(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のガスを供給する前記工程と前記第2のガスのプラズマを生成する前記工程との間において、プラズマを生成せずに、前記処理容器内に前記第2のガスを供給する工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
前記第3のガスを供給する前記工程と前記第4のガスのプラズマを生成する前記工程との間において、プラズマを生成せずに、前記処理容器内に前記第4のガスを供給する工程を更に含む、請求項11又は12に記載の方法。
前記第3のガスを構成する前記処理ガスに基づく前記多孔質膜中の液体を気化させて気体を生成し、該気体を排気する工程を更に含む、請求項11〜19の何れか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0026】
図1は、一実施形態に係る被処理体を処理する方法を示す流れ図である。
図1に示す方法MTは、多孔質膜、及び、有機材料から構成され当該多孔質膜上に設けられたマスクを有する被処理体を、プラズマ処理装置を用いて処理する方法である。方法MTは、一実施形態においては、
図1に示すように、シーケンスSQ1及びシーケンスSQ2を含んでいる。シーケンスSQ1では、多孔質膜のエッチングが行われ、シーケンスSQ2では、アッシングによるマスクの除去が行われる。
【0027】
図2は、被処理体の一例を示す断面図である。
図2に示す被処理体(以下、「ウエハW」ということがある)は、基板SB、多孔質膜PL、及び、マスクMK1、及びマスクMK2を備えている。多孔質膜PLは、基板SB上に設けられている。多孔質膜PLには、多数の細孔が形成されている。細孔は、数nm、例えば、1nm〜2nm平均の幅を有し得る。なお、平均の幅とは、各細孔の最大幅の平均値である。また、多孔質膜は、SiOC膜といった低誘電率材料から構成された膜である。多孔質膜PLは、例えば、CVD法又はスピン成膜法といった成膜法によって形成され得る。
【0028】
マスクMK1は、多孔質膜PL上に設けられている。マスクMK1は、一例では、TiN膜から構成され得る。マスクMK2は、有機材料から構成されており、マスクMK1上に設けられている。マスクMK2は、例えば、カーボンハードマスクであり得る。マスクMK1及びマスクMK2には、多孔質膜PLに転写すべきパターンが形成されている。例えば、マスクMK1及びマスクMK2には、開口を有するパターンが形成されている。このようなマスクMK1及びマスクMK2は、リソグラフィー技術、及びプラズマエッチングを用いることにより形成することができる。なお、プラズマエッチングについては、方法MTの一連の工程において、プラズマ処理装置10を用いて実行することができる。
【0029】
方法MTでは、工程ST1の実行に先立って、プラズマ処理装置の処理容器内にウエハWが収容される。
図3は、一実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図3には、方法MTの実施に用いることができる一例のプラズマ処理装置の縦断面における構造が概略的に示されている。
図3に示すプラズマ処理装置10は、容量結合型プラズマエッチング装置であり、略円筒状の処理容器12を備えている。処理容器12の内壁面は、例えば、陽極酸化処理されたアルミニウムから構成されている。この処理容器12は保安接地されている。
【0030】
処理容器12の底部上には、略円筒状の支持部14が設けられている。支持部14は、例えば、絶縁材料から構成されている。支持部14は、処理容器12内において、処理容器12の底部から鉛直方向に延在している。また、処理容器12内には、ステージPDが設けられている。ステージPDは、支持部14によって支持されている。
【0031】
このステージPD上には、プラズマ処理装置10の処理容器12内に収容されたウエハWが載置され、ステージPDは当該ウエハWを保持する。ステージPDは、下部電極LE及び静電チャックESCを有している。下部電極LEは、第1プレート18a及び第2プレート18bを含んでいる。第1プレート18a及び第2プレート18bは、例えばアルミニウムといった金属から構成されており、略円盤形状をなしている。第2プレート18bは、第1プレート18a上に設けられており、第1プレート18aに電気的に接続されている。
【0032】
第2プレート18b上には、静電チャックESCが設けられている。静電チャックESCは、導電膜である電極を一対の絶縁層又は絶縁シート間に配置した構造を有している。静電チャックESCの電極には、直流電源22がスイッチ23を介して電気的に接続されている。この静電チャックESCは、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力によりウエハWを吸着する。これにより、静電チャックESCは、ウエハWを保持することができる。なお、静電チャックESC内には、ヒータが内蔵されていてもよく、当該ヒータには、処理容器12の外部に設けられたヒータ電源が接続されていてもよい。
【0033】
第2プレート18bの周縁部上には、ウエハWのエッジ及び静電チャックESCを囲むようにフォーカスリングFRが配置されている。フォーカスリングFRは、エッチングの均一性を向上させるために設けられている。フォーカスリングFRは、エッチング対象の膜の材料によって適宜選択される材料から構成されており、例えば、シリコン、石英といった材料から構成され得る。
【0034】
第2プレート18bの内部には、冷媒流路24が設けられている。冷媒流路24は、温調機構を構成している。冷媒流路24には、処理容器12の外部に設けられたチラーユニットから配管26aを介して冷媒が供給される。冷媒流路24に供給された冷媒は、配管26bを介してチラーユニットに戻される。このように、冷媒流路24とチラーユニットとの間では、冷媒が循環される。この冷媒の温度を制御することにより、静電チャックESCによって支持されたウエハWの温度が制御される。なお、冷媒には、例えば−50℃以上の温度にウエハWを冷却し得る一般的な冷媒が用いられる。このような冷媒としては、ガルデン(登録商標)が例示される。
【0035】
また、プラズマ処理装置10には、ガス供給ライン28が設けられている。ガス供給ライン28は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャックESCの上面とウエハWの裏面との間に供給する。
【0036】
また、プラズマ処理装置10は、上部電極30を備えている。上部電極30は、ステージPDの上方において、当該ステージPDと対向配置されている。下部電極LEと上部電極30とは、互いに略平行に設けられている。上部電極30と下部電極LEとの間には、ウエハWにプラズマ処理を行うための処理空間Sが提供されている。
【0037】
上部電極30は、絶縁性遮蔽部材32を介して、処理容器12の上部に支持されている。上部電極30は、電極板34及び電極支持体36を含み得る。電極板34は処理空間Sに面しており、当該電極板34には複数のガス吐出孔34aが設けられている。この電極板34は、シリコン又は酸化シリコンといった材料から構成されている。
【0038】
電極支持体36は、電極板34を着脱自在に支持するものであり、例えばアルミニウムといった導電性材料から構成され得る。この電極支持体36は、水冷構造を有し得る。電極支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。このガス拡散室36aからは、ガス吐出孔34aに連通する複数のガス通流孔36bが下方に延びている。また、電極支持体36には、ガス拡散室36aに処理ガスを導くガス導入口36cが形成されており、このガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0039】
ガス供給管38には、バルブ群42及び流量制御器群44を介して、ガスソース群40が接続されている。ガスソース群40は、シーケンスSQ1の工程ST1にて用いられるガスG1(第3のガス)、シーケンスSQ1における多孔質膜のエッチングのためのガスG2(第4のガス)、シーケンスSQ2の工程ST5にて用いられるガスG3(第1のガス)、及びシーケンスSQ2におけるアッシングのためのガスG4(第2のガス)を供給する複数のガスソースを含んでいる。ガスソース群40は、また、後述する方法MTの工程ST4及び工程ST8において用いられるガス、例えば、アルゴン又は窒素ガスのガスソースを含み得る。
【0040】
ガスG1及びガスG3は、多孔質膜PLの細孔内で液化される処理ガスを含む。ガスG1及びガスG3については、方法MTの詳細と共に後述する。ガスG2は、例えば、SiF
4ガス、NF
3ガス、及びArガスといった希ガスの混合ガス、或いは、CF
4ガス、O
2ガス、及びArガスといった希ガスの混合ガスであり得る。また、ガスG4は、酸素含有ガスを含み、例えば、O
2ガスを含み得る。
【0041】
バルブ群42は複数のバルブを含んでおり、流量制御器群44はマスフローコントローラといった複数の流量制御器を含んでいる。ガスソース群40の複数のガスソースはそれぞれ、バルブ群42の対応のバルブ及び流量制御器群44の対応の流量制御器を介して、ガス供給管38に接続されている。
【0042】
また、プラズマ処理装置10では、処理容器12の内壁に沿ってデポシールド46が着脱自在に設けられている。デポシールド46は、支持部14の外周にも設けられている。デポシールド46は、処理容器12にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するものであり、アルミニウム材にY
2O
3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。
【0043】
処理容器12の底部側、且つ、支持部14と処理容器12の側壁との間には排気プレート48が設けられている。排気プレート48は、例えば、アルミニウム材にY
2O
3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。この排気プレート48の下方、且つ、処理容器12には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、処理容器12内の空間を所望の真空度まで減圧することができる。また、処理容器12の側壁にはウエハWの搬入出口12gが設けられており、この搬入出口12gはゲートバルブ54により開閉可能となっている。
【0044】
また、プラズマ処理装置10は、第1の高周波電源62及び第2の高周波電源64を更に備えている。第1の高周波電源62は、プラズマ生成用の高周波電力を発生する電源であり、例えば、27〜100MHzの周波数の高周波電力を発生する。第1の高周波電源62は、整合器66を介して上部電極30に接続されている。整合器66は、第1の高周波電源62の出力インピーダンスと負荷側(上部電極30側)の入力インピーダンスを整合させるための回路である。なお、第1の高周波電源62は、整合器66を介して下部電極LEに接続されていてもよい。
【0045】
第2の高周波電源64は、ウエハWにイオンを引き込むための高周波バイアス電力を発生する電源であり、例えば、400kHz〜13.56MHzの範囲内の周波数の高周波バイアス電力を発生する。第2の高周波電源64は、整合器68を介して下部電極LEに接続されている。整合器68は、第2の高周波電源64の出力インピーダンスと負荷側(下部電極LE側)の入力インピーダンスを整合させるための回路である。
【0046】
また、一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、制御部Cntを更に備え得る。この制御部Cntは、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、プラズマ処理装置10の各部を制御する。この制御部Cntでは、入力装置を用いて、オペレータがプラズマ処理装置10を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができ、また、表示装置により、プラズマ処理装置10の稼働状況を可視化して表示することができる。さらに、制御部Cntの記憶部には、プラズマ処理装置10で実行される各種処理をプロセッサにより制御するための制御プログラムや、処理条件に応じてプラズマ処理装置10の各部に処理を実行させるためのプログラム、即ち、処理レシピが格納される。
【0047】
再び
図1を参照し、方法MTについて詳細に説明する。以下の説明では、
図1に加えて、
図4〜
図9を参照し、まず、方法MTのシーケンスSQ1から工程ST4までの各工程について説明する。
図4は、方法MTのシーケンスSQ1に関連する一例のタイミングチャートである。
図5〜
図9は、方法MTの各工程の実行後の被処理体の状態を示す断面図である。なお、
図4において、ガスG1の供給が高レベル(図中、「H」で表記)であることは、ガスG1がプラズマ処理装置の処理容器内に供給されていることを示しており、ガスG1の供給が低レベル(図中、「L」で表記)であることは、ガスG1がプラズマ処理装置の処理容器内に供給されていないことを示している。また、ガスG2の供給が高レベル(図中、「H」で表記)であることは、ガスG2がプラズマ処理装置の処理容器内に供給されていることを示しており、ガスG2の供給が低レベル(図中、「L」で表記)であることは、ガスG2がプラズマ処理装置の処理容器内に供給されていないことを示している。また、高周波電力の供給が高レベル(図中、「H」で表記)であることは、第1の高周波電源62からの高周波電力が供給されプラズマが生成されていることを示しており、高周波電力の供給が低レベル(図中、「L」で表記)であることは、第1の高周波電源62からの高周波電力が供給されておらず、プラズマが生成されていないことを示している。
【0048】
方法MTでは、まず、シーケンスSQ1の工程ST1が実行される。工程ST1では、ステージPD上にウエハWが載置された状態で、処理容器12内にガスG1が供給される。
図4では、ガスG1が、時刻t1から時刻t2の間、処理容器12内に供給されることが示されている。また、工程ST1では、排気装置50によって処理容器12内の圧力が所定の圧力に設定される。さらに、工程ST1では、ステージPDの温度が−50℃以上の温度に設定される。この工程ST1では、
図4に示すように、第1の高周波電源62からの高周波電力は供給されない。したがって、工程ST1では、プラズマは生成されない。
【0049】
ガスG1は、多孔質膜PLの細孔内で液化される処理ガスから構成される。即ち、ガスG1は、当該処理ガスからなるか、又は当該処理ガスを含む。この処理ガスは、ステージPDの温度、例えば、−50℃以上の温度において1Torr、即ち、133.3パスカル(Pa)以下の飽和蒸気圧を有するガスである。ガスG1は、処理ガスの分圧が20%以上の分圧となるように処理容器12内に供給される。
【0050】
工程ST1では、ガスG1を構成する処理ガスが、毛管凝縮により、多孔質膜PLの細孔内において液化する。毛管凝縮とは、毛管中ではガスの飽和蒸気圧よりも低い圧力で当該ガスの凝縮、即ち液化が生じる現象である。この毛管凝縮により、処理ガスの分圧が飽和蒸気圧以下の分圧であっても、多孔質膜PLの細孔内に侵入した当該処理ガスが、当該細孔内において液化して、液体となる。かかる工程ST1が実行されると、
図5に示すように、多孔質膜PL内には、処理ガスに基づく液体によって細孔が充填された領域SRが形成される。この領域SRは、多孔質膜PLの表面からある深さまでの範囲に及ぶ。このような領域SRが形成されることにより、即ち、多孔質膜PLの細孔が液体によって充填されることにより、後述する工程ST3によって生成されるラジカルが、多孔質膜PLの細孔に侵入することが抑制される。その結果、多孔質膜PLのダメージが抑制される。なお、処理ガスの種類、及び工程ST1における各種条件の詳細については、後述する。
【0051】
方法MTのシーケンスSQ1では、工程ST1の終了時にガスG1の処理容器12内への供給が停止され、次いで、一実施形態では、工程ST2が実行される。工程ST2では、処理容器12内にガスG2が供給される。ガスG2は、例えば、SiF
4ガス、NF
3ガス、及びArガスといった希ガスの混合ガス、或いは、CF
4ガス、O
2ガス、及びArガスといった希ガスの混合ガスからなり、続く工程ST3のエッチングプロセスにて用いられるガスでもある。
図4では、ガスG1の供給が工程ST1の終了時の時刻t2において停止され、処理容器12内へのガスG2の供給が時刻t2から開始し、時刻t2で開始する工程ST2が時刻t3まで継続することが示されている。また、
図4に示すように、工程ST2の実行期間中、第1の高周波電源62からの高周波電力は供給されない。したがって、工程ST2では、プラズマは生成されない。
【0052】
工程ST2では、排気装置50によって処理容器12内の圧力が所定の圧力に設定される。この所定の圧力は、工程ST3の実行時の処理容器12内の圧力と同様の圧力である。また、工程ST2では、ステージPDの温度、即ち、ウエハWの温度が、工程ST3の実行のステージPDの温度と同様の温度、例えば、−50℃以上の温度に設定される。
【0053】
この工程ST2では、処理容器12内のガスが、プラズマを生成しない状態で、ガスG1からガスG2に置き換えられる。したがって、不要な活性種、即ち、ガスG1に由来する活性種の発生が抑制される。
【0054】
続く工程ST3では、ガスG2のプラズマが生成される。このため、工程ST3では、処理容器12内にガスG2が供給された状態が維持され、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。
図4では、工程ST3の実行期間、即ち、時刻t3から時刻t4までの間に第1の高周波電源62からの高周波電力が供給されることが示されている。また、工程ST3では、排気装置50によって処理容器12内の圧力が所定の圧力に設定される。この所定の圧力は、例えば、300mTorr(40Pa)以下の圧力である。また、この所定の圧力は、100mTorr(13.33Pa)以下の圧力であってもよい。また、工程ST3では、ステージPDの温度が、例えば、−50℃以上の温度に設定される。さらに、工程ST3では、第2の高周波電源64からの高周波バイアス電力が下部電極LEに供給されてもよい。
【0055】
この工程ST3では、活性種、例えばラジカルによって多孔質膜PLがエッチングされる。これにより、
図6に示すように、マスクMK1及びマスクMK2から露出されている部分において多孔質膜PLがエッチングされる。
図6に示すように、工程ST3において多孔質膜PLがエッチングされる領域は、当該多孔質膜PLの表面に対して領域SRよりも浅い領域である。即ち、
図6に示すように、工程ST3の実行後には、多孔質膜PLの表面からある量(量X)の領域SRが残される。
【0056】
上述した工程ST2及びST3の実行時間長が長くなると、ガスG2の供給により、処理容器内部に存在するガスG1の処理ガスの分圧が飽和蒸気圧以下となる。したがって、多孔質膜PLの細孔内に侵入し液化した処理ガスが、再び気化し、細孔外部に排出されることになる。即ち、多孔質膜PLの細孔内の液体が気化し、多孔質膜PLは当該細孔内にラジカルが侵入し得る状態となる。このため、一実施形態では、工程ST1、工程ST2、及び工程ST3を含むシーケンスSQ1が繰り返して実行される。即ち、工程ST1の実行により、
図7に示すように、多孔質膜PLの表面からある深さまでの範囲において領域SRが再び形成される。次いで、工程ST2の実行により、処理容器12内のガスがガスG1からガスG2に置き換えられる。次いで、工程ST3の実行により、
図8に示すように、多孔質膜PLが再びエッチングされる。これにより、多孔質膜PLの液体による保護の効果が薄れる前に、再びシーケンスSQ1を実行することができ、ラジカルからの多孔質膜PLの保護を実現し、且つ、多孔質膜PLのエッチング量を確保することができる。
【0057】
一実施形態の方法MTでは、工程STJ1において、停止条件が満たされるか否かが判定される。停止条件は、シーケンスSQ1の実行回数が所定回数に達している場合に、満たされるものと判定される。工程STJ1において、停止条件が満たされないと判定される場合には、シーケンスSQ1が再び実行される。一方、工程STJ1において、停止条件が満たされると判定される場合には、シーケンスSQ1の実行が終了し、工程ST4に移行する。
【0058】
工程ST4では、多孔質膜PLの細孔内の液体を気化させて気体を生成し、当該気体を排気する処理が行われる。一実施形態の工程ST4では、プラズマ処理装置10において実行することができる。この実施形態では、ステージPDの温度が、細孔内の液体を気化させ得る温度に設定される。例えば、ステージPDの温度は、常温(例えば、20℃)以上の温度に設定される。また、工程ST4では、処理容器12内にアルゴンガスが供給され、排気装置50によって処理容器12内の圧力が所定の圧力、例えば、0.1Torr(13.33Pa)に設定される。かかる工程ST4では、多孔質膜PLの細孔内の液体が気化して気体となり、当該気体が排気装置50によって処理容器12内の空間から排気される。これにより、多孔質膜PLの細孔内の液体が除去される。
【0059】
別の実施形態の工程ST4では、プラズマ処理装置10に真空搬送系を介して接続された別の処理装置内において、ウエハWが細孔内の液体を気化させ得る温度環境下に置かれる。なお、工程ST4は、続くシーケンスSQ2においても多孔質膜PLの細孔の封孔が行われるので、省略されてもよい。
【0060】
方法MTでは、上述したシーケンスSQ1の実行により、
図9に示すように、多孔質膜PLのダメージを抑制しつつ、マスクMK1及びマスクMK2のパターンを多孔質膜PLに転写することが可能となる。また、シーケンスSQ1によれば、工程ST1、工程ST2、及び工程ST3を単一のプラズマ処理装置10を用いて実行することが可能である。また、一実施形態では、工程ST1、工程ST2、及び工程ST3に加えて、工程ST4をも単一のプラズマ処理装置10を用いて実行することが可能となる。
【0061】
以下、工程ST1において用いられる処理ガス、及び工程ST1の各種条件について説明する。
【0062】
第1例の処理ガスは、フルオロカーボンガスである。
図10は、種々のフルオロカーボンガスの飽和蒸気圧とステージPDの温度の関係を示すグラフである。
図10のグラフの横軸の「1000/温度」は、ステージPDの温度により1000を除した値を示しており、縦軸は、log
10(飽和蒸気圧(mTorr))を示している。
図10に示すプロットは、種々のフルオロカーボンガスの飽和蒸気圧とステージPDの温度との関係を示す実測値である。
図10に示すように、同図のグラフにおいて各フルオロカーボンガスの飽和蒸気圧とステージPDの温度との関係を表す複数の実測値は、略直線上に位置している。
【0063】
ここで、飽和蒸気圧は、下式(1)のアントワン式と呼ばれる実験式によって良好に近似されることが知られている。式(1)において、A,B,Cは物質により定まる定数、Tは絶対温度、pは飽和蒸気圧である。
【数1】
式(1)のアントワン式によって規定される飽和蒸気圧pと絶対温度Tの関係は、
図10に示すグラフでは直線関係である(なお、定数Cの値がゼロでない場合には、
図10に示す直線が横方向にシフトするだけであって、飽和蒸気圧pと絶対温度Tとの関係に直線関係が存在することには変わりはない)。したがって、
図10に示す各フルオロカーボンガスに関する複数の実測値の関係は、アントワン式によって規定される直線関係に一致している。よって、実測値から外挿した直線を用いることにより、実測値がない温度領域の飽和蒸気圧を定量的に予測することが可能である。
【0064】
図10に示す実測値又は実測値に基づき外挿した直線からわかるように、C
7F
8ガス及びC
6F
6ガスは、プラズマ処理装置10で達成し得る−50℃以上の温度において1Torr以下の飽和蒸気圧を有する。したがって、第1例の処理ガスとしては、C
7F
8ガス及びC
6F
6ガスを用いることができる。しかしながら、第1例の処理ガスは、C
7F
8ガス及びC
6F
6ガスに限定されるものではなく、ステージ温度において1Torr以下の飽和蒸気圧を有する任意のフルオロカーボンガスを第1例の処理ガスとして用いることができる。
【0065】
第2例の処理ガスは、炭化水素ガス、即ちC
XH
Yガス、又は、酸素含有炭化水素ガス、即ち、C
XH
YO
Zガスである。ここで、X、Y、及びZは、1以上の整数である。第2例の処理ガスとしては、ベンゼン(C
6H
6)、n−ブタノール(CH
3(CH
2)
2CH
2OH)、2−ブトキシエタノール(CH
3(CH
2)
3OCH
2CH
2OH)、2−エトキシエタノール(C
2H
5OCH
2CH
2OH)、シクロヘキサン(C
6H
12)、ジオキサン(OCH
2CH
2OCH
2CH
2)、エタノール(C
2H
5OH)、酢酸エチル(CH
3CO
2C
2H
5)、エチルベンゼン(C
2H
5C
6H
5)、エチルシクロヘキサン(C
6H
11C
2H
5)、メチルエチルケトン(C
2H
5COCH
3)、n−オクタン(CH
3(CH2)
6CH
3)、1−プロパノール(CH
3CH
2CH
2OH)、2−プロパノール((CH
3)
2CHOH)、トルエン(C
6H
5CH
3)が例示される。
【0066】
図11は、第2例の処理ガスの飽和蒸気圧とステージPDの温度の関係を示すグラフである。
図11では、第2例の処理ガスのうち、メタノール、エタノール、2−プロパノールの飽和蒸気圧(縦軸、単位はTorr)と、ステージPDの温度(横軸、単位は℃)の関係が示されている。
図11に示すように、第2例の処理ガスも、プラズマ処理装置10で達成し得る−50℃以上の温度において1Torr以下の飽和蒸気圧を有する。
【0067】
第2例の処理ガスは、炭素原子の原子数に対して該分子における酸素原子の原子数が1/2以下である処理ガスであってもよい。かかる第2例の処理ガスとしては、上に例示したガスのうちメタノール以外のガスを用いることができる。このような原子数比の処理ガスによれば、酸素による多孔質膜PLのダメージを抑制することが可能となる。
【0068】
一実施形態の工程ST1では、ガスG1は、処理ガスの分圧がステージPDの温度における当該処理ガスの飽和蒸気圧の20%以上、100%以下の分圧となるように、処理容器12内に供給される。また、工程ST1において、処理容器12内の空間の圧力は1Torr、即ち、133.3パスカル(Pa)以下の圧力に設定される。なお、工程ST1における処理ガスの分圧、ステージPDの温度、及び処理容器12内の空間の圧力は、処理ガスの種類に応じて、上述した数値範囲から多孔質膜PLの細孔を液体で満たすのに適した値に設定される。かかる工程ST1により、処理ガスが多孔質膜PLの表面から当該多孔質膜PLの細孔内に侵入し、細孔内に侵入した処理ガスが、毛管凝縮により当該細孔内において液化して、液体となる。
【0069】
また、工程ST1における処理容器12内の空間の圧力が1Torr以下の圧力に設定されることにより、工程ST3における処理容器12内の空間の圧力と工程ST1における処理容器12内の空間の圧力との差が小さくなる。したがって、工程ST1から工程ST3に遷移する際のガスG1からガスG2への切り換え、及び、圧力の切り換えに要する時間を短縮することが可能となる。即ち、工程ST2に必要な時間を短縮することができる。その結果、工程ST2において多孔質膜PL内の液体が気化する量を低減させることができる。
【0070】
また、工程ST1において第2例の処理ガスのような可燃性のガスが処理ガスとして用いられる場合には、当該処理ガスを大量のN
2ガスといった希釈ガスにより希釈してガスG1における処理ガスの濃度を爆発限界濃度以下の濃度に設定し、安全確保を行う必要がある。また、工程ST1において高圧条件を用いる場合には、工程ST2の実行の際に大量のガスG1の排気が必要となるので、これに伴い大量の希釈ガスの排気が必要となる。しかしながら、工程ST1における処理容器12内の空間の圧力が1Torr以下の圧力に設定されることにより、希釈ガスの量、ひいてはガスG1の総量を低減させることが可能となる。
【0071】
別の実施形態では、第2例の処理ガスが工程ST1において用いられ、ガスG1は、処理ガスの分圧がステージPDの温度における当該処理ガスの飽和蒸気圧の100%より大きな分圧となるように、処理容器12内に供給される。また、この実施形態の工程ST1では、処理容器12内の空間の圧力は、50mTorr(6.666Pa)以下の圧力に設定される。このような分圧で供給される処理ガスは、多孔質膜PLの細孔内のみならず、処理容器12内においても液化し得る。しかしながら、処理容器12内の圧力が50mTorr以下の低圧に設定されているので、工程ST1において処理容器12内に存在する処理ガスの分子の数自体が少ない。したがって、処理ガスが液化することによって生成される液体が多孔質膜PLの表面に不均一に付着してマイクロマスクとなることを抑制しつつ、多孔質膜PLの細孔を液体によって充填することが可能となる。
【0072】
以下、再び
図1を参照し、方法MTのシーケンスSQ2から工程ST8までの各工程について詳細に説明する。以下の説明では、
図1に加えて、
図12〜
図15を参照する。
図12は、方法MTのシーケンスSQ2に関連する一例のタイミングチャートである。
図13〜
図15は、方法MTの各工程の実行後の被処理体の状態を示す断面図である。なお、
図12において、ガスG3の供給が高レベル(図中、「H」で表記)であることは、ガスG3がプラズマ処理装置の処理容器内に供給されていることを示しており、ガスG3の供給が低レベル(図中、「L」で表記)であることは、ガスG3がプラズマ処理装置の処理容器内に供給されていないことを示している。また、ガスG4の供給が高レベル(図中、「H」で表記)であることは、ガスG4がプラズマ処理装置の処理容器内に供給されていることを示しており、ガスG4の供給が低レベル(図中、「L」で表記)であることは、ガスG4がプラズマ処理装置の処理容器内に供給されていないことを示している。また、高周波電力の供給が高レベル(図中、「H」で表記)であることは、第1の高周波電源62からの高周波電力が供給されプラズマが生成されていることを示しており、高周波電力の供給が低レベル(図中、「L」で表記)であることは、第1の高周波電源62からの高周波電力が供給されておらず、プラズマが生成されていないことを示している。
【0073】
方法MTでは、シーケンスSQ1による多孔質膜PLのエッチングの後に、マスクMK2を除去するために、シーケンスSQ2が実行される。シーケンスSQ2の工程ST5では、ステージPD上に
図9に示したウエハWが載置された状態で、処理容器12内にガスG3が供給される。
図12では、ガスG3が、時刻t5から時刻t6の間、処理容器12内に供給されることが示されている。また、工程ST5では、排気装置50によって処理容器12内の圧力が所定の圧力に設定される。さらに、工程ST5では、ステージPDの温度が−50℃以上の温度に設定される。この工程ST5では、
図12に示すように、第1の高周波電源62からの高周波電力は供給されない。したがって、工程ST5では、プラズマは生成されない。
【0074】
ガスG3は、多孔質膜PLの細孔内で液化される処理ガスから構成される。即ち、ガスG3は、当該処理ガスからなるか、又は当該処理ガスを含む。この処理ガスは、ガスG1を構成する上述の処理ガスと同様の処理ガスであり、ステージPDの温度、例えば、−50℃以上の温度において1Torr、即ち、133.3パスカル(Pa)以下の飽和蒸気圧を有するガスである。ガスG3は、処理ガスの分圧が20%以上の分圧となるように処理容器12内に供給される。
【0075】
工程ST5では、ガスG3を構成する処理ガスが、毛管凝縮により、多孔質膜PLの細孔内において液化する。この毛管凝縮により、処理ガスの分圧が飽和蒸気圧以下の分圧であっても、多孔質膜PLの細孔内に侵入した当該処理ガスが、当該細孔内において液化して、液体となる。かかる工程ST5が実行されると、
図13に示すように、多孔質膜PL内には、処理ガスに基づく液体によって細孔が充填された領域SRが形成される。この領域SRは、多孔質膜PLの表面からある深さまでの範囲に及ぶ。このような領域SRが形成されることにより、即ち、多孔質膜PLの細孔が液体によって充填されることにより、後述する工程ST7によって生成されるラジカルが、多孔質膜PLの細孔に侵入することが抑制される。その結果、多孔質膜PLのダメージが抑制される。
【0076】
シーケンスSQ2では、工程ST5の終了時にガスG3の処理容器12内への供給が停止され、次いで、一実施形態では、工程ST6が実行される。工程ST6では、処理容器12内にガスG4が供給される。ガスG4は、酸素含有ガスを含み、例えば、O
2ガスを含む。ガスG4は、続く工程ST7のマスクMK2の除去のためのアッシングプロセスにて用いられるガスでもある。
図12では、ガスG3の供給が工程ST5の終了時の時刻t6において停止され、処理容器12内へのガスG4の供給が時刻t6から開始し、時刻t6で開始する工程ST6が時刻t7まで継続することが示されている。また、
図12に示すように、工程ST6の実行期間中、第1の高周波電源62からの高周波電力は供給されない。したがって、工程ST6では、プラズマは生成されない。
【0077】
工程ST6では、排気装置50によって処理容器12内の圧力が所定の圧力に設定される。この所定の圧力は、工程ST7の実行時の処理容器12内の圧力と同様の圧力である。また、工程ST6では、ステージPDの温度、即ち、ウエハWの温度が、工程ST7の実行のステージPDの温度と同様の温度、例えば、−50℃以上の温度に設定される。
【0078】
この工程ST6では、処理容器12内のガスが、プラズマを生成しない状態で、ガス3からガスG4に置き換えられる。したがって、不要な活性種、即ち、ガスG3に由来する活性種の発生が抑制される。
【0079】
続く工程ST7では、ガスG4のプラズマが生成される。このため、工程ST7では、処理容器12内にガスG4が供給された状態が維持され、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。
図12では、工程ST7の実行期間、即ち、時刻t7から時刻t8までの間に第1の高周波電源62からの高周波電力が供給されることが示されている。また、工程ST7では、排気装置50によって処理容器12内の圧力が所定の圧力に設定される。この所定の圧力は、例えば、300mTorr(40Pa)以下の圧力である。また、この所定の圧力は、100mTorr(13.33Pa)以下の圧力であってもよい。また、工程ST7では、ステージPDの温度が、例えば、−50℃以上の温度に設定される。さらに、工程ST7では、第2の高周波電源64からの高周波バイアス電力が下部電極LEに供給されてもよい。
【0080】
この工程ST7では、酸素の活性種、例えば酸素のラジカルによってマスクMK2のアッシングが行われる。かかる工程ST7により、
図14に示すように、マスクMK2が除去される。
【0081】
上述した工程ST6及びST7の実行時間長が長くなると、ガスG4の供給により、処理容器内部に存在するガスG3の処理ガスの分圧が飽和蒸気圧以下となる。したがって、多孔質膜PLの細孔内に侵入し液化した処理ガスが、再び気化し、細孔外部に排出されることになる。即ち、多孔質膜PLの細孔内の液体が気化し、多孔質膜PLは当該細孔内にラジカルが侵入し得る状態となる。このため、一実施形態では、工程ST5、工程ST6、及び工程ST7を含むシーケンスSQ2が繰り返して実行される。これにより、多孔質膜PLの液体による保護の効果が薄れる前に、再びシーケンスSQ2を実行することができ、ラジカルからの多孔質膜PLの保護を実現し、且つ、マスクMK2のアッシングの合計時間長を確保することができる。
【0082】
一実施形態の方法MTでは、工程STJ2において、停止条件が満たされるか否かが判定される。停止条件は、シーケンスSQ2の実行回数が所定回数に達している場合に、満たされるものと判定される。工程STJ2において、停止条件が満たされないと判定される場合には、シーケンスSQ2が再び実行される。一方、工程STJ2において、停止条件が満たされると判定される場合には、シーケンスSQ2の実行が終了し、工程ST8に移行する。
【0083】
工程ST8では、工程ST4と同様に、多孔質膜PLの細孔内の液体を気化させて気体を生成し、当該気体を排気する処理が行われる。これにより、
図15に示すように、多孔質膜PLの細孔内の液体が除去される。
【0084】
一実施形態の工程ST8では、プラズマ処理装置10において実行することができる。この実施形態では、ステージPDの温度が、細孔内の液体を気化させ得る温度に設定される。例えば、ステージPDの温度は、常温(例えば、20℃)以上の温度に設定される。また、工程ST8では、処理容器12内にアルゴンガスが供給され、排気装置50によって処理容器12内の圧力が所定の圧力、例えば、0.1Torr(13.33Pa)に設定される。かかる工程ST8では、多孔質膜PLの細孔内の液体が気化して気体となり、当該気体が排気装置50によって処理容器12内の空間から排気される。これにより、多孔質膜PLの細孔内の液体が除去される。
【0085】
別の実施形態の工程ST8では、プラズマ処理装置10に真空搬送系を介して接続された別の処理装置内において、ウエハWが細孔内の液体を気化させ得る温度環境下に置かれる。
【0086】
方法MTでは、上述したシーケンスSQ2の実行により、多孔質膜PLのダメージを抑制しつつ、マスクMK2を除去することが可能となる。また、シーケンスSQ2によれば、工程ST5、工程ST6、及び工程ST7単一のプラズマ処理装置10を用いて実行することが可能である。また、一実施形態では、工程ST5、工程ST6、及び工程ST7に加えて、工程ST8をも単一のプラズマ処理装置10を用いて実行することが可能となる。更に、一実施形態では、シーケンスSQ1の工程ST1、工程ST2、及び工程ST3、工程ST4、シーケンスSQ2の工程ST5、工程ST6、及び工程ST7、並びに、工程ST8を単一のプラズマ処理装置10を用いて実行することが可能となる。
【0087】
上述したように、ガスG3の処理ガスには、ガスG1の処理ガスと同様の処理ガスを用いることができる。したがって、ガスG3の第1例の処理ガスは、上述したガスG1の第1例の処理ガスと同様であり、フルオロカーボンガスである。ガスG3のフルオロカーボンガスとしては、C
7F
8ガス及びC
6F
6ガスを用いることができる。しかしながら、ガスG3のフルオロカーボンガスは、C
7F
8ガス及びC
6F
6ガスに限定されるものではなく、ステージ温度において1Torr以下の飽和蒸気圧を有する任意のフルオロカーボンガスをガスG3の処理ガスとして用いることができる。
【0088】
また、ガスG3の第2例の処理ガスは、上述したガスG1の第2例の処理ガスと同様であり、炭化水素ガス、即ちC
XH
Yガス、又は、酸素含有炭化水素ガス、即ち、C
XH
YO
Zガスである。ここで、X、Y、及びZは、1以上の整数である。ガスG3の第2例の処理ガスとしては、ベンゼン(C
6H
6)、n−ブタノール(CH
3(CH
2)
2CH
2OH)、2−ブトキシエタノール(CH
3(CH
2)
3OCH
2CH
2OH)、2−エトキシエタノール(C
2H
5OCH
2CH
2OH)、シクロヘキサン(C
6H
12)、ジオキサン(OCH
2CH
2OCH
2CH
2)、エタノール(C
2H
5OH)、酢酸エチル(CH
3CO
2C
2H
5)、エチルベンゼン(C
2H
5C
6H
5)、エチルシクロヘキサン(C
6H
11C
2H
5)、メチルエチルケトン(C
2H
5COCH
3)、n−オクタン(CH
3(CH2)
6CH
3)、1−プロパノール(CH
3CH
2CH
2OH)、2−プロパノール((CH
3)
2CHOH)、トルエン(C
6H
5CH
3)が例示される。
【0089】
ガスG3の第2例の処理ガスは、基板SBの表面を含む領域がフルオロカーボンガスに対して腐食される材料から構成されている場合に、好適に用いられる。このような基板SBの材料としては、SiCNが例示される。
【0090】
ガスG3の第2例の処理ガスは、炭素原子の原子数に対して該分子における酸素原子の原子数が1/2以下である処理ガスであってもよい。かかる第2例の処理ガスとしては、上に例示したガスのうちメタノール以外のガスを用いることができる。このような原子数比の処理ガスによれば、酸素による多孔質膜PLのダメージを抑制することが可能となる。
【0091】
一実施形態の工程ST5では、ガスG3は、処理ガスの分圧がステージPDの温度における当該処理ガスの飽和蒸気圧の20%以上、100%以下の分圧となるように、処理容器12内に供給される。また、工程ST5において、処理容器12内の空間の圧力は1Torr、即ち、133.3パスカル(Pa)以下の圧力に設定される。なお、工程ST5における処理ガスの分圧、ステージPDの温度、及び処理容器12内の空間の圧力は、処理ガスの種類に応じて、上述した数値範囲から多孔質膜PLの細孔を液体で満たすのに適した値に設定される。かかる工程ST5により、処理ガスが多孔質膜PLの表面から当該多孔質膜PLの細孔内に侵入し、細孔内に侵入した処理ガスが、毛管凝縮により当該細孔内において液化して、液体となる。
【0092】
また、工程ST5における処理容器12内の空間の圧力が1Torr以下の圧力に設定されることにより、工程ST7における処理容器12内の空間の圧力と工程ST5における処理容器12内の空間の圧力との差が小さくなる。したがって、工程ST5から工程ST7に遷移する際のガスG3からガスG4への切り換え、及び、圧力の切り換えに要する時間を短縮することが可能となる。即ち、工程ST6に必要な時間を短縮することができる。その結果、工程ST6において多孔質膜PL内の液体が気化する量を低減させることができる。
【0093】
また、工程ST5において第2例の処理ガスのような可燃性のガスが処理ガスとして用いられる場合には、当該処理ガスを大量のN
2ガスといった希釈ガスにより希釈してガスG3における処理ガスの濃度を爆発限界濃度以下の濃度に設定し、安全確保を行う必要がある。また、工程ST5において高圧条件を用いる場合には、工程ST6の実行の際に大量のガスG3の排気が必要となるので、これに伴い大量の希釈ガスの排気が必要となる。しかしながら、工程ST5における処理容器12内の空間の圧力が1Torr以下の圧力に設定されることにより、希釈ガスの量、ひいてはガスG3の総量を低減させることが可能となる。
【0094】
別の実施形態では、ガスG3の処理ガスとして第2例の処理ガスが工程ST5において用いられ、ガスG3は、処理ガスの分圧がステージPDの温度における当該処理ガスの飽和蒸気圧の100%より大きな分圧となるように、処理容器12内に供給される。また、この実施形態の工程ST5では、処理容器12内の空間の圧力は、50mTorr(6.666Pa)以下の圧力に設定される。このような分圧で供給される処理ガスは、多孔質膜PLの細孔内のみならず、処理容器12内においても液化し得る。しかしながら、処理容器12内の圧力が50mTorr以下の低圧に設定されているので、工程ST5において処理容器12内に存在する処理ガスの分子の数自体が少ない。したがって、処理ガスが液化することによって生成される液体が多孔質膜PLの表面に不均一に付着してマイクロマスクとなることを抑制しつつ、多孔質膜PLの細孔を液体によって充填することが可能となる。
【0095】
以下、方法MTの評価のために行った実験例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0097】
実験例1では、スピン成膜法によって作成したSiOC膜(以下、「多孔質膜1」という)、及び、CVD法によって作成したSiOC膜(以下、「多孔質膜2」)を準備した。そして、処理容器12内の空間の圧力を可変のパラメータとして、工程ST1を実行した。工程ST1では、第1のガスとしてC
6F
6ガスからなるガスを用いた。また、工程ST1における第1のガスの流量を30sccmに設定し、ステージPDの温度を−50℃に設定した。
【0098】
そして、実験例1では、工程ST1の実行後の多孔質膜1及び多孔質膜2のそれぞれの屈折率を求めた。
図16に、実験例1で求めた屈折率を示す。
図16において、横軸は、工程ST1の実行時の処理容器12内の空間の圧力を示しており、縦軸は屈折率を示している。多孔質膜の細孔が液体で充填されているときの該多孔質膜の屈折率は、液体で細孔が充填されていないときの多孔質膜の屈折率よりも増加するが、
図16に示すグラフを参照すると、特に多孔質膜1では、圧力が約6Pa以上になると、屈折率が高い値で飽和していることがわかる。この6Paの圧力は、−50℃でのC
6F
6ガスの飽和蒸気圧である27Paの約20%である。したがって、実験例1の結果、20%以上の分圧で処理ガスを処理容器内に供給することにより、多孔質膜の細孔内で処理ガスを液化させることが可能であることが確認された。
【0100】
実験例2及び実験例3では、スピン成膜法で作成したSiOC膜、即ち多孔質膜を準備した。そして、以下に示す条件で方法MTを実施した。また、比較実験例1において、実験例2及び実験例3と同様の多孔質膜に対して、実験例2の工程ST3と同様の工程のみを適用した。なお、工程ST4の処理は、工程ST3の実行後の多孔質膜を有する被処理体を、工程ST1〜工程ST3の実行に用いたプラズマ処理装置と真空搬送系を介して接続された別のプロセスチャンバに搬送して、当該プロセスチャンバにて実行した。
【0101】
<実験例2の条件>
・工程ST1のガスG1:C
6F
6ガス(50sccm)
・工程ST1の処理容器12内の圧力:0.1Torr(13.33Pa)
・工程ST1のステージPDの温度:−50℃
・工程ST1の処理時間:30秒
・工程ST2のガスG2:NF
3/SiF
4/Arガス(100/120/30sccm)
・工程ST2の処理容器12内の圧力:0.1Torr(13.33Pa)
・工程ST2のステージPDの温度:−50℃
・工程ST2の処理時間:10秒
・工程ST3のガスG2:NF3/SiF4/Arガス(120/100/30sccm)
・工程ST3の処理容器12内の圧力:0.1Torr(13.33Pa)
・工程ST3のステージPDの温度:−50℃
・工程ST3の高周波電力:60MHz、100W
・工程ST3の高周波バイアス電力:0.4MHz、50W
・工程ST3の処理時間:3秒
・シーケンスSQの実行回数:15回
・工程ST4のステージの温度:200℃
・工程ST4の処理時間:60秒
【0102】
<実験例3の条件>
・工程ST1のガスG1:2−プロパノール(50sccm)
・工程ST1の処理容器12内の圧力:0.14Torr(18.67Pa)
・工程ST1のステージPDの温度:−20℃
・工程ST1の処理時間:30秒
・工程ST2のガスG2:NF
3/SiF
4/Arガス(120/100/30sccm)
・工程ST2の処理容器12内の圧力:0.1Torr(13.33Pa)
・工程ST2のステージPDの温度:−20℃
・工程ST2の処理時間:5秒
・工程ST3のガスG2:NF
3/SiF
4/Arガス(120/100/30sccm)
・工程ST3の処理容器12内の圧力:0.1Torr(13.33Pa)
・工程ST3のステージPDの温度:−20℃
・工程ST3の高周波電力:60MHz、100W
・工程ST3の高周波バイアス電力:0.4MHz、50W
・工程ST3の処理時間:3秒
・シーケンスSQの実行回数:15回
・工程ST4のステージの温度:200℃
・工程ST4の処理時間:60秒
【0103】
実験例2及び3では、方法MTの実施後の多孔質膜をFTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いて分析した。
図17の(a)に、初期、即ち実験例2の処理前の多孔質膜、実験例2の処理後の多孔質膜、及び比較実験例1の処理後の多孔質膜のそれぞれのFTIRの分析結果であるスペクトルを示す。また、
図17の(b)に、初期、即ち実験例3の処理前の多孔質膜、及び実験例3の処理後の多孔質膜のそれぞれのFTIRの分析結果であるスペクトルを示す。
図17の(a)に示すように、比較実験例1の処理後の多孔質膜のスペクトルは、初期の多孔質膜のスペクトルとは大きく異なっていた。即ち、工程ST1を実行せずに工程ST3のエッチングを行うことにより、多孔質膜にダメージが加わることが確認された。一方、
図17の(a)に示すように、実験例2の処理後の多孔質膜のスペクトルは、初期の多孔質膜のスペクトルと略同一のスペクトルとなっていた。また、
図17の(b)に示すように、実験例3の処理後の多孔質膜のスペクトルは、初期の多孔質膜のスペクトルと略同一のスペクトルとなっていた。したがって、実験例2及び実験例3のように、工程ST1において毛管凝縮を利用して多孔質膜の細孔を液体で充填することにより、工程ST3のエッチングによる多孔質膜のダメージを抑制することが可能であることが確認された。
【0105】
実験例4では、SiOC膜である多孔質膜PL上に、TiN製のマスクMK1、及びカーボンハードマスクであるマスクMK2を有するウエハを準備し、シーケンスSQ1を実行して、
図18の(a)に示すようにスリット状の多孔質膜PLが残されるように、多孔質膜PLをエッチングした。そして、実験例4では、シーケンスSQ2を実行することにより、
図18の(b)に示すように、マスクMK2を除去した。さらに、実験例4では、工程ST8を実行した。以下、実験例4のシーケンスSQ2及び工程ST8の条件を示す。
【0106】
<実験例4のシーケンスSQ2及び工程ST8の条件>
・工程ST5のガスG3:C
6F
6ガス(250sccm)
・工程ST5の処理容器12内の圧力:0.2Torr(26.66Pa)
・工程ST5のステージPDの温度:−50℃
・工程ST5の処理時間:30秒
・工程ST6のガスG4:O
2ガス(200sccm)
・工程ST6の処理容器12内の圧力:0.1Torr(13.33Pa)
・工程ST6のステージPDの温度:−50℃
・工程ST6の処理時間:10秒
・工程ST7のガスG4:O
2ガス(200sccm)
・工程ST7の処理容器12内の圧力:0.1Torr(13.33Pa)
・工程ST7のステージPDの温度:−50℃
・工程ST7の高周波電力:60MHz、200W
・工程ST7の高周波バイアス電力:0.4MHz、100W
・工程ST7の処理時間:4秒
・シーケンスSQの実行回数:40回
・工程ST8のステージの温度:200℃
【0107】
また、比較実験例2において、実験例4と同様に多孔質膜PLをエッチングした後に、CO
2ガスを用いて下記の条件のアッシングを行った。
【0108】
<比較実験例2のアッシングの条件>
・CO
2ガス流量:380sccm
・処理容器12内の圧力:0.1Torr(13.33Pa)
・ステージPDの温度:−50℃
・高周波電力:60MHz、200W
・高周波バイアス電力:0.4MHz、100W
・処理時間:155秒
【0109】
そして、実験例4及び比較実験例2のアッシング直後の多孔質膜PLのスリット状のパターンの幅W1(
図18の(b)参照)、アッシング後の当該パターンに対して0.5wt%のフッ化水素酸を用いた洗浄処理を適用した後のスリット状のパターンの幅W2(
図18の(c)参照)を測定した。その結果、アッシング直後の多孔質膜PLのスリット状のパターンの幅W1は52.9nmであり、実験例4のフッ化水素酸を用いた洗浄処理後のスリット状のパターンの幅W2は51.6nmであり、比較実験例2のアッシング後のスリット状のパターンの幅W2は31.8nmであった。ここで、ダメージを受けていないSiOC膜はフッ化水素酸に不溶であるが、ダメージを受けたSiOC膜はSiO
2膜に変質するため、フッ化水素酸に可溶となる。このことから、比較実験例2に比して実験例4では多孔質膜PLに対するダメージが抑制されていると結論できる。より詳細には、比較実験例2のように多孔質膜PLの細孔を封孔せずにマスクMK2をアッシングによって除去すると、多孔質膜PLにダメージが発生し、エッチング直後の多孔質膜PLのパターンの幅よりも、変質せずに残された多孔質膜PLのパターンの幅が細くなることが確認された。一方、実験例4では、多孔質膜PLの細孔を封孔して、マスクMK2をアッシングによって除去したので、アッシング直後の多孔質膜PLのパターンの幅とフッ化水素酸を用いた洗浄処理後の多孔質膜PLのパターンの幅との差異は非常に小さかった。即ち、実験例4では、マスクMK2のアッシングによる多孔質膜PLのダメージが抑制されていることが確認された。
【0110】
以上、種々の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、上述した実施形態では、プラズマ処理装置10が方法MTの実施に用いられているが、方法MTは、誘導結合型のプラズマ処理装置、又は、マイクロ波といった表面波によってプラズマを生成するプラズマ処理装置といった任意のプラズマ処理装置を用いて実施することが可能である。