特許第6598812号(P6598812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598812
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】切断装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/25 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
   G02B6/25
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-58807(P2017-58807)
(22)【出願日】2017年3月24日
(65)【公開番号】特開2018-163195(P2018-163195A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2018年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】森 健二
【審査官】 野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−322086(JP,A)
【文献】 中国実用新案第205787213(CN,U)
【文献】 特開2005−181479(JP,A)
【文献】 特開2010−122555(JP,A)
【文献】 米国特許第04463886(US,A)
【文献】 特開2010−271384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00
6/02
6/24−6/255
6/36−6/40
6/46−6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを切断する切断装置であって、
ベース部と、
円盤状の刃部材と、
前記ベース部に設けられ、前記刃部材の位置を規制する位置決め部を有する位置決め部材と、
前記ベース部に対して高さが変化可能に配置され、前記刃部材を支持する支持部と、
前記支持部を前記ベース部に対して前記位置決め部の方向へ押圧する弾性部材と、
を具備し、
前記位置決め部材はスリットを有し、前記刃部材の一部が前記スリットの裏側から挿入され、前記刃部材の刃部の両側が前記スリットの内縁部と接触し、前記刃部材の先端が、前記スリットの表面側に突出し、
切断の際に、前記ベース部から前記刃部材の刃先までの高さが常に一定であること特徴とする切断装置。
【請求項2】
前記ベース部に対する前記位置決め部材の高さを調整可能な調整部が設けられることを特徴とする請求項1記載の切断装置。
【請求項3】
前記刃部材を回転させ、前記スリットから突出する前記刃部材の周方向位置を変更する回転部を具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを切断する切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバを融着接続する際には、まず、光ファイバ心線の被覆を除去した後、所定の寸法に光ファイバが切断される。光ファイバを切断するための切断装置としては、光ファイバ心線の被覆を除去してガラスファイバ部を露出させ、該ガラスファイバ部分に円盤状の刃部材を接触させて表面に傷をつけ、切断するものがある。
【0003】
しかし、上述の切断装置は、刃部材が光ファイバと接触を繰り返すことにより劣化することがある。そのため、切断作業時に刃部材を回転させることにより、光ファイバとの接触位置を更新するものが提案されている。
【0004】
このような切断装置としては、例えば、切断作業時に円盤状の刃部材の移動に連動して刃部材を回転させることで、光ファイバとの接触位置を更新するものもある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−203815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、円形の刃部材の回転軸が完全に刃部材の中心にあれば、刃部材を回転させたとしても、刃部材の位置が変化することがない。したがって、刃部材を回転させて使用しても、光ファイバとの相対関係を常に一定に保つことができ、光ファイバに一定の傷をつけることができる。
【0007】
しかし、刃部材の製造精度などの理由によって、刃部材の回転軸が中心からずれて、偏心する場合がある。このような場合に、刃部材を回転させて使用すると、刃部材の回転によって、刃部材の位置が変化する。したがって、光ファイバへの傷の深さが変化する。このように傷の深さが変わると、光ファイバを精度よく切断することが困難となり、光ファイバの切断品質が悪くなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、刃部材の回転軸が偏心している場合でも、一定の条件で光ファイバを切断することが可能な切断装置を提供することを目的とする。
【0009】
前述した目的を達成するために本発明は、光ファイバを切断する切断装置であって、ベース部と、円盤状の刃部材と、前記ベース部に設けられ、前記刃部材の位置を規制する位置決め部を有する位置決め部材と、前記ベース部に対して高さが変化可能に配置され、前記刃部材を支持する支持部と、前記支持部を前記ベース部に対して前記位置決め部の方向へ押圧する弾性部材と、を具備し、前記位置決め部材はスリットを有し、前記刃部材の一部が前記スリットの裏側から挿入され、前記刃部材の刃部の両側が前記スリットの内縁部と接触し、前記刃部材の先端が、前記スリットの表面側に突出し、切断の際に、前記ベース部から前記刃部材の刃先までの高さが常に一定であること特徴とする切断装置である。
【0010】
前記ベース部に対する前記位置決め部の高さを調整可能な調整部が設けられてもよい。
【0011】
前記刃部材を回転させ、前記スリットから突出する前記刃部材の周方向位置を変更する回転部を具備してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、刃部材の回転軸が偏心している場合でも、一定の条件で光ファイバを切断することが可能な切断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】切断装置1を示す斜視図。
図2】(a)は切断ユニット9の平面図、(b)は切断ユニット9の正面図。
図3】切断ユニット9の背面図。
図4】(a)は図3のA−A線断面図、(b)は(a)のF部拡大図。
図5】(a)、(b)は切断ユニット9の切断動作を示す図。
図6】切断ユニット9の他の実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、切断装置1を示す斜視図である。切断装置1は、主に、本体部3、蓋部5、切断ユニット9、レバー11等を有する。切断装置1は、光ファイバを所定の位置で切断するための装置である。
【0015】
本体部3の上面には、ホルダ載置部7が形成される。ホルダ載置部7には、光ファイバが保持されたホルダが載置される。ホルダの端部からは、光ファイバ心線の被覆を除去して露出させたガラスファイバ部分が突出する。ホルダをホルダ載置部7へ配置すると、光ファイバが切断ユニット9をまたぐように配置される。この状態で蓋部5を閉じると、光ファイバが押圧部13によって押圧されて保持される。
【0016】
さらにレバー11を操作すると、切断ユニット9の刃部材がスライド動作し(図中矢印A方向)、光ファイバに傷をつけ、傷部分に曲げ応力等を加えることで、光ファイバを切断することができる。
【0017】
次に、切断ユニット9について説明する。図2(a)は、切断ユニット9の平面図、図2(b)は切断ユニット9の正面図、図3は切断ユニット9の背面図である。切断ユニット9は、ガイドレール15、ベース部17、支持部21、刃部材19、弾性部材33、位置決め部材25等から構成される。
【0018】
ベース部17には、ガイドレール15が固定される。ガイドレール15は、図示を省略するスライドブロックに対してスライド移動可能である。ベース部17の上部には、位置決め部材25が設けられる。位置決め部材25の上部にはスリット23が形成される。スリット23の内縁部は、刃部材19の位置を規制するための位置決め部25aとなる。なお、位置決め部25aによる刃部材19の位置決め方法については詳細を後述する。
【0019】
位置決め部材25には、支持部21が取り付けられる。支持部21の一端は、位置決め部材25に対してピン31で固定される。支持部21は、位置決め部材25に対してピン31を中心に回動可能である。支持部21の一端が位置決め部材25に対して回動することで、支持部21の高さが変化する。すなわち、支持部21は、ベース部17に対して高さが変化可能に配置される。
【0020】
ベース部17には、支持部21を上方へ押圧する弾性部材33が設けられる。すなわち、支持部21は、弾性部材33によって、位置決め部材25の上方の位置決め部25aの方向へ押圧される。
【0021】
支持部21には、円盤状の刃部材19が回転可能に取り付けられる。回転部29を回転させることで、刃部材19を回転させることができる。したがって、回転部29によって、前述したスリット23から突出する刃部材19の周方向位置を変更することができる。このため、刃部材19の、光ファイバと接触する周方向位置を変えることが可能である。
【0022】
次に、刃部材19の位置決め方法について詳細に説明する。図4(a)は、図3のB−B線断面図、図4(b)は、図4(a)のF部拡大図である。前述したように、刃部材19は支持部21に取り付けられる。また、支持部21は、弾性部材33によって位置決め部25aに常に押圧される。
【0023】
図4(b)に示すように、刃部材19は、スリット23と接触する。より詳細には、刃部材19の刃部の両側にはテーパ部が形成され、刃部の両側のテーパ部が、スリット23の内縁部の位置決め部25aと接触する。すなわち、刃部材19の一部は、スリット23の裏側から挿入され、刃部材19の刃部の両側がスリット23の内縁部と接触し、刃部材19の先端が、スリット23の表面側に突出する。なお、スリット23の内面は、刃部材19の刃先のテーパ形状に対応するテーパ形状である。
【0024】
ここで、前述したように刃部材19は、円盤状であって、光ファイバ35と接触する周方向位置を変えることができる。すなわち、刃部材19は回転して使用される。この際、刃部材19の回転中心から刃先までの長さ(図4(a)のD)が周方向で完全に一定であれば、刃部材19を回転させても、刃先の位置は変わらない。一方、刃部材19の回転軸がわずかに偏心していると、刃部材19を回転させることで、刃部材19の回転中心から刃先までの距離が変化する。
【0025】
これに対し、本発明では、刃部材19の先端部近傍はスリット23の内縁部と接触して位置決めされる。したがって、刃部材19は、位置決め部25aによって位置が規制され、スリット23から突出する刃部材19の刃先の長さ(図4(a)のC)は、略一定となる。
【0026】
このように、スリット23からの刃部材19の刃先の突出代が一定となるため、ベース部17から刃部材19の刃先までの距離(図4(a)のE)が刃部材19の偏心によらず、略一定とすることができる。なお、刃部材19の偏心量は、支持部21の高さ変化で吸収することができる。
【0027】
なお、刃部材19の偏心による刃部材19を回転させたときのベース部17から刃部材19の刃先までの距離の最大変化量が、弾性部材33の収縮により吸収できる程度(たとえば2mm以下)であれば刃部材19の位置を一定にできる。また、本発明は、刃部材19の偏心量が刃部材19を回転させたときのベース部17から刃部材19の刃先までの距離の最大変化量が2μm以上の場合に特に有効である。
【0028】
次に、光ファイバの切断方法について説明する。図5は、切断ユニット9と光ファイバ35の位置関係を示す図である。ガイドレール15は、スライドブロック37で保持される。ガイドレール15とスライドブロック37は、相対的にスライド動作可能である。
【0029】
前述したように、光ファイバ35はホルダ(図示省略)に保持されて、ホルダの端面から突出する光ファイバが押圧部13(図1参照)で押圧されて保持される。この状態から、図5(b)に示すように、切断ユニット9を光ファイバ35に対して相対的にスライド移動させると(図中矢印G)、位置決め部材25の先端から突出する刃部材19の先端が光ファイバ35と接触する。この際、光ファイバ35に所定の深さの傷をつけることができる。
【0030】
この際、前述したように、ベース部17から刃部材19の刃先までの高さが常に一定であるため、刃部材19の周方向のいずれの位置を使用しても、光ファイバ35に常に一定の深さの傷をつけることができる。このため、この後傷の設けられた光ファイバに曲げ応力を加えることで、安定して高品質な光ファイバ35の切断面を得ることができる。
【0031】
なお、刃部材19の先端位置を調整するためには、位置決め部材25の高さを調整することもできる。高さ調整部27は、位置決め部材25に設けられた長孔にネジ留めさされており、ネジ留め位置を調整することで、ベース部17に対する位置決め部材25の高さを微調整することができる。したがって、ベース部17に対して、刃部材19の先端位置を微調整することができる。
なお、ベース部17に対する位置決め部材25の高さ調整方法はこれ以外の方法を用いてもよい。
【0032】
また、位置決め部25aは、図4(b)に示すように、刃部材19の刃先のテーパ形状でなくてもよい。例えば、図6に示すように、スリット23を刃部材19の径方向に平行に形成してもよい。この場合には、スリット23の内縁部と刃部材19とが点接触となる。いずれにしても、刃部材19の刃先の両側のテーパ部をスリット23の内縁部に接触させることで、刃部材19の刃先の位置決めを行うことができる。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態によれば、刃部材19の高さを規制する位置決め部25aへ刃部材19を押圧する弾性部材33を設けることにより、刃部材19の回転軸が偏心している場合でも、スリット23の表面側に突出する刃部材19の先端の高さを一定とすることができる。すなわち、光ファイバ35と刃部材19の刃部との位置関係を一定に維持できる。
【0034】
このため、常に一定の条件で、光ファイバ35に傷をつけることができる。この結果、傷の深さのばらつきによって生じる、光ファイバ35の切断面の形状バラツキや切断不良などが生じることを抑制することができる。したがって、光ファイバ35の切断品質を高めることができる。
【0035】
また、刃部材19の回転軸の加工精度が多少悪くてもよいため、刃部材19の製造が容易となり、刃部材19の加工コストを抑制することができる。
【0036】
また、位置決め部材25の高さを調整することができるため、刃部材19の先端位置の微調整を行うことができる。
【0037】
また、刃部材19を回転させる回転部29を設けることで、刃部材19を容易に回転することができる。
【0038】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0039】
例えば、刃部材19を位置決め部25aに押圧可能であれば、弾性部材33の配置や支持部21の構造などは図示した例には限られない。
【0040】
また、刃部材19の回転は、回転部29の回転は手動で行っても自動で行ってもよい。例えば、ベース部17をスライドブロック37に対して往復スライド動作させる際に、ベース部17の動作に連動して、刃部材19が回転するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1………切断装置
3………本体部
5………蓋部
7………ホルダ載置部
9………切断ユニット
11………レバー
13………押圧部
15………ガイドレール
17………ベース部
19………刃部材
21………支持部
23………スリット
25………位置決め部材
25a………位置決め部
27………高さ調整部
29………回転部
31………ピン
33………弾性部材
35………光ファイバ
37………スライドブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6