【文献】
GOOSSEN, L. et al.,Lewis Acids as Highly Efficient Catalysts for the Decarboxylative Esterification of Carboxylic Acids with Dialkyl Dicarbonates,Adv. Synth. Catal.,2003年,Vol.345,pp.943-947
【文献】
BARTOLI, Giuseppe et al.,Reaction of dicarbonates with carboxylic acids catalyzed by weak lewis acids: general method for the synthesis of anhydrides and esters,Synthesis,2007年,No.22,pp.3489-3496
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルコールに対して、前記マグネシウム化合物0.001〜1000モル%、前記アルカリ金属化合物0.001〜1000モル%の存在下で反応させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書中では、アクリル酸およびメタクリル酸を合わせて(メタ)アクリル酸と記載する。アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを合わせて(メタ)アクリル酸エステルと記載する。
【0017】
〔式(I)で表される化合物〕
本発明のカルボン酸エステルの製造方法において、原料として式(I)で表される化合物が使用される。なお、式(I)で表される化合物は、反応によってその化合物由来の成分を含む中間体を生成するが、最終的に得られるカルボン酸エステルには、その化合物由来の成分は含まれない。
【0019】
式(I)で表される化合物において、R
1とR
2は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基を表す。R
1とR
2は炭化水素基であれば、その種類および構造は限定されない。この炭化水素基は直鎖状でも、分岐状でも、あるいは環構造を有してもよく、またその基中に不飽和結合あるいはエーテル結合を含んでいてもよい。R
1とR
2とが結合して、環状構造を形成していてもよい。
【0020】
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基が挙げられる。式(I)で表される化合物の入手容易性の観点から、これらの炭化水素基の炭素数は1〜20であり、2〜10であることが好ましく、3〜7であることがより好ましい。
【0021】
炭化水素基としては、より詳細には、アリル基、t−ブチル基、t−アミル基、およびベンジル基などを挙げることができる。また、式(I)で表される化合物としては、具体的には、例えば、二炭酸ジアリル、二炭酸ジ−t−ブチル、二炭酸ジ−t−アミル、および二炭酸ジベンジルなどが挙げられる。そのなかでも、カルボン酸エステルを効率よく合成できることから、R
1とR
2がt−ブチル基である二炭酸ジ−t−ブチルが好ましい。
【0022】
式(I)で表される化合物としては、市販されているものを使用することもでき、公知の方法などで製造して得られたものを使用することもできる。また、式(I)で表される化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
〔カルボン酸〕
本発明のカルボン酸エステルの製造方法において、カルボン酸エステルの原料となるカルボン酸の種類および構造は限定されない。例えば、カルボン酸は、「R
3−COOH」と表すことができ、R
3は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基であることが好ましい。この炭化水素基は、直鎖状でも、分岐状でも、あるいは環構造を有してもよく、またその基中に不飽和結合あるいはエーテル結合を含んでいてもよい。置換基を有していてもよいとは、任意の置換基を1つ以上有してもよいという意味であり、例えば、以下の結合、基および原子などを1つ以上有してもよいという意味である。エステル結合、アミド結合、エーテル結合、スルフィド結合、ジスルフィド結合、ウレタン結合、ニトロ基、シアノ基、ケトン基、ホルミル基、アセタール基、チオアセタール基、スルホニル基、ハロゲン、ケイ素、リンなど。
【0024】
カルボン酸中に含まれる炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基が挙げられる。カルボン酸の入手容易性の観点から、これらの炭化水素基の炭素数は、1〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましい。
【0025】
炭化水素基としては、より詳細には、ビニル基、イソプロペニル基、t−ブチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、およびフェニル基などを挙げることができる。またカルボン酸としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、ピバル酸、ヘプタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、アジピン酸モノメチルおよび6−クロロヘキサン酸などが挙げられる。そのなかでも、R
3はビニル基またはイソプロペニル基であることがより好ましい。カルボン酸としては、カルボン酸エステルとしての適用範囲が広いことから(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0026】
カルボン酸としては、市販されているものを使用することもでき、公知の方法などで製造して得られたものを使用することもできる。また、カルボン酸は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよく、多価カルボン酸を用いてもよい。
【0027】
本発明のカルボン酸エステルの製造方法におけるカルボン酸の使用量は、式(I)で表される化合物1モル当たり、0.1〜10モルが好ましく、0.2〜5モルがより好ましく、0.5〜2モルがさらに好ましい。カルボン酸の使用量を式(I)で表される化合物1モル当たり、0.1モル以上とすることにより、カルボン酸エステルの収率を高くすることができる。カルボン酸の使用量を式(I)で表される化合物1モル当たり、10モル以下とすることにより、反応後の後処理工程への負荷を軽減することができ、経済性を良くすることができる。
【0028】
〔アルコール〕
本発明のカルボン酸エステルの製造方法において、カルボン酸エステルの原料となるアルコールの種類および構造は限定されない。例えば、アルコールは、「R
4−OH」と表すことができ、R
4は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基であることが好ましい。この炭化水素基は直鎖状でも、分岐状でも、あるいは環構造を有してもよく、またその基中に不飽和結合を含んでいてもよい。置換基を有していてもよいとは、任意の置換基を1つ以上有してもよいという意味であり、例えば、以下の結合、基および原子などを1つ以上有してもよいという意味である。エステル結合、アミド結合、エーテル結合、スルフィド結合、ジスルフィド結合、ウレタン結合、ニトロ基、シアノ基、ケトン基、ホルミル基、アセタール基、チオアセタール基、スルホニル基、ハロゲン、ケイ素、リンなど。
【0029】
アルコール中に含まれる炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基が挙げられる。アルコールの入手容易性の観点から、これらの炭化水素基の炭素数は1〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましい。そのなかでも、炭化水素基はアリール基であることがより好ましい。従来は、高い収率での合成が難しかった芳香族アルコール由来のカルボン酸エステルが容易に合成できることから、アルコールとしては、芳香族アルコールが好ましく、具体的には、例えば、フェノール、フェニルフェノール、およびナフトールなどが挙げられる。
【0030】
アルコールは、市販されているものを使用することもでき、公知の方法などで製造して得られたものを使用することもできる。また、アルコールは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよく、多価アルコールを用いてもよい。
【0031】
アルコールの使用量は、式(I)で表される化合物1モル当たり、0.1〜10モルが好ましく、0.2〜5モルがより好ましく、0.5〜2モルがさらに好ましい。アルコールの使用量を式(I)で表される化合物1モル当たり、0.1モル以上とすることにより、カルボン酸エステルの収率を高くすることができる。アルコールの使用量を式(I)で表される化合物1モル当たり、10モル以下とすることにより、反応後の後処理工程への負荷を軽減することができ、経済性を良くすることができる。
【0032】
アルコールの使用量は、カルボン酸1モル当たり、0.1〜10モルが好ましく、0.2〜5モルがより好ましく、0.5〜2モルがさらに好ましい。アルコールの使用量をカルボン酸1モル当たり0.1モル以上とすることにより、カルボン酸エステルの収率を高くすることができる。アルコールの使用量をカルボン酸1モル当たり10モル以下とすることにより、反応後の後処理工程への負荷を軽減することができ、経済性を良くすることができる。
【0033】
〔カルボン酸エステルの製造用触媒〕
本発明のカルボン酸エステルの製造方法において使用される触媒は、マグネシウム化合物およびアルカリ金属化合物である。当該触媒を構成する配位子によって、当該触媒の溶解性が変わるため、当該触媒は、均一系触媒として用いることもでき、不均一系触媒として用いることもできる。
【0034】
本発明のカルボン酸エステルの製造方法においては、式(I)で表される化合物とカルボン酸とアルコールとを触媒の存在下で反応させるが、「触媒の存在下」とは、触媒が反応過程の少なくとも一部の段階で存在していればよく、反応過程のすべての段階で常に存在している必要はない。本発明のカルボン酸エステルの製造方法においては、触媒が反応系内に加えられれば、「触媒の存在下」という要件は満たされる。例えば、触媒を反応系内に加えた後、反応過程で触媒に何らかの変化が生じたとしても、「触媒の存在下」という要件は満たされる。
【0035】
(マグネシウム化合物)
マグネシウム化合物としては、マグネシウムの、酸化物、水酸化物塩、炭酸塩、炭酸水素塩、ケイ酸塩、硫酸塩、硫酸アンモニウム塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸アンモニウム塩、ホウ酸塩、ハロゲン酸塩、過ハロゲン酸塩、およびハロゲン化水素酸塩などの無機酸との塩;カルボン酸塩、過カルボン酸塩、およびスルホン酸塩などの有機酸との塩;アセチルアセトン塩、ヘキサフルオロアセチルアセトン塩、ポルフィリン塩、フタロシアニン塩、およびシクロペンタジエン塩などの錯塩が挙げられる。これらのマグネシウム塩は、水和物および無水物のいずれでもよく、特に限定されない。そのなかでも、マグネシウムの、酸化物、水酸化物塩、炭酸塩、硫酸塩、硫酸アンモニウム塩、硝酸塩、ハロゲン化水素酸塩、カルボン酸塩、および錯塩が好ましい。マグネシウム化合物としては、より詳細には、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水酸化マグネシウム(別名:塩基性炭酸マグネシウム)、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウムマグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、酢酸マグネシウム、安息香酸マグネシウム、(メタ)アクリル酸マグネシウム、およびアセチルアセトンマグネシウムが挙げられる。
【0036】
これらのマグネシウム化合物は、市販されているものを使用することもでき、公知の方法などで製造して得られたものを使用することもできる。これらは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
マグネシウム化合物の使用量は、カルボン酸エステルを製造できる限り、特には限定されない。マグネシウム化合物の使用量は、式(I)で表される化合物に対して、0.001〜1000モル%が好ましく、0.005〜500モル%がより好ましい。マグネシウム化合物の使用量を式(I)で表される化合物に対して、0.001モル%以上とすることにより、カルボン酸エステルの収率を高くすることができる。マグネシウム化合物の使用量を式(I)で表される化合物に対して、1000モル%以下とするのが好ましいのは、1000モル%超としても効果の飛躍的な向上が考えられにくいからである。
【0038】
マグネシウム化合物の使用量は、アルコールに対して、0.001〜1000モル%が好ましく、0.005〜500モル%がより好ましく、0.01〜250モル%がさらに好ましい。マグネシウム化合物の使用量をアルコールに対して0.001モル%以上とすることにより、カルボン酸エステルの収率を高くすることができる。マグネシウム化合物の使用量をアルコールに対して1000モル%以下とするのが好ましいのは、1000モル%超としても効果の飛躍的な向上が考えられにくいからである。
【0039】
(アルカリ金属化合物)
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の、水素化塩、酸化物、水酸化物塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、ハロゲン酸塩、過ハロゲン酸塩、ハロゲン化水素酸塩、およびチオシアン酸塩などの無機酸との塩;アルコキシド塩、カルボン酸塩、およびスルホン酸塩などの有機酸との塩;アミド塩、およびスルホンアミド塩などの有機塩基との塩;アセチルアセトン塩、ヘキサフルオロアセチルアセトン塩、ポルフィリン塩、フタロシアニン塩、シクロペンタジエン塩などの錯塩が挙げられる。これらのアルカリ金属塩は、水和物および無水物のいずれでもよく、特に限定されない。そのなかでも、アルカリ金属の、酸化物、水酸化物塩、炭酸塩、炭酸水素塩、ハロゲン化水素酸塩、カルボン酸塩、アミド塩、および錯塩が好ましい。
【0040】
アルカリ金属化合物中に含まれる金属としては、特に限定されないが、アルカリ金属に属する金属のうち、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが好ましく、触媒活性が高いことからリチウムがより好ましい。リチウム化合物としては、より詳細には、例えば、酸化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、酢酸リチウム、安息香酸リチウム、(メタ)アクリル酸リチウム、リチウムアミド、リチウムトリフルイミド、およびアセチルアセトンリチウムが挙げられる。
【0041】
これらのアルカリ金属化合物は、市販されているものを使用することもでき、公知の方法などで製造して得られたものを使用することもできる。これらは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
アルカリ金属化合物の使用量は、カルボン酸エステルを製造できる限り、特には限定されない。アルカリ金属化合物の使用量は、式(I)で表される化合物に対して、0.001〜1000モル%が好ましく、0.005〜500モル%がより好ましい。アルカリ金属化合物の使用量を式(I)で表される化合物に対して、0.001モル%以上とすることにより、カルボン酸エステルの収率を高くすることができる。アルカリ金属化合物の使用量を式(I)で表される化合物に対して、1000モル%以下とするのが好ましいのは、1000モル%超としても効果の飛躍的な向上が考えられにくいからである。
【0043】
アルカリ金属化合物の使用量は、アルコールに対して、0.001〜1000モル%が好ましく、0.005〜500モル%がより好ましく、0.01〜250モル%がさらに好ましい。アルカリ金属化合物の使用量をアルコールに対して0.001モル%以上とすることにより、カルボン酸エステルの収率を高くすることができる。アルカリ金属化合物の使用量をアルコールに対して1000モル%以下とするのが好ましいのは、1000モル%超としても効果の飛躍的な向上が考えられにくいからである。
【0044】
〔カルボン酸エステルの製造用反応条件〕
本発明のカルボン酸エステルの製造方法における反応条件は、特には限定されず、反応過程で反応条件を適宜変更することもできる。
【0045】
反応容器の形態は、特に限定されない。反応温度も特には限定されないが、−20〜180℃とすることができ、0〜100℃が好ましい。反応温度を−20℃以上とすることにより、反応を効率よく進行させることができる。反応温度を180℃以下とすることにより、副生成物の量や反応液の着色を抑制することができる。
【0046】
反応時間も特には限定されないが、例えば、0.5〜72時間とすることができ、2〜48時間とすることが好ましい。反応時間を0.5時間以上とすることにより、反応を十分に進行させることができる。反応時間を72時間以下とすることができるのは、72時間超としても効果の飛躍的な向上が考えられにくいからである。
【0047】
反応雰囲気も特には限定されない。反応圧力も特には限定されない。
【0048】
本発明のカルボン酸エステルの製造は、無溶媒(溶媒を用いない)で行うことができる。反応液の粘度が高いなどの場合には、必要に応じて、溶媒を用いることもできる。溶媒の種類も特には限定されないが、例えば、炭素数1〜25の有機化合物とすることができ、反応条件に応じて適宜選択することができる。溶媒としては、例えばテトラヒドロフランなどを用いることができる。溶媒は、1種でもよく、2種以上の混合溶媒でもよい。溶媒の使用量も限定されず、適宜選択することができる。
【0049】
反応に用いる原料(式(I)で表される化合物、カルボン酸、アルコール)、触媒、および必要に応じて溶媒などの反応容器内への導入方法については、特には制限されないが、全ての原料を一度に導入してもよく、一部または全ての原料を段階的に導入してもよく、一部または全ての原料を連続的に導入してもよい。また、これらの方法を組み合わせた導入方法でもよい。
【0050】
〔カルボン酸エステル〕
本発明のカルボン酸エステルの製造方法で得られる生成物は、例えば「R
3COOR
4」と表すことができ、R
3とR
4は、カルボン酸の説明の欄とアルコールの説明の欄において記載した通りである。
【0051】
本発明のカルボン酸エステルの製造方法で使用されるカルボン酸が(メタ)アクリル酸である場合、(メタ)アクリル酸エステルが生成する。(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルは重合しやすい化合物なので、重合を防止するために、予め重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤を添加するタイミングも特には限定されず、反応開始時に添加するのが操作しやすさの観点から好ましい。
【0052】
使用する重合禁止剤の種類としては、特には限定されず、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルフリーラジカルなどの公知の重合禁止剤を用いることができる。これらは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。重合禁止剤の使用量は、(メタ)アクリル酸、または(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して0.001〜0.5質量部とすることが好ましく、0.01〜0.1質量部とすることがより好ましい。また、空気などの酸素を含有するガスの吹き込みを行ってもよい。当該ガスの吹き込み量は、反応条件などに応じて適宜選択することができる。
【0053】
本発明のカルボン酸エステルの製造方法において、得られたカルボン酸エステルは、そのまま次の反応に使用することもでき、必要に応じて精製することもできる。精製条件は、特に限定はなく、反応過程および反応終了時で精製条件を適宜変更することができる。例えば、反応終了後、得られた反応混合液から、減圧蒸留、クロマトグラフィー、および再結晶などの方法によってカルボン酸エステルを精製することができる。これらの精製方法は、単独でまたは組み合わせて行うことができる。
【0054】
本発明のカルボン酸エステルの製造方法において、得られたカルボン酸エステルの保存容器としては、特には限定されず、例えば、ガラス製容器、樹脂製容器、および金属製容器などを用いることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
【0056】
以下の実施例および比較例において用いた二炭酸ジ−t−ブチルは、東京化成工業株式会社製の純度98質量%の化合物であり、式(I)におけるR
1とR
2はC(CH
3)
3である。また、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と略す。)は、関東化学株式会社製の特級グレード(水分0.05%以下)である。また、生成物の収率の測定方法は、以下の通りである。
【0057】
反応終了後、得られた反応混合液に標準物質(アニソールまたは1,1,2,2−テトラクロロエタン)を加え、重クロロホルム(CDCl
3)にこれらを溶解させ、
1H−NMR(270MHz)を測定した。得られたスペクトルの積分値から換算して、生成したカルボン酸エステルの物質量(ミリモル)を求めた。次いで、式(1)によりカルボン酸エステルの収率を算出した(ただし、算出した収率が1%未満の場合は0と表記する)。
【0058】
カルボン酸エステルの収率(%)=(P
1/R
1)×100 (1)
P
1:生成したカルボン酸エステルの物質量(ミリモル)
R
1:使用したアルコールの物質量(ミリモル)。
【0059】
また、触媒として用いたマグネシウム化合物およびアルカリ金属化合物の添加量(モル%)は、式(2)によりそれぞれ算出した。
【0060】
触媒の添加量(モル%)=(C
1/R
1)×100 (2)
C
1:使用した触媒の物質量(ミリモル)
R
1:使用したアルコールの物質量(ミリモル)。
【0061】
[実施例1]
容量100mLのナスフラスコ内にフェノール10.000g(106.26ミリモル)、メタクリル酸9.148g(106.26ミリモル)、二炭酸ジ−t−ブチル23.664g(106.26ミリモル)、水酸化リチウム一水和物0.018g(0.43ミリモル、0.4モル%)、およびアセチルアセトンマグネシウム0.024g(0.11ミリモル、0.1モル%)を順次加え、撹拌下、25℃で反応を行い、メタクリル酸フェニルを製造した。反応開始から5時間後における反応結果を表1に示す。
【0062】
[実施例2〜14]
触媒として、水酸化リチウム一水和物の代わりに表1に示す種類のアルカリ金属化合物(0.4モル%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、メタクリル酸フェニルを製造した。反応開始から5時間後における反応結果を表1に示す。
【0063】
[比較例1]
水酸化リチウム一水和物を用いないこと以外は実施例1と同様にして、メタクリル酸フェニルを製造した。反応開始から5時間後における反応結果を表1に示す。
【0064】
[比較例2]
アセチルアセトンマグネシウムを用いないこと以外は実施例1と同様にして、メタクリル酸フェニルを製造しようとした。反応開始から5時間後における反応結果を表1に示す。
【0065】
[比較例3]
水酸化リチウム一水和物の添加量を2.0モル%にしたこと以外は比較例2と同様にして、メタクリル酸フェニルを製造しようとした。反応開始から24時間後における反応結果を表1に示す。
【0066】
[比較例4〜10]
水酸化リチウム一水和物の代わりに表1に示す種類と量のアルカリ金属化合物(1.0モル%または2.0モル%)を用いたこと以外は比較例2と同様にして、メタクリル酸フェニルを製造しようとした。反応開始から24時間後における反応結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
[実施例15〜19]
表2に示す量の水酸化リチウム一水和物(0.1モル%〜2.0モル%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、メタクリル酸フェニルを製造した。反応開始から5時間後または24時間後における反応結果を表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
[実施例20〜31]
アセチルアセトンマグネシウムの代わりに表3に示す種類と量のマグネシウム化合物(0.05モル%〜0.5モル%)を用い、表3に示す量の水酸化リチウム一水和物(0.2モル%〜2.0モル%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、メタクリル酸フェニルを製造した。反応開始から5時間後または24時間後における反応結果を表3に示す。
【0071】
[比較例11〜22]
水酸化リチウム一水和物を用いないこと以外は実施例20〜31と同様にして、メタクリル酸フェニルを製造または製造しようとした。反応開始から5時間後または24時間後における反応結果を表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
[実施例32]
容量100mLのナスフラスコ内にフェノール10.000g(106.26ミリモル)、アクリル酸7.657g(106.26ミリモル)、二炭酸ジ−t−ブチル23.664g(106.26ミリモル)、臭化リチウム0.046g(0.53ミリモル、0.5モル%)、および硫酸マグネシウム0.064g(0.53ミリモル、0.5モル%)を順次加え、撹拌下、25℃で反応を行い、アクリル酸フェニルを製造した。反応開始から24時間後における反応結果を表4に示す。
【0074】
[実施例33〜35]
臭化リチウムの代わりに表4に示す種類のアルカリ金属化合物(0.5モル%)を用いたこと以外は実施例32と同様にして、アクリル酸フェニルを製造した。反応開始から24時間後における反応結果を表4に示す。
【0075】
[比較例23]
臭化リチウムを用いないこと以外は実施例32と同様にして、アクリル酸フェニルを製造しようとした。反応開始から24時間後における反応結果を表4に示す。
【0076】
[比較例24]
硫酸マグネシウムを用いないこと以外は、実施例32と同様にして、アクリル酸フェニルを製造しようとした。反応開始から24時間後における反応結果を表4に示す。
【0077】
【表4】
【0078】
[実施例36]
容量1Lのナスフラスコ内にフェノール153.370g(1629.69ミリモル)、メタクリル酸140.300g(1629.69ミリモル)、二炭酸ジ−t−ブチル362.938g(1629.69ミリモル)、水酸化リチウム一水和物0.027g(0.65ミリモル、0.04モル%)、および水酸化マグネシウム0.010g(0.16ミリモル、0.01モル%)を順次加え、撹拌下、25℃で反応を行い、メタクリル酸フェニルを製造した。反応開始から48時間後における反応結果を表5に示す。
【0079】
[実施例37〜62]
表5〜7に記載の原料、触媒、溶媒を用いて同表に記載の条件に変更し、適宜、小さなナスフラスコを用いたこと以外は実施例36と同様の操作を行い、カルボン酸エステルを製造した。反応結果を同表に示す。
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】