特許第6597087号(P6597087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6597087有機化合物、その製造方法、それを含有する有機半導体材料及びそれを含有する有機トランジスタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597087
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】有機化合物、その製造方法、それを含有する有機半導体材料及びそれを含有する有機トランジスタ
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/22 20060101AFI20191021BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20191021BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20191021BHJP
   H01L 51/40 20060101ALI20191021BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   C07D495/22CSP
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250H
   H01L29/28 310J
   H01L29/78 618B
【請求項の数】9
【全頁数】58
(21)【出願番号】特願2015-177537(P2015-177537)
(22)【出願日】2015年9月9日
(65)【公開番号】特開2017-52721(P2017-52721A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】狩野 佑介
(72)【発明者】
【氏名】餌取 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】水口 良
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−206952(JP,A)
【文献】 特開2012−206953(JP,A)
【文献】 特表2011−526588(JP,A)
【文献】 特開2012−167031(JP,A)
【文献】 特開2012−216669(JP,A)
【文献】 特表2007−528400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(A)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体の製造方法であって、以下の(I)〜(IV)の工程を有するジチエノベンゾジチオフェン誘導体の製造方法。
(I)一般式(B)で表される化合物を、Xを活性部位とした有機金属化合物(B)’に変換する第一工程、
(II)前記有機金属化合物(B)’と一般式(C)で表される化合物をクロスカップリングさせ、一般式(D)で表される化合物を製造する第二工程、
(III)一般式(E)で表される化合物を、Xを活性部位とした有機金属化合物(E)’に変換する第三工程、
(IV)前記有機金属化合物(E)’と一般式(D)で表される化合物をクロスカップリングさせ、一般式(F)で表される化合物を製造する第四工程。
【化1】
(A)
(B)
(C)
(D)
(E)
(F)

(各式中、X〜Xはハロゲン原子を表し、Rはヘキシル基またはオクチル基を表し、R、R、R及びR10水素原子し、水素原子またはメチル基を表す。)
【請求項2】
一般式(G)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体の製造方法であって、以下の(I)〜(III)の工程を有するジチエノベンゾジチオフェン誘導体の製造方法。
(I)一般式(H)で表される化合物を、N−ハロスクシンイミド存在下、モノハロゲン化し、一般式(I)で表される化合物を製造する第一工程、
(II)一般式(I)で表される化合物と一般式(J)又は一般式(K)で表される化合物を遷移金属触媒存在下、クロスカップリング反応させて、一般式(L)で表される化合物を製造する第二工程、
(III)一般式(L)で表される化合物を、不均一系遷移金属触媒又は均一系遷移金属触媒存在下、接触水素還元させて、一般式(G)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体を製造する第三工程。
【化2】
(G)
(H)
(I)
(J)
(K)
(L)
(各式中、R103、R105、R108及びR110水素原子を表し、X11はハロゲン原子を表し、Y11−はCH−(CHn−2−C≡C−、又はCH−(CHn−2−CH=CH−を表し、nは5または7を表す。)
【請求項3】
一般式(M)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体の製造方法であって、一般式(G)’で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体に、有機リチウム存在下、一般式(m)で表されるハロゲン化アルキルを反応させ、一般式(M)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体を製造する工程を有する、一般式(M)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体の製造方法。
【化3】
(G)’

107−X12 (m)

(M)
(各式中、R107ヘキシル基またはオクチル基を表し、R102は水素原子またはメチル基を表し、R103、R105、R108及びR110は水素原子を表し、X12はハロゲン原子を表す。)
【請求項4】
一般式(N)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体。
【化4】
(N)
(式中、R22ヘキシル基またはオクチル基を表し、R27は、水素原子又はメチル基を表す。)
【請求項5】
請求項4に記載のジチエノベンゾジチオフェン誘導体を含有する有機半導体材料。
【請求項6】
請求項5に記載の有機半導体材料を含有する有機半導体インク。
【請求項7】
請求項5に記載の有機半導体材料を含有する有機半導体膜。
【請求項8】
請求項5に記載の有機半導体材料を含有する有機半導体素子。
【請求項9】
請求項5に記載の有機半導体材料を含有する有機トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジチエノべンゾジチオフェン誘導体、その製造方法、それを含有する有機半導体材料、それを含有する有機半導体インク及びそれを含有する有機トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
アモルファスシリコンや多結晶シリコンを材料として用いてなる薄膜トランジスタ(TFT)が、液晶表示装置や有機EL表示装置等のスイッチング素子として広く用いられている。しかし、これらシリコン材料を用いたトランジスタは、その製造において高価なCVD装置等を使用するため、大型化にあたっては製造コストの増大を招くことになる。又、シリコン材料は高温下で成膜されるため、プラスチック基板を用いることになる次世代型フレキシブルエレクトロニクス装置には耐熱性の問題から展開出来ない。これを解決するために、シリコン半導体材料に代えて、有機半導体材料をチャネル(半導体層)に用いた有機トランジスタが提案されている。
【0003】
有機半導体材料はインク化することで、低温で印刷成膜出来るため、大規模で高価な製造設備を必要とせず、又、耐熱性の乏しいプラスチック基板にも適用出来、故、フレキシブルエレクトロニクスへの応用が期待されている。
更に、これら有機半導体材料には、当初「シリコン半導体材料に比べて、半導体特性(移動度)が低く、そのため、トランジスタの応答速度が遅くなり、実用化は難しい」といった課題があったが、近年、アモルファスシリコンの移動度を凌駕する材料が開発され始めている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ジナフト[2,3−b:2’,3’−f]チエノ[3,2−b]チオフェン骨格を有する化合物が、真空蒸着膜で4.0cm/Vsの移動度を示すことが、特許文献2〜3には、ジナフト[2,3‐ b:2’,3’−d]チオフェン誘導体が、エッジキャスト法で成膜された単結晶薄膜で11cm/Vsという高い移動度を示すことが、非特許文献1には、2,7−ジオクチル[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンが、ダブルインクジェット法で作製された単結晶膜で、特性のばらつきこそ大きいものの最大で30cm/Vsという高い移動度を示すことが、特許文献4には、フェニル置換のナフトジカルコゲン化合物が0.7cm/Vsの移動度を示すことが、特許文献5〜6には、高次液晶相を発現する化合物が、高次液晶相経由の薄膜で5.7cm/Vsの移動度を示すことが、それぞれ開示されている。このように、アモルファスシリコンの移動度(0.5cm/Vs)を超えた半導体特性を示す有機半導体材料の報告が相次いでいる。
【0005】
このように有機半導体の移動度は高まっているが、未だ実用化には至っていない。これは、開示されているこれらの移動度が、エッジキャスト法やダブルインクジェット法による単結晶膜、真空蒸着法による薄膜、スピンコート法による薄膜等、均質なバルクを与える成膜法を用いて作製された膜を半導体層に用いて評価されたものであり、インクジェット法やノズル印刷法等の実用的な印刷法に通ずる、インク液滴の滴下(ドロップキャスト)とその乾燥で作製された多結晶膜よりなる半導体層では、特性の低下が生ずるためである。
【0006】
更に、後記するが如く、実用化にあたっては、ボトムゲートボトムコンタクト型(BC型)の素子構造にて、高特性を呈することが望まれるが(理由:BC型は、トランジスタを構成する材料(絶縁材料、導電材料、及び半導体材料)の中で、耐熱性が最も低い有機半導体を、一番最後の工程で成膜するため、有機半導体が熱の影響を受け難い)、前記移動度の多くはボトムゲートトップコンタクト型(TC型)の素子構造にて導出されたものである。
【0007】
なお、本発明のジチエノべンゾジチオフェン誘導体とは、置換基の位置構造が異なるジチエノべンゾジチオフェン誘導体が特許文献7〜12の実施例にて開示されているが、これらについても、前記課題が解決されたとの記載は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2012/115236号
【特許文献2】国際公開第2013/125599号
【特許文献3】特開2007−197400号
【特許文献4】国際公開第2010/058692号
【特許文献5】国際公開第2012/121393号
【特許文献6】国際公開第2014/038708号
【特許文献7】特開2013−035814
【特許文献8】特開2009−054810
【特許文献9】特開2013−189434
【特許文献10】特表2014−515727
【特許文献11】特表2011−526588
【特許文献12】特開2012−206953
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Nature,2011年,475巻,364頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の有機半導体材料は、溶媒への溶解性が乏しいため、インクを調整することが困難であり、従って、印刷に通ずる湿式成膜に課題があった。又、溶媒溶解性がある材料についても、湿式成膜時に分子配列の乱れが生じたり、部分的に結晶化する等、均質膜の作製に課題があり、高い移動度を得るためには、実用化には難のある成膜方法や煩雑なポスト成膜プロセス(アニール処理等)が必要であった。
【0011】
そこで、本発明の課題は、溶媒への溶解性に優れ、複雑なプロセスを経由せずとも容易に(即ち、インク液滴を滴下し、そのものを乾燥するだけで)、高い移動度を呈する膜を与える化合物、及びそれを用いた有機半導体材料を提供すること、更には、実用的な構成の有機トランジスタを簡便に作製出来る有機半導体インクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は前記目的を達成すべく、鋭意検討を重ね、特定の置換基位置構造を有するジチエノべンゾジチオフェン誘導体が、溶媒溶解性に優れる故に有機半導体インクとしての適性を有し、更には、煩雑な処理を必要とせず、簡便且つ実用的な湿式成膜法(即ち、“インク液滴を滴下し、そのものを乾燥する”だけの方法)であっても、高い移動度の有機半導体膜を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は以下の項目から構成される。
1.一般式(A)で表されるジチエノべンゾジチオフェン誘導体の製造方法であって、以下の(I)〜(IV)の工程を有するジチエノべンゾジチオフェン誘導体の製造方法、
(I)一般式(B)で表される化合物を、Xを活性部位とした有機金属化合物(B)’に変換する第一工程、
(II)前記有機金属化合物(B)’と一般式(C)で表される化合物をクロスカップリングさせ、一般式(D)で表される化合物を製造する第二工程、
(III)一般式(E)で表される化合物を、Xを活性部位とした有機金属化合物(E)’に変換する第三工程、
(IV)前記有機金属化合物(E)’と一般式(D)で表される化合物をクロスカップリングさせ、一般式(F)で表される化合物を製造する第四工程。
【0014】
【化1】
【0015】
(各式中、X〜Xはハロゲン原子を表し、R、R、R、R、R及びR10は、水素原子、又は任意の置換基を表す。)
2.前記R、R、R、R、R及びR10が、それぞれ独立に、水素原子、非環式若しくは環式の炭素原子数1〜20のアルキル基(該アルキル基中の−CH−が、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子が各々直接結合しないように、−O−、−R’C=CR’−、−CO−、−OCO−、−COO−、−S−、−SO−、−SO−、−NH−、−NR’−又は−C≡C−で置換されてよく、該アルキル基中の水素原子は、芳香族基、ハロゲノ基、又はニトリル基によって置換されていてもよい(但し、R’は炭素原子数1〜20の非環式又は環式アルキル基を表す。))、ハロゲノ基、芳香族基(該芳香族基は、非環式若しくは環式の炭素原子数1〜20のアルキル基、ハロゲノ基、芳香族基、又はニトリル基で置換されていてもよく、該アルキル基中の−CH−が、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子が各々直接結合しないように、−O−、−CR’’=CR’’−、−CO−、−OCO−、−COO−、−S−、−SO−、−SO−、−NH−、−NR’’−又は−C≡C−で置換されてよく、該アルキル基中の水素原子は、芳香族基、ハロゲノ基、又はニトリル基によって置換されていてもよい(但し、R’’は炭素原子数1〜20の非環式又は環式アルキル基を表す。))、ニトロ基、又はニトリル基である、1.に記載の製造方法、
3.前記R、R、R、R、R、R10について、RとRは同一又は異なり、RとRは同一又は異なり、RとR10は同一であり、RとR、RとR、の2組の組み合わせのうち、少なくとも一つの組み合わせが互いに異なる、1.又は2.に記載の製造方法、
4.一般式(G)で表されるジチエノべンゾジチオフェン誘導体の製造方法であって、以下の(I)〜(III)の工程を有するジチエノべンゾジチオフェン誘導体の製造方法、
(I)一般式(H)で表される化合物を、N−ハロスクシンイミド存在下、モノハロゲン化し、一般式(I)で表される化合物を製造する第一工程、
(II)一般式(I)で表される化合物と一般式(J)又は一般式(K)で表される化合物を遷移金属触媒存在下、クロスカップリング反応させて、一般式(L)で表される化合物を製造する第二工程、
(III)一般式(L)で表される化合物を、不均一系遷移金属触媒又は均一系遷移金属触媒存在下、接触水素還元させて、一般式(G)で表されるジチエノべンゾジチオフェン誘導体を製造する第三工程、
【0016】
【化2】
【0017】
(各式中、R103、R105、R108及びR110は水素原子又は任意の置換基を表し、X11はハロゲン原子を表し、Y11−はCH−(CHn−2−C≡C−、又はCH−(CHn−2−CH=CH−を表し、nは2〜19の整数を表す。)
5.一般式(M)で表されるジチエノべンゾジチオフェン誘導体の製造方法であって、一般式(G)’で表されるジチエノべンゾジチオフェン誘導体に、有機リチウム存在下、一般式(m)で表されるハロゲン化アルキルを反応させ、一般式(M)で表されるジチエノべンゾジチオフェン誘導体を製造する工程を有する、一般式(M)で表されるジチエノべンゾジチオフェン誘導体の製造方法、
【0018】
【化3】
【0019】
(各式中、R102は炭素原子数1〜20のアルキル基を表し、R107は炭素原子数1〜20のアルキル基を表し、R103、R105、R108及びR110は水素原子又は任意の置換基を表し、X12はハロゲン原子を表す。但し、R102及びR107は異なる。)
6.一般式(N)で表されるジチエノべンゾジチオフェン誘導体、
【0020】
【化4】
【0021】
(式中、R22は炭素原子数2〜20の直鎖アルキル基を表し、R27は、水素原子又はメチル基を表す。)
7.6.に記載のジチエノべンゾジチオフェン誘導体を含有する有機半導体材料、
8.7.に記載の有機半導体材料を含有する有機半導体インク、
9.7.に記載の有機半導体材料を含有する有機半導体膜、
10.7.に記載の有機半導体材料を含有する有機半導体素子、
11.7.に記載の有機半導体材料を含有する有機トランジスタ。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、溶媒への溶解性に優れ、簡便且つ実用的な湿式成膜法(即ち、“インク液滴を滴下し、そのものを乾燥する”だけの方法)にて、高い移動度の有機半導体膜を与える、特定の置換基位置構造を有するジチエノべンゾジチオフェン誘導体、該ジチエノべンゾジチオフェン誘導体の製造方法、該誘導体を含有する有機半導体材料、該誘導体を含有する有機半導体インク、及び該誘導体を含有する有機トランジスタを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ボトムゲートボトムコンタクト型(BC型)トランジスタの概念図である。
図2】ボトムゲートトップコンタクト型(TC型)トランジスタの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(ジチエノべンゾジチオフェン誘導体の製造方法)
本発明のジチエノべンゾジチオフェン誘導体の製造方法について説明する。
<本発明の製造方法1>
本発明の製造方法は、
一般式(A)で表されるジチエノべンゾジチオフェン誘導体の製造方法であって、以下(I)〜(IV)に記載の製造工程を有することを特徴とする。
(I)一般式(B)で表される化合物を、Xを活性部位とした有機金属化合物(B)’に変換する第一工程、
(II)前記有機金属化合物(B)’と一般式(C)で表される化合物をクロスカップリングさせ、一般式(D)で表される化合物を製造する第二工程、
(III)一般式(E)で表される化合物を、Xを活性部位とした有機金属化合物(E)’に変換する第三工程、
(IV)前記有機金属化合物(E)’と一般式(D)で表される化合物をクロスカップリングさせ、一般式(F)で表される化合物を製造する第四工程。
【0025】
【化5】
【0026】
(各式中、X〜Xはハロゲン原子を表し、R、R、R、R、R及びR10は、水素原子、又は任意の置換基を表す。)
【0027】
本発明の製造方法に係わる一般式(A)〜(F)で表される化合物の置換基R、R、R、R、R及びR10には、それぞれ独立に、芳香族化合物の置換基として公知慣用の置換基(但し、後記する製造工程において反応活性部とならないイナートな置換基)を用いることが出来る。その具体例としては、
水素原子(軽水素、重水素及び三重水素を含む)、
非環式若しくは環式の炭素原子数1〜20のアルキル基(該アルキル基中の−CH−が、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子が各々直接結合しないように、−O−、−R’C=CR’−、−CO−、−OCO−、−COO−、−S−、−SO−、−SO−、−NH−、−NR’−又は−C≡C−で置換されてよく、該アルキル基中の水素原子は、芳香族基、ハロゲノ基、又はニトリル基によって置換されていてもよい(但し、R’は炭素原子数1〜20の非環式又は環式アルキル基を表す。))、ハロゲノ基、芳香族基(該芳香族基は、非環式若しくは環式の炭素原子数1〜20のアルキル基、ハロゲノ基、芳香族基、又はニトリル基で置換されていてもよく、該アルキル基中の−CH−が、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子が各々直接結合しないように、−O−、−CR’’=CR’’−、−CO−、−OCO−、−COO−、−S−、−SO−、−SO−、−NH−、−NR’’−又は−C≡C−で置換されてよく、該アルキル基中の水素原子は、芳香族基、ハロゲノ基、又はニトリル基によって置換されていてもよい(但し、R’’は炭素原子数1〜20の非環式又は環式アルキル基を表す。))、ニトロ基、又はニトリル基、等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。
【0028】
これらの置換基の中で、
好ましくは、
水素原子、非環式若しくは環式の炭素原子数1〜20のアルキル基、フルオロ(F)基、芳香族基、ニトロ基、又はニトリル基であり、
より好ましくは、
水素原子、又は非環式若しくは環式の炭素原子数1〜20のアルキル基であり、更に好ましくは、
水素原子、又は非環式の炭素原子数1〜20のアルキル基である。
【0029】
非環式の炭素原子数1〜20のアルキル基の具体例としては、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、n−ノニル基、2,2−ジメチルヘプチル基、2,6−ジメチル−4−ヘプチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、1−ヘキシルヘプチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−エイコシル基等を挙げることが出来る
【0030】
置換基の位置構造(置換基の組み合わせ)については、本製造方法の特徴を活かし、「R、R、R、R、R、R10について、RとR10は同一であり、RとRは同一又は異なり、RとRは同一又は異なり、RとR、RとR8、の2組の組み合わせのうち、少なくとも一つの組み合わせが互いに異なる」場合に、好適である。
【0031】
次に本製造方法の効果を説明する。
公知慣用のジチエノべンゾジチオフェン誘導体の製造方法(特開2014−22498)では、その第一工程において1,4−ジフルオロ−2,5−ジブロモベンゼンに対し2当量以上のジハロチオフェンを作用させ、その後、ジチエノべンゾチオフェン誘導体を点対称な状態で得ている。従って、この公知慣用の方法では、該法の性質上、置換基の位置構造(置換基の組み合わせ)について、RとRが同一、且つ、RとRが同一である誘導体しか製造出来ない。これに対して、本製造方法では、「R、R、R、R、R、R10について、RとRは同一又は異なり、RとRは同一又は異なり、RとR10は同一であり、RとR、RとR、の2組の組み合わせのうち、少なくとも一つの組み合わせが互いに異なる」ようなジチエノべンゾジチオフェン誘導体を製造することが出来る。このような誘導体は、後記するが如く、対称性が崩れているため溶媒溶解性に優れ、故に、有機半導体インクとしての適性を有し、更には、凝集性が制御されているが故、簡便且つ実用的な湿式成膜法(即ち、“インク液滴を滴下し、そのものを乾燥する”だけの方法)で、高い半導体特性(移動度)の有機半導体膜を与えることが出来る(詳細は、(本発明のジチエノべンゾジチオフェン誘導体)に記載)。
【0032】
まず、第一工程について説明する。
第一工程は、一般式(B)で表される化合物を、Xを活性部位とした有機金属化合物(B)’に変換する工程である。
一般式(B)で表される化合物は、市販されているものが多く、入手は容易である。又Journal of Materials Chemistry,2009年,19巻,5913−5915頁に記載の方法にて合成することも可能である。化合物(B)を、Xを反応点とし有機金属化合物へと誘導する際は、一般的なクロスカップリング反応で用いるホウ素置換基、ケイ素置換基、錫置換基、マグネシウム置換基、亜鉛置換基等を導入することが出来る。段階的な反応を温和な条件で効率的に行なうには、亜鉛置換基を用いた根岸反応を行うのがより好ましい。
【0033】
用いることが出来るホウ素置換基としては、ボロニル基(B(OH))、ボロニル基のエステル誘導体、ボラビシクロ[3.3.1]ノナニル基(9−BBN)等が挙げられる。ケイ素置換基としては、アリールシリル基、ハロアルキルシリル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。錫置換基としては、トリアルキルスタニル基等が挙げられる。マグネシウム置換基としては、マグネシウムフルオロ基(MgF)、マグネシウムクロロ基(MgCl)、マグネシウムブロモ基(MgBr)、マグネシウムヨード基(MgI)が挙げられる。亜鉛置換基としてはジンクフルオロ基(ZnF)、ジンククロロ基(ZnCl)、ジンクブロモ基(ZnBr)、ジンクヨード基(ZnI)が挙げられる。
【0034】
一般式(B)で表される化合物と、有機金属化合物へと誘導するための各種反応剤とのモル比は、化合物(B)’が得られる範囲であれば特に制限されず、0.8〜2.0、好ましくは0.9〜1.2、より好ましくは0.95〜1.05である。
【0035】
反応温度としては、化合物(B)’が得られる条件であれば特に制限されず、−100〜100℃であり、好ましくは−80〜40℃である。
反応時間としては、化合物(B)’が得られる条件であれば特に制限されず、5分〜12時間であり、好ましくは30分〜4時間であり、より好ましくは30分〜1時間である。
【0036】
溶媒としては、反応に不活性である限り特に制限はなく、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジブチルエーテル等のエーテル溶媒;
酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル等のエステル溶媒;
n−ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素溶媒;
ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;
トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロジノン等のアミド溶媒;
ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄溶媒;
アセトニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;
酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸溶媒;
等を挙げることが出来、これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来る。
より温和且つ効率的に行なうには脱水乾燥させたエーテル系溶媒又は芳香族炭化水素溶媒を用いるのが好ましい。
【0037】
反応雰囲気としては、窒素又はアルゴン雰囲気下で実施することが好ましく、より好ましくは乾燥気体を用いる。
【0038】
有機金属化合物(B)’の具体例を、一般式を用いて以下に示す。
【0039】
【化6】
【0040】
(各式中、X、R、Rは前記と同義。)
本工程に係わる、一般式を用いた反応式例を以下に示す。
【0041】
【化7】
【0042】
(各式中、X、R、Rは前記と同義。)
【0043】
次に、第二工程について説明する。
第二工程は、前記有機金属化合物(B)’と一般式(C)で表される化合物を、遷移金属の塩又は遷移金属の錯体存在下、クロスカップリングさせ、一般式(D)で表される化合物を製造する工程である。
【0044】
一般式(C)で表される化合物は、市販されているものが多く入手は容易である。この化合物(C)のX〜Xのハロゲン原子の種類は、位置選択的に反応出来れば特に制限は無く、それぞれ同一又は異なっていても良いが、好ましくはX及びXの反応性がX及びXのそれぞれの反応性より低いことが好ましい。
従って、好ましい組み合わせとしては、
(X=X=F又はCl、X=X=Br又はI)であり、
更により好ましい組み合わせとしては、
(X=X=F、X=X=Br又はI)であり、
特に好ましい組み合わせとしては、
(X=X=F、X=X=Br)、(X=X=F、X=I、X=Br)である。
【0045】
前記有機金属化合物(B)’と一般式(C)で表される化合物とのモル比は、化合物(D)が得られる範囲であれば特に制限されず、0.8〜1.5、好ましくは0.9〜1.2、より好ましくは0.95〜1.05である。
なお、(B)’は第一工程において単離せずに用いることも出来、その場合、前記化合物(B)と化合物(C)のモル比は、化合物(D)が得られる範囲であれば特に制限されず、0.8〜1.5、好ましくは0.9〜1.2、より好ましくは0.95〜1.05である。
【0046】
該反応で用いられる遷移金属とは、第一遷移元素であるScからZnまで、第二遷移元素であるYからCdまで、及び第三遷移元素であるLaからHgまでの金属である。
前記の遷移金属中、
鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、金が好ましく、
より反応性を向上させるためには、
ニッケル、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金、金であることが更に好ましく、
より一層反応性を向上させるためには、ルテニウム、パラジウム、白金であることが特に好ましい。
【0047】
遷移金属の塩又は遷移金属の錯体としては、前記遷移金属と、
水、フッ化水素、塩化水素、臭化水素酸、ヨウ化水素、過塩素酸、硝酸、硫酸、リン酸、フルオロ硫酸、クロロ硫酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、リンタングステン酸等のヘテロポリ酸、アルキルスルホン酸、ハロゲン化されていてもよいアルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、アルキル側鎖を有していてもよいアリールスルホン酸、ホスホン酸、カルボン酸、ハロゲン化されていてもよいカルボン酸等の酸性化合物;
アルケン、アルキン、アミン、ホスフィン、アルシン、N−ヘテロサイクリックカルベン、ジベンジリデンアセトン、アセチルアセトン、一酸化炭素、ニトリル、サレン等の配位子;
との塩又は錯体が挙げられる。
【0048】
前記の更に一層好ましい遷移金属の塩又は遷移金属の錯体を具体的に例示すると、
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(0)、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(0)、ビス[ジ−tert−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン]パラジウム(0)、ビス(1,4−ナフトキノン)ビス[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(0)、ビス(1,4−ナフトキノン)ビス[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(0)、水酸化パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、ジクロロベンジルビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、クロロアリルパラジウム(II)ダイマー、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、酢酸ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロ(cis,cis−1,5−シクロオクタンジエン)パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)、ピバル酸パラジウム(II)、ビス(トリフルオロメタンスルホン酸)テトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)、アセチルアセトンパラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウム、ジクロロ2,5−ノルボルナジエンパラジウム(II)、硝酸(エチレンジアミン)パラジウム(II)、ジクロロ[9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン]パラジウム(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ジ−μ−クロロビス[5−ヒドロキシ−2−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]パラジウム(II)ダイマー、ジクロロ[ジ−tert−ブチル(クロロ)ホスフィン]パラジウム(II)ダイマー、クロロ[(トリ−tert−ブチルホスフィン)−2−(2−アミノビフェニル)]パラジウム(II)、ジクロロビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(II)、アリールクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)、アリールクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)2−イミダゾリジニリデン]パラジウム(II)、クロロフェニルアリール[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)、クロロフェニルアリール[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)2−イミダゾリジニリデン]パラジウム(II)、アリールクロロ[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)、アリールクロロ[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)2−イミダゾリジニリデン]パラジウム(II)、ジクロロ(ジ−μ−クロロ)ビス[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)、パラジウム/炭素、パラジウム/アルミナ、パラジウム/炭酸バリウム、パラジウム/硫酸バリウム等のパラジウム塩又は錯体;
【0049】
cis−ビス(2,2’−ビピリジル)ジクロロルテニウム(II)二水和物、[(R)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル]ルテニウム(II)ジクロリド、カルボニル(ジヒドリド)トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、クロロニトロシル[N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルサリチリデン)−1,1,2,2−テトラメチルエチレンジアミナト]ルテニウム(IV)、クロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)テトラマー、ジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマー、1−ヒドロキシテトラフェニルシクロペンタジエニル(テトラフェニル−2,4−シクロペンタジエン−1−オン)−μ−ヒドロテトラカルボニルジルテニウム(II)、塩化ルテニウム(III)、クロロ(p−シメン)ルテニウム(II)、クロロニトロシルルテニウム(II)一水和物、トリルテニウム(0)ドデカカルボニル、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ルテニウム(III)、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、ルテニウム/炭素等のルテニウム塩又は錯体、
テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(0)、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)白金(0)、塩化白金(II)、アセチルアセトン白金(II)、cis−ジアミン(1,1−シクロブタンジカルボキシラト)白金(II)、ジクロロcis−ジアンミン白金(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)白金(II)、(trans−1,2−シクロヘキサンジアミン)オキサラト白金(II)等の白金塩又は錯体が挙げられる。
【0050】
前記遷移金属の塩又は遷移金属の錯体は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来、その使用量は、化合物(D)が得られる範囲であれば特に制限されず、化合物(C)に対し0.001〜10当量、好ましくは0.005〜1当量、より好ましくは0.01〜0.1当量である。
【0051】
更に、結合生成反応を促すために、配位子を併用しても構わない。
配位子としては例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−ブチル)ホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、ジ−tert−ブチルメチルホスフィン等の単座ホスフィン系配位子;ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等の二座ホスフィン系配位子;XPhos、tert−BuXPhos、Me4tert−BuXPhos、SPhos、SPhos−SONa、MePhos、tert−BuMePhos、RuPhos、BrettPhos、JohnPhos、CyJohnPhos、DavePhos、PhDavePhos、tert−BuDavePhos等のBuchwald配位子;1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニルフェニル)イミダゾール−2−イリデン等のN−ヘテロサイクリックカルベン(NHC)配位子
等が挙げられる。
【0052】
前記配位子は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来、その使用量は、化合物(D)が得られる範囲であれば特に制限されず、例えば、前記遷移金属の塩又は遷移金属の錯体に対して1〜20当量、好ましくは1〜10当量、より好ましくは1〜5当量である。
【0053】
結合生成反応を促すために、塩基を併用しても構わない。
塩基としては例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸塩;
リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸二アンモニウム等のリン酸塩;
水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等の水酸化物、
フッ化カリウム、フッ化セシウム、テトラブチルアンモニウムフルオリド等のフッ化物;
ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等のアルコキシド;
トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン等の第3級アミン;
ピリジン、ピコリン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、t−ブチルピリジンのような2,3−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、3,5−ジメチルピリジン、2−メチル−5−エチル−ピリジン、2,6−ジイソプロピルピリジン、2,6−ジtーブチルピリジン等のピリジン誘導体;
が挙げられ、
【0054】
好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸二アンモニウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、テトラブチルアンモニウムフルオリド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン、
【0055】
より好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸二アンモニウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、
フッ化カリウム、フッ化セシウム、テトラブチルアンモニウムフルオリド等のフッ化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド、
特に好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、
リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸二アンモニウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン
である。
【0056】
前記塩基は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来、その使用量は、化合物(D)が得られる範囲であれば特に制限されず、化合物(C)に対し1〜100当量、好ましくは1〜20当量、より好ましくは1〜10当量である。
【0057】
反応温度としては、化合物(D)が得られる条件であれば特に制限されず、−80〜200℃であり、好ましくは−20〜100℃であるが、化合物(C)に対して位置選択的にただ一つのチオフェン環を導入するためには好ましくは0〜30℃である。
反応時間としては、化合物(D)が得られる条件であれば特に制限されず、5分〜120時間であり、好ましくは30分〜24時間であり、より好ましくは30分〜12時間である。
【0058】
溶媒としては、反応に不活性である限り特に制限はなく、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジブチルエーテル等のエーテル溶媒;
酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル等のエステル溶媒;
n−ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素溶媒;
ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;
トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロジノン等のアミド溶媒;
ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄溶媒;
アセトニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;
酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸溶媒;
等を挙げることが出来、これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来る。
より温和且つ効率的に行なうには脱水乾燥させたエーテル系溶媒又は芳香族炭化水素溶媒を用いるのが好ましい。
【0059】
反応雰囲気としては、窒素又はアルゴン雰囲気下で実施することが好ましく、より好ましくは乾燥気体を用いる。
【0060】
第二工程で得られた化合物(D)は、適宜精製を行ってもよい。精製方法としては、特に限定されないが、例えば、順相及び逆相カラムクロマトグラフィー、再結晶、サイズ排除クロマトグラフィー、昇華精製等が挙げられる。二つ以上のチオフェン環がベンゼン環に導入された副生生物が生じた場合は、次工程以降を効率的に行なうためにこれら副生生物を完全に除去するのがより好ましい。
【0061】
次に、第三工程について説明する。
第三工程は、一般式(E)で表される化合物を、Xを活性部位とした有機金属化合物(E)’に変換する工程である。
【0062】
一般式(E)で表される化合物は、市販されているものが多く入手は容易である。又Journal of Materials Chemistry,2009年,19巻,5913−5915頁に記載の方法にて合成することも可能である。化合物(E)を、Xを反応点とし有機金属化合物へと誘導する際は、一般的なクロスカップリング反応で用いるホウ素置換基、ケイ素置換基、錫置換基、マグネシウム置換基、亜鉛置換基等を導入することが出来る。段階的な反応を温和な条件で効率的に行なうには、亜鉛置換基を用いた根岸反応を行うのがより好ましい。
【0063】
用いることが出来るホウ素置換基としては、ボロニル基(B(OH))、ボロニル基のエステル誘導体、ボラビシクロ[3.3.1]ノナニル基(9−BBN)等が挙げられる。ケイ素置換基としては、アリールシリル基、ハロアルキルシリル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。錫置換基としては、トリアルキルスタニル基等が挙げられる。マグネシウム置換基としては、マグネシウムフルオロ基(MgF)、マグネシウムクロロ基(MgCl)、マグネシウムブロモ基(MgBr)、マグネシウムヨード基(MgI)が挙げられる。亜鉛置換基としてはジンクフルオロ基(ZnF)、ジンククロロ基(ZnCl)、ジンクブロモ基(ZnBr)、ジンクヨード基(ZnI)が挙げられる。
【0064】
一般式(E)で表される化合物と、有機金属化合物へと誘導するための各種反応剤とのモル比は、化合物(E)’が得られる範囲であれば特に制限されず、0.8〜2.0、好ましくは0.9〜1.2、より好ましくは0.95〜1.05である。
【0065】
反応温度としては、化合物(E)’が得られる条件であれば特に制限されず、−100〜100℃であり、好ましくは−80〜40℃である。
反応時間としては、化合物(E)’が得られる条件であれば特に制限されず、5分〜12時間であり、好ましくは30分〜4時間であり、より好ましくは30分〜1時間である。
【0066】
溶媒としては、反応に不活性である限り特に制限はなく、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジブチルエーテル等のエーテル溶媒;
酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル等のエステル溶媒;
n−ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素溶媒;
ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;
トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロジノン等のアミド溶媒;
ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄溶媒;
アセトニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;
酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸溶媒;
等を挙げることが出来、これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来る。
より温和且つ効率的に行なうには脱水乾燥させたエーテル系溶媒又は芳香族炭化水素溶媒を用いるのが好ましい。
【0067】
反応雰囲気としては、窒素又はアルゴン雰囲気下で実施することが好ましく、より好ましくは乾燥気体を用いる。
【0068】
有機金属化合物(E)’の具体例を、一般式を用いて以下に示す。
【0069】
【化8】
【0070】
(各式中、X、R、Rは前記と同義。)
本工程に係わる、一般式を用いた反応式例を以下に示す。
【0071】
【化9】
【0072】
(各式中、X、R、Rは前記と同義。)
次に、第四工程について説明する。
第四工程は、前記有機金属化合物(E)’と前記一般式(D)で表される化合物を、遷移金属の塩又は遷移金属の錯体存在下、クロスカップリングさせ、一般式(F)で表される化合物を製造する工程である。
【0073】
該反応で用いられる遷移金属とは、第一遷移元素であるScからZnまで、第二遷移元素であるYからCdまで、及び第三遷移元素であるLaからHgまでの金属である。
前記の遷移金属中、
鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、金が好ましく、
より反応性を向上させるためには、
ニッケル、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金、金であることが更に好ましく、
より一層反応性を向上させるためには、ルテニウム、パラジウム、白金であることが特に好ましい。
【0074】
遷移金属の塩又は遷移金属の錯体としては、前記遷移金属と、
水、フッ化水素、塩化水素、臭化水素酸、ヨウ化水素、過塩素酸、硝酸、硫酸、リン酸、フルオロ硫酸、クロロ硫酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、リンタングステン酸等のヘテロポリ酸、アルキルスルホン酸、ハロゲン化されていてもよいアルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、アルキル側鎖を有していてもよいアリールスルホン酸、ホスホン酸、カルボン酸、ハロゲン化されていてもよいカルボン酸等の酸性化合物;
アルケン、アルキン、アミン、ホスフィン、アルシン、N−ヘテロサイクリックカルベン、ジベンジリデンアセトン、アセチルアセトン、一酸化炭素、ニトリル、サレン等の配位子;
との塩又は錯体が挙げられる。
【0075】
前記の更に一層好ましい遷移金属の塩又は遷移金属の錯体を具体的に例示すると、
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(0)、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(0)、ビス[ジ−tert−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン]パラジウム(0)、ビス(1,4−ナフトキノン)ビス[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(0)、ビス(1,4−ナフトキノン)ビス[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(0)、水酸化パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、ジクロロベンジルビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、クロロアリルパラジウム(II)ダイマー、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、酢酸ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロ(cis,cis−1,5−シクロオクタンジエン)パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)、ピバル酸パラジウム(II)、ビス(トリフルオロメタンスルホン酸)テトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)、アセチルアセトンパラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウム、ジクロロ2,5−ノルボルナジエンパラジウム(II)、硝酸(エチレンジアミン)パラジウム(II)、ジクロロ[9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン]パラジウム(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ジ−μ−クロロビス[5−ヒドロキシ−2−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]パラジウム(II)ダイマー、ジクロロ[ジ−tert−ブチル(クロロ)ホスフィン]パラジウム(II)ダイマー、クロロ[(トリ−tert−ブチルホスフィン)−2−(2−アミノビフェニル)]パラジウム(II)、ジクロロビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(II)、アリールクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)、アリールクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)2−イミダゾリジニリデン]パラジウム(II)、クロロフェニルアリール[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)、クロロフェニルアリール[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)2−イミダゾリジニリデン]パラジウム(II)、アリールクロロ[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)、アリールクロロ[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)2−イミダゾリジニリデン]パラジウム(II)、ジクロロ(ジ−μ−クロロ)ビス[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)、パラジウム/炭素、パラジウム/アルミナ、パラジウム/炭酸バリウム、パラジウム/硫酸バリウム等のパラジウム塩又は錯体;
【0076】
cis−ビス(2,2’−ビピリジル)ジクロロルテニウム(II)二水和物、[(R)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル]ルテニウム(II)ジクロリド、カルボニル(ジヒドリド)トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、クロロニトロシル[N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルサリチリデン)−1,1,2,2−テトラメチルエチレンジアミナト]ルテニウム(IV)、クロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)テトラマー、ジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマー、1−ヒドロキシテトラフェニルシクロペンタジエニル(テトラフェニル−2,4−シクロペンタジエン−1−オン)−μ−ヒドロテトラカルボニルジルテニウム(II)、塩化ルテニウム(III)、クロロ(p−シメン)ルテニウム(II)、クロロニトロシルルテニウム(II)一水和物、トリルテニウム(0)ドデカカルボニル、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ルテニウム(III)、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、ルテニウム/炭素等のルテニウム塩又は錯体、
テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(0)、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)白金(0)、塩化白金(II)、アセチルアセトン白金(II)、cis−ジアミン(1,1−シクロブタンジカルボキシラト)白金(II)、ジクロロcis−ジアンミン白金(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)白金(II)、(trans−1,2−シクロヘキサンジアミン)オキサラト白金(II)等の白金塩又は錯体が挙げられる。
【0077】
前記遷移金属の塩又は遷移金属の錯体は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来、その使用量は、化合物(F)が得られる範囲であれば特に制限されず、化合物(D)に対し0.001〜10当量、好ましくは0.005〜1当量、より好ましくは0.01〜0.03当量である。
【0078】
更に、結合生成反応を促すために、配位子を併用しても構わない。
配位子としては例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−ブチル)ホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、ジ−tert−ブチルメチルホスフィン等の単座ホスフィン系配位子;ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等の二座ホスフィン系配位子;XPhos、tert−BuXPhos、Me4tert−BuXPhos、SPhos、SPhos−SONa、MePhos、tert−BuMePhos、RuPhos、BrettPhos、JohnPhos、CyJohnPhos、DavePhos、PhDavePhos、tert−BuDavePhos等のBuchwald配位子;1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニルフェニル)イミダゾール−2−イリデン等のN−ヘテロサイクリックカルベン(NHC)配位子、等が挙げられる。
【0079】
前記配位子は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来、その使用量は、化合物(F)が得られる範囲であれば特に制限されず、例えば、前記遷移金属の塩又は遷移金属の錯体に対して1〜20当量、好ましくは1〜10当量、より好ましくは1〜5当量である。
【0080】
結合生成反応を促すために、塩基を併用しても構わない。
塩基としては例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸塩;
リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸二アンモニウム等のリン酸塩;
水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等の水酸化物、
フッ化カリウム、フッ化セシウム、テトラブチルアンモニウムフルオリド等のフッ化物;
ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等のアルコキシド;
トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン等の第3級アミン;
ピリジン、ピコリン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、t−ブチルピリジンのような2,3−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、3,5−ジメチルピリジン、2−メチル−5−エチル−ピリジン、2,6−ジイソプロピルピリジン、2,6−ジtーブチルピリジン等のピリジン誘導体;
が挙げられ、
【0081】
好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸二アンモニウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、テトラブチルアンモニウムフルオリド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン、
【0082】
より好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸二アンモニウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、
フッ化カリウム、フッ化セシウム、テトラブチルアンモニウムフルオリド等のフッ化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド、
特に好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、
リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸二アンモニウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン
である。
【0083】
前記塩基は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来、その使用量は、化合物(F)が得られる範囲であれば特に制限されず、化合物(D)に対し1〜100当量、好ましくは1〜20当量、より好ましくは1〜10当量である。
【0084】
反応温度としては、化合物(F)が得られる条件であれば特に制限されず、−80〜200℃であり、好ましくは0〜100℃であるが、より好ましくは30〜70℃である。
【0085】
反応時間としては、化合物(F)が得られる条件であれば特に制限されず、5分〜120時間であり、好ましくは30分〜24時間であり、より好ましくは30分〜12時間である。
【0086】
溶媒としては、反応に不活性である限り特に制限はなく、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジブチルエーテル等のエーテル溶媒;
酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル等のエステル溶媒;
n−ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素溶媒;
ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;
トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロジノン等のアミド溶媒;
ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄溶媒;
アセトニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;
酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸溶媒;
等を挙げることが出来、これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来る。
より温和且つ効率的に行なうには脱水乾燥させたエーテル系溶媒又は芳香族炭化水素溶媒を用いるのが好ましい。
反応雰囲気としては、窒素又はアルゴン雰囲気下で実施することが好ましく、より好ましくは乾燥気体を用いる。
【0087】
第四工程で得られた化合物(F)は、次工程以降を効率的に行なうために、精製を行うことが好ましい。精製方法としては、特に限定されないが、例えば、順相及び逆相カラムクロマトグラフィー、再結晶、サイズ排除クロマトグラフィー、昇華精製等が挙げられる。
【0088】
最後に、一般式(F)で表される化合物を、一般式(A)で表される化合物に変換する。この工程は、一般式(F)で表される化合物を、一般式(A)で表されれる化合物に変換できれば、どのような工程であってもかまわない。
例えば、「一般式(F)で表される化合物を、硫化アルカリ金属塩存在下、架橋反応を行うことで、一般式(A)で表される化合物を製造する」工程を挙げることができる。
【0089】
硫化アルカリ金属塩としては、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化リチウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム、その水和物等等用いることが出来る。より効率的に行なうには、硫化ナトリウム九水和物を用いて行うのが好ましい。
【0090】
前記塩は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来、その使用量は、化合物(A)が得られる範囲であれば特に制限されず、化合物(F)に対し1.5〜10当量、好ましくは2〜5当量、より好ましくは2.0〜2.2当量である。
【0091】
反応温度としては、化合物(A)が得られる条件であれば特に制限されず、0〜250℃であり、好ましくは50〜200℃であるが、より好ましくは150〜180℃である。
反応時間としては、化合物(A)が得られる条件であれば特に制限されず、5分〜12時間であり、好ましくは30分〜4時間であり、より好ましくは1〜3時間である。
【0092】
溶媒としては、反応に不活性である限り特に制限はなく、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジブチルエーテル等のエーテル溶媒;
酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル等のエステル溶媒;
n−ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素溶媒;
トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロジノン等のアミド溶媒;
ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄溶媒;
アセトニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;
酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸溶媒;
等を挙げることが出来、これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来る。
より効率的に行なうには高沸点のアミド溶媒を用いるのが好ましい。
【0093】
反応雰囲気としては、空気下でも行なうことが出来るが、高温攪拌時の酸化反応を防ぐため窒素又はアルゴン雰囲気下で実施することが好ましい。
【0094】
得られた化合物(A)は、適宜精製を行ってもよい。精製方法としては、特に限定されないが、例えば、順相及び逆相カラムクロマトグラフィー、再結晶、サイズ排除クロマトグラフィー、昇華精製等が挙げられる。
【0095】
<本発明の製造方法2>
本発明の製造方法は、
一般式(G)で表されるジチエノべンゾジチオフェン誘導体の製造方法であって、以下の(I)〜(III)に記載の製造工程を有することを特徴とする。
(I)一般式(H)で表される化合物を、N−ハロスクシンイミド(NXS)存在下、モノハロゲン化し、一般式(I)で表される化合物を製造する第一工程、
(II)一般式(I)で表される化合物と一般式(J)又は一般式(K)で表される化合物を遷移金属触媒存在下、クロスカップリング反応させて、一般式(L)で表される化合物を製造する第二工程、
(III)一般式(L)で表される化合物を、不均一系遷移金属触媒又は均一系遷移金属触媒存在下、接触水素還元させて、一般式(G)で表されるジチエノべンゾジチオフェン誘導体を製造する第三工程。
【0096】
【化10】
【0097】
(各式中、R103、R105、R108及びR110は水素原子又は任意の置換基を表し、X11はハロゲン原子を表し、Y11−はCH−(CHn−2−C≡C−、又はCH−(CHn−2−CH=CH−を表し、nは2〜19の整数を表す。)
【0098】
本発明の製造方法に係わる一般式(G)〜(L)で表される化合物の置換基R103、R105、R108、及びR110には、それぞれ独立に、芳香族化合物の置換基として公知慣用の置換基(但し、後記する製造工程において反応活性部とならないイナートな置換基)を用いることが出来る。その具体例としては、
水素原子(軽水素、重水素及び三重水素を含む)、
非環式若しくは環式の炭素原子数1〜20のアルキル基(該アルキル基中の−CH−が、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子が各々直接結合しないように、−O−、−CO−、−OCO−、−COO−、−S−、−SO−、−SO−、−NH−、又は−NR’−で置換されてよく、該アルキル基中の水素原子は、芳香族基、ハロゲノ基、又はニトリル基によって置換されていてもよい(但し、R’は炭素原子数1〜20の非環式又は環式アルキル基を表す。))、ハロゲノ基、芳香族基(該芳香族基は、非環式若しくは環式の炭素原子数1〜20のアルキル基、ハロゲノ基、芳香族基、又はニトリル基で置換されていてもよく、該アルキル基中の−CH−が、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子が各々直接結合しないように、−O−、−CO−、−OCO−、−COO−、−S−、−SO−、−SO−、−NH−、又は−NR’’−で置換されてよく、該アルキル基中の水素原子は、芳香族基、ハロゲノ基、又はニトリル基によって置換されていてもよい(但し、R’’は炭素原子数1〜20の非環式又は環式アルキル基を表す。))、ニトロ基、又はニトリル基、等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。
【0099】
これらの置換基の中で、
好ましくは、
水素原子、非環式若しくは環式の炭素原子数1〜20のアルキル基、フルオロ(F)基、芳香族基、ニトロ基、又はニトリル基であり、
より好ましくは、
水素原子、非環式又は環式の炭素原子数1〜20のアルキル基であり、更に好ましくは、
水素原子、非環式の炭素原子数1〜20のアルキル基である。
【0100】
非環式の炭素原子数1〜20のアルキル基の具体例としては、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、n−ノニル基、2,2−ジメチルヘプチル基、2,6−ジメチル−4−ヘプチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、1−ヘキシルヘプチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−エイコシル基等を挙げることが出来る。
【0101】
次に本製造方法の効果を説明する。
公知慣用のジチエノべンゾジチオフェン誘導体の製造方法(特開2014−22498)は、反応式(1)に示したが如く、ジチエノべンゾジチオフェンの2位及び7位の(チオフェン環のα位の)二つの水素原子を共に反応点としフリーデル・クラフツ反応を行い、この二つの反応点に同一の置換基を同時に導入する手法である。
【0102】
【化11】
【0103】
従って、該法では、一般式(G)で表されるような化合物を製造出来ない。これに対して、本製造方法では、一旦、一般式(H)で表されるジチエノべンゾジチオフェン誘導体の2位及び7位の二つの水素原子のうち一つを反応点としハロゲン原子の導入を行い、片方の反応点の活性を上昇せしめ、以降の反応において異なる置換基を段階的に且つ位置選択的に導入する事を可能とする手法である。一般式(G)で表される化合物は、一般式(A)で表される化合物について「R、R、R、R、R、R10について、RとRは同一又は異なり、RとRは同一又は異なり、RとR10は同一であり、RとR、RとR、の2組の組み合わせのうち、少なくとも一つの組み合わせが互いに異なる」ようなジチエノべンゾジチオフェン誘導体に該当し、従って、前記したが如く、このような誘導体は、対称性が崩れているため、溶媒溶解性に優れ、故に、有機半導体インクとしての適性を有し、更には、凝集性が制御されているが故、簡便且つ実用的な湿式成膜法(即ち、“インク液滴を滴下し、そのものを乾燥する”だけの方法)で、高い半導体特性(移動度)の有機半導体膜を与えることが出来る。
【0104】
まず、第一工程について説明する。
【0105】
第一工程では、一般式(H)で表される化合物に、N−ハロスクシンイミド(NXS)存在下、モノハロゲン化させて一般式(I)で表される化合物を製造する。
【0106】
一般式(H)で表される化合物は、前記「本発明の製造方法1」(但し、R=H、R=R103、R=R105、R=H、R=R108、R10=R110の場合に該当)を用いて、合成することが出来る。
一般式(H)で表される化合物に対するNXSの使用量(モル比)は、通常0.80〜1.20であり、好ましくは0.90〜1.10、更に好ましくは0.95〜1.05である。
該反応で用いられるN−ハロスクシンイミド(NXS)としては、N−クロロスクシンイミド(NCS)、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、N−ヨードスクシンイミド(NIS)等が挙げられる。
【0107】
ハロゲン原子が二つ導入された副生生物の除去を溶解度の差で行ないやすくするためには、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、N−ヨードスクシンイミド(NIS)等を用いて、より二置換副生生物の溶解度を下げやすい重原子を導入することが好ましい。
【0108】
次段階以降の置換基導入をより温和且つ簡易な条件で行なうためには、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、N−ヨードスクシンイミド(NIS)等を用いて、より脱離能の高い重原子を導入することが好ましい。
従って、NXSの中では、NBS及びNISが好ましい。
【0109】
次工程以降の反応性や二置換副生生物との分離能を向上させるためには、導入したハロゲン原子をより極性の高い脱離基に変更することも可能である。又、一般的なクロスカップリングに用いるホウ素、錫、ケイ素、亜鉛、マグネシウム官能基等に変更することも可能である。
より極性の高い脱離基としては、メシラート、トシラート、等のスルホン酸エステル置換基等を挙げることが出来る。
【0110】
反応温度としては、化合物(I)が得られる条件であれば特に制限されず、−80〜200℃であり、好ましくは−20〜100℃であり、更に好ましくは25〜60℃である。
反応時間としては、化合物(I)が得られる条件であれば特に制限されず、5分〜120時間であり、好ましくは30分〜24時間であり、より好ましくは30分〜2時間である。
【0111】
溶媒としては、反応に不活性である限り特に制限はなく、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジブチルエーテル等のエーテル溶媒;
酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル等のエステル溶媒;
n−ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素溶媒;
ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;
ベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロジノン等のアミド溶媒;
ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄溶媒;
アセトニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;
酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸溶媒;
等を挙げることが出来、これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来る。
より温和且つ効率的に行なうには脱水乾燥させたハロゲン系溶媒又は脂肪族炭化水素溶媒を用いるのが好ましい。
【0112】
反応雰囲気としては、空気中で行うことも出来るが、乾燥窒素又は乾燥アルゴン雰囲気下で実施することが好ましい。
第一工程で得られた化合物(I)は、適宜精製を行ってもよい。精製方法としては、特に限定されないが、例えば、順相及び逆相カラムクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、再結晶、昇華精製等が挙げられる。
【0113】
次に、第二工程について説明する。
第二工程では、一般式(I)で表される化合物に対して、遷移金属の塩又は遷移金属の錯体存在下、一般式(J)又は一般式(K)で表される化合物をクロスカップリングさせ、一般式(L)で表される化合物を製造する。
【0114】
該反応で用いられる遷移金属とは、第一遷移元素であるScからZnまで、第二遷移元素であるYからCdまで、及び第三遷移元素であるLaからHgまでの金属である。
前記の遷移金属中、
鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、金が好ましく、
より反応性を向上させるためには、
ニッケル、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金、金であることが更に好ましく、
より一層反応性を向上させるためには、ルテニウム、パラジウム、白金であることが特に好ましい。
【0115】
遷移金属の塩又は遷移金属の錯体としては、前記遷移金属と、
水、フッ化水素、塩化水素、臭化水素酸、ヨウ化水素、過塩素酸、硝酸、硫酸、リン酸、フルオロ硫酸、クロロ硫酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、リンタングステン酸等のヘテロポリ酸、アルキルスルホン酸、ハロゲン化されていてもよいアルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、アルキル側鎖を有していてもよいアリールスルホン酸、ホスホン酸、カルボン酸、ハロゲン化されていてもよいカルボン酸等の酸性化合物;
アルケン、アルキン、アミン、ホスフィン、アルシン、N−ヘテロサイクリックカルベン、ジベンジリデンアセトン、アセチルアセトン、一酸化炭素、ニトリル、サレン等の配位子;
との塩又は錯体が挙げられる。
【0116】
前記の更に一層好ましい遷移金属の塩又は遷移金属の錯体を具体的に例示すると、
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(0)、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(0)、ビス[ジ−tert−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン]パラジウム(0)、ビス(1,4−ナフトキノン)ビス[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(0)、ビス(1,4−ナフトキノン)ビス[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(0)、水酸化パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、ジクロロベンジルビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、クロロアリルパラジウム(II)ダイマー、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、酢酸ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロ(cis,cis−1,5−シクロオクタンジエン)パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)、ピバル酸パラジウム(II)、ビス(トリフルオロメタンスルホン酸)テトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)、アセチルアセトンパラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウム、ジクロロ2,5−ノルボルナジエンパラジウム(II)、硝酸(エチレンジアミン)パラジウム(II)、ジクロロ[9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン]パラジウム(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ジ−μ−クロロビス[5−ヒドロキシ−2−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]パラジウム(II)ダイマー、ジクロロ[ジ−tert−ブチル(クロロ)ホスフィン]パラジウム(II)ダイマー、クロロ[(トリ−tert−ブチルホスフィン)−2−(2−アミノビフェニル)]パラジウム(II)、ジクロロビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(II)、アリールクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)、アリールクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)2−イミダゾリジニリデン]パラジウム(II)、クロロフェニルアリール[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)、クロロフェニルアリール[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)2−イミダゾリジニリデン]パラジウム(II)、アリールクロロ[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)、アリールクロロ[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)2−イミダゾリジニリデン]パラジウム(II)、ジクロロ(ジ−μ−クロロ)ビス[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)、パラジウム/炭素、パラジウム/アルミナ、パラジウム/炭酸バリウム、パラジウム/硫酸バリウム等のパラジウム塩又は錯体;
【0117】
cis−ビス(2,2’−ビピリジル)ジクロロルテニウム(II)二水和物、[(R)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル]ルテニウム(II)ジクロリド、カルボニル(ジヒドリド)トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、クロロニトロシル[N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルサリチリデン)−1,1,2,2−テトラメチルエチレンジアミナト]ルテニウム(IV)、クロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)テトラマー、ジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマー、1−ヒドロキシテトラフェニルシクロペンタジエニル(テトラフェニル−2,4−シクロペンタジエン−1−オン)−μ−ヒドロテトラカルボニルジルテニウム(II)、塩化ルテニウム(III)、クロロ(p−シメン)ルテニウム(II)、クロロニトロシルルテニウム(II)一水和物、トリルテニウム(0)ドデカカルボニル、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ルテニウム(III)、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、ルテニウム/炭素等のルテニウム塩又は錯体、
テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(0)、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)白金(0)、塩化白金(II)、アセチルアセトン白金(II)、cis−ジアミン(1,1−シクロブタンジカルボキシラト)白金(II)、ジクロロcis−ジアンミン白金(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)白金(II)、(trans−1,2−シクロヘキサンジアミン)オキサラト白金(II)等の白金塩又は錯体が挙げられる。
【0118】
前記遷移金属の塩又は遷移金属の錯体は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来、その使用量は、化合物(L)が得られる範囲であれば特に制限されず、(I)に対し0.001〜10当量、好ましくは0.005〜5当量、より好ましくは0.01〜0.1当量である。
【0119】
更に、結合生成反応を促すために、配位子を併用しても構わない。
配位子としては例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−ブチル)ホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、ジ−tert−ブチルメチルホスフィン等の単座ホスフィン系配位子;ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等の二座ホスフィン系配位子;XPhos、tert−BuXPhos、Me4tert−BuXPhos、SPhos、SPhos−SONa、MePhos、tert−BuMePhos、RuPhos、BrettPhos、JohnPhos、CyJohnPhos、DavePhos、PhDavePhos、tert−BuDavePhos等のBuchwald配位子;1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニルフェニル)イミダゾール−2−イリデン等のN−ヘテロサイクリックカルベン(NHC)配位子
等が挙げられる。
【0120】
前記配位子は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来、その使用量は、化合物(L)が得られる範囲であれば特に制限されず、例えば、前記遷移金属の塩又は遷移金属の錯体に対して1〜20当量、好ましくは1〜10当量、より好ましくは1〜5当量である。
【0121】
結合生成反応を促すために、塩基を併用しても構わない。
塩基としては例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸塩;
リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸二アンモニウム等のリン酸塩;
水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等の水酸化物、
フッ化カリウム、フッ化セシウム、テトラブチルアンモニウムフルオリド等のフッ化物;
ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等のアルコキシド;
トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン等の第3級アミン;
ピリジン、ピコリン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、t−ブチルピリジンのような2,3−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、3,5−ジメチルピリジン、2−メチル−5−エチル−ピリジン、2,6−ジイソプロピルピリジン、2,6−ジtーブチルピリジン等のピリジン誘導体;
が挙げられ、
【0122】
好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸二アンモニウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、テトラブチルアンモニウムフルオリド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン、
【0123】
より好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸二アンモニウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、
フッ化カリウム、フッ化セシウム、テトラブチルアンモニウムフルオリド等のフッ化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド、
特に好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、
リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸二アンモニウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン
である。
【0124】
前記塩基は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来、その使用量は、化合物(L)が得られる範囲であれば特に制限されず、原料(I)に対し1〜100当量、好ましくは1〜20当量、より好ましくは1〜10当量である。
【0125】
反応温度としては、化合物(L)が得られる条件であれば特に制限されず、−80〜200℃であり、好ましくは−20〜100℃であり、更に好ましくは25〜60℃である。
反応時間としては、化合物(L)が得られる条件であれば特に制限されず、5分〜120時間であり、好ましくは30分〜24時間であり、より好ましくは30分〜2時間である。
【0126】
溶媒としては、反応に不活性である限り特に制限はなく、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジブチルエーテル等のエーテル溶媒;
酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル等のエステル溶媒;
n−ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素溶媒;
ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;
トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロジノン等のアミド溶媒;
ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄溶媒;
アセトニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;
酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸溶媒;
等を挙げることが出来、これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来る。
より温和且つ効率的に行なうには脱水乾燥させたエーテル系溶媒又はアミド溶媒を用いるのが好ましい。
【0127】
反応雰囲気としては、空気中で行うことも出来るが、乾燥窒素又は乾燥アルゴン雰囲気下で実施することが好ましい。
【0128】
第二工程で得られた化合物(L)は、次工程以降を効率的に行なうために精製を行うことが好ましい。精製方法としては、特に限定されないが、例えば、順相及び逆相カラムクロマトグラフィー、再結晶、サイズ排除クロマトグラフィー、昇華精製等が挙げられる。
【0129】
次に、第三工程について説明する。
第三工程では、一般式(L)で表される化合物を、還元し、一般式(G)で表される化合物を製造する。
還元の方法としては不均一系遷移金属触媒を用いた接触水素化法、又は均一系遷移金属触媒の塩若しくは錯体を用いた接触水素化法を用いることが出来る。温和な条件で行い、且つ後処理を容易にするためには、不均一系触媒を用いた接触水素化法がより好ましい。
【0130】
不均一系及び均一系の接触水素化法で用いる遷移金属とは、第一遷移元素であるScからZnまで、第二遷移元素であるYからCdまで、及び第三遷移元素であるLaからHgまでの金属である。
前記の遷移金属中、
ニッケル、銅、ルテニウム、クロム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金が好ましく、
より反応性を向上させるためには、
ルテニウム、パラジウム、白金であることが特に好ましい。
【0131】
不均一系で行う場合は、水素ガス存在下、前記遷移金属を活性炭やアルミナ等の不溶性物質を担体とし共に用いてもよいし、表面積を大きくし活性化した遷移金属を単独で用いてもよいし、その水酸化物や酸化物を水素ガスで還元して用いてもよい。
均一系で行う場合は、水素ガス存在下、遷移金属の塩又は遷移金属の錯体を用いて行う。
【0132】
遷移金属の塩又は遷移金属の錯体としては、前記遷移金属と、
水、フッ化水素、塩化水素、臭化水素酸、ヨウ化水素、過塩素酸、硝酸、硫酸、リン酸、フルオロ硫酸、クロロ硫酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、リンタングステン酸等のヘテロポリ酸、アルキルスルホン酸、ハロゲン化されていてもよいアルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、アルキル側鎖を有していてもよいアリールスルホン酸、ホスホン酸、カルボン酸、ハロゲン化されていてもよいカルボン酸等の酸性化合物;
アルケン、アルキン、アミン、ホスフィン、アルシン、N−ヘテロサイクリックカルベン、ジベンジリデンアセトン、アセチルアセトン、一酸化炭素、ニトリル、サレン等の配位子;
との塩又は錯体が挙げられる。
【0133】
前記の更に一層好ましい遷移金属の塩又は遷移金属の錯体を具体的に例示すると、
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(0)、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(0)、ビス[ジ−tert−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン]パラジウム(0)、ビス(1,4−ナフトキノン)ビス[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(0)、ビス(1,4−ナフトキノン)ビス[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(0)、水酸化パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、ジクロロベンジルビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、クロロアリルパラジウム(II)ダイマー、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、酢酸ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロ(cis,cis−1,5−シクロオクタンジエン)パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)、ピバル酸パラジウム(II)、ビス(トリフルオロメタンスルホン酸)テトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)、アセチルアセトンパラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウム、ジクロロ2,5−ノルボルナジエンパラジウム(II)、硝酸(エチレンジアミン)パラジウム(II)、ジクロロ[9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン]パラジウム(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ジ−μ−クロロビス[5−ヒドロキシ−2−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]パラジウム(II)ダイマー、ジクロロ[ジ−tert−ブチル(クロロ)ホスフィン]パラジウム(II)ダイマー、クロロ[(トリ−tert−ブチルホスフィン)−2−(2−アミノビフェニル)]パラジウム(II)、ジクロロビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(II)、アリールクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)、アリールクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)2−イミダゾリジニリデン]パラジウム(II)、クロロフェニルアリール[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)、クロロフェニルアリール[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)2−イミダゾリジニリデン]パラジウム(II)、アリールクロロ[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)、アリールクロロ[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)2−イミダゾリジニリデン]パラジウム(II)、ジクロロ(ジ−μ−クロロ)ビス[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)、パラジウム/炭素、パラジウム/アルミナ、パラジウム/炭酸バリウム、パラジウム/硫酸バリウム等のパラジウム塩又は錯体;
【0134】
cis−ビス(2,2’−ビピリジル)ジクロロルテニウム(II)二水和物、[(R)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル]ルテニウム(II)ジクロリド、カルボニル(ジヒドリド)トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、クロロニトロシル[N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルサリチリデン)−1,1,2,2−テトラメチルエチレンジアミナト]ルテニウム(IV)、クロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)テトラマー、ジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマー、1−ヒドロキシテトラフェニルシクロペンタジエニル(テトラフェニル−2,4−シクロペンタジエン−1−オン)−μ−ヒドロテトラカルボニルジルテニウム(II)、塩化ルテニウム(III)、クロロ(p−シメン)ルテニウム(II)、クロロニトロシルルテニウム(II)一水和物、トリルテニウム(0)ドデカカルボニル、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ルテニウム(III)、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、ルテニウム/炭素等のルテニウム塩又は錯体、
テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(0)、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)白金(0)、塩化白金(II)、アセチルアセトン白金(II)、cis−ジアミン(1,1−シクロブタンジカルボキシラト)白金(II)、ジクロロcis−ジアンミン白金(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)白金(II)、(trans−1,2−シクロヘキサンジアミン)オキサラト白金(II)等の白金塩又は錯体が挙げられる。
【0135】
前記遷移金属の塩又は遷移金属の錯体は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来、その使用量は、化合物(G)が得られる範囲であれば特に制限されず、原料(L)に対し0.001〜10当量、好ましくは0.005〜5当量、より好ましくは0.01〜0.05当量である。
【0136】
更に、還元反応を促すために、配位子を併用しても構わない。
配位子としては例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−ブチル)ホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、ジ−tert−ブチルメチルホスフィン等の単座ホスフィン系配位子;ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等の二座ホスフィン系配位子;XPhos、tert−BuXPhos、Me4tert−BuXPhos、SPhos、SPhos−SONa、MePhos、tert−BuMePhos、RuPhos、BrettPhos、JohnPhos、CyJohnPhos、DavePhos、PhDavePhos、tert−BuDavePhos等のBuchwald配位子;1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニルフェニル)イミダゾール−2−イリデン等のN−ヘテロサイクリックカルベン(NHC)配位子
等が挙げられる。
【0137】
前記配位子は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来、その使用量は、化合物(G)が得られる範囲であれば特に制限されず、例えば、前記遷移金属の塩又は遷移金属の錯体に対して1〜20当量、好ましくは1〜10当量、より好ましくは1〜5当量である。
【0138】
反応温度としては、化合物(G)が得られる条件であれば特に制限されず、−80〜200℃であり、好ましくは−20〜100℃であり、更に好ましくは0〜30℃である。
反応時間としては、化合物(G)が得られる条件であれば特に制限されず、5分〜240時間であり、好ましくは30分〜24時間であり、より好ましくは3時間〜6時間である。
【0139】
溶媒としては、反応に不活性である限り特に制限はなく、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジブチルエーテル等のエーテル溶媒;
酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル等のエステル溶媒;
n−ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素溶媒;
ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;
トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロジノン等のアミド溶媒;
ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄溶媒;
アセトニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;
酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸溶媒;
メタノール、エタノール、プロパノール、ブチルアルコール等のアルコール溶媒、
等を挙げることが出来、これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来る。
より温和且つ効率的に行なうには脱水乾燥させたエーテル系溶媒又はアルコール溶媒を用いるのが好ましい。
【0140】
反応雰囲気としては、接触水素還元の場合は空気−水素混合下で行うことも出来るが、窒素−水素混合下又はアルゴン−水素混合雰囲気下で実施することが好ましく、より好ましくは乾燥水素ガス雰囲気下で行う。
【0141】
第三工程で得られた化合物(G)は、適宜精製を行ってもよい。精製方法としては、特に限定されないが、例えば、順相及び逆相カラムクロマトグラフィー、再結晶、サイズ排除クロマトグラフィー、昇華精製等が挙げられる。
【0142】
<本発明の製造方法(3)>
次に、本発明の製造方法(3)について説明する。
本発明の製造方法(3)は、
一般式(G)’で表されるジチエノべンゾジチオフェン誘導体に、有機リチウム存在下、一般式(m)で表されるハロゲン化アルキルを反応させ、一般式(M)で表されるジチエノべンゾジチオフェン誘導体を製造する工程を有する、一般式(M)で表されるジチエノべンゾジチオフェン誘導体の製造方法である。
【0143】
【化12】
【0144】
(各式中、R102は炭素原子数1〜20のアルキル基を表し、R107は炭素原子数1〜20のアルキル基を表し、R103、R105、R108及びR110は水素原子又は任意の置換基を表し、X12はハロゲン原子を表す。但し、R102及びR107は異なる。)
【0145】
本発明の製造方法に係わる一般式(G)’及び一般式(M)で表される化合物の置換基R103、R105、R108及びR110は、製造方法(2)で記載したR103、R105、R108及びR110と同義である。
前記炭素原子数1〜20のアルキル基の具体例としては、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、n−ノニル基、2,2−ジメチルヘプチル基、2,6−ジメチル−4−ヘプチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、1−ヘキシルヘプチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−エイコシル基等を挙げることが出来る。
【0146】
一般式(G)’で表されるジチエノべンゾジチオフェン誘導体は、「本発明の製造方法1」(但し、R=R102、R=R103、R=R105、R=H、R=R108、R10=R110の場合)又は「本発明の製造方法2」(但し、CH−(CH)n−がR102の場合)を用いて製造することが出来る。
【0147】
前記有機リチウムとしては、アルキルリチウム、アリールリチウム、リチウムジイソプロピルアミド等が挙げられ、より好ましくはノルマルブチルリチウムである。又、一般式(m)で表されるハロゲン化アルキルのX12としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、より好ましくはヨウ素原子である。
【0148】
一般式(G)’で表される化合物に対する有機リチウムの使用量(モル比)は、通常0.80〜2.00であり、好ましくは0.90〜1.10、更に好ましくは0.95〜1.05である。又、ハロゲン化アルキルの使用量(モル比)は、通常0.80〜10.00であり、好ましくは0.90〜5.00、更に好ましくは0.95〜1.05である。
【0149】
有機リチウムを反応させる反応温度としては、一般式(G)’で表される化合物がリチオ化される条件であれば特に制限されず、−196〜100℃であり、好ましくは−100〜0℃であり、更に好ましくは−78〜−60℃である。又、引き続き行なうハロゲン化アルキルとの反応における反応温度としては、一般式(M)で表される化合物が得られる条件であれば特に制限されず、−196〜100℃であり、好ましくは−78〜30℃であり、更に好ましくは0〜25℃である。
【0150】
反応時間としては、一般式(M)で表される化合物が得られる条件であれば特に制限されず、有機リチウムを反応させる時間も、引き続き行なう有機ハロゲン試薬を反応させる時間もそれぞれ5分〜10時間であり、好ましくは5分〜4時間であり、より好ましくは15分〜1時間である。
【0151】
溶媒としては、反応に不活性である限り特に制限はなく、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジブチルエーテル等のエーテル溶媒;
n−ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素溶媒;
トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;
等を挙げることが出来、これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用出来る。
より効率的に行なうには脱水乾燥させたエーテル系溶媒を用いるのが好ましい。
【0152】
反応雰囲気としては、乾燥空気中で行うことも出来るが、効率化のために乾燥窒素又は乾燥アルゴン雰囲気下で実施することが好ましい。
【0153】
製造方法(3)で得られた化合物(M)は、適宜精製を行ってもよい。精製方法としては、特に限定されないが、例えば、順相及び逆相カラムクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、再結晶、昇華精製等が挙げられる。
【0154】
(本発明のジチエノべンゾジチオフェン誘導体)
以下、本発明のジチエノべンゾジチオフェン誘導体について説明する。
本発明のジチエノべンゾジチオフェン誘導体は、一般式(N)で表されるジチエノべンゾジチオフェン誘導体である。
【0155】
【化13】
【0156】
(式中、R22は炭素原子数2〜20の直鎖アルキル基を表し、R27は、水素原子又はメチル基を表す。)
【0157】
本発明の化合物の特徴は、置換基R22及びR27に、異なったアルキル鎖長の置換基が導入されていることにある。R22及びR27が同一の置換基の場合、分子の対称性がC2hとなることで、対称性が高くなり、結晶性が過剰に高まる。このため、凝集能が過度に上がり、溶液(インク)の滴下(ドロップキャスト)とその乾燥で作製された多結晶膜の膜質が下がり(一般に大きな結晶粒が析出し膜の均質性が低くなる)、このような方法で製造された膜について、半導体特性が低下する。一方、本発明の化合物は、対称性が低いため、凝集能が適度に制御され、溶液(インク)の滴下(ドロップキャスト)とその乾燥で作製された多結晶膜の膜質が高く、そのため、このような方法で製造された膜においても高い半導体特性を呈する。
22について、溶媒溶解性の観点から、炭素原子数2〜12の直鎖アルキル基であることが好ましい。
【0158】
以下に、本発明の化合物の具体例を示すが、本発明で用いられる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0159】
【化14】
【0160】
(本発明のジチエノべンゾジチオフェン誘導体の製造方法)
本発明のジチエノべンゾジチオフェン誘導体は、前記「本発明の製造方法1」(但しR=R22、R=R27、且つR=R=R=R10=Hである場合)、「本発明の製造方法2」(但し、CH−(CH=R22、且つR103=R105=R108=R110=H=R27である場合)、「本発明の製造方法3」(但し、R102=R22、R107=R27、且つR103=R105=R108=R110=Hである場合)を用いて製造出来る。
その具体例を以下に示す。
【0161】
<製造方法1>
【0162】
【化15】
【0163】
<製造方法2>
【0164】
【化16】
【0165】
<製造方法3>
【0166】
【化17】
【0167】
(有機半導体材料・インク)
本発明の化合物は、有機半導体素子を用途とした、有機半導体材料として使用することが出来る。本発明の化合物を、有機半導体として使用するためには、通常、膜形態(有機半導体膜又は有機半導体層)にて使用される。膜の形成にあたっては、真空蒸着等公知慣用の乾式成膜法により形成しても構わないが、低温成膜が可能で、生産性に優れる湿式成膜法(塗工法又は印刷法)にて形成することが好ましく、そのために、本発明の化合物、即ち有機半導体材料は、インクとして使用することが好ましい。インクを調製するためには、本発明の化合物を溶媒に溶解する。又、半導体特性を損なわない範囲で、インク特性(印刷適性)を付与するために、フッ素系やシリコン系等のレベリング剤、及び、ポリスチレンやアクリル樹脂や高分子系有機半導体化合物等の高分子又はオリゴマー化合物を粘度調整剤として添加することも出来る。
【0168】
使用する溶媒は何を用いても構わず、又2種以上の溶媒を混合して用いても良い。具体的には、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカン、n−ドデカン等の脂肪族系溶媒;
シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式系溶媒;
ベンゼン、トルエン、クメン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、p−シメン、メシチレン、アニソール、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、2,5−ジメチルアニソール、3,5−ジメトキシトルエン、2,4−ジメチルアニソール、フェネトール、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、テトラリン、1,5−ジメチルテトラリン、n−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、n−ペンチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、2,5−ジエチルシベンゼン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ベンゾ二トリル等の芳香族系溶媒;
テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル(モノグライム)、ジグライム、トリグライム、エチレングリコールモノメチルエーテル(セロソルブ)、エチルセロソルブ、プロピオセロソルブ、ブチロセロソルブ、フェニルセロソルブ、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ベンジルエチルエーテル、エチルフェニルエーテル、ジフェニルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;
酢酸メチル、酢酸エチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;
メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン等のケトン系溶媒;
その他ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルホルムアミド等が挙げられるが、これらに限定されることはない。
調製された液体組成物における本発明の化合物の濃度としては、0.01〜20重量%であることが好ましく、更には0.1〜10重量%であることが好ましい。
【0169】
又、本発明の有機半導体インクは、用途に応じて、本発明の化合物以外に、他の有機半導体材料、即ち、電子供与性材料、電子受容性材料、電子輸送性材料、正孔輸送性材料、発光材料、光吸収材料等を含んでも良い。そのような材料としては、例えば、半導体的性質を示すπ共役系高分子又はオリゴマー、半導体的性質を示す非π共役系高分子又はオリゴマー、低分子系有機半導体化合物等が挙げられる。
【0170】
本発明の有機半導体インクは、分子配置の秩序性が高い、均質な有機半導体膜を与える。それ故、得られる有機半導体膜は、高い移動度を発現することが出来る。又、分子配置の秩序性が高い膜を得るために、特殊な印刷成膜や、熱アニール等の特別な処理を行う必要がなく、該インク液滴を滴下し、そのものを乾燥するだけで高い移動度の有機半導体膜が得られる。
【0171】
(有機半導体素子)
次に、本発明の有機半導体素子について説明する。本発明の有機半導体素子は、本発明の化合物を、活性層部(半導体層)に含有する有機半導体素子である。
【0172】
有機半導体素子の具体例として、ダイオード;メモリ;フォトダイオード、太陽電池、受光素子等の光電変換素子;電界効果型トランジスタ、静電誘導型トランジスタ、バイポーラトランジスタ等のトランジスタ;有機ELや発光トランジスタ等の発光素子;温度センサー、化学センサー、ガスセンサー、湿度センサー、放射線センサー、バイオセンサー、血液センサー、免疫センサー、人工網膜、味覚センサー、圧力センサー等のセンサー類;RFID等ロジック回路ユニット等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
中でも、本発明の化合物は、有機半導体材料として、1cm/Vs以上の高い移動度を有するので、有機トランジスタ又は発光素子への応用が特に有用である。
【0173】
(有機トランジスタ)
次に本発明の化合物を含有する有機トランジスタについて説明する。
有機トランジスタは、通常、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、ゲート絶縁層、及び有機半導体層を有してなるものであり、各電極や各層の配置によって種々のタイプの有機トランジスタがあるが、本発明の化合物及び有機半導体材料は有機トランジスタの種類に限定されることなく、何れの有機トランジスタにも使用することが出来る。有機トランジスタの種類については、アルドリッチ社の材料科学の基礎第6号「有機トランジスタの基礎」等を参照することが出来る。
【0174】
図1に示すボトムゲートボトムコンタクト型を一例に詳説すると、1は基板、2はゲート電極、3はゲート絶縁層、4は有機半導体層、5はソース電極、6はドレイン電極である。
【0175】
ここで、ボトムゲートボトムコンタクト型(以下、BC型)は、耐熱性、耐候性や耐溶媒性について、他の素子形成用材料(電極材料用金属やゲート絶縁材料用樹脂)より劣る有機半導体材料を、素子作製プロセスにおいて最後に扱うことから、より実用的な構造である。一方で、BC型はボトムゲートトップコンタクト型(以下、TC型)と比較して、素子特性に劣る傾向にある(アルドリッチ社の材料科学の基礎第6号「有機トランジスタの基礎」2.2節)。
本発明の化合物の特徴は、公知慣用の有機半導体材料用化合物が、TC型で高特性を示しても、BC型でその特性が再現されないのに対し、後記の如く、BC型においても、1cm/Vs以上の高い移動度を有する。これは、本発明の化合物が、インク液滴を滴下し、そのものを乾燥するだけで、適正な凝集力で、高移動度を与える多結晶膜を形成するためである。
【0176】
基板には、ガラスや樹脂を用いることが出来、フレキシブルなTFTを得るためには、ガラス製シート、樹脂製シート、プラスチックフィルム等を用いることが出来る。中でも、樹脂製シートやプラスチックフィルムを用いると、フレキシブル性に加え、軽量化を図ることが出来、可搬性を高めることが出来るとともに、衝撃に対する耐性を向上出来るので好適である。材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等を挙げることが出来る。
【0177】
ゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極の電極材料は、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、酸化スズ、アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペースト、カーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等を用いることが出来る。更に、ドーピング等で導電率を向上させた公知慣用の導電性高分子、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体(PEDOT/PSS)等も好適に用いることが出来る。
【0178】
電極の形成方法としては、前記材料を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知慣用のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極にパターン形成する方法、又は、前記導電性薄膜上に、熱転写又はインクジェット等によりレジストをパターン成膜し、然る後エッチングする方法がある。又、導電性高分子の溶液若しくは分散液、又は導電性微粒子の分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、導電性高分子の溶液若しくは分散液、又は導電性微粒子の分散液若しくはペーストを塗工し、斯くの如くして得られた塗工膜をリソグラフやレーザーアブレーション等によりパターニングしてもよい。更に、導電性高分子の溶液若しくは分散液、又は導電性微粒子の分散液若しくはペーストを、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、凸版印刷法、凸版反転印刷法、マイクロコンタクト印刷法等、各種印刷法でパターニングする方法も用いることが出来る。
【0179】
ゲート絶縁層は、ポリパラキシリレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂;UV硬化性樹脂等よりなる有機薄膜を好適に使用出来、更には、酸化シリコン膜等よりなる無機薄膜も用いることが出来る。
【0180】
ゲート絶縁層は、例えば、スピンコート法、ドロップキャスト法、キャストコート法、ディップ法、ダイコート法、ドクターブレード法、ワイヤーバーコート法、バーコート法、リバースコート法、エアドクターコート法、ブレードコート法、エアナイフコート法、ロールコート法、スクイズコート法、含浸コート法、トランスファーロールコート法、キスコート法、スリットコート法、スプレイコート法、静電コート法、超音波スプレイコート法、ディスペンス法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、凸版印刷法、凸版反転印刷法、マイクロコンタクト印刷法等の公知慣用の湿式成膜方法により作製することが可能であり、必要に応じフォトリソグラフ法で必要な形状にパターニングしてもよい。
【0181】
有機半導体層は、本発明の化合物を用いて真空蒸着法等の公知慣用の乾式成膜法にて成膜することが出来るが、前記本発明のインクを用いて印刷等の湿式成膜法にて成膜することが好ましい。有機半導体層の膜厚は、特に制限されることはないが、通常、0.5nm〜1μmであり、2nm〜250nmであると好ましい。
又、有機半導体層は、結晶性を高め半導体特性の向上等を図ることを目的に、必要に応じて、成膜後にアニーリングを実施
してもよい。アニーリングの温度は50〜200℃が好ましく、70〜200℃であると更に好ましく、時間は10分〜12時間が好ましく、1時間〜10時間がより好ましく、30分〜10時間であると更に好ましい。
【0182】
成膜方法としては、例えば、スピンコート法、ドロップキャスト法、キャストコート法、ディップ法、ダイコート法、ドクターブレード法、ワイヤーバーコート法、バーコート法、リバースコート法、エアドクターコート法、ブレードコート法、エアナイフコート法、ロールコート法、スクイズコート法、含浸コート法、トランスファーロールコート法、キスコート法、スリットコート法、スプレイコート法、静電コート法、超音波スプレイコート法、ディスペンス法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、凸版印刷法、凸版反転印刷法、マイクロコンタクト印刷法等の公知慣用の湿式成膜方法を挙げることが出来る。
【0183】
本発明の有機トランジスタは、表示装置を構成する画素のスイッチング用トランジスタ、信号ドライバー回路素子、メモリ回路素子、信号処理回路素子等として好適に使用出来る。表示装置の例としては、液晶表示装置、分散型液晶表示装置、電気泳動型表示装置、粒子回転型表示素子、エレクトロクロミック表示装置、有機EL表示装置、電子ペーパー等が挙げられる。
【実施例】
【0184】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)<化合物(1)の製造>
【0185】
【化18】
【0186】
【化19】
【0187】
アルゴンバルーンを接続した2L三つ口フラスコに、Advanced Materials,2009年,21巻,213−216頁に記載の方法にて(1a−b)で表される化合物のRをHへと変更し合成を行って得たジチエノべンゾジチオフェン(3.02g、10mmol)を加えてアルゴン置換を行った。クロロホルム(1500mL、関東化学社製)を加えて溶解させた後、内温を60度に加熱した。N−ブロモスクシンイミド(NBS、1.86g、10.5mmol、キシダ化学社製)をクロロホルム(150mL)に溶解させた溶液を滴下した。60度を保ちつつ30分間攪拌した後、室温まで冷却し(反応液は黄色に変化)た。わずかに析出した固体(主に臭素二置換体)を濾過にて除去し、濾液に飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を100mL加えた後、分液操作により有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過した後、溶媒を留去した。得られた淡黄色固体を乾燥することで目的物であるα−モノブロモジチエノベンゾチオフェンを2.8g(7.3mmol、収率73%)で得た。
HNMR(300MHz、CDCl):δppm=7.3325(d,H−H=5.4Hz,1H),7.3330(s,1H),7.54(d,H−H=5.4Hz,1H),8.22(s,1H),8.29(s,1H).Mass(FD):Calcd.forC14BrS:m/z=379.84and381.84,Found:379.89and381.88.
【0188】
【化20】
【0189】
アルゴンバルーンを接続した500mL三つ口フラスコに、前記実施例に記載の方法で得たα−モノブロモジチエノベンゾチオフェン(2.67g、7.0mmol)と、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(242mg、0.21mmol、東京化成社製)及びヨウ化銅(40mg、0.21mmol、関東化学社製)を加えてアルゴン置換を行った。乾燥トルエン(150mL、関東化学社製)を加えた後、内温を70度に加熱した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(9.8mL、70mmol、和光純薬社製)と1−ヘキシン(2.4mL、21mmol、東京化成社製)を滴下し、70度を保ちつつ12時間攪拌した後、室温まで冷却し(反応液は黒色に変化)た。反応液にイオン交換水を100mL加えた後、分液操作により有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過した後、金属スカベンジャーを用いて室温で45分間攪拌し遷移金属を除去し、濾過後に溶媒を留去した。得られた黒色粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン、ヘキサン:クロロホルム=98:2)で精製し、乾燥することで目的物であるα−モノ(ヘキサ−1−インイル)ジチエノベンゾチオフェンを1.04g(2.7mmol、収率39%)で淡黄色固体として得た。
HNMR(300MHz、CDCl):δppm=0.97(t,H−H=7.2Hz,3H),1.4−1.6(m,4H),2.49(t,H−H=6.9Hz,2H),7.31(s,1H),7.32(d,H−H=5.1Hz,1H),7.53(d,H−H=5.1Hz,1H),8.24(s,1H),8.28(s,1H).Mass(FD):Calcd.forC2014:m/z=382.00,Found:381.99.
【0190】
【化21】
【0191】
水素バルーンを接続した1L二つ口フラスコに、前記実施例に記載の方法で得たα−モノ(ヘキサ−1−インイル)ジチエノベンゾチオフェン(956mg、2.5mmol)と、パラジウムカーボン(300mg、50%wet)を加えて水素置換を行った。THF(100mL、関東化学社製)を加えた後、室温で激しく48時間攪拌した。反応液をセライト濾過して遷移金属を除去し、溶媒を留去した。得られた淡黄色粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン、ヘキサン:クロロホルム=98:2)で精製し、アセトニトリル:トルエン=90:10の混合溶媒を用いて加熱再結晶を行なうことで、目的物であるα−ヘキシルジチエノベンゾチオフェンを620mg(1.6mmol、収率64%)で無色固体として得た。なお、更に順相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム)、逆相オクタデシルシリルクロマトグラフィー(アセトニトリル/トルエン)、再結晶(アセトニトリル/トルエン)を繰り返し行なうことで、半導体特性の評価に充分な純度のα−モノヘキシルジチエノベンゾチオフェンを120mg得ている。
HNMR(300MHz、CDCl):δppm=0.90(t,H−H=7.2Hz,3H),1.3−1.5(m.95(t,H−H=7.2Hz,2H),7.01(s,1H),7.32(d,H−H=5.1Hz,1H),7.51(d,H−H=5.1Hz,1H),8.20(s,1H),8.27(s,1H).Mass(FD):Calcd.forC2018:m/z=386.03,Found:386.16.,6H),1.77(m,2H)
【0192】
<有機トランジスタの製造>
ガラス基板(図1の1に相当)上に金属マスクを用いてアルミニウムを真空蒸着法にて約30nmの厚さで成膜して、ゲート電極を形成した(図1の2に相当)。ここに、パリレン蒸着装置(ラボコーターPDS2010、日本パリレン製)を用いて、ジクロロ−ジパラキシリレン(DPX−C、日本パリレン製)を原料にして、ポリパラクロロキシリレン(パリレンC)薄膜(厚さ500nm)をケミカルベーパーデポジション(CVD)法にて作製し(図1の3に相当)、更に、真空蒸着法によって、金薄膜(厚さ40nm)からなるソース・ドレイン電極をパターン形成した(図1の5と6に相当。チャネル長L(ソース電極−ドレイン電極間隔)を75μm、チャネル幅Wを5.0mmとした)。次に、このようにして得られた基板を、ペンタフルオロチオフェノールの0.1%エタノール溶液に1時間浸漬したのち、窒素ブローで乾燥し、前記化合物(1)の0.4%p−キシレン溶液(有機半導体インク)の液滴0.1μLを、前記ソース・ドレイン電極の間にドロップキャスト(滴下)した後、自然濃縮により乾固させることで、前記化合物(1)よりなる有機半導体層(図1の4に相当)を形成した(有機半導体溶液(インク)液滴の滴下(ドロップキャスト)とその乾燥によって有機半導体層を形成)。
【0193】
<半導体特性(移動度)の評価>
このようにして得られた有機トランジスタについて、半導体特性(移動度)を評価した。半導体特性(移動度)は、ソース電極を接地し、ドレイン電極に−80Vを印加した状態で、デジタルマルチメーター(SMU237、ケースレー製)を用いて、ゲート電極に0から−80V、電圧(V)をスイープ印加しながら、ドレイン電極に流れる電流(I)を測定し、√I−Vの傾きから、(式1)を用いて求めた。単位はcm/V・sである。
【0194】
【数1】
【0195】
(式中、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、μは移動度、Cはゲート絶縁層の単位面積当たりの電気容量、Vは閾値電圧を表す)
評価結果を表1に示した。
【0196】
(実施例2)
<化合物(2)の製造>
【0197】
【化22】
【0198】
【化23】
【0199】
アルゴンバルーンを接続した300mL三つ口フラスコに、実施例1に記載の方法で得たα−モノヘキシルジチエノベンゾチオフェン(270mg、0.7mmol)を加えてアルゴン置換を行った。乾燥THF(30mL、関東化学社製)を加えた後、−78度まで冷却し5分間攪拌した。ノルマルブチルリチウム(0.65mL、1.0mmol、約1.6Mヘキサン溶液、関東化学社製)を加え、内温を−78度に保ち30分間攪拌した(反応溶液は淡赤色へと変化した)。ヨードメタン(0.07mL、1.0mmol、東京化成社製)を加え、1時間かけて室温へと昇温させつつ攪拌した(反応溶液は淡黄色へと変化した)。飽和塩化アンモニウム水溶液20mLを加えた後、トルエンを用いた分液操作により有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過した後、溶媒を留去した。得られた黄色粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン、ヘキサン:トルエン=99:1)で精製し、アセトニトリル:トルエン=90:10の混合溶媒を用いて加熱再結晶を行ない、乾燥することで目的物であるα−ヘキシル−α’−メチルジチエノベンゾチオフェンを150mg(0.37mmol、収率53%)で無色固体として得た。なお、更に順相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン)、逆相オクタデシルシリルクロマトグラフィー(アセトニトリル/トルエン)、再結晶(アセトニトリル/トルエン)を繰り返し行なうことで、半導体特性の評価に充分な純度のα−ヘキシル−α’−メチルジチエノベンゾチオフェンを50mg得ている。
HNMR(300MHz、CDCl):δppm=0.90(t,H−H=6.9Hz,3H),1.3−1.5(m,6H),1.76(m,2H),2.64(d,H−H=0.9Hz,3H),2.94(t,H−H=7.5Hz,2H),6.98(d,H−H=0.9Hz,1H),6.99(s,1H),8.15(s,1H+1H).Mass(FD):Calcd.forC2120:m/z=400.04,Found:400.04.
【0200】
<有機トランジスタの製造及び半導体特性(移動度)の評価>
化合物(1)のかわりに、化合物(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、有機トランジスタの製造、半導体特性(移動度)の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0201】
(実施例3)
<化合物(3)の製造>
【0202】
【化24】
【0203】
【化25】
【0204】
アルゴンバルーンを接続した1L三つ口フラスコに、2,3−ジブロモチオフェン(2.90g、12mmol、東京化成社製)を加えてアルゴン置換を行った。乾燥THF(300mL、関東化学社製)を加えた後、内温を−78度に冷却した。イソプロピルマグネシウムブロミド(12mL、12mmol、1Mテトラヒドロフラン溶液、和光純薬社製)を3分間かけて滴下し、内温を−78度に保ったまま30分間攪拌した(反応液は淡灰色に変化した)。ここに、乾燥THF50mLに溶解させた臭化亜鉛無水物(2.7g、12mmol、和光純薬社製)を5分間かけて滴下し、その後30分間かけて室温へと昇温しながら攪拌した。(反応液は白色に懸濁した)この反応溶液をA液とする。
【0205】
アルゴンバルーンを接続した1L三つ口フラスコに、1,4−ジブロモ−2,5−ジフルオロベンゼン(2.71g、10mmol、和光純薬社製)と、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(346mg、0.30mmol、東京化成社製)を加えてアルゴン置換を行った。乾燥THF(10mL、関東化学社製)を加えた後、内温を30度に固定しつつ、前記方法で調整したA液をカニュラーを用いて滴下し、30度を保ちつつ12時間攪拌した。(溶液は淡黄色に変化し、白色固体が懸濁した)
反応溶液をセライト濾過した後、1%塩酸水溶液を100mL加え、クロロホルムを用いて分液操作により有機層を分離し、飽和炭酸ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過した後、金属スカベンジャーを用いて室温で45分間攪拌し遷移金属を除去し、濾過後に溶媒を留去した。得られた褐色粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン、ヘキサン:THF=90:10)で精製し、乾燥することで目的物である1−ブロモ−2,5−ジフルオロ−4−(3−ブロモチエニル)ベンゼンを340mg(0.95mmol、収率8%)で無色固体として得た。
HNMR(300MHz、CDCl):δppm=7.09(d,H−H=5.4Hz,1H),7.33(dd,H−F=7.4Hz,H−F=6.6Hz,1H),7.41(dd,H−F=7.4Hz,H−F=6.6Hz,1H),7.42(d,H−H=5.4Hz,1H).
【0206】
【化26】
【0207】
アルゴンバルーンを接続した100mL三つ口フラスコに、Journal of Materials Chemistry,2009,19巻,5913−5915頁に記載の方法でRをC17へと変更し作成した2,3−ジブロモ−5−オクチルチオフェン(713mg、2mmol)を加えてアルゴン置換を行った。乾燥THF(30mL、関東化学社製)を加えた後、内温を−78度に冷却した。イソプロピルマグネシウムブロミド(2mL、2mmol、1Mテトラヒドロフラン溶液、和光純薬社製)を1分間かけて滴下し、内温を−78度に保ったまま30分間攪拌した(反応液は淡灰色に変化した)。ここに、乾燥THF5mLに溶解させた臭化亜鉛無水物(670mg、2mmol、和光純薬社製)を1分間かけて滴下し、その後30分間かけて室温へと昇温しながら攪拌した。(反応液は白色に懸濁した)この反応溶液をB液とする。
アルゴンバルーンを接続した300mL三つ口フラスコに、前記実施例に記載の方法で得た1−ブロモ−2,5−ジフルオロ−4−(3−ブロモチエニル)ベンゼン(353mg、1mmol)と、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(34mg、0.03mmol、東京化成社製)を加えてアルゴン置換を行った。乾燥THF(3mL、関東化学社製)を加えた後、前記方法で調整したB液をカニュラーを用いて滴下し、65度に加熱し12時間攪拌した。(溶液は淡黄色に変化し、白色固体が懸濁した)
【0208】
反応溶液をセライト濾過した後、1%塩酸水溶液を30mL加え、クロロホルムを用いて分液操作により有機層を分離し、飽和炭酸ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過した後、金属スカベンジャーを用いて室温で45分間攪拌し遷移金属を除去し、濾過後に溶媒を留去した。得られた褐色粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン、ヘキサン:THF=90:10)で精製し、更に逆相オクタデシルシリカカラムクロマトグラフィー(メタノール、メタノール:THF=50:50)で精製し、乾燥することで目的物である1,4−ジフルオロ−2−(3−ブロモチエニル)−5−(3−ブロモ−5−オクチルチエニル)ベンゼンを210mg(0.38mmol、収率38%)で無色固体として得た。H NMR(300MHz、CDCl):δppm =0.89(t,H−H =6.9Hz,3H),1.2−1.4(m,10H),1.69(m,2H)、2.80(t,H−H = 7.5 Hz,2H),6.79(s,1H),7.10(d,H−H = 5.4 Hz,1H),7.36(m,1H),7.39(m,1H),7.42(d,H−H=5.4Hz,1H).
【0209】
【化27】
【0210】
アルゴンバルーンを接続した100mLニつ口フラスコに、前記実施例に記載の方法で得た1,4−ジフルオロ−2−(3−ブロモチエニル)−5−(3−ブロモ−5−オクチルチエニル)ベンゼン(210mg、0.38mmol)と、硫化ナトリウム九水和物(288mg、1.2mmol、関東化学社製)を加えてアルゴン置換を行った。N−メチルピロリドン(10mL、関東化学社製)を加えた後、内温を180度に加熱し3時間攪拌した(反応液は褐色に変化した)。ここに、飽和塩化アンモニウム水溶液を90mL加え固体を析出させ、吸引濾過した後に得られた固体をメタノールで洗浄した。得られた淡黄色粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン、ヘキサン:トルエン=99:1)で精製し、更にアセトニトリル:トルエン=90:10の混合溶媒を用いて加熱再結晶を行ない、乾燥することで目的物であるα−モノオクチルジチエノベンゾチオフェンを100mg(0.24mmol、収率60%)で無色固体として得た。なお、再結晶を繰り返すことで、半導体特性の評価に充分な純度のα−モノオクチルジチエノベンゾチオフェンを20mg得ている。H NMR(300MHz、CDCl):δppm =0.88(t,H−H =6.9Hz,3H),1.2−1.4(m,10H),1.77(m,2H),2.91(t,H−H =7.2 Hz,2H),7.01(s,1H),7.31(d,H−H=5.1 Hz,1H),7.51(d,H−H=5.1Hz,1H),8.20(s,1H),8.27(s,1H).Mass(FD):Calcd.for C2222: m/z=414.06,Found:414.06.
【0211】
<有機トランジスタの製造及び半導体特性(移動度)の評価>
化合物(1)のかわりに、化合物(3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、有機トランジスタの製造、半導体特性(移動度)の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0212】
(比較例1)
WO2006/077888記載の方法にて(1’)で表される化合物を製造した。然る後、化合物(1)のかわりに、化合物(1’)を用いた以外は、実施例1と同様にして、有機トランジスタの製造、半導体特性(移動度)の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0213】
【化28】
【0214】
(比較例2)
Advanced Materials,2009年,21巻,213−216頁に記載の方法にて(2’)で表される化合物を製造した。然る後、化合物(1)のかわりに、化合物(2’)を用いた以外は、実施例1と同様にして、有機トランジスタの製造、半導体特性(移動度)の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0215】
【化29】
【0216】
【表1】
【0217】
表1より明らかなように、本発明の化合物は、溶媒溶解性に優れ、複雑なプロセスを経由せず簡便な湿式成膜法(即ち、溶液(インク)液滴を滴下し、そのものを乾燥)で半導体特性(移動度)高きBC型トランジスタを形成することが出来る。一方、比較例1、2に示した公知慣用の化合物は、このような簡便な成膜法では高い移動度を示すことが出来ない。以上より、本発明の化合物は、前記したが如く、実用上、好ましい性能を有しており、公知慣用の化合物に比べ優れていることが明らかである。従って、本発明の化合物を与えることが出来る、本発明の製造方法は、公知慣用の製造方法と比較して優れていることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明の化合物は有機半導体材料としての利用が可能であり、本発明の化合物を有機半導体層として用いる有機トランジスタへの利用が可能である。
【符号の説明】
【0219】
1:基板、2:ゲート電極、3:ゲート絶縁層、4:有機半導体層、5:ソース電極、6:ドレイン電極
図1
図2