特許第6596978号(P6596978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6596978遷移金属複合水酸化物粒子とその製造方法、非水電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および非水電解質二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596978
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】遷移金属複合水酸化物粒子とその製造方法、非水電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20191021BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20191021BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20191021BHJP
【FI】
   H01M4/525
   C01G53/00 A
   H01M4/505
【請求項の数】17
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2015-129270(P2015-129270)
(22)【出願日】2015年6月26日
(65)【公開番号】特開2017-16753(P2017-16753A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東間 崇洋
(72)【発明者】
【氏名】相田 平
(72)【発明者】
【氏名】小向 哲史
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 康孝
【審査官】 藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/181891(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/169274(WO,A1)
【文献】 特開2013−144625(JP,A)
【文献】 特開2001−354418(JP,A)
【文献】 特開平11−312519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
C01G 53/00
H01M 4/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽内に、少なくとも遷移金属を含有する原料水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給することで反応水溶液を形成し、晶析反応によって、非水電解質二次電池用正極活物質の前駆体となる遷移金属複合水酸化物粒子を製造する方法であって、
前記反応水溶液の液温25℃基準におけるpH値を12.0〜14.0の範囲に調整し、核の生成を行う核生成工程と、
前記核生成工程で得られた前記核を含む反応水溶液の液温25℃基準におけるpH値を、前記核生成工程のpH値よりも低く、かつ、10.5〜12.0の範囲となるように制御して、該核を成長させる、粒子成長工程とを備え、
前記核生成工程および前記粒子成長工程の初期段階における反応雰囲気を酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気に調整し、
前記粒子成長工程の初期段階の後に、前記原料水溶液の供給を継続しながら、反応水溶液中に酸化性ガスを直接導入することにより、前記反応雰囲気を、前記非酸化性雰囲気から酸素の濃度が5容量%を超える酸化性雰囲気に切り替え、さらに、前記原料水溶液の供給を継続しながら、反応水溶液中に不活性ガスを直接導入することにより、前記酸化性雰囲気から酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気に切り替える、雰囲気制御を少なくとも1回行う、
遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法。
【請求項2】
前記酸化性ガスおよび不活性ガスを散気管により導入する、請求項1に記載の繊維金属複合水酸化物粒子の製造方法。
【請求項3】
前記粒子成長工程において、前記酸化性ガスを導入する時間を合計で、該粒子成長工程時間の全体に対して1%〜25%の範囲とする、請求項1または2に記載の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法。
【請求項4】
粒子成長工程の初期段階の晶析反応時間を、該粒子成長工程時間の全体に対して0.5%〜30%の範囲とする、請求項1または2に記載の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法。
【請求項5】
前記遷移金属複合水酸化物粒子は、一般式(A):NixMnyCozt(OH)2+a(x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、0≦a≦0.5、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表される遷移金属複合水酸化物粒子である、請求項1〜4のいずれかに記載の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法。
【請求項6】
前記粒子成長工程後に、前記遷移金属複合水酸化物粒子を、前記添加元素Mを含む化合物で被覆する、被覆工程をさらに備える、請求項5に記載の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法。
【請求項7】
非水電解質二次電池用正極活物質の前駆体となる遷移金属複合水酸化物粒子であって、
板状一次粒子および該板状一次粒子よりも小さな微細一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなり、
前記二次粒子は、前記板状一次粒子が凝集して形成された中心部を有し、該中心部の外側に、前記板状一次粒子および前記微細一次粒子が凝集して形成された低密度層と、前記板状一次粒子が凝集して形成された高密度層とが積層した積層構造を少なくとも1つ備えており、
前記高密度層は、前記低密度層内で前記板状一次粒子が凝集して形成された高密度部によって、前記中心部および/または他の高密度層と連結しており、
前記二次粒子は、平均粒径が1μm〜15μmであり、かつ、該二次粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.65以下である、
遷移金属複合水酸化物粒子。
【請求項8】
前記遷移金属複合水酸化物粒子は、一般式(A):NixMnyCozt(OH)2+a(x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、0≦a≦0.5、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表される遷移金属複合水酸化物粒子である、請求項7に記載の遷移金属複合水酸化物粒子。
【請求項9】
前記添加元素Mは、前記二次粒子の内部に均一に分布および/または該二次粒子の表面を均一に被覆している、請求項8に記載の遷移金属複合水酸化物粒子。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の遷移金属複合水酸化物粒子とリチウム化合物を混合して、リチウム混合物を形成する混合工程と、
前記混合工程で形成された前記リチウム混合物を、酸化性雰囲気中、650℃〜980℃で焼成する焼成工程と、
を備える、非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記混合工程において、前記リチウム混合物を、該リチウム混合物に含まれるリチウム以外の金属の原子数の和と、リチウムの原子数との比が、1:0.95〜1.5となるように調整する、請求項10に記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記混合工程前に、前記遷移金属複合水酸化物粒子を105℃〜750℃で熱処理する、熱処理工程をさらに備える、請求項10または11に記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記非水電解質二次電池用正極活物質は、一般式(B):Li1+uNixMnyCozt2(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、多孔質構造を有する六方晶系のリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子からなる、請求項10〜12のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項14】
リチウム遷移金属複合酸化物粒子からなる非水電解質二次電池用正極活物質であって、
一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなり、
該二次粒子は、一次粒子が凝集した外殻部と、前記外殻部の内側に存在し、かつ、前記外殻部と電気的かつ構造的に接続された、少なくとも1つの一次粒子が凝集した凝集部と、前記外殻部の内側に存在し、少なくとも1つの一次粒子が存在しない空間部とを備えており、
前記二次粒子の平均粒径は1μm〜15μmの範囲にあり、該二次粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕は0.7以下であり、かつ、単位体積あたりの表面積が1.7m2/cm3以上である、非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項15】
BET比表面積は、0.7m2/g〜5.0m2/gの範囲にある、請求項14に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項16】
前記正極活物質は、一般式(B):Li1+uNixMnyCozt2(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、層状構造を有する六方晶系の結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物粒子からなる、請求項14または15に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項17】
正極と、負極と、セパレータと、非水電解質とを備え、前記正極の正極材料として、請求項14〜16のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極活物質が用いられている、非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属複合水酸化物粒子とその製造方法、この遷移金属複合水酸化物粒子を前駆体とする非水電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および、この非水電解質二次電池用正極活物質を正極材料として用いた非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギ密度を有する小型で軽量な非水電解質二次電池の開発が強く望まれている。また、ハイブリット電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電池式電気自動車などの電気自動車用の電源として高出力の二次電池の開発が強く望まれている。
【0003】
このような要求を満たす二次電池として、非水電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池がある。このリチウムイオン二次電池は、負極、正極、電解液などで構成され、その負極および正極の材料として用いられる活物質には、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料が使用される。
【0004】
このリチウムイオン二次電池のうち、層状またはスピネル型のリチウム遷移金属複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の電圧が得られるため、高エネルギ密度を有する電池として、現在、研究開発が盛んに行われており、一部では実用化も進んでいる。
【0005】
このようなリチウムイオン二次電池の正極材料として、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)粒子、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2)粒子、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/32)粒子、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn24)粒子、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LiNi0.5Mn0.52)粒子などのリチウム遷移金属複合酸化物粒子が提案されている。
【0006】
ところで、サイクル特性や出力特性に優れたリチウムイオン二次電池を得るためには、正極活物質が、小粒径で粒度分布の狭い粒子によって構成されていることが好ましい。小粒径の粒子は、比表面積が大きく、電解液との反応面積を十分に確保することができる。また、小粒径の粒子を適用することにより、正極を薄く構成できるため、リチウムイオンの正極−負極間の移動距離が短くなり、正極抵抗の低減が図られる。一方、粒度分布の狭い粒子を適用することにより、電極内で粒子に印加される電圧が均一化され、微粒子の選択的な劣化に起因する電池容量の低下が抑制される。
【0007】
出力特性のさらなる改善には、正極活物質の内部に、電解液が侵入可能な空間部を形成することが有効である。このような構造を有する正極活物質は、粒径が同程度である中実構造の正極活物質と比べて、電解液との反応面積が大きくなるため、正極抵抗を大幅に低減させることができる。なお、正極活物物質は、その前駆体となる遷移金属複合水酸化物粒子の性状を引き継ぐことが知られている。すなわち、このような優れた特性の正極活物質を得るためには、その前駆体である遷移金属複合水酸化物粒子において、その粒径、粒度分布、粒子構造などを適切に制御することが必要となる。
【0008】
たとえば、特開2012−246199号公報、特開2013−147416号公報、およびWO2012/131881号公報には、主として核生成を行う核生成工程と、主として粒子成長を行う粒子成長工程の2段階に明確に分離された晶析反応によって、正極活物質の前駆体となる遷移金属複合水酸化物粒子を製造する方法が開示されている。これらの方法では、核生成工程および粒子成長工程におけるpH値や反応雰囲気を適宜調整することにより、小粒径で粒度分布が狭く、かつ、微細一次粒子からなる低密度の中心部と、板状または針状一次粒子からなる高密度の外殻部とから構成される遷移金属複合水酸化物粒子を得ている。
【0009】
また、WO2004/181891号公報には、少なくとも遷移金属を含有する金属化合物とアンモニウムイオン供給体とを含む核生成用水溶液のpH値を12.0〜14.0となるように制御し、核生成を行う核生成工程と、生成した核を含有する粒子成長用水溶液のpH値を、核生成工程のpH値よりも低く、かつ、10.5〜12.0となるように制御して成長させる粒子成長工程を備え、核生成工程および粒子成長工程の初期を非酸化性雰囲気とするとともに、粒子成長工程における所定のタイミングで、酸化性雰囲気に切り替えた後、再度、非酸化性雰囲気に切り替ええる雰囲気制御を少なくとも1回行うことを特徴とする遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法が開示されている。この方法によれば、小粒径で粒度分布が狭く、かつ、板状または針状一次粒子が凝集して形成された中心部を有し、中心部の外側に微細一次粒子が凝集して形成された低密度層と、板状一次粒子が凝集して形成された高密度層が交互に積層した積層構造を少なくとも一つ備える遷移金属複合水酸化物粒子が得られる。
【0010】
これらの遷移金属複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質は、小粒径で粒度分布が狭く、中空構造または空間部を有する多層構造を備える。したがって、これらの正極活物質を用いた二次電池では、電池容量、出力特性、およびサイクル特性を同時に改善できると考えられる。しかしながら、これらの文献に記載の製造方法は、粒子成長工程における反応雰囲気の切り替えに時間を要するため、その間、原料水溶液などの供給を一旦停止する必要があり、生産性の面からは改善の余地がある。また、電気自動車などの電源としての用途を前提とした場合には、電池容量やサイクル特性を損なうことなく、出力特性をさらに向上させることが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2012−246199号公報
【特許文献2】特開2013−147416号公報
【特許文献3】WO2012/131881号公報
【特許文献4】WO2014/181891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述の問題に鑑みて、非水電解質二次電池における電池容量、出力特性、およびサイクル特性を同時に改善することを可能とする正極活物質、および、その前駆体である遷移金属複合水酸化物粒子を提供すること、および、これらの正極活物質および遷移金属複合水酸化物粒子を、工業規模の生産において、効率よく製造可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法は、反応槽内に、少なくとも遷移金属を含有する原料水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液とを供給することで反応水溶液を形成し、晶析反応によって、非水電解質二次電池用正極活物質の前駆体となる遷移金属複合水酸化物粒子を製造する方法であって、
前記反応水溶液の液温25℃基準におけるpH値を12.0〜14.0の範囲に調整し、核の生成を行う核生成工程と、
前記核生成工程で得られた前記核を含む反応水溶液の液温25℃基準におけるpH値を、前記核生成工程のpH値よりも低く、かつ、10.5〜12.0の範囲となるように制御して、該核を成長させる、粒子成長工程とを備え、
前記核生成工程および前記粒子成長工程の初期段階における反応雰囲気を酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気に調整し、
前記粒子成長工程の初期段階の後に、前記原料水溶液の供給を継続しながら、反応水溶液中に酸化性ガスを直接導入することにより、前記反応雰囲気を、前記非酸化性雰囲気から酸素の濃度が5容量%を超える酸化性雰囲気に切り替え、さらに、前記原料水溶液の供給を継続しながら、反応水溶液中に不活性ガスを直接導入することにより、前記酸化性雰囲気から前記非酸化性雰囲気に切り替える、雰囲気制御を少なくとも1回行う、
ことを特徴とする。
【0014】
前記酸化性ガスおよび不活性ガスを散気管により導入することが好ましい。
【0015】
前記粒子成長工程において、前記酸化性ガスを導入する時間を合計で、該粒子成長工程時間の全体に対して1%〜25%の範囲とすることが好ましい。
【0016】
また、前記粒子成長工程の初期段階の晶析反応時間を、該粒子成長工程時間の全体に対して0.5%〜30%の範囲とすることが好ましい。すなわち、前記粒子成長工程において、該粒子成長工程の開始時から、該粒子成長工程時間の全体に対して0.5%〜30%の範囲で、前記酸化性ガスの導入を開始することが好ましい。
【0017】
なお、本発明の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法は、一般式(A):NixMnyCozt(OH)2+a(x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、0≦a≦0.5、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表される遷移金属複合水酸化物粒子の製造に好適に適用可能である。
【0018】
この場合、前記粒子成長工程後に、前記遷移金属複合水酸化物粒子を、前記添加元素Mを含む化合物で被覆する、被覆工程をさらに備えることが好ましい。
【0019】
本発明の遷移金属複合水酸化物粒子は、非水電解質二次電池用正極活物質の前駆体であって、
板状一次粒子および該板状一次粒子よりも小さな微細一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなり、
前記二次粒子は、前記板状一次粒子が凝集して形成された中心部を有し、該中心部の外側に、前記板状一次粒子および前記微細一次粒子が凝集して形成された低密度層と、前記板状一次粒子が凝集して形成された高密度層とが積層した積層構造を少なくとも1つ備えており、
前記高密度層は、前記低密度層内で前記板状一次粒子が凝集して形成された高密度部によって、前記中心部および/または他の高密度層と連結しており、
前記二次粒子の平均粒径は1μm〜15μmであり、かつ、該二次粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕は0.65以下である、
ことを特徴とする。
【0020】
前記遷移金属複合水酸化物粒子は、一般式(A):NixMnyCozt(OH)2+a(x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、0≦a≦0.5、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表される遷移金属複合水酸化物粒子であることが好ましい。
【0021】
前記添加元素Mは、前記二次粒子の内部に均一に分布および/または該二次粒子の表面を均一に被覆していることが好ましい。
【0022】
本発明の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法は、
前記遷移金属複合水酸化物粒子とリチウム化合物を混合して、リチウム混合物を形成する混合工程と、
前記混合工程で形成された前記リチウム混合物を、酸化性雰囲気中、650℃〜980℃で焼成する焼成工程と、
を備えることを特徴とする。
【0023】
前記混合工程において、前記リチウム混合物を、該リチウム混合物に含まれるリチウム以外の金属の原子数の和と、リチウムの原子数との比が、1:0.95〜1.5となるように調整することが好ましい。
【0024】
前記混合工程前に、前記遷移金属複合水酸化物粒子を105℃〜750℃で熱処理する、熱処理工程をさらに備えることが好ましい。
【0025】
なお、本発明の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法は、一般式(B):Li1+uNixMnyCozt2(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、多孔質構造を有する六方晶系のリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子からなる正極活物質の製造に好適に適用可能である。
【0026】
本発明の非水電解質二次電池用正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子からなる非水電解質二次電池用正極活物質であって、
一次粒子が凝集することにより形成された二次粒子からなり、
該二次粒子は、一次粒子が凝集して形成された外殻部と、前記外殻部の内側に存在し、かつ、前記外殻部と電気的かつ構造的に接続された、少なくとも1つの一次粒子が凝集した凝集部と、前記外殻部の内側に存在し、少なくとも1つの一次粒子が存在しない空間部とを備えており、
前記二次粒子の平均粒径は1μm〜15μmの範囲にあり、該二次粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕は0.7以下であり、かつ、単位体積あたりの表面積が1.7m2/cm3以上である、
ことを特徴とする。
【0027】
前記正極活物質のBET比表面積は、0.7m2/g〜5.0m2/gの範囲にあることが好ましい。
【0028】
前記正極活物質は、一般式(B):Li1+uNixMnyCozt2(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、層状構造を有する六方晶系の結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物粒子からなることが好ましい。
【0029】
本発明の非水電解質二次電池は、正極と、負極と、セパレータと、非水電解質とを備え、該正極の正極材料として、本発明の非水電解質二次電池用正極活物質が用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、非水電解質二次電池を構成した場合に、電池容量、出力特性、およびサイクル特性を同時に改善可能な正極活物質、および、その前駆体である遷移金属複合水酸化物粒子を提供することができる。また、本発明により、これらの正極活物質および遷移金属複合水酸化物粒子を、工業規模の生産において効率よく製造することが可能となる。このため、本発明により、優れた電池特性を備えた非水電解質二次電池が低コストで提供される。よって、本発明の工業的意義はきわめて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、実施例1で得られた遷移金属複合水酸化物粒子の断面を示すFE−SEM写真(観察倍率5,000倍)である。
図2図2は、実施例1で得られた正極活物質の断面を示すFE−SEM写真(観察倍率5,000倍)である。
図3図3は、実施例11で得られた正極活物質の断面を示すFE−SEM写真(観察倍率5,000倍)である。
図4図4は、比較例1で得られた遷移金属複合水酸化物粒子の断面を示すFE−SEM写真(観察倍率5,000倍)である。
図5図5は、比較例1で得られた正極活物質の断面を示すFE−SEM写真(観察倍率5,000倍)である。
図6図6は、比較例2で得られた遷移金属複合水酸化物粒子の断面を示すFE−SEM写真(観察倍率5,000倍)である。
図7図7は、比較例2で得られた正極活物質の断面を示すFE−SEM写真(観察倍率5,000倍)である。
図8図8は、電池評価に使用した2032型コイン電池の概略断面図である。
図9図9は、インピーダンス評価の測定例と解析に使用した等価回路の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明者らは、WO2004/181891号公報などの従来技術に基づいて非水電解質二次電池用正極活物質(以下、「正極活物質」という)の生産性および出力特性をさらに改善するために鋭意研究を重ねた。この結果、粒子成長工程における反応雰囲気の切り替えに際して、原料水溶液の供給を継続しながら、反応水溶液中に雰囲気ガスを直接供給することによって、短時間で反応雰囲気を切り替えることができ、これによって、板状一次粒子が凝集して形成された中心部を有し、かつ、中心部の外側に、板状一次粒子および微細一次粒子がそれぞれ凝集して形成された低密度層、および板状一次粒子が凝集して形成された高密度層が積層した積層構造を少なくとも1つ備えた遷移金属複合水酸化物粒子が得られるとの知見が得られた。
【0033】
しかも、この遷移金属複合水酸化物粒子の高密度層は、低密度層内で板状一次粒子が凝集して形成された高密度部によって、中心部および/または他の高密度層と連結することとなる。このため、この遷移金属複合水酸化物粒子を前駆体として正極活物質を合成した場合には、外殻部と、外殻部の内側にある一次粒子の凝集部とが電気的に導通し、かつ、その経路を十分に発達させることができるため、正極活物質の内部抵抗を大幅に低減することができるとの知見も得られた。本発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。
【0034】
1.遷移金属複合水酸化物粒子
1−1.遷移金属複合水酸化物粒子
(1)粒子構造
a)二次粒子の構造
本発明の遷移金属複合水酸化物粒子(以下、「複合水酸化物粒子」という)は、板状一次粒子および該板状一次粒子よりも小さな微細一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなる。この二次粒子は、板状一次粒子が凝集して形成された中心部を有し、中心部の外側に、板状一次粒子および微細一次粒子が凝集して形成された低密度層と、板状一次粒子が凝集して形成された高密度層とが積層した積層構造を少なくとも1つ備えている。そして、高密度層が、低密度層内で板状一次粒子が凝集して形成された高密度部によって、中心部および/または他の高密度層と連結している。
【0035】
このような粒子構造を備えた複合水酸化物粒子を焼成した場合、低密度層内にある高密度部による高密度層と中心部および/または他の高密度層との連結が維持されたまま、低密度層が焼結収縮することとなる。このため、得られる正極活物質は、一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなり、少なくとも、一次粒子が凝集した外殻部と、中心部および/または他の高密度層とが焼結収縮することにより形成され、外殻部の内側に存在し、かつ、外殻部と電気的に導通する、少なくとも1つの一次粒子が凝集した凝集部と、外殻部の内側に存在し、少なくとも1つの一次粒子が存在しない空間部とを備えた構造となる。基本的には、低密度層内に存在した高密度部が焼結収縮することに伴って、外殻部の内径側に一次粒子が存在しない空間部が形成される。一方、高密度部は、その焼結収縮により一次粒子が凝集して、外殻部と凝集部とを電気的かつ構造的に接続する連結部として機能する。この結果、本発明の正極活物質(二次粒子)において、空間部と連結部の存在により、二次粒子内部の表面積を十分に確保できるばかりでなく、外殻部とその内側に存在する凝集部が連結された構造を備えるため、粒子密度および粒子強度を向上させることができる。このため、これを用いた二次電池において、出力特性、電池容量、およびサイクル特性を同時に改善することが可能となる。
【0036】
この複合水酸化物粒子において、低密度層が、中心部の外側全体にわたって形成された場合、正極活物質において、中心部の外側に空間部が形成され、この空間部の外側に存在し、十分な表面積を有する連結部によって中心部と電気的かつ構造的に接続した外殻部が形成される。低密度層が複層形成された場合には、正極活物質において、中心部と外殻部との間で、かつ、複層の空間部の間に、これらの空間部に存在する連結部によって中心部および外殻部と電気的かつ構造的に接続した内殻部が形成される。すなわち、基本的には、外殻部と内殻部は、連結部によって相互かつ中心部と電気的かつ構造的に接続した殻状構造により構成される。ただし、正極活物質においては、後述するように焼結収縮の具合により、中心部も含めて、これらの一次粒子の凝集した構造体は、複数の凝集体により構成される場合がある。
【0037】
また、本発明には、低密度層が中心部の外側に部分的に形成された構造も含められる。この場合、正極活物質は、中心部の外側に多数の空間部が分散して形成され、さらにその外側に外殻部が形成された構造、または内殻部と外殻部とが形成された構造となる。
【0038】
さらに、複合水酸化物粒子の中心部は、板状一次粒子が凝集して形成された粒子(凝集粒子)が、複数連結した状態であってもよい。この場合、相互に連結した凝集部からなる中心部の外側に、高密度部を有する低密度層および高密度層が形成された構造となる。
【0039】
b)微細一次粒子
複合水酸化物粒子のうち、高密度部を除いた低密度層を構成する微細一次粒子は、平均粒径が、0.01μm〜0.3μmであることが好ましく、0.1μm〜0.3μmであることがより好ましい。微細一次粒子の平均粒径が0.01μm未満では、十分な大きさの低密度層が形成されない場合ある。一方、微細一次粒子の平均粒径が0.3μmを超えると、焼成時における収縮が低温域では進行せず、低密度層と中心部および高密度層との収縮差が小さくなるため、正極活物質の外殻部の内側に、十分な大きさの空間部が形成されない場合がある。
【0040】
このような微細一次粒子の形状は、板状および/または針状であることが好ましい。これにより、低密度層と、中心部および高密度層との密度差を十分に大きなものとすることができる。ただし、複合水酸化物粒子の組成によっては、直方体状、楕円状、稜面体状などの形状を含む場合がある。
【0041】
なお、微細一次粒子および次述する板状一次粒子の平均粒径は、複合水酸化物粒子を樹脂などに埋め込み、クロスセクションポリッシャ加工などにより断面観察が可能な状態とした上で、この断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、次のようにして求めることができる。はじめに、二次粒子の断面に存在する10個以上の微細一次粒子または板状一次粒子の最大径を測定し、その平均値を求め、この値を、その二次粒子における微細一次粒子または板状一次粒子の粒径とする。次に、10個以上の二次粒子について、同様にして、微細一次粒子または板状一次粒子の粒径を求める。最後に、これらの二次粒子における微細一次粒子または板状一次粒子の粒径を平均することで、微細一次粒子または板状一次粒子の平均粒径を求めることができる。
【0042】
c)板状一次粒子
複合水酸化物粒子の中心部、高密度層および高密度部を形成する板状一次粒子は、平均粒径が0.3μm〜3μmであることが好ましく、0.4μm〜1.5μmであることがより好ましく、0.4μm〜1.0μmであることがさらに好ましい。板状一粒子の平均粒径が0.3μm未満では、焼成時における収縮が低温域からはじまり、これらの層と低密度層との収縮差が小さくなるため、正極活物質の外殻部の内側に、十分な大きさの空間部が形成されない場合がある。一方、板状一次粒子の平均粒径が3μmを超えると、正極活物質の結晶性を十分なものとするためには、高温で焼成しなければならなくなるため、二次粒子間の焼結が進行し、正極活物質の平均粒径や粒度分布を所定の範囲に制御することが困難となる。なお、板状一次粒子についても、複合水酸化物粒子の組成によっては、直方体状、楕円状、稜面体状などの形状を含む場合がある。
【0043】
d)中心部、低密度層および高密度層の厚さ
本発明の複合水酸化物粒子において、中心部や高密度層それ自体の構造は、正極活物質において変化するものの、二次粒子の粒径に対する、中心部の外径および高密度層の厚さの比率は、これを前駆体とする正極活物質において、概ね維持される。したがって、複合水酸化物粒子の段階において、二次粒子の粒径に対する中心部および高密度層の厚さの比率を適切に制御することにより、正極活物質の基本的な粒子構造を容易に制御することができる。
【0044】
[積層構造を1つのみ備える場合]
複合水酸化物粒子(二次粒子)が、上述した積層構造を1つのみ備える場合には、二次粒子の粒径に対する中心部の外径の比率の平均値(以下、「中心部粒径比」という)を30%〜80%とすることが好ましく、40%〜75%とすることがより好ましい。これにより、二次粒子の内部の表面積を十分に確保しつつ、低密度層および高密度層を適切な大きさとすることができる。
【0045】
また、二次粒子の粒径に対する高密度層の厚さの比率の平均値(以下、「高密度層粒径比」という)を5%〜25%とすることが好ましく、5%〜20%とすることがより好ましい。これにより、低密度層の大きさを確保することができるばかりでなく、焼成時における高密度層の過剰な収縮を抑制することができる。
【0046】
なお、積層構造を1つのみ備える場合、中心部粒径比および高密度層粒径比は、二次粒子の断面SEM写真を用いて、次のようにして求めることができる。はじめに、断面SEM写真上で、1粒子あたり3か所以上の任意の位置で高密度層の厚さを測定し、その平均値を求める。ここで、高密度層の厚さは、二次粒子の外周から高密度層と低密度層の境界までの距離が最短となる2点間の距離とする。同時に、中心部の外周上の2点間および二次粒子の外周上の2点間の最大距離を測定し、それらの値を、それぞれ中心部の外径および二次粒子の粒径とする。そして、中心部の外径および高密度層の径方向の厚さを二次粒子の粒径で除することにより、その二次粒子の粒径に対する、中心部の外径の比率および高密度層の厚さの比率をそれぞれ求める。同様の測定を10個以上の二次粒子に対して行い、その平均値を算出することで、中心部粒径比および高密度層粒径比を求めることができる。
【0047】
[積層構造を2つ以上備える場合]
複合水酸化物粒子(二次粒子)が、上述した積層構造を2つ以上備える場合には、中心部粒径比を15%〜70%とすることが好ましく、20%〜70%とすることがより好ましく、25%〜65%とすることがさらに好ましい。また、高密度層粒径比(二次粒子の外径に対する、複数の高密度層の厚さの合計の比率の平均値)を10%〜40%とすることが好ましく、15%〜35%とすることがより好ましい。さらに、二次粒子の粒径に対する、高密度層1層あたりの厚さの比率(以下、「高密度層1層粒径比」という)を5%〜25%とすることが好ましく、5%〜20%とすることがより好ましい。
【0048】
なお、積層構造を2つ以上備える場合、複数の高密度層のそれぞれについて厚さを測定すること以外は同様にして、二次粒子の粒径に対する中心部粒径比、高密度層粒径比、および高密度層1層粒径比を求めることができる。
【0049】
(2)平均粒径
本発明の複合水酸化物粒子は、二次粒子の平均粒径が、1μm〜15μm、好ましくは3μm〜12μm、より好ましくは3μm〜10μmに調整される。二次粒子の平均粒径は、この複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質の平均粒径と相関する。このため、二次粒子の平均粒径をこのような範囲に制御することで、この複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質の平均粒径を所定の範囲に制御することが可能となる。
【0050】
なお、本発明において、二次粒子の平均粒径とは、体積基準平均粒径(MV)を意味し、たとえば、レーザ光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
【0051】
(3)粒度分布
本発明の複合水酸化物粒子は、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が、0.65以下、好ましくは0.55以下、より好ましくは0.50以下となるように調整される。
【0052】
正極活物質の粒度分布は、その前駆体である複合水酸化物粒子の影響を強く受ける。このため、微細粒子や粗大粒子を多く含む複合水酸化物粒子を前駆体とした場合には、正極活物質にも微細粒子や粗大粒子が多く含まれることとなり、これを用いた二次電池の安全性、サイクル特性、および出力特性を十分に改善することができなくなる。これに対して、複合水酸化物粒子の段階で、〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.65以下となるように調整しておけば、これを前駆体とする正極活物質の粒度分布を狭くすることができ、上述した問題を回避することが可能となる。ただし、工業規模の生産を前提とした場合には、複合水酸化物粒子として、〔(d90−d10)/平均粒径〕が過度に小さいものを使用することは現実的ではない。したがって、コストや生産性を考慮すると、〔(d90−d10)/平均粒径〕の下限値は、0.25程度とすることが好ましい。
【0053】
なお、d10は、各粒径における粒子数を粒径の小さい側から累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の10%となる粒径を、d90は、同様に粒子数を累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の90%となる粒径を意味する。d10およびd90は、平均粒径と同様に、レーザ光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
【0054】
(4)組成
本発明の複合水酸化物粒子は、上述した構造、平均粒径、および粒度分布を有する限り、その組成が制限されることはないが、一般式(A):NixMnyCozt(OH)2+a(x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、0≦a≦0.5、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表される複合水酸化物粒子であることが好ましい。このような複合水酸化物粒子を前駆体とすることで、後述する一般式(B)で表される正極活物質を容易に得ることができ、より高い電池性能を実現することができる。
【0055】
このような複合水酸化物粒子において、添加元素(M)は、後述するように晶析工程において、遷移金属(ニッケル、コバルトおよびマンガン)とともに晶析させ、複合水酸化物粒子中に均一に分散させることもできるが、晶析工程後に、複合水酸化物粒子の表面に添加元素(M)を被覆させてもよい。また、混合工程において、複合水酸化物粒子とともに、リチウム化合物と混合することも可能であり、これらの方法を併用してもよい。いずれの方法による場合であっても、一般式(A)の組成となるように、その含有量を調整することが必要となる。
【0056】
なお、一般式(A)で表される複合水酸化物粒子において、これを構成するニッケル、マンガン、コバルト、および添加元素Mの組成範囲およびその臨界的意義は、一般式(B)で表される正極活物質と同様となる。このため、これらの事項について、ここでの説明は省略する。
【0057】
1−2.複合水酸化物粒子の製造方法
(1)晶析反応
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、反応槽内に、少なくとも遷移金属、好ましくはニッケル、ニッケル、およびマンガン、ないしは、ニッケルとマンガンとコバルトを主体とする複合遷移金属を含有する原料水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給することで反応水溶液を形成し、晶析反応によって、遷移金属複合水酸化物粒子を得る。
【0058】
特に、本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、晶析反応を、主として核生成を行う核生成工程と、主として粒子成長を行う粒子成長工程の2段階に明確に分離し、各工程における晶析条件を調整するとともに、粒子成長工程において、原料水溶液の供給を継続しながら、反応雰囲気、すなわち反応水溶液と接する雰囲気を非酸化性雰囲気と酸化性雰囲気とを適宜切り替え、かつ、雰囲気の切り替え時において、反応水溶液中に雰囲気ガス、すなわち酸化性ガスもしくは不活性ガスを直接送り込んで、反応雰囲気を切り換えることにより、上述した粒子構造、平均粒径、および粒度分布を備える複合水酸化物粒子を効率よく得ることを可能としている。すなわち、本発明では、反応場の雰囲気である反応水溶液中の溶存酸素量を短時間で制御すること、および原料水溶液の供給を継続しながら反応場の雰囲気を切り換えることを可能とし、もって、上述した粒子構造を備える複合水酸化物粒子を得ることを可能としている。
【0059】
[核生成工程]
核生成工程では、はじめに、この工程における原料となる遷移金属の化合物を水に溶解し、原料水溶液を調製する。同時に、反応槽内に、アルカリ水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給および混合して、液温25℃基準で測定するpH値が12.0〜14.0、アンモニウムイオン濃度が3g/L〜25g/Lである反応前水溶液を調製する。なお、反応前水溶液のpH値はpH計により、アンモニウムイオン濃度はイオンメータにより測定することができる。
【0060】
次に、この反応前水溶液を撹拌しながら、原料水溶液を供給する。これにより、反応槽内には、核生成工程における反応水溶液である核生用成水溶液が形成される。この核生成用水溶液のpH値は上述した範囲にあるので、核生成工程では、核はほとんど成長することなく、核生成が優先的に起こる。なお、核生成工程では、核の生成に伴い、核生成用水溶液のpH値およびアンモニウムイオンの濃度は変化するので、アルカリ水溶液およびアンモニア水溶液を適時供給し、反応槽内液のpH値が液温25℃基準でpH12.0〜14.0の範囲に、アンモニウムイオンの濃度が3g/L〜25g/Lの範囲に維持されるように制御する。
【0061】
なお、核生成工程においては、反応槽内に不活性ガスを流通させて、反応雰囲気を酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気に調整する。
【0062】
ここで、二次電池の高容量化を重視する場合、反応槽内液のpH値を液温25℃基準でpH12.5以下となるように制御するとともに、反応雰囲気の調整を、原料水溶液の供給を開始する前に行うことが好ましい。これにより、この複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質の中心部が中実構造となり、空間部を形成することによる粒子密度の低下を抑制することが可能となる。
【0063】
これに対して、二次電池のさらなる高出力化を重視する場合には、非酸化性雰囲気への調整が終了する前に、原料水溶液の供給を開始し、核生成工程を開始させることが好ましい。これにより、複合水酸化物粒子の中心部内に、微細一次粒子が凝集した低密度部を形成でき、得られた正極活物質において、中心部の内部にも空間部を形成することができるため、電解液との反応面積を一層大きくすることが可能となる。この場合、反応雰囲気の非酸化性雰囲気への調整は、核生成工程の開始時から核生成工程時間の全体に対して、10%〜25%の範囲で完了させることが好ましい。
【0064】
また、核生成性工程におけるpH値を、12.5を超える高pHの範囲に制御することでも、中心部の内部に微細一次粒子が凝集した低密度部を形成することができる。すなわち、高pH側において、核を形成する一次粒子はより微細化する傾向にあり、pH値が12.5を超え14.0以下の範囲に制御することで、核の成長を抑制するとともに、微細一次粒子が凝集した核を形成し、さらに、粒子成長工程で核を成長させることで、二次粒子の内部に低密度部を有する中心部を形成することができる。
【0065】
なお、核生成工程では、不活性ガスの反応槽内への供給は、反応槽内の空間部への供給、および、反応前水溶液中への直接供給のいずれの方法も採りうる。前者では、核生成前から反応雰囲気を非酸化性雰囲気に調整することにより、高密度の中心部を形成することが可能である。後者の場合、核生成工程の初期段階において、反応場の雰囲気を酸化性雰囲気から非酸化性雰囲気へ切り替えることができ、この際に、その切り替え時間を短縮することができるため、中心部の大きさにかかわらず、その内部に低密度部を形成することが可能となる。
【0066】
核生成工程では、核生成用水溶液に、原料水溶液、アルカリ水溶液、およびアンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給することにより、連続して新しい核の生成が継続される。そして、核生成用水溶液中に、所定量の核が生成した時点で、核生成工程を終了する。
【0067】
この際、核の生成量は、核生成用水溶液に供給した原料水溶液に含まれる金属化合物の量から判断することができる。核生成工程における核の生成量は、特に制限されるものではないが、粒度分布の狭い複合水酸化物粒子を得るためには、核生成工程および粒子成長工程を通じて供給する原料水溶液に含まれる金属化合物中の金属元素に対して、0.1原子%〜2原子%とすることが好ましく、0.1原子%〜1.5原子%とすることがより好ましい。
【0068】
[粒子成長工程]
核生成工程終了後、反応槽内の核生成用水溶液のpH値を、液温25℃基準で10.5〜12.0に調整し、粒子成長工程における反応水溶液である粒子成長用水溶液を形成する。pH値は、アルカリ水溶液の供給を停止することでも調整可能であるが、粒度分布の狭い複合水酸化物粒子を得るためには、一旦、すべての水溶液の供給を停止してpH値を調整することが好ましい。具体的には、すべての水溶液の供給を停止した後、核生成用水溶液に、原料となる金属化合物を構成する酸と同種の無機酸を供給することにより、pH値を調整することが好ましい。
【0069】
次に、この粒子成長用水溶液を撹拌しながら、原料水溶液の供給を再開する。この際、粒子成長用水溶液のpH値は上述した範囲にあるため、新たな核はほとんど生成せず、核(粒子)成長が進行し、所定の粒径を有する複合水酸化物粒子が形成される。なお、粒子成長工程においても、粒子成長に伴い、粒子成長用水溶液のpH値およびアンモニウムイオン濃度は変化するので、アルカリ水溶液およびアンモニア水溶液を適時供給し、pH値およびアンモニウムイオン濃度を上記範囲に維持することが必要となる。
【0070】
特に、本発明の複合水酸化物粒子の製造方法においては、核生成工程における非酸化性雰囲気を維持したまま、粒子成長工程の初期段階において、複合水酸化物粒子の中心部を形成する。次に、粒子成長工程の初期段階の終了後に、原料水溶液の供給を継続しながら、反応水溶液中に酸化性ガスを直接供給することにより、反応雰囲気を、非酸化性雰囲気から酸素の濃度が5容量%を超える酸化性雰囲気に切り替える。これにより、複合水酸化物粒子の中心部の周囲に低密度層を形成する。さらに、原料水溶液の供給を継続しながら、反応水溶液中に不活性ガスを直接供給することにより、酸化性雰囲気から酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気に再度切り替える。これにより、複合水酸化物粒子の中心部および低密度層の周囲に高密度層を形成する。本発明では、このような雰囲気制御を少なくとも1回行う。その後に、同様にして、非酸化性雰囲気から酸化性雰囲気への切り替え、および、酸化性雰囲気から非酸化性雰囲気への切り替えを行う、反応雰囲気の制御を繰り返すこともできる。このような制御によって、上述した粒子構造を有する複合水酸化物粒子を得ることが可能となる。
【0071】
なお、このような複合水酸化物粒子の製造方法では、核生成工程および粒子成長工程において、金属イオンは、核または一次粒子となって析出する。このため、核生成用水溶液および粒子成長用水溶液中の金属成分に対する液体成分の割合が増加する。この結果、見かけ上、原料水溶液の濃度が低下し、特に、粒子成長工程においては、複合水酸化物粒子の成長が停滞する可能性がある。したがって、液体成分の増加を抑制するため、核生成工程終了後から粒子成長工程の途中で、粒子成長用水溶液の液体成分の一部を反応槽外に排出することが好ましい。具体的には、原料水溶液、アルカリ水溶液、およびアンモニウムイオン供給体を含む水溶液の供給および攪拌を一旦停止し、粒子成長用水溶液中の核や複合水酸化物粒子を沈降させて、粒子成長用水溶液の上澄み液を排出することが好ましい。このような操作により、粒子成長用水溶液における混合水溶液の相対的な濃度を高めることができるため、粒子成長の停滞を防止し、得られる複合水酸物粒子の粒度分布を好適な範囲に制御することができるばかりでなく、二次粒子全体としての密度も向上させることができる。
【0072】
[複合水酸化物粒子の粒径制御]
上述のようにして得られる複合水酸化物粒子の粒径は、粒子成長工程や核生成工程の時間、核生成用水溶液や粒子成長用水溶液のpH値や、原料水溶液の供給量により制御することができる。たとえば、核生成工程を高pH値で行うことにより、または、粒子生成工程の時間を長くすることにより、供給する原料水溶液に含まれる金属化合物の量を増やし、核の生成量を増加させ、得られる複合水酸化物粒子の粒径を小さくすることができる。反対に、核生成工程における核の生成量を抑制することで、得られる複合水酸化物粒子の粒径を大きくすることができる。
【0073】
[晶析反応の別実施態様]
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、核生成用水溶液とは別に、粒子成長工程に適したpH値およびアンモニウムイオン濃度に調整された成分調整水溶液を用意し、この成分調整用水溶液に、核生成工程後の核生成用水溶液、好ましくは核生成工程後の核生成用水溶液から液体成分の一部を除去したものを添加および混合して、これを粒子成長用水溶液として、粒子成長工程を行ってもよい。
【0074】
この場合、核生成工程と粒子成長工程の分離をより確実に行うことができるため、各工程における反応水溶液を、最適な状態に制御することができる。特に、粒子成長工程の開始時から粒子成長用水溶液のpH値を最適な範囲に制御することができるため、得られる複合水酸化物粒子の粒度分布をより狭いものとすることができる。なお、この場合、粒子成長工程開始前に反応槽内に不活性ガスを供給し、粒子成長工程の初期段階の開始時から、酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気となるようにすることが好ましい。
【0075】
(2)供給水溶液
a)原料水溶液
本発明においては、原料水溶液中の金属元素の比率が、概ね、得られる複合水酸化物粒子の組成となる。このため、原料水溶液は、目的とする複合水酸化物粒子の組成に応じて、各金属元素の含有量を適宜調整する。たとえば、一般式(A)で表される複合水酸化物粒子を得ようとする場合には、原料水溶液中の金属元素の比率を、Ni:Mn:Co:M=x:y:z;t(ただし、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1)となるように調整する。
【0076】
原料水溶液を調製するための、遷移金属の化合物は、特に制限されることはないが、取扱いの容易性から、水溶性の硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩などを用いることが好ましく、コストやハロゲンの混入を防止する観点から、硫酸塩を好適に用いることが特に好ましい。
【0077】
また、複合水酸化物粒子中に添加元素M(Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)を含有させる場合には、添加元素Mを供給するための化合物としては、同様に水溶性の化合物が好ましく、たとえば、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸チタン、ペルオキソチタン酸アンモニウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸バナジウム、バナジン酸アンモニウム、硫酸クロム、クロム酸カリウム、硫酸ジルコニウム、シュウ酸ニオブ、モリブデン酸アンモニウム、硫酸ハフニウム、タンタル酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸アンモニウムなどを好適に用いることができる。
【0078】
原料水溶液の濃度は、金属化合物の合計で、好ましくは1mol/L〜2.6mol/L、より好ましくは1.5mol/L〜2.2mol/Lとする。原料水溶液の濃度が1mol/L未満では、反応槽当たりの晶析物量が少なくなるため、生産性が低下する。一方、混合水溶液の濃度が2.6mol/Lを超えると、常温での飽和濃度を超えるため、各金属化合物の結晶が再析出して、配管などを詰まらせるおそれがある。
【0079】
上述した金属化合物は、必ずしも原料水溶液として反応槽に供給しなくてもよい。たとえば、混合すると反応して目的とする化合物以外の化合物が生成されてしまう金属化合物を用いて晶析反応を行う場合には、全金属化合物水溶液の合計の濃度が上記範囲となるように、個別に金属化合物水溶液を調製して、個々の金属化合物の水溶液として、所定の割合で反応槽内に供給してもよい。
【0080】
また、原料水溶液の供給量は、粒子成長工程の終了時点において、粒子成長水溶液中の生成物の濃度が、好ましくは30g/L〜200g/L、より好ましくは80g/L〜150g/Lとなるようにする。生成物の濃度が30g/L未満では、一次粒子の凝集が不十分になる場合がある。一方、200g/Lを超えると、反応槽内に、核生成用金属塩水溶液または粒子成長用金属塩水溶液が十分に拡散せず、粒子成長に偏りが生じる場合がある。
【0081】
b)アルカリ水溶液
反応水溶液中のpH値を調整するアルカリ水溶液は、特に制限されることはなく、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの一般的なアルカリ金属水酸化物水溶液を用いることができる。なお、アルカリ金属水酸化物を、直接、反応水溶液に添加することもできるが、pH制御の容易さから、水溶液として添加することが好ましい。この場合、アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度を、好ましくは20質量%〜50質量%、より好ましくは20質量%〜30質量%とする。アルカリ金属水溶液の濃度をこのような範囲に規制することにより、反応系に供給する溶媒量(水量)を抑制しつつ、添加位置で局所的にpH値が高くなることを防止することができるため、粒度分布の狭い複合水酸化物粒子を効率的に得ることが可能となる。
【0082】
なお、アルカリ水溶液の供給方法は、反応水溶液のpH値が局所的に高くならず、かつ、所定の範囲に維持される限り、特に制限されることはない。たとえば、反応水溶液を十分に撹拌しながら、定量ポンプなどの流量制御が可能なポンプにより供給すればよい。
【0083】
c)アンモニウム供給体を含む水溶液
アンモニウムイオン供給体を含む水溶液も、特に制限されることはなく、たとえば、アンモニア水、または、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムもしくはフッ化アンモニウムなどの水溶液を使用することができる。
【0084】
アンモニウムイオン供給体として、アンモニア水を使用する場合には、その濃度は、好ましくは20質量%〜30質量%、より好ましくは22質量%〜28質量%とする。アンモニア水の濃度をこのような範囲に規制することにより、揮発などによるアンモニアの損失を最小限に抑制することができるため、生産効率の向上を図ることが可能となる。
【0085】
なお、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液の供給方法も、アルカリ水溶液と同様に、流量制御が可能なポンプにより供給することができる。
【0086】
(3)pH値
a)核生成工程
核生成工程においては、反応水溶液(核生成用水溶液)のpH値を、液温25℃基準で、12.0〜14.0、好ましくは12.3〜13.5、より好ましくは12.5を超えて13.3以下の範囲に制御することが必要となる。これにより、核の成長を抑制し、核生成を優先させることが可能となり、この工程で生成する核を均質かつ粒度分布の狭いものとすることができる。また、上述の通り、pH値が12.5を超えるようにすることで、複合水酸化物粒子の中心部の内部に低密度部を形成することが可能となる。pH値が12.0未満では、核生成とともに核(粒子)の成長が進行するため、得られる複合水酸化物粒子の粒径が不均一となり、粒度分布が悪化する。また、pH値が14.0を超えると、生成する核が微細になりすぎるため、核生成用水溶液がゲル化する問題が生じる。
【0087】
b)粒子成長工程
粒子成長工程においては、反応水溶液(粒子成長水溶液)のpH値を、液温25℃基準で、10.5〜12.0、好ましくは11.0〜12.0、より好ましくは11.5〜12.0の範囲に制御することが必要となる。これにより、新たな核の生成が抑制され、粒子成長を優先させることが可能となり、得られる複合水酸化物粒子を均質かつ粒度分布が狭いものとすることができる。一方、pH値が10.5未満では、アンモニウムイオン濃度が上昇し、金属イオンの溶解度が高くなるため、晶析反応の速度が遅くなるばかりでなく、反応水溶液中に残存する金属イオン量が増加し、生産性が悪化する。また、pH値が12.0を超えると、粒子成長工程中の核生成量が増加し、得られる複合水酸化物粒子の粒径が不均一となり、粒度分布が悪化する。
【0088】
なお、いずれの工程においても、晶析反応中のpH値の変動幅は、±0.2以内に制御することが好ましい。pH値の変動幅が大きい場合には、核生成量と粒子成長の割合が一定とならず、粒度分布の狭い複合水酸化物粒子を得ることが困難となる。
【0089】
また、pH値が12.0の場合は、核生成と核成長の境界条件であるため、反応水溶液中に存在する核の有無により、核生成工程または粒子成長工程のいずれかの条件とすることができる。すなわち、核生成工程のpH値を12.0より高くして多量に核生成させた後、粒子成長工程のpH値を12.0とすると、反応水溶液中に多量の核が存在するため、粒子成長が優先して起こり、粒径分布が狭い複合水酸化物粒子を得ることができる。一方、核生成工程のpH値を12.0とすると、反応水溶液中に成長する核が存在しないため、核生成が優先して起こり、粒子成長工程のpH値を12.0より小さくすることで、生成した核が成長して良好な複合水酸化物粒子を得ることができる。いずれの場合においても、粒子成長工程のpH値を核生成工程のpH値より低い値で制御すればよく、核生成と粒子成長を明確に分離するためには、粒子成長工程のpH値を核生成工程のpH値より0.5以上低くすることが好ましく、1.0以上低くすることがより好ましい。
【0090】
(4)反応雰囲気
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法においては、各工程におけるpH値の制御とともに、反応雰囲気の制御が重要な意義を有する。すなわち、各工程におけるpH値を制御した上で、核生成工程と粒子成長工程の初期段階の反応雰囲気を非酸化性雰囲気に調整することで、核が生成され、その後、それぞれの核が粒成長することにより、板状一次粒子が凝集した中心部が形成される。また、粒子成長工程の途中で、原料水溶液の供給を継続しながら、反応水溶液中に酸化性ガスを直接供給して、急速に反応場の反応雰囲気を非酸化性雰囲気から酸化性雰囲気に切り替えることで、中心部の外側に、板状一次粒子および微細一次粒子が凝集した低密度層が形成され、さらに、原料水溶液の供給を継続しながら、反応水溶液中に不活性ガスを直接供給することで、急速に反応場の反応雰囲気を酸化性雰囲気から非酸化性雰囲気に切り替えることにより、中心部と低密度層の外側に、板状一次粒子が凝集した高密度層を形成することができる。
【0091】
a)非酸化性雰囲気
本発明の製造方法においては、複合水酸化物粒子の中心部の少なくとも最外部および高密度層を形成する段階における反応雰囲気を、非酸化性雰囲気に制御する。具体的には、反応雰囲気中における酸素濃度が、5容量%以下、好ましくは2容量%以下、より好ましくは1容量%以下となるように、酸素と不活性ガスの混合雰囲気に制御することが必要となる。これにより、反応場の雰囲気における酸素濃度を十分に低減して不要な酸化を抑制しつつ、核生成工程で生成した核を一定の範囲まで成長させることができるため、複合水酸化物粒子の中心部および高密度層を、平均粒径が0.3μm〜3μmの範囲にあり、粒度分布が狭い板状一次粒子が凝集した構造とすることができる。
【0092】
b)酸化性雰囲気
一方、複合水酸化物粒子の低密度層を形成する段階では、反応雰囲気を、酸化性雰囲に制御する。具体的には、反応雰囲気中における酸素濃度が、5容量%を超えるように、好ましくは10容量%以上、より好ましくは大気雰囲気(酸素濃度:21容量%)となるように制御する。反応雰囲気中の酸素濃度をこのような範囲に制御し、反応場の雰囲気における酸素濃度を十分に高くして一次粒子の成長を抑制することにより、一次粒子の平均粒径が0.01μm〜0.3μmの範囲となるようにして、上述した中心部および高密度層と十分な密度差を有する低密度層を形成することを可能としている。
【0093】
なお、この段階における反応雰囲気中の酸素濃度の上限は特に制限されることはないが、酸素濃度が過度に高いと、一次粒子の平均粒径が0.01μm未満となり、低密度層が十分な大きさとならない場合がある。このため、酸素濃度は30容量%以下とすることが好ましい。また、低密度層と中心部および高密度層を明確なものとするため、雰囲気切り替え前後での酸素濃度の差を3容量%以上とすることが好ましい。
【0094】
粒子成長工程において、酸化性ガスを導入する時間を合計で、粒子成長工程時間の全体に対して1%〜25%の範囲とすることが好ましく、1%〜20%の範囲とすることがより好ましい。酸化性雰囲気での晶析反応時間が合計で、粒子成長工程時間の全体に対して1%未満となると、複合水酸化物粒子の低密度層が十分に形成されず、この複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質において、空間部の大きさが十分とならない場合がある。一方、25%を超えると、複合水酸化物粒子の高密度層が十分に形成されず、正極活物質の内殻部または外殻部の厚さが過度に薄くなって、強度上の問題が生じる。
【0095】
c)雰囲気制御のタイミング
粒子成長工程において、上述した雰囲気制御は、目的とする粒子構造を有する複合水酸化物粒子が形成されるように、適切なタイミングで行うことが必要となる。
【0096】
[雰囲気制御を1回のみ行う場合]
雰囲気制御を1回のみ行い、中心部、低密度層、および高密度層から構成される複合水酸化物粒子を得ようとする場合、粒子成長工程の初期段階の晶析反応時間は、粒子成長工程時間の全体に対して、好ましくは0.5%〜30%の範囲とし、より好ましくは1%〜20%の範囲とする。すなわち、粒子成長工程の開始時から、粒子成長工程時間の全体に対して、好ましくは0.5%〜30%、より好ましくは1%〜20%の範囲で、酸化性ガスの導入を開始して、非酸化性雰囲気から酸化性雰囲気に切り替える。
【0097】
酸化性ガスの導入は、反応水溶液中に直接行われることから、非酸化性雰囲気から酸化性雰囲気への切り替え時間は、粒子成長工程時間の全体に対して0.5%〜2%程度となる。
【0098】
本発明の製造方法においては、反応水溶液中に雰囲気ガスを供給するため、反応場の雰囲気、すなわち反応水溶液の酸素溶存量は、反応槽内の酸素濃度にほぼ時間差なく追随して変化する。したがって、雰囲気の切り替え時間は、反応槽内の酸素濃度測定により確認することができる。一方、反応槽内の空間部へ雰囲気ガスを供給した場合には、反応水溶液の酸素溶存量と反応槽内の酸素濃度の変化に時間差が生じるため、反応槽内の酸素濃度が安定するまで反応水溶液の酸素溶存量を確認することができない。反応水溶液中に雰囲気ガスを直接供給する本発明においては、反応槽内の酸素濃度によって確認された雰囲気の切り替え時間を、反応場の雰囲気としての反応水溶液の酸素溶存量の切り替え時間とみなすことができる。
【0099】
また、切り換え後の酸化性雰囲気での晶析反応時間は、粒子成長工程時間の全体に対して、好ましくは1%〜25%、より好ましくは1%〜20%とすることが好ましい。すなわち、酸化性ガスの導入開始時から、粒子成長工程時間の全体に対して、好ましくは1%〜25%、より好ましくは1%〜20%の範囲で、反応水溶液中に不活性ガスの直接導入を開始して、酸化性雰囲気から非酸化性雰囲気に切り替える。
【0100】
酸化性雰囲気から非酸化性雰囲気への反応雰囲気の切り替え時間は、粒子成長工程の全体に対して1%〜5%程度である。また、最終切り換え後の非酸化性雰囲気での粒子成長工程の終了(晶折反応の終了)までの晶析反応時間は、粒子成長工程時間の全体に対して、好ましくは50%〜98.5%の範囲であり、好ましくは50%〜80%の範囲である。このようなタイミングで反応雰囲気を順次切り替えることにより、中心部の大きさや高密度層の厚さを好適な範囲に制御することが可能となる。
【0101】
[雰囲気制御を2回以上行う場合]
雰囲気制御を2回以上行い、中心部、複数の低密度層と高密度層との組み合わせから構成される複合水酸化物粒子を得ようとする場合、粒子成長工程の初期段階の晶析反応時間は、粒子成長工程時間の全体に対して、好ましくは0.5%〜30%の範囲とし、より好ましくは1%〜20%の範囲とする。すなわち、粒子成長工程の開始時から、粒子成長工程時間の全体に対して、好ましくは0.5%〜30%、より好ましくは1%〜20%の範囲で、酸化性ガスの直接導入を開始して、非酸化性雰囲気から酸化性雰囲気に切り替え、その後、酸化性ガスの直接導入の開始時から、粒子成長工程時間の全体に対して、好ましくは、0.5%〜20%、より好ましくは0.5%〜15%の範囲で、不活性ガスの直接導入を開始して、酸化性雰囲気から非酸化性雰囲気に切り換え、さらに、不活性ガスの直接導入の開始から、粒子成長工程時間の全体に対して、好ましくは、5%〜40%、より好ましくは5%〜35%の範囲で、酸化性ガスの直接導入を再開して、非酸化性雰囲気から酸化性雰囲気に切り替え、その後、酸化性ガスの直接導入の再開時から、粒子成長工程時間の全体に対して、好ましくは、0.5%〜20%、より好ましくは0.5%〜15%の範囲で、不活性ガスの直接導入を再開して、酸化性雰囲気から非酸化性雰囲気に切り換える。最終切り換え後の非酸化性雰囲気での粒子成長工程の終了(晶折反応の終了)までの晶析反応時間は、粒子成長工程時間の全体に対して、好ましくは40%〜80%であり、より好ましくは50%〜70%の範囲である。
【0102】
この場合も、粒子成長工程における酸化性雰囲気での全晶析反応時間を、粒子成長工程時間の全体に対して、好ましくは1%〜25%、より好ましくは1%〜20%とする。このようなタイミングで反応雰囲気を切り替えることにより、中心部の大きさや高密度層の厚さを好適な範囲に制御することが可能となる。
【0103】
d)切り替え方法
従来、晶析工程中における反応雰囲気の切り替えは、反応槽内、より具体的には、反応槽内の気相部分に雰囲気ガスを流通させるか、反応水溶液に、内径が1mm〜50mm程度の導管を挿入し、雰囲気ガスによってバブリングすることで行うことが一般的である。このような従来技術では、反応水溶液の酸素溶存量を本発明の製造方法のような短時間で切り替えることが困難であるため、粒子成長工程における非酸化性雰囲気から酸化性雰囲気への切り替え中においては、原料水溶液の供給を停止することが必要である。これは、原料水溶液の供給を停止しないと、複合水酸化物粒子内部に緩やかな密度勾配が形成され、低密度層を十分な大きさとすることができないと考えられていたためである。
【0104】
これに対して、本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、粒子成長工程における、非酸化性雰囲気から酸化性雰囲気への切り替え、および、酸化性雰囲気から非酸化性雰囲気への切り替えに際して、原料水溶液の供給を継続しながら、反応水溶液中に雰囲気ガスを直接供給して雰囲気を切り替えることを特徴とする。このような方法では、反応雰囲気の切り替え時に、反応水溶液中の反応場の雰囲気が、非酸化性雰囲気の領域と酸化性雰囲気の領域とが混在した状態、または、非酸化性と酸化性の境界雰囲気となり、非酸化性雰囲気と酸化性雰囲気を行き来する状態になる。この結果、板状一次粒子と微細一次粒子の両方が生成し、中心部の外側で、かつ、高密度層の内径側に低密度層が形成された粒子構造、あるいは、低密度層内に高密度部が存在する粒子構造を備えた複合水酸化物粒子を得ることが可能となる。また、反応雰囲気の切り替え時に、原料水溶液の供給を停止する必要がないため、生産効率の改善を図ることができる。
【0105】
なお、酸化性ガスもしくは不活性ガスの反応水溶液内への直接導入による、反応雰囲気の切り替えに要する時間(切り替え時間)は、上記構造を備える複合水酸化物粒子を得ることができる限り制限されることはないが、上述したように、通常、酸化性ガスの直接導入による、非酸化性雰囲気から酸化性雰囲気への切り替え時間は、粒子成長工程時間の全体に対して0.5%〜2%となり、不活性ガスの直接導入による、酸化性雰囲気から非酸化性雰囲気への切り替え時間は、粒子成長工程時間の全体に対して1%〜5%程度である。
【0106】
ここで、反応水溶液中への雰囲気ガスの供給手段は、反応水溶液中に雰囲気ガスを直接供給可能な手段であることが必要となる。このような手段としては、たとえば、散気管を用いることが好ましい。散気管は、表面に微細な孔を多数有する導管によって構成され、液体中に微細なガス(気泡)を多数放出することができるため、反応水溶液と気泡の接触面積が大きく、雰囲気ガスの供給量に応じて、切り替え時間の制御を容易に行うことができる。
【0107】
このような散気管としては、高pH環境下における耐性に優れるセラミック製のものを用いることが好ましい。また、散気管は、その孔径が小さいほど、微細な気泡を放出することができるため、高い効率で反応雰囲気を切り替えることが可能となる。本発明においては、孔径が100μm以下の散気管を用いることが好ましく、50μm以下の散気管を用いることがより好ましい。
【0108】
なお、雰囲気ガスの供給は、上述のように微細な気泡を発生させ、反応水溶液と気泡の接触面積を大きくすればよいことから、上述した散気管以外のものであっても、導管の孔から気泡を発生させ、撹拌翼などによって気泡を微細に粉砕し分散させることができるものであれば、同様に、高い効率で雰囲気を切り替えることが可能となる。
【0109】
(5)アンモニウムイオン濃度
反応水溶液中のアンモニウムイオン濃度は、好ましくは3g/L〜25g/Lの範囲内、より好ましくは5g/L〜20g/Lの範囲内で一定値に保持する。反応水溶液中においてアンモニウムイオンは錯化剤として機能するため、アンモニウムイオン濃度が3g/L未満では、金属イオンの溶解度を一定に保持することができず、また、反応水溶液がゲル化しやすくなり、形状や粒径の整った複合水酸化物粒子を得ることが困難となる。一方、アンモニウムイオン濃度が25g/Lを超えると、金属イオンの溶解度が大きくなりすぎるため、反応水溶液中に残存する金属イオン量が増加し、組成ずれなどの原因となる。
【0110】
なお、晶析反応中にアンモニウムイオン濃度が変動すると、金属イオンの溶解度が変動し、均一な複合水酸化物粒子が形成されなくなる。このため、核生成工程と粒子成長工程を通じて、アンモニウムイオン濃度の変動幅を一定の範囲に制御することが好ましく、具体的には、±5g/Lの変動幅に制御することが好ましい。
【0111】
(6)反応温度
反応水溶液の温度(反応温度)は、核生成工程と粒子成長工程を通じて、好ましくは20℃以上、より好ましくは20℃〜60℃の範囲に制御することが必要となる。反応温度が20℃未満では、反応水溶液の溶解度が低くなることに起因して、核生成が起こりやすくなり、得られる複合水酸化物粒子の平均粒径や粒度分布の制御が困難となる。なお、反応温度の上限は、特に制限されることはないが、60℃を超えると、アンモニアの揮発が促進され、反応水溶液中のアンモニウムイオンを一定範囲に制御するために供給するアンモニウムイオン供給体を含む水溶液の量が増加し、生産コストが増加してしまう。
【0112】
(7)被覆工程
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、原料水溶液中に添加元素Mを含有する化合物を添加することで、粒子内部に添加元素Mが均一に分散した複合水酸化物粒子を得ることができる。しかしながら、より少ない添加量で、添加元素Mの添加による効果を得ようとする場合には、粒子成長工程後に、複合水酸化物粒子の表面を、添加元素Mを含む化合物で被覆する被覆工程を行うことが好ましい。
【0113】
被覆方法は、複合水酸化物粒子を、添加元素Mを含む化合物によって均一に被覆することができる限り、特に制限されることはない。たとえば、複合水酸化物粒子をスラリー化し、そのpH値を所定の範囲に制御した後、添加元素Mを含む化合物を溶解した水溶液(被覆用水溶液)を添加し、複合水酸化物粒子の表面に添加元素Mを含む化合物を析出させることで、添加元素Mを含む化合物によって均一に被覆された複合水酸化物粒子を得ることができる。この場合、被覆用水溶液に代えて、添加元素Mのアルコキシド溶液をスラリー化した複合水酸化物粒子に添加してもよい。また、複合水酸化物粒子をスラリー化せずに、添加元素Mを含む化合物を溶解した水溶液またはスラリーを吹き付けて乾燥させることにより被覆してもよい。さらに、複合水酸化物粒子と添加元素Mを含む化合物が懸濁したスラリーを噴霧乾燥させる方法により、または、複合水酸化物粒子と添加元素Mを含む化合物を固相法で混合するなどの方法により被覆することもできる。
【0114】
なお、複合水酸化物粒子の表面を添加元素Mで被覆する場合には、被覆後の複合水酸化物粒子の組成が、目的とする複合水酸化物粒子の組成と一致するように、原料水溶液および被覆用水溶液の組成を適宜調整することが必要となる。また、被覆工程は、複合水酸化物粒子を熱処理した後の熱処理粒子に対して行ってもよい。
【0115】
(8)製造装置
本発明の複合水酸化物粒子を製造するための晶析装置(反応槽)としては、上述した散気管によって反応雰囲気の切り替えを行うことができるものである限り、特に制限されることはない。しかしながら、晶析反応が終了するまで、析出した生成物を回収しないバッチ式晶析装置を用いることが好ましい。このような晶析装置であれば、オーバーフロー方式によって生成物を回収する連続晶析装置とは異なり、成長中の粒子がオーバーフロー液と同時に回収されることがないため、粒度分布の狭い複合水酸化物粒子を容易に得ることができる。また、本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、晶析反応中の反応雰囲気を適切に制御することが必要となるため、密閉式の晶析装置を用いることが好ましい。
【0116】
2.非水電解質二次電池用正極活物質
2−1.非水電解質二次電池用正極活物質
(1)粒子構造
a)二次粒子の構造
本発明の正極活物質は、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成される。この二次粒子は、一次粒子が凝集した外殻部と、前記外殻部の内側に存在し、かつ、前記外殻部と電気的かつ構造的に接続された、少なくとも1つの一次粒子が凝集した凝集部と、前記外殻部の内側に存在し、少なくとも1つの一次粒子が存在しない空間部とを備えていることを特徴とする。ここで、「電気的かつ構造的に接続する」とは、外殻部と一次粒子の凝集部および一次粒子の凝集部同士が、これらの間に形成された連結部などの構造体によって構造的に接続し、電気的に導通可能な状態であることを意味する。また、「一次粒子の凝集部」とは、前駆体である複合水酸化物粒子の中心部および外殻部を形成するもの以外の高密度層が焼結収縮した部分を意味し、「連結部」とは、低密度層のうち、高密度部が焼結収縮した部分を意味する。
【0117】
このような粒子構造を有する正極活物質では、一次粒子間の粒界または空間部を介して、二次粒子の内部に電解液が浸入するため、二次粒子の表面ばかりでなく、二次粒子の内部においても、リチウムの脱離および挿入が可能となる。しかも、この正極活物質は、外殻部と凝集部とが電気的かつ構造的に接続しており、二次粒子内部の表面積が十分に大きいため、WO2014/181891号公報などに記載の正極活物質と比べて、粒子内部の抵抗(内部抵抗)を大幅に低減することが可能となる。また、連結部の存在によって、粒子強度を高めつつ、粒子密度を大きくすることができる。したがって、この正極活物質を用いた二次電池では、出力特性、電池容量、およびサイクル特性を同時に改善することができる。
【0118】
なお、本発明の正極活物質では、複合水酸化物粒子における中心部は、正極活物質における中心部と必ずしも一致しない。この理由は明らかではないが、高密度層同士の間に接点(連結部)が存在することや、高密度層同士を接続する高密度部が粒子中にランダムに存在することにより、焼成時の二次粒子の収縮が不均一になるためと推測される。また、複合水酸化物粒子における、中心部は高密度層および高密度部と接続しているため、中心部が、焼成時における二次粒子の変形の影響を受けやすいためと推測される。したがって、本発明の正極活物質では、外殻部と、少なくとも1つの一次粒子の凝集部と、少なくとも1つの空間部とを備えた構造、一次粒子の凝集部から構成される中心部と、外殻部と、中心部と外殻部とを接続する連結部とを備えた構造、外殻部と、その内側にある内殻部と、内殻部の内側にある少なくとも1つの一次粒子の凝集部と、外殻部と内殻部との間の空間部と、内殻部の内側にある空間部と、外殻部と内殻部と一次粒子の凝集部とを接続する連結部などの種々な構造が存在する。また、この場合、中心部、内殻部、外殻部のいずれも、相互に電気的かつ構造的に接続された複数の凝集部により構成されることもできる。
【0119】
b)外殻部
本発明の正極活物質において、その粒径に対する外殻部の厚さの比率(以下、「外殻部粒径比」という)を5%〜25%とすることが好ましく、5%〜20%とすることがより好ましく、5%〜15%とすることがさらに好ましい。これにより、この正極活物質を用いた二次電池において、電池容量やサイクル特性を損ねることなく、出力特性を改善することが可能となる。これに対して、外殻部粒径比が5%未満では、正極活物質の粒子強度や耐久性を確保することが困難となり、二次電池のサイクル特性が低下するおそれがある。一方、外殻部粒径比が25%を超えると、空間部の比率が低下するため、二次電池の出力特性を改善することが困難となるおそれがある。
【0120】
ここで、外殻部粒径比は、正極活物質の断面SEM写真を用いて、次のようにして求めることができる。はじめに、断面SEM写真上で、1粒子あたり3か所以上の任意の位置で外殻部の厚さを測定し、その平均値を求める。ここで、外殻部の厚さは、正極活物質の外周から外殻部と空間部の境界までの距離が最短となる2点間の距離とする。同時に、正極活物質の外周上の2点間の最大距離を測定し、この値を、その正極活物質の粒径とする。そして、外殻部の厚さを正極活物質の粒径で除することにより、その正極活物質の粒径に対する外殻部の厚さの比率を求める。同様の測定を10個以上の正極活物質に対して、その平均値を算出することで、外殻部粒径比を求めることができる。なお、本発明の正極活物質では、焼成時の収縮により外殻部の一部が解放し、内部の空間部が外部に露出した状態となる場合がある。このような場合には、解放している部分が繋がっているものと推定して外殻部を判断し、測定可能な部分で外殻部の厚さを測定すればよい。
【0121】
c)空間部
本発明の正極活物質は、外殻部の内側に空間部が分散していることを特徴とするが、正極活物質の任意の断面において、外殻部および一次粒子の凝集部の面積に対する空間部の面積の比率(以下、「空間部比」という)は、20%〜60%であることが好ましく、30%〜50%であることがより好ましい。これにより、この正極活物質を用いた二次電池において、出力特性、電池容量およびサイクル特性を同時に改善することが可能となる。これに対して、空間部比が20%未満では、二次電池の出力特性を改善することができないおそれがある。一方、空間部比が60%を超えると、粒子密度や粒子強度が低下するため、二次電池の電池容量やサイクル特性を確保することができないおそれがある。
【0122】
なお、空間部比は、断面のSEM観察において、任意の10個以上の正極活物質について、空間部(図2における黒色部)に対する、外殻部および一次粒子の凝集部(図2における白色部ないしは薄灰色部)の面積比を求め、これらの平均値を算出することにより求めることができる。
【0123】
(2)平均粒径
本発明の正極活物質は、平均粒径が、1μm〜15μm、好ましくは3μm〜12μm、より好ましくは3μm〜10μmとなるように調整される。正極活物質の平均粒径がこのような範囲にあれば、この正極活物質を用いた二次電池の単位体積あたりの電池容量を増加させることができるばかりでなく、安全性や出力特性も改善することができる。これに対して、平均粒径が1μm未満では、正極活物質の充填性が低下し、単位体積あたりの電池容量を増加させることができない。一方、平均粒径が15μmを超えると、正極活物質の反応面積が低下し、電解液との界面が減少するため、出力特性を改善することが困難となる。
【0124】
なお、正極活物質の平均粒径とは、上述した複合水酸化物粒子と同様に、体積基準平均粒径(MV)を意味し、たとえば、レーザ光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
【0125】
(3)粒度分布
本発明の正極活物質は、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が、0.7以下、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.55以下であり、きわめて粒度分布が狭いリチウム複合酸物粒子により構成される。このような正極活物質は、微細粒子や粗大粒子の割合が少なく、これを用いた二次電池は、安全性、サイクル特性および出力特性が優れたものとなる。
【0126】
これに対して、〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.7を超えると、正極活物質中の微細粒子や粗大粒子の割合が増加する。たとえば、微細粒子の割合が多い正極活物質を用いた二次電池では、微細粒子の局所的な反応に起因して、二次電池が発熱しやすくなり、安全性が低下するばかりでなく、微細粒子の選択的な劣化により、サイクル特性が劣ったものとなる。また、粗大粒子の割合が多い正極活物質を用いた二次電池では、電解液と正極活物質の反応面積を十分に確保することができず、出力特性が劣ったものとなる。なお、工業規模の生産を前提とした場合には、正極活物質として、〔(d90−d10)/平均粒径〕が過度に小さいものを用いることは現実的でではない。したがって、コストや生産性を考慮すると、〔(d90−d10)/平均粒径〕の下限値は、0.25程度とすることが好ましい。
【0127】
粒度分布の広がりを示す指標〔(d90−d10)/平均粒径〕におけるd10およびd90の意味、並びに、これらの求め方は、上述した複合水酸化物粒子と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0128】
(4)単位体積あたりの表面積
本発明の正極活物質は、単位体積あたりの表面積が1.7m2/cm3以上、好ましくは2.1m2/cm3以上であることが必要とされる。これにより、正極活物質の充填性を確保しつつ、電解液との接触面積を増大させることができるため、出力特性と電池容量を同時に改善することができる。なお、単位体積あたりの表面積は、後述するBET比表面積とタップ密度の積によって求めることができる。
【0129】
一般的に、タップ密度が大きくなるとBET比表面積は小さくなり、タップ密度が小さくなるとBET比表面積は大きくなる。このため、タップ密度を低下させずにBET比表面積を大きくすることは困難である。これに対して、本発明の正極活物質は、上述のような粒子構造を備えることにより、タップ密度を低下させることなく、BET比表面積を大きくすることを可能としている。
【0130】
(5)組成
本発明の正極活物質は、上述した構造を有する限り、その組成が制限されることはないが、一般式(B):Li1+uNixMnyCozt2(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表される正極活物質に対して好適に適用することができる。
【0131】
この正極活物質において、リチウム(Li)の過剰量を示すuの値は、好ましくは−0.05以上0.50以下、より好ましく0以上0.50以下、さらに好ましくは0以上0.35以下とする。uの値を上記範囲に規制することにより、この正極活物質を正極材料として用いた二次電池の出力特性および電池容量を向上させることができる。これに対して、uの値が−0.05未満では、二次電池の正極抵抗が大きくなるため、出力特性を向上させることができない。一方、0.50を超えると、初期放電容量が低下するばかりでなく、正極抵抗も大きくなってしまう。
【0132】
ニッケル(Ni)は、二次電池の高電位化および高容量化に寄与する元素であり、その含有量を示すxの値は、好ましくは0.3以上0.95以下、より好ましくは0.3以上0.9以下とする。xの値が0.3未満では、この正極活物質を用いた二次電池の電池容量を向上させることができない。一方、xの値が0.95を超えると、他の元素の含有量が減少し、その効果を得ることができない。
【0133】
マンガン(Mn)は、熱安定性の向上に寄与する元素であり、その含有量を示すyの値は、好ましくは0.05以上0.55以下、より好ましくは0.10以上0.40以下とする。yの値が0.05未満では、この正極活物質を用いた二次電池の熱安定性を向上させることができない。一方、yの値が0.55を超えると、高温作動時に正極活物質からMnが溶出し、充放電サイクル特性が劣化してしまう。
【0134】
コバルト(Co)は、充放電サイクル特性の向上に寄与する元素であり、その含有量を示すzの値は、好ましくは0以上0.4以下、より好ましくは0.10以上0.35以下とする。zの値が0.4を超えると、この正極活物質を用いた二次電池の初期放電容量が大幅に低下してしまう。
【0135】
本発明の正極活物質では、二次電池の耐久性や出力特性をさらに改善するため、上述した金属元素に加えて、添加元素Mを含有してもよい。このような添加元素Mとしては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)から選択される1種以上を用いることができる。
【0136】
添加元素Mの含有量を示すtの値は、好ましくは0以上0.1以下、より好ましくは0.001以上0.05以下とする。tの値が0.1を超えると、Redox反応に寄与する金属元素が減少するため、電池容量が低下する。
【0137】
このような添加元素Mは、正極活物質の粒子内部に均一に分散させてもよく、正極活物質の粒子表面を被覆させてもよい。さらには、粒子内部に均一に分散させた上で、その表面を被覆させてもよい。いずれにしても、添加元素Mの含有量が上記範囲となるように制御することが必要となる。
【0138】
なお、上記正極活物質において、これを用いた二次電池の電池容量のさらなる改善を図る場合には、その組成を、一般式(B1):Li1+uNixMnyCozt2(−0.05≦u≦0.20、x+y+z+t=1、0.7<x≦0.95、0.05≦y≦0.1、0≦z≦0.2、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表されるように調整することが好ましい。特に、熱安定性との両立を図る場合には、一般式(B1)におけるxの値を、0.7<x≦0.9とすることがより好ましく、0.7<x≦0.85とすることがさらに好ましい。
【0139】
一方、熱安定性のさらなる改善を図る場合には、その組成を、一般式(B2):Li1+uNixMnyCozt2(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、Mは、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表されるように調整することが好ましい。
【0140】
(6)BET比表面積
本発明の正極活物質は、BET比表面積が、0.7m2/g〜5.0m2/gであることが好ましく、1.8m2/g〜5.0m2/gであることがより好ましい。BET比表面積がこのような範囲にある正極活物質は、電解液との接触面積が大きく、これを用いた二次電池の出力特性を大幅に改善することができる。これに対して、正極活物質のBET比表面積が0.7m2/g未満では、二次電池を構成した場合に、電解液との反応面積を確保することができず、出力特性を十分に向上させることが困難となる。一方、正極活物質のBET比表面積が5.0m2/gを超えると、電解液との反応性が高くなりすぎるため、熱安定性が低下する場合がある。
【0141】
なお、正極活物質のBET比表面積は、たとえば、窒素ガス吸着によるBET法により測定することができる。
【0142】
(7)タップ密度
携帯電子機器の使用時間や電気自動車の走行距離を伸ばすために、二次電池の高容量化は重要な課題となっている。一方、二次電池の電極の厚さは、電池全体のパッキングや電子伝導性の問題から数ミクロン程度とすることが要求される。このため、正極活物質として高容量のものを使用するばかりでなく、正極活物質の充填性を高め、二次電池全体としての高容量化を図ることが必要となる。このような観点から、本発明の正極活物質では、充填性の指標であるタップ密度を、1.0g/cm3以上とすることが好ましく、1.3g/cm3以上とすることがより好ましい。タップ密度が1.0g/cm3未満では、充填性が低く、二次電池全体の電池容量を十分に改善することができない場合がある。一方、タップ密度の上限値は、特に制限されるものではないが、通常の製造条件での上限は、3.0g/cm3程度となる。
【0143】
なお、タップ密度とは、JIS Z−2504に基づき、容器に採取した試料粉末を、100回タッピングした後の嵩密度を表し、振とう比重測定器を用いて測定することができる。
【0144】
2−2.非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法
本発明の正極活物質の製造方法は、上述した複合水酸化物粒子を前駆体として用い、所定の構造、平均粒径、および粒度分布を備える正極活物質を合成することができる限り、特に制限されることはない。しかしながら、工業規模の生産を前提とした場合には、上述した複合水酸化物粒子をリチウム化合物と混合し、リチウム混合物を得る混合工程と、得られたリチウム混合物を、酸化性雰囲気中、650℃〜980℃で焼成する焼成工程とを備える製造方法によって正極活物質を合成することが好ましい。なお、必要に応じて、上述した工程に、熱処理工程や仮焼工程などの工程を追加してもよい。このような製造方法によれば、上述した正極活物質、特に、一般式(B)で表される正極活物質を容易に得ることができる。
【0145】
(1)熱処理工程
本発明の正極活物質の製造方法においては、任意的に、混合工程の前に熱処理工程を設けて、複合水酸化物粒子を熱処理粒子としてからリチウム化合物と混合してもよい。ここで、熱処理粒子には、熱処理工程において余剰水分を除去された複合水酸化物粒子のみならず、熱処理工程により、酸化物に転換された遷移金属複合酸化物粒子(以下、「複合酸化物粒子」という)、または、これらの混合物も含まれる。
【0146】
熱処理工程は、複合水酸化物粒子を105℃〜750℃に加熱して熱処理することにより、複合水酸化物粒子に含有される余剰水分を除去する工程である。これにより、焼成工程後まで残留する水分を一定量まで減少させることができ、得られる正極活物質の組成のばらつきを抑制することができる。
【0147】
熱処理工程における加熱温度は105℃〜750℃とする。加熱温度が105℃未満では、複合水酸化物粒子中の余剰水分が除去できず、ばらつきを十分に抑制することができない場合がある。一方、加熱温度が700℃を超えても、それ以上の効果は期待できないばかりか、生産コストが増加してしまう。
【0148】
なお、熱処理工程では、正極活物質中の各金属成分の原子数や、Liの原子数の割合にばらつきが生じない程度に水分が除去できればよいので、必ずしもすべての複合水酸化物粒子を複合酸化物粒子に転換する必要はない。しかしながら、各金属成分の原子数やLiの原子数の割合のばらつきをより少ないものとするためには、400℃以上に加熱して、すべての複合水酸化物粒子を、複合酸化物粒子に転換することが好ましい。なお、熱処理条件による複合水酸化物粒子に含有される金属成分を分析によって予め求めておき、リチウム化合物との混合比を決めておくことで、上述したばらつきをより抑制することができる。
【0149】
熱処理を行う雰囲気は特に制限されるものではなく、非還元性雰囲気であればよいが、簡易的に行える空気気流中で行うことが好ましい。
【0150】
また、熱処理時間は、特に制限されないが、複合水酸化物粒子中の余剰水分を十分に除去する観点から、少なくとも1時間とすることが好ましく、5時間〜15時間とすることがより好ましい。
【0151】
(2)混合工程
混合工程は、上述した複合水酸化物粒子または熱処理粒子に、リチウム化合物を混合して、リチウム混合物を得る工程である。
【0152】
混合工程では、リチウム混合物中のリチウム以外の金属原子、具体的には、ニッケル、コバルト、マンガンおよび添加元素Mとの原子数の和(Me)と、リチウムの原子数(Li)との比(Li/Me)が、0.95〜1.5、好ましくは1.0〜1.5、より好ましくは1.0〜1.35、さらに好ましくは1.0〜1.2となるように、複合水酸化物粒子または熱処理粒子とリチウム化合物を混合することが必要となる。すなわち、焼成工程の前後ではLi/Meは変化しないので、混合工程におけるLi/Meが、目的とする正極活物質のLi/Meとなるように、複合水酸化物粒子または熱処理粒子とリチウム化合物を混合することが必要となる。
【0153】
混合工程で使用するリチウム化合物は、特に制限されることはないが、入手の容易性から、水酸化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウムまたはこれらの混合物を用いることが好ましい。特に、取り扱いの容易さや品質の安定性を考慮すると、水酸化リチウムまたは炭酸リチウムを用いることが好ましい。
【0154】
複合水酸化物粒子または熱処理粒子とリチウム化合物は、微粉が生じない程度に十分に混合することが好ましい。混合が不十分であると、個々の粒子間でLi/Meにばらつきが生じ、十分な電池特性を得ることができない場合がある。なお、混合には、一般的な混合機を使用することができる。たとえば、シェーカーミキサ、レーディゲミキサ、ジュリアミキサ、Vブレンダなどを用いることができる。
【0155】
(3)仮焼工程
リチウム化合物として、水酸化リチウムや炭酸リチウムを使用する場合には、混合工程後、焼成工程の前に、リチウム混合物を、後述する焼成温度よりも低温、かつ、350℃〜800℃、好ましくは450℃〜780℃で仮焼する仮焼工程を行ってもよい。これにより、複合水酸化物粒子または熱処理粒子中に、リチウムを十分に拡散させることができ、より均一なリチウム複合酸化物粒子を得ることができる。
【0156】
なお、上記温度での保持時間は、1時間〜10時間とすることが好ましく、3時間〜6時間とすることが好ましい。また、仮焼工程における雰囲気は、後述する焼成工程と同様に、酸化性雰囲気とすることが好ましく、酸素濃度が18容量%〜100容量%の雰囲気とすることがより好ましい。
【0157】
(4)焼成工程
焼成工程は、混合工程で得られたリチウム混合物を所定条件の下で焼成し、複合水酸化物粒子または熱処理粒子中にリチウムを拡散させて、リチウム複合酸化物粒子を得る工程である。
【0158】
この焼成工程において、複合水酸化物粒子および熱処理粒子の中心部および高密度層は、焼結収縮し、正極活物質における外殻部および一次粒子の凝集部を形成する。一方、低密度層は、微細一次粒子によって構成されているため、この微細一次粒子よりも大きな板状一粒子によって構成される中心部や高密度層よりも低温域から焼結し始める。しかも、低密度層は、中心部や高密度層と比べて収縮量が大きなものとなる。このため、低密度層を構成する微細一次粒子は、焼結の進行が遅い中心部や高密度層側に収縮し、適度な大きさの空間部が形成されることとなる。この際、低密度層内の高密度部は、中心部や高密度層との連結を維持したまま、焼結収縮するため、得られる正極活物質においては、外殻部と一次粒子の凝集部とが電気的に導通し、かつ、その経路の断面積を十分に確保することができる。この結果、正極活物質の内部抵抗が大幅に減少し、二次電池を構成した場合に、電池容量やサイクル特性を損ねることなく、出力特性を改善することが可能となる。
【0159】
このような正極活物質の粒子構造は、基本的に、前駆体である複合水酸化物粒子の粒子構造に応じて定まるものであるが、その組成や焼成条件などの影響を受けることがあるため、予備試験を行った上で、所望の構造となるように、各条件を適宜調整することが好ましい。
【0160】
なお、焼成工程に用いられる炉は、特に制限されることはなく、大気ないしは酸素気流中でリチウム混合物を加熱できるものであればよい。ただし、炉内の雰囲気を均一に保つ観点から、ガス発生がない電気炉が好ましく、バッチ式あるいは連続式の電気炉のいずれも好適に用いることができる。この点については、熱処理工程および仮焼工程に用いる炉についても同様である。
【0161】
a)焼成温度
リチウム混合物の焼成温度は、650℃〜980℃とすることが必要となる。焼成温度が650℃未満では、複合水酸化物粒子または熱処理粒子中にリチウムが十分に拡散せず、余剰のリチウムや未反応の複合水酸化物粒子または熱処理粒子が残存したり、得られるリチウム複合酸化物粒子の結晶性が不十分なものとなったりする。一方、焼成温度が980℃を超えると、リチウム複合酸化物粒子間が激しく焼結し、異常粒成長が引き起こされ、不定形な粗大粒子の割合が増加することとなる。
【0162】
なお、上述した一般式(B1)で表される正極活物質を得ようとする場合には、焼成温度を650℃〜900℃とすることが好ましい。一方、一般式(B2)で表される正極活物質を得ようとする場合には、焼成温度を800℃〜980℃とすることが好ましい。
【0163】
また、焼成工程における昇温速度は、2℃/分〜10℃/分とすることが好ましく、5℃/分〜10℃/分とすることがより好ましい。さらに、焼成工程中、リチウム化合物の融点付近の温度で、好ましくは1時間〜5時間、より好ましくは2時間〜5時間保持することが好ましい。これにより、複合水酸化物粒子または熱処理粒子とリチウム化合物とを、より均一に反応させることができる。
【0164】
b)焼成時間
焼成時間のうち、上述した焼成温度での保持時間は、少なくとも2時間とすることが好ましく、4時間〜24時間とすることがより好ましい。焼成温度における保持時間が2時間未満では、複合水酸化物粒子または熱処理粒子中にリチウムが十分に拡散せず、余剰のリチウムや未反応の複合水酸化物粒子または熱処理粒子が残存したり、得られるリチウム複合酸化物粒子の結晶性が不十分なものとなったりするおそれがある。
【0165】
なお、保持時間終了後、焼成温度から少なくとも200℃までの冷却速度は、2℃/分〜10℃/分とすることが好ましく、33℃/分〜77℃/分とすることがより好ましい。冷却速度をこのような範囲に制御することにより、生産性を確保しつつ、匣鉢などの設備が、急冷により破損することを防止することを防止することができる。
【0166】
c)焼成雰囲気
焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気とすることが好ましく、酸素濃度が18容量%〜100容量%の雰囲気とすることがより好ましく、上記酸素濃度の酸素と不活性ガスの混合雰囲気とすることが特に好ましい。すなわち、焼成は、大気ないしは酸素気流中で行うことが好ましい。酸素濃度が18容量%未満では、リチウム複合酸化物粒子の結晶性が不十分なものとなるおそれがある。
【0167】
(5)解砕工程
焼成工程によって得られたリチウム複合酸化物粒子は、凝集または軽度の焼結が生じている場合がある。このような場合には、リチウム複合酸化物粒子の凝集体または焼結体を解砕することが好ましい。これによって、得られる正極活物質の平均粒径や粒度分布を好適な範囲に調整することができる。なお、解砕とは、焼成時に二次粒子間の焼結ネッキングなどにより生じた複数の二次粒子からなる凝集体に、機械的エネルギを投入して、二次粒子自体をほとんど破壊することなく分離させて、凝集体をほぐす操作を意味する。
【0168】
解砕の方法としては、公知の手段を用いることができ、たとえば、ピンミルやハンマーミルなどを使用することができる。なお、この際、二次粒子を破壊しないように解砕力を適切な範囲に調整することが好ましい。
【0169】
3.非水電解質二次電池
本発明の非水電解質二次電池は、正極、負極、セパレータおよび非水電解液などの、一般の非水電解質二次電池と同様の構成部材を備える。なお、以下に説明する実施形態は例示にすぎず、本発明の非水電解質二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基づいて、種々の変更、改良を施した形態に適用することも可能である。
【0170】
(1)構成部材
a)正極
上述した正極活物質を用いて、たとえば、以下のようにして非水電解質二次電池の正極を作製する。
【0171】
まず、本発明の正極活物質に、導電材および結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭や、粘度調整などの溶剤を添加し、これらを混練して正極合材ペーストを作製する。その際、正極合材ペースト中のそれぞれの混合比も、非水電解質二次電池の性能を決定する重要な要素となる。たとえば、溶剤を除いた正極合材の固形分を100質量部とした場合には、一般の非水電解質二次電池の正極と同様に、正極活物質の含有量を60質量部〜95質量部、導電材の含有量を1質量部〜20質量部および結着剤の含有量を1質量部〜20質量部とすることができる。
【0172】
得られた正極合材ペーストを、たとえば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して、溶剤を飛散させる。必要に応じて、電極密度を高めるべく、ロールプレスなどにより加圧することもある。このようにして、シート状の正極を作製することができる。シート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断などをして、電池の作製に供することができる。なお、正極の作製方法は、前記例示のものに限られることはなく、他の方法によってもよい。
【0173】
導電材としては、たとえば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛など)や、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどのカーボンブラック系材料を用いることができる。
【0174】
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂またはポリアクリル酸を用いることができる。
【0175】
このほか、必要に応じて、正極活物質、導電材および活性炭を分散させ、結着剤を溶解する溶剤を正極合材に添加することができる。溶剤としては、具体的に、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。また、正極合材には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することもできる。
【0176】
b)負極
負極には、金属リチウムやリチウム合金などを使用することができる。また、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅などの金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用することができる。
【0177】
負極活物質としては、たとえば、金属リチウムやリチウム合金などのリチウムを含有する物質、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる天然黒鉛、人造黒鉛およびフェノール樹脂などの有機化合物焼成体、並びにコークスなどの炭素物質の粉状体を用いることができる。この場合、負極結着剤としては、正極同様、PVDFなどの含フッ素樹脂を用いることができ、これらの活物質および結着剤を分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。
【0178】
c)セパレータ
セパレータは、正極と負極との間に挟み込んで配置されるものであり、正極と負極とを分離し、電解質を保持する機能を有する。このようなセパレータとしては、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微細な孔を多数有する膜を用いることができるが、上記機能を有するものであれば、特に限定されることはない。
【0179】
d)非水電解液
非水電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
【0180】
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートおよびトリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびジメトキシエタンなどのエーテル化合物、エチルメチルスルホンやブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチルやリン酸トリオクチルなどのリン化合物などから選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0181】
支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiN(CF3SO22、およびそれらの複合塩などを用いることができる。
【0182】
なお、非水電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤などを含んでいてもよい。
【0183】
(2)非水電解質二次電池
以上の正極、負極、セパレータおよび非水電解液で構成される本発明の非水電解質二次電池は、円筒形や積層形など、種々の形状にすることができる。
【0184】
いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通じる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リードなどを用いて接続し、電池ケースに密閉して、非水電解質二次電池を完成させる。
【0185】
(3)非水電解質二次電池の特性
本発明の非水電解質二次電池は、上述したように、本発明の正極活物質を正極材料として用いているため、電池容量、出力特性、およびサイクル特性に優れる。しかも、従来のリチウムニッケル系複合酸化物粒子からなる正極活物質を用いた二次電池との比較においても、熱安定性や安全性において優れているといえる。
【0186】
たとえば、本発明の正極活物質を用いて、図7に示すような2032型コイン電池を構成した場合に、150mAh/g以上、好ましくは158mAh/g以上の初期放電容量と、1.10Ω以下、好ましくは1.05Ω以下の正極抵抗と、75%以上、好ましくは80%以上の500サイクル容量維持率を同時に達成することができる。
【0187】
(4)用途
本発明の非水電解質二次電池は、上述のように、電池容量、出力特性、およびサイクル特性に優れており、これらの特性が高いレベルで要求される小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話など)の電源に好適に利用することができる。また、本発明の非水電解質二次電池は、安全性にも優れており、小型化および高出力化が可能であるばかりでなく、高価な保護回路を簡略することができるため、搭載スペースに制約を受ける輸送用機器の電源としても好適に利用することができる。
【実施例】
【0188】
以下、実施例および比較例を用いて、本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例および比較例では、特に断りがない限り、複合水酸化物粒子および正極活物質の作製には、和光純薬工業株式会社製試薬特級の各試料を使用した。また、核生成工程および粒子成長工程を通じて、反応水溶液のpH値は、pHコントローラ(日伸理化製、NPH−690D)により測定し、この測定値に基づき、水酸化ナトリウム水溶液の供給量を調整することで、各工程における反応水溶液のpH値の変動幅を±0.2の範囲に制御した。
【0189】
(実施例1)
a)複合水酸化物粒子の製造
[核生成工程]
はじめに、60L反応槽内に、水を14L入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定した。この際、反応槽内に窒素ガスを30分間流通させ、反応雰囲気を、酸素濃度が2容量%以下の非酸化性雰囲気とした。続いて、反応槽内に、25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量供給し、pH値が、液温25℃基準で12.8、アンモニウムイオン濃度が10g/Lとなるように調整することで反応前水溶液を形成した。
【0190】
同時に、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、硫酸ジルコニウムを、各金属元素のモル比がNi:Mn:Co:Zr=33.1:33.1:33.1:0.2となるように水に溶解し、2mol/Lの原料水溶液を調製した。
【0191】
次に、この原料水応液を、反応前水溶液に100ml/分で供給することで、核生成工程用水溶液を形成し、1分間の核生成を行った。この際、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液と25質量%のアンモニア水を適時供給し、核生成用水溶液のpH値およびアンモニウムイオン濃度を上述した範囲に維持した。
【0192】
[粒子成長工程]
核生成終了後、一旦、すべての水溶液の供給を一旦停止するとともに、硫酸を加えて、pH値が、液温25℃基準で11.6となるように調整することで、粒子成長用水溶液を形成した。pH値が所定の値になったことを確認した後、原料水溶液とタングステン酸ナトリウム水溶液を供給し、核生成工程で生成した核(粒子)を成長させた。
【0193】
粒子成長工程の初期段階、すなわち、粒子成長工程の開始時から60分(粒子成長工程時間の全体に対して25%)経過後、原料水溶液の供給を継続したまま、孔径が20μm〜30μmであるセラミック製の散気管(木下理化工業株式会社製)を用いて反応水溶液中に空気を直接導入し、反応雰囲気を、酸素濃度が21容量%の酸化性雰囲気に調整した(切り替え操作1)。反応槽内の酸素濃度測定により、切り換え操作1において、酸素濃度が5容量%を超える酸化性雰囲気までの切り替え時間は、粒子成長工程時間の全体に対して0.3%(約0.7分)であり、酸素濃度が21容量%の酸化性雰囲気までの切り替え時間は、粒子成長工程時間の全体に対して2%(約4.8分)であったことが確認された。
【0194】
切り替え操作1から10分(粒子成長工程時間の全体に対して4.2%)経過後、同様に、原料水溶液の供給を継続したまま、反応水溶液中に窒素ガスを直接導入し、反応雰囲気を、酸素濃度が2容量%以下の非酸化性雰囲気に調整した(切り替え操作2)。切り替え操作2において、酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気までの雰囲気の切り替え時間は、粒子成長工程時間の全体に対して1%であり、酸素濃度が2容量%以下の非酸化性雰囲気までの雰囲気の切り替え時間は、粒子成長工程時間の全体に対して2%であったことが確認された。
【0195】
切り替え操作2から170分(粒子成長工程時間の全体に対して70.8%)経過後、すべての水溶液の供給を停止することで、粒子成長工程を終了した。この際、粒子成長水溶液中の生成物の濃度は、86g/Lであった。その後、得られた生成物を、水洗、ろ過および乾燥させることにより、粉末状の複合水酸化物粒子を得た。
【0196】
なお、粒子成長工程においては、この工程を通じて、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液と25質量%のアンモニア水を適時供給し、粒子成長用水溶液のpH値およびアンモニウムイオン濃度を上述した範囲に維持した。
【0197】
b)複合水酸化物粒子の評価
[組成]
ICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所島津製作所製、ICPE−9000)を用いた分析により、この複合水酸化物粒子は、一般式:Ni0.331Mn0.331Co0.331Zr0.0020.005(OH)2で表されるものであることが確認された。
【0198】
[粒子構造]
複合水酸化物粒子の一部を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリシャ加工によって断面観察可能な状態とした上で、SEM(日本電子株式会社製、JSM−6360LA)により観察した(図1参照)。この結果、この複合水酸化物粒子は、板状一次粒子が凝集して形成された中心部を有し、中心部の外側に、板状一次粒子および微細一次粒子が凝集して形成された低密度層と、板状一次粒子が凝集して形成された高密度層とが積層した積層構造を1つ備えており、高密度層は、低密度層内で板状一次粒子が凝集して形成された高密度部によって、中心部と連結していることが確認された。なお、本実施例では、核生成工程のpH値を12.8としたため、複合水酸化物粒子の中心部は、内部に、微細一次粒子からなる低密度部を有したものとなっていた。また、微細一次粒子の平均粒径は0.2μmであり、板状一次粒子の平均粒径は0.5μmであることが確認された。さらに、中心部粒径比は62%であり、高密度層粒径比は13%であることが確認された。
【0199】
[平均粒径および粒度分布]
レーザ光回折散乱式粒度分析計(日機装株式会社製、マイクロトラックHRA)を用いて、複合水酸化物粒子の平均粒径を測定するとともに、d10およびd90を測定し、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕を算出した。この結果、平均粒径は、5.1μmであり、〔(d90−d10)/平均粒径〕は0.42であることが確認された。
【0200】
c)正極活物質の作製
上述のようにして得られた複合水酸化物粒子を、空気(酸素濃度:21容量%)気流中、120で12時間熱処理した後(熱処理工程)、Li/Meが1.14となるように、シェーカーミキサ装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて炭酸リチウムと十分に混合し、リチウム混合物を得た(混合工程)。
【0201】
このリチウム混合物を、空気(酸素濃度:21容量%)気流中、昇温速度を2.5℃/分として950℃まで昇温し、この温度で4時間保持することにより焼成し、冷却速度を約4℃/分として室温まで冷却した(焼成工程)。このようにして得られた正極活物質は、凝集または軽度の焼結が生じていた。このため、この正極活物質を解砕し、平均粒径および粒度分布を調整した(解砕工程)。
【0202】
d)正極活物質の評価
[組成]
ICP発光分光分析装置を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:Li1.14Ni0.331Mn0.331Co0.331Zr0.0020.0052で表されるものであることが確認された。
【0203】
[粒子構造]
正極活物質の一部を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリシャ加工によって断面観察可能な状態とした上で、SEMにより観察した(図2参照)。この結果、この正極活物質は、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、この二次粒子は、外殻部と、外殻部の内側に分散して存在し、外殻部と一次粒子の凝集部および一次粒子の凝集部同士が、連結部により構造的に接続され、外殻部と電気的に導通する複数の一次粒子の凝集部、および一次粒子が存在しない空間部とを備えていることが確認された。また、外殻部粒径比は16%であり、空間部比は35%であることが確認された。
【0204】
[平均粒径および粒度分布]
レーザ光回折散乱式粒度分析計(日機装株式会社製、マイクロトラックHRA)を用いて、正極活物質の平均粒径を測定するとともに、d10およびd90を測定し、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕を算出した。この結果、平均粒径は、4.6μmであり、〔(d90−d10)/平均粒径〕は0.41であることが確認された。
【0205】
[比表面積およびタップ密度]
流動方式ガス吸着法比表面積測定装置(ユアサアイオニクス株式会社製、マルチソーブ)により比表面積を、タッピングマシン(株式会社蔵持科学器械製作所、KRS−406)によりタップ密度を、それぞれ測定した。この結果、比表面積は1.92m2/gであり、タップ密度は1.42g/cm3であることが確認された。これらの結果より、単位体積当たりの比表面積は2.73m2/cm3であった。
【0206】
e)二次電池の作製
上述のようにして得られた正極活物質:52.5mgと、アセチレンブラック:15mgと、PTEE:7.5mgを混合し、100MPaの圧力で、直径11mm、厚さ100μmにプレス成形した後、真空乾燥機中、120℃で12時間乾燥することにより、正極(1)を作製した。
【0207】
次に、この正極(1)を用いて2032型コイン電池(B)を、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。この2032型コイン電池の負極(2)には、直径17mm、厚さ1mmのリチウム金属を用い、電解液には、1MのLiClO4を支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。また、セパレータ(3)には、膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。なお、2032型コイン電池(B)は、ガスケット(4)を有し、正極缶(5)と負極缶(6)とでコイン状の電池に組み立てられたものである。
【0208】
f)電池評価
[初期放電容量]
2032型コイン電池を作製してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cm2として、カットオフ電圧が4.3Vとなるまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧が3.0Vになるまで放電したときの放電容量を測定する充放電試験を行ない、初期放電容量を求めた。この結果、初期放電容量は、159.6mAh/gであることが確認された。なお、初期放電容量の測定には、マルチチャンネル電圧/電流発生器(株式会社アドバンテスト製、R6741A)を用いた。
【0209】
[正極抵抗]
充電電位4.1Vで充電した2032型コイン電池を用いて、交流インピーダンス法により抵抗値を測定した。測定には、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製)を使用し、図5に示すナイキストプロットを得た。プロットは、溶液抵抗、負極抵抗と容量、および、正極抵抗と容量を示す特性曲線の和として表れているため、等価回路を用いてフィッティング計算し、正極抵抗の値を算出した。この結果、正極抵抗は、0.932Ωであることが確認された。
【0210】
[サイクル特性]
上述した充放電試験を繰り返し、初期放電容量に対する、500回目の放電容量を測定することで、500サイクル容量維持率を算出した。この結果、500サイクル容量維持率は、82.0%であることが確認された。
【0211】
(実施例2)
粒子成長工程において、切り替え操作1を、粒子成長工程の開始時から60分(粒子成長工程時間の全体に対して25%)経過後に行い、切り替え操作2を、切り替え操作1から5分(粒子成長工程時間の全体に対して2.1%)経過後に行い、その後、175分間(粒子成長工程時間の全体に対して72.9%)晶析反応を継続したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子、正極活物質および二次電池を得て、その評価を行った。この結果を表2〜表4に示す。
【0212】
(実施例3)
粒子成長工程において、切り替え操作1を、粒子成長工程の開始時から60分(粒子成長工程時間の全体に対して25%)経過後に行い、切り替え操作2を、切り替え操作1から15分(粒子成長工程時間の全体に対して6.3%)経過後に行い、その後、165分間(粒子成長工程時間の全体に対して68.8%)晶析反応を継続したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子、正極活物質および二次電池を得て、その評価を行った。この結果を表2〜表4に示す。
【0213】
(実施例4)
はじめに、60L反応槽内に、水を14L入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定した。この際、反応槽内に窒素ガスを5分間流通させ、反応雰囲気を、酸素濃度が13容量%の酸化性雰囲気とした。続いて、反応槽内に、25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量供給し、pH値が、液温25℃基準で12.8、アンモニウムイオン濃度が10g/Lとなるように調整することで反応前水溶液を形成した。
【0214】
同時に、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、硫酸ジルコニウムを、各金属元素のモル比がNi:Mn:Co:Zr=33.1:33.1:33.1:0.2となるように水に溶解し、2mol/Lの原料水溶液を調製した。
【0215】
次に、反応前水溶液中に実施例1と同様に散気管を用いて窒素ガスを導入し、反応雰囲気を2容量%以下の非酸化性雰囲気に調整しつつ、原料水溶液を、反応前水溶液に100ml/分で供給することで、核生成工程用水溶液を形成し、1分間の核生成を行った。この際、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液と25質量%のアンモニア水を適時供給し、核生成用水溶液のpH値およびアンモニウムイオン濃度を上述した範囲に維持した。また、核生成工程終了時において、反応雰囲気が、酸素濃度が2容量%以下である非酸化性雰囲気に調整されていることを確認した。
【0216】
その後、実施例1と同様の条件で粒子成長工程を行い、複合水酸化物粒子を得て、その評価を行った。また、この複合水酸化物粒子を前駆体として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質および二次電池を得て、その評価を行った。この結果を表2〜表4に示す。
【0217】
(実施例5)
粒子成長工程において、切り替え操作1を、粒子成長工程の開始時から48分(粒子成長工程時間の全体に対して20%)経過後に行い、切り替え操作2を、切り替え操作1から5分(粒子成長工程時間の全体に対して2.1%)に行い、その後、187分間(粒子成長工程時間の全体に対して77.9%)晶析反応を継経過後続したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子、正極活物質および二次電池を得て、その評価を行った。この結果を表2〜表4に示す。
【0218】
(実施例6)
粒子成長工程において、切り替え操作1を、粒子成長工程の開始時から48分(粒子成長工程時間の全体に対して20%)経過後に行い、切り替え操作2を、切り替え操作1から10分(粒子成長工程時間の全体に対して4.2%)経過後に行い、その後、182分間(粒子成長工程時間の全体に対して75.8%)晶析反応を継続したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子、正極活物質および二次電池を得て、その評価を行った。この結果を表2〜表4に示す。
【0219】
(実施例7)
粒子成長工程において、切り替え操作1を、粒子成長工程の開始時から1.2分(粒子成長工程時間の全体に対して0.5%)経過後に行い、切り替え操作2を、切り替え操作1から10分(粒子成長工程時間の全体に対して4.2%)に行い、その後、228分間(粒子成長工程時間の全体に対して95.3%)晶析反応を継経過後続したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子、正極活物質および二次電池を得て、その評価を行った。この結果を表2〜表4に示す。
【0220】
(実施例8)
粒子成長工程において、切り替え操作1を、粒子成長工程の開始時から72分(粒子成長工程時間の全体に対して30%)経過後に行い、切り替え操作2を、切り替え操作1から10分(粒子成長工程時間の全体に対して4.2%)に行い、その後、158分間(粒子成長工程時間の全体に対して65.8%)晶析反応を継経過後続したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子、正極活物質および二次電池を得て、その評価を行った。この結果を表2〜表4に示す。
【0221】
(実施例9)
粒子成長工程において、切り替え操作1を、粒子成長工程の開始時から60分(粒子成長工程時間の全体に対して25%)経過後に行い、切り替え操作2を、切り替え操作1から3分(粒子成長工程時間の全体に対して1.25%)に行い、その後、177分間(粒子成長工程時間の全体に対して73.8%)晶析反応を継経過後続したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子、正極活物質および二次電池を得て、その評価を行った。この結果を表2〜表4に示す。
【0222】
(実施例10)
粒子成長工程において、切り替え操作1を、粒子成長工程の開始時から60分(粒子成長工程時間の全体に対して25%)経過後に行い、切り替え操作2を、切り替え操作1から50分(粒子成長工程時間の全体に対して20.8%)に行い、その後、130分間(粒子成長工程時間の全体に対して54.2%)晶析反応を継経過後続したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子、正極活物質および二次電池を得て、その評価を行った。この結果を表2〜表4に示す。
【0223】
(実施例11)
粒子成長工程において、所定のタイミングで、切り替え操作1および2を2回ずつ行ったこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子を得た。具体的には、切り替え操作1を、粒子成長工程の開始時から30分経過後(粒子成長工程時間の全体に対して12.5%)に行い、酸化性雰囲気での晶析反応を15分間(粒子成長工程時間の全体に対して6.3%)継続した後、切り替え操作2を行い、非酸化性雰囲気での晶析反応を40分間(粒子成長工程時間の全体に対して16.7%)継続した。続いて、再度、切り替え操作1を行い、酸化性雰囲気での晶析反応を15分間継続した後、切り替え操作2を行い、非酸化性雰囲気での晶析反応を140分間継続した。このようにして得られた複合水酸化物粒子に対して、実施例1と同様にして評価を行った。この結果を表2に示す。また、この複合水酸化物粒子を前駆体として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質および二次電池を得て、その評価を行った。この結果を表2〜表4および図3に示す。
【0224】
(比較例1)
粒子成長工程において、反応雰囲気の切り替え操作1および2を行う際に、原料水溶液の供給を一旦停止したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子を得て、その評価を行った。この結果を表2および図4に示す。また、この複合水酸化物粒子を前駆体としたこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質および二次電池を得て、その評価を行った。この結果を表3、表4および図5に示す。
【0225】
(比較例2)
はじめに、60L反応槽内に、水を14L入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定した。この際、反応槽内に窒素ガスを5分間流通させ、反応雰囲気を、酸素濃度が13容量%の酸化性雰囲気とした。続いて、反応槽内に、25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量供給し、pH値が、液温25℃基準で12.8、アンモニウムイオン濃度が10g/Lとなるように調整することで反応前水溶液を形成した。
【0226】
同時に、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、硫酸ジルコニウムを、各金属元素のモル比がNi:Mn:Co:Zr=33.1:33.1:33.1:0.2となるように水に溶解し、2mol/Lの原料水溶液を調製した。
【0227】
次に、酸化性雰囲気の状態を維持し、原料水溶液を、反応前水溶液に100ml/分で供給することで、核生成工程用水溶液を形成し、1分間の核生成を行った。この際、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液と25質量%のアンモニア水を適時供給し、核生成用水溶液のpH値およびアンモニウムイオン濃度を上述した範囲に維持した。
【0228】
その後、粒子成長工程において、粒子成長工程の開始時から60分(粒子成長工程時間の全体に対して25%)経過後に、原料水溶液の供給を一旦停止して反応雰囲気を酸素濃度が2容量%以下の非酸化性雰囲気に調整した。雰囲気の調整後、原料水溶液の供給を再開し、180分間(粒子成長工程時間の全体に対して75%)晶析反応を継続した。雰囲気の調整以外は実施例1と同様の条件で複合水酸化物粒子を得て、その評価を行った。この結果を表2および図6に示す。得られた複合水酸化物粒子は、微細一次粒子からなる中心部と、その外側に板状一次粒子からなる高密度層を有する構造となっていた。また、この複合水酸化物粒子を前駆体として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質および二次電池を得て、その評価を行った。この結果を3、表4および図7に示す。
【0229】
(比較例3)
水酸化ニッケル、水酸化コバルト、四三酸化マンガン、硫酸ジルコニウム、酸化タングステン、炭酸リチウムを、各金属元素のモル比がNi:Mn:Co:Zr:W=33.1:33.1:33.1:0.2:0.005、かつ、Li/Meが1.14となるように混合した後、これに純水を加えてスラリー化した。続いて、ボールミルを用いて、スラリー中の固形分の平均粒径が0.2μmとなるように湿式粉砕した。このスラリーをスプレードライヤにより噴霧乾燥し、複合水酸化物粒子を得て、実施例1と同様にして、その評価を行った。この結果を表2に示す。また、この複合水酸化物粒子を前駆体としたこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質および二次電池を得て、その評価を行った。この結果を表3および表4に示す。
【0230】
なお、比較例3で得られた正極活物質は、複数の一次粒子が凝集して形成された凝集構造を有する二次粒子であり、外殻部が確認されなかった。また、一次粒子の凝集部同士が単に接して二次粒子を形成しており、実施例1のような連結部は確認されなかった。
【0231】
【表1】
【0232】
【表2】
【0233】
【表3】
【0234】
【表4】
【符号の説明】
【0235】
1 正極(評価用電極)
2 負極
3 セパレータ
4 ガスケット
5 正極缶
6 負極缶
B 2032型コイン電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9