特許第6597778号(P6597778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6597778パーフルオロアルカンスルホニルフェノール化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597778
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】パーフルオロアルカンスルホニルフェノール化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 315/00 20060101AFI20191021BHJP
   C07C 317/36 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   C07C315/00
   C07C317/36
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-521965(P2017-521965)
(86)(22)【出願日】2016年6月1日
(86)【国際出願番号】JP2016066128
(87)【国際公開番号】WO2016194929
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2018年10月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-113690(P2015-113690)
(32)【優先日】2015年6月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 弘寿
(72)【発明者】
【氏名】河村 充展
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/104407(WO,A1)
【文献】 特開昭49−7223(JP,A)
【文献】 特開平1−149762(JP,A)
【文献】 特許第6481689(JP,B2)
【文献】 The Journal of Organic Chemistry,1964年,Vol.29, No.4,p.898-900
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 315/00−317/50
CAplus(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C1−C6パーフルオロアルカンスルフィン酸のアルカリ金属塩又は亜鉛塩と1〜3個のC1−C6アルキル基で置換されていてもよい2−アミノフェノール又はその塩とを酸化剤の存在下で反応させる式(3):
(式中、RはC1−C6パーフルオロアルキル基を表し、RはC1−C6アルキル基を表し、mは0〜3のいずれかの整数を表す。)
で示される化合物又はその塩の製造方法。
【請求項2】
酸化剤が、過硫酸塩、過酸化物、三価の鉄化合物、二価の銅化合物及びマンガン化合物からなる群より選ばれる1以上の酸化剤である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸化剤が、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、tert−ブチルヒドロペルオキシド、塩化鉄(III)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン及び硫酸銅(II)からなる群より選ばれる1以上の酸化剤である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
がC1−C3パーフルオロアルキル基である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
がトリフルオロメチル基である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
C1−C6パーフルオロアルカンスルフィン酸のナトリウム塩又はカリウム塩を反応させる請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
トリフルオロメタンスルフィン酸のナトリウム塩又はカリウム塩を反応させる請求項5に記載の方法。
【請求項8】
C1−C6パーフルオロアルカンスルフィン酸のアルカリ金属塩又は亜鉛塩と1〜3個のC1−C6アルキル基で置換されていてもよい2−アミノフェノール又はその塩とを酸化剤の存在下で、硫酸、メタンスルホン酸又は塩酸を加えて反応させる請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医農薬の製造中間体として有用なパーフルオロアルカンスルホニルフェノール化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーフルオロアルカンスルホニルフェノール化合物は医農薬の製造中間体として有用である(WO2014/104407参照)。
【0003】
その製造には、フェノール化合物からパーフルオロアルカンスルファニルフェノール化合物を製造した後、酸化する方法が一般的である(WO2014/104407及びJournal of Organic Chemistry, 1964, vol. 29, p.898-900参照)。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、パーフルオロアルカンスルホニルフェノール化合物を製造する新たな方法を提供する。
本発明によれば、C1−C6パーフルオロアルカンスルフィン酸のアルカリ金属塩又は亜鉛塩と1〜3個のC1−C6アルキル基で置換されていてもよい2−アミノフェノール又はその塩とを酸化剤の存在下で反応させることにより式(3):
【0005】
(式中、RはC1−C6パーフルオロアルキル基を表し、RはC1−C6アルキル基を表し、mは0〜3のいずれかの整数を表す。)
で示される化合物(以下、化合物(3)と記す)又はその塩を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明に用いられるC1−C6パーフルオロアルカンスルフィン酸のアルカリ金属塩は、式(1a):
【0007】
(式中、RはC1−C6パーフルオロアルキル基を表し、Mはアルカリ金属を表す。)
で示されるスルフィン酸塩であり、C1−C6パーフルオロアルカンスルフィン酸の亜鉛塩は、式(1b):
【0008】
(式中、Rは上記と同義である。)
で示されるスルフィン酸塩である。
C1−C6パーフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基及びパーフルオロヘキシル基が挙げられ、中でもC1−C3パーフルオロアルキル基が好ましい。
アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムである。
C1−C6パーフルオロアルカンスルフィン酸のアルカリ金属塩としては、例えば、トリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルフィン酸カリウム、ペンタフルオロエタンスルフィン酸ナトリウム、ペンタフルオロエタンスルフィン酸カリウム、ヘプタフルオロプロパンスルフィン酸ナトリウム、ヘプタフルオロプロパンスルフィン酸カリウム、ノナフルオロブタンスルフィン酸ナトリウム及びトリデカフルオロヘキサンスルフィン酸ナトリウムが挙げられる。該スルフィン酸塩は、市販品の購入、WO2011/108622に記載の方法に準じて合成などにより入手できる。
C1−C6パーフルオロアルカンスルフィン酸の亜鉛塩としては、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルフィン酸)亜鉛、ビス(ペンタフルオロエタンスルフィン酸)亜鉛及びビス(トリデカフルオロヘキサンスルフィン酸)亜鉛が挙げられる。該スルフィン酸塩は市販品の購入、Nature (London, United Kingdom) (2012), 492(7427), 95-99)に記載の方法に準じて合成などにより入手できる。
1〜3個のC1−C6アルキル基で置換されていてもよい2−アミノフェノールは、式(2):
【0009】
(式中、RはC1−C6アルキル基を表し、mは0〜3のいずれかの整数を表す。)
で示される化合物(以下、化合物(2)と記す)であり、ここで、C1−C6アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、2−ペンチル基、ネオペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、ヘキシル基、3−メチルペンチル基が挙げられる。
【0010】
化合物(2)としては、例えば、2−アミノフェノール、2−アミノ−3−メチルフェノール、2−アミノ−5−メチルフェノール、2−アミノ−6−メチルフェノール、2−アミノ−3−エチルフェノール、2−アミノ−5−エチルフェノール及び2−アミノ−6−エチルフェノールが挙げられる。
C1−C6アルキル基で置換されていてもよい2−アミノフェノールの塩とは、化合物(2)の酸付加塩を意味し、具体例としては、塩酸、硫酸等の無機酸の付加塩並びにメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸及び酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機カルボン酸などの有機酸の付加塩が挙げられる。
【0011】
無機酸の付加塩は、化合物(2)1モルに対して塩酸、硫酸等の無機酸1モル〜10モルを有機溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)中で加えることにより得られ、また、反応系内で生成させることもできる。
【0012】
有機酸の付加塩は、化合物(2)1モルに対してメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸又は酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機カルボン酸などの有機酸1モル〜10モルを有機溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)中で加えることにより得られ、また、反応系内で生成させることもできる。
【0013】
化合物(2)の酸付加塩は、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基で中和することにより、化合物(2)に導くことができる。
本発明において、酸化剤としては、酸素;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、tert−ブチルヒドロペルオキシド等の過酸化物;三価の鉄化合物、二価の銅化合物、マンガン化合物等の遷移金属化合物;過ヨウ素酸ナトリウム等の超原子価ヨウ素化合物;ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、クロラニル等のキノン化合物;及び次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム等のハロゲンオキソ酸の塩などが挙げられる。また、これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0014】
三価の鉄化合物としては、塩化鉄(III)、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、酸化鉄(III)等が挙げられ、二価の銅化合物としては、硫酸銅(II)、塩化銅(II)等が挙げられる。マンガン化合物としては、二酸化マンガン等が挙げられる。
上記の酸化剤の中でも、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、tert−ブチルヒドロペルオキシド、塩化鉄(III)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン及び硫酸銅(II)からなる群より選ばれる酸化剤が好ましく、酸化鉄(III)(α晶、β晶、γ晶、ε晶)がより好ましい。
【0015】
酸化剤として酸素を使用する場合は、空気中で反応を行えばよく、他の酸化剤を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
C1−C6パーフルオロアルカンスルフィン酸のアルカリ金属塩又は亜鉛塩と化合物(2)又はその塩とを酸化剤の存在下で反応させて化合物(3)又はその塩を製造する反応は、通常溶媒中で行われ、溶媒としては、トルエン、キシレン、クメン、モノクロロベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄化合物;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、モノグライム、ジグライム等のエーテル; 酢酸、プロピオン酸、酪酸、エチルヘキサン酸等の有機カルボン酸;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド;アセトニトリル、プロピルニトリル等のニトリル;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール及びこれらの混合物が挙げられる。中でも有機カルボン酸及びニトリルが好ましい。
【0017】
溶媒量は、通常化合物(2)の1〜100重量倍であり、好ましくは1〜30重量倍である。
【0018】
スルフィン酸塩は化合物(2)の1モルに対して通常1モル〜5モルの割合で使用される。
【0019】
酸化剤は、化合物(2)の1モルに対して通常1モル〜5モルの割合で使用される。
【0020】
反応温度は、通常−20℃から200℃の範囲内であり、反応時間は、通常1分から24時間の範囲内である。
【0021】
強酸を加えて反応を行うのが好ましい。強酸としては、例えば、硫酸、メタンスルホン酸及び塩酸が挙げられ、強酸の使用量は、化合物(2)の1モルに対して通常1モル〜10モルの割合である。
【0022】
反応終了後は、反応混合物を晶析等に付すことにより化合物(3)を単離することができる。得られた化合物(3)は、さらに蒸留、再結晶、抽出、クロマトグラフィー等により精製することもできる。
【0023】
また、酸化剤として三価の鉄化合物(例えば、塩化鉄(III)、酸化鉄(III))を使用した場合、反応終了後に金属水素化物等の還元剤を反応系に添加することで、三価の鉄化合物から生じた系内の鉄をろ過により除去することができる。
金属水素化物としては、例えば、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウム、水素化カリウム及び水素化カルシウムが挙げられ、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。
金属水素化物の添加量は、加える三価の鉄化合物の1モルに対して0.1モル〜5モルの割合が好ましい。
【0024】
化合物(3)は、酸付加塩の形で単離することもできる。酸付加塩は、具体的には、塩酸、硫酸等の無機酸の付加塩並びにメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸及び酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機カルボン酸などの有機酸の付加塩である。これらの酸付加塩を単離するには、反応終了後に反応混合物から使用した酸化剤由来の廃棄物を除去した後、酸を加えて酸付加塩を晶析させればよい。
【0025】
得られる化合物(3)としては、例えば、2−アミノ−4−トリフルオロメタンスルホニル)フェノール、2−アミノ−3−メチル−4−トリフルオロメタンスルホニルフェノール、2−アミノ−5−メチル−4−トリフルオロメタンスルホニルフェノール、2−アミノ−6−メチル−4−トリフルオロメタンスルホニルフェノール、2−アミノ−3−エチル−4−トリフルオロメタンスルホニルフェノール、2−アミノ−5−エチル−4−トリフルオロメタンスルホニルフェノール、2−アミノ−6−エチル−4−トリフルオロメタンスルホニルフェノール及び2−アミノ−4−ペンタフルオロエタンスルホニルフェノールが挙げられる。
本発明の実施態様としては、例えば以下の態様が挙げられる。
【0026】
本発明において、酸化剤が過硫酸塩、過酸化物、三価の鉄化合物、二価の銅化合物及びマンガン化合物からなる群より選ばれる1以上の酸化剤である方法。
【0027】
本発明において、酸化剤が過硫酸塩、過酸化物、三価の鉄化合物、二価の銅化合物及びマンガン化合物からなる群より選ばれる1以上の酸化剤であり、強酸を加える方法。
【0028】
本発明において、酸化剤が過硫酸塩、過酸化物、三価の鉄化合物、二価の銅化合物、及びマンガン化合物からなる群より選ばれる1以上の酸化剤であり、硫酸、メタンスルホン酸及び塩酸からなる群より選ばれる1以上の強酸を加える方法。
【0029】
本発明において、酸化剤が過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、tert−ブチルヒドロペルオキシド、塩化鉄(III)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン及び硫酸銅(II)からなる群より選ばれる1以上の酸化剤である方法。
【0030】
本発明において、酸化剤が過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、tert−ブチルヒドロペルオキシド、塩化鉄(III)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン及び硫酸銅(II)からなる群より選ばれる1以上の酸化剤であり、強酸を加える方法。
【0031】
本発明において、酸化剤が過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、tert−ブチルヒドロペルオキシド、塩化鉄(III)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン及び硫酸銅(II)からなる群より選ばれる1以上の酸化剤であり、硫酸、メタンスルホン酸及び塩酸からなる群より選ばれる1以上の強酸を加える方法。
【0032】
本発明において、酸化剤が酸化鉄(III)である方法。
【0033】
本発明において、酸化剤が酸化鉄(III)であり、強酸を加える方法。
【0034】
本発明において、酸化剤が酸化鉄(III)であり、硫酸を加える方法。
【0035】
本発明において、酸化剤が酸化鉄(III)であり、メタンスルホン酸を加える方法。
【0036】
本発明において、酸化剤が酸化鉄(III)であり、アセトニトリル中で行う方法。
【0037】
本発明において、酸化剤が酸化鉄(III)であり、アセトニトリル中で硫酸を加える方法。
【0038】
本発明において、酸化剤が酸化鉄(III)であり、アセトニトリル中でメタンスルホン酸を加える方法。
【0039】
本発明において、酸化剤が二酸化マンガンである方法。
【0040】
本発明において、酸化剤が二酸化マンガンであり、強酸を加える方法。
【0041】
本発明において、酸化剤が二酸化マンガンであり、アセトニトリル中でメタンスルホン酸を加える方法。
【0042】
本発明において、酸化剤が塩化鉄(III)である方法。
【0043】
本発明において、酸化剤が塩化鉄(III)であり、強酸を加える方法。
【0044】
本発明において、酸化剤が塩化鉄(III)であり、メタンスルホン酸を加える方法。
【0045】
本発明において、酸化剤が酸素である方法。
【0046】
本発明において、酸化剤が酸素及び塩化鉄(III)である方法。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例等により説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
実施例中の高速液体クロマトグラフィーを用いた内部標準法による分析条件は以下の通りである。
・分析機器:(株)島津製作所製 CBM-20A
・移動相 (A/B):0.1%リン酸水/アセトニトリル
・カラム:(株)住化分析センター製 SUMIPAX ODS Z-CLUE φ4.6mm×100mm(3μm)
・カラム温度:40℃
・流速:1.0 mL/min
・UV波長:250 nm
・注入量:10μl
・内部標準物質 アセトアニリド
・タイムプログラム
【0048】

実施例1−1
窒素雰囲気下で、2−アミノフェノール0.14mol(15.00g)、トリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム0.21mol(32.17g)、アセトニトリル60g及び硫酸0.41mol(40.41g)を室温で15分間撹拌した。得られた混合物に、酸化鉄(Fe)0.27mol(43.73g)とアセトニトリル90gを加えた後、70℃で7時間撹拌した。反応混合物を、室温まで冷却後、水素化ホウ素ナトリウム0.08mol(3.12g)を加え、30分間撹拌した後、水50g加え、セライト(登録商標)ろ過して、アセトニトリルで洗浄した。ろ液と洗浄液とを合わせた混合液の一部を高速液体クロマトグラフィーを用いた内部標準法で分析することにより収率を算出した。2−アミノ−5−トリフルオロメタンスルホニルフェノールの収率は54%であった。
実施例1‐2
窒素雰囲気下で、2−アミノフェノール0.09mol(10.00g)、トリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム0.08mol(12.9g)、アセトニトリル100g及び硫酸0.33mol(32.33g)を室温で15分間撹拌した。得られた混合物に、酸化鉄(Fe)0.18mol(29.16g)とアセトニトリル50gを加えた後、73℃で2時間撹拌した。反応混合物を、室温まで冷却後、水素化ホウ素ナトリウム0.05mol(2.08g)を加え、30分間撹拌した後、水10g加え、セライト(登録商標)ろ過して、アセトニトリルで洗浄した。ろ液と洗浄液とを合わせた混合液の一部を高速液体クロマトグラフィーを用いて内部標準法で分析することにより収率を算出した。2−アミノ−5−トリフルオロメタンスルホニルフェノールの収率は78%であった。
ろ液と洗浄液を合わせ、濃縮して得られた油状物に、1規定塩酸75gとメチル−t−ブチルエーテル100gを加え、有機層と水層に分液した。水層をメチル―t−ブチルエーテル100gで抽出し、得られた有機層を合わせ、活性炭7gを加えて30分撹拌後、ろ過し、ろ液を濃縮した。得られた油状物にメタノール10gを加え、硫酸ナトリウム35gを水200gに溶かした溶液中に、室温で撹拌しながら添加することで、結晶を析出させた。ろ過して得た結晶を乾燥することで、純度73%の2−アミノ−5−トリフルオロメタンスルホニルフェノール18.1gを得た。
取り出し収率60%。
この粗結晶18gを、50%メタノール水160gと活性炭5gと60℃で30分撹拌後、60℃でろ過し、ろ液からメタノールを留去して析出した結晶を得た。室温まで冷却後、ろ過乾燥することで、純度90.7%の2−アミノ−5−トリフルオロメタンスルホニルフェノール12gを得た。単離収率50%
実施例1−3
酸化鉄(Fe)を、空気中250℃で2時間加熱することで、以下に使用する酸化鉄(Fe)を得た。
窒素雰囲気下で、2−アミノフェノール0.09mol(10.00g)、トリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム0.08mol(12.9g)、アセトニトリル100g及び硫酸0.33mol(32.33g)を室温で15分間撹拌した。得られた混合物に、上記で調製した酸化鉄(Fe)0.18mol(29.16g)とアセトニトリル50gとを加え、73℃で5時間撹拌した。反応混合物を、室温まで冷却後、水素化ホウ素ナトリウム0.05mol(2.08g)を加え、30分間撹拌した後、水50g加え、セライト(登録商標)ろ過して、アセトニトリルで洗浄した。ろ液と洗浄液とを合わせた混合液の一部を高速液体クロマトグラフィーを用いて内部標準法で分析することにより収率を算出した。2−アミノ−5−トリフルオロメタンスルホニルフェノールの収率は69%であった。
実施例2
窒素雰囲気下で、トリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム30.2mmol(4.72g)、2−アミノフェノール27.5mmol(3.0g)及びアセトニトリル60gを混合し、5℃でメタンスルホン酸13.27gを滴下した。得られた混合物に、5℃で二酸化マンガン55.3mmol(4.81g)を8時間かけて加え、5℃で1時間撹拌を行った。反応混合物に、10%ハイドロサルファイト水溶液(30g)を加え、撹拌、分液を行い、2−アミノ−5−トリフルオロメタンスルホニルフェノールを含む有機層を得た。この有機層の一部を採取し、高速液体クロマトグラフィーを用いた内部標準法で分析することにより収率を算出した。収率64%。
実施例3
2−アミノフェノール22.9mmol(2.50g)、トリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム25.2mmol(3.90g)、無水塩化鉄(III)25.2mmol(4.09g)及び酢酸25gを混合し、空気中で70℃、5時間加熱、撹拌を行った。反応混合物の一部を採取し、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析することで2−アミノ−5トリフルオロメタンスルホニルフェノールの生成を確認した。収率50%。
実施例4−1
2−アミノフェノール18.3mmol(2.00g)及びトリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム20.2mmol(3.15g)を酢酸20gに加えて得た混合物にメタンスルホン酸20.2mmol(1.94g)を滴下して室温で30分間撹拌した。得られた混合物に過硫酸アンモニウム40.4mmol(9.21g)を加えて50℃で10時間加熱、撹拌を行った。反応混合物の一部を採取し、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析することで2−アミノ−5−トリフルオロメタンスルホニルフェノールの生成を確認した。
実施例4−2
過硫酸アンモニウムの代わりに硫酸銅(II)を用いて実施例4−1の記載と同じ操作を行い、2−アミノ−5−トリフルオロメタンスルホニルフェノールの生成を確認した。
実施例5−1
無水塩化鉄(III)2.75mmol(450mg)とアセトニトリル3gとを窒素雰囲気下、氷水バスで冷却しながら混合し、得られた混合物に2−アミノフェノール2.75mmol(300mg)、トリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム4.1mmol(650mg)及びメタンスルホン酸5.5mmol(530mg)を順に加え、15分撹拌した。この混合物に、過硫酸アンモニウム6.88mmol(1.57g)を加えてから、氷水バスを外し、20℃で6時間撹拌した。反応混合物に、水素化ホウ素ナトリウム1.58mmol(60mg)を加え、30分間撹拌後、水3gと酢酸エチル10gとを加え、撹拌、分液することで、2−アミノ−5−トリフルオロメタンスルホニルフェノールを含む有機層を得た。この有機層の一部を採取して高速液体クロマトグラフィーを用いた内部標準分析法で分析することにより2−アミノ−5トリフルオロメタンスルホニルフェノールの収率を算出した。収率30%。
実施例5−2
過硫酸アンモニウムの代わりに過硫酸カリウムを用いて実施例5−1の記載と同じ操作を行い、2−アミノ−5−トリフルオロメタンスルホニルフェノールの生成を確認した。
実施例6−1
トリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム0.5mmol(0.078g)、2−アミノフェノール0.25mmol(0.027g)及び無水塩化鉄(III)0.5mmol(0.081g)を酢酸1mLに加え70℃で5時間加熱、撹拌を行った。反応混合物の一部を採取し、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析することで、2−アミノ−5−トリフルオロメタンスルホニルフェノールの生成を確認した。
実施例6−2
下記[表1]に記載の溶媒、スルフィン酸塩及び酸化剤を用い、実施例6−1の記載と同じ操作を行った。結果を以下に示す。
【0049】
尚、[表1]、[表2]及び[表3]において、CFS(O)ONaはトリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウムを表し、CFS(O)OKはトリフルオロメタンスルフィン酸カリウムを表し、(CFS(O)O)Znはビス(トリフルオロメタンスルフィン酸)亜鉛を表す。
【0050】
【表1】
【0051】

実施例6−3
[表2]に記載の組み合わせの溶媒、スルフィン酸塩及び酸化剤を用いて、実施例6−1の記載と同じ操作を行ったところ、いずれの反応においても2−アミノ−5−トリフルオロメタンスルホニルフェノールが得られた。
【0052】
【表2】
【0053】

実施例7−1
2−アミノフェノール塩酸塩13.7mmol(2.00g)、トリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム15.1mmol(2.36g)及び過硫酸アンモニウム30.2mmol(6.90g)を酢酸20gに加えて窒素雰囲気下、70℃で10時間加熱、撹拌を行った。反応混合物を一部採取して高速液体クロマトグラフィーにて分析することで2−アミノ−5−トリフルオロメタンスルホニルフェノールの生成を確認した。
実施例7−2
過硫酸アンモニウムの代わりに過硫酸カリウムを用いて、実施例7−1の記載と同じ操作を行い、2−アミノ−5−トリフルオロメタンスルホニルフェノールの生成を確認した。
実施例8−1
2−アミノ−3−メチルフェノール0.25mmol(0.047g)、トリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム0.5mmol(0.086g)及び無水塩化鉄(III)0.5mmol(0.081g)を酢酸1mLに加え、70℃で5時間加熱、攪拌を行った。反応混合物の一部を採取し、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析することで、2−アミノ−3−メチル−4−トリフルオロメタンスルホニルフェノールの生成を確認した。
実施例8−2
[表3]に記載のスルフィン酸塩及び酸化剤を用いて、実施例8−1の記載と同じ操作を行ったところ、いずれの反応においても2−アミノ−3−メチル−4−トリフルオロメタンスルホニルフェノールの生成が確認された。
【0054】
【表3】
【0055】

参考例1
2−ニトロフェノール0.25mmol(0.035g)、トリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム0.50mmol(0.078g)及び無水塩化鉄(III)0.5mmol(0.081g)を酢酸1mLに加え、70℃で5時間加熱、撹拌を行った。反応混合物の一部を採取し、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析したところ、2−アミノ−3−メチル−4−トリフルオロメタンスルホニルフェノールの生成は確認できなかった。
参考例2
2−アセチルアミノフェノール0.25mmol(0.038g)、トリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム0.078g(0.50mmol)及び無水塩化鉄(III)0.5mmol(0.081g)を酢酸1mLに加え、70℃で5時間加熱、撹拌を行った。反応混合物の一部を採取し、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析したところ、2−アミノ−3−メチル−4−トリフルオロメタンスルホニルフェノールの生成は確認できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明により、医農薬の製造中間体として有用なパーフルオロアルカンスルホニルフェノール化合物を製造することができる。