特許第6601137号(P6601137)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6601137積層体基板、積層体基板の製造方法、導電性基板、及び導電性基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6601137
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】積層体基板、積層体基板の製造方法、導電性基板、及び導電性基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20191028BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20191028BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20191028BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20191028BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20191028BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20191028BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20191028BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   B32B9/00 A
   G06F3/041 490
   G06F3/041 660
   H01B5/14 A
   H01B13/00 503B
   C23C14/06 N
   C23C14/14 G
   B32B15/20
   B32B15/04 Z
【請求項の数】7
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-204642(P2015-204642)
(22)【出願日】2015年10月16日
(65)【公開番号】特開2017-74749(P2017-74749A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 寛人
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−300393(JP,A)
【文献】 特開2005−268688(JP,A)
【文献】 特開2015−069440(JP,A)
【文献】 特開2015−103223(JP,A)
【文献】 特開2001−127485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C23C 14/06
C23C 14/14
G06F 3/041
H01B 5/14
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、
前記透明基材の少なくとも一方の面側に形成された積層体とを備え、
前記積層体が、
酸素と、銅と、ニッケルとを含有する黒化層と、
銅層とを有し、
前記黒化層の膜厚が15nm以上であり、前記黒化層中の銅の、前記黒化層中の銅とニッケルとの合計に対する割合が質量比で20%以上80%以下であり、前記黒化層が含有する酸素原子と、ニッケル原子との物質量比であるO/Niが、以下の(1)式を満たす積層体基板。
0.1≦O/Ni≦0.8 ・・・(1)
【請求項2】
前記銅層の膜厚が80nm以上5000nm以下である請求項1に記載の積層体基板。
【請求項3】
前記黒化層の波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均が40%以下である請求項1または請求項2に記載の積層体基板。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載の積層体基板の製造方法であって、
前記黒化層を乾式めっき法で成膜する黒化層形成工程を有し、
前記黒化層形成工程において、前記黒化層を成膜する際、前記黒化層の被成膜表面に入射する酸素分子数(Γ(O))と、前記黒化層に堆積する銅の原子数(Γ(Ni))とが、以下の(2)式を満たす積層体基板の製造方法。
2≦Γ(O)/Γ(Ni)≦10 ・・・(2)
【請求項5】
透明基材と、
前記透明基材の少なくとも一方の面側に形成された金属細線とを備え、
前記金属細線が、
酸素と、銅と、ニッケルとを含有する黒化配線層と、
銅配線層とを備えた積層体であり
前記黒化配線層の膜厚が15nm以上であり、前記黒化配線層中の銅の、前記黒化配線層中の銅とニッケルとの合計に対する割合が質量比で20%以上80%以下であり、前記黒化配線層が含有する酸素原子と、ニッケル原子との物質量比であるO/Niが、以下の(1)式を満たす導電性基板。
0.1≦O/Ni≦0.8 ・・・(1)
【請求項6】
前記黒化配線層の波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均が40%以下である請求項に記載の導電性基板。
【請求項7】
請求項に記載の積層体基板の製造方法で得られた積層体基板を配線加工する配線加工工程を有する、導電性基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体基板、積層体基板の製造方法、導電性基板、及び導電性基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、高分子フィルム上に透明導電膜としてITO(酸化インジウム−スズ)膜を形成したタッチパネル用の透明導電性フィルムが従来から用いられている。
【0003】
ところで、近年タッチパネルを備えたディスプレイの大画面化が進んでおり、これに対応してタッチパネル用の透明導電性フィルム等の導電性基板についても大面積化が求められている。しかし、ITOは電気抵抗値が高いため、導電性基板の大面積化に対応できないという問題があった。
【0004】
このため、例えば特許文献2、3に開示されているようにITO膜にかえて銅等の金属箔を加工した金属細線を用いることが検討されている。しかし、例えば金属細線に銅を用いた場合、銅は金属光沢を有しているため、反射によりディスプレイの視認性が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、銅等の金属箔により構成される銅層と共に、黒色の材料により構成される黒化層を形成した積層体基板が検討されている。係る積層体基板から、金属細線の配線パターンを有する導電性基板とするためには、銅層と、要求される反射率などの光学特性を備える黒化層とを形成した後に、銅層と黒化層とをエッチングして所望のパターンを形成する必要がある。
【0006】
しかしながら、エッチング液に対する反応性が銅層と黒化層とで異なるという問題があった。すなわち、銅層と黒化層とを同時にエッチングしようとすると、いずれかの層が目的の形状にエッチングできないという問題であった。また、銅層のエッチングと黒化層のエッチングとを別の工程で実施する場合、工程数が増加するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−151358号公報
【特許文献2】特開2011−018194号公報
【特許文献3】特開2013−069261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術の問題に鑑み、本発明は同時にエッチング処理を行うことができる銅層と、黒化層と、を備えた積層体基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明は、
透明基材と、
前記透明基材の少なくとも一方の面側に形成された積層体とを備え、
前記積層体が、
酸素と、銅と、ニッケルとを含有する黒化層と、
銅層とを有し、
前記黒化層の膜厚が15nm以上であり、前記黒化層中の銅の、前記黒化層中の銅とニッケルとの合計に対する割合が質量比で20%以上80%以下であり、前記黒化層が含有する酸素原子と、ニッケル原子との物質量比であるO/Niが、以下の(1)式を満たす積層体基板を提供する。


【0010】
0.1≦O/Ni≦0.8 ・・・(1)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、同時にエッチング処理を行うことができる銅層と、黒化層と、を備えた積層体基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る積層体基板の断面図。
図2】本発明の実施形態に係る積層体基板の断面図。
図3】本発明の実施形態に係るメッシュ状の配線パターンを備えた導電性基板の上面図。
図4図3のA−A´線における断面図。
図5】ロール・ツー・ロールスパッタリング装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の積層体基板、積層体基板の製造方法、導電性基板、及び導電性基板の製造方法の一実施形態について説明する。
(積層体基板、導電性基板)
本実施形態の積層体基板は、透明基材と、透明基材の少なくとも一方の面側に形成された積層体とを備えることができる。そして、積層体は、酸素と、銅と、ニッケルとを含有する黒化層と、銅層とを有することができる。また、黒化層の膜厚は15nm以上であり、黒化層が含有する酸素原子と、ニッケル原子との物質量比であるO/Niが、以下の(1)式を満たすことが好ましい。
【0014】
0.1≦O/Ni≦0.8 ・・・(1)
なお、本実施形態における積層体基板とは、銅層等をエッチングする前の透明基材の表面に銅層や黒化層の積層体を有する基板である。導電性基板とは銅層や黒化層をエッチングして金属細線とした基板である。
【0015】
ここでまず、本実施形態の積層体基板に含まれる各部材について以下に説明する。
【0016】
透明基材としては特に限定されるものではなく、可視光を透過する絶縁体フィルムや、ガラス基板等を好ましく用いることができる。
【0017】
可視光を透過する絶縁体フィルムとしては例えば、ポリアミド系フィルム、ポリエチレンテレフタレート系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、シクロオレフィン系フィルム、ポリイミド系フィルム、ポリカーボネート系フィルム等の樹脂フィルム等を好ましく用いることができる。
【0018】
透明基材の厚さについては特に限定されず、導電性基板とした場合に要求される強度や光の透過率等に応じて任意に選択することができる。透明基材の厚さとしては例えば10μm以上250μm以下とすることができる。特にタッチパネルの用途に用いる場合、20μm以上200μmm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以上120μm以下である。タッチパネルの用途に用いる場合で、例えば特にディスプレイ全体の厚さを薄くすることが求められる用途においては、透明基材の厚さは20μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0019】
次に銅層について説明する。
【0020】
銅層についても特に限定されないが、光の透過率を低減させないため、銅層と透明基材との間、または、銅層と黒化層との間に接着剤を配置しないことが好ましい。すなわち銅層は、他の部材の上面に直接形成されていることが好ましい。
【0021】
他の部材の上面に銅層を直接形成するため、スパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等の乾式めっき法を用いて銅層を形成することが好ましい。
【0022】
また銅層をより厚くする場合には、乾式めっき後に湿式めっき法を用いることが好ましい。すなわち、例えば透明基材または黒化層上に、乾式めっき法により銅薄膜層を形成し、該銅薄膜層を給電層として、湿式めっき法により銅めっき層を形成することができる。この場合、銅薄膜層と、銅めっき層とで銅層を構成することができる。
上述のように乾式めっき法のみ、又は乾式めっき法と湿式めっき法とを組み合わせて銅層を形成することにより透明基材または黒化層上に接着剤を介さずに直接銅層を形成できるため好ましい。
【0023】
銅層の膜厚は特に限定されるものではなく、銅層を配線として用いた場合に、該配線に供給する電流の大きさや配線幅等に応じて任意に選択することができる。特に十分に電流を供給できるように銅層の膜厚は80nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましく、150nm以上であることがさらに好ましい。銅層の膜厚の上限値は特に限定されないが、銅層が厚くなると、配線を形成するためにエッチングを行う際にエッチングに時間を要するためサイドエッチが生じ、エッチングの途中でレジストが剥離する等の問題を生じ易くなる。このため、銅層の膜厚は5000nm以下が好ましく、3000nm以下であることがより好ましく、1200nm以下であることがさらに好ましい。なお、銅層が上述のように銅薄膜層と、銅めっき層とを有する場合には、銅薄膜層の厚さと、銅めっき層の厚さとの合計が上記範囲であることが好ましい。
【0024】
次に、黒化層について説明する。本実施形態の積層体基板で黒化層は、酸素と、銅と、ニッケルとを含有できる。
【0025】
黒化層を備えずに、銅層のみを形成して配線加工した金属細線は、配線の銅層が金属光沢を有するため、銅が光を反射し、例えばタッチパネル用の配線基板として用いた場合、ディスプレイの視認性が低下するという問題があった。そこで、黒化層を設ける方法が検討されている。
【0026】
黒化層は、銅層表面での光の反射を抑制するため、また透明基材上に銅層、及び黒化層を形成した後に配線加工するため、反射率が低いことと、銅層と黒化層とを同時に所望の形状にエッチングできるエッチング性とを両立することが求められている。
【0027】
本発明の発明者らは、酸素と、銅と、ニッケルとを含有する黒化層について検討を行い、低反射率と、エッチング性とを両立できる黒化層となるよう検討を行った。ところが、係る黒化層は、黒化層を構成する金属の原子数と、酸素の原子数との比によってはエッチング液に対する反応性、すなわちエッチング性が十分ではない場合があった。
【0028】
そして、酸素と、銅と、ニッケルとを含有する黒化層の膜厚が15nm以上であり、かつ黒化層に含まれる酸素原子と、ニッケル原子との物質量比(O/Ni)が以下の(1)式を満たす場合、黒化層は、低反射率と、エッチング性とを両立できることを見いだした。
【0029】
0.1≦O/Ni≦0.8・・・(1)
本実施形態の積層体基板の、酸素と、銅と、ニッケルとを含有する黒化層は、例えば乾式めっき法により成膜することができる。そして、乾式めっき法で、ニッケル−銅合金を用いて、アルゴンガスなどの不活性ガスに酸素を添加した雰囲気下で酸素と、銅と、ニッケルとを含有する黒化層を成膜する場合、ニッケルが優先的に酸化される。
【0030】
しかし、上記(1)式のO/Ni比が0.1未満の場合、ニッケルの酸化が不十分となり黒化層として成膜したNi−Cu−O膜の反射率が高くなる場合がある。
【0031】
また、上記(1)式のO/Ni比が0.8より大きいと、ニッケルの酸化が進み、黒化層として成膜したNi−Cu−O膜が透明になり、透過率が高くなる恐れがある。このため、係るNi−Cu−O膜と銅層とを積層した場合、Ni−Cu−O膜を透過した光の、銅層からの反射が大きくなり結果的に反射率が増加する場合がある。さらには、上記(1)式のO/Ni比が0.8より大きくなると、エッチング性が低下する恐れがある。
【0032】
これに対して、上述の様に、酸素と、銅と、ニッケルとを含有する黒化層中のO/Ni比が0.1以上0.8以下の場合、該黒化層の低反射率と、エッチング性とを両立できるため好ましい。特に黒化層のO/Ni比は0.2以上0.7以下がより好ましい。
【0033】
なお、黒化層に含まれる各原子の状態は特に限定されるものではなく、例えば化学的に不定比のニッケル−銅酸化物を含むことができ、ニッケルと銅の一部は酸化物(不定比の酸化物も含む)とはなっていない原子として含まれていてもよい。
【0034】
また、黒化層に含まれる酸素、ニッケル、銅の組成はXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)により知ることができる。
【0035】
本実施形態の積層体基板の黒化層中の銅とニッケルとの比率は特に限定されるものではないが、黒化層中の銅の、黒化層中の銅とニッケルとの合計に対する割合は、質量比で20%以上80%以下であることが好ましい。
【0036】
これは、黒化層中の銅の、黒化層中の銅とニッケルとの合計に対する割合を質量比で20%(質量%)以上とすることで、黒化層のエッチング性を特に高めることができるためである。ただし、黒化層中の銅の、黒化層中の銅とニッケルとの合計に対する割合が質量比で80%(質量%)を超えると、黒化層の反射率が高くなり、タッチパネル用の導電性基板とした場合に、ディスプレイの視認性が低下する恐れがあるため、80%以下が好ましい。
【0037】
黒化層中の銅の、黒化層中の銅とニッケルとの合計に対する割合は、質量比で30%以上50%以下であることがより好ましい。
【0038】
なお、黒化層をスパッタリング法により成膜する場合であってニッケル−銅合金のスパッタリングターゲットを用いる場合、黒化層中の銅とニッケルとの比率は、スパッタリングターゲット中の銅とニッケルの比率と概ね等しくすることができる。このため、黒化層をスパッタリング法により成膜する場合、黒化層中の銅とニッケルとの比率は、スパッタリングターゲットの組成により代えることもできる。
【0039】
黒化層の成膜方法は特に限定されるものではなく、任意の方法により成膜することができ、例えば乾式めっき法により好適に成膜することができる。特に、スパッタリング法によれば、ニッケル−銅合金のスパッタリングターゲットを用い、該スパッタリングターゲットからのニッケル−銅合金を酸化しつつ、比較的容易に酸素と、銅と、ニッケルとを含有する黒化層を成膜できる。このため、黒化層はスパッタリング法により成膜することが好ましい。
【0040】
本実施形態の積層体基板の黒化層をスパッタリング法により成膜する場合、ニッケル−銅合金ターゲットを用い、チャンバー内に不活性ガス、及び酸素ガスを供給しながらスパッタリング法により成膜することができる。なお、不活性ガスとしては、例えばアルゴンガスを用いることができる。
【0041】
黒化層をスパッタリング法により成膜する場合、予め不活性ガスと酸素ガスとを混合した混合ガスをチャンバー内に供給することもできる。また、不活性ガスと、酸素ガスとをそれぞれチャンバー内に供給し、各ガスの分圧を調整することもできる。特に、黒化層に供給する酸素の量を調整できるように、不活性ガスと、酸素ガスとをチャンバー内に同時に供給し、チャンバー内の酸素分圧を調整することが好ましい。
【0042】
上述のように不活性ガスと酸素ガスとをチャンバー内に供給しながら乾式めっき法、例えばスパッタリング法により黒化層を成膜する際、チャンバー内に供給する不活性ガスと、酸素ガスとの比は限定されるものではない。ただし、黒化層を成膜する際、被成膜表面に入射する酸素分子数(Γ(O))と、被成膜表面に堆積するニッケルの原子数(Γ(Ni))とが、(2)式を満たすことが好ましい。すなわち、以下の(2)式を充足するように不活性ガス分圧および酸素分圧を調整することが好ましい。
【0043】
2≦Γ(O)/Γ(Ni)≦10・・・(2)
これは、Γ(O)/Γ(Ni)が2以上の場合、黒化層を十分に黒化することができ、積層体基板の黒化層の反射率を特に低減できることから、導電性基板とした際のディスプレイの視認性を特に高めることができるためである。
【0044】
また、Γ(O)/Γ(Ni)が10以下の場合、黒化層に含まれるニッケルの酸化が過度に進むことを抑制することができるため、ニッケル酸化物が透明になって黒化層の透過率が上がることを抑制できる。このため、黒化層と銅層とを積層した積層体基板において、銅層表面での光の反射を黒化層が抑制し、積層体基板の反射率を低減できる。さらには、黒化層のエッチング性を特に高めることができ、銅層と黒化層とをより確実に同時にエッチング処理することができる。
【0045】
従って、黒化層を成膜する際には、上述のように、Γ(O)/Γ(Ni)は2以上10以下が好ましく、4以上8以下がより好ましい。
【0046】
なお、被成膜表面に入射したO分子のすべてが、Ni原子と反応するのではなく、被成膜表面に入射した一部のO分子がNi原子と反応する。このため、O分子とNi原子との反応の確率を考慮すると、被成膜表面に入射するO分子数(Γ(O))と被成膜表面に堆積する原子数(Γ(Ni))との関係は、(2)式を満たすことが望ましい。
【0047】
上述した黒化層の被成膜表面とは、黒化層を成膜する際の最表面部分を意味し、黒化層の成膜開始時であれば黒化層を成膜する下層、すなわち、透明基材の表面または銅層の表面を意味する。また、黒化層の成膜開始後であれば成膜中の黒化層の最表面を意味する。
【0048】
上述の(2)式のうち、黒化層の被成膜表面に入射するO分子数であるΓ(O)は、以下の(3)式で求めることができる。
【0049】
Γ(O)=p/(2πmkT)0.5 [個/(ms)] ・・・(3)
(3)式中各パラメータは、p:酸素の分圧[Pa]、m:酸素分子の質量[kg]、k:ボルツマン定数(1.38×10−23[J/K])、T:温度(K)を意味している。
【0050】
上述の(1)式のうち黒化層の被成膜表面に堆積するニッケルの原子数(Γ(Ni))は、単位面積に堆積したニッケルの質量と成膜時間から算出することができる。具体的には以下の(4)式により算出することができる。
【0051】
Γ(Ni)=W・Na/(M・A・t) [個/(ms)] ・・・(4)
W:Niの質量 Na:アボガドロ数 M:Niの原子量 A:成膜面積 t:成膜時間
黒化層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば15nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。黒化層は、上述のように黒色をしており、銅層による光の反射を抑制する機能を有するが、黒化層の厚さが薄い場合には、十分な黒色が得られず銅層による光の反射を十分に抑制できない場合がある。これに対して、黒化層の厚さを上記範囲とすることにより、銅層の反射をより確実に抑制できるため好ましい。
【0052】
黒化層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、必要以上に厚くしても成膜に要する時間や、配線を形成する際のエッチングに要する時間が長くなり、コストの上昇を招くことになる。このため、黒化層の厚さは60nm以下とすることが好ましく、50nm以下とすることがより好ましい。
【0053】
次に、本実施形態の積層体基板の構成例について説明する。
【0054】
上述のように、本実施形態の積層体基板は透明基材と、銅層と、黒化層と、を備えている。この際、銅層と、黒化層と、を透明基材上に配置する際の積層の順番は特に限定されるものではない。また、銅層と、黒化層と、はそれぞれ複数層形成することもできる。なお、銅層表面での光の反射の抑制のため、銅層の表面のうち光の反射を特に抑制したい面に黒化層が配置されていることが好ましい。特に黒化層が銅層の表面に形成された積層構造を有することがより好ましい、すなわち、銅層は黒化層に挟まれた構造を有していることがより好ましい。
【0055】
本実施形態の積層体基板の具体的な構成例について、図1図2を用いて以下に説明する。図1図2は、本実施形態の積層体基板の、透明基材、銅層、黒化層の積層方向と平行な面における断面図の例を示している。
【0056】
例えば、図1(a)に示した積層体基板10Aのように、透明基材11の一方の面11a側に銅層12と、黒化層13と、を一層ずつその順に積層することができる。また、図1(b)に示した積層体基板10Bのように、透明基材11の一方の面11a側と、もう一方の面(他方の面)11b側と、にそれぞれ銅層12A、12Bと、黒化層13A、13Bと、を一層ずつその順に積層することができる。なお、銅層12(12A、12B)、及び、黒化層13(13A、13B)を積層する順は、図1(a)、(b)の例に限定されず、透明基材11側から黒化層13(13A、13B)、銅層12(12A、12B)の順に積層することもできる。
【0057】
また、本実施形態の積層体基板は、例えば黒化層を透明基材11の1つの面側に複数層設けた構成とすることもできる。例えば図2(a)に示した積層体基板20Aのように、透明基材11の一方の面11a側に、第1の黒化層131と、銅層12と、第2の黒化層132と、をその順に積層することができる。
【0058】
この場合も透明基材11の両面に銅層、第1の黒化層、第2の黒化層を積層した構成とすることができる。具体的には図2(b)に示した積層体基板20Bのように、透明基材11の一方の面11a側と、もう一方の面(他方の面)11b側と、にそれぞれ第1の黒化層131A、131Bと、銅層12A、12Bと、第2の黒化層132A、132Bと、をその順に積層できる。
【0059】
なお、図1(b)、図2(b)において、透明基材の両面に銅層と、黒化層と、を積層した場合において、透明基材11を対称面として透明基材11の上下に積層した層が対称になるように配置した例を示したが、係る形態に限定されるものではない。例えば、図2(b)において、透明基材11の一方の面11a側の構成を図1(a)の構成と同様に、銅層12と、黒化層13と、をその順に積層した形態とし、透明基材11の上下に積層した層を非対称な構成としてもよい。
【0060】
ここまで、本実施形態の積層体基板について説明してきたが、本実施形態の積層体基板においては、透明基材上に銅層と、黒化層とを設けているため、銅層による光の反射を抑制することができる。
【0061】
本実施形態の積層体基板の光の反射の程度については特に限定されるものではないが、例えば本実施形態の積層体基板は、黒化層の波長400nm以上700nm以下の光の反射率(正反射率)の平均が40%以下であることが好ましい。特に、本実施形態の積層体基板の、黒化層の波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均は30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが特に好ましい。これは、本実施形態の積層体基板の、黒化層表面での波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均が40%以下の場合、例えばタッチパネル用の導電性基板として用いた場合でもディスプレイの視認性の低下を特に抑制できるためである。
【0062】
積層体基板の、黒化層の反射率は、黒化層に対して光を照射するようにして測定を行うことができる。すなわち、積層体基板に含まれる銅層及び黒化層のうち、黒化層側から測定を行うことができる。
【0063】
具体的には例えば図1(a)に示した積層体基板10Aのように、透明基材11の一方の面11aに銅層12、黒化層13の順に積層した場合、黒化層13に光を照射できるように、図中の表面Aに対して光を照射して測定できる。
【0064】
また、図1(a)の場合と銅層12と黒化層13との配置を換え、透明基材11の一方の面11aに黒化層13、銅層12の順に積層した場合、黒化層13に光を照射できるように、透明基材11の面11b側から黒化層に対して光を照射し、反射率を測定できる。
【0065】
なお、光の反射率の平均とは、同じ試料について、400nm以上700nm以下の範囲内で波長を変化させて反射率の測定を行った際の測定結果の平均値を意味している。測定の際、波長を変化させる幅は特に限定されないが、例えば、10nm毎に波長を変化させて上記波長範囲の光について測定を行うことが好ましく、1nm毎に波長を変化させて上記波長範囲の光について測定を行うことがより好ましい。
【0066】
本実施形態の積層体基板はここまで説明したように、透明基材上に銅層、及び黒化層を配置した構成を有することができる。そして、透明基材上に配置した銅層、及び黒化層を所望の配線パターンに応じてエッチングして金属細線、すなわち配線とすることで導電性基板とすることができる。
【0067】
このため、本実施形態の導電性基板は、透明基材と、透明基材の少なくとも一方の面側に形成された金属細線とを備えることができる。そして、金属細線は、酸素と、銅と、ニッケルとを含有する黒化配線層と、銅配線層とを備えた積層体とすることができる。
また、黒化配線層の膜厚は15nm以上とすることができる。そして、黒化配線層が含有する酸素原子と、ニッケル原子との物質量比であるO/Niが、以下の(1)式を満たすことが好ましい。
【0068】
0.1≦O/Ni≦0.8 ・・・(1)
本実施形態の導電性基板は、例えばタッチパネル用の導電性基板として好ましく用いることができる。この場合、導電性基板は例えばメッシュ状の配線パターンを備えた構成とすることができる。
【0069】
メッシュ状の配線パターンを備えた導電性基板は、ここまで説明した本実施形態の積層体基板の銅層及び黒化層をエッチングすることにより得ることができる。
【0070】
例えば、二層の金属細線によりメッシュ状の配線パターンとすることができる。具体的な構成例を図3に示す。図3はメッシュ状の配線パターンを備えた導電性基板30を銅配線層、黒化配線層の積層方向の上面側から見た図を示している。図3に示した導電性基板30は、透明基材11と、図中Y軸方向に平行な複数の銅配線層31Aと、X軸方向に平行な銅配線層31Bとを有している。なお、銅配線層31A、31Bは銅層をエッチングして形成されており、該銅配線層31A、31Bの上面および/または下面には図示しない黒化配線層が形成されている。黒化配線層は黒化層をエッチングして形成することができ、銅配線層31A、31Bと同じ形状(パターン)となるようにエッチングされている。
【0071】
透明基材11と銅配線層31A、31Bとの配置は特に限定されない。透明基材11と銅配線層との配置の構成例を図4(a)、(b)に示す。図4(a)、(b)は図3のA−A´線での断面図に当たる。
【0072】
まず、図4(a)に示したように、透明基材11の上下面にそれぞれ銅配線層31A、31Bが配置されていてもよい。なお、図4(a)に示した例の場合、銅配線層31Aの上面、及び銅配線層31Bの下面には、銅配線層31A、31Bと同じ形状にエッチングされた黒化配線層32A、32Bがそれぞれ配置されている。
【0073】
また、図4(b)に示したように、1組の透明基材11を用い、一方の透明基材11を挟んで上下面に銅配線層31A、31Bを配置し、かつ、一方の銅配線層31Bは透明基材11間に配置されてもよい。この場合も、銅配線層31A、31Bの上面には銅配線層と同じ形状にエッチングされた黒化配線層32A、32Bが配置されている。
【0074】
なお、黒化配線層と、銅配線層との配置は限定されるものではない。このため、図4(a)、(b)いずれの場合でも黒化配線層32A、32Bと、銅配線層31A、31Bとの配置は上下を逆にすることもできる。また、例えば黒化配線層を複数層設けることもできる。
【0075】
ただし、黒化配線層は銅配線層表面のうち光の反射を特に抑制したい面に配置されていることが好ましい。このため、図4(b)に示した導電性基板において、例えば、図中下面側から光の反射を抑制する必要がある場合には、黒化配線層32A、32Bの位置と、銅配線層31A、31Bの位置とを逆にすることが好ましい。また、黒化配線層32A、32Bに加えて、銅配線層31A、31Bと透明基材11との間に黒化配線層をさらに設けてもよい。
【0076】
図3及び図4(a)に示したメッシュ状の配線パターンを有する導電性基板は例えば、図1(b)のように透明基材11の両面に銅層12A、12Bと、黒化層13A、13Bと、を備えた積層体基板から形成することができる。
【0077】
図1(b)の積層体基板を用いて形成した場合を例に説明すると、まず、透明基材11の一方の面11a側の銅層12A及び黒化層13Aを、図1(b)中Y軸方向に平行な複数の線状のパターンが、X軸方向に沿って所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。なお、図1(b)中のX軸方向とは図1(b)中の各層の幅方向と平行な方向を意味している。また、図1(b)中のY軸方向とは、紙面と垂直な方向を意味している。
【0078】
そして、透明基材11のもう一方の面11b側の銅層12B及び黒化層13Bを図1(b)中X軸方向と平行な複数の線状のパターンが、Y軸方向に沿って所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。
【0079】
以上の操作により図3図4(a)に示したメッシュ状の配線パターンを有する導電性基板を形成することができる。なお、透明基材11の両面のエッチングは同時に行うこともできる。すなわち、銅層12A、12B、黒化層13A、13Bのエッチングは同時に行ってもよい。
【0080】
また、図4(a)において、銅配線層31A、31Bと、透明基材11との間に黒化配線層をさらに設ける場合には、図1(b)の積層体基板に替えて図2(b)の積層体基板を用いることができる。この場合、図2(b)の積層体基板の第1の黒化層131A、131Bを含めて、上述の場合と同様にエッチングを行うことで、導電性基板を作製できる。
【0081】
図3に示したメッシュ状の配線パターンを有する導電性基板は、図1(a)または図2(a)に示した導電性基板を2枚用いることにより形成することもできる。図1(a)の積層体基板を用いた場合を例に説明すると、図1(a)に示した積層体基板2枚についてそれぞれ、銅層12及び黒化層13を、X軸方向と平行な複数の線状のパターンが、Y軸方向に沿って所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。そして、上記エッチング処理により各導電性基板に形成した線状のパターンが互いに交差するように向きをあわせて2枚の導電性基板を貼り合せることによりメッシュ状の配線パターンを備えた導電性基板とすることができる。
【0082】
2枚の導電性基板を貼り合せる際に貼り合せる面は特に限定されるものではない。例えば透明基材11の銅層12等が積層されていない図1(a)における面11b同士を貼り合せ、図4(a)に示した導電性基板と同様の構成とすることができる。
【0083】
また、例えば一方のエッチングした積層体基板の銅層12等が積層された図1(a)における表面Aと、他方のエッチングした積層体基板の銅層12等が積層されていない図1(a)における面11bとを貼り合せることもできる。この場合、図4(b)に示した導電性基板と同様の構成となる。
【0084】
なお、黒化層は銅層表面のうち光の反射を特に抑制したい面に配置されていることが好ましい。
【0085】
このため、図4(b)に示した導電性基板において、図中下面側から光の反射を抑制する必要がある場合には、黒化配線層32A、32Bの位置と、銅配線層31A、31Bの位置とを逆に配置することが好ましい。この場合、導電性基板を作製する際、図1(a)に示した積層体基板10Aに替えて、図1(a)における銅層12と、黒化層13との配置を逆にした積層体基板を用いることで、係る導電性基板を作製できる。
【0086】
また、黒化配線層32A、32Bに加えて、銅配線層31A、31Bと透明基材11との間に黒化配線層をさらに設けてもよい。この場合、導電性基板を作製する際、図1(a)に示した積層体基板10Aに替えて、図2(a)に示した積層体基板20Aを用いることで、係る導電性基板を作製できる。
【0087】
なお、図3図4に示したメッシュ状の配線パターンを有する導電性基板における金属細線の幅や、金属細線間の距離は特に限定されるものではなく、例えば、金属細線に流す電流量等に応じて選択することができる。ディスプレイのタッチパネル用の導電性基板とする場合、視認性を考慮すると金属細線の幅は20μm以下が望ましい。
【0088】
ここまで説明したように、本実施形態の導電性基板は、既述の積層体基板の銅層、及び黒化層を所望の配線パターンに応じてエッチングすることで作製できる。このため、本実施形態の導電性基板の銅配線層、及び黒化配線層は、それぞれ既述の積層体基板の銅層、及び黒化層と同様の特性を有することができる。
【0089】
そこで、例えば、黒化配線層中の銅の、黒化配線層中の銅とニッケルとの合計に対する割合は質量比で20%以上80%以下であることが好ましく、30%以上50%以下であることがより好ましい。
【0090】
また、黒化配線層の波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均が40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが特に好ましい。これは、本実施形態の導電性基板の、黒化配線層の波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均が40%以下の場合、例えばタッチパネル用の導電性基板として用いた場合でもディスプレイの視認性の低下を特に抑制できるためである。
【0091】
反射率は導電性基板のうち透明基材を除いた場合に最表面に配置されている黒化配線層の、光が入射する側の表面における反射率を示している。このため、導電性基板の黒化配線層の反射率は、積層体基板の黒化層等をエッチングした後に残存した金属細線の黒化配線層に対して光を照射するようにして測定を行うことができる。
【0092】
反射率の具体的な測定方法については、積層体基板の黒化層の反射率を測定する場合と同様にして行うことができるため、ここでは説明を省略する。
【0093】
また、その他、例えば銅配線層や、黒化配線層の厚さ等も、既述の積層体基板の銅層、及び黒化層と同様の特性を有することができる。
【0094】
なお、ここまで図3図4(A)、(B)においては、直線形状の金属細線を組み合わせてメッシュ状の配線パターンを形成した例を示したが、係る形態に限定されるものではなく、配線パターンを構成する金属細線は任意の形状とすることができる。例えばディスプレイの画像との間でモアレ(干渉縞)が発生しないようメッシュ状の配線パターンを構成する金属細線の形状をそれぞれ、ぎざぎざに屈曲した線(ジグザグ直線)等の各種形状にすることもできる。
【0095】
このように2層の金属細線から構成されるメッシュ状の配線パターンを有する導電性基板は、例えば投影型静電容量方式のタッチパネル用の導電性基板として好ましく用いることができる。
(積層体基板の製造方法、導電性基板の製造方法)
次に本実施形態の積層体基板の製造方法、及び導電性基板の製造方法の構成例について説明する。
【0096】
なお、本実施形態の積層体基板の製造方法により、既述の積層体基板を、また本実施形態の導電性基板の製造方法により、既述の導電性基板を製造することができる。このため、以下に説明する点以外については、既述の積層体基板、及び導電性基板の場合と同様に構成することができるため、説明を一部省略する。
【0097】
本実施形態の積層体基板の製造方法は、黒化層を乾式めっき法、例えばスパッタリング法で成膜する黒化層形成工程を有することができる。そして、黒化層形成工程において、黒化層を成膜する際、黒化層の被成膜表面に入射する酸素分子数(Γ(O))と、黒化層に堆積する銅の原子数(Γ(Ni))とが、以下の(2)式を満たすことが好ましい。
【0098】
2≦Γ(O)/Γ(Ni)≦10 ・・・(2)
黒化層形成工程では、透明基材の少なくとも一方の面側に酸素と銅とニッケルとを含有する黒化層を形成できる。そして、黒化層形成工程では、例えば化学的に不定比のニッケル−銅酸化物を堆積する成膜手段により黒化層を成膜する工程とすることができる。黒化層形成工程における化学的に不定比のニッケル−銅合金酸化物を堆積する成膜手段は特に限定されるものではないが、乾式めっき法であることが好ましく、特にスパッタリング成膜手段(スパッタリング法)であることが好ましい。
【0099】
本実施形態の積層体基板の製造方法の黒化層形成工程において、黒化層を乾式めっき法、例えばスパッタリング法により成膜する場合、ニッケル−銅合金ターゲットを用い、チャンバー内に不活性ガス、及び酸素ガスを供給しながら成膜することができる。なお、不活性ガスとしては、例えばアルゴンガスを用いることができる。
【0100】
そして、不活性ガスと酸素ガスとをチャンバー内に供給しながら乾式めっき法、例えばスパッタリング法により黒化層を成膜する際、チャンバー内に供給する不活性ガスと、酸素ガスとの比は限定されるものではない。ただし、黒化層を成膜する際、被成膜表面に入射する酸素分子数(Γ(O))と、被成膜表面に堆積するニッケルの原子数(Γ(Ni))とが、上述の(2)式を満たすことが好ましい。
【0101】
これは、Γ(O)/Γ(Ni)が2以上の場合、黒化層を十分に黒化することができ、積層体基板の黒化層の反射率を特に低減できることから、導電性基板とした際のディスプレイの視認性を高めることができるためである。
【0102】
また、Γ(O)/Γ(Ni)が10以下の場合、黒化層に含まれるニッケルの酸化が過度に進むことを抑制することができるため、ニッケル酸化物が透明になって黒化層の透過率が上がることを抑制できる。このため、黒化層と銅層を積層した積層体基板において、銅層表面での光の反射を黒化層が抑制し、積層体基板の反射率を低減できる。さらには、黒化層のエッチング性を特に高めることができ、銅層と黒化層とをより確実に同時にエッチング処理することができる。
【0103】
このため、黒化層を成膜する際には、上述のように、Γ(O)/Γ(Ni)は2以上10以下が好ましく、4以上8以下がより好ましい。
【0104】
黒化層を乾式めっき法より成膜する場合、例えば図5に示すロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いて好適に成膜することができる。
以下にロール・ツー・ロールスパッタリング装置を用いた場合を例に黒化層形成工程を説明する。
【0105】
図5はロール・ツー・ロールスパッタリング装置50の一構成例を示している。ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50は、その構成部品のほとんどを収納した筐体51を備えている。図5において筐体51の形状は直方体形状として示しているが、筐体51の形状は特に限定されるものではなく、内部に収容する装置や、設置場所、耐圧性能等に応じて任意の形状とすることができる。例えば筐体51の形状は円筒形状とすることもできる。ただし、成膜開始時に成膜に関係ない残留ガスを除去するため、筐体51内部は1Pa以下まで減圧できることが好ましく、10−3Pa以下まで減圧できることがより好ましく、10−4Pa以下まで減圧できることがさらに好ましい。なお、筐体51内部全てが上記圧力まで減圧できる必要はなく、スパッタリングを行う、後述するキャンロール53が配置された図中下側の領域51a、及び領域51bのみが上記圧力まで減圧できるように構成することもできる。
【0106】
筐体51内には、黒化層を成膜する基材を供給する巻出ロール52、キャンロール53、スパッタリングカソード54a〜54d、前フィードロール55a、後フィードロール55b、テンションロール56a、56b、巻取ロール57を配置することができる。
【0107】
また、黒化層を成膜する基材の搬送経路上には、上記各ロール以外に任意にガイドロール58a〜58hや、ヒーター59等を設けることもできる。
【0108】
巻出ロール52、キャンロール53、前フィードロール55a、巻取ロール57にはサーボモータによる動力を備えることができる。巻出ロール52、巻取ロール57は、パウダークラッチ等によるトルク制御によって黒化層を成膜する基材の張力バランスが保たれるようになっている。
【0109】
キャンロール53の構成についても特に限定されないが、例えばその表面が硬質クロムめっきで仕上げられ、その内部には筐体51の外部から供給される冷媒や温媒が循環し、一定の温度に調整できるように構成されていることが好ましい。
【0110】
テンションロール56a、56bは例えば、表面が硬質クロムめっきで仕上げられ張力センサーが備えられていることが好ましい。また、前フィードロール55aや、後フィードロール55b、ガイドロール58a〜58hについても表面が硬質クロムめっきで仕上げられていることが好ましい。
【0111】
スパッタリングカソード54a〜54dは、マグネトロンカソード式でキャンロール53に対向して配置することが好ましい。スパッタリングカソード54a〜54dのサイズは特に限定されないが、スパッタリングカソード54a〜54dの黒化層を成膜する基材の巾方向の寸法は、対向する黒化層を成膜する基材の巾より広いことが好ましい。
【0112】
黒化層を成膜する基材は、ロール・ツー・ロール真空成膜装置であるロール・ツー・ロールスパッタリング装置50内を搬送されて、キャンロール53に対向するスパッタリングカソード54a〜54dで黒化層が成膜される。
【0113】
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いて黒化層を成膜する場合の手順について説明する。
【0114】
まず、ニッケル−銅合金ターゲットをスパッタリングカソード54a〜54dに装着し、黒化層を成膜する基材を巻出ロール52にセットした筐体51内を真空ポンプ60a、60b、場合によってはさらに真空ポンプ60cを用いて真空排気する。
【0115】
なお、巻出ロール52から、巻取ロール57まで基材を搬送する過程で、基材上に組成の異なる層、具体的には例えば黒化層と、銅薄膜層とを連続して成膜することもできる。このように、黒化層と、銅薄膜層とを連続して成膜する場合には、例えばスパッタリングカソード54a、54bにニッケル−銅合金ターゲットを、スパッタリングカソード54c、54dに銅ターゲットをセットしておくこともできる。
【0116】
そしてその後、スパッタリングガスである不活性ガス、例えばアルゴン等と、酸素ガスとを気体供給手段61aにより筐体51内に導入する。
【0117】
気体供給手段61aの構成は特に限定されないが、図示しない気体貯蔵タンクを有することができる。そして、気体貯蔵タンクと筐体51との間に、ガス種ごとにマスフローコントローラー(MFC)611a、611b、及びバルブ612a、612bを設け、各ガスの筐体51内への供給量を制御できるように構成できる。図5ではマスフローコントローラーと、バルブとを2組設けた例を示しているが、設置する数は特に限定されず、用いるガス種の数に応じて設置する数を選択することができる。
【0118】
気体供給手段61aにより不活性ガスと、酸素ガスとを筐体内に導入する際には、マスフローコントローラー611a、611b等により、上述のようにΓ(O)/Γ(Ni)が所定の範囲を充足するように、酸素分圧を調整することが好ましい。
【0119】
気体供給手段61aによりスパッタリングガスを筐体51内に供給した際、スパッタリングガスの流量と、真空ポンプ60bと筐体51との間に設けられた圧力調整バルブ62aの開度と、を調整して筐体内を例えば0.13Pa以上1.3Pa以下に保持し、成膜することが好ましい。
【0120】
この状態で、巻出ロール52から基材を例えば毎分1m以上20m以下の速さで搬送しながら、スパッタリングカソード54a〜54dに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給してスパッタリング放電を行う。これにより基材上に所望の黒化層を連続成膜することができる。
【0121】
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50には上述した以外にも必要に応じて各種部材を配置できる。例えば筐体51内の圧力を測定するための圧力計63a、63bや、ベントバルブ64a、64b等を設けることもできる。
【0122】
なお、上述の様に、巻出ロール52から、巻取ロール57まで基材を搬送する過程で、基材上に黒化層と、銅薄膜層とを連続して成膜することもできる。基材上に黒化層と銅薄膜層とを連続して成膜する場合、スパッタリングカソード54a、54b側の領域51aと、スパッタリングカソード54c、54d側の領域51bとで異なる雰囲気に制御できるように構成することが好ましい。具体的には例えば隔壁65を設け、2つの領域で異なる雰囲気に制御できるように構成することが好ましい。この場合、気体供給手段61aに加えて、気体供給手段61bを設けることができる。気体供給手段61bを設ける場合、気体供給手段61bについても気体供給手段61aの場合と同様に構成することができ、例えばマスフローコントローラー611c、及びバルブ612cを有することができる。図5では、マスフローコントローラー611cと、バルブ612cとを1組設けた例を示しているが、係る形態に限定されるものではなく、供給するガス種の数に応じて設置する数を選択することができる。
【0123】
また、領域51b側に真空ポンプ60cと、圧力調整バルブ62bとを設けておくこともでき、気体供給手段61bからのスパッタリングガスの流量と、圧力調整バルブ62bの開度とにより、領域51b内の圧力を制御できる。
【0124】
筐体内に異なる雰囲気の領域を形成する必要がない場合には、上述した隔壁65、気体供給手段61b、真空ポンプ60c、及び圧力調整バルブ62bを設ける必要はなく、領域51aと、領域51bとを同一の雰囲気となるように制御できる。
【0125】
また、本実施形態の積層体基板の製造方法は、黒化層形成工程以外に、以下の工程を有することができる。
【0126】
透明基材を準備する透明基材準備工程。
透明基材の少なくとも一方の面側に銅を堆積する成膜手段により銅層を形成する銅層形成工程。
【0127】
上述のように、本実施形態の積層体基板においては、銅層と、黒化層と、を透明基材上に配置する際の積層の順番は特に限定されるものではない。また、銅層と、黒化層と、はそれぞれ複数層形成することもできる。このため、上記銅層形成工程と、黒化層形成工程と、を実施する順番や、実施する回数については特に限定されるものではなく、形成する積層体基板の構造に合わせて任意の回数、タイミングで実施することができる。
【0128】
透明基材を準備する透明基材準備工程は、例えば可視光を透過する絶縁体フィルムや、ガラス基板等により構成された透明基材を準備する工程であり、具体的な操作は特に限定されるものではない。例えば後段の工程での各工程に供するため必要に応じて任意のサイズに切断等を行うことができる。
【0129】
次に銅層形成工程について説明する。
【0130】
銅層は既述のように、乾式めっき法を用いて銅層を形成することが好ましい。また銅層をより厚くする場合には、乾式めっき後に湿式めっき法を用いることが好ましい。
【0131】
このため、銅層形成工程は、例えば乾式めっき法により銅薄膜層を形成する工程を有することができる。また、銅層形成工程は、乾式めっき法により銅薄膜層を形成する工程と、該銅薄膜層を給電層として、湿式めっき法により銅めっき層を形成する工程と、を有していてもよい。
【0132】
上述のように乾式めっき法のみ、又は乾式めっき法と湿式めっき法とを組み合わせて銅層を形成することにより透明基材または黒化層上に接着剤を介さずに直接銅層を形成できるため好ましい。
【0133】
乾式めっき法としては特に限定されるものではないが、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等を好ましく用いることができる。特に、銅薄膜層の形成に用いる乾式めっき法としては、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。すなわち、銅層形成工程における銅を堆積させる成膜手段はスパッタリング成膜手段(スパッタリング法)であることが好ましい。
【0134】
銅薄膜層は、例えば上述のロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いて好適に成膜することができる。ロール・ツー・ロールスパッタリング装置の構成については既述のため、ここでは説明を省略する。
【0135】
湿式めっき法により銅めっき層を形成する工程における条件、すなわち、電気めっき処理の条件は、特に限定されるものではなく、常法による諸条件を採用すればよい。例えば、銅めっき液を入れためっき槽に銅薄膜層を形成した基材を供給し、電流密度や、基材の搬送速度を制御することによって、銅めっき層を形成できる。
【0136】
そして、ここで説明した積層体基板の製造方法により得られる積層体基板は、既述の積層体基板と同様に、銅層は厚さが80nm以上であることが好ましく100nm以上であることがより好ましく、150nm以上とすることがさらに好ましい。また、銅層の厚さの上限値は特に限定されないが、5000nm以下であることが好ましく、3000nm以下であることがより好ましく、1200nm以下であることがさらに好ましい。
【0137】
また、ここで説明した積層体基板の製造方法により得られる積層体基板においても、黒化層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば15nm以上であることが好ましく、20nm以上とすることがより好ましい。黒化層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、60nm以下とすることが好ましく、50nm以下とすることがより好ましい。
【0138】
さらに、ここで説明した積層体基板の製造方法により得られる積層体基板は、波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均は40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。特に20%以下であることがより好ましい。
【0139】
そして、ここで説明した積層体基板の製造方法により得られる積層体基板から、金属細線を備えた導電性基板を作製することができる。本実施形態の積層体基板の製造方法により得られた積層体基板から、銅層、及び黒化層をエッチングして導電性基板とする場合、上述の工程に加えて、銅層と、黒化層とを配線加工する配線加工工程を有することができる。すなわち、本実施形態の導電性基板の製造方法は、本実施形態の積層体基板の製造方法で得られた積層体基板を配線加工する配線加工工程を有することができる。
【0140】
係る配線加工工程を行う場合、例えばまず、エッチングにより除去する部分に対応した開口部を有するレジストを、積層体基板の最表面に形成することができる。
【0141】
図1(a)に示した積層体基板から導電性基板を作製する場合、積層体基板に配置した黒化層13の露出した表面A上にレジストを形成することができる。なお、エッチングにより除去する部分に対応した開口部を有するレジストの形成方法は特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィー法により形成することができる。
【0142】
次いで、レジスト上面からエッチング液を供給することにより、銅層12、黒化層13のエッチングを実施することができる。
【0143】
なお、図1(b)のように透明基材11の両面に銅層、黒化層を配置した場合には、積層体基板の表面A及び表面B上にそれぞれ所定の形状の開口部を有するレジストを形成し、透明基材11の両面に形成した銅層、黒化層を同時にエッチングしてもよい。
【0144】
また、透明基材11の両面に形成された銅層及び黒化層について、一方の側ずつエッチング処理を行うこともできる。すなわち、例えば、銅層12A及び黒化層13Aのエッチングを行った後に、銅層12B及び黒化層13Bのエッチングを行うこともできる。
【0145】
本実施形態の積層体基板に含まれる黒化層は銅層と同様のエッチング液への反応性を示すことから、配線加工工程において用いるエッチング液は特に限定されるものではなく、一般的に銅層のエッチングに用いられるエッチング液を好ましく用いることができる。エッチング液としては例えば、塩化第二鉄と、塩酸と、の混合水溶液をより好ましく用いることができる。エッチング液中の塩化第二鉄と、塩酸との含有量は特に限定されるものではないが例えば、塩化第二鉄を5重量%以上50重量%以下の割合で含むことが好ましく、10重量%以上30重量%以下の割合で含むことがより好ましい。また、エッチング液は例えば、塩酸を1重量%以上50重量%以下の割合で含むことが好ましく、1重量%以上20重量%以下の割合で含むことがより好ましい。なお、残部については水とすることができる。
【0146】
エッチング液は室温で用いることもできるが、反応性を高めるため加温して用いることもでき、例えば40℃以上50℃以下に加熱して用いることもできる。
【0147】
上述した配線加工工程により得られる金属細線は、例えばメッシュ状の配線パターンとすることができ、具体的な形態については、既述のとおりであるため、ここでは説明を省略する。
【0148】
なお、図1(a)または図2(a)に示した透明基材11の一方の面側に銅層、及び黒化層を有する積層体基板について配線加工工程でエッチングを行い、得られた2枚の導電性基板を貼り合せてメッシュ状の配線パターンを備えた導電性基板とすることもできる。この場合には、導電性基板を貼り合せる工程をさらに有することができる。
【0149】
導電性基板を貼り合せる工程において、2枚の導電性基板を貼り合せる方法は特に限定されるものではなく、例えば接着剤等を用いて接着することができる。
【0150】
以上に本実施形態の積層体基板の製造方法、及び導電性基板の製造方法について説明した。
【0151】
係る積層体基板の製造方法により得られる積層体基板によれば、銅層と黒化層とがエッチング液に対してほぼ同じ反応性を示すことから、銅層と黒化層とのエッチング処理を同時に行うことができ、容易に所望の金属細線を形成することができる。
【0152】
また、酸素と、銅と、ニッケルとを含有し、膜厚、及び黒化層中の酸素原子と、ニッケル原子との物質量比が所定の範囲内である黒化層は黒色であるため、エッチングにより黒化配線層とした場合、銅配線層による光の反射を抑制することができる。このため、得られた導電性基板を例えばタッチパネル用の導電性基板とした場合に、視認性の低下を抑制することができる。
【実施例】
【0153】
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって、なんら限定されるものではない。
(評価方法)
(1)反射率
以下の各実施例、比較例において作製した積層体基板について反射率の測定を行った。
【0154】
測定は、紫外可視分光光度計(株式会社 島津製作所製 型式:UV−2550)に反射率測定ユニットを設置して行った。
【0155】
各実施例、比較例で図2(a)の構造を有する積層体基板を作製したが、反射率の測定は図2(a)における第2の黒化層132の外部に露出した表面Aに対して入射角5°、受光角5°として、波長400nm以上700nm以下の範囲の光を照射して実施した。なお、積層体基板に照射した光は、400nm以上700nm以下の範囲内で、1nm毎に波長を変化させて測定を行い、測定結果の平均を該積層体基板の反射率の平均とした。
(2)黒化層の酸素、ニッケル、銅の原子の比率
以下の各実施例、比較例に作製した積層体基板について、第2の黒化層の酸素、ニッケル、銅の原子の比率をXPS(アルバック・ファイ社製 型式:Versa ProbeII)により測定した。
(3)エッチング性
以下の各実施例、比較例において作製した積層体基板について、塩化第二鉄10重量%と、塩酸10重量%と、残部が水と、からなるエッチング液に1分間浸漬し、エッチング性を評価した。透明基材上に残渣が残らなかった積層体基板については、エッチング性が良好であると判定した。
(試料の作製条件)
以下に各実施例、比較例における積層体基板の製造条件を示す。
[実施例1]
図2(a)に示した構造を有する積層体基板20Aを作製した。
【0156】
まず、幅500mm、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)製の透明基材を図5に示したロール・ツー・ロールスパッタリング装置50にセットした。また、スパッタリングカソード54a及び54bに黒化層成膜用のNi−40質量%Cuターゲットを、スパッタリングカソード54c及び54dに銅層成膜用の銅ターゲットを、それぞれ取り付けた。
【0157】
次にロール・ツー・ロールスパッタリング装置50のヒーター59を100℃に加熱し、透明基材を加熱し、基材中に含まれる水分を除去した。
【0158】
続いて筐体51内を1×10−4Paまで排気した後、筐体51内の隔壁65で仕切られた、スパッタリングカソード54aおよび54b側の領域51aに、気体供給手段61aによりアルゴンガスを360sccm、酸素ガスを40sccmで導入した。また、気体供給手段61aと、真空ポンプ60bと筐体51との間に設けられた圧力調整バルブ62aの開度とを調整して領域51a内の圧力が0.4Paになるように調整した。この際、領域51a内の酸素分圧は0.04Paであった。なお、黒化層成膜時の領域51a内の酸素分圧を、表1中では黒化層成膜時のO分圧として示している。
【0159】
同様に、筐体51内のスパッタリングカソード54cおよび54d側の領域51bに、気体供給手段61bによりアルゴンガスを400sccmで導入した。また、気体供給手段61bと、真空ポンプ60cと筐体51との間に設けられた圧力調整バルブ62bの開度とを調整して、領域51b内の圧力が0.4Paになるように調整した。
【0160】
そして、透明基材を巻出ロール52から毎分2mの速さで搬送しながら、スパッタリングカソード54a〜54dに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給し、スパッタリング放電を行い、基材上に黒化層、及び銅層を連続成膜した。係る操作により透明基材上に厚さ20nmの第1の黒化層131と、厚さ100nmの銅層とを形成した。
【0161】
続いて、ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50の搬送を逆転し、巻取ロール57から巻出ロール52へと、透明基材上に第1の黒化層、及び銅層が積層された基材を搬送した。これにより、上述の場合と同様の条件で、厚さ100nmの銅層と、厚さ20nmの第2の黒化層132とを形成した。
【0162】
銅層は上記2回の成膜により合計で200nmの厚さの層となっている。
【0163】
なお、第1の黒化層131、及び第2の黒化層132を成膜したときのΓ(O)/Γ(Ni)は5.8であった。
【0164】
作製した積層体基板の第2の黒化層の反射率を、第2の黒化層132の露出している表面A、すなわち第2の黒化層132の銅層12と対向していない面に対して光を照射して、波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均を測定した。その結果、作製した積層体基板の第2の黒化層の反射率の平均は25%であった。
【0165】
また、第2の黒化層の酸素、ニッケル、銅の原子の比率について、XPSにより評価を行い、第2の黒化層中のO/Ni比を算出したところ、第2の黒化層のO/Ni比は、0.34であった。なお、上述の様に、第1の黒化層と、第2の黒化層とは、同じ条件で成膜しているため、両黒化層は同じ組成となっている。
[実施例2〜実施例7]
実施例2〜実施例4については、第1、第2の黒化層を成膜する際のΓ(O)/Γ(Ni)、及び黒化層成膜用ターゲット中のニッケルと銅との含有率を、表1に示した比、含有率とした点以外は実施例1と同様にして積層体基板を作製し、評価に供した。
【0166】
実施例5〜実施例7については、第1、第2の黒化層を成膜する際のΓ(O)/Γ(Ni)、黒化層成膜用ターゲット中のニッケルと銅との含有率を、表1に示した比、含有率とし、第1、第2の黒化層の膜厚を30nmとした点以外は実施例1と同様にして積層体基板を作製し、評価に供した。
【0167】
なお、第1の黒化層、第2の黒化層を成膜する際のΓ(O)/Γ(Ni)を表1に示した所定の比とするために、ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50の気体供給手段61aから黒化層を成膜する領域51aに供給する酸素供給量も変更している。このため、黒化層成膜時のO分圧も変化している。
【0168】
評価結果を表1に示す。
[比較例1〜比較例4]
比較例1〜比較例3については、第1、第2の黒化層を成膜する際のΓ(O)/Γ(Ni)を変更した点以外は実施例1と同様にして積層体基板を作製し、評価に供した。
【0169】
比較例4については、第1、第2の黒化層の膜厚を10nmとした点以外は実施例1と同様にして積層体基板を作製し、評価に供した。
【0170】
なお、第1の黒化層、第2の黒化層を成膜する際のΓ(O)/Γ(Ni)を表1に示した所定の比とするために、ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50の気体供給手段61aから黒化層を成膜する領域51aに供給する酸素供給量も変更している。このため、黒化層成膜時のO分圧も変化している。
【0171】
特に、比較例1については、第1の黒化層、第2の黒化層を成膜する際、領域51aに酸素を供給せず、アルゴンのみを供給した。
【0172】
評価結果を表1に示す。
【0173】
【表1】
表1に示した結果によると、黒化層の膜厚が15nm以上であり、黒化層が含有する酸素原子と、ニッケル原子との物質量比であるO/Ni比が0.1以上0.8以下の実施例1〜実施例7については、エッチング性の評価結果が良好であった。さらに、黒化層の反射率が40%以下であり、銅層表面での光の反射を抑制する黒化層として機能できていることを確認できた。従って、同時にエッチング処理を行うことができる銅層と、黒化層と、を備えた積層体基板が得られていることを確認できた。
【0174】
これに対して、黒化層が含有する酸素原子と、ニッケル原子との物質量比であるO/Ni比が0.1未満の比較例1、2については、黒化層の反射率が40%を超え、銅層表面での光の反射を抑制する黒化層として十分な機能を有しないことが確認できた。
【0175】
また、黒化層が含有する酸素原子と、ニッケル原子との物質量比であるO/Ni比が0.8を超えた比較例3については、エッチング性の評価を行ったところ、残渣が確認された。すなわち、同時にエッチング処理を行うことができる銅層と、黒化層と、を備えた積層体基板とすることができていないことを確認できた。
【0176】
比較例4については、黒化層の膜厚が15nm未満のため、黒化層の反射率が42%と高く、銅層表面での光の反射を抑制する黒化層として十分な機能を有しないことが確認できた。
【符号の説明】
【0177】
10A、10B、20A、20B 積層体基板
11 透明基材
12、12A、12B 銅層
13、13A、13B、131、132、131A、131B、132A、132B
黒化層
30 導電性基板
31A、31B 銅配線層
32A、32B 黒化配線層
図1
図2
図3
図4
図5