特許第6596963号(P6596963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6596963-成型加飾材用ポリエステルフィルム 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596963
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】成型加飾材用ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20191021BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20191021BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   B32B27/36
   B32B27/00 E
   B29C45/16
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-124299(P2015-124299)
(22)【出願日】2015年6月20日
(65)【公開番号】特開2016-26923(P2016-26923A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2018年3月8日
(31)【優先権主張番号】特願2014-127775(P2014-127775)
(32)【優先日】2014年6月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】植田 将史
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−050961(JP,A)
【文献】 特開2008−100386(JP,A)
【文献】 特開2012−224082(JP,A)
【文献】 特開2002−103549(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第10036407(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/36
B29C 45/16
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両最外層が同一のポリエステル組成物から構成された、少なくとも三層からなる積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面に離型層を有し、該離型層上に表面保護層、図柄印刷層及び接着層をこの順で有する転写シートであって、
前記積層ポリエステルフィルムの厚さが10〜250μmであり、
下記式(1)〜(3)を同時に満たし、かつ、両最外層に含まれる不活性粒子の細孔容積が1.40ml/g以下であることを特徴とする成型同時加飾転写シート
0≦SRq≦65 ・・・(1)
1700≦SRt ・・・(2)
155≦Gs60°・・・(3)
(上記式中、SRqは、離型層表面の2乗平均平方根面粗さ(nm)を表し、SRtは離型層表面の最大高さ(nm)を表し、Gs60°は離型層表面のフィルム長手方向(MD)の60°光沢度(%)をそれぞれ表す)
【請求項2】
前記不活性粒子が、多孔質シリカ粒子である、請求項1記載の成型同時加飾転写シート
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気製品や自動車部品などの樹脂成形品を装飾するために用いられる成形同時加飾シートの支持体フィルムとして有用な成型加飾材用ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気・電子製品や自動車部品等の曲面を有するプラスチック成形品の加飾方法の一つとして、成形と同時に転写印刷を施す、いわゆるインモールド成形法が広く利用されている。インモールド成形法とは、あらかじめ離型層、表面保護層、図柄印刷層、接着層等からなる印刷層を基材フィルムの上に積層させた転写シートを作成し、プラスチック成形品を射出成形する際の熱と圧力を利用して、プラスチック成形品の表面に前述の印刷層を転写印刷する方法である。
【0003】
近年、基材フィルムに対して、成形品の印刷鮮明度を向上させるための高光沢感と、生産性を向上させるための耐ブロッキング性という、相反する特性を合わせ持つことが求められている。
【0004】
高光沢感を発現する方法としてフィルム表層に添加する粒子を小さくしたり、添加粒子濃度を低下させたりするといった方法が知られている(特許文献1参照)。また、耐ブロッキング性の付与としてはフィルム表層に添加する粒子を大きくしたり、添加粒子濃度を高めたりしてフィルム表面を粗くするといった方法が知られている(特許文献2参照)。
【0005】
フィルム表層における添加粒子の小径化や添加粒子濃度の低下によって高光沢感を発現することができるが、印刷層加工工程で転写シートがロールに巻き取られた際、フィルムの平滑化により表面保護層や印刷層等とブロッキングを起こし生産性を低下させることがある。
【0006】
フィルム表層における添加粒子の大径化や添加粒子の高濃度化によってフィルム表面を粗くすれば、ブロッキングの不具合が生じないが、光沢感の低下、外観不具合などに繋がり、精細な印刷ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−264135号公報
【特許文献2】特開2007−268708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、光沢感に優れ、かつ転写シートの生産工程でブロッキングが発生せず、成形同時転写加工後は界面で円滑に剥がれる機能を有している成型加飾材用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、両最外層が同一のポリエステル組成物から構成された、少なくとも三層からなる積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面に離型層を有し、該離型層上に表面保護層、図柄印刷層及び接着層をこの順で有する転写シートであって、前記積層ポリエステルフィルムの厚さが10〜250μmであり、下記式(1)〜(3)を同時に満たし、かつ、両最外層に含まれる不活性粒子の細孔容積が1.40ml/g以下であることを特徴とする成型同時加飾転写シートに存する。
0≦SRq≦65 ・・・(1)
1700≦SRt ・・・(2)
155≦Gs60°・・・(3)
(上記式中、SRqは、離型層表面の2乗平均平方根面粗さ(nm)を表し、SRtは離型層表面の最大高さ(nm)を表し、Gs60°は離型層表面のフィルム長手方向(MD)の60°光沢度(%)をそれぞれ表す)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、転写シートの工程でブロッキング等の不具合が起こりにくく、精細な印刷に優れ、かつ転写シート加工時に離型層の加工を省くことができる成型加飾材用ポリエステルフィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のフィルムを用いた成形加飾加工の一例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のフィルムを構成するポリエステルは、ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸が好ましく、これらのほかに、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの公知のジカルボン酸の一種以上を、共重合成分として含んでいてもよい。また、ジオール成分としては、エチレングリコールが好ましく、これらのほかに、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの公知のジオールの一種以上を、共重合成分として含んでいてもよい。
【0014】
重合触媒としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物やゲルマニウム化合物やチタン化合物が挙げられる。チタン化合物では、例えばテトラアルキルチタネート、テトラアリールチタネート、シュウ酸チタニル塩類、シュウ酸チタニル、チタンを含むキレート化合物、チタンのテトラカルボキシレート等であり、具体的にはテトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラフェニルチタネートまたはこれらの部分加水分解物、シュウ酸チタニルアンモニウム、シュウ酸チタニルカリウム、チタントリアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0015】
本発明におけるポリエステルフィルムには、微粒子を含有させることが、フィルムの巻上げ工程等での作業性の向上に有効であり、含有させる微粒子として好ましくは一時粒子の凝集粒子である多孔質シリカ粒子がある。多孔質シリカ粒子は安価、かつ、フィルムの延伸時に粒子周辺にボイドが発生しにくいため、光学欠点となりにくく、フィルムの透明性を向上させる特長を有する。
【0016】
本発明で用いるシリカ粒子の細孔容積は、1.40ml/g以下にすることが好ましく、さらに好ましくは1.30ml/g以下である。細孔容積が1.40ml/gより大きいとフィルムの延伸工程での粒子の変形が大きく、フィルム表面の突起高さが小さくなるため、巻き特性が悪化したり、巻き硬度が硬くなって、巻き込み異物がフィルムに凹み欠点を生じさせたりすることがある。また、印刷層加工工程で転写シートがロールに巻き取られた際、フィルムの平滑化により表面保護層や印刷層等とブロッキングを起こし生産性を低下させることがある。
【0017】
本発明におけるポリエステルフィルムに含有させる微粒子は、上述の多孔質シリカ粒子の他に、本発明の効果を減じない範囲でシリカ、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化リチウム等を用いても良い。また、有機塩粒子としては、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等が挙げられる。また、架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体が挙げられる。その他ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機粒子や、触媒残差を粒子化させた析出粒子を用いてもよい。
【0018】
使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。
これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0019】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常5μm以下、好ましくは0.1〜4.0μmの範囲である。平均粒径が5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、転写する成型面の表面形状に影響を与える場合がある。平均粒径が0.01μm未満では、表面粗度が小さすぎて、十分な易滑性が得られない場合がある。
【0020】
さらに、ポリエステル層中の粒子含有量は、通常5重量%以下、好ましくは0.0003〜3重量%の範囲である。粒子含有量が5重量%を超えて添加する場合には、フィルムの透明性が不十分な場合があり、成膜時にフィルムの破断が頻発して生産性が低下する場合もある。一方、粒子含有量が0.0003重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合がある。
【0021】
ポリエステル中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0022】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0023】
本発明のポリエステルフィルムは3層以上の多層構成のフィルムである。離型層付与前のフィルムの表裏層以外の層には当該フィルムの再生原料を含有させることが可能であり、それによって生産性が向上する。
【0024】
本発明のフィルムの両最外層は、同一のポリエステル組成物から構成されるものである。そのような構成を採用することによって、離型層付与前のフィルムにおいて表裏層の共押出しが1台の溶融押出機で行うことができ、経済性に優れる。
【0025】
本発明のフィルムの最外層のうち離型層を設ける方については、離型層表面の2乗平均平方根面粗さ(nm)であるSRqが20〜65nmの範囲であり、好ましくは25〜60nm、さらに好ましくは30〜55nmの範囲である。SRqが20nm未満の場合は、巻き特性が劣り、不適当である。SRqが65nmを超える場合は、成形品の光沢感が低下して、精細な印刷ができない。
【0026】
本発明のフィルムの最外層のうち離型層を設ける方は、離型層表面の最大高さ(nm)であるSRtが1700nm以上であり、好ましくは1900nm以上、さらに好ましくは2100nm以上である。SRtが1700nm未満の場合は、ハードコート層、インキ層、接着層等の印刷層加工工程で転写シートがロール状に巻き取られた際にブロッキングが発生してしまい、好ましくない。
【0027】
本発明のフィルムは、離型層表面のフィルム長手方向(MD)の60°光沢度(%)であるGs60°が155%以上であり、好ましくは160%以上である。Gs60°が155%未満の場合は、成形品の品位を欠き、好ましくない。
【0028】
本発明のフィルムは、印刷層の表面保護層、インキ層等と接する表面に離型層を有するものであり、当該離型層はインラインコーティングにより設けることが好ましい。インラインコーティングを用いてフィルムの片面に離型層を付与することで、転写シート加工時に離型層の加工を省くことができ、経済性に優れる。なお、インラインコーティングによってフィルムの片面に離型層を設けた場合、上記のフィルム表面粗さ、および、60°光沢度の測定は離型層表面で測定することになるが、離型層自体は極薄であるため、離型層表面の測定値はフィルム表面の測定値とみなすことができる。
【0029】
本発明のフィルムの厚さは、通常10〜250μmであり、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは10〜75μmである。
【0030】
次に、本発明のフィルムの製造法を具体的に説明するが、本発明の構成要件を満足する限り、以下の例示のみに限定されるものではない。
【0031】
チップ化したポリエステル組成物を、ホッパードライヤー、パドルドライヤー、オーブンなどの、通常用いられる乾燥機または真空乾燥機を用いて乾燥する。前段で、チップを結晶化させて相互の融着が起こらないように(予備結晶化ともいう)、また後段で、水分量を十分に減少させるように(本乾燥ともいう)、乾燥を行う。このように乾燥した後、200〜320℃でシートに押出す。
【0032】
押出しに際しては、ポリエステルの溶融押出機を2台以上用いて、いわゆる共押出法により3層以上の積層フィルムとすることができる。
【0033】
層の構成としては、A原料とB原料とを用いたA/B/A構成またはそれ以外の構成のフィルムとすることができる。例えばA原料として特定の粒子を用いてA層の表面形状を設計し、B原料としては粒子を含有しない原料を用い、A/B/A構成のフィルムとすることができる。この場合B層の原料を自由に選択できることからコスト的な利点などが大きい。
【0034】
また当該フィルムの再生原料をB層に配合しても表層であるA層により表面粗度の設計ができるので、さらにコスト的な利点が大きくなる。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未延伸シートを得る。
【0035】
この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0036】
本発明において、このようにして得られた未延伸シートを2軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを縦方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で2〜6倍に延伸し、150℃〜240℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
【0037】
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押出してから二軸延伸後熱固定して巻き上げられるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸シート、その後に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルムの何れかにコーティングする。
【0038】
これらの中では、一軸延伸フィルムにコーティングした後にテンターにおいて乾燥および横方向への延伸を行い、さらに基材フィルムと共に熱処理をする方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と塗布層塗設を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、コーティング後に延伸を行うために薄膜コーティングが容易であり、コーティング後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温であるために塗布層の造膜性が向上し、また塗布層をポリエステルフィルムが強固に密着する。
【0039】
特に成形同時転写用ポリエステルフィルムとして用いる場合には、塗布層は層内もしくはフィルムとの層間において破壊や剥離が起こることは好ましくないが、インラインコーティングによる塗布層は、この点で優れた様態を示す。特に、塗布層に後述の熱硬化性化合物を含有する場合には、インラインコーティングの高温処理により、反応残基が残りにくくなるというメリットがある。成形同時転写用基材フィルムとして用いる場合に、塗布層中に反応残基があることは、転写シートへの加工工程で表面保護層の成分と反応し剥離性が悪化することがある。
【0040】
本発明における離型層に関して、その構成材料として、フッ素化合物、長鎖アルキル化合物およびワックスの中から選ばれる少なくとも1種を含有するものである。これらの離型剤は単独で用いてもよいし、複数使用してもよい。
【0041】
本発明で使用することのできるフッ素化合物としては、化合物中にフッ素原子を含有している化合物である。インラインコーティングによる面状の点で有機系フッ素化合物が好適に用いられ、例えば、パーフルオロアルキル基含有化合物、フッ素原子を含有するオレフィン化合物の重合体、フルオロベンゼン等の芳香族フッ素化合物等が挙げられる。転写時による耐熱性、汚染性を考慮すると高分子化合物であることが好ましい。
【0042】
本発明における長鎖アルキル化合物とは、炭素数が6以上、特に好ましくは8以上の直鎖または分岐のアルキル基を有する化合物のことである。具体例としては、特に限定されるものではないが、長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂、長鎖アルキル基含有アクリル樹脂、長鎖アルキル基含有ポリエステル樹脂、長鎖アルキル基含有アミノ樹脂、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有四級アンモニウム塩等が挙げられる。離型フィルム剥離時に貼り合わせている相手方基材表面への離型層由来の成分が転着する等を考慮すると高分子化合物であることが好ましい。
【0043】
本発明において使用することのできるワックスとは、天然ワックス、合成ワックス、それらの配合したワックスの中から選ばれたワックスである。天然ワックスとは、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油ワックスである。植物系ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油が挙げられる。動物系ワックスとしては、みつろう、ラノリン、鯨ロウが挙げられる。鉱物系ワックスとしてはモンタンワックス、オゾケライト、セレシンが挙げられる。石油ワックスとしてはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムが挙げられる。合成ワックスとしては、合成炭化水素、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸、酸アミド、アミン、イミド、エステル、ケトンが挙げられる。合成炭化水素としては、フィッシャー・トロプシュワックス(別名サゾワールワックス)、ポリエチレンワックスが有名であるが、このほかに低分子量の高分子(具体的には粘度数平均分子量500から20000の高分子)である以下のポリマーも含まれる。すなわち、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックまたはグラフト結合体がある。変性ワックスとしてはモンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体が挙げられる。ここでの誘導体とは、精製、酸化、エステル化、ケン化のいずれかの処理、またはそれらの組み合わせによって得られる化合物である。水素化ワックスとしては硬化ひまし油、および硬化ひまし油誘導体が挙げられる。
【0044】
本発明の離型層に用いられる熱硬化性を有する化合物としては、種々公知の樹脂が使用できるが、例えば、メラミン化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物等が挙げられる。加熱転写時の耐熱性に優れて離型性が低下しないという点において、メラミン化合物がより好ましい。
【0045】
本発明で使用することのできるメラミン化合物としては、アルキロールまたはアルコキシアルキロール化したメラミン系化合物であるメトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン等が例示され、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できる。
【0046】
本発明で使用することのできるにおけるエポキシ化合物としては、例えば、分子内にエポキシ基を含む化合物、そのプレポリマーおよび硬化物が挙げられる。代表的な例は、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの縮合物である。特に、低分子ポリオールのエピクロロヒドリンとの反応物は、水溶性に優れたエポキシ樹脂を与える。
【0047】
本発明において使用することのできるオキサゾリン化合物としては、分子内にオキサゾリン環を持つ化合物であり、オキサゾリン環を有するモノマーや、オキサゾリン化合物を原料モノマーの1つとして合成されるポリマーも含まれる。
【0048】
本発明において使用することのできるイソシアネート化合物としては、分子中にイソシアネート基を持つ化合物を指し、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートやこれらの重合体、誘導体等が挙げられる。
【0049】
これらの熱硬化性を有する化合物は、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。また熱硬化を促進させるために触媒と共に用いることも可能である。さらにインラインコーティングへの適用等を配慮した場合、水溶性または水分散性を有することが好ましい。熱硬化性化合物の使用割合は、フッ素化合物、長鎖アルキル化合物およびワックスの中から選ばれる少なくとも一種の100重量部に対し、通常5〜100重量部、好ましくは10〜80重量部、さらに好ましくは、15〜50重量部である。
【0050】
本発明の離型フィルムにおいて、ポリエステルフィルムと離型層との密着性向上あるいは離型層の塗布面状良化を目的として、バインダーポリマーを併用することも可能である。
【0051】
本発明において使用することのできるバインダーポリマーとは、高分子化合物安全性評価フロースキーム(昭和60年11月 化学物質審議会主催)に準じて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量(Mn)が1000以上の高分子化合物で、かつ造膜性を有するものと定義する。
【0052】
バインダーポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、セルロース類、でんぷん類等が挙げられる。
【0053】
また、塗布層の固着性、滑り性改良を目的として、不活性粒子を含有してもよく、具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、有機粒子等が挙げられる。
【0054】
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料等が含有されてもよい。
【0055】
本発明において、ポリエステルフィルムに離型層を設ける方法として、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著 1979年発行に記載例がある。
【0056】
本発明において、ポリエステルフィルム上に離型層を形成する際の硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、インラインコーティングにより離型層を設ける場合、通常、170〜280℃で3〜40秒間、好ましくは200〜280℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。また、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。なお、活性エネルギー線照射による硬化のためのエネルギー源としては、従来から公知の装置,エネルギー源を用いることができる。
本発明において用いる塗布液は、取扱い上、作業環境上、水溶液または水分散液であることが望ましいが、水を主たる媒体としており、本発明の要旨を超えない範囲であれば、有機溶剤を含有していてもよい。
【0057】
塗布層の塗工量は、通常0.003〜1.5g/m、好ましくは0.005〜0.5g/m、さらに好ましくは0.005〜0.1g/mである。塗布層の塗工量が0.003g/m未満の場合は十分な性能が得られない恐れがあり、1.5g/mを超える塗布層は、外観の悪化やコストアップを招き好ましくない。
【0058】
本発明においては、離型層が設けられていない面には、本発明の要旨を損なわない範囲において、帯電防止層、接着層、オリゴマー析出防止層等の塗布層を設けられたり、化学処理や放電処理が施されたりしても構わない。
【0059】
実使用の際には、本発明のポリエステルフィルムの上に、さらに表面保護層、図柄印刷層および接着層をこの順で設ける。かかる転写シートは、成型同時転写シートとして好ましく用いることができる。
【0060】
表面保護層は、転写の後、被転写体の最表面に位置し、その下の図柄印刷層等を保護する役割を持つ。
【0061】
表面保護層の素材としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂共重合体等を用いることが好ましい。
【0062】
表面保護層の形成方法としては、例えばロールコート法、グラビアコート法、コンマコート法などのコート法、および、例えばグラビア印刷法、スクリーン印刷などの印刷法がある。
【0063】
表面保護層は被転写体の最表面を形成するので、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂または熱線硬化樹脂を用いることが好ましい。これらの樹脂は、転写工程において基材フィルムを剥離する前に硬化させても良いし、転写工程の後、すなわち基材フィルムを剥離した後に硬化させても良い。また、表面保護層には、耐候性を向上させるために、紫外線吸収剤あるいは紫外線反射剤を添加することも好ましい。また、耐溶剤性を向上させるために、ポリオレフィン系樹脂を用いることも好ましい。
【0064】
図柄印刷層の素材としては、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド系樹脂、熱可塑性エラストマー系樹脂などが好ましく用いられる。また、好ましくは柔軟な被膜を作製することができる樹脂のバインダーが用いられる。また、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いることが特に好ましい。
【0065】
図柄印刷層の形成方法は公知の方法を用いることができ、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法を用いることが好ましい。特に多色刷りや階調色彩を必要とする場合は、オフセット印刷法やグラビア印刷法が好ましく用いられる。また、単色の場合はグラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法を採用することもできる。印刷法は図柄に応じて、全面的に形成する場合も部分的に形成する場合もある。
【0066】
接着層の素材としては、感熱接着剤あるいは感圧接着剤を用いることが好ましい。被転写体がアクリル系樹脂からなる場合は、接着層としてアクリル系樹脂を用いることが好ましい。また、被転写体がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、または、ポリスチレン系樹脂からなる場合は、接着層としてこれらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを用いることが好ましい。被転写体がポリプロピレン系樹脂からなる場合は、接着層として塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、環化ゴム、クマロンインデン系樹脂などを用いることが好ましい。
【0067】
接着層の形成方法は公知の方法を用いることができる。例えば、ロールコート法、グラビアコート法、コンマコート法などのコート法や、グラビア印刷法、スクリーン印刷などの印刷法が用いられる。
【0068】
表面保護層、図柄印刷層および接着層の各層の厚みは、被転写体の形状、素材および大きさによって、適当な厚みにすることができる。
【0069】
本発明の転写シートは、目的に応じて、ハードコート層、耐候層、難燃層、防汚層、抗菌層などをさらに設けても良い。これらの層は、コーティング、共押出、熱ラミネート、ドライラミネートなどの手法により設けることができる。
【0070】
本発明の転写シートを用いる被転写体の材料は、特に限定されないが、例えば電気・電子製品や自動車部品などに用いられる場合は、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル・スチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂などが好ましく用いられる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り、実施例および比較例中の「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を意味する。
【0072】
(1)2乗平均平方根粗さ(SRq)
測定波長が554nmの光干渉法によるマイクロマップ社製512の非接触式3次元粗さ計を用い、232μm×177μmの測定領域における離型層表面の2乗平均平方根粗さSRq値を10点平均して求めた。
【0073】
(2)最大高さ(SRt)
測定波長が554nmの光干渉法によるマイクロマップ社製512の非接触式3次元粗さ計を用い、232μm×177μmの測定領域における離型層表面の最大高さSRt値を10点平均して求めた。
【0074】
(3)60°光沢度(フィルム)(Gs60°)
フィルムの幅方向の中央部より試験片を切り出し、日本電色工業(株)製VG−2000を用い、以下の方法(60度鏡面法、JIS Z−8741)で60°光沢度(Gs60°)を測定・算出した。
【0075】
入射角60°、受光角60°にセットし、離型層表面を光源側に向けた状態で、試験片が平面性を保つように(フィルムがたわまないように)セットした後、試験片をゼロキャップにて覆い、入射と受光の方向をフィルムの長手方向(MD)に合わせて、3点測定し、その3点の平均を60°光沢度(Gs60°)とした。なお、サンプルを、セットする窓に貼る際には、適度な張力をかけて貼り、しわが全く入らないように注意する。
【0076】
(4)成形品の外観
図1に示すように、印刷を施した転写シート(III)の上に、さらに接着層(IV)を設け、縦35cm、横25cm、最大深さ3.0cmの金型(I)を用い、IRヒーターで予備加熱後、金型内部に真空または圧空成型法により予備成型を実施した。予備成型を実施した後、樹脂を射出成型機(II)から射出し、成型転写を行った。この時、成型品の表面を目視観察し、以下の基準にて判定した。
○:十分な光沢感があり、成形品の表面には凹凸等の欠陥が観察されなかったもの(実用的に問題のないレベル)
△:光沢感が低下し、つや消し感があったもの(用途によっては問題のないレベル)
×:成形品の表面が凹凸によって梨地状となり、光沢感が損なわれている(実用的に問題があるレベル)
【0077】
(5)ブロッキング性評価
フィルムの離型層に表面保護層、インキ層等を付与した転写シートを同方向に4枚重ね、70℃条件下で4kg/8cmの荷重を8時間かけた後、フィルムの状態を目視観察した。ブロッキング性の判定基準は以下のとおりである。
○:荷重をかけた8cmの部分にのみブロッキングがある。
△:荷重をかけた8cmの部分以外にもブロッキングがわずかに広がる
×:荷重をかけた8cmの部分以外にもブロッキングが大きく広がる
【0078】
(6)細孔容積
窒素吸脱着法により測定、BET式で計算した。
【0079】
次に以下の例において使用したポリエステル原料について説明する。
<ポリエステル1>
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、多価アルコール成分としてエチレングリコールを使用し、定法の溶融重合法にて極限粘度が0.66dl/gで、滑剤粒径を含有しないポリエステルチップを製造した。
【0080】
<ポリエステル2>
ポリエステル1を定法の固層重合を行い、極限粘度が0.85dl/gで、滑剤粒径を含有しないポリエステルチップを製造した。
【0081】
<ポリエステル3>
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、多価アルコール成分としてエチレングリコールを使用し、定法の溶融重合法にて極限粘度が0.66dl/gであり、平均粒径3.1μmであって細孔容積が1.60ml/gの非晶質シリカAを0.60部含有するポリエステルチップを製造した。
【0082】
<ポリエステル4>
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、多価アルコール成分としてエチレングリコールを使用し、定法の溶融重合法にて極限粘度が0.66dl/gであり、平均粒径3.1μmであって細孔容積が1.25ml/gの非晶質シリカAを0.60部含有するポリエステルチップを製造した。
【0083】
離型層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
・長鎖アルキル化合物(a):
4つ口フラスコにキシレン200部、オタデシルイソシアネート600部を加え、攪拌下に加熱した。キシレンが還流し始めた時点から、平均重合度500、ケン化度88モル%のポリビニルアルコール100部を少量ずつ10分間隔で約2時間にわたって加えた。
ポリビニルアルコールを加え終わってから、さらに2時間還流を行い、反応を終了した。
反応混合物を約80℃まで冷却してから、メタノール中に加えたところ、反応生成物が白色沈殿として析出したので、この沈殿を濾別し、キシレン140部を加え、加熱して完全に溶解させた後、再びメタノールを加えて沈殿させるという操作を数回繰り返した後、沈殿をメタノールで洗浄し、乾燥粉砕して得た。
【0084】
・熱硬化性を有する化合物(b):
アルキロールメラミン/尿素共重合の架橋性樹脂(大日本インキ化学工業製ベッカミン:「J101」)
【0085】
実施例1:
ポリエステル2とポリエステル4を90.0:10.0の重量比率で配合し、押出機にて溶融させて、積層ダイの外層Aに供給し、積層ダイの内層Bにはポリエステル1を100の重量比率で供給した。外層A/内層B/外層Aの構成からなる2種3層の積層ポリエステル樹脂をフィルム状に押出して、35℃の冷却ドラム上にキャストして急冷固化した未延伸フィルムを作製した。次いで80℃の加熱ロールで予熱した後、赤外線加熱ヒータと加熱ロールを併用して90℃のロール間で縦方向に3.4倍延伸した後、長鎖アルキル化合物(a)と熱硬化性を有する化合物(b)を80.0:20.0の重量比率で配合した塗布液を塗布量(乾燥後)が0.030g/mになるように塗布した。次いでフィルム端部をクリップで把持してテンター内に導き、95℃の温度で加熱しつつ横方向に4.0倍延伸し、235℃で10秒間の熱処理を行い、平均厚さは50μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1に示す通りであり、優れた特性を示した。
【0086】
また、得られた本発明の基材フィルムの離型層面上に、表面保護層、印刷層および接着層をこの順に形成し、転写シートを得た。
【0087】
表面保護層としては、紫外線硬化型アクリル系樹脂(BASFジャパン社製“LAROMER”(登録商標)LR8983)を用いて、厚さ60μmの層を形成した。印刷層としては、ポリウレタン系樹脂グラビアインキ(大日精化工業(株)社製“ハイラミック”(登録商標)、主要溶剤:トルエン/メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール、インキ:723B黄/701R白)を用いて、厚さ70μmの層を形成した。接着層としては、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合樹脂フィルム(オカモト(株)社製ABSフィルム“ハイフレックス”(登録商標))を用いて、厚さ100μmの層を形成した。
【0088】
実施例2:
ポリエステル2とポリエステル4を95.0:5.0の重量比率で配合し、押出機にて溶融させて、積層ダイの外層Aに供給した以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1に示すとおりであり、優れた特性を示した。
【0089】
実施例3:
ポリエステル2とポリエステル4を92.5:2.5の重量比率で配合し、押出機にて溶融させて、積層ダイの外層Aに供給した以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1に示すとおりであり、優れた特性を示した。
【0090】
比較例1:
ポリエステル2とポリエステル4を70.0:30.0の重量比率で配合し、押出機にて溶融させて、積層ダイの外層Aに供給した以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2に示すとおりである。この結果より、成形品の表面が凹凸によって梨地状となることで、光沢感が損なわれており、実用的に使用不可と判断された。
【0091】
比較例2:
ポリエステル2とポリエステル4を80.0:20.0の重量比率で配合し、押出機にて溶融させて、積層ダイの外層Aに供給した以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2に示すとおりである。この結果より、成形品の表面の光沢感がやや低下しているが、用途によっては使用可能なレベルであった。
【0092】
比較例3:
ポリエステル2とポリエステル3とポリエステル4を94.0:4.0:2.0の重量比率で配合し、押出機にて溶融させて、積層ダイの外層Aに供給した以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2に示すとおりである。この結果より、表面保護層、インキ層、接着層等の印刷層を当該フィルムの上に積層させた転写シートをロール状に巻き取った際、ブロッキングが大きく発生し実用的に使用不可と判定された。
【0093】
比較例4:
ポリエステル2とポリエステル3を40.0:60.0の重量比率で配合し、押出機にて溶融させて、積層ダイの外層Aに供給した以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2に示すとおりである。この結果より、成形品の表面が凹凸によって梨地状となることで、光沢感が損なわれており、実用的に使用不可と判断された。
【0094】
比較例5:
ポリエステル2とポリエステル3を70.0:30.0の重量比率で配合し、押出機にて溶融させて、積層ダイの外層Aに供給した以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2に示すとおりである。この結果より、成形品の表面が凹凸によって梨地状となることで、光沢感が損なわれており、実用的に使用不可と判断された。また表面保護層、インキ層、接着層等の印刷層を当該フィルムの上に積層させた転写シートをロール状に巻き取った際、ブロッキングがわずかに発生したが実用上使用可能なレベルであった。
【0095】
比較例6:
ポリエステル2とポリエステル3を90.0:10.0の重量比率で配合し、押出機にて溶融させて、積層ダイの外層Aに供給した以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2に示すとおりである。この結果より、表面保護層、インキ層、接着層等の印刷層を当該フィルムの上に積層させた転写シートをロール状に巻き取った際、ブロッキングが大きく発生し実用的に使用不可と判定された。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明フィルムは、例えば、電気製品や自動車部品などの樹脂成形品を装飾するために用いられる成形同時加飾シートの支持体フィルムとして好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0099】
I 金型
II 射出成型機
III 転写シート
IV 接着層
図1