(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
短下肢装具は、痙縮等によって歩行が困難となった障害者の歩行基本動作を支援する福祉用具である。しかし、近年の研究より、短下肢装具の装着は、歩行動作中の蹴り出し時の推進力を低下させることが報告されている(非特許文献1)。
【0008】
この原因は、特許文献1の短下肢装具のように、足底部が全面的に硬質素材で形成されているため、蹴り出し動作が完全に抑制されている点であると考えられた。
【0009】
一方、特許文献2のように、指先まで足底部がないタイプは、比較的麻痺が軽度である場合に使用される。このようなタイプでは、中足指節関節から先の背屈運動が制限されないため、蹴り出し動作が抑制されることはない。しかし、痙直性尖足が伴っている場合は、指先を支持する必要がある。
【0010】
つまり、麻痺が重い場合であっても、蹴り出し動作が抑制されず、なおかつ指先を支持できる短下肢装具が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みて想到されたものであり、指先まで支持をしながら、歩行時の蹴り出し動作を抑制しない短下肢装具を提供するものである。
【0012】
より具体的に本発明に係る短下肢装具は、
図3に示すように、
爪先部位10gには底面10cがなく、アキレス腱部10e位の上方は踝部位10bより高い位置まで延設された硬質素材の足部本体12と、
前記足部本体12の底面10cに、前記足部本体12の少なくとも土踏まず部位から前記爪先部位10gまでの長さに配置された可撓性部材14とを含む足部10と、
前記踝部位10bで底背屈可能に枢支され、下端は、前記アキレス腱部10e位より下方まで延設され、腓腹筋側を覆う硬質素材の下腿部30を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る短下肢装具は、
図3に示すように、底面10cを爪先部位10gまで延設せず、代わりに可撓性部材14を爪先部位10gまで配置しているので、蹴り出し時に中足指節関節部位10dの背屈動作を規制しない。そのため、蹴り出し時の推進力を低下させないという効果を奏する。一方、可撓性部材14は、ある程度の強度を有しているので、指先は完全にフリーにはならず、痙直性尖足が伴っていても指先を支持することができる。
【0014】
また、本発明に係る短下肢装具を装着すると、歩行周期中を通して足関節は背屈位に維持され、前脛骨筋の筋活動が増加する所見が観察された。つまり、本発明に係る短下肢装具は、足関節に痙縮を有する脳性麻痺や脳卒中片麻痺になった障がい児・者の変形・拘縮などの二次障害の予防に寄与するという効果を奏する。これは、特に身体発達段階にある児童の場合に意義ある効果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に図面を用いて本発明に係る短下肢装具について説明する。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態を例示するものであり、本発明は以下の説明に限定されるものではない。以下の実施形態で説明される短下肢装具は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、改変することができる。
【0017】
図1に本発明に係る短下肢装具1の斜視図を示す。また、
図2には、本発明の短下肢装具1を足に装着した状態の斜視図を示す。本発明に係る短下肢装具1は、足部10と、下腿部30を有する。足部10は、足部本体12と、可撓性部材14を有する。また、インソール16と、ソール18及び調整シート20が含まれていてもよい。これらの詳細な説明は後述する。
【0018】
足部本体12と下腿部30は、プラスチック樹脂の比較的軽量な硬質素材で形成されている。たとえば、ポリプロピレンが好適に利用できる。ここで、硬質素材とは、短下肢装具1を装着した人が歩行運動を行っても、ほとんど変形しない程度の硬さを有する部材をいう。なお、部材を構成する材料自体の硬度が低くても、形状は構造によって強度を有し、ほとんど変形しないものであってもよい。
【0019】
図3には、短下肢装具1の側面図(
図3(a))と背面図(
図3(b))を示す。足部本体12は、踵部位10aの上方が踝部位10bより上まで延設されており、人の踵および足の内外側面に沿って部材壁が形成されている。底面10cは、踵部位10aから中足指節関節部位10dまで、設けられている。踝部位10bには、下腿部30を枢支するための、ブラケット部10baが形成されている。短下肢装具1においては、このブラケット部10baを踝部位10bと称するが、装着する人の実際の踝と一致する必要はない。
【0020】
内外側面に沿った部材壁と踝部位10bの部材壁の高さは、装着者が違和感を感じないように決めることができる。
【0021】
踵部位10aの上方は、踝部位10bより上方まで部材壁が延設されている。踵部位10aから、踝部位10bより上方に延設された部材壁の先端までをアキレス腱部10eと呼ぶ。アキレス腱部10eは、装着する人の腓腹筋の一部に重複する程度まで延設してよい。アキレス腱部10eには、下腿部30と重なり合う部分が設けられる。
【0022】
下腿部30の内面と、足部10の本体の踵部位10aの内面は、装着する人の足の脹脛(下腿三頭筋)に沿った形状に形成される。したがって、下腿部30と重なり合うアキレス腱部10eは、下腿部30の厚み分だけ外側に張り出す。この部分は下腿部30の底屈を規制する。したがって、ストッパー10fといってもよい。
【0023】
下腿部30は、装着する人の足の膝下背面に当たる部分に部材壁を有する。この部材壁は、装着する人の腓腹筋の上部から足部本体12の踝部位10bの下方まで延設される。下腿部30の下方両側面には、足部本体12の踝部位10bにあるブラケット部10baに対向する位置に、連結部30baが設けられる。この連結部30baと足部本体12のブラケット部10baで足部10と下腿部30は連結される。したがって、足部10は、下腿部30に対して、底背屈自在に枢支されることになる。
【0024】
一方、下腿部30は、足部本体12のアキレス腱部10eに対向する(ストッパー10fの部分)位置において、足部本体12と重なり合う。したがって、足部本体12、ストッパー10fの部分で下腿部30と当接すると、それ以上は底屈できない。つまり、底屈方向の回転については、規制がかかっている。背屈方向の回転については、装着者の可能な限り回転させることができる。
【0025】
図4に足部10の分解側面断面図を示す。下腿部30の一部も描いてある。すでに説明したように、足部本体12の部材壁は、踵部位10aから装着者の中足指節関節部位10dまで延設されている。そして、足部本体12の底面10cに可撓性部材14が貼り付けられている。可撓性部材14の下には、調整シート20が配置される。調整シート20は、足部本体12の底面10cの部材壁の厚さから、爪先部位10gに向かって徐々に薄くするための厚み調整用に配置される。したがって、装着者は、足部本体12が中足指節関節部位10dで終わっていることを意識しない。調整シート20と足部10材の裏面は、ほぼ面一の関係になっている。インソール16は、可撓性部材14の上面に貼り付けられる。また、足部10の裏面にはソール18が貼り付けられる。
【0026】
可撓性部材14は、可撓性を有していれば特に素材に限定はない。しかし、可撓性部材14が折り曲げられて、元に戻ろうとする力が強ければ、装着者の蹴り出し時の推進力の補助となり得る。したがって、弾性もしくは靭性に優れた素材で構成されるのが望ましい。例えば、エラストマー特性を有するエポキシ樹脂をマトリックス樹脂として用いた炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforce Plastics:以後単に「CFRP」と記す。)は好適に利用することができる。マトリックス樹脂にエラストマー特性を有するエポキシ樹脂を用いたCFRPは、「ソフトCFRP」とも呼ばれている。
【0027】
ソフトCFRPは、炭素繊維強化プラスチックであるため、繊維の配列方向(シートの場合は、面内方向)の引っ張り及び圧縮方向に高いヤング率を有しており、非常に高い強度を有する。しかし、繊維の配列方向に垂直な方向(シートの場合は、法線方向)に関しては靭性を持っており、破壊されることなく、撓むことができる。つまり、可撓性だけでなく、耐久性にも優れている。したがって、可撓性部材14として好適に利用することができる。
【0028】
もちろん、上記のように可撓性部材14は、ソフトCFRP以外の材料でもよい。さらに、単一の素材からなるものではなく、複数の部材を混合若しくは積層して構成されていてもよい。
【0029】
可撓性部材14は、踵部位10aから装着者の爪先部位10gまでの長さで形成されているのが望ましい。しかし、足部本体12の底面10cと一部分は接着されていれば、それ以上の長さの必要性はない。したがって、少なくとも中足指節関節部位10d部分より踵部位10a側にある土踏まず部位から爪先部位10gまでの長さがあればよい。
【0030】
足部本体12の裏面には、ソール18が配置される。ソール18は、ポリウレタンやゴムで形成される。ソール18は短下肢装具1の直接の足裏に相等する部分となる。ソール18は、踵部位10aから爪先部位10gまでの長さで形成されるのが好ましい。
【0031】
また、可撓性部材14の上側にはインソール16が配置される。足部本体12の底面10cや可撓性部材14は平坦な形状をしている。短下肢装具1を装着する人は、一日のうち、長時間の間、短下肢装具1を装着している。したがって、足の裏が直接触れるインソール16の部分は、装着者がすこしでも楽になるような形状を付与するのが望ましい。具体的には、装着者の足裏形状に合わせて、踵部位10aから中足指節関節部位10dの部分まで土踏まずに対応するアーチ状盛り上がり部16aが設けられている。
【0032】
また、アーチ状盛り上がり部16aは、装着者の中足指節関節部位10dの曲線にあわせて前方にも凸形状に形成されている。
【0033】
インソール16はまた踵部位10aから爪先部位10gまで足裏全面に対向するように形成される。直接装着者の足裏が接するからである。インソール16は、多少の弾力性を持たせることで、装着時の快適性を高めることができる。したがって、ポリウレタンや発泡ポリウレタン等が好適に利用できる。
【0034】
以上のように、足部10には、インソール16、可撓性部材14、調整シート20、ソール18の4種類のシートが配置される。このうち、インソール16、調整シート20、ソール18は、装着感を快適にする点に寄与する部材といってもよい。ただし、少なくともインソール16は、可撓性部材14との協同によって、曲げられた状態から元に戻ろうとする復元力に寄与する部分もある。
【0035】
図5に足部10を底側から見た図を示す。すでに説明しているように、足部本体12は、踵部位10aから中足指節関節部位10dまで延設されている。そして、足部本体12の底面10cは、前方に凸形状に形成されている。
図5では、足部本体12の凸形状12aは点線で示した。この凸形状は、インソール16のアーチ状盛り上がり部16aに形成された前方凸形状にほぼ一致させるのが望ましい。インソール16のアーチ状盛り上がり部16aの強度を高めるためである。
【0036】
図6に足部10の各構成部品を模式的に示した模式断面図を示す。各部の厚みは実際の尺度や形状を無視し、各部の配置と特徴が分かりやすいように示してある。足部本体12は、熱可塑性の樹脂等で形成されている。したがって、足指の背屈角度に追随するような変形はしない。一方、インソール16、可撓性部材14、調整シート20、ソール18は、いずれも可撓性を有する。このうち、ソール18は薄く、曲げ方向の弾力性は小さい。
【0037】
一方、インソール16は、装着者の体重を受け止めるので、比較的厚めのウレタン樹脂等が使用されるので、弾力性が強い。また、足部本体12の底面10cが途切れる辺りに上側に盛り上がる、アーチ状盛り上がり部16aが形成されている。可撓性部材14は、厚みは薄いものの、高い靭性を有し、曲げに対しての復元力が強い。
【0038】
したがって、インソール16と可撓性部材14が足部本体12の底面10cに接着されていることで、足部本体12の底面10cが途切れる部分からの底屈方向の曲げに対して、抗力を有している。また、
図4に示したように、足部本体12の底面10cは、前方に凸形状を有している。この凸形状が可撓性部材14の下側にあることで、さらに、底屈方向の曲げに対する抗力が生じる。
【0039】
図1と
図2を再度参照する。足部10および下腿部30には、装着用バンド22が設けられてもよい。装着用バンド22は、短下肢装具1を装着者の脚に固定するためのものである。形態は特に限定されるものではない。例えば、足部10および下腿部30の開口部分の左右の一方にバンド固定部22aが設けられ、他方にリング止め22bが設けられる構成のものが例示できる。
【0040】
装着用バンド22には、内側にクッション材22cを取り付ける。直接装着者の肌に触れる場合があるので、接触を緩和するためである。一方、短下肢装具1を装着者の脚にしっかりと固定しなければ、歩行中に短下肢装具1がずれると、歩行を妨げる。また、肌に密着する部分であるので、通気性も求められる。したがって、フェルト材やスポンジ等がクッション材22cとして用いられる。
【0041】
また、装着用バンド22の先端とクッション材22cが設けられた部分の表側には、面ファスナー22dが取り付けられる。面ファスナー22dとは、下地(主に布)に着脱可能になる加工がされたものである。通常下地にループを施したものと、下地にフックを施したものを合わせることで接着するものが知られている。
【0042】
装着用バンド22の使用方法としては、短下肢装具1を装着者の脚にあてがい、装着用バンド22をリング止め22bに通過させてから引き戻し、面ファスナー22dで固定する(
図2の状態。)。
【0043】
以上の構成を有する短下肢装具1の動作について説明する。
図7を参照して、今装着者は、短下肢装具1のまま、歩行するとする。装着者が通常に歩行する場合、足部10の踵部位10aが地面に接し、その後、ソール18の裏面が地面に接し、立脚状態になる。そして、さらに体重が前方に移動すると、足部10の踵部位10aが上昇する。この時、本発明に係る短下肢装具1は、中足指節関節部位10dより前の爪先部位10gが地面に接地したまま踵部位10aを上げることができる。
【0044】
一方、足部10の硬質素材で形成された底面10cが爪先部位10gまで延設されていると、爪先部位10gを地面に接地したまま、踵部位10aを挙げることができない。このように、爪先部位10gを接地したまま踵部位10aを上げることができるので、蹴り出し時に推進力を得ることができる。
【0045】
なお、以下の実施例で示すように、本発明に係る短下肢装具1を装着すると、遊脚期に前脛骨筋の活動が増加する。つまり、遊脚期にも足が背屈位に維持するように、筋肉が働く。
【実施例】
【0046】
以下に本発明に係る短下肢装具1の効果について、実施例を示して説明する。以下の実施例において、短下肢装具1の装着者は、痙直型片麻痺を有している。
【0047】
<計測方法>
装着者は、比較例の短下肢装具(以下「比較装具」とも呼ぶ。)と本発明に係る短下肢装具1(以下「本発明装具」とも呼ぶ。)の2例を別々に装着し、10mの歩行路を歩いた。比較例の短下肢装具は、足部材の先端まで硬質の底面が延設されている。それ以外に考えられるパラメータ(例えば、サイズや締結箇所、足関節の規制角度等)は同じである。
【0048】
歩行路の中央5mの位置には、縦40cm、横30cmの床反力計(TF−3040:テック技販社製)(100Hz)を2枚設置した。そして、この床反力計に装着者の右足が接地し、足趾が離地するまでの動作(「動作解析区間」と呼ぶ。)を記録できるよう動作解析システム(Kinema Tracer:キッセイコムテック社製)に付属するデジタルカメラ4台(30Hz)を設置した。
【0049】
この動作解析区間の関節運動を把握するため、装着者には事前に、右下肢の膝関節外側、足関節外果、踵骨、第5中足骨の4部位にカラーマーカーを貼付した。さらに、前脛骨筋と腓腹筋(外側)の2箇所に、表面筋電計(MQ−Air:キッセイコムテック社製)(1000Hz)を貼付し、動作を記録した。これらの記録から、下肢の垂直分力(N/kg)、足関節背屈角度、前脛骨筋および腓腹筋の筋活動を算出した。
【0050】
<計測前の慣らし装着>
本発明装具の使用に関しては、予め装着者に対して慣らし装着の期間を設けた。不慣れな使用が原因となる不正確な測定結果を回避するためである。具体的には、本発明に係る短下肢装具1の使用時間・運動強度を徐々に増やしていった。まず、室内で保護者監視下の状態で装着し使用した。次ぎに、屋外での歩行時に使用し、最終的に日常生活で使用するという形で段階的な使用を経た。なお、慣らし期間はおよそ2か月間であった。
【0051】
<測定結果>
(1)下肢の垂直分力
比較装具と本発明装具における下肢の垂直分力を
図8に示す。横軸は解析区間内の時間である。比較装具の場合と本発明装具において比較を容易にするために、解析区間通過時間で正規化している。したがって、単位はパーセント(%)である。また、縦軸は、床反力計の出力である。装着者の体重を100%として正規化されている。したがって、縦軸も単位はパーセント(%)である。
【0052】
実線は本発明装具(「N−AFO」と記した。)の場合であり、点線は比較装具(「AFO」と記した。)である。解析区間は、装着者の右足が常に地面についている間なので立脚期になる。計測の結果、本発明装具は、比較装具より立脚後期に示される垂直分力が増加する傾向が示された(丸A部分)。これは、蹴り出し時の推進力が増加していることを示す結果である。
【0053】
(2)足関節背屈角度
比較装具と本発明装具における足関節背屈角度の関節角度経過を
図9に示す。横軸は、歩行の1周期を正規化したものである(単位はパーセント「%」)。ここで歩行の1周期とは、例えば、右足が地面についてから、次に再び右足が地面につくまでの間である。したがって、横軸の前半分は立脚期であり、後半分は遊脚期である。縦軸は角度を表し、プラスは背屈方向(爪先を上げる方向)であり、マイナスは底屈方向(爪先を伸ばす方向)である。
【0054】
グラフ中、実線(「N−AFO」と記した。)は本発明装具の場合、細い点線(「AFO」と記した。)は比較装具の場合、太い点線(「Barefoot」と記した。)は短下肢装具を無装着の場合を示す。短下肢装具を装着していない場合(太い点線)では、遊脚期の始めに、足関節は底屈位を取る場合がある(矢印B)。これは、痙直型片麻痺の典型的な症状である。比較装具を装着した場合(細い点線)は、足関節を固定しているので、歩行の1周期を通じて、足関節が底屈位になることはない。
【0055】
一方、本発明装具の場合(実線)は、歩行の1周期を通じて足関節は背屈位を維持しているばかりでなく、1周期中を通して比較装具を装着した場合よりも、より背屈角度が増加している傾向が確認された。
【0056】
(3)筋活動
比較装具と本発明装具を装着した場合における前脛骨筋および腓腹筋の筋活動を
図10、11に示す。それぞれ横軸は、歩行の1周期である(単位はパーセント「%」)。縦軸は、歩行の1周期の間で、最も強く筋が活動した地点の表面筋電位の値を100%として正規化したものである。グラフ中では、「(%)EMG」と記した。なお、それぞれのグラフは、5回測定の平均値を示している。
【0057】
それぞれのグラフで実線(「N−AFO」と記した。)は、本発明装具の場合であり、点線(「AFO」と記した。)は比較装具の場合である。
図10(前脛骨筋の場合)を参照して、本発明装具は、比較装具と比べ、遊脚期における前脛骨筋の筋活動が増大する傾向が示された(丸C部分参照)。一方、
図11(腓腹筋の場合)を参照して、腓腹筋については本発明装具は、立脚期における筋活動が比較装具と比べて減少する傾向が示された(丸D部分参照)。
【0058】
以上のように、本発明に係る短下肢装具1では、下肢の蹴り出し力の改善を認めた。さらに、足関節は歩行周期中を通して背屈位が維持され、前脛骨筋の筋活動の増加する所見が観察された。また、相反するように腓腹筋については活動の減少を認めた。このような観点から、本発明に係る短下肢装具1は歩行パフォーマンスの向上だけでなく、足関節に痙縮を有する脳性麻痺や脳卒中片麻痺になった障がい児・者の変形・拘縮などの二次障害の予防に寄与することも示された。