特許第6597627号(P6597627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597627
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20191021BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20191021BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20191021BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20191021BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20191021BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20191021BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20191021BHJP
   C08G 81/00 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   C08L9/06
   C08L65/00
   C08K3/36
   C08L7/00
   C08L15/00
   C08L53/00
   B60C1/00 A
   C08G81/00
【請求項の数】15
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2016-554147(P2016-554147)
(86)(22)【出願日】2015年10月16日
(86)【国際出願番号】JP2015079373
(87)【国際公開番号】WO2016060267
(87)【国際公開日】20160421
【審査請求日】2018年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-212362(P2014-212362)
(32)【優先日】2014年10月17日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-72522(P2015-72522)
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】倉本 直明
(72)【発明者】
【氏名】杉村 岳史
(72)【発明者】
【氏名】奥野 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】似鳥 広幸
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/087072(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 9/06
B60C 1/00
C08G 81/00
C08K 3/36
C08L 7/00
C08L 15/00
C08L 53/00
C08L 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロペンテン開環重合体と、溶液重合スチレンブタジエンゴムと、天然ゴム、ポリイソプレンゴムおよびポリブタジエンゴムから選択される少なくとも1種のゴムと、を含有してなるタイヤ用ゴム組成物であって、
前記溶液重合スチレンブタジエンゴムの結合スチレン量が5重量%以上、30重量%以下であるタイヤ用ゴム組成物
【請求項2】
前記シクロペンテン開環重合体と前記溶液重合スチレンブタジエンゴムとの含有比率が、(シクロペンテン開環重合体:溶液重合スチレンブタジエンゴム)の重量比で、5:95〜90:10である請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記シクロペンテン開環重合体が、重合体鎖の末端に官能基が導入された末端官能基含有シクロペンテン開環重合体を含む請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記末端官能基含有シクロペンテン開環重合体が、重合体鎖の末端に、前記官能基として、オキシシリル基を含有する請求項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記溶液重合スチレンブタジエンゴムが、変性基として、水酸基、またはアミノ基が導入された変性溶液重合スチレンブタジエンゴムである請求項1〜のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記溶液重合スチレンブタジエンゴムが、活性末端を有する溶液重合スチレンブタジエン共重合体の重合体鎖に、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物のうち、少なくとも一つの化合物を反応させることにより導入された基を有する変性溶液重合スチレンブタジエンゴムである請求項1〜のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化12】
(上記一般式(1)中、R〜Rは、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。XおよびXは、重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であり、XおよびXは互いに同一であっても相違していてもよい。X2は、重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基である。Xは、2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基である。mは3〜200の整数、nは0〜200の整数、kは0〜200の整数である。)
【化13】
(上記一般式(2)中、R〜R16は、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X〜Xは、重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基である。)
【化14】
(上記一般式(3)中、R17〜R19は、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X〜X11は、重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基である。sは1〜18の整数である。)
【請求項7】
前記タイヤ用ゴム組成物に含有されるゴム成分100重量部に対して、シリカを1重量部以上、200重量部以下の割合でさらに含有する請求項1〜のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
前記シリカ100重量部に対して、シランカップリング剤を0.1重量部以上、30重量部以下の割合でさらに含有する請求項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
前記シランカップリング剤が、モノスルフィド基および/またはチオール基を含有するシランカップリング剤である請求項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項10】
前記シクロペンテン開環重合体が、重合体鎖の末端に官能基が導入された末端官能基含有シクロペンテン開環重合体であり
前記タイヤ用ゴム組成物に含有されるゴム成分中における、前記末端官能基含有シクロペンテン開環重合体の含有割合が10〜55重量%、前記溶液重合スチレンブタジエンゴムの含有割合が30〜75重量%である請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項11】
前記タイヤ用ゴム組成物に含有されるゴム成分100重量部に対して、シリカを30〜200重量部の割合でさらに含有する請求項10に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項12】
前記シリカのBET法により測定される窒素吸着比表面積が、100m/g以下である請求項11に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項13】
前記末端官能基含有シクロペンテン開環重合体が、重合体鎖の末端に、前記官能基として、オキシシリル基を含有する請求項10〜12のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【請求項15】
請求項14に記載のゴム架橋物を含んでなるタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物に関し、さらに詳しくは、シクロペンテン開環重合体を含有し、ウエットグリップ性および低発熱性に優れたゴム架橋物を与えることができるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの材料として用いる合成ゴムとしては、ブタジエンゴムやスチレンブタジエンゴムが広く用いられている。ブタジエンゴムやスチレンブタジエンゴムの原料となるブタジエンは、ナフサのクラッキングによりエチレンを製造する際の副生物として生産されるものであるが、近年、エチレンの製造法として、エタンなどの天然ガスを原料とする方法が拡大していることから、ブタジエンの生産量の減少が予測されている。そのため、ブタジエンを原料としない合成ゴムを、ブタジエンゴムやスチレンブタジエンゴムの代替材料として用いることについて、種々の検討が進められている。
【0003】
ブタジエンゴムやスチレンブタジエンゴムの代替材料として検討されている合成ゴムの一種として、シクロペンテンを開環重合することにより得ることができるシクロペンテン開環重合体が挙げられる。例えば、特許文献1には、官能基およびエチレン性不飽和結合を有する化合物の存在下で、シクロペンテンを開環重合することにより、シクロペンテン開環重合体の末端に官能基を導入して、シクロペンテン開環重合体と無機粒子との親和性を改良する技術が提案されている。また、特許文献2には、重合体鎖の末端にウレタン結合基を介してアルコキシシリル基を結合させることで、シクロペンテン開環重合体と無機粒子との親和性を改良する技術が提案されている。
【0004】
しかしながら、近年のタイヤに対する安全性への要請の高まりを鑑みると、例えば、特許文献1や特許文献2に具体的に記載されたシクロペンテン開環重合体を用いたゴム組成物などでは、得られるゴム架橋物のウエットグリップ性が不足する場合があった。そのため、シクロペンテン開環重合体を含有するゴム組成物に対しては、ウエットグリップ性および低発熱性に優れたゴム架橋物を与えるための改良が渇望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−37362号公報
【特許文献2】国際公開第2012/043802号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、シクロペンテン開環重合体を含有し、ウエットグリップ性および低発熱性に優れたゴム架橋物を与えることができるタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、シクロペンテン開環重合体に、溶液重合スチレンブタジエンゴムを添加して得られたゴム組成物を架橋すると、ウエットグリップ性および低発熱性に優れたゴム架橋物が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0008】
かくして、本発明によれば、シクロペンテン開環重合体および溶液重合スチレンブタジエンゴムを含有してなるタイヤ用ゴム組成物が提供される。
【0009】
上記のタイヤ用ゴム組成物では、前記溶液重合スチレンブタジエンゴムの結合スチレン量が5重量%以上、50重量%以下であることが好ましく、5重量%以上、30重量%以下であることがより好ましい。
上記のタイヤ用ゴム組成物では、前記シクロペンテン開環重合体と前記溶液重合スチレンブタジエンゴムとの含有比率が、(シクロペンテン開環重合体:溶液重合スチレンブタジエンゴム)の重量比で、5:95〜90:10であることが好ましい。
上記のタイヤ用ゴム組成物では、前記シクロペンテン開環重合体が、重合体鎖の末端に官能基が導入された末端官能基含有シクロペンテン開環重合体を含むことが好ましい。
上記のタイヤ用ゴム組成物では、前記末端官能基含有シクロペンテン開環重合体が、重合体鎖の末端に、前記官能基として、オキシシリル基を含有することが好ましい。
【0010】
上記のタイヤ用ゴム組成物では、前記溶液重合スチレンブタジエンゴムが、変性基として、水酸基、またはアミノ基が導入された変性溶液重合スチレンブタジエンゴムであることが好ましい。
上記のタイヤ用ゴム組成物では、前記溶液重合スチレンブタジエンゴムが、活性末端を有する溶液重合スチレンブタジエン共重合体の重合体鎖に、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物のうち、少なくとも一つの化合物を反応させることにより導入された基を有する変性溶液重合スチレンブタジエンゴムであることが好ましい。
【化1】
(上記一般式(1)中、R〜Rは、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。XおよびXは、重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であり、XおよびXは互いに同一であっても相違していてもよい。X2は、重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基である。Xは、2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基である。mは3〜200の整数、nは0〜200の整数、kは0〜200の整数である。)
【化2】
(上記一般式(2)中、R〜R16は、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X〜Xは、重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基である。)
【化3】
(上記一般式(3)中、R17〜R19は、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X〜X11は、重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基である。sは1〜18の整数である。)
【0011】
上記のタイヤ用ゴム組成物では、前記タイヤ用ゴム組成物に含有されるゴム成分100重量部に対して、シリカを1重量部以上、200重量部以下の割合でさらに含有することが好ましい。
上記のタイヤ用ゴム組成物では、前記シリカ100重量部に対して、シランカップリング剤を0.1重量部以上、30重量部以下の割合でさらに含有することが好ましく、前記シランカップリング剤が、モノスルフィド基および/またはチオール基を含有するシランカップリング剤であることがより好ましい。
【0012】
また、上記のタイヤ用ゴム組成物は、前記シクロペンテン開環重合体が、重合体鎖の末端に官能基が導入された末端官能基含有シクロペンテン開環重合体であり、前記溶液重合スチレンブタジエンゴムの結合スチレン量が5〜35重量%であり、前記タイヤ用ゴム組成物に含有されるゴム成分中における、前記末端官能基含有シクロペンテン開環重合体の含有割合が10〜55重量%、前記溶液重合スチレンブタジエンゴムの含有割合が30〜75重量%であるものが好ましい。
上記のタイヤ用ゴム組成物は、天然ゴム、ポリイソプレンゴムおよびポリブタジエンゴムから選択される少なくとも1種のゴムをさらに含有する物であることが好ましい。
上記のタイヤ用ゴム組成物では、前記タイヤ用ゴム組成物に含有されるゴム成分100重量部に対して、シリカを30〜200重量部の割合でさらに含有することが好ましい。
上記のタイヤ用ゴム組成物では、前記シリカのBET法により測定される窒素吸着比表面積が、100m/g以下であることが好ましい。
また、上記のタイヤ用ゴム組成物では、前記末端官能基含有シクロペンテン開環重合体が、重合体鎖の末端に、前記官能基として、オキシシリル基を含有することが好ましい。
【0013】
また、本発明によれば、上記記載のタイヤ用ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物、および該ゴム架橋物を含んでなるタイヤが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シクロペンテン開環重合体を含有し、ウエットグリップ性および低発熱性に優れたゴム架橋物を与えることができるタイヤ用ゴム組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シクロペンテン開環重合体および溶液重合スチレンブタジエンゴムを含有してなるものである。
【0016】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、必須の成分として含有されるシクロペンテン開環重合体は、その主鎖を構成する繰返し単位として、シクロペンテンを開環重合してなる繰返し単位を含有してなる重合体である。シクロペンテン開環重合体は、その主鎖を構成する繰返し単位が、シクロペンテンを開環重合してなる繰返し単位のみからなるものであってよいが、シクロペンテンと共重合可能なその他の単量体に由来する繰返し単位を含有していてもよい。ただし、シクロペンテン開環重合体の特性を良好にする観点からは、その他の単量体に由来する繰返し単位の割合は、全繰返し単位に対して20モル%以下であることが好ましく、15%モル以下であることがより好ましく、10%モル以下であることがさらに好ましい。シクロペンテンと共重合可能なその他の単量体としては、シクロペンテン以外のモノ環状オレフィン、モノ環状ジエン、モノ環状トリエンや多環の環状オレフィン、多環の環状ジエン、多環の環状トリエンなどが挙げられる。シクロペンテン以外のモノ環状オレフィンとしては、置換基を有するシクロペンテンや、置換基を有していてもよいシクロオクテンが例示される。モノ環状ジエンとしては、置換基を有していてもよい1,5−シクロオクタジエンが例示される。モノ環状トリエンとしては、置換基を有していてもよい1,5,9−シクロドデカトリエンが例示される。また、多環の環状オレフィンとしては置換基を有していてもよいノルボルネン化合物が例示される。
【0017】
シクロペンテン開環重合体の分子量は、特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)の値として、100,000〜1,000,000であることが好ましく、150,000〜900,000であることが好ましく、200,000〜800,000であることがより好ましい。シクロペンテン開環重合体がこのような分子量を有することにより、優れた機械物性を有するゴム架橋物を与えることが可能となる。
【0018】
シクロペンテン開環重合体の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との比(Mw/Mn)は、特に限定されないが、通常4.0以下であり、好ましくは3.5以下であり、より好ましくは3.0以下である。このようなMw/Mnを有することにより、優れた機械物性を有するゴム架橋物を与えることが可能となる。
【0019】
シクロペンテン開環重合体を構成する繰返し単位中に存在する二重結合において、そのシス/トランス比は、特に限定されないが、通常10/90〜90/10の範囲で設定され、低温下で優れた特性を示すゴム架橋物を与えることができるタイヤ用ゴム組成物やウエットグリップ性に優れたゴム架橋物を与えることができるタイヤ用ゴム組成物を得る観点からは、30/70〜90/10の範囲であることが好ましく、40/60〜90/10の範囲であることがより好ましい。
【0020】
シクロペンテン開環重合体のガラス転移温度は、特に限定されないが、低温下で優れた特性を示すゴム架橋物を与えることができるタイヤ用ゴム組成物を得る観点から、好ましくは−90℃以下であり、より好ましくは−98℃以下であり、さらに好ましくは−99℃以下、特に好ましくは−100℃以下である。また、シクロペンテン開環重合体のガラス転移温度の下限は、特に限定されないが、好ましくは−120℃以上であり、より好ましくは−117℃以上、さらに好ましくは−116℃以上、特に好ましくは−115℃以上である。シクロペンテン開環重合体のガラス転移温度は、繰返し単位中に存在する二重結合におけるシス/トランス比などを調節することによって、調節することができる。
【0021】
シクロペンテン開環重合体は、融点を有するものであってもよい。シクロペンテン開環重合体が融点を有するものである場合、その温度は、0℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましい。シクロペンテン開環重合体の融点の有無や、融点を有する場合のその温度は、繰返し単位中に存在する二重結合におけるシス/トランス比などを調節することによって、調節することができる。
【0022】
シクロペンテン開環重合体は、その分子構造が、炭素原子と水素原子のみからなるものであってもよいが、タイヤ用ゴム組成物に通常配合されるシリカやカーボンブラックなどの無機粒子とシクロペンテン開環重合体との親和性を良好にして、得られるゴム架橋物を、ウエットグリップ性および低発熱性に優れたものとする観点からは、分子構造中に炭素原子および水素原子以外の原子を含有していることが好ましく、なかでも、周期表第15族の原子、周期表第16族の原子、およびケイ素原子からなる群から選ばれる原子を含有する官能基を有していることが好ましい。
【0023】
シクロペンテン開環重合体と無機粒子との親和性を特に良好にする観点から、特に好適な官能基としては、窒素原子、酸素原子、リン原子、イオウ原子、およびケイ素原子からなる群から選ばれる原子を含有する官能基が挙げられ、これらのなかでも、窒素原子、酸素原子、およびケイ素原子からなる群から選ばれる原子を含有する官能基がさらに好適である。
【0024】
窒素原子を含有する官能基としては、アミノ基、ピリジル基、イミノ基、アミド基、ニトロ基、ウレタン結合基、またはこれらの基を含む炭化水素基が例示される。酸素原子を含有する官能基としては、水酸基、カルボン酸基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、アルデヒド基、エポキシ基、またはこれらの基を含む炭化水素基が例示される。ケイ素原子を含有する官能基としては、アルキルシリル基、オキシシリル基、またはこれらの基を含む炭化水素基が例示される。リン原子を含有する官能基としては、リン酸基、ホスフィノ基、またはこれらの基を含む炭化水素基が例示される。イオウ原子を含有する官能基としては、スルホニル基、チオール基、チオエーテル基、またはこれらの基を含む炭化水素基が例示される。また、官能基は、上記した基を複数含有する官能基であってもよい。シクロペンテン開環重合体と無機粒子との親和性をさらに良好にする観点から特に好適な官能基の具体例としては、アミノ基、ピリジル基、イミノ基、アミド基、水酸基、カルボン酸基、アルデヒド基、エポキシ基、オキシシリル基、またはこれらの基を含む炭化水素基が挙げられる。
【0025】
シクロペンテン開環重合体が、周期表第15族の原子、周期表第16族の原子、およびケイ素原子からなる群から選ばれる原子を含有する官能基を有する場合のその官能基の位置は、特に限定されないが、得られるゴム架橋物をウエットグリップ性および低発熱性に優れたものとする観点からの観点からは、重合体鎖の末端に官能基を有していることが好ましい。すなわち、本発明で用いるシクロペンテン開環重合体は、重合体鎖の末端に官能基を有している末端官能基含有シクロペンテン開環重合体であることが好ましい。
【0026】
シクロペンテン開環重合体の重合体鎖の末端に官能基(変性基)を有させ、末端官能基含有シクロペンテン開環重合体とする場合、一方の重合体鎖末端(片末端)のみに官能基が導入されたものであっても、両方の重合体鎖末端(両末端)に官能基が導入されたものであってもよく、また、これらが混在したものであっても良い。さらに、これらと、重合体鎖末端に特定の官能基が導入されていないシクロペンテン開環重合体が混在していてもよい。
【0027】
シクロペンテン開環重合体の重合体鎖の末端に官能基を有させ、末端官能基含有シクロペンテン開環重合体とする場合において、重合体鎖末端に対する官能基(変性基)の導入割合は、特に限定されないが、官能基(変性基)が導入されたシクロペンテン開環重合体末端数/シクロペンテン開環重合体鎖末端全数の百分率の値として、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることが好ましい。官能基(変性基)の導入割合が高いほど、シリカとの親和性が高く、これにより、得られるゴム架橋物のウエットグリップ性および低発熱性を向上させることができる。なお、重合体鎖末端への官能基(変性基)の導入割合を測定する方法としては、特に限定されないが、たとえば、H−NMRスペクトル測定により求められる官能基に対応するピーク面積比と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィから求められる数平均分子量とから求めることができる。
【0028】
シクロペンテン開環重合体の合成方法は、目的とするシクロペンテン開環重合体が得られる限りにおいて、特に限定されず、常法に従って合成すればよい。低温下で優れた特性を示すゴム架橋物を与えることができるタイヤ用ゴム組成物を得る観点から、好適に用いることができるシクロペンテン開環重合体の合成方法の例を以下に述べる。
【0029】
すなわち、本発明で用いられるシクロペンテン開環重合体は、周期表第6族遷移金属化合物(A)と下記の一般式(4)で示される有機アルミニウム化合物(B)とを含む重合触媒の存在下で、シクロペンテンを開環重合することにより得ることができる。
【0030】
(R213−pAl(OR22 (4)
(式(4)中、R21およびR22は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、pは、0<x<3である。)
【0031】
周期表第6族遷移金属化合物(A)は、周期表(長周期型周期表、以下同じ)第6族遷移金属原子を有する化合物、具体的には、クロム原子、モリブデン原子、またはタングステン原子を有する化合物であり、モリブデン原子を有する化合物、またはタングステン原子を有する化合物が好ましく、特に、シクロペンテンに対する溶解性が高いという観点より、タングステン原子を有する化合物がより好ましい。また、周期表第6族遷移金属化合物(A)としては、周期表第6族遷移金属原子を有する化合物であればよく、特に限定されないが、周期表第6族遷移金属原子のハロゲン化物、アルコラート、アリレート、オキシ化物などが挙げられ、これらのなかでも、重合活性が高いという観点より、ハロゲン化物が好ましい。
【0032】
このような周期表第6族遷移金属化合物(A)の具体例としては、モリブデンペンタクロリド、モリブデンオキソテトラクロリド、モリブデン(フェニルイミド)テトラクロリドなどのモリブデン化合物;タングステンヘキサクロリド、タングステンオキソテトラクロリド、タングステン(フェニルイミド)テトラクロリド、モノカテコラートタングステンテトラクロリド、ビス(3,5−ジターシャリブチル)カテコラートタングステンジクロリド、ビス(2−クロロエテレート)テトラクロリド、タングステンオキソテトラフェノレートなどのタングステン化合物;が挙げられる。
【0033】
周期表第6族遷移金属化合物(A)の使用量は、「重合触媒中の第6族遷移金属原子:シクロペンテン」のモル比で、通常1:100〜1:200,000、好ましくは1:200〜1:150,000、より好ましくは1:500〜1:100,000の範囲である。周期表第6族遷移金属化合物(A)の使用量が少なすぎると、重合反応が十分に進行しない場合がある。一方、多すぎると、シクロペンテン開環重合体からの触媒残渣の除去が困難となる場合がある。
【0034】
有機アルミニウム化合物(B)は、上記一般式(4)で表される化合物である。一般式(4)においてR21およびR22で表される炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、イソブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;フェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、ナフチル基などのアリール基;などが挙げることができる。なお、一般式(4)で表される化合物においてR21およびR22で表される基は、同じであっても、あるいは異なっていてもよいが、本発明においては、得られるシクロペンテン開環重合体のシス比率を高くできるという点より、R21およびR22のうち、少なくともR22は、炭素原子が4個以上連続して結合してなるアルキル基であることが好ましく、特に、n−ブチル基、2−メチル−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、またはn−デシル基であることがより好ましい。
【0035】
また、上記一般式(4)において、pは、0<p<3である。すなわち、上記一般式(4)においては、R21とOR22との組成比は、それぞれ0<3−p<3、および0<p<3の各範囲において、任意の値をとることができるが、重合活性を高くでき、しかも、得られるシクロペンテン開環重合体のシス比率を高くできるという点より、pは、0.5<p<1.5であることが好ましい。
【0036】
上記の一般式(4)で表される有機アルミニウム化合物(B)は、たとえば、下記一般式(5)に示すように、トリアルキルアルミニウムと、アルコールとの反応によって合成することができる。
【0037】
(R21Al + pR22OH → (R213−pAl(OR22 + (R21H (5)
【0038】
なお、上記一般式(4)中のpは、上記一般式(5)に示すように、対応するトリアルキルアルミニウムとアルコールの反応比を規定することによって、任意に制御することが可能である。
【0039】
有機アルミニウム化合物(B)の使用量は、用いる有機アルミニウム化合物(B)の種類によっても異なるが、周期表第6族遷移金属化合物(A)を構成する周期表第6族遷移金属原子に対して、好ましくは0.1〜100倍モル、より好ましくは0.2〜50倍モル、さらに好ましくは0.5〜20倍モルの割合である。有機アルミニウム化合物(B)の使用量が少なすぎると、重合活性が不十分となる場合があり、多すぎると、開環重合時において、副反応が起こりやすくなる傾向にある。
【0040】
周期表第6族遷移金属化合物(A)と一般式(4)で示される有機アルミニウム化合物(B)とを含む重合触媒を用いる場合において、重合触媒は、これらの成分に加えて、エステル類および/またはエーテル類(C)をさらに含有していてもよい。
【0041】
エステル類および/またはエーテル類(C)の具体例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル、1,4−ジオキサンなどのエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸オクチル、酢酸2−クロロエチル、アセチルアクリル酸メチル、ε−カプロラクトン、グルタル酸ジメチル、σ−ヘイサノラクトン、ジアセトキシエタンなどのエステル類;などが挙げられる。これらのなかでも、その添加効果をより高めることができるという点より、1,4−ジオキサンおよび酢酸エチルが好ましい。これらのエステル類および/またはエーテル類(C)は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
周期表第6族遷移金属化合物(A)および有機アルミニウム化合物(B)、ならびに、必要に応じてエステル類および/またはエーテル類(C)を含む重合触媒を用い、これらと、シクロペンテンとを接触させることによりシクロペンテンの開環重合を行なうことができる。この開環重合を行なう方法としては特に限定されないが、たとえば、シクロペンテン、ならびに、有機アルミニウム化合物(B)および必要に応じて用いられるエステル類および/またはエーテル類(C)の存在下に、周期表第6族遷移金属化合物(A)を添加することにより、シクロペンテンの開環重合を行なう方法が挙げられる。あるいは、周期表第6族遷移金属化合物(A)および必要に応じて用いられるエステル類またはエーテル類(C)を予め混合しておき、これにシクロペンテンを添加し、次いで、有機アルミニウム化合物(B)を添加することにより、シクロペンテンの開環重合を行なってもよい。さらには、周期表第6族遷移金属化合物(A)および有機アルミニウム化合物(B)、ならびに、必要に応じてエステル類および/またはエーテル類(C)を予め混合しておき、これにシクロペンテンを添加することにより、シクロペンテンの開環重合を行なってもよい。
【0043】
開環重合反応は、無溶媒で行ってもよいし、溶液中で行なってもよい。開環重合反応を溶液中で行う際に用いる溶媒としては、重合反応において不活性であり、開環重合に用いるシクロペンテンや共重合可能なその他の環状オレフィン、上述した重合触媒を溶解可能な溶媒であればよく、特に限定されないが、たとえば、炭化水素系溶媒またはハロゲン系溶媒などが挙げられる。炭化水素系溶剤の具体例としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;などが挙げられる。また、ハロゲン系溶剤の具体例としては、ジクロロメタン、クロロホルムなどのアルキルハロゲン;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族ハロゲン;などが挙げられる。
【0044】
開環重合反応の重合反応系に、官能基を有し、かつ、メタセシス反応性を有するオレフィン性炭素−炭素二重結合を1つ有する化合物を存在させると、シクロペンテン開環重合体の重合体鎖末端に官能基を導入することができ、得られるシクロペンテン開環重合体を、末端官能基含有シクロペンテン開環重合体とすることができる。例えば、シクロペンテン開環重合体の重合体鎖末端にオキシシリル基を導入することを望む場合には、オキシシリル基含有オレフィン性不飽和炭化水素を重合反応系に存在させればよい。
【0045】
このようなオキシシリル基含有オレフィン性不飽和炭化水素の例としては、シクロペンテン開環重合体の重合体鎖の一方の末端(片末端)のみに官能基を導入するものとして、ビニル(トリメトキシ)シラン、ビニル(トリエトキシ)シラン、アリル(トリメトキシ)シラン、アリル(メトキシ)(ジメチル)シラン、アリル(トリエトキシ)シラン、アリル(エトキシ)(ジメチル)シラン、スチリル(トリメトキシ)シラン、スチリル(トリエトキシ)シラン、2−スチリルエチル(トリエトキシ)シラン、アリル(トリエトキシシリルメチル)エーテル、アリル(トリエトキシシリルメチル)(エチル)アミンなどのアルコキシシラン化合物;ビニル(トリフェノキシ)シラン、アリル(トリフェノキシ)シラン、アリル(フェノキシ)(ジメチル)シランなどのアリーロキシシラン化合物;ビニル(トリアセトキシ)シラン、アリル(トリアセトキシ)シラン、アリル(ジアセトキシ)メチルシラン、アリル(アセトキシ)(ジメチル)シランなどのアシロキシシラン化合物;アリルトリス(トリメチルシロキシ)シランなどのアルキルシロキシシラン化合物;アリルトリス(トリフェニルシロキシ)シランなどのアリールシロキシシラン化合物;1−アリルヘプタメチルトリシロキサン、1−アリルノナメチルテトラシロキサン、1−アリルノナメチルシクロペンタシロキサン、1−アリルウンデカメチルシクロヘキサシロキサンなどのポリシロキサン化合物;などが挙げられ、シクロペンテン開環重合体の重合体鎖の両方の末端(両末端)に官能基を導入するものとして、1,4−ビス(トリメトキシシリル)−2−ブテン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)−2−ブテン、1,4−ビス(トリメトキシシリルメトキシ)−2−ブテンなどのアルコキシシラン化合物;1,4−ビス(トリフェノキシシリル)−2−ブテンなどのアリーロキシシラン化合物;1,4−ビス(トリアセトキシシリル)−2−ブテンなどのアシロキシシラン化合物;1,4−ビス[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]−2−ブテンなどのアルキルシロキシシラン化合物;1,4−ビス[トリス(トリフェニルシロキシ)シリル]−2−ブテンなどのアリールシロキシシラン化合物;1,4−ビス(ヘプタメチルトリシロキシ)−2−ブテン、1,4−ビス(ウンデカメチルシクロヘキサシロキシ)−2−ブテンなどのポリシロキサン化合物;などが挙げられる。
【0046】
オキシシリル基含有オレフィン性不飽和炭化水素などの官能基含有オレフィン性不飽和炭化水素の使用量は、製造する末端官能基含有シクロペンテン開環重合体の分子量に応じて適宜選択すればよいが、シクロペンテンに対して、モル比で、通常1/100〜1/100,000、好ましくは1/200〜1/50,000、より好ましくは1/500〜1/10,000の範囲である。なお、官能基含有オレフィン性不飽和炭化水素は、シクロペンテン開環重合体の重合体鎖末端への官能基の導入作用に加え、分子量調整剤としても作用する。
【0047】
シクロペンテン開環重合体への官能基の導入を要しない場合においては、得られるシクロペンテン開環重合体の分子量を調整するために、分子量調整剤として、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのオレフィン化合物や1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどのジオレフィン化合物を用い、これを重合反応系に添加してもよい。分子量調整剤の使用量は、官能基含有オレフィン性不飽和炭化水素と同様の範囲から適宜選択できる。
【0048】
重合反応温度は、特に限定されないが、好ましくは−100℃以上であり、より好ましくは−50℃以上、さらに好ましくは0℃以上、特に好ましくは20℃以上である。また、重合反応温度の上限は特に限定されないが、好ましくは100℃未満であり、より好ましくは90℃未満、さらに好ましくは80℃未満、特に好ましくは70℃未満である。重合反応時間も、特に限定されないが、好ましくは1分間〜72時間、より好ましくは10分間〜20時間である。
【0049】
重合反応により得られるシクロペンテン開環重合体には、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤の添加量は、その種類などに応じて適宜決定すればよい。さらに、所望により、伸展油を配合してもよい。重合体溶液としてシクロペンテン開環重合体を得た場合において、重合体溶液から重合体を回収ためには、公知の回収方法を採用すればよく、例えば、スチームストリッピングなどで溶媒を分離した後、固体をろ別し、さらにそれを乾燥して固形状ゴムを取得する方法などが採用できる。
【0050】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、例えば以上のようにして得ることができるシクロペンテン開環重合体に加えて、溶液重合スチレンブタジエンゴムを含有してなるものである。本発明のタイヤ用ゴム組成物において、必須の成分として含有される溶液重合スチレンブタジエンゴムは、スチレンおよびブタジエンを主たる成分として含有する単量体混合物を、溶媒に溶解させた状態で重合することにより得られる合成ゴムである。本発明のタイヤ用ゴム組成物では、溶液重合法によって得られる溶液重合スチレンブタジエンゴムをシクロペンテン開環重合体と組み合わせて用いることにより、ウエットグリップ性および低発熱性に優れたゴム架橋物を与えることができるものとなる。なお、溶液重合スチレンブタジエンゴムに代えて、乳化重合スチレンブタジエンゴムを用いた場合には、このようなウエットグリップ性および低発熱性の改良効果を得ることはできない。
【0051】
溶液重合スチレンブタジエンゴムの結合スチレン量(全単量体単位に対してスチレン単位が占める重量割合)は、特に限定されないが、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、特に好ましくは15重量%以上である。また、結合スチレン量の上限は、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは45重量%以下、さらに好ましくは35重量%以下、特に好ましくは30重量%以下である。
【0052】
溶液重合スチレンブタジエンゴム中に含有されるブタジエン単量体単位のビニル結合含有量は、好ましくは40〜90モル%、より好ましくは40〜80モル%、さらに好ましくは40〜75モル%、特に好ましくは40〜70モル%である。本発明においては、溶液重合スチレンブタジエンゴム、すなわち、溶液重合で得られるスチレンブタジエンゴムを使用するものであるため、溶液重合における重合条件等(たとえば、後述する極性化合物の配合量等)を調整することにより、ブタジエン単量体単位のビニル結合含有量を比較的広い範囲で調整することができ、これにより、ビニル結合含有量を、上記のような比較的高い範囲とすることができる。そして、ビニル結合含有量を上記範囲とすることにより、溶液重合スチレンブタジエンゴムとシクロペンテン開環重合体とをポリマーブレンドしたときの、得られるゴム架橋物のウエットグリップ性と、低燃費性とをより高度に両立させることが可能となる。
【0053】
一方で、溶液重合以外の方法、たとえば、乳化重合によりスチレンブタジエンゴムを製造する場合には、重合条件により、ある程度、ブタジエン単量体単位のビニル結合含有量を調整することができるが、その調整可能範囲は狭く、また、低い範囲(たとえば、ビニル結合含有量が10〜30モル%程度の範囲)とすることしかできないものである。そのため、乳化重合スチレンブタジエンゴムでは、ブタジエン単量体単位のビニル結合含有量を上述した範囲とすることができないものである。これに対し、溶液重合スチレンブタジエンゴムによれば、ブタジエン単量体単位のビニル結合含有量を上述した範囲とすることができるものであり、これにより、得られるゴム架橋物のウエットグリップ性と、低燃費性とをより高度に両立させることが可能となる。
【0054】
溶液重合スチレンブタジエンゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)も、特に限定されないが、20〜90が好ましく、30〜70がより好ましい。
【0055】
溶液重合スチレンブタジエンゴムは、炭素原子および水素原子以外の原子を有する変性基が導入された変性ゴムであっても、未変性ゴムであってもよいが、タイヤ用ゴム組成物の無機粒子への親和性を良好なものとして、得られるゴム架橋物を、ウエットグリップ性および低発熱性に優れたものとする観点からは、変性ゴムとしての変性溶液重合スチレンブタジエンゴムであることが好ましい。変性溶液重合スチレンブタジエンゴムに導入される変性基は、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基を例示することができる。
【0056】
あるいは、溶液重合スチレンブタジエンゴムとしては、ケイ素原子を含有する変性基が導入されたものであってもよい。
【0057】
溶液重合スチレンブタジエンゴムのガラス転移温度は、特に限定されないが、低温下で優れた特性を示すゴム架橋物を与えることができるタイヤ用ゴム組成物を得る観点から、好ましくは−75〜−10℃であり、より好ましくは−70〜−15℃、さらに好ましくは−65〜−20℃である。溶液重合スチレンブタジエンゴムとして、ガラス転移温度が上記範囲にあるものを用いることにより、得られるゴム架橋物のウエットグリップ性をより良好なものとすることができる。
【0058】
溶液重合スチレンブタジエンゴムは、伸展油が配合された、いわゆる油展ゴムであってもよい。伸展油としては、例えば、パラフィン系、芳香族系およびナフテン系の石油系軟化剤、植物系軟化剤、ならびに脂肪酸などが挙げられる。石油系軟化剤を用いる場合には、IP346の方法(英国のTHE INSTITUTE PETROLEUMの検査方法)により抽出される多環芳香族の含有量が3%未満であることが好ましい。伸展油を使用する場合、その使用量は、溶液重合スチレンブタジエン100重量部に対して、通常、5〜100重量部、好ましくは10〜60重量部、より好ましくは20〜50重量部である。
【0059】
本発明で用いる溶液重合スチレンブタジエンゴムの製造方法としては、たとえば、不活性溶媒中で、スチレンおよび1,3−ブタジエンを含有する単量体混合物を、重合開始剤を用いて重合することで、活性末端を有する重合体鎖を得て、必要に応じて得られた活性末端を有する重合体鎖を変性させることで、製造することができる。
【0060】
用いられる不活性溶媒としては、溶液重合において通常使用され、重合反応を阻害しないものであれば、特に制限なく使用できる。その具体例としては、たとえば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、2−ブテンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロへキサン、シクロヘキセンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;が挙げられる。不活性溶媒の使用量は、単量体濃度が、通常、1〜50重量%となるような割合であり、好ましくは10〜40重量%となるような割合である。
【0061】
重合開始剤としては、スチレンおよび1,3−ブタジエンを含む単量体を重合させて、活性末端を有する重合体鎖を与えることができるものであれば、特に限定されないが、たとえば、有機アルカリ金属化合物および有機アルカリ土類金属化合物や、ランタン系列金属化合物を主触媒とする重合開始剤が好ましく使用される。有機アルカリ金属化合物の具体例としては、たとえば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼンなどの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレンなどの有機ナトリウム化合物;カリウムナフタレンなどの有機カリウム化合物が挙げられる。また、有機アルカリ土類金属化合物としては、n−ブチルマグネシウム、n−ヘキシルマグネシウム、エトキシカルシウム、ステアリン酸カルシウム、t−ブトキシストロンチウム、エトキシバリウム、イソプロポキシバリウム、エチルメルカプトバリウム、t−ブトキシバリウム、フェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ステアリン酸バリウム、ケチルバリウムなどが挙げられる。ランタン系列金属化合物を主触媒とする重合開始剤としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウムなどのランタン系列金属とカルボン酸、リン含有有機酸などからなるランタン系列金属の塩を主触媒とし、これと、アルキルアルミニウム化合物、有機アルミニウムハイドライド化合物、有機アルミニウムハライド化合物などの助触媒とからなる重合開始剤が挙げられる。これらの重合開始剤のなかでも、有機リチウム化合物、特に有機モノリチウム化合物を用いることが好ましい。なお、有機アルカリ金属化合物は、予め、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン(好ましくは、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン)などの第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミド化合物として使用してもよい。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
重合開始剤の使用量は、重合に用いる単量体1000g当り、通常、1〜50ミリモル、好ましくは2〜20ミリモル、より好ましくは4〜15ミリモルの範囲である。
【0063】
また、ブタジエン単量体単位のビニル結合含有量を調節するために、単量体を重合する際には、その重合に用いる不活性溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。極性化合物としては、たとえば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジテトラヒドロフリルプロパンなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミンなどの三級アミン;アルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物などが挙げられる。なかでも、エーテル化合物および三級アミンが好ましく、三級アミンがより好ましく、テトラメチルエチレンジアミンが特に好ましく使用される。極性化合物の使用量は、重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.01〜100モル、より好ましくは0.3〜30モルの範囲である。極性化合物の使用量がこの範囲にあると、ブタジエン単量体単位のビニル結合含有量の調節が容易であり、これにより、ブタジエン単量体単位のビニル結合含有量を適切に上述した範囲とすることができ、かつ重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。
【0064】
重合温度は、通常、−78〜150℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは30〜90℃の範囲である。重合様式は、回分式、連続式などいずれの様式も採用可能である。
【0065】
そして、このような重合反応により得られる活性末端を有する重合体鎖に、変性剤を反応させて、変性基を導入することで、変性ゴム(変性溶液重合スチレンブタジエンゴム)を得ることができる。
【0066】
たとえば、変性基として、水酸基、アミノ基、カルボキシル基を導入する場合には、変性剤としては、水酸基を導入する場合には、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、及びイソシアヌル酸トリグリシジル等のアミノ基含有グリシジル化合物類;などを用いることができる。上記の変性剤に含まれるエポキシ基を、加水分解することによって、水酸基に変換することができる。そのため、上記の変性剤を使用する方法の他、後述する下記一般式(1)で表される化合物として、エポキシ基を含有するものを用い、これを加水分解することによっても、水酸基を導入することができる。
【0067】
アミノ基を導入する場合には、(N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−フェニル−2−ピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム等のN−置換環状アミド化合物類;1,1−ジメトキシトリメチルアミン、1,1−ジエトキシトリメチルアミン等の直鎖状アミン化合物類;ジシクロヘキシルカルボジイミド等のN−置換カルボジイミド化合物類;N−エチルエチリデンイミン、N−メチルベンジリデンイミン等のシッフ塩基化合物類;4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のN−置換アミノケトン化合物類;ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物類;ジメチルアミノメチルスチレン、ジメチルアミノエチルスチレン、1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1−(モルホリノフェニル)−1−フェニルエチレン等のアミノ基含有ビニル芳香族化合物類;N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和アミド化合物類;4−ビニルピリジン等のピリジル基含有ビニル化合物類;などを用いることできる。
【0068】
そして、カルボキシル基を導入する場合には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸エステル化合物類;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有不飽和カルボン酸エステル化合物類;などを用いることができる。
【0069】
また、変性基として、ケイ素原子を含有する変性基を導入する場合には、得られるゴム架橋物のウエットグリップ性および低発熱性をより高めることができるという点より、変性剤として、下記一般式(1)〜(3)で表されるシラン化合物のうち、少なくとも一つのシラン化合物を用いることが好ましい。
【化4】
(上記一般式(1)中、R〜Rは、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。XおよびXは、重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であり、XおよびXは互いに同一であっても相違していてもよい。X2は、重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基である。Xは、2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基である。mは3〜200の整数、nは0〜200の整数、kは0〜200の整数である。)
【化5】
(上記一般式(2)中、R〜R16は、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X〜Xは、重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基である。)
【化6】
(上記一般式(3)中、R17〜R19は、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X〜X11は、重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基である。sは1〜18の整数である。)
【0070】
上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、R〜R、XおよびXを構成する炭素数1〜6のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、たとえば、フェニル基、メチルフェニル基などが挙げられる。これらのアルキル基およびアリール基の中では、メチル基が特に好ましい。
【0071】
、XおよびXを構成する重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基としては、特に限定されないが、炭素数1〜5のアルコキシル基、2−ピロリドニル基を含有する炭化水素基、およびエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基が好ましい。
【0072】
炭素数1〜5のアルコキシル基としては、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。なかでも、メトキシ基が好ましい。
【0073】
2−ピロリドニル基を含有する炭化水素基としては、下記一般式(6)で表される基が好ましく挙げられる。
【化7】
(上記一般式(6)中、jは2〜10の整数である。特に、jは2であることが好ましい。)
【0074】
また、エポキシ基を有する炭素数4〜12の基は、下記一般式(7)で表される基が挙げられる。
−Z−Z−E (7)
上記一般式(7)中、Zは、炭素数1〜10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Zはメチレン基、硫黄原子、または酸素原子であり、Eはエポキシ基を有する炭素数2〜10の置換炭化水素基である。これらの中でも、Zが酸素原子であるものが好ましく、Zが酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものがより好ましく、Zが炭素数3のアルキレン基であり、Zが酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものが特に好ましい。
【0075】
重合体鎖の活性末端と反応する前の一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X、XおよびXの少なくとも一部が炭素数1〜5のアルコキシル基の場合、重合体鎖にポリオルガノシロキサンを反応させると、ケイ素原子とアルコキシル基の酸素原子との結合が解離して、そのケイ素原子に重合体鎖が直接結合して単結合が形成されると考えられる。
【0076】
重合体鎖の活性末端と反応する前の一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X、XおよびXの少なくとも一部が2‐ピロリドニル基を含有する炭化水素基の場合、重合体鎖にポリオルガノシロキサンを反応させると、2‐ピロリドニル基を構成するカルボニル基の炭素‐酸素結合が解離して、その炭素原子に重合体鎖が結合した構造を形成すると考えられる。
【0077】
さらに、重合体鎖の活性末端と反応する前の一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X、XおよびXの少なくとも一部がエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基の場合、重合体鎖にポリオルガノシロキサンを反応させると、エポキシ環を構成する炭素‐酸素結合が解離して、その炭素原子に重合体鎖が結合した構造を形成すると考えられる。
【0078】
上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、XおよびXとしては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基または炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、また、Xとしては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基が好ましい。
【0079】
上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X、すなわち2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基としては、下記一般式(8)で表される基が好ましい。
【化8】
上記一般式(8)中、tは2〜20の整数であり、Pは炭素数2〜10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R20は水素原子またはメチル基であり、Qは炭素数1〜10のアルコキシル基またはアリーロキシ基である。これらの中でも、tが2〜8の整数であり、Pが炭素数3のアルキレン基であり、Rが水素原子であり、かつQがメトキシ基であるものが好ましい。
【0080】
上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、mは3〜200、好ましくは20〜150、より好ましくは30〜120の整数である。また、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、nは0〜200の整数、好ましくは0〜150の整数、より好ましくは0〜120の整数である。kは0〜200の整数、好ましくは0〜150の整数、より好ましくは0〜120の整数である。さらに、m、n、およびkの合計数は、400以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましく、250以下であることが特に好ましい。m、n、kを上記範囲とすることにより、加工性をより適切なものとすることができる。
【0081】
また、上記一般式(2)、上記一般式(3)における、R〜R19、および、X〜X11も、上記一般式(1)のR〜R、および、X〜Xと同様とすることができる。
【0082】
変性剤の使用量は、使用した重合開始剤1モルに対して、通常、0.001モルを超え、0.1モル未満であり、好ましくは、0.005モルを超え、0.09モル未満であり、より好ましくは、0.01モルを超え、0.08モル未満である。
【0083】
変性剤は、重合系内に添加すると、重合で使用する不活性溶媒に溶解して、活性末端を有する重合体鎖の活性末端と変性剤が均一に反応しやすくなるので好ましい。その溶液濃度は、1〜50重量%であることが好ましい。活性末端を有す重合体鎖に変性剤を反応させる時期は、重合反応がほぼ完結した時点が好ましく、重合反応がほぼ完結した後、活性末端を有する重合体鎖が副反応でゲル化したり、重合系中の不純物による連鎖移動反応を受けたりする前であることが好ましい。なお、活性末端を有する重合体鎖に変性剤を反応させる前に、本発明の効果を阻害しない範囲で、通常使用されるカップリング剤を重合系内に添加して、重合体鎖の活性末端の一部を不活性化してもよい。
【0084】
活性末端を有する重合体鎖に変性剤を反応させる際の条件としては、反応温度が、通常0〜100℃、好ましくは30〜90℃の範囲であり、反応時間が、通常1〜120分、好ましくは2〜60分の範囲である。
【0085】
活性末端を有する重合体鎖に変性剤を反応させた後は、メタノール、イソプロパノールなどのアルコールまたは水を添加して活性末端を失活させることが好ましい。
【0086】
あるいは、未変性の溶液重合スチレンブタジエンゴムとする場合には、活性末端を有する重合体鎖に変性剤を反応させずに、活性末端を有する重合体鎖に対して、アルコールまたは水を添加して活性末端を失活させればよい。
【0087】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、シクロペンテン開環重合体と溶液重合スチレンブタジエンゴムとの含有比率は、特に限定されないが、(シクロペンテン開環重合体:溶液重合スチレンブタジエンゴム)の重量比で、5:95〜90:10であることが好ましく、5:95〜85:15であることがより好ましく、5:95〜80:20であることがさらに好ましく、15:85〜55:45であることが特に好ましい。この比率で、シクロペンテン開環重合体および溶液重合スチレンブタジエンゴムが含有されることにより、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、特にウエットグリップ性および低発熱性に優れたゴム架橋物を与えるものとなる。なお、この比率は、シクロペンテン開環重合体および溶液重合スチレンブタジエンゴムのゴム成分を構成する重合体の重量に基づいて求めるものとし、例えば、伸展油などの重量は除外して求めるものとする。
【0088】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分として、シクロペンテン開環重合体および溶液重合スチレンブタジエンゴム以外のゴムを含んでいてもよい。シクロペンテン開環重合体および溶液重合スチレンブタジエンゴム以外のゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(低シスBR、高シスBR、高トランスBR(ブタジエン部のトランス結合含有量70〜95%)などの様々なミクロ構造を含む)、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、乳化重合スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、ポリイソプレン−SBRブロック共重合ゴム、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。なかでも、NR、BR、IR、乳化重合SBRが好ましく用いられる。これらのゴムは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、本発明のタイヤ用ゴム組成物から得られるゴム架橋物のウエットグリップ性および低発熱性を良好なものとする観点からは、本発明のタイヤ用ゴム組成物におけるシクロペンテン開環重合体および溶液重合スチレンブタジエンゴム以外のゴムの含有量は、全ゴム成分に対して60重量%以下であることが好ましく、55重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましい。
【0089】
また、本発明のタイヤ用ゴム組成物を、以下のような構成とすることにより、得られるゴム架橋物を、ウエットグリップ性および低発熱性に優れていることに加え、アイスグリップ性にも優れたものとすることができる。
すなわち、本発明のタイヤ用ゴム組成物を、シクロペンテン開環重合体として、重合体鎖の末端に官能基を有している末端官能基含有シクロペンテン開環重合体を用い、また、溶液重合スチレンブタジエンゴムとして、結合スチレン量が5〜35重量%であるものを用い、かつ、タイヤ用ゴム組成物に含有されるゴム成分中における、前記シクロペンテン開環重合体の含有割合が10〜55重量%、前記溶液重合スチレンブタジエンゴムの含有割合が30〜75重量%であるものとすることにより、得られるゴム架橋物を、アイスグリップ性にも優れたもの(アイスグリップ性をも向上させるための構成)とすることができる。
【0090】
上記アイスグリップ性をも向上させるための構成を採用する場合における、溶液重合スチレンブタジエンゴムの結合スチレン量は、5〜35重量%であり、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは15〜30重量%であり、結合スチレン量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を、ウエットグリップ性とアイスグリップ性とが高度に両立したものとすることができる。
【0091】
上記アイスグリップ性をも向上させるための構成を採用する場合における、溶液重合スチレンブタジエンゴムのガラス転移温度は、特に限定されないが、低温下で優れた特性を示すゴム架橋物を与えることができるタイヤ用ゴム組成物を得る観点から、好ましくは−75〜−10℃であり、より好ましくは−70〜−15℃、さらに好ましくは−65〜−20℃である。溶液重合スチレンブタジエンゴムとして、ガラス転移温度が上記範囲にあるものを用いることにより、得られるゴム架橋物のウエットグリップ性をより良好なものとすることができる。
【0092】
また、上記アイスグリップ性をも向上させるための構成を採用する場合における、本発明のタイヤ用ゴム組成物中における、末端官能基含有シクロペンテン開環重合体の含有割合は、本発明のタイヤ用ゴム組成物中に含有される全ゴム成分中における含有割合で、10〜55重量%であり、好ましくは15〜55重量%、より好ましくは15〜50重量%である。末端官能基含有シクロペンテン開環重合体の含有割合が上記範囲にあるものを用いることにより、得られるゴム架橋物のアイスグリップ性を良好なものとすることができる。
【0093】
また、上記アイスグリップ性をも向上させるための構成を採用する場合における、本発明のタイヤ用ゴム組成物中における、溶液重合スチレンブタジエンゴムの含有割合は、本発明のタイヤ用ゴム組成物中に含有される全ゴム成分中における含有割合で、30〜75重量%であり、好ましくは30〜70重量%、より好ましくは30〜65重量%である。溶液重合スチレンブタジエンゴムの含有割合が上記範囲にあるものを用いることにより、得られるゴム架橋物のアイスグリップ性を良好なものとすることができる。
なお、上記含有量は、ゴム成分を構成する重合体の重量に基づいて求めるものとし、例えば、伸展油などの重量は除外して求めるものとする。
【0094】
また、上記アイスグリップ性をも向上させるための構成を採用する場合には、得られるゴム架橋物のアイスグリップ性をより高めることができるという点より、末端官能基含有シクロペンテン開環重合体および溶液重合スチレンブタジエンゴム以外のゴムとして、天然ゴム、ポリイソプレンゴムおよびポリブタジエンゴムから選択される少なくとも1種をさらに含有することが好ましく、これらのゴムは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。末端官能基含有シクロペンテン開環重合体および溶液重合スチレンブタジエンゴム以外のゴムを配合する場合における、その含有量は、本発明のタイヤ用ゴム組成物中に含有される全ゴム成分中における含有割合で、好ましくは15〜60重量%であり、より好ましくは15〜55重量%、さらに好ましくは20〜55重量%である。
【0095】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、充填剤として無機粒子を含有していてもよい。充填剤として用いられうる無機粒子は、特に限定されないが、シリカおよび/またはカーボンブラックが挙げられる。
【0096】
充填剤としてのシリカの具体例としては、特に限定されないが、たとえば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン−シリカ デュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのなかでも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0097】
充填剤としてのシリカは、窒素吸着比表面積が、好ましくは50〜300m/g、より好ましくは80〜220m/g、特に好ましくは100〜170m/gである。比表面積がこの範囲であると、得られるゴム架橋物をより低発熱性に優れたものとすることができる。また、シリカのpHは、7未満であることが好ましく、より好ましくは5〜6.9である。なお、窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準拠して、BET法にて測定することができる。
【0098】
充填剤としてのシリカは、その一次粒子径が1〜100nmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは5〜70nm、さらに好ましくは20〜50nmである。
【0099】
充填剤として、シリカを用いる場合における配合量は、タイヤ用ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、より好ましくは10重量部以上、さらに好ましくは15重量部以上、さらにより好ましくは20重量部以上、特に好ましくは30重量部以上、最も好ましくは50重量部以上である。また、シリカの配合量の上限は、好ましくは200重量部以下、より好ましくは150重量部以下、さらに好ましくは120重量部以下、さらにより好ましくは100重量部以下である。シリカの配合量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物のウエットグリップ性と低発熱性とを特に良好なものとすることができる。シリカの配合量が少なすぎると得られるゴム架橋物のウエットグリップ性や耐摩耗性が悪化するおそれがある。また、多すぎると低発熱性が低下するおそれがある。
【0100】
なお、充填剤として、シリカを配合する際には、得られるゴム架橋物の低発熱性をさらに改善するという観点より、シランカップリング剤をさらに配合することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピル−トリエトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィド、後述する実施例で用いている式(10)で表される化合物(式(10)中、Lはそれぞれ独立して炭素数1〜9のアルカンジイル基又はアルケンジイル基であり、xは1〜150 の整数であり、y は1〜150の整数である。)や、式(11)で表される化合物などが挙げられる。これらのなかでも、得られるゴム架橋物のウエットグリップ性および低発熱性をより向上させることができるという点より、硫黄原子を含有するものが好ましく、モノスルフィド基および/またはチオール基を含有する化合物がより好ましい。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.3重量部以上、さらに好ましくは1重量部以上、特に好ましくは5重量部以上である。また、シランカップリング剤の配合量の上限は、好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは15重量部以下である。
【0101】
また、充填剤としてのカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどが挙げられる。これらのなかでも、ファーネスブラックを用いることが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF−HS、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF、HAF−HS、HAF−LS、T−HS、T−NS、MAF、FEFなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0102】
充填剤としてのカーボンブラックは、窒素吸着比表面積が、好ましくは5〜200m/g、より好ましくは20〜130m/g、さらに好ましくは40〜80m/gである。また、充填剤としてのカーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸着量は、好ましくは5〜200ml/100g、より好ましくは50〜160ml/100g、さらに好ましくは70〜130ml/100gである。カーボンブラックの比表面積およびジブチルフタレート吸着量が上記範囲にあると、タイヤ用ゴム組成物の成形性が良好で、得られるゴム架橋物を低発熱性に優れるものとすることができる。
【0103】
充填剤として、カーボンブラックを用いる場合における配合量は、タイヤ用ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは1〜150重量部、より好ましくは2〜120重量部、さらに好ましくは5〜100重量部である。カーボンブラックの配合量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の低発熱性を良好なものとすることができる。カーボンブラックの配合量が少なすぎても、また、多すぎても、得られるゴム架橋物の低発熱性が低下するおそれがある。
【0104】
また、本発明のタイヤ用ゴム組成物に、シリカとカーボンブラックとの両方を配合する場合には、シリカとカーボンブラックとの合計量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは25〜120重量部であり、より好ましくは30〜100重量部である。
【0105】
また、本発明において、上記アイスグリップ性をも向上させるための構成を採用する場合には、充填剤としてシリカを含有するものとすることが望ましく、この場合における、シリカの配合量は、タイヤ用ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、30〜200重量部であり、好ましくは30〜150重量部、より好ましくは40〜120重量部である。シリカの配合量が少なすぎると、得られるゴム架橋物のアイスグリップ性が悪化してしまい、一方、多すぎると、ゴム成分に対する、シリカの分散が困難となってしまい、混練加工性、押出加工性が悪化してしまう。
【0106】
また、上記アイスグリップ性をも向上させるための構成を採用する場合には、用いるシリカとしては、BET法により測定される窒素吸着比表面積が、100m/g以下であるものが好ましく、より好ましくは50〜100m/g、さらに好ましくは55〜95m/gである。比表面積がこの範囲であると、得られるゴム架橋物のアイスグリップ性をより高めることができる。また、タイヤ用ゴム組成物の低発熱性をさらに改善するという観点より、上述したシランカップリング剤をさらに配合することが好ましい。
【0107】
また、上記アイスグリップ性をも向上させるための構成を採用する場合には、シリカ以外の充填剤を含有していてもよく、シリカ以外の充填剤としては、たとえば、カーボンブラックが挙げられる。この場合における、カーボンブラックの配合量は、タイヤ用ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは1〜150重量部、より好ましくは2〜120重量部である。
【0108】
また、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記成分以外に、常法に従って、架橋剤、架橋促進剤、架橋活性化剤、老化防止剤、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤、充填剤、粘着付与剤、水酸化アルミニウムなどの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。
【0109】
架橋剤としては、例えば、硫黄、ハロゲン化硫黄、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。これらのなかでも、硫黄が好ましく使用される。架橋剤の配合量は、タイヤ用ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは1.0〜5.0重量部、より好ましくは1.2〜4.0重量部、特に好ましくは1.4〜3.0重量部である。
【0110】
架橋促進剤としては、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系架橋促進剤;1,3−ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジンなどのグアニジン系架橋促進剤;チオウレア系架橋促進剤;チアゾール系架橋促進剤;チウラム系架橋促進剤;ジチオカルバミン酸系架橋促進剤;キサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。これらのなかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが特に好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、タイヤ用ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1.0〜4.0重量部である。
【0111】
架橋活性化剤としては、例えば、ステアリン酸などの高級脂肪酸や酸化亜鉛などが挙げられる。架橋活性化剤の配合量は、特に限定されないが、架橋活性化剤として高級脂肪酸を用いる場合の配合量は、タイヤ用ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部であり、架橋活性化剤として酸化亜鉛を用いる場合の配合量は、タイヤ用ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.5〜3重量部である。
【0112】
プロセス油としては、例えば、パラフィン系、芳香族系、ナフテン系の石油系軟化剤;植物系軟化剤;脂肪酸;などが挙げられる。その他の配合剤としては、例えば、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シリコーンオイルなどの活性剤;炭酸カルシウム、タルク、クレーなどの充填剤;石油樹脂、クマロン樹脂などの粘着付与剤;ワックス;などが挙げられる。
【0113】
本発明のタイヤ用ゴム組成物を得るためには、常法に従って各成分を混練すればよく、例えば、架橋剤および架橋促進剤を除く配合剤と、ゴム成分とを混練後、その混練物に架橋剤および架橋促進剤を混合して目的の組成物を得ることができる。架橋剤および架橋促進剤を除く配合剤とゴム成分の混練温度は、好ましくは80〜200℃、より好ましくは120〜180℃である。また、混練時間は、好ましくは30秒〜30分である。混練物と架橋剤および架橋促進剤との混合は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却後に行われる。なお、本発明のゴム組成物を得る際には、固形ゴムに、配合剤と、充填剤とを添加して混練する方法(乾式混練法)、あるいは、ゴムの溶液に、配合剤を添加して、凝固・乾燥させる方法(湿式混練法)のいずれでもよい。
【0114】
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のタイヤ用ゴム組成物を架橋することにより得られる。
【0115】
本発明のタイヤ用ゴム組成物を架橋する際の架橋方法は、特に限定されず、ゴム架橋物の形状、大きさなどに応じて選択すればよい。金型中にタイヤ用ゴム組成物を充填して加熱することにより成形と同時に架橋してもよく、予め成形しておいたタイヤ用ゴム組成物を加熱して架橋してもよい。架橋温度は、好ましくは120〜200℃、より好ましくは140〜180℃であり、架橋時間は、通常、1〜120分程度である。
【0116】
本発明のタイヤ用ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物は、ウエットグリップ性および低発熱性に優れるので、例えば、オールシーズンタイヤ、高性能タイヤ、スタッドレスタイヤなどの各種タイヤにおいて、トレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位への利用が可能であるが、タイヤのトレッド用として、特に好適に用いられる。また、上述したアイスグリップ性をも向上させるための構成を採用することにより、これを用いて得られるゴム架橋物を、ウエットグリップ性および低発熱性に加えて、アイスグリップ性にも優れるものとすることができるため、この場合には、ウィンタータイヤとして好適に用いることができ、とりわけ、ウィンタータイヤのトレッド用として、特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0117】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、各種の試験および評価は、下記の方法にしたがって行った。
【0118】
〔シクロペンテン開環重合体の分子量〕
テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(GPCシステム HLC−8220(東ソー社製))により、HタイプカラムHZ−M(東ソー社製)を用い、カラム温度40℃で測定し、重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を、ポリスチレン換算値として測定した。
【0119】
〔シクロペンテン開環重合体のシス/トランス比〕
13C−NMRスペクトル測定により決定した。
【0120】
〔シクロペンテン開環重合体の融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)〕
示差走査型熱量計(DSC,パーキンエルマー社製)を用いて、23℃から120℃まで昇温(加熱速度100℃/分)、120℃を10分間保持、−120℃まで降温(冷却速度100℃/分)、−120℃を10分間保持、23℃まで昇温(加熱速度10℃/分)の順で測定試料の温度を変化させ、オンセット値の2回平均値をガラス転移温度の測定値とした。
【0121】
〔シクロペンテン開環重合体のオキシシリル基の導入率〕
H−NMRスペクトル測定により、オキシシリル基に由来するピーク積分値とシクロペンテン開環重合体主鎖中の炭素−炭素二重結合に由来するピーク積分値との比率を求め、このピーク積分値の比率とGPCによる数平均分子量(Mn)の測定値に基づいて、オキシシリル基の導入率〔(オキシシリル基が導入されたシクロペンテン開環重合体鎖末端数/シクロペンテン開環重合体鎖末端全数)の百分率〕を計算した。
【0122】
〔スチレンブタジエンゴムの結合スチレン量、ビニル結合量〕
結合スチレン量、およびビニル結合量は、H−NMRにより測定した。
【0123】
〔スチレンブタジエンゴムのガラス転移温度(Tg)〕
示差走査型熱量計(DSC,パーキンエルマー社製)を用いて、23℃から120℃まで昇温(加熱速度100℃/分)、120℃を10分間保持、−120℃まで降温(冷却速度100℃/分)、−120℃を10分間保持、23℃まで昇温(加熱速度10℃/分)の順で測定試料の温度を変化させ、オンセット値の2回平均値をガラス転移温度の測定値とした。
【0124】
〔スチレンブタジエンゴムのムーニー粘度〕
スチレンブタジエンゴムのムーニー粘度(ポリマームーニー)をJIS K6300に従って測定した(単位は(ML1+4、100℃))。
【0125】
〔ウエットグリップ性評価〕
試料となるゴム組成物を、160℃で20分間プレス架橋して架橋された試験片を作製し、この試験片について、粘弾性測定装置(商品名「ARES−G2」、ティー・エー・インスツルメント社製)を用い、せん断歪み0.5%、周波数10Hzの条件で0℃におけるtanδを測定した。この値は、実施例1〜21および比較例1〜5については、比較例1の試料の測定値を100とする指数とし、実施例22〜26、比較例6および参考例1,2については、比較例6の測定値を100とする指数とした。この指数が大きいものほど、ウエットグリップ性に優れるといえる。
【0126】
〔低発熱性評価〕
試料となるゴム組成物を、160℃、20分間プレス架橋して架橋された試験片を作製し、この試験片について、粘弾性測定装置(商品名「ARES−G2」、ティー・エー・インスツルメント社製)を用い、せん断歪み2%、周波数10Hzの条件60℃におけるtanδを測定した。この値は、実施例1〜21および比較例1〜5については、比較例1の試料の測定値を100とする指数とし、実施例22〜26、比較例6および参考例1,2については、比較例6の測定値を100とする指数とした。この指数が大きいものほど、低発熱性に優れるといえる。
【0127】
〔アイスグリップ性評価〕
試料となるゴム組成物を、160℃で20分間プレス架橋して架橋された試験片を作製し、この試験片について、粘弾性測定装置(商品名「ARES−G2」、ティー・エー・インスツルメント社製)を用い、せん断歪み0.5%、周波数10Hzの条件で−20℃における貯蔵弾性率を測定した。なお、測定は、実施例22〜26、比較例6および参考例1,2について行い、測定の結果得られた値は、比較例6の試料の測定値を100とする指数とした。この指数が大きいものほど、低温における貯蔵弾性率が低く、アイスグリップ性に優れるといえる。
【0128】
〔参考例1〕
ジイソブチルアルミニウムモノ(n−へキソキシド)/トルエン溶液(2.5重量%)の調製
窒素雰囲気下、攪拌子の入ったガラス容器に、トルエン88部、および25.4重量%のトリイソブチルアルミニウム/n−ヘキサン溶液(東ソー・ファインケム社製)7.8部を加えた。次いで、容器を−45℃に冷却し、激しく攪拌しながら、n−ヘキサノール1.02部(トリイソブチルアルミニウムに対して当モル量)をゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながら室温になるまで放置し、ジイソブチルアルミニウムモノ(n−へキソキシド)/トルエン溶液(2.5重量%)を調製した。
【0129】
〔合成例1〕
窒素雰囲気下、攪拌子の入ったガラス容器に、1.0重量%のWCl/トルエン溶液87部、および参考例1で調製した2.5重量%のジイソブチルアルミニウムモノ(n−ヘキソキシド)/トルエン溶液43部を加え、15分間攪拌することにより、触媒溶液を得た。そして、窒素雰囲気下、攪拌機付き耐圧ガラス反応容器に、シクロペンテン300部およびビニル(トリエトキシ)シラン0.42部を加え、ここに、上記にて調製した触媒溶液130部を加えて、25℃で4時間重合反応を行った。4時間の重合反応後、耐圧ガラス反応容器に、過剰のエチルアルコールを加えて重合を停止した後、耐圧ガラス反応容器内の溶液を、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を含む大過剰のエチルアルコールに注いだ。次いで、沈殿したポリマーを回収し、エチルアルコールで洗浄後、40℃で3日間、真空乾燥することにより、76部のシクロペンテン開環重合体を得た。
【0130】
そして、得られたシクロペンテン重合体について、上記方法に従い、分子量、シス/トランス比、オキシシリル基導入率、融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)の各測定を行った。結果を表1に示す。
【0131】
〔合成例2〕
窒素雰囲気下、攪拌子の入ったガラス容器に、1.0重量%のWCl/トルエン溶液87部、および参考例1で調製した2.5重量%のジイソブチルアルミニウムモノ(n−ヘキソキシド)/トルエン溶液43部を加え、15分間攪拌することにより、触媒溶液を得た。そして、窒素雰囲気下、攪拌機付き耐圧ガラス反応容器に、シクロペンテン300部およびビニルトリ(トリメチルシロキシ)シラン4.97部を加え、ここに、上記にて調製した触媒溶液130部を加えて、10℃で4時間重合反応を行った。4時間の重合反応後、耐圧ガラス反応容器に、過剰のエチルアルコールを加えて重合を停止した後、耐圧ガラス反応容器内の溶液を、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を含む大過剰のエチルアルコールに注いだ。次いで、沈殿したポリマーを回収し、エチルアルコールで洗浄後、40℃で3日間、真空乾燥することにより、36部のシクロペンテン開環重合体を得た。
【0132】
そして、得られたシクロペンテン重合体について、上記方法に従い、分子量、シス/トランス比、オキシシリル基導入率、融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)の各測定を行った。結果を表1に示す。
【0133】
〔合成例3〕
窒素雰囲気下、攪拌子の入ったガラス容器に、1.0重量%のWCl/トルエン溶液87部、および参考例1で調製した2.5重量%のジイソブチルアルミニウムモノ(n−ヘキソキシド)/トルエン溶液43部を加え、15分間攪拌することにより、触媒溶液を得た。そして、窒素雰囲気下、攪拌機付き耐圧ガラス反応容器に、シクロペンテン300部および1−ヘキセン0.26部を加え、ここに、上記にて調製した触媒溶液130部を加えて、0℃で4時間重合反応を行った。4時間の重合反応後、耐圧ガラス反応容器に、過剰のエチルアルコールを加えて重合を停止した後、耐圧ガラス反応容器内の溶液を、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を含む大過剰のエチルアルコールに注いだ。次いで、沈殿したポリマーを回収し、エチルアルコールで洗浄後、40℃で3日間、真空乾燥することにより、74部のシクロペンテン開環重合体を得た。
【0134】
そして、得られたシクロペンテン重合体について、上記方法に従い、分子量、シス/トランス比、オキシシリル基導入率、融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)の各測定を行った。結果を表1に示す。
【0135】
〔合成例4〕
窒素雰囲気下、攪拌子の入ったガラス容器に、1.0重量%のWCl/トルエン溶液87部、および参考例1で調製した2.5重量%のジイソブチルアルミニウムモノ(n−ヘキソキシド)/トルエン溶液43部を加え、15分間攪拌することにより、触媒溶液を得た。そして、窒素雰囲気下、攪拌機付き耐圧ガラス反応容器に、シクロペンテン300部、トルエン150部およびビニルトリエトキシシラン0.40部を加え、ここに、上記にて調製した触媒溶液130部を加えて、25℃で4時間重合反応を行った。4時間の重合反応後、耐圧ガラス反応容器に、過剰のエチルアルコールを加えて重合を停止した後、耐圧ガラス反応容器内の溶液を、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を含む大過剰のエチルアルコールに注いだ。次いで、沈殿したポリマーを回収し、エチルアルコールで洗浄後、40℃で3日間、真空乾燥することにより、43部のシクロペンテン開環重合体を得た。
【0136】
そして、得られたシクロペンテン重合体について、上記方法に従い、分子量、シス/トランス比、オキシシリル基導入率、融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)の各測定を行った。結果を表1に示す。
【0137】
〔合成例5〕
窒素雰囲気下、攪拌子の入ったガラス容器に、1.0重量%のWCl/トルエン溶液87部、および参考例1で調製した2.5重量%のジイソブチルアルミニウムモノ(n−ヘキソキシド)/トルエン溶液43部を加え、15分間攪拌することにより、触媒溶液を得た。そして、窒素雰囲気下、攪拌機付き耐圧ガラス反応容器に、シクロペンテン300部、トルエン200部および1−ヘキセン0.12部を加え、ここに、上記にて調製した触媒溶液130部を加えて、25℃で4時間重合反応を行った。4時間の重合反応後、耐圧ガラス反応容器に、過剰のエチルアルコールを加えて重合を停止した後、耐圧ガラス反応容器内の溶液を、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を含む大過剰のエチルアルコールに注いだ。次いで、沈殿したポリマーを回収し、エチルアルコールで洗浄後、40℃で3日間、真空乾燥することにより、81部のシクロペンテン開環重合体を得た。
【0138】
そして、得られたシクロペンテン重合体について、上記方法に従い、分子量、シス/トランス比、オキシシリル基導入率、融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)の各測定を行った。結果を表1に示す。
【0139】
〔合成例6〕
窒素雰囲気下、攪拌子の入ったガラス容器に、1.0重量%のWCl/トルエン溶液87部、および参考例1で調製した2.5重量%のジイソブチルアルミニウムモノ(n−ヘキソキシド)/トルエン溶液43部を加え、15分間攪拌することにより、触媒溶液を得た。そして、窒素雰囲気下、攪拌機付き耐圧ガラス反応容器に、シクロペンテン300部および1,4−ビス(トリエトキシシリル)−2−ブテン1.24部を加え、ここに、上記にて調製した触媒溶液130部を加えて、25℃で4時間重合反応を行った。4時間の重合反応後、耐圧ガラス反応容器に、過剰のエチルアルコールを加えて重合を停止した後、耐圧ガラス反応容器内の溶液を、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を含む大過剰のエチルアルコールに注いだ。次いで、沈殿したポリマーを回収し、エチルアルコールで洗浄後、40℃で3日間、真空乾燥することにより、78部のシクロペンテン開環重合体を得た。
【0140】
そして、得られたシクロペンテン重合体について、上記方法に従い、分子量、シス/トランス比、オキシシリル基導入率、融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)の各測定を行った。結果を表1に示す。
【0141】
〔合成例7〕
窒素雰囲気下、攪拌子の入ったガラス容器に、1.0重量%のWCl/トルエン溶液58部、および参考例1で調製した2.5重量%のジイソブチルアルミニウムモノ(n−ヘキソキシド)/トルエン溶液29部を加え、15分間攪拌することにより、触媒溶液を得た。そして、窒素雰囲気下、攪拌機付き耐圧ガラス反応容器に、シクロペンテン300部および1,4−ビス(トリエトキシシリル)−2−ブテン1.71部を加え、ここに、上記にて調製した触媒溶液87部を加えて、25℃で4時間重合反応を行った。4時間の重合反応後、耐圧ガラス反応容器に、過剰のエチルアルコールを加えて重合を停止した後、耐圧ガラス反応容器内の溶液を、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を含む大過剰のエチルアルコールに注いだ。次いで、沈殿したポリマーを回収し、エチルアルコールで洗浄後、40℃で3日間、真空乾燥することにより、45部のシクロペンテン開環重合体を得た。
【0142】
そして、得られたシクロペンテン重合体について、上記方法に従い、分子量、シス/トランス比、オキシシリル基導入率、融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)の各測定を行った。結果を表1に示す。
【0143】
〔合成例8〕
窒素雰囲気下、攪拌子の入ったガラス容器に、1.0重量%のWCl/トルエン溶液58部、および参考例1で調製した2.5重量%のジイソブチルアルミニウムモノ(n−ヘキソキシド)/トルエン溶液29部を加え、15分間攪拌することにより、触媒溶液を得た。そして、窒素雰囲気下、攪拌機付き耐圧ガラス反応容器に、シクロペンテン300部および1,4−ビス(トリエトキシシリル)−2−ブテン2.02部を加え、ここに、上記にて調製した触媒溶液87部を加えて、25℃で4時間重合反応を行った。4時間の重合反応後、耐圧ガラス反応容器に、過剰のエチルアルコールを加えて重合を停止した後、耐圧ガラス反応容器内の溶液を、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を含む大過剰のエチルアルコールに注いだ。次いで、沈殿したポリマーを回収し、エチルアルコールで洗浄後、40℃で3日間、真空乾燥することにより、39部のシクロペンテン開環重合体を得た。
【0144】
そして、得られたシクロペンテン重合体について、上記方法に従い、分子量、シス/トランス比、オキシシリル基導入率、融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)の各測定を行った。結果を表1に示す。
【0145】
〔合成例9〕
窒素雰囲気下、攪拌子の入ったガラス容器に、1.0重量%のWCl/トルエン溶液44部、および参考例1で調製した2.5重量%のジイソブチルアルミニウムモノ(n−ヘキソキシド)/トルエン溶液22部を加え、15分間攪拌することにより、触媒溶液を得た。そして、窒素雰囲気下、攪拌機付き耐圧ガラス反応容器に、シクロペンテン300部および1,4−ビス(トリエトキシシリル)−2−ブテン1.86部を加え、ここに、上記にて調製した触媒溶液66部を加えて、0℃で4時間重合反応を行った。4時間の重合反応後、耐圧ガラス反応容器に、過剰のエチルアルコールを加えて重合を停止した後、耐圧ガラス反応容器内の溶液を、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を含む大過剰のエチルアルコールに注いだ。次いで、沈殿したポリマーを回収し、エチルアルコールで洗浄後、40℃で3日間、真空乾燥することにより、27部のシクロペンテン開環重合体を得た。
【0146】
そして、得られたシクロペンテン重合体について、上記方法に従い、分子量、シス/トランス比、オキシシリル基導入率、融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)の各測定を行った。結果を表1に示す。
【0147】
〔合成例10〕
窒素雰囲気下、攪拌子の入ったガラス容器に、1.0重量%のWCl/トルエン溶液87部、および参考例1で調製した2.5重量%のジイソブチルアルミニウムモノ(n−ヘキソキシド)/トルエン溶液43部を加え、15分間攪拌することにより、触媒溶液を得た。そして、窒素雰囲気下、攪拌機付き耐圧ガラス反応容器に、シクロペンテン300部、トルエン300部および1,4−ビス(トリエトキシシリル)−2−ブテン1.24部を加え、ここに、上記にて調製した触媒溶液130部を加えて、25℃で4時間重合反応を行った。4時間の重合反応後、耐圧ガラス反応容器に、過剰のエチルアルコールを加えて重合を停止した後、耐圧ガラス反応容器内の溶液を、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を含む大過剰のエチルアルコールに注いだ。次いで、沈殿したポリマーを回収し、エチルアルコールで洗浄後、40℃で3日間、真空乾燥することにより、63部のシクロペンテン開環重合体を得た。
【0148】
そして、得られたシクロペンテン重合体について、上記方法に従い、分子量、シス/トランス比、オキシシリル基導入率、融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)の各測定を行った。結果を表1に示す。
【0149】
〔合成例11〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン5670g、スチレン170g、1,3−ブタジエン430g、及びテトラメチルエチレンジアミン10.0mmolを仕込んだ後、n−ブチルリチウムを、シクロヘキサン、スチレン、1,3−ブタジエンに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量を添加した。その後、n−ブチルリチウムを重合反応に用いる分として5.6mmolを加え、40℃で重合を開始した。
重合を開始してから10分経過後、スチレン40g、1,3−ブタジエン360gを60分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は70℃であった。連続添加終了後、さらに10分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、カップリング剤として四塩化錫を0.278mmolを20重量%シクロへキサン溶液の状態で加え、65℃で10分間反応させた。
次に、変性剤として下記式(9)で表されるポリオルガノシロキサン0.024mmolを40重量%キシレン溶液の状態で添加し、65℃で20分間反応させた。
【化9】
その後、重合停止剤として、重合反応に使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、水酸基変性スチレンブタジエンゴムを含有する溶液を得た。
この水酸基変性スチレンブタジエンゴムを含有する溶液のゴム成分100部あたり、老化防止剤として、2,4−ビス(n−オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール0.2部を添加した。次に、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、固形状ゴムの回収を行ない、ロールにかけて脱水し、さらに熱風乾燥機にて乾燥し、水酸基変性溶液重合スチレンブタジエンゴムを得た。
【0150】
そして、得られた水酸基変性溶液重合スチレンブタジエンゴムは、結合スチレン量が21重量%であり、ブタジエン単位部分のビニル結合含有量が63重量%、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)62、ガラス転移温度(Tg)−25℃であり、官能基として水酸基が導入されたものであった。
【0151】
〔合成例12〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン5670g、スチレン170g、1,3−ブタジエン430g、及びテトラメチルエチレンジアミン8.4mmolを仕込んだ後、n−ブチルリチウムを、シクロヘキサン、スチレン、1,3−ブタジエンに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量を添加した。その後、n−ブチルリチウムを重合反応に用いる分として6.0mmolを加え、40℃で重合を開始した。
重合を開始してから10分経過後、スチレン40g、1,3−ブタジエン360gを60分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は70℃であった。連続添加終了後、さらに10分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、カップリング剤として四塩化錫を0.6mmolを20重量%シクロへキサン溶液の状態で加え、65℃で10分間反応させた。
次に、変性剤としてN−フェニル−2−ピロリドン5.4mmolを40重量%キシレン溶液の状態で添加し、65℃で20分間反応させた。
その後、重合停止剤として、重合反応に使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、アミノ基変性スチレンブタジエンゴムを含有する溶液を得た。それ以外は合成例11と同じ方法でアミノ基変性溶液重合スチレンブタジエンゴムを得た。
【0152】
そして、得られたアミノ基変性溶液重合スチレンブタジエンゴムは、結合スチレン量が21重量%であり、ブタジエン単位部分のビニル結合含有量が63重量%、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)45、ガラス転移温度(Tg)−25℃であり、官能基としてアミノ基が導入されたものであった。
【0153】
〔実施例1〕
容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、合成例1で得られたシクロペンテン開環重合体30部および合成例11で得られた水酸基変性溶液重合スチレンブタジエンゴム70部を30秒素練りし、次いでシリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil1115MP」、窒素吸着比表面積(BET法):112m/g)50部、プロセスオイル(新日本石油社製、商品名「アロマックス T−DAE」)25部、およびシランカップリング剤:ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(デグッサ社製、商品名「Si69」)6.0部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練後、シリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil1115MP」)25部、酸化亜鉛3部、ステアリン酸2部および老化防止剤:N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(大内新興社製、商品名「ノクラック6C」)2部を添加し、更に2.5分間混練し、ミキサーから混練物を排出させた。混練終了時の混練物の温度は150℃であった。混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、110℃を開始温度として3分間混練した後、ミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られた混練物と、硫黄1.4部および架橋促進剤(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーNS−P」)1.2部と1,3−ジフェニルグアニジン(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーD」)1.2部との混合物)2.4部とを混練した後、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,2に示す。
【0154】
〔実施例2〕
合成例1で得られたシクロペンテン開環重合体に代えて、合成例2で得られたシクロペンテン開環重合体30部を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,2に示す。
【0155】
〔実施例3〕
合成例1で得られたシクロペンテン開環重合体に代えて、合成例3で得られたシクロペンテン開環重合体30部を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,2に示す。
【0156】
〔実施例4〕
合成例1で得られたシクロペンテン開環重合体に代えて、合成例4で得られたシクロペンテン開環重合体30部を用いたこと、および合成例11で得られた水酸基変性溶液重合スチレンブタジエンゴムに代えて、合成例12で得られたアミノ基変性溶液重合スチレンブタジエンゴム70部を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,2に示す。
【0157】
〔実施例5〕
合成例1で得られたシクロペンテン開環重合体に代えて、合成例4で得られたシクロペンテン開環重合体50部を用いたこと、および合成例11で得られた水酸基変性溶液重合スチレンブタジエンゴムの量を50部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,2に示す。
【0158】
〔実施例6〕
合成例1で得られたシクロペンテン開環重合体に代えて、合成例4で得られたシクロペンテン開環重合体30部を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,2に示す。
【0159】
〔実施例7〕
合成例1で得られたシクロペンテン開環重合体に代えて、合成例5で得られたシクロペンテン開環重合体30部を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,2に示す。
【0160】
〔実施例8〕
合成例1で得られたシクロペンテン開環重合体に代えて、合成例6で得られたシクロペンテン開環重合体30部を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,2に示す。
【0161】
〔実施例9〕
合成例1で得られたシクロペンテン開環重合体に代えて、合成例7で得られたシクロペンテン開環重合体30部を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,2に示す。
【0162】
〔実施例10〕
合成例1で得られたシクロペンテン開環重合体に代えて、合成例8で得られたシクロペンテン開環重合体30部を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,2に示す。
【0163】
〔実施例11〕
合成例1で得られたシクロペンテン開環重合体に代えて、合成例9で得られたシクロペンテン開環重合体30部を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,2に示す。
【0164】
〔実施例12〕
合成例1で得られたシクロペンテン開環重合体に代えて、合成例10で得られたシクロペンテン開環重合体30部を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,2に示す。
【0165】
〔実施例13〕
合成例1で得られたシクロペンテン開環重合体に代えて、合成例4で得られたシクロペンテン開環重合体10部を用いたこと、および合成例11で得られた水酸基変性溶液重合スチレンブタジエンゴムの量を90部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,2に示す。
【0166】
〔実施例14〕
容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、合成例6で得られたシクロペンテン開環重合体30部、および合成例11で得られた水酸基変性溶液重合スチレンブタジエンゴム70部を30秒素練りし、次いでシリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil1165MP」、窒素吸着比表面積(BET法):163m/g)53部、プロセスオイル(新日本石油社製、商品名「アロマックスT−DAE」)25部、およびシランカップリング剤1:3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製、商品名「NXTシラン」)5.6部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練後、シリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil1165MP」)17部、カーボンブラック(東海カーボン社製、商品名「シースト3」)10部、酸化亜鉛3部、ステアリン酸2部および老化防止剤;N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」)2部を添加し、更に2.5分間混練し、ミキサーから混練物を排出させた。混練終了時の混練物の温度は150℃であった。混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、110℃を開始温度として3分間混練した後、ミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られた混練物と、硫黄1.5部および架橋促進剤(シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーCZ−G」)2部と1,3−ジフェニルグアニジン(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーD」)2部との混合物)4を混練した後、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,3に示す。
【0167】
〔実施例15〕
合成例6で得られたシクロペンテン開環重合体の配合量を50部に、合成例11で得られた水酸基変性溶液重合スチレンブタジエンゴムの配合量を50部に、それぞれ変更した以外は、実施例14と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,3に示す。
【0168】
〔実施例16〕
シランカップリング剤として、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシランに代えて、下記式(10)に示すシランカップリング剤(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製、商品名「NXTZ−45」(式(10)におけるx: y=55:45(モル%))5.6部を使用した以外は、実施例14と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,3に示す。
【化10】
【0169】
〔実施例17〕
シランカップリング剤として、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシランに代えて、下記式(11)に示すシランカップリング剤(エボニック社製、商品名「VP−Si363」)5.6部を使用した以外は、実施例14と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,3に示す。
【化11】
【0170】
〔実施例18〕
シリカの配合量を40部に、カーボンブラックの配合量を40部に、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシランの配合量を3.2部に、それぞれ変更した以外は、実施例14と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,3に示す。
【0171】
〔実施例19〕
合成例6で得られたシクロペンテン開環重合体の代わりに、合成例10で得られたシクロペンテン開環重合体30部を使用した以外は、実施例14と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,3に示す。
【0172】
〔実施例20〕
合成例6で得られたシクロペンテン開環重合体の代わりに、合成例1で得られたシクロペンテン開環重合体30部を使用した以外は、実施例14と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,3に示す。
【0173】
〔実施例21〕
シランカップリング剤として、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシランに代えて、ビス−3−トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィド(エボニック社製、商品名「Si69」)5.6部を使用した以外は、実施例14と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,3に示す。
【0174】
〔比較例1〕
合成例11で得られた水酸基変性溶液重合スチレンブタジエンゴムに代えて、乳化重合スチレンブタジエンゴム(商品名「Nipol SBR1739」、日本ゼオン社製、結合スチレン量40重量%、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)49、未変性ゴム、ゴム成分を構成する重合体100部に対して37.5部の伸展油を含有)96部(ゴム成分を構成する重合体を70部含有)を用いたこと、およびプロセスオイル(新日本石油社製、商品名「アロマックス T−DAE」)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,3に示す。
【0175】
〔比較例2〕
合成例11で得られた水酸基変性溶液重合スチレンブタジエンゴムに代えて、乳化重合スチレンブタジエンゴム(商品名「Nipol SBR1739」、日本ゼオン社製、結合スチレン量40重量%、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)49、未変性ゴム、ゴム成分を構成する重合体100部に対して37.5部の伸展油を含有)96部(ゴム成分を構成する重合体を70部含有)を用いたこと、およびプロセスオイル(新日本石油社製、商品名「アロマックス T−DAE」)を用いなかったこと以外は、実施例2と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,3に示す。
【0176】
〔比較例3〕
合成例11で得られた水酸基変性溶液重合スチレンブタジエンゴムに代えて、乳化重合スチレンブタジエンゴム(商品名「Nipol SBR1739」、日本ゼオン社製、結合スチレン量40重量%、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)49、未変性ゴム、ゴム成分を構成する重合体100部に対して37.5部の伸展油を含有)96部(ゴム成分を構成する重合体を70部含有)を用いたこと、およびプロセスオイル(新日本石油社製、商品名「アロマックス T−DAE」)を用いなかったこと以外は、実施例3と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,3に示す。
【0177】
〔比較例4〕
合成例11で得られた水酸基変性溶液重合スチレンブタジエンゴムに代えて、乳化重合スチレンブタジエンゴム(商品名「Nipol SBR1723」、日本ゼオン社製、結合スチレン量23.5重量%、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)47、未変性ゴム、ゴム成分を構成する重合体100部に対して37.5部の伸展油を含有)96部(ゴム成分を構成する重合体を70部含有)を用いたこと、およびプロセスオイル(新日本石油社製、商品名「アロマックス T−DAE」)を用いなかったこと以外は、実施例4と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,3に示す。
【0178】
〔比較例5〕
合成例11で得られた水酸基変性溶液重合スチレンブタジエンゴムに代えて、乳化重合スチレンブタジエンゴム(商品名「Nipol SBR1739」、日本ゼオン社製、結合スチレン量40重量%、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)49、未変性ゴム、ゴム成分を構成する重合体100部に対して37.5部の伸展油を含有)69部(ゴム成分を構成する重合体を50部含有)を用いたこと、およびプロセスオイル(新日本石油社製、商品名「アロマックス T−DAE」)の量を6部に変更したこと以外は、実施例5と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、ウエットグリップ性と低燃費性の評価を行なった。結果を表1,3に示す。
【0179】
【表1】
【0180】
【表2】
【0181】
【表3】
【0182】
〔実施例1〜21、比較例1〜5の評価〕
表1〜3に示す結果から明らかなように、シクロペンテン開環重合体および溶液重合スチレンブタジエンゴムを含有してなる本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ウエットグリップ性および低発熱性に優れたゴム架橋物を与えるものであった(実施例1〜21)。
なかでも、実施例14〜17,19,20は、シリカの配合量を所定量以上とし、かつ、シランカップリング剤として、モノスルフィド基および/またはチオール基を含有する化合物を用いるものであり、ウエットグリップ性および低発熱性が特に良好となる結果となった。
一方、溶液重合スチレンブタジエンゴムに代えて、乳化重合スチレンブタジエンゴムを用いたゴム組成物(比較例1〜5)は、本発明のタイヤ用ゴム組成物に比して、ウエットグリップ性および低発熱性に劣るゴム架橋物を与えるものであった。
【0183】
〔実施例22〕
容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、合成例6で得られたシクロペンテン開環重合体(重合体鎖の両側の末端にトリエトキシシリル基を有する両末端変性シクロペンテン開環重合体)30部、スチレンブタジエンゴム(b1)(日本ゼオン社製、商品名「Nipol NS460」、油展溶液重合SBR、結合スチレン量25重量%、ブタジエン単位部分のビニル結合含有量63%、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)62、ガラス転移温度(Tg)−20℃、油展量37.5部)55部(スチレンブタジエンゴムとして40部)、および天然ゴム(SMR−CV60)30部を30秒素練りし、次いで、シリカ(ソルベイ社製、商品名「Zeosil1085GR」、窒素吸着比表面積(BET法):90m/g、一次粒子径30nm)53.3部、プロセスオイル(JX日鉱日石エネルギー社製、商品名「アロマックスT−DAE」)25部、および、シランカップリング剤:ビス−3−トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィド(エボニック社製、商品名「Si69」)4.0部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練後、窒素吸着比表面積90m/gのシリカ(ソルベイ社製、商品名「Zeosil1085GR」)26.7部、カーボンブラック(東海カーボン社製、商品名「シースト7HM」)10部、酸化亜鉛3部、ステアリン酸2部、および、老化防止剤:N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」)2部を添加し、さらに2.5分間混練し、ミキサーから混練物を排出させた。混練終了時の混練物の温度は150℃であった。混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、110℃を開始温度として3分間混練した後、ミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られた混練物と、硫黄1.5部、架橋促進剤:シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーCZ−G」)2部、および架橋促進剤:1,3−ジフェニルグアニジン(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーD」)2部とを混練した後、シート状のゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物について、上記方法に従い、ウエットグリップ性、低発熱性およびアイスグリップ性の評価を行なった。結果を表5に示す。
【0184】
〔実施例23〕
合成例6で得られたシクロペンテン開環重合体(重合体鎖の両側の末端にトリエトキシシリル基を有する両末端変性シクロペンテン開環重合体)の配合量を30部から40部に、天然ゴムの配合量を30部から20部にそれぞれ変更したこと以外は、実施例22と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物について、上記方法に従い、ウエットグリップ性、低発熱性およびアイスグリップ性の評価を行なった。結果を表5に示す。
【0185】
〔実施例24〕
合成例6で得られたシクロペンテン開環重合体(重合体鎖の両側の末端にトリエトキシシリル基を有する両末端変性シクロペンテン開環重合体)の配合量を30部から20部に、天然ゴムの配合量を30部から40部にそれぞれ変更したこと以外は、実施例22と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物について、上記方法に従い、ウエットグリップ性、低発熱性およびアイスグリップ性の評価を行なった。結果を表5に示す。
【0186】
〔実施例25〕
合成例6で得られたシクロペンテン開環重合体(重合体鎖の両側の末端にトリエトキシシリル基を有する両末端変性シクロペンテン開環重合体)の配合量を30部から15部に、天然ゴムの配合量を30部から45部にそれぞれ変更したこと以外は、実施例22と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物について、上記方法に従い、ウエットグリップ性、低発熱性およびアイスグリップ性の評価を行なった。結果を表5に示す。
【0187】
〔実施例26〕
合成例6で得られたシクロペンテン開環重合体(重合体鎖の両側の末端にトリエトキシシリル基を有する両末端変性シクロペンテン開環重合体)30部に代えて、合成例1で得られたシクロペンテン開環重合体(片側の末端にトリエトキシシリル基を有する片末端変性シクロペンテン開環重合体)30部を用いたこと以外は、実施例22と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物について、上記方法に従い、ウエットグリップ性、低発熱性およびアイスグリップ性の評価を行なった。結果を表5に示す。
【0188】
〔比較例6〕
合成例6で得られたシクロペンテン開環重合体(重合体鎖の両側の末端にトリエトキシシリル基を有する両末端変性シクロペンテン開環重合体)30部に代えて、ポリブタジエンゴム(日本ゼオン社製、商品名「Nipol BR1220」、シス含有量97%、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)43、ガラス転移温度(Tg)−110℃)30部を用いたこと以外は、実施例22と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物について、上記方法に従い、ウエットグリップ性、低発熱性およびアイスグリップ性の評価を行なった。結果を表5に示す。
【0189】
〔参考例1〕
合成例6で得られたシクロペンテン開環重合体(重合体鎖の両側の末端にトリエトキシシリル基を有する両末端変性シクロペンテン開環重合体)の配合量を30部から60部に変更し、かつ、天然ゴムを配合しなかったこと以外は、実施例22と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物について、上記方法に従い、ウエットグリップ性、低発熱性およびアイスグリップ性の評価を行なった。結果を表5に示す。
【0190】
〔参考例2〕
スチレンブタジエンゴム(b1)55部(スチレンブタジエンゴムとして40部)に代えて、スチレンブタジエンゴム(b2)(日本ゼオン社製、商品名「Nipol NS522」、油展溶液重合SBR、結合スチレン量39重量%、ブタジエン単位部分のビニル結合含有量40%、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)62、ガラス転移温度(Tg)−23℃、油展量37.5部)55部(スチレンブタジエンゴムとして40部)を用いたこと以外は、実施例22と同様の方法で、シート状のゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物について、上記方法に従い、ウエットグリップ性、低発熱性およびアイスグリップ性の評価を行なった。結果を表5に示す。
【0191】
【表4】
【0192】
【表5】
【0193】
〔実施例22〜26、比較例6、参考例1,2の評価〕
表4に、実施例22〜26で使用したシクロペンテン開環重合体についてまとめて示した。
表4,5に示す結果から明らかなように、末端官能基含有シクロペンテン開環重合体と、結合スチレン量が5〜35重量%であるスチレンブタジエンゴムとを含有し、これらの含有割合が所定の範囲にあるゴム組成物は、ウエットグリップ性および低発熱性に優れ、しかも、アイスグリップ性が向上されたゴム架橋物を与えるものであった(実施例22〜26)。
一方、末端官能基含有シクロペンテン開環重合体に代えて、ポリブタジエンゴムを配合してなるゴム組成物を用いた場合には、得られるゴム架橋物は、ウエットグリップ性、低発熱性およびアイスグリップ性に劣るものであった(比較例6)。
さらに、末端官能基含有シクロペンテン開環重合体の含有量が多すぎる場合、および結合スチレン量が35重量%超であるスチレンブタジエンゴムを用いた場合には、これらのゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物は、アイスグリップ性の改善効果が小さかった(参考例1,2)。