(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記側鎖にエチレン性不飽和基を有する単位におけるエチレン性不飽和基が、ビニル基、ビニロキシ基、アリル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、マレオイル基、スチリル基、またはシンナモイル基である、請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
側鎖にエチレン性不飽和基を有する単位におけるエチレン性不飽和基が、水酸基またはカルボキシ基を有する単位を有する含フッ素共重合体に、水酸基またはカルボキシ基と反応しうる官能基とエチレン性不飽和基とを有する化合物を反応させて導入した基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
前記官能基を有する単位が、アルコキシシリル基を有する単量体に由来する、アルコキシシリル基を有する単位である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
前記含フッ素共重合体(A)が、前記フルオロオレフィンに由来する単位、前記側鎖にエチレン性不飽和基を有する単位および前記官能基を有する単位以外の、炭化水素基を有する単位をさらに有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
前記炭化水素基を有する単位が、ビニルエーテル類、アリルエーテル類および不飽和カルボン酸エステル類から選ばれる、炭化水素基を有する単量体に由来する単位である、請求項8に記載の硬化性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書においては、式(1)で表される化合物を「化合物(1)」のようにも記す。他の式で表される化合物についても同様に記す。
「単量体」とは、付加重合反応性の炭素−炭素二重結合を有する化合物を意味する。
「単位」とは、単量体が重合することによって形成された該単量体に由来する部分を意味する。単位は、単量体の重合反応によって直接形成された単位であってもよく、重合体を処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
本明細書において、CH
2=CRC(=O)−OHで表される化合物(ただし、Rは水素原子またはメチル基を表す。)を「(メタ)アクリル酸」という。「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸とメタクリル酸の総称である。また、(メタ)アクリル酸のエステルを以下「(メタ)アクリレート」といい、(メタ)アクリル酸から水酸基を除いた基を「(メタ)アクリロイル基」という。
【0011】
本発明の硬化性樹脂組成物は、以下に説明する含フッ素共重合体(A)と化合物(B)を含有する。また、必要に応じて、さらに光反応開始剤を含有してもよい。また、必要に応じて、反応性希釈剤、顔料、その他の成分を含有してもよい。
【0012】
[含フッ素共重合体(A)]
含フッ素共重合体(A)は、フルオロオレフィンに由来する単位(以下、「単位(α1)」ともいう。)と、側鎖にエチレン性不飽和基を有する単位(以下、「単位(α2)」ともいう。)と、官能基を有する単位(以下、「単位(α3)」ともいう。)とを有する。単位(α3)は、水酸基を有する単位(以下、「単位(α3−1)」ともいう。)、カルボキシ基を有する単位(以下、「単位(α3−2)」ともいう。)、およびアルコキシシリル基を有する単位(以下、「単位(α3−3)」ともいう。)から選択される少なくとも1種からなる。
含フッ素共重合体(A)は、さらに単位(α1)〜単位(α3)以外の単位(以下、「単位(α4)」ともいう。)を有していてもよい。
【0013】
(単位(α1))
単位(α1)は、フルオロオレフィンに由来する単位である。
フルオロオレフィンは、オレフィン炭化水素(一般式C
nH
2n)の水素原子の1個以上がフッ素原子で置換された化合物である。
フルオロオレフィンの炭素数は、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2または3が最も好ましい。
フルオロオレフィンにおけるフッ素原子の数は、2以上が好ましく、3〜4がより好ましい。フッ素原子の数が2以上であれば、塗膜の耐候性が向上する。フルオロオレフィンにおいては、フッ素原子で置換されていない水素原子の1個以上が塩素原子で置換されていてもよい。
【0014】
フルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンおよびフッ化ビニルからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンがより好ましい。
含フッ素共重合体(A)に含まれる単位(α1)は、2種以上であってもよい。
単位(α1)としては、フルオロオレフィンを重合することで直接形成される単位であることが好ましい。
【0015】
(単位(α2))
単位(α2)は、側鎖にエチレン性不飽和基を有する単位である。
エチレン性不飽和基を有することによって含フッ素共重合体(A)は、例えば、後述する光反応開始剤の存在下、光照射により硬化反応が進行する。エチレン性不飽和基は、反応性が高く、硬化速度が速い。また、塗布、硬化の際に作業環境(特に、水分)の影響を受けない。そのため、塗布から硬化完了までの時間が短縮でき、優れた生産性が得られる。また、塗料組成物を一液化することができ、また塗装中に塗料組成物が増粘しないことから、カーテンフロー性が良好な点も有利である。さらに、熱による硬化反応と異なり冷却工程を設けなくてもよいため、たとえばガラス基板に塗膜を形成する場合に、急冷によってガラス基板が割れることがない点でも有利である。
【0016】
前記エチレン性不飽和基としては、光や熱による硬化が速やかに進行する点から、ビニル基、ビニロキシ基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、マレオイル基、スチリル基およびシンナモイル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。光硬化性樹脂組成物に用いられる含フッ素共重合体(A)においては、エチレン性不飽和基としてはアクリロイル基が特に好ましい。
【0017】
単位(α2)は、水酸基、カルボキシ基等の官能基を有する単位をエチレン性不飽和基を有する単位に化学変換して得られた単位であることが好ましい。
官能基を有する単位の化学変換によりエチレン性不飽和基を導入する方法としては、水酸基またはカルボキシ基を有する、含フッ素共重合体(A)の前駆共重合体を得たのち、前駆共重合体の官能基と反応しうる官能基とエチレン性不飽和基とを有する化合物をその前駆共重合体に反応させる方法が好ましい。具体的には下記方法(1)〜(8)が好ましい。
(1)水酸基を有する前駆共重合体に、エチレン性不飽和基を有するカルボキシ化合物を反応させる(例えば、特開2005−139363号公報参照)。
(2)水酸基を有する前駆共重合体に、エチレン性不飽和基を有するイソシアネート化合物を反応させる(例えば、特開昭62−25104号公報参照)。
(3)水酸基を有する前駆共重合体に、(メタ)アクリル酸クロライドを反応させる(例えば、特開昭64−51418号参照)。
(4)水酸基を有する前駆共重合体に、無水マレイン酸を反応させる(例えば、特開昭59−41315号公報参照)。
(5)水酸基を有する前駆共重合体に、ビニルエーテル化合物またはビニルエステル化合物を反応させる(例えば、特開2001−220364号公報参照)。
(6)水酸基を有する前駆共重合体に、(メタ)アクリル酸無水物を反応させる。
(7)カルボキシ基を有する前駆共重合体に、エチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物を反応させる(例えば、特開平5−279435号公報参照)。
(8)カルボキシ基を有する前駆共重合体に、ビニルエーテル基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応させる(特開2005−202134号公報参照)。
【0018】
水酸基を有する前駆共重合体の製造に用いる水酸基を有する単量体としては、後述の単位(α3−1)を形成する単量体と同様のものが使用できる。
また、カルボキシ基を有する前駆共重合体の重合に用いるカルボキシ基を有する単量体としては、後述の単位(α3−2)を形成する単量体と同様のものが使用できる。
【0019】
(単位(α3))
単位(α3)は、単位(α3−1)、単位(α3−2)または単位(α3−3)である。含フッ素共重合体(A)はこれらの単位の2種以上を含んでいてもよい。
単位(α3)は、その少なくとも一部が単位(α3−1)であることが好ましい。
【0020】
単位(α3−1):
単位(α3−1)は、水酸基を有する単位である。
単位(α3−1)を形成する単量体としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類;ジエチレングリコールモノビニルエーテル等のエチレングリコールモノビニルエーテル類;ヒドロキシエチルアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル類;ヒドロキシアルキルカルボン酸ビニル類;ヒドロキシアルキルカルボン酸アリル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これらの単量体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
水酸基を有する単量体に由来する単位が重合後に化学変換される場合、水酸基を有する単量体に由来する単位の一部を、重合後に化学変換せずに残すことにより、単位(α3−1)が得られる。
【0021】
単位(α3−2):
単位(α3−2)は、カルボキシ基を有する単位である。
単位(α3−2)を形成する単量体としては、10−ウンデセン酸、(メタ)アクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸類;ビニルオキシ吉草酸、3−ビニルオキシプロピオン酸、3−(2−ビニルオキシブトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニルオキシエトキシカルボニル)プロピオン酸等の飽和カルボン酸ビニルエーテル類;アリルオキシ吉草酸、3−アリルオキシプロピオン酸、3−(2−アリロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸等の飽和カルボン酸アリルエーテル類;3−(2−ビニロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸等のビニロキシ基含有カルボン酸類;アジピン酸モノビニル、コハク酸モノビニル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニル等の飽和多価カルボン酸モノビニルエステル類;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、等の不飽和ジカルボン酸類;イタコン酸モノエステル、マレイン酸モノエステル、フマル酸モノエステル等の不飽和ジカルボン酸モノエステル類等が挙げられる。これらの単量体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物等の不飽和ジカルボン酸無水物類に由来する単位を化学変換してカルボキシ基を有する単位とすることもできる。
カルボキシ基を有する単量体に由来するが重合後に化学変換される場合、カルボキシ基を有する単量体に由来する単位の一部を、重合後に化学変換せずに残すことにより、単位(α3−2)が得られる。
【0022】
単位(α3−3):
単位(α3−3)は、アルコキシシリル基を有する単位である。
単位(α3−3)としては、アルコキシシリル基を有する単量体に由来する単位が挙げられる。また、単位(α3−3)は、水酸基、カルボキシ基等の官能基を有する単位をアルコキシシリル基を有する単位に化学変換して得られた単位であってもよい。
単位(α3−3)を形成する単量体としては、CH
2=CHCO
2(CH
2)
3Si(OCH
3)
3、CH
2=CHCO
2(CH
2)
3Si(OC
2H
5)
3、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3Si(OCH
3)
3、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3Si(OC
2H
5)
3、CH
2=CHCO
2(CH
2)
3SiCH
3(OC
2H
5)
2、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3SiC
2H
5(OCH
3)
2、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3Si(CH
3)
2(OC
2H
5)、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3Si(CH
3)
2OH、CH
2=CH(CH
2)
3Si(OCOCH
3)
3、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3SiC
2H
5(OCOCH
3)
2、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3SiCH
3(N(CH
3)COCH
3)
2、CH
2=CHCO
2(CH
2)
3SiCH
3[ON(CH
3)C
2H
5]
2、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3SiC
6H
5[ON(CH
3)C
2H
5]
2等のアルコキシシリルアルキル(メタ)アクリレート類;CH
2=CHSi[ON=C(CH
3)(C
2H
5)]
3、CH
2=CHSi(OCH
3)
3、CH
2=CHSi(OC
2H
5)
3、CH
2=CHSiCH
3(OCH
3)
2、CH
2=CHSi(OCOCH
3)
3、CH
2=CHSi(CH
3)
2(OC
2H
5)、CH
2=CHSi(CH
3)
2SiCH
3(OCH
3)
2、CH
2=CHSiC
2H
5(OCOCH
3)
2、CH
2=CHSiCH
3[ON(CH
3)C
2H
5]
2、ビニルトリクロロシランまたはこれらの部分加水分解物等のビニルシラン類;トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルブチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル等のアルコキシシリルアルキルビニルエーテル類等が挙げられる。
【0023】
単位(α3−3)は、水酸基と反応する官能基およびアルコキシシリル基を有する化合物を、単位(α3−1)と反応させることで得られる単位が好ましい。
水酸基と反応する官能基としては、イソシアネート基、カルボキシ基やその反応性誘導基、エポキシ基が挙げられる。中でも、イソシアネート基が好ましい。
【0024】
イソシアネート基と、アルコキシシリル基を有する化合物としては、下式(1)で表される化合物が挙げられる。
OCN(CH
2)
qSiX
pR
13−p ・・・(1)
(前記式(1)中、R
1は水素原子または炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、Xは炭素数1〜5のアルコキシ基、pは1〜3の整数、qは1〜5の整数を示す。)
【0025】
単位(α3−3)を有する含フッ素共重合体(A)は、化合物(1)のイソシアネート基と反応する活性水素を有していない溶剤(例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、キシレン等。)中で、水酸基を有する前駆共重合体と化合物(1)を反応させることにより得られる。
水酸基を有する前駆共重合体中の単位(α3−1)の水酸基と化合物(1)のイソシアネート基との反応により、ウレタン結合(−NHC(=O)−)が形成され、単位(α3−1)が単位(α3−3)に化学変換される。
【0026】
化合物(1)の具体例としては、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルジメチルメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルジメチルエトキシシラン、4−イソシアネートブチルトリメトキシシラン、4−イソシアネートブチルトリエトキシシラン、2−イソシアネートエチルトリメトキシシラン、2−イソシアネートエチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0027】
化合物(1)としては、入手性の点から、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが好ましい。
化合物(1)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
また、単位(α3−3)は、カルボキシ基と反応する官能基およびアルコキシシリル基を有する化合物を、カルボキシ基を有する前駆共重合体中の単位(α3−2)と反応させることで得られる単位としてもよい。
カルボキシ基と反応する官能基としては、イソシアネート基やエポキシ基が挙げられる。中でも、イソシアネート基が好ましい。
【0029】
単位(α4):
単位(α4)は、単位(α1)〜単位(α3)以外の単位であり、フッ素原子も官能基も有しない単位であることが好ましい。単位(α4)を形成する単量体としては、ビニルエーテル類、アリルエーテル類、不飽和カルボン酸エステル類、飽和カルボン酸ビニル、オレフィン類等が挙げられる。特に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等の炭化水素基を有する、ビニルエーテル類、アリルエーテル類、不飽和カルボン酸エステル類であることが好ましい。炭化水素基の炭素数は12以下が好ましい。炭化水素基を有する単量体としては、アルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル、アルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキルビニルエーテル、シクロアルキルアリルエーテル等が挙げられる。
【0030】
含フッ素共重合体(A)における単位(α1)の割合は、20〜80モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、40〜60モル%であることがさらに好ましい。
含フッ素共重合体(A)における単位(α2)の割合は、0.1〜70モル%であることが好ましく、0.2〜60モル%であることがより好ましく、0.3〜50モル%であることがさらに好ましい。
含フッ素共重合体(A)における単位(α3)の割合は、0.1〜70モル%であることが好ましく、0.2〜60モル%であることがより好ましく、0.3〜50モル%であることがさらに好ましい。
含フッ素共重合体(A)における単位(α4)の割合は、0.1〜70モル%であることが好ましく、0.2〜60モル%であることがより好ましく、0.3〜50モル%であることがさらに好ましい。
【0031】
含フッ素共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)は、3,000〜600,000であることが好ましく、3,500〜300,000であることがより好ましく、4,000〜200,000あることがさらに好ましい。
含フッ素共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)が上記好ましい範囲の下限値以上であれば硬化時に塗膜のしわが発生しにくい。また、上記好ましい範囲の上限値以下であれば塗料組成物の粘度を低くコントロールしやすく、塗装作業性が良好となる。
【0032】
[化合物(B)]
化合物(B)は、(メタ)アクリロイル基を有すると共に、イソシアネート基を2個以上有する化合物である。化合物(B)は、(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基を、各々2個以上有する化合物が好ましく、各々2個有する化合物がより好ましい。例えば、下式(2)で示される化合物を使用することができる。
【0034】
式(2)において、R
2、R
3は水素またはアルキル基を示し、Zは、4価炭化水素基を示す。
R
2、R
3は、水素または炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜2のアルキル基であることがより好ましい。R
2、R
3は、同一でも異なってもよい。
【0035】
Zとしては、4価の脂肪族炭化水素基を使用することができる。4価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、炭素数1〜16のものがより好ましく、炭素数1〜12のものがさらに好ましく、さらには、炭素数1〜8、炭素数1〜4のものが好ましい。
Zは、直鎖状、分岐状または環状のいずれでもよいが、硬化時の塗膜の硬度、強度、耐薬品性の点で、環状であることが好ましい。
【0036】
化合物(2)としては、例えば、BASF製のLaromer LR9000(商品名)を挙げることができる。
化合物(B)の含有量は、硬化性樹脂組成物の総量に対して、0.1〜60質量%であることが好ましく、0.5〜50質量%であることがより好ましい。
【0037】
[光反応開始剤]
本発明の硬化性樹脂組成物が光硬化性樹脂組成物である場合、硬化性樹脂組成物は通常光反応開始剤を含む。光反応開始剤としては、光照射により硬化反応を開始できるものであればよく、ラジカル重合開始剤が好ましい。このような光反応開始剤の例としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルジオン化合物、ジスルフィド化合物、フルオロアミン化合物や芳香族スルホニウム類が挙げられる。
【0038】
アセトフェノン類としては、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、および2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが挙げられる。
【0039】
ベンゾイン類としては、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが挙げられる。
ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが挙げられる。
ホスフィンオキシド類としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが挙げられる。
これらの光ラジカル重合開始剤と併用して増感色素も好ましく用いることができる。
光反応開始剤は、1種を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
光反応開始剤の含有量は、含フッ素共重合体(A)と化合物(B)の合計量100質量部に対して0.05〜25質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましく、0.3〜5質量部が特に好ましい。
光反応開始剤の前記含有量が下限値以上であれば、光反応開始剤の感度を確保しやすく、塗布層の硬化を少ない光照射エネルギーかつ短時間で充分に進行させることが容易になる。また、光反応開始剤(C)の前記含有量が上限値以下であれば、塗膜中に未反応の光反応開始剤が残存し、塗膜の物性低下や、塗膜の着色を抑制しやすい。また、光反応開始剤の使用量が少なくて済むので、経済的にも好ましい。
【0041】
[反応性希釈剤]
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記含フッ素共重合体(A)、化合物(B)、光反応開始剤に加えて、反応性希釈剤を含むことが好ましい。
反応性希釈剤は、低粘度であり1分子中に1個以上(好ましくは2個以上、さらに好ましくは2個)のエチレン性不飽和基を有する化合物である。反応性希釈剤は、溶剤のように塗料用組成物の希釈に寄与するとともに、エチレン性不飽和基を有しているので、硬化の際にフッ素共重合体(A)と反応して塗膜の一部を形成する。また、エチレン性不飽和基を2個以上有する場合は、架橋剤として機能し、硬化塗膜の形成に寄与する。
反応性希釈剤は、25℃における回転式粘度計で測定した粘度が1Pa・s以下であることが好ましい。
反応性希釈剤を含むことにより、硬化性樹脂組成物の塗装作業性が高まると共に、塗膜の硬度、耐薬品性、耐衝撃性、防湿性、破断強度および伸び率等を調整しやすい。特に、防湿性については、反応性希釈剤が反応することで塗膜の架橋密度が増し、水分の浸入をより一層低減することができる。
【0042】
反応性希釈剤は、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する非フッ素系の化合物であることが好ましい。エチレン性不飽和基を有する基としては(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましく、光硬化性樹脂組成物における反応性希釈剤としてはアクリロイルオキシ基がより好ましい。反応性希釈剤としては、具体的には、多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
反応性希釈剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の総量に対して、0.5〜60.0質量%が好ましく、1.0〜50.0質量%がより好ましい。反応性希釈剤の含有量が前記下限値以上であれば、反応性希釈剤による効果が得られやすい。反応性希釈剤の含有量が前記上限値以下であれば、塗膜の耐候性が低下し難い。
【0043】
[顔料]
本発明の硬化性樹脂組成物は、塗膜に対して、防錆、着色、補強等を目的として、顔料を含有することが好ましい。
顔料としては、防錆顔料、着色顔料および体質顔料からなる群から選ばれる1種以上の顔料が好ましい。
【0044】
防錆顔料は、反射鏡の腐食や変質を防止するための顔料である。環境への負荷が少ない点から無鉛防錆顔料が好ましい。無鉛防錆顔料としては、シアナミド亜鉛、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸カルシウムマグネシウム、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸バリウム、シアナミド亜鉛カルシウム等が挙げられる。
【0045】
着色顔料は、塗膜を着色するための顔料である。着色顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等が挙げられる。酸化チタン顔料を使用する場合には、塗膜の耐候性をさらに向上させる目的で、セリウムコート等の顔料表面に光触媒作用を抑制するための表面処理が施されたものが好ましい。D918(商品名、堺化学社製)、PFC105(商品名、石原産業社製)が特に好ましい。
【0046】
体質顔料は、塗膜の硬度を向上させ、かつ、厚みを増すための顔料である。体質顔料としては、タルク、硫酸バリウム、マイカ、炭酸カルシウム等が挙げられる。
顔料成分としては、耐候性に優れる点から、酸化チタンが特に好ましい。
【0047】
顔料成分の含有量は、硬化性樹脂組成物における顔料以外の固形分100質量部に対して、10〜500質量部が好ましく、30〜400質量部がより好ましい。顔料成分の含有量が前記下限値以上であれば、顔料成分の機能が得られやすい。顔料成分の含有量が前記上限値以下であれば、砂等が衝突しても塗膜が傷付き難くなり、また塗膜の耐候性が向上する。
【0048】
[他の成分]
本発明の硬化性樹脂組成物は、前述した各成分以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、光増感剤、有機溶剤、硬化剤、酸化防止剤、熱硬化触媒、レオロジーコントロール剤、防錆剤、レベリング剤、消泡剤、界面活性剤、防汚剤、シランカップリング剤、つや消し剤、帯電防止剤、親水化剤、撥水化剤、含フッ素共重合体(A)以外のその他樹脂等が挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物が光硬化性樹脂組成物である場合、光増感剤を含むことが好ましい。光増感剤としては、例えば、アントラセン化合物、ピレン化合物、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾおよびジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素等が挙げられる。これらは、2種類以上を混合して使用してもよい。
光増感剤は、硬化性樹脂組成物の総量に対して、0.001〜10質量%となるように含有させることが好ましい。
【0049】
含フッ素共重合体(A)以外の他の樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル変成シリコーン樹脂、シリコーン変成アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂等の非フッ素系樹脂、含フッ素共重合体(A)以外のフッ素樹脂等が挙げられる。他の樹脂は、光反応性架橋基を有する硬化性樹脂であってもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物に他の樹脂を配合する場合、他の樹脂の含有量は、含フッ素共重合体(A)の100質量部に対して1〜100質量部が好ましく、3〜90質量部がより好ましく、5〜80質量部がさらに好ましい。
【0050】
本発明の硬化性樹脂組成物は、含フッ素共重合体(A)と化合物(B)と、必要に応じて光反応開始剤、顔料、反応性希釈剤等の任意成分とを、混合することで、製造できる。各成分の混合順序は特に限定されない。組成物の粘度は反応性希釈剤等の液状成分で調整し、場合により有機溶剤を使用して調整してもよい。
【0051】
[塗膜形成]
硬化性樹脂組成物の塗布方法としては、刷毛、ローラ、スプレー、フローコータ、アプリケータ等を使用する方法が挙げられる。硬化性樹脂組成物の塗布量は、目的とする膜厚に応じて適宜選定すればよい。
硬化性樹脂組成物が有機溶剤を含む場合は、硬化性樹脂組成物を基材に塗布して塗膜を形成した後、塗膜から有機溶剤を除去して有機溶剤が除去された塗膜(以下、乾燥膜ともいう。)とする。
【0052】
硬化性樹脂組成物が光硬化性樹脂組成物である場合、次いで、硬化性樹脂組成物を光照射により硬化させて塗膜を形成する。粘度調整をする目的で硬化性樹脂組成物に有機溶剤を使用した場合は、例えば、加熱、減圧等により塗布層から有機溶剤を除去した後に、光照射により硬化させて塗膜を形成する。
有機溶剤を除去する際の温度は、使用する溶剤の沸点を考慮して適宜定めればよく、15〜100℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。前記温度が下限値以上であれば、有機溶剤が除去されやすい。前記温度が上限値以下であれば、塗膜に発泡跡が生じにくい。
【0053】
光照射の際の雰囲気は、特に制限されず、空気中もしくは不活性ガス雰囲気中が好ましい。
塗布層に照射する光は、紫外線が好ましく、波長150〜450nmの紫外線がより好ましい。紫外線照射源としては、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハライドランプ、太陽が好ましい。特に光照射を空気中で行う場合には、高圧水銀ランプがより好ましい。
光の照射時間は、充分に硬化反応を進行させやすい点から、3秒以上が好ましい。また、生産性の点から、600秒以下が好ましい。
光照射による硬化に使用する装置としては、特に制限はなく、密閉式硬化炉、連続硬化が可能なトンネル炉等の硬化装置を採用できる。具体的には、アイグラフィックス社製のインバーター式コンベア「ECS−401GX」、ウシオ電機社製の紫外線照射装置「UVC−02516S1AA01」等が挙げられる。
【0054】
また、硬化性樹脂組成物が熱硬化触媒を含有する場合、光照射による硬化に加えて、加熱により硬化を促進できる。
加熱方法は特に限定されず、熱風循環、赤外線加熱、高周波加熱等の方法を採用できる。
熱硬化触媒を使用する際の硬化の温度および時間の条件は、熱硬化触媒の種類によっても異なるが、50〜200℃で10秒〜5時間硬化させる条件が好ましく、50〜150℃で30秒〜1時間硬化させる条件がより好ましい。
塗布層からの光照射と熱硬化による硬化の順序は特に限定されない。熱硬化を先に行う場合は、熱硬化により部分硬化させた後に光硬化を行う。なお、硬化した塗膜の膜厚は、0.5〜100μmが好ましい。
【0055】
本発明の硬化性樹脂組成物が、光反応開始剤の代わりに過酸化物等の熱硬化触媒を含む熱硬化性樹脂組成物である場合、前記熱硬化と同様の硬化条件で硬化を行うことができる。
【0056】
屋外用途の複雑形状の部材の材質としては、鉄、アルミニウム、アルミニウム合金およびステンレス等の金属材料、ガラス材料、フィルム材料などが好ましい。中でも、熱を掛けることが困難であるフィルム材料への適用が好ましい。
【0057】
[作用効果]
本発明の硬化性組成物は、化合物(B)を含有することにより、強固な架橋塗膜が形成され、耐候性、耐衝撃性が優れた硬化塗膜が得られる。含フッ素共重合体(A)と化合物(B)とが、各々有するエチレン性不飽和基により架橋が進行するだけでなく、化合物(B)のイソシアネート基による架橋が生じるため、充分に硬化した塗膜が得られるためであると考えられる。
また、従来の光硬化性樹脂組成物の場合には、特に複雑な形状の部材については光の照射にむらがあったり光が当たらない部分があったりして硬化不良となる場合があった。しかし、本発明の光硬化性樹脂組成物によれば、屋外用途の複雑形状の部材に対しても、高い生産性で塗膜を形成することができる。これは、含フッ素共重合体(A)が単位(α3)を有し、化合物(B)がイソシアネート基を2個以上有するため、化合物(B)が含フッ素共重合体(A)に対して架橋剤として作用し、光が当たらない部分での架橋を可能としているためと考えられる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明について、実施例および比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。
【0059】
[含フッ素共重合体(A−1)の製造]
水酸基を有する前駆共重合体として、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)、ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、2−エチルヘキシルビニルエーテル(2EHVE)の共重合体(CTFE単位/CHVE単位/HBVE単位/2EHVE単位=50/26/9/15(mol%))のキシレン溶液(不揮発分60%、水酸基価36mgKOH/g)を用いた。
【0060】
温度計、還流冷却器、撹拌器を備えた容量300mlの4つ口フラスコに、水酸基を有する前駆共重合体の100gと、カレンズAOI(2−イソシアネートエチルアクリレート、昭和電工(株)製、商品名)の5.4gと、2−エチルヘキサン酸錫の0.05gと、キシレン(25.4g)を加え、窒素雰囲気下で50℃で5時間反応を行った。
前駆共重合体のOH基とカレンズAOIのNCO基のモル比は1:1とした。
【0061】
得られた溶液の赤外吸収スペクトルを測定したところ、イソシアネート基の吸収帯には、吸収ピークは観測されず、逆にウレタン結合の吸収帯に大きな吸収ピークが観測されたことから、前駆共重合体の側鎖にアクリロイル基を含有する含フッ素共重合体(A−1)の生成を確認した。その後、ろ過することにより、含フッ素共重合体(A−1)のキシレン溶液(不揮発分50質量%)を得た。
IR分析で確認したところ、含フッ素共重合体(A−1)には、前駆共重合体が有していたOH基の10%が、未反応のまま残存していた。
【0062】
[実施例1]
得られた含フッ素共重合体(A−1)のキシレン溶液(不揮発分50質量%)の100.0gに、Laromer LR9000(BASF社製、商品名)の5.0g、イルガキュア184(1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニル−ケトン、BASF社製、商品名)の0.8g、イルガキュア907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、BASF社製、商品名)の0.8gを加え、ペイントシェーカーで30分撹拌した。撹拌後ろ過を行うことで、実施例1の硬化性樹脂組成物(1)を得た。
Laromer LR9000は化合物(B)に、イルガキュア184およびイルガキュア907は光反応開始剤に該当する。
【0063】
[比較例1]
得られた含フッ素共重合体(A−1)のキシレン溶液(不揮発分50質量%)の100.0gに、前記イルガキュア184の0.8g、前記イルガキュア907の0.8g、トリメチロールプロパンの6.7gを加え、ペイントシェーカーで30分撹拌した。撹拌後ろ過を行うことで、比較例1の硬化性樹脂組成物(2)を得た。
【0064】
[試験板(a)の調製]
クロメート処理したアルミニウム板の表面に、硬化性樹脂組成物(1)または硬化性樹脂組成物(2)を、乾燥塗膜の膜厚が25μmとなるように塗布して塗布層を形成し、25℃の恒温室中で、24時間養生させた。その後、コンベアー式紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、商品名:インバーター式コンベア「ECS−401GX」)を用いて、紫外線(UV)を照射することによって前記塗布層を硬化させ、硬化性樹脂組成物(1)と硬化性樹脂組成物(2)の各試験板(a)を得た。
【0065】
[試験板(b)の調製]
クロメート処理したアルミニウム板の表面に、硬化性樹脂組成物(1)または硬化性樹脂組成物(2)を、乾燥塗膜の膜厚が40μmとなるように塗布して塗布層を形成し、25℃の恒温室中で、1週間養生させ、硬化性樹脂組成物(1)と硬化性樹脂組成物(2)の各試験板(b)を得た。
【0066】
[耐衝撃性]
各試験板(a)を用いて、JIS K 5600−5−3(2009)に準拠した方法で塗膜の耐衝撃性試験を行い、以下の基準に従って評価した。おもり落下としては、デュポン式を採用し、重り質量500g、高さ50cmの条件で実施した。結果を表1に示す。「○」:塗膜に割れ、損傷等が確認されなかった。「×」:塗膜に割れ、損傷等が確認された。
【0067】
[促進耐候性]
試験板(a)を用いて、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機社製)にて、促進耐候性評価を実施し、5000時間暴露後と初期とを比較し、塗膜の耐候性を評価した。評価は、以下の基準に従った。結果を表1に示す。「○」:光沢保持率が60%以上であった。「×」:光沢保持率が60%未満であった。
【0068】
[暴露試験]
(1)光沢保持率
沖縄県那覇市の屋外に各試験板(a)を設置し、設置直前の塗膜表面の60度鏡面光沢度と、2年後における塗膜表面の60度鏡面光沢度を、光沢計(日本電色工業社製、PG−1M)を用い、JIS K 5600−4−7:1999(ISO 2813:1994)に準拠して測定した。設置直前の光沢度の値を100%としたときの、3年後の光沢度の値の割合を光沢保持率(単位:%)として算出し、下記基準で耐候性を評価した。結果を表1に示す。「○」:光沢保持率が60%以上である。「×」:光沢保持率が60%未満である。
【0069】
(2)色差(ΔE)
沖縄県那覇市の屋外に各試験板(a)を設置し、設置直前の塗膜表面の測色の測定と、3年後における塗膜表面の測色の測定を、色差計(日本電色工業社製、SA4000)を用い、JIS K 5600−4−5:1999に準拠して測定し、さらに、JIS K 5600−4−6:1999に準拠して、試験前後の色差(ΔE)を算出し、下記基準で耐候性を評価した。結果を表1に示す。「○」:色差(ΔE)が、5.0以下である。「×」:色差(ΔE)が、5.0を超える。
【0070】
[紫外線未照射時の塗膜硬化性]
(1)ゲル分率
各試験板(b)をアセトンに浸漬し、還流条件下で、2時間塗膜を抽出した。
抽出前の初期重量と抽出乾燥後の重量を測定し、下記式によりゲル分率を算出した。結果を表1に示す。ゲル分率(%)=(抽出乾燥後の重量)/(抽出前の初期重量)×100
【0071】
(2)耐溶剤性
各試験板(b)の塗膜を、キシレンを含ませたガーゼで100回こすり、そのときの塗膜の状態を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。「○」:塗膜の溶解なし。「×」:塗膜の溶解あり。
【0072】
【表1】
【0073】
表1の結果に示されるように、化合物(B)を含む、硬化性樹脂組成物(1)は、塗膜の耐衝撃性、耐候性に優れる。また、光が照射されない場合でも、一定以上の硬化性を有していた。よって、屋外用途の複雑形状の部材でも高い生産性で製造することができ、かつ、耐候性、耐衝撃性に優れた塗膜を該部材表面上に形成することができる。
なお、2014年12月25日に出願された日本特許出願2014−261511号の明細書、特許請求の範囲および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。