(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る蓄電池システムの構成を示す図である。
図1の蓄電池システムは、複数の蓄電池セル102が直列接続されて構成された蓄電池ストリング101と、複数のモニタノード104と、電流検出器105と、電圧検出器106と、上位コントローラ110とを有する。各モニタノード104と上位コントローラ110とは、有線または無線で接続されている。この蓄電池システムは、たとえば、風力や太陽光などの再生可能エネルギを利用した発電サイトにおいて、発電装置と送配電システムの間に設置され、発電によって得られた電力を送配電システムに出力する際の電力変動を緩和するために利用されるものである。上記以外にも、該ランダムな充放電波形により運用される多数直列の蓄電池を有するシステムであれば、同様に本発明の適用が可能である。
【0011】
蓄電池ストリング101における蓄電池セル102の直列接続数は、発電サイトが有する不図示の変圧器やコンバータ装置、送配電システムとの関係性等を考慮して設定される。たとえば、公称電圧が2Vの鉛蓄電池を蓄電池セル102に用いて、これを288個直列に接続することで、蓄電池ストリング101を構成することができる。なお、蓄電池ストリング101において、蓄電池セル102は所定数(
図1では6個)ごとにグループ分けされている。
図1では、この各グループを蓄電池グループ103として示している。
【0012】
モニタノード104は、各蓄電池グループ103に対応して設けられている。各モニタノード104は、対応する蓄電池グループ103の各蓄電池セル102と不図示の電圧検出線を介して接続されており、上位コントローラ110からの電圧計測指示に応じて、各蓄電池セル102の電圧(セル電圧)を測定し、その測定結果を上位コントローラ110に送信する。すなわち、
図1の蓄電池システムにおいて、モニタノード104は、蓄電池グループ103内の各蓄電池セル102の電圧を計測する電圧計測部として機能するものである。
図1では、各モニタノード104を、蓄電池ストリング101内で上位側(高電位側)の蓄電池グループ103に対応するものから順に、1〜nの番号を付して示している。なお、3番目から(n−1)番目のモニタノード104については、図示を省略している。
【0013】
電流検出器105は、蓄電池ストリング101に流れる電流、すなわち直列接続された複数の蓄電池セル102に共通に流れる電流を検出する。電圧検出器106は、蓄電池ストリング101の総電圧、すなわち直列接続された複数の蓄電池セル102のセル電圧の合計を検出する。電流検出器105と電圧検出器106の検出結果は、それぞれ上位コントローラ110に出力される。
【0014】
上位コントローラ110は、蓄電池ストリング101の充放電に関する制御を行う。また、上位コントローラ110は、蓄電池ストリング101の状態推定を行い、その推定結果に基づく情報を必要に応じて、蓄電池システムの上位に設けられたシステム、たとえば不図示のSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)システム等に提供する。この情報は、たとえば、蓄電池ストリング101の充電状態(SOC:State Of Charge)を表す情報や、蓄電池ストリング101の健全性状態(SOH:State Of Health)を表す情報などを含む。
【0015】
上位コントローラ110は、電流計測部111、総電圧計測部112、電圧計測タイミング判定部113、電圧計測指示出力部114、電圧計測指示管理部115、単電池電圧受信部116、電池状態保持部117、電池状態推定部118、単電池電圧比較部119を有する。
【0016】
電流計測部111は、電流検出器105の検出結果を所定周期ごと、例えば1秒以下の周期ごとに取り込むことで、蓄電池ストリング101の電流を計測する。電流計測部111で計測された電流値は、電圧計測タイミング判定部113および電池状態推定部118に出力される。
【0017】
総電圧計測部112は、電圧検出器106の検出結果を所定周期ごと、例えば電流計測器と同じ程度か、それより遅い程度の周期ごとに取り込むことで、蓄電池ストリング101の総電圧を計測する。総電圧計測部112で計測された総電圧値は、電池状態推定部118に出力される。
【0018】
電圧計測タイミング判定部113は、電流計測部111により計測された蓄電池ストリング101の電流に基づいて、蓄電池ストリング101における各蓄電池セル102の電圧計測タイミングを判定する。この判定の方法については、後で詳しく説明する。
【0019】
電圧計測指示出力部114は、電圧計測タイミング判定部113による電圧計測タイミングの判定結果に基づいて、無線通信または不図示の信号線を介した有線通信により、前述の電圧計測指示を各モニタノード104に対して同報的に出力する。この電圧計測指示に応じて、各モニタノード104により、対応する蓄電池グループ103の各蓄電池セル102の電圧測定が行われる。
【0020】
電圧計測指示管理部115は、電圧計測指示出力部114が各モニタノード104に対して出力する電圧計測指示の内容を管理するための部分である。
【0021】
単電池電圧受信部116は、各モニタノード104から送信される蓄電池セル102の電圧計測結果を受信する。
【0022】
電池状態保持部117は、電池状態推定部118により推定された蓄電池ストリング101の状態を示す様々な情報、たとえば前述のSOCやSOHに関する情報などを記憶保持する。電池状態保持部117に記憶された情報は、必要に応じて読み出される。
【0023】
電池状態推定部118は、電流計測部111により計測された蓄電池ストリング101の電流や、総電圧計測部112により計測された蓄電池ストリング101の総電圧に基づいて、蓄電池ストリング101の状態推定を行う。電池状態推定部118による蓄電池ストリング101の状態推定結果は、電池状態保持部117に記録される。
【0024】
単電池電圧比較部119は、単電池電圧受信部116により受信された各モニタノード104による蓄電池セル102の電圧計測結果の比較を行う。たとえば、蓄電池ストリング101を構成する全ての蓄電池セル102のセル電圧同士を相対的に比較したり、過去から現在までに測定された各蓄電池セル102のセル電圧同士を比較したりする。このとき必要に応じて、温度や電流等に基づいて各蓄電池セル102の電圧計測結果を適宜補正してもよい。また、SOC、温度、電流等に基づいて、同一または類似の条件下で得られたセル電圧同士を抽出して比較してもよい。この比較の結果に基づいて、単電池電圧比較部119は、各蓄電池セル102が正常であるか異常であるかを判断することができる。その結果、蓄電池ストリング101内に異常な蓄電池セル102が存在すると判断した場合、単電池電圧比較部119は、その旨を前述の上位システムに通知したり、所定の警報を出力したりすることが好ましい。
【0025】
図2は、モニタノード104の構成を示す図である。各モニタノード104は、電圧計測指示受信部131、電圧計測タイミング管理部132、マルチプレクサ133、A/D変換部134、計測値保持部135、計測値送信部136を有する。
【0026】
電圧計測指示受信部131は、
図1に示した上位コントローラ110の電圧計測指示出力部114から送信された電圧計測指示を受信する。
【0027】
電圧計測タイミング管理部132は、電圧計測指示受信部131により受信された電圧計測指示に基づいて、セル電圧の計測タイミングの制御を行うと共に、計測対象とする蓄電池セル102を決定し、その結果に応じてマルチプレクサ133が使用する計測チャネルの指示を行う。
【0028】
マルチプレクサ133は、複数の計測チャネルを有している。マルチプレクサ133の各計測チャネルはそれぞれ、同一の蓄電池グループ103内で直列接続された各蓄電池セル102の両極端子に接続されている。マルチプレクサ133は、電圧計測タイミング管理部132の指示に応じて、計測チャネルの切り替えを行う。これにより、当該モニタノード104が対応する蓄電池グループ103を構成する複数の蓄電池セル102の中から、セル電圧の測定対象とする蓄電池セルが逐次選択され、その蓄電池セルの電圧がマルチプレクサ133を介してA/D変換部134に出力される。
【0029】
A/D変換部134は、電圧計測タイミング管理部132の制御に応じて、マルチプレクサ133で選択された計測チャネルに対応する蓄電池セル102の電圧をアナログ値からデジタル値に変換する。A/D変換部134には、所望のフィルタ特性を有するフィルタ回路が併設されており、蓄電池セル102の電圧を計測する際には、このフィルタ回路により不要なノイズ成分が除去される。なお、フィルタ回路は、アナログフィルタとしてA/D変換部134の前段に設けられていてもよく、あるいは、デジタルフィルタとしてA/D変換部134の後段に設けられていてもよい。さらに、アナログフィルタとデジタルフィルタの両方を併用してもよい。
【0030】
以上説明したような各部分の動作により、モニタノード104において、上位コントローラ110からの電圧計測指示に応じて、蓄電池グループ103の各蓄電池セル102の電圧が順次測定される。計測値保持部135は、こうして得られた各蓄電池セル102の電圧計測値を格納して記憶保持する。
【0031】
計測値送信部136は、計測値保持部135に記憶保持された各蓄電池セル102の電圧計測値を所定のタイミングで読み出し、上位コントローラ110に送信する。計測値送信部136による電圧計測値の送信タイミングは、上位コントローラ110の指示に応じて決定してもよいし、計測値送信部136自身が決定してもよい。たとえば、蓄電池グループ103を構成する全ての蓄電池セル102あるいは一部の蓄電池セル102の電圧測定を終了したら、その測定結果を計測値送信部136から上位コントローラ110に送信する。このとき適宜他のモニタノードと時間差をつけ輻輳を避けてもよい。スロッテドアロハ方式のような簡易的な制御を用いてもよい。あるいは、複数回の測定結果を計測値保持部135に格納しておき、まとめて送信するようにしてもよい。さらに、
図1の単電池電圧比較部119をモニタノード104内に設け、この単電池電圧比較部119による各蓄電池セル102の電圧比較結果を計測値送信部136から上位コントローラ110に送信するようにしてもよい。
【0032】
次に、
図3、
図4および
図5を用いて、
図1の電圧計測タイミング判定部113の動作を説明する。
図3は、電圧計測タイミング判定部113が行う電圧計測タイミング判定処理の概要を示すブロック図である。
図3に示すように、電圧計測タイミング判定部113は、計測データ処理部155、閾値保持部156および判定演算部157を機能的に有する。
【0033】
計測データ処理部155には、計測データとして、電流計測部111により計測された蓄電池ストリング101の電流値等が入力される。計測データ処理部155は、この計測データに基づいて所定の演算処理を行い、処理結果を判定演算部157に出力する。
【0034】
閾値保持部156には、判定演算部157において実行される判定演算に用いるための所定の閾値が記憶保持されている。閾値保持部156は、この閾値を判定演算部157に出力する。
【0035】
判定演算部157は、計測データ処理部155による計測データの処理結果と、閾値保持部156により記憶された閾値とに基づいて、所定の判定演算を行い、その判定結果を出力する。判定演算部157による判定結果は、電圧計測タイミング判定部113により行われた電圧計測タイミング判定処理の結果として、
図1の電圧計測指示出力部114に出力される。
【0036】
ここで、判定演算部157が行う判定演算の具体例について説明する。判定演算部157は、たとえば、総電圧計測部112により計測された蓄電池ストリング101の総電圧に基づいて判定演算を行うことができる。具体的には、蓄電池ストリング101の総電圧の変動幅が閾値として定めた所定の電圧範囲内であるか否かを判断し、電圧範囲内であれば、蓄電池セル102の電圧計測タイミングであると判定する。すなわち、蓄電池ストリング101の総電圧がほぼ一定であれば、蓄電池ストリング101を構成する各蓄電池セル102の電圧もほぼ一定であると判断できる。そのため、このような条件を満たすときには、蓄電池セル102の電圧計測が可能であると判定することができる。この場合、計測データ処理部155には、計測データとして、総電圧計測部112により計測された蓄電池ストリング101の総電圧が入力される。また、閾値保持部156には、上記の電圧範囲が閾値として記憶保持される。
【0037】
または、判定演算部157は、電流計測部111により計測された蓄電池ストリング101の電流に基づいて判定演算を行うこともできる。具体的には、蓄電池ストリング101の電流の絶対値が電流計測系のノイズフロアの絶対値の5倍以内、または電流の変動幅が閾値として定めた所定の電流範囲内であるか否かを判断し、いずれかの条件を満たす場合は、蓄電池セル102の電圧計測タイミングであると判定する。この場合、計測データ処理部155には、計測データとして、電流計測部111により計測された蓄電池ストリング101の電流が入力される。また、閾値保持部156には、上記の電流範囲が閾値として記憶保持される。
【0038】
さらに別の例として、判定演算部157は、電流計測部111により計測された蓄電池ストリング101の電流の時系列データに基づいて判定演算を行うこともできる。その具体例を、以下に
図4、
図5を用いて説明する。
【0039】
図4は、蓄電池ストリング101の電流の時系列データに基づいて電圧計測タイミング判定部113が行う電圧計測タイミング判定処理の詳細を示すブロック図である。
図4に示すように、電圧計測タイミング判定部113は、一次遅れ演算部160および161、第一時定数保持部162、第二時定数保持部163、差算出部164、第一閾値保持部165、比較部166、第二閾値保持部167、比較部168、論理積演算部169を機能的に有する。なお、一次遅れ演算部160および161、第一時定数保持部162、第二時定数保持部163および差算出部164は、
図3の計測データ処理部155に対応するものである。また、第一閾値保持部165および第二閾値保持部167は、
図3の閾値保持部156に対応するものであり、比較部166,168および論理積演算部169は、
図3の判定演算部157に対応するものである。
【0040】
一次遅れ演算部160は、計測データとして入力された蓄電池ストリング101の電流の時系列データに基づいて、第一時定数保持部162に記憶保持された第一の時定数に応じた一次遅れ演算を行い、その演算結果を第一の判定用演算値として差算出部164に出力する。同様に、一次遅れ演算部161は、計測データとして入力された蓄電池ストリング101の電流の時系列データに基づいて、第二時定数保持部163に記憶保持された第一の時定数に応じた一次遅れ演算を行い、その演算結果を第二の判定用演算値として差算出部164に出力する。
【0041】
ここで、第一時定数保持部162に記憶保持された第一の時定数と、第二時定数保持部163に記憶保持された第二の時定数とを比較すると、第一の時定数の方が短く、第二の時定数の方が長い。すなわち、一次遅れ演算部160は、入力された電流の時系列データに対して、一次遅れ演算部161よりも短い時定数を用いた一次遅れ演算を行うことで、第一の判定用演算値を求める。反対に、一次遅れ演算部161は、入力された電流の時系列データに対して、一次遅れ演算部160よりも長い時定数を用いた一次遅れ演算を行うことで、第二の判定用演算値を求める。このようにして、一次遅れ演算部160、161は、
図1の電流計測部111により計測された蓄電池ストリング101の電流の時系列データに基づいて、互いに時定数の異なる判定用演算値をそれぞれ算出することができる。
【0042】
なお、一次遅れ演算部160、161では、様々な演算方法により一次遅れ演算をそれぞれ実現することができる。たとえば、所定の演算式を用いた演算処理で実現してもよいし、ローパスフィルタを用いて実現してもよい。また、一次遅れ演算を行う代わりに移動平均を算出しても類似の効果が得られる。これ以外にも、任意の演算方法を利用して、互いに時定数の異なる2つの判定用演算値を算出することができる。このとき、演算方式により、判定用閾値は適宜変更してもよい。
【0043】
差算出部164は、一次遅れ演算部160で求められた第一の判定用演算値と、一次遅れ演算部161で求められた第二の判定用演算値との差を算出する。差算出部164により求められた第一の判定用演算値と第二の判定用演算値との差は、比較部166に出力される。
【0044】
比較部166は、差算出部164で求められた第一の判定用演算値と第二の判定用演算値との差と、第一閾値保持部165に記憶保持された所定の第一の閾値とを比較し、その比較結果を論理積演算部169に出力する。具体的には、第一の判定用演算値と第二の判定用演算値との差が第一の閾値以上であれば、比較部166は論理値「1」を出力し、第一の判定用演算値と第二の判定用演算値との差が第一の閾値未満であれば、比較部166は論理値「0」を出力する。
【0045】
比較部168は、計測データとして入力された蓄電池ストリング101の電流値と、第二閾値保持部167に記憶保持された所定の第二の閾値とを比較し、その比較結果を論理積演算部169に出力する。具体的には、電流値が第二の閾値以上であれば、比較部168は論理値「1」を出力し、電流値が第二の閾値未満であれば、比較部166は論理値「0」を出力する。
【0046】
論理積演算部169は、比較部166での比較結果と比較部168での比較結果との論理積を演算し、その演算結果を、
図1の電圧計測タイミング判定部113による電圧計測タイミングの判定結果として出力する。すなわち、比較部166からの論理値が「1」であり、かつ比較部168からの論理値が「1」であれば、論理積演算部169は、蓄電池セル102の電圧計測タイミングであることを示す論理値「1」を出力する。それ以外の場合、論理積演算部169は、蓄電池セル102の電圧計測タイミングではないとして、論理値「0」を出力する。
【0047】
電圧計測タイミング判定部113は、電流計測部111により計測された蓄電池ストリング101の電流の時系列データに基づいて、以上説明したような電圧計測タイミング判定処理を行う。これにより、時定数の異なる複数の判定用演算値を算出し、その差が所定の第一の閾値以上であり、かつ電流の計測値が所定の第二の閾値以上であるときに、蓄電池セル102の電圧計測タイミングであると判定することができる。
【0048】
なお、上記の説明では、一次遅れ演算部160、161により時定数の異なる2つの判定用演算値を算出し、その差に基づいて電圧計測タイミングを判定する例を説明したが、時定数の異なる3つ以上の判定用演算値を算出し、これらの差に基づいて電圧計測タイミングを判定してもよい。その場合、判定用演算値の組み合わせごとに差分を算出し、その全てが所定の閾値以上であるか否かを判定してもよいし、いずれかの組み合わせについて算出した差分が所定の閾値以上であるか否かを判定してもよい。さらに、
図4の比較部168において、計測データとして入力された蓄電池ストリング101の電流値の代わりに、複数の判定用演算値のいずれかを用いてもよい。
【0049】
図5は、
図4に示したCP1〜CP7の各チェックポイントにおける観測波形の例を示す図である。
図5において、図中に実線で示したチェックポイントCP1での観測波形171は、電圧計測タイミング判定部113に計測データとして入力される蓄電池ストリング101の電流値を表している。また、図中に太線で示したチェックポイントCP2での観測波形172は、一次遅れ演算部160から出力される第一の判定用演算値を表しており、図中に破線で示したチェックポイントCP3での観測波形173は、一次遅れ演算部161から出力される第二の判定用演算値を表している。
【0050】
観測波形172と観測波形173の間の差分174は、第一の判定用演算値と第二の判定用演算値との差を表しており、これは
図5に示すように、チェックポイントCP4で観測される差算出部164の出力に相当する。また、図中に示した所定の大きさの閾値175は、チェックポイントCP5で観測される第一閾値保持部165の出力に相当し、これは比較部166において差算出部164の出力と比較される第一の閾値を表している。すなわち、差分174の大きさが第一の閾値175以上のときに、比較部166から論理値「1」が出力される。
【0051】
図中に示した所定の大きさの閾値176は、チェックポイントCP6で観測される第二閾値保持部167の出力に相当し、これは比較部168において蓄電池ストリング101の電流値と比較される第二の閾値を表している。すなわち、観測波形171の値が第二の閾値176以上のときに、比較部168から論理値「1」が出力される。
【0052】
チェックポイントCP7での観測波形177は、電圧計測タイミング判定部113による電圧計測タイミングの判定結果として論理積演算部169から出力される判定値を表している。この観測波形177は、差分174が第一の閾値175以上となることで比較部166から論理値「1」が出力されており、かつ、観測波形171が第二の閾値176以上となることで比較部168から論理値「1」が出力されているときには、オン状態(Hレベル)となる。
図5では、時刻t1から時刻t2までの期間、時刻t3から時刻t4までの期間、時刻t5から時刻t6までの期間、および時刻t7から時刻t8までの期間において、観測波形177の値がそれぞれオン状態となっている。一方、これ以外の期間では、上記の条件を満たしていないため、観測波形177の値がオフ状態(Lレベル)となっている。
【0053】
図1の電圧計測指示出力部114は、以上説明したようにして電圧計測タイミング判定部113により判定された電圧計測タイミングに応じて、各モニタノード104に電圧計測指示を同報的に出力する。このとき、電圧計測指示管理部115により、各モニタノード104において対応する蓄電池グループ103の中でどの蓄電池セル102をセル電圧の測定対象とするかを決定し、その蓄電池セル102を指定するための情報を電圧計測指示と併せて送信する。
【0054】
図6は、電圧計測指示出力部114からの電圧計測指示の出力タイミングと各モニタノード104でのセル電圧の計測タイミングとの関係を表すタイミングチャートである。
図6において、最上段部分に示す波形177は、
図5に示したチェックポイントCP7での観測波形177と同じものであり、電圧計測タイミング判定部113から出力される電圧計測タイミングの判定結果の一例を表している。
図6のタイミングチャートでは、この波形177に例示した電圧計測タイミングの判定結果に対する電圧計測指示とセル電圧測定のタイミングを示している。
【0055】
図6の波形180は、電圧計測指示出力部114からの電圧計測指示の出力タイミングを表しており、波形181、182、183は、各モニタノード104でのセル電圧の測定タイミングを表している。なお、
図6では、最上位の蓄電池グループ103に対応するモニタノード104(モニタノード1)と、上位から二番目の蓄電池グループ103に対応するモニタノード104(モニタノード2)と、最下位(上位からn番目)の蓄電池グループ103に対応するモニタノード104(モニタノードn)とについて、これらのセル電圧の測定タイミングを波形181〜183にそれぞれ示している。一方、3番目から(n−1)番目のモニタノード104については、図示を省略している。
【0056】
時刻t1において、波形177に示すように電圧計測タイミング判定部113の出力がオンになると、電圧計測指示出力部114は、波形180に示すように、時刻t1から時刻t11までの期間、各モニタノード104に対して電圧計測指示を同報的に出力する。このとき電圧計測指示管理部115は、各蓄電池グループ103の蓄電池セル102に対して予め設定された計測順序に従って、計測順序が1番目の蓄電池セル102が電圧計測対象であることを電圧計測指示出力部114に通知する。電圧計測指示出力部114は、電圧計測指示管理部115からの通知に基づいて、各モニタノード104が対応する蓄電池グループ103の中で計測順序が1番目の蓄電池セル102を電圧計測対象として指定するための情報を付加して、各モニタノード104に電圧計測指示を出力する。
【0057】
各モニタノード104は、電圧計測指示出力部114から電圧計測指示を受信すると、波形181〜183に示すように、対応する蓄電池グループ103の中で指定された蓄電池セル102の電圧測定を行う。ここでは、受信した電圧計測指示に付加された情報に基づいて、時刻t11から所定の電圧計測時間tvを経過するまでの期間、計測順序が1番目の蓄電池セル102の電圧を計測する。
【0058】
一方、電圧計測指示出力部114が時刻t11において電圧計測指示の出力を終えると、電圧計測指示管理部115は、その時点から上記の電圧計測時間tvを経過するまでの期間、電圧計測タイミング判定部113の出力がオン状態に維持されていたか否かを判定する。その結果、オン状態に維持されていた場合は、指定した蓄電池セル102の電圧計測が正しいタイミングで行われたものと判断して、次回の電圧計測タイミングでは次の蓄電池セル102を電圧計測対象に指定することを電圧計測指示出力部114に通知する。反対に、電圧計測タイミング判定部113の出力がオン状態に維持されていなかった場合は、指定した蓄電池セル102の電圧計測が正しいタイミングで行われなかったものと判断して、次回の電圧計測タイミングでは同じ蓄電池セル102を再び電圧計測対象に指定することを電圧計測指示出力部114に通知する。
【0059】
図6の例では、波形177に示すように、時刻t11から電圧計測時間tvを経過するまでの期間、電圧計測タイミング判定部113の出力がオン状態に維持されている。そのため、電圧計測指示管理部115は、次回の電圧計測タイミングでは計測順序が2番目の蓄電池セル102が電圧計測対象であることを電圧計測指示出力部114に通知する。すると電圧計測指示出力部114は、電圧計測指示管理部115からの通知に基づいて、時刻t11に電圧計測時間tvを加えた時点から時刻t12までの期間、各モニタノード104が対応する蓄電池グループ103の中で計測順序が2番目の蓄電池セル102を電圧計測対象として指定するための情報を付加して、各モニタノード104に電圧計測指示を出力する。この電圧計測指示を受信することで、各モニタノード104は、時刻t12から電圧計測時間tvを経過するまでの期間、計測順序が2番目の蓄電池セル102の電圧計測を行う。
【0060】
電圧計測指示出力部114が時刻t12において電圧計測指示の出力を終えると、電圧計測指示管理部115は、時刻t11と同様の判定を行う。
図6の例では、電圧計測時間tvが終了した後の時刻t2において、電圧計測タイミング判定部113の出力がオン状態からオフ状態に切り替わっている。そのため、電圧計測指示管理部115は、次回の電圧計測タイミングでは計測順序が3番目の蓄電池セル102が電圧計測対象であることを電圧計測指示出力部114に通知する。この場合、時刻t2で電圧計測タイミング判定部113の出力がオン状態からオフ状態に切り替わるため、電圧計測指示出力部114は、次の電圧計測指示を出力せずに待機する。
【0061】
時刻t3において電圧計測タイミング判定部113の出力が再びオンになると、電圧計測指示出力部114は、時刻t3から時刻t31までの期間、各モニタノード104に対して電圧計測指示を同報的に出力する。このとき電圧計測指示管理部115は、前回の判定結果により、計測順序が3番目の蓄電池セル102が電圧計測対象であることを電圧計測指示出力部114に通知する。電圧計測指示出力部114は、電圧計測指示管理部115からの通知に基づいて、各モニタノード104が対応する蓄電池グループ103の中で計測順序が3番目の蓄電池セル102を電圧計測対象として指定するための情報を付加して、各モニタノード104に電圧計測指示を出力する。
【0062】
各モニタノード104は、電圧計測指示出力部114から電圧計測指示を受信すると、対応する蓄電池グループ103の中で指定された蓄電池セル102の電圧測定を行う。ここでは、受信した電圧計測指示に付加された情報に基づいて、時刻t31から所定の電圧計測時間tvを経過するまでの期間、計測順序が3番目の蓄電池セル102の電圧を計測する。
【0063】
電圧計測指示出力部114が時刻t31において電圧計測指示の出力を終えると、電圧計測指示管理部115は、時刻t11やt12と同様の判定を行う。
図6の例では、電圧計測時間tvが終了する前の時刻t4において、電圧計測タイミング判定部113の出力がオン状態からオフ状態に切り替わっている。そのため、電圧計測指示管理部115は、次回の電圧計測タイミングでは計測順序が3番目の蓄電池セル102が再び電圧計測対象であることを電圧計測指示出力部114に通知する。
【0064】
時刻t5において電圧計測タイミング判定部113の出力が再びオンになると、電圧計測指示出力部114は、時刻t5から時刻t51までの期間、各モニタノード104に対して電圧計測指示を同報的に出力する。このとき電圧計測指示管理部115は、前回の判定結果により、計測順序が3番目の蓄電池セル102が電圧計測対象であることを電圧計測指示出力部114に通知する。電圧計測指示出力部114は、電圧計測指示管理部115からの通知に基づいて、各モニタノード104が対応する蓄電池グループ103の中で計測順序が3番目の蓄電池セル102を電圧計測対象として指定するための情報を付加して、各モニタノード104に電圧計測指示を出力する。
【0065】
各モニタノード104は、電圧計測指示出力部114から電圧計測指示を受信すると、対応する蓄電池グループ103の中で指定された蓄電池セル102の電圧測定を行う。ここでは、受信した電圧計測指示に付加された情報に基づいて、時刻t51から所定の電圧計測時間tvを経過するまでの期間、計測順序が3番目の蓄電池セル102の電圧を再計測する。
【0066】
電圧計測指示出力部114が時刻t51において電圧計測指示の出力を終えると、電圧計測指示管理部115は前述の判定を行う。
図6の例では、電圧計測時間tvが終了した後の時刻t6において、電圧計測タイミング判定部113の出力がオン状態からオフ状態に切り替わっている。そのため、電圧計測指示管理部115は、次回の電圧計測タイミングでは計測順序が4番目の蓄電池セル102が電圧計測対象であることを電圧計測指示出力部114に通知する。
【0067】
時刻t7において電圧計測タイミング判定部113の出力が再びオンになると、電圧計測指示出力部114は、各モニタノード104に対する電圧計測指示の出力を開始する。このとき電圧計測指示管理部115は、前回の判定結果により、計測順序が4番目の蓄電池セル102が電圧計測対象であることを電圧計測指示出力部114に通知する。電圧計測指示出力部114は、電圧計測指示管理部115からの通知に基づいて、各モニタノード104が対応する蓄電池グループ103の中で計測順序が4番目の蓄電池セル102を電圧計測対象として指定するための情報を付加して、各モニタノード104に電圧計測指示を出力する。
【0068】
電圧計測指示の出力中、波形177、180に示すように、時刻t8において電圧計測タイミング判定部113の出力がオン状態からオフ状態に切り替わると、電圧計測指示出力部114は、当該電圧計測指示が無効であることを示すフラグ情報を付加する。このフラグ情報が付与された電圧計測指示を電圧計測指示出力部114から受信した場合、各モニタノード104は、蓄電池セル102の電圧測定を行わずに待機する。
【0069】
以上説明したようにして、電圧計測指示出力部114から各モニタノード104に対して電圧計測指示が同報的に出力され、これに応じて、各モニタノード104において蓄電池セル102の電圧計測が順次行われる。これを繰りかえすことで、各蓄電池グループ103内の全ての蓄電池セル102の電圧が計測されたら、各モニタノード104は、時刻t91、t92、t93において、記憶保持した各蓄電池セル102の電圧計測結果を上位コントローラ110に送信する。
【0070】
なお、上記の説明では、電圧計測指示の出力後、所定の電圧計測時間tvが終了するまで電圧計測タイミング判定部113の出力がオン状態に維持されなかった場合、電圧計測指示管理部115から電圧計測指示出力部114に対して、次回の電圧計測タイミングでは同じ蓄電池セル102を再び電圧計測対象に指定することを通知するようにした。しかし、このようにはせず、電圧計測指示出力部114から各モニタノード104に対して、セル電圧の計測を中止または計測結果を無効とする指示を同報的に送信してもよい。このようにすれば、各モニタノード104において、次回のセル電圧測定時までマルチプレクサ133の計測チャネルをそのまま保持することができる。そのため、フィルタの位相遅れやマルチプレクサの切り替え時間など、計測チャネルの切り替えに伴って生じる測定時のタイムラグを抑制することができる。
【0071】
また、電圧計測指示出力部114から各モニタノード104に対して電圧計測指示を出力する際に、任意のモニタノード104を指定できるようにしてもよい。このようにすれば、特定のモニタノード104がセル電圧の計測を失敗した場合などに、当該モニタノード104を指定してセル電圧を再計測させ、その結果を上位コントローラ110に送信させることができる。そのため、セル電圧の再計測に伴う消費電力量の増加や、計測結果の再送信に伴う通信トラフィック量の増加などを抑制することができる。
【0072】
次に、電圧計測タイミング判定部113による電圧計測タイミングの判定結果について説明する。
図7は、電圧計測タイミングの判定結果の検証に用いた処理機構の詳細を示すブロック図である。
図7に示すように、SOC算出部256、スイッチ257、電流積算部258、変化抽出部259および合成部260を用いて、電圧計測タイミング判定部113が行った電圧計測タイミングの判定結果を検証した。
【0073】
SOC算出部256は、各蓄電池セル102の電流、電圧および温度の計測値に基づいて、蓄電池ストリング101のSOC(以下、計測SOCと称する)を算出する。
【0074】
スイッチ257は、電圧計測タイミング判定部113の判定結果に応じて開閉制御され、SOC算出部256から合成部260への計測SOCの出力を禁止または許可する。具体的には、電圧計測タイミング判定部113により電圧計測タイミングであると判定されたときには、スイッチ257が開かれる。これにより、SOC算出部256で算出された計測SOCが合成部260へ入力されないようにする。一方、電圧計測タイミング判定部113により電圧計測タイミングではないと判定されたときには、スイッチ257が閉じられる。これにより、SOC算出部256で算出された計測SOCが合成部260へ入力されるようにする。
【0075】
電流積算部258は、蓄電池ストリング101に流れる電流の積算値に基づいて、蓄電池ストリング101のSOC(以下、電流積算SOCと称する)を算出する。
【0076】
変化抽出部259は、電流積算部258により算出された電流積算SOCの変化分を抽出する。変化抽出部259で抽出された電流積算SOCの変化分は、合成部260に入力される。
【0077】
合成部260は、SOC算出部256からスイッチ257を介して入力された計測SOCと、変化抽出部259から入力された電流積算SOCの変化分とを合成し、蓄電池ストリング101のSOC(以下、合成SOCと称する)を求める。具体的には、スイッチ257が閉じられており計測SOCが入力されているときには、合成部260は、計測SOCを合成SOCとして出力する。一方、スイッチ257が開かれており計測SOCが入力されていないときには、合成部260は、電流積算SOCの変化分に基づいて、最後に入力された計測SOCの値を補完し、合成SOCとして出力する。
【0078】
図8は、
図7の処理機構を用いて検証した電圧計測タイミング判定部113による電圧計測タイミングの判定結果と蓄電池ストリング101のSOC変化との関係の一例を示した図である。
図8において、破線で示したパルス波形191は、
図7のチェックポイントCP11で観測される、電圧計測タイミング判定部113による電圧計測タイミングの判定結果を表している。このパルス波形191における各パルス部分(山部分)の幅は、電圧計測タイミングであると判定された期間を表している。これに対して、たとえば符号190に示したプロット点のように、
図8において十字マークで示した各プロット点は、
図7のチェックポイントCP10で観測される計測SOCを表している。また、破線で示した直線状の波形192は、
図7のチェックポイントCP12で観測される電流積算SOCを表している。
【0079】
図8から、電圧計測タイミング判定部113により電圧計測タイミングであると判定された期間では、計測SOCと電流積算SOCとが略一致している。したがって、当該期間内に計測された各蓄電池セル102の電圧値は、蓄電池ストリング101の充放電電流が逐次変化する場合においても、電池状態を推定する際などには、略同一の充放電状態とみなせる条件下で計測されたものとして取り扱っても差し支えないことが分かる。一方、電圧計測タイミングではないと判定された期間では、計測SOCと電流積算SOCとが乖離している場合があるため、こうした取り扱いをすることができない。
【0080】
以上説明したように、電圧計測タイミング判定部113で判定された電圧計測タイミングにおいて、各蓄電池セル102の電流、電圧および温度の計測値に基づいて計測SOCを算出することで、蓄電池ストリング101のSOCを求めることができる。これは、電圧計測タイミングにおいては、各蓄電池セル102の内部抵抗での電圧降下や分極に応じて定まる蓄電池ストリング101の見かけの起電力の値は、各蓄電池セル102の電流、電圧および温度の計測値から求められることを表している。したがって、こうした特性を利用して電圧補正を行うことにより、電圧計測時の蓄電池ストリング101のSOCが異なる場合であっても、各蓄電池セル102の電圧同士を比較することができる。
【0081】
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
【0082】
(1)蓄電池システムは、蓄電池ストリング101を構成する直列接続された複数の蓄電池セル102と、各蓄電池セル102の電圧を計測する電圧計測部としてのモニタノード104と、上位コントローラ110とを有する。上位コントローラ110は、複数の蓄電池セル102に流れる電流を計測する電流計測部111と、電流計測部111により計測された電流に基づいて、蓄電池セル102の電圧計測タイミングを判定する電圧計測タイミング判定部113と、電圧計測タイミング判定部113による電圧計測タイミングの判定結果に基づいて、各モニタノード104に対して蓄電池セル102の電圧計測指示を出力する電圧計測指示出力部114とを備える。各モニタノード104は、電圧計測指示出力部114からの電圧計測指示に応じて各蓄電池セル102の電圧を計測する。このようにしたので、充放電電流が逐次変化する場合にも、略同一の充放電状態とみなせる条件下で各蓄電池セル102の電圧を低コストに計測できる。
【0083】
(2)電圧計測タイミング判定部113は、電流計測部111により計測された電流の時系列データに基づいて、電圧計測タイミングを判定することができる。具体的には、電圧計測タイミング判定部113は、電流計測部111により計測された電流の時系列データに基づいて時定数の異なる複数の判定用演算値を算出し、この複数の判定用演算値に基づいて、電圧計測タイミングを判定する。さらに具体的には、電圧計測タイミング判定部113は、
図4のブロック図により、差算出部164で求められた第一の判定用演算値と第二の判定用演算値との差、および、計測データとして入力された電流の計測値に基づいて、電圧計測タイミングを判定する。このようにしたので、電圧計測タイミングを適切に判断することができる。
【0084】
(3)電圧計測タイミング判定部113は、比較部166により、差算出部164で求められた第一の判定用演算値と第二の判定用演算値との差と、第一閾値保持部165に記憶保持された所定の第一の閾値とを比較する。また、比較部168により、電流の計測値と、第二閾値保持部167に記憶保持された所定の第二の閾値とを比較する。そして、これらの比較結果に基づいて、第一の判定用演算値と第二の判定用演算値との差が第一の閾値以上であり、かつ電流の計測値が第二の閾値以上であるときに、論理積演算部169において電圧計測タイミングであると判定する。このようにしたので、各蓄電池セル102の電流、電圧、温度の計測値に基づいて算出した計測SOCと電流積算により求めた電流積算SOCとが略一致する期間を、略同一の充放電状態とみなせる電圧計測タイミングとして判定することができる。
【0085】
(4)蓄電池セル102は、蓄電池グループ103として所定数ごとにグループ分けされており、モニタノード104は、各蓄電池グループ103に対応してそれぞれ設けられている。電圧計測指示出力部114は、各モニタノード104に対して、電圧計測指示を同報的に出力する。このようにして、蓄電池グループ103ごとに蓄電池セル102の電圧計測を行うようにしたので、全ての蓄電池セル102の電圧計測を限られた期間内で低コストに行うことができる。
【0086】
(5)電圧計測指示出力部114は、複数の蓄電池セル102の中で各モニタノード104が電圧計測対象とする蓄電池セル102を指定するための情報を付加して、電圧計測指示を出力する。このようにしたので、各モニタノード104において、対応する蓄電池グループ103内で電圧計測対象とする蓄電池セル102を確実に判断して、その蓄電池セル102の電圧計測を行うことができる。
【0087】
(6)上位コントローラ110は、前回の電圧計測指示が所定の電圧計測時間tv以上継続して出力された否かを判定する電圧計測指示管理部115をさらに備える。電圧計測指示出力部114は、この電圧計測指示管理部115の判定結果に基づいて、
図6で説明したように、電圧計測指示に付加する情報の内容を決定する。このようにしたので、前回の蓄電池セル102の電圧計測が正しいタイミングで行われたか否かに応じて、今回の電圧計測タイミングにおいて電圧計測対象とする蓄電池セル102を正しく指定することができる。
【0088】
(7)蓄電池システムは、複数の蓄電池セル102と不図示の電圧検出線を介して接続され、少なくとも電圧計測部としての機能を有する各モニタノード104と、各モニタノード104と有線または無線で接続された上位コントローラ110とを備える。第1の実施形態では、
図1に示すように、電圧計測タイミング判定部113は、上位コントローラ110内に設けられている。このようにしたので、複数の蓄電池セル102に対する電圧計測タイミングを一つの電圧計測タイミング判定部113でまとめて判定できるため、低コスト化を図ることができる。
【0089】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、上位コントローラ110ではなく、各モニタノード104において電圧計測タイミングの判定を行う例を説明する。
【0090】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る蓄電池システムの構成を示す図である。
図9の蓄電池システムにおいて、
図1に示した第1の実施形態に係る蓄電池システムとの違いは、各モニタノード104が単電池電圧計測タイミング判定部123を有する点である。また、上位コントローラ110が電圧計測タイミング判定部113および電圧計測指示管理部115を有しない点と、電圧計測指示出力部114の代わりに電流計測データ送信部124を有する点である。以下では、これらの
図1との違いを中心に、
図9の蓄電池システムについて説明する。
【0091】
電流計測データ送信部124は、電流計測部111により計測された蓄電池ストリング101の電流計測データを各モニタノード104に送信する。各モニタノード104に設けられた単電池電圧計測タイミング判定部123は、電流計測データ送信部124から送信された電流計測データに基づいて、対応する蓄電池グループ103の各蓄電池セル102の電圧計測タイミングを判定する。この電圧計測タイミングの判定は、第1の実施形態において説明した電圧計測タイミング判定部113での判定処理と同様の方法により行うことができる。
【0092】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第2の実施形態と同様に、上位コントローラ110ではなく、各モニタノード104において電圧計測タイミングの判定を行う別の例を説明する。
【0093】
図10は、本発明の第3の実施形態に係る蓄電池システムの構成を示す図である。
図10の蓄電池システムにおいて、
図9に示した第2の実施形態に係る蓄電池システムとの違いは、各モニタノード104が単電池電圧計測タイミング判定部123に加えて、さらに単電池電流計測部121を有する点である。また、上位コントローラ110が電流計測部111および電流計測データ送信部124を有しない点である。以下では、これらの
図9との違いを中心に、
図10の蓄電池システムについて説明する。
【0094】
各モニタノード104に設けられた単電池電流計測部121は、対応する蓄電池グループ103に併設された電流検出器105の検出結果を所定周期ごとに取り込むことで、対応する蓄電池グループ103の各蓄電池セル102の電流を計測する。単電池電圧計測タイミング判定部123は、単電池電流計測部121により計測された各蓄電池セル102の電流計測データを用いて、対応する蓄電池グループ103の各蓄電池セル102の電圧計測タイミングを判定する。この電圧計測タイミングの判定は、第1の実施形態において説明した電圧計測タイミング判定部113での判定処理と同様の方法により行うことができる。
【0095】
なお、本実施形態において、各モニタノード104は、それぞれが有する単電池電流計測部121により得られた別々の電流計測データを用いて、電圧計測タイミングの判定を行う。そのため、電流検出器105や単電池電流計測部121の個体差により、電圧計測タイミングの判定結果がモニタノード104ごとに異なる場合がある。したがって、本実施形態を採用する際には、この点を考慮することが好ましい。
【0096】
以上説明した本発明の第2、第3の各実施形態によれば、蓄電池システムは、複数の蓄電池セル102と不図示の電圧検出線を介して接続され、少なくとも電圧計測部としての機能を有する各モニタノード104と、各モニタノード104と有線または無線で接続された上位コントローラ110とを備えており、
図9、
図10に示すように、単電池電圧計測タイミング判定部123は各モニタノード104内に設けられている。これらの蓄電池システムは、
図1に示した第1の実施形態に係る蓄電池システムとは異なり、電圧計測指示出力部114を備えない。このようにしたので、既存の蓄電池システムで用いられる上位コントローラを流用して、本発明の上位コントローラ110を少ない改造で実現することができる。
【0097】
また、第2の実施形態による蓄電池システムでは、電流計測部111は上位コントローラ110内に設けられており、単電池電圧計測タイミング判定部123は各モニタノード104内に設けられている。単電池電圧計測タイミング判定部123は、電流計測データ送信部124により上位コントローラ110から送信される電流の計測結果に基づいて、電圧計測タイミングを判定する。このようにしたので、上記のような効果を享受しつつ、各モニタノード104における電圧計測タイミングを確実に一致させることができる。
【0098】
以上説明した各実施形態や各種の変化例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されない。本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。