特許第6601393号(P6601393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6601393樹脂組成物、架橋物、および架橋物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6601393
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、架橋物、および架橋物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20191028BHJP
   C08L 23/24 20060101ALI20191028BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20191028BHJP
   C08J 9/06 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   C08L23/04
   C08L23/24
   C08J3/24 ZCES
   C08J9/06
【請求項の数】3
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-512806(P2016-512806)
(86)(22)【出願日】2015年4月8日
(86)【国際出願番号】JP2015061523
(87)【国際公開番号】WO2015156416
(87)【国際公開日】20151015
【審査請求日】2017年12月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-80031(P2014-80031)
(32)【優先日】2014年4月9日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-238556(P2014-238556)
(32)【優先日】2014年11月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-241451(P2014-241451)
(32)【優先日】2014年11月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】川島 康豊
(72)【発明者】
【氏名】野末 佳伸
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/040300(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/161278(WO,A1)
【文献】 特表2008−543978(JP,A)
【文献】 特開2014−040563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/04
C08L 23/24
C08J 3/24
C08J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の樹脂成分(1)と、下記の樹脂成分(2)と、有機過酸化物、架橋剤および架橋助剤からなる群から選ばれる少なくとも1種類の成分とを含有し、
樹脂成分(1)と樹脂成分(2)の総量を100重量%として、樹脂成分(1)の含有量が30重量%以上99重量%以下であり、樹脂成分(2)の含有量が1重量%以上70重量%以下である樹脂組成物(A)。
樹脂成分(1):
エチレンに基づく単量体単位を有する主鎖と、炭素原子数が5以上の分岐鎖を有するオレフィン重合体であって、前記分岐鎖の数が該オレフィン重合体を構成している炭素原子数1000個当たり20個以上、40個以下の範囲内であり、DSCによって観測される融解ピーク温度が10℃以上50℃以下の範囲内にあり、DSCによって観測される結晶化ピーク温度が0℃以上40℃以下の範囲内にあり、DSCによって観測される融解エンタルピーが50J/g以上であるオレフィン重合体
樹脂成分(2):
DSCによって観測される融解ピーク温度が50℃以上180℃以下の範囲内にあるオレフィン重合体
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物(A)を動的架橋して得られた架橋物であって、DSCによって観測される融解ピーク温度が10℃以上50℃以下の範囲内にあり、DSCによって観測される結晶化ピーク温度が0℃以上40℃以下の範囲内にあり、DSCによって観測される融解エンタルピーが30J/g以上である架橋物。
【請求項3】
請求項2に記載の架橋物の製造方法であって、有機過酸化物を含有する樹脂組成物(A)および発泡剤を含む樹脂組成物(I)を、金型内のキャビティに充填して該金型を閉じ、該樹脂組成物(I)を加熱しながら加圧した後、金型を開けて、該樹脂組成物(I)を架橋発泡させる架橋物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、該樹脂組成物の架橋物(例えば、架橋成形体または架橋発泡体)、および該架橋物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅の壁に、蓄熱性能を有する材料を含むボードを用いることが知られており、蓄熱材として、炭素数10以上のα−オレフィンの重合体が用いられることも知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、炭素原子数10以上の高級α−オレフィンから得られる結晶性高級α−オレフィン重合体が蓄熱材に用いられることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、炭素原子数6以上のα−オレフィンと、他のα−オレフィンとを重合して得られたα−オレフィン重合体と、架橋剤との反応により得られる架橋オレフィン重合体が蓄熱材に用いられることが記載されている。
【0005】
特許文献3には、重合体を構成するα−オレフィンの平均炭素原子数が6.0以上14以下であるα−オレフィン重合体の有機過酸化物存在下で分解させて得られたものが、潤滑油、インク等に用いられることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2003−070790号公報
【特許文献2】特開2006−131784号公報
【特許文献3】国際公開2012−070240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の特許文献に記載の重合体を蓄熱材として使用する場合に、その重合体からなる成形体の形状付与については、未だ満足のいくものでは無かった。例えば、重合体が蓄熱作用を有するため、成形体の冷却サイクルが長くなり、短時間で冷却が必要な架橋発泡成形体の製造などには不向きであった。
かかる状況の下、本発明が解決しようとする課題は、蓄熱性能に優れた架橋発泡体を容易に与えることができる樹脂組成物、該樹脂組成物の架橋物(例えば、架橋成形体または架橋発泡体)、および該架橋物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の樹脂成分(1)および下記の樹脂成分(2)を含有し、樹脂成分(1)と樹脂成分(2)の総量を100重量%として、樹脂成分(1)の含有量が30重量%以上99重量%以下であり、樹脂成分(2)の含有量が1重量%以上70重量%以下である樹脂組成物(A)に係るものである。
樹脂成分(1):エチレンに基づく単量体単位を有する主鎖と、炭素原子数が5以上の分岐鎖を有するオレフィン重合体であって、前記分岐鎖の数が該オレフィン重合体を構成している炭素原子数1000個当たり20個以上、40個以下の範囲内であり、示差走査熱量計(以下、DSCと称する)によって観測される融解ピーク温度が10℃以上50℃以下の範囲内にあり、DSCによって観測される結晶化ピーク温度が0℃以上40℃以下の範囲内にあり、DSCによって観測される融解エンタルピーが50J/g以上であるオレフィン重合体
樹脂成分(2):DSCによって観測される融解ピーク温度が50℃以上180℃以下の範囲内にあるオレフィン重合体
【発明の効果】
【0009】
本発明により、蓄熱性能に優れた架橋発泡体を容易に与えることができる樹脂組成物、該樹脂組成物の架橋物、および該架橋物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<樹脂組成物(A)>
樹脂組成物(A)は、樹脂成分(1)および樹脂成分(2)を含有し、樹脂成分(1)と樹脂成分(2)の総量を100重量%として、樹脂成分(1)の含有量が30重量%以上99重量%以下であり、樹脂成分(2)の含有量が1重量%以上70重量%以下である樹脂組成物である。
【0011】
<樹脂成分(1)>
樹脂成分(1)のオレフィン重合体は、エチレンに基づく単量体単位を主鎖に有する重合体である。エチレンに基づく単量体単位を有することにより、電子線や、有機過酸化物による架橋が効率的に進行し、架橋性を高めることができる。
【0012】
樹脂成分(1)のオレフィン重合体のエチレンに基づく単量体単位の含有量は、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは65モル%以上であり、更に好ましくは80モル%以上である。エチレンに基づく単量体単位の含有量は、蓄熱性能を高める観点から、好ましくは95モル%以下であり、より好ましくは90モル%以下である(但し、オレフィン重合体を構成する単量体単位の総量を100モル%とする)。
【0013】
樹脂成分(1)のオレフィン重合体は、炭素原子数5以上の分岐鎖を有し、その分岐鎖の数が該オレフィン重合体を構成している炭素原子数1000個当たり20個以上、40個以下である。蓄熱性能を高めるという観点から、炭素原子数5以上の分岐鎖の数は前記オレフィン重合体を構成している炭素原子数1000個当たり好ましくは23個以上、より好ましくは25個以上である。ゲル分率を高めるという観点から、炭素原子数5以上の分岐鎖の数は前記オレフィン重合体を構成している炭素原子数1000個当たり、好ましくは37個以下、より好ましくは35個以下である。
【0014】
炭素原子数5以上の分岐鎖の数は、カーボン核磁気共鳴(13C−NMR)法によって測定された13C−NMRスペクトルから、5〜50ppmに観測されるすべてのピークの面積の総和を1000として、炭素原子数5以上の分岐鎖が結合したメチン炭素に由来するピークの面積を求めることにより得られる。炭素原子数5以上の分岐鎖が結合したメチン炭素に由来するピークは38.2ppm付近(参考:Macromolecules,American Chemical Society,1991年,第32巻,第3817頁−第3819頁)に観測される。この炭素原子数5以上の分岐鎖が結合したメチン炭素に由来するピークの位置は、測定装置および測定条件によりずれることがあるため、通常、測定装置および測定条件毎に、標品の測定を行って決定する。また、スペクトル解析には、窓関数として、負の指数関数を用いることが好ましい。
【0015】
樹脂成分(1)のオレフィン重合体は、DSCによって観測される融解ピーク温度が10℃以上50℃以下の範囲内にあり、DSCによって観測される結晶化ピーク温度が0℃以上40℃以下の範囲内にあり、DSCによって観測される融解エンタルピーが50J/g以上である。なお、DSCによって測定される融解ピーク温度は、融解ピークの頂上(トップ)に対応する温度であり。同様に、DSCによって観測される結晶化ピーク温度は、結晶化ピークの頂上(トップ)に対応する温度である。
【0016】
前記オレフィン重合体の融解ピーク温度は、人が寒いと感じる環境下で、必要以上に吸熱することを抑えるという点から、好ましくは、15℃以上であり、より好ましくは20℃以上であり、更に好ましくは25℃以上である。融解ピーク温度は、人が暑いと感じる環境下で充分に吸熱するという点から好ましくは、40℃以下であり、より好ましくは35℃以下である。
【0017】
前記オレフィン重合体の結晶化ピーク温度は、人が寒いと感じる環境下で充分に発熱するという点から、好ましくは、10℃以上であり、より好ましくは15℃以上であり、更に好ましくは18℃以上である。結晶化ピーク温度は、人が暑いと感じる環境下で、必要以上に発熱することを抑えるという点から、好ましくは、37℃以下であり、より好ましくは35℃以下である。
【0018】
前記オレフィン重合体の融解エンタルピーは、蓄熱性能を高める観点から、好ましくは60J/g以上であり、より好ましくは70J/g以上であり、更に好ましくは80J/g以上である。通常、前記オレフィン重合体の融解エンタルピーは200J/g以下である。
【0019】
なお、前記融解ピーク温度、結晶化ピーク温度、および融解エンタルピーは、以下の方法により求めた値である。
示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製の示差走査型熱量計DSC−7型)により、窒素雰囲気下で、約10mgの試料を封入したアルミニウムパンを、(1)150℃で5分間保持し、(2)5℃/分で150℃から0℃まで降温し、(3)0℃で5分間保持し、(4)5℃/分で0℃から150℃程度まで昇温したときの、(2)の測定で得られた示差走査熱量測定曲線(すなわち、DSC曲線)を結晶化曲線とし、(4)の測定で得られたDSC曲線が融解曲線とする。結晶化ピーク温度は、結晶化曲線からブランクラインを差し引いて得られた曲線において、最も発熱量が多い温度である。融解ピーク温度は、融解曲線からブランクラインを差し引いて得られた曲線において、最も吸熱量が多い温度である。
融解エンタルピーは、融解曲線からブランクラインを差し引いて得られた曲線の積分値を熱量に換算し、得られた熱量を測定に供した試料の重量で割ることによって求める。融解曲線および結晶化曲線がブロードで、ブランクラインが十分に安定していない場合は、測定する温度範囲を、上記測定の温度範囲である0℃から150℃までの範囲よりも広くすることができる。
【0020】
樹脂成分(1)のオレフィン重合体は、極限粘度[η]が1.0以上5.0以下の範囲内にあることが好ましい。オレフィン重合体の極限粘度[η]としては、ゲル分率を向上させる点から、より好ましくは、1.2以上である。オレフィン重合体の極限粘度[η]としては、成形性の低下を抑える点から、より好ましくは、4.0以下であり、更に好ましくは3.0以下である。
【0021】
なお,[η]は,式(I)を用いて算出することができる。式(I)中の相対粘度(ηrel)は、ウベローデ型粘度計を用いて測定した、熱劣化防止剤としてブチルヒドロキシトルエン(BHT)を5重量%含むテトラリン100mlに、オレフィン重合体100mgを135℃で溶解したサンプル溶液と、BHTを0.5重量%含むテトラリン100mlのみからなるブランク溶液との降下時間から求められる。
[η]=23.3×log(ηrel) (I)
【0022】
樹脂成分(1)のオレフィン重合体は、重量平均分子量Mwが、100,000以上1,000,000以下であることが好ましい。重量平均分子量Mwは、ゲル分率を向上させる点や機械強度の低下を抑える点から、より好ましくは、150,000以上であり、更に好ましくは、200,000以上である。重量平均分子量Mwは、成形性の低下を抑える点から、より好ましくは、800,000以下であり、さらに好ましくは600,000以下である。
【0023】
樹脂成分(1)のオレフィン重合体は、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数10以上のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有する重合体である。炭素原子数10以上のα−オレフィンに基づく単量体単位は、人が寒いと感じる環境下で、必要以上に吸熱することを抑えるという点から、好ましくは、炭素原子数14以上のα−オレフィンに基づくものであり、より好ましくは、炭素原子数18以上のα−オレフィンに基づくものである。炭素原子数10以上のα−オレフィンに基づく単量体単位は、人が暑いと感じる環境下で充分に吸熱するという点から、好ましくは炭素原子数30以下のα−オレフィンに基づくものであり、より好ましくは、炭素原子数26以下のα−オレフィンに基づくものである。
【0024】
炭素原子数10以上のα−オレフィンとしては、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタコセン、1−トリアコンテン、1−ドトリアコンテン、1−テトラトリアコンテン、1−ヘキサトリアコンテン、1−オクタトリアコンテン及び1−テトラコンテンなどが挙げられる。本発明においては、これらのα−オレフィンはそれぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
樹脂成分(1)のオレフィン重合体が、α−オレフィンに基づく単量体単位が連続する構造を有すると、その構造部位でオレフィン重合体が分解し易い。α−オレフィンに基づく単量体単位が連続する構造の形成を抑え、さらにオレフィン重合体の分解を抑えるために、オレフィン重合体は、α−オレフィンに基づく単量体単位よりも、エチレンに基づく単量体単位を多く含有する方が好ましい。
【0026】
また、樹脂成分(1)のオレフィン重合体には、エチレン及び炭素原子数10以上のα−オレフィン以外の単量体を併用してもよい。該他の単量体としては、例えば、ジオレフィン、環状オレフィン、アルケニル芳香族炭化水素、α,β−不飽和カルボン酸、α,β−不飽和カルボン酸の金属塩、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル、不飽和ジカルボン酸、ビニルエステル、不飽和カルボン酸グリシジルエステル等があげられる。
【0027】
ジオレフィンとしては、例えば、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,4−ペンタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,5−シクロオクタジエン、5,8−エンドメチレンヘキサヒドロナフタレン、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロオクタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等があげられる。
【0028】
環状オレフィンとしては、例えば、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−ブチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネン、テトラシクロドデセン、トリシクロデセン、トリシクロウンデセン、ペンタシクロペンタデセン、ペンタシクロヘキサデセン、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセン、5−アセチルノルボルネン、5−アセチルオキシノルボルネン、5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−エトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−シアノノルボルネン、8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−メチル−8−テトラシクロドデセン、8−シアノテトラシクロドデセン等があげられる。
【0029】
アルケニル芳香族炭化水素としては、例えば、スチレン、2−フェニルプロピレン、2−フェニルブテン、3−フェニルプロピレン等のアルケニルベンゼン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、o−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、3−メチル−5−エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−sec−ブチルスチレン等のアルキルスチレン、ジビニルベンゼン等のビスアルケニルベンゼン、1−ビニルナフタレン等のアルケニルナフタレン等があげられる。
【0030】
α,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等があげられる。
【0031】
α,β−不飽和カルボン酸の金属塩としては、例えば、前記α,β−不飽和カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等があげられる。
【0032】
α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル等があげられる。
【0033】
不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸等があげられ、ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等があげられる。
【0034】
不飽和カルボン酸グリシジルエステルとしては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステル等があげられる。
【0035】
<樹脂成分(1)の製造方法>
樹脂成分(1)のオレフィン重合体は、例えば、式(1)で表される遷移金属化合物(A)と助触媒成分(B)を接触させて得られる重合用触媒を用いて製造することができる。
(式中、Mは周期表第4〜11族の遷移金属原子である。Cpは、シクロペンタジエン型アニオン骨格を有する基であり、Zは、シクロペンタジエン型アニオン骨格を有する基またはヘテロ原子を含有する基である。Qは、シクロペンタジエニル基とZを連結する架橋基である。Zが、シクロペンタジエン型アニオン骨格を有する基である場合、CpおよびZは同一でも異なっていてもよい。
Xは、それぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
炭素原子数1〜20のアルキル基、
環を構成する炭素原子数が3〜10のシクロアルキル基、
炭素原子数2〜20のアルケニル基、
炭素原子数7〜30のアラルキル基、
炭素原子数6〜30のアリール基、
炭素原子数1〜20のアルコキシ基、
炭素原子数7〜30のアラルキルオキシ基、
炭素原子数6〜30のアリールオキシ基、
置換シリル基、
置換アミノ基、
置換チオラート基、または
炭素原子数1〜20のカルボキシラート基を表す。
aは1≦a≦3を満足する数である。)
【0036】
Mは周期表第4〜11族の遷移金属原子であり、好ましくは、周期表第4族の遷移金属原子であり、具体的にはチタニウム原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子であり、特に好ましくはチタニウム原子およびジルコニウム原子である。
【0037】
CpまたはZにおけるシクロペンタジエン型アニオン骨格を有する基としては、例えば、置換または無置換のシクロペンタジエニル基、置換または無置換のインデニル基、置換または無置換のフルオレニル基を挙げることができる。具体的には、シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、n−ブチルシクロペンタジエニル基、tert−ブチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、エチル(メチル)シクロペンタジエニル基、tert−ブチル(メチル)シクロペンタジエニル基、イソプロピル(メチル)シクロペンタジエニル基、メチル(n−ブチル)シクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、インデニル基、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル基、2−メチルインデニル基、3−メチルインデニル基、4−メチルインデニル基、5−メチルインデニル基、6−メチルインデニル基、7−メチルインデニル基、2−tert−ブチルインデニル基、3−tert−ブチルインデニル基、4−tert−ブチルインデニル基、5−tert−ブチルインデニル基、6−tert−ブチルインデニル基、7−tert−ブチルインデニル基、2,3−ジメチルインデニル基、4,7−ジメチルインデニル基、2,4,7−トリメチルインデニル基、2−メチル−4−イソプロピルインデニル基、4,5−ベンズインデニル基、2−メチル−4,5−ベンズインデニル基、4−フェニルインデニル基、2−メチル−5−フェニルインデニル基、2−メチル−4−フェニルインデニル基、2−メチル−4−ナフチルインデニル基、フルオレニル基、2,7−ジメチルフルオレニル基および2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル基を例示することができる。
【0038】
CpまたはZにおけるシクロペンタジエン型アニオン骨格を有する基がMに配位する原子数ηは、シクロペンタジエン型アニオン骨格を有する基がとり得るいずれの値でもよいが、好ましくは5、3または1であり、より好ましくは5または3である。
【0039】
Zはヘテロ原子を含有する基であってもよく、例えば、−O−、−S−、−NR−、−PR−、下記式(i)〜(iv)のいずれかで表される基を表す。また、Zに含まれる原子のうち、Mと結合を形成する原子は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子である。
【0040】
【0041】
前記R、Rはそれぞれ独立して
水素原子、
ハロゲン原子、
炭素原子数1〜20のアルキル基、
環を構成する炭素原子数が3〜10のシクロアルキル基、
炭素原子数2〜20のアルケニル基、
炭素原子数2〜20のアルキニル基、
炭素原子数7〜30のアラルキル基、
炭素原子数6〜30のアリール基、
炭素原子数1〜20のアルコキシ基、
炭素原子数7〜30のアラルキルオキシ基、
炭素原子数6〜30のアリールオキシ基、
置換シリル基、または
環を構成する炭素原子数が3〜20のヘテロ環式化合物残基を表す。R、Rにおける上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記アルキニル基、上記アラルキル基、上記アリール基、上記アルコキシ基、上記アラルキルオキシ基、上記アリールオキシ基および上記ヘテロ環式化合物残基はそれぞれ置換基を有していてもよい。
【0042】
として好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数7〜30のアラルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基または置換シリル基である。
【0043】
として好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数7〜30のアラルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数7〜30のアラルキルオキシ基、炭素原子数6〜30のアリールオキシ基または置換シリル基である。また、隣接する2つのR同士は互いに連結して環を形成していてもよい。
【0044】
Zにおけるヘテロ原子を含有する基として、好ましくは、−NR−および前記式(i)で表される基である。
【0045】
Qは、CpとZを架橋する基であり、例えば、メチレン基、エチレン基およびプロピレン基等のアルキレン基;ジメチルメチレン基(イソプロピリデン基)およびジフェニルメチレン基等の置換アルキレン基;シリレン基、ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、テトラメチルジシリレン基、およびジメトキシシリレン基等の置換シリレン基;窒素原子、酸素原子、硫黄原子、およびリン原子等のヘテロ原子を例示することができる。好ましくは、メチレン基、エチレン基、ジメチルメチレン基(イソプロピリデン基)、ジフェニルメチレン基、ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジフェニルシリレン基またはジメトキシシリレン基である。
【0046】
Xのハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子を挙げることができる。
【0047】
Xにおける炭素原子数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ペンタデシル基、およびn−エイコシル基を挙げることができ、なかでも、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、イソブチル基またはアミル基である。これらのアルキル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子等のハロゲン原子を置換基として有していてもよい。ハロゲン原子を置換基として有しているアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、フルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パークロロプロピル基、パークロロブチル基、およびパーブロモプロピル基を挙げることができる。またこれらのアルキル基は、メトキシ基およびエトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基またはベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基等を置換基として有していてもよい。
【0048】
Xにおける炭素原子数2〜20のアルケニル基としては、例えば、アリル基、メタリル基、クロチル基、1,3−ジフェニル−2−プロペニル基を挙げることができ、なかでも、好ましくはアリル基またはメタリル基である。
【0049】
Xにおける炭素原子数7〜30のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、(2−メチルフェニル)メチル基、(3−メチルフェニル)メチル基、(4−メチルフェニル)メチル基、(2,3−ジメチルフェニル)メチル基、(2,4−ジメチルフェニル)メチル基、(2,5−ジメチルフェニル)メチル基、(2,6−ジメチルフェニル)メチル基、(3,4−ジメチルフェニル)メチル基、(3,5−ジメチルフェニル)メチル基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メチル基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(ペンタメチルフェニル)メチル基、(エチルフェニル)メチル基、(n−プロピルフェニル)メチル基、(イソプロピルフェニル)メチル基、(n−ブチルフェニル)メチル基、(sec−ブチルフェニル)メチル基、(tert−ブチルフェニル)メチル基、(n−ペンチルフェニル)メチル基、(ネオペンチルフェニル)メチル基、(n−ヘキシルフェニル)メチル基、(n−オクチルフェニル)メチル基、(n−デシルフェニル)メチル基、(n−ドデシルフェニル)メチル基、ナフチルメチル基、およびアントラセニルメチル基を挙げることができ、より好ましくはベンジル基である。これらのアラルキル基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基およびエトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基またはベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基等を置換基として有していてもよい。
【0050】
Xにおける炭素原子数6〜30のアリール基としては、例えば、フェニル基、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,3,4,5−テトラメチルフェニル基、2,3,4,6−テトラメチルフェニル基、2,3,5,6−テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、n−ペンチルフェニル基、ネオペンチルフェニル基、n−ヘキシルフェニル基、n−オクチルフェニル基、n−デシルフェニル基、n−ドデシルフェニル基、n−テトラデシルフェニル基、ナフチル基、およびアントラセニル基を挙げることができ、好ましくはフェニル基である。これらのアリール基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基およびエトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基またはベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基等を置換基として有していてもよい。
【0051】
Xにおける炭素原子数2〜20のアルケニル基としては、例えば、アリル基、メタリル基、クロチル基、1,3−ジフェニル−2−プロペニル基を挙げることができ、なかでも、好ましくはアリル基またはメタリル基である。
【0052】
Xにおける炭素原子数1〜20のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、ネオペントキシ基、n−ヘキソキシ基、n−オクトキシ基、n−ドデソキシ基、n−ペンタデソキシ基、およびn−イコソキシ基を挙げることができ、なかでも、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはtert−ブトキシ基である。これらのアルコキシ基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基およびエトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基またはベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基等を置換基として有していてもよい。
【0053】
Xにおける炭素原子数7〜30のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、(2−メチルフェニル)メトキシ基、(3−メチルフェニル)メトキシ基、(4−メチルフェニル)メトキシ基、(2,3−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,5−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,6−ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,5−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(ペンタメチルフェニル)メトキシ基、(エチルフェニル)メトキシ基、(n−プロピルフェニル)メトキシ基、(イソプロピルフェニル)メトキシ基、(n−ブチルフェニル)メトキシ基、(sec−ブチルフェニル)メトキシ基、(tert−ブチルフェニル)メトキシ基、(n−ヘキシルフェニル)メトキシ基、(n−オクチルフェニル)メトキシ基、(n−デシルフェニル)メトキシ基、ナフチルメトキシ基、およびアントラセニルメトキシ基を挙げることができ、なかでも、好ましくはベンジルオキシ基である。これらのアラルキルオキシ基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基およびエトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基またはベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基等を置換基として有していてもよい。
【0054】
Xにおける炭素原子数6〜30のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2,3−ジメチルフェノキシ基、2,4−ジメチルフェノキシ基、2,5−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、3,4−ジメチルフェノキシ基、3,5−ジメチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−3−メチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−5−メチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−メチルフェノキシ基、2,3,4−トリメチルフェノキシ基、2,3,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,6−トリメチルフェノキシ基、2,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,4,6−トリメチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−3,4−ジメチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−3,5−ジメチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−3,6−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチル−3−メチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−4,5−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ基、3,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,4,5−テトラメチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−3,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,4,6−テトラメチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−3,4,6−トリメチルフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチル−3,4−ジメチルフェノキシ基、2,3,5,6−テトラメチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−3,5,6−トリメチルフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチル−3,5−ジメチルフェノキシ基、ペンタメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、n−プロピルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、n−ブチルフェノキシ基、sec−ブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、n−ヘキシルフェノキシ基、n−オクチルフェノキシ基、n−デシルフェノキシ基、n−テトラデシルフェノキシ基、ナフトキシ基、およびアントラセノキシ基を挙げることができる。これらのアリールオキシ基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基およびエトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基またはベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基等を置換基として有していてもよい。
【0055】
Xにおける置換シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−プロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリ−n−ブチルシリル基、トリイソブチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基、ジメチル(フェニル)シリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、メチルビス(トリメチルシリル)シリル基、ジメチル(トリメチルシリル)シリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基が挙げられ、好ましくはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−プロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基などの炭素原子数3〜20のトリアルキルシリル基;メチルビス(トリメチルシリル)シリル基、ジメチル(トリメチルシリル)シリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基などの炭素原子数3〜20のハイドロカルビルシリル基を置換基として有するシリル基が挙げられる。
【0056】
Xにおける置換アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn−ブチルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジベンジルアミノ基またはジフェニルアミノ基といった炭素原子数2〜14のハイドロカルビルアミノ基が挙げられ、好ましくは、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基またはジベンジルアミノ基である。
【0057】
Xにおける置換チオラート基としては、例えば、チオフェノキシ基、2,3,4−トリメチルチオフェノキシ基、2,3,5−トリメチルチオフェノキシ基、2,3,6−トリメチルチオフェノキシ基、2,4,6−トリメチルチオフェノキシ基、3,4,5−トリメチルチオフェノキシ基、2,3,4,5−テトラメチルチオフェノキシ基、2,3,4,6−テトラメチルチオフェノキシ基、2,3,5,6−テトラメチルフェノキシ基、ペンタメチルフェノキシ基、2−フルオロチオフェノキシ基、3−フルオロチオフェノキシ基、4−フルオロフェノキシ基、ペンタフルオロチオフェノキシ基、2−トリフルオロメチルチオフェノキシ基、3−トリフルオロメチルチオフェノキシ基、4−トリフルオロメチルチオフェノキシ基、2,3−ジフルオロチオフェノキシ基、2,4−フルオロチオフェノキシ基、2,5−ジフルオロチオフェノキシ基、2−クロロチオフェノキシ基、2,3−ジクロロチオフェノキシ基、2,4−ジクロロチオフェノキシ基、2,5−ジクロロチオフェノキシ基、2−ブロモチオフェノキシ基、3−ブロモチオフェノキシ基、4−ブロモチオフェノキシ基、2,3−ジブロモチオフェノキシ基、2,4−ジブロモチオフェノキシ基、あるいは2,5−ジブロモチオフェノキシ基といった炭素原子数6〜12のハイドロカルビルチオラート基が挙げられ、好ましくはチオフェノキシ基、2,4,6−トリメチルチオフェノキシ基、3,4,5−トリメチルチオフェノキシ基、2,3,4,5−テトラメチルチオフェノキシ基、2,3,4,6−テトラメチルチオフェノキシ基、2,3,5,6−テトラメチルチオフェノキシ基、ペンタメチルチオフェノキシ基、ペンタフルオロチオフェノキシ基である。
【0058】
Xにおける炭素原子数1〜20のカルボキシラート基としては、例えば、アセテート基、プロピオネート基、ブチレート基、ペンタネート基、ヘキサノエート基、2−エチルヘキサノエート基またはトリフルオロアセテート基が挙げられ、好ましくは炭素原子数2〜10のハイドロカルビルカルボキシラート基であり、より好ましくは、アセテート基、プロピオネート基、2−エチルヘキサノエート基またはトリフルオロアセテート基である。
【0059】
Xとして、好ましくは塩素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基、フェニル基、フェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基、3,4,5−トリフルオロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−ペンタフルオロフェニルフェノキシ基またはベンジル基である。
【0060】
式(1)におけるaは1≦a≦3を満たす数であり、Mの価数に応じて適宜選択される。Mがチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子である場合、aは2であることが好ましい。
【0061】
遷移金属原子がチタン原子である式(1)で表される化合物としては、例えば、
【0062】
ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−メチルシクロペンタジエニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(3−メチルシクロペンタジエニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2,5−ジメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2,3−エチルメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2,4−エチルメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2,5−エチルメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(3,5−エチルメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2,3,4−トリメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロライド、
【0063】
ジメチルシリレンビス(インデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−メチルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−tert−ブチルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2,3−ジメチルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2,4,7−トリメチルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−イソプロピルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(4,5−ベンズインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンズインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−フェニルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(4−フェニルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−5−フェニルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−ナフチルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)チタンジクロライド、
【0064】
ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(インデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(メチルシクロペンタジエニル)(インデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(n−ブチルシクロペンタジエニル)(インデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(インデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(n−ブチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(インデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(インデニル)(フルオレニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(フルオレニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタンジクロライド、
【0065】
ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(5−メチル−3−フェニル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(5−メチル−3−トリメチルシリル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジアミル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(1−ナフトキシ−2−イル)チタンジクロライド、
【0066】
ジメチルシリレン(メチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(メチルシクロペンタジエニル)(3−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(メチルシクロペンタジエニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(メチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(メチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(メチルシクロペンタジエニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(メチルシクロペンタジエニル)(5−メチル−3−フェニル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(メチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(メチルシクロペンタジエニル)(5−メチル−3−トリメチルシリル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(メチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(メチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(メチルシクロペンタジエニル)(3,5−ジアミル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(メチルシクロペンタジエニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(メチルシクロペンタジエニル)(1−ナフトキシ−2−イル)チタンジクロライド、
【0067】
ジメチルシリレン(n−ブチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(n−ブチルシクロペンタジエニル)(3−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(n−ブチルシクロペンタジエニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(n−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(n−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(n−ブチルシクロペンタジエニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(n−ブチルシクロペンタジエニル)(5−メチル−3−フェニル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(n−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(n−ブチルシクロペンタジエニル)(5−メチル−3−トリメチルシリル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(n−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(n−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(n−ブチルシクロペンタジエニル)(3,5−ジアミル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(n−ブチルシクロペンタジエニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(n−ブチルシクロペンタジエニル)(1−ナフトキシ−2−イル)チタンジクロライド、
【0068】
ジメチルシリレン(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(3−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(5−メチル−3−フェニル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(5−メチル−3−トリメチルシリル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(3,5−ジアミル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(1−ナフトキシ−2−イル)チタンジクロライド、
【0069】
ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(5−メチル−3−フェニル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(5−メチル−3−トリメチルシリル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3,5−ジアミル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(1−ナフトキシ−2−イル)チタンジクロライド、
【0070】
ジメチルシリレン(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(3−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(5−メチル−3−フェニル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(5−メチル−3−トリメチルシリル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(3,5−ジアミル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(1−ナフトキシ−2−イル)チタンジクロライド、
【0071】
ジメチルシリレン(インデニル)(2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(インデニル)(3−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(インデニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(インデニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(インデニル)(5−メチル−3−フェニル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(インデニル)(5−メチル−3−トリメチルシリル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(インデニル)(3,5−ジアミル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(インデニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(インデニル)(1−ナフトキシ−2−イル)チタンジクロライド、
【0072】
ジメチルシリレン(フルオレニル)(2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(フルオレニル)(3−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(フルオレニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(フルオレニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(フルオレニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(フルオレニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(フルオレニル)(5−メチル−3−フェニル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(フルオレニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(フルオレニル)(5−メチル−3−トリメチルシリル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(フルオレニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(フルオレニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(フルオレニル)(3,5−ジアミル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(フルオレニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)チタンジクロライド、ジメチルシリレン(フルオレニル)(1−ナフトキシ−2−イル)チタンジクロライド、
【0073】
(tert−ブチルアミド)テトラメチルシクロペンタジエニル−1,2−エタンジイルチタンジクロライド、(メチルアミド)テトラメチルシクロペンタジエニル−1,2−エタンジイルチタンジクロライド、(エチルアミド)テトラメチルシクロペンタジエニル−1,2−エタンジイルチタンジクロライド、(tert−ブチルアミド)テトラメチルシクロペンタジエニルジメチルシランチタンジクロライド、(ベンジルアミド)テトラメチルシクロペンタジエニルジメチルシランチタンジクロライド、(フェニルフォスファイド)テトラメチルシクロペンタジエニルジメチルシランチタンジクロライド、(tert−ブチルアミド)インデニル−1,2−エタンジイルチタンジクロライド、(tert−ブチルアミド)テトラヒドロインデニル−1,2−エタンジイルチタンジクロライド、(tert−ブチルアミド)フルオレニル−1,2−エタンジイルチタンジクロライド、(tert−ブチルアミド)インデニルジメチルシランチタンジクロライド、(tert−ブチルアミド)テトラヒドロインデニルジメチルシランチタンジクロライド、(tert−ブチルアミド)フルオレニルジメチルシランチタンジクロライド、が挙げられる。
【0074】
また、上記化合物の「チタン」を「ジルコニウム」または「ハフニウム」に置き換えた化合物、「(2−フェノキシ)」を「(3−フェニル−2−フェノキシ)」、「(3−トリメチルシリル−2−フェノキシ)」、または「(3−tert−ブチルジメチルシリル−2−フェノキシ)」に置き換えた化合物、「ジメチルシリレン」を「メチレン」、「エチレン」、「ジメチルメチレン(イソプロピリデン)」、「ジフェニルメチレン」、「ジエチルシリレン」、「ジフェニルシリレン」、または「ジメトキシシリレン」に置き換えた化合物、「ジクロライド」を「ジフルオライド」、「ジブロマイド」、「ジアイオダイド」、「ジメチル、「ジエチル」、「ジイソプロピル」、「ジフェニル」、「ジベンジル」、「ジメトキシド」、「ジエトキシド」、「ジ(n−プロポキシド)」、「ジ(イソプロポキシド)」、「ジフェノキシド」、または「ジ(ペンタフルオロフェノキシド)」に置き換えた化合物も、式(1)で表される遷移金属化合物の例として挙げることができる。
【0075】
遷移金属化合物(A)として、式(1)で表される化合物は一種類のみを用いても、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
式(1)で表される遷移金属化合物は、特開平9−87313号公報、特開平6−340684号公報、特開平7−258321号公報、国際特許公開第95/00562号明細書などに記載の製造方法によって製造することが可能である。
【0077】
助触媒成分(B)は、遷移金属化合物(A)を活性化させ、重合可能とするものであれば特に制限はないが、例えば、有機アルミニウム化合物(B−1)およびホウ素化合物(B−2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を挙げることができる。
【0078】
有機アルミニウム化合物(B−1)は公知の化合物であってもよく、好ましくは下式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物またはそれらの混合物である。
(1)EAlY3−bで表される化合物(以下、有機アルミニウム化合物(B−1−1)と記載することもある)。
(2){−Al(E)−O−}で表される環状のアルミノキサン(以下、有機アルミニウム化合物(B−1−2)と記載することもある)。
(3)E{−Al(E)−O−}AlEで表される線状のアルミノキサン(以下、有機アルミニウム化合物(B−1−3)と記載することもある)。
式中、E、E、Eは炭素数1〜8のハイドロカルビル基であり、全てのE、全てのE及び全てのEは同じか異なり、Yは水素原子又はハロゲン原子を表し、全てのYは同じか異なり、bは0<b≦3の数、cは2以上の整数、dは1以上の整数をそれぞれ表す。
【0079】
有機アルミニウム化合物(B−1−1)として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、およびトリヘキシルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジプロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムハクロライド、およびジヘキシルアルミニウムクロライドのようなジアルキルアルミニウムクロライド;メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、およびヘキシルアルミニウムジクロライドのようなアルキルアルミニウムジクロライド;ならびにジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、およびジヘキシルアルミニウムハイドライドのようなジアルキルアルミニウムハイドライドを例示することができる。中でも、好ましくはトリアルキルアルミニウムであり、より好ましくはトリエチルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムである。
【0080】
上式におけるEおよびEとして、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ノルマルペンチル基、およびネオペンチル基のようなアルキル基を例示することができる。中でも、好ましくはメチル基またはイソブチル基である。cは2以上の整数、好ましくは2〜40の整数であり、dは1以上の整数、好ましくは1〜40の整数である。
【0081】
上記のアルミノキサンの製造方法は特に制限されず、公知の方法であってもよい。製造方法とてし、トリアルキルアルミニウム(例えば、トリメチルアルミニウム)を適当な有機溶剤(例えば、ベンゼンまたは脂肪族ハイドロカルビル)に溶かした溶液を水と接触させる方法や、トリアルキルアルミニウム(例えば、トリメチルアルミニウム)を結晶水を含んでいる金属塩(例えば、硫酸銅水和物)に接触させる方法を例示することができる。
【0082】
上記のホウ素化合物(B−2)として、以下の化合物を例示することができる。
(1)式BR131415で表されるホウ素化合物(以下、ホウ素化合物(B−2−1)と記載することもある)。
(2)式M2+(BR13141516で表されるホウ素化合物(以下、ホウ素化合物(B−2−2)と記載することもある)。
(3)式(M−H)(BR13141516で表されるホウ素化合物(以下、ホウ素化合物(B−2−3)と記載することもある)。
式中、R13〜R16はハロゲン原子、1〜20個の炭素原子を含むハイドロカルビル基、1〜20個の炭素原子を含むハロゲン化ハイドロカルビル基、1〜20個の炭素原子を含む置換シリル基、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ基または2〜20個の炭素原子を含む2置換アミノ基であり、それらは同じか異なり、好ましくはハロゲン原子、1〜20個の炭素原子を含むハイドロカルビル基、または1〜20個の炭素原子を含むハロゲン化ハイドロカルビル基であり、M2+は無機または有機のカチオンであり、Mは中性ルイス塩基であり、(M−H)はブレンステッド酸である。
化合物(B−2−1)として、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4−トリフルオロフェニル)ボラン、およびフェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボランを例示することができる。中でも、最も好ましくはトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。
【0083】
化合物(B−2−2)中のM2+として、フェロセニウムカチオン、アルキル置換フェロセニウムカチオン、銀陽イオンおよびトリフェニルメチルカチオンを例示することができる。化合物(B−2−2)中の(BR13141516として、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,2,4−トリフルオロフェニル)ボレート、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートを例示することができる。化合物(B−2−2)として、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなどを例示することができる。中でも、最も好ましくは、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0084】
化合物(B−2−3)の(M−H)として、トリアルキル置換アンモニウム、N,N−ジアルキルアニリニウム、ジアルキルアンモニウム、およびトリアリールホスホニウムを例示することができ、(BR13141516として前述と同様のものを例示することができる。化合物(B−2−3)として、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ノルマルブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ノルマルブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびトリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを例示することができる。中でも、最も好ましくは、トリ(ノルマルブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、もしくは、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0085】
助触媒成分(B)として、好ましくは上記の有機アルミニウム化合物(B−1−2)および/または有機アルミニウム化合物(B−1−3)、または有機アルミニウム化合物(B−1−1)とホウ素化合物(B−2)との組合せである。
【0086】
上記重合用触媒を、スラリー重合、気相重合およびバルク重合のような重合体粒子の形成を伴う重合に適用する場合、上記の助触媒成分として、例えば、アルミノキサン(a)と粒子(b)とを接触させて得られる改質された粒子が好適に用いられる。
該アルミノキサン(a)として好ましくは前記有機アルミニウム化合物(B−1−2)および(B−1−3)である。
【0087】
その他の改質された粒子としては、例えば、特開2003−171412、特開2003−171413、特開2005−126627、特開2005−126628、特開2007−269997、特開2012−31154、特開2012−31397に記載の改質された粒子を好適に挙げることができる。
【0088】
遷移金属錯体(A)と助触媒成分(B)との接触処理は、遷移金属錯体(A)と助触媒成分(B)とが接触し、触媒が形成されるならば、どのような手段によってもよく、あらかじめ各成分を溶媒で希釈して、もしくは希釈せずに遷移金属錯体(A)と助触媒成分(B)とを混合して接触させる方法や、遷移金属錯体(A)と助触媒成分(B)とを別々に重合槽に供給して重合槽の中でこれらを接触させる方法を取ることができる。ここで、助触媒成分(B)としては複数種類の助触媒成分を組み合わせて使用する場合があるが、それらのうちの一部をあらかじめ混合して使用してもよいし、別々に重合槽に供給して使用してもよい。
【0089】
助触媒成分(B)として有機アルミニウム化合物(B−1)を用いる場合、遷移金属錯体(A)に対する(B−1)のモル比は0.01〜10000であり、好ましくは1〜5000である。助触媒成分(B)としてホウ素化合物(B−2)を用いる場合、遷移金属錯体(A)に対する(B−2)のモル比は0.01〜100であり、好ましくは1.0〜50である。
【0090】
重合反応槽において重合反応前に触媒を製造する場合、各成分を溶液状態または溶媒に懸濁もしくはスラリー化した状態で供給する際の濃度は、重合反応槽に各成分を供給する装置の性能などの条件により、適宜選択される。
一般に、遷移金属錯体(A)の濃度は、通常0.00001〜100mol/Lであり、好ましくは、0.0001〜10mol/Lであり、より好ましくは、0.0001〜5mol/Lである。有機アルミニウム化合物(B−1)の濃度は、Al原子換算で、通常0.01〜10000mol/Lであり、好ましくは、0.05〜5000mol/Lであり、より好ましくは、0.1〜2000mol/Lである。ホウ素化合物(B−2)の濃度は、通常0.00001〜500mol/Lであり、好ましくは、0.0001〜250mol/Lであり、より好ましくは、0.01〜100mol/Lである。
【0091】
遷移金属錯体(A)、(B−1)および(B−2)を接触させる際は、有機アルミニウム化合物(B−1)としては前記の有機アルミニウム化合物(B−1−1)が好ましく、ホウ素化合物(B−2)としては、ホウ素化合物(B−2−1)またはホウ素化合物(B−2−2)が好ましい。
【0092】
重合方法としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、またはメチレンジクロライド等のハロゲン化炭化水素を溶媒として用いる溶媒重合法、またはスラリー重合法、気相重合法、バルク重合法などがあげられる。
【0093】
重合反応の温度および時間は、所望の平均分子量と触媒の活性度および使用量を考慮して決定することができる。重合温度は通常、−50℃〜200℃の範囲を取り得るが、特に、−20℃〜100℃の範囲が好ましく、重合圧力は通常、常圧〜50MPaが好ましい。重合時間は、一般的に、目的とするポリマーの種類、反応装置により適宜決定される。また、重合体の分子量を調節するために水素等の連鎖移動剤を添加することもできる。
【0094】
重合反応に溶媒を使用する場合、溶媒中の各化合物の濃度は、特に制限はない。溶媒中の遷移金属錯体(A)の濃度は、例えば、1×10−8mmol/L〜10mol/Lの範囲を選択でき、助触媒成分(B)の濃度は、例えば、1×10−8mmol/L〜10mol/Lの範囲を選択することができる。また、オレフィン:溶媒は体積比で100:0〜1:1000の範囲を選択することができる。但し、これらの範囲は例示であって、それらに限定される意図ではない。また、溶媒を使用しない場合も、上記の範囲を参考に適宜濃度の設定をすることができる。
【0095】
<樹脂成分(2)>
樹脂成分(2)のオレフィン重合体は、DSCによって観測される融解ピーク温度が50℃以上180℃以下の範囲内にあるオレフィン重合体である。樹脂成分(2)の融解ピーク温度は、樹脂成分(1)の融解ピーク温度と同様の方法で求められる。
【0096】
樹脂成分(2)のオレフィン重合体としては、エチレン−α−オレフィン共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0097】
樹脂成分(2)のエチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンに基づく単量体単位とα−オレフィンに基づく単量体単位とを含む共重合体である。該α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オタテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等があげられ、これらは単独で用いられていてもよく、2種以上が併用されていてもよい。α−オレフィンとしては、好ましくは、炭素原子数4〜8のα−オレフィンであり、更に好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセン、または1−オクテンである。
【0098】
樹脂成分(2)エチレン−α−オレフィン共重合体、および高圧法低密度ポリエチレンの密度は、860kg/m以上960kg/m以下である。
【0099】
樹脂成分(2)のポリプロピレンは、プロピレン単独重合体、プロピレンランダム共重合体、またはプロピレン重合材料が挙げられる。ポリプロピレンにおけるプロピレンに基づく単量体単位の含有量は、50重量%を超え100重量%以下である(但し、ポリプロピレンを構成する単量体単位の総量を100重量%とする)。また、ポリプロピレンは、JIS K7121に従って昇温速度および降温速度が5℃/分の条件で測定した融点が、100℃以上であることが好ましい。樹脂成分(2)におけるポリプロピレンは市販品であってもよい。
樹脂成分(2)におけるポリプロピレンは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
プロピレンランダム共重合体として、例えば、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体等が挙げられる。該α−オレフィンとしては、炭素原子数4〜10のα−オレフィンが好ましく、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の直鎖状α−オレフィン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン等の分岐状α−オレフィンが挙げられる。該α−オレフィンは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
プロピレン単独重合体およびプロピレンランダム共重合体の製造方法としては、公知のチーグラー・ナッタ系触媒、または、メタロセン系錯体および非メタロセン系錯体等の公知の錯体系触媒を用いて、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等の公知の重合法が挙げられる。
【0102】
プロピレン重合材料は、プロピレン単独重合体成分(I)と、プロピレンおよび炭素原子数4以上のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する単量体単位と、エチレンに由来する単量体単位とを有するエチレン共重合体成分(II)とからなる重合材料である。
【0103】
エチレン共重合体成分(II)における炭素原子数4以上のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等が挙げられる。炭素原子数4以上のα−オレフィンとして、炭素原子数4以上20以下のα−オレフィンが好ましく、炭素原子数4以上10以下のα−オレフィンがより好ましく、1−ブテン、1−ヘキセン、または1−オクテンがさらに好ましい。炭素原子数4以上のα−オレフィンは、単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
エチレン共重合体成分(II)として、例えば、プロピレン−エチレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体等が挙げられる。エチレン共重合体成分(II)はランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
【0105】
プロピレン重合材料は、重合触媒を用いて、多段重合により製造することができる。例えば、前段の重合工程でプロピレン単独重合体成分(I)を製造し、後段の重合工程でエチレン共重合体成分(II)を製造することにより、プロピレン重合材料を製造することができる。
プロピレン重合材料の製造に使用する重合触媒としては、例えば、チーグラー型触媒系、チーグラー・ナッタ型触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物、該遷移金属化合物と反応してイオン性の錯体を形成する化合物、及び有機アルミニウム化合物からなる触媒系等が挙げられる。
また、上記の重合触媒の存在下で、予備重合触媒を用いてもよい。予備重合触媒としては、例えば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平5−194685号公報、特開平7−216017号公報、特開平9−316147号公報、特開平10−212319号公報、特開2004−182981号公報に記載の触媒系が挙げられる。
【0106】
プロピレン重合材料の製造における重合方法としては、バルク重合、溶液重合、スラリー重合又は気相重合等が挙げられる。溶液重合およびスラリー重合で用いる不活性炭化水素溶媒としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等が挙げられる。これらの重合方法は、2つ以上組み合わせてもよく、バッチ式または連続式のいずれであってもよい。プロピレン重合材料の製造における重合方法としては、連続式の気相重合、バルク重合と気相重合を連続的に行うバルク−気相重合が好ましい。
【0107】
樹脂成分(2)のポリプロピレンとして、好ましくは、プロピレン単独重合体である。
【0108】
本発明の前記樹脂組成物(A)は、架橋されて架橋物を与えることができる。1つの態様において、該架橋物は後述する架橋成形体であり、他の態様において、該架橋物は後述する架橋発泡体である。
該架橋物は、前記樹脂組成物(A)、発泡剤、および有機過酸化物を含む樹脂組成物(I)を、金型内のキャビティに充填して該金型を閉じ、該樹脂組成物(I)を加熱しながら加圧した後、金型を開けて、該樹脂組成物(I)を架橋発泡させる方法により製造することができる。樹脂組成物(I)の架橋は、主に、前記キャビティ内において、樹脂組成物(I)を前記金型で加熱しながら該金型で加圧することにより行われ、樹脂組成物(I)の発泡は、主に、前記金型を開け、それにより該キャビティ内を除圧することにより行われる。詳細な方法は後述する。
【0109】
<架橋成形体>
一つの態様において、本発明の架橋物は架橋成形体である。
本発明の架橋成形体は、樹脂組成物(A)を架橋させて得られる成形体である。
本発明の架橋成形体は、DSCによって観測される融解ピーク温度が10℃以上50℃以下の範囲内にあり、DSCによって観測される結晶化ピーク温度が0℃以上40℃以下の範囲内にあり、DSCによって観測される融解エンタルピーが30J/g以上である。架橋成形体の融解ピーク温度、結晶化ピーク温度、および融解エンタルピーは、樹脂成分(1)の融解ピーク温度、結晶化ピーク温度、および融解エンタルピーと同様の方法で求められる。
【0110】
融解ピーク温度は、人が寒いと感じる環境下で、必要以上に吸熱することを抑えるという点から、好ましくは、15℃以上である。融解ピーク温度は、人が暑いと感じる環境下で、充分に吸熱するという点から、好ましくは、40℃以下である。
【0111】
結晶化ピーク温度は、人が寒いと感じる環境下で、充分に発熱するという点から、好ましくは、10℃以上である。結晶化ピーク温度は、人が暑いと感じる環境下で、必要以上に発熱することを抑える点から、好ましくは、37℃以下である。
【0112】
融解エンタルピーは、蓄熱性能を高める観点から、好ましくは50J/g以上である。
通常、オレフィン重合体の架橋成形体の融解エンタルピーは200J/g以下である。
【0113】
本発明の架橋成形体のゲル分率は、60%以上であり、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、最も好ましくは90%以上である。ゲル分率は、架橋成形体の架橋度合いを示すものであり、架橋成形体のゲル分率が高いということは、架橋成形体を構成する樹脂成分のうち、より多くの成分が架橋して、強固なネットワーク構造が形成されていることを意味し、形状保持性が向上し、変形しにくいことを意味する。
【0114】
なお、ゲル分率は、以下のような方法で求めることができる。測定試料を、100メッシュの網篭に入れ、その状態で沸騰キシレン中に投入し、8時間還流操作を行う。網篭中に残存したゲルを風乾した後、真空乾燥させることで得られる、抽出されたゲルの重量を測定し、網篭に投入した試料の重量を用いて、以下の式に基づきゲル分率(重量%)を算出する。
ゲル分率=(ゲル重量/全試料重量)×100
【0115】
架橋成形体の形状としては、特に限定されないが、シート形状、ベッドパッドのような体にフィットする形状、枕の中に充填するビーズ状等が挙げられ、好ましくはシート形状である。
【0116】
樹脂組成物(A)を架橋する方法としては、電離性放射線を照射する方法や有機過酸化物を用いて架橋する方法が挙げられる。
【0117】
樹脂組成物(A)に電離性放射線を照射し、架橋を行う場合に、あらかじめ樹脂組成物(A)を所望の形状に成形する。成形方法としては、押出成形、射出成形、プレス成形などが好適に用いられる。
【0118】
樹脂組成物(A)の成形シートに照射する電離性放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線などが挙げられる。これらのうちコバルト−60のγ線、または電子線が好ましい。樹脂組成物(A)の成形体がシート状である場合、電離性放射線は少なくとも一面から照射すればよい。
【0119】
電離性放射線の照射は、電離性放射線照射装置を用いて行われ、照射量は、通常5〜300kGyであり、好ましくは30〜60kGyである。樹脂組成物(A)を用いることにより、通常と比べて低い照射量で高い架橋度の架橋成形体を得ることができる。
【0120】
電離性放射線によって架橋させる場合に、架橋助剤を用いることにより、より架橋度の高い架橋成形体を得ることができる。架橋助剤とは、架橋タイプの熱可塑性樹脂組成物の架橋度を高め、樹脂組成物の機械的特性を向上するためのものであり、分子内に二重結合を複数持つ化合物が好ましく用いられる。架橋助剤としては、例えば、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、トルイレンビスマレイミド、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、p−キノンジオキシム、ニトロベンゼン、ジフェニルグアニジン、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリスチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルメタクリレート等を挙げることができる。また、これらの架橋助剤は、複数のものを組み合せて使用してもよい。
【0121】
架橋助剤の添加量は、樹脂成分(1)および樹脂成分(2)の含有量の合計100重量部に対して、0.01〜4.0重量部であることが好ましく、0.05〜2.0重量部であることがより好ましい。
【0122】
有機過酸化物を用いて架橋成形体を製造する方法としては、例えば、以下の製造方法が挙げられる。公知の混練方法によって、樹脂組成物(A)と有機過酸化物と必要に応じて架橋助剤とを、有機過酸化物の分解温度以下で混練して、組成物を得た後、得られた組成物を、公知の成形方法によって、有機過酸化物の分解温度以上で加熱および加圧した後、冷却し、架橋成形体を製造する方法が挙げられる。公知の成形方法としては、押出成形、射出成形、プレス成形などが挙げられる。
【0123】
また有機過酸化物を用いて架橋成形体を製造する方法として、公知の混練方法によって、樹脂組成物(A)と有機過酸化物と必要に応じて架橋助剤とを、有機過酸化物の分解温度以上で混練して、組成物を得た後、得られた組成物を、公知の成形方法によって、架橋成形体を製造する方法が挙げられる。
公知の成形方法としては、押出成形、射出成形、プレス成形などが挙げられる。樹脂組成物(A)と有機過酸化物と必要に応じて架橋助剤とを、有機過酸化物の分解温度以上で混練することを動的な熱処理または動的架橋という。
【0124】
動的な熱処理または動的架橋に用いられる溶融混練装置として、二軸押出機やバンバリーミキサーのような公知の装置を例示することができる。動的な熱処理または動的架橋について、詳しくは、Thermoplastic Elastomers 2nd.ed.,153−190(Hanser Gardner Publications,1996)等の文献に記載されている。
【0125】
動的な熱処理または動的架橋における温度は、通常100℃以上250℃以下であり、動的な熱処理または動的架橋における時間は、通常1分以上30分以下である。また、動的な熱処理または動的架橋における混練は、全成分を一括して混練してもよいし、一部の成分を混練した後に残りの成分を加えて混練してもよく、混練は1回または2回以上してもよい。
【0126】
樹脂成分(1)および樹脂成分(2)の総量を100重量%として、動的な熱処理または動的架橋する樹脂組成物(A)における樹脂成分(1)の含有量は、30重量%以上90重量%以下であり、樹脂成分(2)の含有量が1重量%以上70重量%以下である。成形体の形状保持性を高めるために、樹脂成分(2)の含有量は、好ましくは5重量%以上であり、より好ましくは10重量%以上であり、さらに好ましくは15重量%以上である。成形体の蓄熱性を高めるために、樹脂成分(2)の含有量は、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、さらに好ましくは30重量%以下である。
【0127】
有機過酸化物によって架橋させる場合、樹脂成分(1)および樹脂成分(2)の流動開始温度以上の分解温度を有する有機過酸化物が好適に用いられ、例えば、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチルパーオキシヘキシン、α,α−ジ−tert−ブチルパーオキシイソプロピルベンゼン、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、などをあげることができる。
【0128】
加工温度を下げる観点から、低い分解温度を有する有機過酸化物が好ましく、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネートが好ましい。
【0129】
架橋成形体を製造する工程では、必要に応じて、樹脂組成物(A)に公知の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、難燃剤、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、抗ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、無滴剤、顔料、フィラー等があげられる。これらの添加剤成分は架橋処理をする前に、樹脂組成物(A)と混練することにより添加することができる。
【0130】
<架橋発泡体>
一つの態様において、本発明の架橋物は架橋発泡体である。
本発明の架橋発泡体は、樹脂組成物(A)を架橋発泡させて得られる発泡体である。
【0131】
本発明の架橋発泡体は、融解曲線から観察される融解ピーク温度が10℃以上50℃以下の範囲内にあり、結晶化曲線から観察される結晶化ピーク温度が0℃以上40℃以下の範囲内にあり、融解曲線から求められる融解エンタルピーが30J/g以上である。
【0132】
架橋発泡体の融解ピーク温度は、人が寒いと感じる環境下で、必要以上に吸熱することを抑える点や、好ましくは、15℃以上である。融解ピーク温度は、人が暑いと感じる環境下で、充分に吸熱するという点や、好ましくは、40℃以下である。
【0133】
架橋発泡体の結晶化ピーク温度は、人が寒いと感じる環境下で、充分に発熱するという点や好ましくは、10℃以上である。結晶化ピーク温度は、人が暑いと感じる環境下で、必要以上に発熱することを抑える点や、好ましくは、37℃以下である。
【0134】
架橋発泡体の融解エンタルピーは、蓄熱性能および断熱性を高める観点から、好ましくは50J/g以上である。通常、架橋発泡体の融解エンタルピーは200J/g以下である。
【0135】
なお、本発明の架橋発泡体の前記融解ピーク温度、結晶化ピーク温度、および融解エンタルピーは、以下の方法により求めた値である。
示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製の示差走査型熱量計DSC−7型)により、例えば、約10mgの試料を封入したアルミニウムパンを、(1)150℃で5分間保持し、(2)5℃/分で150℃から0℃まで降温し、(3)0℃で2分間保持し、(4)5℃/分で0℃から150℃程度まで昇温したときの、(2)の測定で得られたDSC曲線が結晶化曲線であり、(4)の測定で得られたDSC曲線が融解曲線である。結晶化ピーク温度は、結晶化曲線からブランクラインを差し引いて得られた曲線において、最も発熱量が多い温度である。融解ピーク温度は、融解曲線からブランクラインを差し引いて得られた曲線において、最も吸熱量が多い温度である。融解エンタルピーΔH(J/g)は、融解曲線からブランクラインを差し引いて得られた曲線の積分値を熱量に換算し、得られた熱量を測定に供した試料の重量で割ることによって求める。融解曲線および結晶化曲線がブロードで、ブランクラインが十分に安定していない場合は、測定する温度範囲を、上記測定の温度範囲である0℃から150℃までの範囲よりも広くすることができる。また、発泡体が測定用のアルミニウムパンに入らないときは加熱によりプレスシートとした後にアルミニウムパンの中に供することができる。
【0136】
本発明の架橋発泡体のゲル分率は、60%以上であり、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上である。ゲル分率は、架橋発泡体の架橋度合いを示すものであり、架橋発泡体のゲル分率が高いということは、架橋発泡体を構成する樹脂成分のうち、多くの成分が架橋して、強固なネットワーク構造が形成されていることを意味し、形状保持性が向上しており、変形しにくいことを意味する。
【0137】
なお、ゲル分率は、以下のような方法で求めることができる。測定試料を、100メッシュの網篭に入れ、その状態で沸騰キシレン中に投入し、8時間還流操作を行う。網篭中に残存したゲルを風乾した後、真空乾燥させることで得られる、抽出されたゲルの重量を測定し、網篭に投入した試料の重量を用いて、以下の式に基づきゲル分率(重量%)を算出する。
ゲル分率=(ゲル重量/全試料重量)×100
【0138】
本発明の架橋発泡体の形状としては、例えば、シート形状、ベッドパッドのような体にフィットする形状、枕の中に充填するビーズ状等が挙げられ、好ましくはシート形状である。
【0139】
架橋発泡体の製造方法は何でもよく、押出発泡成形、射出発泡成形、加圧発泡成形などが好適に用いられる。
加圧発泡成形方法では、(1)金型内のキャビティに樹脂組成物を充填し、(2)型内の樹脂組成物を加圧プレス機等により加圧(保圧)下加熱して、架橋剤と発泡剤とを分解させ、(3)金型を除圧して、金型から架橋発泡体を取り出す、ことにより架橋発泡体を製造する。前記工程(2)で加圧下加熱を行う時間、温度、圧力は、用いる金型内のキャビティの深さ、架橋剤および発泡剤の種類や量などに応じて適宜定められる。
【0140】
本発明の架橋発泡体の製造方法としては、例えば、本発明の樹脂組成物(A)、発泡剤、および有機過酸化物を含む樹脂組成物(I)を、金型内のキャビティに充填し、該金型内で該有機過酸化物の1分間半減期温度以上に加熱しながら加圧した後、金型を開けて架橋発泡体を製造する方法(以下、これを第1方法と称する)、本発明の樹脂組成物(A)および発泡剤を含む樹脂組成物(II)に電離性放射線を照射して架橋成形体を製造した後、該架橋成形体を加熱して架橋発泡体を製造する方法(以下、これを第2方法と称する)などがあげられる。
【0141】
前記第1方法を以下に具体的に説明する。
有機過酸化物としては、本発明の架橋成形体の製造に用いることができる有機過酸化物が挙げられる。
【0142】
樹脂組成物(A)、発泡剤および有機過酸化物を含む樹脂組成物(I)を、前記発泡剤の分解温度未満であって、有機過酸化物の1分間半減期温度未満である温度で溶融混練した後、該有機過酸化物の1時間半減期温度以上であって、熱分解型発泡剤の分解温度以上の温度に加熱することが好ましい。
【0143】
前記第2方法を以下に具体的に説明する。
本発明の樹脂組成物(A)および発泡剤を含む樹脂組成物に照射する電離性照射線は、本発明の架橋成形体の製造に用いられるのと同様の電離性照射線が挙げられる。電離性放射線の照射方法や照射量は、本発明の架橋成形体の製造時の照射方法や照射量として記載された方法や照射量と同じものが挙げられる。
本発明の樹脂組成物(A)および発泡剤を含む樹脂組成物(II)は、通常、発泡剤の分解温度未満の温度で所望の形状に成形した後に電離性照射線を照射される。例えば、シートに成形する方法としては、カレンダーロールでシート状に成形する方法、プレス成形機でシート状に成形する方法、Tダイまたは環状ダイから溶融押出ししてシート状に成形する方法などがあげられる。
【0144】
得られた架橋成形体を加熱して架橋発泡体を製造する方法としては、公知の方法をいずれも適用することができ、縦型熱風発泡法、横型熱風発泡法、横型薬液発泡法等の架橋成形体を連続的に加熱発泡処理できる方法が好ましい。加熱温度は、発泡剤の分解温度以上の温度であり、好ましくは、熱分解型発泡剤の分解温度から5〜50℃高い温度である。
また、加熱時間は、オーブンで加熱する場合、通常3〜5分である。
【0145】
樹脂組成物(I)または樹脂組成物(II)における発泡剤としては、公知の物理発泡剤や熱分解型発泡剤が使用できる。また2種類以上の発泡剤を併用してもよい。
【0146】
物理発泡剤としては、空気、酸素、チッソ、二酸化炭素、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、エチレン、プロピレン、水、石油エーテル、塩化メチル、塩化エチル、モノクロルトリフルオルメタン、ジクロルジフルオルメタン、ジクロテトラフルオロエタン等が挙げられる。この中でも二酸化炭素、窒素、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタンまたはイソペンタンを用いることが経済性、安全性の観点から好ましい。
【0147】
熱分解型発泡剤としては、炭酸ナトリウム等の無機系発泡剤や、アゾジカルボンアミド、N,N−ジニトロペンタメチレンテトラミン、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ヒドラゾジカルボンアミド等の有機系発泡剤等が挙げられる。これらの中でもアゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドを用いることが経済性、安全性の観点から好ましい。成形温度範囲が広いことや、気泡が微細な架橋発泡体が得られることから、アゾジカルボンアミドおよび炭酸水素ナトリウムを含有する発泡剤を用いることがより好ましい。
【0148】
熱分解型発泡剤を用いる場合、通常は分解温度が120〜240℃である熱分解型発泡剤が用いられる。分解温度が200℃より高い熱分解型発泡剤を使用する場合には、発泡助剤を併用することにより分解温度を200℃以下に下げ使用することが好ましい。発泡助剤としては、酸化亜鉛、酸化鉛などの金属酸化物;炭酸亜鉛等の金属炭酸塩;塩化亜鉛等の金属塩化物;尿素;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ラウリン酸亜鉛、2−エチルヘキソイン酸亜鉛、二塩基性フタル酸鉛等の金属石鹸;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート等の有機錫化合物;三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜硫酸鉛等の無機塩類をあげることができる。
【0149】
熱分解型発泡剤として、熱分解型発泡剤、発泡助剤および樹脂から構成されるマスターバッチを用いることができる。マスターバッチに用いられる樹脂の種類は特に限定はされないが、本発明の樹脂成分(1)または樹脂成分(2)が好ましい。マスターバッチに含有される熱分解型発泡剤および発泡助剤の合計量は、該マスターバッチに含まれる樹脂を100重量%とすると、通常、5重量%以上90重量%以下である。
【0150】
より微細な気泡を有する架橋発泡体を得るために、発泡剤とともに発泡核剤を用いることが好ましい。発泡核剤としてはタルク、シリカ、マイカ、ゼオライト、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、アルミノシリケート、クレー、石英粉、珪藻土類の無機充填剤;ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンからなる粒径100μm以下のビーズ;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、酸化マグネシウム等の金属塩を例示することができ、これらを2種類以上組み合わせてもよい。
【0151】
樹脂組成物(I)または樹脂組成物(II)における発泡剤の量は、用いる発泡剤の種類や製造する架橋発泡体の発泡倍率によって適宜設定されるが、本発明の樹脂組成物(A)100重量部に対して通常1〜100重量部である。
【0152】
本発明の架橋発泡体の発泡倍率や強度を高めるために、樹脂組成物(I)または樹脂組成物(II)に、さらに架橋助剤を含むことが好ましい。架橋助剤としては、本発明の架橋成形体の製造に用いられる架橋助剤が挙げられる。架橋助剤の量は、樹脂組成物(A)100重量部に対して、0.01〜4.0重量部であること好ましく、0.05〜2.0重量部であることがより好ましい。
【0153】
樹脂組成物(I)または樹脂組成物(II)は、必要に応じ、架橋剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、顔料、充填剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤などの公知の添加剤を含有してもよい。
【0154】
樹脂組成物(I)または樹脂組成物(II)が公知の添加剤を含有する場合、樹脂組成物(I)または樹脂組成物(II)は、公知の添加剤を溶融混練したものであることが好ましい。溶融混練する方法としては、例えば、各成分をタンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサーなどで混合した後、更に単軸押出機や多軸押出機などにより溶融混練する方法、またはニーダーやバンバリーミキサーなどで溶融混練する方法などが挙げられる。
本発明の、樹脂組成物、該樹脂組成物の架橋成形体、該樹脂組成物の架橋発泡体は、
蓄熱性能、成形加工性、形状保持性に優れ、保温や保冷性能が必要となる製品に用いることができる。
【0155】
本発明の樹脂組成物(A)、該樹脂組成物(A)の架橋成形体、該樹脂組成物(A)の架橋発泡体は、蓄熱性能、成形加工性、形状保持性に優れ、保温や保冷性能が必要となる製品に用いることができる。
例えば、一般建材またはその部材、住居、ホテル、空港、地下街などの空調設備、自動車の暖気システムやキャニスターや内装材の部材、電子部品、冷蔵庫などの家電、臓器輸送などの医療用保温容器、カーブミラー、橋のコンクリート材料、食品配送の保温箱や容器、弁当箱や食器、防寒着やスポーツウェアなどの一般衣料、寝具、便座、カイロなど、体温を一定温度に保つための製品の部材、水筒、浴槽、風呂蓋など、お湯を一定温度に保つ保温用品の部材など種々の分野での利用が期待できる。
一般建材またはその部材として、例えば床暖房、壁材、天井材、壁紙、断熱材、屋根材などの部材への適用が挙げられる。蓄熱性能を有さない断熱材との積層体として用いてもよい。
自動車の暖気システムとして、例えば、自動車などに搭載される内燃機関の暖機を効果的に行うため、過冷却状態で蓄熱が可能な潜熱蓄熱材を用いた蓄熱装置への適用が挙げられる。
電子部品の場合、例えば、電子機器などに搭載される電子部品などにおいて、発熱体の温度上昇を抑制する観点で熱拡散フィルムなどと積層して用いることもでき、低温やけど対策の観点から発熱体を囲う製品筐体などに貼り付けて用いることができる。
取り付け箇所の例としては、パーソナルコンピューター、タブレットPC、PDA、携帯電話、デジタルカメラなどの電子機器や、印字印刷装置、複写機、プロジェクターなどの情報機器、ジャーポット、電子レンジ、給湯器などの調理家電などの遮熱が必要な部位が挙げられる。
【実施例】
【0156】
以下、実施例により本発明を説明する。実施例での物性は、次の方法に従って測定した。
【0157】
(1)樹脂成分(1)の密度(単位:kg/m
JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従ってオレフィン重合体の密度を測定した。
【0158】
(2)樹脂成分(1)、架橋発泡体、および動的架橋した樹脂組成物の融解ピーク温度(Tm、単位:(℃))、結晶化ピーク温度(Tc、単位:℃)、融解エンタルピー(ΔH、単位:J/g)
熱分析装置 示差走査熱量計(Diamond DSC パーキンエルマー社製)を用いて下記の方法で測定した。窒素雰囲気下で、約10mgの試料を封入したアルミニウムパンを、(1)150℃で5分間保持し、(2)5℃/分で150℃から0℃まで降温し、(3)0℃で5分間保持し、(4)5℃/分で0℃から150℃程度まで昇温したときの、(2)の測定で得られた示差走査熱量測定曲線を結晶化曲線とし、(4)の測定で得られた示差走査熱量測定曲線が融解曲線とした。結晶化ピーク温度は、結晶化曲線からブランクラインを引いた曲線において、最も発熱量が多い温度である。融解ピーク温度は、融解曲線からブランクラインを引いた曲線において、最も吸熱量が多い温度である。
ΔH(J/g)は、融解曲線からブランクラインを引いた曲線の積分値を熱量に換算し、測定に供した試料の重量で割ることによって求めた。
【0159】
(3)樹脂成分(1)の極限粘度([η]、単位:dl/g)
熱劣化防止剤としてブチルヒドロキシトルエン(BHT)を5重量%含むテトラリン100mlに、オレフィン系重合体100mgを135℃で溶解したサンプル溶液と、BHTを0.5重量%含むテトラリン100mlのみからなるブランク溶液を準備した。ウベローデ型粘度計を用いて測定した、前記サンプル溶液と前記ブランク溶液との降下時間から、オレフィン重合体の相対粘度(ηrel)を求め、式(I)を用いて[η]を算出した。
[η]=23.3×log(ηrel) (I)
【0160】
(4)樹脂成分(1)の炭素原子数5以上の分岐鎖の、炭素原子数1000個当たりの数
カーボン核磁気共鳴法によって、次の測定条件により、カーボン核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定し、下記算出方法より炭素原子数5以上の分岐鎖の数を求めた。
<測定条件>
装置 :Bruker社製 AVANCE600
測定溶媒:1,2−ジクロロベンゼン/1,2−ジクロロベンゼン−d4
=75/25(容積比)の混合液
測定温度:130℃
測定方法:プロトンデカップリング法
パルス幅:45度
パルス繰り返し時間:4秒
測定基準:テトラメチルシラン
窓関数 :負の指数関数
<算出方法>
5〜50ppmに観測されるすべてのピークの面積の総和を1000として、38.20〜39.0ppm付近にピークトップを有するピークのピーク面積と、35.8〜36.5ppm付近にピークトップを有するピークのピーク面積の2つの和を炭素原子数5以上の分岐鎖の、炭素原子数1000個当たりの数として算出した。
【0161】
(7)架橋発泡体のゲル分率(単位:重量%)
測定試料約1gを100メッシュの網篭に入れ、その状態で沸騰キシレン中に投入し、8時間還流操作を行った。網篭中に残存したゲルは風乾した後、真空乾燥させた。そして抽出したゲルの重量を測定し、以下の式に基づきゲル分率(重量%)を算出した。
ゲル分率=(ゲル重量/全試料重量)×100
【0162】
(9)架橋発泡体の発泡倍率(単位:倍)
上記の(1)の方法で求めたオレフィン重合体の密度と(8)の方法で求めた架橋発泡体の密度から、下記式により算出した。
発泡倍率=オレフィン重合体の密度/架橋発泡体の密度
【0163】
(10)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210に従って、ポリプロピレン樹脂は、荷重21.18N、温度230℃で測定し、動的架橋した樹脂組成物は、荷重98.07N、温度230℃で測定した。
【0164】
(11)動的架橋した樹脂組成物の成形体の形状保持性(70℃)
動的架橋した樹脂組成物の成形体(直径3cm、厚み1.3cm)を作製し、70℃の温度下に22時間置いた後の形状変化を目視で判定した。形状に変化がない場合を記号○で表し、形状が大きく変化した場合を×で表しした。
【0165】
オレフィン重合体(重合体PE−1)の製造
減圧乾燥後、窒素で置換した内容積3リットルの撹拌機付きオートクレーブにリニアレン2024((炭素数18、20,22,24のα−オレフィンの混合物)(出光興産株式会社製)のトルエン溶液(0.48g/mL、500mL)を加え、次いで、液量が1500mLとなるようにトルエンを加えた。オートクレーブを60℃まで昇温した後、エチレンをその分圧が0.5MPaとなるように加え系内を安定させた。これに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(1.0mol/L,1.5ml)を投入した。ここに、ジエチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドのトルエン溶液(1mmol/L、0.5mL)とトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(1.0mol/L,0.5ml)とを1分間接触させた混合物を投入した。次いで、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(1.0mol/L,7.5ml)を投入することで重合を開始し、全圧を一定に保つようにエチレンガスをフィードした。90分経過後2mlのエタノールを添加し、重合を停止した。重合停止後、ポリマーを含有するトルエン溶液をアセトン中に添加することにより、オレフィン重合体を析出させ、濾別したオレフィン重合体をさらにアセトンで2回洗浄した。得られたオレフィン重合体を80℃で真空乾燥することで、207gのオレフィン重合体が得られた(以下、重合体PE−1とする)。得られた重合体PE−1の分析値を、以下に示す。
密度=896kg/m、炭素原子数5以上の分岐の炭素原子数1000個当たりの分岐数=32、[η]=1.9dl/g、ΔH=86J/g、Tm=31℃、Tc=24℃
【0166】
[実施例1] 架橋発泡体
樹脂成分(1)として、重合体PE−1を90重量%、樹脂成分(2)としてエチレン−α−オレフィン共重合体(住友化学社製、商品名:エクセレンGMH、CB0002、Tm=102℃、密度=913kg/m)を10重量%とを、混練機(東洋精機
製ラボプラストミル 30C150、ミキサー R−100H)を用いて、混練時の樹脂温度120℃、混練時間10分、スクリュー回転速度50−70rpmの条件で混練を行い、樹脂組成物(A)を得た。
次に、得られた樹脂組成物(A)の総量を100重量部として、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(日本油脂株式会社、商品名 パーヘキシル−I、1分間半減期温度155℃)が1.0重量部と、ADCA系の熱分解型複合発泡剤(三協化成株式会社製 商品名 セルマイクCAP)25重量部と、ステアリン酸亜鉛2.0重量部と、酸化亜鉛1.0重量部とを、混練機(東洋精機製ラボプラストミル 30C150、ミキサー R−100H)を用いて、混練時の樹脂温度100℃、混練時間10分、スクリュー回転速度50−70rpmの条件で混練を行い、樹脂組成物(II)を得た。10cm×10cm×1cmの金型に充填し、温度125℃、時間30分間、圧力20MPaの条件で樹脂組成物(II)を加熱および加圧し、金型温度が125℃のままの状態で型を解放し、架橋発泡体を得た。得られた架橋発泡体の大きさは、25cm×25cm×2.5cmであった。得られた架橋発泡体の分析値を、以下に示す。
Tm=34℃、ΔH=54J/g、Tc=30℃、ゲル分率=88%
【0167】
[比較例1] 架橋発泡体
重合体PE−1の総量を100重量部として、ジクミルパーオキサイド(1分間半減期温度175℃)が1.5重量部と、熱分解型発泡剤であるアゾジカルボンアミド(永和化成工業株式会社製 商品名 ビニホールAC#3)10重量部と、尿素(永和化成工業株式会社製 商品名 セルペースト101)2.5重量部と、ステアリン酸亜鉛2.0重量部と、酸化亜鉛1.0重量部とを、混練機(東洋精機製ラボプラストミル 30C150、ミキサー R−100H)を用いて、混練時の樹脂温度100℃、混練時間10分、スクリュー回転速度50−70rpmの条件で混練を行い、樹脂組成物を得た。前記樹脂組成物を10cm×10cm×1cmの金型に充填し、温度155℃、時間30分間、圧力20MPaの条件で樹脂組成物を加熱および加圧し、金型温度が155℃のままの状態で型を解放したが、膨張せず、発泡体は得られなかった。
【0168】
オレフィン重合体(重合体PE−2)の製造
減圧乾燥後、窒素で置換した内容積5リットルの撹拌機付きオートクレーブに、アルファオレフィンC2024(炭素数18、20,22,24、26のオレフィン混合物、イネオス社製)を706g含有するトルエン溶液1.4Lを加え、次いで、液量が3Lとなるようにトルエンを加えた。オートクレーブを60℃まで昇温した後、エチレンをその分圧が0.1MPaとなるように加え系内を安定させた。これに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.34mol/L,14.7ml)を投入した。次に、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(1.0mmol/13.4mL)、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライドのトルエン溶液(0.2mmol/L,7.5mL)を投入することで重合を開始し、全圧を一定に保つようにエチレンガスをフィードした。3時間経過後2mlのエタノールを添加し、重合を停止した。重合停止後、ポリマーを含有するトルエン溶液をアセトン中に添加することにより、オレフィン重合体を析出させ、濾別したオレフィン重合体をさらにアセトンで2回洗浄した。得られたオレフィン重合体を80℃で真空乾燥することで、369gのオレフィン重合体が得られた(以下、重合体PE−2とする)。得られた重合体PE−2の分析値を、以下に示す。
炭素原子数5以上の分岐の炭素原子数1000個当たりの分岐数=30、[η]=1.2dl/g、ΔH=89J/g、Tm=34℃、Tc=33℃
【0169】
[実施例2] 動的架橋した樹脂組成物
樹脂成分(1)として重合体PE−2を80重量%、樹脂成分(2)としてポリプロピレン樹脂(ノーブレンY501N、Tm=161℃、MFR(230℃、21.18N)=13g/10分、住友化学社製)を20重量%、樹脂成分(1)と樹脂成分(2)の総量を100重量部として架橋助剤(ハイクロスMS50(トリメチロールプロパントリメタクリレートを二酸化ケイ素で50%に希釈したもの)、精工化学株式会社製)を1.5重量部、酸化防止剤(イルガノックス1010(フェノール系酸化防止剤)、チバ・ジャパン株式会社製)0.1重量部を、混練機(東洋精機製ラボプラストミル 30C150、ミキサー R−100H)を用いて、混練時の樹脂温度200℃で混練を5分間行い、次に架橋剤(APO−40S(2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンを二酸化ケイ素で40%に希釈したもの、化薬アクゾ株式会社製)2.0重量部追加し、さらに混練を200℃で5分間行い、動的架橋した樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物のMFR(230℃、98.07N)は12g/10分、ΔH=74J/g、Tm=36℃、Tc=30℃であった。成形体の形状保持性は○であった。
【0170】
[実施例3] 動的架橋した樹脂組成物
実施例2において、架橋助剤のハイクロスMS50を0.75重量部、架橋剤のAPO−40Sを1.0重量部用いた以外は、実施例2と同様に実験を行い、動的架橋した樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物のMFR(230℃、98.07N)は17g/10分、ΔH=79J/g、Tm=36℃、Tc=31℃であった。成形体の形状保持性は○であった。
【0171】
[実施例4] 動的架橋した樹脂組成物
実施例2において、樹脂成分(2)としてポリプロピレン樹脂にノーブレンH501(Tm=165℃、MFR(230℃、21.18N)=3.2g/10分、住友化学社製)を用いた以外は、実施例2と同様に実験を行い、動的架橋した樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物のMFR(230℃、98.07N)は10g/10分、ΔH=75J/g、Tm=36℃、Tc=30℃であった。成形体の形状保持性は○であった。
【0172】
[実施例5] 動的架橋した樹脂組成物
実施例2において、樹脂成分(2)としてポリプロピレン樹脂にノーブレンU101E9(Tm=163℃、MFR(230℃、21.18N)=120g/10分、住友化学社製)を用いた以外は、実施例2と同様に実験を行、動的架橋した樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物のMFR(230℃、98.07N)は16g/10分、ΔH=73J/g、Tm=36℃、Tc=30℃であった。成形体の形状保持性は○であった。
【0173】
[実施例6] 動的架橋した樹脂組成物
樹脂成分(1)として重合体PE−2を80重量%、樹脂成分(2)としてポリプロピレン樹脂(ノーブレンY501N)を20重量%、樹脂成分(1)と樹脂成分(2)の総量を100重量部として、架橋助剤(ハイクロスMS50)を0.75重量部、酸化防止剤(イルガノックス1010)を0.1重量部、架橋剤(APO−40S)を1.0重量部を、混練機(東洋精機製ラボプラストミル 30C150、ミキサー R−100H)を用いて、混練時の樹脂温度200℃で混練を10分間行い、動的架橋した樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物のMFR(230℃、98.07N)は16g/10分、成形体の形状保持性は○であった。
【0174】
[実施例7]
樹脂成分(1)として重合体PE−2を90重量%、樹脂成分(2)としてポリプロピレン樹脂(ノーブレンY501N)を10重量%、樹脂成分(1)と樹脂成分(2)の総量を100重量部として架橋助剤(ハイクロスMS50)を0.75重量部、酸化防止剤(イルガノックス1010)0.1重量部を、混練機(東洋精機製ラボプラストミル 30C150、ミキサー R−100H)を用いて、混練時の樹脂温度200℃で混練を5分間行い、次に架橋剤(APO−40S)1.0重量部添加し、さらに混練を200℃で5分間行い、動的架橋した樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物のMFR(230℃、98.07N)は12g/10分、成形体の形状保持性は○であった。
【0175】
[比較例2] 樹脂組成物
樹脂成分(1)として重合体PE−2を80重量%、樹脂成分(2)としてポリプロピレン樹脂(ノーブレンY501N)を20重量%、樹脂成分(1)と樹脂成分(2)の総量を100重量部として、酸化防止剤(イルガノックス1010)0.1重量部を、ラボプラストミル混練機を用いて、混練時の樹脂温度200℃で混練を10分間行い、樹脂組成物を得た。架橋剤および架橋助剤は用いなかった。
成形体の形状保持性は×であった。
【0176】
[比較例3] 動的架橋した樹脂組成物
樹脂成分(1)として重合体PE−2、樹脂成分(1)の量を100重量部として、架橋助剤(ハイクロスMS50)を0.75重量部、酸化防止剤(イルガノックス1010)0.1重量部を、ラボプラストミル混練機を用いて、混練時の樹脂温度200℃で混練を5分間行い、次に架橋剤(APO−40S)1.0重量部追加し、さらに混練を200℃で5分間行い、樹脂組成物を得た。樹脂成分(2)は用いなかった。
成形体の形状保持性は×であった。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明により、蓄熱性能に優れた架橋発泡体を容易に与えることができる樹脂組成物、該樹脂組成物の架橋物、および該架橋物の製造方法を提供することができる。