(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るアニリン誘導体は、式(1)で表される。
【0010】
式(1)において、R
1〜R
4は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。
【0011】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
炭素数1〜20のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等の炭素数3〜20の環状アルキル基などが挙げられる。
【0012】
炭素数2〜20のアルケニル基の具体例としては、エテニル基、n−1−プロペニル基、n−2−プロペニル基、1−メチルエテニル基、n−1−ブテニル基、n−2−ブテニル基、n−3−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−エチルエテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、n−1−ペンテニル基、n−1−デセニル基、n−1−エイコセニル基等が挙げられる。
【0013】
炭素数2〜20のアルキニル基の具体例としては、エチニル基、n−1−プロピニル基、n−2−プロピニル基、n−1−ブチニル基、n−2−ブチニル基、n−3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、n−1−ペンチニル基、n−2−ペンチニル基、n−3−ペンチニル基、n−4−ペンチニル基、1−メチル−n−ブチニル基、2−メチル−n−ブチニル基、3−メチル−n−ブチニル基、1,1−ジメチル−n−プロピニル基、n−1−ヘキシニル基、n−1−デシニル基、n−1−ペンタデシニル基、n−1−エイコシニル基等が挙げられる。
【0014】
炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基等が挙げられる。
【0015】
炭素数2〜20のヘテロアリール基の具体例としては、2−チエニル基、3−チエニル基、2−フラニル基、3−フラニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、4−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基、2−チアゾリル基、4−チアゾリル基、5−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、4−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基等が挙げられる。
【0016】
これらの中でも、R
1〜R
4は、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基が好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、水素原子、フッ素原子がより一層好ましく、水素原子が最適である。
【0017】
上記Ar
1は、互いに独立して、式(A1)〜(A14)で表されるいずれかの基を表す。
これらの中でも、化合物の有機溶媒に対する溶解性や、得られる薄膜の電荷輸送性を向上させるという点から、式(A1)〜(A12)で表されるいずれかの基が好ましく、式(A1)〜(A3)、(A5)〜(A7)、および(A10)〜(A12)で表されるいずれかの基がより好ましく、式(A1)、(A5)、および(A10)〜(A12)で表されるいずれかの基がより一層好ましく、式(A1)および(A5)で表されるいずれかの基がさらに好ましい。
ただし、本発明においては、式(1)において、4つのAr
1が同時に式(A5)で表される基となる化合物は含まない。
【0019】
上記式(1)で表されるアニリン誘導体は、合成の容易性の観点、化合物の有機溶媒への溶解性の観点等から、次のような対称性をもつことが好ましい。
すなわち、本発明においては、式(1′)で表されるアニリン誘導体が好ましい。
【0020】
【化8】
(式中、Ar
11および
Ar12はともに、前記式(A1)〜(A4)および(A6)〜(A14)のいずれかで表される同一の基を表し、
Ar13およびAr
14はともに、前記式(A1)〜(A14)のいずれかで表される同一の基を表す。)
【0021】
Ar
11および
Ar12としては、化合物の有機溶媒に対する溶解性や、得られる薄膜の電荷輸送性を向上させるという点から、式(A1)〜(A4)、および(A6)〜(A12)で表されるいずれかの基が好ましく、式(A1)〜(A3)、(A6)〜(A7)、および(A10)〜(A12)で表されるいずれかの基がより好ましく、式(A1)、および(A10)〜(A12)で表されるいずれかの基がより一層好ましく、式(A1)で表される基がさらに好ましい。
Ar13およびAr
14としては、化合物の有機溶媒に対する溶解性や、得られる薄膜の電荷輸送性を向上させるという点から、式(A1)〜(A12)で表されるいずれかの基が好ましく、式(A1)〜(A3)、(A5)〜(A7)、および(A10)〜(A12)で表されるいずれかの基がより好ましく、式(A1)、(A5)、および(A10)〜(A12)で表されるいずれかの基がより一層好ましく、式(A1)および(A5)で表されるいずれかの基がさらに好ましい。
【0022】
特に、合成の容易性の観点、アニリン誘導体の有機溶媒への溶解性、電荷輸送性等のバランスを考慮すると、本発明においては、式(1)における4つのAr
1が同一の基(ただし、式(A5)で表される基は除く)であることが最適である。
【0023】
なお、本発明において、上記アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基の炭素数は、好ましくは10以下であり、より好ましくは6以下であり、より一層好ましくは4以下である。
また、アリール基およびヘテロアリール基の炭素数は、好ましくは14以下であり、より好ましくは10以下であり、より一層好ましくは6以下である。
【0024】
本発明の式(1)で示されるアニリン誘導体は、式(2)で表されるアミン化合物と、式(3)で表されるアリール化合物とを、触媒存在下で反応させて製造できる。
【0025】
【化9】
(式中、Zは、ハロゲン原子または擬ハロゲン基を表し、R
1〜R
4およびAr
1は、前記と同じ意味を表す。)
【0026】
また、本発明の式(1′)で示されるアニリン誘導体は、式(2)で表されるアミン化合物と、式(3−1)で表されるアリール化合物と、式(3−2)で表されるアリール化合物と、式(3−3)で表されるアリール化合物と、式(3−4)で表されるアリール化合物とを、触媒存在下で段階的に反応させて製造できる。
一例を挙げると、式(1′)で表されるアニリン誘導体は、式(2)で表されるアミン化合物と、式(3−1)で表されるアリール化合物および式(3−2)で表されるアリール化合物とを触媒下で反応させて式(2′)で示される中間体へ導いた後、これと、式(3−3)で表されるアリール化合物および式(3−4)で表されるアリール化合物とを、触媒存在下で反応させて製造できる。
【0027】
【化10】
(式中、Z、R
1〜R
4、およびAr
11〜Ar
14は、前記と同じ意味を表す。)
【0028】
ハロゲン原子としては、上記と同様のものが挙げられる。
擬ハロゲン基としては、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ノナフルオロブタンスルホニルオキシ基等の(フルオロ)アルキルスルホニルオキシ基;ベンゼンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基等の芳香族スルホニルオキシ基などが挙げられる。
【0029】
式(2)で表されるアミン化合物と、式(3)で表されるアリール化合物との仕込み比は、アミン化合物の全NH基の物質量に対し、アリール化合物を当量以上とすることができるが、1〜1.2当量程度が好適である。
また、式(2)で表されるアミン化合物と、式(3−1)および(3−2)で表されるアリール化合物との仕込み比は、式(2)で表されるアミン化合物の物質量に対して、それぞれ当量以上とすることができるが、1〜1.2当量程度が好適である。
また、式(2′)で表される中間体と、式(3−3)および(3−4)で表されるアリール化合物との仕込み比は、中間体の物質量(式(2)で表されるアミン化合物の物質量で考えることもできる)に対し、それぞれ当量以上とすることができるが、1〜1.2当量程度が好適である。
【0030】
上記反応に用いられる触媒としては、例えば、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅等の銅触媒;Pd(PPh
3)
4(テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム)、Pd(PPh
3)
2Cl
2(ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム)、Pd(dba)
2(ビス(ベンジリデンアセトン)パラジウム)、Pd
2(dba)
3(トリス(ベンジリデンアセトン)ジパラジウム)、Pd(P−t−Bu
3)
2(ビス(トリt−ブチルホスフィン)パラジウム)等のパラジウム触媒などが挙げられる。これらの触媒は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、これらの触媒は、公知の適切な配位子とともに使用してもよい。
【0031】
触媒の使用量は、使用する全アリール化合物を1molとした場合に、0.2mol程度とすることができるが、0.15mol程度が好適である。
また、配位子を用いる場合、その使用量は、使用する金属錯体に対し0.1〜5当量とすることができるが、1〜2当量が好適である。
【0032】
上記各反応は溶媒中で行ってもよい。溶媒を使用する場合、その種類は、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限はない。具体例としては、脂肪族炭化水素類(ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカン、デカリン等)、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン等)、ハロゲン化芳香族炭化水素類(クロロベンゼン、ブロモベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノン等)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、ラクタムおよびラクトン類(N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン等)、尿素類(N,N−ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチルウレア等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド、スルホラン等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等)などが挙げられ、これらの溶媒は単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
【0033】
反応温度は、用いる溶媒の融点から沸点までの範囲で適宜設定すればよいが、特に、0〜200℃程度が好ましく、20〜150℃がより好ましい。
反応終了後は、常法にしたがって後処理をし、目的とするアニリン誘導体を得ることができる。
【0034】
以下、式(1)で表されるアニリン誘導体の具体例を挙げるが、これらに限定されるわけではない。
【0036】
本発明の電荷輸送性ワニスは、式(1)で表されるアニリン誘導体からなる電荷輸送性物質と、有機溶媒とを含むものであるが、得られる薄膜の用途に応じ、その電荷輸送能の向上等を目的としてドーパント物質を含んでいてもよい。
ドーパント物質としては、ワニスに使用する少なくとも1種の溶媒に溶解するものであれば特に限定されず、無機系のドーパント物質、有機系のドーパント物質のいずれも使用できる。
【0037】
特に無機系のドーパント物質としては、ヘテロポリ酸が好ましい。
ヘテロポリ酸とは、代表的に式(D1)で示されるKeggin型あるいは式(D2)で示されるDawson型の化学構造で示される、ヘテロ原子が分子の中心に位置する構造を有し、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の酸素酸であるイソポリ酸と、異種元素の酸素酸とが縮合してなるポリ酸である。このような異種元素の酸素酸としては、主にケイ素(Si)、リン(P)、ヒ素(As)の酸素酸が挙げられる。
【0039】
ヘテロポリ酸の具体例としては、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンタングストモリブデン酸等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、本発明で用いるヘテロポリ酸は、市販品として入手可能であり、また、公知の方法により合成することもできる。
特に、1種類のヘテロポリ酸を用いる場合、その1種類のヘテロポリ酸は、リンタングステン酸またはリンモリブデン酸が好ましく、リンタングステン酸が最適である。また、2種類以上のヘテロポリ酸を用いる場合、その2種類以上のヘテロポリ酸の1つは、リンタングステン酸またはリンモリブデン酸が好ましく、リンタングステン酸がより好ましい。
なお、ヘテロポリ酸は、元素分析等の定量分析において、一般式で示される構造から元素の数が多いもの、または少ないものであっても、それが市販品として入手したもの、あるいは、公知の合成方法にしたがって適切に合成したものである限り、本発明において用いることができる。
すなわち、例えば、一般的には、リンタングステン酸は化学式H
3(PW
12O
40)・nH
2Oで、リンモリブデン酸は化学式H
3(PMo
12O
40)・nH
2Oでそれぞれ示されるが、定量分析において、この式中のP(リン)、O(酸素)またはW(タングステン)もしくはMo(モリブデン)の数が多いもの、または少ないものであっても、それが市販品として入手したもの、あるいは、公知の合成方法にしたがって適切に合成したものである限り、本発明において用いることができる。この場合、本発明に規定されるヘテロポリ酸の質量とは、合成物や市販品中における純粋なリンタングステン酸の質量(リンタングステン酸含量)ではなく、市販品として入手可能な形態および公知の合成法にて単離可能な形態において、水和水やその他の不純物等を含んだ状態での全質量を意味する。
【0040】
本発明の電荷輸送性ワニスに含まれるヘテロポリ酸は、質量比で、本発明のアニリン誘導体からなる電荷輸送性物質1に対して0.01〜50程度とすることができるが、好ましくは0.1〜10程度、より好ましくは1.0〜5.0程度である。
【0041】
一方、有機系のドーパント物質としては、特にテトラシアノキノジメタン誘導体やベンゾキノン誘導体が好ましい。
テトラシアノキノジメタン誘導体の具体例としては、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)や、式(4)で表されるハロテトラシアノキノジメタンなどが挙げられる。
また、ベンゾキノン誘導体の具体例としては、テトラフルオロ−1,4−ベンゾキノン(F4BQ)、テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン(クロラニル)、テトラブロモ−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)などが挙げられる。
【0043】
式中、R
5〜R
8は、互いに独立して、水素原子またはハロゲン原子を表すが、少なくとも1つはハロゲン原子であり、少なくとも2つがハロゲン原子であることが好ましく、少なくとも3つがハロゲン原子であることがより好ましく、全てがハロゲン原子であることが最も好ましい。
ハロゲン原子としては上記と同じものが挙げられるが、フッ素原子または塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0044】
ハロテトラシアノキノジメタン化合物の具体例としては、2−フルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、2−クロロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、2,5−ジフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、2,5−ジクロロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、2,3,5,6−テトラクロロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)等が挙げられるが、本発明においては、F4TCNQが最適である。
【0045】
本発明の電荷輸送性ワニスにおけるテトラシアノキノジメタン誘導体およびベンゾキノン誘導体の含有量は、本発明のアニリン誘導体に対して、好ましくは0.0001〜50当量、より好ましくは0.001〜20当量、さらに好ましくは0.01〜10当量である。
【0046】
本発明においては、高電荷輸送性の薄膜を再現性よく得ること、ドーパント物質の入手容易性などを考慮すると、ドーパント物質として、ハロテトラシアノキノジメタンおよびベンゾキノン誘導体の少なくとも1種が含まれることが好ましく、F4TCNQおよびDDQの少なくとも1種が含まれることがより好ましい。
また、得られる薄膜を有機EL素子の正孔注入層として用いる場合、高寿命の素子を再現性よく得ること、ドーパント物質の入手容易性などを考慮すると、ドーパント物質として、ハロテトラシアノキノジメタンおよびベンゾキノン誘導体の少なくとも1種とヘテロポリ酸とが含まれることが好ましく、ハロテトラシアノキノジメタンおよびベンゾキノン誘導体の少なくとも1種とリンタングステン酸およびリンモリブデン酸の少なくとも1種とが含まれることがより好ましく、F4TCNQおよびDDQの少なくとも1種とリンタングステン酸とが含まれることがより一層好ましい。
【0047】
さらに、得られる薄膜を有機EL素子の正孔注入層として用いる場合、高寿命の素子を再現性よく得ることを考慮すると、本発明の電荷輸送性ワニスは、有機シラン化合物を含むことが好ましい。
有機シラン化合物としては、ジアルコキシシラン化合物、トリアルコキシシラン化合物またはテトラアルコキシシラン化合物が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
とりわけ、有機シラン化合物としては、ジアルコキシシラン化合物またはトリアルコキシシラン化合物が好ましく、トリアルコキシシラン化合物がより好ましい。
【0048】
これらのアルコキシシラン化合物としては、例えば、式(5)〜(7)で示されるものが挙げられる。
Si(OR)
4 (5)
SiR′(OR)
3 (6)
Si(R′)
2(OR)
2 (7)
【0049】
式中、Rは、互いに独立して、Z
1で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、Z
1で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、Z
1で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、Z
2で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、またはZ
2で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、R′は、互いに独立して、Z
3で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、Z
3で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、Z
3で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、Z
4で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、またはZ
4で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。
【0050】
Z
1は、ハロゲン原子、Z
5で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、またはZ
5で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、Z
2は、ハロゲン原子、Z
5で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、Z
5で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、またはZ
5で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキニル基を表す。
【0051】
Z
3は、ハロゲン原子、Z
5で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、Z
5で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、ウレイド基(−NHCONH
2)、チオール基、イソシアネート基(−NCO)、アミノ基、−NHY
1基、または−NY
2Y
3基を表し、Z
4は、ハロゲン原子、Z
5で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、Z
5で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、Z
5で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、ウレイド基(−NHCONH
2)、チオール基、イソシアネート基(−NCO)、アミノ基、−NHY
1基、または−NY
2Y
3基を表し、Y
1〜Y
3は、互いに独立して、Z
5で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、Z
5で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、Z
5で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、Z
5で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、またはZ
5で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。
Z
5は、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基またはチオール基を表す。
【0052】
式(5)〜(7)における、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、および炭素数2〜20のヘテロアリール基としては、上記と同様のものが挙げられる。
RおよびR′において、アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基の炭素数は、好ましくは10以下であり、より好ましくは6以下であり、より一層好ましくは4以下である。
また、アリール基およびヘテロアリール基の炭素数は、好ましくは14以下であり、より好ましくは10以下であり、より一層好ましくは6以下である。
【0053】
Rとしては、Z
1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数2〜20のアルケニル基、またはZ
2で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基が好ましく、Z
1で置換されていてもよい、炭素数1〜6のアルキル基もしくは炭素数2〜6のアルケニル基、またはZ
2で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、Z
2で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基またはZ
2で置換されていてもよいフェニル基がより一層好ましく、Z
1で置換されていてもよい、メチル基またはエチル基がさらに好ましい。
また、R′としては、Z
3で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基またはZ
4で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基が好ましく、Z
3で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基またはZ
4で置換されていてもよい炭素数6〜14のアリール基がより好ましく、Z
3で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、またはZ
4で置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基がより一層好ましく、Z
3で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基またはZ
4で置換されていてもよいフェニル基がさらに好ましい。
なお、複数のRは、すべて同一でも異なっていてもよく、複数のR′も、すべて同一でも異なっていてもよい。
【0054】
Z
1としては、ハロゲン原子またはZ
5で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基が好ましく、フッ素原子またはZ
5で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、存在しないこと(すなわち、非置換であること)が最適である。
また、Z
2としては、ハロゲン原子またはZ
5で置換されていてもよい炭素数6〜20のアルキル基が好ましく、フッ素原子またはZ
5で置換されていてもよい炭素数1〜10アルキル基がより好ましく、存在しないこと(すなわち、非置換であること)が最適である。
【0055】
一方、Z
3としては、ハロゲン原子、Z
5で置換されていてもよいフェニル基、Z
5で置換されていてもよいフラニル基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、ウレイド基、チオール基、イソシアネート基、アミノ基、Z
5で置換されていてもよいフェニルアミノ基、またはZ
5で置換されていてもよいジフェニルアミノ基が好ましく、ハロゲン原子がより好ましく、フッ素原子、または存在しないこと(すなわち、非置換であること)がより一層好ましい。
また、Z
4としては、ハロゲン原子、Z
5で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、Z
5で置換されていてもよいフラニル基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、ウレイド基、チオール基、イソシアネート基、アミノ基、Z
5で置換されていてもよいフェニルアミノ基、またはZ
5で置換されていてもよいジフェニルアミノ基が好ましく、ハロゲン原子がより好ましく、フッ素原子、または存在しないこと(すなわち、非置換であること)がより一層好ましい。
そして、Z
5としては、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子または存在しないこと(すなわち、非置換であること)がより好ましい。
【0056】
以下、本発明で使用可能な有機シラン化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
ジアルコキシシラン化合物の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0057】
トリアルコキシシラン化合物の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、トリエトキシ(4−(トリフルオロメチル)フェニル)シラン、ドデシルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、(トリエトキシシリル)シクロヘキサン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、トリエトキシフルオロシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリエトキシシラン、トリエトキシ−2−チエニルシラン、3−(トリエトキシシリル)フラン等が挙げられる。
【0058】
テトラアルコキシシラン化合物の具体例としては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラプロポキシシラン等が挙げられる。
【0059】
これらの中でも、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリエトキシ(4−(トリフルオロメチル)フェニル)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシランが好ましい。
【0060】
本発明の電荷輸送性ワニスが有機シラン化合物を含有する場合、その含有量は、電荷輸送性物質(ドーパント物質が含まれる場合には電荷輸送性物質およびドーパント物質)の総質量に対して、通常0.1〜50質量%程度であるが、得られる薄膜の電荷輸送性の低下を抑制し、かつ、上述した陰極側に正孔注入層に接するように積層される層への正孔注入能を高めることを考慮すると、好ましくは0.5〜40質量%程度、より好ましくは0.8〜30質量%程度、より一層好ましくは1〜20質量%程度である。
【0061】
なお、本発明の電荷輸送性ワニスには、上述したアニリン誘導体からなる電荷輸送性物質の他に、公知のその他の電荷輸送性物質を用いることもできる。
【0062】
電荷輸送性ワニスを調製する際に用いられる有機溶媒としては、電荷輸送性物質およびドーパント物質を良好に溶解し得る高溶解性溶媒を用いることができる。
このような高溶解性溶媒としては、例えば、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイソブチルアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等の有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒は1種単独で、または2種以上混合して用いることができ、その使用量は、ワニスに使用する溶媒全体に対して5〜100質量%とすることができる。
なお、電荷輸送性物質およびドーパント物質は、いずれも上記溶媒に完全に溶解しているか、均一に分散している状態となっていることが好ましく、完全に溶解していることがより好ましい。
【0063】
また、本発明においては、ワニスに、25℃で10〜200mPa・s、特に35〜150mPa・sの粘度を有し、常圧(大気圧)で沸点50〜300℃、特に150〜250℃の高粘度有機溶媒を少なくとも1種類含有させることで、ワニスの粘度の調整が容易になり、その結果、平坦性の高い薄膜を再現性よく与える、用いる塗布方法に応じたワニス調製が可能となる。
高粘度有機溶媒としては、例えば、シクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,3−オクチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、へキシレングリコール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
本発明のワニスに用いられる溶媒全体に対する高粘度有機溶媒の添加割合は、固体が析出しない範囲内であることが好ましく、固体が析出しない限りにおいて、添加割合は、5〜80質量%が好ましい。
【0064】
さらに、基板に対する濡れ性の向上、溶媒の表面張力の調整、極性の調整、沸点の調整等の目的で、その他の溶媒を、ワニスに使用する溶媒全体に対して1〜90質量%、好ましくは1〜50質量%の割合で混合することもできる。
このような溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジアセトンアルコール、γ−ブチロラクトン、エチルラクテート、n−ヘキシルアセテート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒は1種単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0065】
本発明のワニスの粘度は、作製する薄膜の厚み等や固形分濃度に応じて適宜設定されるものではあるが、通常、25℃で1〜50mPa・sである。
また、本発明における電荷輸送性ワニスの固形分濃度は、ワニスの粘度および表面張力等や、作製する薄膜の厚み等を勘案して適宜設定されるものではあるが、通常、0.1〜10.0質量%程度であり、ワニスの塗布性を向上させることを考慮すると、好ましくは0.5〜5.0質量%程度、より好ましくは1.0〜3.0質量%程度である。
【0066】
電荷輸送性ワニスの調製法としては、特に限定されるものではないが、例えば、本発明のアニリン誘導体を高溶解性溶媒に溶解させ、そこへ高粘度有機溶媒を加える手法や、高溶解性溶媒と高粘度有機溶媒を混合し、そこへ本発明のアニリン誘導体を溶解させる手法が挙げられる。
【0067】
本発明においては、電荷輸送性ワニスは、より平坦性の高い薄膜を再現性よく得る観点から、電荷輸送性物質、ドーパント物質等を有機溶媒に溶解させた後、サブマイクロオーダーのフィルター等を用いて濾過することが望ましい。
【0068】
以上で説明した電荷輸送性ワニスを基材上に塗布して焼成することで、基材上に電荷輸送性薄膜を形成させることができる。
ワニスの塗布方法としては、特に限定されるものではなく、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り、インクジェット法、スプレー法、スリットコート法等が挙げられ、塗布方法に応じてワニスの粘度および表面張力を調節することが好ましい。
【0069】
また、本発明のワニスを用いる場合、焼成雰囲気も特に限定されるものではなく、大気雰囲気だけでなく、窒素等の不活性ガスや真空中でも均一な成膜面および電荷輸送性を有する薄膜を得ることができるが、再現性よく高電荷輸送性薄膜を得ることを考慮すると、大気雰囲気が好ましい。
【0070】
焼成温度は、得られる薄膜の用途、得られる薄膜に付与する電荷輸送性の程度、溶媒の種類や沸点等を勘案して、100〜260℃程度の範囲内で適宜設定されるものではあるが、得られる薄膜を有機EL素子の正孔注入層として用いる場合、140〜250℃程度が好ましく、145〜240℃程度がより好ましい。
なお、焼成の際、より高い均一成膜性を発現させたり、基材上で反応を進行させたりする目的で、2段階以上の温度変化をつけてもよく、加熱は、例えば、ホットプレートやオーブン等、適当な機器を用いて行えばよい。
【0071】
電荷輸送性薄膜の膜厚は、特に限定されないが、有機EL素子内で正孔注入層として用いる場合、5〜200nmが好ましい。膜厚を変化させる方法としては、ワニス中の固形分濃度を変化させたり、塗布時の基板上の溶液量を変化させたりする等の方法がある。
【0072】
本発明の電荷輸送性薄膜は、有機EL素子において、正孔注入層として好適に用いることができるが、正孔注入輸送層等の電荷輸送性機能層としても使用可能である。
【0073】
本発明の電荷輸送性ワニスを用いてOLED素子を作製する場合の使用材料や、作製方法としては、下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
使用する電極基板は、洗剤、アルコール、純水等による液体洗浄を予め行って浄化しておくことが好ましく、例えば、陽極基板では使用直前にUVオゾン処理、酸素−プラズマ処理等の表面処理を行うことが好ましい。ただし陽極材料が有機物を主成分とする場合、表面処理を行わなくともよい。
【0074】
本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜からなる正孔注入層を有するOLED素子の作製方法の例は、以下のとおりである。
上記の方法により、陽極基板上に本発明の電荷輸送性ワニスを塗布して焼成し、電極上に正孔注入層を作製する。これを真空蒸着装置内に導入し、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子輸送層/ホールブロック層、陰極金属を順次蒸着してOLED素子とする。なお、必要に応じて、発光層と正孔輸送層との間に電子ブロック層を設けてよい。
陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極や、アルミニウムに代表される金属やこれらの合金等から構成される金属陽極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いることもできる。
なお、金属陽極を構成するその他の金属としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドミウム、インジウム、スカンジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ハフニウム、タリウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、チタン、鉛、ビスマスやこれらの合金等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0075】
正孔輸送層を形成する材料としては、(トリフェニルアミン)ダイマー誘導体、[(トリフェニルアミン)ダイマー]スピロダイマー、N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン(α−NPD)、N,N'−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン、N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン、N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−スピロビフルオレン、N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−スピロビフルオレン、N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−ジメチル−フルオレン、N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−ジメチル−フルオレン、N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニル−フルオレン、N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニル−フルオレン、N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−2,2'−ジメチルベンジジン、2,2',7,7'−テトラキス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9−スピロビフルオレン、9,9−ビス[4−(N,N−ビス−ビフェニル−4−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−(N,N−ビス−ナフタレン−2−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−(N−ナフタレン−1−イル−N−フェニルアミノ)−フェニル]−9H−フルオレン、2,2',7,7'−テトラキス[N−ナフタレニル(フェニル)−アミノ]−9,9−スピロビフルオレン、N,N'−ビス(フェナントレン−9−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン、2,2'−ビス[N,N−ビス(ビフェニル−4−イル)アミノ]−9,9−スピロビフルオレン、2,2'−ビス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9−スピロビフルオレン、ジ−[4−(N,N−ジ(p−トリル)アミノ)−フェニル]シクロヘキサン、2,2',7,7'−テトラ(N,N−ジ(p−トリル))アミノ−9,9−スピロビフルオレン、N,N,N',N'−テトラ−ナフタレン−2−イル−ベンジジン、N,N,N',N'−テトラ−(3−メチルフェニル)−3,3'−ジメチルベンジジン、N,N'−ジ(ナフタレニル)−N,N'−ジ(ナフタレン−2−イル)−ベンジジン、N,N,N',N'−テトラ(ナフタレニル)−ベンジジン、N,N'−ジ(ナフタレン−2−イル)−N,N'−ジフェニルベンジジン−1,4−ジアミン、N
1,N
4−ジフェニル−N
1,N
4−ジ(m−トリル)ベンゼン−1,4−ジアミン、N
2,N
2,N
6,N
6−テトラフェニルナフタレン−2,6−ジアミン、トリス(4−(キノリン−8−イル)フェニル)アミン、2,2'−ビス(3−(N,N−ジ(p−トリル)アミノ)フェニル)ビフェニル、4,4',4”−トリス[3−メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4',4”−トリス[1−ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1−TNATA)等のトリアリールアミン類、5,5”−ビス−{4−[ビス(4−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−2,2':5',2”−ターチオフェン(BMA−3T)等のオリゴチオフェン類などが挙げられる。
【0076】
発光層を形成する材料としては、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)(Alq
3)、ビス(8−キノリノラート)亜鉛(II)(Znq
2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)、4,4'−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル、9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン、2,7−ビス[9,9−ジ(4−メチルフェニル)−フルオレン−2−イル]−9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン、2−メチル−9,10−ビス(ナフタレン−2−イル)アントラセン、2−(9,9−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9−スピロビフルオレン、2,7−ビス(9,9−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9−スピロビフルオレン、2−[9,9−ジ(4−メチルフェニル)−フルオレン−2−イル]−9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン、2,2'−ジピレニル−9,9−スピロビフルオレン、1,3,5−トリス(ピレン−1−イル)ベンゼン、9,9−ビス[4−(ピレニル)フェニル]−9H−フルオレン、2,2'−ビ(9,10−ジフェニルアントラセン)、2,7−ジピレニル−9,9−スピロビフルオレン、1,4−ジ(ピレン−1−イル)ベンゼン、1,3−ジ(ピレン−1−イル)ベンゼン、6,13−ジ(ビフェニル−4−イル)ペンタセン、3,9−ジ(ナフタレン−2−イル)ペリレン、3,10−ジ(ナフタレン−2−イル)ペリレン、トリス[4−(ピレニル)−フェニル]アミン、10,10'−ジ(ビフェニル−4−イル)−9,9'−ビアントラセン、N,N'−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ジフェニル−[1,1':4',1'':4'',1'''−クウォーターフェニル]−4,4'''−ジアミン、4,4'−ジ[10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル]ビフェニル、ジベンゾ{[f,f']−4,4',7,7'−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1',2',3'−lm]ペリレン、1−(7−(9,9'−ビアントラセン−10−イル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)ピレン、1−(7−(9,9'−ビアントラセン−10−イル)−9,9−ジヘキシル−9H−フルオレン−2−イル)ピレン、1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン、1,3,5−トリス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン、4,4',4”−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン、4,4'−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)、4,4'−ビス(カルバゾール−9−イル)−2,2'−ジメチルビフェニル、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジメチルフルオレン、2,2',7,7'−テトラキス(カルバゾール−9−イル)−9,9−スピロビフルオレン、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジ(p−トリル)フルオレン、9,9−ビス[4−(カルバゾール−9−イル)−フェニル]フルオレン、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−スピロビフルオレン、1,4−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、ビス(4−N,N−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−4−メチルフェニルメタン、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン、4,4”−ジ(トリフェニルシリル)−p−ターフェニル、4,4'−ジ(トリフェニルシリル)ビフェニル、9−(4−t−ブチルフェニル)−3,6−ビス(トリフェニルシリル)−9H−カルバゾール、9−(4−t−ブチルフェニル)−3,6−ジトリチル−9H−カルバゾール、9−(4−t−ブチルフェニル)−3,6−ビス(9−(4−メトキシフェニル)−9H−フルオレン−9−イル)−9H−カルバゾール、2,6−ビス(3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)ピリジン、トリフェニル(4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル)シラン、9,9−ジメチル−N,N−ジフェニル−7−(4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル)−9H−フルオレン−2−アミン、3,5−ビス(3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)ピリジン、9,9−スピロビフルオレン−2−イル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、9,9'−(5−(トリフェニルシリル)−1,3−フェニレン)ビス(9H−カルバゾール)、3−(2,7−ビス(ジフェニルフォスフォリル)−9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)−9−フェニル−9H−カルバゾール、4,4,8,8,12,12−ヘキサ(p−トリル)−4H−8H−12H−12C−アザジベンゾ[cd,mn]ピレン、4,7−ジ(9H−カルバゾール−9−イル)−1,10−フェナントロリン、2,2'−ビス(4−(カルバゾール−9−イル)フェニル)ビフェニル、2,8−ビス(ジフェニルフォスフォリル)ジベンゾ[b,d]チオフェン、ビス(2−メチルフェニル)ジフェニルシラン、ビス[3,5−ジ(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジフェニルシラン、3,6−ビス(カルバゾール−9−イル)−9−(2−エチル−ヘキシル)−9H−カルバゾール、3−(ジフェニルフォスフォリル)−9−(4−(ジフェニルフォスフォリル)フェニル)−9H−カルバゾール、3,6−ビス[(3,5−ジフェニル)フェニル]−9−フェニルカルバゾール等が挙げられ、発光性ドーパントと共蒸着することによって、発光層を形成してもよい。
【0077】
発光性ドーパントとしては、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−10−(2−ベンゾチアゾリル)キノリジノ[9,9a,1gh]クマリン、キナクリドン、N,N'−ジメチル−キナクリドン、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)
3)、ビス(2−フェニルピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(Ir(ppy)
2(acac))、トリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(III)(Ir(mppy)
3)、9,10−ビス[N,N−ジ(p−トリル)アミノ]アントラセン、9,10−ビス[フェニル(m−トリル)アミノ]アントラセン、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(II)、N
10,N
10,N
10',N
10'−テトラ(p−トリル)−9,9'−ビアントラセン−10,10'−ジアミン、N
10,N
10,N
10',N
10'−テトラフェニル−9,9'−ビアントラセン−10,10'−ジアミン、N
10,N
10'−ジフェニル−N
10,N
10'−ジナフタレニル−9,9'−ビアントラセン−10,10'−ジアミン、4,4'−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1'−ビフェニル、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン、1,4−ビス[2−(3−N−エチルカルバゾリル)ビニル]ベンゼン、4,4'−ビス[4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]ビフェニル、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4'−[(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン、ビス(3,5−ジフルオロ)−2−(2−ピリジル)フェニル−(2−カルボキシピリジル)イリジウム(III)、4,4'−ビス[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]ビフェニル、ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジナト)テトラキス(1−ピラゾリル)ボレートイリジウム(III)、N,N'−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−トリス(9,9−ジメチルフルオレニレン)、2,7−ビス{2−[フェニル(m−トリル)アミノ]−9,9−ジメチル−フルオレン−7−イル}−9,9−ジメチル−フルオレン、N−(4−((E)−2−(6((E)−4−(ジフェニルアミノ)スチリル)ナフタレン−2−イル)ビニル)フェニル)−N−フェニルベンゼンアミン、fac−イリジウム(III)トリス(1−フェニル−3−メチルベンズイミダゾリン−2−イリデン−C,C
2')、mer−イリジウム(III)トリス(1−フェニル−3−メチルベンズイミダゾリン−2−イリデン−C,C
2')、2,7−ビス[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]−9,9−スピロビフルオレン、6−メチル−2−(4−(9−(4−(6−メチルベンゾ[d]チアゾール−2−イル)フェニル)アントラセン−10−イル)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール、1,4−ジ[4−(N,N−ジフェニル)アミノ]スチリルベンゼン、1,4−ビス(4−(9H−カルバゾール−9−イル)スチリル)ベンゼン、(E)−6−(4−(ジフェニルアミノ)スチリル)−N,N−ジフェニルナフタレン−2−アミン、ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジナト)(5−(ピリジン−2−イル)−1H−テトラゾレート)イリジウム(III)、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジル)ピラゾール)((2,4−ジフルオロベンジル)ジフェニルフォスフィネート)イリジウム(III)、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジル)ピラゾレート)(ベンジルジフェニルフォスフィネート)イリジウム(III)、ビス(1−(2,4−ジフルオロベンジル)−3−メチルベンズイミダゾリウム)(3−(トリフルオロメチル)−5−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)イリジウム(III)、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジル)ピラゾレート)(4',6'−ジフルオロフェニルピリジネート)イリジウム(III)、ビス(4',6'−ジフルオロフェニルピリジナト)(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−2−(2'−ピリジル)ピロレート)イリジウム(III)、ビス(4',6'−ジフルオロフェニルピリジナト)(3−(トリフルオロメチル)−5−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)イリジウム(III)、(Z)−6−メシチル−N−(6−メシチルキノリン−2(1H)−イリデン)キノリン−2−アミン−BF
2、(E)−2−(2−(4−(ジメチルアミノ)スチリル)−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)マロノニトリル、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−ジュロリジル−9−エニル−4H−ピラン、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン、4−(ジシアノメチレン)−2−t−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−4−イル−ビニル)−4H−ピラン、トリス(ジベンゾイルメタン)フェナントロリンユーロピウム(III)、5,6,11,12−テトラフェニルナフタセン、ビス(2−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−ピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム(III)、ビス(1−フェニルイソキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス[1−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−イソキノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス[2−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)キノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[4,4'−ジ−t−ブチル−(2,2')−ビピリジン]ルテニウム(III)・ビス(ヘキサフルオロフォスフェート)、トリス(2−フェニルキノリン)イリジウム(III)、ビス(2−フェニルキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、2,8−ジ−t−ブチル−5,11−ビス(4−t−ブチルフェニル)−6,12−ジフェニルテトラセン、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、5,10,15,20−テトラフェニルテトラベンゾポルフィリン白金、オスミウム(II)ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジン)−ピラゾレート)ジメチルフェニルフォスフィン、オスミウム(II)ビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(4−t−ブチルピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)ジフェニルメチルフォスフィン、オスミウム(II)ビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアゾール)ジメチルフェニルフォスフィン、オスミウム(II)ビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(4−t−ブチルピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)ジメチルフェニルフォスフィン、ビス[2−(4−n−ヘキシルフェニル)キノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[2−(4−n−ヘキシルフェニル)キノリン]イリジウム(III)、トリス[2−フェニル−4−メチルキノリン]イリジウム(III)、ビス(2−フェニルキノリン)(2−(3−メチルフェニル)ピリジネート)イリジウム(III)、ビス(2−(9,9−ジエチル−フルオレン−2−イル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾラト)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス(2−フェニルピリジン)(3−(ピリジン−2−イル)−2H−クロメン−2−オネート)イリジウム(III)、ビス(2−フェニルキノリン)(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオネート)イリジウム(III)、ビス(フェニルイソキノリン)(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオネート)イリジウム(III)、イリジウム(III)ビス(4−フェニルチエノ[3,2−c]ピリジナト−N,C
2')アセチルアセトネート、(E)−2−(2−t−ブチル−6−(2−(2,6,6−トリメチル−2,4,5,6−テトラヒドロ−1H−ピローロ[3,2,1−ij]キノリン−8−イル)ビニル)−4H−ピラン−4−イリデン)マロノニトリル、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(1−イソキノリル)ピラゾレート)(メチルジフェニルフォスフィン)ルテニウム、ビス[(4−n−ヘキシルフェニル)イソキノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、白金(II)オクタエチルポルフィン、ビス(2−メチルジベンゾ[f,h]キノキサリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[(4−n−ヘキシルフェニル)キソキノリン]イリジウム(III)等が挙げられる。
【0078】
電子輸送層/ホールブロック層を形成する材料としては、8−ヒドロキシキノリノレート−リチウム、2,2',2”−(1,3,5−ベンジントリル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)、2−(4−ビフェニル)5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、ビス(2−メチル−8−キノリノレート)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム、1,3−ビス[2−(2,2'−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン、6,6'−ビス[5−(ビフェニル−4−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−2−イル]−2,2'−ビピリジン、3−(4−ビフェニル)−4−フェニル−5−t−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール、4−(ナフタレン−1−イル)−3,5−ジフェニル−4H−1,2,4−トリアゾール、2,9−ビス(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,7−ビス[2−(2,2'−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]−9,9−ジメチルフルオレン、1,3−ビス[2−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン、1−メチル−2−(4−(ナフタレン−2−イル)フェニル)−1H−イミダゾ[4,5f][1,10]フェナントロリン、2−(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、フェニル−ジピレニルフォスフィンオキサイド、3,3',5,5'−テトラ[(m−ピリジル)−フェン−3−イル]ビフェニル、1,3,5−トリス[(3−ピリジル)−フェン−3−イル]ベンゼン、4,4'−ビス(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)ビフェニル、1,3−ビス[3,5−ジ(ピリジン−3−イル)フェニル]ベンゼン、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ジフェニルビス(4−(ピリジン−3−イル)フェニル)シラン、3,5−ジ(ピレン−1−イル)ピリジン等が挙げられる。
【0079】
電子注入層を形成する材料としては、酸化リチウム(Li
2O)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al
2O
3)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化マグネシウム(MgF
2)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化ストロンチウム(SrF
2)、三酸化モリブデン(MoO
3)、アルミニウム、Li(acac)、酢酸リチウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。
陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム−銀合金、アルミニウム−リチウム合金、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられる。
電子ブロック層を形成する材料としては、トリス(フェニルピラゾール)イリジウム等が挙げられる。
【0080】
本発明の電荷輸送性ワニスを用いたPLED素子の作製方法は、特に限定されないが、以下の方法が挙げられる。
上記OLED素子作製において、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の真空蒸着操作を行う代わりに、正孔輸送性高分子層、発光性高分子層を順次形成することによって本発明の電荷輸送性ワニスによって形成される電荷輸送性薄膜を有するPLED素子を作製することができる。
具体的には、陽極基板上に本発明の電荷輸送性ワニスを塗布して上記の方法により正孔注入層を作製し、その上に正孔輸送性高分子層、発光性高分子層を順次形成し、さらに陰極を蒸着してPLED素子とする。
【0081】
使用する陰極および陽極材料としては、上記OLED素子作製時と同様のものが使用でき、同様の洗浄処理、表面処理を行うことができる。
正孔輸送性高分子層および発光性高分子層の形成法としては、正孔輸送性高分子材料もしくは発光性高分子材料、またはこれらにドーパント物質を加えた材料に溶媒を加えて溶解するか、均一に分散し、正孔注入層または正孔輸送性高分子層の上に塗布した後、それぞれ焼成することで成膜する方法が挙げられる。
【0082】
正孔輸送性高分子材料としては、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(N,N'−ビス{p−ブチルフェニル}−1,4−ジアミノフェニレン)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(N,N'−ビス{p−ブチルフェニル}−1,1'−ビフェニレン−4,4−ジアミン)]、ポリ[(9,9−ビス{1'−ペンテン−5'−イル}フルオレニル−2,7−ジイル)−co−(N,N'−ビス{p−ブチルフェニル}−1,4−ジアミノフェニレン)]、ポリ[N,N'−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン]−エンドキャップド ウィズ ポリシルシスキノキサン、ポリ[(9,9−ジジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4'−(N−(p−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)]等が挙げられる。
【0083】
発光性高分子材料としては、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)等のポリフルオレン誘導体、ポリ(2−メトキシ−5−(2'−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)等のポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
【0084】
溶媒としては、トルエン、キシレン、クロロホルム等を挙げることができ、溶解または均一分散法としては撹拌、加熱撹拌、超音波分散等の方法が挙げられる。
塗布方法としては、特に限定されるものではなく、インクジェット法、スプレー法、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り等が挙げられる。なお、塗布は、窒素、アルゴン等の不活性ガス下で行うことが好ましい。
焼成する方法としては、不活性ガス下または真空中、オーブンまたはホットプレートで加熱する方法が挙げられる。
【0085】
なお、上記説明した電荷輸送性ワニスから得られる電荷輸送性薄膜だけでなく、本発明のアニリン誘導体から得られる蒸着膜も電荷輸送性に優れることから、用途によっては、蒸着法により得られる電荷輸送性薄膜を用いてもよい。
【実施例】
【0086】
以下、製造例および実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、使用した装置は以下のとおりである。
(1)
1H−NMR:日本電子(株)製 JNM−ECP300 FT NMR SYSTEM
(2)MALDI−TOF−MS:ブルカー社製、autoflex III smartbeam
(3)基板洗浄:長州産業(株)製 基板洗浄装置(減圧プラズマ方式)
(4)ワニスの塗布:ミカサ(株)製 スピンコーターMS−A100
(5)膜厚測定:(株)小坂研究所製 微細形状測定機サーフコーダET−4000
(6)EL素子の作製:長州産業(株)製 多機能蒸着装置システムC−E2L1G1−N
(7)EL素子の輝度等の測定:(有)テック・ワールド製 I−V−L測定システム
【0087】
[1]化合物の合成
[製造例1]アニリン誘導体1の合成
【化14】
【0088】
p−フェニレンジアミン0.501g、3−ブロモ−9−フェニル−9H−カルバゾール6.26g、Pd(dba)
20.107g、およびt−ブトキシナトリウム2.23gを反応容器に入れ、容器内を窒素置換した後、トルエン25mLおよび別途予め準備したトリ−t−ブチルホスフィンのトルエン溶液1.0mL(濃度:72g/L)を加え、50℃で3時間撹拌した。反応液をろ過し、得られたろ物にイオン交換水を加え撹拌し、ろ過した。得られたろ物をメタノールにて洗浄した後、1,4−ジオキサンを加え、加熱還流条件下溶解させ、活性炭0.3gを加えて30分撹拌した。活性炭をろ過にて除去し、ろ液をメタノール中に滴下し、室温で30分撹拌した。得られたスラリー溶液をろ過した後、ろ物を乾燥した。乾燥後の粉末に酢酸n−プロピル5gおよび1,4−ジオキサン22gを加えて加熱還流条件下撹拌した。溶解を確認後、室温まで放冷し、そのまま一晩撹拌した後、ろ過、乾燥を行い、目的とするアニリン誘導体1(3.11g,収率63%)を得た。
【0089】
1H−NMR(300MHz,THF−d8)δ[ppm]:7.99−8.03(m,8H),7.55−7.66(m,16H),7.42−7.48(m,4H),7.28−7.37(m,16H),7.14(td,J=6.8,1.5Hz,4H),7.01(s,4H).
MALDI−TOF−MS m/Z found:1072.37([M]
+calcd:1072.43).
【0090】
[2]電荷輸送性ワニスの調製
[実施例1]
電荷輸送性物質であるアニリン誘導体1 0.088g、ドーパント物質であるリンタングステン酸(PTA)0.202gおよびテトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)0.114gを、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)14.0gに溶解させた。そこへ2,3−ブタンジオール4.0gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)2.0gを加えて撹拌し、さらにそこへ3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)0.007gおよびフェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)0.013gを加えて撹拌し、電荷輸送性ワニスを調製した。
【0091】
[3]有機EL素子の製造および特性評価
[実施例2]
実施例1で得られたワニスを、スピンコーターを用いてITO基板に塗布した後、80℃で1分間乾燥し、さらに、大気雰囲気下、150℃で5分間焼成し、ITO基板上に30nmの均一な薄膜を形成した。ITO基板としては、インジウム錫酸化物(ITO)が表面上に膜厚150nmでパターニングされた25mm×25mm×0.7tのガラス基板を用い、使用前にO
2プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)によって表面上の不純物を除却した。
次いで、薄膜を形成したITO基板に対し、蒸着装置(真空度1.0×10
-5Pa)を用いてα−NPDを0.2nm/秒にて30nm成膜した。次に、CBPとIr(PPy)
3を共蒸着した。共蒸着はIr(PPy)
3の濃度が6%になるように蒸着レートをコントロールし、40nm積層させた。次いで、BAlq、フッ化リチウムおよびアルミニウムの薄膜を順次積層して有機EL素子を得た。この際、蒸着レートは、BAlqおよびアルミニウムについては0.2nm/秒、フッ化リチウムについては0.02nm/秒の条件でそれぞれ行い、膜厚は、それぞれ20nm、0.5nmおよび120nmとした。
なお、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、有機EL素子は封止基板により封止した後、その特性を評価した。封止は、以下の手順で行った。酸素濃度2ppm以下、露点−85℃以下の窒素雰囲気中で、有機EL素子を封止基板の間に収め、封止基板を接着材((株)MORESCO製、モレスコモイスチャーカット WB90US(P))により貼り合わせた。この際、捕水剤(ダイニック(株)製,HD−071010W−40)を有機EL素子と共に封止基板内に収めた。貼り合わせた封止基板に対し、UV光を照射(波長:365nm、照射量:6,000mJ/cm
2)した後、80℃で1時間、アニーリング処理して接着材を硬化させた。なお、各素子の発光面サイズの面積は、2mm×2mmである。
【0092】
作製した素子について、駆動電流0.7mAにおける駆動電圧、輝度および発光効率を測定した。結果を表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
表1に示されるように、本発明の電荷輸送性ワニスから得られた電荷輸送性薄膜を正孔注入層として有する有機EL素子は、輝度特性が優れていることがわかる。