(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記第2工程において得られる重合体鎖の活性末端に、該活性末端と反応可能な官能基を有するシラン化合物を反応させる第3工程を備える請求項1〜3のいずれかに記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔共役ジエン系ゴムの製造方法〕
本発明の共役ジエン系ゴムの製造方法は、重合開始剤を用いて、後述する式(1)で表される化合物を重合して、活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックを得る第1工程と、その重合体ブロックの活性末端から、少なくとも共役ジエン化合物を含んでなる単量体を重合する第2工程と、を備える。
【0022】
〔第1工程〕
まず、本発明の製造方法における、第1工程について説明する。本発明の製造方法における、第1工程は、重合開始剤を用いて、下記の式(1)で表される化合物を重合して、活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックを得る工程である。なお、第1工程で形成される、式(1)で表される化合物の重合体ブロックは、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴム中において、シリカなどの充填剤に対して高い親和性を示すセグメントとして作用し、これにより、本発明によれば、シリカなどの充填剤に対する親和性を向上させることができる。
【化3】
【0023】
式(1)において、R
1は、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基であり、好ましくは水素原子またはメチル基、より好ましくは水素原子である。
【0024】
また、式(1)において、R
2は環状構造を含有する炭素数3〜20の炭化水素基である。このR
2で表される環状構造を含有する炭素数3〜20の炭化水素基における環状構造は、芳香環構造および脂環構造のいずれでもよいが、式(1)で表される化合物の合成を容易にする観点からは、芳香環構造であることが好ましく、なかでもベンゼン環構造であることが好ましい。また、R
2で表される環状構造を含有する炭素数3〜20の炭化水素基は、環状炭化水素基のみからなるものであってもよいし、環状構造と鎖状構造とが組み合わされてなる炭化水素基であってもよい。この環状構造を含有する炭素数3〜20の炭化水素基の具体例としては、フェニル基、ベンジル基、3−フェニルプロピル基、ペンタレン基、アズレニル基、ヘプタレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、トリル基、トリチル基、スチリル基、ナフタレニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、フェナレニル基、ピレン基、クリセン基、トリフェニレン基、テトラフェン基、テトラセン基、ペンタセン基、ペンタフェン基などの炭素数6〜20のアリール基含有炭化水素基、およびシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−エチルシクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、アダマンチル基などの炭素数3〜20のシクロアルキル基含有炭化水素基が挙げられ、これらのなかでも、炭素数6〜20のアリール基含有炭化水素基が好ましく用いられ、フェニル基が特に好ましく用いられる。
【0025】
また、式(1)において、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。R
3およびR
4で表される基が、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である場合は、その炭化水素基は環状構造を含有していてもよいし、環状構造を含有していなくてもよい。
【0026】
式(1)において「−SiR
2R
3R
4」で表される基は、環状構造を含有する炭素数3〜20の炭化水素基を少なくとも1つ有するシリル基であるといえ、この基は、アミノ基の保護基として機能する。すなわち、式(1)において「−SiR
2R
3R
4」で表される基は、酸や塩基などにより脱保護されて、水素原子に置き換えられ、式(1)において「N」で表される窒素原子と水素原子とが直接結合してなる窒素−水素結合が形成される。
【0027】
式(1)において「−SiR
2R
3R
4」で表される基の具体例としては、ジメチルフェニルシリル基、ベンジルジメチルシリル基、ジメチル−3−フェニルプロピルシリル基などのジアルキルモノアリールシリル基、メチルジフェニルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基などのモノアルキルジアリールシリル基、トリフェニルシリル基などのトリアリールシリル基、シクロヘキシルジメチルシリル基、ジシクロヘキシルメチルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基などのシクロアルキル基を含むトリアルキルシリル基などを挙げることができる。これらのなかでも、式(1)で表される化合物の合成を容易にする観点からは、ジアルキルモノアリールシリル基が好ましく、ジメチルフェニルシリル基が特に好ましい。
【0028】
また、式(1)で表される化合物において、Xは、任意の1価の基である。このXで表される1価の基は、アミノ基の保護基として機能する基であっても良いし、アミノ基の保護基として機能しない基であってもよい。この1価の基を、アミノ基の保護基として機能しない基とする場合は、酸や塩基などにより脱保護しないような基であればよく、特に限定されないが、水素原子以外の基であることが好ましく、たとえば、ケイ素以外のヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1〜30の有機基とすればよい。ただし、得られるゴム架橋物を低発熱性により優れたものとする観点からは、式(1)において、Xで表される1価の基は、アミノ基の保護基であることが好ましい。このアミノ基の保護基としては、ケイ素原子を式(1)に表されている窒素原子と直接結合する原子として含有する、炭素数1〜30の有機基であることが好ましく、該有機基は、ケイ素以外のヘテロ原子を含有していてもよい。また、このようなアミノ基の保護基としては、下記の式(2)で表される基であることがより好ましい。
【0030】
式(2)において、R
8〜R
10は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。
【0031】
式(1)においてXで表される1価の基をアミノ基の保護基とする場合において、得られる共役ジエン系ゴムを加工性により優れたものとする観点から、特に好ましく用いられる基は、環状構造を含有する炭素数3〜20の炭化水素基を少なくとも1つ有するシリル基である。すなわち、式(1)で表される化合物は、下記の式(1’)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0033】
式(1’)において、R
1〜R
4は式(1)におけるものと同じものであり、R
5は環状構造を含有する炭素数3〜20の炭化水素基であり、R
6およびR
7は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。R
5で表される環状構造を含有する炭素数3〜20の炭化水素基の具体例としては、式(1)においてR
2で表される基の具体例として挙げたものと同様の基を挙げることができ、また、好ましく用いられる基も、R
2で表される基と同様である。さらに、R
6およびR
7で表される水素原子または置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基として用いられる基も、R
3およびR
4で表される基と同様である。
【0034】
式(1’)において「−SiR
5R
6R
7」で表される基の具体例としては、式(1)において「−SiR
2R
3R
4」で表される基の具体例として挙げたものと同じ基を挙げることができ、好ましく用いられる基も同様である。
【0035】
また、式(1)において、「−N(SiR
2R
3R
4)X」で表される基の導入位置は、−CR
1=CH
2で表される基のパラ位、メタ位、およびオルト位のいずれであってもよいが、得られる共役ジエン系ゴムのシリカなどの充填剤に対する親和性をより高くすることができるという観点より、パラ位が好ましい。
【0036】
重合体ブロックを構成するために用いられる式(1)で表される化合物の具体例としては、p−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレン、p−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]−α−メチルスチレンなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。なお、これらの式(1)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
式(1)で表される化合物を重合させる際に用いる重合開始剤としては、式(1)で表される化合物を重合させることにより、活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックを与えることができるものであれば、特に限定されない。その具体例としては、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、およびランタン系列金属化合物などを主触媒とする重合開始剤が好ましく使用される。有機アルカリ金属化合物としては、たとえば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン、1,3,5−トリス(リチオメチル)ベンゼンなどの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレンなどの有機ナトリウム化合物;カリウムナフタレンなどの有機カリウム化合物;などが挙げられる。また、有機アルカリ土類金属化合物としては、たとえば、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−n−ヘキシルマグネシウム、ジエトキシカルシウム、ジステアリン酸カルシウム、ジ−tert−ブトキシストロンチウム、ジエトキシバリウム、ジイソプロポキシバリウム、ジエチルメルカプトバリウム、ジ−tert−ブトキシバリウム、ジフェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ジステアリン酸バリウム、ジケチルバリウムなどが挙げられる。ランタン系列金属化合物を主触媒とする重合開始剤としては、たとえば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウムなどのランタン系列金属と、カルボン酸、およびリン含有有機酸などとからなるランタン系列金属の塩を主触媒とし、これと、アルキルアルミニウム化合物、有機アルミニウムハイドライド化合物、有機アルミニウムハライド化合物などの助触媒とからなる重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤の中でも、有機モノリチウム化合物、および有機多価リチウム化合物が好ましく、有機モノリチウム化合物がより好ましく、n−ブチルリチウムが特に好ましい。なお、有機アルカリ金属化合物は、予め、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、およびヘプタメチレンイミンなどの第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミド化合物として使用してもよい。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本発明の製造方法の第1工程では、式(1)で表される化合物の重合反応は、リビング性を伴って進行するので、重合開始剤と式(1)で表される化合物との使用割合は、目的とする重合体ブロックの分子量に応じて決定すればよいが、式(1)で表される化合物1モルに対する、重合開始剤の使用量が、好ましくは0.01〜0.5モル、より好ましくは0.02〜0.5モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルとなる範囲で選択される。重合開始剤の使用量が少なすぎると、得られる式(1)で表される化合物の重合体ブロックの分子量が高くなり過ぎてしまい、共役ジエン系ゴムの粘度が高くなり加工性が悪くなるおそれがある。一方、重合開始剤の使用量が多すぎると、得られる式(1)で表される化合物の重合体ブロックの分子量が低くなり過ぎてしまい、共役ジエン系ゴムの充填剤に対する親和性の向上効果が得難くなるおそれがある。
【0039】
本発明の製造方法における、式(1)で表される化合物の重合様式は、溶液重合法を用いることが好ましい。
【0040】
溶液重合法で用いる溶媒は、溶液重合において通常使用されるものであり、重合反応を阻害しないものであれば特に限定されない。不活性溶媒の具体例としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2−ブテンなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
溶液重合法における重合溶液中の式(1)で表される化合物の濃度は、特に限定されないが、通常0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜45重量%、より好ましくは1〜40重量%の範囲で選択される。溶液中の式(1)で表される化合物の濃度が低すぎると、共役ジエン系ゴムの生産性が悪くなるおそれがあり、濃度が高すぎると、溶液の粘度が高くなりすぎて、その取り扱いが困難となる場合がある。また、重合温度にも特に制限はないが、通常−30℃〜+200℃、好ましくは0℃〜+180℃の範囲である。重合時間にも特に制限は無く、通常1分〜100時間の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式などいずれの様式をも採用できる。
【0042】
また、重合反応に際しては、重合反応を促進させる目的で、重合反応系に、極性化合物を添加してもよい。極性化合物としては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミンなどの第三級アミン;アルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物;などが挙げられる。これらの中でも、エーテル化合物、および第三級アミンが好ましく、特に、重合開始剤に含まれる金属とキレート構造を形成し得るという点より、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン、およびテトラメチルエチレンジアミンが特に好ましい。これらの極性化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。極性化合物の使用量は、特に限定されないが、重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.001〜100モル、より好ましくは0.01〜10モルである。活性金属原子への配位能を有する化合物の使用量を上記範囲とすることにより、その添加効果をより好適なものとすることができる。
【0043】
なお、本発明の製造方法の第1工程において、得られる式(1)で表される化合物の重合体ブロックの重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算の値として、好ましくは400〜60,000、より好ましくは500〜30,000、さらに好ましくは700〜10,000である。重量平均分子量(Mw)が小さすぎると、式(1)で表される化合物の重合体ブロックを導入したことによる、共役ジエン系ゴムのシリカなどの充填剤に対する親和性の向上効果が得難くなるおそれがあり、一方、重量平均分子量(Mw)が大きすぎると、共役ジエン系ゴムの粘度が高くなり加工性が悪くなるおそれがある。
【0044】
以上のような本発明の製造方法における第1工程によれば、式(1)で表される化合物を重合することで、活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックを得ることができる。なお、本発明において、活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックは、式(1)で表される化合物のみからなることが好ましいが、本発明の効果を本質的に損なわない範囲で、その他の化合物が共重合されているブロックを排除するものではない。
【0045】
〔第2工程〕
次いで、本発明の製造方法における、第2工程について説明する。
本発明の製造方法における、第2工程は、上述した第1工程で得られた活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックの活性末端から、少なくとも共役ジエン化合物を含んでなる単量体を重合する工程である。すなわち、本発明の製造方法の第2工程は、上述した第1工程で得られた活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックの活性末端を重合開始末端として、少なくとも共役ジエン化合物を含んでなる単量体を重合させて、共役ジエン系ゴムを構成する共役ジエン化合物に由来する単量体単位を含んでなる重合体鎖を得る工程である。
【0046】
重合に用いる共役ジエン化合物としては、特に限定されず、たとえば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエンなどを挙げることができる。これらのなかでも、1,3−ブタジエン、イソプレンまたは1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。なお、これらの共役ジエン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
また、本発明の製造方法で製造する共役ジエン系ゴムとしては、共役ジエン化合物に加えて芳香族ビニル化合物を共重合してなるものであってもよい。芳香族ビニル化合物としては、特に限定されず、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、5−tert−ブチル−2−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジメチルアミノエチルスチレン、式(1)で表される化合物などを挙げることができる。これらのなかでも、スチレン、α−メチルスチレン、または4−メチルスチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。なお、これらの芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
第2工程で重合する単量体は、芳香族ビニル化合物を0〜50重量%含有するものであることが好ましく、0重量%超、50重量%以下含有するものであることがより好ましく、5〜45重量%含有するものであることがさらに好ましい。また、第2工程で重合する単量体は、共役ジエン化合物を50〜100重量%含有するものであることが好ましく、50重量%以上、100重量%未満含有するものであることがより好ましく、55〜95重量%含有するものであることさらに好ましい。換言すれば、本発明の製造方法で製造する共役ジエン系ゴムの、共役ジエン化合物を含む重合体鎖(すなわち、式(1)で表される化合物の重合体ブロックを除く部分)中における、共役ジエン化合物に由来する単量体単位(共役ジエン単量体単位)および芳香族ビニル化合物に由来する単量体単位(芳香族ビニル単量体単位)の割合は、共役ジエン単量体単位が、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50重量%以上、100重量%未満であり、さらに好ましくは55〜95重量%であり、また、芳香族ビニル単量体単位が、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0重量%超、50重量%以下であり、さらに好ましくは5〜45重量%である。本発明の製造方法によれば、第2工程で重合する単量体として、共役ジエン化合物に加えて、芳香族ビニル化合物を使用し、これにより、本発明の製造方法で製造する共役ジエン系ゴムを、芳香族ビニル単量体単位をも含有するものとすることにより、得られるゴム架橋物を低発熱性に加えて、ウェットグリップ性にも優れたものとすることができる。
【0049】
また、本発明の製造方法の第2工程においては、本発明の目的を損なわない範囲において、所望により、共役ジエン化合物、および芳香族ビニル化合物に加えて、これらと共重合可能な他の化合物を共重合してもよい。共重合可能な他の化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸または酸無水物;メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどの不飽和カルボン酸エステル;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン;などを挙げることができる。これら共重合可能な他の化合物は、本発明の製造方法で製造する共役ジエン系ゴムの、共役ジエン化合物を含む重合体鎖(すなわち、式(1)で表される化合物の重合体ブロックを除く部分)中において、単量体単位として、10重量%以下とするのが好ましく、5重量%以下とするのがより好ましい。
【0050】
本発明の製造方法の第2工程において、2種以上の単量体を用いて共重合体を得る場合の、共重合の様式は特に限定されず、ランダム状、ブロック状、テーパー状などのいずれであってもよいが、ランダム状の結合様式であることが好ましい。ランダム状にすることにより、得られるゴム架橋物は低発熱性により優れたものとなる。
【0051】
本発明の製造方法の第2工程では、共役ジエン化合物を含んでなる単量体の重合反応は、リビング性を伴って進行するので、上述した第1工程において得られた活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックと共役ジエン化合物を含んでなる単量体との使用割合は、目的とする共役ジエン系ゴムの分子量に応じて決定すればよいが、共役ジエン化合物を含んでなる単量体1モルに対する、活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックの量(通常、第1工程での重合開始剤の使用量と実質的に同じである)が、好ましくは0.05〜0.8ミリモル、より好ましくは0.07〜0.7ミリモル、特に好ましくは0.1〜0.6ミリモルとなる範囲で選択される。単量体の使用量に対して活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックの量が少なすぎると、得られる共役ジエン系ゴムの分子量が高くなりすぎて取り扱いが困難となったり、重合反応が十分に進行しなかったりするおそれがある。一方、多すぎると、得られる共役ジエン系ゴムの分子量が低くなりすぎて、ゴム材料としての特性に劣るものとなるおそれがある。
【0052】
本発明の製造方法における、共役ジエン化合物を含んでなる単量体の重合様式は、溶液重合法を用いることが好ましい。
【0053】
溶液重合法で用いる溶媒としては、上述した第1工程と同様のものを用いることができる。また、重合の制御の観点より、共役ジエン化合物を含んでなる単量体が溶解している溶液中に、上述した第1工程において得られた活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックを加えることが好ましい。なお、活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックは、溶液の状態にて添加することが好ましく、この場合には、重合に用いた重合溶液をそのまま使用してもよい。
【0054】
また、重合反応を行うに際しては、重合速度や得られる共役ジエン系ゴムのミクロ構造、具体的には、ビニル結合含有量を調節するために、重合反応系に、上述した極性化合物を添加してもよい。ただし、活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックの調製時に、不活性溶媒に、共役ジエン系ゴムのビニル結合含有量を調節するのに十分な量の極性化合物を添加している場合は、新たに極性化合物を添加しなくてもよい。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックの活性末端1モルに対して、好ましくは0.001〜100モル、より好ましくは0.01〜10モルである。極性化合物の使用量がこの範囲にあると、共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、かつ活性末端の失活による不具合も発生し難い。
【0055】
重合反応における重合溶液中の共役ジエン化合物を含んでなる単量体の濃度は、特に限定されないが、通常1〜50重量%、好ましくは2〜45重量%、より好ましくは5〜40重量%の範囲で選択される。溶液中の共役ジエン化合物を含んでなる単量体の濃度が低すぎると、共役ジエン系ゴムの生産性が悪くなるおそれがあり、濃度が高すぎると、溶液の粘度が高くなりすぎて、その取り扱いが困難となる場合がある。また、重合温度にも特に制限はないが、通常−30℃〜+200℃、好ましくは0℃〜+180℃の範囲である。重合時間にも特に制限は無く、通常1分〜100時間の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式などいずれの様式をも採用できるが、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをランダム共重合させる場合は、共役ジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位との結合のランダム性を制御しやすいという点より、回分式が好ましい。
【0056】
本発明の製造方法の第2工程によれば、以上のようにして、上述した第1工程で得られた活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックを用いて、共役ジエン化合物を含んでなる単量体を重合することで、共役ジエン系ゴムを得ることができる。
【0057】
上述した第2工程において得られた共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによって測定されるポリスチレン換算の値として、100,000〜1,000,000が好ましく、120,000〜700,000がより好ましく、150,000〜500,000が特に好ましい。共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)が上記範囲内にあるとき、得られるゴム架橋物は、強度と低発熱性とのバランスが良好となる。
【0058】
なお、第2工程において得られた共役ジエン系ゴム中における、式(1)で表される化合物の重合体ブロックを構成する式(1)で表される化合物の単位の含有割合は、全単量体単位に対して、好ましくは0.1〜10.0重量%、より好ましくは0.4〜6.0重量%である。
【0059】
また、本発明の製造方法の第2工程においては、少なくとも共役ジエン化合物を含んでなる単量体の重合反応は、リビング性を伴って進行するので、これにより得られる共役ジエン系ゴムの重合体鎖も活性末端を有するものとなる。そのため、本発明の共役ジエン系ゴムの製造方法においては、このような共役ジエン系ゴムの重合体鎖が有する活性末端について、従来から通常使用されている、四塩化錫などの後述するシラン化合物以外のカップリング剤、N−メチル−ε−カプロラクタムなどの後述するシラン化合物以外の末端変性剤、またはメタノールなどの重合停止剤などを重合系内に添加することで、不活性化する工程を加えることが好ましい。
【0060】
〔第3工程〕
あるいは、第2工程において得られた活性末端を有する共役ジエン系ゴムの重合体鎖について、共役ジエン系ゴムの重合体鎖が有する活性末端を不活性化する工程を設けずに、あるいは、共役ジエン系ゴムの重合体鎖が有する活性末端の一部のみを不活性化させ、共役ジエン系ゴムの重合体鎖に含まれる活性末端に、該活性末端と反応可能な官能基を有するシラン化合物を反応させることにより、シラン化合物変性された共役ジエン系ゴムを得てもよい。すなわち、本発明においては、上述した第2工程で得られた共役ジエン系ゴムの重合体鎖の活性末端に、該活性末端と反応可能な官能基を有するシラン化合物(以下、単に「シラン化合物」とする。)を反応させることにより、シラン化合物で変性された共役ジエン系ゴムを得る第3工程をさらに設けてもよい。この場合には、下記の式(3)で表される繰り返し単位で構成された重合体ブロックを有し、他方の末端に、ケイ素原子を含有する基を有する共役ジエン系ゴムを得ることができる。
【0062】
式(3)において、R
1〜R
4およびXは、式(1)におけるものと同じものである。
【0063】
共役ジエン系ゴムの重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基としては、該活性末端と反応することができるものであれば特に限定されないが、活性末端に対する反応性の観点より、ハロゲン原子、2−ピロリドニル基、ビニル基、アルコキシ基、アミノ基およびエポキシ基からなる群より選ばれる官能基であることが好ましく、2−ピロリドニル基、エポキシ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる官能基であることがより好ましく、エポキシ基が特に好ましい。
【0064】
本発明で用いられるシラン化合物としては、例えば、ポリオルガノシロキサンおよびヒドロカルビルオキシシラン化合物などが挙げられる。ポリオルガノシロキサンとしては、共役ジエン系ゴムの重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基を有していれば特に限定されないが、その具体例としては、下記の式(4)で表されるポリオルガノシロキサンなどを挙げることができる。また、ヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、共役ジエン系ゴムの重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基を有していれば特に限定されないが、その具体例としては、下記の式(5)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物;ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンなどのヘキサアルコキシシラン化合物;メチルトリエトキシシランなどのアルキルアルコキシシラン化合物;ビニルトリメトキシシランなどのビニルアルコキシシラン化合物;フェニルトリメトキシシランなどのアリールアルコキシシラン化合物;トリエトキシクロロシランなどのハロゲノアルコキシシラン化合物;3−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシブチルプロピルトリメトキシシラン、ビス(3−グリシドキシプロピル)ジメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物;ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィドなどの硫黄含有アルコキシシラン化合物;ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)メチルアミンなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物;トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどのイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物;などを挙げることができる。その他、本発明で用いられるシラン化合物としては、テトラクロロシランなどのテトラハロゲン化シラン化合物;などを挙げることができる。これらの中でも、式(4)で示されるポリオルガノシロキサン、および式(5)で示されるヒドロカルビルオキシシラン化合物が好ましい。特に、式(4)で示されるポリオルガノシロキサンを用いることにより、得られるゴム架橋物を、低発熱性により優れたものとすることができる。
【0066】
式(4)において、R
11〜R
18は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基である。Y
1およびY
4は、それぞれ独立して、共役ジエン系ゴムの重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基である。Y
2は、共役ジエン系ゴムの重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基であり、複数あるY
2は互いに同一であっても相違していてもよい。Y
3は、2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、Y
3が複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。pは3〜200の整数、qは0〜200の整数、rは0〜200の整数である。
【0068】
式(5)において、R
19は、炭素数1〜12のアルキレン基であり、R
19が複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。R
20〜R
28は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基である。sは1〜10の整数、tは0〜2の整数である。
【0069】
式(4)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、R
11〜R
18、Y
1、およびY
4を構成する炭素数1〜6のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、およびシクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、およびメチルフェニル基などが挙げられる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン自体の製造容易性の観点から、メチル基およびエチル基が好ましい。
【0070】
式(4)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、Y
1、Y
2、およびY
4を構成する共役ジエン系ゴムの重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基、2−ピロリドニル基を含有する炭化水素基、およびエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基が好ましく、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基がより好ましい。
【0071】
炭素数1〜5のアルコキシ基としては、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、およびブトキシ基などが挙げられる。これらの中でも、共役ジエン系ゴムの重合体鎖の活性末端との反応性の観点から、メトキシ基およびエトキシ基が好ましい。
【0072】
2−ピロリドニル基を含有する炭化水素基としては、例えば、下記の式(6)で表されるものが挙げられる。
【0074】
式(6)において、uは2〜10の整数であり、2であることが好ましい。
【0075】
エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基としては、例えば、下記の式(7)で表されるものが挙げられる。
【0077】
式(7)において、Z
1は、炭素数1〜10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Z
2はメチレン基、硫黄原子、または酸素原子であり、Eはエポキシ基を有する炭素数2〜10の置換炭化水素基である。これらの中でも、Z
2が酸素原子であるものが好ましく、Z
2が酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものがより好ましく、Z
1が炭素数3のアルキレン基であり、Z
2が酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものが特に好ましい。
【0078】
式(4)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、R
11〜R
18で表される基は、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、Y
1およびY
4としては、上記の中でも、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、Y
2としては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基であることが好ましい。
【0079】
式(4)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、Y
3、すなわち2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基としては、たとえば、下記の式(8)で表されるものが挙げられる。
【0081】
式(8)において、vは2〜20の整数であり、Pは炭素数2〜10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R
29は、水素原子またはメチル基であり、複数あるR
29は互いに同一であっても相違していてもよい。Qは炭素数1〜10のアルコキシ基またはアリーロキシ基である。これらの中でも、vが2〜8の整数であり、Pが炭素数3のアルキレン基であり、R
29が水素原子であり、かつQがメトキシ基であるものが好ましい。
【0082】
式(4)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、pは3〜200、好ましくは3〜150、より好ましくは3〜120の整数である。pの数が上記範囲内にあると、得られるゴム架橋物の低発熱性をより向上させることができる。
【0083】
式(4)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、qは0〜200、好ましくは0〜150、より好ましくは0〜120の整数である。rは0〜200、好ましくは0〜150、より好ましくは0〜120の整数である。p、q、およびrの合計数は、3〜400であることが好ましく、3〜300であることがより好ましく、3〜250であることが特に好ましい。p、q、およびrの合計数が多すぎると、反応中の重合溶液の粘度が高くなりすぎ、変性された共役ジエン系ゴムの製造が困難となるおそれがある。
【0084】
なお、式(4)で示されるポリオルガノシロキサンにおいて、ポリオルガノシロキサン中のエポキシ基が、未変性の共役ジエン系ゴムの重合体鎖の活性末端と反応する場合、ポリオルガノシロキサン中の少なくとも一部のエポキシ基が開環することにより、エポキシ基が開環した部分の炭素原子と共役ジエン系ゴムの重合体鎖の活性末端を有する原子との結合が形成されると考えられる。また、ポリオルガノシロキサン中のアルコキシ基が共役ジエン系ゴムの重合体鎖の活性末端と反応する場合、ポリオルガノシロキサン中の少なくとも一部のアルコキシ基が脱離することにより、ポリオルガノシロキサンが含有するケイ素原子と共役ジエン系ゴムの重合体鎖の活性末端を有する原子との結合が形成されると考えられる。また、ポリオルガノシロキサン中の2−ピロリドニル基が共役ジエン系ゴムの重合体鎖の活性末端と反応する場合、ポリオルガノシロキサン中の少なくとも一部の2−ピロリドニル基を構成するカルボニル基の炭素―酸素結合が開裂して、その炭素原子と共役ジエン系ゴムの重合体鎖の活性末端を有する原子との結合が形成されると考えられる。
【0085】
式(5)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物において、炭素数1〜6のアルキル基、および炭素数6〜12のアリール基は、式(4)のポリオルガノシロキサンについて説明したものと同様である。
【0086】
式(5)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物において、炭素数1〜12のアルキレン基としては、たとえば、メチレン基、エチレン基、およびプロピレン基などが挙げられる。これらの中でも、プロピレン基が好ましい。
【0087】
式(5)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物の具体例としては、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、およびN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0088】
シラン化合物の使用量は、特に限定されないが、上述した第2工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系ゴムの活性末端1モルに対する、活性末端に対する反応性を有する基の量が、0.05〜5モルの範囲となる量とすることが好ましく、0.1〜3モルとなる量とすることがより好ましく、0.3〜1.5モルとなる量とすることが特に好ましい。シラン化合物の使用量を上記範囲とすることにより、その添加効果をより顕著なものとすることができる。なお、シラン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
上述した第2工程で得られた共役ジエン系ゴムの重合体鎖の活性末端に、シラン化合物を反応させる方法としては、特に限定されないが、活性末端を有する共役ジエン系ゴムと、シラン化合物とを、これらを溶解可能な溶媒中で、混合する方法などが挙げられる。この際に用いる溶媒としては、上述した第1工程および第2工程に用いる溶媒として例示したものなどを用いることができる。また、この際においては、上述した第2工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系ゴムを、その重合に用いた重合溶液のままの状態とし、ここにシラン化合物を添加する方法が簡便であり、好ましい。また、この際においては、シラン化合物は、上述した重合に用いる不活性溶媒に溶解して重合系内に添加することが好ましく、その溶液濃度は、1〜50重量%の範囲とすることが好ましい。変性反応における反応温度は、特に限定されないが、通常、0〜120℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常、1分〜1時間である。
【0090】
上述した第2工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系ゴムを含有する溶液に、シラン化合物を添加する時期は特に限定されないが、重合反応が完結しておらず、活性末端を有する共役ジエン系ゴムを含有する溶液が単量体をも含有している状態、より具体的には、活性末端を有する共役ジエン系ゴムを含有する溶液が、100ppm以上、より好ましくは300〜50,000ppmの単量体を含有している状態で、この溶液にシラン化合物を添加することが望ましい。シラン化合物の添加をこのように行なうことにより、活性末端を有する共役ジエン系ゴムと重合系中に含まれる不純物などとの副反応を抑制して、反応を良好に制御することが可能となる。
【0091】
なお、第3工程の前後(上述した第2工程で得られた共役ジエン系ゴムに、シラン化合物を反応させる前後)、好ましくは第3工程の前において、本発明の効果を阻害しない範囲で、従来から通常使用されている四塩化錫などのカップリング剤を重合系内に添加して、活性末端を有する共役ジエン系ゴムの重合体鎖の一部をカップリングする工程を加えてもよい。また、第3工程の前後(上述した第2工程で得られた共役ジエン系ゴムに、シラン化合物を反応させる前後)において、本発明の効果を阻害しない範囲で、従来から通常使用されている、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのシラン化合物以外の末端変性剤を重合系内に添加して、活性末端を有する共役ジエン系ゴムの重合体鎖の一部をシラン化合物以外で変性する工程を加えてもよい。また、第3工程の後(上述した第2工程で得られた共役ジエン系ゴムに、シラン化合物を反応させた後)において、活性末端を有する共役ジエン系ゴムの重合体鎖が重合系内に残存している場合には、従来から通常使用されているメタノールなどの重合停止剤を重合系内に添加して、活性末端を有する共役ジエン系ゴムの活性末端を失活させることが好ましい。
【0092】
また、本発明の製造方法においては、上述した第2工程において共役ジエン系ゴムを得た後、あるいは、さらに第3工程においてシラン化合物と反応させる場合には、第3工程においてシラン化合物で変性された共役ジエン系ゴムを得た後に、上述した第1工程で導入した式(1)で表される化合物の重合体ブロックについて、式(1)において「−SiR
2R
3R
4」で表される基や、Xで表される基がアミノ基の保護基である場合のその保護基について、脱保護する脱保護反応を行ってもよい。脱保護反応としては、塩酸などの一般的な酸、あるいはテトラブチルアンモニウムフルオリドなどの塩基を用いる方法を制限なく用いることができる。特に、このような脱保護反応を行うことにより、式(1)で表される化合物の重合体ブロックに、窒素原子に直接、少なくとも1つの水素原子が結合してなるアミノ基を導入することができ、これにより、シリカなどの充填剤との親和性をより高めることができる。脱保護反応における反応温度は、特に限定されないが、通常0〜120℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常5分〜10時間である。また、本発明において、アミノ基の保護基を脱保護する脱保護反応は、たとえば、後述する、得られる共役ジエン系ゴムをシリカなどの各種配合剤と混練することで、ゴム組成物とする際に、混練と同時に、脱保護反応を進行させるような態様としてもよい。
【0093】
以上のようにして得られる共役ジエン系ゴムの溶液には、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤の添加量は、その種類などに応じて適宜決定すればよい。さらに、所望により、伸展油を配合して、共役ジエン系ゴムを油展ゴムとしてもよい。伸展油としては、たとえば、パラフィン系、芳香族系およびナフテン系の石油系軟化剤、植物系軟化剤、ならびに脂肪酸などが挙げられる。石油系軟化剤を用いる場合には、IP346の方法(英国のTHE INSTITUTE PETROLEUMの検査方法)により抽出される多環芳香族の含有量が3%未満であることが好ましい。伸展油を使用する場合、その使用量は、共役ジエン系ゴム100重量部に対して、通常5〜100重量部である。
【0094】
そして、このようにして得られた共役ジエン系ゴムは、スチームストリッピングなどにより、溶媒を除去することにより、反応混合物から分離することで、固形状の共役ジエン系ゴムを得ることができる。
【0095】
本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される値として、通常、100,000〜3,000,000、好ましくは120,000〜2,000,000、より好ましくは150,000〜1,500,000の範囲である。共役ジエン系ゴムの重量平均分子量を上記範囲とすることにより、共役ジエン系ゴムへのシリカなどの充填剤の配合が容易となり、ゴム組成物は加工性により優れたものとなる。
【0096】
また、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布も、特に限定されないが、好ましくは1.0〜5.0、特に好ましくは1.0〜3.0である。共役ジエン系ゴムの分子量分布を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物は低発熱性により優れたものとなる。
【0097】
また、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムのムーニー粘度(ML
1+4,100℃)も、特に限定されないが、通常、20〜200、好ましくは30〜150の範囲である。共役ジエン系ゴムのムーニー粘度を上記範囲として、これを用いてゴム組成物を構成することにより、加工性に優れたゴム組成物を得ることができる。なお、共役ジエン系ゴムを油展ゴムとする場合は、その油展ゴムのムーニー粘度を上記の範囲とすることが好ましい。
【0098】
また、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムの共役ジエン単位部分におけるビニル結合含有量は、通常1〜80重量%であり、好ましくは5〜75重量%である。ビニル結合量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物は低発熱性に優れたものとなる。
【0099】
〔ゴム組成物〕
本発明のゴム組成物は、上述した本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、シリカ10〜200重量部を含有してなる組成物である。
【0100】
本発明で用いるシリカとしては、たとえば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン−シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。用いるシリカの窒素吸着比表面積(ASTM D3037−81に準じBET法で測定される)は、好ましくは50〜300m
2/g、より好ましくは80〜220m
2/g、特に好ましくは100〜170m
2/gである。また、シリカのpHは、5〜10であることが好ましい。
【0101】
本発明のゴム組成物におけるシリカの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、10〜200重量部であり、好ましくは30〜150重量部、より好ましくは50〜100重量部である。シリカの配合量を上記範囲とすることにより、ゴム組成物の加工性がより優れたものとなり、得られるゴム架橋物の低発熱性がより優れたものとなる。
【0102】
本発明のゴム組成物には、低発熱性をさらに改良するという観点より、さらにシランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤としては、たとえば、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−オクタチオ−1−プロピル−トリエトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、およびγ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどを挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは1〜15重量部である。
【0103】
また、本発明のゴム組成物には、さらに、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、およびグラファイトなどのカーボンブラックを配合してもよい。これらのなかでも、ファーネスブラックが好ましい。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。カーボンブラックの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、通常、120重量部以下である。
【0104】
なお、本発明の共役ジエン系ゴムを含むゴム成分に、シリカを添加する方法は特に限定されず、固形のゴム成分に対して添加して混練する方法(乾式混練法)や共役ジエン系ゴムを含む溶液に対して添加して凝固・乾燥させる方法(湿式混練法)などを適用することができる。
【0105】
また、本発明のゴム組成物は、架橋剤をさらに含有していることが好ましい。架橋剤としては、たとえば、硫黄、ハロゲン化硫黄などの含硫黄化合物、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく使用される。架橋剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1〜4重量部である。
【0106】
さらに、本発明のゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、架橋促進剤、架橋活性化剤、老化防止剤、充填剤(上記シリカおよびカーボンブラックを除く)、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤、粘着付与剤などの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。
【0107】
架橋剤として、硫黄または含硫黄化合物を用いる場合には、架橋促進剤および架橋活性化剤を併用することが好ましい。架橋促進剤としては、たとえば、スルフェンアミド系架橋促進剤;グアニジン系架橋促進剤;チオウレア系架橋促進剤;チアゾール系架橋促進剤;チウラム系架橋促進剤;ジチオカルバミン酸系架橋促進剤;キサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。これらのなかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1〜4重量部である。
【0108】
架橋活性化剤としては、たとえば、ステアリン酸などの高級脂肪酸;酸化亜鉛;などを挙げることができる。これらの架橋活性化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋活性化剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05〜20重量部、特に好ましくは0.5〜15重量部である。
【0109】
また、本発明のゴム組成物には、上述した本発明の製造方法によって得られる共役ジエン系ゴム以外のその他のゴムを配合してもよい。その他のゴムとしては、たとえば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、乳化重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム(高シス−BR、低シスBRであってもよい。また、1,2−ポリブタジエン重合体からなる結晶繊維を含むポリブタジエンゴムであってもよい)、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合ゴムなどのうち、上述した共役ジエン系ゴム以外のものを挙げることができる。これらのなかでも、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴムが好ましい。これらのゴムは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0110】
本発明のゴム組成物において、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムは、ゴム組成物中のゴム成分の10〜100重量%を占めることが好ましく、50〜100重量%を占めることが特に好ましい。このような割合で、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムをゴム成分中に含めることにより、低発熱性により優れたゴム架橋物を得ることができる。
【0111】
本発明のゴム組成物を得るためには、常法に従って各成分を混練すればよく、たとえば、架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を除く成分と共役ジエン系ゴムとを混練後、その混練物に架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を混合して目的の組成物を得ることができる。熱に不安定な成分を除く成分と共役ジエン系ゴムとの混練温度は、好ましくは80〜200℃、より好ましくは120〜180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒〜30分である。また、その混練物と熱に不安定な成分との混合は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却した後に行われる。
【0112】
〔ゴム架橋物〕
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のゴム組成物を架橋してなるものである。 本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜12時間、特に好ましくは3分〜6時間である。
【0113】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0114】
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0115】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムを用いて得られるものであるため、低発熱性に優れたものである。特に、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムは、重合体鎖の重合開始末端側に、式(1)で表される化合物の重合体ブロックを備えるものであるため、シリカなどの充填剤に対する親和性が高いものである。また、シラン化合物で変性してなる共役ジエン系ゴムは、重合体鎖の重合開始末端側に、式(1)で表される化合物の重合体ブロックを備えるとともに、重合停止側末端に、シラン化合物を用いた変性反応による変性基を備えるものであるため、シリカなどの充填剤に対する親和性がより高められたものである。特に、本発明の製造方法においては、好ましくは式(1)で表される化合物を単独で重合させて、式(1)で表される化合物を重合体ブロックの形態で導入することにより、シリカなどの充填剤に対する親和性をより有効に高めることができるものである。したがって、このような本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムを用いて得られる、本発明のゴム架橋物は、共役ジエン系ゴムと充填剤としてのシリカとの親和性が高く、そのため、低発熱性に優れたものとなる。
【0116】
そして、本発明のゴム架橋物は、このような特性を活かし、たとえば、タイヤにおいて、キャップトレッド、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位の材料;ホース、ベルト、マット、防振ゴム、その他の各種工業用品の材料;樹脂の耐衝撃性改良剤;樹脂フィルム緩衝剤;靴底;ゴム靴;ゴルフボール;玩具;などの各種用途に用いることができる。とりわけ、本発明のゴム架橋物は、低発熱性に優れることから、タイヤの材料、特に低燃費タイヤの材料として好適に用いることができ、トレッド用途に最適である。
【実施例】
【0117】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は、以下の記載に従って行った。
【0118】
〔ゴムの分子量〕
ゴムの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によりポリスチレン換算分子量として求めた。具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
測定器:高速液体クロマトグラフ(東ソー社製「HLC−8220」)
カラム:東ソー社製「GMH−HR−H」を二本直列に連結したものを用いた。
検出器:示差屈折計(東ソー社製「RI−8220」)
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
【0119】
〔ゴムのミクロ構造〕
1H−NMRにより測定した。
測定器:JEOL社製「JNM−ECA−400WB」
測定溶媒:重クロロホルム
【0120】
〔加工性〕
試料となるゴム組成物について、JIS K6300に従い、ムーニー粘度計(島津製作所社製)を用いてムーニー粘度(ML
1+4,100℃)を測定した。この測定値が低いものほど、加工性に優れる。
【0121】
〔低発熱性〕
長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片(ゴム架橋物)について、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製「ARES」)を用い、動的歪み2.5%、周波数10Hzの条件で60℃におけるtanδを測定した。この特性については、実施例1〜3および比較例1〜4のものについては、比較例1の測定値を100とする指数で示し、実施例4〜6および比較例5〜9のものについては、比較例5の測定値を100とする指数で示した。この指数が低いものほど、低発熱性に優れる。
【0122】
〔ウェットグリップ性〕
長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片(ゴム架橋物)を、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製「ARES」)を用い、動的歪み0.5%、10Hzの条件で0℃におけるtanδを測定した。この特性については、比較例1の測定値を100とする指数で示した。この指数が高いものほど、ウェットグリップ性に優れる。
【0123】
〔合成例〕(p−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレンの合成)
p−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレン(下記の式(9)で表される化合物)を、「Macromol. Chem. Phys.2000,201,2699−2704」に記載の方法に準じて合成した。得られたp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレンの構造は、
1H−NMRにより確認した。
1H−NMR(500MHz、CDCl
3、TMS、δppm):7.44(m、4H)、7.34(m、4H)、7.30(m、2H)、7.19(d、2H、J=8.2Hz)、6.84(d、2H、J=8.2Hz)、6.64(dd、1H、J=18.2Hz、10.8Hz)、5.64(dd、1H、J=18.2Hz、0.7Hz)、5.15(dd、1H、J=10.8Hz、0.7Hz)、0.2(s、12H)。
【0124】
【化11】
【0125】
〔比較合成例1〕(p−(ジメチルアミノ)スチレンの合成)
p−(ジメチルアミノ)スチレン(下記の式(10)で表される化合物)を、「Polymer J. 1988, 20, 791−799」に記載の方法に準じて合成した。得られたp−(ジメチルアミノ)スチレンの構造は、
1H−NMRにより確認した。
【0126】
【化12】
【0127】
〔比較合成例2〕(p−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレンの合成)
p−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレン(下記の式(11)で表される化合物)を、「Macromol. Chem. Phys.2000,201,2699−2704」に記載の方法に準じて合成した。得られたp−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレンの構造は、
1H−NMRにより確認した。
【0128】
【化13】
【0129】
〔実施例1〕(スチレン−ブタジエン共重合ゴム1、そのゴム組成物およびそのゴム架橋物の製造)
窒素置換された100mlアンプル瓶に、シクロヘキサン23.4g、およびテトラメチルエチレンジアミン2.6mmolを添加し、さらに、合成例で得られたp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレン0.6gを添加した。次いで、n−ブチルリチウム1.4mmolを撹拌下で添加し、室温で60分間反応させることにより、p−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレンの重合体ブロック1A(p−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレン重合体ブロックの末端に、活性末端として、ヒドロカルビルリチウムが導入された重合体)を含む溶液を得た。得られた重合体ブロック1Aについては、ごく一部を取り出した上で、それにメタノールを加えて活性末端を失活させたものを試料として、重量平均分子量(Mw)を測定した。結果を表1に示す。
【0130】
次いで、オートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン760g、1,3−ブタジエン94.8g、およびスチレン25.2gを仕込んだ後、上記の操作で得られたp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレンの重合体ブロック1Aを含む溶液を全量加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95〜100%の範囲になったことを確認してから、四塩化錫0.044mmolを20重量%濃度のシクロヘキサン溶液の状態で添加し、10分間反応させた。次いで、下記の式(12)で表されるポリオルガノシロキサンを、エポキシ基が、使用したn−ブチルリチウムの0.5倍モルに相当する量となるように、20重量%濃度のキシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加することで、スチレン−ブタジエン共重合ゴム1を含む溶液を得た。
【0131】
【化14】
【0132】
次いで、得られたスチレン−ブタジエン共重合ゴム1を含む溶液に、老化防止剤として、「イルガノックス1520L」(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、スチレン−ブタジエン共重合ゴム1 100部に対して0.2部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥することで、固形状のスチレン−ブタジエン共重合ゴム1を得た。
【0133】
そして、得られたスチレン−ブタジエン共重合ゴム1について、重量平均分子量(Mw)、スチレン単位含有量、ビニル結合含有量、およびp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレン単位の含有量(アミノ基含有単量体単位含有量)を測定した。結果を表1に示す。
【0134】
次いで、容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、上記の操作で得られたスチレン−ブタジエン共重合ゴム1 100部を30秒間素練りし、次いでシリカ(ローディア社製「Zeosil1165MP」)50部、プロセスオイル(新日本石油社製「アロマックス T−DAE」)25部、およびシランカップリング剤:ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(デグッサ社製「Si69」)6.4部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練後、シリカ(ローディア社製「Zeosil1165MP」)30部、酸化亜鉛3.0部、ステアリン酸2.0部および老化防止剤:N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(大内新興化学工業社製「ノクラック6C」)2.0部を添加し、更に2.5分間混練し、ミキサーから混練物を排出させた。混錬終了時の混練物の温度は150℃であった。次いで、得られた混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、110℃を開始温度として2分間混練した後、ミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られた混練物と、硫黄1.7部および架橋促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業社製「ノクセラーCZ−G」)1.8部とジフェニルグアニジン(大内新興化学工業社製「ノクセラーD」、)1.1部)とを混練した後、シート状のゴム組成物を取り出した。そして、得られたゴム組成物を、160℃で25分間プレス架橋してゴム架橋物(試験片)を作製し、この試験片を用いて、低発熱性、およびウェットグリップ性の評価を行なった。結果を表1に示す。また、得られたゴム組成物について、加工性の評価(ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)の測定)を行ったところ、ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)は85であり、加工性に優れたものであった。
【0135】
【表1】
【0136】
〔実施例2〕(スチレン−ブタジエン共重合ゴム2、そのゴム組成物およびそのゴム架橋物の製造)
合成例で得られたp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレンの使用量を、0.6gから3.0gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、p−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレンの重合体ブロック2A(p−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレン重合体ブロックの末端に、活性末端として、ヒドロカルビルリチウムが導入された重合体)を含む溶液を得た。得られた重合体ブロック2Aについては、ごく一部を取り出した上で、それにメタノールを加えて活性末端を失活させたものを試料として、重量平均分子量(Mw)を測定した。結果を表1に示す。
【0137】
そして、重合体ブロック1Aを含む溶液に代えて、以上のようにして得られた重合体ブロック2Aを含む溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、固形状のスチレン−ブタジエン共重合ゴム2を得て、得られたスチレン−ブタジエン共重合ゴム2について、重量平均分子量(Mw)、スチレン単位含有量、ビニル結合含有量、およびp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレン単位の含有量(アミノ基含有単量体単位含有量)を測定した。結果を表1に示す。
【0138】
次いで、スチレン−ブタジエン共重合ゴム1に代えて、以上のようにして得られたスチレン−ブタジエン共重合ゴム2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物、およびゴム架橋物(試験片)を作製し、そのゴム架橋物の低発熱性およびウェットグリップ性の評価を行った。結果を表1に示す。また、得られたゴム組成物について、加工性の評価(ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)の測定)を行ったところ、ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)は90であり、加工性に優れたものであった。
【0139】
〔実施例3〕(スチレン−ブタジエン共重合ゴム3、そのゴム組成物およびそのゴム架橋物の製造)
合成例で得られたp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレンの使用量を、0.6gから6.0gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、p−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレンの重合体ブロック3A(p−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレン重合体ブロックの末端に、活性末端として、ヒドロカルビルリチウムが導入された重合体)を含む溶液を得た。得られた重合体ブロック3Aについては、ごく一部を取り出した上で、それにメタノールを加えて活性末端を失活させたものを試料として、重量平均分子量(Mw)を測定した。結果を表1に示す。
【0140】
そして、重合体ブロック1Aを含む溶液に代えて、以上のようにして得られた重合体ブロック3Aを含む溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、固形状のスチレン−ブタジエン共重合ゴム3を得て、得られたスチレン−ブタジエン共重合ゴム3について、重量平均分子量(Mw)、スチレン単位含有量、ビニル結合含有量、およびp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレン単位の含有量(アミノ基含有単量体単位含有量)を測定した。結果を表1に示す。
【0141】
次いで、スチレン−ブタジエン共重合ゴム1に代えて、以上のようにして得られたスチレン−ブタジエン共重合ゴム3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物、およびゴム架橋物(試験片)を作製し、そのゴム架橋物の低発熱性およびウェットグリップ性の評価を行った。結果を表1に示す。また、得られたゴム組成物について、加工性の評価(ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)の測定)を行ったところ、ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)は97であり、加工性に優れたものであった。
【0142】
〔比較例1〕(スチレン−ブタジエン共重合ゴムc1、そのゴム組成物およびそのゴム架橋物の製造〕
オートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン760g、テトラメチルエチレンジアミン2.6mmol、1,3−ブタジエン94.8g、スチレン25.2g、および合成例で得られたp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレン6.5gを仕込んだ後、n−ブチルリチウム0.8mmolを加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95〜100%の範囲になったことを確認してから、四塩化錫0.044mmolを20重量%濃度のシクロヘキサン溶液の状態で添加し、10分間反応させた。次いで、上記の式(12)で表されるポリオルガノシロキサンを、エポキシ基が、使用したn−ブチルリチウムの0.5倍モルに相当する量となるように、20%濃度のキシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、スチレン−ブタジエン共重合ゴムc1を含む溶液を得た。
【0143】
次いで、得られたスチレン−ブタジエン共重合ゴムc1を含む溶液に、老化防止剤として、「イルガノックス1520L」(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、スチレン−ブタジエン共重合ゴムc1 100部に対して0.2部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥することで、固形状のスチレン−ブタジエン共重合ゴムc1を得た。
【0144】
そして、得られたスチレン−ブタジエン共重合ゴムc1について、重量平均分子量(Mw)、スチレン単位含有量、ビニル結合含有量、およびp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレン単位の含有量(アミノ基含有単量体単位含有量)を測定した。結果を表1に示す。
【0145】
次いで、スチレン−ブタジエン共重合ゴム1に代えて、以上のようにして得られたスチレン−ブタジエン共重合ゴムc1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物、およびゴム架橋物(試験片)を作製し、そのゴム架橋物の低発熱性およびウェットグリップ性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0146】
〔比較例2〕(スチレン−ブタジエン共重合ゴムc2、そのゴム組成物およびそのゴム架橋物の製造)
合成例で得られたp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレンに代えて、比較合成例1で得られたp−(ジメチルアミノ)スチレンを1.8g用いたこと以外は、実施例2と同様にして、p−(ジメチルアミノ)スチレンの重合体ブロックc2A(p−(ジメチルアミノ)スチレン重合体ブロックの末端に、活性末端として、ヒドロカルビルリチウムが導入された重合体)を得た。得られた重合体ブロックc2Aについては、ごく一部を取り出した上で、それにメタノールを加えて活性末端を失活させたものを試料として、重量平均分子量(Mw)を測定した。結果を表1に示す。
【0147】
そして、重合体ブロック1Aに代えて、以上のようにして得られた重合体ブロックc2Aを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、固形状のスチレン−ブタジエン共重合ゴムc2を得て、得られたスチレン−ブタジエン共重合ゴムc2について、重量平均分子量(Mw)、スチレン単位含有量、ビニル結合含有量、およびp−(ジメチルアミノ)スチレン単位の含有量(アミノ基含有単量体単位含有量)を測定した。結果を表1に示す。
【0148】
次いで、スチレン−ブタジエン共重合ゴム1に代えて、以上のようにして得られたスチレン−ブタジエン共重合ゴムc2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物、およびゴム架橋物(試験片)を作製し、そのゴム架橋物の低発熱性およびウェットグリップ性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0149】
〔比較例3〕(スチレン−ブタジエン共重合ゴムc3、そのゴム組成物およびそのゴム架橋物の製造〕
合成例で得られたp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレンに代えて、比較合成例1で得られたp−(ジメチルアミノ)スチレン3.0gを用いたこと以外は、比較例1と同様にして、固形状のスチレン−ブタジエン共重合ゴムc3を得て、得られたスチレン−ブタジエン共重合ゴムc3について、重量平均分子量(Mw)、スチレン単位含有量、ビニル結合含有量、およびp−(ジメチルアミノ)スチレン単位の含有量(アミノ基含有単量体単位含有量)を測定した。結果を表1に示す。
【0150】
次いで、スチレン−ブタジエン共重合ゴム1に代えて、以上のようにして得られたスチレン−ブタジエン共重合ゴムc3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物、およびゴム架橋物(試験片)を作製し、そのゴム架橋物の低発熱性およびウェットグリップ性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0151】
〔比較例4〕(スチレン−ブタジエン共重合ゴムc4、そのゴム組成物およびそのゴム架橋物の製造〕
合成例で得られたp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレンを用いなかったこと以外は、比較例1と同様にして、固形状のスチレン−ブタジエン共重合ゴムc4を得て、得られたスチレン−ブタジエン共重合ゴムc4について、重量平均分子量(Mw)、スチレン単位含有量、およびビニル結合含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0152】
次いで、スチレン−ブタジエン共重合ゴム1に代えて、以上のようにして得られたスチレン−ブタジエン共重合ゴムc4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物、およびゴム架橋物(試験片)を作製し、そのゴム架橋物の低発熱性およびウェットグリップ性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0153】
表1より、本発明の製造方法により製造された共役ジエン系ゴム(スチレン−ブタジエン共重合ゴム)を用いて得られるゴム架橋物は、低発熱性に優れるものであり、しかも、ウェットグリップ性にも優れるものであるといえる(実施例1〜3)。また、上述したように、本発明の製造方法により製造された共役ジエン系ゴム(スチレン−ブタジエン共重合ゴム)を用いて得られる、ゴム組成物は、いずれも加工性に優れるものであった。
一方、本発明における第1工程を経ずに、式(1)で表される化合物を、スチレンとブタジエンとともにランダム様式で共重合してなる共役ジエン系ゴム(スチレン−ブタジエン共重合ゴム)を用いて得られるゴム架橋物は、低発熱性に劣るものであるといえる(比較例1)。さらに、式(1)で表される化合物とは異なるアミノ基含有化合物を用いて製造された共役ジエン系ゴム(スチレン−ブタジエン共重合ゴム)、あるいは、アミノ基含有化合物を使用せずに製造された共役ジエン系ゴム(スチレン−ブタジエン共重合ゴム)を用いて得られるゴム架橋物も、低発熱性に劣るものであるといえる(比較例2〜4)。
【0154】
〔実施例4〕(ブタジエンゴム4、そのゴム組成物およびそのゴム架橋物の製造)
テトラメチルエチレンジアミンの使用量を2.6mmolから0.14mmolに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、p−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレンの重合体ブロック4A(p−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレン重合体ブロックの末端に、活性末端として、ヒドロカルビルリチウムが導入された重合体)を含む溶液を得た。得られた重合体ブロック4Aについては、ごく一部を取り出した上で、それにメタノールを加えて活性末端を失活させたものを試料として、重量平均分子量(Mw)を測定した。結果を表2に示す。
【0155】
次いで、オートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン760gおよび1,3−ブタジエン120gを仕込んだ後、上記の操作で得られたp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレンの重合体ブロック4Aを含む溶液を全量加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95〜100%の範囲になったことを確認してから、四塩化錫0.044mmolを20%重量濃度のシクロヘキサン溶液の状態で添加し、10分間反応させた。次いで、上記の式(12)で表されるポリオルガノシロキサンを、エポキシ基が、使用したn−ブチルリチウムの0.5倍モルに相当する量となるように、20重量%濃度のキシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加することで、ブタジエンゴム4を含む溶液を得た。
【0156】
次いで、得られたブタジエンゴム4を含む溶液に、老化防止剤として、「イルガノックス1520L」(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、ブタジエンゴム4 100部に対して0.2部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥することで、固形状のブタジエンゴム4を得た。
【0157】
そして、得られたブタジエンゴム4について、重量平均分子量(Mw)、ビニル結合含有量、およびp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレン単位の含有量(アミノ基含有単量体単位含有量)を測定した。結果を表2に示す。
【0158】
次いで、スチレン−ブタジエン共重合ゴム1に代えて、以上のようにして得られたブタジエンゴム4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物、およびゴム架橋物(試験片)を作製し、得られたゴム組成物について、加工性の評価(ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)の測定)を、また、得られたゴム架橋物について、低発熱性の評価を、それぞれ行った。結果を表2に示す。
【0159】
【表2】
【0160】
〔実施例5〕(ブタジエンゴム5、そのゴム組成物およびそのゴム架橋物の製造)
テトラメチルエチレンジアミンの使用量を2.6mmolから0.14mmolに変更したこと以外は、実施例2と同様にして、p−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレンの重合体ブロック5A(p−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレン重合体ブロックの末端に、活性末端として、ヒドロカルビルリチウムが導入された重合体)を含む溶液を得た。得られた重合体ブロック5Aについては、ごく一部を取り出した上で、それにメタノールを加えて活性末端を失活させたものを試料として、重量平均分子量(Mw)を測定した。結果を表2に示す。
【0161】
そして、重合体ブロック4Aを含む溶液に代えて、以上のようにして得られた重合体ブロック5Aを含む溶液を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、固形状のブタジエンゴム5を得て、得られたブタジエンゴム5について、重量平均分子量(Mw)、ビニル結合含有量、およびp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレン単位の含有量(アミノ基含有単量体単位含有量)を測定した。結果を表2に示す。
【0162】
次いで、ブタジエンゴム4に代えて、以上のようにして得られたブタジエンゴム5を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、ゴム組成物、およびゴム架橋物(試験片)を作製し、得られたゴム組成物について、加工性の評価(ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)の測定)を、また、得られたゴム架橋物について、低発熱性の評価を、それぞれ行った。結果を表2に示す。
【0163】
〔実施例6〕(ブタジエンゴム6、そのゴム組成物およびそのゴム架橋物の製造)
テトラメチルエチレンジアミンの使用量を2.6mmolから0.14mmolに変更したこと以外は、実施例3と同様にして、p−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレンの重合体ブロック6A(p−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレン重合体ブロックの末端に、活性末端として、ヒドロカルビルリチウムが導入された重合体)を含む溶液を得た。得られた重合体ブロック6Aについては、ごく一部を取り出した上で、それにメタノールを加えて活性末端を失活させたものを試料として、重量平均分子量(Mw)を測定した。結果を表2に示す。
【0164】
そして、重合体ブロック4Aを含む溶液に代えて、以上のようにして得られた重合体ブロック6Aを含む溶液を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、固形状のブタジエンゴム6を得て、得られたブタジエンゴム6について、重量平均分子量(Mw)、ビニル結合含有量、およびp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレン単位の含有量(アミノ基含有単量体単位含有量)を測定した。結果を表2に示す。
【0165】
次いで、ブタジエンゴム4に代えて、以上のようにして得られたブタジエンゴム6を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、ゴム組成物、およびゴム架橋物(試験片)を作製し、得られたゴム組成物について、加工性の評価(ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)の測定)を、また、得られたゴム架橋物について、低発熱性の評価を、それぞれ行った。結果を表2に示す。
【0166】
〔比較例5〕(ブタジエンゴムc5、そのゴム組成物およびそのゴム架橋物の製造)
オートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン760g、テトラメチルエチレンジアミン0.14mmol、1,3−ブタジエン120gおよび合成例で得られたp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレン5.0gを仕込んだ後、n−ブチルリチウム0.8mmolを加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95〜100%の範囲になったことを確認してから、四塩化錫0.044mmolを20重量%濃度のシクロヘキサン溶液の状態で添加し、10分間反応させた。次いで、上記の式(12)で表されるポリオルガノシロキサンを、エポキシ基が、使用したn−ブチルリチウムの0.5倍モルに相当する量となるように、20%濃度のキシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、ブタジエンゴムc5を含有する溶液を得た。
【0167】
次いで、得られたブタジエンゴムc5を含む溶液に、老化防止剤として、「イルガノックス1520L」(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、ブタジエンゴムc5 100部に対して0.2部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥することで、固形状のブタジエンゴムc5を得た。
【0168】
そして、得られたブタジエンゴムc5について、重量平均分子量(Mw)、ビニル結合含有量、およびp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレン単位の含有量(アミノ基含有単量体単位含有量)を測定した。結果を表2に示す。
【0169】
次いで、ブタジエンゴム4に代えて、以上のようにして得られたブタジエンゴムc5を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、ゴム組成物、およびゴム架橋物(試験片)を作製し、得られたゴム組成物について、加工性の評価(ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)の測定)を、また、得られたゴム架橋物について、低発熱性の評価を、それぞれ行った。結果を表2に示す。
【0170】
〔比較例6〕(ブタジエンゴムc6、そのゴム組成物およびそのゴム架橋物の製造)
合成例で得られたp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレンに代えて、比較合成例2で得られたp−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレンを0.4g用いたこと以外は、実施例4と同様にして、p−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレンの重合体ブロックc6A(p−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレン重合体ブロックの末端に、活性末端として、ヒドロカルビルリチウムが導入された重合体)を含む溶液を得た。得られた重合体ブロックc6Aについては、ごく一部を取り出した上で、それにメタノールを加えて活性末端を失活させたものを試料として、重量平均分子量(Mw)を測定した。結果を表2に示す。
【0171】
そして、重合体ブロック4Aを含む溶液に代えて、以上のようにして得られた重合体ブロックc6Aを含む溶液を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、固形状のブタジエンゴムc6を得て、得られたブタジエンゴムc6について、重量平均分子量(Mw)、ビニル結合含有量、およびp−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレン単位の含有量(アミノ基含有単量体単位含有量)を測定した。結果を表2に示す。
【0172】
次いで、ブタジエンゴム4に代えて、以上のようにして得られたブタジエンゴムc6を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、ゴム組成物、およびゴム架橋物(試験片)を作製し、得られたゴム組成物について、加工性の評価(ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)の測定)を、また、得られたゴム架橋物について、低発熱性の評価を、それぞれ行った。結果を表2に示す。
【0173】
〔比較例7〕(ブタジエンゴムc7、そのゴム組成物およびそのゴム架橋物の製造)
比較合成例2で得られたp−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレンの使用量を、0.4gから2.0gに変更したこと以外は、比較例6と同様にして、p−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレンの重合体ブロックc7A(p−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレン重合体ブロックの末端に、活性末端として、ヒドロカルビルリチウムが導入された重合体)を含む溶液を得た。得られた重合体ブロックc7Aについては、ごく一部を取り出した上で、それにメタノールを加えて活性末端を失活させたものを試料として、重量平均分子量(Mw)を測定した。結果を表2に示す。
【0174】
そして、重合体ブロック5Aを含む溶液に代えて、以上のようにして得られた重合体ブロックc7Aを含む溶液を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、固形状のブタジエンゴムc7を得て、得られたブタジエンゴムc7について、重量平均分子量(Mw)、ビニル結合含有量、およびp−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレン単位の含有量(アミノ基含有単量体単位含有量)を測定した。結果を表2に示す。
【0175】
次いで、ブタジエンゴム4に代えて、以上のようにして得られたブタジエンゴムc7を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、ゴム組成物、およびゴム架橋物(試験片)を作製し、得られたゴム組成物について、加工性の評価(ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)の測定)を、また、得られたゴム架橋物について、低発熱性の評価を、それぞれ行った。
【0176】
〔比較例8〕(ブタジエンゴムc8、そのゴム組成物およびそのゴム架橋物の製造)
比較合成例2で得られたp−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレンの使用量を、0.4gから3.9gに変更したこと以外は、比較例6と同様にして、p−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレンの重合体ブロックc8A(p−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレン重合体ブロックの末端に、活性末端として、ヒドロカルビルリチウムが導入された重合体)を含む溶液を得た。得られた重合体ブロックc8Aについては、ごく一部を取り出した上で、それにメタノールを加えて活性末端を失活させたものを試料として、重量平均分子量(Mw)を測定した。結果を表2に示す。
【0177】
そして、重合体ブロック6Aを含む溶液に代えて、以上のようにして得られた重合体ブロックc8Aを含む溶液を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、固形状のブタジエンゴムc8を得て、得られたブタジエンゴムc8について、重量平均分子量(Mw)、ビニル結合含有量、およびp−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレン単位の含有量(アミノ基含有単量体単位含有量)を測定した。結果を表2に示す。
【0178】
次いで、ブタジエンゴム4に代えて、以上のようにして得られたブタジエンゴムc8を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、ゴム組成物、およびゴム架橋物(試験片)を作製し、得られたゴム組成物について、加工性の評価(ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)の測定)を、また、得られたゴム架橋物について、低発熱性の評価を、それぞれ行った。結果を表2に示す。
【0179】
〔比較例9〕(ブタジエンゴムc9、そのゴム組成物およびそのゴム架橋物の製造〕
合成例で得られたp−[N,N−ビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ]スチレンを用いなかったこと以外は、比較例5と同様にして、固形状のブタジエンゴムc9を得て、得られたブタジエンゴムc9について、重量平均分子量(Mw)、およびビニル結合含有量を測定した。結果を表2に示す。
【0180】
次いで、ブタジエンゴム4に代えて、以上のようにして得られたブタジエンゴムc9を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、ゴム組成物、およびゴム架橋物(試験片)を作製し、得られたゴム組成物について、加工性の評価(ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)の測定)を、また、得られたゴム架橋物について、低発熱性の評価を、それぞれ行った。結果を表2に示す。
【0181】
表2より、本発明の製造方法により製造された共役ジエン系ゴム(ブタジエンゴム)を用いて得られるゴム組成物は、加工性に優れ、また、それを用いて得られるゴム架橋物は、低発熱性に優れるものであるといえる(実施例4〜6)。一方、本発明における第1工程を経ずに、式(1)で表される化合物を、ブタジエンとともにランダム様式で共重合してなる共役ジエン系ゴム(ブタジエンゴム)を用いて得られるゴム架橋物は、やや低発熱性に劣るものであるといえる(比較例5)。さらに、式(1)で表される化合物とは異なり、環状炭化水素基を有さないトリメチルシリル基で保護されたアミノ基を有する化合物を用いて製造された共役ジエン系ゴム(ブタジエンゴム)は、加工性に劣るといえる(比較例6〜8)。また、さらに、アミノ基含有化合物を使用せずに製造された共役ジエン系ゴム(ブタジエンゴム)は、加工性には優れるものの、それを用いて得られるゴム架橋物は、極端に低発熱性に劣るものであるといえる(比較例9)。