特許第6596811号(P6596811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

特許6596811熱硬化性樹脂組成物、これを用いるプリプレグ、樹脂付フィルム、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージ
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596811
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、これを用いるプリプレグ、樹脂付フィルム、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/12 20060101AFI20191021BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20191021BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20191021BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20191021BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20191021BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20191021BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20191021BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20191021BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20191021BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   C08G73/12
   C08G59/50
   C08L79/08 Z
   C08L21/00
   C08L63/00 A
   C08K3/00
   C08J5/24
   B32B27/34
   H05K1/03 610N
   H05K1/03 630H
   H05K3/46 T
【請求項の数】15
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-151955(P2014-151955)
(22)【出願日】2014年7月25日
(65)【公開番号】特開2016-30757(P2016-30757A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】小竹 智彦
(72)【発明者】
【氏名】長井 駿介
(72)【発明者】
【氏名】橋本 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】安部 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮武 正人
(72)【発明者】
【氏名】高根沢 伸
(72)【発明者】
【氏名】村井 曜
【審査官】 三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−109932(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/099134(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/099132(WO,A1)
【文献】 特開2014−024927(JP,A)
【文献】 特開2014−111696(JP,A)
【文献】 特開2014−019758(JP,A)
【文献】 特開2014−019795(JP,A)
【文献】 特開2014−040584(JP,A)
【文献】 特開2014−024925(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/099133(WO,A1)
【文献】 特開2014−024926(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/084310(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
C08G 73/00− 73/26
B29B 11/16; 15/08−15/14
C08J 5/04− 5/10;5/24
B32B 1/100−43/00
C08G 59/00−59/72
H05K 3/46− 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に少なくとも1個の一級アミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(B)を含有する、積層板の絶縁樹脂層用熱硬化性樹脂組成物であって、1分子中に少なくとも1個の一級アミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)が、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するシロキサン化合物(i)と、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有するアミン化合物(ii)を反応させて得られるものである、積層板の絶縁樹脂層用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
1分子中に少なくとも1個の一級アミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(B)を反応させて得られる変性イミド樹脂を含有する、積層板の絶縁樹脂層用熱硬化性樹脂組成物であって、1分子中に少なくとも1個の一級アミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)が、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するシロキサン化合物(i)と、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有するアミン化合物(ii)を反応させて得られるものである、積層板の絶縁樹脂層用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、下記一般式(1)に示す酸性置換基を有するアミン化合物(C)を含有する請求項1又は2に記載の積層板の絶縁樹脂層用熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、R1は各々独立に、酸性置換基である水酸基、カルボキシル基又はスルホン酸基を、R2は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数で、且つxとyの和は5である。)
【請求項4】
1分子中に少なくとも1個の一級アミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(B)と、下記一般式(1)に示す酸性置換基を有するアミン化合物(C)を反応させて得られる、酸性置換基を有する変性イミド樹脂を含有する、積層板の絶縁樹脂層用熱硬化性樹脂組成物であって、1分子中に少なくとも1個の一級アミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)が、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するシロキサン化合物(i)と、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有するアミン化合物(ii)を反応させて得られるものである、積層板の絶縁樹脂層用熱硬化性樹脂組成物。
【化2】

(式(1)中、R1は各々独立に、酸性置換基である水酸基、カルボキシル基又はスルホン酸基を、R2は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数で、且つxとyの和は5である。)
【請求項5】
1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するシロキサン化合物(i)と、1分子中に2個の一級アミノ基を有するアミン化合物(ii)の使用量が、アミン化合物(ii)の一級アミノ基数〔アミン化合物(ii)の使用量(g)/アミン化合物(ii)の一級アミノ基の官能基当量(g/mol)〕が、シロキサン化合物(i)のエポキシ基数〔シロキサン化合物(i)の使用量(g)/シロキサン化合物(i)のエポキシ基の官能基当量(g/mol)〕の1.0〜10.0倍である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層板の絶縁樹脂層用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、熱可塑性エラストマー(D)を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層板の絶縁樹脂層用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、エポキシ樹脂及びシアネート樹脂から選ばれる少なくとも一種の熱硬化性樹脂(E)を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層板の絶縁樹脂層用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、無機充填剤(F)を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層板の絶縁樹脂層用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、硬化促進剤(G)を含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層板の絶縁樹脂層用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層板の絶縁樹脂層用熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸してなる絶縁樹脂層用プリプレグ。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層板の絶縁樹脂層用熱硬化性樹脂組成物を支持体上に層形成してなる、積層板の絶縁樹脂層用樹脂付フィルム。
【請求項12】
請求項10に記載の積層板の絶縁樹脂層用プリプレグを積層成形して得られる絶縁樹脂層用積層板。
【請求項13】
請求項11に記載の積層板の絶縁樹脂層用樹脂付フィルムを積層成形して得られる絶縁樹脂層用積層板。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の絶縁樹脂層用積層板を用いて製造された多層プリント配線板。
【請求項15】
請求項14に記載の多層プリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージやプリント配線板用に好適な熱硬化性樹脂組成物、並びに、これを用いたプリプレグ、樹脂付フィルム、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、高性能化の流れに伴い、プリント配線板では配線密度の高度化、高集積化が進展し、これに伴って、配線用積層板の耐熱性の向上による信頼性向上への要求が強まっている。このような用途においては、優れた耐熱性、低熱膨張性を兼備することが要求されている。
プリント配線板用積層板としては、エポキシ樹脂を主剤とする樹脂組成物をガラスクロスに含浸したプリプレグを硬化し、成形したものが一般的である。一般にエポキシ樹脂は、絶縁性や耐熱性、コスト等のバランスに優れるが、近年のプリント配線板の高密度実装、高多層化構成に伴う耐熱性向上への要請に対応するには、どうしてもその耐熱性には限界がある。さらに、熱膨張率が大きいため、芳香環を有するエポキシ樹脂の選択やシリカ等の無機充填材を高充填化することで低熱膨張化を図っている(特許文献1参照)。
特に近年、半導体用パッケージ基板では、小型化、薄型化に伴い、部品実装時やパッケージ組み立て時において、チップと基板との熱膨張係数の差に起因した反りが大きな課題となっており、低熱膨張化が求められている。しかし、無機充填材の充填量を増やすことで低熱膨張化する手法では、吸湿による絶縁信頼性の低下や樹脂−配線層の密着不足、プレス成形不良を起こす場合がある。
【0003】
また、高密度実装、高多層化積層板に広く使用されているポリビスマレイミド樹脂は、その耐熱性は非常に優れているものの、吸湿性が高く、接着性に難点がある。さらに、積層時にエポキシ樹脂に比べ高温、長時間を必要とするため、生産性が悪いという欠点もあった。一般的に、エポキシ樹脂の場合180℃以下の温度で硬化可能であるが、ポリビスマレイミド樹脂を積層する場合は220℃以上の高温で且つ長時間の処理が必要である。特許文献2に記載の変性イミド樹脂組成物では、耐湿性や接着性が改良されるものの、メチルエチルケトン等の汎用性溶剤への可溶性を確保するために、水酸基とエポキシ基を含有する低分子化合物で変性している。このため、得られる変性イミド樹脂の耐熱性はポリビスマレイミド樹脂と比較して、大幅に劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2740990号公報
【特許文献2】特開平6−263843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、こうした現状に鑑み、優れた低硬化収縮性、低熱膨張性、良好な銅箔接着性、及び高弾性率を有する熱硬化性樹脂組成物、これを用いたプリプレグ、樹脂付フィルム、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、1分子中に少なくとも1個の一級アミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(B)を含有する、或いは前記アミノ変性シロキサン化合物(A)とマレイミド化合物(B)を反応させて得られる変性イミド樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物を用いることで上記の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、かかる知見にもとづいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の熱硬化性樹脂組成物、これを用いたプリプレグ、樹脂付フィルム、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージを提供するものである。
【0008】
1.1分子中に少なくとも1個の一級アミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(B)を含有する熱硬化性樹脂組成物。
2.1分子中に少なくとも1個の一級アミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(B)を反応させて得られる変性イミド樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物。
3.さらに、下記一般式(1)に示す酸性置換基を有するアミン化合物(C)を含有する上記1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R1は各々独立に、酸性置換基である水酸基、カルボキシル基又はスルホン酸基を、R2は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数で、且つxとyの和は5である。)
4.1分子中に少なくとも1個の一級アミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(B)と、下記一般式(1)酸性置換基を有するアミン化合物(C)を反応させて得られる、酸性置換基を有する変性イミド樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物。
【化2】
(式(1)中、R1は各々独立に、酸性置換基である水酸基、カルボキシル基又はスルホン酸基を、R2は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数で、且つxとyの和は5である。)
5.1分子中に少なくとも1個の一級アミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)が、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するシロキサン化合物(i)と、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有するアミン化合物(ii)を反応させて得られる、上記1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
6.さらに、熱可塑性エラストマー(D)を含有する上記1〜5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
7.さらに、エポキシ樹脂及びシアネート樹脂から選ばれる少なくとも一種の熱硬化性樹脂(E)を含有する上記1〜6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
8.さらに、無機充填材(F)を含有する上記1〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
9.さらに、硬化促進剤(G)を含有する上記1〜8のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
10.上記1〜9のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸してなるプリプレグ。
11.上記1〜9のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を支持体上に層形成してなる樹脂付フィルム。
12.上記10に記載のプリプレグを積層成形して得られる積層板。
13.上記11に記載の樹脂付フィルムを積層成形して得られる積層板。
14.上記12又は13に記載の積層板を用いて製造された多層プリント配線板。
15.上記14に記載の多層プリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた低硬化収縮性、低熱膨張性、良好な銅箔接着性、及び高弾性率を有する熱硬化性樹脂組成物、これを用いたプリプレグ、樹脂付フィルム、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージを提供することができる。
特に、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸してなるプリプレグ、支持体上に層形成してなる樹脂付フィルム、及び該プリプレグ又は該樹脂付フィルムを積層成形することにより製造した積層板は、低硬化収縮性、低熱膨張性、優れた銅箔接着性、及び高弾性率を有し、多層プリント配線板、半導体パッケージとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、1分子中に少なくとも1個の一級アミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)(以下、アミノ変性シロキサン化合物(A)と呼ぶことがある)と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(B)(以下、マレイミド化合物(B)と呼ぶことがある)を含有するものである。
【0011】
本発明に用いられる1分子中に少なくとも1個の一級アミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)は、特に限定されるものではないが、例えば、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するシロキサン化合物(i)(以下、シロキサン化合物(i)と呼ぶことがある)と、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有するアミン化合物(ii)(以下、アミン化合物(ii)と呼ぶことがある)を反応させて得ることが好ましい。
1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するシロキサン化合物(i)は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するシロキサン化合物が好ましく、1分子中に2個のエポキシ基を有するシロキサン化合物がより好ましい。
【0012】
本発明に用いられる1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するシロキサン化合物(i)としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、両末端にエポキシ基を有する「X−22−163」(官能基当量200)、「KF−105」(官能基当量490)、「X−22−163A」(官能基当量1000)、「X−22−163B」(官能基当量1750)、「X−22−163C」(官能基当量2700)、両末端に脂環式エポキシ基を有する「X−22−169AS」(官能基当量500)、「X−22−169B」(官能基当量1700)、一方の末端にエポキシ基を有する「X−22−1730X」(官能基当量4500)、側鎖及び両末端にエポキシ基を有する「X−22−9002」(官能基当量5000)、側鎖にエポキシ基を有する「X−22−343」(官能基当量525)、「KF−101」(官能基当量350)、「KF−1001」(官能基当量3500)、「X−22−2000」(官能基当量620)、「X−22−4741」(官能基当量2500)、「KF−1002」(官能基当量4300)、側鎖に脂環式エポキシ樹脂を有する「X−22−2046」(官能基当量600)、「KF−102」(官能基当量3600)等が挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。さらには各種エポキシ樹脂と混合して使用することができる。これらの中で、例えば、耐熱性の点から「X−22−163A」、「X−22−163B」、「X−22−163C」、「X−22−343」、「X−22−9002」、「KF−101」が好ましく、「X−22−163A」、「X−22−163B」がより好ましく、低熱膨張率の点から「X−22−163B」が特に好ましい。(いずれも、信越化学工業株式会社の商品名であり、官能基当量の単位はg/molである。)
【0013】
本発明に用いられる1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有するアミン化合物(ii)は、1分子中に2個の一級アミノ基を有するアミン化合物が好ましい。
本発明に用いられる1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有するアミン化合物(ii)としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3−メチル−1,4−ジアミノベンゼン、2,5−ジメチル−1,4−ジアミノベンゼン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノ−ジフェニルメタン、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノ−ジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルケトン、ベンジジン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジヒドロキシベンジジン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等の芳香族アミン類、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ジアミノポリシロキサン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾ−ル、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の脂肪族アミン類、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−アリル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−アクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン等のグアナミン化合物類などが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0014】
これらの中で、例えば、反応時の反応性が高く、より高耐熱性化できる芳香族アミン類である4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノ−ジフェニルメタン、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノ−ジフェニルメタン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンがより好ましく、安価であることや溶剤への溶解性の点から4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノ−ジフェニルメタン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンが好ましく、低熱膨張性や誘電特性の点から、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノ−ジフェニルメタン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンが特に好ましい。また、高弾性率化できる点から、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3−メチル−1,4−ジアミノベンゼン、2,5−ジメチル−1,4−ジアミノベンゼンも好ましい。
【0015】
本発明において、1分子中に少なくとも1個の一級アミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)を得るための反応としては、特に限定されるものではないが、例えば、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するシロキサン化合物(i)と、1分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有するアミン化合物(ii)を有機溶媒中で反応させることにより、1分子中に少なくとも1個の一級アミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)を得ることが好ましい。
【0016】
本反応に使用される有機溶媒としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤、ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤などが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中で、例えば、溶解性の点からプロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン等が好ましく、揮発性が高くプリプレグの製造時に残溶剤として残りにくいプロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエンがより好ましい。
【0017】
本反応には、必要により任意に反応触媒を使用することができ、反応触媒の例としては、p−トルエンスルホン酸等の酸性触媒、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のリン系触媒などが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0018】
ここで、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するシロキサン化合物(i)と、1分子中に2個の一級アミノ基を有するアミン化合物(ii)の使用量は、例えば、アミン化合物(ii)の一級アミノ基数〔アミン化合物(ii)の使用量(g)/アミン化合物(ii)の一級アミノ基の官能基当量(g/mol)〕が、シロキサン化合物(i)のエポキシ基数〔シロキサン化合物(i)の使用量(g)/シロキサン化合物(i)のエポキシ基の官能基当量(g/mol)〕の1.0〜10.0倍の範囲になるように使用することが好ましく、1.5〜5倍がより好ましい。1.0倍以上とすることにより、銅箔接着性や弾性率の低下が抑制され、また、10.0倍以下とすることにより、低熱膨張性や耐熱性の低下が抑制される。
【0019】
また、有機溶媒の使用量は、例えば、シロキサン化合物(i)、及びアミン化合物(ii)の総和100質量部に対して、25〜2000質量部とすることが好ましく、40〜1000質量部とすることがより好ましく、40〜500質量部とすることが特に好ましい。有機溶媒の使用量を25質量部以上とすることにより、溶解性が不足することが少なく、また2000質量部以下とすることにより、反応に長時間を要さない傾向がある。
【0020】
上記の原料、有機溶媒、必要により反応触媒を反応釜に仕込み、必要により加熱、保温しながら0.1時間から10時間攪拌し反応させることにより、アミノ変性シロキサン化合物(A)が得られる。
反応温度は、例えば、70〜150℃が好ましく、100〜130℃がより好ましい。温度を70℃以上とすることにより、反応速度が遅くなりすぎることが少なく、温度を150℃以下とすることにより、反応溶媒に高沸点の溶媒を必要としないため、プリプレグを製造する際に、残溶剤が残りにくく、耐熱性の低下が抑制される。
【0021】
また、アミノ変性シロキサン化合物(A)の重量平均分子量(Mw)は、例えば、1000〜300000が好ましく、特に6000〜150000が好ましい。重量平均分子量(Mw)が前記下限値以上であると低熱膨張性が優れ、前記上限値以下であると相溶性に優れる。なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作製した検量線により換算したものである。
重量平均分子量(Mw)の測定は、例えば、以下条件で行うことが出来る。
測定装置としては、オートサンプラー(東ソー株式会社製AS−8020)、カラムオーブン(日本分光株式会社製860−C0)、RI検出器(日本分光株式会社製830−RI)、UV/VIS検出器(日本分光株式会社製870−UV)、HPLCポンプ(日本分光株式会社製880−PU)を使用することが可能である。
また、使用カラムとしては、東ソー株式会社製 TSKgel SuperHZ2000,2300を使用でき、測定条件としては、測定温度40℃、流量0.5ml/min、溶媒をテトラヒドロフランとすることで測定可能である。
【0022】
本発明に用いられる1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(B)は、1分子中に2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物が好ましい。
本発明の1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(B)は、例えば、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0023】
これらの中で、例えば、反応性が高く、より高耐熱性化できるビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンが好ましく、溶剤への溶解性の点から、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンがより好ましく、安価である点からビス(4−マレイミドフェニル)メタンが特に好ましい。
【0024】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、アミノ変性シロキサン化合物(A)の使用量は、例えば、樹脂成分の総和100質量部当たり、1〜30質量部とすることが好ましく、5〜20質量部とすることが、低硬化収縮性、銅箔接着性、耐薬品性の点からより好ましい。
マレイミド化合物(B)の使用量は、例えば、樹脂成分の総和100質量部当たり、30〜99質量部とすることが好ましく、40〜80質量部とすることがより好ましい。
【0025】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、1分子中に少なくとも1個の一級アミノ基を有するアミノ変性シロキサン化合物(A)と、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(B)を反応させて得られる変性イミド樹脂を含有するものも包含する(以下、該反応を「プレ反応」とも称する)。このようなプレ反応を行うことにより、分子量を制御することができ、更なる低硬化収縮性、低熱膨張性、弾性率向上を行うことができる。
【0026】
このプレ反応は、有機溶媒中で加熱保温しながらアミノ変性シロキサン化合物(A)、マレイミド化合物(B)を反応させて変性イミド樹脂を合成することが好ましい。
有機溶媒中でアミノ変性シロキサン化合物(A)、及びマレイミド化合物(B)を反応させる際の反応温度は、例えば、70〜150℃であることが好ましく、100〜130℃であることがより好ましい。反応時間は、例えば、0.1〜10時間であることが好ましく、1〜6時間であることがより好ましい。
【0027】
このプレ反応において、アミノ変性シロキサン化合物(A)とマレイミド化合物(B)の使用量は、例えば、マレイミド化合物(B)のマレイミド基数〔マレイミド化合物(B)の使用量(g)/マレイミド化合物(B)のマレイミド基の官能基当量(g/mol)〕が、アミノ変性シロキサン化合物(A)の一級アミノ基数〔アミノ変性シロキサン化合物(A)の使用量(g)/アミノ変性シロキサン化合物(A)の一級アミノ基の官能基当量(g/mol)〕の2.0〜15.0倍になる範囲であることが好ましい。2.0倍以上とすることによりゲル化及び耐熱性の低下が抑制され、また、15.0倍以下とすることにより有機溶剤への溶解性、耐熱性の低下が抑制される。
【0028】
プレ反応におけるマレイミド化合物(B)の使用量は、上記のような関係を維持しつつ、例えば、アミノ変性シロキサン化合物(A)100質量部に対して10〜3000質量部が好ましく、30〜1500質量部がより好ましく、40〜300質量部がより好ましい。10質量部以上とすることにより良好な耐熱性が得られ、3000質量部以下とすることにより低熱膨張性を良好に保つことができる傾向にある。
【0029】
このプレ反応で使用される有機溶媒は、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチルエステルやγ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤、ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤などが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0030】
これらの有機溶媒の中で、例えば、溶解性の点からシクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、γ−ブチロラクトンが好ましく、低毒性であることや揮発性が高く残溶剤として残りにくい点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
【0031】
有機溶媒の使用量は、例えば、アミノ変性シロキサン化合物(A)、及びマレイミド化合物(B)の総和100質量部に対して、25〜2000質量部とすることが好ましく、40〜1000質量部とすることがより好ましく、40〜500質量部とすることが特に好ましい。有機溶媒の使用量を25質量部以上とすることにより、良好な溶解性が得られ、2000質量部以下とすることにより、反応に長時間を要さない傾向にある。
【0032】
また、このプレ反応には任意に反応触媒を使用することができる。例えば、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のリン系触媒、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド等のアルカリ金属アミドなどが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0033】
また、上記プレ反応より得られた変性イミド樹脂の使用量は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分の総和100質量部当たり、50〜100質量部とすることが好ましく、60〜80質量部とすることがより好ましい。変性イミド樹脂の使用量を50質量部以上とすることにより低熱膨張性、高弾性率が得られる。
【0034】
本発明のアミノ変性シロキサン化合物(A)と、マレイミド化合物(B)を含有する熱硬化性樹脂組成物及び前記化合物をプレ反応させて得られる変性イミド樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物は、単独で良好な熱硬化反応性を有するが、必要により、硬化剤及びラジカル開始剤を使用することで、耐熱性や接着性、機械強度を向上させることができる。
硬化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジシアンジアミドや、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチル−ジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、フェニレンジアミン、キシレンジアミン等の芳香族アミン類、ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族アミン類、メラミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン化合物類などが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
また、ラジカル開始剤としても、特に限定されるものではないが、例えば、アシル過酸化物、ハイドロパーオキサイド、ケトン過酸化物、t−ブチル基を有する有機過酸化物、クミル基を有する過酸化物等の有機過酸化物が使用できる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中で、例えば、良好な反応性や耐熱性の点から、芳香族アミン類が好ましい。
【0035】
さらに、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、下記一般式(1)に示す酸性置換基を有するアミン化合物(C)を含有することができる。
【化3】
(式(1)中、R1は各々独立に、酸性置換基である水酸基、カルボキシル基又はスルホン酸基を、R2は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数で、且つxとyの和は5である。)
【0036】
酸性置換基を有するアミン化合物(C)としては、例えば、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、o−アミノ安息香酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、3,5−ジヒドロキシアニリン、3,5−ジカルボキシアニリン等が挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
これらの中で、例えば、溶解性や合成の収率の点から、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、及び3,5−ジヒドロキシアニリンが好ましく、耐熱性の点からm−アミノフェノール及びp−アミノフェノールがより好ましい。
【0037】
酸性置換基を有するアミン化合物(C)の使用量は、例えば、樹脂成分の総和100質量部当たり、0.5〜30質量部とすることが好ましく、1〜20質量部とすることが、低熱膨張性の点からより好ましい。
【0038】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、アミノ変性シロキサン化合物(A)と、マレイミド化合物(B)と、酸性置換基を有するアミン化合物(C)を反応させて得られる、酸性置換基を有する変性イミド樹脂を含有するものも包含する(以下、該反応を「プレ反応」とも称する)。このようなプレ反応を行うことにより、分子量を制御することができ、更なる低硬化収縮性、低熱膨張性、銅箔接着性向上を行うことができる。
【0039】
このプレ反応は、有機溶媒中で加熱保温しながらアミノ変性シロキサン化合物(A)と、マレイミド化合物(B)と、酸性置換基を有するアミン化合物(C)を反応させて酸性置換基を有する変性イミド樹脂を合成することが好ましい。
有機溶媒中でアミノ変性シロキサン化合物(A)と、マレイミド化合物(B)と、酸性置換基を有するアミン化合物(C)を反応させる際の反応温度は、例えば、70〜150℃であることが好ましく、100〜130℃であることがより好ましい。反応時間は、例えば、0.1〜10時間であることが好ましく、1〜6時間であることがより好ましい。
【0040】
このプレ反応において、アミノ変性シロキサン化合物(A)と、マレイミド化合物(B)と、酸性置換基を有するアミン化合物(C)の使用量は、例えば、マレイミド化合物(B)のマレイミド基数〔マレイミド化合物(B)の使用量(g)/マレイミド化合物(B)のマレイミド基の官能基当量(g/mol)〕が、アミノ変性シロキサン化合物(A)と酸性置換基を有するアミン化合物(C)の一級アミノ基数〔アミノ変性シロキサン化合物(A)の使用量(g)/アミノ変性シロキサン化合物(A)の一級アミノ基の官能基当量(g/mol)+酸性置換基を有するアミン化合物(C)の使用量(g)/酸性置換基を有するアミン化合物(C)の一級アミノ基の官能基当量(g/mol)〕の1.5〜10.0倍になる範囲であることが好ましい。1.5倍以上とすることによりゲル化及び耐熱性の低下が抑制される。また、10.0倍以下とすることにより有機溶剤への溶解性、耐熱性の低下が抑制される。
【0041】
プレ反応におけるマレイミド化合物(B)の使用量は、上記のような関係を維持しつつ、例えば、アミノ変性シロキサン化合物(A)100質量部に対して30〜3000質量部が好ましく、50〜1500質量部がより好ましく、50〜300質量部がより好ましい。30質量部以上とすることにより耐熱性が低下しにくく、又、3000質量部以下とすることにより低熱膨張性を良好に保つことができる。
また、プレ反応における酸性置換基を有するアミン化合物(C)の使用量は、例えば、アミノ変性シロキサン化合物(A)100質量部に対して1〜500質量部が好ましく、1〜300質量部がより好ましい。1質量部以上とすることにより耐熱性の低下が抑制され、又、500質量部以下とすることにより低熱膨張性を良好に保つことができる。
【0042】
このプレ反応で使用される有機溶媒は、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチルエステルやγ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤、ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤などが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0043】
これらの有機溶媒の中で、例えば、溶解性の点からシクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、γ−ブチロラクトン、ジメチルアセトアミドが好ましく、低毒性であることや揮発性が高く残溶剤として残りにくい点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
【0044】
有機溶媒の使用量は、例えば、アミノ変性シロキサン化合物(A)、マレイミド化合物(B)、及び酸性置換基を有するアミン化合物(C)の総和100質量部に対して、25〜2000質量部とすることが好ましく、40〜1000質量部とすることがより好ましく、40〜500質量部とすることが特に好ましい。有機溶媒の使用量を25質量部以上とすることにより、溶解性が不足することが少なく、また2000質量部以下とすることにより、反応に長時間を要さない傾向にある。
【0045】
また、このプレ反応には任意に反応触媒を使用することができる。反応触媒は、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のリン系触媒、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド等のアルカリ金属アミドなどが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0046】
また、上記プレ反応より得られた酸性置換基を有する変性イミド樹脂の使用量は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分の総和100質量部当たり、50〜100質量部とすることが好ましく、60〜80質量部とすることがより好ましい。酸性置換基を有する変性イミド樹脂の使用量を50質量部以上とすることにより低熱膨張性、高弾性率が得られる。
【0047】
本発明のアミノ変性シロキサン化合物(A)と、マレイミド化合物(B)と、酸性置換基を有するアミン化合物(C)を含有してなる熱硬化性樹脂組成物及び前記化合物をプレ反応させて得られる酸性置換基を有する変性イミド樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物は、単独で良好な熱硬化反応性を有するが、必要により、硬化剤及びラジカル開始剤を使用することで、耐熱性や接着性、機械強度を向上させることができる。
硬化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジシアンジアミドや、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチル−ジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、フェニレンジアミン、キシレンジアミン等の芳香族アミン類、ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族アミン類、メラミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン化合物類などが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
また、ラジカル開始剤としても、特に限定されるものではないが、例えば、アシル過酸化物、ハイドロパーオキサイド、ケトン過酸化物、t−ブチル基を有する有機過酸化物、クミル基を有する過酸化物などの有機過酸化物が使用できる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中で、例えば、良好な反応性や耐熱性の点から、芳香族アミン類が好ましい。
【0048】
さらに、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、熱可塑性エラストマー(D)を含有することができる。
熱可塑性エラストマー(D)としては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマーやその誘導体等が挙げられる。これらは、ハードセグメント成分とソフトセグメント成分を有し、一般に前者が耐熱性及び強度に、後者が柔軟性及び強靭性に寄与している。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0049】
また、これら熱可塑性エラストマーとしては、分子末端又は分子鎖中に反応性官能基を有するものを用いることができる。反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イソシアナト基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基等が挙げられる。これら反応性官能基を分子末端又は分子鎖中に有することにより、樹脂への相溶性が向上し、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化時に発生する内部応力をより効果的に低減することができ、結果として、基板の反りを顕著に低減することが可能となる。
【0050】
これらの熱可塑性エラストマーの中で、例えば、耐熱性、絶縁信頼性の点で、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、及びシリコーン系エラストマーが好ましく、誘電特性の点から、スチレン系エラストマー及びオレフィン系エラストマーが特に好ましい。
【0051】
また、これら熱可塑性エラストマーの分子末端又は分子鎖中に有する反応性官能基は、例えば、金属箔との密着性の点で、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、及びアミド基が好ましく、耐熱性、絶縁信頼性の点から、エポキシ基、水酸基、及びアミノ基が特に好ましい。
【0052】
熱可塑性エラストマー(D)の使用量は、例えば、樹脂成分の総和100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、2〜30質量部であることが、樹脂の相溶性が良く、硬化物の低硬化収縮性、低熱膨張性、優れた誘電特性を効果的に発現できる点からより好ましい。
【0053】
さらに、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂及びシアネート樹脂から選ばれる少なくとも一種の熱硬化性樹脂(E)を含有することができる。
エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェノールフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能フェノール類及びアントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物及びこれらにリン化合物を導入したリン含有エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中で、例えば、耐熱性、難燃性の点からビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0054】
また、シアネート樹脂としても、特に限定されるものではないが、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどを挙げることができる。ここれらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中で、例えば、耐熱性、難燃性の点からノボラック型シアネート樹脂が好ましい。
【0055】
これらの熱硬化性樹脂(E)には、必要に応じて硬化剤を使用することができる。硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、アミノトリアジンノボラック樹脂等の多官能フェノール化合物、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等のアミン化合物、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水マレイン酸共重合体等の酸無水物などが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0056】
熱硬化性樹脂(E)の使用量としては、例えば、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分の総和100質量部当たり、1〜50質量部とすることが好ましく、耐熱性、耐薬品性の点から、10〜30質量部であることがより好ましい。
【0057】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、無機充填剤(F)を含有することができる。無機充填剤(F)としては,例えば、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、Eガラス、Tガラス、Dガラス等のガラス粉や中空ガラスビーズなどが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0058】
これらの中で、例えば、誘電特性、耐熱性、低熱膨張性の点からシリカが特に好ましい。シリカとしては、例えば、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカなどが挙げられる。乾式法シリカとしてはさらに、製造法の違いにより破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融球状シリカ等が挙げられる。これらの中で、低熱膨張性及び樹脂に充填した際の高流動性から溶融球状シリカが好ましい。
【0059】
無機充填剤(F)として溶融球状シリカを用いる場合、例えば、その平均粒子径は0.1〜10μmであることが好ましく、0.3〜8μmであることがより好ましい。該溶融球状シリカの平均粒子径を0.1μm以上にすることで、樹脂に高充填した際の流動性を良好に保つことができ、さらに10μm以下にすることで、粗大粒子の混入確率を減らし粗大粒子起因の不良の発生を抑えることができる。ここで、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた時、体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0060】
無機充填剤(F)の含有量は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分の総和100質量部に対して20〜300質量部であることが好ましく、50〜200質量部であることがより好ましい。無機充填剤(F)の含有量を樹脂成分の総和100質量部に対して20〜300質量部にすることで、熱硬化性樹脂組成物の成形性と低熱膨張性を良好に保つことができる。
また、熱硬化性樹脂組成物に無機充填剤を配合するに際しては、例えば、該無機充填剤(F)をシラン系、チタネート系等のカップリング剤、シリコーンオリゴマー等の表面処理剤などで前処理、又はインテグラルブレンド処理することも好ましい。
【0061】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤(G)を含有することができる。硬化促進剤(G)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩、イミダゾール類及びその誘導体、ホスフィン類及びホスホニウム塩等の有機リン系化合物、第二級アミン類、第三級アミン類、及び第四級アンモニウム塩などが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。 これらの中で、例えば、促進効果と保存安定性の点から、ナフテン酸亜鉛、イミダゾール誘導体、ホスホニウム塩が好ましい。
【0062】
硬化促進剤(G)の含有量は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分の総和100質量部に対して0.01〜3.0質量部であることが好ましく、0.05〜1.5質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(G)の含有量を当該範囲にすることで、促進効果と保存安定性を良好に保つことができる。
【0063】
本発明では、その目的に反しない範囲内で、任意に公知の熱可塑性樹脂、有機充填剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤及び接着性向上剤等を使用できる。
【0064】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0065】
有機充填剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、シリコーン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂等よりなる樹脂フィラー、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、共役ジエン系樹脂等よりなるゴム状態のコア層と、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、シアン化ビニル系樹脂等よりなるガラス状態のシェル層を持つコアシェル構造の樹脂フィラーなどが挙げられる。
【0066】
難燃剤としては、例えば、臭素や塩素を含有する含ハロゲン系難燃剤、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、リン酸エステル系化合物、赤リン等のリン系難燃剤スルファミン酸グアニジン、硫酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤、シクロホスファゼン、ポリホスファゼン等のホスファゼン系難燃剤、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤などが挙げられる。
【0067】
その他、紫外線吸収剤の例としてはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、酸化防止剤の例としてはヒンダードフェノール系やヒンダードアミン系酸化防止剤、光重合開始剤の例としてはベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系の光重合開始剤、蛍光増白剤の例としてはスチルベン誘導体の蛍光増白剤、接着性向上剤の例としては尿素シラン等の尿素化合物やシラン系、チタネート系、アルミネート系等のカップリング剤が挙げられる。
【0068】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、プリプレグに用いられるため、各成分が有機溶媒中に溶解又は分散されたワニスの状態とすることが好ましい。
【0069】
ワニスを製造する際に用いる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒、ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒などが挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。 これらの中で、例えば、溶解性の点からメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましく、低毒性である点からメチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
【0070】
ワニス中の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、ワニス全体の40〜90質量%であることが好ましく、50〜80質量%であることがより好ましい。ワニス中の熱硬化性樹脂組成物の含有量を40〜90質量%にすることで、塗工性を良好に保ち、適切な樹脂組成物付着量のプリプレグを得ることができる。
なお、本明細書において、樹脂成分とは、主に、アミノ変性シロキサン化合物(A)及びマレイミド化合物(B)であり、アミン化合物(C)、熱可塑性エラストマー(D)、熱硬化性樹脂(E)、無機充填剤(F)、及び硬化促進剤(G)の少なくともいずれかが配合されている場合は、これら配合物をも含むものである。
【0071】
本発明のプリプレグは、前記した本発明の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸してなるものである。
以下、本発明のプリプレグについて詳述する。
本発明のプリプレグは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸し、加熱等により半硬化(Bステージ化)して製造することができる。本発明の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させる方法として特に限定されないが、例えば、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより塗布する方法、スプレーによる吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、基材に対する樹脂組成物の含浸性を向上することができる。
本発明の基材としては、例えば、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。その材質の例としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス及びQガラス等の無機物繊維、ポリイミド、ポリエステル及びテトラフルオロエチレン等の有機繊維、並びにそれらの混合物が挙げられる。他の用途では、例えば、繊維強化基材であれば、炭素繊維を用いることが可能である。
【0072】
これらの基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット及びサーフェシングマット等の形状が挙げられる。材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択され、必要により、単独又は2種類以上の材質及び形状を組み合わせることができる。基材の厚さは、例えば、約0.03〜0.5mmを使用することができ、シランカップリング剤等で表面処理したものや、機械的に開繊処理を施したものが、耐熱性や耐湿性、加工性の面から好適である。
【0073】
本発明のプリプレグは、例えば、該基材に対する熱硬化性樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグの樹脂含有率で、20〜90質量%となるように、基材に含浸した後、通常、100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させて得ることができる。
【0074】
本発明の樹脂付フィルムは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を支持体上に層形成してなるものである。
本発明の樹脂付フィルムは、前記した本発明の熱硬化性樹脂組成物を支持体上に層形成し、加熱等により半硬化(Bステージ化)して製造することができる。この半硬化状態は、本発明の樹脂付きフィルムの樹脂組成物層を回路基板にラミネートし、硬化する際に、樹脂組成物層が硬化した絶縁樹脂層と回路パターン基板との接着力が確保される状態、また、回路基板への埋めこみ性(流動性)が確保される状態であることが好ましい。本発明の熱硬化性樹脂組成物を支持体上に層形成する方法として特に限定されないが、例えば、樹脂ワニスを、各種コーターを用いて支持体であるフィルムに塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0075】
熱硬化性樹脂組成物を支持体に塗布した後の乾燥条件は、例えば、該樹脂組成物層への有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。ワニス中の有機溶剤量、有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスを50〜150℃で3〜10分程度乾燥させることにより、樹脂組成物層が形成される。乾燥条件は、予め簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することが好ましい。
【0076】
樹脂付フィルムの樹脂組成物層の厚さは、通常、回路基板が有する導体層の厚さ以上とすることが好ましい。導体層の厚さは、例えば、5〜70μmであることが好ましく、多層プリント配線板の軽薄短小化のために、5〜50μmであることがより好ましく、5〜30μmであることがより好ましい。
【0077】
樹脂付フィルムにおける支持体は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドなどの有機フィルム、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔を挙げることができる。なお、支持体及び後述する保護フィルムには、マット処理、コロナ処理の他、離型処理を施してもよい。
【0078】
支持体の厚さは、例えば、10〜150μmが好ましく、より好ましくは25〜50μmである。樹脂組成物層の支持体が密着していない面に、保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚さは、例えば1〜40μmである。保護フィルムを積層することにより、異物混入を防止することができる。
樹脂付フィルムは、ロール状に巻き取って貯蔵することもできる。保護フィルムとしては、特に限定されるものではないが、前述の支持体として挙げたものを用いることができる。
【0079】
本発明の積層板は、前述の樹脂付フィルムを積層成形して得られるものである。例えば、樹脂付フィルムを、真空ラミネーターを用いて、回路基板、プリプレグ及び基材等の片面又は両面にラミネートし、必要に応じ、加熱により硬化することで製造することができる。
回路基板に用いられる基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような基板の片面又は両面に回路パターンが形成されたものをいう。また導体層と絶縁層とを交互に複数積層してなるプリント配線板において、該プリント配線板の最外層の片面又は両面に回路パターンが形成されたものも、ここでいう回路基板に含まれる。なお導体層表面には、黒化処理等により予め粗化処理が施されていてもよい。
【0080】
上記ラミネートにおいて、樹脂付フィルムが保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、必要に応じて樹脂付フィルム及び回路基板をプレヒートし、樹脂付フィルムを加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。本発明の樹脂付フィルムにおいては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。ラミネート条件は、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは0.1〜1.1MPaとし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネートの方法は、バッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。
【0081】
樹脂付フィルムを回路基板にラミネートした後、室温付近に冷却してから、支持体を剥離する場合は剥離し、熱硬化することにより回路基板に絶縁樹脂層を形成することができる。熱硬化の条件は、熱硬化性樹脂樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量等
に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150〜220℃で20〜180分、より好ましくは160〜200℃で30〜120分の範囲で選択される。
【0082】
絶縁樹脂層を形成した後、硬化前に支持体を剥離しなかった場合は、ここで剥離する。次いで必要により、回路基板上に形成された絶縁樹脂層に穴開けを行ってビアホール、スルーホールを形成する。穴あけは、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけが最も一般的な方法である。
【0083】
次いで、乾式メッキ又は湿式メッキにより絶縁樹脂層上に導体層を形成する。乾式メッキとしては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の方法を使用することができる。湿式メッキの場合は、まず、絶縁樹脂層の表面を、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤で粗化処理し、凸凹のアンカーを形成する。酸化剤としては、特に過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等の水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ性過マンガン酸水溶液)が好ましく用いられる。次いで、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせた方法で導体層を形成する。また導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。その後のパターン形成の方法として、例えば、公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。
【0084】
本発明の積層板は、前述の本発明のプリプレグを積層成形して得られるものである。本発明のプリプレグを、例えば、1〜20枚重ね、その片面又は両面に銅又はアルミニウム等の金属箔を配置した構成で積層成形することにより製造することができる。
積層板を製造する際の成形条件は、例えば、電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用でき、例えば多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100〜250℃、圧力0.2〜10MPa、加熱時間0.1〜5時間の範囲で成形することができる。また、本発明のプリプレグと回路基板とを組合せ、積層成形して、積層板を製造することもできる。
【0085】
本発明の多層プリント配線板は、前記積層板を用いて製造されるものである。例えば、本発明の積層板の導体層を通常のエッチング法によって配線加工し回路基板を得ることが出来る。そして、前述のプリプレグを介して配線加工した積層板を複数積層し、加熱プレス加工することによって一括して多層化する。その後、ドリル加工、レーザー加工によるスルーホール又はブラインドビアホールの形成と、メッキ又は導電性ペーストによる層間配線の形成を経て多層プリント配線板を製造することができる。
【0086】
本発明に係る半導体パッケージは、前記多層プリント配線板の所定の位置に半導体チップやメモリ等の半導体素子を搭載し製造される。
【実施例】
【0087】
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
なお、各実施例及び比較例で得られた樹脂板を用いて硬化収縮率、銅張積層板を用いて、ガラス転移温度、熱膨張率、銅箔接着性、銅付きはんだ耐熱性、曲げ弾性率について以下の方法で測定し、評価した。
【0088】
(1)樹脂板の硬化収縮率の測定
縦5mm(X方向)、横5mm(Y方向)、厚み1mm(Z方向)の樹脂板を作製し、TMA試験装置(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて圧縮法で熱機械分析を行った。樹脂板を前記装置にX方向又はY方向に装着後、荷重5g、昇温速度45℃/分とし、20℃(5分保持)〜260℃(2分保持)〜20℃(5分保持)の温度プロファイルにて測定した。昇温開始前の20℃及び昇温後の20℃での寸法変化量から樹脂板の硬化収縮率(%)を評価した。
具体的には、以下の式を用いて、樹脂板の硬化収縮率を算出した。
硬化収縮率(%)={(昇温開始前20℃の寸法(mm)−昇温後20℃の寸法(mm))/昇温開始前20℃の寸法(mm)}×100
【0089】
(2)ガラス転移温度(Tg)の測定
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた縦5mm(X方向)、横5mm(Y方向)、厚み(Z方向)の評価基板を作製し、TMA試験装置(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて圧縮法で熱機械分析をおこなった。評価基板を前記装置にZ方向に装着後、荷重5g、昇温速度10℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における熱膨張曲線の異なる接線の交点で示されるTgを求め、耐熱性を評価した。
【0090】
(3)熱膨張率の測定
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた縦5mm(X方向)、横5mm(Y方向)、厚み(Z方向)の評価基板を作製し、TMA試験装置(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて圧縮法で熱機械分析をおこなった。評価基板を前記装置にX方向に装着後、荷重5g、昇温速度10℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における30℃から100℃までの平均熱膨張率を算出し、これを熱膨張率の値とした。
【0091】
(4)銅箔接着性(銅箔ピール強度)の評価
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより3mm幅の銅箔を形成して評価基板を作製し、引張り試験機を用いて銅箔の接着性(ピール強度)を測定した。
【0092】
(5)銅付きはんだ耐熱性の評価
銅張積層板から25mm角の評価基板を作製し、温度288℃のはんだ浴に、120分間評価基板をフロートし、外観を観察することにより銅付きはんだ耐熱性を評価した。
【0093】
(6)曲げ弾性率
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた25mm×50mmの評価基板を作製し、オリエンテック社製5トンテンシロンを用い、クロスヘッド速度1mm/min、スパン間距離20mmで測定した。
【0094】
製造実施例1:アミノ変性シロキサン化合物(A−1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、X−22−163A:58.0g、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン:22.1g、プロピレングリコールモノメチルエーテル:53.3gを入れ、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮し、アミノ変性シロキサン化合物(A−1)含有溶液(樹脂成分:80質量%、重量平均分子量(Mw):10000)を得た。
【0095】
製造実施例2:アミノ変性シロキサン化合物(A−2)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、X−22−163B:65.7g、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン:14.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテル:53.3gを入れ、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮し、アミノ変性シロキサン化合物(A−2)含有溶液(樹脂成分:80質量%、重量平均分子量(Mw):7000)を得た。
【0096】
製造実施例3:アミノ変性シロキサン化合物(A−3)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、X−22−163C:74.4g、2,5−ジメチル−1,4−ジアミノベンゼン:5.6g、プロピレングリコールモノメチルエーテル:53.3gを入れ、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮し、アミノ変性シロキサン化合物(A−3)含有溶液(樹脂成分:80質量%、重量平均分子量(Mw):20000))を得た。
【0097】
製造実施例4:変性イミド樹脂(H−1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、アミノ変性シロキサン化合物(A−1)含有溶液(樹脂成分:80質量%):46.7g、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:262.6g、プロピレングリコールモノメチルエーテル:440.7gを入れ、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮し、変性イミド樹脂(H−1)含有溶液(樹脂成分:60質量%)を得た。
【0098】
製造実施例5:変性イミド樹脂(H−2)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、アミノ変性シロキサン化合物(A−2)含有溶液(樹脂成分:80質量%):46.8g、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:262.5g、プロピレングリコールモノメチルエーテル:440.6gを入れ、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮し、変性イミド樹脂(H−2)含有溶液(樹脂成分:60質量%)を得た。
【0099】
製造実施例6:酸性置換基を有する変性イミド樹脂(I−1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、アミノ変性シロキサン化合物(A−1)含有溶液(樹脂成分:80質量%):46.7g、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:253.0g、p−アミノフェノール:9.6g、プロピレングリコールモノメチルエーテル:440.7gを入れ、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮し、酸性置換基を有する変性イミド樹脂(I−1)含有溶液(樹脂成分:60質量%)を得た。
【0100】
製造実施例7:酸性置換基を有する変性イミド樹脂(I−2)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、アミノ変性シロキサン化合物(A−2)含有溶液(樹脂成分:80質量%):46.8g、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:252.9g、p−アミノフェノール:9.6g、プロピレングリコールモノメチルエーテル:440.6gを入れ、115℃で4時間反応した後、130℃まで昇温して常圧濃縮し、酸性置換基を有する変性イミド樹脂(I−2)含有溶液(樹脂成分:60質量%)を得た。
【0101】
実施例1〜18及び比較例1〜6
製造実施例1〜3で得られたアミノ変性シロキサン化合物(A−1、A−2、A−3)含有溶液、製造実施例4、5で得られた変性イミド樹脂(H−1、H−2)含有溶液及び製造実施例6、7で得られた酸性置換基を有する変性イミド樹脂(I−1、I−2)含有溶液と、以下に示すシロキサン化合物(i)、アミン化合物(ii)、マレイミド化合物(B)、酸性置換基を有するアミン化合物(C)、熱可塑性エラストマー(D)、熱硬化性樹脂(E)、無機充填剤(F)、硬化促進剤(G)、及び希釈溶剤にメチルエチルケトンを使用して、第1表〜第4表に示した配合割合(質量部)で混合して樹脂分65質量%のワニスを得た。
次に、上記ワニスを、16μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムに、乾燥後の樹脂厚が35μmとなるようにフィルムアプリケーター(テスター産業株式会社製、PI−1210)を用いて塗布し、160℃で10分加熱乾燥し、半硬化物の樹脂粉を得た。
この樹脂粉をテフロンシートの型枠に投入し、12μmの電解銅箔の光沢面を上下に配置し、圧力2.0MPa、温度240℃で60分間プレスを行った後、電解銅箔を除去して樹脂板を得た。
また、上記ワニスを厚さ0.1mmのEガラスクロスに含浸し、160℃で10分加熱乾燥して樹脂含有量48質量%のプリプレグを得た。
このプリプレグを4枚重ね、12μmの電解銅箔を上下に配置し、圧力3.0MPa、温度240℃で60分間プレスを行って、銅張積層板を得た。
得られた樹脂板及び銅張積層板の測定及び評価結果を第1表〜第4表に示す。
【0102】
シロキサン化合物(i)
・X−22−163A:両末端エポキシ変性シロキサン〔信越化学工業株式会社製、商品名〕
・X−22−163B:両末端エポキシ変性シロキサン〔信越化学工業株式会社製、商品名〕
・X−22−163C:両末端エポキシ変性シロキサン〔信越化学工業株式会社製、商品名〕
【0103】
アミン化合物(ii)
・KAYAHARD A−A:3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン〔日本化薬株式会社製、商品名〕
【0104】
マレイミド化合物(B)
・BMI:ビス(4−マレイミドフェニル)メタン〔ケイ・アイ化成株式会社製、商品名〕
・BMI−4000:2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン〔大和化成工業株式会社製、商品名〕
【0105】
酸性置換基を有するアミン化合物(C)
・p−アミノフェノール〔関東化学株式会社製〕
【0106】
熱可塑性エラストマー(D)
・エポフレンドCT−310:エポキシ変性スチレン−ブタジエン共重合樹脂〔株式会社ダイセル製、商品名〕
【0107】
熱硬化性樹脂(E)
・PT−30:ノボラック型シアネート樹脂〔ロンザジャパン株式会社製、商品名〕
・NC−7000L:α−ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔日本化薬株式会社製、商品名〕
【0108】
無機充填剤(F)
・SC2050−KNK:溶融球状シリカ〔株式会社アドマテックス製、平均粒子径0.5μm、商品名〕
・KEMGARD1100:モリブデン酸亜鉛〔シャーウィン・ウィリアムズ社製、商品名〕
【0109】
硬化促進剤(G)
・ナフテン酸亜鉛(II)8%ミネラルスピリット溶液〔東京化成工業株式会社製、商品名〕
・G−8009L:イソシアネートマスクイミダゾール〔第一工業製薬株式会社製、商品名〕
・TPP−MK:テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート〔北興化学工業株式会社製、商品名〕
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】
【0113】
【表4】
【0114】
第1表〜第4表から明らかなように、本発明の実施例では、樹脂板の硬化収縮率が小さく、低硬化収縮性に優れ、また、積層板の特性においても、熱膨張率、銅箔接着性、弾性率に優れている。
一方、比較例は、樹脂板の硬化収縮率が大きく、また、積層板の特性においても、熱膨張率、銅箔接着性、弾性率において実施例と比較し、いずれかの特性に劣っている。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸してなるプリプレグ、支持体上に層形成してなる樹脂付フィルム、及び該プリプレグ又は該樹脂付フィルムを積層成形することにより製造した積層板は、特に低硬化収縮性、低熱膨張性、銅箔接着性、高弾性率に優れ、高集積化された半導体パッケージや電子機器用多層プリント配線板として有用である。