(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598190
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】光電変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 31/055 20140101AFI20191021BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20191021BHJP
【FI】
H01L31/04 622
B82Y20/00
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-75932(P2015-75932)
(22)【出願日】2015年4月2日
(65)【公開番号】特開2016-197625(P2016-197625A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2018年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】小田 勝
【審査官】
佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−118491(JP,A)
【文献】
特開2013−149729(JP,A)
【文献】
特表2010−531067(JP,A)
【文献】
国際公開第03/079457(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/078、31/18−31/20、
51/42−51/48
H02S 10/00−10/40、30/00−99/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンドギャップエネルギーの2倍以上のエネルギーを持つ1つの光子を吸収して、複数のキャリアを生成する半導体ナノ構造素子、及び、前記キャリアの輻射再結合を促進して、吸収した前記光子より多い光子を前記半導体ナノ構造素子から放出させる光共振器を有し、前記半導体ナノ構造素子から放出された前記光子を外部に放つ光子増加体と、
前記光子増加体から放たれた前記光子を吸収して、電気エネルギーに変換する太陽電池とを備え、
前記光共振器は、前記半導体ナノ構造素子を間に挟んで配置されたミラーA及びミラーBを備え、前記ミラーA及び前記ミラーBの少なくとも一方は、単独で、所定の波長Pより短い波長の光子を透過させ、前記波長Pより長い波長の光子を反射するダイクロイックミラーであり、前記半導体ナノ構造素子が吸収する前記光子の波長は、前記波長Pより短く、前記太陽電池は、前記ダイクロイックミラーで反射された前記光子も吸収して、電気エネルギーに変換することを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
請求項1記載の光電変換装置において、前記ミラーA及び前記ミラーBは、前記半導体ナノ構造素子から放出される前記光子の波長に対する反射率が異なることを特徴とする光電変換装置。
【請求項3】
バンドギャップエネルギーの2倍以上のエネルギーを持つ1つの光子を吸収して、複数のキャリアを生成する半導体ナノ構造素子、及び、前記キャリアの輻射再結合を促進して、吸収した前記光子より多い光子を前記半導体ナノ構造素子から放出させる光共振器を有し、前記半導体ナノ構造素子から放出された前記光子を外部に放つ光子増加体と、
前記光子増加体から放たれた前記光子を吸収して、電気エネルギーに変換する太陽電池とを備え、
前記光共振器は、前記半導体ナノ構造素子を間に挟んで配置されたミラーA及びミラーBを備え、前記ミラーAは、前記半導体ナノ構造素子から放出される前記光子の波長に対する反射率が前記ミラーBより低く、前記太陽電池は、前記ナノ構造素子から放出され前記ミラーAを通過した前記光子を吸収する位置に設けられていることを特徴とする光電変換装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換装置において、前記半導体ナノ構造素子は、吸収可能な光子の波長のピークと放出する光子の波長のピークが異なることを特徴とする光電変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池に対して、バンドギャップエネルギー(以下、「Eg」とも言う)以上のエネルギーを持つ光が照射されると、電子正孔対(以下、「キャリア」とも言う)が生成される。太陽電池は、生成されたキャリアを電子と正孔に分離し、電子及び正孔の流れを電気エネルギーとして利用する。
光エネルギーを電気エネルギーに変換する過程においては、熱損失等が生じることから、光エネルギーの全てを電気エネルギーに変換することはできない。太陽電池においては、光エネルギーを電気エネルギーへ変換する変換効率を高めることが重要であり、変換効率を高める太陽電池の具体例が、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の太陽電池は、量子ドットを有する層を設け、その層による光エネルギーの吸収を向上させて、変換効率を向上するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−29464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、量子ドットを利用しない従来の太陽電池においては、1つの光子の吸収につき、1つのキャリアが生成され、原理的に、1つの光子の持っていたエネルギーとEgとの差分が熱損失となる。
この点、近年、量子ドットをはじめとする半導体ナノ構造素子においては、半導体(各ドットを形成する半導体)が1つの光子を吸収することによって、半導体に、複数のキャリアが生成されるキャリア増幅現象が確認されている。この現象を利用すれば、従来の太陽電池において熱損失となるエネルギーを、更なるキャリアの生成に使用することができ、変換効率の向上が図れるとも考えられる。
【0005】
しかしながら、半導体ナノ構造素子において生成された多くのキャリアを、半導体ナノ構造素子から外に短時間で抽出する方法は存在せず、キャリアの大半は、キャリア間で衝突、散乱等が生じ、外に取り出せないという問題があった。例えば、半導体ナノ構造素子内に生成されたキャリアを、内部電場によって電子と正孔に分離し、これを外部電極まで伝搬して抽出しようとした場合、その抽出の早さは、半導体ナノ構造素子内におけるキャリア間の衝突、散乱等が生じる早さに比べて格段に遅く、キャリアの大半は、外部に抽出されない。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、半導体ナノ構造素子を用いて、光エネルギーを効率的に電気エネルギーに変換する光電変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う
第1の発明に係る光電変換装置は、バンドギャップエネルギーの2倍以上のエネルギーを持つ1つの光子を吸収して、複数のキャリアを生成する半導体ナノ構造素子、及び、前記キャリアの輻射再結合を促進して、吸収した前記光子より多い光子を前記半導体ナノ構造素子から放出させる光共振器を有し、前記半導体ナノ構造素子から放出された前記光子を外部に放つ光子増加体と、前記光子増加体から放たれた前記光子を吸収して、電気エネルギーに変換する太陽電池とを備え
、前記光共振器は、前記半導体ナノ構造素子を間に挟んで配置されたミラーA及びミラーBを備え、前記ミラーA及び前記ミラーBの少なくとも一方は、単独で、所定の波長Pより短い波長の光子を透過させ、前記波長Pより長い波長の光子を反射するダイクロイックミラーであり、前記半導体ナノ構造素子が吸収する前記光子の波長は、前記波長Pより短く、前記太陽電池は、前記ダイクロイックミラーで反射された前記光子も吸収して、電気エネルギーに変換する。
本発明は、光子の吸収により生成されたキャリアから、直接的に、電子を取り出して、電気エネルギーに変換するのではなく、吸収した光子から、キャリアを経由して、改めて光子を得、得られた光子を太陽電池に吸収させて、電気エネルギーに変換する。従って、本発明は、従来のものに比べ、状態を変換する回数を増やすという、一見して非効率な工程から、結果として、光エネルギーを効率的に電気エネルギーに変換するものである。
【0007】
【0008】
【0009】
第1の本発明に係る光電変換装置において、前記ミラーA及び前記ミラーBは、前記半導体ナノ構造素子から放出される前記光子の波長に対する反射率が異なるのが好ましい。
【0010】
前記目的に沿う第2の発明に係る光電変換装置
は、
バンドギャップエネルギーの2倍以上のエネルギーを持つ1つの光子を吸収して、複数のキャリアを生成する半導体ナノ構造素子、及び、前記キャリアの輻射再結合を促進して、吸収した前記光子より多い光子を前記半導体ナノ構造素子から放出させる光共振器を有し、前記半導体ナノ構造素子から放出された前記光子を外部に放つ光子増加体と、前記光子増加体から放たれた前記光子を吸収して、電気エネルギーに変換する太陽電池とを備え、前記光共振器は、前記半導体ナノ構造素子を間に挟んで配置されたミラーA及びミラーBを備え、前記ミラーAは、前記半導体ナノ構造素子から放出される前記光子の波長に対する反射率が前記ミラーBより低く、前記太陽電池は、前記ナノ構造素子から放出され前記ミラーAを通過した前記光子を吸収する位置に設けられている。
【0011】
第1、第2の発明に係る光電変換装置において、前記半導体ナノ構造素子は、吸収可能な光子の波長のピークと放出する光子の波長のピークが異なるのが好ましい。
第1、第2の発明に係る光電変換装置において、前記半導体ナノ構造素子は、半導体量子ドット、又は、半導体量子ロッドであることができる。
【発明の効果】
【0012】
第1、第2の発明に係る光電変換装置は、光子増加体が、1つの光子を吸収して生成した複数のキャリアに対し、光共振器によって輻射再結合を促進し、吸収した光子より多い光子を外部に放ち、太陽電池が、光子増加体から放たれた光子を吸収して、電気エネルギーに変換するので、光エネルギーを効率的に電気エネルギーに変換可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る光電変換装置の説明図である。
【
図2】(A)は、半導体ナノ構造素子に、光子が吸収される様子を示す説明図、(B)は、キャリアが生成された様子を示す説明図である。
【
図3】半導体ナノ構造素子から光子が放出される様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、
図2(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係る光電変換装置10は、光を吸収してキャリア11を生成し、キャリア11の輻射再結合により発生した光を外部に放つ光子増加体12と、光子増加体12から放たれた光を、電気エネルギーに変換する太陽電池13とを備えて電気エネルギーを発生させる装置である。以下、詳細に説明する。
【0015】
光子増加体12は、
図1に示すように、複数のナノメートルオーダーの大きさの半導体14を有する半導体ナノ構造素子15と、半導体ナノ構造素子15内に生成されるキャリア11の輻射再結合(発光再結合)を促進する光共振器16を有している。
本実施の形態では、キャリア11が、
図2(B)に示すように、クーロン力によって束縛された状態にある一対の電子17及び正孔18を意味する。また、キャリア11の輻射再結合とは、キャリア11の電子17が、伝導帯から価電子帯に遷移し、光子20の放出(
図3参照)を伴って正孔18と結合することを言う。
【0016】
半導体ナノ構造素子15は、各半導体14において、電子及び正孔(ここで言う電子及び正孔は、キャリア11の電子17及び正孔18だけではなく、半導体14内の全ての電子及び正孔を意味する)の移動が三次元全ての方向で制限され、電子及び正孔の状態密度が離散している。
本実施の形態では、半導体ナノ構造素子15において、電子及び正孔の移動を制限する構造に、量子ドットを採用しているが、これに限定されず、例えば、量子ロッドや他の構造を採用することもできる。量子ドットの構造を採用した半導体ナノ構造素子を半導体量子ドットとし、量子ロッドの構造を採用した半導体ナノ構造素子を半導体量子ロッドとする。
【0017】
半導体ナノ構造素子15は、
図2(A)、(B)に示すように、1つの半導体14が、Eg(バンドギャップエネルギー)の2倍以上のエネルギーを持つ1つの光子19を吸収して、その半導体14内に、複数のキャリア11を生成するという性質を備えている。
具体的には、1つの半導体14が、Egの2倍以上のエネルギーを有する1つの光子19を吸収することにより、その半導体14中の複数の電子が、バンドギャップを超えて価電子帯から伝導帯に遷移し、その結果、複数のキャリア11が生じる。
1つの光子の吸収によって、複数のキャリアを生成するこの現象は、キャリア増幅現象等と称される。
【0018】
ここで、一般的に、半導体ナノ構造素子では、1つの半導体内に生成された複数のキャリアが、1つのキャリアになるまで、他のキャリアと衝突して消滅することが知られており、個々のキャリアは、例えば、生成されてから数十psで他のキャリアに衝突する。
一方、キャリアは、時間の経過により、輻射再結合を行う性質を有している。
従って、複数のキャリアが生成された半導体において、キャリア間で衝突が生じる前に、キャリアが輻射再結合することで、1つの半導体から複数の光子を得られる。
【0019】
そこで、光子増加体12は、光共振器16を備えることによって、パーセル効果により、キャリア11の輻射再結合時間を短縮させ、
図3に示すように、1つの半導体14から複数の光子20が放出されるようにしている。即ち、光共振器16は、吸収した光子19より多い数の光子20を半導体ナノ構造素子15から(半導体ナノ構造素子15に)放出させることができる。なお、光子19の波長が光子20の波長と異なっているのは言うまでもない。
【0020】
光共振器のQ値を上昇させることにより、キャリアが輻射再結合するまでの時間が短くなり、光共振器のQ値は、光共振器が備えるミラーの反射率の変更等によって、調整可能である。
光共振器16は、1つの半導体14内に生成された複数のキャリア11が、衝突前に、輻射再結合するのに十分な大きさのQ値を有している。
【0021】
本実施の形態において、半導体ナノ構造素子15は、
図1に示すように、板状に形成され、光共振器16は、半導体ナノ構造素子15の一側に取り付けられた板状のミラー21(ミラーA)と、半導体ナノ構造素子15の他側に取り付けられた板状のミラー22(ミラーB)を備えている。ミラー21、22は、半導体ナノ構造素子15を間に挟んで配置され、それぞれ、複数の誘電体の膜が重ねられている。なお、光子増加体12は、板状である。
【0022】
ミラー21、22は、ミラー21とミラー22の距離をD、光子(光)20の波長をλ、半導体ナノ構造素子15の屈折率をn、Nを自然数として、Dが、λ/2nの略N倍(例えば、λ/2nのN倍の90%〜110%)となる位置、即ち、半導体ナノ構造素子15から放出された光子20が共振する位置に設けられている。本実施の形態では、D=λ/2nである。
ミラー21及びミラー22は、光子20の波長に対する反射率が異なり、本実施の形態では、光子20の波長に対する反射率において、ミラー21の反射率がミラー22の反射率より低い。そのため、半導体ナノ構造素子15から放たれた光子20は、
図3に示すように、ミラー22を通過して、光子増加体12の外部に放たれるものに比べ、ミラー21を通過して外部に放たれるものが多い。本実施の形態では、ミラー22を通過して外部に放たれる光子20の量を1として、ミラー21を通過して外部に放たれる光子20の量が9以上となるように、光共振器16が設計されている。
【0023】
太陽電池13は、
図1に示すように、n型半導体層23及びp型半導体層24と、外部電極25とを備えている。太陽電池13は、光子増加体12から放たれた光子20を、n型半導体層23とp型半導体層24の結合領域で、吸収して、電気エネルギーに変換し、外部電極25を介して、電気エネルギーを外部に供給する。
なお、光電変換装置に採用する太陽電池は、光子(光)を吸収して、電気エネルギーを生成できればよく、太陽電池13と同じ構造を備えている必要はない。
【0024】
本実施の形態では、太陽電池13が、半導体ナノ構造素子15を基準(中心)にして、ミラー21が配置されている側に設けられている。本実施の形態では、半導体ナノ構造素子15から放出された光子20が、ミラー22を介して光子増加体12の外に放たれるよりも多く、ミラー21を介して光子増加体12の外に放たれるため、太陽電池13は、効率的に光子20を吸収可能である。
【0025】
また、ミラー21は、単独で(即ち、ミラー21、22の組み合わせで使用するのではなく、ミラー21単独で使用した際に)、所定の波長P(以下、単に「波長P」と言う)より短い波長の光子(光)を透過させ(ここで言う「透過」とは、光子の90%以上を透過することを意味する)、波長Pより長い波長の光子(光)を反射する(ここで言う「反射」とは、光子の90%以上を反射することを意味する)ダイクロイックミラーである。そして、ミラー21は、ミラー21、22の組み合わせで共振器構造となることによって、波長Pより長い波長の光子(光)に対し、特定の波長(以下、この波長を「波長P’」とする)の光子(光)のみを透過可能にする(ここで言う「透過」も、光子の90%以上を透過することを意味する)。即ち、波長Pより長い波長で波長P’より短い波長の光子、及び、波長P’より長い波長の光子は、共振器構造のミラー21を透過せず、反射される。
ここで、光子(光)19の波長をλ’とし、光子(光)20の波長をλとして、波長P、波長P’、光子19の波長λ’及び光子20の波長λの長さ関係は、波長λ’<波長P<波長λ=波長P’である(即ち、光子19の波長λ’は、波長Pより短く、光子20の波長λは、波長Pより長い)。
【0026】
従って、ミラー21は、光子19を、積極的に透過させて、半導体ナノ構造素子15に対して、光子19を安定的に与えることができる。
一方、
図2(A)に示す光子(光)26は、波長Pより長い波長で波長P’より短い波長の光子であり、ミラー21で反射される。本実施の形態では、ミラー21で反射された光子26が、太陽電池13に向かって進行する位置に太陽電池13を設けているので、太陽電池13は、光子増加体12から放出される光子20に加え、光子26を、電気エネルギーの生成に用いることができる。なお、波長P’より長い波長の光子も、光子26と同様に、ミラー21で反射され、太陽電池13に到達して、電気エネルギー生成に用いられる。
【0027】
そして、太陽電池13とは別の太陽電池を、ミラー22に対向して配置し、更に、ミラー22に対しても外部から光子が与えられるようにすることもでき、その場合は、ミラー22にも、ダイクロイックミラーを採用するのが有効である。ミラー22を、そのようなダイクロイックミラーにすれば、所定の波長Pより短い波長の光子で、外部からミラー22に向かって進行する光子は、ミラー22を透過して、半導体ナノ構造素子15に吸収され、波長が波長Pより長く波長P’より短い光子や、波長が波長P’より長い光子は、外部からミラー22に向かって進行した際に、ミラー22で反射され、ミラー22に対向配置された太陽電池に供給されて、電気エネルギーに変換される。
【0028】
また、半導体ナノ構造素子15は、半導体14が吸収可能な光子の波長のピーク(吸収スペクトルのピーク)と、半導体14が放出する光子の波長のピーク(発光スペクトルのピーク)が異なっている。このため、各半導体14から放出された光子20は、ほとんど(例えば90%以上)が、他の半導体14に吸収されることなく、半導体ナノ構造素子15から、確実に、外へ出ることができ、エネルギー損失を抑制可能である。
【0029】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、光子増加体は、半導体ナノ構造素子に対して、キャリアの輻射再結合時間を短縮させて効率的に光子を放出させるものであればよく、光子増加体は板状である必要はないし、光共振器は2枚のミラーA、Bを備えている必要もない。
【0030】
また、光共振器が、2枚のミラーA、Bを備えている場合、ミラーA、Bの反射率は同じであってもよい。ミラーA、Bの反射率が同じ場合、ミラーAから外部に放出された光子を吸収する太陽電池とは別に、ミラーBから外部に放出された光子を吸収する太陽電池を設けることで、光子増加体から放たれた光子を効率的に電気エネルギーに変換することができる。
【符号の説明】
【0031】
10:光電変換装置、11:キャリア、12:光子増加体、13:太陽電池、14:半導体、15:半導体ナノ構造素子、16:光共振器、17:電子、18:正孔、19、20:光子、21、22:ミラー、23:n型半導体層、24:p型半導体層、25:外部電極、26:光子