特許第6597908号(P6597908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6597908遷移金属錯体を含有する非水性インク組成物及び有機エレクトロニクスにおけるその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597908
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】遷移金属錯体を含有する非水性インク組成物及び有機エレクトロニクスにおけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/102 20140101AFI20191021BHJP
   C09D 11/52 20140101ALI20191021BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20191021BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20191021BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20191021BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20191021BHJP
   B05D 5/12 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   C09D11/102
   C09D11/52
   H05B33/14 A
   H05B33/22 D
   H05B33/10
   H01L31/04 168
   H01L31/04 162
   H01L31/04 152C
   B05D7/24 301M
   B05D7/24 302L
   B05D7/24 302R
   B05D7/24 303E
   B05D7/24 303F
   B05D7/24 303B
   B05D7/24 302Y
   B05D5/12 B
【請求項の数】37
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2018-533716(P2018-533716)
(86)(22)【出願日】2017年1月20日
(65)【公表番号】特表2019-508515(P2019-508515A)
(43)【公表日】2019年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2017001975
(87)【国際公開番号】WO2017126677
(87)【国際公開日】20170727
【審査請求日】2018年6月25日
(31)【優先権主張番号】62/280,759
(32)【優先日】2016年1月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】スウィッシャー,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】シェイナ,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】リ,セルゲイ・ビー
(72)【発明者】
【氏名】シムズ,マーク
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/073149(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0231795(US,A1)
【文献】 特表2012−525487(JP,A)
【文献】 Polymer International,Vol.63, No.1, ,pp.31-36 (2014).
【文献】 Applied Physics Letters,Vol.107, No.10,pp.103305/1-103305/4 (2015).
【文献】 Advanced Energy Materials,,Vol.2, No.10,pp.1193-1197 (2012).
【文献】 Surface and Coatings Technology,Vol.231,pp.93-97 (2013).
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00 −13/00
H01L 31/02
H01L 31/0216−31/0224
H01L 31/0236
H01L 31/0248−31/0256
H01L 31/0352−31/036
H01L 31/0392−31/078
H02S 10/00 −10/40
H02S 30/00 −99/00
H01L 27/32
H05B 33/00 −33/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式(I):
【化26】

[式中、R及びRは、各々独立して、H、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ又は−O−[Z−O]−Rであり;
ここで、
Zは、場合によりハロゲン化されているヒドロカルビレン基であり、
pは、1に等しいか又はそれより大きく、そして
は、H、アルキル、フルオロアルキル又はアリールである]に従う反復単位を含むポリチオフェン;
(b)少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体;及び
(c)1つ以上の有機溶媒を含む液体担体
を含む、非水性インク組成物。
【請求項2】
及びRが、各々独立して、H、フルオロアルキル、−[C(R)−C(R)−O]−R、−ORであり;ここで、各々のR、R、R及びRが、各々独立して、H、ハロゲン、アルキル、フルオロアルキル又はアリールであり;Rが、H、アルキル、フルオロアルキル又はアリールであり;pが、1、2又は3であり;そして、Rが、アルキル、フルオロアルキル又はアリールである、請求項1に記載の非水性インク組成物。
【請求項3】
が、Hであり、そして、Rが、H以外である、請求項1又は2に記載の非水性インク組成物。
【請求項4】
及びRが共に、H以外である、請求項1又は2に記載の非水性インク組成物。
【請求項5】
ポリチオフェンが、以下:
【化27】

及びそれらの組み合わせからなる群より選択される反復単位を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【請求項6】
ポリチオフェンがスルホン化されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【請求項7】
ポリチオフェンが、スルホン化されているポリ(3−MEET)である、請求項に記載の非水性インク組成物。
【請求項8】
ポリチオフェンが、式(I)に従う反復単位を、反復単位の総重量を基準にして、50%(重量)を超える量含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【請求項9】
少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体が、ルテニウム、バナジウム、モリブデン及び/又はタングステンを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【請求項10】
少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体がモリブデンを含む、請求項に記載の非水性インク組成物。
【請求項11】
少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子がアセチルアセトナート(acac)配位子である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【請求項12】
遷移金属錯体が、少なくとも1つのオキソ配位子をさらに含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【請求項13】
遷移金属錯体が、ビス(アセチルアセトナト)ジオキソモリブデン(VI)(MoO(acac))である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【請求項14】
液体担体が、1,3−ブタンジオール、アセトニトリル、エチレングリコール、3−メトキシプロピオニトリル又はそれらの混合物を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【請求項15】
前記液体担体が、1種以上のグリコール系溶媒(A)からなる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の非水系インク組成物。
【請求項16】
前記グリコール系溶媒(A)が、グリコールエーテル、グリコールモノエーテルまたはグリコールである、請求項15に記載の非水系インク組成物。
【請求項17】
前記液体担体が、1種以上のグリコール系溶媒(A)と、グリコール系溶媒を除く1種以上の有機溶媒(B)とを含む液体担体である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の非水系インク組成物。
【請求項18】
前記グリコール系溶媒(A)が、グリコールエーテル、グリコールモノエーテルまたはグリコールである、請求項17に記載の非水系インク組成物。
【請求項19】
前記有機溶媒(B)が、ニトリル、アルコール、芳香族エーテルまたは芳香族炭化水素である、請求項17または18に記載の非水系インク組成物。
【請求項20】
前記グリコール系溶媒(A)の含有量:wtA(重量)と、前記有機溶媒(B)の含有量(重量):wtB(重量)とが、式(1−1)を満たす、請求項1719のいずれか一項に記載の非水系インク組成物。
0.05≦wtB/(wtA+wtB)≦0.50 (1−1)
【請求項21】
少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体の量が、非水性インク組成物中の他の固体の総重量に対する対応する遷移金属酸化物の総重量として計算した場合、%(重量)〜50%(重量)ある、請求項1〜20のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【請求項22】
半金属ナノ粒子をさらに含む、請求項1〜21のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【請求項23】
半金属ナノ粒子が、B、BO、SiO、SiO、GeO、GeO、As、As、As、Sb、TeO、SnO、SnO又はそれらの混合物を含む、請求項22に記載の非水性インク組成物。
【請求項24】
半金属ナノ粒子の量が、ナノ粒子とドープされた又はドープされていないポリチオフェンの合計重量に対して、1%(重量)〜98%(重量)ある、請求項22又は23に記載の非水性インク組成物。
【請求項25】
1つ以上の酸性基を含む合成ポリマーをさらに含む、請求項1〜24のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【請求項26】
合成ポリマーが、少なくとも1つのフッ素原子及び少なくとも1つのスルホン酸(−SOH)部分によって置換されている少なくとも1つのアルキル又はアルコキシ基を含む1つ以上の反復単位を含むポリマー酸であり、ここで、前記アルキル又はアルコキシ基が、場合により、少なくとも1つのエーテル連結(−O−)基によって中断されている、請求項25に記載の非水性インク組成物。
【請求項27】
ポリマー酸が、式(II)に従う反復単位及び式(III)に従う反復単位:
【化28】

[式中、
各々のR、R、R、R、R、R10及びR11は、独立して、H、ハロゲン、フルオロアルキル又はペルフルオロアルキルであり;そして、
Xは、−[OC(R)−C(R)]−O−[CR]z−SOHであり、
ここで、各々のR、R、R、R、R及びRは、独立して、H、ハロゲン、フルオロアルキル又はペルフルオロアルキルであり;
qは、0〜10であり;そして
zは、1〜5である]
を含む、請求項26に記載の非水性インク組成物。
【請求項28】
アミン化合物をさらに含む、請求項1〜27のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【請求項29】
正孔運搬薄膜(hole-carrying film)を形成するための方法であって、
1)請求項1〜28のいずれか一項に記載の非水性インク組成物で基板をコーティングする工程;及び
2)基板上のコーティングをアニーリングして、それによって正孔運搬薄膜を形成する工程を含む、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法によって形成される、正孔運搬薄膜。
【請求項31】
PESA−AC2法によって測定した正孔運搬薄膜の仕事関数が、少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体を含有しない対応する正孔運搬薄膜よりも少なくとも0.01eVきい、請求項30に記載の正孔運搬薄膜。
【請求項32】
PESA−AC2法によって測定した仕事関数が、5.36eVよりきい、請求項30又は31に記載の正孔運搬薄膜。
【請求項33】
仕事関数が、5.36eV〜5.70eVある、請求項3032のいずれか一項に記載の正孔運搬薄膜。
【請求項34】
OLED、OPV、トランジスタ、キャパシタ、センサー、変換器、薬物放出デバイス、エレクトロクロミックデバイス又はバッテリーデバイスである、請求項3033のいずれか一項に記載の正孔運搬薄膜を含むデバイス。
【請求項35】
正孔輸送層を更に含むOLEDであり、該正孔輸送層が、トリス(4−カルバゾイル−9−イルフェニル)アミンを含む、請求項34に記載のデバイス。
【請求項36】
有機発光デバイス中の正孔運搬薄膜の仕事関数を増加させるための、少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体の使用であって、正孔運搬薄膜が、式(I):
【化29】

[式中、
及びRは、各々独立して、H、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ又は−O−[Z−O]−Rであり;
ここで、
Zは、場合によりハロゲン化されているヒドロカルビレン基であり、
pは、1に等しいか又はそれより大きく、そして
は、H、アルキル、フルオロアルキル又はアリールである]に従う反復単位を含むポリチオフェンを含む、使用。
【請求項37】
PESA−AC2法によって測定した正孔運搬薄膜の仕事関数が、少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体を含有しない対応する正孔運搬薄膜と比較して、少なくとも0.01eVけ増加する、請求項36に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、ポリチオフェンポリマー及び少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体を含む非水性インク組成物、並びに、例えば、有機電子デバイスにおけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
例えば、有機系有機発光ダイオード(OLED)、ポリマー発光ダイオード(PLED)、リン光有機発光ダイオード(PHOLED)及び有機光起電力デバイス(OPV)などの省エネルギーデバイスにおいて有用な進歩が成し遂げられているが、商業化のためのより良好な材料加工及び/又はデバイス性能を提供する上でさらなる改善が依然として必要とされている。
【0003】
高効率OLEDは、通常、多様な異なる層を含み、各層は、デバイス全体の最適効率の達成へ向けて最適化されている。典型的には、そのようなOLEDは、異なる目的を果たす複数の層を含む多層構造を含む。典型的なOLEDデバイススタックは、アノード、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、電子輸送層(ETL)及びカソードを含む。場合により、正孔注入層(HIL)がアノードとHTLとの間に配置され得るか、又は電子注入層(EIL)がカソードとETLとの間に配置され得る。
【0004】
有機電子デバイスが直面している課題の1つは、そのようなデバイスの層間の効率的な電荷の輸送である。典型的には、界面を横断する効率的な電荷輸送には、エネルギー障壁を低下させるために、層の電子エネルギー準位が十分に一致する必要があると理解される。有機電子デバイスの種々の層間の小さいエネルギー障壁又はエネルギー準位の一致は、良好なデバイス性能を達成するために大変望ましい。しかしながら、有機電子デバイスの種々の層における使用のための最適な有機及び/又は無機成分のアプリオリの同定は、依然として極めて困難なままである。
【0005】
溶解性、熱/化学安定性及び電子エネルギー準位(HOMO及びLUMOエネルギー並びに仕事関数など)などの正孔注入層及び正孔輸送層の特性を制御することによって、これらの化合物を異なる用途に適合させ、かつ発光層、光活性層及び電極などの異なる化合物と共に機能するように適合させることができるようにするための、良好なプラットフォームシステムに対する解決していないニーズが高まっている。また、特性の中でも、高い透明度、低い吸収率、低い内面反射、OLEDシステム内の低い動作電圧及び長寿命などを保持しながら、HILの抵抗率及びHIL層の厚さを調整できることが重要である。したがって、特定の用途のためにそのシステムを構築でき、かつそのような特性の必要なバランスを提供できることが最も重要である。
【0006】
発明の概要
本発明の目的は、動作電圧を低下させかつデバイスの寿命を改善するために、有機電子デバイスの電荷注入又は輸送薄膜、典型的にはHILの仕事関数を改変する能力を提供することである。
【0007】
第一の態様において、本開示は、
(a)式(I):
【化1】

[式中、R及びRは、各々独立して、H、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ又は−O−[Z−O]−Rであり;
ここで、
Zは、場合によりハロゲン化されているヒドロカルビレン基であり、
pは、1に等しいか又はそれより大きく、そして
は、H、アルキル、フルオロアルキル又はアリールである]に従う反復単位を含むポリチオフェン;
(b)少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体;及び
(c)1つ以上の有機溶媒を含む液体担体
を含む、非水性インク組成物に関する。
【0008】
第二の態様において、本開示は、正孔運搬薄膜(hole-carrying film)を形成するための方法であって、
1)本明細書に記載される非水性インク組成物で基板をコーティングする工程;及び
2)基板上のコーティングをアニーリングして、それによって正孔運搬薄膜を形成する工程を含む方法
並びにそれから製造される正孔運搬薄膜を対象とする。
【0009】
第三の態様において、本開示は、本明細書に記載される正孔運搬薄膜を含むデバイスであって、OLED、OPV、トランジスタ、キャパシタ、センサー、変換器、薬物放出デバイス、エレクトロクロミックデバイス又はバッテリーデバイスである、デバイスに関する。
【0010】
第四の態様において、本開示は、有機発光デバイス中の正孔運搬薄膜の仕事関数を増加させるための、少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体の使用に関する。
【0011】
本発明の理解を容易にするために、本発明の基本的諸特徴及び種々の態様を以下に列挙する。
【0012】
1.(a)式(I):
【化2】

[式中、R及びRは、各々独立して、H、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ又は−O−[Z−O]−Rであり;
ここで、
Zは、場合によりハロゲン化されているヒドロカルビレン基であり、
pは、1に等しいか又はそれより大きく、そして
は、H、アルキル、フルオロアルキル又はアリールである]に従う反復単位を含むポリチオフェン;
(b)少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体;及び
(c)1つ以上の有機溶媒を含む液体担体
を含む、非水性インク組成物。
【0013】
2.R及びRが、各々独立して、H、フルオロアルキル、−[C(R)−C(R)−O]−R、−ORであり;ここで、各々のR、R、R及びRが、各々独立して、H、ハロゲン、アルキル、フルオロアルキル又はアリールであり;Rが、H、アルキル、フルオロアルキル又はアリールであり;pが、1、2又は3であり;そして、Rが、アルキル、フルオロアルキル又はアリールである、前項1に記載の非水性インク組成物。
【0014】
3.Rが、Hであり、そして、Rが、H以外である、前項1又は2に記載の非水性インク組成物。
【0015】
4.R及びRが共に、H以外である、前項1又は2に記載の非水性インク組成物。
【0016】
5.R及びRが、各々独立して、−O[C(R)−C(R)−O]−R、又は−ORである、前項4に記載の非水性インク組成物。
【0017】
6.R及びRが共に、−O[C(R)−C(R)−O]−Rである、前項5に記載の非水性インク組成物。
【0018】
7.各々のR、R、R及びRが、各々独立して、H、(C−C)アルキル、(C−C)フルオロアルキル又はフェニルであり;そして、Rが、(C−C)アルキル、(C−C)フルオロアルキル又はフェニルである、前項2〜6のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【0019】
8.ポリチオフェンが、以下:
【化3】

及びそれらの組み合わせからなる群より選択される反復単位を含む、前項1〜7のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【0020】
9.ポリチオフェンがスルホン化されている、前項1〜8のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【0021】
10.ポリチオフェンが、スルホン化されているポリ(3−MEET)である、前項9に記載の非水性インク組成物。
【0022】
11.ポリチオフェンが、式(I)に従う反復単位を、反復単位の総重量を基準にして、50%(重量)を超える、典型的には80%(重量)を超える、より典型的には90%(重量)を超える、さらにより典型的には95%(重量)を超える量で含む、前項1〜10のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【0023】
12.少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体が、ルテニウム、バナジウム、モリブデン及び/又はタングステンを含む、前項1〜11のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【0024】
13.少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体がモリブデンを含む、前項12に記載の非水性インク組成物。
【0025】
14.少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子がアセチルアセトナート(acac)配位子である、前項1〜13のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【0026】
15.遷移金属錯体が、2つ以上のβ−ジケトナート配位子を含む、前項1〜14のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【0027】
16.遷移金属錯体が、少なくとも1つのオキソ配位子をさらに含む、前項1〜15のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【0028】
17.遷移金属錯体が、ビス(アセチルアセトナト)ジオキソモリブデン(VI)(MoO(acac))である、前項1〜16のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【0029】
18.液体担体が、1,3−ブタンジオール、アセトニトリル、エチレングリコール、3−メトキシプロピオニトリル又はそれらの混合物を含む、前項1〜17のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【0030】
19.前記液体担体が、1種以上のグリコール系溶媒(A)からなる、前項1〜17のいずれか一項に記載の非水系インク組成物。
【0031】
20.前記グリコール系溶媒(A)が、グリコールエーテル、グリコールモノエーテルまたはグリコールである、前項19に記載の非水系インク組成物。
【0032】
21.前記液体担体が、1種以上のグリコール系溶媒(A)と、グリコール系溶媒を除く1種以上の有機溶媒(B)とを含む液体担体である、前項1〜17のいずれか一項に記載の非水系インク組成物。
【0033】
22.前記グリコール系溶媒(A)が、グリコールエーテル、グリコールモノエーテルまたはグリコールである、前項21に記載の非水系インク組成物。
【0034】
23.前記有機溶媒(B)が、ニトリル、アルコール、芳香族エーテルまたは芳香族炭化水素である、前項21または22に記載の非水系インク組成物。
【0035】
24.前記グリコール系溶媒(A)の含有量:wtA(重量)と、前記有機溶媒(B)の含有量(重量):wtB(重量)とが、式(1−1)を満たす、前項21〜23のいずれか一項に記載の非水系インク組成物。
0.05≦wtB/(wtA+wtB)≦0.50 (1−1)
【0036】
25.少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体の量が、非水性インク組成物中の他の固体の総重量に対する対応する遷移金属酸化物の総重量として計算した場合、約1%(重量)〜約50%(重量)、典型的には約3%(重量)〜約40%(重量)、より典型的には約5%(重量)〜約15%(重量)である、前項1〜24のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【0037】
26.半金属ナノ粒子をさらに含む、前項1〜25のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【0038】
27.半金属ナノ粒子が、B、BO、SiO、SiO、GeO、GeO、As、As、As、Sb、TeO、SnO、SnO又はそれらの混合物を含む、前項26に記載の非水性インク組成物。
【0039】
28.半金属ナノ粒子がSiOを含む、前項27に記載の非水性インク組成物。
【0040】
29.半金属ナノ粒子の量が、ナノ粒子とドープされた又はドープされていないポリチオフェンの合計重量に対して、1%(重量)〜98%(重量)、典型的には約2(重量)〜約95%(重量)、より典型的には約5%(重量)〜約90%(重量)、さらにより典型的には約10%(重量)〜約90%(重量)である、前項26〜28のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【0041】
30.1つ以上の酸性基を含む合成ポリマーをさらに含む、前項1〜29のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【0042】
31.合成ポリマーが、少なくとも1つのフッ素原子及び少なくとも1つのスルホン酸(−SOH)部分によって置換されている少なくとも1つのアルキル又はアルコキシ基を含む1つ以上の反復単位を含むポリマー酸であり、ここで、前記アルキル又はアルコキシ基が、場合により、少なくとも1つのエーテル連結(−O−)基によって中断されている、前項30に記載の非水性インク組成物。
【0043】
32.ポリマー酸が、式(II)に従う反復単位及び式(III)に従う反復単位:
【化4】

[式中、
各々のR、R、R、R、R、R10及びR11は、独立して、H、ハロゲン、フルオロアルキル又はペルフルオロアルキルであり;そして、
Xは、−[OC(R)−C(R)]−O−[CR]z−SOHであり、
ここで、各々のR、R、R、R、R及びRは、独立して、H、ハロゲン、フルオロアルキル又はペルフルオロアルキルであり;
qは、0〜10であり;そして
zは、1〜5である]
を含む、前項31に記載の非水性インク組成物。
【0044】
33.アミン化合物をさらに含む、前項1〜32のいずれか一項に記載の非水性インク組成物。
【0045】
34.アミン化合物が第三級アルキルアミンである、前項33に記載の非水性インク組成物。
【0046】
35.アミン化合物がトリエチルアミンである、前項34に記載の非水性インク組成物。
【0047】
36.正孔運搬薄膜(hole-carrying film)を形成するための方法であって、
1)前項1〜35のいずれか一項に記載の非水性インク組成物で基板をコーティングする工程;及び
2)基板上のコーティングをアニーリングして、それによって正孔運搬薄膜を形成する工程を含む、方法。
【0048】
37.アニーリング温度が、約25℃〜約330℃、典型的には約150℃〜約320℃、さらにより典型的には約230℃〜約300℃、なおより典型的には約230℃〜約275℃である、前項36に記載の方法。
【0049】
38.アニーリング時間が、約5〜約40分間、典型的には約15〜約30分間である、前項36又は37に記載の方法。
【0050】
39.前項36〜38のいずれか一項に記載の方法によって形成される、正孔運搬薄膜。
【0051】
40.PESA−AC2法によって測定した正孔運搬薄膜の仕事関数が、少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体を含有しない対応する正孔運搬薄膜よりも少なくとも0.01eV、少なくとも0.10eV、少なくとも0.15eV、少なくとも0.20eV、少なくとも0.25eV、又は少なくとも0.30eV大きい、前項39に記載の正孔運搬薄膜。
【0052】
41.PESA−AC2法によって測定した仕事関数が、5.36eVより大きく、典型的には5.45eVより大きい、前項39又は40に記載の正孔運搬薄膜。
【0053】
42.仕事関数が、約5.36eV〜約5.70eV、典型的には約5.45eV〜約5.60eVである、前項39〜41のいずれか一項に記載の正孔運搬薄膜。
【0054】
43.OLED、OPV、トランジスタ、キャパシタ、センサー、変換器、薬物放出デバイス、エレクトロクロミックデバイス又はバッテリーデバイスである、前項39〜42のいずれか一項に記載の正孔運搬薄膜を含むデバイス。
【0055】
44.正孔輸送層をさらに含むOLEDである、前項43に記載のデバイス。
【0056】
45.正孔輸送層が、トリス(4−カルバゾイル−9−イルフェニル)アミンを含む、前項44に記載のデバイス。
【0057】
46.有機発光デバイス中の正孔運搬薄膜の仕事関数を増加させるための、少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体の使用であって、正孔運搬薄膜が、式(I):
【化5】

[式中、
及びRは、各々独立して、H、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ又は−O−[Z−O]−Rであり;
ここで、
Zは、場合によりハロゲン化されているヒドロカルビレン基であり、
pは、1に等しいか又はそれより大きく、そして
は、H、アルキル、フルオロアルキル又はアリールである]に従う反復単位を含むポリチオフェンを含む、使用。
【0058】
47.PESA−AC2法によって測定した正孔運搬薄膜の仕事関数が、少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体を含有しない対応する正孔運搬薄膜と比較して、少なくとも0.01eV、少なくとも0.10eV、少なくとも0.15eV、少なくとも0.20eV、少なくとも0.25eV、又は少なくとも0.30eVだけ増加する、前項46に記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】NQインク1及び3〜5(四角)から製造した薄膜の仕事関数をMoO濃度の関数として示す。
図2】デバイスA及びBの各々におけるNQインク2及びNQインク3から製造したHIL間の電流密度対電圧の比較を示す。
図3】デバイスA及びBの各々におけるNQインク2及びNQインク3から製造したHIL間の電圧対時間の比較を示す。
図4】デバイスA及びBの各々におけるNQインク2及びNQインク5から製造したHIL間の電流密度対電圧の比較を示す。
図5】デバイスA及びBの各々におけるNQインク2及びNQインク5から製造したHIL間の電圧対時間の比較を示す。
【0060】
詳細な説明
本明細書において使用される場合、用語「a」、「an」又は「the」は、他に指定のない限り、「1つ以上」又は「少なくとも1つ」を意味する。
【0061】
本明細書において使用される場合、用語「〜を含む(comprises)」は、「〜から本質になる(consists essentially of)」及び「〜からなる(consists of)」を含む。用語「〜を含む(comprising)」は、「〜から本質的になる(consisting essentially of)」及び「〜からなる(consisting of)」を含む。
【0062】
語句「〜を含有しない(free of)」は、その語句によって修飾された材料の外部からの添加がないこと、及び当業者に公知の分析技術(例えば、ガス又は液体クロマトグラフィー、分光測光法、光学顕微鏡法など)によって観察され得る検出可能な量の材料がないことを意味する。
【0063】
本開示を通して、種々の刊行物が参照によって組み入れられ得る。参照によって組み入れられるそのような刊行物中の任意の言語の意味が本開示の言語の意味と一致しない場合は、他に指示のない限り、本開示の言語の意味が優先されるものとする。
【0064】
本明細書において使用される場合、専門用語「(Cx−Cy)」(式中、x及びyは、各々整数である)は、有機基に関して、その基が、1つの基あたりx個の炭素原子〜y個の炭素原子を含有し得ることを意味する。
【0065】
本明細書において使用される場合、用語「アルキル」は、一価の直鎖又は分岐飽和炭化水素基、より典型的には、一価の直鎖又は分岐飽和(C−C40)炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、ベヘニル、トリコンチル及びテトラコンチルなどを意味する。
【0066】
本明細書において使用される場合、用語「フルオロアルキル」は、1個以上フッ素原子で置換されている本明細書に定義されるとおりのアルキル基、より典型的には(C−C40)アルキル基を意味する。フルオロアルキル基の例は、例えば、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペルフルオロアルキル、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチル、ペルフルオロエチル及び−CHCFを含む。
【0067】
本明細書において使用される場合、用語「ヒドロカルビレン」は、炭化水素、典型的には(C−C40)炭化水素から2個の水素原子を除去することによって形成される二価の基を意味する。ヒドロカルビレン基は、直鎖、分岐又は環状であり得、そして、飽和又は不飽和であり得る。ヒドロカルビレン基の例は、限定されないが、メチレン、エチレン、1−メチルエチレン、1−フェニルエチレン、プロピレン、ブチレン、1,2−ベンゼン;1,3−ベンゼン;1,4−ベンゼン;及び2,6−ナフタレンを含む。
【0068】
本明細書において使用される場合、用語「アルコキシ」は、−O−アルキル(式中、アルキル基は、本明細書に定義されるとおりである)として表される一価の基を意味する。アルコキシ基の例は、限定されないが、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ及びtert−ブトキシを含む。
【0069】
本明細書において使用される場合、用語「アリール」は、1つ以上の6員炭素環を含有する一価の不飽和炭化水素基(不飽和は、3つの共役二重結合によって表され得る)を意味する。アリール基は、単環式アリール及び多環式アリールを含む。多環式アリールは、2つ以上の6員炭素環を含有する一価の不飽和炭化水素基(不飽和は、3つの共役二重結合によって表され得る)を指し、ここで、隣接する環は、1つ以上の結合又は二価の架橋基によって互いに連結され得るか又は一緒に縮合され得る。アリール基の例は、限定されないが、フェニル、アントラセニル、ナフチル、フェナントレニル、フルオレニル及びピレニルを含む。
【0070】
本明細書において使用される場合、用語「アリールオキシ」は、−O−アリール(式中、アリール基は、本明細書に定義されるとおりである)として表される一価の基を意味する。アリールオキシ基の例は、限定されないが、フェノキシ、アントラセノキシ、ナフトキシ、フェナントレノキシ及びフルオレノキシを含む。
【0071】
本明細書に記載される任意の置換基又は基は、場合により、1つ以上の炭素原子において、本明細書に記載される1つ以上の同じ又は異なる置換基で置換されていてよい。例えば、ヒドロカルビレン基は、アリール基又はアルキル基でさらに置換されていてよい。本明細書に記載される任意の置換基又は基はまた、場合により、1つ以上の炭素原子において、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br及びIなど);ニトロ(NO)、シアノ(CN)及びヒドロキシ(OH)からなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてよい。
【0072】
本明細書において使用される場合、用語「正孔キャリア化合物」は、例えば、電子デバイスにおける、正孔(すなわち、正電荷キャリア)の移動を容易にすること及び/又は電子の移動を阻止することが可能な任意の化合物を指す。正孔キャリア化合物は、電子デバイス、典型的には有機電子デバイス(例えば、有機発光デバイスなど)の正孔輸送層(HTL)、正孔注入層(HIL)及び電子阻止層(EBL)において有用な化合物を含む。
【0073】
本明細書において使用される場合、用語「ドープされた」は、正孔キャリア化合物(例えば、ポリチオフェンポリマー)に関して、正孔キャリア化合物が、ドーパントによって促進される、化学変換、典型的には酸化又は還元反応、より典型的には酸化反応を受けたことを意味する。本明細書において使用される場合、用語「ドーパント」は、正孔キャリア化合物(例えば、ポリチオフェンポリマー)を酸化又は還元する、典型的には酸化する、物質を指す。本明細書において、正孔キャリア化合物が、ドーパントによって促進される、化学変換、典型的には酸化又は還元反応、より典型的には酸化反応を受けるプロセスは、「ドーピング反応」又は単に「ドーピング」と呼ばれる。ドーピングは、ポリチオフェンポリマーの特性を変化させ、その特性は、限定されないが、電気特性(抵抗率及び仕事関数など)、機械特性及び光学特性を含み得る。ドーピング反応の過程で、正孔キャリア化合物は帯電し、そして、ドーパントは、ドーピング反応の結果として、ドープされた正孔キャリア化合物に対する逆荷電の対イオンとなる。本明細書において使用される場合、物質は、ドーパントと称されるためには、正孔キャリア化合物を化学的に反応、酸化又は還元、典型的には酸化しなければならない。正孔キャリア化合物と反応しないが対イオンとして作用し得る物質は、本開示に係るドーパントとみなされない。したがって、用語「ドープされていない」は、正孔キャリア化合物(例えば、ポリチオフェンポリマー)に関して、正孔キャリア化合物が本明細書に記載されるとおりのドーピング反応を受けていないことを意味する。
【0074】
本開示は、
(a)式(I):
【化6】

[式中、R及びRは、各々独立して、H、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ又は−O−[Z−O]−Rであり;
ここで、
Zは、場合によりハロゲン化されているヒドロカルビレン基であり、
pは、1に等しいか又はそれより大きく、そして
は、H、アルキル、フルオロアルキル又はアリールである]に従う反復単位を含むポリチオフェン;
(b)少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体;及び
(c)1つ以上の有機溶媒を含む液体担体
を含む、非水性インク組成物に関する。
【0075】
本開示に係る使用に好適なポリチオフェンは、式(I):
【化7】

[式中、R及びRは、各々独立して、H、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ又は−O−[Z−O]−Rであり;ここで、Zは、場合によりハロゲン化されているヒドロカルビレン基であり、pは、1に等しいか又はそれより大きく、そして、Rは、H、アルキル、フルオロアルキル又はアリールである]に従う反復単位を含む。
【0076】
ある実施態様において、R及びRは、各々独立して、H、フルオロアルキル、−[C(R)−C(R)−O]−R、−ORであり;ここで、各々のR、R、R及びRは、各々独立して、H、ハロゲン、アルキル、フルオロアルキル又はアリールであり;Rは、H、アルキル、フルオロアルキル又はアリールであり;pは、1、2又は3であり;そして、Rは、アルキル、フルオロアルキル又はアリールである。
【0077】
ある実施態様において、Rは、Hであり、そして、Rは、H以外である。そのような実施態様において、反復単位は、3−置換チオフェンから誘導される。
【0078】
ポリチオフェンは、レジオランダム又はレジオレギュラー化合物であることができる。その非対称構造が原因で、3−置換チオフェンの重合は、反復単位間に3つの可能な位置化学結合を含有するポリチオフェン構造の混合物を生成する。2つのチオフェン環が連結している場合に利用可能な3つの配向は、2,2’;2,5’及び5,5’カップリングである。2,2’(又はヘッド−ヘッド)カップリング及び5,5’(又はテール−テール)カップリングは、レジオランダムカップリングと称される。対照的に、2,5’(又はヘッド−テール)カップリングは、レジオレギュラーカップリングと称される。位置規則性度は、例えば、約0〜100%、又は約25〜99.9%、又は約50〜98%であることができる。位置規則性は、例えば、NMR分光学を使用するなどの当業者に公知の標準的な方法によって決定され得る。
【0079】
ある実施態様において、ポリチオフェンは、レジオレギュラーである。いくつかの実施態様において、ポリチオフェンの位置規則性は、少なくとも約85%、典型的には少なくとも約95%、より典型的には少なくとも約98%であることができる。いくつかの実施態様において、位置規則性度は、少なくとも約70%、典型的には少なくとも約80%であることができる。さらに他の実施態様において、レジオレギュラーポリチオフェンは、少なくとも約90%の位置規則性度、典型的には少なくとも約98%の位置規則性度を有する。
【0080】
3−置換チオフェンモノマー(そのようなモノマーから誘導されるポリマーを含む)は、市販されているか又は当業者に公知の方法によって製造され得る。合成法、ドーピング及びポリマーの特性決定(側基を有するレジオレギュラーポリチオフェンを含む)は、例えば、McCullough他の米国特許第6,602,974号及びMcCullough他の米国特許第6,166,172号に提供されている。
【0081】
別の実施態様において、R及びRは共に、H以外である。そのような実施態様において、反復単位は、3,4−二置換チオフェンから誘導される。
【0082】
ある実施態様において、R及びRは、各々独立して、−O[C(R)−C(R)−O]−R、又は−ORである。ある実施態様において、R及びRは共に、−O[C(R)−C(R)−O]−Rである。R及びRは、同じであっても異なっていてもよい。
【0083】
ある実施態様において、各々のR、R、R及びRは、各々独立して、H、(C−C)アルキル、(C−C)フルオロアルキル又はフェニルであり;そして、Rは、(C−C)アルキル、(C−C)フルオロアルキル又はフェニルである。
【0084】
ある実施態様において、R及びRは、各々、−O[CH−CH−O]−Rである。ある実施態様において、R及びRは、各々、−O[CH(CH)−CH−O]−Rである。
【0085】
ある実施態様において、Rは、メチル、プロピル又はブチルである。
【0086】
ある実施態様において、ポリチオフェンは、以下:
【化8】

及びそれらの組み合わせからなる群より選択される反復単位を含む。
【0087】
反復単位:
【化9】

が、構造:
【化10】

3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン[本明細書において3−MEETと称される]
によって表されるモノマーから誘導され;
反復単位:
【化11】

が、構造:
【化12】

3,4−ビス(2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン[本明細書において3,4−ジBEETと称される]
によって表されるモノマーから誘導され;
反復単位:
【化13】

が、構造:
【化14】

3,4−ビス((1−プロポキシプロパン−2−イル)オキシ)チオフェン[本明細書において3,4−ジPPTと称される]
によって表されるモノマーから誘導され;そして
反復単位:
【化15】

が、構造:
【化16】

3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)チオフェン[本明細書において3−TFETと称される]
によって表されるモノマーから誘導されることが当業者によって理解されるだろう。
【0088】
3,4−二置換チオフェンモノマー(そのようなモノマーから誘導されるポリマーを含む)は、市販されているか又は当業者に公知の方法によって製造され得る。例えば、3,4−二置換チオフェンモノマーは、3,4−ジブロモチオフェンと、式HO−[Z−O]−R又はHOR(式中、Z、R、R及びpは、本明細書に定義されるとおりである)によって与えられる化合物の金属塩(典型的には、ナトリウム塩)とを反応させることによって生成され得る。
【0089】
3,4−二置換チオフェンモノマーの重合は、最初に、3,4−二置換チオフェンモノマーの2位及び5位を臭素化して、対応する3,4−二置換チオフェンモノマーの2,5−ジブロモ誘導体を形成することによって実施され得る。次いで、ニッケル触媒の存在下での、3,4−二置換チオフェンの2,5−ジブロモ誘導体のGRIM(Grignardメタセシス)重合によってポリマーを得ることができる。そのような方法は、例えば、米国特許第8,865,025号(その全体は、参照によって本明細書に組み入れられる)に記載されている。チオフェンモノマーを重合する別の公知の方法は、有機非金属含有酸化剤(2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)など)を使用した、又は遷移金属ハロゲン化物(例えば、塩化鉄(III)、塩化モリブデン(V)及び塩化ルテニウム(III)など)を酸化剤として使用した酸化重合によるものである。
【0090】
金属塩(典型的には、ナトリウム塩)に変換されかつ3,4−二置換チオフェンモノマーを生成するために使用され得る、式HO−[Z−O]−R又はHORを有する化合物の例は、限定されないが、トリフルオロエタノール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルセロソルブ)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol PnB)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル(Dowanol DPnB)、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(フェニルカルビトール)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(Dowanol DPM)、ジイソブチルカルビノール、2−エチルヘキシルアルコール、メチルイソブチルカルビノール、エチレングリコールモノフェニルエーテル(Dowanol Eph)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(Dowanol PnP)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(Dowanol PPh)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル(プロピルカルビトール)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルカルビトール)、2−エチルヘキシルカルビトール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(Dowanol DPnP)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(Dowanol TPM)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)及びトリプロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol TPnB)を含む。
【0091】
本開示の式(I)に従う反復単位を有するポリチオフェンは、重合によるその形成に続いてさらに改変され得る。例えば、3−置換チオフェンモノマーから誘導される1つ以上の反復単位を有するポリチオフェンは、水素がある置換基(例えば、スルホン化でスルホン酸基(−SOH))に置き換わっていてよい部位を1つ以上有し得る。
【0092】
本明細書において使用される場合、用語「スルホン化されている」は、ポリチオフェンポリマーに関して、ポリチオフェンが1つ以上のスルホン酸基(−SOH)を含むことを意味する。−SOH基の硫黄原子は、ポリチオフェンポリマーの骨格及び/又は側基に直接結合され得る。本開示の目的のために、側基は、ポリマーから理論的に又は実際に除去された場合にポリマー鎖の長さを短くしない一価の基である。典型的には、−SOH基の硫黄原子は、側基ではなくポリチオフェンポリマーの骨格に直接結合している。スルホン化されているポリチオフェンポリマー及び/又はコポリマーは、当業者に公知の任意の方法を使用して製造され得る。例えば、ポリチオフェンは、ポリチオフェンをスルホン化試薬(例えば、発煙硫酸、硫酸アセチル、ピリジンSOなど)と反応させることによってスルホン化され得る。別の例では、モノマーは、スルホン化試薬を使用してスルホン化され、次いで、公知の方法及び/又は本明細書に記載される方法に従って重合され得る。スルホン酸基は、塩基性化合物、例えば、アルカリ金属水酸化物、アンモニア及びアルキルアミン(例えば、モノ−、ジ−及びトリアルキルアミン、例えば、トリエチルアミンなど)の存在下で、対応する塩又は付加体の形成をもたらし得ることが当業者によって理解されるだろう。したがって、用語「スルホン化されている」は、ポリチオフェンポリマーに関して、ポリチオフェンが1つ以上の−SOM基[式中、Mは、アルカリ金属イオン(例えば、Na、Li、K、Rb、Csなど);アンモニウム(NH)、モノ−、ジ−及びトリアルキルアンモニウム(トリエチルアンモニウムなど)であり得る]を含み得るという意味を含む。
【0093】
共役ポリマーのスルホン化及びスルホン化されている共役ポリマー(スルホン化されているポリチオフェンを含む)は、Seshadri他の米国特許第8,017,241号(参照によってその全体が本明細書に組み入れられる)に記載されている。
【0094】
ある実施態様において、ポリチオフェンは、スルホン化されている。
【0095】
ある実施態様において、ポリチオフェンは、スルホン化されているポリ(3−MEET)である。
【0096】
本開示に従って使用されるポリチオフェンポリマーは、ホモポリマー又はコポリマー(統計、ランダム、グラジエント及びブロックコポリマーを含む)であり得る。モノマーA及びモノマーBを含むポリマーについて、ブロックコポリマーは、例えば、A−Bジブロックコポリマー、A−B−Aトリブロックコポリマー、及び−(AB)−マルチブロックコポリマーを含む。ポリチオフェンは、例えば、チエノチオフェン、セレノフェン、ピロール、フラン、テルロフェン、アニリン、アリールアミン及びアリーレン(例えば、フェニレン、フェニレンビニレン及びフルオレンなど)などの他の種類のモノマーから誘導される反復単位を含み得る。
【0097】
ある実施態様において、ポリチオフェンは、式(I)に従う反復単位を、反復単位の総重量を基準にして、50%(重量)を超える、典型的には80%(重量)を超える、より典型的には90%(重量)を超える、さらにより典型的には95%(重量)を超える量で含む。
【0098】
重合において使用される出発モノマー化合物の純度に依存して、形成されたポリマーは、不純物から誘導される反復単位を含有し得ることが当業者に明らかであろう。本明細書において使用される場合、用語「ホモポリマー」は、1種類のモノマーから誘導される反復単位を含むポリマーを意味することを意図するが、不純物から誘導される反復単位を含有し得る。ある実施態様において、ポリチオフェンは、反復単位の本質的に全てが式(I)に従う反復単位である、ホモポリマーである。
【0099】
ポリチオフェンポリマーは、典型的には、約1,000〜1,000,000g/molの間の数平均分子量を有する。より典型的には、共役ポリマーは、約5,000〜100,000g/molの間の、さらにより典型的には約10,000〜約50,000g/molの間の数平均分子量を有する。数平均分子量は、当業者に公知の方法に従って、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定され得る。
【0100】
本開示の非水性インク組成物は、場合により、他の正孔キャリア化合物をさらに含み得る。
【0101】
場合による正孔キャリア化合物は、例えば、低分子量化合物又は高分子量化合物を含む。場合による正孔キャリア化合物は、非ポリマー性又はポリマー性であり得る。非ポリマー性正孔キャリア化合物は、限定されないが、架橋性及び非架橋小分子を含む。非ポリマー性正孔キャリア化合物の例は、限定されないが、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン(CAS # 65181-78-4);N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン;N,N’−ビス(2−ナフタレニル)−N−N’−ビス(フェニルベンジジン)(CAS # 139255-17-1);1,3,5−トリス(3−メチルジフェニルアミノ)ベンゼン(m−MTDABとも称される);N,N’−ビス(1−ナフタレニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン(CAS # 123847-85-8、NPB);4,4’,4’’−トリス(N,N−フェニル−3−メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATAとも称される、CAS #124729-98-2);4,4’,N,N’−ジフェニルカルバゾール(CBPとも称される、CAS # 58328-31-7);1,3,5−トリス(ジフェニルアミノ)ベンゼン;1,3,5−トリス(2−(9−エチルカルバジル−3)エチレン)ベンゼン;1,3,5−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]ベンゼン;1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン;1,4−ビス(ジフェニルアミノ)ベンゼン;4,4’−ビス(N−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニル;4,4’−ビス(N−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニル;4−(ジベンジルアミノ)ベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン;4−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン;4−(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン;4−(ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン;9−エチル−3−カルバゾールカルボキシアルデヒドジフェニルヒドラゾン;銅(II)フタロシアニン;N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン ;N,N’−ジ−[(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル]−1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ−p−トリルベンゼン−1,4−ジアミン;テトラ−N−フェニルベンジジン;チタニルフタロシアニン;トリ−p−トリルアミン;トリス(4−カルバゾイル−9−イルフェニル)アミン(TCTA);及びトリス[4−(ジエチルアミノ)フェニル]アミンを含む。
【0102】
場合によるポリマー性正孔キャリア化合物は、限定されないが、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−co−(N,N’ビス{p−ブチルフェニル}−1,4−ジアミノフェニレン)];ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−co−(N,N’−ビス{p−ブチルフェニル}−1,1’−ビフェニレン−4,4’−ジアミン)];ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−co−N−(4−ブチルフェニル)ジフェニルアミン)(TFBとも称される)及びポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン](一般に、ポリ−TPDと称される)を含む。
【0103】
他の場合による正孔キャリア化合物は、例えば、米国特許公報第2010/0292399号(2010年11月18日に公開);第2010/010900号(2010年5月6日に公開);及び第2010/0108954号(2010年5月6日に公開)に記載されている。本明細書に記載される場合による正孔キャリア化合物は、当技術分野において公知であり、市販されている。
【0104】
式(I)に従う反復単位を含むポリチオフェンは、ドープされていてもドープされていなくてもよい。
【0105】
ある実施態様において、式(I)に従う反復単位を含むポリチオフェンは、ドーパントでドープされている。ドーパントは、当技術分野において公知である。例えば、米国特許第7,070,867号;米国公報第2005/0123793号;及び米国公報第2004/0113127号を参照のこと。ドーパントは、イオン性化合物であることができる。ドーパントは、カチオン及びアニオンを含むことができる。1つ以上のドーパントを使用して、式(I)に従う反復単位を含むポリチオフェンをドープしてよい。
【0106】
イオン性化合物のカチオンは、例えば、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt又はAuであることができる。
【0107】
イオン性化合物のカチオンは、例えば、金、モリブデン、レニウム、鉄及び銀カチオンであることができる。
【0108】
いくつかの実施態様において、ドーパントは、スルホナート又はカルボキシラート(アルキル、アリール及びヘテロアリールスルホナート及びカルボキシラートを含む)を含むことができる。本明細書において使用される場合、「スルホナート」は、−SOM基[式中、Mは、H又はアルカリ金属イオン(例えば、Na、Li、K、Rb、Csなど);又はアンモニウム(NH)であり得る]を指す。本明細書において使用される場合、「カルボキシラート」は、−COM基[式中、Mは、H又はアルカリ金属イオン(例えば、Na、Li、K、Rb、Csなど);又はアンモニウム(NH)であり得る]を指す。スルホナート及びカルボキシラートドーパントの例は、限定されないが、安息香酸化合物、ヘプタフルオロブチラート、メタンスルホナート、トリフルオロメタンスルホナート、p−トルエンスルホナート、ペンタフルオロプロピオナート、及びポリマー性スルホナート、ペルフルオロスルホナート含有アイオノマーなどを含む。
【0109】
いくつかの実施態様において、ドーパントは、スルホナート又はカルボキシラートを含まない。
【0110】
いくつかの実施態様において、ドーパントは、スルホニルイミド(例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなど);アンチモナート(例えば、ヘキサフルオロアンチモナートなど);アルセナート(例えば、ヘキサフルオロアルセナートなど);リン化合物(例えば、ヘキサフルオロホスファートなど);及びボラート(例えば、テトラフルオロボラート、テトラアリールボラート及びトリフルオロボラートなど)を含み得る。テトラアリールボラートの例は、限定されないが、テトラキスペンタフルオロフェニルボラート(TPFB)などのハロゲン化テトラアリールボラートを含む。トリフルオロボラートの例は、限定されないが、(2−ニトロフェニル)トリフルオロボラート、ベンゾフラザン−5−トリフルオロボラート、ピリミジン−5−トリフルオロボラート、ピリジン−3−トリフルオロボラート及び2,5−ジメチルチオフェン−3−トリフルオロボラートを含む。
【0111】
本明細書に開示されるように、ポリチオフェンは、ドーパントでドープされることができる。ドーパントは、例えば、1つ以上の電子移動反応(例えば、共役ポリマーとの)を受けて、それによってドープされたポリチオフェンを生成する材料であることができる。ドーパントは、好適な電荷バランスの対アニオンを提供するように選択されることができる。反応は、当技術分野において公知のようにポリチオフェンとドーパントの混合によって起こることができる。例えば、ドーパントは、ポリマーからカチオン−アニオンドーパント(金属塩など)への自発的な電子移動を受けて、酸化型の共役ポリマーと、会合したアニオン及び遊離金属を残し得る。例えば、Lebedev et al., Chem. Mater., 1998, 10, 156-163 を参照のこと。本明細書に開示されるように、ポリチオフェン及びドーパントは、反応してドープされたポリマーを形成する成分を指すことができる。ドーピング反応は、電荷キャリアが生成される電荷移動反応であることができ、そして、その反応は、可逆であることも不可逆であることもできる。いくつかの実施態様において、銀イオンは、銀金属とドープされたポリマーの間で電子移動を受け得る。
【0112】
最終配合物において、組成物は、元の成分の組み合わせとは明確に異なることができる(すなわち、ポリチオフェン及び/又はドーパントは、最終組成物中に、混合前と同じ形態で存在していても存在していなくてもよい)。
【0113】
いくつかの実施態様は、ドーピングプロセスからの反応副生成物の除去を可能にする。例えば、銀などの金属を濾過によって除去することができる。
【0114】
材料を精製することで、例えば、ハロゲン及び金属を除去することができる。ハロゲンは、例えば、塩化物、臭化物及びヨウ化物を含む。金属は、例えば、ドーパントのカチオン(ドーパントのカチオンの還元型を含む)、又は触媒若しくは開始剤残渣から残った金属を含む。金属は、例えば、銀、ニッケル及びマグネシウムを含む。量は、例えば、100ppm未満、又は10ppm未満、又は1ppm未満であることができる。
【0115】
金属含有量(銀含有量を含む)は、特に50ppmより高い濃度については、ICP−MSによって測定されることができる。
【0116】
ある実施態様において、ポリチオフェンがドーパントでドープされる場合、ポリチオフェンとドーパントが混合され、ドープされたポリマー組成物が形成される。混合は、当業者に公知の任意の方法を使用して達成され得る。例えば、ポリチオフェンを含む溶液は、ドーパントを含む分離溶液と混合され得る。ポリチオフェン及びドーパントを溶解するために使用される溶媒(1つ又は複数)は、本明細書に記載される1つ以上の溶媒であり得る。反応は、当技術分野において公知のようにポリチオフェンとドーパントの混合によって起こることができる。得られたドープされたポリチオフェン組成物は、組成物を基準にして、約40%〜75%(重量)の間のポリマー及び約25%〜55%(重量)の間のドーパントを含む。別の実施態様において、ドープされたポリチオフェン組成物は、組成物を基準にして、ポリチオフェンを約50%〜65%及びドーパントを約35%〜50%含む。典型的には、ポリチオフェンの重量換算量は、ドーパントの重量換算量より高い。典型的には、ドーパントは、約0.25〜0.5m/ruの量の銀塩(テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸銀など)であることができ、ここで、mは、銀塩のモル量であり、そして、ruは、ポリマー反復単位のモル量である。
【0117】
ドープされたポリチオフェンは、当業者に公知の方法に従って、例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥及び/又は溶媒の回転蒸発によって単離され、乾燥した又は実質的に乾燥した材料(粉末など)が得られる。残留溶媒の量は、乾燥した又は実質的に乾燥した材料を基準にして、例えば、10%(重量)以下、又は5%(重量)以下、又は1%(重量)以下であることができる。乾燥した又は実質的に乾燥した粉末は、1つ以上の新しい溶媒に再分散又は再溶解されることができる。
【0118】
本開示に係るNQインク組成物は、少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体を含む。
【0119】
本明細書において、遷移金属錯体は、遷移金属が1つ以上の配位子(その少なくとも1つは、β−ジケトナート配位子である)に連結された、化合物を指す。
【0120】
遷移金属は、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、パラジウム、白金、イリジウム、オスミウム、ロジウム、ルテニウム、レニウム、バナジウム、クロム、マンガン、ニオブ、モリブデン、タングステン、タンタル、チタン、ジルコニウム、亜鉛、水銀、イットリウム、鉄及びカドミウムからなる群より選択され得る。
【0121】
本明細書において使用される場合、β−ジケトナート配位子は、対応するβ−ジケトン又は1,3−ジケトンから誘導されるエノール又はエノラートを指す。好適なβ−ジケトナート配位子の例は、限定されないが、6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオン;2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート;トリフルオロアセチルアセトナート、アセチルアセトナート(acac)、ヘキサフルオロアセチルアセトナート及びそれらの混合物を含む。
【0122】
ある実施態様において、少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体は、ルテニウム、バナジウム、モリブデン及び/又はタングステンを含む。
【0123】
別の実施態様において、少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体は、モリブデンを含む。
【0124】
ある実施態様において、少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子は、アセチルアセトナート(acac)配位子である。
【0125】
ある実施態様において、遷移金属錯体は、2つ以上のβ−ジケトナート配位子を含む。
【0126】
少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体は、他のリガンドをさらに含み得る。
【0127】
本開示に係る使用に好適な場合による配位子は、無機配位子又は有機配位子であり得る。そのような配位子はまた、単座、二座又は多座であり得る。無機単座配位子は、限定されないが、アンミン(NH)、水(HO)、アジド(N)、ハロゲノ(臭化物(Br)、塩化物(Cl)及びフッ化物(F)など)及びニトリト(NO)を含む。無機二座配位子は、限定されないが、オキソ(O)及びスルファート(SO)を含む。
【0128】
本明細書において使用される場合、有機配位子は、1つ以上の炭素原子を含む化合物であり、そして、金属(典型的には、遷移金属)と1つ以上の結合を形成することが可能である。有機配位子は、1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、N及び/又はSなど)を含み得る。好適な単座有機配位子は、限定されないが、シアン化物(CN)、カルボニル(CO)、チオシアナト(SCN)及びそれらの混合物を含む。好適な二座有機配位子は、限定されないが、β−ジケトナート、ピコリナート(pic)、置換ピコリナート、サリチリデン、8−ヒドロキシキノリナート;アミノ酸、サリチルアルデヒド及びイミノアセトナート、エチレンジアミン誘導体、アミジナート、ビフェニル、ビピリジル、フェニルピリジル、2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾチアゾール、クマリン、チエニルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、チエニルピリジン、トリルピリジン、フェニルイミン、ビニルピリジン、アリールキノリン、ピリジルナフタレン、ピリジルピロール、ピリジルイミダゾール、フェニルインドール、それらの誘導体及びそれらの混合物を含む。
【0129】
ある実施態様において、少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体は、少なくとも1つのオキソ配位子をさらに含む。
【0130】
使用され得る少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する好適な遷移金属錯体は、限定されないが、レニウムのβ−ジケトナート(Re(acac)Clなど);バナジウムのβ−ジケトナート(VO(acac)など);モリブデンのβ−ジケトナート(MoO(acac)など);及び/又はタングステンのβ−ジケトナート(WO(acac)など)を含む。そのような遷移金属錯体は、商業的に得られるか又は当業者に公知の方法を使用して合成され得る。例えば、Re(acac)Clは、公知の手順(W.D. Courrier, et al. Can. J. Chem. (1972) 50, pp. 1797-1806)に従って製造され得、そして、WO(acac)は、別の公知の手順(Yu and Holm, Inorg. Chem. (1989), vol. 28, no. 24, pp. 4385-4391)に従って製造され得る。
【0131】
ある実施態様において、少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体は、ビス(アセチルアセトナト)ジオキソモリブデン(VI)(MoO(acac))である。
【0132】
本開示に係る非水性インク組成物中の少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体の量は、非水性インク組成物中の他の固体の総重量に対する対応する遷移金属酸化物の総重量として計算した場合、約1%(重量)〜約50%(重量)、典型的には約3%(重量)〜約40%(重量)、より典型的には約5%(重量)〜約15%(重量)である。本明細書において、用語「他の固体」は、遷移金属錯体及び/又は対応する遷移金属酸化物以外の固体を指す。理論に縛られることを望むものではないが、例えば、正孔運搬薄膜を形成するためのプロセスにおいて、加熱することで、少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体が分解して、対応する遷移金属酸化物を形成すると考えられる。
【0133】
本開示の非水性インク組成物は、半金属ナノ粒子をさらに含み得る。
【0134】
本明細書において使用される場合、用語「半金属」は、金属と非金属の化学及び/又は物理学的特性の中間(又は混合)の化学及び/又は物理学的特性を有する元素を指す。本明細書において、用語「半金属」は、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)及びテルル(Te)を指す。
【0135】
本明細書において使用される場合、用語「ナノ粒子」は、ナノスケールの粒子を指し、その数平均径は、典型的には500nm未満又はそれに等しい。数平均径は、当業者に公知の技術及び装置を使用して決定され得る。例えば、透過電子顕微鏡法(TEM)が使用され得る。
【0136】
TEMは、半金属ナノ粒子の特性の中でも粒度及び粒度分布を特性決定するために使用され得る。一般に、TEMは、薄片試料に電子ビームを透過させ、結晶の格子構造を観察するのに十分に高い倍率で、電子ビームによって覆われた領域の画像を形成するよう機能する。測定試料は、好適な濃度のナノ粒子を有する分散物を特製のメッシュグリッド上で蒸着させることによって調製される。ナノ粒子の結晶品質は、電子回折パターンによって測定されることができ、ナノ粒子の粒度及び形状は、得られた顕微鏡写真で観察されることができる。典型的には、ナノ粒子の数と、画像の視野中、又は同じ試料の異なる位置における複数の画像の視野中のナノ粒子ごとの投影された2次元面積が、ImageJ(US National Iinstitutes of Health から入手可能)などの画像処理ソフトウェアを使用して決定される。測定された各ナノ粒子の投影された2次元面積Aを使用して、その円相当径、すなわち面積相当径x(ナノ粒子と同じ面積の円の直径として定義される)が計算される。円相当径は、以下の方程式によって簡単に与えられる。
【数1】
【0137】
次に、観察された画像中の全てのナノ粒子の円相当径の算術平均が計算され、本明細書において使用されるような数平均粒径に到達する。様々なTEM顕微鏡、例えば、Jeol JEM-2100F Field Emission TEM 及び Jeol JEM 2100 LaB6 TEM(JEOL USA から入手可能)が利用可能である。全てのTE顕微鏡が類似の原理で機能すること、及び標準的な手順に従って操作された場合にその結果が交換可能であることが理解される。
【0138】
本明細書に記載される半金属ナノ粒子の数平均粒径は、500nm未満若しくはそれに等しいか;250nm未満若しくはそれに等しいか;100nm未満若しくはそれに等しいか;又は50nm未満若しくはそれに等しいか;又は25nm未満若しくはそれに等しい。典型的には、半金属ナノ粒子は、約1nm〜約100nm、より典型的には約2nm〜約30nmの数平均粒径を有する。
【0139】
本開示の半金属ナノ粒子の形状又は幾何学は、数平均アスペクト比によって特性決定されることができる。本明細書において使用される場合、専門用語「アスペクト比」は、フェレ(Feret)最大長に対するフェレ最小長の比、すなわち
【数2】

を意味する。本明細書において使用される場合、最大フェレ径(xFmax)は、TEM顕微鏡写真中の粒子の2次元投影における任意の2つの平行接線間の最も離れた距離として定義される。同様に、最小フェレ径(xFmin)は、TEM顕微鏡写真中の粒子の2次元投影における任意の2つの平行接線間の最も短い距離として定義される。顕微鏡写真の視野中の各粒子のアスペクト比が計算され、そして、画像中の全ての粒子のアスペクト比の算術平均が計算され、数平均アスペクト比に到達する。一般に、本明細書に記載される半金属ナノ粒子の数平均アスペクト比は、約0.9〜約1.1、典型的には約1である。
【0140】
本開示に係る使用に好適な半金属ナノ粒子は、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、スズ(Sn)及び/又はそれらの酸化物を含み得る。好適な半金属ナノ粒子のいくつかの非限定的な特定の例は、限定されないが、B、BO、SiO、SiO、GeO、GeO、As、As、As、Sb、TeO及びそれらの混合物を含むナノ粒子を含む。
【0141】
ある実施態様において、本開示の非水性インク組成物は、B、BO、SiO、SiO、GeO、GeO、As、As、As、SnO、SnO、Sb、TeO又はそれらの混合物を含む1つ以上の半金属ナノ粒子を含む。
【0142】
ある実施態様において、本開示の非水性インク組成物は、SiOを含む1つ以上の半金属ナノ粒子を含む。
【0143】
半金属ナノ粒子は、1つ以上の有機キャッピング基を含み得る。そのような有機キャッピング基は、反応性又は非反応性であり得る。反応性有機キャッピング基は、例えば、UV照射又はラジカル開始剤の存在下で、架橋可能な有機キャッピング基である。
【0144】
ある実施態様において、半金属ナノ粒子は、1つ以上の有機キャッピング基を含む。
【0145】
好適な半金属ナノ粒子の例は、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルアセトアミド、エチレングリコール、イソプロパノール、メタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル及び酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの種々の溶媒中の分散物として利用可能なSiOナノ粒子(Nissan ChemicalによってORGANOSILICASOL(商標)として販売されている)を含む。
【0146】
本明細書に記載される非水性インク組成物において使用される半金属ナノ粒子の量は、半金属ナノ粒子とドープされた又はドープされていないポリチオフェンの合計重量に対する重量百分率として制御及び測定されることができる。ある実施態様において、半金属ナノ粒子の量は、半金属ナノ粒子とドープされた又はドープされていないポリチオフェンの合計重量に対して、1%(重量)〜98%(重量)、典型的には約2(重量)〜約95%(重量)、より典型的には約5%(重量)〜約90%(重量)、さらにより典型的には約10%(重量)〜約90%(重量)である。ある実施態様において、半金属ナノ粒子の量は、半金属ナノ粒子とドープされた又はドープされていないポリチオフェンの合計重量に対して、約20%(重量)〜約98%(重量)、典型的には約25(重量)〜約95%(重量)である。
【0147】
本開示の非水性インク組成物は、場合により、正孔注入層(HIL)又は正孔輸送層(HTL)中で有用であるとして公知の1つ以上のマトリックス化合物をさらに含み得る。
【0148】
場合によるマトリックス化合物は、より低い又はより高い分子量の化合物であることができ、本明細書に記載されるポリチオフェンとは異なる。マトリックス化合物は、例えば、ポリチオフェンとは異なる合成ポリマーであることができる。例えば、2006年8月10日に出版された米国特許公報第2006/0175582号を参照のこと。合成ポリマーは、例えば、炭素骨格を含むことができる。いくつかの実施態様において、合成ポリマーは、酸素原子又は窒素原子を含む少なくとも1つのポリマー側基を有する。合成ポリマーは、ルイス塩基であり得る。典型的には、合成ポリマーは、炭素骨格を含み、かつ25℃より高いガラス転移温度を有する。合成ポリマーはまた、25℃に等しい若しくはそれより低いガラス転移温度及び/又は25℃より高い融点を有する半結晶性又は結晶性ポリマーでもあり得る。合成ポリマーは、1つ以上の酸性基、例えば、スルホン酸基を含み得る。
【0149】
ある実施態様において、合成ポリマーは、少なくとも1つのフッ素原子及び少なくとも1つのスルホン酸(−SOH)部分によって置換されている少なくとも1つのアルキル又はアルコキシ基を含む1つ以上の反復単位を含むポリマー酸であり、ここで、前記アルキル又はアルコキシ基は、場合により、少なくとも1つのエーテル連結(−O−)基によって中断されている。
【0150】
ある実施態様において、ポリマー酸は、式(II)に従う反復単位及び式(III)に従う反復単位を含む:
【化17】

[式中、各々のR、R、R、R、R、R10及びR11は、独立して、H、ハロゲン、フルオロアルキル又はペルフルオロアルキルであり;そして、Xは、−[OC(R)−C(R)]−O−[CR]z−SOHであり、ここで、各々のR、R、R、R、R及びRは、独立して、H、ハロゲン、フルオロアルキル又はペルフルオロアルキルであり;qは、0〜10であり;そして、zは、1〜5である]
【0151】
ある実施態様において、各々のR、R、R及びRは、独立して、Cl又はFである。ある実施態様において、各々のR、R及びRは、Fであり、そして、Rは、Clである。ある実施態様において、各々のR、R、R及びRは、Fである。
【0152】
ある実施態様において、各々のR、R10及びR11は、Fである。
【0153】
ある実施態様において、各々のR、R、R、R、R及びRは、独立して、F、(C−C)フルオロアルキル又は(C−C)ペルフルオロアルキルである。
【0154】
ある実施態様において、各々のR及びRは、Fであり;qは、0であり;そして、zは、2である。
【0155】
ある実施態様において、各々のR、R及びRは、Fであり、そして、Rは、Clであり;そして、各々のR及びRは、Fであり;qは、0であり;そして、zは、2である。
【0156】
ある実施態様において、各々のR、R、R及びRは、Fであり;そして、各々のR及びRは、Fであり;qは、0であり;そして、zは、2である。
【0157】
式(III)に従う反復単位の数(「m」)に対する式(II)に従う反復単位の数(「n」)の比は、特に限定されない。n:m比は、典型的には9:1〜1:9、より典型的には8:2〜2:8である。ある実施態様において、n:m比は、9:1である。ある実施態様において、n:m比は、8:2である。
【0158】
本開示に係る使用に好適なポリマー酸は、当業者に公知の方法を使用して合成しても商業的供給源から得てもよい。例えば、式(II)に従う反復単位及び式(III)に従う反復単位を含むポリマーは、式(IIa)によって表されるモノマーと式(IIIa)によって表されるモノマーとを公知の重合法に従って共重合し、続いて、フッ化スルホニル基の加水分解によってスルホン酸基へと変換することによって製造され得る:
【化18】

[式中、Zは、−[OC(R)−C(R)]−O−[CR−SOFであり、ここで、R、R、R、R、R及びR、q及びzは、本明細書に定義されるとおりである]
【0159】
例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)又はクロロトリフルオロエチレン(CTFE)を、スルホン酸の前駆体基を含む1つ以上のフッ素化モノマー(例えば、FC=CF−O−CF−CF−SOF;FC=CF−[O−CF−CR12F−O]−CF−CF−SOF(式中、R12は、F又はCFであり、そして、qは、1〜10である);FC=CF−O−CF−CF−CF−SOF;及びFC=CF−OCF−CF−CF−CF−SOFなど)と共重合させてもよい。
【0160】
ポリマー酸の当量は、ポリマー酸中に存在する酸性基の1モル当たりのポリマー酸の質量(グラム単位)として定義される。ポリマー酸の当量は、約400〜約15,000gポリマー/酸1モル、典型的には約500〜約10,000gポリマー/酸1モル、より典型的には約500〜8,000gポリマー/酸1モル、さらにより典型的には約500〜2,000gポリマー/酸1モル、さらにより典型的には約600〜約1,700gポリマー/酸1モルである。
【0161】
そのようなポリマー酸は、例えば、E. I. DuPontによってNAFION(登録商標)という商品名で販売されているもの、Solvay Specialty PolymersによってAQUIVION(登録商標)という商品名で販売されているもの、又はAsahi Glass Co.によってFLEMION(登録商標)という商品名で販売されているものである。
【0162】
ある実施態様において、合成ポリマーは、少なくとも1つのスルホン酸(−SOH)部分を含む1つ以上の反復単位を含むポリエーテルスルホンである。
【0163】
ある実施態様において、ポリエーテルスルホンは、式(IV)に従う反復単位
【化19】

並びに式(V)に従う反復単位及び式(VI)に従う反復単位
【化20】

[式中、R12〜R20は、各々独立して、H、ハロゲン、アルキル又はSOHであるが、但し、R12〜R20の少なくとも1つは、SOHであり;そして、R21〜R28は、各々独立して、H、ハロゲン、アルキル又はSOHであるが、但し、R21〜R28の少なくとも1つは、SOHであり、そして、R29及びR30は、各々、H又はアルキルである]
からなる群より選択される反復単位を含む。
【0164】
ある実施態様において、R29及びR30は、各々、アルキルである。ある実施態様において、R29及びR30は、各々、メチルである。
【0165】
ある実施態様において、R12〜R17、R19及びR20は、各々、Hであり、そして、R18は、SOHである。
【0166】
ある実施態様において、R21〜R25、R27及びR28は、各々、Hであり、そして、R26は、SOHである。
【0167】
ある実施態様において、ポリエーテルスルホンは、式(VII):
【化21】

[式中、aは、0.7〜0.9であり、そして、bは、0.1〜0.3である]によって表される。
【0168】
ポリエーテルスルホンは、スルホン化されていてもいなくてもよい他の反復単位をさらに含み得る。
【0169】
例えば、ポリエーテルスルホンは、式(VIII):
【化22】

[式中、R31及びR32は、各々独立して、H又はアルキルである]の反復単位を含み得る。
【0170】
本明細書に記載される任意の2つ以上の反復単位は、一緒になって、反復単位を形成してもよく、そして、ポリエーテルスルホンは、そのような反復単位を含み得る。例えば、式(IV)に従う反復単位は、式(VI)に従う反復単位と結合して、式(IX):
【化23】

に従う反復単位を与え得る。
【0171】
同様に、例えば、式(IV)に従う反復単位は、式(VIII)に従う反復単位と結合して、式(X):
【化24】

に従う反復単位を与え得る。
【0172】
ある実施態様において、ポリエーテルスルホンは、式(XI):
【化25】

[式中、aは、0.7〜0.9であり、そして、bは、0.1〜0.3である]によって表される。
【0173】
少なくとも1つのスルホン酸(−SOH)部分を含む1つ以上の反復単位を含むポリエーテルスルホンは、市販されており、例えば、Konishi Chemical Ind.Co., LtdによってS-PESとして販売されているスルホン化されているポリエーテルスルホンである。
【0174】
場合によるマトリックス化合物は、平坦化剤であることができる。マトリックス化合物又は平坦化剤は、例えば、ポリマー又はオリゴマー、例えば、有機ポリマー(ポリ(スチレン)若しくはポリ(スチレン)誘導体;ポリ(酢酸ビニル)若しくはその誘導体;ポリ(エチレングリコール)若しくはその誘導体;ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル);ポリ(ピロリドン)若しくはその誘導体(例えば、ポリ(1−ビニルピロリドン−co−酢酸ビニル));ポリ(ビニルピリジン)若しくはその誘導体;ポリ(メチルメタクリラート)若しくはその誘導体;ポリ(ブチルアクリラート);ポリ(アリールエーテルケトン);ポリ(アリールスルホン);ポリ(エステル)若しくはその誘導体;又はそれらの組み合わせなど)から構成され得る。
【0175】
ある実施態様において、マトリックス化合物は、ポリ(スチレン)又はポリ(スチレン)誘導体である。
【0176】
ある実施態様において、マトリックス化合物は、ポリ(4−ヒドロキシスチレン)である。
【0177】
場合によるマトリックス化合物又は平坦化剤は、例えば、少なくとも1つの半導体(semiconducting)マトリックス成分から構成され得る。半導体マトリックス成分は、本明細書に記載されるポリチオフェンとは異なる。半導体マトリックス成分は、典型的には主鎖及び/又は側鎖に正孔運搬単位を含む反復単位から構成される、半導体小分子又は半導体ポリマーであることができる。半導体マトリックス成分は、中性型であってもドープされていてもよく、典型的には、トルエン、クロロホルム、アセトニトリル、シクロヘキサノン、アニソール、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、安息香酸エチル及びそれらの混合物などの有機溶媒に可溶性及び/又は分散性である。
【0178】
場合によるマトリックス化合物の量は、ドープされた又はドープされていないポリチオフェンの量に対する重量百分率として制御又は測定されることができる。ある実施態様において、場合によるマトリックス化合物の量は、ドープされた又はドープされていないポリチオフェンの量に対して、0〜99.5%(重量)、典型的には約10(重量)〜約98%(重量)、より典型的には約20%(重量)〜約95%(重量)、さらにより典型的には約25%(重量)〜約45%(重量)である。0%(重量)である実施態様において、インク組成物は、マトリックス化合物を含有しない。
【0179】
本開示のインク組成物は、非水性である。本明細書において使用される場合、「非水性」は、本開示のインク組成物中に存在する水の総量が、液体担体の総量に対して、0〜5%(重量)であることを意味する。典型的には、インク組成物中の水の総量は、液体担体の総量に対して、0〜2%(重量)、より典型的には0〜1%(重量)、さらにより典型的には0〜0.5%(重量)である。ある実施態様において、本開示のインク組成物はいかなる水も含有しない。
【0180】
本開示の非水性インク組成物は、場合により、1つ以上のアミン化合物を含み得る。本開示の非水性インク組成物における使用のための好適なアミン化合物は、限定されないが、エタノールアミン及びアルキルアミンを含む。
【0181】
好適なエタノールアミンの例は、ジメチルエタノールアミン[(CHNCHCHOH]、トリエタノールアミン[N(CHCHOH)]及びN−tert−ブチルジエタノールアミン[t−CN(CHCHOH)]を含む。
【0182】
アルキルアミンは、第一級、第二級及び第三級アルキルアミンを含む。第一級アルキルアミンの例は、例えば、エチルアミン[CNH]、n−ブチルアミン[CNH]、t−ブチルアミン[CNH]、n−ヘキシルアミン[CH1NH]、n−デシルアミン[C1021NH]及びエチレンジアミン[HNCHCHNH]を含む。第二級アルキルアミンは、例えば、ジエチルアミン[(CNH]、ジ(n−プロピルアミン)[(n−CNH]、ジ(イソ−プロピルアミン)[(i−CNH]及びジメチルエチレンジアミン[CHNHCHCHNHCH]を含む。第三級アルキルアミンは、例えば、トリメチルアミン[(CHN]、トリエチルアミン[(CN]、トリ(n−ブチル)アミン[(CN]、ジエチルメチルアミン[CNCH]、ジメチルエチルアミン[(CHNC]及びテトラメチルエチレンジアミン[(CHNCHCHN(CH]を含む。
【0183】
ある実施態様において、アミン化合物は、第三級アルキルアミンである。ある実施態様において、アミン化合物は、トリエチルアミンである。
【0184】
アミン化合物の量は、インク組成物の総量に対する重量百分率として制御及び測定されることができる。ある実施態様において、アミン化合物の量は、インク組成物の総量に対して、少なくとも0.01%(重量)、少なくとも0.10%(重量)、少なくとも1.00%(重量)、少なくとも1.50%(重量)、又は少なくとも2.00%(重量)である。ある実施態様において、アミン化合物の量は、インク組成物の総量に対して、約0.01〜約2.00%(重量)、典型的には約0.05%(重量)〜約1.50%(重量)、より典型的には約0.1%(重量)〜約1.0%(重量)である。
【0185】
本開示に係るインク組成物中で使用される液体担体は、1つ以上の有機溶媒を含む。ある実施態様において、インク組成物は、1つ以上の有機溶媒から本質的になる又はなる。液体担体は、アノード又は発光層などのデバイス中の他の層との使用及びプロセシングに適合された有機溶媒又は溶媒ブレンド(2つ以上の有機溶媒を含む)であり得る。
【0186】
液体担体中での使用に好適な有機溶媒は、限定されないが、脂肪族及び芳香族ケトン、有機硫黄溶媒(ジメチルスルホキシド(DMSO)及び2,3,4,5−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド(テトラメチレンスルホン;スルホラン)など)、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、テトラメチルウレア(TMU)、N,N’−ジメチルプロピレンウレア、アルキル化ベンゼン(キシレン及びその異性体など)、ハロゲン化ベンゼン、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジクロロメタン、アセトニトリル、ジオキサン、酢酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸メチル、炭酸ジメチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、3−メトキシプロピオニトリル、3−エトキシプロピオニトリル又はそれらの組み合わせを含む。
【0187】
脂肪族及び芳香族ケトンは、限定されないが、アセトン、アセトニルアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、メチルイソブテニルケトン、2−ヘキサノン、2−ペンタノン、アセトフェノン、エチルフェニルケトン、シクロヘキサノン及びシクロペンタノンを含む。いくつかの実施態様において、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びアセトンなどの、ケトンのアルファ位に位置する炭素上にプロトンを有するケトンは回避される。
【0188】
完全に若しくは部分的にポリチオフェンポリマーを可溶化するか又はポリチオフェンポリマーを膨潤させる、他の有機溶媒もまた考慮され得る。そのような他の溶媒は、湿潤性、粘性、形態の制御などのインク特性を改変するために、液体担体中に種々の量で含まれ得る。液体担体は、ポリチオフェンポリマーに対して非溶媒として作用する1つ以上の有機溶媒をさらに含み得る。
【0189】
本開示に係る使用に好適な他の有機溶媒は、エーテル、例えば、アニソール、エトキシベンゼン、ジメトキシベンゼン及びグリコールエーテル、例えば、エチレングリコールジエーテル(1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン及び1,2−ジブトキシエタンなど);ジエチレングリコールジエーテル(ジエチレングリコールジメチルエーテル及びジエチレングリコールジエチルエーテルなど);プロピレングリコールジエーテル(プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル及びプロピレングリコールジブチルエーテルなど);ジプロピレングリコールジエーテル(ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル及びジプロピレングリコールジブチルエーテルなど);並びに本明細書に言及されるエチレングリコール及びプロピレングリコールエーテルのより高次の類似体(すなわち、トリ−及びテトラ−類似体)、例えば、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等を含む。
【0190】
エチレングリコールモノエーテルアセタート及びプロピレングリコールモノエーテルアセタートなど(グリコールエステルエーテル類)のさらに他の溶媒を考慮することができ、ここで、エーテルは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル及びシクロヘキシルから選択されることができる。また、上記リストのより高次のグリコールエーテル類似体(ジ−、トリ−及びテトラ−など)を含む。
【0191】
例は、限定されないが、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート、2−エトキシエチルアセタート、2−ブトキシエチルアセタート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む。
【0192】
エチレングリコールジアセテートなど(グリコールジエステル類)のさらに他の溶媒を考慮することができ、また、より高次のグリコールエーテル類似体(ジ−、トリ−及びテトラ−など)を含む。
【0193】
例は、限定されないが、エチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート及びプロピレングリコールジアセタートを含む。
【0194】
例えば、メタノール、エタノール、トリフルオロエタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール及びt−ブタノール、ジオール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール及び1,4−ブタンジオールなど);及びアルキレングリコールモノエーテル(グリコールモノエーテル類)などのアルコールもまた液体担体中での使用に考慮され得る。好適なグリコールモノエーテルの例は、限定されないが、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルセロソルブ)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol PnB)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル(Dowanol DPnB)、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(フェニルカルビトール)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(Dowanol DPM)、ジイソブチルカルビノール、2−エチルヘキシルアルコール、メチルイソブチルカルビノール、エチレングリコールモノフェニルエーテル(Dowanol Eph)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(Dowanol PnP)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(Dowanol PPh)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル(プロピルカルビトール)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルカルビトール)、2−エチルヘキシルカルビトール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(Dowanol DPnP)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(Dowanol TPM)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)及びトリプロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol TPnB)を含む。
【0195】
本明細書に開示されるように、本明細書に開示される有機溶媒は、例えば、基板湿潤性、溶媒除去の容易性、粘性、表面張力及び出射性などのインク特性を改善するために、液体担体中に種々の割合で使用されることができる。
【0196】
いくつかの実施態様において、非プロトン非極性溶媒の使用は、プロトンに感受性であるエミッター技術を備えるデバイス(例えば、PHOLEDなど)の寿命を延ばす追加の利益を提供することができる。
【0197】
ある実施態様において、液体担体は、1,3−ブタンジオール、アセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール(グリコール類)、テトラメチルウレア又はそれらの混合物を含む。
【0198】
好適なグリコール類の例は、限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール及びトリエチレングリコール等が挙げられる。
【0199】
上記、グリコールエーテル類、グリコールエステルエーテル類、グリコールジエステル類、グリコールモノエーテル類およびグリコール類を総称して、「グリコール系溶媒」とする。
【0200】
ある実施態様において、液体担体は、1種以上のグリコール系溶媒(A)からなる。
【0201】
ある実施態様において、液体担体は、1種以上のグリコール系溶媒(A)と、グリコール系溶媒を除く1種以上の有機溶媒(B)とを含む。
【0202】
ある実施態様において、液体担体は、1種以上のグリコール系溶媒と、グリコール系溶媒、テトラメチル尿素およびジメチルスルホキシドを除く1種以上の有機溶媒(B’)とを含む液体担体である。
【0203】
好ましいグリコール系溶媒(A)として、グリコールエーテル類、グリコールモノエーテル類およびグリコール類が挙げられ、これらは組み合わせて用いることができる。
【0204】
例には、限定されないが、グリコールエーテルとグリコールの混合物が含まれる。
【0205】
具体例としては、上述のグリコールエーテル類およびグリコール類の具体例が挙げられる。好ましいグリコールエーテル類の例には、トリエチレングリコールジメチルエーテルおよびトリエチレングリコールブチルメチルエーテルが含まれる。好ましいグリコール類の例には、エチレングリコールおよびジエチレングリコールが含まれる。
【0206】
前記有機溶媒(B)の例として、ニトリル類、アルコール類、芳香族エーテル類および芳香族炭化水素類が挙げられる。
【0207】
例には、限定されないが、ニトリル類として、メトキシプロピオニトリルおよびエトキシプロピオニトリル;アルコール類として、ベンジルアルコールおよび2−(ベンジルオキシ)エタノール;芳香族エーテル類として、メチルアニソール、ジメチルアニソール、エチルアニソール、ブチルフェニルエーテル、ブチルアニソール、ペンチルアニソール、ヘキシルアニソール、ヘプチルアニソール、オクチルアニソールおよびフェノキシトルエン;芳香族炭化水素類として、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、シクロヘキシルベンゼンおよびテトラリンが含まれる。
【0208】
前記グリコール系溶媒(A)の重量比wtAと、前記有機溶媒(B)の重量比wtB(重量)とが、下記式(1−1)で表される関係を満たすことが好ましく、下記式(1−2)で表される関係を満たすことがより好ましく、下記式(1−3)で表される関係を満たすことが最も好ましい。
0.05≦wtB/(wtA+wtB)≦0.50 (1−1)
0.10≦wtB/(wtA+wtB)≦0.40 (1−2)
0.15≦wtB/(wtA+wtB)≦0.30 (1−3)
【0209】
本発明の組成物がグリコール系溶媒(A)を2種以上含有する場合、wtAは、グリコール系溶媒(A)の合計の重量比を示し、有機溶媒(B)を2種以上含有する場合、wtBは、有機溶媒(B)の合計の重量比を示す。
【0210】
前記グリコール系溶媒(A)の重量比wtAと、前記有機溶媒(B’)の重量比wtB’(重量)とが、下記式(1−1)で表される関係を満たすことが好ましく、下記式(1−2)で表される関係を満たすことがより好ましく、下記式(1−3)で表される関係を満たすことが最も好ましい。
0.05≦wtB’/(wtA+wtB’)≦0.50 (1−1)
0.10≦wtB’/(wtA+wtB’)≦0.40 (1−2)
0.15≦wtB’/(wtA+wtB’)≦0.30 (1−3)
【0211】
本発明の組成物がグリコール系溶媒(A)を2種以上含有する場合、wtAは、グリコール系溶媒(A)の合計の重量比を示し、有機溶媒(B’)を2種以上含有する場合、wtBは、有機溶媒(B’)の合計の重量比を示す。
【0212】
本開示に係るインク組成物中の液体担体の量は、インク組成物の総量に対して、約50%(重量)〜約99%(重量)、典型的には約75%(重量)〜約98%(重量)、さらにより典型的には約90%(重量)〜約95%(重量)である。
【0213】
本開示に係るインク組成物中の総固体含有量(TS%)は、インク組成物の総量に対して、約0.1%(重量)〜約50%(重量)、典型的には約0.3%(重量)〜約40%(重量)、より典型的には約0.5%(重量)〜約15%(重量)、さらにより典型的には約1%(重量)〜約5%(重量)である。
【0214】
本明細書に記載される非水性インク組成物は、当業者に公知の任意の好適な方法に従って調製され得る。例えば、1つの方法では、本明細書に記載されるポリチオフェンの水性分散物を、ポリマー酸の水性分散物(所望であれば別のマトリックス化合物、さらに所望であれば追加の溶媒)と混合することによって最初の水性混合物を調製する。次いで、典型的には蒸発によって、混合物中の溶媒(水を含む)を除去する。次いで、得られた乾燥生成物を、1つ以上の有機溶媒(ジメチルスルホキシドなど)中に溶解又は分散させ、加圧下で濾過して、非水性混合物を生成する。そのような非水性混合物にアミン化合物を場合により加えてもよい。次いで、非水性混合物を半金属ナノ粒子の非水性分散物と混合することで、最終非水性インク組成物を生成する。
【0215】
別の方法では、ストック溶液から本明細書に記載される非水性インク組成物が調製され得る。例えば、本明細書に記載されるポリチオフェンのストック溶液を、典型的には蒸発によって、水性分散物からポリチオフェンを乾燥形態で単離することによって調製することができる。次いで、乾燥したポリチオフェンを、1つ以上の有機溶媒と、場合により、アミン化合物と組み合わせる。所望であれば、本明細書に記載されるポリマー酸のストック溶液を、典型的には蒸発、凍結乾燥又は噴霧乾燥によって、水性分散物からポリマー酸を乾燥形態で単離することによって調製することができる。次いで、乾燥したポリマー酸を1つ以上の有機溶媒と組み合わせる。他の場合によるマトリックス材料のストック溶液を同様に製造することができる。半金属ナノ粒子のストック溶液を、例えば、市販されている分散物を1つ以上の有機溶媒(市販の分散物中に含有される溶媒(1つ又は複数)と同じであっても異なっていてもよい)で希釈することによって製造することができる。次いで、所望の量の各ストック溶液を組み合わせて、本開示の非水性インク組成物を形成する。
【0216】
さらに別の方法では、個々の成分を、本明細書に記載されるとおりに乾燥形態で単離するが、ストック溶液を調製する代わりに、乾燥形態の成分を組み合わせ、次いで、1つ以上の有機溶媒中に溶解させて、NQインク組成物を提供することにより、本明細書に記載される非水性インク組成物を調製してもよい。
【0217】
本開示に係る非水性インク組成物を、基板上の薄膜として、キャスティング及びアニーリングすることができる。
【0218】
したがって、本開示はまた、正孔運搬薄膜を形成するための方法であって、
1)本明細書に開示される非水性インク組成物で基板をコーティングする工程;及び
2)基板上のコーティングをアニーリングして、それによって正孔運搬薄膜を形成する工程
を含む方法に関する。
【0219】
基板上へのインク組成物のコーティングは、当技術分野において公知の方法(例えば、スピンキャスティング、スピンコーティング、ディップキャスティング、ディップコーティング、スロットダイコーティング、インクジェットプリンティング、グラビアコーティング、ドクターブレーディング及び例えば有機電子デバイスの作製のための当技術分野において公知の任意の他の方法を含む)によって実施されることができる。
【0220】
基板は、柔軟又は剛直な有機物又は無機物であることができる。好適な基板化合物は、例えば、ガラス(例えば、ディスプレイガラスを含む)、セラミック、金属及びプラスチック薄膜を含む。
【0221】
本明細書において使用される場合、用語「アニーリング」は、本開示の非水性インク組成物でコーティングされた基板上に硬化層(典型的には薄膜)を形成するための任意の一般的なプロセスを指す。一般的なアニーリングプロセスは、当業者に公知である。典型的には、溶媒は、非水性インク組成物でコーティングされた基板から除去される。溶媒の除去は、例えば、コーティングされた基板を大気圧未満の圧力に供し、かつ/又は基板上に積層されたコーティングを特定の温度(アニーリング温度)に加熱し、その温度を特定期間(アニーリング時間)維持し、次いで、得られた層(典型的には薄膜)を室温まで冷却することによって達成され得る。
【0222】
アニーリングの工程は、インク組成物でコーティングされた基板を、当業者に公知の任意の方法を使用して加熱することによって、例えば、オーブン中又はホットプレート上で加熱することによって実施されることができる。アニーリングは、不活性環境下、例えば、窒素雰囲気下又は希ガス(例えば、アルゴンガスなど)雰囲気下で実施されることができる。アニーリングは、大気雰囲気中で実施され得る。
【0223】
理論に縛られることを望むものではないが、遷移金属錯体の添加が、式(I)に従う反復単位を含むポリチオフェンを熱的に安定化させ、それによって、例えば、300℃を超える温度での高温焼き付けを容易にすると考えられる。
【0224】
ある実施態様において、アニーリング温度は、約25℃〜約330℃、典型的には約150℃〜約320℃、さらにより典型的には約230℃〜約300℃、なおより典型的には約230℃〜約275℃である。
【0225】
アニーリング時間は、アニーリング温度が維持される時間である。アニーリング時間は、約3〜約40分間、典型的には約15〜約30分間である。
【0226】
ある実施態様において、アニーリング温度は、約25℃〜約330℃、典型的には約150℃〜約320℃、さらにより典型的には約230℃〜約300℃、なおより典型的には約230℃〜約275℃であり、アニーリング時間は、約3〜約40分間、典型的には約15〜約30分間である。
【0227】
本開示は、本明細書に記載される方法によって形成される正孔運搬薄膜に関する。
【0228】
可視光の透過が重要であり、より厚い薄膜厚における良好な透過(低吸収)が特に重要である。例えば、本開示の方法に従って製造された薄膜は、約380〜800nmの波長を有する光の少なくとも約85%、典型的には少なくとも約90%の透過率(典型的には、基板付きの状態での)を示すことができる。ある実施態様において、透過率は、少なくとも約90%である。
【0229】
1つの実施態様において、本開示の方法に従って製造された薄膜は、約5nm〜約500nm、典型的には約5nm〜約150nm、より典型的には約30nm〜120nmの厚さを有する。
【0230】
ある実施態様において、本開示の方法に従って製造された薄膜は、少なくとも約90%の透過率を示し、約5nm〜約500nm、典型的には約5nm〜約150nm、より典型的には約30nm〜120nmの厚さを有する。ある実施態様において、本開示の方法に従って製造された薄膜は、少なくとも約90%の透過率(T%)を示し、約30nm〜120nmの厚さを有する。
【0231】
本開示の方法に従って製造された薄膜は、最終デバイスの電子特性を改善するために使用される電極又は追加の層を場合により含有する基板上に製造され得る。得られた薄膜は、1つ以上の有機溶媒(その後デバイスの作製の間にコーティング又は蒸着される層のためのインク中の液体担体として使用される溶媒(1つ又は複数)であることができる)に抵抗性であり得る。薄膜は、例えば、トルエン(その後デバイスの作製の間にコーティング又は蒸着される層のためのインク中の溶媒であることができる)に抵抗性であり得る。
【0232】
PESA−AC2法によって測定した、本開示に係る正孔運搬薄膜の仕事関数は、少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体を含有しない対応する正孔運搬薄膜よりも少なくとも0.01eV、少なくとも0.10eV、少なくとも0.15eV、少なくとも0.20eV、少なくとも0.25eV、又は少なくとも0.30eV大きい。
【0233】
本明細書において使用されるとおり及び当業者に一般的に理解されるように、「HOMO」は最高被占軌道を指し、「LUMO」は最低空軌道を指す。第一のHOMO又はLUMOエネルギー準位は、第一のエネルギー準位が真空エネルギー準位により近ければ、第二のHOMO又はLUMOエネルギー準位よりも大きい又は高い。イオン化ポテンシャル(IP)は、真空準位に対して負のエネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有するIP(より低度に負のIP)に相当する。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有する電子親和力(EA)(より低度に負のEA)に相当する。最上部に真空準位がある従来のエネルギー準位ダイアグラムでは、材料のLUMOエネルギー準位は、同じ材料のHOMOエネルギー準位よりも高い。同様に、仕事関数は、真空準位に対して負のエネルギーとして測定され、すなわち、より高い仕事関数は、より小さい絶対値(より低度に負の)に相当する。
【0234】
本明細書において、しかしながら、HOMOエネルギー、LUMOエネルギー及び仕事関数は、絶対値として報告される。したがって、例えば、仕事関数を「増加させること」は、仕事関数の絶対値を増加させることを意味し、そして、仕事関数がより高度に負である、より深い又は真空準位からさらに遠いことに相当する。したがって、語句「より大きい(greater than)」は、仕事関数(並びにHOMO及びLUMOエネルギー)に関して、比較すると仕事関数がより高度に負であることを意味する。
【0235】
本明細書に記載されるNQインクから製造した薄膜の仕事関数は、当業者に公知の方法及び装置によって決定され得る。例えば、Riken Keiki Co. Ltd.(Japan)から入手可能な「Photo-Electron Spectroscopy in Air」(PESA)AC−2装置が使用され得る。一般に、PESA AC−2法は、試料表面から光電子放出が起こる時点でのUV光子のエネルギーを測定することを含む。UV光子のエネルギーは、所定の範囲、典型的には、4.2eV〜6.2eV内で走査される。UV光子のエネルギーが使用材料の仕事関数又はHOMOに近づくと、試料表面から光電子放出が起こる。光電子が検出及び計数される。半導体に関して、光子エネルギーと光電子収率の立方根との間の関係は、直線である。バックグラウンドラインと収率ラインの交差点は、光子放出の閾値エネルギーである。
【0236】
ある実施態様において、PESA−AC2法によって測定した、本開示に係る正孔運搬薄膜の仕事関数は、5.36eVより大きく、典型的には5.45eVより大きい。
【0237】
ある実施態様において、本開示に係る正孔運搬薄膜の仕事関数は、約5.36eV〜約5.70eV、典型的には約5.45eV〜約5.60eVである。
【0238】
本開示はまた、本明細書に記載される方法に従って調製された薄膜を含むデバイスに関する。本明細書に記載されるデバイスは、当業者に公知の方法(例えば、溶液加工を含む)によって製造されることができる。標準的な方法によって、インクを適用し、溶媒を除去することができる。本明細書に記載される方法に従って調製された薄膜は、デバイス中のHIL及び/又はHTL層であり得る。
【0239】
有機電子デバイス(例えば、OLED及びOPVデバイスを含む)を作製するための方法は、当技術分野において公知であり、これを使用することができる。当技術分野において公知の方法を使用して、輝度、効率及び寿命を測定することができる。有機発光ダイオード(OLED)は、例えば、米国特許第4,356,429号及び第4,539,507号(Kodak)に記載されている。光を放射する導電性ポリマーは、例えば、米国特許第5,247,190号及び第5,401,827号(Cambridge Display Technologies)に記載されている。デバイスアーキテクチャ、物理的原理、溶液加工、多層化、ブレンド、並びに化合物の合成及び配合は、Kraft et al., “Electroluminescent Conjugated Polymers-Seeing Polymers in a New Light,” Angew. Chem. Int. Ed., 1998, 37, 402-428(参照によってその全体が本明細書に組み入れられる)に記載されている。
【0240】
種々の導電性ポリマー並びに有機分子、例えば、Sumation、Merck Yellow、Merck Blue、American Dye Sources(ADS)、Kodak(例えば、ALQ3など)、さらにAldrichから入手可能な化合物(BEHP-PPVなど)などを含む、当技術分野において公知でありかつ市販されている発光体を使用することができる。そのような有機エレクトロルミネッセント化合物の例は、以下を含む:
【0241】
(i)ポリ(p−フェニレンビニレン)及びフェニレン部分上の種々の位置で置換されているその誘導体;
【0242】
(ii)ポリ(p−フェニレンビニレン)及びビニレン部分上の種々の位置で置換されているその誘導体;
【0243】
(iii)ポリ(p−フェニレンビニレン)及びフェニレン部分上の種々の位置で置換されておりかつビニレン部分上の種々の位置でも置換されているその誘導体;
【0244】
(iv)ポリ(アリーレンビニレン)(ここで、アリーレンは、ナフタレン、アントラセン、フリレン、チエニレン、オキサジアゾールなどの部分であり得る);
【0245】
(v)ポリ(アリーレンビニレン)の誘導体(ここで、アリーレンは、上記(iv)のとおりであり得、加えて、アリーレン上の種々の位置に置換基を有し得る);
【0246】
(vi)ポリ(アリーレンビニレン)の誘導体(ここで、アリーレンは、上記(iv)のとおりであり得、加えてビニレン上の種々の位置に置換基を有し得る);
【0247】
(vii)ポリ(アリーレンビニレン)の誘導体(ここで、アリーレンは、上記(iv)のとおりであり得、加えて、アリーレン上の種々の位置に置換基及びビニレン上の種々の位置に置換基を有し得る);
【0248】
(viii)(iv)、(v)、(vi)及び(vii)のようなアリーレンビニレンオリゴマーと非共役オリゴマーとのコポリマー;並びに
【0249】
(ix)ラダーポリマー誘導体(例えば、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)など)を含む、ポリ(p−フェニレン)及びフェニレン部分上の種々の位置で置換されているその誘導体;
【0250】
(x)ポリ(アリーレン)(ここで、アリーレンは、ナフタレン、アントラセン、フリレン、チエニレン、オキサジアゾールなどの部分であり得る);及びアリーレン部分上の種々の位置で置換されているそれらの誘導体;
【0251】
(xi)(x)のようなオリゴアリーレンと非共役オリゴマーとのコポリマー;
【0252】
(xii)ポリキノリン及びその誘導体;
【0253】
(xiii)ポリキノリンと、溶解性を提供するためにフェニレン上が、例えば、アルキル又はアルコキシ基で置換されているp−フェニレンとのコポリマー;並びに
【0254】
(xiv)剛性ロッドポリマー、例えば、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスチアゾール)、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾイミダゾール)及びそれらの誘導体;
【0255】
(xv)ポリフルオレンポリマー及びポリフルオレン単位とのコポリマー。
【0256】
好ましい有機発光ポリマーは、緑色、赤色、青色若しくは白色光を放射するSUMATION発光ポリマー(「LEP」)又はそれらのファミリー、コポリマー、誘導体若しくはそれらの混合物を含み;SUMATION LEPは、Sumation KKから入手可能である。他のポリマーは、Covion Organic Semiconductors GmbH, Frankfurt, Germany(現在は、Merck(登録商標)により買収済み)から入手可能なポリスピロフルオレン様ポリマーを含む。
【0257】
代替的に、ポリマー以外に、蛍光又はリン光によって放射する小有機分子が有機エレクトロルミネッセント層として役立つことができる。小分子有機エレクトロルミネッセント化合物の例は、以下を含む:(i)トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq);(ii)1,3−ビス(N,N−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4−オキシダゾール(OXD−8);(iii)−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリナト)アルミニウム;(iv)ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム;(v)ビス(ヒドロキシベンゾキノリナト)ベリリウム(BeQ);(vi)ビス(ジフェニルビニル)ビフェニレン(DPVBI);及び(vii)アリールアミン置換ジスチリルアリーレン(DSAアミン)。
【0258】
そのようなポリマー及び小分子化合物は、当技術分野において周知であり、例えば、米国特許第5,047,687号に記載されている。
【0259】
本デバイスは、多くの場合、例えば、溶液加工又は真空加工、並びにプリンティング及びパターニング加工によって調製することができる多層構造体を使用して作製されることができる。特に、本組成物が正孔注入層としての使用のために配合される、本明細書に記載される実施態様の正孔注入層(HIL)のための使用を効果的に実施することができる。
【0260】
デバイス中のHILの例は、以下を含む:
【0261】
1)PLED及びSMOLEDを含むOLED中の正孔注入;例えば、PLED中のHILに関しては、共役が炭素又はケイ素原子を伴う共役ポリマー発光体の全てのクラスを使用することができる。SMOLED中のHILに関しては、以下が例である:蛍光発光体を含有するSMOLED;リン光発光体を含有するSMOLED;HIL層に加えて1つ以上の有機層を含有するSMOLED;及び小分子層が溶液若しくはエアロゾルスプレー又は任意の他の加工法から加工されるSMOLED。加えて、他の例は、次のものを含む:デンドリマー又はオリゴマー有機半導体ベースOLED中のHIL;HILが電荷注入を改変するために又は電極として使用される二極性発光FET中のHIL;
【0262】
2)OPV中の正孔抽出層;
【0263】
3)トランジスタ中のチャンネル材料;
【0264】
4)ロジックゲートなどのトランジスタの組み合わせを含む回路中のチャンネル材料;
【0265】
5)トランジスタ中の電極材料;
【0266】
6)キャパシタ中のゲート層;
【0267】
7)ドーピングレベルの改変が導電性ポリマーによって感知される種の会合に起因して達成される、化学センサー;
【0268】
8)バッテリー中の電極又は電解質材料。
【0269】
様々な光活性層をOPVデバイス中に使用することができる。光起電力デバイスは、例えば、米国特許第5,454,880号;第6,812,399号;及び第6,933,436号に記載されているように、例えば、導電性ポリマーと混合されたフラーレン誘導体を含む光活性層を用いて調製されることができる。光活性層は、導電性ポリマーのブレンド、導電性ポリマーと半導体ナノ粒子のブレンド、並びにフタロシアニン(pthalocyanine)、フラーレン及びポルフィリンなどの小分子の二重層を含み得る。
【0270】
一般的な電極化合物及び基板、並びに封入化合物を使用することができる。
【0271】
1つの実施態様において、カソードは、Au、Ca、Al、Ag又はそれらの組み合わせを含む。1つの実施態様において、アノードは、酸化インジウムスズを含む。1つの実施態様において、発光層は、少なくとも1つの有機化合物を含む。
【0272】
界面改変層(例えば、中間層など)及び光学スペーサー層を使用してよい。
【0273】
電子輸送層を使用することができる。
【0274】
ある実施態様において、本開示に係るデバイスは、OLED、OPV、トランジスタ、キャパシタ、センサー、変換器、薬物放出デバイス、エレクトロクロミックデバイス又はバッテリーデバイスである。
【0275】
ある実施態様において、デバイスは、正孔輸送層をさらに含むOLEDである。
【0276】
別の実施態様において、正孔輸送層は、トリス(4−カルバゾイル−9−イルフェニル)アミンを含む。
【0277】
本開示は、有機発光デバイス中の正孔運搬薄膜の仕事関数を増加させるための、少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体の使用にさらに関し、ここで、正孔運搬薄膜は、本明細書に記載されるとおり、式(I)に従う反復単位を含むポリチオフェンを含む。
【0278】
ある実施態様において、PESA−AC2法によって測定した正孔運搬薄膜の仕事関数は、少なくとも1つのβ−ジケトナート配位子を有する遷移金属錯体を含有しない対応する正孔運搬薄膜と比較して、少なくとも0.01eV、少なくとも0.10eV、少なくとも0.15eV、少なくとも0.20eV、少なくとも0.25eV、又は少なくとも0.30eVだけ増加する。
【0279】
本開示に係るインク、方法及びプロセス、薄膜並びにデバイスを、以下の非限定的な実施例によってさらに例示する。
【実施例】
【0280】
以下の実施例において使用される成分を、以下の表1にまとめる。
【表1】
【0281】
実施例1.ベースNQインクの調製
S−ポリ(3−MEET)の水性分散物(水中0.598%固体分)500gとTEA0.858gとを混合することによってS−ポリ(3−MEET)アミン付加体を調製した。得られた混合物を回転蒸発して乾固し、次いで、真空オーブン中にて50℃で一晩さらに乾燥させた。生成物を黒色の粉末3.8gとして単離し、グローブボックス中にて不活性雰囲気下で保存した。
【0282】
固体S−ポリ(3−MEET)アミン付加体0.434gと、BDO 31.53g、PCN 47.29g、ACN 9.55g、EG 5.05g及びTEA 1.12gとを組み合わせることによって、ベース非水性(NQ)インク(NQインク1と呼ぶ)を調製した。この組み合わせを撹拌プレート上にて周囲温度で30分間混合した。次に、TFE−VEFS1 0.30gを、70℃で20分間撹拌することによって、ACN 14.70gに溶解した。S−ポリ(3−MEET)アミン付加体混合物に、TFE−VEFS1溶液を加え、続いて、周囲温度で1時間撹拌した。EG−ST 15.04gを加え、撹拌を1時間続けて、清澄な暗青色のインクを生成した。使用前に、インクを0.22μmのポリプロピレンフィルターに通して濾過した。
【0283】
また、固体及び溶媒の量を変えた以外は同じ手順に従って、別のベースNQインク(NQインク2と呼ぶ)も調製した。NQインク1及び2の組成を表2にまとめる。
【0284】
【表2】
【0285】
実施例2.本発明のNQインクの調製
本発明のNQインクの調製において、NQインク1をベースインクとして使用した。
【0286】
MoO(acac) 0.307gを、実施例1に従って調製したNQインク1 30.0gに加えた。周囲温度で1時間撹拌した後、暗青色のインクを0.22μmのポリプロピレンフィルターに通して濾過して、NQインク3を生成した。MoO(acac) 0.307gは、MoO 0.135gに相当し、これは、使用されるベースNQインク中の固体の総重量(すなわち、0.9g)に対して15%(重量)である。
【0287】
2種の他の本発明のインクのNQインク4及びNQインク5を、使用するMoO(acac)の量(したがってMoO当量)を変えた以外は同じ手順に従って調製した。NQインク3〜5中のMoO当量の量を表3にまとめる。
【0288】
【表3】
【0289】
実施例3.薄膜形成及び特性
Laurellスピンコーターを使用して3000rpmで90秒間スピンコーティングすることによって薄膜を形成した。ホットプレート上で、薄膜を、大気中にて75℃で3分間フラッシュアニーリングし、次いで、窒素雰囲気下にて230℃〜300℃の温度で30分間最終アニーリングした。
【0290】
NQインク1〜5から製造した薄膜の仕事関数を、Riken Keiki Co. Ltd.(Japan)から入手可能な「Photo-Electron Spectroscopy in Air」(PESA)システムAC−2装置を使用して決定した。試験試料を、乾燥空気中で試料ホルダー上に装填し、これをアース電位に維持した。乾燥空気を、ミストセパレーター及びマイクロミストセパレーター、膜式エアドライヤーに通して測定チャンバーに一定圧力で供給して、圧力計によって制御した。重水素ランプからの単色UVビーム(50nWの一定強度)を試料表面に向けた。UV光子のエネルギーを4.2eV〜6.2eVで0.05eVステップにて走査した。UV光子のエネルギーが試料材料の仕事関数又は最高被占軌道(HOMO)に近づくと、試料表面から光電子放出が起こる。オープンカウンターによって光電子を検出及び計数した。光子エネルギーと光電子収率の立方根との間の関係は、直線であった。バックグラウンドラインと収率ラインの交差点は、光子放出閾値エネルギーである。Originソフトウェアを使用して、励起エネルギーに対してプロットした(光電子収率)1/3の傾斜を計算した。
【0291】
NQインク1〜5から製造した薄膜の仕事関数(電子ボルト(eV)単位)を表4にまとめる。
【0292】
【表4】
【0293】
図1は、NQインク1及び3〜5(四角)から製造した薄膜の仕事関数をMoO濃度の関数として示す(それぞれのインク中の他の固体の総重量に対する重量%として表される)。図1に示すように、仕事関数は、薄膜を製造するために使用されるNQインク中のMoO(acac)の量に応じて、調整され得る。
【0294】
代替的に、ベースNQインクを製造するために使用されるEG−ST分散物にMoO(acac)を加えて、本発明のNQインクに到達することができる。図1は、この方法で製造した薄膜の仕事関数を示し(三角)、この改変によって仕事関数の調整効果が失われないことを示す。
【0295】
実施例4.単極性(正孔のみ)デバイスの作製及び試験
ガラス基板上に蒸着された酸化インジウムスズ(ITO)表面に本明細書に記載される単極性の単一電荷キャリアデバイスを作製した。ITO表面をプレパターニングして、0.09cm2の画素領域を画定した。基板上にHILインク組成物を蒸着する前に、基板のプレコンディショニングを実施した。最初に、デバイス基板を、種々の溶液又は溶媒中で超音波処理によって清浄にした。デバイス基板を、希釈石鹸液、続いて蒸留水、次いでアセトン、次いでイソプロパノール中で各々約20分間超音波処理した。基板を窒素流下で乾燥させた。その後、デバイス基板を次いで120℃に設定した真空オーブンに移し、使用の準備が整うまで部分真空下(窒素パージしながら)で維持した。デバイス基板を、使用直前に、300Wで作動させたUV−オゾンチャンバー内にて20分間処理した。
【0296】
HILインク組成物をITO表面上に蒸着させる前に、ポリプロピレン0.22μmフィルターに通すインク組成物の濾過を実施した。
【0297】
HILを大気中でスピンコーティングし、大気中より低い温度でフラッシュアニーリングし、次いで、これをグローブボックス(不活性雰囲気)に移し、最終所望温度でアニーリングして溶媒を除去した。HILを有する基板をその後大気に曝さないで、デバイス作製に直ちに使用した。基板をグローブボックス中に不活性雰囲気下で保存し、デバイス作製の直前に再アニーリングすることができる。
【0298】
本発明のHIL層を含む基板を真空チャンバーに移し、そこで、デバイススタックの残りの層を物理蒸着によって蒸着させた。
【0299】
2種の正孔のみのデバイス(デバイスA及びBと呼ぶ)を作製して、本発明のNQインクから製造したHILを評価した。NQインク2(比較例として)並びにNQインク3及び5から製造したHILをデバイスA及びデバイスBの両方で試験した。
【0300】
HILの頂上に、正孔輸送層としてN,N’−ビス(1−ナフタレニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン(NPB)を、続いて、アルミニウム(Al)カソードを蒸着させることによって、デバイスAを製造した。
【0301】
HILの頂上に、正孔輸送層としてトリス(4−カルバゾイル−9−イルフェニル)アミン(TCTA)を、続いて、別の正孔輸送層としてN,N’−ビス(1−ナフタレニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン(NPB)、次いでアルミニウム(Al)カソードを蒸着させることによって、デバイスBを製造した。
【0302】
それぞれのデバイススタックを、それぞれの層の厚さと共に、表5及び6にまとめる。粗面計(Veeco Instruments, Model Dektak 150)によってコーティングの厚さを測定し、3つの読み取り値の平均として報告した。
【0303】
【表5】
【0304】
【表6】
【0305】
異なるHOMOを有する2種の蒸着HTL(HOMOが浅いHTLとしてのNPB及びHOMOが深いHTLとしてのTCTA)を試験及び比較した。
【0306】
図2は、デバイスA及びBの各々におけるNQインク2及びNQインク3から製造したHIL間の電流密度対電圧の比較を示す。図2に示すように、浅い仕事関数を有するHIL(NQインク2からのHIL)は、HOMOが深いHTL(TCTA)とは十分に機能を発揮しないが、一方で、深い仕事関数を有するHIL(NQインク3からのHIL)は、TCTAと、十分に機能を発揮する。両方のHIL共、HOMOが浅いHTL(NPB)とは十分に機能を発揮する。
【0307】
図3は、デバイスA及びBの各々におけるNQインク2及びNQインク3から製造したHIL間の電圧対時間の比較を示す。図3に示すように、浅い仕事関数を有するHIL(NQインク2からのHIL)は、HOMOが深いHTL(TCTA)とは十分に機能を発揮しないが、一方で、深い仕事関数を有するHIL(NQインク3からのHIL)は、TCTAと、十分に機能を発揮する。両方のHIL共、HOMOが浅いHTL(NPB)とは十分に機能を発揮する。
【0308】
図4は、デバイスA及びBの各々におけるNQインク2及びNQインク5から製造したHIL間の電流密度対電圧の比較を示す。図4に示すように、浅い仕事関数を有するHIL(NQインク2からのHIL)は、HOMOが深いHTL(TCTA)とは十分に機能を発揮しないが、一方で、深い仕事関数を有するHIL(NQインク5からのHIL)は、TCTAと、十分に機能を発揮する。両方のHIL共、HOMOが浅いHTL(NPB)とは十分に機能を発揮する。
【0309】
図5は、デバイスA及びBの各々におけるNQインク2及びNQインク5から製造したHIL間の電圧対時間の比較を示す。図5に示すように、浅い仕事関数を有するHIL(NQインク2からのHIL)は、HOMOが深いHTL(TCTA)とは十分に機能を発揮しないが、一方で、深い仕事関数を有するHIL(NQインク3からのHIL)は、TCTAと、十分に機能を発揮する。両方のHIL共、HOMOが浅いHTL(NPB)とは十分に機能を発揮する。
【0310】
実施例5.HIL仕事関数に及ぼす酸素の効果
本発明のNQインクから製造したHILの仕事関数に及ぼす酸素の効果を決定するために、別の本発明のNQインク(NQインク6と呼ぶ)(インク中の他の固体の総重量に対して5%(重量)のMoO当量を含有する)から、2つの異なる方法を使用して薄膜を製造した。
【0311】
1つの方法(方法1と呼ぶ)では、最初に、NQインク6を脱酸素化し、不活性雰囲気下でスピンコーティングによって薄膜を形成した。次いで、ホットプレート上で、薄膜を、不活性(N)雰囲気下にて75℃で3分間フラッシュアニーリングし、次いで、不活性雰囲気下にて230℃で30分間最終アニーリングした。
【0312】
第二の方法(方法2と呼ぶ)では、大気中でNQインク6を調製し、大気中でスピンコーティングによって薄膜を形成した。次いで、ホットプレート上で、薄膜を、大気中にて75℃で3分間フラッシュアニーリングし、次いで、不活性(N)雰囲気下にて230℃で30分間最終アニーリングした。得られた薄膜の仕事関数を本明細書に記載されるPESA−AC2装置を使用して決定し、これを表7にまとめる。
【0313】
【表7】
【0314】
表7の結果から明らかなように、最終アニーリングの前のインク中の酸素の存在又は非存在は、得られたHILの仕事関数を大きく変化させない。
【0315】
この出願は、2016年1月20日に出願された米国仮出願第62/280,759号(その内容全体が、参照により本明細書に組み入れられる)の優先権を主張する。
図1
図2
図3
図4
図5