(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(C)オルガノポリシロキサンが、ジメチルポリシロキサン、フェニル変性ポリシロキサン、ヒドロキシ変性ポリシロキサンのいずれか、もしくはそれらの混合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン乳化組成物。
ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、テトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、アクリル樹脂から選択される樹脂と、請求項1〜5のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン乳化組成物とを配合する樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂やアクリル樹脂等の樹脂組成物は、造膜性を良好にするために有機溶剤を用いた溶剤型のものと、環境汚染等を懸念し有機溶剤を含まない水性型のものに分けられる。溶剤型の樹脂組成物は、乾燥工程で有機溶剤が揮発し、作業者の健康に悪影響を与えることが懸念されるため、多くの場合N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)等の沸点の高い有機溶剤を使用している。
溶剤型及び水性型の樹脂組成物により内添処理もしくは表面処理した人工皮革や合成皮革は、自動車のシートや家具、衣料品等の用途に使用されており、光沢、すべり性、レベリング性が要求されている。すべり性や耐摩耗性の要求を満たすために高重合度のポリジメチルシロキサンが配合されるが、溶剤型や水性型のいずれの樹脂組成物にもポリジメチルシロキサンを配合できるようにするためには、ポリジメチルシロキサンがDMFや水のいずれにも分散できるように乳化等をする必要がある。しかし、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤で乳化したポリジメチルシロキサンの乳化組成物をDMF等の溶剤型の樹脂組成物に配合すると、均一には分散せず、乳化の状態を維持できなくなり、ポリジメチルシロキサンが析出する。従って、DMF等の溶剤にも水にも分散可能な高重合度のポリジメチルシロキサン乳化組成物の開発が求められていた。
【0003】
これまでにも溶剤に対して安定な乳化組成物の開発が行われてきた。以下にアルコール等の極性溶剤を含む乳化組成物に関連する特許を示す。
【0004】
特許文献1:特許第3023250号公報には、環状シリコーンと界面活性剤と高重合度の側鎖ポリオキシアルキレン変性シリコーンとエタノールと酸化チタンを含む油中水型乳化化粧料が提案されている。短鎖型のポリオキシアルキレン基をシリコーンの側鎖に変性したポリオキシアルキレン変性シリコーンを使用しており、本発明の乳化組成物に含まれるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物とは構造が異なる。また、環状シリコーンの乳化組成物についての記載であり、高重合度のオルガノポリシロキサンの乳化を目的としたものではない。
【0005】
特許文献2:特許第3417567号公報には、側鎖ポリオキシアルキレン変性シリコーンによる油と低級アルコールのエマルジョンが提案されている。側鎖ポリオキシアルキレン変性シリコーンを乳化剤とすることで、高濃度のアルコールを含んでもエマルジョンが安定である。これは短鎖型のポリオキシアルキレン基をシリコーンの側鎖に変性したポリオキシアルキレン変性シリコーンを使用しており、本発明の乳化組成物に含まれるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物とは構造が異なる。また、ベースオイルが流動パラフィンや高級アルコール、シリコーン油等である乳化組成物が例示されており、高重合度のオルガノポリシロキサンの乳化を目的としたものではない。
【0006】
特許文献3:特許第3633820号公報には、化粧料を目的とした両末端変性ポリオキシアルキレン変性シリコーンによるポリシロキサンと撥水処理粉体とエタノールを含むエマルジョンが提案されている。本発明の乳化組成物には処理粉体を含まないため、配合成分が異なる。また、ベースオイルは環状シロキサンや6csの低粘度ポリシロキサンの乳化組成物が例示されており、高重合度のオルガノポリシロキサンの乳化を目的としたものではない。
【0007】
特許文献4:特許第5646355号公報には、化粧料を目的としたポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン及び低級アルコールを含むエマルションが提案されている。ポリジメチルシロキサンの粘度が20〜10,000mm
2/sであり、本発明のオルガノポリシロキサンの粘度とは異なる。
【0008】
また、人工皮革や合成
皮革用のウレタン樹脂組成物にポリジメチルシロキサンを配合した樹脂組成物に関する特許を示す。
【0009】
特許文献5:特開2014−80713号公報には、ウレタン樹脂に固形のジメチルシリコーンを配合して、合成
皮革の表面処理剤として使用することが提案されている。乳化していないジメチルシリコーンを使用しており、水性型の樹脂組成物には配合できないと考えられる。従って、溶剤型及び水性型の樹脂組成物に分散するものではなく、本発明の乳化組成物とは異なる。
【0010】
特許文献6:特開2007−314919号公報には、ウレタン樹脂にポリイソシアネート系架橋剤、シリコーン系化合物、及びフィラーを含有する水性樹脂組成物が提案されている。シリコーン化合物とはポリエーテル変性シリコーンであり、本発明である高重合度のオルガノポリシロキサンを乳化した乳化組成物とは異なる。
【0011】
さらに、ポリジメチルシロキサン及びポリアルキレン変性オルガノポリシロキサンを配合した塗料に関する特許を示す。
【0012】
特許文献7:特許第5186079号公報には、片末端ポリエーテル変性シリコーンとノニオン界面活性剤の混合物であり、塗工膜表面に持続的に微親水性を付与することができ、水中生物に対する防汚性能を長期間にわたって発揮することを目的とした塗料添加剤が提案されている。本発明は自動車やバッグに使用する合成
皮革や人工
皮革等にすべり性や耐摩耗性を与えることを目的に開発したものであり、本発明とは組成及び用途が異なる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳しく説明する。
[オルガノポリシロキサン乳化組成物]
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物は、
(A)後述する一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物:1〜50質量部、
(B)界面活性剤:0〜50質量部、
(C)25℃における粘度が15,000mPa・s以上であるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(D)水:0〜10,000質量部
を含有することを特徴とする。
【0019】
[(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物]
(A)成分であるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物は、下記一般式(1)で表されるものである。
【化4】
[式中、Lは下記一般式(2)
【化5】
(式中、EOはオキシエチレン基を表し、AOは炭素数3〜10の直鎖又は分岐鎖のオキシアルキレン基を表す。R
1は炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、水素原子、カルボキシ基、炭素数2〜10のアシル基、又はフェニル基である。rは0〜10の整数、sは1〜100の整数、tは0〜150の整数で、s+tは15以上である。)
で表されるポリオキシアルキレン基であり、Rは同一もしくは異なってもよく、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。aは2〜4の整数、bは0〜2の整数、cは50〜1,000の整数、dは0又は1、eは0又は1である。]
【0020】
(A)成分のポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を、後述する(C)オルガノポリシロキサンの乳化助剤もしくは乳化剤とすることで、容易に高重合度のオルガノポリシロキサンの乳化ができ、乳化物の粒径を細かくすることができる。特に(C)オルガノポリシロキサンにおいて、2,000万mPa・s以上であるものは、(B)界面活性剤のみでは乳化しにくく、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を含むことで容易に乳化することができる。本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物は、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を含むことで、耐溶剤性や耐塩性の効果を発現する。
【0021】
上記式(1)において、Rは同一もしくは異なってもよく、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基などが挙げられ、炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられ、炭素数7〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられ、炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。Rとして、好ましくは炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基であり、汎用性の観点からより好ましくはメチル基もしくはフェニル基である。
【0022】
aは2〜4の整数であり、bは0〜2の整数であり、cは50〜1,000の整数、好ましくは100〜800の整数、より好ましくは200〜600の整数であり、dは0又は1であり、eは0又は1である。
【0023】
Lは上記式(2)で表されるポリオキシアルキレン基である。
上記式(2)において、R
1は炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、水素原子、カルボキシ基、炭素数2〜10のアシル基、又はフェニル基であり、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基が挙げられ、炭素数2〜10のアシル基としては、例えば、アセチル基、オクタノイル基等が挙げられる。R
1として、好ましくは炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖の非置換又は置換のアルキル基、又は水素原子であり、合成の容易性からより好ましくは水素原子である。
【0024】
EOはオキシエチレン基であり、AOは炭素数3〜10の直鎖又は分岐鎖のオキシアルキレン基である。AOとしては、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基等が例示できる。
【0025】
r、s、tはr=0〜10の整数、s=1〜100の整数、t=0〜150の整数で、s+t≧15である。好ましくはs=1〜80の整数、t=0〜100の整数であり、より好ましくはs=3〜50の整数、t=3〜50の整数である。sが100もしくはtが150より大きいと(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の粘度が高くなりすぎて扱いにくくなる。また、一分子中の平均構造式におけるs+tの合計は15以上であり、25以上が好ましい。15未満だと(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を配合したオルガノポリシロキサン乳化組成物の耐溶剤性が低下し、アルコールやケトン等の極性溶媒にオルガノポリシロキサン乳化組成物を分散させた場合、オルガノポリシロキサン乳化組成物が破壊しシリコーン成分が析出する。
EO、AOはブロックでもランダムでもよい。rは上記の値を満たせばよいが、汎用性の観点からr=1が最も好ましい。
【0026】
式(2)のポリオキシアルキレン基としては、下記一般式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化6】
(式中、EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、BOはブチレンオキサイドを表す。)
【0027】
(A)成分としては、上記式(1)で表されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の中でも、下記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン基を両末端に有する直鎖状のポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物であることが好ましい。
【化7】
(式中、L、Rは上記と同じである。nは50〜1,000の整数である。)
【0028】
上記式(3)中、nは50〜1,000の整数であり、好ましくは100〜800の整数であり、より好ましくは200〜600の整数である。nが50より小さいと(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を含むオルガノポリシロキサン乳化組成物の耐溶剤性が低下し、また本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物を含む樹脂組成物の皮膜の光沢が低下する。1,000より大きいと(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の粘度が高くなり、取り扱いにくくなり、また、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の乳化力が低下し、本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物中の乳化物の平均粒径が細かくならない。
なお、2種類以上の(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を混合した場合でも、平均構造式が上記に規定した範囲を満たせばよい。
【0029】
(A)成分のポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物としては、下記式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
(式中、Phはフェニル基である。EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイドを表す。EO、POはランダムでもブロックでもよい。)
【0030】
(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の分子量は、好ましくは8,500〜100,000であり、より好ましくは10,000〜90,000であり、さらに好ましくは15,000〜90,000である。分子量が8,500未満の場合、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を含むオルガノポリシロキサン乳化組成物の耐溶剤性が低下するおそれがあり、100,000より大きいと粘度が高く取り扱いが困難となる場合がある。ここで、分子量はGPC(TOSOH製 HLC8220、テトラヒドロフラン(THF)溶媒)のポリスチレン換算による重量平均分子量の値である(以下、同じ)。
【0031】
(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の粘度は、好ましくは5,000mPa・s以上であり、より好ましくは9,000mPa・s以上であり、さらに好ましくは15,000mPa・s以上である。粘度が5,000mPa・s未満だと(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を含むオルガノポリシロキサン乳化組成物の耐溶剤性が低下し、また本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物を含む樹脂組成物の皮膜の光沢が低下するおそれがある。なお、粘度はBM型もしくはBH型回転粘度計により測定した25℃における値である(以下、同じ)。
【0032】
また、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の分子内には、式(1)で示されるように、[R
2SiO
2/2]単位だけでなく、[RSiO
3/2]単位や[SiO
4/2]単位を含むこともでき、[RSiO
3/2]単位や[SiO
4/2]単位を(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の分子内に含むことで、本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物を含む樹脂組成物の皮膜の耐摩耗性が向上する可能性がある。
【0033】
(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の製造方法は、公知の方法で行えばよい。
例えば、下記一般式(4)で表される末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物に、下記一般式(5)で表される不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物をヒドロシリル化反応触媒存在下、溶媒中もしくは非溶媒中、ヒドロシリル化反応によりポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を合成する。
【0034】
<末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物>
(式中、R、a、b、c、d、eは上記と同じである。)
【0035】
<不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物>
【化15】
(式中、EO、AO、R
1、r、s、tは上記と同じである。)
【0036】
末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物において、2つ以上の末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物を混合した場合でも平均構造式が上記式(4)に規定した範囲を満たせばよい。
なお、式(4)の末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物の分子内には、[R
2SiO
2/2]単位だけでなく、[RSiO
3/2]単位や[SiO
4/2]単位を含むことも可能である。[RSiO
3/2]単位や[SiO
4/2]単位を(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の分子内に含むことで、本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物を含む樹脂組成物の皮膜の耐摩耗性が向上する可能性がある。
【0037】
上記式(4)で表される末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物の中でも、下記一般式(6)で表される両末端にケイ素原子結合水素原子を含有する直鎖状のオルガノポリシロキサン化合物であることが好ましい。
【化16】
(式中、R、nは上記と同じである。)
【0038】
式(4)の末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物としては、下記式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化17】
(式中、Phはフェニル基であり、Rfはトリフルオロプロピル基である。p、qはそれぞれ0以上の整数であり、p+qは50〜1,000である。)
【0039】
また、不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物において、一般式(5)を満たす2種類以上の不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物を混合して使用することも可能である。2種類以上の不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物を混合する際は、混合したオイルの平均構造式が上述した一般式(5)の範囲を満たしていればよい。
【0040】
式(5)の不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物としては、下記式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化18】
(式中、EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、BOはブチレンオキサイドを表す。EO、PO、BOはランダムでもブロックでもよい。)
【0041】
式(5)の不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物の不飽和炭化水素基のモル数は、式(4)の末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物のケイ素原子結合水素原子のモル数の0.7当量以上2.0当量未満であることが好ましく、より好ましくは1.0当量以上2.0当量未満である。0.7当量未満であると(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の親水性が低下し、乳化剤もしくは乳化助剤として機能しなくなる可能性がある。また、2.0当量以上であると(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を製造した際に未反応の式(5)の不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物が多く存在し、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の乳化性等に影響を与える可能性がある。式(4)中のケイ素原子結合水素原子のモル数が、式(5)中の不飽和炭化水素基のモル数より多く、ヒドロシリル化反応後に水素原子が残存する場合は、ヘキセン、ヘプテン等のオレフィンを添加し、さらにヒドロシリル化反応させることにより、残存ケイ素原子結合水素原子を少なくすることができる。
【0042】
ヒドロシリル化反応に用いるヒドロシリル化反応触媒は、ヒドロシリル化反応を促進するための触媒であり、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、好ましくは白金系触媒である。この白金系触媒としては、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のケトン錯体、白金のビニルシロキサン錯体、四塩化白金、白金微粉末、アルミナ又はシリカの担体に固体状白金を担持させたもの、白金黒、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体が例示されるが、安定性や汎用性から、塩化白金酸もしくは白金のビニルシロキサン錯体が好ましい。
触媒の含有量は、有効量であれば特に限定されないが、末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物と不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物との合計質量に対して触媒金属が質量で0.1〜1,000ppmの範囲以内となるような量であることが好ましく、特に0.5〜100ppmの範囲以内となる量であることが好ましい。
【0043】
ヒドロシリル化反応に用いる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、オクタン等の炭化水素系溶剤、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶剤、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール等のアルコール系溶剤、塩素化炭化水素系溶剤等の有機溶剤を挙げることができる。
溶媒の含有量は、末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物と不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物との合計を100質量部としたとき、0〜1,000質量部である。用いる場合は50質量部以上であることが好ましい。溶媒の含有量が少ないとヒドロシリル化反応の進行が遅くなる場合があり、一方で溶媒の含有量が多いと溶媒の廃棄物が増え環境汚染の原因となる問題がある。
【0044】
なお、アルコール系溶剤を使用する場合には、脱水素反応を防止ないし抑制するために、酢酸カリウム等のpH調整剤(特公昭62−34039号公報)を用いるのが好ましい。
【0045】
ヒドロシリル化反応の反応温度は、50〜150℃の範囲であることが望ましい。反応温度が50℃より低いと反応速度が低下するおそれがあり、反応温度が150℃より高い場合は不飽和炭化水素が内部転移し、ヒドロシリル化反応が進行しなくなるおそれがある。反応時間としては、2〜15時間が好ましい。
【0046】
(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の製造におけるヒドロシリル化反応について詳述する。窒素雰囲気下、末端ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン化合物と、不飽和炭化水素基含有ポリオキシアルキレン化合物と、イソプロピルアルコール溶媒を加熱し、内部温度を75℃とする。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液を加え、8時間撹拌することで、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を合成する。
さらに、加熱及び減圧をすることにより、イソプロピルアルコール溶媒を留去することができる。その際、120℃より温度が高いとアルキルエーテル部位が酸化するおそれがあるため、120℃未満で行うことが望ましい。
さらに、上記の方法では、ヒドロシリル化反応後に酸性物質によるアリルエーテル基の除去あるいは水素添加反応によるアルキル化によって無臭化を行ってもよい。また、得られた(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物に酸化防止剤としてトコフェロールやBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を添加してもよい。
【0047】
(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物は、構造によってペースト状、ゲル状、固体状となり流動性を有さない場合がある。通常、流動性を有さない(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を製造する際は、効率的にヒドロシリル化反応が進行するため、有機溶剤中で製造したほうがよい。
【0048】
また、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物が、流動性を有しないペースト状、ゲル状もしくは固形状だと、乳化する際に効果的に分散されず、(C)オルガノポリシロキサンの乳化ができなくなる場合がある。その際は、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の有機溶剤溶液、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の(B−1)ノニオン界面活性剤溶液、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物水溶液もしくは(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の(B−1)ノニオン界面活性剤溶液を水に溶解したものとして使用する。
【0049】
(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の有機溶剤溶液は、(A)成分を溶解する有機溶剤を用いればよく、(A)成分を製造した際の有機溶剤をそのまま用いることができる。また、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の(B−1)ノニオン界面活性剤溶液(溶解品)は、前記(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の有機溶剤溶液(溶解品)に、後述する(B−1)ノニオン界面活性剤を配合し、加熱及び減圧をすることにより製造できる。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の溶液(溶解品)を(B−1)ノニオン界面活性剤で溶剤置換する際は、(B−1)ノニオン界面活性剤は留去されず有機溶剤のみが留去されるように、有機溶剤の蒸気圧より低い蒸気圧のノニオン界面活性剤を選択する必要がある。
(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の(B−1)ノニオン界面活性剤溶液(溶解品)の製造方法は以下の通りである。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の有機溶剤溶液に、後述する(B−1)ノニオン界面活性剤を加え、3〜50mmHgに減圧し、室温(20℃)〜120℃に加熱することにより有機溶剤を留去し、(B−1)ノニオン界面活性剤に置換する。その際の加熱温度は120℃未満が好ましい。120℃より温度が高いとアルキルエーテル部位が酸化するおそれがある。溶剤を留去する際に泡立ちが発生するような場合は消泡剤を添加することも可能である。
【0050】
[(B)界面活性剤]
(B)成分である界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0051】
ノニオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルのようなノニオン界面活性剤等を挙げることができる。これらの具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどが挙げられる。また、官能基を有する反応性の界面活性剤を使用することも可能である。
【0052】
アニオン界面活性剤は、ラウリルスルフェート等のアルキルスルフェート、アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、モノアルキルポリオキシエチレンエーテル類の硫酸エステル塩、モノアルキルポリオキシエチレンエーテル類の酢酸エステル塩、アルキルナフチルスルホン酸及びその塩、アルカリ金属スルホレシネート、アルカリ金属スルホサクシネート、アルキルリン酸及びその塩、モノアルキルポリオキシエチレンエーテル類のリン酸エステル塩、脂肪酸のスルホン化グリセリルエステル、アルキル硫酸アルカリ金属塩及び硫酸エステル類が挙げられる。これらの具体例としては、ラウリル硫酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル2ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステルナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、官能基を有する反応性の界面活性剤を使用することも可能である。
【0053】
カチオン界面活性剤は、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩及び酢酸塩等が挙げられる。これらの具体例としては、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0054】
両性界面活性剤は、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリン等を挙げることができる。これらの具体例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインが挙げられる。
【0055】
アニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤、両性界面活性剤は、分子内に電荷をもっているため用途が制限される場合や、界面活性剤に含まれる硫黄や窒素といった原子が触媒毒となり反応を阻害する場合がある。界面活性剤の電荷や触媒毒が懸念される用途に本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物を配合する場合は、ノニオン界面活性剤のみを使用すればよい。ノニオン界面活性剤は、乳化性の観点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルもしくはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0056】
[(B−1)ノニオン界面活性剤]
ノニオン界面活性剤について詳述する。本発明に好適に用いられるノニオン界面活性剤は、25℃で液状のノニオン界面活性剤であり、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を溶解できるものである。ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルのようなノニオン界面活性剤等を挙げることができる。これらの具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどが挙げられる。上記のノニオン界面活性剤のうち、乳化性の観点から好ましくはポリオキシアルキレンアルキルエーテルもしくはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであり、その中でもより好ましくはエチレンオキサイドの付加モル数が2〜14であり、HLBが7.5〜15のものである。HLBはグリフィンの式による。2種類以上のノニオン界面活性剤を混合して使用してもよく、混合した界面活性剤のHLBが上記の値を満たしていればよい。
【0057】
[(C)オルガノポリシロキサン]
(C)成分のオルガノポリシロキサンとしては、25℃における粘度が15,000mPa・s以上のものである。
オルガノポリシロキサンとして、具体的には、環状シロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、アラルキル変性ポリシロキサン、ビニル変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、アミノ酸変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、(メタ)アクリル変性ポリシロキサン、ヒドロキシ変性ポリシロキサン、フェニル変性ポリシロキサンが例示される。汎用性の観点から、好ましくはジメチルポリシロキサン、ヒドロキシ変性ポリシロキサン、フェニル変性ポリシロキサンが挙げられる。
【0058】
オルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、15,000mPa・s以上であり、好ましくは500,000〜100,000,000mPa・sであり、より好ましくは750,000〜100,000,000mPa・sである。15,000mPa・sより粘度が低いと、すべり性等が低下し、また本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物を含む樹脂組成物の皮膜の光沢が低下するおそれがあり、100,000,000mPa・sより粘度が高いと乳化する際に装置に対して負荷が大きくかかるおそれがある。
(C)成分は、2種類以上のオルガノポリシロキサンを混合してもよく、混合したオルガノポリシロキサンの粘度が上記の範囲を満たせばよい。
【0059】
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物において、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の含有量は、(C)オルガノポリシロキサンの含有量を100質量部としたとき、1〜50質量部であり、好ましくは1〜40質量部であり、より好ましくは3〜35質量部である。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の含有量が1質量部未満だと、乳化性の低下により(C)オルガノポリシロキサンが乳化しない場合がある。また、オルガノポリシロキサン乳化組成物の耐溶剤性、耐塩性の低下となるおそれがある。一方で(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物が50質量部より多いとオルガノポリシロキサン乳化組成物を含む樹脂組成物の皮膜の透明性が低下するおそれがある。
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物において、(D)成分である水を含まない場合、(C)成分は(A)成分及び(B)成分に分散して乳化するものである。また、(D)成分である水を含む場合、(C)成分は(D)成分及び/又は(A)成分及び/又は(B)成分にのみ分散して乳化するものである。
【0060】
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物において、(B)界面活性剤の含有量は(C)オルガノポリシロキサンの含有量を100質量部としたとき、0〜50質量部であり、好ましくは3〜40質量部であり、より好ましくは5〜35質量部である。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物のみで(C)オルガノポリシロキサンを乳化できる場合は(B)界面活性剤を配合しなくてもよい。(B)界面活性剤が50質量部より多いと本発明の樹脂組成物の皮膜の耐摩耗性を阻害する可能性がある。
【0061】
(B)界面活性剤を用いる場合、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物と(B)界面活性剤の質量比率に指定はないが、質量比率((A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物/(B)界面活性剤)は0.1以上、特に0.2〜10.0、とりわけ0.5〜5.0であることが望ましい。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物と(B)界面活性剤を(C)オルガノポリシロキサンの乳化剤もしくは乳化助剤として使用した際に比率が0.1未満だと、(C)オルガノポリシロキサンに対する乳化力の低下やオルガノポリシロキサン乳化組成物の耐溶剤性が低下するおそれがある。
(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物と(B)界面活性剤の合計量に特に指定はないが、(C)オルガノポリシロキサンの含有量を100質量部としたとき、5〜100質量部であり、好ましくは10〜75質量部であり、より好ましくは25〜75質量部である。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物と(B)界面活性剤の合計量が(C)オルガノポリシロキサンの含有量を100質量部としたとき、5質量部未満だと(C)オルガノポリシロキサンの乳化ができないもしくは乳化物が安定でない場合があり、一方で100質量部を超えると得られる樹脂組成物の皮膜の耐摩耗性を阻害する可能性がある。
【0062】
[(D)水]
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物において、(D)水は自己乳化型やエマルジョン型等の要求される製品の形態もしくは乳化性等の観点から必要に応じて配合すればよい。従って、(D)水の含有量は(C)オルガノポリシロキサンの含有量を100質量部としたとき、0〜10,000質量部であり、好ましくは0〜5,000質量部であり、より好ましくは0〜1,000質量部である。10,000質量部より多いと安定性が低下し、大きく分離するおそれがある。(D)の水の含有量が上記の範囲内であれば、粒径は経時で変化しない。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物及び(B)界面活性剤により(C)オルガノポリシロキサンの乳化が可能な時は(D)水を配合する必要はない。特に溶剤型の樹脂組成物にオルガノポリシロキサン乳化組成物を配合する際、オルガノポリシロキサン乳化組成物に水が含まれていると溶剤によっては水と分離し均一にならない場合がある。そのような場合は、水を含まないオルガノポリシロキサン乳化組成物を使用したほうがよい。
【0063】
[組成物の調製]
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物の具体的な乳化方法は主に以下に示す通りである。第一は(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(B)界面活性剤及び(C)オルガノポリシロキサンの混合物を乳化した後に(D)水を配合する方法である。第二は(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(B)界面活性剤、(C)オルガノポリシロキサン及び(D)水の混合物を乳化する方法である。第三は(B)界面活性剤、(C)オルガノポリシロキサン及び(D)水の混合物を乳化した後に(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を配合する方法である。第四は(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(C)オルガノポリシロキサン及び(D)水の混合物を乳化した後に(B)界面活性剤を配合する方法である。第五は(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物及び(C)オルガノポリシロキサンの混合物を乳化した後に(B)界面活性剤及び(D)水を配合する方法である。本発明の乳化方法について以下に詳述する。
【0064】
第一の乳化方法は、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(B)界面活性剤、(C)オルガノポリシロキサンの混合物を2枚又は3枚のブレードの公転運動と自転運動による撹拌機であるプラネタリーミキサーにより乳化する。所定の粒径になるまで2〜180分撹拌した後、必要に応じてさらに(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(B)界面活性剤あるいは(D)水を加えてプラネタリーミキサー、歯形の羽根の回転による撹拌機であるディスパーもしくはステーター内のローターの回転による撹拌機であるホモミキサーにより希釈し、オルガノポリシロキサン乳化組成物を調製する。
【0065】
第二の乳化方法は以下の通りである。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(B)界面活性剤、(C)オルガノポリシロキサン、(D)水の混合物をプラネタリーミキサーにより乳化する。所定の粒径になるまで2〜180分撹拌した後、必要に応じてさらに(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(B)界面活性剤あるいは(D)水を加えてプラネタリーミキサー、ディスパーもしくはホモミキサーにより希釈し、オルガノポリシロキサン乳化組成物を調製する。
【0066】
第三の乳化方法は以下の通りである。(B)界面活性剤、(C)オルガノポリシロキサン、(D)水の混合物をプラネタリーミキサーもしくはディスパーにより乳化する。所定の粒径になるまで2〜180分撹拌した後、(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物と、必要に応じて(B)界面活性剤あるいは(D)水を配合し、プラネタリーミキサー、ディスパーもしくはホモミキサーにより撹拌して、オルガノポリシロキサン乳化組成物を調製する。
【0067】
第四の乳化方法は以下の通りである。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(C)オルガノポリシロキサン、(D)水の混合物をプラネタリーミキサーもしくはディスパーにより乳化する。所定の粒径になるまで2〜180分撹拌した後、必要に応じてさらに(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(B)界面活性剤あるいは(D)水を加えて、プラネタリーミキサー、ディスパーもしくはホモミキサーにより希釈して、オルガノポリシロキサン乳化組成物を調製する。
【0068】
第五の乳化方法は以下の通りである。(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(C)オルガノポリシロキサンの混合物をプラネタリーミキサーもしくはディスパーにより乳化する。所定の粒径になるまで2〜180分撹拌した後、必要に応じてさらに(A)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物、(B)界面活性剤あるいは(D)水を加えて、プラネタリーミキサー、ディスパーもしくはホモミキサーにより希釈して、オルガノポリシロキサン乳化組成物を調製する。
【0069】
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物中の(C)オルガノポリシロキサンの濃度は1〜90質量%の範囲であることが好ましい。1質量%未満では乳化組成物の安定性に問題があり、90質量%より大きい場合では乳化物の粘度が高く取り扱いにくくなる。また、オルガノポリシロキサン乳化組成物の組成によっては経時で分離する場合がある。その際はオルガノポリシロキサン乳化組成物に含まれる水の配合量を減らすことで、分離を抑制できる場合がある。
【0070】
乳化する際の温度について、好ましくは0〜80℃、より好ましくは0〜40℃である。0℃未満の温度もしくは80℃より高い温度では乳化しなくなる場合や製造した乳化物が不安定になる可能性がある。乳化する際、圧力は常圧だけでなく減圧もしくは加圧でもよい。減圧もしくは加圧下で乳化する場合、泡が混入しにくくなり効果的に乳化できることがある。減圧にする場合の圧力は原料の蒸気圧より高くし、原料が揮発しないように注意する。
【0071】
乳化する際の乳化機は、原料や乳化組成物を撹拌することができるものを選択する必要がある。2枚又は3枚のブレードの公転運動と自転運動による撹拌機であるプラネタリーミキサーとしてゲートミキサー(井上製作所社)やハイビスミックス(プライミクス社)、2枚のブレードの公転運動と自転運動と歯形の羽根の高速回転による撹拌機であるハイビスディスパーミックス3D−5型(プライミクス社)等を使用すると効果的に乳化をすることができる。また、ローターとステーターからなる撹拌部を有するコロイドミル(IKA社、PUC社、日本精機製作所、イワキ社)やハイシェアミキサー(silverson社、プライミクス社)等を使用することも可能である。また、ホモディスパー(プライミクス社)、アジホモミキサー(プライミクス社)やホモミキサーとホモディスパーとアンカーミキサーを組み合わせた3軸型分散混練機であるコンビミックス(プライミクス社)、同方向スクリューもしくは異方向スクリューを有する2軸混合機であるHAAKE Mini LabII(Thermo scientific社)やMC15、MC5(レオ・ラボ社)などを使用することも可能である。3軸型分散混練機コンビミックス(プライミクス社)やハイビスディスパーミックス(プライミクス社)を使用する場合はアンカーミキサーのみで乳化することも可能である。
【0072】
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物には、界面活性剤の他に保護コロイド剤ないし増粘剤としてポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸塩、キサンタン・ガム、アクリル酸重合体などの水溶性高分子を配合してもよい。さらにオキサゾリン系化合物や芳香族カルボン酸塩等の抗菌剤ないし防腐剤、香料、酸化防止剤、防錆剤、染料、充填剤、硬化触媒、有機粉体、無機粉体などを配合してもよい。
【0073】
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物の乳化物の平均粒径に指定はないが、20μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。20μmより平均粒径が大きいと、オルガノポリシロキサン乳化組成物を水やジメチルホルムアミド等の溶剤に分散させた場合、すぐに分離が生じる場合がある。本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物において、乳化物の平均粒径が1.5μm以上のときはベックマンコールター社製Multisizer3により測定することができ、乳化物の平均粒径が1.5μm未満のときは(株)堀場製作所製LA920もしくはLA960、又はベックマンコールター社製N4 PLUSにより測定することができる。なお、平均粒径の下限は特に限定されないが、通常0.1μm以上、特に0.5μm以上である。
【0074】
[樹脂組成物]
本発明のオルガノポリシロキサン乳化組成物は、合成皮革や人工皮革の表面処理剤もしくは内添処理剤として使用することが可能である。アクリル樹脂やウレタン樹脂といった樹脂を主成分とする樹脂組成物にオルガノポリシロキサン乳化組成物を配合することで、良好なすべり性を付与することができる。
【0075】
該樹脂組成物に使用する樹脂は、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、テトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。汎用性の観点から好ましくはウレタン樹脂もしくはアクリル樹脂が挙げられる。
【0076】
樹脂組成物にオルガノポリシロキサン乳化組成物を配合する際は、そのままオルガノポリシロキサン乳化組成物を樹脂組成物に配合し、均一分散させてもよく、また水やDMF、MEKといった溶剤に一旦分散させてから樹脂組成物に配合してもよい。オルガノポリシロキサン乳化組成物を樹脂組成物に均一混合するには、公知の撹拌機、例えば、ホモミキサー、佐竹攪拌機、スタティックミキサー、ロスミキサー、ホバートミキサー、ヘンシェルミキサー、パドルミキサー、リボンミキサー等を使用すればよい。
【0077】
樹脂組成物に対するオルガノポリシロキサン乳化組成物の配合量は、樹脂の固形分に対して0.01〜30質量%である。好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.2〜10質量%である。0.01質量%より配合量が少ないとすべり性を得ることができない場合があり、また30質量%より多いと光沢性やレベリング性が低下する場合がある。
【0078】
本発明の樹脂組成物を表面処理剤として人工皮革や合成皮革の表面上に塗布して成膜する方法として、以下の方法が挙げられる。直接スプレーするスプレー法やグラビアコーター、ナイフコーター、コンマコーター、エアナイフコーター等のダイレクトコート法などが挙げられるが、汎用性や樹脂組成物の安定性の観点からグラビアコーターによるダイレクトコート法が最も好ましい。また、塗工量は、乾燥後の塗膜量が3〜100g/m
2となる範囲が好ましく、5〜30g/m
2となる範囲がより好ましい。塗膜量は3g/m
2未満もしくは100g/m
2を超える場合、均一の樹脂層が形成しにくくなり、光沢性やレベリング性にムラができる可能性がある。
本発明の樹脂組成物の塗工後の乾燥条件は、樹脂組成物中の水もしくは溶剤が蒸発し、必要に応じて樹脂の架橋反応が起きれば特に制限はないが、通常は20〜150℃で10秒〜5分間程度の加熱、より好ましくは80〜130℃で30秒〜2分間程度の加熱である。
【0079】
本発明の樹脂組成物を内添処理剤として配合し、人工皮革を製造する方法として、以下の方法が挙げられる。人工皮革の原料である極細繊維を主体とする不織シート状物に本発明の樹脂組成物及び各種高分子化合物を付与し、加熱乾燥等により人工皮革を製造する。不織シート状物への付与方法は、含浸法、スプレー法、コーティング法等任意の方法によって行うことが可能である。加熱乾燥の方法は、熱風乾燥、赤外線加熱、高周波加熱等が挙げられるが、設備投資額、維持管理の容易さ等から考えると、熱風乾燥機が一般的である。乾燥温度は20〜150℃である。150℃よりも高温で加熱すると、樹脂の耐熱性の低下や繊維の劣化が生じるおそれがある。
【0080】
本発明によれば、特定構造のポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物を乳化剤もしくは乳化助剤とすることで、高重合度のオルガノポリシロキサンを乳化することができ、このオルガノポリシロキサン乳化組成物は、溶剤型、水性型のいずれの樹脂組成物にも配合することが可能であり、また良好なすべり性を与えるものである。従って、本発明の樹脂組成物は、自動車のシートやバッグ等の合成皮革や人工皮革の表面処理剤もしくは内添処理剤として有用である。
【実施例】
【0081】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、粘度はBM型もしくはBH型回転粘度計により測定した25℃における値である。さらに、重量平均分子量は、GPC(TOSOH製 HLC8220)により測定したTHF溶媒のポリスチレン換算による重量平均分子量の値である。
【0082】
[実施例1]
窒素雰囲気下、下記一般式(6a)
【化19】
で示されるケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン(粘度2,800mm
2/s、ケイ素原子に結合した水素原子の量0.006mol/100g)85質量部(85g)と、下記一般式(5a)
【化20】
で示される不飽和基含有ポリオキシアルキレン化合物15質量部(15g)と、イソプロピルアルコール250質量部(250g)を加えた後、加熱し、内部温度を75℃とした。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液を白金金属としてシロキサンに対して5質量ppm加え、8時間撹拌することで、下記一般式(7)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物A(GPCによる重量平均分子量50,000)を90%以上の反応率で合成した(ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物Aは29質量%イソプロパノール溶液である。)。式(6a)の化合物
の不飽和炭化水素基と式(5a)の化合物の
ケイ素結合水素原子のモル比は式(5a)/(6a)=1.1である。
【化21】
【0083】
ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物A(29質量%イソプロパノール溶液)350質量部(350g)にノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6(ダウケミカル社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル90質量%水溶液、HLB13.1)60質量部(60g)を添加し、10〜15mmHg、35〜40℃の条件でイソプロピルアルコール及びノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6に含まれる水を減圧留去し、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物A−1を得た。
続いて、下記一般式(8)
【化22】
(kは下記粘度とする数を示す。)
で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度700万mPa・s)35質量部(35g)、及び上記で得られたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物A−1 15質量部(15g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により20〜30rpmで約120分撹拌して乳化組成物Aを得た。平均粒径を(株)堀場製作所製のLA920で測定したところ、0.7μmであった。
【0084】
[実施例2]
下記一般式(9)
【化23】
(kは下記粘度とする数を示す。)
で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度3,000万mPa・s)35質量部(35g)と、上記実施例1で得られたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物A−1 15質量部(15g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により20〜30rpmで120分撹拌して乳化組成物Bを得た。平均粒径を(株)堀場製作所製のLA920で測定したところ、0.9μmであった。
【0085】
[実施例3]
実施例1で得られた上記一般式(7)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物A(29質量%イソプロパノール溶液)(GPCによる重量平均分子量50,000)350質量部(350g)に、ノニオン界面活性剤サンノニックSS120(三洋化成工業社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB14.5)50質量部(50g)を添加し、10〜15mmHg、35〜40℃の条件でイソプロピルアルコールを減圧留去し、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物A−2を得た。
続いて、上記一般式(9)で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度3,000万mPa・s)35質量部(35g)と、上記で得られたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物A−2 15質量部(15g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により20rpmで60分撹拌して乳化組成物Cを得た。平均粒径をベックマンコールター社製Multisizer3で測定したところ、4.9μmであった。
【0086】
[実施例4
(参考例)]
窒素雰囲気下、下記一般式(6b)
【化24】
で示されるケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン(粘度75mm
2/s、ケイ素原子に結合した水素原子の量0.05mol/100g)41質量部(41g)と、上記一般式(5a)で示される不飽和基含有ポリオキシアルキレン化合物59質量部(59g)と、イソプロピルアルコール250質量部(250g)を加えた後、加熱し、内部温度を75℃とした。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液を白金金属としてシロキサンに対して5質量ppm加え、8時間撹拌することで、下記一般式(10)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物B(GPCによる重量平均分子量14,000)を90%以上の反応率で合成した(ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物Bは29質量%イソプロパノール溶液である。)。式(6b)の化合物
の不飽和炭化水素基と式(5a)の化合物の
ケイ素結合水素原子のモル比は式(5a)/(6b)=1.1である。
【化25】
【0087】
ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物B(29質量%イソプロパノール溶液)350質量部(350g)にノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6(ダウケミカル社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル90質量%水溶液、HLB13.1)60質量部(60g)を添加し、10〜15mmHg、35〜40℃の条件でイソプロピルアルコール及びノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6に含まれる水を減圧留去し、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物Bを得た。
続いて、上記一般式(8)で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度700万mPa・s)35質量部(35g)、及び上記で得られたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物B 15質量部(15g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により20〜30rpmで約120分撹拌して乳化組成物Dを得た。平均粒径を(株)堀場製作所製のLA920で測定したところ、0.7μmであった。
【0088】
[実施例5]
窒素雰囲気下、上記一般式(6a)で示されるケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン(粘度2,800mm
2/s、ケイ素原子に結合した水素原子の量0.006mol/100g)84質量部(84g)と、下記一般式(5b)
【化26】
で示される不飽和基含有ポリオキシアルキレン化合物16質量部(16g)と、イソプロピルアルコール250質量部(250g)を加えた後、加熱し、内部温度を75℃とした。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液を白金金属としてシロキサンに対して5質量ppm加え、8時間撹拌することで、下記一般式(11)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物C(GPCによる重量平均分子量50,000)を90%以上の反応率で合成した(ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物Cは29質量%イソプロパノール溶液である。)。式(6a)の化合物
の不飽和炭化水素基と式(5b)の化合物の
ケイ素結合水素原子のモル比は式(5b)/(6a)=1.1である。
【化27】
【0089】
ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物C(29質量%イソプロパノール溶液)350質量部(350g)に、ノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6(ダウケミカル社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル90質量%水溶液、HLB13.1)60質量部(60g)を添加し、10〜15mmHg、35〜40℃の条件でイソプロピルアルコール及びノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6に含まれる水を減圧留去し、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物Cを得た。
続いて、上記一般式(9)で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度3,000万mPa・s)35質量部(35g)、及び上記で得られたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物C 15質量部(15g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により20〜30rpmで90分撹拌して乳化組成物Eを得た。平均粒径をベックマンコールター社製Multisizer3で測定したところ、5.6μmであった。
【0090】
[実施例6]
上記一般式(9)で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度3,000万mPa・s)35質量部(35g)と、上記実施例5で得られたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物C 15質量部(15g)と、水5質量部(5g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により20〜30rpmで90分撹拌して乳化組成物Fを得た。平均粒径をベックマンコールター社製Multisizer3で測定したところ、5.2μmであった。
【0091】
[実施例7]
上記一般式(9)で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度3,000万mPa・s)35質量部(35g)と、上記実施例5で得られたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物C 15質量部(15g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により20〜30rpmで90分撹拌し、さらに水5質量部(5g)を加え、ホモディスパー(プライミクス社製)500rpmで3分撹拌して乳化組成物Gを得た。平均粒径をベックマンコールター社製Multisizer3で測定したところ、5.7μmであった。
【0092】
[実施例8
(参考例)]
窒素雰囲気下、上記一般式(6b)で示されるケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン(粘度75mm
2/s、ケイ素原子に結合した水素原子の量0.05mol/100g)54質量部(54g)と、下記一般式(5c)
【化28】
で示される不飽和基含有ポリオキシアルキレン化合物46質量部(46g)と、イソプロピルアルコール100質量部(100g)を加えた後、加熱し、内部温度を75℃とした。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液を白金金属としてシロキサンに対して5質量ppm加え、8時間撹拌することで、下記一般式(12)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物D(GPCによる重量平均分子量10,000)を90%以上の反応率で合成した(ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物Dは50質量%イソプロパノール溶液である。)。式(6b)の化合物
の不飽和炭化水素基と式(5c)の化合物の
ケイ素結合水素原子のモル比は式(5c)/(6b)=1.1である。
10〜15mmHg、35〜40℃の条件でイソプロピルアルコールを減圧留去し、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物D−1を得た。ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物D−1の粘度は80,000mPa・sであった。
【化29】
上記一般式(8)で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度700万mPa・s)35質量部(35g)と、上記で得られたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物D−1 1
5質量部(15g)と、サンノニックSS70(三洋化成工業社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB12.1)1質量部(1g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により20rpmで30分撹拌して乳化組成物Hを得た。平均粒径を(株)堀場製作所製のLA920で測定したところ、0.9μmであった。
【0093】
[実施例9]
上記一般式(6a)で示されるケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン(粘度2,800mm
2/s、ケイ素原子に結合した水素原子の量0.006mol/100g)87質量部(87g)と、下記一般式(5d)
【化30】
で示される不飽和基含有ポリオキシアルキレン化合物13質量部(13g)と、イソプロピルアルコール250質量部(250g)を加えた後、加熱し、内部温度を75℃とした。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液を白金金属としてシロキサンに対して5質量ppm加え、8時間撹拌することで、下記一般式(13)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物E(GPCによる重量平均分子量50,000)を90%以上の反応率で合成した(ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物Eは29質量%イソプロパノール溶液である。)。式(6a)の化合物
の不飽和炭化水素基と式(5d)の化合物の
ケイ素結合水素原子のモル比は式(5d)/(6a)=1.1である。
ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物E(29質量%イソプロパノール溶液)350質量部(350g)に、ノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6(ダウケミカル社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル90質量%水溶液、HLB13.1)60質量部(60g)を添加し、10〜15mmHg、35〜40℃の条件でイソプロピルアルコール及びノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6に含まれる水を減圧留去し、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物E−1を得た。
上記一般式(8)で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度700万mPa・s)35質量部(35g)、及び上記で得られたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物E−1 15質量部(15g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により20〜30rpmで約120分撹拌して乳化組成物Iを得た。平均粒径を(株)堀場製作所製のLA920で測定したところ、0.9μmであった。
【0094】
[比較例1]
窒素雰囲気下、上記一般式(6b)で示されるケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン(粘度75mm
2/s、ケイ素原子に結合した水素原子の量0.05mol/100g)55質量部(55g)と、下記一般式(5e)
【化31】
で示される不飽和基含有ポリオキシアルキレン化合物45質量部(45g)と、イソプロピルアルコール100質量部(100g)を加熱し、内部温度を75℃とした。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液を白金金属としてシロキサンに対して5質量ppm加え、8時間撹拌することで、下記一般式(14)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物Fを合成した(ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物Fは50質量%イソプロパノール溶液である。)。式(6b)の化合物
の不飽和炭化水素基と式(5e)の化合物の
ケイ素結合水素原子のモル比は式(5e)/(6b)=1.1である。
窒素バブリングをしながら110〜120℃、30mmHg以下で減圧をして、イソプロパノールを留去し、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物F−1(GPCによる重量平均分子量8,000)を得た。ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物F−1の粘度は1,800mPa・sであった。
【化32】
上記で得られたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物F−1 10質量部(10g)と、ノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6(ダウケミカル社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル90質量%水溶液、HLB13.1)5.5質量部(5.5g)と、上記一般式(8)で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度700万mPa・s)35質量部(35g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により30〜40rpmで約60分撹拌したが、乳化しなかった。
【0095】
[比較例2]
窒素雰囲気下、下記一般式(6c)
【化33】
で示されるケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサン70質量部(70g)と、上記一般式(5a)で示される不飽和基含有ポリオキシアルキレン化合物30質量部(30g)と、イソプロピルアルコール250質量部(250g)を加熱し、内部温度を75℃とした。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液を白金金属としてシロキサンに対して5質量ppm加え、8時間撹拌することで、下記一般式(15)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物G(GPCによる重量平均分子量53,000)を合成した(ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物Gは29質量%イソプロパノール溶液である。)。式(6c)の化合物
の不飽和炭化水素基と式(5a)の化合物の
ケイ素結合水素原子のモル比は式(5a)/(6c)=1.1である。
【化34】
ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物G(29質量%イソプロパノール溶液)350質量部(350g)に、ノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6(ダウケミカル社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル90質量%水溶液、HLB13.1)60質量部(60g)加えた後、窒素バブリングを行いながら、30〜45℃、10〜15mmHgに減圧してイソプロパノール及びノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6に含まれる水を留去し、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物G−1を得た。
上記で得られたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物の界面活性剤溶解化合物G−1 15質量部(15g)、及び上記一般式(8)で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度700万mPa・s)35質量部(35g)を配合し、ハイビスミックス(プライミクス社製)により40〜50rpmで60分撹拌したが、両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサンは乳化しなかった。
【0096】
[比較例3]
比較例1で得られた上記一般式(14)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン化合物F−1 10質量部(10g)と、ノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6(ダウケミカル社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル90質量%水溶液、HLB13.1)5.5質量部(5.5g)と、上記一般式(8)で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度700万mPa・s)35質量部(35g)と、イオン交換水5質量部(5g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により30〜40rpmで約60分撹拌して乳化組成物Jを得た。平均粒径をベックマンコールター社製Multisizer3で測定したところ、1.7μmであった。
【0097】
[比較例4]
ノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6(ダウケミカル社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル90質量%水溶液、HLB13.1)5.5質量部(5.5g)と、上記一般式(8)で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度700万mPa・s)35質量部(35g)と、イオン交換水5質量部(5g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により30〜40rpmで約60分撹拌して乳化組成物Kを得た。平均粒径をベックマンコールター社製のMultisizer3で測定したところ、13.5μmであった。
【0098】
[比較例5]
ノニオン界面活性剤TERGITOL−TMN6(ダウケミカル社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル90質量%水溶液、HLB13.1)5.5質量部(5.5g)と、上記一般式(9)で示される両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサン(粘度3,000万mPa・s)35質量部(35g)と、イオン交換水5質量部(5g)をハイビスミックス(プライミクス社製)により30〜40rpmで約60分撹拌したが、乳化しなかった。
【0099】
上記実施例、比較例について、下記の乳化性、耐溶剤性及びすべり性の評価を行った。これらの結果を表1〜3に示す。
【0100】
乳化性:
実施例1〜9、比較例1〜5による両末端ヒドロキシジメチルポリシロキサンの乳化の可否を、サンプル0.5gとイオン交換水9.5gをガラス瓶に入れて振とうし、外観を観察し、下記基準で評価した。
○:水にサンプルの分散が可能
×:水にサンプルの分散が不可
【0101】
耐溶剤性:
オルガノポリシロキサン乳化組成物A〜Kに対して耐溶剤性試験を行った。
乳化組成物A〜K0.5gとDMF(ジメチルホルムアミド)9.5gをガラス瓶に入れて振とうし、溶液の状態を観察し、下記基準で評価した。
○:オルガノポリシロキサンの析出がほとんどなく、乳化組成物がDMFに分散した状態
△:オルガノポリシロキサンの一部が析出し、乳化組成物の一部がDMFに分散した状態
×:DMFにより乳化組成物が破壊され、オルガノポリシロキサンが析出した状態
【0102】
すべり性1:
オルガノポリシロキサン乳化組成物A〜Kに対してすべり性1の試験を行った。
乳化組成物A〜Kを20質量%水溶液になるように水で希釈する。次に水性アクリル樹脂(40−418EF(DIC社製))10g及び乳化組成物A〜Kの20質量%水溶液0.25gをガラス瓶に入れて振とうし、均一混合させる。ワイヤーバーNo.3で乳化組成物を配合した水性アクリル樹脂を板紙PA2831(BYK社製)に塗布した後、室温(25℃)で1時間乾燥させる。指で板紙の塗布表面をこすり、すべり性を確認し、下記基準で評価した。
すべり性2:
オルガノポリシロキサン乳化組成物A〜Kに対してすべり性2の試験を行った。
乳化組成物A〜Kを20質量%DMF溶液になるようにDMFで希釈する。乳化組成物A〜KをDMFに希釈した際、乳化組成物が破壊されシリコーンの析出が多く見られたものについてはすべり性2の試験をしないものとする。DMF溶剤系ポリウレタン樹脂(サンプレンLQ−258(三洋化成工業社製))10g及び乳化組成物A〜K0.25gをガラス瓶に入れて振とうし、均一混合させる。ワイヤーバーNo.3で乳化組成物を配合した溶剤系ポリウレタン樹脂を板紙PA2831(BYK社製)に塗布した後、室温(25℃)で1時間乾燥させる。指で板紙の塗布表面をこすり、すべり性を確認し、下記基準で評価した。
○:乳化組成物A〜Kを配合しなかった場合より、すべり性良好
△:乳化組成物A〜Kを配合しなかった場合とすべり性同等
×:乳化組成物A〜Kを配合しなかった場合よりすべり性悪いもしくは樹脂中でオルガノ
ポリシロキサンが析出する
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】