【実施例】
【0050】
実験例1
以下の条件で茶葉抽出物を得た。
【0051】
・茶葉:2011年産「サンルージュ」茶葉を採取後、蒸し葉乾燥したもの
【0052】
・前処理:マルチビーズショッカー(登録商標、安井器械株式会社)により粉砕処理(粒子径平均:309μm)
【0053】
・温度:4℃、50℃、70℃、90℃、95℃
【0054】
・時間:1分、5分、10分、30分、60分
【0055】
・抽出溶媒と液量:蒸留水(DW)を茶葉乾燥重量に対して50倍重量
【0056】
抽出した茶葉抽出液(エキス)を用いて、比色法により、アントシアニンの検量線から全量のデルフィニジン含有量を測定した。結果を
図1に示す。
【0057】
実験例2
比色法により、カテキン類の検量線から全量のカテキン類の含有量を測定したこと、および温度を4℃、30℃、50℃、70℃、90℃、95℃のいずれかとしたこと以外は、実験例1と同様にした。結果を
図2に示す。
【0058】
実験例1および実験例2から、茶葉からの水抽出における温度および時間をそれぞれ70℃〜95℃、5分〜60分の条件とすることにより、デルフィニジンが効率的に抽出され、カテキン類が抑えられた茶葉抽出物が得られることが分かった。
【0059】
実施例1及び比較例1〜2
品種間による比較として、「サンルージュ」、最も植栽面積比の高い「やぶきた」、「サンルージュ」の親株でありアントシアニンとカテキンを含有している「茶中間母本農6号(F95181)」を用いて、以下の条件で茶葉抽出物を得た。
【0060】
・茶葉:2011年産「サンルージュ」、2011年産「やぶきた」、2011年産「茶中間母本農6号(F95181)」を採取後、蒸し葉乾燥したもの
【0061】
・前処理:マルチビーズショッカー(登録商標、安居器械株式会社)により粉砕処理(粒子径平均:309μm)
【0062】
・温度:70℃
【0063】
・時間:10分
【0064】
・抽出溶媒と液量:蒸留水(DW)を茶葉に対して50倍重量
【0065】
得られた茶葉抽出液の、表1に示す成分の含有量を、文献(Mari Maeda−Yamamoto et al.Chemical analysis and acetylcholinesterase inhibitory effect of anthocyanin−rich red leaf tea (cv. Sunrouge).J Sci Food Agric 92:2379−2386(2012).)に記載された条件でHPLCにて分析した。
【0066】
比較例3〜5
抽出溶媒として酢酸を用いた以外は、実施例1と同様にした。
実施例1、比較例1〜5で得られた結果を表1に示す。単位は、茶葉抽出液の乾燥重量あたりの重量%で記載した。
【0067】
【表1】
【0068】
実施例1において、デルフィニジンまたはその配糖体の含有量が0.13重量%以上であり、カテキン類の含有量が21.0重量%以下であり、EGCGの含有量が10.5重量%以下であり、アントシアニンの重量に占めるデルフィニジンまたはその配糖体の重量の比率が、50%以上の茶葉抽出物(エキス粉末)が得られた。
【0069】
実施例2
熱安定性の評価
以下の条件で茶葉抽出物を得た。
【0070】
・茶葉:2012年産「サンルージュ」茶葉を採取後、蒸し葉乾燥したもの
【0071】
・前処理:マルチビーズショッカー(登録商標、安居器械株式会社)により粉砕処理(粒子径平均:309μm)
【0072】
・温度:70℃
【0073】
・時間:10分
【0074】
・抽出溶媒と液量:蒸留水(DW)を茶葉乾燥重量に対して50倍重量
【0075】
得られた茶葉抽出物の、乾燥重量あたりのデルフィニジンまたはその配糖体の含有量とカテキンの含有量とを、実施例1と同様にしてHPLCにより分析したところ、それぞれ0.2重量%、18.5重量%であった。
【0076】
茶葉抽出物を濃縮後、スプレードライヤー(ヤマト科学株式会社製、商品名:Pulvis Mini−Spray GA−32)にて粉末化し、茶葉抽出物の粉末を作成した。これを温度100℃で120分間加熱処理し、処理後のデルフィニジン残存率を測定した。
【0077】
比較例6
デルフィニジンリッチな既存流通品であるマキベリー由来エキス粉末(オリザ油化社製、商品名:マキベリーエキス)の規格値を用いた。
【0078】
実施例2、比較例6の結果を
図3に示す。
【0079】
茶葉抽出物粉末の熱安定性(実施例2)は、デルフィニジンを含有するマキベリーエキス粉末(比較例6)と比較して優れていた。
【0080】
実施例3
実施例2と同様の材料を用い、実施例2と同様にして茶葉抽出物の粉末を得た。体重22±2gの雄性ICR系マウス(各群5匹)に対し、茶葉抽出物の粉末を、1回につき体重あたり500mg/kgの用量に調整し、連続5日間1日1回経口投与した。茶葉抽出物の供試中は、通常実験用飼料、および水を自由摂取させた。尚、試験開始前に一晩絶食させた。茶葉抽出物の最終投与から30分後にブドウ糖負荷した(体重あたりのブドウ糖1g/kgを皮下注射)。最終投与後からブドウ糖負荷前の間、およびブトウ糖負荷60分後(最終投与の90分後)に血液検体を採取した。各マウスのブドウ糖負荷前後の血糖値を測定し、血糖値上昇率を算出した。
【0081】
比較例7
茶葉抽出物の粉末を投与せずに水のみを投与したほかは実施例3と同様とした。
【0082】
比較例7のマウスの血糖値上昇率に対する、実施例3のそれの有意差(p<0.05)の有無を確認した。実施例3及び比較例7の結果を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
〔表2の脚注〕
*は、溶媒投与対照区との間で、一元配置分散分析及びDunnett検定にて有意差(P<0.05)があることを示す。
SEMは標準誤差を示す。
【0085】
表2から明らかなとおり、茶葉抽出物を投与した実施例3の血糖値上昇率は、水のみを投与した比較例7のそれと比べて抑えられていた。このことは、本発明の茶葉抽出物が血糖値降下作用を有することを示している。
【0086】
実施例4
実施例2と同様の材料を用い、実施例2と同様にして茶葉抽出物の粉末を得た。体重23±3gの雄性ICR系マウス(各群5匹)に対し、茶葉抽出物の粉末を、1回につき体重あたり500mg/kgの用量に調整し、連続5日間1日1回経口投与した。茶葉抽出物の供試中は、通常実験用飼料、および水を自由摂取させた。茶葉抽出物の最終投与後1時間以内の自立神経系症状発症の有無を、熟練した評価員の下、目視評価した。
【0087】
比較例8
茶葉抽出物の粉末を投与せずに水のみを投与したほかは実施例4と同様とした。
【0088】
実施例4及び比較例8の結果を表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
〔表3の脚注〕
±:軽度;+:重度;F:早い
n/5のnは、その症状を示した個体数を示す。
【0091】
表3から明らかなとおり、水のみを投与した比較例8では自発運動および自律神経系症状が見られなかったが、茶葉抽出物を投与した実施例4では自発運動および様々な自律神経系症状が観察された。このことは、本発明の茶葉抽出物が自発運動および自律神経系症状を亢進させることを示している。
【0092】
実施例5
実施例2と同様の材料を用い、実施例2と同様にして茶葉抽出物の粉末を得た。体重23±3gの雄性ICR系マウス(各群5匹)に対し、茶葉抽出物の粉末を、1回につき体重あたり500mg/kgの用量に調整し、連続5日間1日1回経口投与した。茶葉抽出物の供試中は、通常実験用飼料、および水を自由摂取させた。茶葉抽出物の最終投与から1時間後に、マウスの以下10項目の行動反応について、パラメータを測定した:易刺激性;自発運動の亢進;眼瞼の拡大;驚樗反応の亢進;接触反応の亢進;探索行動の亢進;立毛;挙尾;振戦;及び痙攣。各観察項目を通常時であれば0点とし、各観察項目の最大の運動刺激を2点とし、合計は2(点)×10(項目)×5(匹)=100点とした。合計スコアが20点以上となった場合、有意な刺激性があるとした。
【0093】
比較例9
茶葉抽出物の粉末を投与せずに水のみを投与したほかは実施例5と同様とした。
【0094】
実施例5及び比較例9の結果を表4に示す。
【0095】
【表4】
【0096】
表4から明らかなとおり、水のみを投与した比較例9では合計スコアが0であったのに対し、茶葉抽出物を投与した実施例5のそれは高得点であった。このことは、本発明の茶葉抽出物が運動刺激作用を有することを示している。
【0097】
実施例6
実施例2と同様の材料を用い、実施例2と同様にして茶葉抽出物の粉末を得た。体重155±5gの一晩絶食させた雄性Wistar系ラット(各群5匹)に対し、茶葉抽出物の粉末を、1回につき体重あたり500mg/kgの用量に調整し、連続5日間1日1回経口投与した。茶葉抽出物の供試中は、通常実験用飼料、および水を自由摂取させた。試験開始2時間前および茶葉抽出物の最終投与の1時間後に、生理食塩水を強制経口投与して胃液酸性度(μEq HCl/mL)を求めた。
【0098】
比較例10
茶葉抽出物の粉末を投与せずに水のみを投与したほかは、実施例6と同様とした。
【0099】
比較例10のマウスの胃液酸性度に対する、実施例6のそれの有意差(p<0.05)の有無を確認し、コレシストキニン(CCK
B)受容体活性化作用を評価した。結果を表5に示す。
【0100】
【表5】
【0101】
〔表5の脚注〕
*は、比較例10(溶媒投与対照区)との間で、一元配置分散分析及びDunnett検定にて有意差(P<0.05)があることを示す。
【0102】
表5から明らかなとおり、実施例6の茶葉抽出物投与後の胃液酸性度は、水のみを投与した比較例10のそれと比べて抑えられていた。このことは、本発明の茶葉抽出物がCCK
B受容体活性化作用を有することを示している。
【0103】
実施例7
実施例2と同様の材料を用い、実施例2と同様にして茶葉抽出物の粉末を得た。体重150±20gの雄性SD系ラット(各群5匹)に対し、1回につき体重あたり500mg/kgの用量に調整し、連続5日間1日1回経口投与した。茶葉抽出物の供試中は、通常実験用飼料、および水を自由摂取させた。茶葉抽出物の最終投与から30分後にクロニジン(0.03mg/kg、腹腔内投与(IP))を投与した。さらに20分後、動物をペントバルビタールナトリウム(40mg/kg、腹腔内投与(IP))で麻酔し、その10分後に心拍数を記録した。
【0104】
比較例11
茶葉抽出物の粉末を投与せずに水のみを投与したほかは、実施例7と同様とした。
【0105】
実施例7の心拍数を比較例11のそれと比較し、アドレナリンα2A受容体拮抗作用があるか評価した。実施例7及び比較例11の結果を表6に示す。
【0106】
【表6】
【0107】
表6から明らかなとおり、水のみを投与した比較例11よりも茶葉抽出物を投与した実施例7の心拍数が高かった。このことは、本発明の茶葉抽出物が、アドレナリンα2A受容体拮抗作用を有することを示している。
【0108】
実施例8
サンルージュ茶葉2gを80℃のお湯100mlで5分間抽出した。それらの抽出液(試験飲料1)をパネラー8人で試飲後、甘味、苦渋味及び爽快感のうちより強く感じるものを選択してもらった。
【0109】
比較例12
サンルージュ茶葉の代わりに市販されているやぶきた茶葉(1000円/100g)を用いて、実施例8と同様に抽出液(試験飲料2)を得て、実施例8と同様に試飲及び評価を行った。
【0110】
実施例8及び比較例12の結果に基づき、8人で官能評価を行なった。甘味、苦渋味、および爽快感のそれぞれを比較して、強く感じた飲料を項目ごとに選択させ、パネラーの人数を数えた。結果を表7に示す。
【0111】
【表7】
【0112】
表7から明らかなとおり、試験飲料1では爽快感を感じるパネラーが多く、苦渋味を感じるパネラーはゼロであった。
【0113】
このことは、本発明の茶葉抽出物は、爽快感が高いので、飲みやすく、嗜好飲料として十分な性能を有していることを示している。また、本発明の製造方法では、得られる茶葉抽出物のカテキン含有量を抑えることができるため、得られる茶葉抽出物の苦渋味が抜け、爽快感を高めることができることを示している。