧力波形を
図6に示す。比較例2の解析結果を
図7に示す。
比較例2ではダナパロイドナトリウム(0.5U/ml)の添加で非血流下の血液凝固は顕著に延長されるのに対し、実施例5,6では血流下の白色血栓は殆ど抑制されない事が示された。
【0052】
実施例7−1
第2の基板1bにおいて、第一の反応部102と第二の反応部112に相当する位置に、3mg/mlのコラーゲンと0.4mg/ml の組織トロンボプラスチン溶液を1:1で混和した溶液を、それぞれ6mm×6mmの領域に塗布した以外は、実施例1〜3で用いたのと同じ形状のマイクロチップを作成して以下の実験に用いた。
テルモ社の3.2%クエン酸ナトリウムを含む採血管を用い採血した後に、第一の流路には終濃度50μg/mlのCTIと終濃度12mMの塩化カルシウムを添加した血液を、第2の流路には、クエン酸血液をラクテック注(大塚製薬)によって50%希釈した後に50μg/mlのCTIと終濃度12mMの塩化カルシウムを添加した血液を、それぞれ24μl/minの流速で、それぞれ10分間かん流し、流路内の圧力を連続的に解析した。
【0053】
実施例7−2
次いで、上記と同じ条件で、第一の流路には、ラクテック注によって50%希釈した後に終濃度0.5U/ml PCCを添加した血液を、第二の流路にはラクテック注によって50%希釈した後に終濃度0.5U/ml VWFを添加した以外は、7−1と同じ測定をおこなった。
【0054】
実施例7−3
次いで、上記と同じ条件で、第一の流路には、ラクテック注によって50%希釈した後に終濃度0.25U/ml へパリンを添加した血液を、第二の流路にはラクテック注によって50%希釈した後に終濃度2μg/ml のabciximabを添加した以外は、7−1と同じ測定をおこなった。
【0055】
圧力波形を
図8に示す。
【0056】
実施例8−1〜8−3
実施例7−1、7−2、7−3の測定を流速8μl/minに変更して測定を行った。
圧力波形パターンを
図9に示す。
【0057】
実施例7,8により、第一の流路と第2の流路を、同等の条件で測定して、VWFやPCC等の試薬の添加時の変化を解析することで、特に血液希釈時の止血機能の低下とVWFやPCC薬剤による回復効果を解析する事が出来る。
これにより、特に血液希釈時に、どのような薬剤を投与すると止血機能が回復するかを予測する上で、役立つことになる。
【0058】
実施例9
第2の基板1bにおいて、第一の反応部102と第二の反応部112に相当する位置に、それぞれ、3mg/mlのコラーゲンと0.4mg/ml の組織トロンボプラスチン溶液を1:1で混和した溶液、3mg/mlのコラーゲンと0.2mg/ml の組織トロンボプラスチン溶液を1:1で混和した溶液を、6mm×6mmの領域に塗布した以外は、実施例1〜3で用いたのと同じ形状のマイクロチップを作成して以下の実験に用いた。
テルモ社の3.2%クエン酸ナトリウムを含む採血管を用い採血した後に、終濃度50μg/mlのCTIと終濃度12mMの塩化カルシウムを添加した血液を、第一の流路には8μl/min、第二の流路には24μl/minの流速で、それぞれ10分間かん流し、圧力を解析した。
【0059】
実施例10
血液に生食(大塚製薬)による50%希釈、生食による50%希釈+0.5U/ml VWF(CSL−ベーリング社), 50%希釈+0.5U/ml PCC (CSL−ベーリング社),1U/mlへパリン、2μg/ml abciximabを添加した血液を用いた事以外は実施例9の実験を再現した。圧力下面積を以下の表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例9と10の結果より、血液凝固因子の補充(PCC)製剤は、第一の流路における血栓形成を顕著に回復させた。抗凝固薬であるへパリンは第一の流路における血栓形成をより強く抑制し、抗血小板薬であるabciximabは第二の流路における血栓形成をより強く抑制した。第一の流路により高い組織トロンボプラスチンを塗布し、第二の流路により高い流速で血液を流すことで一次止血、二次止血能の対比がより顕著になった。
これらの結果より、
図10(A,B)の事が分かる。Aは第一の流路と第二の流路ともにコラーゲンと組織トロンボプラスチンを塗布した場合、Bは第一の流路にのみコラーゲンと組織トロンボプラスチンを塗布し、第二の流路にはコラーゲンのみを塗布した場合である。