(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の人事評価システムでも、評価者の主観を完全には排除できない。また、この人事評価システムでは、一人の被評価者に対して複数の評価者が選定されるので、評価者一人当たりの負担が大きくなってしまうという問題もあった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、評価者の負担を抑え、評価結果の客観性を担保した人事管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、金銭がプールされる複数の口座の残高、及び任意の期間における各口座の入出金履歴を記憶する口座情報記憶部と、業務の発注者と受注者との間で決定される該業務の報酬金額に基づいて、該口座情報記憶部に記憶される該発注者の口座及び該受注者の口座の残高、及び該発注者の口座及び該受注者の口座の入出金履歴を更新する入出金制御部と、該口座情報記憶部に記憶された該入出金履歴に基づいて各口座の保有者の該期間における業務実績を評価する業務実績評価部と、を備え
、該業務実績評価部は、該入出金履歴に基づいて算出される各口座の残高の該期間における増加分を、あらかじめ設定された閾値金額と比較することで、各口座の保有者の該期間における業務実績を評価することを特徴とする人事管理システムが提供される。
【0013】
また、本発明において、前記入出金制御部は、前記発注者又は前記受注者からの入出金の指示に基づいて該発注者の口座及び該受注者の口座の残高を更新することが好ましい。
【0014】
また、本発明において、前記金銭として、仮想通貨を採用できる。
【0015】
また、本発明において、前記入出金制御部は、前記業務実績評価部の評価結果に基づいて、対象の口座の残高を増加させることが好ましい。
【0016】
また、本発明において、前記入出金制御部は、前記業務実績評価部の評価結果に基づいて、対象の口座の残高を減少させることが好ましい。
【0017】
また、本発明において、前記入出金制御部は、前記保有者の支出行動に対応して、対象の口座の残高を減少させることが好ましい。
【0018】
また、本発明において、前記受注者は個人であり、前記発注者は前記受注者が所属する業務グループであっても良い。
【0019】
また、本発明において、前記受注者は個人であり、前記発注者は前記受注者が所属する業務グループとは別の業務グループであっても良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る人事管理システムは、複数の口座の残高、及び各口座の入出金履歴を記憶する口座情報記憶部と、業務の報酬金額に基づいて、業務の発注者及び受注者の口座の残高、及び発注者及び受注者の口座の入出金履歴を更新する入出金制御部と、入出金履歴に基づいて各口座の保有者の業務実績を評価する業務実績評価部と、を備えている。
【0021】
業務の報酬金額は、業務の付加価値等に応じて発注者と受注者との間で定量化されるため、この報酬金額を反映した入出金の履歴は、任意の期間において各口座の保有者が行い、又は、他者に行わせた業務の価値の累計を表すことになる。本発明に係る人事管理システムは、この入出金履歴を利用するので、各口座の保有者の業務実績を定量的に評価できる。
【0022】
すなわち、本発明に係る人事管理システムでは、各口座の保有者の業務実績を、報酬金額に対応する入出金履歴という明確な形で定量的に評価するので、評価者の負担を抑え、評価結果の客観性を担保できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係る人事管理システムは、企業等の内部において業務活動の主体となり得る従業者等の個人、及び個人の集合体であるグループ(業務グループ、部署等)に対応する複数の口座を利用して、個人の業務実績を評価できるように構成されている。
【0025】
個人の口座には、各個人の業務活動によって得られる金銭がプールされる。一方、グループの口座には、例えば、あらかじめ割り当てられた予算等に対応する金銭がプールされている。なお、金銭としては、現実の通貨が採用されても良いし、仮想通貨(ポイント等)が採用されても良い。
【0026】
図1は、本実施形態に係る人事管理システムの構成を模式的に示す図である。
図1に示すように、本実施形態の人事管理システム2は、個人又はグループが保有する複数のユーザ端末(端末装置)4a,4b,4cと、ネットワーク6を介して各ユーザ端末4a,4b,4cが接続されるサーバ8と、を含む。
【0027】
ユーザ端末4a,4b,4cは、例えば、パーソナルコンピュータや携帯型の端末装置(例えば、携帯電話機)等であり、業務実績の評価に必要な情報をサーバ8との間で送受信する。なお、本実施形態では、3台のユーザ端末4a,4b,4cのみを例示しているが、サーバ8に接続されるユーザ端末の台数は特に限定されない。
【0028】
サーバ8は、ユーザ端末4a,4b,4cから送信される情報等に基づいて業務実績を評価できるように構成されており、例えば、企業等の内部に設置される。ただし、サーバ8は、企業等の外部に設置されても良い。ネットワーク6は、企業等の内部に構築されたLAN(Local Area Network)や、インターネット等のWAN(Wide Area Network)等である。
【0029】
図2は、サーバ8の構成例を模式的に示す図である。サーバ8は、上述した複数の口座を管理する口座管理部10を備えている。口座管理部10は、更に、口座情報生成部10a、口座情報消去部10b、及び入出金制御部10cを含む。
【0030】
口座情報生成部10aは、例えば、企業等に新たな従業者等が加入した場合や、新たなグループが創設された場合等に、ユーザ端末4a(代表的には、人事担当者用のユーザ端末)からの指示に基づいて新たな口座を作成する。より具体的には、口座情報生成部10aは、人事担当者がユーザ端末4aに入力した情報に基づいて新たな口座情報を生成する。生成された口座情報は、口座情報記憶部12に記憶される。
【0031】
一方、口座情報消去部10bは、例えば、従業者が退職した場合や、グループが廃止された場合等に、ユーザ端末4aからの指示に基づいて不要になった口座を抹消する。より具体的には、口座情報消去部10bは、人事担当者がユーザ端末4aに入力した情報に基づいて不要な口座情報を口座情報記憶部12から消去する。
【0032】
図3は、口座情報記憶部12に記憶される口座情報の例を模式的に示すテーブルである。
図3に示すように、口座情報は、個人又はグループに対応して割り当てられた口座番号に関する情報と、口座にプールされた金銭の残高に関する情報と、入出金履歴に関する情報とを少なくとも含んでいる。残高及び入出金履歴に関する情報は、必要に応じて口座管理部10の入出金制御部10cにより書き換えられる。
【0033】
また、サーバ8は、業務の発注者となる個人又はグループが保有するユーザ端末4bから通知される発注希望金額と、業務の受注者(受注希望者)となる個人が保有するユーザ端末4cから通知される受注希望金額と、に基づいて、業務の受注者及び業務の報酬金額を決定する報酬金額決定部14を備えている。
【0034】
なお、業務の発注者がグループである場合、そのグループは、受注者(受注希望者)が所属するグループであっても良いし、受注者(受注希望者)が所属するグループとは別のグループであっても良い。すなわち、本実施形態に係る人事管理システム2では、所属するグループ以外の業務を受注できる。報酬金額決定部14の具体的な機能については後述する。
【0035】
報酬金額決定部14で業務の受注者及び業務の報酬金額が決定されると、業務の発注者はユーザ端末4bを用いて受注者の口座への入金を指示する。ユーザ端末4bからの入金指示は、口座管理部10の入出金制御部10cに通知される。入金の指示を受けた入出金制御部10cは、発注者の口座から受注者の口座へと報酬金額を振り込む。
【0036】
すなわち、入出金制御部10cは、口座情報記憶部12に記憶されている発注者の口座及び受注者の口座の残高に関する情報を、報酬金額決定部14で決定された報酬金額に応じて更新する。また、このとき、入出金制御部10cは、発注者の口座及び受注者の口座の入出金履歴に関する情報を併せて更新する。一方、業務の受注者は、受注した業務を遂行する。
【0037】
なお、入出金制御部10cに対する入金の指示は、業務の受注者側(ユーザ端末4c)から行われても良い。さらに、入出金制御部10cは、報酬金額決定部14で決定された報酬金額に基づいて自動的に入出金を制御しても良い。この場合、入出金制御部10cに対する入金の指示等を省略できる。
【0038】
上述のような業務の発注、受注、報酬金額の決定、受注者の口座への入金、及び業務の遂行の流れは、評価対象となる任意の期間において繰り返される。その結果、各口座の残高は増減し、口座情報記憶部12には入出金履歴に関する情報が蓄積される。蓄積された入出金履歴に関する情報は、評価対象となる期間の終了後に業務実績評価部16で利用される。
【0039】
業務実績評価部16は、口座情報記憶部12に蓄積された入出金履歴に関する情報を読み出して、各口座の保有者の当該期間における業務実績を評価する。具体的には、例えば、業務実績評価部16は、入出金履歴に基づいて各口座の残高の当該期間における増加分を算出し、人件費等を考慮してあらかじめ設定された任意の閾値金額と比較する。
【0040】
残高の増加分が閾値金額を上回っている場合(又は、閾値金額以上の場合)、業務実績評価部16は、口座の保有者の業務実績を「可」と評価する。一方、残高の増加分が閾値金額以下の場合(又は、閾値金額を下回っている場合)、業務実績評価部16は、口座の保有者の業務実績を「不可」と評価する。なお、評価の基準となる閾値金額は、多段階で設定されても良い。この場合、「優」、「良」、「可」、「不可」のような多段階での評価が可能になる。
【0041】
また、入出金制御部10cは、業務実績評価部16の評価結果に基づいて、対象となる口座の残高を増減できるように構成されても良い。これにより、例えば、ある口座の保有者に対する業務実績の評価結果(代表的には、「優」、「良」、「可」等)に応じて、報奨金等に相当する金額を対象口座の残高に加えることができる。
【0042】
また、ある口座の保有者に対する業務実績の評価結果(代表的には、「不可」等)に応じて、制裁金(課金)等に相当する金額を対象口座の残高から差し引くこともできる。その他、業務に係る経費や個人的な支出行動に起因する支出額等を、対象口座の残高から差し引いても良い。
【0043】
次に、上述のような人事管理システム2で実施する人事管理方法について説明する。
図4は、本実施形態に係る人事管理方法の流れを示すフローチャートである。
図4に示すように、本実施形態に係る人事管理方法は、業務の発注者と受注者との間で報酬金額を決定する報酬金額決定ステップST1と、発注者が報酬金額を支払い受注者が業務を遂行する業務遂行ステップST2と、評価対象となる期間が終了したか否かを判定する期間判定ステップST3と、各口座の入出金履歴に基づいて期間内における業務実績を評価する業務実績評価ステップST4と、を含む。
【0044】
図5は、報酬金額決定ステップST1の流れを示すフローチャートである。
図5では、業務の報酬金額をオークション形式で決定する場合の流れを示している。まず、業務の発注を希望する個人又はグループが、業務の内容と共に発注希望金額を提示する業務発注ステップST11を実施する。
【0045】
この業務発注ステップST11では、例えば、業務の発注を希望する個人又はグループが、当該個人又はグループが保有するユーザ端末4bに業務の内容及び発注希望金額を入力する。ユーザ端末4bに入力された情報は、ユーザ端末4bからサーバ8に通知される。サーバ8の報酬金額決定部14は、通知された情報に含まれる発注希望金額をオークションの開始金額に設定する。
【0046】
業務発注ステップST11の後には、入札ステップST12を実施する。入札ステップでは、例えば、サーバ8から、業務の受注を希望する個人(受注希望者)が保有するユーザ端末4cに対して、発注された業務の内容及びオークションの開始金額を通知する。
【0047】
次に、受注希望者は、サーバ8から通知された情報に基づいて、受注を希望する業務及び発注希望金額を自身のユーザ端末4cに入力する。なお、受注希望金額は、開始価格以下又は開始価格以上のいずれにも設定され得る。例えば、競争入札のように受注希望者が多い場合には、開始価格より受注希望金額が低くなる傾向にある。一方、受注希望者が少ない場合には、受注希望金額が開始価格より高くなることもある。ユーザ端末4cに入力された情報は、ユーザ端末4cからサーバ8に通知される。
【0048】
例えば、オークションの開始から所定の時間が経過すると、入札ステップST12は終了する。なお、入札者の数や入札者の受注希望金額等の条件に応じて入札ステップST12を終了させても良い。
【0049】
入札ステップST12の後には、業務の受注者及び報酬金額を決定する決定ステップST13を実施する。この決定ステップST13において、報酬金額決定部14は、例えば、最も低い受注希望金額を提示した個人を受注者に決定し、その受注希望金額を報酬金額に決定する。
【0050】
なお、発注者の権限等により、次点の入札者等を受注者に決定し、その受注希望金額を報酬金額に決定しても良い。以上の報酬金額決定ステップST1により、業務の報酬金額が決定される。
【0051】
ただし、報酬金額決定ステップST1は、必ずしも上述のようなオークション形式で行われなくて良い。例えば、業務の発注者と受注者とが相談等して報酬金額を決定することもできる。オークション形式を採用しないのであれば、サーバ8から報酬金額決定部14を省略して良い。
【0052】
報酬金額決定ステップST1の後には、発注者が報酬金額を支払い受注者が業務を遂行する業務遂行ステップST2を実施する。具体的には、業務の発注者がユーザ端末4bを用いて受注者の口座への入金を指示する。ユーザ端末4bから入金の指示を受けた入出金制御部10cは、報酬金額決定部14で決定された報酬金額を発注者の口座から受注者の口座へと振り込む。併せて、入出金制御部10cは、発注者の口座及び受注者の口座の入出金履歴に関する情報を更新する。ただし、報酬金額は、発注者の口座からではなく、発注者が所属するグループの口座から受注者の口座に振り込まれても良い。
【0053】
なお、報酬金額決定部14が省略されている場合等には、例えば、ユーザ端末4bからサーバ8に対して、発注者の氏名(又は、口座番号)、受注者の氏名(又は、口座番号)、報酬金額等の情報を通知する。これにより、入出金制御部10cは、報酬金額決定部14を介さずに決定された報酬金額を発注者の口座から受注者の口座へと振り込むことができる。
【0054】
また、業務の受注者は、受注した業務を遂行する。なお、業務の発注者は、業務に対して遂行期限等の条件を付加することができる。受注者がこの条件に違反した場合、例えば、発注者は受注者に対して違約金の支払いを求めることができる。違約金は、例えば、入出金制御部10cに対して発注者の氏名(又は、口座番号)、受注者の氏名(又は、口座番号)、違約金の金額等を通知することで支払われる。
【0055】
業務遂行ステップST2の後には、評価対象となる期間が終了したか否かを判定する期間判定ステップST3を実施する。評価対象となる期間が終了していない場合(期間判定ステップST3:NO)、上述の報酬金額決定ステップST1及び業務遂行ステップST2が繰り返し実施される。一方、評価対象となる期間が終了した場合(期間判定ステップST3:YES)、各口座の入出金履歴に基づいて期間内における業務実績を評価する業務実績評価ステップST4を実施する。
【0056】
業務実績評価ステップST4では、例えば、業務実績評価部16が、口座情報記憶部12に蓄積された入出金履歴に基づいて各口座の残高の当該期間における増加分を算出し、人件費等を考慮してあらかじめ設定された任意の閾値金額と比較する。評価の結果は、例えば、サーバ8から人事担当者用のユーザ端末4a等に通知される。
【0057】
以上のように、本実施形態に係る人事管理システム2は、複数の口座の残高、及び各口座の入出金履歴を記憶する口座情報記憶部12と、業務の報酬金額に基づいて、業務の発注者及び受注者の口座の残高、及び発注者及び受注者の口座の入出金履歴を更新する入出金制御部10cと、入出金履歴に基づいて各口座の保有者の業務実績を評価する業務実績評価部16と、を備えている。
【0058】
業務の報酬金額は、業務の付加価値等に応じて発注者と受注者との間で定量化されるため、この報酬金額を反映した入出金の履歴は、任意の期間において各口座の保有者が行い、又は、他者に行わせた業務の価値の累計を表すことになる。本実施形態に係る人事管理システム2及び人事管理方法は、この入出金履歴を利用するので、各口座の保有者の業務実績を定量的に評価できる。
【0059】
すなわち、本実施形態に係る人事管理システム2及び人事管理方法では、各口座の保有者の業務実績を、報酬金額に対応する入出金履歴という明確な形で定量的に評価するので、評価者の負担を抑え、評価結果の客観性を担保できる。
【0060】
さらに、本実施形態に係る人事管理システム2及び人事管理方法では、次のような効果を得ることもできる。まず、各個人が所属するグループ外からの仕事を受注できるので、所属するグループの業務範囲にとらわれず、各個人が得意とする業務を自由に選択できる。これにより、各個人の能力が十分に生かされる。
【0061】
また、高いパフォーマンス及びスキルを持つ個人が付加価値の高い業務に注力できる一方で、パフォーマンス及びスキルに劣る個人は付加価値の低い業務に従事せざるを得ないので、業務の遂行者が最適化される。そして、より付加価値の高い業務を担当できるように、各個人が自主的にスキルアップを図るようになる。また、各個人が自身の業務実績を定量的に把握できるので、自身の働き方等に関するセルフマネジメントが促される。
【0062】
また、報酬金額という形で全ての業務に対価が発生するので、対価に値しない業務(すなわち、企業等にとって不要な業務)は統合、廃止される。その結果、経営が効率化される。また、業務活動の定量化によって、上司が部下を管理・監視する必要がなくなる。その結果、各種の権限が部下に移譲され、よりスピーディーな業務活動が実現される。また、報奨金や制裁金(課金)の制度を導入することで、企業等にとって望ましい良質な行動変容を促すことができる。
【0063】
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、主に企業の従業員を対象とする人事管理システム2について説明しているが、本発明の人事管理システムは、企業の役員等を評価の対象としても良い。同様に、本発明の人事管理システムは、企業以外の団体において構成員等を評価する際に用いることもできる。
【0064】
その他、上記実施形態に係る構成、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。