(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<フィブロイン溶液、フィブロインナノ薄膜及びナノ薄膜シート>
本実施形態に係るフィブロイン溶液(フィブロインナノ薄膜作製用溶液、シルクフィブロイン溶液)は、フィブロイン(シルクフィブロイン)、表面調整剤及び水を含有する。本実施形態に係るフィブロインナノ薄膜(シルクフィブロインナノ薄膜)は、本実施形態に係るフィブロイン溶液を用いて形成することができる。
【0018】
本実施形態で用いられるフィブロインは、限定されるものではなく、例えば、家蚕、野蚕、天蚕等の天然蚕、トランスジェニック蚕から産生されるフィブロインが挙げられる。フィブロイン(シルクフィブロイン)は、原料入手が容易であることから安定に供給されることが期待でき、さらに、価格も安定しているため、工業的に利用することが容易である。本実施形態に係るフィブロイン溶液は、フィブロインを水に溶解して得られる水溶液(以下、「フィブロイン溶液用水溶液」という)に表面調整剤を添加して得ることができる。フィブロイン溶液用水溶液を得る方法としては、公知のいかなる手法を用いてもよいが、例えば、高濃度の臭化リチウム水溶液にフィブロインを溶解後、透析による脱塩、及び、風乾による濃縮を経る手法が簡便である。
【0019】
本実施形態に係るフィブロイン溶液中のフィブロインの含有量は、容易にナノオーダーの薄膜を作製することができる観点から、フィブロイン溶液の全質量を基準として、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましい。フィブロインの含有量は、塗工用の溶液として用いることが容易である観点から、フィブロイン溶液の全質量を基準として、100質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。これらの観点から、フィブロインの含有量は、フィブロイン溶液の全質量を基準として、0.1〜100質量%であることが好ましく、0.5〜50質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることが更に好ましい。
【0020】
本実施形態で用いられる表面調整剤は、例えば、塗料等の添加剤として用いられる成分であって、塗料等の組成物の表面張力を変化させることにより、消泡剤又はレベリング剤としての機能を発現し得る成分である。表面調整剤としては、シリコーン系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、ビニル系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アセチレングリコール系表面調整剤、ベンゾイン等が挙げられる。
【0021】
シリコーン系表面調整剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン等のシリコーン系重合体が挙げられる。アクリル系表面調整剤としては、例えば、ポリエーテル変性アクリルポリマー、ポリエステル変性アクリルポリマー、パーフルオロアルキル変性アクリルポリマー等のアクリル系重合体が挙げられる。ビニル系表面調整剤としては、例えば、ビニルエステルポリマー等のビニル系重合体が挙げられる。フッ素系表面調整剤としては、例えば、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸等のフッ素系重合体が挙げられる。アセチレングリコール系表面調整剤としては、例えば、アセチレンモノオール、アセチレンジオール等のアセチレングリコール系重合体が挙げられる。表面調整剤は、1種単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
シリコーン系表面調整剤の市販品としては、シルフェイスSAGシリーズ、シルフェイスSJMシリーズ(以上、日信化学工業株式会社製、商品名)、BYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−344、BYK−370、BYK−375、BYK−377、BYK−UV3500、BYK−UV3510、BYK−UV3570(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名)、1711、1751N、1761、LS−001、LS−050(以上、楠本化成株式会社製、DISPARLONシリーズ)、グラノール100、グラノール115、グラノール200、グラノール400、グラノール410、グラノール440、グラノール435、グラノール450、グラノール482、グラノールB−1484、ポリフローATF−2、ポリフローKLシリーズ(以上、共栄社化学株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0023】
アクリル系表面調整剤の市販品としては、BYK−350、BYK−352、BYK−354、BYK−355、BYK−358N、BYK−361N、BYK−392(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名)、OX−880EF、OX−881、OX−883、OX−883HF、OX−70、OX−77EF、OX−60、OX−710、OX−720、OX−720EF、OX−750HF、LAP−10、LAP−20、LAP−30、1970、230、LF−1980、LF−1982、LF−1983、LF−1984、LF−1985、LHP−95、LHP−96(以上、楠本化成株式会社製、DISPARLONシリーズ)、ポリフローNo.3、ポリフローNo.7、ポリフローNo.50E,ポリフローNo.50EHF、ポリフローNo.54N、ポリフローNo.55、ポリフローNo.64、ポリフローNo.75、ポリフローNo.77、ポリフローNo.85、ポリフローNo.85HF、ポリフローNo.S、ポリフローNo.90、ポリフローNo.90D−50、ポリフローNo.95、ポリフローNo.300、ポリフローNo.460、ポリフローWS、ポリフローWS−30、ポリフローWS−314(以上、共栄社化学株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0024】
ビニル系表面調整剤の市販品としては、LHP−90、LHP−91、(以上、楠本化成株式会社製、DISPARLONシリーズ)等が挙げられる。
【0025】
フッ素系表面調整剤の市販品としては、フローラード(スリーエム社製、商品名)、ユニダイン(ダイキン工業株式会社製、商品名)、サーフロン(旭硝子株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0026】
アセチレングリコール系表面調整剤の市販品としては、オルフィンEXPシリーズ(日信化学工業株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0027】
表面調整剤としては、保存安定性に更に優れる観点から、シリコーン系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、ビニル系表面調整剤、フッ素系表面調整剤及びアセチレングリコール系表面調整剤からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。ところで、フィブロインナノ薄膜に対しては、用途によっては、水に対して不溶性であることが求められる。表面調整剤としては、不溶化したフィブロインナノ薄膜が得られやすい観点から、シリコーン系表面調整剤が好ましい。
【0028】
本実施形態に係るフィブロイン溶液の溶存酸素量は、優れた塗工性を得る観点から、5mg/L以下である。前記溶存酸素量は、更に優れた塗工性を得る観点から、4.75mg/L以下であることが好ましく、4.5mg/L以下であることがより好ましい。前記溶存酸素量は、例えば25℃における溶存酸素量である。溶存酸素量は、例えば、飯島電子工業株式会社製のDOメーターB−506により測定することができる。
【0029】
フィブロイン溶液に含まれる表面調整剤の含有量は、保存安定性に更に優れる観点から、フィブロイン溶液の全質量を基準として、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましい。表面調整剤の含有量は、保存安定性に更に優れる観点から、フィブロイン溶液の全質量を基準として、90質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
【0030】
フィブロイン溶液の溶媒としては、フィブロインを溶解できるものであれば、任意の溶媒を用いることができるが、水(純水等)を用いることができる。フィブロイン溶液は、無機塩を含有してもよい。無機塩としては、塩化カルシウム、臭化リチウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。無機塩は、1種単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
フィブロインナノ薄膜の膜厚は、特に限定されないが、乾燥時において下記の範囲であることが好ましい。フィブロインナノ薄膜の厚さは、自己密着性、吸水性、乾燥状態での柔軟性等の特性が更に優れる観点から、1nm以上であることが好ましく、40nm以上であることがより好ましい。フィブロインナノ薄膜の膜厚は、自己密着性、吸水性、乾燥状態での柔軟性等の特性が更に優れる観点から、300nm以下であることが好ましく、250nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることが更に好ましい。フィブロインナノ薄膜の膜厚は、自己密着性、吸水性、乾燥状態での柔軟性等の特性が更に優れる観点から、1〜300nmであることが好ましく、40〜300nmであることがより好ましく、40〜250nmであることが更に好ましく、40〜200nmであることが特に好ましい。
【0032】
本実施形態に係るフィブロイン溶液及びフィブロインナノ薄膜は、機能性物質(例えば、臓器、皮膚等の被転写体において機能性を発揮する物質)を含有することができる。機能性物質としては、化粧料、色素、金属イオン、薬剤等が挙げられる。機能性物質は、1種単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
本実施形態に係るフィブロインナノ薄膜は、皮膚貼付用フィブロインナノ薄膜、化粧用フィブロインナノ薄膜、又は、化粧用皮膚貼付用フィブロインナノ薄膜として好適に使用することができる。また、フィブロインナノ薄膜は、医療用フィブロインナノ薄膜、臓器貼付用フィブロインナノ薄膜等として好適に使用することができる。
【0034】
本実施形態に係るフィブロイン溶液及びフィブロインナノ薄膜は、保湿クリーム等の化粧料を含有することができる。これにより、化粧料をフィブロインナノ薄膜に保持させることが可能であり、皮膚等に貼付したとき(使用時)に、化粧料が徐々にフィブロインナノ薄膜から溶出し、皮膚等に徐々に吸収させることができる。
【0035】
化粧料としては、保湿クリーム、スキンクリーム、美白クリーム、乳液、化粧水、美容液、美容ジェル等のスキンケアに用いられる化粧料全般を用いることができる。化粧料は、化粧料成分を含有している。化粧料成分としては、化粧品学的に許容される、皮膚等に有効な成分であればよく、特に限定されない。化粧料成分としては、例えば、保湿剤、ホワイトニング成分、しみ取り成分、防皺成分、ビタミン類、抗炎症成分、血流促進成分、湿潤成分、油分、金属微粒子等の、化粧料に用いられる成分を用いることができる。化粧料及び化粧料成分は、1種単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
化粧料成分としては、例えば、アーモンド油、アクリル酸アルキルコポリマー、麻セルロース、アシタバエキス、アスコルビン酸、アスコルビン酸Na、キサンチン、アスタキサンチン、アスパラガスエキス、アスパラギン酸、アズレン、アセロラエキス、アデノシン三リン酸2Na、アボカド油、アマチャエキス、アミノ酪酸、アラニン、アラントイン、アルギニン、アルギン酸Na、アルジルリン、アルテアエキス、アルニカエキス、アルブミン、アロエベラエキス−2−キダチアロエエキス、安息香酸塩Na、イチョウエキス、イノシトール、ウコンエキス、ウワウルシエキス、エイジツエキス、塩化ナトリウム、オイスターエキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オタネニンジンエキス、オドリコソウエキス、オランダカラシエキス、オリーブ油、オリザノール、海塩、加水分解ケラチン、コラーゲン、加水分解コラーゲン、加水分解コンキリオン、加水分解シルク、加水分解卵殻膜、加水分解卵白、褐藻エキス、カフェイン、カミツレエキス、カラミン、カリンエキス、カロチン、カロットエキス、カワラヨモギエキス、甘草エキス、カンフル、キイチゴエキス、キウイエキス、キシリトール、キトサン、キュウリエキス、クオタニウム−73、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、グリコール酸、グリシン、グリセリン、グリチルリチン酸2K、グリチルレチン酸ステアリル、グルコース、グルタチオン、グルタミン酸、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、クロレラエキス、ケープアロエエキス、ゲンチアナエキス、紅茶エキス、コエンザイムQ10、コーヒーエキス、コーンスターチ、ココイル加水分解コラーゲンK、ココイル加水分解コラーゲンNa、ココベタイン、ゴボウエキス、ゴマ油、コムギデンプン、コムギ胚芽エキス、コメヌカエキス、コレステロール、コンフリーエキス、酢酸トコフェロール、酢酸レチノール、サザンカオイル、サフラワー油、サリチル酸、サリチル酸Na、酸化亜鉛、酸化チタン、サンザシエキス、シアノコバラミン、シイタケエキス、ジオウエキス、ジグリセリン、シコンエキス、シソエキス、ジヒドロコレステロール、ジフェニルジメチルメコン、シモツケソウエキス、酒石酸、ショウキョウエキス、ショウブ根エキス、シルク、シルクエキス、水添レシチン、スクワラン、ステアリルアルコール、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸スクロース、セイヨウキヅタエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、セタノール、セラミド3、セリン、セルロースガム、ソウハクヒエキス、ソルビトール、ダイズエキス、ダイズ発酵エキス、月見草油、ドクダミエキス、トコフェロール、トレハロース、ナイアシンアミド、ニコチン酸トコフェロール、乳酸、乳酸Na、尿素、バクガエキス、ハチミツ、パパイン、ハマメリスエキス、パルミチン酸レチノール、パンテノール、ヒアルロン酸Na、ビオチン、ヒキオコシエキス、ヒマシ油、ヒマワリ油、ピリドキシンHCl、ビワ葉エキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、ブドウ種子油、プラセンタエキス、プルラン、ベタイン、ヘチマエキス、ボタンエキス、ホップエキス、ホホバオイル、メドウフォーム油、メトキシケイヒサンオクチル、メリッサエキス、メリロートエキス、メントール、モモ葉エキス、ヤグルマギクエキス、ヤシ油、ユーカリエキス、ユーカリ油、ユキノシタエキス、ユズエキス、ユリエキス、ヨウ化ニンニクエキス、葉酸、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラズベリーケトン、ラクトフェリン、ラノリン、ラベンダーエキス、リシン、リシンHCl、リノール酸、硫酸Na、リンゴエキス、レイシエキス、レシチン、レゾルシン、レタスエキス、レモンエキス、レモン油、ロイシン、ローズ水、ローズヒップ油、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリー、ワレモコウエキス、AHA(α−ヒドロキシ酸)、BG(ブチレングリコール)、DNA(デオキシリボ核酸)、PCA(ピロリドンカルボン酸)−Na、PCA−Naアラントイン、PG(プロピレングリコール)、PPG−28ブテス−35(ポリオキシエチレン(35)ポリオキシプロピレン(28)ブチルエーテル)、RNA(リボ核酸)−NA、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、α−アルブチン、ムコ多糖、クレアチン、ジアセチルボルジン、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンC及びその誘導体、リン酸リボフラビンナトリウム、リボフラビン、ヒドロキノン、リポ核酸及びその塩、アミノ酸及びその誘導体、各種植物エキス、各種動物由来抽出物等が挙げられる。
【0037】
フィブロインナノ薄膜を皮膚等に対して用いる際、保湿クリーム等の化粧料を皮膚等に塗布し、その上にフィブロインナノ薄膜を転写することもできる。この場合、化粧料が保持されつつ、剥がれ落ちにくいという効果が得られる。また、フィブロインナノ薄膜を皮膚等に転写した後に、その上に化粧料を塗布することもできる。これらの場合、皺、たるみ、しみ、あざ、そばかす、毛穴、傷跡、にきび跡、熱傷跡、又は、皮膚疾患による変色等のある肌を目立たなくすることができる。
【0038】
本実施形態に係るフィブロインナノ薄膜は、化粧料を保持させてなる化粧用シート、保湿シート、化粧補助貼付シート及び化粧保護シートとしても好適に使用できる。
【0039】
本実施形態に係るフィブロイン溶液及びフィブロインナノ薄膜は、色素を含有することができる。これにより、色素をフィブロインナノ薄膜に保持させることが可能であり、皮膚等に貼付したとき(使用時)の貼付位置を目視等で簡単に確認できる。
【0040】
色素としては、アゾ染料(ナフトール染料等)、モーブ、パラレッド、フルオレセイン、フクシン、フェノールフタレイン、ニュートラルレッド、フェナジン誘導体色素、メチレンブルー、ジヒドロイントール、コンゴーレッド、エオシン、インダンスレン、アニリンブラック、アクリジン、アゾイック染料、ネオシアニン、クリプトシアニン、インドシアニングリーン、ヘモグロビン、ヘムエリトリン、フェオポルフィリン、フェオホルビド、チトクロム、バクテリオクロロフィル、クロロフィリド、クロロフィル、メラニン、カテキン、アントシアン、アントクロール、フラバノン、フラボン類、フラボノイド、ルテイン、リコピン、フコキサンチン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、キサントフィル、カロチン、カロチノイド、ゲニステイン、クロロクルオリン、クロリン、クロセチン、クルクミン、キサントンマチン、カルタミン、エリトロクルオリン、ウロビリン、インジゴ、アントラキノン、アントシアン、アリザリン、ビリルビン、ビリベルジン、フィトクロム、フィコエリスリン、フィコビリン、フィコシアニン、ミオグロビン、ポルフィン、ポルフィリン、ヘモシアニン、ヘモバナジン、ロドマチン、ロドキサンチン、ロドプシン、リトマス、レグヘモグロビン、ラミナラン、モリンジン、ホルビリン、マンゴスチン、ベルベリン、ベタシアニン、プルプリン、ブラジリン、ピンナグロビン、ヒペリシン、ビキシン、ツラシン、タンニン、ステルコピリン、シコニン、コンメリニン、ゴッシポール、コチニールなどが挙げられる。色素の中でも、水に対する溶解性に優れる観点から、イオン性の色素が好ましい。色素は、1種単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
本実施形態に係るフィブロイン溶液及びフィブロインナノ薄膜は、金属イオンを含有することができる。これにより、金属イオンをフィブロインナノ薄膜に保持させることが可能であり、皮膚等に貼付したとき(使用時)に、金属イオンが徐々にフィブロインナノ薄膜から溶出し、皮膚等に徐々に吸収させることができる。また、金属イオンを利用して、抗菌、殺菌、消臭、制汗といった効果を有するフィブロインナノ薄膜を得ることができる。
【0042】
金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン;マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属イオン;金、銀、銅、白金、パラジウム等の遷移金属イオン;アルミニウムイオン;鉛イオン;スズイオンなどが挙げられる。金属イオンの中でも、抗菌効果及び消臭効果を有する観点から、銀イオンが好ましい。金属イオンは、1種単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
本実施形態に係るフィブロイン溶液及びフィブロインナノ薄膜は、薬物を含有することができる。これにより、薬物をフィブロインナノ薄膜に保持させることが可能であり、皮膚等に貼付したとき(使用時)に、薬物が徐々にフィブロインナノ薄膜から溶出し、皮膚等に徐々に吸収させることができる。また、創傷治癒といった効果を有するフィブロインナノ薄膜を得ることができる。
【0044】
薬物としては、抗炎症剤、止血剤、血管拡張薬、血栓溶解剤、抗動脈硬化剤等が挙げられる。薬物は、1種単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
化粧料又は薬物が疎水性の場合、フィブロインナノ薄膜の疎水性領域に疎水性相互作用にて化粧料又は薬物を結合させる方法を用いてもよい。化粧料又は薬物が水素結合性の場合、フィブロインナノ薄膜の水素結合性領域に水素結合にて化粧料又は薬物を結合させる方法を用いてもよい。化粧料又は薬物が電荷を有する場合、フィブロインナノ薄膜の反対電荷領域に静電的相互作用にて化粧料又は薬物を結合させる方法を用いてもよい。
【0046】
架橋剤として、アルキルジイミデート類、アシルジアジド類、ジイソシアネート類、ビスマレイミド類、トリアジニル類、ジアゾ化合物、グルタルアルデヒド、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)アルキオネート、ブロモシアン等を用いて、上記の成分と、フィブロインナノ薄膜中の所定の官能基とを架橋させてもよい。架橋剤は、1種単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
図1は、ナノ薄膜シートの一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るナノ薄膜シート1は、支持基材(基材)2と、支持基材2上に積層されたフィブロインナノ薄膜3と、を備える。ナノ薄膜シート1は、例えば、ナノ薄膜転写シートである。ナノ薄膜シート1は、フィブロインナノ薄膜3上に積層されたカバーフィルムを更に備えていてもよい。支持基材2としては、ナノ薄膜シート1のフィブロインナノ薄膜3が被転写体に転写され得る基材が用いられる。例えば、支持基材2としては、フィブロインナノ薄膜3に対する接着力が被転写体よりも小さい支持基材が用いられる。
【0048】
支持基材としては、平滑な面を有するものであれば、特に限定されず、フィルム状(シート状)又はロール状であってもよい。支持基材は、溶媒を浸透又は透過させることが可能な浸透性基材であってもよい。浸透性基材は、例えば、溶媒を浸透又は透過させる孔を有している。浸透性基材は、ナノ薄膜シートから基材を剥離する際にフィブロインナノ薄膜が基材側に残存することを容易に抑制できる観点から、メッシュシート、不織布シート、又は、多孔質構造を有する多孔性シートであってもよい。メッシュシートとは、例えば、直径100μm以下の糸状の材料が格子状に編みこまれたシートである。浸透性基材を用いる場合、溶媒等に溶解する溶解性支持層を介して浸透性基材上にフィブロインナノ薄膜を形成した後、浸透性基材を浸透又は透過する溶媒によって溶解性支持層を溶解することにより、浸透性基材とフィブロインナノ薄膜とが積層された構造を得てもよい。
【0049】
メッシュシートとしては、ポリエステルメッシュシート、ナイロンメッシュシート、カーボンメッシュシート、フッ素樹脂メッシュシート、ポリプロピレンメッシュシート、シルクメッシュシート等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルメッシュシート、ナイロンメッシュシート、ポリプロピレンメッシュシートが好ましく、ポリエステルメッシュシートがより好ましい。ポリエステルメッシュシートとしては、ポリエチレンテレフタレートメッシュシートが好ましい。これらのメッシュシートは、不織布シートと複合させて用いられてもよい。
【0050】
支持基材としては、樹脂フィルム等の基材フィルムを用いることもできる。支持基材の構成材料としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれでもよく、例えば、ポリエチレン(高密度、中密度又は低密度)、ポロプロピレン(アイソタクチック型又はシンジオタクチック型)、ポリブテン、エチレン−プレピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチル−1−ペンテン)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体、アクリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオ共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、エチレン−テレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリエチレンナフタレート、プリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エボキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン、ナイロン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース系樹脂、又は、これらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイが挙げられる。これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて(例えば2層以上の積層体として)用いることができる。
【0051】
これらの樹脂フィルムの中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルムが好ましく、フィブロインナノ薄膜を含む積層膜における接着性に更に優れる観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。
【0052】
支持基材の表面に、コロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、オゾン処理、アルカリ、酸等による化学的エッチング処理などを施してもよい。
【0053】
支持基材上に、樹脂膜、無機膜、又は、有機材料と無機材料とを含む膜(有機−無機膜)が積層されていてもよい。これら樹脂膜、無機膜、又は、有機−無機膜からなる積層構造は、基材表面の一部を覆っていればよい。また、積層構造中、最表面層に位置しない膜は、極性基を有する必要はない。
【0054】
支持基材の膜厚は、1〜500μmであることが好ましく、3〜300μmであることがより好ましく、5〜200μmであることが更に好ましい。
【0055】
カバーフィルムの膜厚は、1〜500μmであることが好ましく、3〜300μmであることがより好ましく、5〜200μmであることが更に好ましい。
【0056】
<フィブロインナノ薄膜の製造方法、及び、ナノ薄膜シートの製造方法>
本実施形態に係るフィブロインナノ薄膜の製造方法は、フィブロインナノ薄膜形成工程として、本実施形態に係るフィブロイン溶液を用いてフィブロインナノ薄膜を得る工程を備える。本実施形態に係るフィブロインナノ薄膜は、例えば、支持基材上にフィブロイン溶液を塗布することにより得ることができる。支持基材上へのフィブロイン溶液の塗布の方法としては、キャスト法、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
本実施形態に係るナノ薄膜シート(例えばナノ薄膜転写シート)の製造方法は、例えば、フィブロイン溶液を用いて支持基材(基材)上にフィブロインナノ薄膜を形成する工程を備える。本実施形態に係るナノ薄膜シートは、例えば、支持基材上にフィブロイン溶液を塗布することによりフィブロインナノ薄膜を形成して得られてもよく、フィブロイン溶液を用いて形成されたフィブロインナノ薄膜を支持基材に貼り付けることにより得られてもよい。
【0058】
<フィブロインナノ薄膜の保存>
本実施形態に係るフィブロインナノ薄膜製品は、フィブロインナノ薄膜と、フィブロインナノ薄膜を梱包する梱包材と、を備えており、乾燥剤を更に備えていてもよい。本実施形態に係るフィブロインナノ薄膜製品のフィブロインナノ薄膜は、ナノ薄膜シートのフィブロインナノ薄膜であってもよい。フィブロインナノ薄膜は、水蒸気が少ない環境にて保管することが好ましいため、水蒸気バリア性を有する梱包材、及び、乾燥剤を用いて保管することが好ましい。水蒸気バリア性を有する梱包材といえども、全く水蒸気を透過しないわけではなく、若干の水分透過は避けられないため、乾燥剤を入れることで梱包材内部の湿度を一定に保つことが、より有効である。
【0059】
(梱包材)
水蒸気バリア性を有する梱包材の性能は、水蒸気透過率で表される。この値が小さいほど水蒸気バリア性が良くなり、フィブロインナノ薄膜の梱包に適する。一方で、水蒸気透過率の小さい梱包材は高価である。これらを勘案し、水蒸気バリア性を有する梱包材として、水蒸気透過率が1.5g/m
2・day(温度40℃、湿度90%RH)以下である梱包材料から構成される梱包材で梱包することができる。水蒸気透過率が1.5g/m
2・dayより大きいと、梱包材内への水分浸透が増加し、乾燥剤の負担が大きくなり、経済性が低下する。
【0060】
このような水蒸気透過率を満足する梱包材としては、アルミニウム蒸着フィルム(水蒸気透過率0.7〜1.0g/m
2・day(温度40℃、湿度90%RH)程度)、SiO蒸着フィルム(水蒸気透過率0.1〜0.7g/m
2・day(温度40℃、湿度90%RH)程度)、アルミナ蒸着フィルム(水蒸気透過率1.5g/m
2・day(温度40℃、湿度90%RH)程度)等が挙げられる。
【0061】
水蒸気バリア性を有する梱包材として、基材フィルム(例えばポリエチレンフィルム(水蒸気透過率10〜20g/m
2・day(温度40℃、湿度90%RH)))、バリア層及びヒートシール層を積層して構成したラミネートフィルムを用いることができる。上記バリア層の構成材料としては、アルミニウム、ニッケル、チタン、マグネシウム等を用いることができる。
【0062】
フィブロインナノ薄膜を、複数枚の梱包材から構成される複数層の梱包材で梱包し、最内層以外の少なくとも1層に、水蒸気バリア性を有する梱包材を使用することが好ましい。
【0063】
(乾燥剤)
本実施形態に係るフィブロインナノ薄膜製品では、水蒸気バリア性を有する梱包材より内側に乾燥剤を入れることが好ましい。また、梱包材内の湿度を70%RH以下の雰囲気に保持することが好ましい。
【0064】
乾燥剤(例えば、梱包材内部に入れる乾燥剤)としては、塩化カルシウム、生石灰、シリカゲル、アルミノシリケート等が挙げられるが、製品の品質を保証する観点から、潮解(吸湿による液化)を生じないシリカゲル又はアルミノシリケートが好ましい。
【0065】
乾燥剤の使用量は、組み合わせる梱包材の水素バリア性と、保管日数とから予測される水分浸透量を吸収できるように、乾燥剤の能力に応じて決定される。
【0066】
フィブロインナノ薄膜を梱包材内に梱包(袋詰め等)する作業は、低温低湿の雰囲気中で行い、梱包材内の初期雰囲気を低温低湿に調整しておくことが好ましい。雰囲気としては、具体的には、温度18〜22℃、湿度30〜50%RHが好ましい。乾燥剤を使用しない場合は、この作業は特に重要である。
【0067】
<転写方法>
本実施形態に係る転写方法は、フィブロインナノ薄膜の転写方法(貼付方法)であり、ナノ薄膜シートのフィブロインナノ薄膜を被転写体に転写する工程を備える。
【0068】
本実施形態に係る転写方法は、ナノ薄膜シートをフィブロインナノ薄膜側が被転写体と対向するように配置し、ナノ薄膜シートの基材側を押圧することにより、フィブロインナノ薄膜を被転写体に転写する工程を備えていてもよい。このような転写方法では、基材がフィブロインナノ薄膜を覆っている状態でナノ薄膜シートの基材側を押圧することによりフィブロインナノ薄膜を被転写体に転写するため、被転写体とナノ薄膜層との追従性及び接着性が向上する。したがって、このような転写方法では、例えば、基材を予め剥離した上でフィブロインナノ薄膜を被転写体に転写する方法、又は、押圧することなくフィブロインナノ薄膜を被転写体に転写する方法に比べて、フィブロインナノ薄膜を好適に被転写体へ転写できる。
【0069】
ナノ薄膜シートの基材側を押圧する際、基材全面に対して略均一に圧力を加えることが好ましい。押圧は、ローラー等の冶具を用いることで、より簡便かつ好適に行うことができる。
【0070】
ナノ薄膜シートの基材側を押圧する際の荷重は、ナノ薄膜シートから基材を剥離する際にフィブロインナノ薄膜が基材側に残存することを容易に抑制できる観点から、10g/cm
2以上であることが好ましく、30g/cm
2以上であることがより好ましく、50g/cm
2以上であることが更に好ましい。前記荷重は、皮膚等の被転写体が損傷することを容易に抑制できる観点から、1000g/cm
2以下であることが好ましく、900g/cm
2以下であることがより好ましく、800g/cm
2以下であることが更に好ましい。これらの観点から、前記荷重は、10〜1000g/cm
2であることが好ましく、30〜900g/cm
2であることがより好ましく、50〜800g/cm
2であることが更に好ましい。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0072】
(シルクフィブロイン溶液用水溶液の調製)
まず、高圧精練済み切繭(シルクフィブロイン、ながすな繭株式会社製)150gを9M臭化リチウム水溶液1000mLに添加し、室温(25℃)で6時間攪拌して溶解した。次いで、遠心分離(回転速度:12000rpm、5分間)して、デカンテーションで沈殿物を除去した後、透析チューブ(Spectra/Por(登録商標) 1 Dialysis Membrane、MWCO6000−8000、Spectrum Laboratories, Inc.製)に注入し、超純水製造装置(PRO−0500及びFPC−0500(型番)、オルガノ株式会社製)から採水した超純水5Lに対して12時間の透析を5回繰り返し、シルクフィブロイン溶液用水溶液を得た。
【0073】
得られたシルクフィブロイン溶液用水溶液2mLをアルミニウム製容器に分取し、秤量した。その後、庫内温度を予め−20℃程度に調整しておいたノンフロン冷蔵冷凍庫(「R−Y370(型番)」、株式会社日立製作所製)の冷凍室で12時間かけて凍結し、凍結乾燥機(「FDU−1200(型番)」、東京理化器械株式会社製)中で7時間凍結乾燥した。得られた乾燥物を凍結乾燥機から取り出して30秒以内に秤量し、質量減少からシルクフィブロイン溶液用水溶液中のシルクフィブロイン濃度を定量した。
【0074】
(シルクフィブロインナノ薄膜作製用溶液の調製)
下記の手順により、シルクフィブロイン溶液(フィブロインナノ薄膜作製用溶液。シルクフィブロイン濃度:1質量%)を調製した。なお、シルクフィブロイン濃度及び表面調整剤の含有量の基準は、シルクフィブロイン溶液の全質量基準である。
【0075】
[実施例1]
シルクフィブロイン溶液用水溶液にシリコーン系表面調整剤0.1質量%(シルフェイスSAG503A、日信化学工業株式会社製)及び超純水を加えた後、減圧超音波処理を施してシルクフィブロイン溶液を調製した。減圧超音波処理は、株式会社ソニックテクノロジー製、防爆型超音波脱泡装置(GSC1000DG−BS)を用い、10kPa、30minの条件で行った。ゲル化することなくシルクフィブロイン溶液が得られることが確認された。
【0076】
[比較例1]
シルクフィブロイン溶液用水溶液にシリコーン系表面調整剤0.1質量%(シルフェイスSAG503A、日信化学工業株式会社製)及び超純水を加えてシルクフィブロイン溶液を調製した。ゲル化することなくシルクフィブロイン溶液が得られることが確認された。
【0077】
[比較例2]
シルクフィブロイン溶液用水溶液に超純水を加えてシルクフィブロイン溶液を調製した。ゲル化することなくシルクフィブロイン溶液が得られることが確認された。
【0078】
[比較例3]
シルクフィブロイン溶液用水溶液に超純水を加えた後、実施例1と同様に減圧超音波処理を施したが、溶液がゲル化していることが確認された。
【0079】
(溶存酸素量の測定)
ゲル化した比較例3を除き、下記の手順によりシルクフィブロイン溶液の溶存酸素量を測定した。溶存酸素量の測定は、DOメーター(B−506、飯島電子工業株式会社製)を用い、室温下(25℃)で行った。
【0080】
(塗工性の評価)
支持基材であるPETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、東洋紡績株式会社製、商品名「A4100」、150mm×100mm×100μm厚)上に、アプリケータを用いて実施例1及び比較例1,2のシルクフィブロイン溶液を塗工した。その後、100℃1時間乾燥を行ってシルクフィブロインナノ薄膜を形成した。
【0081】
実施例1では、シルクフィブロインナノ薄膜にスジが観察されず、塗工性に優れていることが確認された。比較例1,2では、シルクフィブロインナノ薄膜にスジが観察され、塗工性に劣ることが確認された。
図2は、実施例1及び比較例1のシルクフィブロインナノ薄膜の膜厚を幅方向に測定した結果を示す。比較例1では、中央付近でスジが発生し、幅方向の膜厚の均一性が低いことが確認される。
【0082】
溶存酸素量の測定結果、ゲル化の有無、及び、塗工性の評価結果を表1に示す。
【0083】
【表1】