特許第6598196号(P6598196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6598196構造物の非破壊検査方法および非破壊検査システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598196
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】構造物の非破壊検査方法および非破壊検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/72 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
   G01N25/72 K
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-166165(P2015-166165)
(22)【出願日】2015年8月25日
(65)【公開番号】特開2016-50941(P2016-50941A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2018年5月31日
(31)【優先権主張番号】特願2014-174077(P2014-174077)
(32)【優先日】2014年8月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】大石 祐嗣
【審査官】 野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−292298(JP,A)
【文献】 特開2005−319970(JP,A)
【文献】 特開2008−120294(JP,A)
【文献】 特開2006−337231(JP,A)
【文献】 特開昭60−154155(JP,A)
【文献】 特開2005−227135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00−72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に長尺の構造物の内部空間で撮像手段を昇降させ、前記撮像手段で前記構造物の内周面の画像を撮像し、前記画像に基づき前記構造物を検査する方法であり、
前記撮像手段は、ローターの回転による揚力により昇降する飛翔体と共に昇降するものであり、
回転軸の先端部の軸周りに分散させて配設され、基端部が前記回転軸に対しヒンジ部を介して回動可能に支持されて折り畳み可能となっている複数枚のローターを有する飛翔体の、前記ローターを折り畳むとともに、前記飛翔体の下端部に紐を結束した状態で、上下方向に長尺の前記構造物の外周面に設けた狭隘な挿入口を介して前記飛翔体を前記構造物の内部空間に挿入する挿入工程と、
前記構造物の内部空間に挿入した後、回転手段を回転させて揚力を得ることにより前記飛翔体を、前記構造物の内部空間で昇降させる昇降工程と、
前記昇降工程における上昇工程または下降工程の少なくともいずれか一方において前記撮像手段を介して前記構造物の内周面の画像を撮像する撮像工程とを有する
ことを特徴とする構造物の非破壊検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載する構造物の非破壊検査方法において、
前記挿入口には、先端が前記内部空間の中心部に位置するよう外部から前記挿入口にガイドを挿入しておき、前記ローターを折り畳んだ状態の飛翔体は、前記ガイドで下方から支持し、中心部に案内して前記内部空間に挿入する
ことを特徴とする構造物の非破壊検査方法。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の構造物の非破壊検査方法において、
前記挿入工程においては、前記回転軸の先端に紐付きの電磁石を吸着させた状態で外部から飛翔体を前記内部空間に挿入するとともに、前記回転軸を起立させた状態で前記回転手段により前記ローターを回転させて所定の揚力を得て、その後前記電磁石の励磁を解除して前記電磁石を前記回転軸から取外す
ことを特徴とする構造物の非破壊検査方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の構造物の非破壊検査方法において、
前記構造物は、円筒状のコンクリートの筒部に、軸方向に延びる長尺の鉄筋が一体に配された円筒状のコンクリート柱であり、
前記撮像手段は、赤外線撮像手段であり、前記コンクリート柱の内周面の少なくとも温度の分布の情報を検出することを特徴とする構造物の非破壊検査方法。
【請求項5】
請求項4に記載する構造物の非破壊検査方法において、
前記コンクリート柱の周囲に巻回したコイルを利用した誘導加熱手段で前記鉄筋を加熱する
ことを特徴とする構造物の非破壊検査方法。
【請求項6】
ローターの回転により得る揚力を利用して昇降する飛翔体に連結した撮像手段で撮像した構造物の内周面の画像に基づき検査する構造物の非破壊検査システムであって、
回転軸の軸周りに分散させて配設されることにより前記回転軸の回転により一体的に回転されるとともに、基端部がヒンジ部を介して前記回転軸に回動可能に支持されて折り畳み可能に形成されているローターを有し、前記ローターを折り畳んだ状態で前記構造物の内部空間に挿入し得るとともに、前記内部空間に挿入した状態で回転駆動手段を介して前記ローターを回転駆動することにより発生する浮力で前記内部空間を昇降する飛翔体と、
前記飛翔体の下端部に結束された紐と、
前記飛翔体に一体的に装着された受信機と、該受信機に前記回転駆動手段の所定の制御のための制御信号を供給する外部の送信機とを介して前記回転駆動手段を外部から制御する制御手段と、
前記飛翔体と一体的に昇降して前記内周面の画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した画像を表す画像信号を送出するデータ送信機と、
前記画像信号を受信するデータ受信機とを有する
ことを特徴とする構造物の非破壊検査システム。
【請求項7】
請求項6に記載の構造物の非破壊検査システムにおいて、
前記回転軸を介して飛翔体を磁力により吸着する電磁石と、
前記電磁石に接続された給電用の導線を兼用する紐または給電用の導線と紐とを別々に有することを特徴とする構造物の非破壊検査システム。
【請求項8】
請求項6もしくは請求項7に記載の構造物の非破壊検査システムにおいて、
前記ローターは、前記回転軸の軸方向の上下の各部位に配設された二重反転ローターで構成されている
ことを特徴とする構造物の非破壊検査システム。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の構造物の非破壊検査システムにおいて、
前記回転軸は、
前記回転駆動手段により直接回転される本体と、該本体と同軸のスプラインにスプライン嵌合されて前記本体の軸方向に移動可能に形成された前記本体と同軸の筒状回転部と、前記軸方向に沿い移動した前記筒状回転部の上端面が当接してその上方位置を規制する上部ストッパーと、前記軸方向に沿い移動した前記筒状回転部の下端面が当接してその下方位置を規制する下部ストッパーとを有するとともに、
前記ローターは、
前記筒状回転部にヒンジ部を介して取り付けた
ことを特徴とする構造物の非破壊検査システム。
【請求項10】
請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の構造物の非破壊検査システムにおいて、
前記回転軸の回転が停止されて前記ヒンジ部から垂下されているローターの先端部が前記回転軸側との間で作用する磁力により前記回転軸側に固着され前記回転軸の回転が開始された場合には前記磁力による固着状態が解除されるようにした
ことを特徴とする構造物の非破壊検査システム。
【請求項11】
請求項6から請求項10のいずれか一項に記載の構造物の非破壊検査システムにおいて、
前記データ送信機およびデータ受信機の代わりに前記撮像手段と一体的に昇降するとともに、前記撮像手段が撮像した画像を表す画像信号を記憶する記憶素子を有する
ことを特徴とする構造物の非破壊検査システム。
【請求項12】
請求項6から請求項11のいずれか一項に記載の構造物の非破壊検査システムにおいて、
前記構造物は、円筒状のコンクリートの筒部に、軸方向に延びる長尺の鉄筋が一体に配された円筒状のコンクリート柱であり、
前記撮像手段は、赤外線撮像手段であり、
前記コンクリート柱の内周面の少なくとも温度の分布の情報を検出する
ことを特徴とする構造物の非破壊検査システム。
【請求項13】
請求項12に記載する構造物の非破壊検査システムにおいて、
前記コンクリート柱の周囲に巻回したコイルおよび該コイルに高周波電流を供給する高周波電源を備えた誘導加熱手段を有する
ことを特徴とする構造物の非破壊検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造物の非破壊検査方法および非破壊検査システムに関し、特に閉じた空間となっている、例えばコンクリート柱を検査する場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
電線を空中に架け渡すための柱として電柱が知られている。この種の電柱としてコンクリート柱が汎用されている。かかるコンクリート柱は、上下方向に長尺の多数の鉄筋を円筒状に配筋した後、コンクリートを充填し、鉄筋とコンクリートとを一体化して円筒状に形成したものである。この結果、圧縮力には強いが引張力に弱いコンクリートの弱点を鉄筋で補完して所定の強度を有するコンクリート柱としている。すなわち、鉄筋と一体化することで引張力を鉄筋が受け持ち、引張力にも圧縮力にも充分な強度を持たせるようにしている。
【0003】
この種のコンクリート柱においては、引張り応力が作用している反対側には圧縮応力が作用することになる結果、圧縮応力に起因するひび割れを生起することがある。かかるひび割れはコンクリート柱の外周面のみならず、内周面に生起される場合もある。外周面のひび割れは、外周面の状態を視認することにより、容易に判断することができるが、閉じられた空間となっているコンクリート柱の内部空間からコンクリート柱の状態をコンクリート柱の高さ方向の広い範囲に亘って簡便・適確に非破壊検査する方法は、提案されていない。内周面のひび割れが進行した場合、かかるひび割れから雨水が浸入して鉄筋を腐食させる等の問題を生起する。したがって、コンクリート柱の内周面の状態を的確に把握しておくことはコンクリート柱およびコンクリート柱を利用している配電網等の設備の保守・管理上肝要である。
【0004】
なお、コンクリート柱の鉄筋の破断等の異常状態を非破壊検査する手法としては、特許文献1に開示するような非破壊検査方法が提案されている。この特許文献1では、コンクリート柱の鉄筋の長手方向に沿ってコンクリート体上を永久磁石を移動させることにより、鉄筋を磁化させている。かくして、鉄筋の長手方向に沿って磁界を発生させる。その後、前記永久磁石を取り除いて、磁気センサを鉄筋の長手方向に沿って前記コンクリート体上を移動させながら、前記コンクリート体の表面上での鉄筋の残留磁束密度について、鉄筋の長手方向と直角な方向の磁束密度成分を測定し、該磁束密度成分の前記鉄筋の長手方向に沿った分布に基づいて破断箇所の有無を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006―177841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された非破壊検査方法は、内周面の画像情報に基づくものではない。一方、コンクリート柱の内周面のうち下部は、光ファイバを足場ボルト等の小さな貫通孔を介してコンクリート柱の内部空間に挿入して吊下げることにより所望の画像情報を得ることができると考えられるが、同様の手法では、上部の画像情報を簡単に得ることはできない。
【0007】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、コンクリート柱等、閉じられた空間を有する構造物において構造物の内周面の画像情報に基づき構造物の状態を検査することができる非破壊検査方法および非破壊検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の参考例の破壊検査方法は、上下方向に長尺の構造物の内部空間で撮像手段を昇降させ、前記撮像手段で前記構造物の内周面の画像を撮像し、前記画像に基づき前記構造物を検査することを特徴とする。
【0009】
これにより、構造物の内部空間で撮像手段を昇降させ、撮像手段で構造物の内周面の画像を撮像し、画像に基づき構造物の状態を検査するので、コンクリート柱等、閉じられた空間を有する構造物において構造物の内周面の画像情報に基づき構造物の状態を検査することができる。
【0010】
また、風船の浮力により前記風船と一体に昇降することを特徴とする。
【0011】
これにより、風船を用いることで、簡単に撮像手段を一体に昇降させることができる。
【0012】
また、気体の供給口となる首部が、前記構造物の外周に設けた狭隘な挿入口の前記構造物の厚さ方向の寸法よりも長い、萎んだ風船を、前記首部の気体充填口となる開口を外部に臨ませた状態で、前記挿入口を介して前記構造物の内部空間に挿入する挿入工程と、前記構造物の内部空間に挿入した風船に、前記首部を介して周囲の気体よりも比重が小さい気体を充填する気体充填工程と、前記気体が充填されて膨らんだ風船を、前記撮像手段とともに前記構造物の内部空間を上昇させる上昇工程と、前記風船を前記内部空間の上部位置まで上昇させた後、前記風船を下降させる下降工程と、前記上昇工程または下降工程の少なくともいずれか一方の工程において前記撮像手段を介して前記構造物の内周面の画像を撮像する撮像工程とを有することを特徴とする。
【0013】
これにより、風船に浮力を与えて構造物の内部空間を昇降させることができる。そして、風船の昇降に伴い、撮像手段で構造物の内周面の画像情報を得ることができるので、その状態、すなわち内周面の亀裂、ひび割れ等の状態を的確に検査することができる。
【0014】
また、前記下降工程は、前記風船に連結された紐を引くことにより、前記撮像手段とともに前記風船を浮力に抗して下降させることを特徴とする。
【0015】
これにより、紐を引くことにより風船を確実に下降させて下降時に撮像手段で構造物の内周面の画像情報を得ることができる。紐を引く場合、作業員が撮像状況に応じて紐を引くことができ、作業員が紐を引くことで、内周面の状態を確実に撮像することができる。また、巻き取り手段などにより紐を機械的に引くことも可能である。
【0016】
また、前記下降工程は、膨らんだ前記風船から内部の気体を徐々に抜くことにより、浮力を低下させて前記撮像手段とともに前記風船を下降させることを特徴とする。
【0017】
これにより、風船から気体を抜くことで風船を下降させるので、人手や機械的手段を介すことなく、時間の経過と共に自動的に風船を下降させて下降時に撮像手段で構造物の内周面の画像情報を得ることができる。このため、撮影時にその場に居る必要がなく、所定の時間が経過した後に回収することで、効率的な検査を行うことができる。特に、多数の構造物に対して検査を行う場合、複数の装置を用意し、自動撮影を終了した後に装置を纏めて回収することで、非常に効率の良い検査を行うことができる。
【0018】
気体を抜く場合、絞り弁や気体流通量が制御できる弁部材を用いることができる。また、風船の素材として、適切なガス透過度を有するゴムや樹脂フィルムを適用することで、特別な機構を設けることなく時間の経過と共に風船から気体を抜くことができる。また、アルミを蒸着した風船を用い、蒸着を一部欠落させて欠落部位から気体を抜くこともできる。
【0019】
また、前記上昇工程に先立ち前記内部空間に、前記風船に充填する気体よりも比重が大きい気体を充填するとともに、前記気体充填工程では、前記内部空間に充填した気体よりも比重が小さい気体を充填することを特徴とする。
【0020】
これにより、風船に対してより大きな浮力を発生させることができ、撮像手段等の付属品とともに風船を良好に浮上させることができる。
【0021】
また、前記挿入工程に先立ち前記挿入口に、前記内部空間の上方に向くように傾斜する傾斜面を有するガイドを前記挿入口に装着し、前記ガイドを介して前記風船を前記内部空間に挿入することを特徴とする。
【0022】
これにより、風船は、その軸方向が内部空間の上方に向いた状態で挿入されるので、風船が長尺になっても内部空間の内周面間に引っかかることなく良好に上昇させることができる。ちなみに、構造物の内径で規制される風船の径を考慮して必要な浮力を検討した場合、風船の長さは70cm以上に達する場合も考えられる。
【0023】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の構造物の非破壊検査方法は、上下方向に長尺の構造物の内部空間で撮像手段を昇降させ、前記撮像手段で前記構造物の内周面の画像を撮像し、前記画像に基づき前記構造物を検査する方法であり、前記撮像手段は、ローターの回転による揚力により昇降する飛翔体と共に昇降するものであり、回転軸の先端部の軸周りに分散させて配設され、基端部が前記回転軸に対しヒンジ部を介して回動可能に支持されて折り畳み可能となっている複数枚のローターを有する飛翔体の、前記ローターを折り畳むとともに、前記飛翔体の下端部に紐を結束した状態で、上下方向に長尺の前記構造物の外周面に設けた狭隘な挿入口を介して前記飛翔体を前記構造物の内部空間に挿入する挿入工程と、前記構造物の内部空間に挿入した後、回転手段を回転させて揚力を得ることにより前記飛翔体を、前記構造物の内部空間で昇降させる昇降工程と、前記昇降工程における上昇工程または下降工程の少なくともいずれか一方において前記撮像手段を介して前記構造物の内周面の画像を撮像する撮像工程とを有することを特徴とする。
【0024】
請求項1に係る本発明では、構造物の内部空間で撮像手段を昇降させ、撮像手段で構造物の内周面の画像を撮像し、画像に基づき構造物の状態を検査するので、コンクリート柱等、閉じられた空間を有する構造物において構造物の内周面の画像情報に基づき構造物の状態を検査することができ、ローターの回転による揚力により昇降する飛翔体を用いて撮像手段を昇降させることができ、ローターを用いることでコンパクトな機構で揚力を得ることができる。
そして、ローターを折り畳むことができるので、狭隘な挿入口を介しても飛翔体を構造物の内部空間に良好に挿入することができ、挿入後にはローターを回転させることでヒンジ部を介して回動するローターを揚力により開かせることができる。この結果、飛翔体を内部空間で昇降させることができる。
【0025】
また、請求項2に係る本発明の構造物の非破壊検査方法は、請求項1に記載する構造物の非破壊検査方法において、前記挿入口には、先端が前記内部空間の中心部に位置するよう外部から前記挿入口にガイドを挿入しておき、前記ローターを折り畳んだ状態の飛翔体は、前記ガイドで下方から支持し、中心部に案内して前記内部空間に挿入することを特徴とする。
【0026】
請求項2に係る本発明では、飛翔体を構造物の中心軸近傍に位置させることができ、ローターと構造物の内周面との接触等を回避し、飛翔体のその後の上昇を良好に行わせることができる。
【0027】
また、請求項3に係る本発明の構造物の非破壊検査方法は、請求項1もしくは請求項2に記載の構造物の非破壊検査方法において、前記挿入工程においては、前記回転軸の先端に紐付きの電磁石を吸着させた状態で外部から飛翔体を前記内部空間に挿入するとともに、前記回転軸を起立させた状態で前記回転手段により前記ローターを回転させて所定の揚力を得て、その後前記電磁石の励磁を解除して前記電磁石を前記回転軸から取外すことを特徴とする。
【0028】
請求項3に係る本発明では、紐および電磁石を介して飛翔体を上昇時の最適な姿勢で吊下げ保持することができ、しかもかかる姿勢でローターにより揚力を発生させることができるばかりでなく、適当な揚力が得られた時点で電磁石の励磁を解除して紐による飛翔体の拘束を解除することができる。この結果、飛翔体の上昇動作が担保される。
【0029】
また、請求項4に係る本発明の構造物の非破壊検査方法は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の構造物の非破壊検査方法において、前記構造物は、円筒状のコンクリートの筒部に、軸方向に延びる長尺の鉄筋が一体に配された円筒状のコンクリート柱であり、前記撮像手段は、赤外線撮像手段であり、前記コンクリート柱の内周面の少なくとも温度の分布の情報を検出することを特徴とする。
【0030】
請求項4に係る本発明では、コンクリート柱の温度の分布に基づいて、鉄筋の破断等の状態を的確に検査することができる。尚、ここで温度の分布は、赤外線画像に基づく熱分布、赤外線画像の熱分布から得られる温度分布である。
【0031】
また、請求項5に係る本発明の構造物の非破壊検査方法は、請求項4に記載する構造物の非破壊検査方法において、前記コンクリート柱の周囲に巻回したコイルを利用した誘導加熱手段で前記鉄筋を加熱することを特徴とする。
【0032】
請求項5に係る本発明では、コンクリート柱の鉄筋を選択的に加熱することができるので、赤外線画像により鉄筋破断等の状態をより明確に表示することができる。この結果、鉄筋破断等の状態をさらに的確に検査することができる。
【0033】
また、参考例において、前記撮像手段は、風船の浮力により中性浮力が得られ、ローターの回転による揚力により昇降する飛翔体と共に昇降することを特徴とする。
【0034】
これにより、風船の浮力により中性浮力が保たれた状態の飛翔体をローターの回転による揚力により昇降させるので、飛翔体(撮像手段)を安定して昇降させることができる。
【0035】
本発明の他の参考例に係る構造物の非破壊検査システムは、上下方向に長尺の構造物の内部空間を、風船を昇降させ、前記風船と一体的に昇降する撮像手段で前記構造物の内周面の画像を撮像し、前記画像に基づき検査する構造物の非破壊検査システムであって、気体の供給口となる首部が、前記構造物の外周に設けた狭隘な挿入口の前記構造物の厚さ方向の寸法よりも長く、萎んだ状態で前記首部の気体充填口となる開口を前記構造物の外部に臨ませて前記挿入口から前記内部空間に挿入し得る風船と、前記風船に浮力を与える気体を、前記構造物の外部から充填する気体充填手段と、前記風船と一体的に昇降されて前記構造物の内周面の画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段が撮像した画像を表す画像信号を送出するデータ送信機と、前記画像信号を受信するデータ受信機とを有することを特徴とする。
【0036】
これにより、風船に浮力を与えて構造物の内部空間を昇降させることができる。そして、風船の昇降に伴い、撮像手段で構造物の内周面の画像情報を得ることができるので、その状態、すなわち内周面の亀裂、ひび割れ等の状態を的確に検査することができる。この際、データの送受信により、リアルタイムで構造物の内周面の状態を検査することができる。撮像手段を風船で昇降させるため、データの送受信は無線通信で行うことが好ましい。無線通信でデータの送受信を行うことにより、浮力がばらついても安定したデータの送受信を行うことができる。尚、データの送受信は有線通信で行うことも可能である。
【0037】
そして、前記風船を下降させる下降手段を備え、前記下降手段は、前記風船に連結された紐であり、前記紐を引くことにより前記風船を下降させることを特徴とする。
【0038】
これにより、紐を引くことにより風船を確実に下降させて下降時に撮像手段で構造物の内周面の画像情報を得ることができる。紐を引く場合、作業員が撮像状況に応じて紐を引くことができ、作業員が紐を引くことで、内周面の状態を確実に撮像することができる。また、巻き取り手段などにより紐を機械的に引くことも可能である。
【0039】
また、前記風船を下降させる下降手段を備え、前記下降手段は、前記風船から気体を抜く気体放出手段であり、前記気体放出手段により前記風船の気体を抜くことにより前記風船を下降させることを特徴とする。
【0040】
これにより、気体放出手段により風船から気体を抜くことで風船を下降させるので、人手や機械的手段を介すことなく、時間の経過と共に自動的に風船を下降させて下降時に撮像手段で構造物の内周面の画像情報を得ることができる。このため、撮影時にその場に居る必要がなく、所定の時間が経過した後に回収することで、効率的な検査を行うことができる。特に、多数の構造物に対して検査を行う場合、複数の装置を用意し、自動撮影を終了した後に装置を纏めて回収することで、非常に効率の良い検査を行うことができる。
【0041】
気体放出手段としては、絞り弁や気体流通量が制御できる弁部材を設けることができる。また、風船の素材として適切なガス透過度を有するゴムや樹脂フィルムを適用することで、特別な機構を設けることなく時間の経過と共に風船から気体を抜くことができる。また、アルミを蒸着した風船を用い、蒸着を一部欠落させて欠落部位から気体が抜ける構造を採用することができる。
【0042】
また、先端が前記内部空間の上方に向くように傾斜する傾斜面を有するガイドを前記挿入口に着脱可能に装着したことを特徴とする。
【0043】
これにより、風船は、その軸方向が内部空間の上方に向いた状態で挿入することができるので、風船が長尺になっても内部空間の内周面間に引っかかることなく良好に上昇させることができる。
【0044】
上記目的を達成するための請求項6に係る本発明の構造物の非破壊検査システムは、ローターの回転により得る揚力を利用して昇降する飛翔体に連結した撮像手段で撮像した構造物の内周面の画像に基づき検査する構造物の非破壊検査システムであって、回転軸の軸周りに分散させて配設されることにより前記回転軸の回転により一体的に回転されるとともに、基端部がヒンジ部を介して前記回転軸に回動可能に支持されて折り畳み可能に形成されているローターを有し、前記ローターを折り畳んだ状態で前記構造物の内部空間に挿入し得るとともに、前記内部空間に挿入した状態で回転駆動手段を介して前記ローターを回転駆動することにより発生する浮力で前記内部空間を昇降する飛翔体と、前記飛翔体の下端部に結束された紐と、前記飛翔体に一体的に装着された受信機と、該受信機に前記回転駆動手段の所定の制御のための制御信号を供給する外部の送信機とを介して前記回転駆動手段を外部から制御する制御手段と、前記飛翔体と一体的に昇降して前記内周面の画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段が撮像した画像を表す画像信号を送出するデータ送信機と、前記画像信号を受信するデータ受信機とを有することを特徴とする。
【0045】
請求項6に係る本発明では、ローターを折り畳むことができるので、狭隘な挿入口を介しても飛翔体を構造物の内部空間に良好に挿入することができ、挿入後にはローターを回転させることでヒンジ部を介して回動するローターを揚力により開かせることができる。この結果、飛翔体を内部空間で昇降させることができる。この際、データの送受信により、リアルタイムで構造物の内周面の状態を検査することができる。撮像手段をローターの揚力で昇降させるため、十分な昇降力が得られるので、データの送受信は有線通信で行うことができる。尚、データの送受信は無線通信で行うことも可能である。
【0046】
そして、請求項7に係る本発明の構造物の非破壊検査システムは、請求項6に記載の構造物の非破壊検査システムにおいて、前記回転軸を介して飛翔体を磁力により吸着する電磁石と、前記電磁石に接続された給電用の導線を兼用する紐または給電用の導線と紐とを別々に有することを特徴とする。
【0047】
請求項7に係る本発明では、電磁石を介して構造物の内部空間に挿入された飛翔体の姿勢を紐で吊下げることにより上昇に最適な起立した状態とすることができ、所定の揚力が得られた時点で電磁石の磁力を解除することで良好に上昇させることができる。
【0048】
また、請求項8に係る本発明の構造物の非破壊検査システムは、請求項6もしくは請求項7に記載の構造物の非破壊検査システムにおいて、前記ローターは、前記回転軸の軸方向の上下の各部位に配設された二重反転ローターで構成されていることを特徴とする。
【0049】
請求項8に係る本発明では、ローターの一方で発生する回転方向のトルクをローターの他方で発生する回転方向のトルクで打ち消すことにより安定した姿勢で昇降させることができる。
【0050】
また、請求項9に係る本発明の構造物の非破壊検査システムは、請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の構造物の非破壊検査システムにおいて、前記回転軸は、前記回転駆動手段により直接回転される本体と、該本体と同軸のスプラインにスプライン嵌合されて前記本体の軸方向に移動可能に形成された前記本体と同軸の筒状回転部と、前記軸方向に沿い移動した前記筒状回転部の上端面が当接してその上方位置を規制する上部ストッパーと、前記軸方向に沿い移動した前記筒状回転部の下端面が当接してその下方位置を規制する下部ストッパーとを有するとともに、前記ローターは、前記筒状回転部にヒンジ部を介して取り付けたことを特徴とする。
【0051】
請求項9に係る本発明では、回転軸の回転が停止されている状態ではローターの自重で下降する筒状部材の下降位置を下部ストッパーで規制するとともに、回転軸が回転されている状態ではローターによる揚力により上昇する筒状部材の上昇位置を上部ストッパーで規制することができる。
【0052】
また、請求項10に係る本発明の構造物の非破壊検査システムは、請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の構造物の非破壊検査システムにおいて、前記回転軸の回転が停止されて前記ヒンジ部から垂下されているローターの先端部が前記回転軸側との間で作用する磁力により前記回転軸側に固着され前記回転軸の回転が開始された場合には前記磁力による固着状態が解除されるようにしたことを特徴とする。
【0053】
請求項10に係る本発明では、ローターの折り畳み状態を磁力でロックすることができるので、挿入口を介した飛翔体の挿入および取り出しを円滑に行うことができる。
【0054】
また、請求項11に係る本発明の構造物の非破壊検査システムは、請求項6から請求項10のいずれか一項に記載の構造物の非破壊検査システムにおいて、前記データ送信機およびデータ受信機の代わりに前記撮像手段と一体的に昇降するとともに、前記撮像手段が撮像した画像を表す画像信号を記憶する記憶素子を有することを特徴とする。
【0055】
請求項11に係る本発明では、構造物の内周面の画像は、記憶素子に記憶されているので、風船または飛翔体とともに記憶素子を回収することで撮像した構造物の内周面の画像データを適宜再生することができる。したがって、記憶素子を持ち帰ることで、構造物が存在する現場に限らず、遠隔のラボ等で必要な画像処理等の後処理を行うことができる。
【0056】
また、請求項12に係る本発明の構造物の非破壊検査システムは、請求項6から請求項11のいずれか一項に記載の構造物の非破壊検査システムにおいて、前記構造物は、円筒状のコンクリートの筒部に、軸方向に延びる長尺の鉄筋が一体に配された円筒状のコンクリート柱であり、前記撮像手段は、赤外線撮像手段であり、前記コンクリート柱の内周面の少なくとも温度の分布の情報を検出することを特徴とする。
【0057】
請求項12に係る本発明では、温度の分布(熱分布または温度分布)で鉄筋の破断等の状態も的確に検査することができる。
【0058】
また、請求項13に係る本発明の構造物の非破壊検査システムは、請求項12に記載する構造物の非破壊検査システムにおいて、前記コンクリート柱の周囲に巻回したコイルおよび該コイルに高周波電流を供給する高周波電源を備えた誘導加熱手段を有することを特徴とする。
【0059】
請求項13に係る本発明では、コンクリート柱の鉄筋を選択的に加熱することができるので、赤外線画像により鉄筋破断等の状態をより明確に表示することができる。この結果、鉄筋破断等の状態をさらに的確に検査し得る。
【発明の効果】
【0060】
本発明によれば、狭隘な挿入口のみを介して外部に連通され、通常時には外部から隔離されている閉じた空間の内周面の状態、例えば、ひび割れ等の状態を良好に検査して、検査対象である構造物の保守・管理情報を容易かつ適正に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】本発明の検査対象の一例であるコンクリート柱を概念的に示す説明図である。
図2】本発明の参考例の形態に係る非破壊検査システムを示すブロック図である。
図3】本発明の参考例の形態に係る非破壊検査方法における風船の挿入時の態様を、要部を拡大して示す概略構成図である。
図4】本発明の参考例の形態に係る非破壊検査方法における風船の挿入時の態様を、要部を拡大して示す概略構成図である。
図5】本発明の参考例の形態に係る非破壊検査方法における風船の挿入時の態様を、要部を拡大して示す概略構成図である。
図6】本発明の参考例の形態に係る非破壊検査方法における風船の挿入時の態様を、要部を拡大して示す概略構成図である。
図7】本発明の参考例の形態により構造物の状態を非破壊検査する図1と同様のコンクリート柱の要部を示す図で、(a)は縦断面、(b)は拡大横断面図である。
図8】本発明の実施の形態に係る非破壊検査システムに用いる飛翔体を停止時の状態で示す図で、(a)は縦断面で示す概略構成図、(b)は(a)のA−A′線矢視図である。
図9】本発明の実施の形態に係る非破壊検査システムに用いる飛翔体を昇降時の状態で示す図で、(a)は縦断面で示す概略構成図、(b)は(a)のB−B′線矢視図である。
図10】本発明の実施の形態に係る非破壊検査システムを示すブロック図である。
図11】本発明の実施の形態に係る非破壊検査方法における飛翔体の挿入時の態様を、要部を拡大して示す概略構成図である。
図12】本発明の実施の形態に係る非破壊検査方法における飛翔体の挿入時の態様を、要部を拡大して示す概略構成図である。
図13】本発明の実施の形態に係る非破壊検査方法における飛翔体の挿入時の最終態様を、要部を拡大して示す概略構成図である。
図14】本発明の実施の形態に係る非破壊検査方法における飛翔体の上昇開始時の態様を、要部を拡大して示す概略構成図である。
図15】本発明の実施の形態に係る非破壊検査方法における飛翔体の上昇時の態様を、要部を拡大して示す概略構成図である。
図16他の参考例に係る非破壊検査方法における風船を挿入して浮力により浮かせた態様の概略構成図である。
図17他の参考例に係る非破壊検査方法における風船の昇降状態を示す図で、(a)は最上昇時の概略構成図、(b)は下降途中の概略構成図、(c)は下降終了時の概略構成図、(d)は取り出している状態の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。なお、以下の実施の形態における上下方向に長尺の構造物は、コンクリート柱であり、検査対象となる内周面はコンクリート柱の内周面、狭隘な挿入口は足場ボルトの取付孔である。本発明は、勿論、これらに限定するものではないが、内部空間が準密閉空間となっており、内部空間に連通する挿入口が内部空間に較べてきわめて狭隘な構造物に適用して有用なものである。
【0063】
参考例の形態>
図1に示すように、コンクリート柱1は、長尺の多数の鉄筋(図1には図示せず)を円筒状に配筋した後、コンクリートを充填し、鉄筋とコンクリートとを一体化して円筒状に形成したものであり、下端部を地面2から地中に埋め込んで垂直に立設される。この種のコンクリート柱1には、高さ方向に所定の間隔で足場ボルト3が水平に突出させて配設してある。足場ボルト3はコンクリート柱1の外周面から内周面1Aに向けて厚さ方向に形成したネジ部に螺合されている。ここで、コンクリート柱1の肉厚は4cm程度、したがって風船6を挿入する挿入口4の厚さ方向の寸法は4cm程度、また挿入口4の径は通常15mm程度である。一方、内部空間5の径は30cm〜10cm程度である。したがって、コンクリート柱1の内部空間5が唯一外部に連通する挿入口4は、狭隘な孔となっている。ここで、コンクリート柱1の多くは根元から先端に向かって径が漸減するテーパー状となっている。
【0064】
本形態では、足場ボルト3の一つを取外すことにより形成されるコンクリート柱1の挿入口4から萎んだ風船を内部空間5に挿入する(挿入方法等に関しては後述する)とともに、内部空間5内を上昇させて風船6に紐7で連結された撮像手段8によりコンクリート柱1の内周面1Aの画像情報を収集する。ここで、風船6の昇降は、撮像手段8を介して風船6に連結した紐9を引くことにより調整する。すなわち、紐9の一端は撮像手段8に結束してあり、他端は挿入口4を介してコンクリート柱1の外部に引出されている。そこで、作業員が紐9の他端を引くことにより風船6の高さ位置を調整する。ここで、内部空間5に送り込まれている紐9の長さにより撮像手段8の高さ位置を特定することができ、撮像手段8で撮像した画像の内周面1Aにおける位置も特定し得る。
【0065】
かかる画像情報に基づきコンクリート柱(構造物)1の内周面1Aの状態を検査する非破壊検査システムを図2に示す。図2は、本形態に係る非破壊検査システムを示すブロック図である。当該非破壊検査システムは、風船6に紐7で一体的に連結されてコンクリート柱1(図1参照;以下同じ)の内部空間5(図1参照;以下同じ)を、風船6の浮力により一体的に上昇する撮像手段8によりコンクリート柱1の内周面1Aの画像情報を収集するとともに、当該画像情報に基づき内周面1A(図1参照;以下同じ)の状態を検査する。
【0066】
撮像手段8は風船6の浮力により充分上昇し得る程度の重量のものであり、カプセル内視鏡に利用されている超小型の撮像素子8A、撮像素子8Aに内周面1Aの画像を結像させるレンズ8Bおよび撮像素子8Aで収集した画像信号を送出する送信機8Cで好適に構成することができる。送信機8Cから送出される画像信号はコンクリート柱1の外部の受信機10で受信され、パソコン等で構成する画像処理手段11で所定の画像処理が行なわれる。この結果、モニター12に内周面1Aの画像が再生される。かかる再生画像で内周面1Aの状態を把握する。
【0067】
なお、本形態の如く、画像信号を無線送信する場合、無線通信に用いる電波がコンクリート柱1に配設された鉄筋16(図7参照;以下同じ)の影響を受けないように無線通信における周波数を選択する。ちなみに、無線LAN、Bruetoothで使用されている電波の周波数は、2GHz以上で、波長は10cm以下となる。一方、鉄筋16の間隔も10cm〜数cmである。したがって、この場合、鉄筋16による遮蔽の問題は無視し得ると考えられる。
【0068】
さらに、コンクリート柱1の内部と外部との通信に無線方式を採用する場合は、挿入口4を利用して内部空間5内にアンテナを臨ませるように構成することにより、当該通信の質を向上させることができる。
【0069】
なお、本形態では、画像信号を、送信機8Cを介して外部の受信機10に無線送信するようにしたが、紐9を導線で形成することにより、該導線を利用して画像信号を画像処理手段11に直接供給することもでき、またマイクロチップ状の記憶素子を搭載しておき、風船6の回収とともに前記記憶素子を回収するようにしても良い。ただ、風船6の浮力との関係を考慮すれば、またリアルタイムの画像情報が得られる点を考慮すれば、本形態の無線方式がより好ましい。一方、記憶素子を搭載した場合は、風船6とともに記憶素子を回収することで撮像したコンクリート柱1の内周面の画像データを適宜再生することができる。したがって、記憶素子を持ち帰ることで、コンクリート柱1が存在する現場に限らず、遠隔のラボ等で必要な画像処理等の後処理を行うことができる。
【0070】
撮像手段8としては、対物レンズ(例えば、魚眼レンズ)を備えたカメラを適用することも可能である。また、吊り下げられた状態のカメラを旋回自在に支持することも可能である。カメラを旋回させながら昇降することで、コンクリート柱1の内周面の全周を正面から撮影することができる。
【0071】
本形態によれば、風船6に浮力を与えてコンクリート柱1の内部空間5を昇降させることができる。そして、風船6の昇降に伴い、撮像手段8でコンクリート柱1の内周面1Aの画像情報を得ることができるので、その状態、すなわち内周面1Aの亀裂、ひび割れ等の状態を的確に検査することができる。
【0072】
図3図6は、本発明の参考例の形態に係る非破壊検査方法における風船の挿入時の態様を、要部を拡大して示す概略構成図である。まず、図3に示すように、萎んだ風船6を挿入口4を介して内部空間5に挿入する。かかる挿入作業に先立ち、挿入口4にガイド13を装着しておく。このガイド13は、長手方向(軸方向)の先端が内部空間5の上方に向くように傾斜する曲面である傾斜面を有するとともに横断面形状が半円形の樋状の部材である。また、風船6の内部空間5への挿入時に使用するよう挿入口4に対して着脱可能に形成してある。
【0073】
風船6はその下面がガイド13に当接した状態でガイド13に載置される。ここで、風船6における気体の供給口である首部6A、すなわち専ら風船6の内部に気体を充填する際の通路となるだけで、膨らむ部分ではない風船6の首部6Aの寸法L1はコンクリート柱1の厚さL2よりも長くなるように構成してある。そこで、首部6Aの気体充填口となる先端の開口6Bを挿入口4からコンクリート柱1の外部に臨ませた状態で挿入口4から内部空間5に挿入する。
【0074】
かかる状態で図4に示すように、気体充填手段14により浮力を発生するための気体を開口6Bを介して風船6に充填する。ここで、通常状態における内部空間5は空気で充満させているので、風船6に充填する気体は、空気よりも比重が小さいヘリウムガスや水素ガスとする。かかる気体充填工程において気体が充填される風船6は膨らんで軸方向に沿いガイド13の先端部側に伸びる。
【0075】
さらに気体を充填すると風船6はガイド13の軸方向に沿って伸びる結果、図5に示すように、内部空間5内において先端が上方を向いた状態となる。この結果、風船6は、最終的に図6に示すような姿勢となって、内部空間5を上昇する。
【0076】
風船6の上昇に伴い、内部空間5の頂部に達した後、撮像手段8を介して風船6に結合されている紐9を引くことにより浮力に抗して風船6を下降させることができる。かかる下降時に撮像手段8により内周面1Aの画像を撮像して無線送信された画像信号に基づき所定の画像処理を行なうことにより非破壊検査を行なう。
【0077】
なお、所定の非破壊検査は風船6の上昇時に収集した画像信号に基づいても良く、また、上昇時および下降時の両方の画像信号に基づいても良い。
【0078】
さらに、上述の如き風船6の上昇工程に先立ち内部空間5に、風船6に充填する気体よりも比重が大きい気体を充填するとともに、気体充填手段14により充填する気体を、内部空間5に充填した気体よりも比重が小さい気体とすることもできる。この場合の比重が大きい気体としては、例えばアルゴンを利用することができ、これらの気体を充填した場合には、風船6に充填する気体が空気であっても、所定の浮力を得ることができる。さらに、空気よりも比重が大きい気体を内部空間5に充填した状態で、風船6にヘリウムや水素ガスを充填した場合には、より大きな浮力を得ることができる。したがって、撮像手段8の重量等を考慮して最適な浮力を得るよう工夫することが肝要である。
【0079】
なお、この場合には、風船6を内部空間に挿入した後、上述の如き風船6の上昇工程に先立って風船6に充填する気体よりも比重が大きい気体を内部空間5に充填した後、ブッシング等で挿入口4の入口を閉塞することにより内部空間5に充填した気体の外部への漏洩を防止する。
【0080】
参考例の形態>
図7は本発明の参考例の形態により構造物の状態を非破壊検査する図1と同様のコンクリート柱の要部を示す図で、(a)は縦断面図、(b)は拡大横断面図である。本形態は、撮像手段18を、赤外線画像信号を得るもので形成したものである。他の構成は、基本的には、前述した参考例の形態と同じである。そこで、同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。ただ、両図に示すように、本形態は、特に鉄筋16の状態を検査し得るようにしたものであるので、鉄筋16を集中的に加熱する誘導加熱手段15を追加してある。
【0081】
誘導加熱手段15は、誘導加熱用のコイル15Aと、コイル15Aに所定の高周波電流を供給する高周波電源15Bとを有している。ここで、コイル15Aはコンクリート柱1の地面2の近傍部分において、コンクリート柱1の全周に亘って巻回してある。かくして、コイル15Aに高周波電源15Bから所定の高周波電流を供給することによりコンクリート柱1、特に導電体であるその鉄筋16が誘導加熱される。かかる誘導加熱により鉄筋16が選択的に加熱された場合、鉄筋16が健全であれば、鉄筋16は均一に加熱される。一方、腐食や破断等を生起している場合には、腐食や破断部位で伝熱態様が変化する。すなわち、熱の伝わり方が悪くなるか、または遮断されるので、鉄筋16の腐食や破断部位の近傍では温度分布の顕著な差異が認められる。かかる温度分布を表す画像情報は、撮像手段18を赤外線撮像手段とすることで良好に得ることができる。ここで、風船6を昇降させて行う内周面1Aの画像情報の収集方法自体は第1の実施の形態と何ら異なるところはない。
【0082】
したがって、本形態によれば、撮像手段18が収集した内周面1Aの状態を表す赤外線画像信号を画像処理手段(図示せず)で処理することにより、コンクリート柱1の内周面1Aの、特に風船6が昇降される中央部から上部にかけての領域における温度分布を分析して鉄筋16の温度分布を評価し、鉄筋16の腐食、破断等の状態も検査することができる。
【0083】
なお、本形態では、誘導加熱手段15を用いて鉄筋16を集中的に加熱し得るようにしたが、必ずしもこのように構成する必要はない。赤外画像のコントラストを得るためであれば、特に誘導加熱に拘る必要はない。他の加熱手段であるリボンヒータ等でも良く、また特別な加熱手段を設けることなく太陽光による加熱を利用することもできる。
【0084】
実施の形態
図8は、本発明の実施の形態に係る非破壊検査システムに用いる飛翔体を停止時の状態で示す図で、(a)は縦断面で示す概略構成図、(b)は(a)のA−A′線矢視図、図9は、本発明の第3の実施の形態に係る非破壊検査システムに用いる飛翔体を昇降時の状態で示す図で、(a)は縦断面で示す概略構成図、(b)は(a)のB−B′線矢視図である。本形態は、前述した参考例の形態における昇降手段としての風船6の代わりに飛翔体(ヘリコプター)を用いたものである。
【0085】
図8に示す飛翔体はローターを折りたたんだ状態(挿入口4を介して内部空間5に挿入する前の状態)を示しており、図9に示す飛翔体はローターを回転させて内部空間5内で揚力を発生せる状態を示している。両図に示すように、飛翔体Iは、モーター等を内蔵する回転駆動手段20により垂直軸回りに回転可能に形成された同軸の回転軸21および円筒状の筒状回転軸22を有している。内側回転部材23は回転軸21と一体的に、また外側回転部材24は筒状回転軸22と一体的に回転する。さらに詳言すると、回転軸21の外周面には周方向に分散させて複数のスプライン21Aが形成されており、各スプライン21Aに内側回転部材23がスプライン溝を介してスプライン嵌合されている。一方、筒状回転軸22の外周面には周方向に分散させて複数のスプライン22Aが形成されており、各スプライン22Aに外側回転部材24がスプライン溝を介してスプライン嵌合されている。
【0086】
内側回転部材23はその外周面が筒状回転軸22の内周面に接するように、筒状回転軸22に回転可能に嵌め込まれている。かくして、内側回転部材23は回転軸21のスプライン21Aに沿って軸方向(図中の上下方向)に移動するとともに、回転軸21の回転に対しては一体的に回転する。ここで、内側回転部材23の上端には、遠心方向に突出するフランジ部23Aが設けてあり、フランジ部23Aの下端面が筒状回転軸22の上端に形成された上部フランジ部22Bに当接される。かかる当接位置が内側回転部材23の最下位位置を規制する下方規制位置となる。一方、回転軸21の頂部には遠心方向に突出するフランジ部25が固着されており、フランジ部25の下端面に上昇してきた内側回転部材23の上端面が当接される。かかる当接位置が内側回転部材23の最上昇位置を規制する上方規制位置となる。すなわち、内側回転部材23は、下方規制位置(図8(a)参照)と、上方規制位置(図9(a))との間をスプライン21Aに沿って上昇ないし下降する。
【0087】
外側回転部材24は筒状回転軸22のスプライン22Aに沿って軸方向(図中の上下方向)に移動するとともに、筒状回転軸22の回転に対しては一体的に回転する。ここで、筒状回転軸22は、上部フランジ部22Bの他に下部フランジ部22Cも有する。下部フランジ部22Cは筒状回転軸22の途中に遠心方向に突出させて形成してあり、外側回転部材24の下端面に当接して外側回転部材24の下方位置を規制する。一方、外側回転部材24はその上端面が上部フランジ部22Bの下端面に当接されてその上方位置が規制される。すなわち、外側回転部材24は、下方規制位置(図8(a)参照)と、上方規制位置(図9(a))との間をスプライン22Aに沿って上昇ないし下降する。
【0088】
それぞれ二本のローター26,27は、それぞれの基端部が、内側回転部材23と外側回転部材24とにヒンジ部28,29を介して回動可能に取付けられている。ここで、ローター26とローター27は周方向に90度ずつずらして配設されている。また、回転軸21と筒状回転軸22は反対方向に回転されてローター26およびローター27を反対方向に回転させる。このように、ローター26とローター27を反対方向に回転させることにより、飛翔体Iを軸方向(垂直方向)に沿い起立した姿勢を維持して安定的に昇降させることができる、いわゆる二重反転ローラーを構成している。
【0089】
回転駆動手段20の周面にはローター26,27に対応させて磁石30が配設してある。この結果、回転軸21および筒状回転軸22の回転が停止(図8参照)されてヒンジ部28,29から垂下されているローター26,27の先端部が磁石30との間で作用する磁力により磁石30に固着される。一方、回転軸21および筒状回転軸22の回転が開始(図9参照)された場合には磁石30の磁力による吸引力を振り切って磁石30による固着状態が解除される。かくして本形態では、ローター26,27の折り畳み状態を磁力でロックすることができる。
【0090】
なお、かかるロック構造は必ずしも必要ではない。ローター26,27はヒンジ部28,29から自重で垂下されるので、折り畳み自体は可能であるからである。ただ、かかる折り畳み状態をロックすることで、挿入口4(図11参照;以下同じ)を介した飛翔体Iの挿入および取り出しを円滑に行うことができる。
【0091】
図8に示すようにローター26,27を折り畳んだ状態ではフランジ部25の上面が電磁石31に吸着されている。電磁石31は円柱状のコア31Aの円周面にコイル31Bを巻回したもので、給電用の導線を兼ねる紐32を介してコンクリート柱1の外部から給電されることで発生する磁力によりフランジ部25を介して飛翔体Iを吊下し得る。ここで、飛翔体Iの最大径L3は挿入口4の径よりも小さくなっている。すなわち、ローター26,27を折り畳んだ図8に示す状態では、飛翔体Iは挿入口4に挿入可能な大きさとなっている。
【0092】
本形態における飛翔体Iでは、回転軸21の回転が停止されている状態(図8に示す状態)では、内側回転部材23およびローター26の自重で下降する内側回転部材23の下降位置が上部フランジ部22Bで規制され、同時に外側回転部材24およびローター27の自重で下降する外側回転部材24の下降位置が下部フランジ部22Cで規制される。一方、回転軸が回転されている状態(図9に示す状態)では、ローター26の回転により得られる揚力で上昇する内側回転部材23の上昇位置をフランジ部25で規制するとともに、ローター27の回転により得られる揚力で上昇する外側回転部材24の上昇位置を上部フランジ部22Bで規制する。
【0093】
上述の如き飛翔体Iを利用して収集する画像情報に基づきコンクリート柱1の内周面1Aの状態を非破壊検査する場合の非破壊検査システムのブロック図を図10に示す。同図に示す非破壊検査システムにおいて画像情報の収集を行う部分の構成は、図2に示す第1の実施の形態と同様である。そこで、図10中、図2と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。一方、当該非破壊検査システムは、飛翔体Iの駆動制御系を有している。具体的には、コントローラ41により生成した駆動制御信号を送信機42を介して受信機43に無線送信し、回転駆動手段20の所定の回転駆動を制御する。ここで、図示はしないが、飛翔体Iの内部空間5内における高さ位置の情報と組み合わせれば、特定の位置に止まって(ホバリング)内周面1Aの画像情報を得るように制御する等、最適なローター26,27の回転数制御等を行うこともできる。このときの高さ情報は、第1の実施の形態と同様に、例えば撮像手段8に連結されている紐9の内部空間5に対する送り込み量を検出することで得ることができる。
【0094】
なお、本形態では、画像信号を、送信機8Cを介して外部の受信機10に無線送信するようにしたが、紐9を導線で形成することにより、該導線を利用して画像信号を画像処理手段11に直接供給することもでき、またマイクロチップ状の記憶素子を搭載しておき、飛翔体Iの回収とともに前記記憶素子を回収するようにしても良い。ただ、飛翔体Iの揚力との関係を考慮すれば、またリアルタイムの画像情報が得られる点を考慮すれば、本形態の無線方式がより好ましい。一方、記憶素子を搭載した場合は、飛翔体Iとともに記憶素子を回収することで撮像したコンクリート柱1の内周面の画像データを適宜再生することができる。したがって、記憶素子を持ち帰ることで、コンクリート柱1が存在する現場に限らず、遠隔のラボ等で必要な画像処理等の後処理を行うことができる。
【0095】
なお、本形態においても、参考例の形態と同様に、画像信号を無線送信する場合、無線通信に用いる電波がコンクリート柱1に配設された鉄筋16の影響を受けないように無線通信における周波数を選択する。また、参考例の形態と同様に、コンクリート柱1の内部と外部との通信に無線方式を採用する場合は、挿入口4を利用して内部空間5内にアンテナを臨ませるように構成することで当該通信の質を向上させることができる。
【0096】
本形態によれば、ローター26,27の回転により飛翔体Iに揚力を与えてコンクリート柱1の内部空間5を昇降させることができる。そして、飛翔体Iの昇降に伴い、撮像手段8でコンクリート柱1の内周面1Aの画像情報を得ることができるので、その状態、すなわち内周面1Aの亀裂、ひび割れ等の状態を的確に検査することができる。
【0097】
図11図15は、本発明の実施の形態に係る非破壊検査方法における飛翔体の挿入時の態様を、要部を拡大して示す概略構成図である。まず、図11に示すように、ローター26,27を折り畳み、磁石30でローター26,27をロックするとともに、電磁石31によりフランジ部25を電磁石31に吸着させた状態で挿入口4を介して内部空間5に挿入する。ここで、電磁石31には紐32が連結され、撮像手段8には紐9が連結されているので、紐32および紐9の張力を調整することで、飛翔体Iの姿勢を図11に示すように、フランジ部25が上になるように起立した姿勢とする。
【0098】
次に、図12に示すようにガイド33を挿入口4に装着する。ガイド33は、長手方向(軸方向)の先端が内部空間5に臨むように内部空間5内に直線的に突出させて装着される、横断面形状が半円形の樋状の部材である。また、飛翔体Iの内部空間5への挿入時に使用するよう、挿入口4に対して着脱可能に形成してある。ここで、前工程で内部空間5内に挿入した飛翔体Iを吊下している紐32をガイド33の上方に配設した状態で、ガイド33の先端で内部空間5の中心部に向けて押す。このとき、紐9はガイド33の下に配置しておく。
【0099】
かかる挿入工程により、図13に示すように、飛翔体Iが内部空間5の中心部で吊下された状態となるようガイド33を押し込む。ここで、紐9を充分長くすることにより挿入口4の内部空間5側から内部空間5内に吊下される紐9をコンクリート柱1の内周面1Aに沿わせて飛翔体Iとの間隔を充分大きくとる。かかる状態でローター26,27を回転させる。この結果、ローター26,27はそれぞれの先端部が磁気吸着の磁力を振り切って回転する。このことにより得られる揚力で内側回転部材23および外側回転部材24(図8図9参照;以下同じ)がスプライン21A,22A(図8図9参照;以下同じ)に沿ってフランジ部25および上部フランジ部22B(図8図9参照;以下同じ)に位置規制されるまで上方に移動する。
【0100】
この結果、図14に示すように、内側回転部材23および外側回転部材24がフランジ部25および上部フランジ部22Bに位置規制されてローター26,27が回転しているホバリング状態で給電線を兼用する紐32を介して電磁石31への給電を停止するとともにガイド33を挿入口4から取外す。電磁石31への給電停止により電磁石31によるフランジ部25の吸着が解除されるので、電磁石31および紐32による拘束から開放された飛翔体Iは、図15に示すように、内部空間5内を自由に昇降する。この結果、第1の実施の形態と同様の態様で、撮像手段8により内周面1Aの画像情報が収集され、これに基づき所定の非破壊検査を行うことができる。
【0101】
なお、所定の非破壊検査は飛翔体Iの上昇時または下降時に収集した画像信号に基づいても良く、また、上昇時および下降時の両方の画像信号に基づいても良い。
【0102】
また、所定の画像収集が終了しローター26,27の回転を停止した場合には、ローター26,27および内側回転部材23、外側回転部材24は下降して上部フランジ部22B、下部フランジ部22Cに当接した状態でローター26,27が折り畳まれ、磁石30に吸引されて飛翔体Iが図8に示す状態となる。かかる状態では、最大径L3が挿入口4の径よりも小さいので紐9を引くことにより挿入口4を通ってコンクリート柱1の外部に回収することができる。
【0103】
本形態においても撮像手段8を赤外線画像信号を得るもので形成することもできる。この場合には、図7に示す風船6を飛翔体Iで置き換え、図10に示すシステムと組み合わせた実施の形態が成立する。
【0104】
参考例の形態
図16は、本発明の参考例の形態に係る非破壊検査方法における風船を挿入して浮力により浮かせた態様の概略構成図である。また、図17は、本発明の参考例の形態の形態に係る非破壊検査方法における風船の昇降状態を示す図で、(a)は最上昇時の概略構成図、(b)は下降途中の概略構成図、(c)は下降終了時の概略構成図、(d)は取り出している状態の概略構成図である。
【0105】
参考例の形態は、前述した参考例の形態の構成に対して、風船6から徐々に気体を抜くための気体放出手段を備えたものである。このため、図1から図6に示した参考例の形態と同じ構成部材には同じ符号を付してあり、具体的な説明は省略してある。
【0106】
図16に示すように、風船6の首部6Aには気体を徐々に抜くための気体放出手段としての絞り弁51が設けられている。第1の実施の形態と同様に風船6に気体を充填することで風船6(撮像手段8)が最上部まで上昇する。
【0107】
時間の経過とともに、風船6から徐々に気体が抜け、所定時間経過後に風船6(撮像手段8)が最下部まで自然に下降する(人の手や機械的手段を用いることなく下降する)。撮像手段8が所定時間かけて下降する過程でコンクリート柱1の内周面の画像を入手する。下降後は、紐9を引くことで挿入口4から風船6、撮像手段8が回収される。
【0108】
つまり、図17(a)に示すように、風船6に気体が充填されると、風船6(撮像手段8)がコンクリート柱1の最上部まで上昇する。時間の経過により絞り弁51から気体が抜け、図17(b)に示すように、風船6(撮像手段8)がコンクリート柱1の内部を下降する。絞り弁51から気体が抜け続け、更に時間が経過すると、図17(c)に示すように、地中に埋設されている部位のコンクリート柱1の最下部に下降する。最下部まで下降する過程で、撮像手段8でコンクリート柱1の内周面の画像情報を得る。
【0109】
地中に埋設されている部位の最下部に下降した風船6(萎んだ風船6)、撮像手段8は、図17(d)に示すように、例えば、作業員が紐9を手繰り寄せることで、挿入口4からコンクリート柱1の外に回収する。
【0110】
このため、撮影時にその場に居る必要がなく、所定の時間が経過した後に回収することで、効率的な検査を行うことができる。特に、多数の構造物に対して検査を行う場合、複数の装置を用意し、自動撮影を終了した後に装置を纏めて回収することで、非常に効率の良い検査を行うことができる。
【0111】
気体放出手段としては、絞り弁51に代えて、気体流通量を制御することができる流量制御弁を設けることができる。流量制御弁を適用することにより、風船6の下降の時間を制御することができる。また、風船6が適切なガス透過度を有するゴム製や樹脂フィルム製であれば、風船6自体に気体放出手段を備えていることになり、特別な機構を設けることなく時間の経過とともに内部の気体が自然に抜ける。また、アルミを蒸着した風船を用い、蒸着を一部欠落させて欠落部位から気体が抜ける構造を採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は実質的に閉じた内部空間となっている、例えばコンクリート電柱や鉄塔を保持し、これらの内周面の状態を把握して保守・点検を合理的かつ的確に実施する必要がある電力業界等で利用し得る。
【符号の説明】
【0113】
I 飛翔体
1 コンクリート柱
1A 内周面
3 足場ボルト
4 挿入口
5 内部空間
6 風船
6A 首部
7,9,32 紐
8 撮像手段
10 受信機
11 画像処理手段
13,33 ガイド
14 気体充填手段
15 誘導加熱手段
15A コイル
15B 高周波電源
16 鉄筋
18 撮像手段
20 回転駆動手段
21 回転軸
21A,22A スプライン
22 筒状回転軸
22B 上部フランジ部
22C 下部フランジ部
23 内側回転部材
24 外側回転部材
26,27 ローター
30 磁石
31 電磁石
51 絞り弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17