特許第6598635号(P6598635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598635
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】基板押圧機構および接合装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20191021BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   H01L21/02 B
   B23K20/00 310P
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-212915(P2015-212915)
(22)【出願日】2015年10月29日
(65)【公開番号】特開2017-84999(P2017-84999A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉原 紳太郎
(72)【発明者】
【氏名】北原 重徳
(72)【発明者】
【氏名】古谷 悟郎
【審査官】 加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−084369(JP,A)
【文献】 特開2012−160628(JP,A)
【文献】 再公表特許第2007/066559(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
B23K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直軸沿いに直動可能な第1可動部を有する第1直動機構と、
前記鉛直軸沿いに直動可能な第2可動部を有し、前記第1可動部に設けられる第2直動機構と、
前記第2可動部とは分離した部材であり、かつ、前記第2可動部の当接を受けて伝達される該第2可動部の推力によって前記鉛直軸沿いに直動可能に設けられ、先端部において対向する基板を該先端部で押圧する押圧部材と
を備えることを特徴とする基板押圧機構。
【請求項2】
前記押圧部材は、
前記第2可動部の鉛直下側に配置され、基端部において少なくとも前記第2可動部の自重による当接を受けていること
を特徴とする請求項1に記載の基板押圧機構。
【請求項3】
前記第2直動機構は、流体軸受であって、
第1流体供給部および第2流体供給部を備え、
前記第1流体供給部から供給される流体によって前記第2可動部を軸受面から浮かせて該第2可動部を滑動可能に支持するとともに、前記第2流体供給部から供給される流体の圧力によって前記第2可動部へ付与する前記推力を可変させて前記押圧部材により前記基板へ付与される荷重を制御すること
を特徴とする請求項1または2に記載の基板押圧機構。
【請求項4】
前記第1直動機構は、
少なくとも1つの流体給排部と、
前記流体給排部に接続され、排出される流体の流量を可変可能に設けられた速度制御弁とを備え、
前記流体給排部から給排される流体の圧力によって前記第1可動部を前記鉛直軸沿いに直動させることで前記押圧部材の先端部の位置を制御するとともに、前記速度制御弁によって前記流量を可変させることで前記押圧部材の速度を制御すること
を特徴とする請求項1、2または3に記載の基板押圧機構。
【請求項5】
前記押圧部材を前記鉛直軸沿いに直動案内する直動案内部
を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の基板押圧機構。
【請求項6】
前記第2可動部の先端部における前記押圧部材との当接面は、曲面を含んだ形状に形成されていること
を特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の基板押圧機構。
【請求項7】
前記押圧部材の先端部における前記基板との当接面は、曲面を含んだ形状に形成されていること
を特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の基板押圧機構。
【請求項8】
下面側に第1基板を保持する第1保持部と、
前記第1保持部の下方に設けられ、上面側に第2基板を前記第1基板に対向させて保持する第2保持部と、
前記第1基板の中心部に前記押圧部材の先端部が対向するように前記第1保持部に設けられる請求項1〜7のいずれか一つに記載の基板押圧機構と、
前記第1直動機構および前記第2直動機構を制御して前記押圧部材に前記第1基板の中心部を押圧させ、該中心部を前記第2基板へ当接させることによって前記第1基板および前記第2基板を接合させる制御部と
を備えることを特徴とする接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、基板押圧機構および接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの高集積化の要請に応えるため、半導体デバイスを3次元に積層する3次元集積技術を用いることが提案されている。この3次元集積技術を用いた装置としては、例えば半導体ウェハ(以下、「ウェハ」と言う)等の基板同士を接合する接合装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、上下方向で対向配置させた2枚のウェハのうち、上側ウェハの中心部を押動ピンで押圧してこの中心部を下側ウェハに当接させ、その後、上側ウェハを支持しているスペーサを退避させて、上側ウェハの全面を下側ウェハの全面に当接させ、基板同士を接合する技術が開示されている。なお、押動ピンは、単動式のシリンダ構造を有する加重付与装置(以下、「基板押圧機構」と言う)内に組み込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−207436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術には、ウェハを精度よく押圧し、接合品質を向上させるうえでさらなる改善の余地がある。
【0006】
具体的には、上述した従来技術を用いた場合、単動式のシリンダ構造を有する基板押圧機構を用いて、押動ピンの移動ならびに押動ピンにより上側ウェハへかける荷重の両方を制御しているため、精度の高い制御を行いにくいという問題があった。
【0007】
また、押動ピンが押圧する位置も、シリンダ構造に起因するガタつき等によって繰り返し精度が悪いという問題もあった。
【0008】
実施形態の一態様は、基板を精度よく押圧し、接合品質を向上させることができる基板押圧機構および接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の一態様に係る基板押圧機構は、第1直動機構と、第2直動機構と、押圧部材とを備える。第1直動機構は、鉛直軸沿いに直動可能な第1可動部を有する。第2直動機構は、鉛直軸沿いに直動可能な第2可動部を有し、第1可動部に設けられる。押圧部材は、第2可動部とは分離した部材であり、かつ、第2可動部の当接を受けて伝達される第2可動部の推力によって鉛直軸沿いに直動可能に設けられ、先端部において対向する基板を先端部で押圧する。
【発明の効果】
【0010】
実施形態の一態様によれば、基板を精度よく押圧し、接合品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る接合システムの構成を示す模式平面図である。
図2図2は、実施形態に係る接合システムの構成を示す模式側面図である。
図3図3は、上ウェハおよび下ウェハの模式側面図である。
図4図4は、接合装置の構成を示す模式平面図である。
図5図5は、接合装置の構成を示す模式側面図である。
図6図6は、位置調節機構の構成を示す模式側面図である。
図7図7は、反転機構の構成を示す模式平面図である。
図8図8は、反転機構の構成を示す模式側面図(その1)である。
図9図9は、反転機構の構成を示す模式側面図(その2)である。
図10図10は、保持アームおよび保持部材の構成を示す模式側面図である。
図11図11は、接合装置の内部構成を示す模式側面図である。
図12図12は、上チャックおよび下チャックの構成を示す模式側面図である。
図13図13は、上チャックを下方から見た場合の模式平面図である。
図14図14は、下チャックを上方から見た場合の模式平面図である。
図15図15は、接合システムが実行する処理の処理手順の一部を示すフローチャートである。
図16A図16Aは、接合装置の動作説明図(その1)である。
図16B図16Bは、接合装置の動作説明図(その2)である。
図16C図16Cは、接合装置の動作説明図(その3)である。
図16D図16Dは、接合装置の動作説明図(その4)である。
図16E図16Eは、接合装置の動作説明図(その5)である。
図16F図16Fは、接合装置の動作説明図(その6)である。
図16G図16Gは、接合装置の動作説明図(その7)である。
図16H図16Hは、接合装置の動作説明図(その8)である。
図17A図17Aは、基板押圧機構の構成を示す斜視図である。
図17B図17Bは、基板押圧機構の動作説明図(その1)である。
図17C図17Cは、基板押圧機構の動作説明図(その2)である。
図17D図17Dは、基板押圧機構の動作説明図(その3)である。
図17E図17Eは、基板押圧機構の動作説明図(その4)である。
図17F図17Fは、基板押圧機構の動作説明図(その5)である。
図17G図17Gは、基板押圧機構の動作説明図(その6)である。
図17H図17Hは、基板押圧機構の動作説明図(その7)である。
図18A図18Aは、変形例に係る基板押圧機構の構成を示す斜視図(その1)である。
図18B図18Bは、変形例に係る基板押圧機構の動作説明図である。
図18C図18Cは、変形例に係る基板押圧機構の構成を示す斜視図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する基板押圧機構および接合装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
なお、以下参照する各図面では、説明を分かりやすくするために、鉛直上向きをZ軸の正方向とする直交座標系を示す場合がある。
【0014】
<1.接合システムの構成>
まず、本実施形態に係る接合システムの構成について、図1図3を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る接合システムの構成を示す模式平面図であり、図2は、同模式側面図である。また、図3は、上ウェハおよび下ウェハの模式側面図である。
【0015】
図1に示す本実施形態に係る接合システム1は、第1基板W1と第2基板W2とを接合することによって重合ウェハTを形成する(図3参照)。
【0016】
第1基板W1は、例えばシリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板である。また、第2基板W2は、例えば電子回路が形成されていないベアウェハである。第1基板W1と第2基板W2とは、略同径を有する。なお、第2基板W2に電子回路が形成されていてもよい。
【0017】
以下では、第1基板W1を「上ウェハW1」と記載し、第2基板W2を「下ウェハW2」と記載する。
【0018】
また、以下では、図3に示すように、上ウェハW1の板面のうち、下ウェハW2と接合される側の板面を「接合面W1j」と記載し、接合面W1jとは反対側の板面を「非接合面W1n」と記載する。また、下ウェハW2の板面のうち、上ウェハW1と接合される側の板面を「接合面W2j」と記載し、接合面W2jとは反対側の板面を「非接合面W2n」と記載する。
【0019】
また、図1に示すように、接合システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2および処理ステーション3は、X軸正方向に沿って、搬入出ステーション2および処理ステーション3の順番で並べて配置される。また、搬入出ステーション2および処理ステーション3は、一体的に接続される。
【0020】
搬入出ステーション2は、載置台10と、搬送領域20とを備える。載置台10は、複数の載置板11を備える。各載置板11には、複数枚(例えば、25枚)の基板を水平状態で収容するカセットC1,C2,C3がそれぞれ載置される。例えば、カセットC1は上ウェハW1を収容するカセットであり、カセットC2は下ウェハW2を収容するカセットであり、カセットC3は重合ウェハTを収容するカセットである。
【0021】
搬送領域20は、載置台10のX軸正方向側に隣接して配置される。かかる搬送領域20には、Y軸方向に延在する搬送路21と、この搬送路21に沿って移動可能な搬送装置22とが設けられる。搬送装置22は、Y軸方向だけでなく、X軸方向にも移動可能かつZ軸周りに旋回可能であり、載置板11に載置されたカセットC1〜C3と、後述する処理ステーション3の第3処理ブロックG3との間で、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬送を行う。
【0022】
なお、載置板11に載置されるカセットC1〜C3の個数は、図示のものに限定されない。また、載置板11には、カセットC1,C2,C3以外に、不具合が生じた基板を回収するためのカセット等が載置されてもよい。
【0023】
処理ステーション3には、各種装置を備えた複数の処理ブロック、例えば3つの処理ブロックG1,G2,G3が設けられる。例えば処理ステーション3の正面側(図1のY軸負方向側)には、第1処理ブロックG1が設けられ、処理ステーション3の背面側(図1のY軸正方向側)には、第2処理ブロックG2が設けられる。また、処理ステーション3の搬入出ステーション2側(図1のX軸負方向側)には、第3処理ブロックG3が設けられる。
【0024】
第1処理ブロックG1には、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jを改質する表面改質装置30が配置される。表面改質装置30は、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jにおけるSiO2の結合を切断して単結合のSiOとすることで、その後親水化されやすくするように当該接合面W1j,W2jを改質する。
【0025】
なお、表面改質装置30では、例えば減圧雰囲気下において処理ガスである酸素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。そして、かかる酸素イオンが、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jに照射されることにより、接合面W1j,W2jがプラズマ処理されて改質される。
【0026】
第2処理ブロックG2には、表面親水化装置40と、接合装置41とが配置される。表面親水化装置40は、例えば純水によって上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jを親水化するとともに、接合面W1j,W2jを洗浄する。表面親水化装置40では、例えばスピンチャックに保持された上ウェハW1または下ウェハW2を回転させながら、当該上ウェハW1または下ウェハW2上に純水を供給する。これにより、上ウェハW1または下ウェハW2上に供給された純水が上ウェハW1または下ウェハW2の接合面W1j,W2j上を拡散し、接合面W1j,W2jが親水化される。接合装置41は、上ウェハW1および下ウェハW2を接合する。接合装置41の構成については、後述する。
【0027】
第3処理ブロックG3には、図2に示すように、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTのトランジション(TRS)装置50,51が下から順に2段に設けられる。
【0028】
また、図1に示すように、第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3に囲まれた領域には、搬送領域60が形成される。搬送領域60には、搬送装置61が配置される。搬送装置61は、例えば鉛直方向、水平方向および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。かかる搬送装置61は、搬送領域60内を移動し、搬送領域60に隣接する第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3内の所定の装置に上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを搬送する。
【0029】
また、図1に示すように、接合システム1は、制御装置70を備える。制御装置70は、接合システム1の動作を制御する。かかる制御装置70は、例えばコンピュータであり、図示しない制御部および記憶部を備える。記憶部には、接合処理等の各種処理を制御するプログラムが格納される。制御部は記憶部に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって接合システム1の動作を制御する。
【0030】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されていたものであって、その記録媒体から制御装置70の記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記録媒体としては、例えばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0031】
<2.接合装置の構成>
次に、接合装置41の構成について図4図11を参照して説明する。図4は、接合装置41の構成を示す模式平面図であり、図5は、同模式側面図である。また、図6は、位置調節機構210の構成を示す模式側面図である。また、図7は、反転機構220の構成を示す模式平面図であり、図8および図9は、同模式側面図(その1)および(その2)である。また、図10は、保持アーム221および保持部材222の構成を示す模式側面図であり、図11は、接合装置41の内部構成を示す模式側面図である。
【0032】
図4に示すように、接合装置41は、内部を密閉可能な処理容器190を有する。処理容器190の搬送領域60側の側面には、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬入出口191が形成され、当該搬入出口191には開閉シャッタ192が設けられる。
【0033】
処理容器190の内部は、内壁193によって搬送領域T1と処理領域T2に区画される。上述した搬入出口191は、搬送領域T1における処理容器190の側面に形成される。また、内壁193にも、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬入出口194が形成される。
【0034】
搬送領域T1のY軸負方向側には、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを一時的に載置するためのトランジション200が設けられる。トランジション200は、例えば2段に形成され、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTのいずれか2つを同時に載置することができる。
【0035】
搬送領域T1には、搬送機構201が設けられる。搬送機構201は、例えば鉛直方向、水平方向および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。そして、搬送機構201は、搬送領域T1内、または搬送領域T1と処理領域T2との間で上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを搬送する。
【0036】
搬送領域T1のY軸正方向側には、上ウェハW1および下ウェハW2の水平方向の向きを調節する位置調節機構210が設けられる。位置調節機構210は、図6に示すように基台211と、上ウェハW1および下ウェハW2を吸着保持して回転させる保持部212と、上ウェハW1および下ウェハW2のノッチ部の位置を検出する検出部213とを有する。
【0037】
かかる位置調節機構210では、保持部212に吸着保持された上ウェハW1および下ウェハW2を回転させながら検出部213で上ウェハW1および下ウェハW2のノッチ部の位置を検出することで、当該ノッチ部の位置を調節して上ウェハW1および下ウェハW2の水平方向の向きを調節する。
【0038】
また、搬送領域T1には、上ウェハW1の表裏面を反転させる反転機構220が設けられる。反転機構220は、図7図10に示すように上ウェハW1を保持する保持アーム221を有する。
【0039】
保持アーム221は、水平方向に延在する。また保持アーム221には、上ウェハW1を保持する保持部材222が例えば4箇所に設けられる。保持部材222は、図10に示すように保持アーム221に対して水平方向に移動可能に構成されている。また保持部材222の側面には、上ウェハW1の外周部を保持するための切り欠き223が形成される。これら保持部材222は、上ウェハW1を挟み込んで保持することができる。
【0040】
保持アーム221は、図7図9に示すように、例えばモータなどを備えた第1駆動部224に支持される。保持アーム221は、この第1駆動部224によって、水平軸周りに回動自在である。また保持アーム221は、第1駆動部224を中心に回動自在であると共に、水平方向に移動自在である。
【0041】
第1駆動部224の下方には、例えばモータなどを備えた第2駆動部225が設けられる。第1駆動部224は、この第2駆動部225によって、鉛直方向に延在する支持柱226に沿って鉛直方向に移動可能である。
【0042】
このように、保持部材222に保持された上ウェハW1は、第1駆動部224と第2駆動部225によって、水平軸周りに回動することができるとともに鉛直方向および水平方向に移動することができる。また、保持部材222に保持された上ウェハW1は、第1駆動部224を中心に回動して、位置調節機構210から後述する上チャック230との間を移動することができる。
【0043】
また、図5に示すように、処理領域T2には、上チャック230と下チャック231とが設けられる。上チャック230は、上ウェハW1を上方から吸着保持する。また、下チャック231は、上チャック230の下方に設けられ、下ウェハW2を下方から吸着保持する。
【0044】
上チャック230は、図5に示すように、処理容器190の天井面に設けられた支持部材280に支持される。支持部材280には、下チャック231に保持された下ウェハW2の接合面W2jを撮像する上部撮像部281(図11参照)が設けられる。上部撮像部281は、上チャック230に隣接して設けられる。
【0045】
また、図4図5および図11に示すように、下チャック231は、当該下チャック231の下方に設けられた第1下チャック移動部290に支持される。第1下チャック移動部290は、後述するように下チャック231を水平方向(Y軸方向)に移動させる。また、第1下チャック移動部290は、下チャック231を鉛直方向に移動自在、且つ鉛直軸回りに回転可能に構成される。
【0046】
第1下チャック移動部290には、上チャック230に保持された上ウェハW1の接合面W1jを撮像する下部撮像部291が設けられている。下部撮像部291は、下チャック231に隣接して設けられる。
【0047】
また、図4図5および図11に示すように、第1下チャック移動部290は、当該第1下チャック移動部290の下面側に設けられ、水平方向(Y軸方向)に延伸する一対のレール295に取り付けられる。第1下チャック移動部290は、レール295に沿って移動自在に構成される。
【0048】
一対のレール295は、第2下チャック移動部296に設けられる。第2下チャック移動部296は、当該第2下チャック移動部296の下面側に設けられ、水平方向(X軸方向)に延伸する一対のレール297に取り付けられる。そして、第2下チャック移動部296は、レール297に沿って移動自在に、すなわち下チャック231を水平方向(X軸方向)に移動させるように構成される。なお、一対のレール297は、処理容器190の底面に設けられた載置台298上に設けられる。
【0049】
次に、上チャック230と下チャック231の構成について図12図14を参照して説明する。図12は、上チャック230および下チャック231の構成を示す模式側面図である。また、図13は、上チャック230を下方から見た場合の模式平面図であり、図14は、下チャック231を上方から見た場合の模式平面図である。
【0050】
図12に示すように、上チャック230は、複数、たとえば3つの領域230a,230b,230cに区画される。これら領域230a,230b,230cは、図13に示すように、上チャック230の中心部から周縁部(外周部)に向けてこの順で設けられる。領域230aは平面視において円形状を有し、領域230b,230cは平面視において環状形状を有する。
【0051】
各領域230a,230b,230cには、図12に示すように上ウェハW1を吸着保持するための吸引管240a,240b,240cがそれぞれ独立して設けられる。各吸引管240a,240b,240cには、異なる真空ポンプ241a,241b,241cがそれぞれ接続される。このように、上チャック230は、各領域230a,230b,230c毎に上ウェハW1の真空引きを設定可能に構成されている。
【0052】
上チャック230の中心部には、当該上チャック230を厚み方向に貫通する貫通孔243が形成される。この上チャック230の中心部は、当該上チャック230に吸着保持される上ウェハW1の中心部W1aに対応している。そして、貫通孔243には、基板押圧機構250の押圧ピン253が挿通するようになっている。押圧ピン253は、押圧部材の一例である。
【0053】
基板押圧機構250は、上チャック230の上面に設けられ、押圧ピン253によって上ウェハW1の中心部を押圧する。押圧ピン253は、第1直動機構251および第2直動機構252によって鉛直軸沿いに直動可能に設けられ、先端部において対向する基板(本実施形態では上ウェハW1)をかかる先端部で押圧する。具体的には、押圧ピン253は、後述する上ウェハW1および下ウェハW2の接合時に、まず上ウェハW1の中心部W1aと下ウェハW2の中心部W2aとを当接させるスタータとなる。なお、基板押圧機構250のより具体的な構成については、図17A以降を用いて後述する。
【0054】
下チャック231は、図14に示すように、複数、例えば2つの領域231a,231bに区画される。これら領域231a,231bは、下チャック231の中心部から周縁部に向けてこの順で設けられる。そして、領域231aは平面視において円形状を有し、領域231bは平面視において環状形状を有する。
【0055】
各領域231a,231bには、図12に示すように下ウェハW2を吸着保持するための吸引管260a,260bがそれぞれ独立して設けられる。各吸引管260a,260bには、異なる真空ポンプ261a,261bがそれぞれ接続される。このように、下チャック231は、各領域231a,231b毎に下ウェハW2の真空引きを設定可能に構成されている。
【0056】
下チャック231の周縁部には、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTが当該下チャック231から飛び出したり、滑落したりすることを防止するストッパ部材263が複数箇所、例えば5箇所に設けられる。
【0057】
<3.接合システムの表面改質装置、表面親水化装置、接合装置の具体的動作>
次に、以上のように構成された表面改質装置30、表面親水化装置40、接合装置41の具体的な動作について、図15図16Hを参照して説明する。
【0058】
図15は、接合システム1が実行する処理の処理手順の一部を示すフローチャートである。また、図16A図16Hは、接合装置41の動作説明図(その1)〜(その8)である。なお、図15に示す各種の処理は、制御装置70による制御に基づいて実行される。
【0059】
まず、複数枚の上ウェハW1を収容したカセットC1、複数枚の下ウェハW2を収容したカセットC2、および空のカセットC3が、搬入出ステーション2の所定の載置板11に載置される。その後、搬送装置22によりカセットC1内の上ウェハW1が取り出され、処理ステーション3の第3処理ブロックG3のトランジション装置50に搬送される。
【0060】
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第1処理ブロックG1の表面改質装置30に搬送される。表面改質装置30では、所定の減圧雰囲気下において、処理ガスである酸素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。この酸素イオンが上ウェハW1の接合面W1jに照射されて、当該接合面W1jがプラズマ処理される。これにより、上ウェハW1の接合面W1jが改質される(ステップS101)。
【0061】
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の表面親水化装置40に搬送される。表面親水化装置40では、スピンチャックに保持された上ウェハW1を回転させながら、当該上ウェハW1上に純水を供給する。そうすると、供給された純水は上ウェハW1の接合面W1j上を拡散し、表面改質装置30において改質された上ウェハW1の接合面W1jに水酸基(シラノール基)が付着して当該接合面W1jが親水化される。また、当該純水によって、上ウェハW1の接合面W1jが洗浄される(ステップS102)。
【0062】
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された上ウェハW1は、トランジション200を介して搬送機構201により位置調節機構210に搬送される。そして位置調節機構210によって、上ウェハW1の水平方向の向きが調節される(ステップS103)。
【0063】
その後、位置調節機構210から反転機構220の保持アーム221に上ウェハW1が受け渡される。続いて搬送領域T1において、保持アーム221を反転させることにより、上ウェハW1の表裏面が反転される(ステップS104)。すなわち、上ウェハW1の接合面W1jが下方に向けられる。
【0064】
その後、反転機構220の保持アーム221が、第1駆動部224を中心に回動して上チャック230の下方に移動する。そして、反転機構220から上チャック230に上ウェハW1が受け渡される。上ウェハW1は、上チャック230にその非接合面W1nが吸着保持される(ステップS105)。
【0065】
このとき、すべての真空ポンプ241a、241b、241cを作動させ、上チャック230のすべての領域230a、230b、230cにおいて、上ウェハW1を真空引きしている。上ウェハW1は、後述する下ウェハW2が接合装置41に搬送されるまで上チャック230で待機する。
【0066】
上ウェハW1に上述したステップS101〜S105の処理が行われている間、下ウェハW2の処理が行われる。まず、搬送装置22によりカセットC2内の下ウェハW2が取り出され、処理ステーション3のトランジション装置50に搬送される。
【0067】
次に、下ウェハW2は、搬送装置61によって表面改質装置30に搬送され、下ウェハW2の接合面W2jが改質される(ステップS106)。なお、ステップS106における下ウェハW2の接合面W2jの改質は、上述したステップS101と同様である。
【0068】
その後、下ウェハW2は、搬送装置61によって表面親水化装置40に搬送され、下ウェハW2の接合面W2jが親水化されるとともに当該接合面W2jが洗浄される(ステップS107)。なお、ステップS107における下ウェハW2の接合面W2jの親水化および洗浄は、上述したステップS102と同様である。
【0069】
その後、下ウェハW2は、搬送装置61によって接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された下ウェハW2は、トランジション200を介して搬送機構201により位置調節機構210に搬送される。そして位置調節機構210によって、下ウェハW2の水平方向の向きが調節される(ステップS108)。
【0070】
その後、下ウェハW2は、搬送機構201によって下チャック231に搬送され、下チャック231に吸着保持される(ステップS109)。このとき、すべての真空ポンプ261a、261bを作動させ、下チャック231のすべての領域231a、231bにおいて、下ウェハW2を真空引きしている。そして、下ウェハW2の接合面W2jが上方を向くように、当該下ウェハW2の非接合面W2nが下チャック231に吸着保持される。
【0071】
次に、上チャック230に保持された上ウェハW1と下チャック231に保持された下ウェハW2との水平方向の位置調節が行われる(ステップS110)。
【0072】
なお、位置調節に先立っては、図16Aに示すように、上ウェハW1の接合面W1jには予め定められた複数、例えば3点の基準点A1〜A3が設定され、同様に下ウェハW2の接合面W2jには予め定められた複数、たとえば3点の基準点B1〜B3が設定される。これら基準点A1〜A3,B1〜B3としては、例えば上ウェハW1および下ウェハW2上に形成された所定のパターンがそれぞれ用いられる。なお、基準点の数は任意に設定可能である。
【0073】
まず、図16Aに示すように、上部撮像部281および下部撮像部291の水平方向位置の調節を行う。具体的には、下部撮像部291が上部撮像部281の略下方に位置するように、第1下チャック移動部290と第2下チャック移動部296によって下チャック231を水平方向に移動させる。そして、上部撮像部281と下部撮像部291とで共通のターゲットXを確認し、上部撮像部281と下部撮像部291の水平方向位置が一致するように、下部撮像部291の水平方向位置が微調節される。
【0074】
次に、図16Bに示すように、第1下チャック移動部290によって下チャック231を鉛直上方に移動させた後、上チャック230と下チャック231の水平方向位置の調節を行う。
【0075】
具体的には、第1下チャック移動部290と第2下チャック移動部296によって下チャック231を水平方向に移動させながら、上部撮像部281を用いて下ウェハW2の接合面W2jの基準点B1〜B3を順次撮像する。同時に、下チャック231を水平方向に移動させながら、下部撮像部291を用いて上ウェハW1の接合面W1jの基準点A1〜A3を順次撮像する。なお、図16Bは上部撮像部281によって下ウェハW2の基準点B1を撮像するとともに、下部撮像部291によって上ウェハW1の基準点A1を撮像する様子を示している。
【0076】
撮像された画像データは、制御装置70に出力される。制御装置70では、上部撮像部281で撮像された画像データと下部撮像部291で撮像された画像データとに基づいて、上ウェハW1の基準点A1〜A3と下ウェハW2の基準点B1〜B3とがそれぞれ合致するように、第1下チャック移動部290と第2下チャック移動部296によって下チャック231の水平方向位置を調節させる。こうして上チャック230と下チャック231の水平方向位置が調節され、上ウェハW1と下ウェハW2の水平方向位置が調節される。
【0077】
次に、図16Cに示すように、第1下チャック移動部290によって下チャック231を鉛直上方に移動させて、上チャック230と下チャック231の鉛直方向位置の調節を行い、当該上チャック230に保持された上ウェハW1と下チャック231に保持された下ウェハW2との鉛直方向位置の調節を行う(ステップS111)。このとき、下ウェハW2の接合面W2jと上ウェハW1の接合面W1jとの間の間隔は所定の距離、たとえば80μm〜200μmになっている。
【0078】
図16Dは、上述したステップS111までの処理が終わった後の上チャック230、上ウェハW1、下チャック231および下ウェハW2の様子を示している。図16Dに示すように、上ウェハW1は、上チャック230のすべての領域230a、230b、230cにおいて真空引きされて保持され、下ウェハW2も下チャック231のすべての領域231a、231bにおいて真空引きされて保持されている。
【0079】
次に、上ウェハW1と下ウェハW2の接合処理が行われる。具体的には、真空ポンプ241aの作動を停止して、図16Eに示すように、領域230aにおける吸引管240aからの上ウェハW1の真空引きを停止する。このとき、領域230b,230cでは、上ウェハW1が真空引きされて吸着保持されている。その後、基板押圧機構250の押圧ピン253を下降させることによって、上ウェハW1の中心部W1aを押圧しながら当該上ウェハW1を下降させる。このとき、押圧ピン253には、上ウェハW1がない状態で当該押圧ピン253が70μm移動するような荷重、例えば200gがかけられる。このように、基板押圧機構250の押圧ピン253によって、上ウェハW1の中心部W1aと下ウェハW2の中心部W2aを当接させて押圧する(ステップS112)。
【0080】
そうすると、押圧された上ウェハW1の中心部W1aと下ウェハW2の中心部W2aとの間で接合が開始する(図16E中の太線部)。すなわち、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれステップS101,S106において改質されているため、まず、接合面W1j,W2j間にファンデルワールス力(分子間力)が生じ、当該接合面W1j,W2j同士が接合される。さらに、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれステップS102,S107において親水化されているため、接合面W1j,W2j間の親水基が水素結合し、接合面W1j,W2j同士が強固に接合される。
【0081】
その後、図16Fに示すように、押圧ピン253によって上ウェハW1の中心部W1aと下ウェハW2の中心部W2aを押圧した状態で、真空ポンプ241bの作動を停止して、領域230bにおける吸引管240bからの上ウェハW1の真空引きを停止する。
【0082】
そうすると、領域230bに保持されていた上ウェハW1が下ウェハW2上に落下する。さらにその後、真空ポンプ241cの作動を停止して、領域230cにおける吸引管240cからの上ウェハW1の真空引きを停止する。このように上ウェハW1の中心部W1aから周縁部W1bに向けて、上ウェハW1の真空引きを段階的に停止し、上ウェハW1が下ウェハW2上に段階的に落下して当接する。そして、上述した接合面W1j,W2j間のファンデルワールス力と水素結合による接合が中心部W1aから周縁部W1bに向けて順次拡がる。
【0083】
こうして、図16Gに示すように上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jが全面で当接し、上ウェハW1と下ウェハW2が接合される(ステップS113)。
【0084】
その後、図16Hに示すように、押圧ピン253を上チャック230まで上昇させる。また、下チャック231において吸引管260a、260bからの下ウェハW2の真空引きを停止して、下チャック231による下ウェハW2の吸着保持を解除する。これにより、接合装置41での接合処理が終了する。
【0085】
<4.基板押圧機構の構成および動作>
ところで、上述のように押圧ピン253は上ウェハW1および下ウェハW2の接合時のスタータとして用いられるが、接合品質を向上させるうえでは、かかる押圧ピン253に位置精度高くかつ適切な荷重で上ウェハW1を繰り返し押圧させることが肝要となる。
【0086】
すなわち、基板押圧機構250は、押圧ピン253の移動制御(位置制御ならびに速度制御を含む)および荷重制御を、精度よくかつ繰り返し行える構造であることが好ましい。なお、この点において比較例となる従来技術では、例えば単動式のシリンダ構造によって前述の移動制御および荷重制御の両方を行う構造であったため、制御が難しく、精度の面でも難点があった。
【0087】
そこで、本実施形態では、基板押圧機構250は、第1直動機構251および第2直動機構252の2つの直動機構を備えることとし、第1直動機構251は専ら移動制御を、第2直動機構252は専ら荷重制御を、それぞれ行うことができる構造とした。
【0088】
また、本実施形態では、押圧ピン253を直動機構からは分離された部材とし、直動機構の構造的なガタつき等、直動を阻害する要因の影響を押圧ピン253が受けにくくなる構造とした。
【0089】
これにより、基板を精度よく押圧し、接合品質を向上させることが可能となる。以下、図17A図17Hを参照して、本実施形態に係る基板押圧機構250の構成について具体的に説明する。
【0090】
図17Aは、基板押圧機構250の構成を示す斜視図である。また、図17B図17Hは、基板押圧機構250の動作説明図(その1)〜(その7)である。なお、以下に示す各図面では、基板押圧機構250における可動部分を分かりやすくするために、例えば第1可動部251bを網掛けで塗りつぶして示す場合がある。
【0091】
図17Aに示すように、基板押圧機構250は、第1直動機構251と、第2直動機構252と、押圧ピン253と、基台部254と、直動案内部255とを備える。
【0092】
第1直動機構251は、固定部251aと、第1可動部251bと、第1エア給排部251cと、第2エア給排部251dとを備える。第1エア給排部251cおよび第2エア給排部251dは、「流体給排部」の一例に相当する。固定部251aは、基台部254に設けられる。第1可動部251bは、固定部251aに対し、鉛直軸Vx沿いに直動可能に設けられる。
【0093】
第2直動機構252は、軸受部252aと、第2可動部252bと、第1エア供給部252c(「第1流体供給部」の一例に相当)と、第2エア供給部252d(「第2流体供給部」の一例に相当)とを備える。軸受部252aは、第1可動部251bに設けられる。第2可動部252bは、軸受部252aに対し、鉛直軸Vx沿いに直動可能に設けられる。
【0094】
押圧ピン253は、第2可動部252bと分離した部材であり、基台部254に形成された貫通孔254aに挿通されるとともに、第1可動部251bに対し、直動案内部255を介して鉛直軸Vx沿いに直動可能に設けられる。
【0095】
なお、押圧ピン253は、第2可動部252bの当接を受けて伝達される第2可動部252bの推力によって直動し、先端部253aにおいて貫通孔243(図12等参照)越しに対向する上ウェハW1の中心部W1aを先端部253aで押圧する。
【0096】
図17Aに示した各構成要素について、さらに具体的に説明する。まず第1直動機構251は、例えば複動式のエアシリンダとして構成される。
【0097】
具体的には、図17Bに示すように、第1直動機構251は、真空ポンプ251fおよびバルブ251eを介して第1エア給排部251cから給排されるエアと、真空ポンプ251iおよびバルブ251hを介して第2エア給排部251dから給排されるエアとの圧力差によって第1可動部251bを鉛直軸Vx沿いに直動させる(図中の矢印1701参照)。これにより、第1直動機構251は、押圧ピン253の先端部253aの位置Tpを制御する(図中の矢印1702参照)。
【0098】
また、第1直動機構251は、第1エア給排部251cおよび第2エア給排部251dにそれぞれ接続され、排出されるエアの流量を可変可能に設けられた速度制御弁251g,251jを備える。第1直動機構251は、かかる速度制御弁251g,251jによって排出されるエアの流量を可変させることで押圧ピン253の速度を制御する。
【0099】
このように、第1直動機構251は、上述の制御装置70による制御に基づき、専ら押圧ピン253の移動制御(位置制御および速度制御を含む)を行う。
【0100】
なお、図17Bに示すように、基台部254の、第1直動機構251の可動領域の下側には排気部254bが設けられている。かかる排気部254bは、例えば吸引装置254cに接続されており、第1可動部251bの可動等によって可動領域に生じるパーティクルを吸引して外部へ排出することができる。
【0101】
次に、第2直動機構252について説明する。第2直動機構252は、例えば空気軸受として構成され、第2可動部252bを軸受部252aの軸受面から浮かせて可動させることができるため、摺動抵抗はきわめて小さくなり、第2直動機構252は、第2可動部252bを滑動可能に支持することができる(図中の矢印1703参照)。なお、第2可動部252bの周囲のエアは、例えば排気部252eを設けて排気することができる。
【0102】
また、第2直動機構252は、エア供給源252iおよびバルブ252hを介して第2エア供給部252dへエアを供給し、かかるエアの圧力によって第2可動部252bへ鉛直軸Vx沿いに付与する推力を可変させる(図中の矢印1704参照)。
【0103】
第2直動機構252は、かかる推力を可変させることで、押圧ピン253により上ウェハW1へ付与される荷重を制御する。このように、第2直動機構252は、上述の制御装置70による制御に基づき、専ら押圧ピン253の荷重制御を行う。かかる荷重制御においては、上述のように第2可動部252bが摺動抵抗小さく滑動可能に支持されていることにより、精度の高い制御を行うのに資することができる。
【0104】
次に、直動案内部255について説明する。図17Dに示すように、直動案内部255は、押圧ピン253の基端部253b側に取り付けられる。なお、上述の第1可動部251bには、鉛直軸Vxに平行なレール255aが配設されており、直動案内部255は、かかるレール255aに係合可能に、かつ、かかるレール255a沿いにスライド自在に設けられる(図中の矢印1705参照)。
【0105】
これにより、直動案内部255は、押圧ピン253を鉛直軸Vx沿いに直動案内することができる。すなわち、押圧ピン253を軸方向周りに回転させることなく直動させ、押圧ピン253に上ウェハW1の定位置を繰り返し精度高く押圧させるのに資することができる。
【0106】
なお、本実施形態では、押圧ピン253が、第2直動機構252の第2可動部252bとは分離した部材であることは既に述べたが、かかる押圧ピン253と第2可動部252bとは、少なくとも第2可動部252bの自重により常に当接することとなる。
【0107】
すなわち、図17Eに示すように、押圧ピン253は、第2可動部252bの鉛直下側に配置されるため、基端部253bにおいて少なくとも第2可動部252bの自重による当接を常に受ける。したがって、押圧ピン253は、第2可動部252bとは分離していても、第2可動部252bに推力が生じた場合に常にその伝達を受けられる状態にある。
【0108】
また、図17EのM1部を拡大した図17Fに示すように、第2可動部252bの先端部における押圧ピン253との当接面は、曲面を含んだ形状、例えばラウンド型に形成されている。ここで、図17Fでは、第2可動部252bの先端部はラウンド型に形成され、押圧ピン253の基端部253bと点CPにおいて当接した例を示している。
【0109】
かかる場合、第2可動部252bは、上述のように摺動抵抗小さくかつ滑動可能に支持されているため、鉛直軸Vx沿いの推力だけでなく(図中の矢印1706参照)、例えば鉛直軸Vx周りの回転力も作用する場合がある(図中の矢印1707参照)。
【0110】
しかしながら、図17Fに示すように、第2可動部252bと押圧ピン253の基端部253bとが点CPのみで当接していれば、押圧ピン253へ鉛直軸Vx沿いの推力のみを伝達し、鉛直軸Vx周りの回転力については伝達を規制することができる(図中の矢印1708参照)。
【0111】
これにより、直動を阻害する要因の影響を押圧ピン253が受けにくくすることができる。すなわち、押圧ピン253を軸方向周りに回転させることなく直動させ、押圧ピン253に上ウェハW1の定位置を繰り返し精度高く押圧させるのに資することができる。
【0112】
また、第2可動部252bについては、摺動抵抗小さくかつ滑動可能に支持することができるので、荷重制御において精度の高い制御を行うのに資することができる。すなわち、基板を精度よく押圧し、接合品質を向上させることができる。
【0113】
以上のような構成により、基板押圧機構250は、まず第1直動機構251により押圧ピン253を移動制御し、その先端部253aを上ウェハW1へ当接させる。そして、当接させた状態において、第2直動機構252により押圧ピン253を荷重制御し、図17Gに示すように第2直動機構252を空気バネとして作用させつつ、押圧ピン253に所定の押圧力で上ウェハW1を押圧させる。
【0114】
なお、図17GのM2部を拡大した図17Hに示すように、押圧ピン253の先端部253aにおける上ウェハW1との当接面は、第2可動部252bおよび押圧ピン253の場合と同様に、曲面を含んだ形状、例えばラウンド型に形成されていることが好ましい。
【0115】
これにより、押圧ピン253の先端部253aを角度変化の少ない範囲で上ウェハW1へ当接させることができるので、押圧ピン253が上ウェハW1の定位置(中心部W1a)を押圧する繰り返し精度を高めるのに資することができる。
【0116】
上述してきたように、本実施形態に係る基板押圧機構250は、第1直動機構251と、第2直動機構252と、押圧ピン253(「押圧部材」の一例に相当)とを備える。第1直動機構251は、鉛直軸Vx沿いに直動可能な第1可動部251bを有する。
【0117】
第2直動機構252は、鉛直軸Vx沿いに直動可能な第2可動部252bを有し、第1可動部251bに設けられる。押圧ピン253は、第2可動部252bの当接を受けて伝達される第2可動部252bの推力によって鉛直軸Vx沿いに直動可能に設けられ、先端部253aにおいて対向する上ウェハW1(「基板」の一例に相当)を先端部253aで押圧する。
【0118】
したがって、本実施形態に係る基板押圧機構250によれば、基板を精度よく押圧し、接合品質を向上させることができる。
【0119】
なお、基板押圧機構250の構成は、図17A図17Hに示すものに限定されない。以下、基板押圧機構250の変形例について、図18A図18Cを参照して説明する。
【0120】
<5.変形例に係る基板押圧機構の構成および動作>
図18Aは、変形例に係る基板押圧機構250Aの構成を示す斜視図(その1)である。また、図18Bは、変形例に係る基板押圧機構250Aの動作説明図である。また、図18Cは、変形例に係る基板押圧機構250Aの構成を示す斜視図(その2)である。
【0121】
なお、基板押圧機構250Aについては、上述した基板押圧機構250と異なる構成要素について主に説明する。
【0122】
図18Aに示すように、変形例に係る基板押圧機構250Aは、押圧ピン253の中途に上カバー253cを、基台部254の貫通孔254aの周囲に下カバー254dを、それぞれ備える点が基板押圧機構250とは異なる。
【0123】
上カバー253cは、例えば下カバー254dよりも径が大きい傘状に形成される。下カバー254dは、例えば貫通孔254aの周囲を取り囲む環状の側壁を有した形状に形成される。
【0124】
これら上カバー253cおよび下カバー254dは、図18Bに示すように、第1可動部251bが降下して押圧ピン253が鉛直軸Vx沿いに上ウェハW1へ向けて下げられた場合に(図中の矢印1801参照)、重複部Oが形成される位置関係で配置される。
【0125】
なお、重複部Oは、少なくとも押圧ピン253の先端部253aが上ウェハW1を押圧するうえでの最下端位置に達した場合に、上カバー253cが完全に下カバー254dを覆ってしまうように形成されることが好ましい。
【0126】
これにより、第1可動部251bの降下(図中の矢印1802参照)にともなって生じるパーティクルPが、貫通孔254a,243へ侵入して上ウェハW1へ落下し、付着するのを防ぐことができる。
【0127】
さらに、図18Cに示すように、基板押圧機構250Aに対しては、ストローク調整機構256を設けることとしてもよい。ストローク調整機構256は、例えばショックアブソーバであって、固定部251aに固定される第1部材256aと、第1可動部251bに固定され、第1可動部251bとともに可動する第2部材256bと、第2部材256bの可動に応じて伸縮するロッド部256cとを備える。
【0128】
かかるストローク調整機構256のストローク長Lは、例えば上カバー253cと下カバー254dとの間に常に前述の重複部Oが形成されるように調整される。これにより、上述のように第1可動部251bの降下にともなって生じるパーティクルPが、貫通孔254a,243へ侵入して上ウェハW1へ落下し、付着するのを確実に防ぐことができる。
【0129】
また、上述した実施形態では、押圧ピン253の押圧方向が、鉛直下向きである場合を例に挙げたが、かかる押圧方向が鉛直上向きであってもよい。この場合、押圧ピン253は第2可動部252bの鉛直上側に配置されることとなるが、少なくとも押圧ピン253の自重によって押圧ピン253および第2可動部252bは当接するので、かかる状態から第2可動部252bの推力を伝達して押圧ピン253を鉛直上向きに押動させることが可能である。
【0130】
また、上述した実施形態では、第1直動機構251がエアシリンダである場合を例に挙げたが、エアに限らず、流体シリンダであればよい。また、同様に、上述した実施形態では、第2直動機構252が空気軸受である場合を例に挙げたが、流体軸受であればよい。
【0131】
また、上述した実施形態では、第1直動機構251が複動式である場合を例に挙げたが、これに限らず、単動式として構成されてもよい。
【0132】
また、上述した実施形態では、真空ポンプ等を用いてエアを供給する場合を例に挙げたが、所定の圧力のエアを厳密に制御しつつ供給することが可能な電空レギュレータ等を用いてもよい。
【0133】
また、上述した実施形態では、押圧ピン253が、上ウェハW1の中心部W1aを押圧する場合を例に挙げたが、上ウェハW1の被押圧部位を限定するものではない。また、複数の基板押圧機構250を備えることとし、複数の押圧ピン253によって上ウェハW1の複数箇所を押圧してもよい。
【0134】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0135】
1 接合システム
2 搬入出ステーション
3 処理ステーション
30 表面改質装置
40 表面親水化装置
41 接合装置
70 制御装置
230 上チャック
231 下チャック
250,250A 基板押圧機構
251 第1直動機構
251b 第1可動部
251c 第1エア給排部
251d 第2エア給排部
251g,251j 速度制御弁
252 第2直動機構
252b 第2可動部
252c 第1エア供給部
252d 第2エア供給部
252e 排気部
253 押圧ピン
253a 先端部
253c 上カバー
254d 下カバー
255 直動案内部
Vx 鉛直軸
W1 上ウェハ
W2 下ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図16D
図16E
図16F
図16G
図16H
図17A
図17B
図17C
図17D
図17E
図17F
図17G
図17H
図18A
図18B
図18C