特許第6599098号(P6599098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6599098
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20191021BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20191021BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   B23K26/00 B
   B23K26/082
   B23K26/00 N
   H01L21/78 B
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-251985(P2014-251985)
(22)【出願日】2014年12月12日
(65)【公開番号】特開2016-112579(P2016-112579A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】森數 洋司
(72)【発明者】
【氏名】村澤 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】武田 昇
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−289415(JP,A)
【文献】 特開2013−193090(JP,A)
【文献】 特開2011−189408(JP,A)
【文献】 特開2005−186078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するX軸Y軸で規定される保持面を有する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該被加工物保持手段と該レーザー光線照射手段とを相対的にX軸方向に移動するX軸方向移動手段と、該被加工物保持手段と該レーザー光線照射手段とを相対的にY軸方向に移動するY軸方向移動手段と、該レーザー光線照射手段と該X軸方向移動手段と該Y軸方向移動手段を制御する制御手段と、を具備するレーザー加工装置であって、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該レーザー光線発振手段が発振したレーザー光線の出力を調整する出力調整手段と、該レーザー光線発振手段が発振したレーザー光線を集光して被加工物保持手段に保持された被加工物に照射する集光器と、該レーザー光線発振手段と該集光器との間に配設されレーザー光線発振手段が発振したレーザー光線をX軸方向およびY軸方向に揺動する揺動手段と、を具備し、
該レーザー光線照射手段は、該レーザー光線発振手段が発振した被加工物に対して透過性を有するレーザー光線の波長を変換せずにそのまま通過させるか、又は変換する波長変換機構を備え、
該制御手段は、該被加工物保持手段に保持された被加工物に加工を施すための加工制御プログラムと被加工物にマーキングを施すためのマーキング制御プログラムとを格納したメモリとを備えており、該加工制御プログラムと該マーキング制御プログラムのいずれかが入力手段からのプログラム選択信号によって選択され、該加工制御プログラムが選択された場合に、該加工制御プログラムに応じて該レーザー光線発振手段が発振する被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線が被加工物に照射されるように、該波長変換機構がセットされ、該マーキング制御プログラムが選択された場合に、該マーキング制御プログラムに応じて該レーザー光線発振手段が発振した波長のレーザー光線を被加工物に対して吸収性を有する波長に変換して照射されるように、該波長変換機構がセットされ、
該マーキング制御プログラムが選択された場合に、マーキングする文字、又は図形に対応して該揺動手段を制御してレーザー光線をX軸方向、及びY軸方向に揺動するレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物にレーザー加工を施すためのレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列された分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体チップを製造している。また、サファイア基板の表面にフォトダイオード等の受光素子やレーザーダイオード等の発光素子等が積層された光デバイスウエーハも分割予定ラインに沿って切断することにより個々のフォトダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。
【0003】
上述した半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハを分割予定ラインに沿って分割する方法として、ウエーハに形成された分割予定ラインに沿ってパルスレーザー光線を照射してアブレーション加工することによりレーザー加工溝を形成し、ウエーハを分割予定ラインに沿って分割する方法が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、上述した半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハを分割予定ラインに沿って分割する方法として、ウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を用い、分割すべき領域の内部に集光点を位置付けてパルスレーザー光線を照射することにより、ウエーハの内部に分割予定ラインに沿って改質層を連続的に形成し、この改質層が形成されることによって強度が低下した分割予定ラインに沿って外力を加えることにより、ウエーハを分割する技術が実用化されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
一方、デバイスのIDまたは偽造防止用のマーキングをデバイスにレーザー加工によって施す技術が実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【特許文献2】特許第348805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、デバイスにマーキングを施すためには、マーキング専用のレーザー加工装置が必要となり、設備コストが掛かるという問題がある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、被加工物に所定の加工ラインに沿ってレーザー加工を施すことができるとともに、マーキングを施すことができるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持するX軸Y軸で規定される保持面を有する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該被加工物保持手段と該レーザー光線照射手段とを相対的にX軸方向に移動するX軸方向移動手段と、該被加工物保持手段と該レーザー光線照射手段とを相対的にY軸方向に移動するY軸方向移動手段と、該レーザー光線照射手段と該X軸方向移動手段と該Y軸方向移動手段を制御する制御手段と、を具備するレーザー加工装置であって、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該レーザー光線発振手段が発振したレーザー光線の出力を調整する出力調整手段と、該レーザー光線発振手段が発振したレーザー光線を集光して被加工物保持手段に保持された被加工物に照射する集光器と、該レーザー光線発振手段と該集光器との間に配設されレーザー光線発振手段が発振したレーザー光線をX軸方向およびY軸方向に揺動する揺動手段と、を具備し、
該レーザー光線照射手段は、該レーザー光線発振手段が発振した被加工物に対して透過性を有するレーザー光線の波長を変換せずにそのまま通過させるか、又はレーザー光線の波長を変換する波長変換機構を備え、
該制御手段は、該被加工物保持手段に保持された被加工物に加工を施すための加工制御プログラムと被加工物にマーキングを施すためのマーキング制御プログラムとを格納したメモリとを備えており、該加工制御プログラムと該マーキング制御プログラムのいずれかが入力手段からのプログラム選択信号によって選択され、該加工制御プログラムが選択された場合に、該加工制御プログラムに応じて該レーザー光線発振手段が発振する被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線が被加工物に照射されるように、該波長変換機構がセットされ、該マーキング制御プログラムが選択された場合に、該マーキング制御プログラムに応じて該レーザー光線発振手段が発振した波長のレーザー光線を被加工物に対して吸収性を有する波長に変換して照射されるように、該波長変換機構がセットされ、
該マーキング制御プログラムが選択された場合に、マーキングする文字、又は図形に対応して該揺動手段を制御してレーザー光線をX軸方向、及びY軸方向に揺動するレーザー加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるレーザー加工装置おいては、該レーザー光線照射手段は、該レーザー光線発振手段が発振した被加工物に対して透過性を有するレーザー光線の波長を変換せずにそのまま通過させるか、又は変換する波長変換機構を備え、該制御手段は、該被加工物保持手段に保持された被加工物に加工を施すための加工制御プログラムと被加工物にマーキングを施すためのマーキング制御プログラムとを格納したメモリとを備えており、該加工制御プログラムと該マーキング制御プログラムのいずれかが入力手段からのプログラム選択信号によって選択され、該加工制御プログラムが選択された場合に、該加工制御プログラムに応じて該レーザー光線発振手段が発振する被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線が被加工物に照射されるように、該波長変換機構がセットされ、該マーキング制御プログラムが選択された場合に、該マーキング制御プログラムに応じて該レーザー光線発振手段が発振した波長のレーザー光線を被加工物に対して吸収性を有する波長に変換して照射されるように、該波長変換機構がセットされ、該マーキング制御プログラムが選択された場合に、マーキングする文字、又は図形に対応して該揺動手段を制御してレーザー光線をX軸方向、及びY軸方向に揺動するので、加工制御プログラムを選択することにより被加工物の加工ラインに沿って加工を施すことができるとともに、マーキング制御プログラムを選択して揺動手段を制御することによりIDまたは偽造防止用のマークを形成することができ、設備コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
図2図1に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段のブロック構成図。
図3図3に示すレーザー光線照射手段に装備される波長変換機構を構成する波長変換手段の斜視図。
図4図1に示すレーザー加工装置に装備される制御手段のブロック構成図。
図5】被加工物としての半導体ウエーハの斜視図。
図6図5に示す半導体ウエーハを環状のフレームに装着された粘着テープに貼着された状態を示す斜視図。
図7図1に示すレーザー加工装置によって実施する改質層形成工程の説明図。
図8図1に示すレーザー加工装置によって実施するマーキング工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1には、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向であるX軸方向に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、基台2上に配設されたレーザー光線照射手段としてのレーザー光線照射ユニット4とを具備している。
【0015】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上にX軸方向に移動可能に配設された第1の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上にX軸方向と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向であるY軸方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持された支持テーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361の上面であるX軸Y軸で規定される保持面上に被加工物である例えば円板形状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、半導体ウエーハ等の被加工物を保護テープを介して支持する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0016】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にY軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるためのX軸方向移動手段37を具備している。X軸方向移動手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第1の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0017】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記チャックテーブル36のX軸方向位置を検出するためのX軸方向位置検出手段374を備えている。X軸方向位置検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。このX軸方向位置検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のX軸方向位置を検出する。なお、上記X軸方向移動手段37の駆動源としてパルスモータ372を用いた場合には、パルスモータ372に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36のX軸方向位置を検出することもできる。また、上記X軸方向移動手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のX軸方向位置を検出することもできる。
【0018】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、Y軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるためのY軸方向移動手段38を具備している。Y軸方向移動手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0019】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記第2の滑動ブロック33のY軸方向位置を検出するためのY軸方向位置検出手段384を備えている。Y軸方向位置検出手段384は、案内レール322に沿って配設されたリニアスケール384aと、第2の滑動ブロック33に配設され第2の滑動ブロック33とともにリニアスケール384aに沿って移動する読み取りヘッド384bとからなっている。このY軸方向位置検出手段384の読み取りヘッド384bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向位置を検出する。なお、上記Y軸方向移動手段38の駆動源としてパルスモータ382を用いた場合には、パルスモータ382に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向位置を検出することもできる。また、上記Y軸方向移動手段38の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向位置を検出することもできる。
【0020】
上記レーザー光線照射ユニット4は、上記基台2上に配設された支持部材41と、該支持部材41によって支持され実質上水平に延出するケーシング42と、該ケーシング42に配設されたレーザー光線照射手段5と、ケーシング42の前端部に配設されレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段6を具備している。なお、撮像手段6は、図示の実施形態においては可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0021】
上記レーザー光線照射手段5について、図2を参照して説明する。
図示の実施形態におけるレーザー光線照射手段5は、上記ケーシング42内に配設されたパルスレーザー光線発振手段51と、該パルスレーザー光線発振手段51によって発振されたパルスレーザー光線の出力を調整する出力調整手段52と、パルスレーザー光線発振手段51が発振したパルスレーザー光線を集光してチャックテーブル36に保持された被加工物Wに照射する集光器53と、パルスレーザー光線発振手段51と集光器53との間に配設されパルスレーザー光線発振手段51が発振したパルスレーザー光線をX軸方向およびY軸方向に揺動する揺動手段54と、パルスレーザー光線発振手段51が発振したパルスレーザー光線の波長を変換する波長変換機構55とを具備している。
【0022】
上記パルスレーザー光線発振手段51は、図示の実施形態においては波長が1064nmのパルスレーザー光線を発振するパルスレーザー光線発振器511と、パルスレーザー光線発振器511が発振するパルスレーザー光線の繰り返し周波数を設定する繰り返し周波数設定手段512とから構成されている。上記出力調整手段52は、パルスレーザー光線発振手段51から発振されたパルスレーザー光線の出力を所定の出力に調整する。上記集光器53は、パルスレーザー光線発振手段51が発振したパルスレーザー光線を集光してチャックテーブル36に保持された被加工物Wに照射する集光レンズ531を具備しており、図1に示すようにケーシング42の先端に装着される。
【0023】
上記揺動手段54は、図示の実施形態においては角度調整可能なミラー541で構成されており、ミラー角度コントローラ542によって角度調整される。なお、ミラー角度コントローラ542は、角度調整可能なミラー541をX軸方向およびY軸方向に偏向することができ、後述する制御手段によって制御される。
【0024】
次に、上記波長変換機構55について、図3を参照して説明する。
図示の実施形態における波長変換機構55は、図3に示すように第1の波長変換手段56と第2の波長変換手段57とからなっている。第1の波長変換手段56は、回転円盤561を具備している。回転円盤561は、図示の実施形態においては3個の貫通穴561a、561b、561cを備えている。このように形成された回転円盤561の貫通穴561aにはLBO結晶からなる波長変換結晶562aが配設され、貫通穴561bにはBBO結晶からなる波長変換結晶562bが配設されており、貫通穴561cには波長変換結晶が配設されていない。第2の波長変換手段57も第1の波長変換手段56と同様に回転円盤571を具備している。回転円盤571は、図示の実施形態においては2個の貫通穴571a、571bを備えている。このように形成された回転円盤571の貫通穴571aにはCLBO結晶からなる波長変換結晶572aが配設されており、貫通穴571bには波長変換結晶が配設されていない。このように構成された第1の波長変換手段56と第2の波長変換手段57は、軸方向に互いに対向して配設され、それぞれ回動機構560,570によって軸心を中心として回動せしめられるようになっている。この回転円盤561および回転円盤571を回転駆動する回動機構560および570は、後述する制御手段によって制御される。なお、上記LBO結晶からなる波長変換結晶562aとBBO結晶からなる波長変換結晶562bおよびCLBO結晶からなる波長変換結晶572aは、それぞれ入力したレーザー光線の波長を1/2の波長に変換する機能を有している。従って、上記パルスレーザー光線発振手段51から発振された波長が1064nmのパルスレーザー光線は、LBO結晶からなる波長変換結晶562aのみを通過することによって波長が532nmのパルスレーザー光線に変換される。また、上記パルスレーザー光線発振手段51から発振された波長が1064nmのパルスレーザー光線は、BBO結晶からなる波長変換結晶562bおよびCLBO結晶からなる波長変換結晶572aを通過することによって波長が266nmのパルスレーザー光線に変換される。なお、回転円盤561の貫通穴561cと回転円盤571の貫通穴571bを一致させると上記パルスレーザー光線発振手段51から発振された波長が1064nmのパルスレーザー光線がそのまま出力される。
【0025】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、図4に示す制御手段7を具備している。制御手段7はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)71と、制御プログラムを格納するプログラムメモリ72と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ73と、入力インターフェース74および出力インターフェース75とを備えている。制御手段7の入力インターフェース74には、上記X軸方向位置検出手段374、Y軸方向位置検出手段384、撮像手段6、入力手段70等からの検出信号が入力される。そして、制御手段7の出力インターフェース75からは、上記X軸方向移動手段37、Y軸方向移動手段38、レーザー光線照射手段5のパルスレーザー光線発振手段51、出力調整手段52、揺動手段54のミラー角度コントローラ542、波長変換機構55の第1の波長変換手段56を構成する回転円盤561を回動する回動機構560、波長変換機構55の第2の波長変換手段57を構成する回転円盤571を回動する回動機構570等に制御信号を出力する。なお、プログラムメモリ72には、被加工物に加工を施すための加工制御プログラムと被加工物にマーキングを施すためのマーキング制御プログラムとが格納されている。このプログラムメモリ72に格納された加工制御プログラムとマーキング制御プログラムは、上記入力手段70によって選択するようになっている。また、ランダムアクセスメモリ73には、マーキングする文字または図形が格納されている。
【0026】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図5には、上述したレーザー加工装置によって加工される被加工物としての半導体ウエーハ10の斜視図が示されている。図5に示す半導体ウエーハ10は、シリコンウエーハからなっており、表面10aに複数の分割予定ライン101が格子状に形成されているとともに、該複数の分割予定ライン101によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス102が形成されている。
【0027】
上述した半導体ウエーハ10の内部に分割予定ライン101に沿って改質層を形成する加工について説明する。改質層を形成する改質層形成工程を実施するためには、上記入力手段70によってプログラムメモリ72の制御プログラムを加工制御プログラムに選択する。そして、上記波長変換機構55の第1の波長変換手段56を構成する回転円盤561の貫通穴561cと第2の波長変換手段57を構成する回転円盤571の貫通穴571bを一致させて、上記パルスレーザー光線発振手段51から発振された波長が1064nmのパルスレーザー光線がそのまま出力するようにセットする。また、揺動手段54としての角度調整可能なミラー541は、パルスレーザー光線発振手段51から発振されたパルスレーザー光線をチャックテーブル36の保持面に対して垂直となる方向に方向変換する角度に固定する。
【0028】
そして、上述した半導体ウエーハ10の内部に分割予定ライン101に沿って改質層を形成するには、先ず、半導体ウエーハ10の表面10aに合成樹脂からなる粘着テープの表面を貼着するとともに粘着テープの外周部を環状のフレームによって支持する被加工物支持工程を実施する。即ち、図6に示すように、環状のフレームFの内側開口部を覆うように外周部が装着された粘着テープTの表面に半導体ウエーハ10の表面10aを貼着する。なお、粘着テープTは、図示の実施形態においては塩化ビニール(PVC)シートによって形成されている。
【0029】
上述した被加工物支持工程を実施したならば、図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブル36上に半導体ウエーハ10の粘着テープT側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、半導体ウエーハ10を粘着テープTを介してチャックテーブル36上に吸引保持する(被加工物保持工程)。従って、チャックテーブル36に粘着テープTを介して保持された半導体ウエーハ10は、裏面10bが上側となる。なお、半導体ウエーハ10を粘着テープTを介して支持した環状のフレームFは、チャックテーブル36に配設されたクランプ362によって固定される。
【0030】
上述した被加工物保持工程を実施したならば、X軸方向移動手段37を作動して半導体ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル36を撮像手段6の直下に位置付ける。チャックテーブル36が撮像手段6の直下に位置付けられると、撮像手段6および制御手段7によって半導体ウエーハ10のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段6および制御手段7は、半導体ウエーハ10の所定方向に形成されている分割予定ライン101に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段5の集光器53との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ10に形成されている所定方向と直交する方向に形成されている分割予定ライン101に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。このとき、半導体ウエーハ10の分割予定ライン101が形成されている表面10aは下側に位置しているが、撮像手段6が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、裏面10bから透かして分割予定ライン101を撮像することができる。
【0031】
以上のようにしてチャックテーブル36上に保持されている半導体ウエーハ10に形成されている分割予定ライン101を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、図7の(a)で示すようにチャックテーブル36をレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段5の集光器53が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定の分割予定ライン101の一端(図7の(a)において左端)をレーザー光線照射手段5の集光器53の直下に位置付ける。次に、集光器53から照射されるパルスレーザー光線の集光点Pを半導体ウエーハ10の厚み方向中間部に位置付ける。レーザー光線照射手段5を作動して集光器53からパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル36を図7の(a)において矢印X1で示す方向に所定の送り速度で移動せしめる。このとき、上記波長変換機構55の第1の波長変換手段56を構成する回転円盤561の貫通穴561cと第2の波長変換手段57を構成する回転円盤571の貫通穴571bを一致させて上記パルスレーザー光線発振手段51から発振された波長が1064nmのパルスレーザー光線がそのまま出力するようにセットされているので、集光器53からはシリコンウエーハに対して透過性を有する波長(1064nm)のパルスレーザー光線が照射される。そして、図7の(b)で示すようにレーザー光線照射手段5の集光器53の照射位置が分割予定ライン101の他端の位置に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル36の移動を停止する。この結果、半導体ウエーハ10の内部には、分割予定ライン101に沿って改質層100が形成される。
【0032】
なお、上記改質層形成工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
波長 :1064nmのパルスレーザー
繰り返し周波数 :50kHz
平均出力 :0.5W
集光スポット径 :φ1μm
加工送り速度 :100mm/秒
【0033】
上述したように所定の分割予定ライン101に沿って上記改質層形成工程を実施したら、チャックテーブル36を矢印Yで示す方向に半導体ウエーハ10に形成された分割予定ライン101の間隔だけ割り出し送りし(割り出し送り工程)、上記改質層形成工程を遂行する。このようにして所定方向に形成された全ての分割予定ライン101に沿って上記改質層形成工程を実施したならば、チャックテーブル36を90度回動せしめて、上記所定方向に形成された分割予定ライン101に対して直交する方向に延びる分割予定ライン101に沿って上記改質層形成工程を実行する。
【0034】
次に、上記改質層形成工程が実施された状態から、半導体ウエーハ10の裏面におけるデバイスに対応した領域にデバイス情報をマーキングするマーキング工程を実施する。
デバイスに対応した領域に所定のマーキングを施すマーキング工程について説明する。マーキング工程を実施するためには、上記入力手段70によってプログラムメモリ72の制御プログラムをマーキング制御プログラムに選択する。そして、上記波長変換機構55の第1の波長変換手段56を構成する回転円盤561のLBO結晶からなる波長変換結晶562aと第2の波長変換手段57を構成する回転円盤571の貫通穴571bを一致させて、上記パルスレーザー光線発振手段51から発振された波長が1064nmのパルスレーザー光線をシリコンウエーハに対して吸収性を有する波長である532nmの波長のパルスレーザー光線となるようにセットする。また、揺動手段54としての角度調整可能なミラー541は、パルスレーザー光線発振手段51から発振されたパルスレーザー光線をチャックテーブル36の保持面に対して垂直となる方向に方向変換する角度に位置付ける。
【0035】
次に、図8に示すように半導体ウエーハ10の裏面における分割予定ライン101によって区画された領域に形成されたデバイス102に対応する領域に、レーザー光線照射手段5の集光器53を位置付け、集光器53からパルスレーザー光線(シリコンウエーハに対して吸収性を有する波長である532nmの波長のパルスレーザー光線)を照射しつつ、制御手段7はランダムアクセスメモリ73に格納されたマーキングする文字または図形に基づいてミラー角度コントローラ542に制御信号を出力する。この結果、揺動手段54として角度調整可能なミラー541がマーキングする文字または図形に対応してX軸方向およびY軸方向に偏向せしめられ、半導体ウエーハ10の裏面におけるデバイス102に対応する領域にIDまたは偽造防止用のマーク110が形成される。
【0036】
なお、上記マーキング工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
波長 :1064nm→355nmのパルスレーザー
繰り返し周波数 :50kHz
平均出力 :5W
スポット径(デフォーカス):φ10μm
【0037】
上述した実施形態においては、マーキング工程を波長変換機構55の第1の波長変換手段56を構成する回転円盤561のLBO結晶からなる波長変換結晶562aと第2の波長変換手段57を構成する回転円盤571の貫通穴571bを一致させて、パルスレーザー光線発振手段51から発振された波長が1064nmのパルスレーザー光線を532nmの波長のパルスレーザー光線に調整して実施した例を示したが、被加工物の材質によっては第1の波長変換手段56を構成する回転円盤561のBBO結晶からなる波長変換結晶562bと第2の波長変換手段57を構成する回転円盤571のCLBO結晶からなる波長変換結晶572aを一致させることにより、パルスレーザー光線発振手段51から発振された波長が1064nmのパルスレーザー光線を266nmの波長のパルスレーザー光線に調整して実施してもよい。
また、上記パルスレーザー光線発振手段51から発振された波長が1064nmのパルスレーザー光線を532nmまたは266nmの波長に調整されたパルスレーザー光線を半導体ウエーハ10の分割予定ライン101に沿って照射し、半導体ウエーハ10の表面に分割予定ライン101に沿ってアブレーション加工を施すことにより、半導体ウエーハ10の分割予定ライン101に沿ってレーザー加工溝を形成することができる。
【0038】
以上のように、図示の実施形態におけるレーザー加工装置によれは、プログラムメモリ72の制御プログラムを加工制御プログラムまたはマーキング制御プログラムに選択し、第1の波長変換手段56によってパルスレーザー光線発振手段51から発振された波長が1064nmのパルスレーザー光線を所望の波長(1064nm、532nm、266nm)に調整することにより、半導体ウエーハ10の分割予定ライン101に沿って加工を施すことができるとともに、IDまたは偽造防止用のマーク110を形成することができ、設備コストを低減することができる。
【0039】
以上、本発明を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で種々の変形は可能である。例えば、図示の実施形態においては、パルスレーザー光線発振手段51が発振したパルスレーザー光線をX軸方向およびY軸方向に揺動する揺動手段54として角度調整可能なミラー541およびミラー角度コントローラ542を用いた例を示したが、揺動手段としてはX軸方向用ガルバノスキャナーおよびY軸方向用ガルバノスキャナーや、X軸方向用音響光学素子およびY軸方向用音響光学素子を用いてもよい。また、図示の実施形態においては、波長変換機構としてLBO結晶からなる波長変換結晶562aおよびBBO結晶からなる波長変換結晶562bを備えた第1の波長変換手段56と、CLBO結晶からなる波長変換結晶572aを備えた第2の波長変換手段57とによって構成した例を示したが、例えば波長が1064nmのパルスレーザー光線を設定された所定の波長に所定の角度を持って出力する波長変板を用いてもよい。更に、図示の実施形態においては、1064nm、532nm、266nmの波長のパルスレーザー光線を一つの集光器53を通して被加工物に照射する例を示したが、1064nmの波長のパルスレーザー光線の光路と532nmおよび266nmの波長のパルスレーザー光線の光路とを分け、それぞれの光路にパルスレーザー光線を集光して照射する集光器を設けてもよい。
【符号の説明】
【0040】
3:チャックテーブル機構
36:チャックテーブル
37:X軸方向移動手段
38:Y軸方向移動手段
4:レーザー光線照射ユニット
5:レーザー光線照射手段
51:パルスレーザー光線発振手段
52:出力調整手段
53:集光器
54:揺動手段
541:角度調整可能なミラー
542:ミラー角度コントローラ
55:波長変換機構
56:第1の波長変換手段
57:第2の波長変換手段
6:撮像手段
7:制御手段
10:半導体ウエーハ
F:環状のフレーム
T:粘着テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8