(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被転写物上に、波長200nm以下の露光光を用いてパターンを形成するフォトリソグラフィに用いる透過型フォトマスクを製造するためのフォトマスクブランクであって、
透明基板と、
該透明基板上に形成され、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガスによる塩素酸素系ドライエッチングでエッチングされ、かつフッ素を含有するガスによるフッ素系ドライエッチングに耐性を有する材料で構成された第1の膜と、
該第1の膜に接して形成され、ケイ素と酸素とからなり、かつ上記第1の膜をエッチングする上記塩素酸素系ドライエッチングでは実質的にエッチングされない材料で構成された第2の膜とを有し、該第2の膜が、Si−Si結合を有するケイ素と酸素との原子比O/Siが0.1以上1.9以下である材料で構成されていることを特徴とするフォトマスクブランク。
更に、上記第2の膜に接して形成され、膜厚が150nm以下のフォトレジスト膜を有し、該フォトレジスト膜が化学増幅型レジスト膜であることを特徴とする請求項1記載のフォトマスクブランク。
透明基板上に、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガスによる塩素酸素系ドライエッチングでエッチングされ、かつフッ素を含有するガスによるフッ素系ドライエッチングに耐性を有する材料で構成された第1の膜を形成する工程、
該第1の膜に接して、ケイ素と酸素とからなり、Si−Si結合を有するケイ素と酸素との原子比O/Siが0.1以上1.9以下であり、かつ上記第1の膜をエッチングする上記塩素酸素系ドライエッチングでは実質的にエッチングされない材料で構成された第2の膜を形成する工程、
該第2の膜に接して、膜厚が150nm以下の化学増幅型レジスト膜を形成する工程、
該化学増幅型レジスト膜をパターニングしてレジストパターンを形成する工程、
該レジストパターンをエッチングマスクとして、上記第2の膜を上記フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、第2の膜のマスクパターンを形成する工程、及び
上記第2の膜のマスクパターンをエッチングマスクとして、上記第1の膜を上記塩素酸素系ドライエッチングによりパターニングして、第1の膜のマスクパターンを形成する工程
を含むことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
被転写物上に、波長200nm以下の露光光を用いて、幅30nm以下の微細パターンを形成するフォトリソグラフィに用いる透過型フォトマスクを製造することを特徴とする請求項7又は8記載の製造方法。
フォトマスクブランクの透明基板上に形成された膜であり、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガスによる塩素酸素系ドライエッチングでエッチングされ、かつフッ素を含有するガスによるフッ素系ドライエッチングに耐性を有する材料で構成された第1の膜から、該第1の膜のマスクパターンを形成する方法であって、
上記第1の膜に接して、ケイ素と酸素とからなり、Si−Si結合を有するケイ素と酸素との原子比O/Siが0.1以上1.9以下であり、かつ上記第1の膜をエッチングする上記塩素酸素系ドライエッチングでは実質的にエッチングされない材料で構成された第2の膜を形成する工程、
該第2の膜に接して、膜厚が150nm以下の化学増幅型レジスト膜を形成する工程、
該化学増幅型レジスト膜をパターニングしてレジストパターンを形成する工程、
該レジストパターンをエッチングマスクとして、上記第2の膜を上記フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、第2の膜のマスクパターンを形成する工程、及び
該第2の膜のマスクパターンをエッチングマスクとして、上記第1の膜を上記塩素酸素系ドライエッチングによりパターニングして、第1の膜のマスクパターンを形成する工程
を含むことを特徴とするマスクパターン形成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フォトマスクパターンの形成においては、通常、透明基板上に遮光膜を有するフォトマスクブランク上にフォトレジスト膜を形成し、電子線によるパターンの描画を行い、現像を経てレジストパターンを得る。そして、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、遮光膜をエッチングして遮光膜パターンに加工するが、遮光膜パターンをより微細化する場合、フォトレジスト膜の膜厚を微細化前と同じように維持したままで加工しようとすると、パターンに対する膜厚の比、いわゆるアスペクト比が高くなり、レジストのパターン形状が劣化して、パターン転写がうまく行かなくなったり、場合によってはレジストパターンが倒れや剥れを起こしたりしてしまう。そのため、微細化に伴いレジスト膜を薄くする必要がある。
【0007】
ドライエッチング時のレジストへの負担を減らすために、エッチングマスクとして無機膜のハードマスク膜を使用することは有効であり、例えば、特開昭63−85553号公報(特許文献1)では、MoSi
2膜上にSiO
2膜を形成し、これを、塩素を含むガスを用いてMoSi
2膜をドライエッチングする際のエッチングマスクとして使用することが報告されており、また、SiO
2膜が反射防止膜としても機能し得ることが記載されている。また、位相シフト膜の上に、遮光膜としてクロム膜を用い、その上にSiO
2膜をハードマスクとして用いることが、例えば、特開平7−49558号公報(特許文献2)に記載されている。
【0008】
しかし、SiO
2膜等の二酸化珪素膜の加工は、一般にフッ素系ガスを用いたドライエッチングによって行うが、二酸化珪素膜に対し、フッ素系ガスを用いたドライエッチングは、エッチング速度が遅いという問題がある。上述した要求に対応してフォトレジスト膜を薄くするためには、ハードマスク膜の膜厚を薄くすることが、上述したエッチング速度の観点からも有効であるが、例えば、二酸化珪素膜をスパッタで成膜すると、その成膜の初期の段階で島状成長するため、膜は、面内において若干の厚さ分布、即ち、厚い部分と薄い部分を有する。そのため、ハードマスク膜の膜厚が薄すぎると、ハードマスク膜の面内全体においてハードマスクとして機能させるために有効な膜厚が確保できないため、ハードマスク膜は、ある程度以上の膜厚が必要である。その結果、ハードマスク膜上に形成するフォトレジスト膜の膜厚も、ハードマスク膜の膜厚に対して、相応の厚さが必要となる。このような相応の厚さを有するフォトレジスト膜を用いて、微細なパターンを形成するためには、ハードマスク膜上で、レジストパターンが、劣化したり、倒れや剥れを起こしたりせず、安定して維持できる方法が必要である。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、フォトマスクブランクの遮光膜、反射防止膜等の光学膜、エッチングマスク膜(ハードマスク膜)、エッチングストッパ膜等の加工補助膜などとして有効な、クロムを含有する材料などの塩素ガスと酸素ガスとの混合ガスによる塩素酸素系ドライエッチングでエッチングされ、かつフッ素を含有するガスによるフッ素系ドライエッチングに耐性を有する材料で構成された膜に対するハードマスクとして用いられる、ケイ素と酸素、又はケイ素と酸素と窒素とからなる膜と、フォトレジスト膜との密着性を改善し、フォトレジスト膜から微細なレジストパターンを形成した際に、レジストパターンが、劣化や、倒れや、剥れを起こさず、安定して維持されるフォトマスクブランク、並びに密着性が改善されたエッチングマスク膜及びフォトレジスト膜を用いたフォトマスクの製造方法及びマスクパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、フォトマスクブランクの遮光膜、反射防止膜等の光学膜、エッチングマスク膜(ハードマスク膜)、エッチングストッパ膜等の加工補助膜などとして用いられ、クロムを含有する材料などの塩素ガスと酸素ガスとの混合ガスによる塩素酸素系ドライエッチングでエッチングされ、かつフッ素を含有するガスによるフッ素系ドライエッチングに耐性を有する材料で構成された膜に対するハードマスクとして用いられる膜を、ケイ素と酸素、又はケイ素と酸素と窒素とからなり、Si−Si結合を有する材料で構成することにより、この膜と化学増幅型フォトレジスト膜との密着性が向上し、フォトレジスト膜から微細なレジストパターンを形成しても、レジストパターンが、劣化や、倒れや、剥れを起こさず、安定して維持され、レジストパターンの下層の膜のエッチングにおいて、形状及び寸法精度が良好な、微細なマスクパターンが形成できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
従って、本発明は、以下のフォトマスクブランク、フォトマスクの製造方法及びマスクパターン形成方法を提供する。
請求項1:
被転写物上に、波長200nm以下の露光光を用いてパターンを形成するフォトリソグラフィに用いる透過型フォトマスクを製造するためのフォトマスクブランクであって、
透明基板と、
該透明基板上に形成され、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガスによる塩素酸素系ドライエッチングでエッチングされ、かつフッ素を含有するガスによるフッ素系ドライエッチングに耐性を有する材料で構成された第1の膜と、
該第1の膜に接して形成され、ケイ素と酸素とからなり、かつ上記第1の膜をエッチングする上記塩素酸素系ドライエッチングでは実質的にエッチングされない材料で構成された第2の膜とを有し、該第2の膜が、Si−Si結合を有するケイ素と酸素との原子比O/Siが0.1以上1.9以下である材料で構成されていることを特徴とするフォトマスクブランク。
請求項2:
更に、上記第2の膜に接して形成され、膜厚が150nm以下のフォトレジスト膜を有し、該フォトレジスト膜が化学増幅型レジスト膜であることを特徴とする請求項1記載のフォトマスクブランク。
請求項3:
上記第2の膜の膜厚が2nm以上20nm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のフォトマスクブランク。
請求項4:
上記第2の膜のシート抵抗が1×10
11Ω/□以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
請求項5:
上記透明基板と第1の膜との間に、位相シフト膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
請求項6:
上記第2の膜が、ケイ素を40原子%以上80原子%以下の割合で含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
請求項
7:
透明基板上に、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガスによる塩素酸素系ドライエッチングでエッチングされ、かつフッ素を含有するガスによるフッ素系ドライエッチングに耐性を有する材料で構成された第1の膜を形成する工程、
該第1の膜に接して、ケイ素と酸素とからなり、Si−Si結合を有するケイ素と酸素との原子比O/Siが0.1以上1.9以下であり、かつ上記第1の膜をエッチングする上記塩素酸素系ドライエッチングでは実質的にエッチングされない材料で構成された第2の膜を形成する工程、
該第2の膜に接して、膜厚が150nm以下の化学増幅型レジスト膜を形成する工程、
該化学増幅型レジスト膜をパターニングしてレジストパターンを形成する工程、
該レジストパターンをエッチングマスクとして、上記第2の膜を上記フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、第2の膜のマスクパターンを形成する工程、及び
上記第2の膜のマスクパターンをエッチングマスクとして、上記第1の膜を上記塩素酸素系ドライエッチングによりパターニングして、第1の膜のマスクパターンを形成する工程
を含むことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
請求項
8:
上記透明基板と上記第1の膜との間に、位相シフト膜を形成する工程、及び
上記第1の膜のマスクパターンをエッチングマスクとして、上記位相シフト膜をフッ素系ドライエッチングによりパターニングして、位相シフト膜のマスクパターンを形成する工程
を含むことを特徴とする請求項
7記載の製造方法。
請求項
9:
被転写物上に、波長200nm以下の露光光を用いて、幅30nm以下の微細パターンを形成するフォトリソグラフィに用いる透過型フォトマスクを製造することを特徴とする請求項
7又は
8記載の製造方法。
請求項
10:
上記第2の膜が、ケイ素を40原子%以上80原子%以下の割合で含有することを特徴とする請求項
7乃至
9のいずれか1項記載の製造方法。
請求項
11:
フォトマスクブランクの透明基板上に形成された膜であり、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガスによる塩素酸素系ドライエッチングでエッチングされ、かつフッ素を含有するガスによるフッ素系ドライエッチングに耐性を有する材料で構成された第1の膜から、該第1の膜のマスクパターンを形成する方法であって、
上記第1の膜に接して、ケイ素と酸素とからなり、Si−Si結合を有するケイ素と酸素との原子比O/Siが0.1以上1.9以下であり、かつ上記第1の膜をエッチングする上記塩素酸素系ドライエッチングでは実質的にエッチングされない材料で構成された第2の膜を形成する工程、
該第2の膜に接して、膜厚が150nm以下の化学増幅型レジスト膜を形成する工程、
該化学増幅型レジスト膜をパターニングしてレジストパターンを形成する工程、
該レジストパターンをエッチングマスクとして、上記第2の膜を上記フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、第2の膜のマスクパターンを形成する工程、及び
該第2の膜のマスクパターンをエッチングマスクとして、上記第1の膜を上記塩素酸素系ドライエッチングによりパターニングして、第1の膜のマスクパターンを形成する工程
を含むことを特徴とするマスクパターン形成方法。
請求項
12:
上記第2の膜が、ケイ素を40原子%以上80原子%以下の割合で含有することを特徴とする請求項
11記載のマスクパターン形成方法。
【発明の効果】
【0012】
フォトレジスト膜の密着性が向上し、フォトレジスト膜から微細なレジストパターンを形成しても、レジストパターンが、劣化や、倒れや、剥れを起こさず、安定して維持され、レジストパターンを用いた下層の膜のエッチングにおいて、良好な形状及び寸法精度が得られる。その結果、高精度の微細なマスクパターンを有するフォトマスクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の第1の態様のフォトマスクブランクは、透明基板と、透明基板上に形成された第1の膜と、第1の膜に接して形成された第2の膜とを有する。具体的には、
図1(A)に示されるフォトマスクブランクが例示される。
図1(A)は、本発明の第1の態様のフォトマスクブランクの一例を示す断面図であり、このフォトマスクブランク1は、透明基板10上に、透明基板10に接して形成された第1の膜11と、第1の膜11に接して形成された第2の膜12とを備える。
【0015】
また、
図1(A)に示されるフォトマスクブランクから製造されるフォトマスクの一例の断面図を
図1(B)及び
図1(C)に示す。
図1(B)は、第2の膜が光学膜の一部として機能させる膜である場合を示し、フォトマスク101には、透明基板10上に、第1の膜のマスクパターン11aが形成され、更に、第1の膜のマスクパターン11aの上に、第2の膜のマスクパターン12aが形成されている。一方、
図1(C)は、第2の膜が加工補助膜である場合を示し、フォトマスク102には、透明基板10上に、第1の膜のマスクパターン11aが形成されている。
【0016】
図1(A)では、透明基板10と第1の膜11とが接して形成されたものが示されているが、透明基板と第1の膜との間には、他の膜、例えば、ハーフトーン位相シフト膜等の位相シフト膜、遮光膜、反射防止膜などの光学膜や、エッチングマスク膜(ハードマスク膜)、エッチングストッパ膜などの加工補助膜などが形成されていてもよい。具体的には、透明基板と第1の膜との間に、位相シフト膜が形成されているもの、透明基板側から、位相シフト膜、遮光膜が順に形成されているもの、位相シフト膜、エッチングストッパ膜、遮光膜が順に形成されているものなどが挙げられる。
【0017】
このようなものとしては、
図2(A)及び
図2(B)に示されるフォトマスクブランクが例示される。
図2(A)及び
図2(B)は、本発明の第1の態様のフォトマスクブランクの他の例を示す断面図であり、
図2(A)のフォトマスクブランク1は、透明基板10上に、透明基板10に接して形成された位相シフト膜14と、位相シフト膜14に接して形成された第1の膜11と、第1の膜11に接して形成された第2の膜12とを備える。また、
図2(B)のフォトマスクブランク1は、透明基板10上に、透明基板10に接して形成された位相シフト膜14と、位相シフト膜14に接して形成された遮光膜15と、遮光膜15に接して形成された第1の膜11と、第1の膜11に接して形成された第2の膜12とを備える。
【0018】
本発明のフォトマスクブランクは、更に、第2の膜に接して形成されたフォトレジスト膜を有していてもよい。この場合を第2の態様のフォトマスクブランクとする。この場合、具体的には、
図3(A)に示されるフォトマスクブランクが例示される。
図3(A)は、本発明の第2の態様のフォトマスクブランクの一例を示す断面図であり、このフォトマスクブランク1は、透明基板10上に、透明基板10に接して形成された第1の膜11と、第1の膜11に接して形成された第2の膜12と、第2の膜12に接して形成されたフォトレジスト膜13とを備える。また、
図3(A)に示されるフォトマスクブランクから製造されるフォトマスクとしては、
図1(B)及び
図1(C)に示されるものと同様のものが挙げられる。
【0019】
図3(A)では、透明基板10と第1の膜11とが接して形成されたものが示されているが、第2の態様のフォトマスクブランクにおいても、透明基板と第1の膜との間には、第1の態様のフォトマスクブランクと同様の他の膜が形成されていてもよい。具体的には、透明基板と第1の膜との間に、第1の態様のフォトマスクブランクにおいて、他の膜として例示した膜と同様の膜が順に形成されているものなどが挙げられる。
【0020】
このようなものとしては、
図3(B)及び
図3(C)に示されるフォトマスクブランクが例示される。
図3(B)及び
図3(C)は、本発明の第2の態様のフォトマスクブランクの他の例を示す断面図であり、
図3(B)のフォトマスクブランク1は、透明基板10上に、透明基板10に接して形成された位相シフト膜14と、位相シフト膜14に接して形成された第1の膜11と、第1の膜11に接して形成された第2の膜12と、第2の膜12に接して形成されたフォトレジスト膜13とを備える。また、
図3(C)のフォトマスクブランク1は、透明基板10上に、透明基板10に接して形成された位相シフト膜14と、位相シフト膜14に接して形成された遮光膜15と、遮光膜15に接して形成された第1の膜11と、第1の膜11に接して形成された第2の膜12と、第2の膜12に接して形成されたフォトレジスト膜13とを備える。
【0021】
第2の態様の場合、第2の膜とフォトレジスト膜との間には、表面処理剤などを塗布してもよいが、これらの間には、フォトマスクブランクに用いられる光学膜や加工補助膜などに相当する他の膜は設けられない。
【0022】
第1及び第2のいずれの態様においても、第1の膜と第2の膜との間には、フォトマスクブランクに用いられる光学膜や加工補助膜などに相当する他の膜は設けられない。
【0023】
本発明の透明基板は、フォトマスクブランクに用いられる基板であり、フォトマスクを用いたフォトリソグラフィにおける露光光に対して透明な材料で形成された基板であればよい。透明基板は、フォトマスクブランクからフォトマスクを製造する工程における処理温度での変形が小さいものであれば、特に制限はなく、このようなものとしては、石英基板が好適である。
【0024】
本発明の第1の膜は、フォトマスクブランクに設けられる遮光膜、反射防止膜等の光学膜や、第1の膜の下方(透明基板側)に形成された膜や透明基板を加工するためのエッチングマスク膜(ハードマスク膜)、第1の膜の上方(透明基板から離間する側)に形成された膜を加工するためのエッチングストッパ膜等の加工補助膜などとして設けられる。第1の膜としての光学膜は、その下方に形成された膜や透明基板に対するエッチングマスク膜(ハードマスク膜)や、その上方に形成された膜のエッチングストッパ膜として機能する膜としてもよい。即ち、本発明の第1の膜のマスクパターンは、フォトマスクパターンであっても、エッチングマスクパターンであってもよい。
【0025】
また、本発明の第1の膜は、塩素ガス(Cl
2)と酸素ガス(O
2)との混合ガスによる塩素酸素系ドライエッチングでエッチングされ、かつフッ素を含有するガス(CF
4、SF
6など)によるフッ素系ドライエッチングに耐性を有する材料で構成される。本発明の第1の膜としては、例えば、クロムを含有する材料が好適である。クロムを含有する材料で構成することにより、塩素酸素系ドライエッチングでエッチングされ、フッ素系ドライエッチングに耐性を有する材料とすることができる。クロムを含有する材料は、クロム単体でも、クロムの他に、酸素、窒素及び炭素から選ばれる1種以上の軽元素を含有するクロム化合物、例えば、クロム酸化物(CrO)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム窒化炭化物(CrNC)、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)などでもよい。クロム化合物は、クロムを10原子%以上、特に30原子%以上含有するものが好ましく、クロムを95原子%以下、特に70原子%以下で含有するものが更に好ましい。一方、軽元素の含有率は、酸素は60原子%以下、窒素は60原子%以下、特に30原子%以下、炭素は40原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましい。なお、本発明を構成する第1の膜、第2の膜及び他の膜の組成(含有率及び原子比)は、X線光電子分光法(XPS又はESCA)により測定した値を適用することができる。
【0026】
第1の膜は、1層で構成されていても、2層以上で構成されていてもよく、2層以上で構成されている場合は、各層を、異なる機能を有する膜、例えば、遮光膜、反射防止膜などで構成することができる。例えば、第1の膜を、遮光膜である層と、該層の透明基板から離間する側に設けられた反射防止膜である層とを含む2層又は3層以上で構成すること、遮光膜である層と、該層の透明基板側に設けられた、遮光膜より酸素及び/又は窒素の含有率が高い層とを含む2層又は3層以上で構成することなどが好適である。更に、第1の膜を、遮光膜である層と、該層の透明基板から離間する側に設けられた反射防止膜である層と、遮光膜である層の透明基板側に設けられた、遮光膜より酸素及び/又は窒素の含有率が高い層とを含む3層又は4層以上で構成してもよい。
【0027】
第1の膜の膜厚は、第1の膜の種類によって異なるが、好ましくは1nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは30nm以上、特に好ましくは40nm以上であり、100nm以下、特に65nm以下であることが好ましい。
【0028】
第1の膜を、クロムを含有する材料で構成する場合、クロムを含有するターゲットを少なくとも1つ用いたスパッタによる成膜が、簡単で制御性よく成膜することができるので好ましい。スパッタによる成膜方式は、DCスパッタ方式でも、RFスパッタ方式でもよく、特に制約はない。具体的には、例えば、クロムターゲットを用い、スパッタガスとして、アルゴンガスなどの不活性ガスを用いるスパッタ、又はアルゴンガスなどの不活性ガスと、酸素ガス(O
2ガス)、窒素ガス(N
2ガス)、酸化窒素ガス(NO
2ガス、NOガス、N
2Oガス)、炭化水素ガス(CH
4ガス)、酸化炭素ガス(COガス、CO
2ガス)などから選ばれる反応性ガスとを用いる反応性スパッタにより形成することができる。
【0029】
透明基板と第1の膜との間に、他の膜が形成されている場合、例えば、透明基板と第1の膜との間に、ハーフトーン位相シフト膜等の位相シフト膜、遮光膜、反射防止膜などが形成されている場合、これらの膜、特に、少なくとも第1の膜と接する膜は、第1の膜とエッチング特性が異なるものが好ましい。本発明の第1の膜は、塩素ガス(Cl
2)と酸素ガス(O
2)との混合ガスによる塩素酸素系ドライエッチングでエッチングされ、かつフッ素を含有するガス(CF
4、SF
6など)によるフッ素系ドライエッチングに耐性を有する材料で構成されているので、透明基板と第1の膜の間に形成される位相シフト膜、遮光膜、反射防止膜などは、塩素ガス(Cl
2)と酸素ガス(O
2)との混合ガスによる塩素酸素系ドライエッチングに耐性を有し、かつフッ素を含有するガス(CF
4、SF
6など)によるフッ素系ドライエッチングでエッチングされる材料で構成されていることが好ましい。特に、他の膜がハーフトーン位相シフト膜である場合は、例えば、位相差が160〜190°、好ましくは概ね180°、透過率が3〜40%の膜が用いられる。
【0030】
このような透明基板と第1の膜の間に形成される、第1の膜とエッチング特性が異なる膜に好適な材料としては、ケイ素を含有する材料が好ましく、例えば、ケイ素と、酸素、窒素、炭素及び水素から選ばれる1種以上の軽元素とを含む材料、ケイ素と、酸素、窒素、炭素及び水素から選ばれる1種以上の軽元素と、遷移金属とを含む材料などが挙げられる。ケイ素を含有する材料として具体的には、ケイ素酸化物(SiO)、ケイ素窒化物(SiN)、ケイ素酸化窒化物(SiON)、ケイ素酸化炭化物(SiOC)、ケイ素窒化炭化物(SiNC)、ケイ素酸化窒化炭化物(SiONC)などのケイ素化合物、遷移金属ケイ素酸化物(MeSiO)、遷移金属ケイ素窒化物(MeSiN)、遷移金属ケイ素酸化窒化物(MeSiON)、遷移金属ケイ素酸化炭化物(MeSiOC)、遷移金属ケイ素窒化炭化物(MeSiNC)、遷移金属ケイ素酸化窒化炭化物(MeSiONC)などの遷移金属ケイ素化合物が含まれる。この遷移金属(Me)としては、モリブデン、タンタル、ジルコニウム、タングステン、チタン、ハフニウムなどが挙げられ、特に、モリブデン、タンタル、ジルコニウム、タングステン、とりわけモリブデンが好ましく、更には、クロムを含有していないことが好ましい。
【0031】
このような他の膜を形成する方法としては、ケイ素ターゲット(Siターゲット)、遷移金属ケイ素ターゲット(MeSiターゲット)などのケイ素を含有するターゲットを少なくとも1つと、必要に応じて遷移金属ターゲット(Meターゲット)とを用いたスパッタによる成膜が好ましい。スパッタによる成膜方式は、DCスパッタ方式でも、RFスパッタ方式でもよく、特に制約はない。具体的には、例えば、スパッタガスとして、アルゴンガスなどの不活性ガスと、酸素ガス(O
2ガス)、窒素ガス(N
2ガス)、酸化窒素ガス(NO
2ガス、NOガス、N
2Oガス)、酸化炭素ガス(COガス、CO
2ガス)、炭化水素ガス(例えばCH
4)などから選ばれる反応性ガスとを用いる反応性スパッタにより形成することができる。
【0032】
本発明の第2の膜は、第1の膜のエッチングにおけるハードマスクとして機能する膜であり、第1の膜のエッチングにおいて用いられる塩素ガス(Cl
2)と酸素ガス(O
2)との混合ガスによる塩素酸素系ドライエッチングでは実質的にエッチングされない材料、換言すれば、塩素酸素系ドライエッチングに耐性を有する材料で構成される。また、第2の膜は、フッ素を含有するガス(CF
4、SF
6など)によるフッ素系ドライエッチングでエッチングされる材料であることが好ましい。第2の膜は、第1の膜のマスクパターンを形成した後に剥離されるような加工補助膜であってもよく、また、第1の膜のマスクパターンを形成した後に、フォトマスクのマスクパターンの一部として残存させて、光学膜の一部として機能させる膜(例えば、遮光膜、反射防止膜、位相シフト膜など)であってよい。即ち、本発明の第2の膜のマスクパターンは、エッチングマスクパターンであっても、フォトマスクパターンであってもよい。
【0033】
本発明の第2の膜は、ケイ素と酸素、又はケイ素と酸素と窒素とからなる。ケイ素を含有する材料で構成することにより、塩素酸素系ドライエッチングに耐性を有し、フッ素系ドライエッチングでエッチングされる材料とすることができる。また、本発明において、第2の膜は、Si−Si結合を有する材料で構成することが必要である。ケイ素と酸素、又はケイ素と酸素と窒素とからなるケイ素化合物で、Si−Si結合を有する材料は、ケイ素に対して、酸素、又は酸素及び窒素が化学量論量に対して不飽和であるケイ素化合物である。即ち、第2の膜が、ケイ素と酸素とからなる場合、ケイ素と酸素との原子比は、O/Si<2である。この原子比O/Siは、1.9以下、特に1.5以下、とりわけ1.3以下であることが好ましく、0.1以上、特に0.3以上であることが好ましい。一方、第2の膜が、ケイ素と酸素と窒素とからなる場合、ケイ素と酸素と窒素の原子比は、(2O+3N)/Si<4である。この原子比(2O+3N)/Siは、3.9以下、特に3.0以下、とりわけ2.6以下であることが好ましく、0.1以上、特に0.5以上であることが好ましい。
【0034】
このような材料で構成した第2の膜に接して後述するフォトレジスト膜を形成することにより、第2の膜とフォトレジスト膜との間に、優れた密着性が得られる。その結果、本発明の第2の膜上に形成したフォトレジスト膜からレジストパターンを形成すれば、フォトレジスト膜から微細なレジストパターンを形成しても、レジストパターンが、劣化や、倒れや、剥れを起こさず、安定して維持され、レジストパターンを用いたその後の第2の膜や第1の膜のエッチングにおいて、形状及び寸法精度が良好な、微細なマスクパターンが形成できる。一方、Si−Si結合を有しないケイ素化合物、例えばSiO
2の場合は、Si−Si結合を有するケイ素化合物の膜を用いた場合と比べて、微細なレジストパターンを安定して形成することができず、フォトマスクを用いたフォトリソグラフィにおいて十分な解像度を与えるマスクパターンが得られないため好ましくない。
【0035】
第2の膜中のケイ素の含有率は、34原子%以上、特に40原子%以上で、95原子%以下、特に80原子%以下であることが好ましい。一方、酸素は1原子%以上、特に10原子%以上で、66原子%以下、特に60原子%以下であることが好ましい。また、第2の膜が、窒素を含む場合、窒素は40原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましい。第2の膜は、1層で構成されていても、2層以上で構成されていてもよく、2層以上で構成されている場合は、各々の層のケイ素、酸素及び窒素の含有率を上述した範囲とすることが好ましい。
【0036】
第2の膜の膜厚は、薄い方が、フォトレジスト膜の厚さを薄くすることができるため好ましいが、薄すぎると第2の膜として十分に機能しなくなるため、ハードマスクとして用いるエッチング対象の第1の膜の種類によって異なるが、2nm以上、特に5nm以上で、20nm以下、特に10nm以下であることが好ましい。
【0037】
また、第2の膜のシート抵抗は、1×10
11Ω/□以下であることが好ましい。シート抵抗を1×10
11Ω/□以下とすれば、フォトレジスト膜を電子線により描画する際のチャージアップの影響を少なくして、フォトレジストパターンを描画することができるため好ましい。
【0038】
不飽和のケイ素化合物で構成された第2の膜を形成する方法としては、ケイ素を含むガス、例えば、モノシラン、ジクロロシラン、トリクロロシランなどを用いたCVDによる成膜でもよいが、ケイ素を含有するターゲットを少なくとも1つ用いたスパッタによる成膜の方が、簡単で制御性よく成膜することができるので好ましい。スパッタによる成膜方式は、DCスパッタ方式でも、RFスパッタ方式でもよく、特に制約はない。具体的には、例えば、ケイ素ターゲットを用い、スパッタガスとして、アルゴンガスなどの不活性ガスと、酸素ガス(O
2ガス)、窒素ガス(N
2ガス)、酸化窒素ガス(NO
2ガス、NOガス、N
2Oガス)などから選ばれる反応性ガスとを用いる反応性スパッタにより形成することができる。
【0039】
本発明のフォトレジスト膜のレジスト材料としては、特に制限はないが、化学増幅型レジストが好ましく、ネガ型の化学増幅型レジストで特に効果が大きい。化学増幅型レジスト、特にネガ型の化学増幅型レジストは電子線で描画されるものが好適に用いられ、ヒドロキシスチレン系又は(メタ)アクリル酸系の樹脂、及び酸発生剤を含有するものが好ましい。また、架橋剤を含有するものでもよく、クエンチャー及び界面活性剤から選ばれる1種以上の成分を含むものでもよい。フォトレジスト膜の膜厚は、150nm以下、特に100nm以下であることが好ましい。フォトレジスト膜の膜厚の下限は、特に限定されるものではないが、通常50nm以上である。フォトレジスト膜の形成は、従来公知の方法が適用できる。
【0040】
上述した本発明の第2の膜とフォトレジスト膜との組み合わせ、即ち、本発明のケイ素と酸素、又はケイ素と酸素と窒素とからなり、Si−Si結合を有する材料で構成された第2の膜に接して、化学増幅型レジストからなるフォトレジスト膜を設けることが、フォトマスクブランクとして又はフォトマスクを形成する際の製造工程において行われれば、密着性が向上するという効果が得られ、フォトレジスト膜の膜厚を150nm以下、特に100nm以下とすることにより、波長200nm以下の露光光を用いて、幅30nm以下、好ましくは幅20nm以下、より好ましくは10nm以下の微細パターンを形成するフォトリソグラフィ(光リソグラフィ)に用いる透過型フォトマスクにおいて、第1の膜のマスクパターンを良好な形状及び寸法精度で形成することができる。
【0041】
次に、
図4及び
図5を参照し、第1及び第2の態様のフォトマスクブランクを製造する方法、該フォトマスクブランクからフォトマスクを製造する方法、及びその際の第1の膜のマスクパターンの形成方法について説明する。
【0042】
図4は、フォトマスクブランクを製造する工程の一例の概略を示し、各工程における断面図を示す。まず、
図4(A)に示されるように、透明基板10を準備し、
図4(B)に示されるように、透明基板10上に第1の膜11を形成する(第1の膜の形成工程)。次に、第1の膜11上に第2の膜12を形成する(第2の膜の形成工程)ことにより、
図1(A)又は
図4(C)に示される第1の態様のフォトマスクブランク1を得ることができる。一方、第1の膜11上に第2の膜12を形成した後、更に、第2の膜12上にフォトレジスト膜13を形成する(フォトレジスト膜の形成工程)ことにより、
図3(A)又は
図4(D)に示される第2の態様のフォトマスクブランク1を得ることができる。
【0043】
図5は、
図4(C)に示される第1の態様のフォトマスクブランク又は
図4(D)に示される第2の態様のフォトマスクブランクからフォトマスクを製造する工程の一例の概略を示し、各工程における断面図を示す。まず、
図4(C)に示される第1の態様のフォトマスクブランクの場合は、第2の膜12上にフォトレジスト膜13を形成する(フォトレジスト膜の形成工程)。次に、いずれの態様の場合も、
図5(A)に示されるように、フォトレジスト膜13を、公知の方法、例えば、電子線描画などの方法によりパターン描画し、パターン描画後のレジストを現像することによりパターニングし、レジストパターン13aを形成する(レジストパターンの形成工程)。次に、
図5(B)に示されるように、レジストパターン13aをエッチングマスクとして、第2の膜12を、フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、第2の膜のマスクパターン12aを形成し(第2の膜のマスクパターンの形成工程)、
図5(C)に示されるように、レジストパターン13aを剥離する。なお、この場合は、第2の膜12のエッチング後にレジストパターン13aを剥離する例を示したが、レジストパターン13aをこの工程では剥離せずに残して、後述する第1の膜11のエッチング後に剥離してもよい。
【0044】
次に、第2の膜のマスクパターン12aをエッチングマスクとして、第1の膜11を、塩素酸素系ドライエッチングによりパターニングして、第1の膜のマスクパターン11aを形成し(第1の膜のマスクパターンの形成工程)、レジストパターン13aを残した場合には、この段階でレジストパターン13aを剥離して、
図1(B)又は
図5(D)に示される、第2の膜を、光学膜の一部として機能させる膜とした場合のフォトマスク101を得ることができる。また、第2の膜を、光学膜の一部として機能させる膜とした場合は、更に、必要に応じて別途レジストパターンを形成した後、第2の膜のマスクパターン11aの一部を剥離することも可能である。一方、第2の膜が加工補助膜である場合は、更に、必要に応じて別途レジストパターンを形成した後、第2の膜のマスクパターン12aの全部を剥離することにより、
図1(C)又は
図5(E)に示されるようなフォトマスク102を得ることができる。
【0045】
上記の工程により、第1及び第2の態様のフォトマスクとして、透明基板と、第1の膜のフォトマスクパターン又は第1の膜のフォトマスクパターン及び第2の膜のフォトマスクパターンとを備える透過型フォトマスクを製造することができ、フォトマスクブランクの透明基板上に形成された第1の膜から、第1の膜のマスクパターンを形成することができる。
【0046】
次に、
図6及び
図7を参照し、透明基板と第1の膜との間に、ハーフトーン位相シフト膜などの位相シフト膜が形成されている第1及び第2の態様のフォトマスクブランク、即ち、ハーフトーン位相シフトマスクブランクなどの位相シフトマスクブランクを製造する方法、該フォトマスクブランクからフォトマスクを製造する方法、及びその際の第1の膜のマスクパターンの形成方法について説明する。
【0047】
図6は、フォトマスクブランクを製造する工程の他の例の概略を示し、各工程における断面図を示す。まず、
図6(A)に示されるように、透明基板10を準備し、
図6(B)に示されるように、透明基板10上に位相シフト膜14を形成する(位相シフト膜の形成工程)。次に、
図6(C)に示されるように、位相シフト膜14上に第1の膜11を形成する(第1の膜の形成工程)。次に、第1の膜11上に第2の膜12を形成する(第2の膜の形成工程)ことにより、
図2(A)又は
図6(D)に示される第1の態様のフォトマスクブランク1を得ることができる。一方、第1の膜11上に第2の膜12を形成した後、更に、第2の膜12上にフォトレジスト膜13を形成する(フォトレジスト膜の形成工程)ことにより、
図3(B)又は
図6(E)に示されるフォトマスクブランク1を得ることができる。
【0048】
図7は、
図6(D)に示される第1の態様のフォトマスクブランク又は
図6(E)に示される第2の態様のフォトマスクブランクからフォトマスクを製造する工程の一例の概略を示し、各工程における断面図を示す。まず、
図6(D)に示される第1の態様のフォトマスクブランクの場合は、第2の膜12上にフォトレジスト膜を形成する(フォトレジスト膜の形成工程)。次に、いずれの態様の場合も、
図7(A)に示されるように、フォトレジスト膜13を、公知の方法、例えば、電子線描画などの方法によりパターン描画し、パターン描画後のレジストを現像することによりパターニングし、レジストパターン13aを形成する(レジストパターンの形成工程)。次に、
図7(B)に示されるように、レジストパターン13aをエッチングマスクとして、第2の膜12を、フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、第2の膜のマスクパターン12aを形成し(第2の膜のマスクパターンの形成工程)、
図7(C)に示されるように、レジストパターン13aを剥離する。なお、この場合は、第2の膜12のエッチング後にレジストパターン13aを剥離する例を示したが、レジストパターン13aをこの工程では剥離せずに残して、後述する第1の膜11のエッチング後に剥離してもよい。
【0049】
次に、
図7(D)に示されるように、第2の膜のマスクパターン12aをエッチングマスクとして、第1の膜11を、塩素酸素系ドライエッチングによりパターニングして、第1の膜のマスクパターン11aを形成し(第1の膜のマスクパターンの形成工程)、レジストパターン13aを残した場合には、この段階でレジストパターン13aを剥離する。次に、第1の膜のマスクパターン11aをエッチングマスクとして、位相シフト膜14を、フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、位相シフト膜のマスクパターン14aを形成すると共に、第2の膜のマスクパターン12aを剥離して、
図7(E)に示される、第1の膜を、光学膜の一部として機能させる膜とした場合のフォトマスク103を得ることができる。また、第1の膜を、光学膜の一部として機能させる膜とした場合は、更に、必要に応じて別途レジストパターンを形成した後、第1の膜のマスクパターン11aの一部を剥離することも可能である。一方、第1の膜が加工補助膜である場合は、更に、必要に応じて別途レジストパターンを形成した後、第1の膜のマスクパターン11aの全部を剥離することにより、
図7(F)に示されるようなフォトマスク104を得ることができる。
【0050】
上記の工程により、第1及び第2の態様のフォトマスクとして、透明基板と、ハーフトーン位相シフト膜などの位相シフト膜のマスクパターン、又はハーフトーン位相シフト膜などの位相シフト膜のマスクパターン及び第1の膜のフォトマスクパターンとを備える透過型フォトマスク、即ち、ハーフトーン位相シフトマスクなどの位相シフトマスクを製造することができ、フォトマスクブランクの透明基板上に形成された第1の膜から、第1の膜のマスクパターンを形成することができる。
【0051】
本発明のフォトマスクブランクは、波長200nm以下の露光光を用いて、フォトマスク上に幅45nm以下のフォトマスクパターンを形成するためのフォトマスクブランクとして、また、被転写物上に、幅40nm以下、好ましくは幅30nm以下、より好ましくは幅20nm以下、更に好ましくは10nm以下の微細パターンを形成するフォトリソグラフィ(光リソグラフィ)に用いる透過型フォトマスクを製造するためのフォトマスクブランクとして好適である。
【実施例】
【0052】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。
【0053】
[実施例1]
152mm角、厚さ約6mmの石英基板上に、MoSiONからなる位相シフト膜(厚さ75nm)をスパッタ法で形成した。スパッタガスとしては、酸素ガスと窒素ガスとアルゴンガスとを用い、ターゲットとしては、MoSi
2ターゲットとSiターゲットとの2種類を用いて、基板を30rpmで回転させながら成膜した。この位相シフト膜の組成を、X線光電子分光装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製 K−Alpha)を用いたESCAにより測定したところ、Mo:Si:O:N=1:4:1:4(原子比)であった。
【0054】
次に、位相シフト膜の上に、第1の膜として、石英基板側からCrNからなる層(厚さ30nm)と、CrONからなる層(厚さ20nm)との2層からなる遮光膜をスパッタ法で形成した。スパッタガスとしては、CrN層は窒素ガスとアルゴンガスを、CrON層は、酸素ガスと窒素ガスとアルゴンガスを用い、ターゲットとしては、金属クロムを用いて、基板を30rpmで回転させながら成膜した。この遮光膜の組成をESCAで測定したところ、CrN層はCr:N=9:1(原子比)、CrON層はCr:O:N=4:5:1(原子比)であった。
【0055】
次に、遮光膜の上に、第2の膜として、SiOからなる単層(厚さ5nm)のエッチングマスク膜(ハードマスク膜)をスパッタ法で形成した。スパッタガスとしては、酸素ガスとアルゴンとを用い、ターゲットとしてはSiを用いて、基板を30rpmで回転させながら成膜した。このエッチングマスク膜の組成をESCAで測定したところ、Si:O=1:1(原子比)であった。また、ESCAによるXPSプロファイルを
図8に示す。XPSプロファイルから、Si−O結合の結合エネルギーに相当する強度(面積強度)のSi−Si結合が確認された。
【0056】
更に、エッチングマスク膜の表面にHMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理を行った後、ネガ型の化学増幅型電子線レジスト(信越化学工業(株)製 SEBN−1637)を塗布してフォトレジスト膜(厚さ100nm)を形成して、フォトマスクブランクを得た。
【0057】
次に、フォトマスクブランク上のフォトレジスト膜に対して、電子線描画機で、種々の線幅のパターンを描画し、水酸化テトラメチルアンモニウムで現像し、純水でリンスして、レジストパターンを得た。得られたレジストパターンを、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を
図9に示す。この結果から、線幅40nm以上で、良好なレジストパターンが形成されていることがわかる。
【0058】
[比較例1]
152mm角、厚さ約6mmの石英基板上に、実施例1と同様の位相シフト膜及び遮光膜を形成した。次に、遮光膜の上に、SiO
2からなる単層(厚さ5nm)のエッチングマスク膜(ハードマスク膜)をスパッタ法で形成した。スパッタガスとしては、酸素ガスとアルゴンとを用い、ターゲットとしてはSiを用いて、基板を30rpmで回転させながら成膜した。このエッチングマスク膜の組成をESCAで測定したところ、Si:O=1:2(原子比)であった。また、ESCAによるXPSプロファイルを
図8に示す。XPSプロファイルから、Si−Si結合の結合エネルギーは確認されず、Si−Si結合が存在しないことが確認された。更に、実施例1と同様にしてフォトレジスト膜を形成して、フォトマスクブランクを得た。
【0059】
次に、フォトマスクブランク上のフォトレジスト膜から、実施例1と同様にして、レジストパターンを得た。得られたレジストパターンを、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を
図9に示す。この結果から、線幅50nm以上でしか、良好なレジストパターンが形成されていないことがわかる。