(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6601119
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】エピタキシャルウェーハ裏面検査装置およびそれを用いたエピタキシャルウェーハ裏面検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20191028BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20191028BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
G01N21/956 A
G01B11/30 A
H01L21/66 J
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-197776(P2015-197776)
(22)【出願日】2015年10月5日
(65)【公開番号】特開2017-72403(P2017-72403A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2017年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】長田 達弥
(72)【発明者】
【氏名】金原 秀明
(72)【発明者】
【氏名】江頭 雅彦
【審査官】
小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2015−513111(JP,A)
【文献】
特開2010−127897(JP,A)
【文献】
特開2010−103275(JP,A)
【文献】
特開2007−292641(JP,A)
【文献】
特開平07−249665(JP,A)
【文献】
特開昭63−124942(JP,A)
【文献】
特開2007−067102(JP,A)
【文献】
特開2010−021511(JP,A)
【文献】
特表2014−504803(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/101483(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/142024(WO,A1)
【文献】
米国特許第6002262(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0246472(US,A1)
【文献】
米国特許第6825487(US,B2)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0244955(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 − G01N 21/958
G01B 11/00 − G01B 11/30
H01L 21/64 − H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピタキシャルウェーハの裏面に対して垂直に設置される、リングファイバー照明および撮影部を備える光学系と、
前記裏面と平行に前記光学系を走査する走査部と、を有し、
前記リングファイバー照明の光源は、青色LEDおよび赤色LEDのいずれかのみからなることを特徴とするエピタキシャルウェーハ裏面検査装置。
【請求項2】
前記光源の照度は300,000Lux以上1,000,000Lux以下である、請求項1に記載のエピタキシャルウェーハ裏面検査装置。
【請求項3】
前記光源は、前記青色LEDである、請求項1または2に記載のエピタキシャルウェーハ裏面検査装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のエピタキシャルウェーハ裏面検査装置を用いて、
前記光学系を前記走査部により走査しつつ、前記裏面のパーツ画像を連続的に撮影する撮影工程と、
前記パーツ画像から、前記裏面の全体画像を取得する取得工程と、
前記全体画像から、前記裏面に存在する欠陥を検出する検出工程と、を有することを特徴とするエピタキシャルウェーハ裏面検査方法。
【請求項5】
前記検出工程に先立ち、前記全体画像を画像処理する画像処理工程を更に有し、
前記検出工程において、前記画像処理した全体画像に基づき前記検出を行う、請求項4に記載のエピタキシャルウェーハ裏面検査方法。
【請求項6】
前記検出工程において、前記エピタキシャルウェーハ裏面の周縁部における欠陥を抽出し、前記欠陥のうち、前記周縁部を内側領域および外側領域に区画し、所定の閾値を超える大きさであり、かつ、前記外側領域内のみに位置する欠陥をハローとして検出する、請求項4または5に記載のエピタキシャルウェーハ裏面検査方法。
【請求項7】
前記検出工程において、前記エピタキシャルウェーハ裏面の周縁部における点状の欠陥を抽出し、前記点状の欠陥のうち、第1の半径以上かつ第2の半径以下であり、かつ、中心が暗部となる点状の欠陥をサセプタピンホールとして検出する、請求項4〜6のいずれか1項に記載のエピタキシャルウェーハ裏面検査方法。
【請求項8】
前記検出工程において、前記エピタキシャルウェーハ裏面の中心から所定の距離離れた位置における点状の規準欠陥を抽出して、該規準欠陥の位置を第1の規準位置とし、前記中心から前記第1の規準位置を等角ずつ回転させて複数の第2の規準位置近傍における欠陥を抽出し、前記第1の規準位置および前記第2の規準位置近傍における点状の欠陥がなす組を、ピンマークとして検出する、請求項4〜7のいずれか1項に記載のエピタキシャルウェーハ裏面検査方法。
【請求項9】
前記抽出した前記欠陥を正常欠陥および異常欠陥に分類し、前記異常欠陥の有無を判定する判定工程を更に有する、請求項6〜8のいずれか1項に記載のエピタキシャルウェーハ裏面検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャルウェーハ裏面検査装置およびそれを用いたエピタキシャルウェーハ裏面検査方法に関し、特に、エピタキシャルウェーハ裏面に形成される欠陥を識別して検出することのできる、エピタキシャルウェーハ裏面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において用いる基板として、シリコンウェーハ等の半導体からなるウェーハが広く用いられている。このようなウェーハとして、単結晶インゴットをスライスし、鏡面研磨したポリッシュドウェーハ(PWウェーハ)や、PWウェーハの表面にエピタキシャル層が形成されたエピタキシャルウェーハ等が知られている。例えば、エピタキシャルウェーハは、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、パワートランジスタおよび裏面照射型固体撮像素子など、種々の半導体デバイスのデバイス基板として用いられている。なお、本明細書において、「エピタキシャルウェーハ表面」と記載する場合、エピタキシャルウェーハの主面のうち、エピタキシャル層が形成された側の面を指すものとし、「エピタキシャルウェーハ裏面」と記載する場合、エピタキシャルウェーハの主面のうち、エピタキシャル層が形成された側の面とは反対側の面(すなわち、エピタキシャル層が形成されていない側の面)を指すものとする。
【0003】
半導体デバイスの製造工程において歩留まりや信頼性を向上させるために、半導体デバイスの基板となるウェーハ表裏面の欠陥検査技術が極めて重要になりつつある。ウェーハの表裏面に存在する欠陥は、ピット、COP等の結晶欠陥、加工起因の研磨ムラおよびスクラッチなどの他、異物であるパーティクルの付着など、多岐に渡る。
【0004】
従来、LPD(Light Point Defect;輝点欠陥)検査装置(レーザー面検機)を用いて、仕上げの鏡面研磨を施した後のウェーハ表裏面をレーザー光で走査し、その表裏面に存在するパーティクル、スクラッチ等に起因する散乱光を検出するウェーハ検査が行われている。また、LPD検査装置では判別しにくい欠陥の有無を判定するため、ウェーハ表裏面を目視によって判定する外観検査も併用されている。外観検査は官能検査であるため、検査員による判定のバラツキは不可避であり、かつ、検査員の習熟にも時間を要するため、客観的な検査方法および自動検査方法の確立が求められている。
【0005】
そこで、ウェーハ検査方法の一つとして、外観検査に頼らずにウェーハを適切に評価する方法を、ウェーハ表裏面のうち特に裏面側の欠陥に関して本出願人らは特許文献1において先に提案している。すなわち、ウェーハ裏面のパーツ画像をウェーハの円周方向に沿って連続的に撮影し、撮影した前記パーツ画像を合成してウェーハ裏面の全体画像を作成するマップ処理工程と、前記全体画像を微分処理してウェーハ裏面の微分処理画像を作成する微分処理工程とを具え、前記全体画像又は前記微分処理画像をもとに、研磨ムラ、くもり、スクラッチ及びパーティクルを検出して評価する、ウェーハ裏面の評価方法である。
【0006】
上記全体画像を作成するための光学系50を、
図1(A)、(B)を用いて説明する。なお、
図1(B)は、リングファイバー照明51により照射される照射光L
1と、反射光(散乱光)L
2を図示するために、
図1(A)から要部を抽出したものである。この光学系50は、リングファイバー照明51、鏡筒52、テレセントリックレンズ53および受光部54を備える。なお、リングファイバー照明51の光源には、超高圧水銀灯(波長域369nm〜692nm、出力1,000,000Lux超)を用いており、受光部54にはCCDカメラが用いられている。リングファイバー照明51によって照射される照射光L
1は、ウェーハ面に対して約20度でウェーハWに入射し、ウェーハWの裏面に存在する欠陥Dと衝突すると、散乱光L
2が発生する。受光部54は、散乱光L
2のうち、垂直散乱光を受光して撮像し、光学系50の位置情報とともに、散乱光の輝度情報を有する画像を撮影し、記録する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−103275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、特許文献1に記載の技術を、エピタキシャルウェーハ裏面の欠陥状態の検査に適用することを本発明者らは検討した。ところが、特許文献1に記載の技術をエピタキシャルウェーハ裏面検査にそのまま適用した場合、
図2に一例を示すように、外観検査であれば識別できるはずの欠陥のほぼ全部を検出することができない。なお、
図2の例ではエピタキシャルウェーハ裏面の周縁部を除く中央部のほぼ全てが欠陥であるかの如く誤認識してしまう。
【0009】
エピタキシャルウェーハ裏面の欠陥には、例えば後述の「ピンマーク」、「ブレードキズ」、低散乱の「ハロー」、などの欠陥のように、形成されていても問題のない欠陥や、必然的に形成される欠陥も幾つか存在する。そのため、エピタキシャルウェーハ裏面の検査装置は、欠陥の有無や、その発生量の検出に加えて、欠陥の種類まで正しく識別できなければならない。この点、従来のように、目視による外観検査であれば、エピタキシャルウェーハ裏面の欠陥を識別して、その品質を判断することができるが、前述のとおり外観検査では検査員による判定を要する。したがって、エピタキシャルウェーハ裏面を客観的に検査することのできる技術の確立が求められる。
【0010】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、エピタキシャルウェーハ裏面における欠陥を検出することのできるエピタキシャルウェーハ裏面検査装置およびそれを用いたエピタキシャルウェーハ裏面検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するべく、本発明者らは鋭意検討した。まず、特許文献1に記載の技術は、PWウェーハであれば欠陥状態を正しく評価できるのに関わらず、エピタキシャルウェーハ裏面に適用すると欠陥を看過してしまう原因を本発明者らは検討した。従来技術により得られるエピタキシャルウェーハ裏面の画像と、外観検査により確認される欠陥との相違を分析したところ、この画像においては同種または別種の欠陥が重なり合ったり、正常な部分であっても欠陥に基づく輝度情報と判断されたりしてしまうようである。その原因をさらに検討したところ、エピタキシャルウェーハの裏面は、PWウェーハの裏面に比べてソースガスの回り込みによって裏面の一部が成膜しており、裏面側の表面が粗いため、上記光学系50の光源では出力が強過ぎて乱反射が生じ、CCDの許容容量を超えてしまうからであった。すなわち、散乱光の輝度のオーバーフローが原因であることを突き止めた。エピタキシャルウェーハ裏面は、エピタキシャル層を形成する際に、原料ガスが裏面に回り込んで曇りが発生するなど、PWウェーハに比べると面状態が荒れている(すなわち、裏面のHazeレベルが悪い)ために、上述のオーバーフローが発生するようである。そのため、特許文献1に記載の技術をエピタキシャルウェーハ裏面の欠陥状態の検査に適用しても、外観検査であれば識別可能な欠陥を看過してしまうのだと考えられる。
【0012】
PWウェーハの表裏面は、エピタキシャルウェーハ裏面と異なり、粗れが小さいため、PWウェーハを検査する際には極薄い傷であっても検出できるよう、短波長域であり、かつ、照度の大きいHgランプやメタルハライドランプなどの超高圧水銀灯をリングファイバー照明の光源に用いていた。しかしながら、上述のとおりエピタキシャルウェーハ裏面ではオーバーフローが発生してしまう。そこで、これを解消しようと超高圧水銀灯の照度を下げると、今度は検査中に照度が不安定となってしまう。そこで、本発明者らは、リングファイバー照明の光源として、比較的低照度で安定的に使用可能な光源を用いることを着想し、エピタキシャルウェーハ裏面における欠陥を識別可能な光源を見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、上記の知見および検討に基づくものであり、その要旨構成は以下のとおりである。
【0013】
本発明のエピタキシャルウェーハ裏面検査装置は、エピタキシャルウェーハの裏面に対して垂直に設置される、リングファイバー照明および撮影部を備える光学系と、前記裏面と平行に前記光学系を走査する走査部と、を有し、前記リングファイバー照明の光源は、青色LEDおよび赤色LEDのいずれかであることを特徴とする。
【0014】
ここで、前記光源の照度は300,000Lux以上1,000,000Lux以下であることが好ましく、また、前記光源は、前記青色LEDであることが好ましい。
【0015】
また、本発明のエピタキシャルウェーハ裏面検査方法は、前述のエピタキシャルウェーハ裏面検査装置を用いて、前記光学系を前記走査部により走査しつつ、前記裏面のパーツ画像を連続的に撮影する撮影工程と、前記パーツ画像から、前記裏面の全体画像を取得する取得工程と、前記全体画像から、前記裏面に存在する欠陥を検出する検出工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
この場合、前記検出工程に先立ち、前記全体画像を画像処理する画像処理工程を更に有し、前記検出工程において、前記画像処理した全体画像に基づき前記検出を行うことが好ましい。
【0017】
また、前記検出工程において、前記エピタキシャルウェーハ裏面の周縁部における欠陥を抽出し、前記欠陥のうち、前記周縁部を内側領域および外側領域に区画し、所定の閾値を超える大きさであり、かつ、前記外側領域内のみに位置する欠陥をハローとして検出することが好ましい。
【0018】
さらに、前記検出工程において、前記エピタキシャルウェーハ裏面の周縁部における点状の欠陥を抽出し、前記点状の欠陥のうち、第1の半径以上かつ第2の半径以下であり、かつ、中心が暗部となる点状の欠陥をサセプタピンホールとして検出することが好ましい。
【0019】
さらにまた、前記検出工程において、前記エピタキシャルウェーハ裏面の中心から所定の距離離れた位置における点状の規準欠陥を抽出して、該規準欠陥の位置を第1の規準位置とし、前記中心から前記第1の規準位置を等角ずつ回転させて複数の第2の規準位置近傍における欠陥を抽出し、前記第1の基準位置および前記第2の規準位置近傍における点状の欠陥がなす組を、ピンマークとして検出することが好ましい。
【0020】
また、前記抽出した前記欠陥を正常欠陥および異常欠陥に分類し、前記異常欠陥の有無を判定する判定工程を更に有することも好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、適切な光源を用いるので、エピタキシャルウェーハ裏面における欠陥を検出することのできるエピタキシャルウェーハ裏面検査装置およびそれを用いたエピタキシャルウェーハ裏面検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来技術において用いられるウェーハ裏面検査装置の光学系を説明する模式図であり、(A)は光学系全体を示す模式図であり、(B)は入射光L
1および散乱光L
2を示す模式図である。
【
図2】従来技術によるウェーハ検査装置を用いて得た、エピタキシャルウェーハ裏面の全体画像の一例である。
【
図3】本発明の一実施形態に従うエピタキシャルウェーハ裏面検査装置を説明する模式図である。
【
図4】エピタキシャルウェーハ裏面の全体画像の一例であり、(A)は青色LED光源により得られた全体画像であり、(B)は赤色LED光源により得られた全体画像であり、(C)は緑色LED光源により得られた全体画像であり、(D)は白色LED光源により得られた全体画像である。
【
図5】本発明の一実施形態に従うエピタキシャルウェーハ裏面検査方法を説明するフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態により得られるエピタキシャルウェーハ裏面の第1の例であり、(A)は全体画像であり、(B)は(A)の全体画像を画像処理したものである。
【
図7】本発明の一実施形態により検出することのできるハローを説明するための模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態により得られるエピタキシャルウェーハ裏面の第2の例であり、(A)は全体画像であり、(B)は(A)の全体画像を画像処理したものである。
【
図9】(A)は、
図8(A)におけるサセプタピンホールの拡大画像であり、(B)はその強度分布を示すグラフである。
【
図10】本発明の一実施形態により検出することのできるサセプタピンホールを説明するための模式図である。
【
図11】本発明の一実施形態により得られるエピタキシャルウェーハ裏面の第3の例であり、(A)は全体画像であり、(B)は(A)の全体画像を画像処理したものである。
【
図12】本発明の一実施形態により検出することのできるピンマークを説明するための模式図であり、(A)は規準欠陥PM1を示し、(B)は、ピンマークである欠陥の組PM1〜PM3を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
図3は、本発明の一実施形態に従うエピタキシャルウェーハ裏面検査装置100の模式図である。
【0024】
(エピタキシャルウェーハ裏面検査装置)
図3に示すように、本発明の一実施形態に従うエピタキシャルウェーハ裏面検査装置100は、エピタキシャルウェーハ1の裏面に対して垂直に設置される、リングファイバー照明10および撮影部20を備える光学系30と、エピタキシャルウェーハ1の裏面と平行に光学系30を走査する走査部40と、を有する。そして、リングファイバー照明10の光源を、青色LEDおよび赤色LEDのいずれかとする。なお、
図3における、エピタキシャルウェーハ1とは、基板Sの表面にエピタキシャル層Eをエピタキシャル成長させたものである。そして、エピタキシャルウェーハ1の裏面とは、エピタキシャル層Eが形成された側と反対の面(換言すれば、基板Sのエピタキシャル層Eが形成されていない側の面であり、基板Sの裏側の面が露出していると言うこともできる。)を意味する。以下、各構成の詳細を順に説明する。
【0025】
リングファイバー照明10としては、一般的なものを用いることができるが、その光源を青色LEDおよび赤色LEDのいずれかとすることが肝要であり、その技術的意義については
図4を用いて後述する。なお、リングファイバー照明10から照射される照射光Lの照度を300,000〜1,000,000lux程度とすることが好ましい。エピタキシャルウェーハ1の裏面に対する照射光Lのなす角度は一般的なものであり、例えば10〜30度程度とすることができ、従来技術と同様に略20度または20度とすることもできる。
【0026】
撮影部20の構成は、エピタキシャルウェーハ1の裏面からの散乱光を受光して撮影できる限りは特に制限されないが、例えば鏡筒22、レンズ23および受光部24から構成することができる。鏡筒22、レンズ23および受光部24のそれぞれは、一般的に使用されるものを用いることができる。レンズ23には例えばテレセントリックレンズを用いることができ、受光部24には例えばCCDカメラを用いることができる。
【0027】
光学系30は、上述のリングファイバー照明10および撮影部20を備え、リングファイバー照明10によってエピタキシャルウェーハ1の裏面を照射し、その散乱光を受光して、エピタキシャルウェーハ1の裏面のパーツ画像を取得する。
【0028】
走査部40は、エピタキシャルウェーハ1の裏面と平行に光学系30を走査する。走査部40は、光学系30を周方向に走査してもよいし、縦横に走査してもよい。また、エピタキシャルウェーハ裏面検査装置100が光学系30を複数(例えば3つ)有し、それぞれの光学系30を走査部40が周方向に走査してもよい。なお、走査部40は光学系30に接続するアームおよび、アームを駆動させるための駆動ステッピングモーター、サーボーモーター等から構成することができる。
【0029】
ここで、本実施形態に従うエピタキシャルウェーハ裏面検査装置100のリングファイバー照明10の光源として青色LED(照射光照度:300,000〜1,000,000lux、波長域:450〜500nm、発光中心波長:470μm)を用いた場合に、エピタキシャルウェーハの裏面のパーツ画像をウェーハ全面で連続的に撮影し、合成して裏面全体を示す全体画像を取得したときの一例を
図4(A)に示す。また、同じ裏面に対して、光源を上記青色LEDから赤色LED(照射光照度:300,000〜1,000,000lux、波長域:600〜700nm、発光中心波長:660μm)に替えた場合の全体画像を
図4(B)に示す。さらに、これら青色LEDおよび赤色LEDと同程度の照度の緑色LED(発光中心波長:530μm)に替えた場合の全体画像を
図4(C)に、白色LED(上記青色LED、赤色LEDおよび緑色LEDの合成光)に替えた場合の全体画像を
図4(D)にそれぞれ示す。
【0030】
図4(A)〜(D)に示す全体画像の中央部には円弧状の欠陥であるスクラッチ状の欠陥が形成されており、光源に青色LEDまたは赤色LEDを用いた
図4(A),(B)では、スクラッチ状の欠陥の周囲にクモリ欠陥が形成されていることが確認できる。
図4(C),(D)では、スクラッチ状の欠陥は画像中から識別可能であるが、
図4(A),(B)で見られるクモリ欠陥は識別できない。また、
図4(A)〜(D)を比較すると明らかなように、光源に青色LEDを用いる場合に、欠陥の検出感度が最も高いことがわかる。よって、エピタキシャルウェーハ裏面検査装置100のリングファイバー照明10の光源には、青色LEDを用いることが好ましい。
【0031】
なお、
図2を用いて既述のとおり、リングファイバー照明10の光源として、従来技術と同様に超高圧水銀灯(例えば照度5,000,000Lux)を用いると、欠陥に起因する輝度がオーバーフローして、欠陥を識別することができない。
【0032】
以上説明してきたように、本実施形態に従うエピタキシャルウェーハ裏面検査装置100では、低照度でも安定性に優れ、かつ、波長域が450〜500nmの青色LEDまたは600〜700nm赤色LEDをリングファイバー照明10の光源として用いていることで、Hazeレベルの悪いエピタキシャルウェーハ裏面であっても、その欠陥状態を示す画像を正確に取得することができる。したがって、従来目視でなければ感知できなかったエピタキシャルウェーハ裏面の欠陥を、識別して検出することができるのである。
【0033】
なお、エピタキシャルウェーハ1は、鏡面加工されたシリコンウェーハの表面に、シリコンエピタキシャル層をエピタキシャル成長させたエピタキシャルシリコンウェーハとすることができる。本実施形態に従うエピタキシャルウェーハ裏面検査装置100は、エピタキシャルシリコンウェーハに供することが好ましい。既述の裏面側のHazeの悪化が問題となってくるためである。
【0034】
(エピタキシャルウェーハ裏面検査方法)
次に、上述のエピタキシャルウェーハ裏面検査装置100を用いるエピタキシャルウェーハ裏面検査方法の一実施形態を説明する。
図5に示すように、本実施形態は、光学系30を走査部40により走査しつつ、エピタキシャルウェーハ1の裏面のパーツ画像を連続的に撮影する撮影工程S1と、前記パーツ画像から、エピタキシャルウェーハ1の裏面の全体画像を取得する取得工程S2と、得られた全体画像から、エピタキシャルウェーハ1の裏面に存在する欠陥を検出する検出工程S3と、を有する。
【0035】
すなわち、撮影工程S1では、まず光学系30が所定位置に位置するときに、エピタキシャルウェーハ1の裏面のパーツ画像を撮影する。次いで、上記所定位置と別の位置に走査部40が光学系30を走査して、エピタキシャルウェーハ1の裏面のパーツ画像を撮影する。例えば、エピタキシャルウェーハ1の裏面を100〜200程度に区分して、区分毎にこの撮影および走査を繰り返して、エピタキシャルウェーハ1の裏面のパーツ画像を連続的に撮影する(S1)。次に、撮影したそれぞれのパーツ画像を合成し、エピタキシャルウェーハ1の裏面の全体画像を取得する(S2)。得られた全体画像の一例は、例えば既述の
図4(A)である。
【0036】
次に、上述の取得工程S2において取得した全体画像から、エピタキシャルウェーハ1の裏面に存在する欠陥を検出する検出工程S3を行う。エピタキシャルウェーハ1の裏面には、エピタキシャル層を形成する際の原料ガスの回り込みに起因する欠陥や、エピタキシャル成長炉内でエピタキシャルウェーハ1を支持するサセプタとの接触に起因する欠陥など、欠陥が発生する原因に応じて、それぞれ特有の欠陥パターンが形成される。そして、欠陥の発生原因毎に特有の、発生位置(裏面中央部もしくは裏面周縁部または裏面全面にランダムに発生など)や欠陥パターン長さ、縦横サイズ比、点状の欠陥の組み合わせ(以下、これらを総称して「欠陥パターン」と言う。)などが存在する。本工程では、これらの欠陥の種類毎に特有の欠陥パターンの条件を設定し、この条件に当てはまる欠陥を全体画像の中から検出する。こうして、エピタキシャルウェーハ1の裏面に存在する欠陥を検出することができる。
【0037】
なお、検出工程S3に先立ち、取得された全体画像を画像処理する画像処理工程を更に有することが好ましい。そして、画像処理した全体画像に基づき検出工程S3を行うことが好ましい。画像処理工程においては、例えば微分処理画像を全体画像から取得すれば、ノイズの影響等も抑制でき、エピタキシャルウェーハ1の裏面に存在する欠陥をより明確に検出することができる。なお、後述する
図6(A)の全体画像を微分処理し、細線化処理を施すと、
図6(B)が得られる。
図8(A),(B)および
図11(A),(B)も同様の対応関係である。画像処理した全体画像を用いることで、エピタキシャルウェーハ1裏面の欠陥の検出精度をより高めることができる。
【0038】
以下に、エピタキシャルウェーハ1の裏面に形成される「ハロー」、「サセプタピンホール」、「ピンマーク」の具体的な検出方法の態様を説明する。これらの欠陥の検出態様は、あくまで例示的なものであり、欠陥の種類毎に特有の欠陥パターンを当てはめれば、上記3種の欠陥以外の欠陥についても、本方法に従う実施形態により欠陥を検出することは可能である。
【0039】
<ハロー>
欠陥の第1の例として、
図6(A)に、本発明に従うエピタキシャルウェーハ裏面検査装置100を用いて取得した、ハローD1が形成されているエピタキシャルウェーハ1裏面の全体画像を示す。また、
図6(B)は、
図6(A)を画像処理したものである。なお、このエピタキシャルウェーハ1裏面にはクモリ欠陥D2も形成されている。
ここで、「ハロー」とは、エピタキシャル成長によってエピタキシャルウェーハ裏面の周縁部に発生するエッチング模様状の欠陥である。
【0040】
図7を用いつつ、本検査方法の一実施形態における上記ハローD1の検出態様を説明する。なお、
図7では、ハローD1はエピタキシャルウェーハ1裏面の周縁部に2つ形成されている。検出工程S3では、まず、エピタキシャルウェーハ1裏面の周縁部における欠陥を抽出する。エピタキシャルウェーハ裏面の周縁部を、所定の半径を用いて、内側領域RIおよび外側領域ROに区画する。抽出された欠陥のうち、所定の閾値を超える大きさの欠陥であり、かつ、外側領域RO内のみに位置する欠陥を「ハロー」として検出することができる。欠陥の大きさを定める際には、輝度に所定の閾値を設定してもよい。なお外側領域ROおよび内側領域RIに渡って形成される欠陥であった場合には、ハローD1ではなくクモリ欠陥D2として検出することができる。こうして、ハローD1が検出される場合には、ハローD1が裏面に存在するエピタキシャルウェーハとして評価することができる。
【0041】
<サセプタピンホール>
欠陥の第2の例として、
図8(A)に、本発明に従うエピタキシャルウェーハ裏面検査装置100を用いて取得した、サセプタピンホールD3が形成されているエピタキシャルウェーハ1裏面の全体画像を示す。また、
図8(B)は、
図8(A)を画像処理したものである。さらに、
図9(A)に
図8(A)におけるサセプタピンホールD3近傍の拡大画像を示す。また、
図9(B)に、このサセプタピンホールD3の強度(輝度)分布を示す。
図9(A),(B)に一具体例が示されているように、サセプタピンホールは略円形の点状の欠陥であって、中央部は暗部となる。
ここで、「サセプタピンホール」とは、エピタキシャル成長中にサセプタによるピンホールがエピタキシャルウェーハの裏面に転写された痕跡であり、核を持ったくもり状に目視される欠陥である。そのため、サセプタピンホールの外径は、所定の範囲内となる。
【0042】
図10を用いつつ、本検査方法の一実施形態における上記サセプタピンホールD3の検出態様を説明する。検出工程S3では、エピタキシャルウェーハ1裏面の周縁部における点状の欠陥を抽出する。サセプタピンホールの外径が含まれるよう、閾値として第1の半径および第2の半径([第2の半径]>[第1の半径]とする。)を予め設定しておき、抽出した点状の欠陥のうち、第1の半径以上かつ第2の半径以下であるものをさらに抽出する。このような点状の欠陥のうち、中心が暗部となっている欠陥を、「サセプタピンホール」として検出することができる。なお、第1の半径未満の大きさの点状の欠陥D4は、(発生位置にも依存し得るが)パーティクルとして判定してもよい。
【0043】
<ピンマーク>
欠陥の第3の例として、
図11(A)に、本発明に従うエピタキシャルウェーハ裏面検査装置100を用いて取得した、ピンマークPM1〜PM3が形成されているエピタキシャルウェーハ1裏面の全体画像を示す。また、
図11(B)は、
図11(A)を画像処理したものである。
ここで、「ピンマーク」とは、ウェーハリフトピン形状や、ピンとウェーハとの接触具合に起因し、センチュラ社製のエピタキシャル炉に特有な、エピタキシャルウェーハ裏面外周部に発生する摩耗跡のような微少キズの集合体または付着物からなる欠陥である。ウェーハリフトピン形状にも依るが、例えば3箇所に形成されうるピンマークであれば、必ず3箇所同時に形成され、この場合、エピタキシャルウェーハ裏面の中心から120度ずつ回転させた位置に存在する。また、リフトピン形状に起因して、所定の半径の範囲内に存在し、それぞれの欠陥は円形状の輝点となる。
【0044】
図12(A),(B)を用いつつ、本検査方法の一実施形態における上記ピンマークPM1〜PM3の検出態様を説明する。検出工程S3において、エピタキシャルウェーハ裏面の中心から所定の距離R離れた位置における点状の規準欠陥PM1をまず抽出する(
図12(A))。この規準欠陥PM1の位置を第1の規準位置とし、前記中心から前記第1の規準位置を等角ずつ(
図12の例では、ピンマークは3箇所形成されるため120度ずつ)回転させて、複数の第2の規準位置A,Bの近傍における欠陥を抽出する。ピンマークの発生位置が等角間隔から若干ずれる場合があるので、検出許容角を設定してもよい(
図12(B))。この場合、検出許容角の範囲内にあれば、上記「近傍」に含まれるものとする。第1の基準位置および前記第2の規準位置A,B近傍における点状の欠陥PM1〜PM3がなす組を、「ピンマーク」として検出することができる。
【0045】
なお、本実施形態は、検出工程S3の後、前記抽出した欠陥を正常欠陥および異常欠陥に分類し、異常欠陥の有無を判定する判定工程を更に有することが好ましい。前述のとおり、ピンマークのように、エピタキシャルウェーハ裏面には形成されていても問題のない欠陥が存在する。そこで、エピタキシャルウェーハ裏面の品質を評価する際には、異常欠陥の有無を判定することが好ましい。発生している異常欠陥の種類や量を定性的または定量的に評価してもよい。
【0046】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらは代表的な実施形態の例を示したものであって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、エピタキシャルウェーハ裏面における欠陥を検査することのできるエピタキシャルウェーハ裏面検査装置およびそれを用いたエピタキシャルウェーハ裏面検査方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 エピタキシャルウェーハ
10 リングファイバー照明
20 撮影部
30 光学系
40 走査部
100 エピタキシャルウェーハ裏面検査装置
D 欠陥