(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CAplus/REGISTRY/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/FSTA/AGRICOLA/BIOTECHNO/CABA/SCISEARCH/TOXCENER/WPIDS(STN)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、油ちょう直後のサクサク感が強く感じられるバッター液を製造するための粉末油脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、様々な粉末油脂を添加したバッター液について鋭意研究を行った結果、特定の条件を満たす粉末油脂組成物を用いることによって、油ちょう直後のサクサク感が強く感じられるバッター液が得られることを見出し、本発明を完成させた。さらに、このバッター液を直接衣層として使用した場合には、分散性のよい衣が得られることも見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明の一態様によれば、以下の(a)の条件を満たす粉末状の油脂組成物を含有する、バッター液用粉末油脂組成物を提供することができる。
(a)全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するXXX型トリグリセリドを65〜99質量%と、前記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換した1種以上のX2Y型トリグリセリドを35〜1質量%とを含有する油脂組成物であって、前記炭素数xは8〜20から選択される整数であり、前記炭素数yは、それぞれ独立して、x+2〜x+12から選択される整数でありかつy≦22である。
また、本発明の好ましい一態様によれば、前記XXX型トリグリセリドが80〜99質量%と、前記1種以上のX2Y型トリグリセリドの合計が20〜1質量%とを含有する、上記粉末油脂組成物を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、前記xが10〜18から選択される整数であり、前記yが、それぞれ独立して、x+2〜x+10から選択される整数でありかつy≦22である、上記粉末油脂組成物を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、前記xが10〜12から選択される整数であり、前記yが、それぞれ独立して、x+4〜x+8から選択される整数でありかつy≦22である、上記粉末油脂組成物を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、ゆるめ嵩密度が0.1〜0.6g/cm3である、上記粉末油脂組成物を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、上記粉末油脂組成物を含有してなる、バッター液を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、上記粉末油脂組成物を、対粉ベースで1〜40質量%含有してなる、バッター液を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、上記粉末油脂組成物を含有してなる、バッター液用プレミックスを提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、上記粉末油脂組成物を、対粉ベースで1〜40質量%含有してなる、バッター液用プレミックスを提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、上記バッター液又は上記バッター液用プレミックスで具材を被覆した、揚げ物食品を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、上記粉末油脂組成物を配合する、バッター液の製造法を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、上記粉末油脂組成物を対粉ベースで1〜40質量%配合する、バッター液の製造法を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、上記バッター液で具材を被覆した後に油ちょう調理する、揚げ物食品の製造法を提供することができる。
また、本発明の好ましい一態様によれば、上記粉末油脂組成物を有効成分とする、揚げ物食品の食感改良剤を提供することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特定の条件を満たす粉末油脂組成物を含むバッター液を用いることにより、油ちょう直後のサクサク感が強く感じられる揚げ物食品を簡単に製造することができる。また、本発明のバッター液を直接衣層として用いた場合は、衣の分散性がよいという効果も得られる。これにより、従来の揚げ物食品では満足できなかった人々の需要に応えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の「バッター液」について順を追って記述する。
本発明において「バッター液」とは、穀粉、食用油脂(粉末油脂)等の主原料を水で溶いたものである。本発明のバッター液は、穀粉などの粉体成分と本発明の粉末油脂組成物とを混ぜ合わせた後、これを水に添加して撹拌することにより製造できる。より具体的には、ミキサーなどの機械を用いて1〜10分程度撹拌することにより、バッター液を誰でも簡単に製造できる。なお、製造する際、食用油脂(粉末油脂)を均一に分散させる観点から、バッター液を撹拌しながら、食用油脂(粉末油脂)を徐々に加えていく方が好ましい。
このようにして得られたバッター液は、油ちょう後の具材との結着性を向上させ、衣の破損や剥離を防止し、サクミのある食感や歯切れのよい食感を与えるために利用される。また、具材からの水分が衣に移行することを防止し、サクサクとした脆い食感を長時間維持するためにも利用される。また、本発明のバッター液は、直接衣層を形成するためにも利用される。
【0010】
<バッター液用プレミックス>
本発明のバッター液はプレミックスの形態ととることもできる。「プレミックス」とは、例えば、小麦粉などの穀粉に、砂糖などの糖類、油脂(粉末油脂)、粉乳、乾燥卵、膨張剤、乳化剤、調味料、香辛料、香料、着色料などの全部又は一部を混合したもので、これを水に加えてバッター液を調製できるようにした粉を総称したものである。このようなプレミックスを使用するメリットは、例えば、(1)高品質の製品が簡単にできる、(2)品質の均一性が確保できる、(3)煩雑な作業が軽減でき、時間、場所、労力の節減が図れる、などが挙げられる。本発明の粉末油脂組成物は、このようなバッター液用プレミックスを作るための材料の一部(油脂分)として利用される。本発明のバッター液用プレミックスは、上記各原料を、Vブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、流動層ミキサーなどの機械で混合すれば、製造することができる。
【0011】
<油脂組成物>
本発明は、全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種類又はそれ以上のXXX型トリグリセリドを65〜99質量%と、前記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換した1種以上のX2Y型トリグリセリドを35〜1質量%とを含有する油脂組成物であって、前記炭素数xは8〜20から選択される整数であり、前記炭素数yは、それぞれ独立して、x+2〜x+12から選択される整数でありかつy≦22である条件から選ばれる、油脂組成物に関する。上記2種類のトリグリセリドを上記質量%にて含む当該油脂組成物は、乳化剤、賦形剤等の添加剤を含めることなく、容易に粉末状の油脂組成物となる。本発明の油脂組成物及び粉末油脂組成物については、先に出願したPCT/JP2015/070850(特願2014−149168号)において詳しく説明されているので、ここでは詳細を割愛する。なお、前記出願の内容は、本明細書の中に取り込まれる。以下、本発明の油脂組成物及び粉末油脂組成物の特徴を要約して説明する。
【0012】
<XXX型トリグリセリド>
本発明の油脂組成物は、全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、その含有量が65〜99質量%である、単一種又は複数種、好ましくは単一種(1種類)のXXX型トリグリセリドを含む。当該XXX型トリグリセリドは、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するトリグリセリドであり、各脂肪酸残基Xは互いに同一である。ここで、当該炭素数xは8〜20から選択される整数であり、好ましくは10〜18から選択される整数、より好ましくは10〜16から選択される整数、更に好ましくは10〜12から選択される整数である。
脂肪酸残基Xは、飽和あるいは不飽和の脂肪酸残基であってもよい。具体的な脂肪酸残基Xとしては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びアラキジン酸等の残基が挙げられるがこれに限定するものではない。脂肪酸としてより好ましくは、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸であり、さらに好ましくは、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸及びパルミチン酸であり、殊更好ましくは、カプリン酸及びラウリン酸である。
XXX型トリグリセリドは、油脂組成物中の全トリグリセリドを100質量%とした場合、65〜99質量%含まれる。XXX型トリグリセリドの含有量として好ましくは、75〜99質量%であり、より好ましくは80〜99質量%であり、更に好ましくは83〜98質量%であり、特に好ましくは85〜98質量%であり、殊更好ましくは90〜98質量%である。
【0013】
<X2Y型トリグリセリド>
本発明の油脂組成物は、上記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換したX2Y型トリグリセリドを1種以上含む。ここで、1つのX2Y型トリグリセリドに含まれる各脂肪酸残基Xは互いに同一であり、かつXXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xとも同一である。当該1つのX2Y型トリグリセリドに含まれる脂肪酸残基Yの炭素数yはx+2〜x+12でありかつy≦22である条件から選ばれる整数である。炭素数yは、好ましくはy=x+2〜x+10を満たし、より好ましくはy=x+4〜x+8を満たす条件から選ばれる整数である。また、炭素数yの上限値は、好ましくはy≦20であり、より好ましくはy≦18である。本発明の油脂組成物は複数、例えば、2種類〜5種類、好ましくは3〜4種類のX2Y型トリグリセリドを含んでいてもよく、その場合の各X2Y型トリグリセリドの定義は上述の通りである。各X2Y型トリグリセリドの脂肪酸残基Yの炭素数yは、上述の範囲内から、各X2Y型トリグリセリドごとにそれぞれ独立して選択される。例えば、本発明の油脂組成物を、トリカプリンとパーム核ステアリン極度硬化油とをエステル交換して製造する場合は、xは共通してx=10であるが、yはそれぞれy=12、14、16及び18である4種類のX2Y型トリグリセリドを含む。
脂肪酸残基Yは、飽和あるいは不飽和の脂肪酸残基であってもよい。具体的な脂肪酸残基Yとしては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸及びベヘン酸等の残基が挙げられるがこれに限定するものではない。脂肪酸としてより好ましくは、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸及びベヘン酸であり、さらに好ましくは、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸である。
このX2Y型トリグリセリドの脂肪酸残基Yは、1位〜3位の何れに配置していてもよい。
X2Y型トリグリセリドは、油脂組成物中の全トリグリセリドを100質量%とした場合、35〜1質量%含まれる。X2Y型トリグリセリドの含有量としては、例えば、25〜1質量%であり、好ましくは20〜1質量%であり、より好ましくは17〜1質量%であり、更に好ましくは15〜2質量%であり、殊更好ましくは10〜2質量%である。本発明の油脂組成物に複数のX2Y型トリグリセリドが含まれる場合、上記X2Y型トリグリセリドの量は、含まれるX2Y型トリグリセリドの合計量である。
【0014】
<その他のトリグリセリド>
本発明の油脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、上記XXX型トリグリセリド及びX2Y型トリグリセリド以外の、その他のトリグリセリドを含んでいてもよい。その他のトリグリセリドは、複数の種類のトリグリセリドであってもよく、合成油脂であっても天然油脂であってもよい。合成油脂としては、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル等が挙げられる。天然油脂としては、例えば、ココアバター、ヒマワリ油、菜種油、大豆油、綿実油等が挙げられる。本発明の油脂組成物中の全トリグリセリドを100質量%とした場合、その他のトリグリセリドは、1質量%以上、例えば、5〜30質量%程度含まれていても問題はない。その他のトリグリセリドの含有量は、例えば、0〜30質量%、好ましくは0〜18質量%、より好ましくは0〜15質量%、更に好ましくは0〜8質量%である。
【0015】
<その他の成分>
本発明の油脂組成物は、上記トリグリセリドの他、任意に乳化剤、香料、脱脂粉乳、全脂粉乳、砂糖、デキストリン等のその他の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、油脂組成物の全質量を100質量%とした場合、0〜70質量%、好ましくは0〜65質量%、より好ましくは0〜30質量%である。その他成分は、その90質量%以上が、平均粒径が1000μm以下である紛体であることが好ましく、平均粒径が500μm以下の紛体であることがより好ましい。なお、ここでいう平均粒径は、レーザー回折散乱法(ISO133201及びISO9276-1)によって測定した値である。
但し、本発明の好ましい油脂組成物は、実質的に油脂のみからなることが好ましい。ここで油脂とは、実質的にトリグリセリドのみからなるものである。また、「実質的に」とは、油脂組成物中に含まれる油脂以外の成分または油脂中に含まれるトリグリセリド以外の成分が、油脂組成物または油脂を100質量%とした場合、例えば、0〜15質量%、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%であることを意味する。
【0016】
<粉末油脂組成物>
本発明の粉末油脂組成物は、上記油脂組成物中に含まれるトリグリセリドを融解して溶融状態の上記油脂組成物を得、この油脂組成物を冷却することにより、噴霧やミル等の粉砕機による機械粉砕等特別の加工手段を採らなくても、粉末状の油脂組成物(粉末油脂組成物)を得ることができる。より具体的には、上記XXX型トリグリセリドと上記X2Y型トリグリセリドを含有する油脂組成物を、任意に加熱・融解して溶融状態の油脂組成物を得、その後冷却して溶融状態の油脂組成物よりも体積が増加した空隙を有する固形物を形成する。得られた該固形物を篩にかける等により外部より軽く衝撃を加えて粉砕する(ほぐす)ことで容易に粉末油脂組成物を得ることができる。後述するように、衣の分散性を考慮した場合、本発明では、融点が低い粉末油脂組成物を用いることがより好ましい。
【0017】
<粉末油脂組成物の物性>
本発明の粉末油脂組成物は、常温(20℃)で粉末状の固体である。
本発明の粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度は、例えば実質的に油脂のみからなる場合、0.1〜0.6g/cm3、好ましくは0.15〜0.5g/cm3であり、より好ましくは0.2〜0.4g/cm3である。ここで「ゆるめ嵩密度」とは、粉体を自然落下させた状態の充填密度である。ゆるめ嵩密度(g/cm3)の測定は、例えば、内径15mm×25mLのメスシリンダーに、当該メスシリンダーの上部開口端から2cm程度上方から粉末油脂組成物の適量を落下させて疎充填し、充填された質量(g)の測定と容量(mL)の読み取りを行い、mL当たりの当該粉末油脂組成物の質量(g)を算出することで求めることができる。また、ゆるめ嵩密度は、(株)蔵持科学器械製作所のカサ比重測定器を使用し、JIS K-6720(又はISO 1060-1及び2)に基づいて測定したカサ比重から算出することもできる。具体的には、試料120mLを、受器(内径40mm×高さ85mmの100mL円柱形容器)の上部開口部から38mmの高さの位置から、該受器に落とす。受器から盛り上がった試料はすり落とし、受器の内容積(100mL)分の試料の質量(Ag)を秤量し、以下の式からゆるめ嵩密度を求めることができる。
ゆるめ嵩密度(g/mL)=A(g)/100(mL)
測定は3回行ってその平均値を取ることが好ましい。
【0018】
<粉末油脂組成物の製造方法>
本発明の粉末油脂組成物は、以下の工程、
(a)全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するXXX型トリグリセリドを65〜99質量%と、前記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換したX2Y型トリグリセリドを35〜1質量%とを含有する油脂組成物であって、前記炭素数xは8〜20から選択される整数であり、前記炭素数yは、それぞれ独立して、x+2〜x+12から選択される整数でありかつy≦22である、油脂組成物を調製する工程、
(b)前記油脂組成物を加熱し、前記油脂組成物中に含まれるトリグリセリドを融解して溶融状態の前記油脂組成物を得る任意の工程、
(d)溶融状態の前記油脂組成物を冷却して粉末油脂組成物を得る工程、
を含む方法によって製造することができる。
また、上記工程(b)と(d)の間に、工程(c)として粉末生成を促進するための任意工程、例えば(c1)シーディング工程、(c2)テンパリング工程、及び/又は(c3)予備冷却工程を含んでいてもよい。さらに上記工程(d)で得られる粉末油脂組成物は、工程(d)の冷却後に得られる固形物を粉砕して粉末状の油脂組成物を得る工程(e)によって得られるものであってもよい。
【0019】
(a)油脂組成物の調製工程I
工程(a)で調製される油脂組成物は、上述したとおりのXXX型トリグリセリド(1種類又はそれ以上)とX2Y型トリグリセリド(1種類又はそれ以上)とを、上述した質量%で含有するものである。具体的には、例えば、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するXXX型トリグリセリド(1種類又はそれ以上)と、1位〜3位に炭素数yの脂肪酸残基Yを有するYYY型トリグリセリド(1種類又はそれ以上)とを別々に入手し、XXX型トリグリセリド/YYY型トリグリセリドの質量比で90/10〜99/1にて混合して反応基質を得(ここで、前記炭素数xは8〜20から選択される整数であり、前記炭素数yはx+2〜x+12から選択される整数でありかつy≦22である)、前記反応基質を加熱し、触媒の存在下でエステル交換反応する工程を経て得られる。
(a)油脂組成物の調製工程II
本発明の工程(a)で調製される油脂組成物の製造方法としては、さらに以下に示すようなXXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドを同時かつ直接合成する方法を挙げることができる。すなわち、本調製工程IIは、XXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドを得るために、XXX型トリグリセリドとYYY型トリグリセリドとを別々に合成してエステル交換するということはせず、双方のトリグリセリドを製造するための原料(脂肪酸または脂肪酸誘導体とグリセリン)を、例えば単一の反応容器に投入し、同時かつ直接合成する。
(a)油脂組成物の調製工程III
油脂組成物は、さらに65〜99質量%の範囲外にあるXXX型トリグリセリド及び/または35〜1質量%の範囲外にあるX2Y型トリグリセリドを含む油脂組成物を調製した後、XXX型トリグリセリド又はX2Y型トリグリセリドを更に添加することによって65〜99質量%のXXX型トリグリセリドと35〜1質量%のX2Y型トリグリセリドとを含む油脂組成物を得てもよい(希釈による油脂組成物の調製)。例えば、50〜70質量%のXXX型トリグリセリドと50〜30質量%のX2Y型トリグリセリドとを含む油脂組成物を得た後、所望量のXXX型トリグリセリドを添加して65〜99質量%のXXX型トリグリセリドと35〜1質量%のX2Y型トリグリセリドとを含む油脂組成物を得てもよい。
【0020】
(b)溶融状態の前記油脂組成物を得る工程
上記(d)工程の前に、上記工程(a)で得られた油脂組成物は、調製された時点で溶融状態にある場合、加熱せずにそのまま冷却されるが、得られた時点で溶融状態にない場合は、任意に加熱され、該油脂組成物中に含まれるトリグリセリドを融解して溶融状態の油脂組成物を得る。
ここで、油脂組成物の加熱は、上記油脂組成物中に含まれるトリグリセリドの融点以上の温度、特にXXX型トリグリセリド及びX2Y型トリグリセリドを融解できる温度、例えば、70〜200℃、好ましくは、75〜150℃、より好ましくは80〜100℃であることが適当である。また、加熱は、例えば、0.5〜3時間、好ましくは、0.5〜2時間、より好ましくは0.5〜1時間継続することが適当である。
【0021】
(d)溶融状態の油脂組成物を冷却して粉末油脂組成物を得る工程
上記工程(a)又は(b)で得られた溶融状態の油脂組成物は、さらに冷却されて粉末油脂組成物を形成する。
ここで、「溶融状態の油脂組成物を冷却」とは、溶融状態の油脂組成物を、当該油脂組成物の融点より低い温度に保つことを意味する。「油脂組成物の融点より低い温度」とは、例えば、当該融点より1〜30℃低い温度、好ましくは当該融点より1〜20℃低い温度、より好ましくは当該融点より1〜15℃低い温度である。溶融状態にある油脂組成物の冷却は、例えばxが8〜10のときは最終温度が、好ましくは10〜30℃、より好ましくは15〜25℃、更に好ましくは18〜22℃の温度になるように冷却することによって行われる。冷却における最終温度は、例えばxが11又は12のときは、好ましくは30〜40℃、より好ましくは32〜38℃、更に好ましくは33〜37℃であり、xが13又は14のときは、好ましくは40〜50℃、より好ましくは42〜48℃、更に好ましくは44〜47℃であり、xが15又は16のときは、好ましくは50〜60℃、より好ましくは52〜58℃、更に好ましくは54〜57℃であり、xが17又は18のときは、好ましくは60〜70℃、より好ましくは62〜68℃、更に好ましくは64〜67℃であり、xが19又は20のときは、好ましくは70〜80℃、より好ましくは72〜78℃、更に好ましくは74〜77℃である。上記最終温度において、例えば、好ましくは2時間以上、より好ましくは4時間以上、更に好ましくは6時間〜2日間静置することが適当である。場合によっては、例えばXXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの炭素数xが8〜12の場合など、比較的粉体化に時間を要するものは、特に以下の(c)工程を使用しない場合、例えば2〜8日間、具体的には3〜7日間、より具体的には約6日間静置しなければならない場合もある。
【0022】
(c)粉末生成促進工程
さらに、上記工程(a)又は(b)と(d)との間に、(c)粉末生成を促進するための任意工程として、工程(d)で使用する溶融状態の油脂組成物に対し、シーディング法(c1)、テンパリング法(c2)及び/又は(c3)予備冷却法による処理を行ってもよい。
ここで、(c1)シーディング法とは、粉末の核(種)となる成分を溶融状態にある油脂組成物の冷却時に少量添加して、粉末化を促進する方法である。具体的には、例えば、工程(b)で得られた溶融状態にある油脂組成物に、当該油脂組成物中のXXX型トリグリセリドと炭素数が同じXXX型トリグリセリドを好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含む油脂粉末を核(種)となる成分として準備する。この核となる油脂粉末を、溶融状態にある油脂組成物の冷却時、当該油脂組成物の温度が、例えば、最終冷却温度±0〜+10℃、好ましくは+5〜+10℃の温度に到達した時点で、当該溶融状態にある油脂組成物100質量部に対して0.1〜1質量部、好ましくは0.2〜0.8質量部添加することにより、油脂組成物の粉末化を促進する方法である。
(c2)テンパリング法とは、溶融状態にある油脂組成物の冷却において、最終冷却温度で静置する前に一度、工程(d)の冷却温度よりも低い温度、例えば5〜20℃低い温度、好ましくは7〜15℃低い温度、より好ましくは10℃程度低い温度に、好ましくは10〜120分間、より好ましくは30〜90分間程度冷却することにより、油脂組成物の粉末化を促進する方法である。
(c3)予備冷却法とは、前記工程(a)又は(b)で得られた溶融状態の油脂組成物を、工程(d)にて冷却する前に、工程(a)又は(b)の溶融状態の温度よりも低く、工程(d)の冷却温度よりも高い温度で一旦予備冷却する方法である。工程(d)の冷却温度より高い温度とは、例えば、工程(d)の冷却温度よりも2〜40℃高い温度、好ましくは3〜30℃高い温度、より好ましくは4〜30℃高い温度、さらに好ましくは5〜10℃程度高い温度であり得る。前記予備冷却する温度を低く設定すればするほど、工程(d)の冷却温度における本冷却時間を短くすることができる。すなわち、予備冷却法とは、シーディング法やテンパリング法と異なり、冷却温度を段階的に下げるだけで油脂組成物の粉末化を促進できる方法であり、工業的に製造する場合に利点が大きい。
【0023】
(e)固形物を粉砕して粉末油脂組成物を得る工程
上記工程(d)の冷却によって粉末油脂組成物を得る工程は、より具体的には、工程(d)の冷却によって得られる固形物を粉砕して粉末油脂組成物を得る工程(e)によって行われてもよい。
詳細に説明すると、まず、上記XXX型トリグリセリドと上記X2Y型トリグリセリドを含有する油脂組成物を融解して溶融状態の油脂組成物を得、その後冷却して溶融状態の油脂組成物よりも体積が増加した空隙を有する固形物を形成する。空隙を有する固形物となった油脂組成物は、軽い衝撃を加えることで粉砕でき、固形物が容易に崩壊して粉末状となる。
ここで、軽い衝撃を加える手段は特に特定されないが、振る、篩に掛ける等により、軽く振動(衝撃)を与えて粉砕する(ほぐす)方法が、簡便で好ましい。
【0024】
<粉末油脂組成物に含まれるその他の成分>
本発明の粉末油脂組成物は、任意に乳化剤、タンパク質、澱粉、酸化防止剤等のその他の成分を含んでいてもよい。例えば、粉末油脂組成物に対し、乳化作用のあるものを加えることによって、粉末油脂組成物の水系への分散性を向上させることができる。これらその他の成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、粉末油脂組成物の全質量を100質量%とした場合、0〜70質量%、好ましくは0〜65質量%、より好ましくは0〜30質量%である。
但し、本発明の好ましい粉末油脂組成物は、実質的に油脂のみからなることが好ましい。ここで油脂とは、実質的にトリグリセリドのみからなるものである。また、「実質的に」とは、粉末油脂組成物中に含まれる油脂以外の成分または油脂中に含まれるトリグリセリド以外の成分が、油脂組成物または油脂を100質量%とした場合、例えば、0〜15質量%、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%であることを意味する。
【0025】
<粉末油脂組成物の含有量>
本発明のバッター液は、穀粉100質量%に対して、つまり対粉ベースで、上記粉末油脂組成物を1〜40質量%、より好ましくは2〜30質量%、さらに好ましくは3〜20質量%含有する。1質量%未満では、所望の効果が得られないし、40質量%を超える場合は、好ましい食感にならない。なお、粉末油脂組成物を加えた後のバッター液の全質量を100質量%とした場合に、バッター液中に上記粉末油脂組成物を0.5〜20質量%、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは2〜10質量%、さらに好ましくは3〜8質量%含有する。
また、本発明の粉末油脂組成物は、バッター液に含まれる穀粉量をベースに添加されるだけでなく、従来のバッター液のプレミックスをベースに添加されることもある。本発明では、計算を簡略化するため、本発明における「対粉ベース」とは、穀粉を含む粉体に対する粉末油脂組成物の含有量を意味すると定義する。つまり、例えば、穀粉100質量%に対する、粉末油脂組成物の含有量を指すだけでなく、従来のプレミックス(穀粉以外も含む)100質量%に対する、粉末油脂組成物の含有量を指すこともある。発明の態様によって異なるが、本発明では後者を意味することが多い。繰り返しになるが、後者の場合には、穀粉以外にプレミックスに含まれるその他の成分も含めて、本発明の粉末油脂組成物の含有量が計算される。
【0026】
<バッター液に含まれる食用油脂>
本発明のバッター液は、上記粉末油脂組成物のほか、任意の食用油脂を含むことができる。このような食用油脂としては、食用油、マーガリン、ファットスプレッド、及びショートニングなどが挙げられ、これらの一種又は2種以上を併用することができる。前記食用油脂の原料としては、例えば、ヤシ油、パーム核油、パーム油、パーム分別油(パームオレイン、パームスーパーオレイン等)、シア脂、シア分別油、サル脂、サル分別油、イリッペ脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、乳脂、ココアバター等やこれらの混合油、加工油脂等を使用することができる。これら食用油脂の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、粉末油脂組成物の全質量を100質量%とした場合、0〜100質量%、好ましくは0〜75質量%、より好ましくは0〜50質量%である。
【0027】
<バッター液に含まれる穀粉>
本発明に用いられる穀粉は、主には小麦粉(薄力粉、中力粉、強力粉等)を意味するが、これ以外にも、大麦粉、米粉、ハトムギ粉、トウモロコシ粉、ライ麦粉、そば粉、大豆粉、ポテトフラワー、澱粉などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して用いることができる。特に、小麦粉は、薄力粉であることが好ましい。本発明の澱粉としては、種子起源、根菜起源のいずれの澱粉もいずれも使用することができる。例えば、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、タピオカデンプン、及び、これらの化工澱粉、α化澱粉等が挙げられる。本発明のバッター液に含まれる穀粉の含量は、バッター液100質量%に対して、好ましくは15〜75質量%であり、より好ましくは20〜70質量%であり、さらに好ましくは30〜60質量%である。
【0028】
<バッター液に含まれるその他の成分>
本発明のバッター液においては、更に効果を上げるために、バッター液に一般的に配合される原材料をあわせて使用することができる。具体的には、例えば、糖類、食塩、蛋白(大豆蛋白、小麦蛋白)、乳製品、乳化剤、増粘多糖類、保存料、調味料、起泡剤、膨張剤、着色料、香料、卵黄、卵白、食物繊維などを適宜使用することができる。
本発明のバッター液に加える水は通常の水であればよく、特に限定されない。水はバッター液に含まれる原材料の配合量によって、適宜、調節して添加することができる。
【0029】
<揚げ物食品の製造法>
本発明の「揚げ物食品」は、フライ類だけでなく、天ぷら、フリッター、唐揚げ等の油ちょう調理によって製造される食品はすべて含まれる。本発明の揚げ物食品の製造法としては、具材にバッター液を付着させ、(必要に応じて、さらにパン粉等を付着させ)これを油ちょう調理することによって、本発明の揚げ物食品を製造することができる。
また、揚げ物食品の具材については、特に制限はなく、例えば、肉類、魚介類、野菜類、乳製品又はこれらの加工品等が挙げられる。具材は必要に応じて予め下味が付けられていてもよい。また、例えば、コロッケの場合は、ジャガイモ、タマネギなどの野菜類と、牛肉、豚肉などの肉類を混ぜ合わせて成形された具材が用いられる。
バッター液を具材に付着させる方法としては、例えば、バッター液の中に具材を浸漬させる方法、バッター液と具材を混合する方法、バッター液を具材に塗布する方法等が挙げられる。また、フライ類を製造する場合は、バッター液を具材に付着させた後、常法によりパン粉等をさらに付着させる。また、バッター液を直接衣層として、天ぷら、フリッター、唐揚げ等を製造することもできる。
なお、油ちょう調理は、通常140℃〜200℃程度の油温で60〜600秒間油ちょう処理することにより行われる。
【0030】
また、本発明の「揚げ物食品」は、油ちょう調理後、ただちに食卓に供されてもよいが、常温で保存された後に食卓に供されてもよい。又、油ちょう調理後すぐに冷凍又は冷蔵され、保存することもできる。例えば、冷凍保存される場合は、フリーザー等の適宜の凍結方法を用いて揚げ物食品を凍結した後、−18℃以下で保存することができる。このような冷凍又は冷蔵品を公知の電子レンジなどのマイクロ波調理器等で加熱し喫食することもできる。また、油ちょう調理を行う前に、冷凍又は冷蔵して保存することもできる。このような冷凍又は冷蔵品は、喫食前に、上記のごとき油ちょう調理に付して食することができる。
【0031】
<揚げ物食品食感改良剤>
ところで、以上述べたように、本発明に用いる粉末油脂組成物は、油ちょう調理した揚げ物食品のサクサク感を強くするから、本発明は、上記粉末油脂組成物を有効成分とする、揚げ物食品用食感改良剤にも関する。以下に示すように、本発明の揚げ物食品用食感改良剤をバッター液に配合することにより、揚げ物食品のサクサク感をより強いものへ変換でき、食感改良効果を達成することができる。
本発明の揚げ物食品用食感改良剤は、上述の粉末油脂組成物を含有する。本発明の揚げ物食品用食感改良剤は、少量で効果を発揮するため、上記の粉末油脂組成物を、好ましくは60質量%以上含有し、より好ましくは80質量%以上含有し、さらに好ましくは100質量%以上含有する。
また、本発明の揚げ物食品用食感改良剤は、有効成分であると上述した粉末油脂組成物を含有したものであればよく、この他に本発明の効果を損なわない範囲で、大豆油、菜種油などの油脂、デキストリン、澱粉等の賦形剤、品質改良剤等の他の成分を含有させたものであってもよい。
但し、本発明の好ましい揚げ物食品用食感改良剤は、実質的に当該粉末油脂組成物のみからなることが好ましい。また「実質的に」とは、揚げ物食品用食感改良剤中に含まれる粉末油脂組成物以外の成分が、揚げ物食品用食感改良剤を100質量%とした場合、例えば、0〜15質量%、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%であることを意味する。
【実施例】
【0032】
次に、実施例および比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。また。以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。
【0033】
<原料油脂>
(1)粉末油脂組成物A(融点約28℃):
〔x=10、y=18、テンパリング法〕
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.1g(0.479mol)と、ステアリン酸(Palmac98−18(アシッドケム社製))25.9g(0.091mol)とカプリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))266.0g(1.544mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を245g得た(XXX型:80.6質量%、X2Y型:17.3質量%)。得られた反応物60gとトリカプリン(日清オイリオグループ(株)製)140gを混合し原料油脂とした(XXX型:94.0質量%、X2Y型:5.2質量%)。原料油脂を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、10℃恒温槽にて1時間冷却した後、20℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm3、平均粒径116μm)。このようにして製造した粉末油脂組成物を以下の実施例で用いた。
(2)粉末油脂組成物B(融点約44℃)
〔x=12、y=18、テンパリング法〕
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)38.8g(0.421mol)と、ステアリン酸(Palmac98−18(アシッドケム社製))26.2g(0.092mol)とラウリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))271.3g(1.354mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のラウリン酸を220℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を242g得た(XXX型:78.3質量%、X2Y型:19.2質量%)。得られた反応物60gとトリラウリン(日清オイリオグループ(株)製)140gを混合し原料油脂とした(XXX型:93.1質量%、X2Y型:5.8質量%)。原料油脂を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、28℃恒温槽にて0.5時間冷却した後、35℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm3、平均粒径130μm)。このようにして製造した粉末油脂組成物を以下の実施例で用いた。
ここで、ゆるめ嵩密度は、(株)蔵持科学器械製作所のカサ比重測定器を使用し、JIS K-6720(又はISO 1060-1及び2)に基づいて測定したカサ比重から算出した。具体的には、試料120mLを、受器(内径40mm×高さ85mmの100mL円柱形容器)の上部開口部から38mmの高さの位置から、該受器に落とした。続いて、受器から盛り上がった試料をすり落とし、受器の内容積(100mL)分の試料の質量(Ag)を秤量し、以下の式からゆるめ嵩密度を求めた。
ゆるめ嵩密度(g/mL)=A(g)/100(mL)
測定は3回行って、その平均値を測定値とした。
ここで、平均粒径は、日機装株式会社製 Microtrac MT3300ExII)でレーザー回折散乱法(ISO133201、ISO9276-1)に基づいて測定した。
(3)油脂粉末
油脂粉末(日清オイリオグループ株式会社:ジュピターP1)
【0034】
<その他の原材料>
実施例で用いたその他の原材料はすべて市販のものである。例を挙げれば、以下のとおりである。
(1)天ぷら粉
天ぷら粉(日清フーズ株式会社製:業務用日清おいしい天ぷら粉)
(2)バッター液粉
バッター液粉(日清フーズ株式会社製:業務用日清パン粉が良くつく粉)
【0035】
[実施例1〜2]
<エビ天の製造>
下記表1〜2のバッター液の配合に従って、実施例1〜2、比較例1〜2の天ぷらを製造した。具体的には、まず、天ぷら粉50gに本発明の粉末油脂組成物又は市販の油脂粉末を5g(対粉ベースで10%)加えて、これを水100g(対粉ベースで200%)に混合しよく攪拌した。このようにして得られたバッター液にエビを浸漬して全体的にバッター液(衣材)を付着させた。次に180℃に加温した菜種白絞油で2分間油ちょうし、エビ天を製造した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
<エビ天食品の評価>
上記で製造した、実施例1〜2と比較例1〜2のエビ天(油ちょう直後のもの)について、以下の評価方法に従って評価した。
【0039】
<エビ天の評価方法>
(1)衣の分散性の評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した。
○:線が細い衣となっており、油ちょう時に衣が一気に広がり、分散性が良い
△:球状の衣となっており、標準的な衣の分散性である
×:重たい大きな球状の衣となり、衣の分散性が悪い
(2)サクサク感の評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した
○:強いサクミがあり、サクサクとした食感を感じる
△:サクミはあるが、ややべたつきを感じる
×:衣がしんなりとしており、サクミが弱く、サクサク感があまり感じられない
【0040】
表1〜2の結果から明らかであるように、本発明の粉末油脂組成物を用いて製造したエビ天は、それを含まないで製造したもの(比較例1)と比較して、サクミが強く、サクサクとした食感が長く感じられた。特に、本発明の粉末油脂組成物Aを用いた場合は、衣の分散性も改善されており、キメの細かい衣ができていた。すなわち、花咲性の向上や吸油量の低下など、天ぷらとして好ましい効果が期待できることもわかった。
【0041】
一方、本発明の粉末油脂組成物に代えて、市販の油脂粉末を用いた場合には、衣が柔らかくしんなりとしており、サクミがあまり感じられなかった。すなわち、実施例1又は2のものと比較して、サクサク感があまり感じられないエビ天となった。
【0042】
[実施例3〜4]
<トンカツの製造>
下記表3〜4のバッター液の配合に従って、実施例3〜4、比較例3〜4のトンカツを製造した。具体的には、まず、バッター液粉100gに本発明の粉末油脂組成物又は油脂粉末を10g(対粉ベースで10%)加え、これを水200g(対粉ベースで200%)に加えてよく混合し攪拌した。豚ロースの切り身に打ち粉をした後、上記のようにして得られたバッター液を付着させ、全体的に生パン粉を付けた。これを175℃に加温したサラダ油で5分間油ちょうし、トンカツを製造した。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
<トンカツの評価>
上記で製造した、実施例3〜4と比較例3〜4のトンカツ(油ちょう直後のもの)について、以下の評価方法に従って評価した。
【0046】
<トンカツの評価方法>
(1)サクサク感の評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した
○:強いサクミがあり、サクサクとした食感を感じる
△:サクミはややあるが、弱い
×:サクミが弱く、サクサク感があまり感じられない
【0047】
表3〜4の結果から明らかであるように、本発明の粉末油脂組成物を用いて製造したトンカツは、それを含まないで製造した従来のもの(比較例1)と比較して、強いサクミが感じられ、サクサクとした食感も長く感じられた。このように、本発明の粉末油脂組成物には、衣のサクミを強め、サクサク感を維持させる働きがある。
【0048】
一方、本発明の粉末油脂組成物に代えて、市販の油脂粉末を用いた場合には、サクミはややあるが、弱いものとなり、むしろソフト感が感じられた。すなわち、実施例1又は2と比較して、サクサク感があまり感じられないトンカツとなった。