(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
溶解槽;減圧脱泡装置;前記溶解槽と前記減圧脱泡装置とを接続する第1の導管構造;および前記減圧脱泡装置の下流に設けられた、ガラス溶融物を成形手段に導く第2の導管構造;を有し、
前記減圧脱泡装置は、前記溶解槽からのガラス溶融物が上昇する上昇管、ガラス溶融物の減圧脱泡槽、および前記減圧脱泡槽からのガラス溶融物が下降する下降管を有しており、
前記上昇管、前記減圧脱泡槽、および前記下降管のガラス溶融物の流路の少なくともその一部が、耐火性炉材で構成されており、
前記第1の導管構造は、前記上昇管にガラス溶融物を供給する上流側ピットを有し、
前記第2の導管構造は、前記下降管からのガラス溶融物を収容する下流側ピットを有する、ガラス溶融物製造装置であって、当該ガラス溶融物製造装置は、
前記上流側ピットと、前記下流側ピットと、を接続する第3の導管構造;
前記溶解槽と前記上流側ピットとの間のガラス溶融物の流通を遮断する、前記第1の導管構造に設けられた第1の閉止手段;
燃焼ガスを前記第3の導管構造に導入可能な位置に配置された、減圧脱泡装置の予備加熱用バーナー;
前記予備加熱用バーナーの燃焼ガスを前記第3の導管構造に導入する、燃焼ガス導入手段;
および、前記燃焼ガスを排気する、前記減圧脱泡槽の上端に連通して配置される排気用煙突;
を有することを特徴とするガラス溶融物製造装置。
前記第3の導管構造におけるガラス溶融物の流通を遮断する、前記第3の導管構造に設けられた第2の閉止手段をさらに有する、請求項1に記載のガラス溶融物製造装置。
前記第1の閉止手段は、前記第1の導管構造のガラス溶融物の流路に挿抜自在な板状体であり、該板状体の平面形状が、該板状体を挿入する部位における前記第1の導管構造の断面形状と略同一である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス溶融物製造装置。
前記第2の閉止手段は、前記第2の導管構造のガラス溶融物の流路に挿抜自在な板状体であり、該板状体の平面形状が、該板状体を挿入する部位における前記第3の導管構造の断面形状と略同一である、請求項2に記載のガラス溶融物製造装置。
前記第2の導管構造におけるガラス溶融物の流通を遮断する、前記第2の導管構造に設けられた第3の閉止手段をさらに有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のガラス溶融物製造装置。
請求項1〜7のいずれか一項に記載のガラス溶融物製造装置と、ガラス溶融物を成形して成形体を得る成形手段と、成形体を徐冷してガラス物品を得る徐冷手段と、を有するガラス物品製造装置。
溶解槽;減圧脱泡装置;前記溶解槽と前記減圧脱泡装置とを接続する第1の導管構造;および前記減圧脱泡装置の下流に設けられた、ガラス溶融物を成形手段に導く第2の導管構造;を有し、
前記減圧脱泡装置は、前記溶解槽からのガラス溶融物が上昇する上昇管、ガラス溶融物の減圧脱泡槽、および前記減圧脱泡槽からのガラス溶融物が下降する下降管を有しており、
前記上昇管、前記減圧脱泡槽、および前記下降管のガラス溶融物の流路の少なくともその一部が、耐火性炉材で構成されており、
前記第1の導管構造は、前記上昇管にガラス溶融物を供給する上流側ピットを有し、
前記第2の導管構造は、前記下降管からのガラス溶融物を収容する下流側ピットを有する、ガラス溶融物製造装置を用いたガラス溶融物製造方法であって、
当該ガラス溶融物製造装置は、
前記上流側ピットと、前記下流側ピットと、を接続する第3の導管構造;
前記溶解槽と前記上流側ピットとの間のガラス溶融物の流通を遮断する、前記第1の導管構造に設けられた第1の閉止手段;
燃焼ガスを前記第3の導管構造に導入可能な位置に配置された、減圧脱泡装置の予備加熱用バーナー;
前記予備加熱用バーナーの燃焼ガスを前記第3の導管構造に導入する、燃焼ガス導入手段;
および、前記燃焼ガスを排気する、前記減圧脱泡槽の上端に連通して配置される排気用煙突;
を有し、
前記第1の閉止手段により、前記溶解槽と前記上流側ピットとの間のガラス溶融物の流通を遮断した状態で、前記予備加熱用バーナーの燃焼ガスを、前記第3の導管構造に導入して、前記上昇管、前記減圧脱泡槽、および、前記下降管のガラス溶融物の流路を予備加熱し、
次いで、予備加熱の終了後、第1の閉止手段の開放によりガラス溶融物を流通させ、減圧脱泡槽の内部を減圧して、ガラス溶融物を上流側ピットから上昇管内を上昇させて減圧脱泡槽へ流入させ、減圧脱泡槽内でガラス溶融物を脱泡処理し、脱泡処理されたガラス溶融物を、下降管内を下降させ、下流側ピットから導出させてガラス溶融物を得ることを特徴とするガラス溶融物製造方法。
請求項9または10に記載のガラス溶融物の製造方法により、前記流路を予備加熱する工程と、該予備加熱する工程の後にガラス溶融物を製造する工程と、該ガラス溶融物を成形し成形体を得る工程と、前記成形体を徐冷しガラス物品を得る工程と、を含むガラス物品製造方法。
【背景技術】
【0002】
建築用、車両用、フラットパネルディスプレイ用などの各種用途に用いるガラス板は、所定の配合比で調合した原料を、溶解槽で加熱溶融してガラス溶融物を得、このガラス溶融物を清澄した後、フロート法等により、所定の厚さのガラス板に成形し、次いで、このガラス板を所定の形状に切断することにより、製造される。
ここで、清澄とは、ガラス溶融物に残存する気泡を除去する操作であり、製造されるガラス板の品質を向上させるために実施される。この清澄手段としては、内部が所定の減圧度に保持された減圧脱泡槽内にガラス溶融物を導入し、減圧脱泡槽内を連続的に流れるガラス溶融物中の気泡を大きく成長させて、その浮力を利用してガラス溶融物中を浮上させ、ガラス溶融物の表面で破泡させて除去する減圧脱泡装置が知られている。特許文献1には、このような減圧脱泡装置の一構成例が示されている。
図4は、特許文献1における減圧脱泡装置の側面断面図である。
図4に示す減圧脱泡装置10は、溶解槽20内のガラス溶融物Gを減圧脱泡処理して、次の処理槽に連続的に供給するプロセスに用いられる。減圧脱泡装置10は、真空吸引されて内部が減圧される減圧ハウジング12内に水平に減圧脱泡槽14が設けられ、その両端部に、下方に向かって垂直に取り付けられた上昇管16および下降管18が配置されている。上昇管16は、下端が溶解槽20に連通する上流側ピット22のガラス溶融物G内に浸漬されており、上端が減圧脱泡槽14に連通していて、脱泡処理前のガラス溶融物Gを上流側ピット22から吸引上昇させて減圧脱泡槽14に導入する。下降管18は、同様に、下端が次の処理槽(図示せず)に連通する下流側ピット24のガラス溶融物G内に浸漬されており、上端が減圧脱泡槽14に連通していて、脱泡処理後のガラス溶融物Gを減圧脱泡槽14から下降させて下流側ピット24に導出する。そして、減圧ハウジング12内において、減圧脱泡槽14、上昇管16および下降管18の周囲には、これらを断熱被覆する断熱レンガなどの断熱材30が配設されている。
【0003】
図4に示す減圧脱泡装置10では、減圧脱泡槽14、上昇管16および下降管18のガラス溶融物の流路が、白金等の貴金属よりも安価な耐火性炉材(例えば、電鋳レンガ)で構成されているため、これらの構成要素が貴金属製の減圧脱泡装置に比べて、これらの構成要素の大型化、例えば、これらの直径の大径化が可能であるため、大流量の減圧脱泡装置を構築できる利点がある。
【0004】
しかしながら、これらの構成要素を耐火性炉材で構成すると、以下の問題がある。ガラス溶融物Gの減圧脱泡装置の運転を開始する際に、最初に上流側ピット22から吸引上昇されて減圧脱泡槽14に導入されるガラス溶融物Gが温度低下するのを防止し、最悪の場合でもガラス溶融物Gが冷却されて固化するのを防止しなければならない。このために、ガラス溶融物Gを導入する前に予め、減圧脱泡槽14、上昇管16および下降管18などを予備加熱する必要がある。これらの構成要素が貴金属製の場合、これらの構成要素に電流を流して自己発熱させること、すなわち、通電加熱することで、予備加熱が可能である。しかし、これらの構成要素を耐火性炉材で構成すると、通電加熱することができないため、予備加熱のための熱源を設ける必要がある。
【0005】
図4に示す減圧脱泡装置10は、上昇管16および下降管18の下端に配置される予備加熱用バーナー38,40と、減圧脱泡槽14の上端に連通して配置される排気用煙突42とを有する予備加熱装置を具備している。
特許文献1では、減圧脱泡装置10の予備加熱を以下の手順で実施する。
減圧脱泡装置10を運転する前には、上昇管16および下降管18の下端が、上流側ピット22と下流側ピット24のガラス溶融物Gの液面から離れるように、減圧脱泡装置10全体を上昇させている。そのため、減圧脱泡槽14、上昇管16および下降管18の内部にはガラス溶融物Gが存在しない状態となっている。この状態で、予備加熱用バーナー38,40を上昇管16および下降管18の下端に配置し、予備加熱用バーナー38,40の燃焼ガスを上昇管16および下降管18から導入する。この燃焼ガスによって、減圧脱泡槽14、上昇管16および下降管18の内面を予備加熱する。予備加熱に使用した燃焼ガスは、減圧脱泡槽14の上端に連通する排気用煙突42から排気される。予備加熱の実施時には、上流側ピット22および下流側ピット24の上側の開放部分にカバー23、25を設ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、減圧脱泡装置10の運転開始前の予備加熱について記載されている。また、何らかのトラブルでガラス溶融物の製造を停止した後、該ガラス溶融物の製造を再開する際にも、上述した予備加熱の操作が必要となる。この場合、減圧脱泡装置10の運転開始前に比べて、上流側ピット22内および下流側ピット24内のガラス溶融物Gの液面が上昇している。そのため、上流側ピット22内および下流側ピット24内のガラス溶融物Gの液面に対して、上昇管16および下降管18の下端が完全に離れるまで、減圧脱泡装置10を上昇させた後、上昇管16および下降管18の下端に予備加熱用バーナー38,40を配置する。これらの操作は、装置の構造的にも、予備加熱の操作に要する時間的にも大変である。また、予備加熱の終了後には、バーナー38,40を上昇管16および下降管18の下端の位置から取り外す操作も必要になる。
上述したように、減圧脱泡槽14、上昇管16および下降管18を耐火性炉材で構成する場合、大流量の減圧脱泡装置を構築する目的でこれらの構成要素の大型化が所望され、上記した装置の構造的な問題点や、予備加熱に関連する操作面での問題点は、特に顕著になる。
【0008】
本発明は、以上に鑑みてなされたもので、上昇管、減圧脱泡槽および下降管のガラス溶融物の流路が耐火性炉材で構成された減圧脱泡装置における予備加熱の操作を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、溶解槽;減圧脱泡装置;前記溶解槽と前記減圧脱泡装置とを接続する第1の導管構造;および前記減圧脱泡装置の下流に設けられた、ガラス溶融物を成形手段に導く第2の導管構造;を有し、
前記減圧脱泡装置は、前記溶解槽からのガラス溶融物が上昇する上昇管、ガラス溶融物の減圧脱泡槽、および前記減圧脱泡槽からのガラス溶融物が下降する下降管を有しており、
前記上昇管、前記減圧脱泡槽、および前記下降管のガラス溶融物の流路の少なくともその一部が、耐火性炉材で構成されており、
前記第1の導管構造は、前記上昇管にガラス溶融物を供給する上流側ピットを有し、
前記第2の導管構造は、前記下降管からのガラス溶融物を収容する下流側ピットを有する、ガラス溶融物製造装置であって、当該ガラス溶融物製造装置は、
前記上流側ピットと、前記下流側ピットと、を接続する第3の導管構造;
前記溶解槽と前記上流側ピットとの間のガラス溶融物の流通を遮断する、前記第1の導管構造に設けられた第1の閉止手段;
燃焼ガスを前記第3の導管構造に導入可能な位置に配置された、減圧脱泡装置の予備加熱用バーナー;
前記予備加熱用バーナーの燃焼ガスを前記第3の導管構造に導入する、燃焼ガス導入手段;
および、前記燃焼ガスを排気する、前記減圧脱泡槽の上端に連通して配置される排気用煙突;
を有することを特徴とするガラス溶融物製造装置を提供する。
【0010】
本発明の一態様におけるガラス溶融物製造装置は、前記第3の導管構造におけるガラス溶融物の流通を遮断する、前記第3の導管構造に設けられた第2の閉止手段をさらに有することが好ましい。
【0011】
本発明の一態様におけるガラス溶融物製造装置において、前記第1の閉止手段は、前記溶解槽と前記上流側ピットとの間の気体の流通も遮断することが好ましい。
【0012】
本発明の一態様におけるガラス溶融物製造装置において、前記第2の閉止手段は、前記第3の導管構造における気体の流通も遮断することが好ましい。
【0013】
本発明の一態様におけるガラス溶融物製造装置において、前記第1の閉止手段は、前記第1の導管構造のガラス溶融物の流路に挿抜自在な板状体であり、該板状体の平面形状が、該板状体を挿入する部位における前記第1の導管構造の断面形状と略同一であることが好ましい。
【0014】
本発明の一態様におけるガラス溶融物製造装置において、前記第2の閉止手段は、前記第2の導管構造のガラス溶融物の流路に挿抜自在な板状体であり、該板状体の平面形状が、該板状体を挿入する部位における前記第3の導管構造の断面形状と略同一であることが好ましい。
【0015】
本発明の一態様におけるガラス溶融物製造装置は、前記第2の導管構造におけるガラス溶融物の流通を遮断する、前記第2の導管構造に設けられた第3の閉止手段をさらに有してもよい。
【0016】
また、本発明の一態様においては、本発明のガラス溶融物製造装置と、ガラス溶融物を成形して成形体を得る成形手段と、成形体を徐冷してガラス物品を得る徐冷手段と、を有するガラス物品製造装置を提供する。
【0017】
また、本発明は、溶解槽;減圧脱泡装置;前記溶解槽と前記減圧脱泡装置とを接続する第1の導管構造;および前記減圧脱泡装置の下流に設けられた、ガラス溶融物を成形手段に導く第2の導管構造;を有し、
前記減圧脱泡装置は、前記溶解槽からのガラス溶融物が上昇する上昇管、ガラス溶融物の減圧脱泡槽、および前記減圧脱泡槽からのガラス溶融物が下降する下降管を有しており、
前記上昇管、前記減圧脱泡槽、および前記下降管のガラス溶融物の流路の少なくともその一部が、耐火性炉材で構成されており、
前記第1の導管構造は、前記上昇管にガラス溶融物を供給する上流側ピットを有し、
前記第2の導管構造は、前記下降管からのガラス溶融物を収容する下流側ピットを有する、ガラス溶融物製造装置を用いたガラス溶融物製造方法であって、
当該ガラス溶融物製造装置は、
前記上流側ピットと、前記下流側ピットと、を接続する第3の導管構造;
前記溶解槽と前記上流側ピットとの間のガラス溶融物の流通を遮断する、前記第1の導管構造に設けられた第1の閉止手段;
燃焼ガスを前記第3の導管構造に導入可能な位置に配置された、減圧脱泡装置の予備加熱用バーナー;
前記予備加熱用バーナーの燃焼ガスを前記第3の導管構造に導入する、燃焼ガス導入手段;
および、前記燃焼ガスを排気する、前記減圧脱泡槽の上端に連通して配置される排気用煙突;
を有し、
前記第1の閉止手段により、前記溶解槽と前記上流側ピットとの間のガラス溶融物の流通を遮断した状態で、前記予備加熱用バーナーの燃焼ガスを、前記第3の導管構造に導入して、前記上昇管、前記減圧脱泡槽、および、前記下降管のガラス溶融物の流路を予備加熱し、
次いで、予備加熱の終了後、第1の閉止手段の開放によりガラス溶融物を流通させ、減圧脱泡槽の内部を減圧して、ガラス溶融物を上流側ピットから上昇管内を上昇させて減圧脱泡槽へ流入させ、減圧脱泡槽内でガラス溶融物を脱泡処理し、脱泡処理されたガラス溶融物を、下降管内を下降させ、下流側ピットから導出させてガラス溶融物を得ることを特徴とするガラス溶融物製造方法を提供する。
本発明の一態様におけるガラス溶融物製造方法において、前記第3の導管構造におけるガラス溶融物の流通を遮断する、前記第3の導管構造に設けられた第2の閉止手段をさらに有し、前記第2の閉止手段により、前記第3の導管構造と前記上流側ピットとの間のガラス溶融物の流通を遮断した状態で、前記予備加熱用バーナーの燃焼ガスを、前記第3の導管構造に導入して、前記上昇管、前記減圧脱泡槽、および、前記下降管のガラス溶融物の流路を予備加熱することが好ましい。
【0018】
また、本発明の一態様においては、本発明のガラス溶融物の製造方法により、前記流路を予熱する工程と、該予熱する工程の後にガラス溶融物を製造する工程と、該ガラス溶融物を成形し成形体を得る工程と、前記成形体を徐冷しガラス物品を得る工程と、を含むガラス物品製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上昇管、減圧脱泡槽および下降管のガラス溶融物の流路が耐火性炉材で構成された減圧脱泡装置における予備加熱の操作が容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態である図面を参照して本発明を説明する。
【0022】
図1は、本発明のガラス溶融物製造装置の一実施形態の側面断面図である。
【0023】
図1に示すガラス溶融物製造装置は、溶解槽100、減圧脱泡装置300、第1の導管構造200、第2の導管構造400を有している。溶解槽100は、ガラス原料を溶解してガラス溶融物Gを得る。減圧脱泡装置300は、内部が減圧雰囲気に保持され、溶解槽100から供給されるガラス溶融物G中の泡を浮上および破泡させて除去する。第1の導管構造200は、溶解槽100と減圧脱泡装置300とを接続し、第2の導管構造400は、減圧脱泡装置300の下流に設けられたガラス溶融物Gを成形手段(図示せず)に導く。
【0024】
図1に示す溶解槽100で得られたガラス溶融物Gは、第1の導管構造200を介して減圧脱泡装置300に供給される。
図1に示す減圧脱泡装置300は、金属製、例えばステンレス鋼製であって、使用時その内部が減圧状態に保持される減圧ハウジング310を有する。減圧ハウジング310には、図中右上部に真空吸引して内部を減圧する吸引口311が設けられている。
【0025】
減圧ハウジング310内には、減圧脱泡槽320がその長軸が水平方向に配向するように収納配置されている。減圧脱泡槽320の上部には、減圧ハウジング310を図示しない真空ポンプ等によって真空吸引することによって、減圧脱泡槽320内を所定の圧力に減圧して維持するために、減圧ハウジング310と連通する吸引口321、322が設けられている。
【0026】
減圧脱泡槽320の一端の下面には垂直方向に配向する上昇管330が、他端の下面には下降管340が取り付けられている。減圧脱泡槽320、上昇管330および下降管340は、ガラス溶融物Gの流路が耐火性炉材で構成されている。
上昇管330は、下端が第1の導管構造200の下流端に設けられた上流側ピット210のガラス溶融物G内に浸漬されており、脱泡処理前のガラス溶融物Gを上流側ピット210から吸引上昇させて減圧脱泡槽320内に導入する。下降管340は、下端が第2の導管構造400の上流端に設けられた下流側ピット410のガラス溶融物G内に浸漬されており、脱泡処理後のガラス溶融物Gを減圧脱泡槽320から下降させて下流側ピット410に導出する。
図示した減圧脱泡装置300では、上昇管330および下降管340の下端に、それぞれ延長管350,360が取り付けられている。延長管350,360は、白金製または白金合金製の中空円筒管であり、これら延長管350,360が、それぞれ上流側ピット210内のガラス溶融物G、および、下流側ピット410内のガラス溶融物Gに浸漬されている。但し、本発明の一実施形態における減圧脱泡装置において、上昇管、下降管の下端に取り付けた延長管は、任意の構成要素であり、耐火性炉材で構成された上昇管、下降管が、それぞれ、上流側ピット内のガラス溶融物、下流側ピット内のガラス溶融物Gに浸漬される構成であってもよい。
【0027】
減圧脱泡槽320の中央の上端には、予備加熱の際に燃焼ガスを排気するための排気用煙突370が、連通して配置されている。減圧脱泡装置300が定常運転している際には、この排気用煙突370は、蓋380で気密に閉じられ、減圧ハウジング310内を所定の圧力に減圧して保持するのに支障がないように構成されている。
減圧ハウジング310内において、減圧脱泡槽320、上昇管330、下降管340および排気用煙突370の周囲には断熱材390が配設されている。
【0028】
図1に示すガラス溶融物製造装置は、上流側ピット210と、下流側ピット410と、を接続する第3の導管構造500を有している。減圧脱泡装置300の運転立ち上げのためには、減圧によってガラス溶融物Gを減圧脱泡槽320に導入するのに、上流側ピット210のみならず下流側ピット410にもガラス溶融物Gがなければならない。このため、減圧脱泡装置300の運転立ち上げの際には、第3の導管構造500をガラス溶融物Gのバイパス経路として利用して、上流側ピット210から下流側ピット410にガラス溶融物Gを供給する。
【0029】
本発明の一実施形態において減圧脱泡装置は、減圧脱泡槽、上昇管および下降管のガラス溶融物の流路が耐火性炉材で構成されているため、予備加熱用バーナーからの燃焼ガスを上昇管および下降管から導入して、ガラス溶融物の流路をなす、減圧脱泡槽、上昇管および下降管の内面を予備加熱する。
減圧脱泡装置300では、予備加熱用バーナーからの燃焼ガスを上昇管330および下降管340に導入する経路として、第3の導管構造500を用いる。
このため、予備加熱用バーナー530,540は、燃焼ガスを第3の導管構造500に導入可能な位置(
図1では、第3の導管構造500の上方)に配置されている。予備加熱用バーナー530,540の燃焼ガスは、燃焼ガス導入手段550,560により第3の導管構造500に導入される。第3の導管構造500に導入された燃焼ガスは、上流側ピット210および下流側ピット410を経由して上昇管330および下降管360に導入される。このため、予備加熱の実施時には、上流側ピット210および下流側ピット410の上側の開放部分に、特許文献1の
図2、4、5の符号23、25に示すようなカバーを設けることが好ましい。
図1に示す減圧脱泡装置300では、予備加熱用バーナーを2つ設けているが、予備加熱用バーナーの数はこれに限定されず、1つであってもよく、または、3つ以上であってもよい。これらの場合、予備加熱用バーナーの個数に応じた数の燃焼ガス導入手段を設けて、予備加熱用バーナーの燃焼ガスを第3の導管構造500に導入される。
燃焼ガス導入手段550,560は、高温の燃焼ガスが通過するため、たとえば、耐火性炉材で作製された中空構造の配管である。
【0030】
減圧脱泡装置300には、予備加熱の実施時に、溶解槽100と上流側ピット210との間のガラス溶融物Gの流通を遮断するため、第1の閉止手段220が第1の導管構造200に設けられている。第1の閉止手段220は、任意の操作により、第1の導管構造200のガラス溶融物Gの流路を、開放または閉止させる手段である。
図1では、第1の閉止手段220により、第1の導管構造200のガラス溶融物Gの流路を閉止させて、溶解槽100と上流側ピット210との間のガラス溶融物Gの流通が遮断されている。
減圧脱泡装置300の通常運転時や、減圧脱泡装置300の運転立ち上げのため、第3の導管構造500を介して上流側ピット210から下流側ピット410にガラス溶融物Gを供給する際には、第1の導管構造200のガラス溶融物Gの流路を開放させて、溶解槽100と上流側ピット210との間で、ガラス溶融物Gを流通させる。
なお、第1の閉止手段は、第1の導管構造200に設けることが好ましい。第1の閉止手段を設ける位置は、溶解槽100と上流側ピット210との間のガラス溶融物Gの流通を遮断可能な位置であればよく、図示した部位以外の部位でもよい。たとえば、第1の導管構造200の図示の位置に対して上流側や下流側に第1の閉止手段を設けてもよい。また、第1の導管構造200の一部をなす、上流側ピット210内に第1の閉止手段を設けてもよい。この場合、上流側ピット210のうち、第3の導管構造500を接続する部位よりも下方に、その長軸が水平方向に配向する第1の閉止手段を設ける。なお、第1の閉止手段220の具体的な構造については後述する。
【0031】
上述したように、予備加熱の実施時には、減圧脱泡槽320、上昇管330および下降管340の内部にガラス溶融物Gが存在しない状態とする。このため、上昇管330および下降管340の下端(図示した減圧脱泡装置300の場合、上昇管330および下降管340の下端に取り付けられた延長管350,360の下端)が、上流側ピット210および下流側ピット410内のガラス溶融物Gから完全に離れるまで、減圧脱泡装置300を上昇させる必要がある。
減圧脱泡装置300では、予備加熱の実施時、第1の閉止手段220により、第1の導管構造200のガラス溶融物Gの流路を閉止させて、溶解槽100から上流側ピット210へのガラス溶融物Gの流入を遮断する。これにより、上流側ピット210内のガラス溶融物Gの液面は低くなる。このように予備加熱の実施時には、上流側ピット210内におけるガラス溶融物の液面は、
図1に示した点線のようになる。
【0032】
上述したように、
図1に示す減圧脱泡装置300では、予備加熱用バーナー530の燃焼ガスを、燃焼ガス導入手段550により第3の導管構造500に導入し、この燃焼ガスを上流側ピット210を経由させて、上昇管330に導入させる。この際に、燃焼ガスが第3の導管構造500を介して上流に流れ、さらに、上流側ピット210から、第1導管構造200を経由して、溶解槽100の方向に移動する虞がある。すると、下流側の溶解槽100の温度よりも冷たい雰囲気が溶解槽100内に導入されるため、溶解槽100の温度が下がる、という問題が生じる。
逆に、溶解槽100の雰囲気が下流に流れると、溶解槽100から、たとえばSO
2やカーボンが減圧脱泡槽320に流入し、製造されるガラス物品の品質に影響を与える虞がある。また、溶解槽100の雰囲気の減圧脱泡槽320への流入は、白金製または白金合金製の延長管350、360にダメージを与える可能性がある。
このため、予備加熱用バーナー530の燃焼ガスが、溶解槽100の方向に移動するのを阻止し、溶解槽100の雰囲気の減圧脱泡槽320への流入を防止するため、第1の閉止手段220は、溶解槽100と上流側ピット210との間の気体の流通も遮断することが必須ではないが好ましい。
【0033】
図1に示す減圧脱泡装置300では、第3の導管構造500におけるガラス溶融物Gの流通を遮断するため、第2の閉止手段510,520が設けられている。第2の閉止手段510,520は、任意の操作により、第3の導管構造500のガラス溶融物Gの流路を、開放または閉止させる手段である。
図1では、第2の閉止手段510,520により、第3の導管構造500のガラス溶融物Gの流路を閉止させて、第3の導管構造500におけるガラス溶融物Gの流通が遮断されている。減圧脱泡装置300の運転立ち上げのため、第3の導管構造500を介して上流側ピット210から下流側ピット410にガラス溶融物Gを供給する際には、第3の導管構造500のガラス溶融物Gの流路を開放させて、第3の導管構造500でガラス溶融物Gを流通させる。
【0034】
但し、本発明の一実施形態における減圧脱泡装置において、第2の閉止手段は、任意の構成要素である。したがって、第3の導管構造500に第2の閉止手段を設けなくてもよい。
図1に示す減圧脱泡装置300において、2つの第2の閉止手段(510,520)が設けられている。第2の閉止手段(510,520)の一方は、燃焼ガス導入手段550の下流側に第2の閉止手段510を設けられ、他方は、燃焼ガス導入手段560の上流側に第2の閉止手段520を設けられる。これにより、第3の導管構造500と上流側ピット210との間のガラス溶融物の流通を遮断しつつ、予備加熱用バーナー530,540の燃焼ガスを、燃焼ガス導入手段550,560により第3の導管構造500に導入できる。この燃焼ガスを上流側ピット210、下流側ピット410を経由させて、上昇管330、下降管340に導入させる。
たとえば、予備加熱用バーナーを1つとした場合、第2の閉止手段を設けないほうが好ましい。この場合、該予備加熱用バーナーの燃焼ガスを、燃焼ガス導入手段により第3の導管構造500に導入し、この燃焼ガスを上流側ピット210、下流側ピット410を経由させて、上昇管330、下降管340に導入させる。
第3の導管構造に設ける第2の閉止手段の数は、これに限定されない。たとえば、第3の導管構造の長さが短い場合、第3の導管構造の中間になる位置に1つの第2の閉止手段を設けてもよい。
また、第2の閉止手段を設ける位置は、第3の導管構造500におけるガラス溶融物Gの流通を遮断可能な位置であればよく、図示した部位以外の部位でもよい。たとえば、第3の導管構造500のより上流側や下流側に第2の閉止手段を設けてもよい。
なお、
図1に示す減圧脱泡装置300において、予備加熱用バーナー530,540の燃焼ガスを、燃焼ガス導入手段550,560により第3の導管構造500に導入し、この燃焼ガスを上流側ピット210、下流側ピット410を経由させて、上昇管330、下降管340に導入させる場合、第2の閉止手段510,520は、第3の導管構造500における気体の流通も必須ではないが遮断することが好ましい。
【0035】
さらに、
図1に示す減圧脱泡装置300では、予備加熱の実施時、第2の閉止手段510,520により、第3の導管構造500のガラス溶融物Gの流路を閉止させて、第3の導管構造500におけるガラス溶融物Gの流通を遮断する。これにより、上流側ピット210から下流側ピット410へのガラス溶融物Gの供給が遮断されて、下流側ピット210内のガラス溶融物Gの液面が低くなる。このように予備加熱の実施時には、下流側ピット410内におけるガラス溶融物の液面は、
図1に示した点線のようになる。
また、第3の導管構造500におけるガラス溶融物Gの流通を遮断することで、第3の導管構造500内のガラス溶融物の液面が低下し、第3の導管構造500の上部に大流量の気流が通過するのに十分な広さの気相が形成される。これにより予備加熱用バーナー530,540の燃焼ガスを上昇管330および下降管340に導入する経路として、第3の導管構造500を利用することが可能になる。予熱時において、第3の導管構造500の上部に大流量の気流が通過するのに十分な広さの気相を形成するためには、第3の導管構造500の天井を高くする必要がある。この場合、上昇管330および下降管340の下端に取り付けられた、白金製または白金合金製の延長管350,360を長くする必要があり、設備のコスト増になるため好ましくない。
【0036】
上述したように、上流側ピット210内、下流側ピット410内のガラス溶融物Gの液面が低くなる結果、予備加熱の実施時に、減圧脱泡装置300を上昇させる操作を最小限にすることができ、溶解槽100からのガラス溶融物Gの流入を遮断した後の上流側ピット210内のガラス溶融物Gの液面の高さおよび下流側ピット410内のガラス溶融物Gの液面の高さによっては、減圧脱泡装置300を上昇させる操作を実施せずに、予備加熱を実施できる。
【0037】
上述したように、第1の閉止手段220は、任意の操作により、第1の導管構造200のガラス溶融物Gの流路を、開放または閉止させる手段である。第2の閉止手段510,520は、任意の操作により、第3の導管構造500のガラス溶融物Gの流路を、開放または閉止させる手段である。第1の閉止手段220、および、第2の閉止手段510,520は、閉止する対象が、高温のガラス溶融物の流路であることから、複雑な機構を用いることなしに、ガラス溶融物Gの流路を、すみやかに、かつ、確実に閉止できることが好ましい。
このように、第1の閉止手段220、および、第2の閉止手段510,520に要求される機能は、多くの点で共通する。そのため、第1の閉止手段の好適態様を以下に示し、第2の閉止手段の好適態様についてはその記載で代用する。
【0038】
図2、3は、
図1に示す第1の導管構造200のうち、第1の閉止手段220が設けられた部位の部分拡大図である。
図3は、
図1に示す第1の導管構造200のうち、第1の閉止手段220が設けられた部位を、ガラス溶融物Gの流動方向下流側から見た正面断面図である。
図3は、
図2に対して、第1の閉止手段の向きを鉛直軸に対して90°回転させた状態でみた断面図である。
図2,3に示すように、第1の閉止手段220は、板状体であり、第1の導管構造200のガラス溶融物Gの流路に上方から挿入されている。第1の導管構造200の上部には、第1の閉止手段200を挿入するための開口部が存在している。なお、第1の閉止手段220をなす板状体は、第1の導管構造200のガラス溶融物Gの流路に挿入されるため、耐火性炉材で構成されている。
減圧脱泡装置300の通常運転時や、減圧脱泡装置300の運転立ち上げのため、第3の導管構造500を介して上流側ピット210から下流側ピット410にガラス溶融物Gを供給する際には、第1の閉止手段220を上方(矢印方向)に引き抜くことで、第1の導管構造200のガラス溶融物Gの流路は開放され、溶解槽100と上流側ピット210との間をガラス溶融物Gが流通する。
このように、第1の閉止手段は、好ましくは第1の導管構造のガラス溶融物の流路に挿抜自在な板状体から構成されている。また、第2の閉止手段も、第1の閉止手段と同様に、好ましくは第2の導管構造のガラス溶融物の流路に挿抜自在な板状体から構成されている。
【0039】
本発明の一実施形態におけるガラス溶融物製造装置では、第1の閉止手段220により、第1の導管構造200のガラス溶融物Gの流路を閉止するため、第1の閉止手段220を構成する板状体は、その平面形状が、
図3に示すように、該板状体を挿入する部位における第1の導管構造200の断面形状と略同一であることが好ましい。
但し、第1の導管構造200のガラス溶融物Gの流路に上方から挿入する操作、および、該ガラス溶融物Gの流路から上方に引き抜く操作を容易にするため、第1の閉止手段220は、
図2,3に示すように、その平面形状および側面形状の下部が、上部に比べて幅が狭い略くさび形をなしている。そのため、
図3に示すように、第1の導管構造200のガラス溶融物Gの流路に第1の閉止手段220を挿入した際、第1の閉止手段220と、第1の導管構造200の側部壁面と、の間には隙間が存在している。しかし、この隙間は十分狭いため、この隙間を通過する過程でガラス溶融物Gが固化する。その結果、第1の導管構造200におけるガラス溶融物Gの流通は遮断される。
ここで、第1の閉止手段220をなす板状体は、その内部を冷却媒体が流通可能としてもよい。この場合、該板状体の内部に冷却媒体を流通させることにより、第1の閉止手段220と、第1の導管構造200の側部壁面と、の間の隙間を通過するガラス溶融物Gの固化が促進される。また、第2の閉止手段510,520をなす板状体も、その内部を冷却媒体が流通可能としてもよい。これらの場合には、その板状体は、耐火性炉材で構成されなくともよい。
図2、3に示す第1の閉止手段220であれば、第1の導管構造200における気体の流通は、必須ではないが、遮断することが可能である。
【0040】
次に、本発明の一実施形態におけるガラス溶融物製造方法について記載する。
本発明の一実施形態におけるガラス溶融物製造方法は、上述した本発明のガラス溶融物製造装置を用いる。
本発明の一実施形態におけるガラス溶融物製造方法では、ガラス溶融物Gの製造を開始する前に、上述する手順にしたがって、減圧脱泡装置300のガラス溶融物Gの流路をなす、上昇管330、減圧脱泡槽320、および、下降管340の内面を予備加熱する。具体的には、以下の手順を実施する。第1の閉止手段220により、第1の導管構造200のガラス溶融物Gの流路を閉止して、上流側ピット210へのガラス溶融物Gの流入を遮断する。この際、第2の閉止手段510,520により、第3の導管構造500のガラス溶融物Gの流路を閉止して、第3の導管構造500におけるガラス溶融物Gの流通も遮断することが好ましい。
この状態で、予備加熱用バーナー530,540の燃焼ガスを、燃焼ガス導入手段550,560により第3の導管構造500に導入する。第3の導管構造500に導入された燃焼ガスは、上流側ピット210および下流側ピット410を経由して上昇管330および下降管340に導入される。予備加熱の実施時には、上流側ピット210および下流側ピット410の上側の開放部分に、特許文献1の
図2、4、5の符号23、25に示すようなカバーを設けることが好ましい。上昇管330、減圧脱泡槽320、および、下降管340の内面を予備加熱した燃焼ガスは、減圧脱泡槽320の中央の上端に配置された排気用煙突370により排気される。
予備加熱の完了後、排気用煙突370の開口部を蓋380で気密に閉じ、第1の閉止手段220を操作して、第1の導管構造200のガラス溶融物Gの流路を開放し、上流側ピット210へガラス溶融物Gを流入させる。その後、減圧脱泡槽320の内部を徐々に減圧しながら、減圧脱泡槽320およびその他の部位にガラス溶融物Gを流入させ、所定の減圧度に保持する。ガラス溶融物Gを製造する手順は、従来と同様の手順で実施する。上流側ピット210に流入したガラス溶融物Gは、上昇管330内を吸引上昇されて減圧脱泡槽320内に導入される。減圧脱泡槽320内ではガラス溶融物Gが脱泡処理される。脱泡処理後のガラス溶融物Gは、下降管340を下降して下流側ピット410に導出される。このようにして、気泡の少ない高品質のガラス溶融物Gが得られる。
【0041】
本発明の一実施形態におけるガラス溶融物の製造方法によって製造されるガラス溶融物は、加熱溶融法により製造されるガラス溶融物である限り、組成的には制約はない。したがって、ソーダライムガラスや、無アルカリガラスであってもよいし、アルカリホウケイ酸ガラスのような混合アルカリ系ガラスであってもよい。
ガラス溶融物の生産量としては、100〜1000トン/日であることが好ましく、ガラス品種を変えたり、付帯設備などを考慮すると、300〜900トン/日であることがより好ましく、350〜800トン/日であることがさらに好ましい。
【0042】
次に、本発明の一実施形態におけるガラス物品製造装置について記載する。
本発明の一実施形態におけるガラス物品製造装置は、上述した本発明の一実施形態におけるガラス溶融物製造装置と、ガラス溶融物を成形して成形体を得る成形手段と、成形後のガラスを徐冷してガラス物品を得る徐冷手段と、を有する。なお、成形手段、徐冷手段については公知技術の範囲である。例えば、板ガラスの成形手段としては、フロート法、フュージョン法またはダウンドロー法などによる装置が挙げられる。これらの中でもフロート法のためのフロートバスを用いた成形手段が、薄板ガラスから厚板ガラスまでの広範囲の厚さの高品質な板ガラスを大量に製造できる理由から好ましい。また、徐冷手段としては、例えば、成形後のガラスの搬送機構としての搬送ロールと、成形後のガラスの温度を徐々に下げるための機構を備えた徐冷炉が一般的に用いられる。徐々に温度を下げる機構は、燃焼ガスまたは電気ヒータにより、その出力が制御された熱量を、炉内の必要位置に供給して成形後のガラスをゆっくり冷却する(すなわち、徐冷する)。これによって、成形後のガラスに内在する残留応力をなくすことができる。
【0043】
次に、本発明の一実施形態におけるガラス物品の製造方法について記載する。
本発明の一実施形態におけるガラス物品の製造方法は、本発明の一実施形態におけるガラス溶融物の製造方法によりガラス溶融物を製造する工程(ガラス溶融物製造工程)と、そのガラス溶融物を成形し成形体を得る工程(成形工程)と、成形後のガラス徐冷する工程(徐冷工程)を有する。ガラス溶融物製造工程は、上昇管、減圧脱泡槽、および、下降管のガラス溶融物の流路を予備加熱する工程と、予備加熱する工程の後にガラス溶融物を製造する工程に、さらに分けられる。
図5は、本発明のガラス物品の製造方法の一実施形態の流れ図である。
図5では、本発明の一実施形態におけるガラス物品の製造方法の構成要素であるガラス溶融物製造工程および成形工程ならびに徐冷工程に加えて、さらに必要に応じて用いる切断工程、その他後工程が示されている。たとえば、ガラス物品としてガラス板を製造する場合は、ガラス溶融物を成形工程でガラスリボンに成形し、切断工程で所望の大きさに切断した後、必要に応じてガラス端部を研磨するなどの後工程を実施してガラス板を得る。